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特許7523981ホームドア装置、ホームドア装置の制御方法、ホームドア装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ホームドア装置、ホームドア装置の制御方法、ホームドア装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020123906
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020423
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 昌兵
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-203418(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0057807(KR,A)
【文献】特開2005-246984(JP,A)
【文献】実開昭54-076607(JP,U)
【文献】特開2015-189421(JP,A)
【文献】特開2014-221614(JP,A)
【文献】特開2015-112934(JP,A)
【文献】特開平07-108922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0197514(US,A1)
【文献】特開2019-182252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームドア装置であって、
プラットホームの乗降口を構成する扉を開閉駆動する駆動部と、
前記扉の全開状態、前記扉の全閉状態、前記扉の移動経路上に支障物が存在しない状態および前記駆動部の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知部と、
前記ホームドア装置の通常動作を停止するモードに切り替えるための信号を出力する外部の操作端末と無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信していない場合、前記検知部が検知している前記特定状態を前記プラットホーム上に設置されたホームドア装置の開閉を制御する総合制御盤に送信する特定状態送信部と、
前記無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信した場合、前記検知部の検知結果に関わらず、前記特定状態を模擬する模擬状態を前記総合制御盤に送信する模擬状態送信部と、
を備えるホームドア装置。
【請求項2】
前記無線通信部はリードスイッチである
請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記模擬状態送信部は、前記総合制御盤と接続された電気回路に設けられたバイパススイッチを導通させることで、前記模擬状態を前記総合制御盤に送信し、
前記模擬状態送信部は、前記無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信したことに応じて、前記バイパススイッチを導通させるリレー回路を含む、
請求項1または2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記模擬状態送信部は、前記リレー回路を動作させ続ける自己保持回路を備える
請求項3に記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記自己保持回路には、前記総合制御盤から電力を供給される
請求項4に記載のホームドア装置。
【請求項6】
前記無線通信部は、前記扉を収納する戸袋部の内部に設けられており、
前記戸袋部の表面の少なくとも一部は、電磁波が透過する透過部材で構成されている
請求項1から5のいずれかに記載のホームドア装置。
【請求項7】
前記無線通信部が前記操作端末から信号を受信したことを外部に報知する報知部を備える請求項1から6のいずれかに記載のホームドア装置。
【請求項8】
前記報知部は、前記扉を収納する戸袋部の表面に設けられている
請求項7に記載のホームドア装置。
【請求項9】
前記報知部は、前記模擬状態であることを報知する
請求項7または8記載のホームドア装置。
【請求項10】
ホームドア装置の制御方法であって、
プラットホームの乗降口において開閉駆動される扉の全開状態、前記扉の全閉状態、前記扉の移動経路上に支障物が存在しない状態および前記扉を駆動する駆動部の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知ステップと、
前記ホームドア装置の通常動作を停止するモードに切り替えるための信号を出力する外部の操作端末と無線通信を行う無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信していない場合、前記検知ステップで検知した前記特定状態を総合制御盤に送信するステップと、
前記無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信した場合、前記検知ステップの検知結果に関わらず、前記特定状態を模擬する模擬状態を前記総合制御盤に送信するステップと、
を含むホームドア装置の制御方法。
【請求項11】
ホームドア装置の制御プログラムであって、
プラットホームの乗降口において開閉駆動される扉の全開状態、前記扉の全閉状態、前記扉の移動経路上に支障物が存在しない状態および前記扉を駆動する駆動部の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知ステップと、
前記ホームドア装置の通常動作を停止するモードに切り替えるための信号を出力する外部の操作端末と無線通信を行う無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信していない場合、前記検知ステップで検知した前記特定状態を総合制御盤に送信するステップと、
前記無線通信部が前記操作端末から前記信号を受信した場合、前記検知ステップの検知結果に関わらず、前記特定状態を模擬する模擬状態を前記総合制御盤に送信するステップと、
