(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240722BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240722BHJP
H10B 69/00 20230101ALI20240722BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20240722BHJP
H10B 41/27 20230101ALI20240722BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240722BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20240722BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L21/308 E
H01L21/306 E
H10B69/00
H10B43/27
H10B41/27
H01L29/78 371
(21)【出願番号】P 2020115817
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0094672
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ホソン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンウン
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538692(JP,A)
【文献】特開2000-58500(JP,A)
【文献】特開2017-4610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0010398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/306-21/3063
H01L 21/465-21/467
H01L 27/10-27/105
H10B 10/00-53/50
H10B 63/00-69/00
H10B 99/00
H01L 21/336
H01L 29/788-29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸水溶液;及び、
下記化1で表される化合物;を含む、
シリコン窒化膜エッチング溶液:
[化1]
上記化1において,
X
1及びX
2は、それぞれ独立して水素、C
1-C
10のアルキル基、C
1-C
10のアルキルアルコール基、C
1-C
10のアルキルアミン基、C
3-C
10のシクロアルキル基、及びC
6-C
30のアリール基から選択され、
Y
1及びY
2は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、C
1-C
10のアルキル基、及びC
6-C
30のアリール基から選択され、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン基、スルホニル基、及びチオエテール基から選択される。
【請求項2】
前記R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して水素、アミン基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基から選択されることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項3】
上記化1で表される化合物は、下記化2で表される化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液:
[化2]
上記化2において、
前記R
2及びR
3は、それぞれ独立して水素、アミン基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基から選択され、
X
1、X
2、Y
1及びY
2は、上記化1に定義したとおりである。
【請求項4】
上記化1で表される化合物は、下記化3で表される化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液:
[化3]
上記化3において、
X
1、X
2、Y
1及びY
2は、上記化1に定義したとおりである。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物は、100~500,000ppmで含まれることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項6】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つのフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項7】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有するフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項8】
請求項1によるシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、シリコン窒化膜エッチング溶液の保管安全性に優れるシリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いて行われる半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜をエッチングする方法としては、様々があるが、乾式エッチング法と湿式エッチング法が主に使用される方法である。
【0003】
乾式エッチング法は、通常に気体を用いたエッチング法であって、湿式エッチング法より等方性に優れるという長所があるものの、湿式エッチング法より生産性が劣り過ぎ、高価の方式であるという点から、湿式エッチング法が広く利用されつつある。
