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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240722BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/02
A61K8/37
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020108370
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006239
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 克哉
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057189(JP,A)
【文献】特開平11-106328(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180316(WO,A1)
【文献】特開2005-015359(JP,A)
【文献】特開2019-142825(JP,A)
【文献】Facial Gel Cream, Sesderma, 2020年1月, Mintel GNPD [online], [検索日 2024.03.06], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:7187789
【文献】Gel Cream, Neutrogena, 2016年2月, Mintel GNPD [online],[検索日 2024.03.06], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:3781259
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)の配合比(A)/(B)が0.1~10であることを特徴とする皮膚化粧料。
(A)25℃における動粘度が100mm/s以下であることを特徴とするジメチコン
0.1~3.0重量%
(B)一般式I:
-COOR (I)
を有する、25℃で液体またはペースト状であることを特徴とするエステル油 0.1~2.5重量%
(式中、Rは炭素数8~20の飽和した直鎖または分岐炭化水素鎖をあらわし、Rは炭素数8~20の飽和した分岐炭化水素鎖をあらわす)
(C)ジメチコンコポリオールクロスポリマー
【請求項2】
揮発性のシクロメチコンを含まない、水性ジェル状である請求項1に記載の皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚化粧料に関し、詳細には、べたつかずにさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感であり、肌にうるおいを与え、うるおいの閉塞効果に優れる皮膚化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌を健やかに保つためには、化粧水や乳液、クリームといった皮膚化粧料を使用して、水分や油分を適切に肌に与えることが必要である。これらにおいて、化粧水は肌に水分や保湿成分を、乳液やクリームは肌に油分を与えるために、それぞれ使用されることが多い。しかしながら、肌を健やかに保つためにはこれらの皮膚化粧料を組み合わせて、重ねて使用する必要があり、忙しい近年の消費者にとっては負担であることも多かった。
【0003】
そのような背景から、水性ジェル状皮膚化粧料を『オールインワンゲル』と称して使用することが、近年では多く実施されている。ここで、水性ジェル状皮膚化粧料は、油分を0%~5%程度しか含まず、透明~白濁した外観の、水性成分の多い皮膚化粧料であり、ゲル化剤といった成分によって増粘されてコクのあるジェル状になっているもののことを指す。このような水性ジェル状皮膚化粧料は、水分が豊富に含まれているため肌に水分や保湿成分を与えつつ、一部含まれている油分を肌に与える効果もあるため、これ1つで十分なスキンケア効果を有すると期待される。また、化粧水に不足している水分の肌への閉塞効果に関して、皮膚化粧料中に含まれる油分によって補うことができ、かつ油分が少ないことによって乳液やクリームの持つ油のべたつきやぬるつき、テカリを生じることがない。
【0004】
このような水性ジェル状皮膚化粧料に、シクロメチコン、あるいは揮発性のメチルシクロポリシロキサンと呼ばれる環状のシリコーン油を用いることが一般的である。揮発性のメチルシクロポリシロキサンを用いた皮膚化粧料は、使用後のべたつきのなさ、なめらかさ、さっぱり感、みずみずしさといった使用感に優れており、また肌への毒性や刺激性も低い。また、シクロメチコンは他成分との相溶性が高く、経時でも安定な皮膚化粧料を形成しやすい。揮発性のメチルシクロポリシロキサンを用いた皮膚化粧料の例として、揮発性シリコーン油と水を組み合わせた、水の含有量が少ない化粧料(例えば特許文献1を参照)や、メチルシロキサン網状重合体及び/又は架橋型メチルポリシロキサン、環状シリコーン、融点100~120℃のポリエチレンワックス、常温で固形のトリグリセリドを組み合わせた化粧料(例えば特許文献2を参照)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、殺菌消毒剤、環状シリコーン、低級アルコールを含有するジェル状の殺菌消毒剤組成物(例えば特許文献3を参照)、トリメチルシロキシケイ酸とアクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10~30)共重合体とシクロメチコンを含有したジェル状の皮膚外用剤(例えば特許文献4を参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開1999―302151号公報
