(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】吸音パネル及び吸音構造
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
E01F8/00
(21)【出願番号】P 2020095541
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-04-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】野口 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】石井 啓稔
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋志
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240581(JP,A)
【文献】特開2001-193022(JP,A)
【文献】特開昭51-008722(JP,A)
【文献】特開2007-040066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する正面板を含む筐体と、
前記正面板により形成される中空部に設けられた吸音材とを備え、
前記正面板の全体面積に占める前記開口部の合算面積の割合を示す開口面積比率が85%以上であり、
前記正面板は、
前記開口部を有するパンチングメタル、ルーバー及びガラリの群から選ばれる少なくとも1種であ
り、
前記正面板の前記開口部を有する面の法線方向に見た場合において、前記正面板の少なくとも前記開口部に対応する前記中空部に前記吸音材が設けられている、吸音パネル。
【請求項2】
前記正面板における前記開口部以外の非開口部は、前記開口部を横切る方向における連続する長さが、前記開口部を横切る方向の前記正面板の全長に対して5%以下である、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記吸音材が前記正面板により形成される前記中空部を充填している、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項4】
前記正面板の開口部が複数である、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項5】
前記吸音材は、グラスウールである、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項6】
前記吸音材の厚みは、25mm以上150mm以下である、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項7】
前記吸音材は、乾式材料及び湿式材料を含む、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の吸音パネルと、
前記吸音パネルが設置される複数の立設された支柱とを備え、
前記吸音パネルの正面板のうち前記支柱によって覆い隠されない全体面積に占める、前記支柱によって覆い隠されない前記開口部の合算面積の割合を示す開口面積比率が90%以上である、吸音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を吸収して低減する吸音パネル及び吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などの走行に伴う騒音を低減させるために、高速道路又は鉄道の沿線、歩道と車道との間、及び中央分離帯等の防音壁に、多数の開口部を有する前面部と、遮音性を有する背面部とにより形成された中空内に吸音材が内装されてなる防音装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような防音装置は、高架橋及び橋梁の桁裏面に取付けられて桁裏面の騒音を低減させるための桁裏面吸音板として用いられ、さらに掘割道路等の防音設備として用いられている。
図5は特許文献1に示された従来の防音装置の斜視図であり、特許文献1には、「ほぼ全面に穿設された多数のパンチング孔によって開口部11が形成された前面部1と、遮音性を有する背面部2とによって形成された中空内に、吸音材3が内装され、そして前記前面部1の開口率は、15~50%となされ、且つ前面部1と吸音材3との間に奥行き寸法5~50mmの前面空気層4が形成され、背面部2と吸音材3との間に奥行き寸法5~50mmの背面空気層5が形成されているものである。」と開示されている(特許文献1段落[0026])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防音装置を用いることによって、騒音は低減されていたが、近年鉄道車両の軽量化、高速化が進んでおり、結果として車両から発生する騒音の音圧レベルが増加する傾向にあり、鉄道および道路沿線の環境保全の観点からより高い騒音低減効果をもつ吸音パネル及び吸音構造が求められている。
機械的強度が低い一般的な吸音材を吸音パネルとして利用するために金属などでできた筐体に内蔵すると、非吸音材である筐体表面、とりわけ開口部を有する正面板の非開口部分において音の反射が発生することによって高周波領域の吸音性能が低下する問題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、正面板で発生する高周波領域の吸音性能の低下を低減することが可能な吸音パネル及び吸音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]開口部を有する正面板と、前記正面板により形成される中空部に設けられた吸音材とを備え、前記正面板の全体面積に占める前記開口部の合算面積の割合を示す開口面積比率が85%以上である、吸音パネル。
