(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H02J3/00 160
(21)【出願番号】P 2020079214
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義樹
(72)【発明者】
【氏名】末廣 諭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真範
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚希
(72)【発明者】
【氏名】吉村 史隆
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真三郎
(72)【発明者】
【氏名】中ノ瀬 潤
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-310333(JP,A)
【文献】特開平07-143692(JP,A)
【文献】特開平11-252795(JP,A)
【文献】特開2011-135764(JP,A)
【文献】特開2017-030470(JP,A)
【文献】特開2019-075839(JP,A)
【文献】特開2019-126155(JP,A)
【文献】特表2017-532239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報が格納された格納部と、
前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する判定部と、
発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う切替部と、
を備え、
前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、
前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成システム。
【請求項2】
前記系統構成情報は、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つに基づいて設定されている請求項1に記載の系統再構成システム。
【請求項3】
前記系統構成情報は、前記電力系統における複数のノードを有した領域であって、前記領域の接続先への影響が、前記領域内における事故の発生位置に依らない場合には、前記領域に含まれる複数のノードを1つのノードとみなして設定されている請求項1又は2に記載の系統再構成システム。
【請求項4】
前記系統構成情報は、バスと前記バスの両端の遮断器とを1つのノードとみなして設定されている請求項1から3のいずれか1項に記載の系統再構成システム。
【請求項5】
移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報が格納された格納部と、
前記移動体に事故が発生した場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行う切替部と、
を備え、
前記系
統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、
前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成システム。
【請求項6】
移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する工程と、
発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う工程と、
を有し、
前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、
前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成方法。
【請求項7】
移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する情報であって、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されている系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、
前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成方法。
【請求項8】
移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する処理と、
発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、
前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成プログラム。
【請求項9】
移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する情報であって、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されている系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成をコンピュータに実行させ、
前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電・配電系統において事故が発生した場合、区分開閉器の切替操作により速やかに事故点を切り離し、迂回ルートを見つけ、送電を継続できるようにする必要がある。このため、事故が発生した場合には系統再構成が実行される。
【0003】
