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特許7523982流体機械、回転情報算出方法、及び建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】流体機械、回転情報算出方法、及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/253 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
F03C1/253
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020125281
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021611
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 彰
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-139983(JP,A)
【文献】特開2015-151973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0132069(US,A1)
【文献】特開2000-087868(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる検出孔を有する弁板と、
前記検出孔に流入される前記流体の圧力を取り出す圧力取り出し部と、
前記圧力取り出し部に取り付けられ、前記流体の圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部の検出結果に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する算出部と、
を備える
流体機械。
【請求項2】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる検出孔を有する弁板と、
前記検出孔に流入される前記流体の圧力を取り出す圧力取り出し部と、を備え、
前記弁板は、
前記検出孔が形成されている箇所で、かつ前記ハウジング側の一面に形成されたピストン収納凹部と、
前記ピストン収納凹部内に前記ピストン収納凹部の開口を閉塞するように収納され前記検出孔に通じるピストン孔が形成された閉塞ピストンと、
を備える
流体機械。
【請求項3】
前記シリンダ室に前記シリンダブロックの回転軸線に沿って往復動自在に設けられたピストンを備え、
前記弁板における前記ピストンの上死点位置及び下死点位置の少なくともいずれか一方に前記検出孔が形成されている
請求項1又は請求項2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記検出孔に連なって通じる延長孔を有し、
前記圧力取り出し部は、前記延長孔を介して前記検出孔の圧力を取り出す請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項5】
前記延長孔は一直線上に形成されている
請求項4に記載の流体機械。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記流体が供給、排出され前記給排ポートと連なって通じる吸排口を有するリアフランジである
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項7】
前記弁板は、
前記検出孔が形成されている箇所で、かつ前記ハウジング側の一面に形成されたピストン収納凹部と、
前記ピストン収納凹部内に前記ピストン収納凹部の開口を閉塞するように収納され前記検出孔に通じるピストン孔が形成された閉塞ピストンと、
を備える
請求項1,3から6のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項8】
前記ピストン収納凹部の内側面と前記閉塞ピストンの外側面との間からの前記流体の漏れを防止するシール部を備えた
請求項2又は請求項7に記載の流体機械。
【請求項9】
前記検出孔は、少なくとも第1検出孔及び第2検出孔を有し、
前記圧力検出部は、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部を有し、
前記第1検出孔及び前記第2検出孔は、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とが位相差を有するように形成されている請求項1に記載の流体機械。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記第1検出孔に連なって通じる第1延長孔、及び前記第2検出孔に連なって通じる第2延長孔を有し、
前記第1圧力検出部は、前記第1延長孔の前記第1検出孔とは反対側に設けられており、
前記第2圧力検出部は、前記第2延長孔の前記第2検出孔とは反対側に設けられている請求項9に記載の流体機械。
【請求項11】
前記位相差は、10°~170°の間、又は190°~350°の間の任意の値である請求項9又は請求項10に記載の流体機械。
【請求項12】
前記位相差は、90°又は270°である
請求項11に記載の流体機械。
【請求項13】
前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部を備える
請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項14】
前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部を有する請求項13に記載の流体機械。
【請求項15】
前記算出部は、前記シリンダブロックの回転角が一定の角度に達したときに前記カウント算出部のカウント値をリセットするリセット部を有する請求項14に記載の流体機械。
【請求項16】
前記算出部は、前記パルスをカウントした時間を計測するタイマを有する請求項1に記載の流体機械。
【請求項17】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、
前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、
前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、
を備える流体機械の回転情報算出方法であって、
前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号のパルスの立ち上がり順序を検出する順序検出工程と、
前記順序検出工程で検出された順序に基づいて前記シリンダブロックの回転方向を決定する回転方向決定工程と、
を有する
回転情報算出方法。
【請求項18】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、
前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、