[2]前記正面板における前記開口部以外の非開口部は、前記開口部を横切る方向における連続する長さが、前記開口部を横切る方向の前記正面板の全長に対して5%以下である、[1]に記載の吸音パネル。
[3][1]又は[2]に記載の吸音パネルと、前記吸音パネルが設置される壁面とを備える、吸音構造。
[4]前記壁面は、吸音材を備えていない、[3]に記載の吸音構造。
[5][1]又は[2]に記載の吸音パネルと、前記吸音パネルが設置される複数の立設された支柱とを備え、前記吸音パネルの正面板のうち前記支柱によって覆い隠されない全体面積に占める、前記支柱によって覆い隠されない前記開口部の合算面積の割合を示す開口面積比率が90%以上である、吸音構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正面板で発生する高周波領域の吸音性能の低下を低減する吸音パネル及び吸音構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る吸音パネルを示す模式的図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る吸音パネルを示す模式的図である。
【
図3】実施例及び比較例の吸音パネルにおける吸音性能試験方法の結果を示すグラフ(その1)である。
【
図4】実施例及び比較例の吸音パネルにおける吸音性能試験方法の結果を示すグラフ(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
【0010】
[吸音パネル]
本発明の実施形態に係る吸音パネル1は、
図1に示すように、開口部11
1,11
2,・・・,11
n(nは自然数)を有する正面板10と、正面板10により形成される中空部に設けられた吸音材20とを備え、正面板10の全体面積Aに占める開口部11
1,11
2,・・・,11
nの合算面積a
1+a
2+・・・+a
nの割合を示す開口面積比率Rが85%以上である。
開口面積比率Rは、以下の式(1)により算出される。
R(%)=(a
1+a
2+・・・+a
n)/A×100 ・・・(1)
【0011】
開口面積比率Rは、85%未満であると、2,000~4,000Hzの高周波領域における騒音を低減させる性能が低下する。低周波領域における騒音は、開口面積比率Rが85%未満であっても、波長が長いために音が回折し、開口している部分から吸音材20へ侵入することができる。しかし、高周波領域における騒音は、波長が短く、直進性が高いため、開口面積比率Rが85%未満であると、開口している部分から吸音材20へ侵入することが困難となり、吸音性能が低下する。上記観点から、開口面積比率Rは、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、94%以上であることがさらに好ましい。
開口面積比率Rの上限は特に制限されないが、吸音材20を吸音パネル1の中空部に保持する観点から、100%未満であることが好ましい。
【0012】
正面板10における開口部以外の非開口部12a,12bは、開口部を横切る方向における連続する長さが、開口部を横切る方向の正面板10の全長に対して5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。具体的には、開口部a
1,a
2を横切る方向が、
図1におけるX軸方向である場合、非開口部12aのX軸方向に連続する長さが上記上限値以下であればよい。また、開口部a
1,a
2を横切る方向が、
図1におけるY軸方向である場合、非開口部12bのY軸方向に連続する長さが上記上限値以下であればよい。開口部a
1,a
2を横切る方向における連続する長さが上記上限値以下であることで、開口部a
1,a
2の偏りがなくなり、開口している部分から吸音材20へ侵入する音の偏りがなくなるので、吸音材20が効率よく音を吸音することができ、吸音効果を向上させることができる。
【0013】
正面板10は吸音材20を収納する筐体の一部であり、正面板10としては、開口部111,112,・・・,11nを有するものであれば特に限定されず、例えば、パンチングメタル、ルーバー及びガラリ等の板材を採用することができる。
正面板10の材質としては、剛性及び耐久性を有する材質を採用することができ、例えば、金属、樹脂及び木製合板等が挙げられる。正面板10の材質として、耐久性の面からは、金属が好ましく、中でも、高耐食性めっき鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板が好ましい。高耐食性めっき鋼板として、具体的には、スーパーダイマ鋼板(登録商標)及びZAM(登録商標)鋼板等が挙げられる正面板10は、耐食性を向上させるための塗装等を施してもよい。
【0014】
正面板10の厚みは、0.4mm以上2.3mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.6mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上1.6mm以下であることがさらに好ましい。正面板10の厚みが上記範囲内であることで、剛性及び耐久性を有する吸音パネル1とすることができる。
【0015】
開口部111,112,・・・,11nは、単数であってもよく、複数であってもよい。開口部が単数である場合のnは1であり、開口部が複数である場合のnは開口部の個数を示す。