特許文献1では、事故毎に二次被害を考慮して系統再構成に関する解を求めることが開示されている。特許文献2では、逐次法により系統再構成を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-75839号公報
【文献】特開昭63-310333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、二次被害を考慮して系統再構成の解を求める場合には、事前計算として予め複雑な処理をしてデータベースとして記憶する必要がある。特許文献2では、事故が発生した場合に逐次法で系統再構成を行うため処理時間は短いものの、状況に合わせてより最適な系統再構成を行うことは難しい。特に移動体においては、電源が限られるため、より安全で迅速に系統再構成が実行されることが望まれる。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より安定で迅速に系統再構成を実行することのできる系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報が格納された格納部と、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する判定部と、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う切替部と、を備え、前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成システムである。
【0008】
本開示の第2態様は、移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する工程と、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う工程と、を有し、前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成方法である。
【0009】
本開示の第3態様は、移動体の電力系統において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する処理と、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う処理と、をコンピュータに実行させるための系統再構成プログラムであって、前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定され、前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されている系統再構成プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、より安定で迅速に系統再構成を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る系統再構成システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る電力系統の構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係る系統再構成システムのハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る事故発生例を示す図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る系統再構成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る事前計算処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の第2実施形態に係る電力変換器を含む電力系統の構成例を示す図である。
【
図8】本開示の第3実施形態に係る電力系統の一例を示す図である。
【
図9】本開示の第3実施形態に係る電力系統の一例を示す図である。
【
図10】本開示の第3実施形態に係る電力系統の一例を示す図である。
【
図11】本開示の第3実施形態に係る電力系統の一例を示す図である。
【
図12】本開示の第3実施形態に係る電力系統の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムの第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本開示の第1実施形態に係る系統再構成システム1の概略構成を示す図である。系統再構成システム1は、
図1に示すように、電力系統10に接続されており、電力系統10に事故が発生した後に系統再構成を行う。なお、本実施形態では電力系統10は、移動体における電力系統を対象とする。
【0014】
電力系統10の構成の一例を
図2に示す。なお、
図2に示される電力系統10は本実施形態を説明するためのものであり一例である。
【0015】
電力系統10は、2台の発電機G1,G2と、5台の負荷L1,L2,L3,L4,L5と、を備えている。負荷L1,L2,L3,L4,L5の中で負荷L1,L5が他の負荷L2,L3,L4よりも負荷の程度が大きい。なお、発電機(発電機ノード)G1,G2及び負荷(負荷ノード)L1~L5の位置は予め把握されており、また、遮断器(遮断器ノード)B1~B17及び黒丸で示されるノード(以下、単に「ノード」という)についても同様に位置が予め把握されている。この位置情報(三次元座標)は、系統再構成システム1の格納部7に記憶されている。したがって、例えば、発電機(発電機ノード)G1と負荷(負荷ノード)L1の間の距離、あるいは、遮断器(遮断器ノード)B2と遮断器(遮断器ノード)B3の間の距離は、演算により容易に求めることができるか、既知の値としてテーブルデータとして格納部7に記憶させることができる。