をコンピュータに実行させるためのホームドア装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームドア装置、ホームドア装置の制御方法およびホームドア装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラットホームにおいて列車の乗降扉の開閉に伴って開閉されるホームドアシステムが記載されている。このホームドアシステムは、スライド扉を開閉するモータを制御する個別制御部を有するN台のホームドアと、N台のホームドアの全体の制御を司る統合制御部とを備える。個別制御部は、各ホームドアの状態に関わる物理量を表すデータを統合制御部に出力し、統合制御部は各個別制御部を通じて各ホームドアを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-182252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、駅のプラットホーム上に並べて設置され、鉄道車両のドアと同期して開閉される複数のホームドア装置を備えたプラットホームドアシステムについて以下の認識を得た。ホームドアシステムは、複数のホームドア装置それぞれに設けられる個別制御盤と、各個別制御盤を統合する総合制御盤とを備えるものがある。この総合制御盤は、ホームドア装置の個別制御盤が生成する開閉状態などの状態情報を取得し、取得した状態情報が全ての所定の状態を示す場合に、所定状態を確認した旨の信号(以下、「状態確認信号」という)を車両に出力する。
【0005】
例えば、車両がホームに到着した後に、全てのホームドア装置から開状態を示す状態情報を取得したとき、総合制御盤は、車両に車両ドアの開扉を許可する信号を出力する。また、車両が出発する際、全てのホームドア装置から閉状態を示す状態情報を取得したとき、総合制御盤は、車両に車両ドアの閉扉を許可する信号を出力する。
【0006】
しかし、このシステムでは、あるホームドア装置が故障等により停止した場合、この装置は状態情報を生成しないため、この装置を統合する総合制御盤は状態確認信号を出力できず、この装置と連携する他の正常なホームドア装置も使用できない。
【0007】
これらから、本発明者は、特許文献1に記載のホームドアシステムには、一部のホームドア装置が停止した場合に、他のホームドア装置を使用可能にする観点から、改善の余地があることを認識した。
【0008】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホームドア装置が停止している場合でも、この装置と連携する他のホームドア装置を使用可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のホームドア装置は、プラットホームの乗降口を構成する扉を開閉駆動する駆動部と、扉の全開状態、扉の全閉状態、扉の移動経路上に支障物が存在しない状態および駆動部の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知部と、外部の操作端末と無線通信を行う無線通信部と、無線通信部が操作端末から信号を受信していない場合、検知部が検知している特定状態をプラットホーム上に設置されたホームドア装置の開閉を制御する総合制御盤に送信する特定状態送信部と、無線通信部が操作端末から信号を受信した場合、検知部の検知結果に関わらず、特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤に送信する模擬状態送信部と、を備える。
【0010】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホームドア装置が停止している場合でも、この装置と連携する他のホームドア装置を使用可能にするホームドア装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るホームドア装置を備えたプラットホームドアシステムを概略的に示すブロック図である。
図2図1のホームドア装置を示す斜視図である。
図3図1のホームドア装置の個別制御盤と総合制御盤とを示すブロック図である。
図4図1のホームドア装置の模擬状態送信部の周辺を示す回路図である。
図5図1のホームドア装置の停止モードにおける制御を示すフローチャートである。
図6図1のプラットホームドアシステムの第1制御を示すフローチャートである。
図7図1のプラットホームドアシステムの第2制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0015】
[第1実施形態]
図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るホームドア装置100を説明する。図1は、ホームドア装置100を備えるプラットホームドアシステム1を示すブロック図である。図2は、ホームドア装置100を示す斜視図である。図3は、ホームドア装置100の個別制御盤20と総合制御盤50とを示すブロック図である。
【0016】
先ず、プラットホームドアシステム1を説明する。プラットホームドアシステム1は、複数のホームドア装置100と総合制御盤50とを備える。以下の説明では、説明の上で識別が必要な場合、複数のホームドア装置100のうち、一のホームドア装置と、他のホームドア装置とは、符号の末尾に「A」、「B」を付すことにより、互いに識別される。また、一のホームドア装置100Aの個別制御盤と、他のホームドア装置100Bの個別制御盤とは、符号の末尾に「A」、「B」を付すことにより、互いに識別される。したがって、本実施形態の複数のホームドア装置100は、同じ構成を備える一のホームドア装置100Aと他のホームドア装置100Bとを含む。
【0017】
複数のホームドア装置100は、駅のプラットホームの上り線及び下り線にそれぞれ設けられ、プラットホームの所定位置に鉄道車両52が停止したときに、この車両52の各車両ドアに対応する位置に設けられた乗降口にそれぞれ配置される。ホームドア装置100は、戸袋部10と、戸袋部10から左右方向に進退する扉12と、個別制御盤20とを有している。
【0018】
総合制御盤50は、プラットホームに1つ設けられており、複数のホームドア装置100の各個別制御盤20に接続されており、ホームドア装置の開閉を制御する。扉12は、個別制御盤20を介して総合制御盤50によって開閉制御される。車両ドアが開くとともに扉12が開くことによって、乗客の車両52への乗降が可能となり、車両ドアと扉12のいずれか一方が閉じることによって、乗客の乗降が制限される。
【0019】
総合制御盤50と各個別制御盤20との接続は、第1伝送路41および第2伝送路44を介して行われる。第1伝送路41および第2伝送路44は、総合制御盤50と各個別制御盤20とにループを形成するように構成される。この例では、ループを形成するとは、総合制御盤50と各個別制御盤20とを順に循環して情報を伝達する循環伝達路を形成することをいい、これらは、バス接続、パラレル接続、シリアル接続、シリーズ接続などの公知の接続方法によって実現できる。