【0004】
一般に、湿式エッチング法としては、エッチング溶液としてリン酸を用いる方法がよく知られている。このとき、シリコン窒化膜をエッチングするために、純粋なリン酸のみ用いる場合は、素子が微細化するにつれて、シリコン窒化膜のみならず、シリコン酸化膜までエッチングされることによって、各種の不良及びパターンの異常が発生する等の問題が生じ得るため、シリコン酸化膜に保護膜を形成して、シリコン酸化膜のエッチング速度をさらに下げる必要がある。
【0005】
シリコン酸化膜に保護膜を形成するためには、エッチング溶液にシリコン添加剤を入れる方法が知られている。このとき、シリコン添加剤は、水または酸と反応してシロキサンを生成し、生成されたシロキサンは、シリコン系パーティクルとして析出して基板上に具現される素子の不良を引き起こし得る。これによって、シリコン添加剤の保管安全性を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シラン化合物系シリコン添加剤を用いることによって、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対する選択比を増加させるとともに、水または酸の条件で、保管安全性の向上したシリコン窒化膜エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一側面によれば、シリコン窒化膜エッチング溶液は、リン酸水溶液及び下記の化1で表される化合物を含む。
【0009】
【0010】
上記化1において,
X1及びX2は、それぞれ独立して水素、C1-C10のアルキル基、C1-C10のアルキルアルコール基、C1-C10のアルキルアミン基、C3-C10のシクロアルキル基、及びC6-C30のアリール基から選択され、
Y1及びY2は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、C1-C10のアルキル基、及びC6-C30のアリール基から選択され、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン基、スルホニル基、及びチオエテール基から選択される。
【0011】
また、本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物を用いることによって、エッチング条件で、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させるとともに、水または酸の条件で保管安全性が向上することができる。
【0013】
このとき、本願に用いられる上記化1で表される化合物は、シリコン原子に電子供与基(EDG、electron
donating group)の役割を行うリガンドを導入することによって、水または酸との反応性が低下して、シリコン系パーティクルとしての成長を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を概略的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0016】
以下では、本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液について詳説する。
【0017】
本発明の一側面によれば、リン酸水溶液及び下記化1で表される化合物を含むシリコン窒化膜エッチング溶液が提供される。
【0018】
【0019】
上記化1において,
X1及びX2は、それぞれ独立して水素、C1-C10のアルキル基、C1-C10のアルキルアルコール基、C1-C10のアルキルアミン基、C3-C10のシクロアルキル基、及びC6-C30のアリール基から選択され、
Y1及びY2は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、C1-C10のアルキル基、及びC6-C30のアリール基から選択され、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン基、スルホニル基、及びチオエテール基から選択される。
【0020】
本願におけるCa-Cb作用基は、a~b個の炭素原子を有する作用基を意味する。例えば、Ca-Cbアルキルは、a~b個の炭素原子を有する、直鎖アルキル及び分鎖アルキル等を含む飽和脂肪族基を意味する。直鎖または分鎖アルキルは、これの主鎖に10個以下(例えば、C1-C10の直鎖、C3-C10の分鎖)、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。
【0021】
具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペント-1-イル、ペント-2-イル、ペント-3-イル、3-メチルブト-1-イル、3-メチルブト-2-イル、2-メチルブト-2-イル、2,2,2-トリメチルエト-1-イル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オキチルであってもよい。
【0022】
本願におけるシクロアルキル(cycloalkyl)は、他に定義されない限り、それぞれアルキルの環状構造に理解されるだろう。
【0023】
シクロアルキルの非制限的な例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、及びシクロヘプチル等がある。
【0024】
また、本願におけるチオール(thiol)、スルホン(sulfone)、スルホニル(sulfonyl)、及びチオエーテル(thioether)は、有機硫黄化合物を意味し、具体的には、チオールは-SH、スルホンは-SO2-、チオエーテルは-S-置換基を意味する。
【0025】