【0016】
発電機G1と負荷L1は電線C1で接続され、また、発電機G2と負荷L5は電線C2で接続されている。電線C1には発電機G1の側から遮断器B1,B2,B3,B4が設けられ、電線C2には発電機G2の側から遮断器B14,B15,B16,B17が設けられている。
【0017】
電線C1と電線C2は、遮断器B1と遮断器B2の間と、遮断器B14と遮断器B15の間とを電線C3により接続される。電線C3には電線C1の側から遮断器B5,B11が設けられている。電線C3には遮断器B5と遮断器B11の間に電線C4が接続され、その先端には負荷L2が接続されている。電線C4には、遮断器B8が設けられている。
【0018】
電線C1と電線C2は、遮断器B2と遮断器B3の間と、遮断器B15と遮断器B16の間とを電線C5により接続される。電線C5には電線C1の側から遮断器B6,B12が設けられている。電線C5には遮断器B6と遮断器B12の間に電線C6が接続され、その先端には負荷L3が接続されている。電線C6には、遮断器B9が設けられている。
【0019】
電線C1と電線C2は、遮断器B3と遮断器B4の間と、遮断器B16と遮断器B17の間とを電線C7により接続される。電線C7には電線C1の側から遮断器B7,B13が設けられている。電線C7には遮断器B7と遮断器B13の間に電線C8が接続され、その先端には負荷L4が接続されている。電線C8には、遮断器B10が設けられている。
【0020】
以上の構成を有する電力系統10は、通常の送電状態において系統保護の観点から、例えば、遮断器B11,B12,B7が開とされている。これにより、電力系統10は、発電機G1と発電機G1から電力が供給される負荷L1,L2,L3とからなる第1ループと、発電機G2と発電機G2から電力が供給される負荷L4,L5とからなる第2ループと、が切り離されている。
通常の送電状態において、遮断器B11,B12,B7以外の遮断器は閉とされている。
【0021】
系統再構成システム1は、電力系統10に停電事故が発生すると、遮断器B1~B17の閉/開を切り替えることにより、事故が発生した区間以外を系統から切り離すとともに迂回ルートを定める復旧目標系統(再構成された系統)を生成する。系統再構成システム1は、生成された復旧目標系統に従って、遮断器B1~B17の閉/開を制御することで、系統再構成を実現する。
【0022】
図3は、本実施形態に係る系統再構成システム1のハードウェア構成の一例を示した図である。
図3に示すように、系統再構成システム1は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU11と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)12と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)13と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)14と、ネットワーク等に接続するための通信部15とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス18を介して接続されている。
【0023】
また、系統再構成システム1は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
【0024】
なお、CPU11が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM12に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0025】
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ14等に記録されており、このプログラムをCPU11がRAM13等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM12やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0026】
図1に示されるように、系統再構成システム1は、格納部(データベース)7と、判定部3と、切替部5とを備えている。
【0027】
格納部7は、移動体の電力系統10において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報が格納されている。系統構成情報とは、系統再構成後の系統構成(復旧目標系統)を示す情報であり、例えば、電力系統10に設けられた各遮断器(開閉器)の開閉状態を示す情報である。具体的には、事故点情報は、移動体において事故(異常)が発生し易い(発生する可能性が高い)と想定される箇所に応じた事故点の発生パターン(シナリオ)に対応して、予め複数設定されている。発生パターンでは、事故点は一つでもよいし複数でもよい。そして、それぞれの事故点情報に対応して、復旧目標系統の系統構成情報が格納されている。
【0028】
すなわち、格納部7には、事故が発生する可能性が高いとして予め設定された事故点情報のそれぞれに対応した系統構成情報が格納されている。例えば、全ノードに対応して事故発生の組合せを準備すると、ノード数を20個としても2の20乗(100万)のパターンがあり得る。しかし、事故が発生する可能性が高いパターンとして予め絞っておくことで、格納される系統構成情報のデータ量が抑制される。
【0029】
系統構成情報は、事故点情報に対応して予め設定され、格納部7へ格納される。具体的には、系統構成情報は、残存の発電機から優先度の高い負荷へ電力を最大に給電することを前提として、事故点情報に対応し、二次被害等を考慮して最適化された系統構成が設定される。最適化のために、系統構成情報は、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つの指標に基づいて設定されている。なお、系統再構成の最適化のための指標については、上記に限定されず適用することができる。