【0020】
総合制御盤50と各個別制御盤20とは、第1伝送路41を介して相互に通信できる。例えば、総合制御盤50は、第1伝送路41を介して扉12の開閉指令信号を各個別制御盤20に送信する。各個別制御盤20は、第2伝送路44を介してホームドア装置100の特定状態を送信できる。特定状態については後述する。
【0021】
総合制御盤50と車両52とは、車両情報伝送装置54および地上子53を介して相互に通信できる。車両52は、後述する開要求信号および閉要求信号を総合制御盤50に送信できる。総合制御盤50は、後述する全開確認信号および全閉確認信号を車両52に送信できる。
【0022】
図1を参照して、プラットホームドアシステム1の動作を説明する。車両52がプラットホームの所定位置に到達したとき、車両52の乗務員は地上子53および車両情報伝送装置54を介して総合制御盤50にすべてのホームドア装置100の扉12を開く開要求信号を送信する。この開要求信号を受信すると、総合制御盤50は、各個別制御盤20に開指令信号を供給する。個別制御盤20は、この開指令信号に応動して、対応する扉12を開き、開確認信号(後述する第1特定状態)を総合制御盤50に送信する。総合制御盤50は、すべての個別制御盤20から開確認信号を受けると、全開確認信号を車両情報伝送装置54および地上子53を介して車両52に送る。車両52の乗務員は、この全開確認信号を受けると、車両ドアを開く。
【0023】
車両52がプラットホームから出発するとき、車両52の乗務員が地上子53および車両情報伝送装置54を介して総合制御盤50に閉要求信号を送信する。この閉要求信号を受けると、総合制御盤50は、各個別制御盤20に閉指令信号を供給する。各個別制御盤20は、この閉指令信号に応動して、対応する扉12を閉じ、閉確認信号(後述する第2特定状態)を総合制御盤50に送信する。総合制御盤50は、すべての個別制御盤20から閉確認信号を受けると、全閉確認信号を車両情報伝送装置54および地上子53を介して車両52に送る。車両52の乗務員は、この全閉確認信号を受けると、車両ドアを閉じる。
【0024】
図3に示すように、総合制御盤50は、状態取得部56と、指令制御部57と、通信制御部58とを備える。状態取得部56は、個別制御盤20から第2伝送路44を介して後述する特定状態または模擬状態を取得する。指令制御部57は、特定状態または模擬状態が所定の条件を満たす場合に、車両52から開要求信号または閉要求信号を受けたとき、開指令信号または閉指令信号を第1伝送路41を介して個別制御盤20に設けられた扉制御部26に送信する。扉制御部26は、開指令信号または閉指令信号に応じて駆動部14を制御して扉12を開閉する。通信制御部58は、特定状態または模擬状態が所定の条件を満たす場合に、全開確認信号または全閉確認信号を車両情報伝送装置54に送信する。
【0025】
また、通信制御部58は、伝送路60cを介して駅務室に設けられている駅務室表示装置60に所定の情報を送信する。一例として、駅務室表示装置60は、この情報に基づいて上り線及び下り線の扉12の状態及び故障内容等を表示する。また、通信制御部58は、外部伝送路62cを介して、駅とは離れた場所に設けられている総合司令室の総合司令室表示装置62に所定の情報を送信する。一例として、総合司令室表示装置62は、この情報に基づいてすべての駅の扉12の状態を表示する。
【0026】
図2図3を参照して、ホームドア装置100を説明する。ホームドア装置100の戸袋部10は、パネル状の扉12を進退可能に収納する戸袋として機能する。戸袋部10には、扉12を開閉駆動する駆動部14と、電気錠15と、個別制御盤20と、各種センサとが設けられる。駆動部14は、個別制御盤20の扉制御部26の制御に応じて扉12を開閉するモータ14mを備える。電気錠15は、扉12が閉じられた状態において、乗降客が勝手に扉12を開かないように施錠する。電気錠15は、個別制御盤20の扉制御部26の制御に応じて施錠及び解錠がなされる。電気錠15は、戸袋部10に設けられた解錠ボタン(不図示)を操作することによって解錠できる。
【0027】
図3を参照して、各種センサを説明する。ホームドア装置100には、扉開位置センサ30と、扉閉位置センサ31と、駆動状態センサ32と、支障物センサ33とが設けられている。扉開位置センサ30は、扉12が開位置に位置しているか否かを検出するセンサである。扉閉位置センサ31は、扉12が閉位置に位置しているか否かを検出するセンサである。一例として、センサ30、31として光電センサを使用できる。
【0028】
扉開位置センサ30は、扉12が開位置に位置している状態(以下、「第1特定状態」という)においてオン信号を、それ以外の場合状態にオフ信号を個別制御盤20の検知部23に供給する。扉閉位置センサ31は、扉12が閉位置に位置している状態(以下、「第2特定状態」という)においてオン信号を、それ以外の状態ではオフ信号を検知部23に供給する。
【0029】
駆動状態センサ32は、駆動部14の異常が無い状態(以下、「第3特定状態」という)においてオン信号を、それ以外の状態ではオフ信号を検知部23に供給する。例えば、駆動状態センサ32は、駆動部14が過負荷状態か否かを検知する過負荷センサであってもよい。過負荷センサとして、モータ14mの駆動電流を検知する電流センサを使用し、駆動電流が所定の範囲内である場合に異常が無いと検知してもよい。例えば、駆動状態センサ32は、扉12の戸先(先端部)に乗降客が接触しているか否かを検出する戸挟み検知用の安全センサであってもよい。戸挟みを検知するセンサとして、バンパースイッチ(衝突検出スイッチ)を使用し、バンパースイッチがオフ状態の場合(乗降客が接触していない場合)に異常が無いと検知してもよい。本実施形態の駆動状態センサ32は、過負荷センサと戸挟みセンサの両方を含んでいる。
【0030】
支障物センサ33は、扉12の通路に支障物が存在していない状態(以下、「第4特定状態」という)においてオン信号を、それ以外の状態ではオフ信号を検知部23に供給する。この例の支障物センサ33は、複数の光電センサを有し、この複数の光電センサが支障物を検知していない場合に異常が無いと検知する。
【0031】
図3を参照して、個別制御盤20を説明する。図3を含む各図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0032】
個別制御盤20は、無線通信部21と、模擬状態送信部22と、検知部23と、特定状態送信部24と、自己保持回路25と、扉制御部26とを含む。
