(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電気機器収納用ラック
(51)【国際特許分類】
H05K 7/18 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H05K7/18 D
(21)【出願番号】P 2020123516
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】生川 久比古
(72)【発明者】
【氏名】横地 隆径
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎祐
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-9846(JP,Y1)
【文献】実開昭59-6892(JP,U)
【文献】国際公開第2021/009909(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直フレームと水平フレームとを組み合わせて形成された柱状体フレームを備える電気機器収納用ラックであって、
前記水平フレームは、連結部材を含む第一部分と、前記第一部分以外の第二部分と、を有し、
前記第一部分において前記電気機器収納用ラックの内部が開放されるように、前記連結部材が前記第二部分に対して移動可能に取り付けら
れ、
前記連結部材は、ヒンジにより前記第二部分に取り付けられている、電気機器収納用ラック。
【請求項2】
前記連結部材により開放可能な前記第一部分を含む前記電気機器収納用ラックの開口部を覆うように前記電気機器収納用ラックに取り付けられたカバーをさらに備え、
前記カバーは、前記第一部分において前記電気機器収納用ラックの前記内部を開放可能とする開閉部を有している、請求項
1に記載の電気機器収納用ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機器収納用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ケーブルの光ファイバ心線余長部や光接続部が収容される壁掛け型の光接続箱が開示されている。特許文献2及び特許文献3には、電子機器、電気機器、通信機器など各種機器を収納するための自立型のキャビネットラックや収容箱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-085468号公報
【文献】特開2011-155211号公報
【文献】特開2013-239616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような壁掛け型の接続箱は、筐体の上下面にケーブル導入を行うための切り欠きを有している。また、特許文献3に開示されるように、自立型のラックでは、扉を保持する構造等の問題で筐体の上面に形成されるケーブル導入部は穴形状となっている。そのため、ラックの内部機器に配線されるケーブルを、ケーブル導入部からラック内に引き込む際の作業性に劣る場合があった。
【0005】
そこで、本開示は、ケーブル等を内部に導入する際の作業性が向上可能な電気機器収納用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電気機器収納用ラックは、
垂直フレームと水平フレームとを組み合わせて形成された柱状体フレームを備える、電気機器収納用ラックであって、
前記水平フレームは、連結部材を含む第一部分と、前記第一部分以外の第二部分と、を有し、
前記第一部分において前記電気機器収納用ラックの内部が開放されるように、前記連結部材が前記第二部分に対して移動可能に取り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケーブル等を内部に導入する際の作業性が向上可能な電気機器収納用のラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る電気機器収納用ラックを示す斜視図である。
【
図2】
図1のラックの上部を示す一部拡大斜視図である。
【
図3】
図1のラックにおいてカバーのファスナーが開放された状態を示す図である。
【
図4】
図1のラックにおいてカバーのファスナーが閉じられ、且つカバーの口が紐で締めくくられた状態を示す図である。
【