【0030】
事故点からの空間的な遠さとは、事故点と迂回経路との空間的な距離である。例えば、停電事故の原因である火災が延焼するなどによる二次被害を見越し、事故点から空間的に離れたところを通る経路を選択する。事故点から空間的に離れたところを通る経路を選択するので、事故点の近傍のノードが二次被害を受けたとしても、選択された経路には被害が及ばない可能性が大きい。すなわち、より最適な系統再構成を行うことができる。
【0031】
事故点からの電気的な遠さとは、事故点と迂回経路との電気的な距離である。例えば、停電事故火災延焼等による二次被害を見越し、事故点から電気的に離れたところを通る経路を選択する。すなわち、より最適な系統再構成を行うことができる。
【0032】
電気的な損失とは、電力の供給側(発電機)から電力の需要側(負荷)までの経路における電気損失である。損失は、電気抵抗と電流により表され、安全性や経済性を考慮すると損失が低減されることが好ましい。すなわち、より最適な系統再構成を行うことができる。
【0033】
電気的な安定性とは、系統再構成のための切替動作に対する電力系統10の安定性である。例えば、遮断器の開閉の切り替えは周波数や電圧の変動を引き起こす可能性がある。このため、系統再構成のための切替動作によって電力系統10に擾乱が生じる可能性がある。このため、切り替え動作が必要な遮断器の数が少ない経路を選択することにより、切替動作による擾乱が抑制される。すなわち、より最適な系統再構成を行うことができる。
【0034】
このように、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つを考慮して、事故が発生する可能性が高い事故点の発生パターンに対応した系統構成情報が、予め設定され、格納部7へ格納される。
【0035】
なお、系統構成情報には、以下の制約を設定することとしてもよい。
(1)放射状制約
配電系統は放射状となっていなければならない。
(2)線路電流容量制約
各区間の線路に流れる電流の大きさが、その区間の線路電流容量を越えてはならない。
(3)変圧器電流容量制約
各変圧器に接続されている負荷の総和が、その変圧器の電流容量を超えてはならない。
(4)電圧降下許容容量制約
変電所引出し口から系統末端までの電圧降下の総和が電圧降下許容容量を超えてはならない。
(5)健全区間制約
事故が生じた場合に健全であった区間が、復旧の過程又は復旧後に停電してはならない。
【0036】
格納部7に格納された情報は、後述する判定部3や切替部5において使用される。
【0037】
判定部3は、移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した事故点情報が設定されているか否かを判定する。具体的には、電力系統10において事故が発生した場合には、事故点の発生パターンが特定される。例えば、
図4に示すように事故が発生した場合には、ノードN1に事故が発生したことが特定される。
【0038】
発生した事故に対して事故点の発生パターンが特定されると、格納部7において対応する事故点情報(予め設定された事故点の発生パターン)が格納されているか否かを判定する。換言すると、発生した事故に対応するシナリオが予め用意されているか否かが判定される。
【0039】
このようにすることで、発生した事故に対応した系統構成情報が格納部7に格納されているか否かを確認する。判定部3における判定結果は、後述する切替部5において使用される。
【0040】
切替部5は、発生した事故に対応した事故点情報が設定されている場合に、系統構成情報に基づいて電力系統10の系統再構成を行い、発生した事故に対応した事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う。すなわち、切替部5は、発生した事故と、格納部7へ格納されている事故点情報との対応関係により、異なる方法で系統再構成を行う。
【0041】
発生した事故に対応した事故点情報が設定されている場合とは、判定部3の判定結果が肯定判定である場合である。この場合には、発生した事故に対応した事故点情報の系統構成情報が格納部7へ既に用意されている。このため、切替部5は、対応する事故点情報の系統構成情報を格納部7から読み出す。そして、読み出した系統構成情報に基づいて、電力系統10の再構成を行う。具体的には、系統構成情報に基づいて、電力系統10の遮断器の開閉状態を切り替え、系統の接続状態を変える。
【0042】
系統構成情報は、予め設定した事故点情報に対応して最適化された系統構成を示しているため、発生した事故に対応して、より最適な系統再構成が実行される。また、系統構成情報は予め計算されて格納されているため、事故が発生した場合でも迅速に系統再構成を実行することができる。
【0043】
一方で、発生した事故に対応した事故点情報が設定されていない場合とは、判定部3の判定結果が否定判定である場合である。この場合には、この場合には、発生した事故に対応した事故点情報の系統構成情報が用意されていないこととなる。このため、切替部5は、予め設定された逐次法(ルールベース)で事故点の切り離しを行う。逐次法とは、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開制御ルールに基づいて系統再構成を行う。また、逐次法では、事故点を系統から切り離すだけでなく、迂回ルートを閉にすること等の閉制御ルールに基づくこととしてもよい。すなわち、逐次法では、予め設定された開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う。開閉制御ルールは、例えば前述の制約を考慮して予め設定されてもよい。開閉制御ルールは例えば格納部7へ格納されている。例えば、逐次法では、事故点に接続された遮断器をすべて開として事故点を系統から切り離す。すなわち、逐次法は、事故の発生後において、単に決められたルールで事故点を切り離す処理であり、系統構成情報のように、最適化計算(最適化のための指標を考慮した計算)は行われない。