本願におけるアリールは、他に定義されない限り、単一環又は互いに接合又は共有結合で連結された多重環(好ましくは、1~4個の環)を含む不飽和芳香族性環を意味する。アリールの非制限的な例としては、フェニル、ビフェニル、o-テルフェニル(terphenyl)、m-テルフェニル、p-テルフェニル、1-ナプチル、2-ナプチル、1-アントリル(anthryl)、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントレニル(phenanthrenyl)、2-フェナントレニル、3-フェナントレニル、4-フェナントレニル、9-フェナントレニル、1-ピレニル、2-ピレニル、及び4-ピレニル等がある。
【0026】
また、本願におけるアルコキシは、-O-(アルキル)基と-O-(非置換されたシクロアルキル)基を両方とも意味するものであって、一つ以上のエーテル基及び1~10個の炭素原子である。具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を含むものの、これに限定されるものではない。
【0027】
本願におけるハロゲンは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を意味する。また、アルキルアミンは、アミンで置換されたアルキルを意味し、アルキルアルコルは、アルコールで置換されたアルキルを意味する。
【0028】
通常、リン酸水溶液からシリコン基板を保護するために、シリコン窒化膜エッチング溶液にシリコン添加剤が含まれていてもよい。ただし、シリコン添加剤として主に用いられるシラン化合物は、基本的にリン酸を含むエッチング溶液に対する溶解度が低い。エッチング溶液に対するシラン化合物の溶解度を増加させるために、シリコン原子に親水性作用基が結合した形態のシラン化合物が用いられている。このように、親水性作用基がシリコン原子に結合した形態のシラン化合物をシリコン添加剤として用いる場合は、エッチング溶液に対するシラン化合物の適正溶解度を確保することができるが、保管性に関する問題が生じるようになる。
【0029】
シリコン添加剤としてシラン化合物を用いることによって、エッチング溶液内に高くなったシリコン濃度は、シリコン系パーティクルのソースとして作用することができる。シリコン系パーティクルが成長及び析出する場合は、保管安全性が低下して、シリコン基板の不良を引き起こす最大の原因に作用するようになり、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を低下させることができる。
【0030】
例えば、シリコン原子に結合した親水性作用基は、水または酸と反応してヒドロキシ基に置換され、シリコン-ヒドロキシ基(-Si-OH)を形成することができる。シリコン-ヒドロキシ基は、重合によってシリコン原子と酸素原子とが交互に結合して、ランダムな鎖構造を形成したシロキサン(-Si-O-Si-)基を生成するようになる。シロキサン基を含むシラン化合物は、結果としてシロキサン基が繰り返して重合したシリコン系パーティクルとして成長及び析出して、保管安全性が低下する問題が生じるようになる。また、シリコン系パーティクルは、シリコン基板に残留して、基板上に具現される素子の不良を引き起こすか、エッチング工程に用いられる装備に残留して、装備の故障を引き起こし得る。また、シリコンパーティクルの生成を防ぐために、メタノールを用いることができるが、メタノールは、人体に有害な物質であって、メタノールが蒸発した後、シリコンパーティクルがさらに生成される問題が生じるようになる。
【0031】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対する選択比を増加させるとともに、シリコン系パーティクルとしての成長を抑制して、保管安全性を向上させるために、下記化1で表される化合物を含む。
【0032】
【0033】
上記化1において,
X1及びX2は、それぞれ独立して水素、C1-C10のアルキル基、C1-C10のアルキルアルコール基、C1-C10のアルキルアミン基、C3-C10のシクロアルキル基、及びC6-C30のアリール基から選択され、
Y1及びY2は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、C1-C10のアルキル基、及びC6-C30のアリール基から選択され、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アミン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン基、スルホニル基、及びチオエテール基から選択される。
【0034】
ここで、本発明の上記化1で表される化合物は、シラン化合物であって、エッチング条件で、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることができる。上記化1で表される化合物は、エッチング条件で、シリコン基板と結合して保護膜を形成することで、リン酸水溶液からシリコン基板を保護してシリコン窒化膜のエッチング速度を増加させ、シリコン酸化膜のエッチング速度を下げることができる。
【0035】
また、本発明の上記化1で表される化合物は、シリコン原子にリガンド(ligand)を導入することで、エッチング溶液内の水または酸との反応性が低下して、シリコン系パーティクルとしての成長を抑制することができる。すなわち、本発明によるエッチング溶液は、化1で表される化合物を含み、エッチング条件で、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させるとともに、保管安全性が向上することができる。
【0036】
上記化1において、シリコン原子に結合したリガンドは、親水性作用基を示す。シリコン原子に結合した親水性作用基は、リン酸水溶液のpH7未満の条件下に、ヒドロキシ基(-OH)で置換可能な作用基を意味する。上記化1で表される化合物は、親水性作用基が結合したシリコン原子を含むことで、リン酸水溶液を含むエッチング溶液内への十分な溶解度を確保することが可能である。また、上記化1で表される化合物は、親水性作用基が結合したシリコン原子を含むことで、シリコン基板、特に、シリコン酸化膜との強い親水性相互作用を形成することが可能である。強い親水性相互作用を介してシリコン酸化膜の表面に付着した化1で表される化合物は、シリコン酸化膜のリン酸水溶液からエッチングされることを防ぐ役割を行うことができる。
