(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】変位測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01D5/347 110D
(21)【出願番号】P 2020132239
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】仲西 祐子
(72)【発明者】
【氏名】古田 真之助
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将孝
(72)【発明者】
【氏名】片岡 基史
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-075484(JP,A)
【文献】特開2012-237644(JP,A)
【文献】特開2012-021802(JP,A)
【文献】特開平03-002520(JP,A)
【文献】特開2012-225681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/42
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を備えた走査ヘッドと2次元反射型回折格子を備え、当該走査ヘッドと当該2次元反射型回折格子との相対位置を計測する変位測定装置であって、当該
2次元反射型回折格子は直交する二次元XY方向に格子ベクトルを有する周期構造であって、
pは正の整数または無限大を表すとして、X方向およびY方向の格子ベクトルのそれぞれに平行な辺を二辺以上有する4p個頂点の正多角
形または上記4p個頂点の正多角
形の中心を回転中心として内角の1/2だけ回転させた図形
である回転図
形がX方向およびY方向に等しい周期Λで配列した構造であって、上記構造の周期Λは格子ピッチであって、上記構造の周期Λは光源波長の2倍以上であり、
上記4p個頂点の正多角
形または回転図形はZ軸方向に凹または凸であって、凹または凸は反射性の材料で構成され、凹部または凸部のXZ断面およびYZ断面形状は略台形形状であって、台形の高さhは格子の深さであって、台形の平行な二辺のうちより長い辺から脚までの傾斜角γは45
°以上の傾斜角を有し、
上記4p個頂点の正多角
形の大きさbは上記台形の上底
を含むXY面の形状の内接円の直径と下底
を含むXY面の形状の内接円の直径の平均であって、
上記回転図形の大きさbは上記台形の上底
を含むXY面の形状の外接円の直径と下底
を含むXY面の形状の外接円の直径の平均であって、
aは格子点の平面形状に応じた係数を表し、aは上記4p個頂点の正多角形または回転図形の面積/b
2
であり、λは波長を表し、nは反射した反射光が通過する領域の屈折率を表すとして、上記周期構造のデューティ比D=b/Λと格子の深さhとを用いて次の式(1)にてあらわされる垂直入射における0次回折光の回折効率η
00が15%以下になるデューティ比と格子溝深さhの大きさに規定されている、変位測定装置。
【請求項2】
pは無限大であり
、2次元格子パターンは、格子点の平面形状が円形であって、上記式(1)の係数a=π/4であって、単位構造のデューティ比D00_cと深さh00_cが、次の式(2)にて規定され、
または、pは1であり
、2次元格子パターンは、格子点の平面形状が正方形であって、上記式(1)の係数a=1であって、単位構造のデューティ比D00_sと深さh00_sが、次の式(3)にて規定され、
または、pは1であり
、2次元格子パターンは、格子点の平面形状がZ軸周りに45度回転させた正方形であって、上記式(1)の係数a=1/2であって、
単位構造のデューティ比D00_dと深さh00_dが、次の式(4)にて規定され、
または、pは2であり
、2次元格子パターンは、格子点の平面形状が正八角形であって、単位構造のデューティ比D00_oと深さh00_oが、次の式(5)にて規定される、
請求項1記載の変位測定装置。
【請求項3】
格子干渉計方式の2次元変位計測システムに搭載され、光源から入射される入射光の入射角は、垂直入射を含め0°から5°の範囲である請求項1
又は2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
回折格子により反射された光を検知し、検知した前記光をもとに変位を測定する変位測定装置であって、
光を反射する凹凸面を光の反射材料で構成された回折格子と、
前記回折格子に光を照射するための光源と、
前記回折格子により反射された光を検知する検知部と、を備え、
前記回折格子は、前記凹凸面におけるX方向と前記X方向に直交するY方向に周期的に配置される複数の凸部を有し、