【0044】
このように、発生した事故に対応した事故点情報が設定されていない場合には、切替部5は、予め設定した開閉制御ルールに基づいて逐次法により系統再構成を行う。
【0045】
逐次法では、事前設定のルールに基づいて事故発生後にシーケンシャルに処理を行うため、系統再構成のための計算処理は速いものの、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、または電気的な安定性が十分に考慮できない場合がある。このため、系統再構成システム1では、事故が発生し易いと予め想定される事故状況に対応して予め系統構成情報を用意しておき、もし想定されていなかった事故状況が発生した場合には、ルールベースに基づき系統再構成を行う。これによって、系統構成情報の用意のための事前計算処理を抑制して、発生する可能性が高い事故に対しては系統構成情報を用いてより最適な系統再構成を実行し、系統構成情報を用意していない事故に対しても、逐次法により系統再構成を行うことが可能となる。このように、逐次法は、最適性がない、または最適性が低いという特徴がある。
【0046】
次に、上述の系統再構成システム1による系統再構成処理の一例について
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る系統再構成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5に示すフローは、例えば、事故が発生した場合(事故を検知した場合)において実行される。
【0047】
まず、発生した事故に対して、事故点の発生パターンが特定される(S101)。事故点の発生パターンについては、電力系統10に設けたセンサ情報等によって自動的に特定される。
【0048】
次に、発生した事故に対応する事故点情報が予め設定されているか否かを判定する(S102)。S102は、特定された事故点の発生パターンと、予め設定された事故点情報を対比することにより行われる。
【0049】
発生した事故に対応する事故点情報が予め設定されている場合(S102のYES判定)には、系統構成情報(最適切替パターン)を格納部7から読み出す(S103)。発生した事故に対応する事故点情報が予め設定されていない場合(S102のNO判定)には、予め設定された逐次法のためのルール(開閉制御ルール)に基づいて電力系統10の切替パターンを生成する(S104)。
【0050】
そして、系統再構成を実行する(S105)。S105では、格納部7から読み出された系統構成情報(最適切替パターン)、またはルールに基づいて生成された電力系統10の切替パターンのいずれか一方に基づいて系統再構成が実行される。
【0051】
このようにして、系統再構成が実行される。
【0052】
次に、上述の系統再構成システム1による事前計算処理の一例について
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る事前計算処理の手順の一例を示すフローチャートである。事前計算処理とは、格納部7へ格納する系統構成情報を計算する事前処理である。事前計算処理について、
図6は一例であり、
図6の処理に限定されない。
図6に示すフローは、事前計算として実行開始が指示された場合に実行される。
【0053】
まず、事故点情報が入力される(S201)。S201では、事故が発生する可能性が高い事故点の発生パターンが予め設定されており、事故点情報として入力される。
【0054】
次に、入力された事故点情報に基づいて初期解を生成する(S202)。初期解については、事故点を考慮した上で、遮断器のON/OFFの組み合わせの数だけ生成される。なお、解とは各遮断器の開閉状態を示すものである。
【0055】
次に、ある解(または次の候補とされた解(S207))に対して潮流計算を行う(S203)。
【0056】
次に、目的関数の計算を行う(S204)。目的関数とは、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つの指標に関する関数(評価関数)であり、各遮断器の開閉状態を変数に含む。そして、各指標に対して満たされる度合いが高いほど目的関数は大きくなる。例えば、事故点からの空間的な遠さを指標として用いる場合には、遠さが大きくなるほど、対応する目的関数は大きくなる。また、2以上の指標を用いる場合には、各目的関数に重み付けをしてそれぞれ加算することで総合的な目的関数とすることができる。また、重み付けを変えて複数パターンの目的関数を用いることとしてもよい。
【0057】
次に、解更新をする(S205)。解更新では、処理が行われた解に対する目的関数の評価結果が前回処理をした解の評価結果より大きい場合に、より最適として解を更新する。
【0058】
次に、反復回数が所定値に到達したか否か、または収束したか否かを判定する(S206)。具体的には、エッジ数に対応する各経路パターン(解)に対して処理を行うため、反復回数が所定値に到達したか否かとは、所定数の経路パターン(解)に対して処理(S203等)が実行されたか否かとなる。例えば、総当たりの場合には、所定値は2^(エッジ数)回となる。また、収束したか否かとは、目的関数の値が正常時と同じ値になった場合である。
【0059】
反復回数が所定値に到達した場合、および/または収束した場合(S206のYES判定)には、計算処理を終了する。
【0060】
反復回数が所定値に到達しておらず、収束もしていない場合(S206のNO判定)には、解を次の候補とする(S207)。すなわち、次の解に対してS203等の処理が行われる。