【0033】
(無線通信部)
図4を参照して、無線通信部21を説明する。図4は、模擬状態送信部22の周辺を示す回路図である。この図では、一部のホームドア装置100Bの記載を省略している。ホームドア装置100は、通常の開閉動作を行う通常動作モードと、停止モードとを有する。停止モードは、例えばホームドア装置100の検査、修理、保守等を行うために通常動作を停止するモードである。模擬状態送信部22は、停止モードでは所定の通信を行い、通常動作モードでは通信しない。
【0034】
無線通信部21は、外部の操作端末35と無線通信を行う。無線通信部21は、ホームドア装置100を通常動作モードから停止モードに切り替えるための外部操作を受け入れる。本実施形態の無線通信部21は、操作端末35と無線通信を行う。本明細書では、無線通信は、狭義の無線通信に加えて、操作端末35から伝搬される物理的作用を受信することを含む。この物理的作用としては磁気(例えば磁界)を用いるもの、振動(例えば音波)を用いるもの、電磁波(例えば光、電波)を用いるもの等が挙げられる。これらの伝搬形態は、送信側と受信側が接触している場合と非接触の場合とを含む。
【0035】
無線通信部21は、扉12を収納する戸袋部10の内部に設けられている。図2の例では、無線通信部21は、扉12の戸袋部10の鉛直面において操作端末35からの信号を受信する。戸袋部10の表面の少なくとも一部は、電磁波が透過する透過部材で構成されている。透過部材は、樹脂などの非金属材料で構成できる。図2の例では、戸袋部10の無線通信部21が設けられている部分であって、操作端末35と対向する部分は、樹脂製の透過部材で構成されている。また、図2の無線通信部21は、樹脂に覆われている。このため、風雨に晒されても劣化が少なく、信頼性が向上する。また、操作員や作業員以外の者から操作部を認識し難くすることが可能で、乗客のいたずら等によるトラブルを未然に防止しやすい。鉛直面に設けられているので、落下物や仮置き物による誤操作を防止しやすい。なお、ここでいう鉛直面は、狭義の鉛直面に加えて、鉛直面と視認できるものを含む。
【0036】
本実施形態では、操作端末35は、磁界を発生させる磁石35mを有しており、無線通信部21は、操作端末35の磁石35mが発生する磁界(以下、「磁界信号」という)を受信する。この例では、無線通信部21は、磁石35mが発生する磁界の大きさと向きに応じて接点が開閉するリードスイッチである。特に、無線通信部21は、所定の大きさと向きの磁界を受信するとオンする(閉じる)接点を有するノーマリーオープン型リードスイッチである。
【0037】
(模擬状態送信部)
図4を参照して、模擬状態送信部22を説明する。模擬状態送信部22は、無線通信部21が操作端末35から磁界信号を受信した場合、ホームドア装置100を通常動作モードから停止モードに切り替え、検知部23の検知結果に関わらず、特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤50に送信する。本明細書において、受信側に情報を送信することは、情報を積極的に送信することに加えて、受信側が情報を取得できるようにすることを含む。したがって、模擬状態を総合制御盤50に送信することは、総合制御盤50が模擬状態を取得できるようにすることを含む。模擬状態については後述する。
【0038】
無線通信部21、模擬状態送信部22および自己保持回路25は、総合制御盤50に設けられた電源55から母線Rおよび母線Sを介して供給される電力により駆動される。母線Rには24Vの直流電圧が供給され、母線SはGNDに接続される。この構成により、故障等により個別制御盤20の電源が使用できない場合でも、無線通信部21、模擬状態送信部22および自己保持回路25を動作させることができる。
【0039】
本実施形態では、模擬状態送信部22は、リレー回路22rと、報知部27と、解除受信部22pとを含む。リレー回路22rは、コイル部22cと、コイル部22cが通電されたとき閉じる5つのノーマリーオープン型の接点部P0、P1、P2、P3、P4とを有する。接点部P1~P4は、後述するバイパススイッチとして機能する。以下、接点部P1~P4をバイパススイッチP1~P4と表記する。接点部P0は、無線通信部21に並列接続されている。
【0040】
報知部27は、無線通信部21が操作端末35から信号を受信したことを外部に報知する。この例の報知部27は、コイル部22cに並列接続されたLED等の発光素子を含み、リレー回路22rが動作しているときに発光する。つまり、報知部27は、模擬状態であることを報知する。図2の例では、報知部27は、扉12を収納する戸袋部10の表面に設けられている。一例として、報知部27は、戸袋部10の正面に設けられている。解除受信部22pは、無線通信部21およびコイル部22cに直列接続されるノーマリークローズ型のリードスイッチである。
【0041】
模擬状態送信部22の自己保持回路25は、リレー回路22rを動作させ続ける。本実施形態の自己保持回路25は、リレー回路22rの接点部P0を含む。接点部P0は、リレー回路22rが作動すると閉じ、電源55からコイル部22cに電流を供給し続ける。具体的には、無線通信部21がオンすると(リードスイッチが閉じると)、電源55の電力によりコイル部22cが通電され、接点部P0およびバイパススイッチP1~P4が閉じる。接点部P0が閉じると、無線通信部21がオフしても(リードスイッチが開いても)、コイル部22cの通電は維持され、接点部P0は閉じたままになる。この状態では、ホームドア装置100は停止モードを継続する。
【0042】
解除受信部22pは、所定の大きさと向きの磁界を受信すると開き、コイル部22cの通電を遮断する。コイル部22cの通電が遮断されると、接点部P0が開いて、停止モードは解除され、通常動作モードに切り替わる。
【0043】
模擬状態送信部22は、無線通信部21が操作端末35から信号を受信した場合に、検知部23の検知結果に関わらず、特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤50に送信する。この例では、模擬状態送信部22は、総合制御盤50と接続された電気回路(特定状態送信部24)に設けられたバイパススイッチP1~P4を有し、バイパススイッチP1~P4を閉じることで、模擬状態を総合制御盤50に送信する。模擬状態送信部22は、無線通信部21が操作端末35から磁界信号を受信したことに応じて、バイパススイッチP1~P4を閉じるリレー回路22rを含む。バイパススイッチP1~P4による特定状態の模擬動作については後述する。