前記複数の凸部には、第1凸部、第2凸部、第3凸部と、が含まれ、
前記X方向において前記第1凸部と前記第2凸部との前記回折格子の格子ピッチは、前記光の波長の2倍以上であり、
前記Y方向において前記第1凸部と前記第3凸部との前記回折格子の格子ピッチは、前記光の波長の2倍以上であ
り、
aは前記回折格子の格子点の平面形状に応じた係数を表し、bは前記凸部の幅を表し、aは前記凸部の平面形状の面積/b
2
であり、λは前記光の波長を表し、nは反射した反射光が通過する領域の屈折率を表し、Λは格子ピッチを表し、hは前記凸部の高さを表し、Dはデューティ比を表し、Dはb/Λであるとして、式(1)に示される0次回折光の回折効率η
00
が15%以下である、変位測定装置。
【請求項5】
回折格子により反射された光を検知し、検知した前記光をもとに変位を測定する変位測定装置であって、
光を反射する凹凸面を光の反射材料で構成された回折格子と、
前記回折格子に光を照射するための光源と、
前記回折格子により反射された光を検知する検知部と、を備え、
前記回折格子は、前記凹凸面におけるX方向と前記X方向に直交するY方向に周期的に配置される複数の凹部を有し、
前記複数の凹部には、第1凹部、第2凹部、第3凹部と、が含まれ、
前記X方向において前記第1凹部と前記第2凹部との前記回折格子の格子ピッチは、前記光の波長の2倍以上であり、
前記Y方向において前記第1凹部と前記第3凹部との前記回折格子の格子ピッチは、前記光の波長の2倍以上であ
り、
aは前記回折格子の格子点の平面形状に応じた係数を表し、bは前記凹部の幅を表し、aは前記凹部の平面形状の面積/b
2
であり、λは前記光の波長を表し、nは反射した反射光が通過する領域の屈折率を表し、Λは格子ピッチを表し、hは前記凹部の深さを表し、Dはデューティ比を表し、Dはb/Λであるとして、式(1)に示される0次回折光の回折効率η
00
が15%以下である、変位測定装置。
【請求項6】
前記回折格子は、凹凸面の前記光が入射する側に、前記凹凸
面を保護する保護層を設ける、請求項
4又は5に記載の変位測定装置。
【請求項7】
前記回折格子は、
前記凹凸面を有する基材と、
前記凹凸面上に設けられる光を反射する反射材と、
前記反射材を保護するための保護材と、
前記保護材と前記反射材とを接着するための接着材と、を備える請求項
4から
6のいずれか1項に記載の変位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型スケールを有する変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直線変位や角度変位等の精密な測定を行う測定器として、反射型スケールと検出ヘッドを備えた光学式変位測定装置が知られている(特許文献1、特許文献2)。この光学式変位測定装置は、搬送物の高精度な位置決め制御が必要とされる電子部品の実装装置等に広く利用されている。そして、近年の機械加工の進歩や半導体の微細化に伴って、より高精度、高分解能な測定が可能な光学式変位測定装置が要求されている。
【0003】
光学式変位測定装置に備えられる1次元のスケール格子が形成された反射型スケールでは、0次回折光の反射強度が反射防止の効果のため小さくなり、そのエネルギーが1次回折光他へ分散されるため、回折光の効率を上げることができることから、回折格子の格子溝深さをλ/(4n)に、デューティ比を0.5にすることが有効である(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-197659号公報
【文献】特開2016-138879号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yu-Chun Chang, Ping Zhou, and James H. Burge著「Analysis of phase sensitivity for binary computer-generated holograms」The Optical Society出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
投影検査機や測定顕微鏡あるいは工作機械などで測定対象物あるいはワークの変位量、寸法等を2次元的に測定する2次元変位測定装置に備えられるスケールとしては、2次元方向に関する計測を行うため一軸方向に配列された複数の直線状の格子と前記一軸方向に直交する方向に配列された複数の直線状の格子とを有する2次元スケールを採用している。