前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、
を備える流体機械の回転情報算出方法であって、
前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントするカウント工程と、
前記カウント工程によるカウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出する回転角算出工程と、
を有する
回転情報算出方法。
【請求項19】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、
前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、
前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部と、
前記パルスをカウントした時間を計測するタイマと、
を有する流体機械の回転情報算出方法であって、
前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号の周波数を求める周波数算出工程と、
前記周波数算出工程によって求められた前記周波数をFV変換して生成された電圧値に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する回転数算出工程と、を有する
回転情報算出方法。
【請求項20】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、
前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、
前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部と、
前記パルスをカウントした時間を計測するタイマと、
を有する流体機械の回転情報算出方法であって、
前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントするカウント工程と、
一定時間内での前記カウント工程のカウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する回転数算出工程と、
を有する
回転情報算出方法。
【請求項21】
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室、及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、
前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、
前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部と、
前記パルスをカウントした時間を計測するタイマと、
を有する流体機械の回転情報算出方法であって、
前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントするカウント工程と、
前記カウント工程で、一定のカウント値に達するのに要した時間に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する回転数算出工程と、
を有する
回転情報算出方法。
【請求項22】
流体機械と、
前記流体機械が搭載され、前記流体機械によって駆動される車体と、を備え、
前記流体機械は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室と前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる検出孔を有する弁板と、
前記検出孔に流入される前記流体の圧力を取り出す圧力取り出し部と、
を備える
建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械、回転情報算出方法、及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械としては、例えば油圧ショベル等の建設機構の走行用として用いられる油圧モータがある。油圧モータは、ハウジングと、ハウジング内に回転自在に支持されたシャフトと、シャフトの外周面に嵌合固定され、複数のシリンダ室が回転方向に並んで形成されているシリンダブロックと、各シリンダ室に収納され回転軸線方向に沿って移動可能なピストンと、ハウジング内に収納されシリンダブロックを挟んで回転軸線方向の両側に配置される斜板及び弁板と、を有している。
【0003】
ピストンの端部は斜板側に突出されており、斜板に対して摺動可能に接するシューを介して連結されている。各シリンダ室は、弁板を介してハウジングの供給口及び排出口に連なって通じている。弁板には、シリンダ室と供給口及び排出口とを連なって通じさせる供給ポート及び排出ポートが形成されている。
そして、供給口及び弁板を介してシリンダ室に作動油が供給されることにより、この作動油の圧力によってピストンが斜板に押し当てられる。この際、斜板に対してシューが摺動されてピストンの斜板を押し当てる力の反力が回転方向への力に変換される。シリンダブロック及びピストンが一体となって回転すると、シリンダ室内でピストンがスライド移動(ピストン運動)を繰り返す。このとき、シリンダ室内の空間容積が変化することにより、ハウジングの排出口から作動油が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-120550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油圧モータ等の流体機械は、流体を利用して回転力を得るのでシャフト(シリンダブロック)の回転情報を取得するためには外付けの回転検出機器が必要になる。このため、流体機械の構造が複雑化する可能性があった。
【0006】
本発明は、安価に回転情報を取得することができる流体機械、回転情報算出方法、及び建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る流体機械は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる検出孔を有する弁板と、前記検出孔に流入される前記流体の圧力を取り出す圧力取り出し部と、を備える。
【0008】
このように構成することで、検出孔にシリンダポートの流体が流入される。検出孔が形成されている弁板に対してシリンダブロックが回転することにより、検出孔とシリンダポートとが連なって通じたり遮断されたりを繰り返す。このため、検出孔に流入される流体の圧力が脈動される。この脈動による流体の圧力波形を圧力取り出し部を介して取り出し、この取り出した圧力波形を検出することにより、シリンダブロックの回転数や回転角等の回転情報を取得することができる。また、外付けの回転検出機器等を必要としないので、流体機械の構造を簡素化できる。
【0009】
上記構成で、前記圧力取り出し部に取り付けられ、前記流体の圧力を検出する圧力検出部を備えてもよい。
【0010】