【文献】特開2002-241215号
【文献】特開2006―083119号
【文献】特開2007-008961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術は、皮膚化粧料として一定の効果を有していると思われるが、シクロメチコンの揮発性が高いため、体温付近でも蒸気として拡散してしまい、皮膚化粧料に求められる肌の水分の閉塞効果は不十分であった。また、シクロメチコンの有する環境毒性(難分解性、高蓄積性)から、EUにおいては規制の対象となっている。日本でもシクロメチコンが揮発し、ストーブなどの点火部分に付着してしまうことによって、着火不良が起こることが報告されており、化粧品業界では化粧料への使用を忌避する傾向にある。そのため、シクロメチコンを用いず、べたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感であり、かつ肌にうるおいを与え、うるおいの閉塞効果に優れる皮膚化粧料が、強く求められていた。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、べたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感であり、かつ肌にうるおいを与え、うるおいの閉塞効果に優れる皮膚化粧料を提供することである。また、好ましくは揮発性のシクロメチコンを含まない水性ジェル状皮膚化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、25℃における粘度が100 mm/s以下であるジメチコンと、25℃で液体またはペースト状のエステル油とを、一定の比率と量で組み合わせることによって、べたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感となり、かつ肌にうるおいを与え、うるおいの閉塞効果に優れた皮膚化粧料となることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
さらに、ジメチコンコポリオールクロスポリマー又は(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーから選択される1種又は2種以上を組み合わせることによって、より一層べたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感であり、かつ肌にうるおいを与え、うるおいの閉塞効果に優れる皮膚化粧料となることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
第一の発明は、下記成分(A)、(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の配合比(A)/(B)が0.1~10であることを特徴とする皮膚化粧料である。
(A)25℃における粘度が100 mm/s以下であることを特徴とするジメチコン
0.1~3.0重量%
(B)一般式I:
-COOR(I)
を有する、25℃で液体またはペースト状であることを特徴とするエステル油 0.1~2.5重量%
(式中、Rは炭素数8~20の飽和した直鎖または分岐炭化水素鎖をあらわし、Rは炭素数8~20の飽和した分岐炭化水素鎖をあらわす)
【0011】
第二の発明は、下記成分(C)を含有する、本願第一の発明に記載の皮膚化粧料である。
(C)ジメチコンコポリオールクロスポリマー又は(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーから選択される、いずれか1種または2種以上
【0012】
第三の発明は、揮発性のシクロメチコンを含まない、水性ジェル状である請求項1~2に記載の皮膚化粧料である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の皮膚化粧料は、べたつきがなくさっぱりとなめらかでずみずしい使用感であり、かつ肌にうるおいを与え、うるおいの閉塞効果に優れる皮膚化粧料を提供することができる。さらには、揮発性のシクロメチコンを用いずに、上記の皮膚化粧料を提供すること
ができ、特に水性ジェル状皮膚化粧料に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について詳述する。本発明の皮膚化粧料は、以下に詳述する成分(A)25℃における粘度が100 mm/s以下であることを特徴とするジメチコンおよび成分(B)25℃で液体またはペースト状であることを特徴とするエステル油を含有することにより、本発明の効果を発揮することができる。
【0015】
<成分(A)>