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術は、1次元スケールの回折格子を対象としており、2次元スケールの回折格子には適用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特許請求の範囲に記載の変位測定装置などを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、0次回折光の回折効率を低くすることで、検知すべき光の感度割合を高くできる回折格子を提供することができる。検出すべき光の検出感度の割合が高くなったことで、変位測定装置の変位測定精度も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】1次元の位相格子(1次元の回折格子)を有する反射型スケールに対して垂直入射における回折効率を最大化する方法を説明する図である。
【
図3】1次元の位相格子における回折光を説明する図である。
【
図4】1次元の位相格子の回折効率を定式化するための関数を説明する図であり、(A)はrect関数のグラフであり、(B)はcomb関数のグラフである。
【
図5】1次元の位相格子の垂直入射における0次回折光と±1次回折光の回折効率をデューティ比Dおよび格子溝深さhの関数としてそれぞれプロットした図であり、(A)は格子溝深さhをλ/4nに固定してプロットした図であり、(B)はデューティ比Dを0.5に固定してプロットした図である。
【
図6】2次元反射型スケールを説明する図であり、(A)は2次元格子パターンの平面図であり、(B)は2次元格子パターンの断面図である。
【
図7】2次元反射型スケールの格子点の形状について説明する図であり、(A)は格子点が直径bの円である場合を示し、(B)は直径bの円を内接円とする4p個の頂点を有する正多角形(pは正の整数)としてp=1の場合とp=2の場合を示し、(C)は直径bの円を外接円とする4p個の頂点を有する正多角形(pは正の整数)としてp=1の場合とp=2の場合を示している。以下、4p個の頂点を有する正多角形を4p個頂点の正多角形と呼ぶ。
【
図8】第1実施形態に係る格子点が円である場合の2次元反射型スケールを説明する図であり、(A)は2次元格子パターンの平面図であり、(B)は2次元格子パターンの断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る2次元反射型スケールの2次元の位相格子の回折効率を定式化するための関数を説明する図である。
【
図10】第1実施形態に係る2次元反射型スケールの2次元反射型回折格子のデューティ比DをD=1とした2次元反射型回折格子の模式図である。
【
図11】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光の回折効率をデューティ比Dおよび格子溝深さhの関数としてプロットした示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をプロットした図である。
【
図13】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をシミュレーションした結果を示す図であり、(A)は格子ピッチが10μmの場合であり、(B)は格子ピッチが1.6μmの場合の図である。
【
図14】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、0次回折光の回折効率が所定値α1以下となる範囲を等値線で表示した図である。
【
図15】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、検出回折光の回折効率が所定値α2以上となる範囲を等値線で表示した図である。
【
図16】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーが発生した場合の図である。(A)は光の垂直入射側から見た平面図であり、(B)はX
1-X
2断面である。
【
図17】第1実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーがある場合の回折効率のシミュレーション結果である。(A)は0次回折光の場合であり、(B)は検出回折光の場合である。
【
図18】第2実施形態に係る格子点が正方形である場合の2次元反射型スケールを説明する図であり、(A)は2次元格子パターンの平面図であり、(B)は2次元格子パターンの断面図である。
【
図19】第2実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をプロットした図である。
【