上記構成で、前記シリンダ室に前記回転軸線に沿って往復動自在に設けられたピストンを備え、前記弁板における前記ピストンの上死点位置及び下死点位置の少なくともいずれか一方に前記検出孔が形成されてもよい。
【0011】
上記構成で、前記ハウジングは、前記検出孔に連なって通じる延長孔を有し、前記圧力取り出し部は、前記延長孔を介して前記検出孔の圧力を取り出してもよい。
【0012】
上記構成で、前記延長孔は一直線上に形成されてもよい。
【0013】
上記構成で、前記ハウジングは、前記流体が供給、排出され前記給排ポートと連なって通じる吸排口を有するリアフランジでもよい。
【0014】
上記構成で、前記弁板は、前記検出孔が形成されている箇所で、かつ前記ハウジング側の一面に形成されたピストン収納凹部と、前記ピストン収納凹部内に前記ピストン収納凹部の開口を閉塞するように収納され前記検出孔に通じるピストン孔が形成された閉塞ピストンと、を備えてもよい。
【0015】
上記構成で、前記ピストン収納凹部の内側面と前記閉塞ピストンの外側面との間からの前記流体の漏れを防止するシール部を備えてもよい。
【0016】
上記構成で、前記圧力検出部の検出結果に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する算出部を備えてもよい。
【0017】
上記構成で、前記検出孔は、少なくとも第1検出孔及び第2検出孔を有し、前記圧力検出部は、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部を有し、前記第1検出孔及び前記第2検出孔は、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とが位相差を有するように形成されてもよい。
【0018】
上記構成で、前記ハウジングは、前記第1検出孔に連なって通じる第1延長孔、及び前記第2検出孔に連なって通じる第2延長孔を有し、前記第1圧力検出部は、前記第1延長孔の前記第1検出孔とは反対側に設けられており、前記第2圧力検出部は、前記第2延長孔の前記第2検出孔とは反対側に設けられてもよい。
【0019】
上記構成で、前記位相差は、10°~170°の間、又は190°~350°の間の任意の値であってもよい。
【0020】
上記構成で、前記位相差は、90°又は270°であってもよい。
【0021】
上記構成で、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部を備えてもよい。
【0022】
上記構成で、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部を有してもよい。
【0023】
上記構成で、前記算出部は、前記シリンダブロックの回転角が一定の角度に達したときに前記カウント算出部のカウント値をリセットするリセット部を有してもよい。
【0024】
上記構成で、前記算出部は、前記パルスをカウントした時間を計測するタイマを有してもよい。
【0025】
本発明の他の態様に係る回転情報算出方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、を備える流体機械の回転情報算出方法であって、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号のパルスの立ち上がり順序を検出する順序検出工程と、前記順序検出工程で検出された順序に基づいて前記シリンダブロックの回転方向を決定する回転方向決定工程と、を有する。
【0026】
このような方法とすることで、第1圧力検出部の出力信号と第2圧力検出部の出力信号とを利用して、回転情報としての回転方向を容易に決定することができる。
【0027】
本発明の他の態様に係る回転情報算出方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、を備える流体機械の回転情報算出方法であって、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントするカウント工程と、前記カウント工程によるカウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出する回転角算出工程と、を有する。
【0028】
このような方法とすることで、第1圧力検出部の出力信号と第2圧力検出部の出力信号とを利用して、回転情報としての回転角を容易に算出することができる。
【0029】
本発明の他の態様に係る回転情報算出方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部と、前記パルスをカウントした時間を計測するタイマと、を有する流体機械の回転情報算出方法であって、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号の周波数を求める周波数算出工程と、前記周波数算出工程によって求められた前記周波数をFV変換して生成された電圧値に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する回転数算出工程と、を有する。
【0030】
このような方法とすることで、第1圧力検出部の出力信号と第2圧力検出部の出力信号とを利用して、回転情報としての回転数を容易に算出することができる。
【0031】
本発明の他の態様に係る回転情報算出方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部と、前記パルスをカウントした時間を計測するタイマと、を有する流体機械の回転情報算出方法であって、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントするカウント工程と、一定時間内での前記カウント工程のカウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する回転数算出工程と、を有する。
【0032】
このような方法とすることで、第1圧力検出部の出力信号と第2圧力検出部の出力信号とを利用して、回転情報としての回転数を容易に算出することができる。
【0033】
本発明の他の態様に係る回転情報算出方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室、及び前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる第1検出孔及び第2検出孔を有する弁板と、前記第1検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第1圧力検出部と前記第2検出孔に流入される前記流体の圧力の検出結果を信号として出力する第2圧力検出部と、前記第1圧力検出部の出力信号と前記第2圧力検出部の出力信号とに基づいて前記シリンダブロックの回転方向を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントし、カウント値に基づいて前記シリンダブロックの回転角を算出するカウント算出部と、前記パルスをカウントした時間を計測するタイマと、を有する流体機械の回転情報算出方法であって、前記算出部は、前記第1圧力検出部の出力信号及び前記第2圧力検出部の出力信号の少なくともいずれか一方の出力信号のパルスをカウントするカウント工程と、前記カウント工程で、一定のカウント値に達するのに要した時間に基づいて前記シリンダブロックの回転数を算出する回転数算出工程と、を有する。