【0037】
また、上記化1において、シリコン原子に結合したリガンドは、電子供与基(EDG、electron
donating group)の役割を行うことができる。前記電子供与基は、シリコン原子の周りに電子密度(electron density)を高めることのできる作用基を意味する。上記化1で表される化合物は、電子供与基(EDG、electron
donating group)の役割を行うリガンドを導入することで、シリコン系パーティクルとしての成長を抑制することができる。具体的には、リン酸水溶液内の酸素原子は、強い求核剤(Nucleophile)であるところ、シリコン原子との反応性が非常に良い。強い求核剤である酸素原子と反応したシリコン原子は、シリコン-ヒドロキシ基(-Si-OH)を形成し、シリコン-ヒドロキシ基は、重合によってシリコン原子と酸素原子とが交互に結合して、ランダムな鎖構造を形成したシロキサン(-Si-O-Si-)基、及びパーティクル状のシロキサン基を生成するようになる。シロキサン基を含むシラン化合物は、結果としてシロキサン基が繰り返して重合したシリコン系パーティクルとして成長されて、保管安全性が低下する問題が生じるようになる。
【0038】
ここで、本発明の上記化1で表される化合物は、シリコン原子に化合物は、電子供与基(EDG、electron
donating group)の役割を行うリガンドを導入して、シリコン原子の周りに電子密度(electron density)を高めることができる。シリコン原子の周りに電子密度が高くなるにつれて、リン酸水溶液内の酸素原子は、シリコン原子との反応性が低下して、シリコン-ヒドロキシ基の結合形成を抑制することができる。結果として、シリコン-ヒドロキシ基の重合によって形成されるシロキサン基の形成が抑制され、シロキサン基が繰り返して重合したシリコン系パーティクルとしての成長を抑制することができる。これに対して、電子求引基(EWG、electron
withdrawing group)の役割を行う化合物が導入される場合は、リガンドが容易に分解されて、シロキサン基がより容易に形成され、シリコン系パーティクルとしての成長が加速化する問題が生じ得る。
【0039】
一例として、上記化1において、前記R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素、アミン基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基から選択されてもよい。
【0040】
シリコン原子に結合したリガンドは、強い電子供与基であるほど、シリコン原子の周りに電子密度をさらに高めることができる。よって、上記化1におけるR1、R2、R3及びR4は、強い電子供与基であることがさらに好ましいし、一例として、前記アミン基(-NH2)、ヒドロキシ基(-OH)、アルコキシ基(-OR)、チオール基(-SH)、及びチオエテール基(-S-)は、非共有電子対を有している強い電子供与基である。すなわち、上記化1におけるR1、R2、R3及びR4は、アミン基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基のような強い電子供与基である場合は、シリコン原子の周りに電子密度をさらに高めることができ、これによって、リン酸水溶液内の酸素原子とシリコン原子との反応性をさらに低下させることができる。結果として、シリコン-ヒドロキシ基の重合によって形成されるシロキサン基の形成が抑制され、シロキサン基が繰り返して重合したシリコン系パーティクルとしての成長をさらに効果よく抑制することができる。
【0041】
また、一例として、化1で表される化合物は、下記化2で表される化合物であってもよい。
【0042】
【0043】
上記化2において、
前記R2及びR3は、それぞれ独立して水素、アミン基、ヒドロキシ基、及びアルコキシ基から選択され、
X1、X2、Y1及びY2は、上記化1に定義したとおりである。
【0044】
ここで、上記化2で表される化合物は、R1及びR2がアミン(-NH2)基を示す。化2で表される化合物のR1及びR2がアミン(-NH2)基を示すことで、非常に強い電子供与効果により、シリコン原子の周りに電子密度をさらに高めることができる。また、上記化2で表される化合物は、シリコン中心原子と結合した酸素原子基準のパラ(para)位置であるR1及びR2がアミン基を示すことで、前記アミン基の非共有電子対が共鳴効果によってシリコン原子の周りに電子密度をさらに高めることができる。
【0045】
具体的には、上記化2で表される化合物のシリコン中心原子と結合した酸素原子基準のパラ位置に置換されたアミン基の共鳴効果は、下記化4で示される。
【0046】
【0047】
上記化4で表される化合物の共鳴構造を考察すれば、アミン基がシリコン中心原子と結合した酸素原子基準のパラ位置に置換されることによって、前記アミン基の非共有電子対が共鳴効果によってシリコン原子の周りに電子密度をさらに高めることができる。
【0048】
結果として、化2で表される化合物は、R1及びR2がアミン(-NH2)基で置換されることによって、非常に強い電子供与効果及び共鳴効果を同時に示すことができ、これによって、リン酸水溶液内の酸素原子とシリコン原子との反応性をさらに効果よく抑制することができる。
【0049】
また、一例として、化1で表される化合物は、下記化3で表される化合物であってもよい。
【0050】
【0051】
上記化3において、
X1、X2、Y1及びY2は、上記化1に定義したとおりである。
【0052】
ここで、上記化3で表される化合物は、R1、R2、R3及びR4がアミン基を示す。化3で表される化合物のR1、R2、R3及びR4は、いずれもアミン(-NH2)基で置換されることによって、シリコン中心原子と結合した酸素原子基準のメタ(meta)及びパラ(para)に置換されたアミン基は、非常に強い電子供与効果を示し、シリコン中心原子と結合した酸素原子基準のパラ(para)に置換されたアミン基は、共鳴効果を示して、シリコン原子の周りに電子密度をさらに高めることができる。