図20】第2実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をシミュレーションした結果を示す図である。(A)は格子ピッチが10μmの場合であり、(B)は格子ピッチが1.6μmの場合の図である。
【
図21】第2実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、0次回折光の回折効率が所定値α1以下となる範囲を等値線表示した図である。
【
図22】第2実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、検出回折光の回折効率が所定値α2以上となる範囲を等値線表示した図である。
【
図23】第2実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーが発生した場合の図である。
【
図24】第2実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーがある場合の回折効率のシミュレーション結果である。(A)は0次回折光の場合であり、(B)は検出回折光の場合である。
【
図25】第3実施形態に係る格子点がZ軸方向に45度回転した正方形である場合の2次元反射型スケールを説明する図であり、(A)は2次元格子パターンの平面図であり、(B)は2次元格子パターンの断面図である。
【
図26】第3実施形態に係る2次元反射型スケールの2次元反射型回折格子のデューティ比DをD=1とした2次元反射型回折格子の模式図である。
【
図27】第3実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をプロットした図である。
【
図28】第3実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をシミュレーションした結果を示す図である。(A)は格子ピッチが10μmの場合であり、(B)は格子ピッチが1.6μmの場合の図である。
【
図29】第3実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、0次回折光の回折効率が所定値α1以下となる範囲を等値線で表示した図である。
【
図30】第3実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、検出回折光の回折効率が所定値α2以上となる範囲を等値線で表示した図である。
【
図31】第3実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーが発生した場合の図である。
【
図32】第3実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーがある場合の回折効率のシミュレーション結果である。(A)は0次回折光の場合であり、(B)は検出回折光の場合である。
【
図33】第4実施形態に係る格子点が八角形である場合の2次元反射型スケールの説明する図であり、(A)は2次元格子パターンの平面図であり、(B)は2次元格子パターンの断面図である。
【
図34】第4実施形態に係る2次元反射型回折格子の垂直入射における0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をシミュレーションした結果を示す図である。(A)は格子ピッチが10μmの場合であり、(B)は格子ピッチが1.6μmの場合の図である。
【
図35】第4実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、0次回折光の回折効率が所定値α1以下となる範囲を等値線表示した図である。
【
図36】第4実施形態に係る2次元反射型回折格子のデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、検出回折光の回折効率が所定値α2以上となる範囲を等値線表示した図である。
【
図37】第4実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーが発生した場合の図である。
【
図38】第4実施形態に係る2次元反射型回折格子にテーパーがある場合の回折効率のシミュレーション結果である。(A)は0次回折光の場合であり、(B)は検出回折光の場合である。
【
図39】2次元反射型スケールの構造を模式的に示した一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。各図面中、同一の機能を有するものとして対応する部材には、同一符号を付している。
【0012】