【0034】
このような方法とすることで、第1圧力検出部の出力信号と第2圧力検出部の出力信号とを利用して、回転情報としての回転数を容易に算出することができる。
【0035】
本発明の他の態様に係る建設機械は、流体機械と、前記流体機械が搭載され、前記流体機械によって駆動される車体と、を備え、前記流体機械は、ハウジングと、前記ハウジング内に回転軸線回りに回転自在に収納され、流体が給排されるシリンダ室と前記シリンダ室に連なって通じるシリンダポートを有するシリンダブロックと、前記回転軸線方向で前記ハウジングと前記シリンダブロックとの間に配置され、前記シリンダポートに連なって通じる複数の給排ポートが前記回転軸線回りに並んで形成されているとともに、前記回転軸線回りで隣り合う前記給排ポートの間に形成され前記シリンダポートと連なって通じる検出孔を有する弁板と、前記検出孔に流入される前記流体の圧力を取り出す圧力取り出し部と、を備える。
【0036】
このように構成することで、簡素な構造でシリンダブロックの回転情報を取得することが可能な建設機械を提供できる。
【発明の効果】
【0037】
上述の流体機械、回転情報算出方法、及び建設機械は、簡素な構造でシリンダブロックの回転情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態における建設機械の概略構成図。
図2】本発明の第1実施形態における油圧モータの一部を破断して示す構成図。
図3】本発明の第1実施形態における弁板の平面図。
図4】本発明の第1実施形態におけるA相の圧力波形及びB相の圧力波形のグラフ。
図5】本発明の第1実施形態における建設機械を上方からみた概略構成図。
図6】本発明の第2実施形態における弁板の下死点検出孔に対応する箇所の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0040】
<建設機械>
図1は、建設機械100の概略構成図である。
図1に示すように、建設機械100は、例えば油圧ショベルなどである。建設機械100は、旋回体101と、旋回体101の下部に設けられた走行体102と、これら旋回体101や走行体102を駆動する油圧モータ(請求項における流体機械の一例)1と、を備える。
【0041】
旋回体101は、油圧モータ1によって走行体102の上部で旋回する。旋回体101は、この旋回体101に搭乗する操作者を支持するキャブ103と、キャブ103に一端が連結されたブーム104と、ブーム104の他端に一端が連結されたアーム105と、アーム105の他端に連結されたバケット106と、を備える。ブーム104は、キャブ103に対して揺動する。アーム105は、ブーム104に対して揺動する。バケット106は、アーム105に対して揺動する。
【0042】
[第1実施形態]
<油圧モータ>
図2は、油圧モータ1の一部を破断して示す構成図である。
図2に示すように、油圧モータ1は、ケーシング(請求項におけるハウジングの一例)2と、ケーシング2内に回転軸線C回りに回転自在に設けられたシリンダブロック3と、回転軸線C方向でケーシング2とシリンダブロック3との間に設けられた弁板4と、ケーシング2の外側面2aに設けられた圧力センサ(請求項における圧力検出部の一例)5と、等を主構成としている。油圧モータ1は、流体としての作動油によってシリンダブロック3が回転され、このシリンダブロック3の回転を出力することにより、キャブ103を旋回させたり走行体102を走行させたりする。
【0043】
ケーシング2は、開口部6aを有するフロントハウジング6と、フロントハウジング6の開口部6aを閉塞するリアフランジ7と、を備える。フロントハウジング6内に、シリンダブロック3が収納されている。リアフランジ7には、作動油が供給、排出される給排口8が形成されている。この給排口8を介して、シリンダブロック3側に作動油が供給されたりシリンダブロック3から作動油が排出されたりする。
【0044】
シリンダブロック3は、フロントハウジング6内に回転自在に支持された図示しないシャフトに嵌め合わされて固定されている。シャフトの軸心と回転軸線Cとが一致されており、これによってシリンダブロック3が回転軸線C回りに回転する。
シリンダブロック3は、円柱状に形成されている。シリンダブロック3には、図示しないシャフトの周囲を取り囲むように複数のシリンダ室9が形成されている。
【0045】
複数のシリンダ室9は、回転軸線Cと同心のピッチ円上に沿って等間隔に配置されている。シリンダ室9は、フロントハウジング6の底部6b側が開口され、かつリアフランジ7側が閉じられた凹部である。シリンダブロック3のリアフランジ7側の端部3aには、各シリンダ室9に対応する位置に、各シリンダ室9とシリンダブロック3の外部とを連なって通じさせるシリンダポート10が形成されている。シリンダポート10が、弁板4を介してリアフランジ7の給排口8と連なって通じる。
【0046】
各シリンダ室9には、ピストン11が回転軸線C方向に沿って往復動自在に収納されている。これにより、ピストン11はシリンダブロック3の回転に伴って回転軸線Cを中心に周回するように回転する。ピストン11の内部には、シリンダ室9内の作動油を貯留する空洞が形成されている。ピストン11の往復動は、シリンダ室9への作動油の吸入及びシリンダ室9からの作動油の排出と連関している。詳細は後述する。
【0047】
ピストン11におけるフロントハウジング6の底部6b側の端部は、この底部6bの内面に設けられた図示しない斜板の摺動面に摺動可能に接している。この斜板の摺動面は、回転軸線Cに対して傾いた平坦な面である。斜板は、シリンダ室9内に作動油が供給された際、作動油の圧力によってピストン11を押す力を回転軸線C回りの方向の力に変換する役割を有する。詳細は、後述する。
【0048】
<弁板>
弁板4は、リアフランジ7とシリンダブロック3の端部3aとの間に配置された円板状のものである。弁板4は、リアフランジ7に固定されている。弁板4は、シリンダブロック3が回転軸線C回りに回転する場合であっても、リアフランジ7に対して静止する。弁板4とシリンダブロック3の端部3aとの間に形成される作動油の油膜の静圧によって、シリンダブロック3が支持されている。
【0049】
図3は、弁板4の平面図である。
図2図3に示すように、弁板4の径方向中央には、図示しないシャフトを挿し通す貫通孔12が弁板4の板厚方向に貫通して形成されている。弁板4のシリンダブロック3側の第1面4aには、貫通孔12の周囲を取り囲むように、かつ貫通孔12に通じるように、回転軸線C方向からみて円環状の内径側凹部13が形成されている。また、弁板4の第1面4aには、外周部に沿う円環状の外径側凹部14が形成されている。
【0050】