本発明の皮膚化粧料で用いられる成分(A)はジメチコンである。本発明の成分(A)は、揮発性のシクロメチコンと同様に「シリコーン油」と定義される油剤であり、摩擦係数が小さいため肌に塗布された際にべたつきがなくさっぱりとした使用感を与えやすい傾向がある。しかしながら、それ単独ではシクロメチコンとは感触や他成分との相溶性が異なるため、単純に置き換えられないことが知られていた。
【0016】
本発明の成分(A)のジメチコンは、その中でも、25℃における粘度が100 mm/s以下であることを必要とする。ここで、本明細書における粘度とは、動粘度のことを指し、例えばB型粘度計LV DV1M(英弘精機製)を用いて測定することができる。本発明において粘度を測定する際に使用するローターや回転数、測定時間に特別の限定はないが、ローターNo.61を用い、12rpmないし30rpmの回転数で、30秒ないし60秒の条件にて測定されるのが好ましい。
【0017】
25℃における粘度が100 mm/sを超えると、皮膚化粧料のべたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい特徴的な使用感を生じることができない。
【0018】
本発明の成分(A)は市販されている化粧品原料として入手可能であり、例えばシリコンKF-96A(1.5CS)、シリコンKF-96A(6CS)、シリコンKF-96A(100CS)(いずれも信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。本発明の皮膚化粧料には、成分(A)のジメチコンを1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明の皮膚化粧料に用いる成分(A)の含有量は、本発明の効果を発揮する限りにおいて特に限定されるものではないが、皮膚化粧料組成物全体に対して、好ましくは全組成中0.1~3.0重量%(以後、特別な記載のない限り重量%を表す)である。0.1%以上3.0%以下であれば、十分なべたつきのなさ、さっぱり感が得られる。また、3.0%以下であれば本発明の皮膚化粧料を水性ジェルに適用した際に、皮膚化粧料の外観が半透明~白濁したみずみずしいものとなり、白色の乳液やクリームと外観上の差別化をすることができる。
【0020】
<成分(B)>
本発明の皮膚化粧料に用いる成分(B)はエステル油である。本発明の成分(B)は、皮膚化粧料のべたつきがなくさっぱりとした使用感を保ちながら、うるおいの閉塞効果に優れ、なめらかな使用感とするために必須である。
【0021】
また、本発明の成分(B)のエステル油は、25℃で液体またはペースト状であることを必要とする。25℃で液体またはペースト状のエステル油であることによって、皮膚化粧料のべたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感となり、また皮膚化粧料の経時での安定性にも優れる。
【0022】
このような必須要件を満たすエステル油として、
一般式I:
-COOR(I)
を有する(式中、Rは炭素数8~20の飽和した直鎖または分岐炭化水素鎖をあらわし、Rは炭素数8~20の飽和した分岐炭化水素鎖をあらわす)、エステル油が特に好ましく挙げられる。このような一般式であらわされるエステル油の例として、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリルなどが挙げられるが、さらに好ましくはイソノナン酸イソノニルまたはイソステアリン酸イソステアリルである。
【0023】
本発明の成分(B)は、市販されている化粧品原料として入手可能なものを用いたり、植物の種子などから圧搾された植物油の成分として使用したりすることができる。本発明の皮膚化粧料には、成分(B)のエステル油を1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の皮膚化粧料に用いる成分(B)の含有量は、本発明の効果を発揮する限りにおいて特に限定されるものではないが、皮膚化粧料組成物全体に対して、好ましくは全組成中0.1~2.5%である。0.1%以上であれば、十分ななめらかさや肌へのうるおいの閉塞性が得られる。また、2.5%以下であれば充分なべたつきのなさ、さっぱり感が得られるだけでなく、本発明の皮膚化粧料を水性ジェル状のものに適用した際、皮膚化粧料の外観が半透明~白濁したみずみずしいものとなり、白色の乳液やクリームと外観上の差別化をすることができる。
【0025】
本発明の成分(A)および成分(B)の含有比は、本発明の効果を発揮する限りにおいて特に限定されるものではないが、好ましくは(A)/(B)が0.1~10である。(A)/(B)が0.1以上であることで、成分(B)の有するなめらかさとうるおいの閉塞効果を発揮しながらも、成分(A)が皮膚化粧料にもたらすべたつきがなくさっぱりとした使用感を十分に発揮することができるため、みずみずしい使用感を相乗的に高めることができる。また、(A)/(B)が10以下であることで、成分(B)が過剰に含まれた際に感じられうるべたつきを生じないため、みずみずしい使用感を相乗的に高めることができる。
【0026】
<成分C>