【0044】
(検知部)
図3図4を参照して検知部23を説明する。検知部23は、センサ30~33から供給される信号に基づいて、扉12の全開状態、扉12の全閉状態、扉12の移動経路上に支障物が存在しない状態および駆動部14の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する。本実施形態の特定状態は、第1特定状態、第2特定状態、第3特定状態および第4特定状態を含む。本実施形態の検知部23は、第1検知部23a、第2検知部23b、第3検知部23cおよび第4検知部23dを含む。
【0045】
第1検知部23aは、扉開位置センサ30のオン信号に応じて第1特定状態を検知する。第2検知部23bは、扉閉位置センサ31のオン信号に応じて第2特定状態を検知する。第3検知部23cは、駆動状態センサ32のオン信号に応じて第3特定状態を検知する。第4検知部23dは、支障物センサ33のオン信号に応じて第4特定状態を検知する。
【0046】
(特定状態送信部)
特定状態送信部24は、無線通信部21が操作端末35から信号を受信していない場合(通常動作モードの場合)、検知部23が検知している特定状態を総合制御盤50に送信する。本実施形態の特定状態送信部24は、第1特定状態送信部24aと、第2特定状態送信部24bと、第3特定状態送信部24cと、第4特定状態送信部24dとを含む。
【0047】
第1特定状態送信部24aは、ホームドア装置100Aおよび他のホームドア装置100Bのそれぞれに設けられている。第1特定状態送信部24aは、第1検知部23aが検知している第1特定状態を総合制御盤50が取得できるように送信する。第1特定状態送信部24aは、総合制御盤50の状態取得部56と接続された電気回路である。この例では、第1特定状態送信部24aは、第1検知部23aが第1特定状態を検知していないときにオフになり、第1特定状態が検知されたときオンになる端子Xと端子Yとを有する。端子X、Yの間はオン時に短絡状態になり、オフ時に非短絡状態になる。それぞれの第1特定状態送信部24aは、直列接続されてループ44aを形成し、ループ44aの両端は状態取得部56の端子A0と端子A1とに接続されている。
【0048】
なお、この明細書で、短絡状態は、狭義の短絡状態に加えて、判別可能な範囲で非短絡状態よりも電気抵抗が小さい状態を含み、非短絡状態は、開放状態に加えて、判別可能な範囲で短絡状態よりも電気抵抗が大きい状態を含む。
【0049】
すべての第1検知部23aが第1特定状態を検知するとき、すべての第1特定状態送信部24aが閉じて、ループ44aは短絡状態になる。状態取得部56は、ループ44aが短絡状態のとき、すべてのホームドア装置の扉12が開位置に位置する第1特定状態にあると判定する。第1検知部23aの1つ以上が第1特定状態を検知していないとき、ループ44aは非短絡状態になる。状態取得部56は、ループ44aが非短絡状態のとき、1つ以上のホームドア装置が第1特定状態にないと判定する。
【0050】
第2特定状態送信部24b、第3特定状態送信部24cおよび第4特定状態送信部24d(以下、「他の送信部」という)は、第1特定状態送信部24aと同様に構成され、ホームドア装置100Aおよび他のホームドア装置100Bのそれぞれに設けられる。他の送信部は、総合制御盤50の状態取得部56と接続された電気回路であり、特定状態を検知したときに短絡状態に変化する端子Xおよび端子Yを有する。
【0051】
すべての第2特定状態送信部24bは、直列接続されてループ44bを形成する。ループ44bの両端は状態取得部56の端子B0、B1に接続される。状態取得部56は、ループ44bが短絡状態のとき、すべてのホームドア装置の扉12が閉位置に位置する第2特定状態にあると判定し、ループ44bが非短絡状態のとき、1つ以上の扉12が閉位置に位置していないと判定する。
【0052】
すべての第3特定状態送信部24cは、直列接続されてループ44cを形成する。ループ44cの両端は状態取得部56の端子C0、C1に接続される。状態取得部56は、ループ44cが短絡状態のとき、すべてのホームドア装置の駆動部14に異常が無い第3特定状態にあると判定し、ループ44cが非短絡状態のとき、1つ以上の駆動部14に異常があると判定する。
【0053】
すべての第4特定状態送信部24dは、直列接続されてループ44dを形成する。ループ44dの両端は状態取得部56の端子D0、D1に接続される。状態取得部56は、ループ44dが短絡状態のとき、すべてのホームドア装置の扉12の通路に支障物が存在していない第4特定状態にあると判定し、ループ44dが非短絡状態のとき、1つ以上のホームドア装置に支障物が存在すると判定する。
【0054】
バイパススイッチP1~P4による特定状態の模擬動作について説明する。停止中の一のホームドア装置100Aは特定状態を送信しないので、他のホームドア装置100Bも動作不能になる。そこで、本実施形態には、停止中のホームドア装置100Aの特定状態を模擬する模擬状態を送信するバイパススイッチP1~P4が設けられる。
【0055】
第1特定状態送信部24aの端子X、端子Yに並列接続されるバイパススイッチP1が閉じると、第1特定状態送信部24aの状態に関わらず端子X、Yの間は短絡状態になる。この結果、バイパススイッチP1は、第1特定状態を模擬する模擬状態を状態取得部56の端子A0、A1に送信し、状態取得部56は、この模擬状態も含む情報に基づいて、第1特定状態の成否を判定する。
【0056】
第2特定状態送信部24bの端子X、端子Yに並列接続されるバイパススイッチP2が閉じると、第2特定状態送信部24bの状態に関わらず端子X、Yの間は短絡状態になる。この結果、バイパススイッチP2は、第2特定状態を模擬する模擬状態を状態取得部56の端子B0、B1に送信し、状態取得部56は、この模擬状態も含む情報に基づいて、第2特定状態の成否を判定する。
【0057】
第3特定状態送信部24cの端子X、端子Yに並列接続されるバイパススイッチP3が閉じると、第3特定状態送信部24cの状態に関わらず端子X、Yの間は短絡状態になる。この結果、バイパススイッチP3は、第3特定状態を模擬する模擬状態を状態取得部56の端子C0、C1に送信し、状態取得部56は、この模擬状態も含む情報に基づいて、第3特定状態の成否を判定する。
【0058】
第4特定状態送信部24dの端子X、端子Yに並列接続されるバイパススイッチP4が閉じると、第4特定状態送信部24dの検知状態に関わらず端子X、Yの間は短絡状態になる。この結果、バイパススイッチP4は、第4特定状態を模擬する模擬状態を状態取得部56の端子D0、D1に送信し、状態取得部56は、この模擬状態も含む情報に基づいて、第4特定状態の成否を判定する。