図1は、投影検査機や測定顕微鏡あるいは工作機械などで測定対象物あるいはワークの変位量、寸法等を2次元的に測定する変位測定装置100の概略図である。変位測定装置100は、2次元の回折格子と、2次元回折格子上での位置検出が可能な光学式エンコーダ110と、を備える。
【0013】
2次元XY平面上での位置検出が可能な光学式エンコーダ110は、半導体製造装置などのステージに取り付けられ、2次元の高精度な座標位置測定などの変位測定に使用される。光学式エンコーダ110にとってものさしの役割を果たす2次元反射型スケール10である2次元回折格子は、光源から入射された光に対し2次元方向に反射回折光を発生させ、2つのセンサヘッド110X、110Yにて検出される。この例では、凹部11が周期的に配列される。そのため、X軸方向とY軸方向に回折現象が生じる。なお、凹部11に代えて、凸部を周期的に配列してもよい。格子ピッチがXとY方向で等しくΛと表されるとき、XおよびY方向それぞれの回折光の次数(h,k)と入射角θincおよび回折角θhkの関係は次の式(14)で与えられる。
【0014】
【数1】
(θ
inc:入射角度,θ
hk:(h,k)次回折角度,n:反射した反射光が通過する領域の屈折率、Λ:格子ピッチ,λ:波長)
【0015】
一般に2次元位置検出型光学式エンコーダにとって必要な回折次数は多くとも(1,0),(-1,0),(0,1),(0,-1)の4種類であり、以下ではこれらを検出回折光と呼ぶ。たとえば、(1,0)次回折光は、X軸方向に関する1次回折光の成分を有し、Y軸方向に関する0次回折光の成分を有する。検出回折光以外には、たとえば(0,0)が発生するが、以下ではこれを0次回折光と呼ぶ。これらの検出回折光以外の回折光は、検出対象とされない。したがって、(1,1)次回折光、(1,-1)次回折光、(-1,1)次回折光、(-1,-1)次回折光、(2,0)次回折光、(-2,0)次回折光、(0,2)次回折光および(0,-2)次回折光などは、検出されない。以下では、(1,1)次回折光、(1,-1)次回折光、(-1,1)次回折光および(-1,-1)次回折光をななめ回折光と呼ぶ。また、(2,0)次回折光、(-2,0)次回折光、(0,2)次回折光および(0,-2)次回折光を、2次回折光と呼ぶ。
【0016】
回折格子の中でも格子表面の凹凸によって光に位相変調を与えるものは位相格子と呼ばれ、凹凸の形状を最適化することで特定の回折次数の回折効率を理論的最大まで増やすことができる。格子ピッチが波長に対して十分に大きい1次元の位相格子においては、凹凸形状と回折効率の関係は非特許文献1などで説明されている。
【0017】
ここでは、1次元の位相格子に対して、垂直入射における回折効率を最大化する方法について
図2に示した手順(S1~S5)をもとに説明する。
【0018】
手順S1では、
図3のような矩形の反射型位相格子11に対して、形状のモデリングを行う。ここでは、位相格子の反射率は1とする。1次元の場合、格子ピッチΛ,bottom(凹)部分の長さb,格子溝深さhが形状パラメータとなる。これらを用いて、1次元の矩形格子のbottom(凹)部分およびtop(凸)部分の断面(XZ)形状は次の式(15)、式(16)のように表される。
【0019】
【0020】
【0021】
ただし、rect関数とcomb関数はそれぞれ次の式(17)、式(18)にて表される。rect関数、およびcomb関数のグラフは
図4の(A),(B)のように示される。
【0022】
【0023】
【0024】
また、Φはtopとbottomの位相差を表す。位相差Φは格子溝深さhの関数であり、反射型の位相格子の場合、次の式(19)で表される。
【0025】
【数6】
(n:反射した反射光が通過する領域の屈折率、λ:入射光の波長、h:格子溝深さ)
【0026】
次に、反射直後の光の波面u(x)の定式化を行う(手順S2)。
【0027】
反射直後の波面がbottomとtopの重ね合わせとして次の式(20)で示されることは非特許文献1に開示がある。
【0028】
【0029】
さらに、遠方での波面U(ξx)の定式化を行う(手順S3)。良く知られるように、これは反射直後の光の波面のフーリエ変換であり、次の式(21)にて示される。
【0030】
【0031】
フーリエ変換後の波面は周波数ξxの関数である。また、Dは格子のbottom部分の長さbと格子ピッチΛの比で表されるデューティ比であり、次の式(22)にて示される。
【0032】
【0033】
最後に、各回折次数に対する回折効率を計算して(手順S4)、検出回折光の効率が最大となる条件(D,h)を探査する(手順S5)。
【0034】
波面U(ξx)は回折次数nごとに分離することが可能であり、それぞれの絶対値二乗を計算することで各次数に対する回折効率を得る。たとえば、0次回折光の回折効率η0_1Dと±1次回折光の回折効率η1_1Dは次の式(23)、式(24)ようにデューティ比Dおよび格子溝深さhの関数として表される。
