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特許7523986乗り物用シートのスライド構造とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】乗り物用シートのスライド構造とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/075 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
B60N2/075
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020130657
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2021151849
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】16/827922
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521353920
【氏名又は名称】カイパー シーティング メカニズムス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】小澤 元彦
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィツキー、 トーマス デイビッド
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231340(JP,A)
【文献】特開2015-003597(JP,A)
【文献】特開2011-230715(JP,A)
【文献】特開2000-335289(JP,A)
【文献】特開平06-001167(JP,A)
【文献】特表2009-530152(JP,A)
【文献】特表2009-530187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物用シートのスライド構造であって、
前記乗り物用シートのフレームに固定されるべく構成された可動レールと、
前記可動レールを直動可能に係合支持し、乗り物の車体に固定されるべく構成された固定レールと、
前記可動レールと前記固定レールとの間に介装されるべく構成されたスライダと、
前記固定レールの底壁の下面に一体的に固定されると共に上下方向を軸として形成された雌ねじ部を有するねじ孔を有する補強板と
を備え、
前記固定レールの底壁は、前記補強板の前記ねじ孔と同芯で前記雌ねじ部の谷径よりも大きい内径の第1の貫通孔を有し、
前記スライダは、前記第1の貫通孔と同芯で前記第1の貫通孔の内径よりも大きい内径の第2の貫通孔を有し、
前記固定レール、前記スライダ及び前記補強板はピンによって互いに締結されており
前記ピンは、軸部と、前記軸部の上端側に形成された首部と、前記首部の上側に形成された頭部とを含み、
前記軸部は、前記第1の貫通孔に挿通されると共に、前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有し、
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部と螺合されていることにより前記首部が前記第2の貫通孔に進入した状態で前記固定レール前記首部と前記補強板との間に挟持されており
前記頭部は、前記第2の貫通孔の内径よりも大きい外径を有することにより、前記第2の貫通孔の周縁部において前記スライダを前記頭部と前記固定レールとの間に挟持している、スライド構造、スライド構造。
【請求項2】
前記ピンの前記軸部の先端部は、前記補強板の下面から下方に突出している、請求項1のスライド構造。
【請求項3】
前記ピンは、前記車体の部材に対する前記固定レールの位置決めを行うためのロケートピンとして機能する、請求項2のスライド構造。
【請求項4】
前記補強板は、前記固定レールの端部に取り付けられている、請求項1のスライド構造。
【請求項5】
前記補強板は、前記固定レールの後端部に取り付けられている、請求項4のスライド構造。
【請求項6】
前記補強板は、前記固定レールの底壁に溶接によって一体的に固定されている、請求項1のスライド構造。
【請求項7】
前記第2の貫通孔は、前記スライダの後端側に形成されている、請求項5のスライド構造。
【請求項8】
前記スライダは、前記固定レールの底壁に形成された第3の貫通孔に係止されているフックを含む、請求項7のスライド構造。