【0061】
上記のようにして、事前計算として発生する可能性が高い事故点情報に対応した系統構成情報が生成され、格納部7へ格納される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムによれば、想定される事故点の発生パターン(事故点情報)に応じて設定された系統再構成のための系統構成情報が予め格納されている場合において、実際に事故が発生すると、事故に対応した事故点情報が設定されているか否かを判定する。すなわち、発生した事故が予め想定された発生パターンであるか否かが判定される。そして、事故に対応した事故点情報が設定されている場合は、格納されている系統構成情報に基づいて系統再構成を行う。一方で、事故に対応した事故点情報が設定されていない場合は、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う。このため、発生した事故が予め想定されていれば、格納されている系統構成情報に基づいて迅速に系統再構成を行うことができる。そして、発生した事故が予め想定されていない場合であっても、開閉制御ルールに基づいて事故点の切り離しを行うことができる。すなわち、様々な事故に対応して、より迅速に系統再構成を実行することが可能となる。
【0063】
また、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つに基づいて系統再構成に関する系統構成情報が設定されることで、再構成後の系統安定性を向上させることができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムについて説明する。
本実施形態では、系統構成情報をより効率的に設定する場合について説明する。以下、本実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムについて、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0065】
図7は、電力変換器Cを含む電力系統10の構成例を示す図である。電力系統10では、発電機Gが高電圧系の負荷のグリッド(高電圧系統)に接続されており、電力変換器Cを介して高電圧系より電圧が低い低電圧系の負荷のグリッド(低電圧系統)に接続されている。すなわち、電力系統10では、電力変換器Cを介して高電圧系統と低電圧系統とが構成されている。例えば、高電圧系統の事故点ノード数を9、低電圧系統の事故点ノード数を14とすると、電力系統10としての事故発生の組合せは約838万通りとなる。このため、系統構成情報の作成のための処理が多くなる可能性がある。
【0066】
このため、本実施形態では、系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されている。具体的には、系統区分は、電力変換器Cを境界として区分されている。なお、系統の区分については、電圧値の違いに基づいてもよいし、電圧の種類(直流と交流)に基づいてもよい。
【0067】
すなわち、例えば
図7の場合には、高電圧系統と、低電圧系統とをそれぞれ独立して、系統構成情報が設定される。この場合には、電力変換器Cは、高電圧系統にとっては負荷とし、低電圧系統にとっては発電機として扱う。すなわち、電力変換器Cに対して、電力流れの上流側の系統に対しては電力変換器Cを負荷とし、電力流れの下流側の系統に対しては電力変換器Cを発電機とすることによって、系統分けを行う。
【0068】
系統が分けられることによって、高電圧系統の事故点ノード数を9、低電圧系統の事故点ノード数を14とすると、高電圧系統における事故発生の組み合わせは512通り、低電圧系統における事故発生の組み合わせは16384通りとなるため、電力系統10としての事故発生の組合せは16896通りとなる。すなわち、系統を分けることで事故発生の組み合わせを大幅に抑制できるため、系統構成情報の作成のための処理負担を軽減することが可能となる。
【0069】
なお、上記では、本実施形態を第1実施形態と組み合わせる場合について説明しているが、第1実施形態と組み合わせず、第2実施形態を実行することとしてもよい。この場合には、例えば、判定部3における判定処理を行わず、切替部5は、移動体に事故が発生した場合に、系統構成情報に基づいて電力系統10の系統再構成を行うこととしてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムによれば、電力系統10が電圧状態に基づいて分けられており、各系統区分のそれぞれに対して独立に系統構成情報が設定されるため、区分しない場合と比較して、接続パターンが効果的に抑制される。このため、系統構成情報の情報量を抑制することができる。
【0071】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムについて説明する。
本実施形態では、より効率的に系統構成情報を作成する場合について説明する。以下、本実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムについて、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0072】
図8は、電力系統10の一例を示す図である。
図8では、発電機をGとして示し、負荷をLとして示し、給電盤をSBとして示し、変換器(電力変換器)をCとして示している。給電盤SBには遮断器CBが含まれているため、遮断器CB毎にノードとすると、
図8の電力系統10は、
図9に変換される。
図9では、ノード数は39となる。
【0073】
図9のような系統構成の場合には、事故発生の組み合わせは2の39乗となる。このため、処理負担が膨大となる可能性がある。
【0074】