本発明の皮膚化粧料には、本発明の効果を発揮する限りにおいて、さらに効果を高めるために、成分(C)ジメチコンコポリオールクロスポリマー又は(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーから選択される、いずれか1種または2種以上を含むことが好ましい。さらには、本発明の効果を水性ジェル状皮膚化粧料に適用することによって、水性ジェル状皮膚化粧料に求められる使用感や肌への効果を有することができ、さらには揮発性のシクロメチコンを用いずとも、シクロメチコンを用いた時と同程度からそれ以上の、べたつきがなくさっぱりとなめらかでみずみずしい使用感と、肌へのうるおい効果および肌へのうるおいの閉塞効果を発揮することができる。以下、順に説明する。
【0027】
成分(C)は一般にはシリコーンエラストマーと呼ばれ、架橋により分子量が大きくなったシリコーン高分子である。本発明の成分(C)は本発明の皮膚化粧料の経時での油の分離を妨げるなど安定性を高める効果だけでなく、本発明の皮膚化粧料を肌に使用したのちに、肌表面に残留し、微弱なうるおいの閉塞効果と、本発明の構成成分によって生じうるべたつきやぬるつきを生じさせず、さらさらとみずみずしい塗布時の使用感をもたらしていると推測されるが、本発明の成分(C)を用いることにより本発明の皮膚化粧料が相乗的に効果を発揮する要因は、これらに記載したものに限定されるものではない。本発明の成分(C)は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の成分(C)は、そのままの粉末~ペースト状態や、事前に成分(A)などのシリコーン
油などに分散・膨潤された状態で化粧品原料として市販されており、そのいずれも用いることができる。
【0028】
本発明の皮膚化粧料に用いる成分(C)の含有量は、本発明の効果を発揮する限りにおいて特に限定されるものではないが、皮膚化粧料全体に対して、好ましくは0.05~0.5%である。0.05%以上では十分なべたつきがなくさっぱりとした使用感となり、0.5%以下では使用後の肌表面の残留量が多いことによってポロポロと崩れ落ちたり肌上で白浮きするといったことが起こりづらい。
【0029】
<その他の成分>
本発明の皮膚化粧料は、上述した成分のほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、油剤、高分子化合物、増粘剤、粉体(色素、樹脂、顔料)、防腐剤、香料、保湿剤、ミネラル塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、パール化剤、中和剤、pH調整剤、植物エキス、酵素、ビタミン類、アミノ酸類などの成分を適宜配合することができる。
【0030】
また、本発明の皮膚化粧料には、本発明の目的を損なわない範囲で生理活性成分を適宜配合することができる。生理活性成分とは、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質であり、例えば美白剤、抗炎症剤、老化防止剤、紫外線防御剤、収れん剤、抗酸化剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤などが挙げられる。特に、本発明の皮膚化粧料には、アスコルビン酸およびその誘導体、グリチルリチン酸およびその誘導体、イソプロピルメチルフェノール、トラネキサム酸およびその誘導体、メントール、メントキシプロパンジオールから選択される、2種以上を含むことが好ましい。これらから選択される2種以上を本発明の皮膚化粧料に含むことによって、通常の皮膚化粧料にこれらの生理活性成分を配合した場合と比べ、肌への美容効果を相乗的に高めることができる。本発明の皮膚化粧料における成分(A)および成分(B)が有するうるおいの閉塞作用などの作用によって、この相乗作用が生じていると推測されるが、本発明における成分(A)および成分(B)を皮膚化粧料に用いる要因はこれに限定されるものではない。
【0031】
本発明の皮膚化粧料は、常法に従って製造することができる。また、本発明の皮膚化粧料としては、基礎化粧料、メイクアップ化粧料、ボディ化粧料などが挙げられる。本発明の皮膚化粧料は一般の化粧料に限定されるものではなく、医薬部外品、指定医薬部外品、外用医薬品などを包含するものである。本発明の皮膚化粧料の特徴は上記のように限定されるものではないが、特に一般に「オールインワンゲル」と呼ばれる水性ジェル状の皮膚化粧料に適用するのが好ましい。
【実施例
【0032】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した試験法、評価法を説明する。
【0033】
(べたつきのなさ、さっぱり感評価試験)
専門パネル5名により、本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を使用直後での肌のべたつきのなさ、さっぱり感について下記の評点のつけ方にて官能評価を実施した。評価基準は、5名のべたつきのなさ、さっぱり感に関する評点を合計した値の平均値を用いて、以下の通りに分類した。
<べたつきのなさ、さっぱり感に関する評点と内容>
5点・・・べたつきを感じない。さっぱりとしている。
4点・・・べたつきをわずかに感じるが、さっぱりとしている。
3点・・・べたつきをやや感じる。
2点・・・べたつきを感じる。さっぱりしているとは感じない。
1点・・・べたつきを強く感じる。さっぱりしているとは感じない。
(べたつきのなさの評価基準)