【0059】
このように、停止中のホームドア装置100Aは、特定状態を模擬する模擬状態を状態取得部56に送信する。このため、総合制御盤50は、他のホームドア装置100Bの特定状態に応じて開指令信号または閉指令信号を送信し、全開確認信号または全閉確認信号を送信することができる。この結果、他のホームドア装置100Bは通常通りの動作をすることができる。
【0060】
次に、停止モードにおける第1制御S110を説明する。図5は、停止モードにおける第1制御S110を示すフローチャートである。この制御では、複数のホームドア装置100のうち一のホームドア装置100Aを検査、修理、保守等を行うために停止させ、他のホームドア装置100Bを通常通り動作させる。第1制御S110は、作業員により操作端末35が操作され、無線通信部21が操作端末35から磁界信号を受信したタイミングで開始される(ステップS111)。
【0061】
無線通信部21が磁界信号を受信すると(ステップS111のY)、無線通信部21は閉じ、模擬状態送信部22のリレー回路22rのコイル部22cに電流が流れ、接点部P0およびバイパススイッチP1~P4が閉じる(ステップS112)。
【0062】
接点部P0が閉じると、接点部P0を通じてリレー回路22rのコイル部22cに電流が流れる。これにより、模擬状態送信部22は、自己保持状態となり、接点部P0およびバイパススイッチP1~P4は閉じた状態を維持する(ステップS113)。
【0063】
バイパススイッチP1~P4が閉じると、第1~第4特定状態送信部24a、24b、24c、24dの端子X、Y間は短絡され、第2伝送路44を介して総合制御盤50に模擬状態が送信される(ステップS114)。
【0064】
模擬状態送信部22は、自己保持状態である間、模擬状態を送信し続ける。模擬状態が送信されている間に、作業員はホームドア装置100Aの検査、修理、保守等の作業を行うことができる。作業員は、これらの作業が終了したら、停止モードから通常動作モードに切り替えるために、模擬状態送信部22の自己保持状態を解除する操作を行う。
【0065】
作業員により操作端末35が操作され、解除受信部22pが操作端末35から磁界信号を受信したとき、模擬状態の送信は停止される(ステップS115)。解除受信部22pが磁界信号を受信しない場合(ステップS115のN)、ステップS114の先頭に戻り、ステップS115を繰り返す。
【0066】
解除受信部22pが磁界信号を受信すると(ステップS115のY)、解除受信部22pは開き、コイル部22c電流が遮断され、接点部P0およびバイパススイッチP1~P4は開く(ステップS116)。
【0067】
バイパススイッチP1~P4が開くと、第1~第4特定状態送信部24a、24b、24c、24dの端子X、Y間は開放され、模擬状態の送信が停止する(ステップS117)。
【0068】
模擬状態の送信が停止されたら、停止モードにおける第1制御S110は終了し、通常動作モードに移行する。無線通信部21が磁界信号を受信しなければ(ステップS111のN)、S112~S117をスキップする。この第1制御S110は、あくまでも一例であって、ステップの順序を入れ替えたり、一部のステップを追加・削除・変更したりしてもよい。
【0069】
次に、図1図6を参照して、停止モードにおける、プラットホームドアシステム1の第2制御S210を説明する。図6は、停止モードにおける第2制御S210を示すフローチャートである。この制御では、複数のホームドア装置100のうち一のホームドア装置100Aが模擬状態を送信している場合において、車両52がプラットホームの所定位置に到達したときに、他のホームドア装置100Bを通常通り動作させる。
【0070】
第2制御S210は、乗務員の操作により車両52から送信された開要求信号を総合制御盤50が受信したタイミングで開始される(ステップS211)。
【0071】
開要求信号を受信すると(ステップS211のY)、総合制御盤50は、個別制御盤20Aおよび他の個別制御盤20Bに開指令信号を供給する(ステップS212)。
【0072】
この開指令信号に応じて他の個別制御盤20Bは、対応する扉12を開き、第1特定状態(開確認信号)を総合制御盤50に送信する(ステップS213)。具体的には、他の個別制御盤20Bの第1特定状態送信部24aがオンになり端子X、Y間が短絡する。
【0073】
ステップS213と並行して、個別制御盤20Aは、第1特定状態(開確認信号)を模擬する第1模擬状態を総合制御盤50に送信する(ステップS214)。具体的には、個別制御盤20Aの第1特定状態送信部24aの端子X、Yに並列接続されるバイパススイッチP1が閉じることにより、この端子X、Y間が短絡する。
【0074】
第1特定状態と第1模擬状態とを受信すると、総合制御盤50は、すべての扉12が開位置に位置するものと判定し、全開確認信号を車両52に送る(ステップS215)。この全開確認信号を受けると、車両52の乗務員は、車両ドアを開く。
【0075】
具体的には、個別制御盤20Aの第1特定状態送信部24aの端子X、Yと、他の個別制御盤20Bの第1特定状態送信部24aの端子X、Yとは直列接続されてループ44aを形成する(図4も参照)。このループ44aの両端は、状態取得部56の端子A0と端子A1とに接続されている。上述したように、ループ44a内のすべての端子X、Yが短絡するとループ44aは短絡状態になり、状態取得部56は、すべてのホームドア装置の扉12が開位置に位置すると判定する。この結果、総合制御盤50は全開確認信号を車両52に送る。
【0076】
全開確認信号が送信されたら、停止モードにおける第2制御S210は終了する。総合制御盤50が開要求信号を受信しなければ(ステップS211のN)、S212~S215をスキップする。この第2制御S210は、あくまでも一例であって、ステップの順序を入れ替えたり、一部のステップを追加・削除・変更したりしてもよい。
【0077】
次に、図1図7を参照して、停止モードにおけるプラットホームドアシステム1の第3制御S310を説明する。図7は、停止モードにおける第3制御S310を示すフローチャートである。この制御では、複数のホームドア装置100のうち一のホームドア装置100Aが模擬状態を送信している場合において、車両52がプラットホームから出発するときに、他のホームドア装置100Bを通常通り動作させる。
【0078】
第3制御S310は、乗務員の操作により車両52から送信された閉要求信号を総合制御盤50が受信したタイミングで開始される(ステップS311)。
【0079】