【請求項9】
前記フックは、前記スライダの前端側に形成されている、請求項8のスライド構造。
【請求項10】
前記第3の貫通孔は、前記固定レールの前端側に形成されている、請求項9のスライド構造。
【請求項11】
前記スライダは、
幅方向の両端部に上下前後方向に延在する少なくとも一対の側部と、
前記少なくとも一対の側部を前記スライダの前端側で幅方向に連結している前連結部と、
前記少なくとも一対の側部を前記スライダの後端側で幅方向に連結している後連結部と
を含む、請求項1のスライド構造。
【請求項12】
前記前連結部及び前記後連結部は、前記固定レールの底壁の上面に配置されている、請求項11のスライド構造。
【請求項13】
前記前連結部は、前後に離隔形成された貫通孔とフック部とを含む、請求項12のスライド構造。
【請求項14】
前記フック部は、
前後方向に延びる抜き孔と、
前記抜き孔の後端部から下方に延出した下方延出部分と、前記下方延出部分の下方端から前方に延出した前方延出部分とを有するフックと
を含む、請求項13のスライド構造。
【請求項15】
前記フックは、前記固定レールの係合孔に係合可能に形成されている、請求項14のスライド構造。
【請求項16】
乗り物用シート用のスライド構造を製造する方法であって、
定レールを、前記乗り物用シートのフレームに固定されるべく構成された可動レールを直動可能に係合支持し、乗り物の車体に固定されるべく構成するステップと、
ライダを、前記可動レールと前記固定レールとの間に介装されるべく構成するステップと、
前記固定レールに補強板を固定するステップと、
前記補強板が固定された前記固定レールに前記スライダを、ピンによって締結するステップと
を含み、
前記ピンは、軸部と、前記軸部の上端側に形成された首部と、前記首部の上側に形成された頭部とを含み、
前記軸部は、前記固定レールの底壁に形成された第1の貫通孔と、前記補強板に形成されたねじ孔とを貫通し、
前記軸部に形成された雄ねじ部と前記ねじ孔に形成された雌ねじ部との螺合により前記首部が、前記スライダに形成された第2の貫通孔に進入して前記固定レールを前記首部と前記補強板との間に挟持し、
前記頭部は、前記スライダの前記第2の貫通孔の内径よりも大きい外径を有することにより、前記第2の貫通孔の周縁部において前記スライダを前記頭部と前記固定レールとの間に挟持する、方法。
【請求項17】
前記ピンの前記軸部の先端部は、前記補強板の下面から下方に突出している、請求項16の方法。
【請求項18】
前記ピンは、前記車体の部材に対する前記固定レールの位置決めを行うためのロケートピンとして機能する、請求項17の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートのスライド構造に係り、特に、固定レールと、固定レールに係合してスライドする可動レールと、固定レールと可動レールとの間に介在して可動レールのスライドを円滑にするスライダと、を備えた乗り物用シートのスライド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物用シートを、乗り物の車体の前後方向にスライドするためのシートスライド構造は、一般に、車体の床に固定された固定レールと、シートクッションの下部に固定されると共に固定レールに対し前後動可能に係合支持された可動レールと、を含み構成されている。
【0003】
この構成の一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1において、固定レールは下方に突出するロケートピンを有しており、固定レールは、車体の床に対しこのロケートピンで位置決めした上で、前後に離隔配置された固定部材を介して固定されている。
また、固定レールの下面の固定部材を避けた位置に、補強板がリベットにより締結されている。この補強板は、車体前突時のシートバックの前倒に伴い固定レールに伝達される高荷重に、固定レールが十分耐えると共に床から浮かないように、主に曲げの強度と、剛性と、を高めるため取り付けられている。
従って、スライド構造において、補強板は、固定レールの端部(特に後端部)に取り付けられるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-030638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートスライド構造では、シートが円滑にスライド移動するように、固定レールと可動レールとの間に樹脂などにより形成したスライダを介在させることも行われている。
