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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240722BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240722BHJP
   C07D 213/20 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K31/4425
A61K47/22
A61Q11/00
A61P1/02
C07D213/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020094043
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187774
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智寛
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 優里
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05236699(US,A)
【文献】特表2014-533267(JP,A)
【文献】特開2019-006752(JP,A)
【文献】特開2011-201861(JP,A)
【文献】特開2011-173873(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108403544(CN,A)
【文献】「VIII. 消毒薬の性質」,家畜飼養に必要な消毒マニュアル、平成11年3月,農林水産省 家畜改良センター 企画調整室 企画調整課,目次、28-33、奥付
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A23L33/00
A61K31/4425
A61K47/22
A61P1/02
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化セチルピリジニウム、並びに
ニコチン酸及び2-ヒドロキシニコチン酸からなる群より選択される少なくとも1種のニコチン酸化合物
を含有し、
塩化セチルピリジニウムを0.01~0.3質量%含有し、
塩化セチルピリジニウム1質量部に対し、ニコチン酸化合物を1~20質量部含有する、
口腔用組成物。
【請求項2】
塩化セチルピリジニウムを0.02~0.15質量%含有する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
ニコチン酸化合物を0.05~1質量%含有する、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物等に関し、より詳細には塩化セチルピリジニウムを含有する口腔用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
塩化セチルピリジニウムは、口腔用組成物等に広く用いられる殺菌剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-019725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化セチルピリジニウム(「CPC」とも表記する)は、口腔用組成物等に広く用いられる殺菌剤ではあるが、唾液により、その殺菌力が低下することがある。
【0005】
そのため、CPCを含有する口腔用組成物であって、口腔内適用時に唾液によるCPCの殺菌力低下が抑制された口腔用組成物が、求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討を重ねた結果、特定のニコチン酸化合物をCPCとともに含有する口腔用組成物であれば、唾液によるCPCの殺菌力低下が抑制されることを見いだし、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
塩化セチルピリジニウム、並びに
ニコチン酸及び2-ヒドロキシニコチン酸からなる群より選択される少なくとも1種のニコチン酸化合物
を含有する、口腔用組成物。
項2.
塩化セチルピリジニウム1質量部に対し、ニコチン酸化合物を0.5~50質量部含有する、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
塩化セチルピリジニウムを0.01~0.3質量%含有する、項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0008】
唾液によるCPCの殺菌力低下が抑制された、CPC含有口腔用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0010】
本開示に包含される口腔用組成物はCPC及び特定のニコチン酸化合物を含有する。 以下、本開示に包含される当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」ということがある。
【0011】
本開示の口腔用組成物に含有される特定のニコチン酸化合物は、ニコチン酸及び2-ヒドロキシニコチン酸である。これらは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0012】
本開示の口腔用組成物においては、好ましくは、CPC1質量部に対して、前記特定のニコチン酸化合物が0.5~50質量部程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49質量部であってもよい。例えば、当該範囲は1~40質量部であってもよい。
【0013】
本開示の口腔用組成物においては、好ましくは、CPCは0.01~0.3質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、又は0.29質量%であってもよい。例えば、当該範囲は0.02~0.09質量%であってもよい。
【0014】
本開示の口腔用組成物においては、好ましくは、前記特定のニコチン酸化合物は、0.01~10質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、又は9.9質量%であってもよい。例えば、当該範囲は0.02~1.9質量%であってもよい。
【0015】
また、本開示の口腔用組成物は、pHが4~9であることが好ましい。当該pH範囲の上限又は下限は、例えば、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、又は8.9であってもよい。例えば当該pH範囲は5~8であってもよい。
【0016】
本開示の口腔用組成物は、公知の方法又は公知の方法から容易に想到する方法により製造することができる。また、本開示の口腔用組成物は、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品としても用いることができる。また、本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定するものではないが、例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、塗布剤等の形態(剤形)にすることができる。
【0017】
本開示の口腔用組成物には、CPC及び前記特定のニコチン酸化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0018】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、アルキル基の炭素数が8~16のアルキルグルコシド等が例示される。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が例示される。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が例示される。また、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸アミドベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びN-ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl-ピロリドンカルボン酸塩等も好ましく例示される。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して例えば0.1~5質量%である。
【0019】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、スクラロース、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤を配合し得る。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらは、組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0020】