開口部111,112,・・・,11nの形状は、角孔、丸孔及び長孔等のいずれであってもよい。
【0016】
吸音材20は、正面板10により形成される中空部を充填する。つまり、吸音材20によって、吸音パネル1の内部が充填されることになり、吸音パネル1と車輌等の音源との間で発生する多重反射を吸音することで防音効果が大きくなる。
【0017】
吸音材20の材質は、特に限定されるものではないが、例えばグラスウール、ロックウール、合成繊維及び金属繊維等の乾式材料、並びに、ウレタンフォーム及びパテ等の湿式材料が挙げられる。吸音材20の材質は、乾式材料又は湿式材料を単体で用いてもよく、乾式材料及び湿式材料を組み合わせて用いてもよい。乾式材料のうち、グラスウール等の水分を含むと変形するものは、撥水性のものを用いることが好ましい。
【0018】
吸音材20の乾式材料の密度は、24kg/m3以上64kg/m3以下であることが好ましく、24kg/m3以上48kg/m3以下であることがより好ましく、24kg/m3以上32kg/m3以下であることがさらに好ましい。吸音材20の乾式材料の密度が上記範囲内であることで、吸音効果と吸音パネル1の軽量化とを両立させることができる。
【0019】
吸音材20の湿式材料の密度は、20kg/m3以上200kg/m3以下であることが好ましく、25kg/m3以上100kg/m3以下であることがより好ましく、30kg/m3以上80kg/m3以下であることがさらに好ましい。吸音材20の湿式材料の密度が上記範囲内であることで、吸音効果と吸音パネル1の軽量化とを両立させることができる。
【0020】
吸音材20の厚みは、25mm以上150mm以下であることが好ましく、50mm以上125mm以下であることがより好ましく、50mm以上100mm以下であることがさらに好ましい。吸音材20の厚みが上記範囲内であることで、吸音効果を向上させることができる。
【0021】
吸音材20は、撥水性又は防水性を有するクロス及びフィルムのいずれかによりなる保護材で覆われていることが好ましい。吸音材20が、撥水性又は防水性を有するクロス及びフィルムのいずれかによりなる保護材で覆われていることで、吸音材20に撥水性又は防水性を付与することができ、水分を含むことによる変形を防止し、耐久性を向上させることができる。また、保護材で吸音材20を覆うことで、吸音材20の飛散を防止することができ、吸音材20の密度及び厚み等を制御することが用意となる。保護材としては、例えば、ガラスクロス、ポリフッ化ビニールフイルム及び四フッ化フロロエチレンフイルム等が挙げられる。保護材の厚みは、吸音材20を覆って保持することが可能であれば特に限定されないが、0.01~1mm程度であることが好ましい。
なお、ガラスクロスは、特に限定されるものではないが、性能と飛散防止性能とのバランスから目の密度及び厚みがEP12D相当からEP18B相当(JIS R 3414:2012)の範囲にあるものであることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る吸音パネルによれば、筐体に収納された吸音材が本来保有する吸音性能に近い吸音性能を発揮可能となり、特に、高周波領域における騒音を十分に低減することができる。
【0023】
[第1の吸音構造]
本発明の実施形態に係る第1の吸音構造は、吸音パネル1と、吸音パネル1が設置される壁面とを備える。
【0024】
吸音パネル1の正面板10と壁面との組み合わせにより形成される中空部には、上述の吸音材20を配置することができる。
【0025】
吸音パネル1は、高架橋、橋梁、掘割道路及び構造物の壁面に設置されて吸音構造を構成する。吸音パネル1を設置する壁面は、上述した吸音材20を備えていない鉄板及びコンクリート壁等の既存のものを採用することができる。また、吸音パネル1を設置する壁面は、騒音の透過損失が要求される場合は、要求される透過損失を満足させるために、上述した吸音材20を備えるものを使用することもできる。
【0026】
[第2の吸音構造]
本発明の実施形態に係る第2の吸音構造は、
図2に示すように、吸音パネル1と、吸音パネル1が設置される複数の立設された支柱30とを備え、吸音パネル1の正面板20のうち支柱30によって覆い隠されない全体面積A’に占める、支柱30によって覆い隠されない開口部11
1,11
2,・・・,11
nの合算面積a
1’+a
2’+・・・+a
n’の割合を示す開口面積比率が90%以上である。
開口面積比率R’は、以下の式(2)により算出される。
R’(%)=(a
1’+a
2’+・・・+a
n’)/A’×100 ・・・(2)
【0027】
第2の吸音構造の吸音パネル1は、立設された支柱30間に設けられることによって、支柱30によって覆い隠される非開口部分が増加することになり、支柱30を除いた部分の吸音パネル1に要求される開口面積比率R’は第2の実施形態における吸音パネル1より大きくなる。
以上より、開口面積比率R’は、支柱のサイズに依存するが、90%未満であると、2,000~4,000Hzの高周波領域における騒音を低減させる性能が低下する。低周波領域における騒音は、開口面積比率R’が90%未満であっても、波長が長いために音が回折し、開口している部分から吸音材20へ侵入することができる。しかし、高周波領域における騒音は、波長が短く、直進性が高いため、開口面積比率R’が90%未満であると、開口している部分から吸音材20へ侵入することが困難となり、吸音性能が低下する。上記観点から、開口面積比率R’は、92%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、94%以上であることがさらに好ましい。開口面積比率R’の上限は特に制限されないが、吸音材20を吸音パネル1の中空部に保持する観点から、100%未満であることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における吸音パネルの評価方法は以下のとおりである。