【0053】
上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に100~500,000ppmで存在することが好ましい。また、上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に1,000~50,000ppmで存在することがさらに好ましい。ここで、添加剤の含量は、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に溶解された化1で表される化合物の量であって、ppmの単位として示したものである。
【0054】
例えば、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が5,000ppmで存在するということは、シリコン窒化膜エッチング溶液の中に溶解された化1で表される化合物が5,000ppmであることを意味する。
【0055】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が100ppm未満で存在する場合は、エッチング条件下で、シリコン化合物の量が十分でなく、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比の増加効果が微弱であり得る。
【0056】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、化1で表される化合物が500,000ppmを超える場合は、シリコン窒化膜エッチング溶液内のシリコン添加剤の飽和濃度の増加により、多量のシリコン系パーティクルが生成される問題が生じ得る。
【0057】
シリコン基板は、少なくともシリコン酸化膜(SiOx)を含むことが好ましく、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(SixNy、SIxOyNz)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0058】
シリコン酸化膜は、用途及び素材の種類等に応じて、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density
Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate
Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate
Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate
Glass)膜、LP-TEOS(Low
Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra
Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium
Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization
Layer)膜、ALD(Atomic Layer
Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)又はO3-TEOS(O3-Tetra Ethyl
Ortho Silicate)等に言及し得る。
【0059】
一実施例において、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液は、60~90重量部で含まれることが好ましい。
【0060】
シリコン基板エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液の含量が60重量部未満である場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度が低下して、シリコン窒化膜が十分にエッチングされないか、シリコン窒化膜のエッチング工程の効率性が低下するおそれがある。
【0061】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液100重量部に対して、リン酸水溶液の含量が90重量部を超える場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度の増加量に比べて、シリコン酸化膜のエッチング速度の増加量が大きくて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が低下し得るし、シリコン酸化膜のエッチングによるシリコン基板の不良が引き起こされうる。
【0062】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、化1で表される化合物を含むことによって低下するシリコン窒化膜のエッチング速度を補償するとともに、全体的なエッチング工程の効率を向上させるためにフッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0063】
本願におけるフッ素含有化合物は、フッ素イオンを解離させる任意の形態のあらゆる化合物を指す。
【0064】
一実施例において、フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つである。
【0065】
また、他の実施例において、フッ素含有化合物は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。
【0066】
例えば、フッ素含有化合物は、アルキルアンモニウムとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。ここで、アルキルアンモニウムは、少なくとも一つのアルキル基を有するアンモニウムであって、最大4つのアルキル基を有し得る。アルキル基に対する定義は、前述したとおりである。