◎:極めて良好 (5名の平均点が4点以上であった)
○:良好 (5名の平均点が3点以上、4点未満であった)
△:やや悪い (5名の平均点が2点以上、3点未満であった)
×:悪い (5名の平均点が2点未満であった)
【0034】
(肌のなめらかさ評価試験)
専門パネル5名により、本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を使用直後での肌のなめらかさについて下記の評点のつけ方にて官能評価を実施した。評価基準は5名の肌のなめらかさに関する評点を合計した値の平均値を用いて、以下の通りに分類した。
<肌のなめらかさに関する評点と内容>
5点・・・肌の手触りおよび外観が著しくなめらかになったように感じた。
4点・・・肌の手触りおよび外観がややなめらかになったように感じた。
3点・・・肌の手触りおよび外観がわずかになめらかになったように感じた。
2点・・・肌の手触りおよび外観は塗布前とほぼ変わらないように感じた。
1点・・・肌の手触りおよび外観が荒く、ガサガサになったように感じた。
(肌のなめらかさの評価基準)
◎:極めて良好 (5名の平均点が4点以上であった)
○:良好 (5名の平均点が3点以上、4点未満であった)
△:やや悪い (5名の平均点が2点以上、3点未満であった)
×:悪い (5名の平均点が2点未満であった)
【0035】
(肌のみずみずしさ評価試験)
専門パネル5名により、本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を使用した後の肌のみずみずしさについて下記の評点のつけ方にて官能評価を実施した。ここで、「みずみずしさ」とは皮膚化粧料の感触を評価する際に一般的に用いられている言葉ではあるが、具体的には「みずみずしい皮膚化粧料の使用感触」と「使用後の肌を触ったり目視した際のみずみずしい仕上がり」とが混合していると考えられる。本発明では「使用直後での肌の感触や外観によるみずみずしさ」について評価し、その方法を「皮膚化粧料を使用した後、手で肌を触った際にぬるつきがなくしっとりとしており、油膜感がなくうるおいを感じられ、かつ外観が自然な光沢があり明るく、健康そうに見える」と定義した。肌のみずみずしさに関する評価は、以下に示す評価基準にもとづいて、5名の評点を合計した値の平均値を用いて、以下の通りに分類した。
<肌のみずみずしさに関する評点と内容>
5点・・・肌が非常にみずみずしい。
4点・・・肌がややみずみずしい。
3点・・・どちらともいえない。
2点・・・肌はややみずみずしくない。
1点・・・肌がみずみずしくない。
(みずみずしさの評価基準)
◎:極めて良好 (5名の平均点が4点以上であった)
○:良好 (5名の平均点が3点以上、4点未満であった)
△:やや悪い (5名の平均点が2点以上、3点未満であった)
×:悪い (5名の平均点が2点未満であった)
【0036】
(肌のうるおい効果試験)
評価パネル5名について、左右いずれかの前腕部をぬるま湯で洗浄したのち、それぞれ
温度25℃、相対湿度50%の環境下にて20分間馴化させた。その後、本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を適量塗布し、ふたたび温度25℃、相対湿度50%の環境下にて20分間馴化後、角質水分量(コンダクタンス値)をCorneometer(MPA580、Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。うるおい効果の評価は、以下の計算式よりうるおい効果(%)を算出して5名の平均値を求め、下記判断基準に基づいて行った。
<うるおい効果に関する評点>
うるおい効果(%)=(塗布後の肌の角質水分量/塗布前の角質水分量)×100
(うるおい効果の評価基準)
◎:うるおい効果(%)が150%以上であった。
○:うるおい効果(%)が125%以上150%未満であった。
△:うるおい効果(%)が100%以上125%未満であった。
×:うるおい効果(%)が100%未満であった。
【0037】
(水分蒸散量測定によるうるおい閉塞効果試験)
評価パネル5名について、左右いずれかの前腕部をぬるま湯で洗浄したのち、それぞれ温度25℃、相対湿度50%の環境下にて20分間馴化させた。その後、本発明の実施例および比較例の皮膚化粧料を適量塗布し、ふたたび温度25℃、相対湿度50%の環境下にて20分間馴化後、経皮水分蒸散量(TEWL値)をTewameter(MPA580、Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。うるおい閉塞効果の評価は、以下の計算式よりうるおい閉塞効果(%)を算出して5名の平均値を求め、下記判断基準に基づいて行った。
<うるおい閉塞効果に関する評点>
うるおい閉塞効果(%)={1-(塗布後の肌のTEWL値/塗布前の肌のTEWL値)}×100
(うるおい閉塞効果の評価基準)
◎:うるおい閉塞効果(%)が20%以上であった。
○:うるおい閉塞効果(%)が10%以上20%未満であった。
△:うるおい閉塞効果(%)が0%以上10%未満であった。
×:うるおい閉塞効果(%)が0%未満であった。
【0038】
<実施例1~20および比較例1~8>