図5】参考例に係る電気機器収納用ラックを示す一部拡大斜視図である。
【
図6】変形例に係る電気機器収納用ラックを示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の実施形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係る電気機器収納用ラックは、
(1)垂直フレームと水平フレームとを組み合わせて形成された柱状体フレームを備える電気機器収納用ラックであって、
前記水平フレームは、連結部材を含む第一部分と、前記第一部分以外の第二部分と、を有し、
前記第一部分において前記電気機器収納用ラックの内部が開放されるように、前記連結部材が前記第二部分に対して移動可能に取り付けられている。
本開示によれば、ラックの骨組みを構成する水平フレームの一部が開閉可能となるため、ケーブル等をラックの内部に導入する際の作業性が向上される。
【0010】
(2)前記連結部材は、前記水平フレームの前記他の部分に対して前記連結部材を可動させるヒンジ部により前記他の部分に取り付けられていてもよい。
本開示によれば、簡便な構成で水平フレームの一部を開閉可能とすることができる。
【0011】
(3)前記連結部材により開放可能な前記第一部分を含む前記電気機器収納用ラックの開口部を覆うように前記電気機器収納用ラックに取り付けられたカバーをさらに備え、
前記カバーは、前記第一部分において前記電気機器収納用ラックの前記内部を開放可能とする開閉部を有していてもよい。
本開示によれば、カバーによりラック内部の防塵性を十分に担保しつつ、ケーブル導入等の作業性を高めることができる。
【0012】
(本開示の実施形態の詳細)
本開示の実施形態に係る電気機器収納用ラック(以下、ラックと称す。)の具体例を、図面を参照して説明する。本実施形態における、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、
図1に示すラック1について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
図1は、本実施形態に係るラック1を示す図である。
図2は、ラック1の上部を示す一部拡大斜視図である。
図1に示すように、ラック1は、四隅に配置された4本の垂直フレーム2a,2b,2c,2dと、4本の垂直フレーム2a~2dと組み合わされる複数の水平フレーム3とにより構成される、柱状体(直方体)の稜部にフレームを有する柱状体フレーム(直方体フレーム)を備えている。ラック1は、さらに、前面扉4、側面扉5,5、背面板6、天井板7、底面板8を備えている。ラック1は、例えば、電気機器収納用箱として用いられ、その内部にはサーバその他の電子機器や、ブレーカその他の電気機器、通信用機器などの内部機器が搭載されたり、光ファイバや光ケーブル類、それらの接続部品等が収納されうる。なお、ラック1は、床面や地面に設置される自立型と呼ばれるものであって、キャビネット、ボックスなどとも呼ばれる。また、ラック1は、データセンター等において列状に複数並べて配置されてもよい。
【0014】
背面板6には、前面扉4側に向かって突出するようにケーブル固定具9が取り付けられている。天井板7には、当該ケーブル固定具9に対応する位置において、2つの開口部10L,10Rが設けられている。開口部10L,10Rは、それぞれ矩形状に形成されている。各開口部10L,10Rの周囲には各開口部10L,10Rの形状に合わせて矩形状の固定フレーム11L,11Rが取り付けられている。
【0015】
複数の水平フレーム3のうち、ラック1前面の上端に左右方向にわたって設けられている水平フレーム3は、2つの側部フレーム3L,3Rと、中間フレーム3Cとから構成されている。2つの側部フレーム3L,3Rのうち左側の側部フレーム3Lは、左側前面に配置された垂直フレーム2aの上端から右方向に突出するように設けられている。2つの側部フレーム3L,3Rのうち右側の側部フレーム3Rは、右側前面に配置された垂直フレーム2bの上端から左方向に突出するように設けられている。中間フレーム3Cは、2つの側部フレーム3L,3Rからそれぞれ一定距離離間して配置されている。すなわち、中間フレーム3Cの長さは、左側の側部フレーム3Lと右側の側部フレーム3Rとの間の距離よりも短い。中間フレーム3Cは、開口部10Lと開口部10Rとに挟まれた天井板7の前端部に固定されている。側部フレーム3L,3R及び中間フレーム3Cは、その下部における前面扉4と重なる部分が略U字状に屈曲するように形成されている。これにより、前面扉4が閉じられたときに、側部フレーム3L,3R及び中間フレーム3Cが前面扉4と干渉することが無い。