【0035】
【0036】
【0037】
1次元位置検出型光学式エンコーダで±1次回折光を検出する場合を考えると、デューティ比Dおよび格子溝深さhの組み合わせが次の式(25)に示す条件において、0次回折光の回折効率η0_1Dは0となり、±1次回折光の回折効率η1_1Dが最大となる。
【0038】
【0039】
ここで、0次回折光の回折効率η0_1Dと±1次回折光の回折効率η0_1Dおよびη1_1Dをデューティ比Dおよび格子溝深さhの関数として、格子溝深さhをλ/4nに固定してプロットした図を
図5の(A)に示し、デューティ比Dを0.5に固定してプロットした図を
図5の(B)に示す。
【0040】
以上説明した公知の方法により、1次元反射型スケールの場合は、光学式エンコーダに必要な次数の回折効率が最大となる条件に格子形状(D,h)を規定することが可能である。
【0041】
2次元反射型位相格子の回折効率を最大または最小化する格子形状の条件を明らかにし、光学式エンコーダ110によって読み取られる2次元反射型スケール10として、光学式エンコーダに必要な検出回折光の回折効率を最適化できる格子形状の2次元格子パターンを有する2次元反射型スケールを実現した。
【0042】
すなわち、2次元反射型位相格子の場合、断面(XZ面)に加えて、断面(YZ面)を含むXY平面にも周期構造が存在する。
【0043】
ここで、本開示の趣旨について述べる。例えば、光源波長790nm、格子ピッチ1μmにおける2次元反射型スケールがある場合を考える。このような2次元反射型スケールのように光源波長が格子ピッチの1倍程度よりも短い場合は、高次の回折光が少ないため、走査ヘッドで検出される検出回折光の回折効率が相対的に高い。そのため信号出力が高く、ノイズ特性の良い光学式変位測定装置を実現できる。その一方で、光源波長が格子ピッチの1倍程度よりも長い場合は、格子溝深さやデューティ比などで表される格子形状のわずかな違いによって回折効率が変動することが知られる。そのため、2次元反射型スケール面内で回折効率の変動が生じる。そのようなスケールをヘッドで走査すると、検出される信号の大きさも変動してしまい、内挿補正が難しくなることから変位検出の誤差が大きくなる。
【0044】
本開示では格子ピッチが光源波長の2倍以上に設定することにより、回折効率が格子形状の影響を受けにくく、面内での回折効率分布が一様な2次元反射型スケールを実現している。また、格子ピッチを光源波長の2倍以上に設定したことで検出回折光の回折効率が下がることの対策として、0次光の回折効率を略0に抑え、かつ検出回折光の回折効率が略最大となる2次元反射型スケールを実現している。面内での回折効率分布が安定していると同時に回折効率が高い2次元反射型スケールをヘッドと組み合わせると、ノイズ特性が良好で、内挿精度の良い光学式変位測定装置となる。
【0045】
また、例えば、検出回折光の回折効率が略最大となる2次元反射型スケールがある場合が考えられる。0次光の回折効率を略0に最適化し、検出回折光の回折効率を略最大に最適化するには、回折格子の下に多層膜が積層させる必要がある。そのような構成では、格子部分で光に位相差を付与する必要がないため、格子の溝深さをλ/(4n)よりも大幅に小さくできる。格子溝深さを小さくできる場合、格子の溝の間にゴミ等が付着しても容易にふき取れるなどの利点がある。しかし、その一方で、製造においては、回折格子に加えて多層膜を積層する工程が必要になり、材料費や、積層に必要な設備必要になる。
【0046】
本開示では、回折格子の下に多層膜を積層する必要のない、すなわち回折格子の形状を制御することで0次光の回折効率を略0、かつ検出回折光の回折効率を略最大にできる2次元反射型スケールを実現している。多層膜を積層する必要がないため構造が単純であり製法が容易であり、材料費も低減できる。
【0047】
そこで、本発明者らは、2次元反射型スケールについて、非特許文献1等に記された1次元位相格子における回折効率の定式化の手法を2次元に拡張し、光学式エンコーダに必要な検出回折光の垂直入射における回折効率を最適化できる条件に規定した格子形状の2次元格子パターンを有する2次元反射型スケール10を実現した。なお発明者らのシミュレーションによれば上記単位構造は、凹部または凸部の側面が矩形形状である90°でなくてもよく、45°以上の傾斜を有していてもよい。また発明者らが見出した、検出回折光の垂直入射における回折効率を最適化できる条件は、2次元反射型スケールの格子ピッチが光源波長の2倍以上の範囲で成り立つ。
【0048】