表1に示す実施例1~20および比較例1~8の各処方であらわされる皮膚化粧料を常法により調製し、各試験法により評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から明らかなように、本発明の成分を用いた実施例の水性ジェル状皮膚化粧料はいずれも優れた性能を有していた。一方、必須成分のいずれかを欠いた比較例では、べたつきのなさ、肌のなめらかさ、肌のみずみずしさ、うるおい効果、うるおい閉塞効果のいずれかの項目で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0041】
以下、本発明の水性ジェル状皮膚化粧料のその他の処方例を挙げる。なお、これらの処方例の皮膚化粧料についても、上記のべたつきのなさ、肌のなめらかさ、肌のみずみずしさ、うるおい効果、うるおい閉塞効果について各項目を検討したところ、いずれにおいても優れた特性を有しており、良好であった。
【0042】
処方例1 (ジェル状化粧水)
(1)ジメチコン(粘度6mm/s) 1.0%
(2)ジメチコン(粘度10mm/s) 0.5%
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 0.5%
(4)ステアリン酸 0.5%
(5)ベヘニルアルコール 0.4%
(6)モノステアリン酸グリセリル 0.5%
(7)コレステロール 0.2%
(8)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 0.2%
(9)ミツロウ 0.1%
(10)ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.1%
(11)ジプロピレングリコール 2.0%
(12)1,3-ブチレングリコール 3.0%
(13)グリセリン 2.0%
(14)EDTA-2Na 0.01%
(15)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー0.1%
(16)水酸化カリウム 0.05%
(17)クエン酸 0.02%
(18)エタノール 4.0%
(19)メチルパラベン 0.1%
(20)フェノキシエタノール 0.1%
(21)ヒアルロン酸Na 0.05%
(22)水溶性コラーゲン 0.02%
(23)加水分解コラーゲン 0.03%
(24)コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.001%(25)純水 残部
【0043】
(製法)(1)~(9)を約80℃に加熱、撹拌をして均一溶解させる(A液)。(10)~(15)および(19)~(25)を約80℃に加熱、撹拌をして均一溶解させる(B液)。A液にB液を加えてホモミキサーにて分散する。ついで冷却を行い、40℃で(16)~(18)を添加し、さらにホモミキサーにて均一溶解させる。再び35℃まで冷却して、ジェル状化粧水を調製した。
【0044】
処方例2 (オールインワンゲル)
(1)ジメチコン(粘度6mm/s) 2.0%
(2)イソステアリン酸イソステアリル 0.5%
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 0.1%
(4)PEG-60水添ヒマシ油 0.5%
(5)ポリソルベート80 0.1%
(6)ポリソルベート20 0.2%
(7)ポリソルベート65 0.1%
(8)ジグリセリン 0.2%
(9)PEG-75 1.0%
(10)PEG-150 0.3%
(11)PEG-20 0.5%
(12)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 0.5%
(13)DPG 5.0%
(14)EDTA-2Na 0.01%
(15)カルボキシビニルポリマー 0.1%
(16)キサンタンガム 0.2%
(17)クエン酸ナトリウム 0.08%
(18)ペンチレングリコール 2.0%
(19)メチルパラベン 0.1%
(20)フェノキシエタノール 0.3%
(21)トラネキサム酸 2.0%
(22)グリチルリチン酸ジカリウム 0.2%
(23)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.005%(24)ハトムギ種子エキス 0.02%
(25)コメヌカエキス 0.02%
(26)ホップエキス 0.02%
(27)シャクヤク根エキス 0.02%
(28)ユズ果実エキス 0.02%
(29)酵母エキス 0.001%(30)純水 残部
【0045】
(製法)(1)~(7)を(13)に均一溶解させる(A液)。(8)~(12)および(14)~(30)を均一溶解させる(B液)。B液に液を加えてホモミキサーにて分散して、オールインワンゲルを調製した。
【0046】
処方例3(美白・ニキビケアジェル)
(1)ジメチコン(粘度6mm/s) 0.6%
(2)ジメチコン(粘度1.5mm/s) 0.1%
(3)イソステアリン酸イソステアリル 0.6%
(4)ジメチコンコポリオールクロスポリマー 0.5%
(5)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.1%
(6)PEG-60水添ヒマシ油 0.2%
(7)ポリソルベート20 0.2%
(8)シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 1.0%
(9)グリセリン 0.5%