【0029】
<評価基準>
平成7年度建設技術評価制度(国土交通省)公募課題「騒音低減効果の大きい吸音板の開発」で規定された吸音性能試験方法(斜入射吸音率法)で得られる平均斜入射吸音率に関する評価基準を表1に示す。
【0030】
【0031】
[実施例1-1]
(吸音パネル)
開口面積比率が100%、厚み1.2mm、高さ方向の寸法480mm、幅方向の寸法1,605mmの正面板(ZAM(登録商標)鋼板、日鉄日新製鋼社製)を20枚用意した。
正面板と壁面(床面)とにより形成される中空部を吸音材(グラスウール、マグ・イゾベール株式会社製)で充填した。吸音材の密度は32kg/m
3とし、吸音材の厚みは100mmとした。
実施例1-1の吸音パネルについて、斜入射吸音率法で得られる平均斜入射吸音率の結果を表2及び
図3のグラフに示す。
【0032】
[実施例1-2]
実施例1-1において、開口面積比率を95%に変更した以外は実施例1-1と同様に吸音パネルを得た。
実施例1-2の吸音パネルについて、斜入射吸音率法で得られる平均斜入射吸音率の結果を表2及び
図3のグラフに示す。
【0033】
[実施例1-3]
実施例1-1において、開口面積比率を90%に変更した以外は実施例1-1と同様に吸音パネルを得た。
実施例1-3の吸音パネルについて、斜入射吸音率法で得られる平均斜入射吸音率の結果を表2及び
図3のグラフに示す。
【0034】
[実施例1-4]
実施例1-1において、開口面積比率を85%に変更した以外は実施例1-1と同様に吸音パネルを得た。
実施例1-4の吸音パネルについて、斜入射吸音率法で得られる平均斜入射吸音率の結果を表2及び
図3のグラフに示す。
【0035】
[比較例1-1]
実施例1-1において、開口面積比率を80%に変更した以外は実施例1-1と同様に吸音パネルを得た。
比較例1-1の吸音パネルについて、斜入射吸音率法で得られる平均斜入射吸音率の結果を表2及び
図3のグラフに示す。
【0036】
[比較例1-2]
実施例1-1において、開口面積比率を75%に変更した以外は実施例1-1と同様に吸音パネルを得た。
比較例1-2の吸音パネルについて、斜入射吸音率法で得られる平均斜入射吸音率の結果を表2及び
図3のグラフに示す。
【0037】
【0038】
表1及び表2より、開口面積比率Rが85%未満であると、高架道路の裏面に設置される吸音パネルに要求される平均斜入射吸音率0.90以上を満たさなくなった。また、
図3のグラフより、開口面積比率は、85%未満であると、2,000~4,000Hzの高周波領域における騒音を低減させる性能が低下した。
【0039】
[実施例2-1]
(吸音パネル)
厚み1.2mm、高さ方向の寸法485mm、幅方向の寸法1,765mmの正面板(ZAM(登録商標)、日鉄日新製鋼社製)を14枚用意し、縦に7行、横に2列として並べた。正面板における開口部以外の非開口部は、開口部を横切る方向における連続する長さが、開口部を横切る方向の正面板の全長である485mmに対して5%である24.3mmを繰り返して配置し、開口面積比率を85%とした。
正面板と背面部となる床面とにより形成される中空部を吸音材(グラスウール、マグ・イゾベール株式会社製)で充填した。吸音材の密度は32kg/m
3とし、吸音材の厚みは50mmとした。
実施例2-1の吸音パネルについて、残響室法吸音率法で得られる吸音率の結果を
図4のグラフに示す。また、実施例2-1の吸音パネルについて、400~4,000[Hz]における平均吸音率を表3に示す。
【0040】
[比較例2-1]
実施例2-1において、正面板における開口部以外の非開口部は、開口部を横切る方向における連続する長さが、開口部を横切る方向の正面板の全長である485mmに対して10%である48.5mmに変更し、開口面積比率を85%で同じとした以外は実施例2-1と同様に吸音パネルを得た。
比較例2-1の吸音パネルについて、残響室法吸音率法で得られる吸音率の結果を
図4のグラフに示す。また、比較例2-1の吸音パネルについて、400~4,000[Hz]における平均吸音率を表3に示す。
【0041】
[比較例2-2]
実施例2-1において、正面板における開口部以外の非開口部は、開口部を横切る方向における連続する長さが、開口部を横切る方向の正面板の全長である485mmに対して15%である72.8mmに変更し、開口面積比率を85%で同じとした以外は実施例2-1と同様に吸音パネルを得た。
比較例2-2の吸音パネルについて、残響室法吸音率法で得られる吸音率の結果を
図4のグラフに示す。また、比較例2-2の吸音パネルについて、400~4,000[Hz]における平均吸音率を表3に示す。
【0042】
図4のグラフより、開口面積比率が同等の場合でも、実施例2-1の開口部の偏りがない場合の方が、比較例2-1、比較例2-2の開口部の偏りがある場合より吸音性能が高くなった。
【0043】
【0044】
表3より、開口面積比率Rが同様の場合でも、非開口部の連続する長さが増加すると、吸音率が低下することが分かる。また、表3より、非開口部の連続する長さが5%未満であると、400~4,000Hzにおける平均吸音率が1.0を超える非常に高い吸音効果を発揮できる。
【符号の説明】
【0045】
1 吸音パネル
10 正面板
11 開口部
12 非開口部
20 吸音材
30 支柱