閉要求信号を受信すると(ステップS311のY)、総合制御盤50は、個別制御盤20Aおよび他の個別制御盤20Bに閉指令信号を供給する(ステップS312)。
【0080】
この閉指令信号に応じて他の個別制御盤20Bは、対応する扉12を閉じ、第2特定状態(閉確認信号)を総合制御盤50に送信する(ステップS313)。具体的には、他の個別制御盤20Bの第2特定状態送信部24bがオンになり端子X、Y間が短絡する。
【0081】
ステップS313と並行して、個別制御盤20Aは、第2特定状態(閉確認信号)を模擬する第2模擬状態を総合制御盤50に送信する(ステップS314)。具体的には、個別制御盤20Aの第2特定状態送信部24bの端子X、Yに並列接続されるバイパススイッチP2が閉じることにより、この端子X、Y間が短絡する。
【0082】
第2特定状態と第2模擬状態とを受信すると、総合制御盤50は、すべての扉12が閉位置に位置するものと判定し、全閉確認信号を車両52に送る(ステップS315)。この全閉確認信号を受けると、車両52の乗務員は、車両ドアを閉じる。
【0083】
具体的には、個別制御盤20Aの第2特定状態送信部24bの端子X、Yと、他の個別制御盤20Bの第2特定状態送信部24bの端子X、Yとは直列接続されてループ44bを形成する(図4も参照)。このループ44bの両端は、状態取得部56の端子B0と端子B1とに接続されている。上述したように、ループ44b内のすべての端子X、Yが短絡するとループ44bは短絡状態になり、状態取得部56は、すべてのホームドア装置の扉12が閉位置に位置すると判定する。この結果、総合制御盤50は全閉確認信号を車両52に送る。
【0084】
全閉確認信号が送信されたら、停止モードにおける第3制御S310は終了する。総合制御盤50が閉要求信号を受信しなければ(ステップS311のN)、S312~S315をスキップする。この第3制御S310は、あくまでも一例であって、ステップの順序を入れ替えたり、一部のステップを追加・削除・変更したりしてもよい。
【0085】
次に、バイパススイッチP3に基づく制御を説明する。総合制御盤50の状態取得部56は、駆動状態センサ32の検知結果に基づいてループ44cが非短絡状態のとき、複数のホームドア装置100のいずれかの駆動部14に異常があると判定する。この場合、総合制御盤50は、各駆動部14の動作を停止させるとともに、駆動部14に異常がある旨を駅務室表示装置60および総合司令室表示装置62に表示させる。作業員は、この表示に基づき復旧作業を行う。
【0086】
バイパススイッチP3を備えない場合、一のホームドア装置100Aを停止させると、ループ44cが短絡状態にならずに第3特定状態が成立しないため、他のホームドア装置100Bも動作不能になる。本実施形態では、一のホームドア装置100Aが停止モードのとき、バイパススイッチP3が、第3特定状態送信部24cの端子X、Yの間を短絡状態にするので、ループ44cは短絡状態になり第3特定状態が成立するため、状態取得部56は、すべての駆動部14に異常が無いものと判定し、他のホームドア装置100Bを通常通り動作させる。
【0087】
次に、バイパススイッチP4に基づく制御を説明する。総合制御盤50の状態取得部56は、支障物センサ33の検知結果に基づいてループ44dが非短絡状態のとき、複数のホームドア装置100のいずれかの移動経路上に支障物が存在すると判定する。この場合、総合制御盤50は、各扉12を開方向に駆動するとともに、支障物が存在する旨を駅務室表示装置60および総合司令室表示装置62に表示させる。作業員は、この表示に基づき復旧作業を行う。
【0088】
バイパススイッチP4を備えない場合、一のホームドア装置100Aを停止させると、ループ44dが短絡状態にならずに第4特定状態が成立しないため、他のホームドア装置100Bも動作不能になる。本実施形態では、一のホームドア装置100Aが停止モードのとき、バイパススイッチP4が、第4特定状態送信部24dの端子X、Yの間を短絡状態にするので、ループ44dは短絡状態になり第4特定状態が成立するため、状態取得部56は、すべての移動経路上に支障物が存在しないものと判定し、他のホームドア装置100Bを通常通り動作させる。
【0089】
本実施形態のホームドア装置100の特徴を説明する。ホームドア装置100は、プラットホームの乗降口を構成する扉12を開閉駆動する駆動部14と、扉12の全開状態、扉12の全閉状態、扉12の移動経路上に支障物が存在しない状態および駆動部14の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知部23と、外部の操作端末35と無線通信を行う無線通信部21と、無線通信部21が操作端末35から信号を受信していない場合、検知部23が検知している特定状態を総合制御盤50に送信する特定状態送信部24と、無線通信部21が操作端末35から信号を受信した場合、検知部23の検知結果に関わらず、特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤50に送信する模擬状態送信部22とを備える。
【0090】
この構成によれば、故障や点検のために一のホームドア装置100Aが停止する場合でも、ホームドア装置100Aが特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤50に送信するので、この装置と連携する他のホームドア装置100Bを使用できる。
【0091】
本実施形態では、模擬状態送信部22は、総合制御盤50と接続された電気回路に設けられたバイパススイッチP1~P4を導通させることで、模擬状態を総合制御盤50に送信し、模擬状態送信部22は、無線通信部21が操作端末35から信号を受信したことに応じて、バイパススイッチP1~P4を導通させるリレー回路22rを含んでいる。
【0092】
この場合、リレー回路22rによってバイパススイッチP1~P4を導通させるから、簡単な構成で模擬状態送信部22を実現できる。リレー回路22rを用いるので、大気中の放射線による誤動作を防止できる。
【0093】
本実施形態では、模擬状態送信部22は、リレー回路22rを動作させ続ける自己保持回路25を備えており、自己保持回路25には、総合制御盤50から電力を供給される。この場合、故障等により個別制御盤20の電源が使用できない場合でも、総合制御盤50からの電力で自己保持回路25を動作させることができる。
【0094】