弁板4には、シリンダブロック3の各シリンダポート10に連なって通じる2つの給排ポート15が形成されている。2つの給排ポート15は、回転軸線Cを中心にして対称に配置されている。各給排ポート15は、弁板4の厚さ方向に貫通して形成されている。各給排ポート15は、弁板4のシリンダブロック3側の第1面4aから弁板4の厚さ方向中央に至る間に形成された長凹部16と、弁板4の厚さ方向中央から弁板4のリアフランジ7側の第2面4bに至る間に形成された3つの給排孔17と、からなる。長凹部16と各給排孔17とは、連なって通じている。
【0051】
長凹部16は、例えば回転軸線C回りの所定角度範囲での円弧状で、かつ長円形状に形成されている。長凹部16のピッチ円Sは、シリンダブロック3のシリンダポート10の回転軌跡上に位置している。3つの給排孔17は、長凹部16に対して周方向に等間隔で配置されている。このような給排ポート15を介して、リアフランジ7の給排口8とシリンダブロック3のシリンダポート10とが連なって通じる。
【0052】
このような構成のもと、図2図3に示すように、リアフランジ7の給排口8及びシリンダポート10を介してシリンダ室9に作動油が供給されると、この作動油の圧力によりシリンダ室9からピストン11が押し出される。この際、ピストン11が図示しない斜板の摺動面を押した反力が回転軸線C回りの周方向への力に変換されてピストン11とともにシリンダブロック3が回転される。
【0053】
シリンダ室9から最もピストン11が押し出された上死点から、ピストン11は図示しない斜板によってシリンダ室9内へと進入される動作に転じる。シリンダ室9内にピストン11が進入される際には、シリンダ室9内の空間容積が縮小され、シリンダポート10を介してリアフランジ7の給排口8から作動油が排出される。シリンダ室9から最もピストン11が進入された下死点から、ピストン11は再びシリンダ室9から押し出される。これを繰り返しながらシリンダブロック3とピストン11とが回転軸線C回りに回転する。
【0054】
なお、本第1実施形態の油圧モータ1のシリンダ室9(ピストン11)の個数は奇数である。
ここで、一般的に油圧モータのシリンダ室(ピストン)の個数は奇数である。これは、作動油の流動変動をできる限り小さくするためである。すなわち、ピストンの本数が3本以上で、かつピストンの本数が奇数の場合は2倍の次数の流量変動がある。これに対し、ピストンの本数が偶数の場合は同じ位相差で油圧モータ1を駆動すると本数と同じ次数の流量変動となり変動率が大きくなるからである。
【0055】
図3に戻り、弁板4の第1面4aには、各長凹部16の長手方向両端の間に、一対の切換ランド18a,18b(下死点切換ランド18a、上死点切換ランド18b)が形成される。換言すれば、2つの給排ポート15は、一対の切換ランド18a,18bを挟んで両側に形成されている。一対の切換ランド18a,18bは、第1面4aと同一平面である。シリンダブロック3のシリンダポート10は、シリンダブロック3が回転される際、一対の切換ランド18a,18bを介して2つの給排ポート15のうちの一方に連なって通じたり他方に連なって通じたりして切り換わる。
【0056】
以下の説明では、一対の切換ランド18a,18bのうち、ピストン11の動作が下死点から上死点へと変移する箇所に対応する切換ランド18aを下死点切換ランド18aという。また、一対の切換ランド18a,18bのうち、ピストン11の動作が上死点から下死点へと変移する箇所に対応する切換ランド18bを上死点切換ランド18bという。
【0057】
弁板4の第1面4aには、長凹部45の長手方向両端から各切換ランド18a,18bに向けて延びるノッチ19が形成されている。ノッチ19は、回転軸線C方向からみて一方の長凹部45の長手方向端部から他方の長凹部45の長手方向端部に向かうに従って先細りとなるように形成されている。また、ノッチ19は、一方の長凹部45の長手方向端部から他方の長凹部45の長手方向端部に向かうに従ってノッチ深さが漸次浅くなるように形成されている。ノッチ19の先端位置は、各給排ポート15の長凹部16のピッチ円S上に位置している。
【0058】
また、一対の切換ランド18a,18bの周方向中央、つまり、ピストン11の上死点位置及び下死点位置で、かつピッチ円S上に、2つの検出孔20a,20b(下死点検出孔20a、上死点検出孔20b)が形成されている。2つの検出孔20a,20bのうち、下死点検出孔(請求項における検出孔、第1検出孔の一例)20aは、下死点切換ランド18aに形成されている。2つの検出孔20a,20bのうち、上死点検出孔(請求項における検出孔、第2検出孔の一例)20bは、上死点切換ランド18bに形成されている。
各検出孔20a,20bは、弁板4の厚さ方向に貫通して形成されている。各検出孔20a,20bには、これら検出孔20a,20b上をシリンダブロック3のシリンダポート10が通過される際に、シリンダ室9内の作動油がシリンダポート10を介して流れ込む。
【0059】
一方、図2に示すように、リアフランジ7には、下死点検出孔20aに連なって通じる下死点延長孔(請求項における延長孔、第1延長孔の一例)21aが形成されている。また、リアフランジ7には、上死点検出孔20bに連なって通じる上死点延長孔(請求項における延長孔、第2延長孔の一例)21bが形成されている。各延長孔21a,21bは、リアフランジ7の厚さ方向に貫通するように回転軸線C方向に沿って一直線上に形成されている。下死点延長孔21aには、下死点検出孔20aに流れ込んだ作動油が流れ込む。上死点延長孔21bには、上死点検出孔20bに流れ込んだ作動油が流れ込む。
ここで、弁板4に形成されている2つの検出孔20a,20bの第2面4b側の開口は、これら検出孔20a,20bに流入される作動油の圧力をリアフランジ7の各延長孔21a,21b側に取り出す圧力取り出し部25a,25bとして機能していることになる。
【0060】
リアフランジ7の外側面7a(ケーシング2の外側面2a)には、下死点延長孔21aに通じるように下死点圧力センサ(請求項における第1圧力検出部、第1圧力検出部の一例)5aが設けられている。また、リアフランジ7の外側面7a(ケーシング2の外側面2a)には、上死点延長孔21bに通じるように上死点圧力センサ(請求項における第1圧力検出部、第2圧力検出部の一例)5bが設けられている。換言すれば、ケーシング2のうち、各延長孔21a,21bの各検出孔20a,20bとは反対側に各圧力センサ5a,5bが設けられている。
【0061】
圧力センサ5a,5bは、対応する延長孔21a,21bに流れ込んだ作動油の圧力を検出する。換言すれば、圧力センサ5a,5bは、延長孔21a,21bを介して圧力取り出し部25a,25bに取り付けられている。圧力センサ5a,5bは、延長孔21a,21b及び圧力取り出し部25a,25bを介して検出孔20a,20bに流入される作動油の圧力を検出する。圧力センサ5a,5bには、制御部22が接続されている。この制御部22に、圧力センサ5a,5bによって検出された圧力を信号として出力する。
【0062】
制御部22は、各圧力センサ5a,5bに接続されているとともに油圧ポンプ110にも接続されている。制御部22は、圧力センサ5a,5bから出力された信号に基づいて、シリンダブロック3の回転情報を取得する。シリンダブロック3と図示しないシャフトとは一体となって回転するので、シリンダブロック3の回転情報とは図示しないシャフトの回転情報でもある。