また、粘結剤として、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ジェランガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリンなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
さらに、湿潤剤として、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0022】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を単独又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0023】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を単独又は2種以上組み合わせて配合してもよい。
【0024】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが例えば4~9、好ましくは5~8の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%が例示される。
【0025】
薬効成分として、塩化セチルピリジニウム以外の殺菌剤を配合してもよい。例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ヒノキチオール等が挙げられる。またさらに、殺菌剤以外の薬効成分を配合することもできる。例えば、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、フッ化ナトリウム等を配合してもよい。薬効成分は単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0026】
また、基剤として、例えば、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を単独または2種以上を組み合わせて添加することも可能である。
【0027】
なお、以上の任意成分の記載は例示であり、用い得る任意成分を限定するものではない。
【0028】
本開示の口腔用組成物には、前記特定のニコチン酸化合物が含有されるため、唾液によるCPCの殺菌力低下が抑制されている。このため、殺菌に要する時間が前記特定のニコチン酸化合物が含有されない場合に比べ、短くてすむ。よって、口腔ケアに要する時間を短縮することが可能になる。また、CPCの殺菌力は、口腔用組成物においては例えば歯周病菌の殺菌のために好ましく用いられる。このため、特に限定はされないが、本開示の口腔用組成物は、例えば口腔内歯周病菌保有対象(特に歯周病患者)のためにも好ましく用いることができる。またさらに、唾液によるCPCの殺菌力低下は、個人差がある(例えば、唾液によるCPCの殺菌力低下が著しい人もいれば、唾液によるCPCの殺菌力低下が穏やかな人もいる)ことから、特に限定はされないが、本開示の口腔用組成物は、例えば唾液によるCPCの殺菌力低下抑制が求められる対象(より具体的には、例えば、唾液によりCPCの殺菌力が低下する対象、歯周病など菌による口腔内疾患を患っている対象等)のためにも好ましく用いることができる。また、対象としては、ヒトのみならず、非ヒト哺乳類も包含される。例えば、ペットや家畜も包含され得る。より具体的には、例えばイヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット等も包含され得る。
【0029】
本開示は、CPCと前記特定のニコチン酸化合物とを組み合わせて用いることを含む、唾液によるCPC殺菌力低下抑制方法、並びに、CPCと前記特定のニコチン酸化合物とを組成物に含有させることを含む、口腔用組成物製造方法も包含する。
【0030】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0031】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0032】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0033】
唾液採取
各被験者(被験者A~D)に界面活性剤及び殺菌剤を含まない歯磨剤で歯磨き(ブラッシング)を行ってもらい、唾液(無刺激唾液)を10mLずつ採取した。なお、採取した唾液は冷蔵保存し、使用直前に、23Gの注射針および10mlシリンジ(ともにテルモ社製)を用いて吸引と吐出を5回繰り返してから、使用に供した。
【0034】
被験薬剤溶液の調製
塩化セチルピリジニウムを0.05%(w/v)、及び、各ニコチン酸化合物を0.1、0.25、若しくは0.5%(w/v)を含有する被験薬剤溶液を調製した。なお、当該被験薬剤溶液の調製にあたっては、ニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、及びニコチン酸アミドを含有する溶液については、水溶液を調製して、これを用いた。2-ヒドロキシニコチン酸及び2-クロロニコチン酸を含有する溶液については、終濃度5%(v/v)のDMSO溶液を調製して、これを水で10倍希釈して用いた。
【0035】
なお、いずれの被験薬剤溶液も濃度は%(w/v)で示すが、これは%(w/w)の値とほとんど変わらない(%(w/w)の方が僅かに大きくなる程度である)ため、%(w/w)(すなわち、質量%)と解釈しても差し支えない。より具体的には、例えば、JIS K 9702、JIS Z 8804より算出した5%(v/v)のDMSO溶液の密度は、0.994g/cmであるため、上記塩化セチルピリジニウム0.05%(w/v)は、0.05030181%(w/w)、上記各ニコチン酸化合物0.25%(w/v)は0.25150905質量%、0.5%(w/v)は0.50301810質量%と計算できる。
【0036】
殺菌試験
96ウェルプレートA列に被験薬剤溶液を200μLずつ分注し、B~H列にCPC不活化及び口腔内細菌培養のためのTSB培地を200μLずつ分注した。
【0037】
なお、TSB培地はCPCを不活化することができるため、当該培地の添加タイミングを調整することにより殺菌時間を調整することができる。TSB培地は、Tripticase Soy Broth(TSB)30g、Yeast Extract 1g、Hemin/menadion solution 1g、レシチン 0.7g、およびTween80 5gを蒸留水に溶解させ、1Lにメスアップしたものをオートクレーブ滅菌して調製したものを用いた。Hemin/menadion solutionは、Hemin 0.25gを1N NaOH 5mlに溶解し、蒸留水20mlを加えたのち、menadion(VitaminK3) 0.025gを99%エタノール 25mlに溶解したものを混合して調製したものである。
【0038】
前記A列に唾液を20μL添加し、ピペッティングした後、各時間ごとにA列からB~H列へ20μLずつ添加した。より具体的には、唾液20μlをA列に添加しピペッティングにて混合した時点を計測開始点とし、当該A列の溶液20μlを、30秒経過後にはB列に、60秒経過後にはC列に、90秒経過後にはD列に、120秒経過後にはE列に、180秒経過後にはF列に、240秒経過後にはG列に、300秒経過後にはH列に、それぞれ添加しピペッティングにて混合した。その後、48時間嫌気培養を行い、菌の生育の有無を目視で確認し、生死の判定を行った。より具体的には、目視にて培地が混濁している場合は細菌が増殖し、溶液中の細菌が完全に殺菌されていないと判定した。
【0039】
30秒、60秒、90秒、120秒、180秒、240秒、300秒後にA列から採取した各溶液について判定を行い、初めて培地が混濁せず、溶液中の細菌が殺菌された時間を殺菌時間とした。
【0040】
表1に、塩化セチルピリジニウム0.05%(w/v)単独での各被験者の唾液に対する殺菌時間を100%とした場合の、各ニコチン酸化合物を添加した際の殺菌時間を相対値で示す。例えば、被験者A唾液に塩化セチルピリジニウム0.05%(w/v)を混合したときの殺菌時間が120秒であり、被験者A唾液に塩化セチルピリジニウム0.05%(w/v)及びニコチン酸0.5%(w/v)を含有する被験薬剤溶液を混合したときの殺菌時間が60秒であったとすると、この場合の殺菌時間相対値は50%である。なお、殺菌時間相対値が空欄のところは、検討していないことを示す。
【0041】
【表1】
【0042】
以下に処方例を示す。なお、以下の処方例を示す表に記載される各成分の数値は質量%を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】