このスライダは、例えば、固定レールより少し短く延在した略梯子状の樹脂部材として形成される。
そして、スライダは、下方に突出する複数のフックを前端部及び後端部に有して固定レールの内面に沿い配置され、複数のフックそれぞれを固定レールの前後端側に設けられた底面孔に係止させることで、固定レールに対し取り付けられている。
【0006】
固定レールに対するフックの係止位置は、スライダが細長い樹脂製のため、前後端位置が望ましい。
しかしながら、特に後端位置は、補強板の好ましい設置位置でもあるため補強板に干渉してしまう場合があった。
このようなフックと補強板との干渉を回避するため、従来は、補強板に、固定レールの底面孔から下方突出するフックを逃げるべく、強度が低下することを前提に切り欠きを設けざるを得なかった。
【0007】
そのため、スライド構造に対しては、補強板の強度をできるだけ維持しつつ、スライダの固定レールへの取り付けを可能にする工夫が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、補強板の強度を維持しつつ固定レールにスライダを取り付けることができる乗り物用シートのスライド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 乗り物用シートのフレームに固定された可動レールと、
前記可動レールを直動可能に係合支持し、乗り物の車体に固定された固定レールと、
前記可動レールと前記固定レールとの間に介装されたスライダと、
前記固定レールの下面に一体的に固定されると共に上下方向を軸として形成された雌ねじ部を有するねじ孔を有する補強板と、
を備え、
前記固定レールは、前記補強板の前記ねじ孔と同芯で前記雌ねじ部の谷径よりも大きい内径の第1の貫通孔を有し、
前記スライダは、前記第1の貫通孔と同芯でその内径よりも大きい内径の第2の貫通孔を有し、
前記第1の貫通孔に挿通されると共に、前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有する軸部、並びに、前記雄ねじ部の前記雌ねじ部への締め付けにより、前記軸部の上端側に形成され前記第2の貫通孔に進入し前記固定レールを押圧する首部及び前記首部の上側に形成され前記第2の貫通孔の内径よりも大きい外径を有し前記第2の貫通孔の周縁部を前記固定レールとの間に挟持する頭部、を有するピンを、さらに備えた乗り物用シートのスライド構造である。
2) 前記ピンの前記軸部の先端部は、前記補強板の下面から下方に突出していることを特徴とする1)に記載の乗り物用シートのスライド構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補強板の強度を維持しつつ固定レールにスライダを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートのスライド構造の実施例であるスライド構造SKを説明するための横断面図である。
図2図2は、スライド構造SKが有する固定レール1を説明するための図であり、(a)が部分上面図、(b)が後側面図、(c)が部分下面図である。
図3図3は、スライド構造SKが有するスライダ3を説明するための部分上面図である。
図4図4は、図3におけるS4-S4位置での断面図である。
図5図5は、固定レール1にスライダ3を取り付けた状態を示す縦断面図である。
図6図6は、固定レール1へのスライダ3の取り付けに用いるピン6を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シートのスライド構造の実施例であるスライド構造SKを、図1図6を参照して説明する。以下の説明における上下前後の各方向及び左右方向に相当する幅方向は、シートが搭載される車体の上下前後方向及び幅方向として、各図に矢印で規定している。
【0013】
図1は、スライド構造SKを説明するための横断面図であり、補強板5が取り付けられた固定レール1と固定レール1に係合支持された可動レール2を、スライダ3の後連結部3b(図3参照)のS1-S1位置(図5参照)で切断した図である。
図1に示されるように、固定レール1は、上側に開口部1aを有する概ね矩形枠状の断面形状を呈し、紙面直交方向である前後方向に延在した押し出し部材である。
固定レール1は、図示しない固定部材を介して車体の床に固定される。
【0014】
可動レール2は、固定レール1の内部に前後動可能に係合支持された基部2aと、基部2aから上方に延出し、固定レール1の開口部1aから外部に突出したシート支持部2bと、を有している。シート支持部2bの上部には、乗り物用シートのサイドフレーム(不図示)が固定される。