制御部22は、取得したシリンダブロック3の回転情報に基づいて、油圧ポンプ110の駆動制御を行う。なお、制御部22によるシリンダブロック3の回転情報についての取得方法の詳細は後述する。
【0063】
油圧ポンプ110は、いわゆる斜板式可変容量型油圧ポンプであり、作動油を吐出する。油圧ポンプ110に設けられた斜板111の傾転角が制御部22によって制御されることにより、油圧ポンプ110から吐出される作動油の流量が制御される。このような油圧ポンプ110の吐出ポート112が、油圧モータ1におけるリアフランジ7の給排口8に接続されている。これにより、油圧ポンプ110から吐出された作動油が油圧モータ1の給排口8に供給される。
【0064】
<制御部によるシリンダブロックの回転情報についての取得方法>
次に、制御部22によるシリンダブロック3の回転情報の取得方法について説明する。
ここで、リアフランジ7に形成されている2つの延長孔21a,21bは、弁板4の各検出孔20a,20bに連なって通じている。つまり、下死点検出孔20aに連なって通じる下死点延長孔21aの作動油の圧力は、下死点検出孔20aの作動油の圧力と同等である。また、上死点検出孔20bに連なって通じる上死点延長孔21bの作動油の圧力は、上死点検出孔20bの作動油の圧力と同等である。以下の説明では、下死点圧力センサ5aが検出する作動油の圧力波形をA相の圧力波形と称する。また、上死点圧力センサ5bが検出する作動油の圧力波形をB相の圧力波形と称する。
【0065】
図4は、A相の圧力波形とB相の圧力波形とを簡略化したグラフである。
シリンダブロック3が回転されることにより、弁板4の各検出孔20a,20b上にシリンダブロック3のシリンダポート10が位置している場合と位置していない場合とが繰り返される。このため、図4に示すように、A相の圧力波形とB相の圧力波形とは、おおよそ矩形波(パルス波形)になる。つまり、各相の圧力波形は、対応する検出孔20a,20bとシリンダポート10とが連なって通じている際、シリンダ室9の作動油が流れ込んで高くなる(立ち上がる)。なお、ピストン11の下死点位置であってもシリンダポート10内の作動油が完全に抜け切ることがないので、下死点検出孔20aとシリンダポート10とが連なって通じる際は、下死点検出孔20aの圧力は高くなる。
【0066】
一方、各相の圧力波形は、対応する検出孔20a,20bとシリンダポート10とが切断されている際に下がる(立ち下がる)。なお、図4では、各相の圧力波形は、完全な矩形波で示しているが、実際は各検出孔20a,20bとシリンダポート10とがシリンダブロック3の回転に伴って徐々に連なって通じていくので、各相の圧力波形の立ち上がり及び立ち下がりは、実際は若干滑らか(若干不安定な立ち上がり、立ち下がり)になる。
【0067】
ここで、下死点検出孔20aと上死点検出孔20bとは、回転軸線Cを挟んで対向配置さている。換言すれば、下死点検出孔20aと上死点検出孔20bとは機械角で180°間隔をあけて配置されている。また、シリンダ室9(ピストン11)の個数は奇数である。このため、A相の圧力波形とB相の圧力波形とは、位相が90°ずれる。このため、制御部22では、A相の圧力波形とB相の圧力波形との位相差によりシリンダブロック3の回転情報としてシリンダブロック3の回転方向を取得する。つまり、制御部22は、A相の圧力波形におけるパルスの立ち上がり、及びB相の圧力波形におけるパルスの立ち上がり順序を検出する(順序検出工程)。このパルスの立ち上がり順序に基づいて、シリンダブロック3の回転方向を決定する(回転方向決定工程)。又は、制御部22は、A相の圧力波形におけるパルスの立ち下がり、及びB相の圧力波形におけるパルスの立ち下がり順序を検出する(順序検出工程)。このパルスの立ち下がり順序基づいて、シリンダブロック3の回転方向を決定する(回転方向決定工程)。
【0068】
また、制御部22は、シリンダブロック3の回転数を算出する算出部23と、記憶部24と、を有する。算出部23は、各相の圧力波形のパルスをカウントし、カウント値として出力するカウント算出部23aと、パルスをカウントした時間を計測するタイマ23bと、カウント算出部23aによるカウント値をリセットするリセット部23cと、を有する(いずれも図2参照)。
【0069】
算出部23は、カウント算出部23a及びタイマ23bによりA相の圧力波形又はB相の圧力波形の周波数を求める(周波数算出工程)。算出部23は、求めた周波数をFV変換して電圧値を生成する。記憶部24には、予め較正係数が記憶されている。算出部23は、FV変換して生成された電圧値に較正係数をかけてシリンダブロック3の回転数(回転速度)を算出する(回転数算出工程)。
【0070】
また、算出部23は、シリンダブロック3の回転方向別にカウント算出部23aによるカウント値を算出する(カウント工程)。さらに、算出部23は、シリンダブロック3の回転方向ごとのカウント値に基づいてシリンダブロック3の回転角を算出する(回転角算出工程)。回転角を累積することにより、一定の時間に形成された回転角、及び複数回にわたって回転角を算出した場合の累積回転角を算出することができる。この場合、累積誤差を抑制するために一定の回転角に達するとリセット部23cによってカウント算出部23aのカウント値がリセットされることにより、累積回転角がリセットされる。
【0071】
また、タイマ23bは、例えば予め設定された時間だけ計測する。この場合、複数回に分割して回転角を算出することになるので、実際の回転数変化との差が発生する可能性がある。このため、一定の回転角に達するとリセット部23cによってカウント算出部23aのカウント値がリセットされることにより、累積回転角がリセットされる。具体的なリセットのタイミングは例えば、以下のタイミングである。
【0072】
図5は、建設機械100を上方からみた概略構成図である。
図5に示すように、建設機械100には、旋回体101側に設けられた旋回体側リセット位置101aと、走行体102側に設けられた走行体側リセット位置102aとが1つずつ設定されている。走行体102に対して旋回体101が旋回されるので、走行体側リセット位置102aは固定で、旋回体101の旋回に伴って旋回体側リセット位置101aが回転される。
このような構成のもと、走行体側リセット位置102aに旋回体側リセット位置101aが位置された際、リセット部23cによってカウント値がリセットされる。
【0073】
このように、上述の第1実施形態では、弁板4の一対の切換ランド18a,18bに、弁板4の厚さ方向に貫通する2つの検出孔20a,20bが形成されている。また、リアフランジ7には、検出孔20a,20bに圧力取り出し部25a,25bを介して連なって通じる2つの延長孔21a,21bが形成されている。リアフランジ7の外側面7aには、各延長孔21a,21bに流れ込んだ作動油の圧力を検出する圧力センサ5a,5bが設けられている。換言すれば、ケーシング2のうち、各延長孔21a,21bの各検出孔20a,20bとは反対側に各圧力センサ5a,5bが設けられている。検出孔20a,20b及び延長孔21a,21bに、シリンダブロック3のシリンダポート10が連なって通じたり遮断されたりを繰り返すことにより、作動油の圧力が矩形波(パルス波形)となって各圧力センサ5a,5bで検出される。このため、制御部22は、シリンダブロック3(図示しないシャフト)の回転方向、回転数、回転角等の回転情報を容易に取得することができる。また、外付けの回転検出機器等を必要としないので、油圧モータ1の構造を簡素化できる。また、油圧モータ1全体として安価にできる。