このため、本実施形態では、電力系統10における複数のノードを有した領域であって、領域の接続先への影響が、領域内における事故の発生位置に依らない場合には、領域に含まれる複数のノードを1つのノードとみなし、系統構成情報を設定する。具体的には、系統再構成にとって同じ働きをするノードは統合し、ノード数の削減を図る。電力系統10における複数のノードを有した領域であって、領域の接続先への影響が、領域内における事故の発生位置に依らない場合には、該領域に含まれるノードは、系統再構成にとって同じ働きをすると考えられる。このため、該領域に含まれる複数のノードを統合する。
【0075】
図10では、
図9の系統に対して、系統再構成にとって同じ働きをするノードのまとまりを点線で囲んでいる。例えば領域AR1は、発電機G、遮断器CB、電力変換器Cが直列に接続されており、直列接続の先(一端側)が他に接続されている(他端は発電機G)。
図10のようにまとめた場合には、
図11に示すように複数のノードを統合することができる。
【0076】
そしてさらに、バス(ライン)の両端に遮断器CBが接続されている場合には、両端の遮断器CBは同一動作をすると考えることができる(互いに異なる動作をしても意味がない)。このため、
図12に示すように、両端が遮断器CBとなるバス(バスとバスの両端の遮断器CB)は1つのノードとみなして考えることができる。
図12では、1つのノードとみなした箇所を、バスのケーブルノードとしてCABと表示している。
【0077】
このように系統再構成のために系統構成を簡略化すると、
図12ではノード数を9とすることができる。簡略化前の
図9ではノード数は39であったため、上記処理によりノード数を効果的に抑制することができている。ノード数が抑制されることによって、計算処理の組み合わせ数が抑制され、処理負担を軽減することができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムによれば、複数のノードを有した領域であっても、接続先への影響が領域内における事故の発生位置に依らない場合がある。例えば、各ノード(装置等)が互いに直列に接続されている場合である。このような場合には、事故の影響としてひとまとまりとして考えることができるため、領域に含まれる複数のノードを1つのノードとみなして系統構成情報を設定することができる。このような場合には、考慮するノード数が低減されるため系統構成情報の情報量を抑制することができる。
【0079】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、上記の第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態については、それぞれ組み合わせることも可能である。
【0080】
以上説明した各実施形態に記載の系統再構成システム、及び系統再構成方法並びに系統再構成プログラムは例えば以下のように把握される。
本開示に係る系統再構成システム(1)は、移動体の電力系統(10)において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報が格納された格納部(7)と、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する判定部(3)と、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統(10)の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う切替部(5)と、を備える。
【0081】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、想定される事故点の発生パターン(事故点情報)に応じて設定された系統再構成のための系統構成情報が予め格納されている場合において、実際に事故が発生すると、事故に対応した事故点情報が設定されているか否かを判定する。すなわち、発生した事故が予め想定された発生パターンであるか否かが判定される。そして、事故に対応した事故点情報が設定されている場合は、格納されている系統構成情報に基づいて系統再構成を行う。一方で、事故に対応した事故点情報が設定されていない場合は、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う。このため、発生した事故が予め想定されていれば、格納されている系統構成情報に基づいて迅速に系統再構成を行うことができる。そして、発生した事故が予め想定されていない場合であっても、開閉制御ルールに基づいて事故点の切り離しを行うことができる。すなわち、様々な事故に対応して、より迅速に系統再構成を実行することが可能となる。
【0082】
本開示に係る系統再構成システム(1)は、前記系統構成情報は、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つに基づいて設定されていることとしてもよい。
【0083】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、事故点からの空間的な遠さ、事故点からの電気的な遠さ、電気的な損失、及び電気的な安定性の少なくともいずれか1つに基づいて系統再構成に関する系統構成情報が設定されることで、再構成後の系統安定性を向上させることができる。
【0084】
本開示に係る系統再構成システム(1)は、前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されていることとしてもよい。
【0085】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、電力系統(10)が電圧状態に基づいて分けられており、各系統区分のそれぞれに対して独立に系統構成情報が設定されるため、区分しない場合と比較して、接続パターンが効果的に抑制される。このため、系統構成情報の情報量を抑制することができる。