本実施形態では、無線通信部21は樹脂に覆われ鉛直面において操作端末35の作用を検知する。この場合、ホームドア装置100が風雨に晒されても無線通信部21への雨水の浸入を抑制できる。また、鉛直面に設けられているので、落下物や仮置き物による誤操作を防止できる。また、無線通信部21は、扉12を収納する戸袋部10の内部に設けられているので、無線通信部21への雨水の浸入を抑制できる。また、戸袋部10表面の少なくとも一部は、電磁波が透過する透過部材で構成されているので、無線通信部21と操作端末35との間の無線通信の通信エラーを減らせる。
【0095】
本実施形態では、無線通信部21が操作端末35から信号を受信したことを外部に報知する報知部27を備える。この場合、ホームドア装置100が停止モードであることを容易に判別できる。また、報知部27は、扉12を収納する戸袋部10の表面に設けられているので、操作員や乗務員から容易に視認できる。また、報知部27は、模擬状態であることを報知するので、操作員や乗務員は、ホームドア装置100が模擬状態であることを容易に認識できる。
【0096】
以下、本発明の第2、第3実施形態を説明する。第2、第3実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0097】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、ホームドア装置100の制御方法である。この制御方法は、プラットホームの乗降口において開閉駆動される扉12の全開状態、当該扉12の全閉状態、扉12の移動経路上に支障物が存在しない状態および扉12を駆動する駆動部14の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知ステップと、外部の操作端末35と無線通信を行う無線通信部21が操作端末35から信号を受信していない場合、検知ステップで検知した特定状態を総合制御盤50に送信するステップと、無線通信部21が操作端末35から信号を受信した場合、検知ステップの検知結果に関わらず、特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤50に送信するステップと、を含む。本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用および効果を奏する。
【0098】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、ホームドア装置100の制御プログラム(コンピュータプログラム)である。第3実施形態の制御プログラムは、プラットホームの乗降口において開閉駆動される扉12の全開状態、当該扉12の全閉状態、扉12の移動経路上に支障物が存在しない状態および扉12を駆動する駆動部14の異常が無い状態の少なくとも1つの状態である特定状態を検知する検知ステップと、外部の操作端末35と無線通信を行う無線通信部21が操作端末35から信号を受信していない場合、検知ステップで検知した特定状態を総合制御盤50に送信するステップと、無線通信部21が操作端末35から信号を受信した場合、検知ステップの検知結果に関わらず、特定状態を模擬する模擬状態を総合制御盤50に送信するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0099】
第3実施形態の制御プログラムの機能は、ホームドア装置100の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとしてホームドア装置100のストレージ(不図示)にインストールされてもよい。この制御プログラムは、ホームドア装置100の個別制御盤20を構成するコンピュータのプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
【0100】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用および効果を奏する。
【0101】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0102】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0103】
実施形態の説明では、特定状態送信部24が、オン時に短絡状態になりオフ時に非短絡状態になる2つの端子から特定状態を送信する例を示したが、本発明はこれに限定されない。特定状態送信部は、特定状態を総合制御盤に伝達可能なものであればよい。例えば、総合制御盤に論理信号を供給する電子回路であってもよい。
【0104】
実施形態の説明では、模擬状態送信部22が、リレーの接点からなるバイパススイッチである例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バイパススイッチは半導体スイッチであってもよいし、模擬状態送信部は、総合制御盤に論理信号を供給する電子回路であってもよい。
【0105】
実施形態の説明では、模擬状態送信部22が、特定状態送信部24の出力端子に接続され、第2伝送路44を介して状態を送信する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、模擬状態送信部は、第2伝送路とは別の伝送手段を介して状態を送信するものであってもよいし、特定状態送信部と非接続であってもよい。
【0106】
実施形態の説明では、解除受信部22pが、操作端末35の磁界に応動して開閉するリードスイッチである例を示したが、解除受信部22pは、公知の操作方法に応動して無線通信部21を解除可能な電子回路であってもよい。
【0107】
実施形態の説明では、模擬状態送信部22を駆動する電力が総合制御盤50に設けられた電源55から供給される例を示したが、本発明はこれに限定されない。模擬状態送信部22に供給する電力は、電源55を含む複数の電源から供給されてもよいし、電源55とは別の外部電源から供給されてもよいし、個別制御盤20に設けられたバッテリー等の電源から供給されてもよい。
【0108】
上述の変形例は、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0109】
上述した各実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0110】
1 プラットホームドアシステム、 P1~P4 バイパススイッチ、 12 扉、 14 駆動部、 20 個別制御盤、 21 無線通信部、 22 模擬状態送信部、 22r リレー回路、 23 検知部、 24 特定状態送信部、 25 自己保持回路、 26 扉制御部、 27 報知部、 35 操作端末、 50 総合制御盤、 55 電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7