【0074】
さらに、リアフランジ7に延長孔21を形成することにより、リアフランジ7に圧力センサ5a,5bを設けることができる。換言すれば、検出孔20a,20bの作動油の圧力を検出するための圧力センサ5a,5bのレイアウト自由度を高めることができる。また、ケーシング2に圧力センサ5a,5bを容易に固定できる。
【0075】
また、各延長孔21a,21bは、リアフランジ7の厚さ方向に貫通するように回転軸線C方向に沿って一直線上に形成されている。このため、各延長孔21a,21bに流入される作動油の圧力損失を抑えることができる。よって、延長孔21を形成した場合であってもシリンダブロック3の高精度な回転情報を取得することが可能になる。
【0076】
さらに、リアフランジ7に各延長孔21a,21bを形成することにより、圧力センサ5a,5bを配置する箇所として、給排口8が形成されたリアフランジ7とすることができる。ケーシング2全体としては、リアフランジ7上は圧力センサ5a,5bの配置スペースを確保しやすい。このため、ケーシング2上に容易に圧力センサ5a,5bを固定することができる。
【0077】
2つの検出孔20a,20bは、弁板4におけるピストン11の上死点位置及び下死点位置に形成されている。このため、圧力センサ5a,5bによって高圧の圧力波形(下死点位置における作動油の圧力波形)と低圧の圧力波形(上死点位置における作動油の圧力波形)とのバランスのよい作動油の圧力波形を検出できる。このため、油圧モータ1の高精度な回転情報を取得することが可能になる。
また、2つの検出孔20a,20bによって位相の異なる2つの圧力波形(A相の圧力波形、B相の圧力波形)を取得することができる。これら位相差のある2つの圧力波形を利用することにより、シリンダブロック3の回転方向等の回転情報を容易に取得することができる。
【0078】
とりわけ上述の実施形態を含め、一般的なシリンダ室9(ピストン11)の個数は奇数であるので、A相の圧力波形とB相の圧力波形との位相がちょうど90°ずれる。このため、シリンダブロック3の回転方向によらず、同じタイミングで各圧力センサ5a,5bの出力信号を検出し、シリンダブロック3の回転情報を取得することができる。
【0079】
回転情報を取得するにあたり、制御部22は、シリンダブロック3の回転数を算出する算出部23と、記憶部24と、を有する。このため、シリンダブロック3の回転数を容易に取得することができる。算出部23は、A相の圧力波形とB相の圧力波形とに基づいて、シリンダブロック3の回転方向を容易に算出できる。
より具体的には、制御部22は、A相の圧力波形におけるパルスの立ち上がり、及びB相の圧力波形におけるパルスの立ち上がり順序を検出する(順序検出工程)。このパルスの立ち上がり順序に基づいて、シリンダブロック3の回転方向を決定する(回転方向決定工程)。又は、制御部22は、A相の圧力波形におけるパルスの立ち下がり、及びB相の圧力波形におけるパルスの立ち下がり順序を検出する(順序検出工程)。このパルスの立ち下がり順序基づいて、シリンダブロック3の回転方向を決定する(回転方向決定工程)。このため、A相の圧力波形及びB相の圧力波形を利用してシリンダブロック3の回転方向を容易に算出できる。
【0080】
また、算出部23は、各相の圧力波形のパルスをカウントし、カウント値として出力するカウント算出部23aを有する。このため、カウント算出部23aによるカウント値に基づいてシリンダブロック3の回転角を容易に算出できる。
【0081】
さらに、算出部23は、パルスをカウントした時間を計測するタイマ23bと、カウント算出部23aによるカウント値をリセットするリセット部23cと、を有する。そして、算出部23は、カウント算出部23a及びタイマ23bによりA相の圧力波形又はB相の圧力波形の周波数を求める(周波数算出工程)。算出部23は、求めた周波数をFV変換して電圧値を生成する。この電圧値に基づいてシリンダブロック3の回転数(回転速度)を算出する(回転数算出工程)。このため、容易にシリンダブロック3の回転数を算出できる。
また、リセット部23cによって、シリンダブロック3の回転角を算出する際の累積誤差を低減できる。
【0082】
[第2実施形態]
次に、図6に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一態様には同一符号を付して説明を省略する。
図6は、第2実施形態における油圧モータ201のうち、弁板204の下死点検出孔20aに対応する箇所の拡大断面図である。
第2実施形態では、弁板204に2つの検出孔20a,20bが形成されている等の構成は、前述の第1実施形態と同様である。弁板204の各検出孔20a,20bに対応する箇所の構成は同一であるので、図5では、弁板204の下死点検出孔20aに対応する箇所のみ示し、上死点検出孔20bの図示は省略する。また、以下の説明では、下死点検出孔20aのみについて説明するが、上死点検出孔20bも同様の構成を備えている。
【0083】
<ピストン収納凹部及び閉塞ピストン>
図6に示すように、弁板204の第2面(請求項における一面の一例)204b側には、下死点検出孔20aに対応する位置に、ピストン収納凹部31が形成されている。このピストン収納凹部31には、閉塞ピストン32が収納されている。これらの点が前述の第1実施形態と相違する点である。
ピストン収納凹部31は、回転軸線C方向からみて円形状に形成されている。ピストン収納凹部31の径方向中央に、下死点検出孔20aが連なって通じている。
【0084】
閉塞ピストン32は、円板状に形成されている。閉塞ピストン32の厚さは、ピストン収納凹部31の深さよりも若干薄い程度である。閉塞ピストン32の外径は、ピストン収納凹部31の内径よりも若干小さい程度である。
閉塞ピストン32の径方向中央には、ピストン孔33が閉塞ピストン32の厚さ方向に貫通して形成されている。ピストン孔33を介して弁板204の下死点検出孔20aとリアフランジ7の下死点延長孔21aとが連なって通じる。弁板204に形成されている下死点検出孔20aのピストン収納凹部31側の開口は、下死点検出孔20aに流入される作動油の圧力をピストン孔33側に取り出す圧力取り出し部25aとして機能している。
【0085】
また、閉塞ピストン32には、ピストン収納凹部31の底面31a寄りの外周面に、Oリング(請求項におけるシール部の一例)34が設けられている。Oリング34によって、ピストン収納凹部31の内周面と閉塞ピストン32の外周面との間のシール性が確保されている。
【0086】
<閉塞ピストンの作用>
次に、閉塞ピストン32の作用について説明する。
弁板204の下死点検出孔20aに作動油が流入されると、ピストン収納凹部31に作動油が流入される。すると、ピストン収納凹部31の底面31aと閉塞ピストン32との間に油膜が形成され、この油膜の静圧によりリアフランジ7側に閉塞ピストン32が押される。これにより、閉塞ピストン32とリアフランジ7との間のシール性が高まる。