【0016】
固定フレーム11L,11Rの前面には、切り欠き12が形成されている。切り欠き12は、側部フレーム3Lと中間フレーム3Cとの間に形成された空間及び側部フレーム3Rと中間フレーム3Cとの間の空間に合わせて、各固定フレーム11L,11Rの一部が開放されるように切り欠かれている。
【0017】
さらに、側部フレーム3Lと中間フレーム3Cとの間に形成された空間及び側部フレーム3Rと中間フレーム3Cとの間の空間を塞ぐようにして、水平フレーム3には連結部材13L,13Rが取り付けられている。さらに、各開口部10L,10Rの内部にはそれぞれカバー20L,20Rが装着されている。
【0018】
図2に示すように、連結部材13Lは、ヒンジ14により側部フレーム3Lに取り付けられている。同様に、連結部材13Rは、ヒンジ14により側部フレーム3Rに取り付けられている。各連結部材13L,13Rは、矩形状の前板15と、上板16と、下板17とから構成されている。前板15のヒンジ14に取り付けられた側とは反対側には2つのねじ穴15a,15aが形成されている。各連結部材13L,13Rが閉じられた状態において、当該ねじ穴15a,15aを介して、前板15が中間フレーム3Cのねじ止め部3aにねじ止め固定される。上板16は、前板15の上部から後方に屈曲するようにして、前板15と連続するように形成されている。上板16は、各連結部材13L,13Rが閉じられた状態において、各固定フレーム11L,11Rの切り欠き12内に挿入され、切り欠き12を塞ぐ。下板17は、側部フレーム3L,3R及び中間フレーム3Cと同様に、略U字状に屈曲するように形成されている。これにより、各連結部材13L,13Rと前面扉4とが干渉することなく前面扉4を閉じることができる。
【0019】
カバー20L,20Rは、巾着状の袋体である。カバー20L,20Rの下端部は、天井板7と固定フレーム11L,11Rとの間に挟み込まれるようにして、各開口部10L,10Rに取り付けられている。各カバー20L,20Rは口部21を有しており、各カバー20L,20Rの前面には上下方向に沿ってファスナー22が設けられている。これにより、カバー20L,20Rの前面が開閉可能となっている。各カバー20L,20Rの口部21には紐23が通してあり、この紐23で口部21を締めくくることができる。
【0020】
次に、
図2、
図3及び
図4を参照して、当該ラック1へのケーブルの導入方法を説明する。
図3は、ラック1において右側の開口部10Rに取り付けられたカバー20Rの口部21及びファスナー22が開放された状態を示す図である。
図4は、ファスナー22が閉じられ、且つカバー20Rの口部21が紐23で締めくくられた状態を示す図である。なお、
図3及び
図4においては連結部材13Rの図示は省略している。
【0021】
ラック1にケーブル等を導入する際には、まず、作業者は、
図2に示すように、前面扉4を開ける。次に、作業者は、ねじ穴15a,15aを介して連結部材13L,13Rをねじ止め固定していたねじ(不図示)を外し、連結部材13L,13Rをヒンジ14を回転軸として回転させて、側部フレーム3L,3Rと中間フレーム3Cとの間の空間を開放させる。次に、作業者は、
図3に示すように、カバー20Rの紐23を緩めるとともにファスナー22を開ける。このように、連結部材13R、カバー20Rの口部21及びファスナー22が開放されることで、作業者は、ラック1の前面扉4側からラック1内部にアクセスすることができる。次に、作業者は、開放されたラック1の前面側からケーブルCをラック1内部へ挿入し、ケーブル固定具9にケーブルCを固定する。ケーブルCは、例えば、結束バンドBによりケーブル固定具9に固定される。ケーブルCの固定が完了すると、作業者は、
図4に示すように、カバー20Rのファスナー22を閉じるとともに、カバー20Rの口部21を紐23で締めくくる。そして、
図4では図示は省略しているが、開放されていた連結部材13Rを中間フレーム3C側へ倒して、固定フレーム11Rの切り欠き12を連結部材13Rの上板16で塞ぐ。最後に、連結部材13Rのねじ穴15a,15aと中間フレーム3Cのねじ止め部3aとをねじ止め固定する。すなわち、連結部材13Rが閉鎖状態で固定される。