このように、可動レール2が床に固定された固定レール1に対し前後方向に直動可能とされていることから、乗り物用シートは、車体の床に対し前後方向に移動可能となっている。
【0015】
固定レール1と可動レール2との間には、樹脂のスライダ3が介装されている。スライダ3により、可動レール2が固定レール1に対し、より滑らかに前後移動する。
【0016】
図2(a)は、固定レール1を示す上面図であり、簡略化のため長手方向中央部を一部不図示とした図である。図2(b)は、固定レール1を後方側から見た側面図であり、図2(c)は、固定レール1の後端部を下方から見た部分下面図である。
【0017】
固定レール1の底壁1sの前部には、貫通孔1c、及び前後に延びる角孔1b1と角孔1b1の後部に連結した丸孔1b2とからなる係合孔1bが、前後に離隔して設けられている。
底壁1sの後部には、貫通孔1e及び貫通孔1dが前後に離隔して設けられている。ここで、貫通孔1dの内径を内径φ1dとしておく。
固定レール1の底壁1sの下面1s1には、前後に長い略直方体の補強板5が溶接によって一体的に固定されている。
【0018】
補強板5には、貫通孔1dと同芯(上下方向に延びる軸線CLcを同芯とする)で、雌ねじ部5a1を有するねじ孔5aが形成されている。貫通孔1dの内径φ1dは、雌ねじ部5a1の谷径よりも大きく形成されている。
また、補強板5には、貫通孔1eと同芯で大径なる貫通孔5bが形成されている。ここで、固定レール1の底壁1sの上面1s2と補強板5の下面5cとの間の上下方向距離を、距離L15とする。
【0019】
次にスライダ3について、図1及び図3を参照して説明する。図3は、スライダ3の上面図であり、簡略化のため長手方向中央部を一部不図示として前部及び後部を示した図である。
【0020】
スライダ3は、幅方向の両端部に上下前後方向に延在する一対の側部3a,3aと、少なくとも一対の側部3a,3aを前端側で幅方向に連結する前連結部3f、及び後端側で幅方向に連結する後連結部3bを有している。
前連結部3f及び後連結部3bは、固定レール1の底壁1sの上面1s2に配置される部位である。スライダ3は、例えば、樹脂で形成される。
【0021】
前連結部3fは、前後に離隔形成された貫通孔3f1とフック部3f2とを有する。
フック部3f2は、図3のS4-S4位置での断面図である図4に示されるように、前後方向に延びる抜き孔3f2aと、抜き孔3f2aの後端部から下方に折れ曲がり、さらにその先端から前方に延出するよう二段曲げ形状に形成されたフック3f2bと、を有する。
貫通孔3f1は、固定レール1の貫通孔1cに対し、わずかに大きい内径で形成されている。
フック3f2bは、固定レール1の係合孔1bに係合可能に形成されている(詳細は後述)。
【0022】
後連結部3bは、前後に離隔形成された貫通孔3b1及び貫通孔3b2を有する。
貫通孔3b1と貫通孔3b2との前後方向ピッチは、固定レール1の貫通孔1eと貫通孔1dとの前後方向ピッチと同じであり、それぞれ大きい内径で形成されている。貫通孔3b2の内径φ3b2について言えば、内径φ1d<内径φ3b2である。
【0023】
スライダ3は、図5及び図6も参照して次に説明する構造により、固定レール1に取り付けられる。
図5は、固定レール1にスライダ3を取り付けた状態を示す縦断面図であり、図6は、その取り付けに用いるねじ付きロケートピンであるピン6を説明するための半断面図である。
【0024】
スライダ3の固定レール1への取り付けは、図5に示されるように、まず、スライダ3のフック3f2bを、固定レール1の係合孔1bに対し上方から下方へ通した後、前方に移動して引っ掛ける(矢印DRa参照)。
【0025】
これにより、スライダ3の前連結部3fが、固定レール1の上面1s2にほぼ密着した状態で係止される。
さらに、スライダ3は、フック3f2bを係合孔1bの角孔1b1の前端部に突き当てることで、固定レール1に対し前後方向に位置決めされる。
具体的には、スライダ3の貫通孔3f1,3b1,3b2が、それぞれ固定レール1の貫通孔1c,1e,1dに対し、上下方向に延びる軸線CLa,CLb,CLcで同芯位置となる。
【0026】
次に、スライダ3の後連結部3bを、ピン6により固定レール1に締結する。
ここで、ピン6の詳細を、図6を参照して説明する。
【0027】