【0087】
また、閉塞ピストン32のピストン孔33内に作動油が流入され、さらにリアフランジ7の下死点延長孔21aへと作動油が流入される。この際、閉塞ピストン32とリアフランジ7との間のシール性が確保されているので、閉塞ピストン32とリアフランジ7との間から作動油が漏れ出てしまうことが抑制される。また、閉塞ピストン32の外周面にOリング34が設けられているので、ピストン収納凹部31の内周面と閉塞ピストン32の外周面との間から作動油が漏れ出てしまうことが抑制される。
【0088】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、弁板204にピストン収納凹部31が形成され、このピストン収納凹部31に閉塞ピストン32が設けられているので、リアフランジ7と弁板204との間から作動油が漏れ出てしまうことを抑制できる。このため、下死点圧力センサ5aによって、下死点検出孔20a内の作動油の圧力をより精度よく検出できる。閉塞ピストン32の外周面にOリング34を設けることにより、下死点圧力センサ5aによって、下死点検出孔20a内の作動油の圧力をさらに精度よく検出できる。
【0089】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、弁板4,204には、ピストン11の下死点位置と上死点位置とに検出孔20a,20bが形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、弁板4,204の給排ポート15の間、つまり、下死点切換ランド18aと上死点切換ランド18bとのいずれかの箇所に検出孔20a,20bが形成されていればよい。この際、A相の圧力波形とB相の圧力波形との位相差は、90°に限られるものではなく、10°~170°の間、又は190°~350°の間の任意の値であればよい。このように構成することで、各相の圧力波形のうち立ち上がり時の不安定な波形や立ち下がり時の不安定な波形が重なって正確なシリンダブロック3の回転情報を得にくくなってしまうことを防止できる。望ましくは、A相の圧力波形とB相の圧力波形との位相差は、90°又は270°であるとよい。270°であっても上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0090】
上述の実施形態では、弁板4,204に、2つの検出孔20a,20bを形成した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、少なくとも1つの検出孔が形成されていればよい。1つの検出孔が形成されていれば、制御部22によってシリンダブロック3の回転情報としての回転数や回転角を取得することができる。
【0091】
上述の実施形態では、リアフランジ7に延長孔21a,21bを形成し、これら延長孔21a,21bに流れ込む作動油の圧力を各圧力センサ5a,5bによって検出する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、延長孔21a,21bを形成しなくてもよい。各検出孔20a,20bに流れ込む作動油の圧力を各圧力センサ5a,5bによって検出するように構成してもよい。
また、油圧モータ1,201は、各検出孔20a,20bに流れ込む作動油の圧力を取り出す圧力取り出し部25a,25bを有していればよい。この圧力取り出し部25a,25bによって取り出した作動油の圧力を、各圧力センサ5a,5b等で検出すればよい。
【0092】
上述の実施形態では、各延長孔21a,21bは、リアフランジ7の厚さ方向に貫通するように回転軸線C方向に沿って一直線上に形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、各圧力センサ5a,5bのレイアウトに応じて各延長孔21a,21bの形状を変更することも可能である。
【0093】
上述の実施形態では、弁板4,204に、2つの給排ポート15が形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、給排ポート15の個数は3つ以上の複数個であってもよい。複数の給排ポート15のうち、回転軸線C回りで隣り合う給排ポート15の間に検出孔20a,20bが形成されていればよい。
上述の実施形態では、作動油によって駆動する油圧モータ1,201について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな流体によって駆動される流体機械に上述の構成を採用することが可能である。
【0094】
上述の実施形態では、シリンダブロック3の回転数の算出方法として、算出部23は、カウント算出部23a及びタイマ23bによりA相の圧力波形又はB相の圧力波形の周波数を求め、この周波数をFV変換して電圧値を生成する場合について説明した。また、記憶部24には、予め較正係数が記憶されており、算出部23は、FV変換して生成された電圧値に較正係数をかけてシリンダブロック3の回転数を算出する場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、カウント算出部23aでパルスをカウント(カウント工程)した時間をタイマ23bで計測することにより、これらパルスと時間とによりシリンダブロック3の回転数を算出(回転数算出工程)してもよい。また、カウント算出部23aによって一定のカウント値に達するまでの時間により、シリンダブロック3の回転数を算出(回転数算出工程)してもよい。
【0095】
上述の実施形態では、走行体102に、走行体側リセット位置102aが1つ設定されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、走行体側リセット位置102aを2つ以上設定してもよい。例えば、走行体側リセット位置102aを複数設定する場合、走行体側リセット位置102aを機械角で90°ごとに配置することにより、リセット部23cによってシリンダブロック3の回転角を算出する際の累積誤差をさらに低減できる。
【0096】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0097】
1,201…油圧モータ(流体機械)、2…ケーシング(ハウジング)、3…シリンダブロック、4,204…弁板、5a…下死点圧力センサ(圧力検出部、第1圧力検出部)、5b…上死点圧力センサ(圧力検出部、第2圧力検出部)、7…リアフランジ(ハウジング)、8…給排口、9…シリンダ室、10…シリンダポート、11…ピストン、15…給排ポート、20a…下死点検出孔(検出孔、第1検出孔)、20b…上死点検出孔(検出孔、第2検出孔)、21a…下死点延長孔(延長孔、第1延長孔)、21b…上死点延長孔(延長孔、第2延長孔)、23…算出部、23a…カウント算出部、23b…タイマ、23c…リセット部、25a,25b…圧力取り出し部、31…ピストン収納凹部、32…閉塞ピストン、33…ピストン孔、34…Oリング(シール部)、204b…第2面(一面)、C…回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6