【0067】
さらに他の例において、フッ素含有化合物は、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモルホリニウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される有機系カチオンと、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロボラート、及びフルオロアルキル-フルオロボラートから選択されるフッ素系アニオンとがイオン結合した形態のイオン性液体であってもよい。
【0068】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、フッ素含有化合物として一般に用いられるフッ化水素、またはフッ化アンモニウムに比べて、イオン性液体状に提供されるフッ素含有化合物は、高い沸点及び分解温度を有するところ、高温で行われるエッチング工程中に分解されることによって、エッチング溶液の組成を変化させるおそれが少ないという利点がある。
【0069】
本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法が提供される。
【0070】
本製造方法によれば、少なくともシリコン窒化膜(SIxNy)を含むシリコン基板上で、上述したエッチング溶液を用いてシリコン窒化膜に対する選択的エッチング工程を行うことによって半導体素子を製造することが可能である。
【0071】
半導体素子の製造に用いられるシリコン基板は、シリコン窒化膜(SIxNy)を含むか、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜(SixNy、SIxOyNz)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0072】
本発明による半導体素子の製造方法は、NAND素子の製造工程に適用されてもよい。より具体的には、NANDを形成するための積層構造体のうち、シリコン酸化膜に対する損失なく、シリコン窒化膜の選択的な除去が要求される工程ステップにおいて、上述したエッチング溶液を用いることで行うことができる。
【0073】
一例として、
図1は、本発明によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を説明するための概略的な断面図である。
【0074】
図1を参照すれば、シリコン基板10上にシリコン窒化膜11とシリコン酸化膜12とが交互に積層した積層構造体20上にマスクパターン層30を形成した後、異方性エッチング工程を介してトレンチ50が形成される。
【0075】
また、
図1を参照すれば、積層構造体20内に形成されたトレンチ50領域を介して本発明によるエッチング溶液が投入され、これによって、シリコン窒化膜11がエッチングされて、シリコン酸化膜12とマスクパターン層30のみ残るようになる。
【0076】
すなわち、本発明は、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上したエッチング溶液を用いることで、積層構造体20内のシリコン酸化膜12のエッチングを最小化して、十分な時間の間にシリコン窒化膜11を完全かつ選択的に除去することができる。その後、シリコン窒化膜11の除去された領域にゲート電極を形成するステップが含まれた後続工程を介して半導体素子を製造することができる。
【0077】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎないし、これによって本発明が制限されてはならない。
【0078】
実施例
エッチング溶液の製造
実施例1~4では、化1で表される化合物をリン酸水溶液に添加して、初期濃度が1,000ppmになるようにエッチング溶液を製造した。
【0079】
実施例1~4によるエッチング溶液組成物は、表1のとおりである。
【0080】
【0081】
比較例1~3によるエッチング溶液組成物は、表2のとおりである。
【0082】
【0083】
実験例
シリコン系パーティクルの平均直径測定
常温(25℃)で時間経過によって実施例1~4及び比較例1~3のエッチング溶液内に存在するシリコン系パーティクルの平均直径を測定した。シリコン系パーティクルの平均直径は、PSA(particle
size analyzer)を用いて測定した。測定済みシリコン系パーティクルの平均直径は、下記表3のとおりである。
【0084】
【0085】
上記表3に示したように、実施例1~4のエッチング溶液は、時間が経過してもシリコン系パーティクルが存在しないか、その直径が0.1μm以下であって、微細であることを確認することができる。
【0086】
特に、上記表3に示したように、化1で表される化合物における置換基が強い電子供与基(EDG、electron
donating group)であり、シリコン中心原子と結合した酸素原子基準のパラ(para)位置に置換された化合物は、シリコン系パーティクルとしての成長がさらに効果よく抑制できることを確認することができる。
【0087】
一方、上記表3に示したように、比較例1~3のエッチング溶液は、時間経過によって50μm以上の直径を有するシリコン系パーティクルが存在することを確認することができる。
【0088】
以上では、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれは、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から外れない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等によって本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【符号の説明】
【0089】
10 シリコン基板
11 シリコン窒化膜
12 シリコン酸化膜
20 積層構造体
30 マスクパターン層
50 トレンチ