(10)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 0.5%
(11)ジプロピレングリコール 5.0%
(12)ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム液 0.1%
(13)デヒドロジクレオソール 0.001%(14)EDTA-2Na 0.01%
(15)カルボキシビニルポリマー 1.0%
(16)キサンタンガム 0.1%
(17)水酸化カリウム 0.8%
(18)エタノール 2.0%
(19)メチルパラベン 0.1%
(20)フェノキシエタノール 0.3%
(21)L-アスコルビン酸 2-グルコシド 2.5%
(22)グリチルリチン酸ジカリウム 0.2%
(23)イソプロピルメチルフェノール 0.1%
(24)ヒアルロン酸Na 0.2%
(25)加水分解コラーゲン 0.1%
(26)レモンエキス 0.02%
(27)チャエキス 0.02%
(28)エイジツ果実エキス 0.02%
(29)香料 0.05%
(30)純水 残部
【0047】
(製法)(1)~(8)を(11)に均一溶解させる(A液)。(9)、(10)、(12)および(14)~(17)を(30)の一部に均一溶解させる(B液)。(13)、(19)、(20)、(23)および(29)を(18)に均一溶解させる(C液)。(21)、(22)および(24)~(28)を(30)の残部に均一溶解させる(D液)。B液にA液、C液、D液を順に加え、ホモミキサーにて均一分散して、オールインワンゲルを調製した。
【0048】
処方例4(フェイス&ボディジェル)
(1)ジメチコン(粘度6mm/s) 2.0%
(2)イソノナン酸イソノニル 0.5%
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 0.5%
(4)ジメチコンコポリオールクロスポリマー 0.05%
(5)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.2%
(6)水添レシチン 0.2%
(7)コレステロール 0.07%
(8)1,3-ブチレングリコール 9.0%
(9)グリセリン 7.5%
(10)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.3%
(11)カルボキシビニルポリマー 0.1%
(12)トリエタノールアミン 0.5%
(13)メチルパラベン 0.05%
(14)メントール 0.002%(15)メントキシプロパンジオール 0.001%(16)パルミチン酸レチノール 0.001%(17)トコフェロール 0.01%
(18)セラミド3 0.01%
(19)加水分解エラスチン 0.01%
(20)純水 残部
【0049】
(製法)(1)~(8)および(16)~(18)を80℃まで加熱し、均一溶解させる(A液)。(9)~(11)、(13)~(15)、(19)および(20)を80℃まで加熱し、均一溶解させる(B液)。B液にA液を加え、ホモミキサーにて均一分散したのち、40℃まで冷却する。その後(12)を加え、さらにホモミキサーにて均一分散したのち、32℃まで冷却し、フェイス&ボディジェルを調製した。
【0050】
処方例5(ジェル含浸シートマスク)
(1)ジメチコン(粘度6mm/s) 0.3%
(2)ジメチコン(粘度1.5mm/s) 0.1%
(3)ジメチコン(粘度20mm/s) 0.1%
(4)イソステアリン酸イソステアリル 0.2%
(5)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.1%
(6)PEG-60水添ヒマシ油 0.4%
(7)ポリソルベート20 0.2%
(8)ジプロピレングリコール 7.0%
(9)グリセリン 3.5%
(10)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 0.1%
(11)1,3-ブチレングリコール 5.0%
(12)ソルビトール 1.0%
(13)マルチトール 0.5%
(14)PEG-75 1.0%
(15)カルボキシビニルポリマー 0.3%
(16)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.1%
(17)キサンタンガム 0.1%
(18)水酸化カリウム 0.08%
(19)メチルパラベン 0.1%
(20)フェノキシエタノール 0.5%
(21)ポリアクリル酸 0.02%
(22)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.02%
(23)シクロヘキシルグリセリン 0.2%
(24)プロパンジオール 0.3%
(25)ペンチレングリコール 0.05%
(26)塩化ナトリウム 0.001%(27)ブドウ葉エキス 0.2%
(28)サッカロミセス/コメ発酵液 0.2%
(29)コメヌカエキス 0.01%
(30)純水 残部
【0051】
(製法)(1)~(8)を均一分散させる(A液)。(9)~(30)を均一溶解させる(B液)。B液にA液を加え、プロペラにて均一分散してシートマスクのジェル美容液を調製した。アルミパウチ内にコットン性の不織布を折りたたんで封入し、ジェル美容液を30mL加えて均一に含浸させ、ジェル含浸シートマスクを調製した。