図6に示されるように、ピン6は、直径D6aの円板状の頭部6aと、頭部6aの軸線CL6と同芯で小径の直径D6bで突出する円板状の首部6bと、首部6bから軸線CL6上に延びる軸部6cと、を有して形成されている。
【0028】
頭部6aには、ピン6を工具で回せるように、例えば6角穴6a1が形成されている。
首部6bの軸方向長さである厚さH6bは、スライダ3の後連結部3bの厚さと同じに、又はわずかに小さく設定されている。
軸部6cは、軸方向中央部において雄ねじが形成された雄ねじ部6c1を有し、先端は先細りのガイド部6c2とされている。
雄ねじ部6c1は、補強板5の雌ねじ部5a1に螺合可能である。
軸部6cの軸方向長さである長さL6cは、距離L15(図2)よりも十分長く設定されている。
【0029】
また、軸部6cの根本位置から雄ねじ部6c1の軸方向中央位置までの距離を、距離L6c1とする。この距離L6c1は、固定レール1の上面1s2から補強板5の雌ねじ部5a1の上下方向中央位置までの距離L5a1(図2)と、同じか近い距離に設定しておく。
【0030】
図5に戻り、固定レール1に位置決めされたスライダ3の貫通孔3b2から臨める固定レール1の貫通孔1dに、上方からピン6の軸部6cを挿入する。
この挿入で、雄ねじ部6c1が雌ねじ部5a1と螺合可能になるので、雄ねじ部6c1を雌ねじ部5a1に螺合させて、首部6bが底壁1sを押圧するように、ピン6を締め付ける。
これにより、首部6bはスライダ3の貫通孔3b2に進入し、頭部6aがスライダ3の貫通孔3b2の周縁上面を挟持する。
よって、スライダ3の後連結部3bは、ピン6によって固定レール1に挟持固定される。
【0031】
ピン6を雌ねじ部5a1に締め付けた状態で、ガイド部6c2は、補強板5の下面5cから下方に、位置決めに十分な量で突出し、ロケートピンとしての機能を発揮する。
【0032】
上述のようにスライダ3が取り付けられた固定レール1は、軸線CLa及び軸線CLbに対応した貫通孔1c,1eを利用し、ボルトなどによって取り付け部材を介して車体側の部材に取り付けられる。その取り付けに際しては、ロケートピンとしてのピン6によって、車体側の部材に対する位置決めを行うことができる。
【0033】
このように、スライダ3は、前連結部3fがフック3f2bにより固定レール1の底壁1sに係止され、後連結部3bが、ロケートピンとしてのピン6により底壁1sに一体化された補強板5に締結されることで、固定レール1に取り付けられる。換言するならば、スライド構造SKは、ロケートピンでもあるピン6にスライダ3の固定機能を付与してスライダ3を固定レール1に取り付ける構造を有する。
そのため、少なくとも、固定レール1の後部に取り付けられた補強板5には、強度低下をもたらすフック逃げ形状を形成する必要がない。
従って、スライダ3を、補強板5の強度を維持しつつ固定レール1に取り付けることができる。
【0034】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0035】
固定レール1,可動レール2,及びスライダ3の横断面形状は、図1に示したものに限定されず、種々の断面形状を有していてよい。
ピン6により固定レール1に取り付ける連結部は、上述のようなスライダ3の後部に設けられたものに限定されない。前後方向の中間部、前部、の連結部に適用してもよい。
【0036】
また、ピン6により固定レール1に取り付ける箇所は1箇所に限定されない。
スライダ3の複数箇所をピン6によって取り付ける場合、ロケートピンとしての機能を有するピンは一つで十分であるから、二つ目以降のピン6は、軸部6cを短くして補強板5の下面5cから下方に突出しないように軸部6cの長さを短くするとよい。
【符号の説明】
【0037】
1 固定レール
1a 開口部、 1b 係合孔、 1b1 角孔、 1b2 丸孔
1c,1d,1e 貫通孔、 1s 底壁、 1s1 下面
1s2 上面
2 可動レール、 2a 基部、 2b シート支持部
3 スライダ
3a 側部、 3b 後連結部、 3b1,3b2 貫通孔
3f 前連結部、 3f1 貫通孔、 3f2 フック部
3f2a 抜き孔、 3f2b フック
5 補強板
5a ねじ孔、 5a1 雌ねじ部、 5b 貫通孔、 5c 下面
6 ピン(ねじ付きロケートピン)
6a 頭部、 6a1 6角穴、 6b 首部、 6c 軸部
6c1 雄ねじ部、 6c2 ガイド部
CLa~CLc,CL6 軸線
D6a,D6b 直径
H6b 厚さ
L15,L5a1 距離、 L6c 長さ
SK スライド構造
φ1d,φ3b2 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6