【0022】
ところで、
図5に示す参考例のラック1Aの場合、柱状体フレームを備えているが、ラック1Aの前面側の上部に設けられた水平フレーム3Aは垂直フレーム2aから垂直フレーム2bまで連続して延伸されている。そのため、ケーブルをラック1A内に導入する際には、天井板7Aに形成された開口部10LA,10RAからケーブルを挿通して、ケーブル固定作業を行う必要があり、ケーブルをケーブル固定具9へ固定する場合等の作業性に改善の余地があった。
【0023】
上記実施形態に係るラック1も、垂直フレーム2a~2dと水平フレーム3とを組み合わせて形成された柱状体フレームを備えている。ラック1の水平フレーム3は、連結部材13L,13Rと、連結部材13L,13Rを含む部分以外の部分である側部フレーム3L,3R及び中間フレーム3C(第二部分の一例)と、を有し、連結部材13L,13Rが側部フレーム3L,3Rに対して移動可能に取り付けられている。これにより、側部フレーム3L,3Rと中間フレーム3Cとの間の部分(第一部分の一例)においてラック1の内部が開放される。この構成によれば、ケーブルC等の光部品をラック1の前面扉4側からラック1内に導入できるため、作業性が向上される。
【0024】
また、連結部材13L,13Rは、ヒンジ14により側部フレーム3L,3Rに対して取り付けられている。これにより、簡便な構成でラック1の前面側に設けられた水平フレーム3の一部を開閉可能とすることができる。
【0025】
さらに、ラック1は、ラック1の開口部10L,10Rを覆うようにラック1に取り付けられたカバー20L,20Rをさらに備えており、当該カバー20L,20Rは、側部フレーム3L,3Rと中間フレーム3Cとの間に形成された領域においてラック1の内部を開放可能とするファスナー22(開閉部の一例)を有している。この構成によれば、カバー20L,20Rによりラック1の防塵性を十分に担保しつつ、作業性を高めることができる。
【0026】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、連結部材13L,13Rがヒンジ14により水平フレーム3(側部フレーム3L,3R及び中間フレーム3C)に対して開閉可能な構成について説明したが、この例に限られない。
図6は、変形例に係るラック1Bを示す一部拡大斜視図である。
図6に示すラック1Bにおいては、連結部材13LB,13RBは、ヒンジ式ではなくスライド式で移動可能である。すなわち、連結部材13LB,13RBは、水平フレーム3の延伸方向(左右方向)に沿って移動可能であり、水平フレーム3の中間フレーム3C内に収容されることで、中間フレーム3Cと側部フレーム3L,3Rとの間の空間が開放される。この構成によっても、ケーブルC等の光部品をラック1の前面扉4側からラック1内に導入できるため、上記実施形態と同様に作業性が向上される。なお、ケーブル導入が完了した後は、連結部材13LB,13RBが側部フレーム3L,3R側にスライドされ、連結部材13LB,13RBの中間フレーム3Cとは反対側の端部が側部フレーム3L,3Rに形成された開口部31内に挿通される。そして、連結部材13LB,13RBは、当該端部に形成されたねじ穴13a,13aにより、側部フレーム3L,3Rに形成されたねじ止め部31aにねじ止め固定される。
【0028】
また、上記実施形態では、ラック1の前面上部に配置された水平フレーム3に連結部材13L,13Rが取り付けられている例を説明しているが、この例に限られない。例えば、複数の水平フレーム3のうち、側面扉5,5の上部に配置される水平フレーム3の一部を連結部材にて開閉可能にするようにしてもよい。この場合も、ラック1の上面だけでなく側面側からもラック1内部にアクセスすることができ、作業性が向上される。
【符号の説明】
【0029】
1,1A,1B:ラック(電気機器収納用ラック)
2a~2d:垂直フレーム
3:水平フレーム
3a:ねじ止め部
3C:中間フレーム
3L,3R:側部フレーム
4:前面扉
5:側面扉
6:背面板
7,7A:天井板
8:底面板
9:ケーブル固定具
10L,10LA,10R,10RA:開口部
11L,11R:固定フレーム
13L,13LB,13R,13RB:連結部材
14:ヒンジ
15:前板
15a:ねじ穴
16:上板
17:下板
20L,20R:カバー
21:口部
22:ファスナー
23:紐