【0086】
本開示に係る系統再構成システム(1)は、前記系統区分は、電力変換器を境界として区分されていることとしてもよい。
【0087】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、系統区分は電力変換器を境界として区分されているため、電圧状態に基づいて系統区分を設定することができる。
【0088】
本開示に係る系統再構成システム(1)は、前記系統構成情報は、前記電力系統(10)における複数のノードを有した領域であって、前記領域の接続先への影響が、前記領域内における事故の発生位置に依らない場合には、前記領域に含まれる複数のノードを1つのノードとみなして設定されていることとしてもよい。
【0089】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、複数のノードを有した領域であっても、接続先への影響が領域内における事故の発生位置に依らない場合がある。例えば、各ノード(装置等)が互いに直列に接続されている場合である。このような場合には、事故の影響としてひとまとまりとして考えることができるため、領域に含まれる複数のノードを1つのノードとみなして系統構成情報を設定することができる。このような場合には、考慮するノード数が低減されるため系統構成情報の情報量を抑制することができる。
【0090】
本開示に係る系統再構成システム(1)は、前記系統構成情報は、バスと前記バスの両端の遮断器とを1つのノードとみなして設定されていることとしてもよい。
【0091】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、バスとバスの両端の遮断器とは、ひとまとまりとして、系統再構成の上で同一の機能と考えることができるため、1つのノードとみなして系統構成情報を設定することができる。このような場合には、考慮するノード数が低減されるため系統構成情報の情報量を抑制することができる。
【0092】
本開示に係る系統再構成システム(1)は、移動体の電力系統(10)において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報が格納された格納部(7)と、前記移動体に事故が発生した場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統(10)の系統再構成を行う切替部(5)と、を備え、前記系統構成情報は、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されている。
【0093】
本開示に係る系統再構成システム(1)によれば、電力系統(10)が電圧状態に基づいて分けられており、各系統区分のそれぞれに対して独立に系統構成情報が設定されるため、区分しない場合と比較して、接続パターンが効果的に抑制される。このため、系統構成情報の情報量を抑制することができる。
【0094】
本開示に係る系統再構成方法は、移動体の電力系統(10)において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する工程と、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統(10)の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う工程と、を有する。
【0095】
本開示に係る系統再構成方法は、移動体の電力系統(10)において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する情報であって、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されている系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統(10)の系統再構成を行う。
【0096】
本開示に係る系統再構成プログラムは、移動体の電力系統(10)において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されているか否かを判定する処理と、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されている場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統(10)の系統再構成を行い、発生した事故に対応した前記事故点情報が設定されていない場合に、事故点を切り離すために予め設定された遮断器の開閉制御ルールに基づいて系統再構成を行う処理と、をコンピュータに実行させる。
【0097】
本開示に係る系統再構成プログラムは、移動体の電力系統(10)において想定される事故点の発生パターンを事故点情報として、複数の前記事故点情報のそれぞれに対応した系統再構成に関する情報であって、電圧状態に基づいて分けられた系統区分のそれぞれに対して独立に設定されている系統構成情報を用い、前記移動体に事故が発生した場合に、前記系統構成情報に基づいて前記電力系統(10)の系統再構成をコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0098】
1 :系統再構成システム
3 :判定部
5 :切替部
7 :格納部
10 :電力系統
11 :CPU
12 :ROM
13 :RAM
14 :ハードディスクドライブ
15 :通信部
18 :バス
AR1 :領域
B1~B17:遮断器
C :電力変換器
C1~C8:電線
CB :遮断器
G、G1、G2:発電機
L1~L5:負荷
N1 :ノード
SB :給電盤