本発明に係る2次元反射型スケール10は、上述の如くXY方向の測定に用いられる2次元格子パターンを有するものであって、例えば、
図6の(A)、(B)に示すように、2次元格子パターンとして2次元反射型回折格子12を含んでいる。さらに、2次元反射型回折格子12は、
図6の(A)に示すように、XY面内にX方向とY方向で等しい格子ピッチΛの周期構造をもち、格子ピッチは光源波長の2倍以上であり、また、
図6の(B)に示すように、その最小単位の構造(以下、単位構造という)内にZ軸方向に凹または凸とされた凹部又は凸部からなる1つの格子点を含んでいる。なお
図6(B)は2次元反射型回折格子をX1-X2断面から見た図であるが、Y1-Y2断面からみても同様である。
【0049】
また本発明に係る2次元反射型スケール10の2次元反射型回折格子12はX1-X2断面またはY1-Y2断面からみたときの断面形状が
図6(B)で示すように完全な矩形(γ=90°)ではなく台形(γ<90°)であってもよい。
図6(B)はXZ軸方向の凹部および凸部にテーパーがある場合を示しているが、YZ軸方向にも同様のテーパーがあってもよい。
図6は2次元反射型回折格子12A″の格子点がbottomの場合である。Lbottomはbottom部分の長さであり、Ltopはtop部分の長さである。
図6(B)のように2次元反射型回折格子12A″の断面形状が台形(γ<90°)である場合、格子溝深さhが半値となるbottom部分の台形の幅をbとする。
【0050】
一方で2次元反射型回折格子の格子点がtopである場合は、格子溝深さhが半値となるtop部分の台形の幅をbとする。
【0051】
そして、本発明に係る2次元反射型スケール10における2次元格子パターンすなわち2次元反射型回折格子12の上記格子点の平面形状は、4p個頂点の正多角形(pは正の整数)又はZ軸周りに内角の1/2だけ回転させた4p個頂点の正多角形(pは正の整数)、すなわち、
図7の(A)に示すp=∞の直径がbの円、
図7の(B)に示すように直径がbの円を内接円とするp=1の正方形、p=2の正八角形等、又は、
図7の(C)に示すように直径がbの円を外接円とするp=1の正方形、p=2の正八角形等である。4p(pは正の整数)回転対称形状である。4pは、4の自然数倍の数または無限大を示す。
【0052】
このように、直交する二次元XY方向に格子ベクトルを有する周期構造であって、X方向およびY方向の格子ベクトルのそれぞれに平行な辺を二辺以上有する4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)または上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)の中心を回転中心として内角の1/2だけ回転させた図形(以下、回転図形という)がX方向およびY方向に等しい周期Λで配列した構造であって、上記構造の周期Λは格子ピッチであって、上記構造の周期Λは光源波長の2倍以上であり、上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)または回転図形はZ軸方向に凹または凸であって、凹部または凸部のXZ断面およびYZ断面形状は略台形形状であって、台形の高さhは格子の深さであって、台形の平行な二辺のうちより長い辺から脚までの傾斜角γは45°以上の傾斜角を有し、上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)の大きさbは上記台形の上底の内接円の直径と下底の内接円の直径の平均であって、上記回転図形の大きさbは上記台形の上底の外接円の直径と下底の外接円の直径の平均であって、上記周期構造のデューティ比D=b/Λと格子の深さhとを用いて次の式(1)にて表される垂直入射における0次回折光の回折効率η00が所定値α1以下になるデューティ比と深さの大きさに規定した格子形状の2次元格子パターンを有することにより、垂直入射における0次回折光の回折効率η00を所定値α1以下にすることができる。
【0053】
【数13】
(aは格子点の平面形状に応じた係数=4p個頂点の正多角形または回転図形の面積/b
2、λは波長、nは反射した反射光が通過する領域の屈折率)
【0054】
また、直交する二次元XY方向に格子ベクトルを有する周期構造であって、X方向およびY方向の格子ベクトルのそれぞれに平行な辺を二辺以上有する4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)または上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)の中心を回転中心として内角の1/2だけ回転させた図形(以下、回転図形という)がX方向およびY方向に等しい周期Λで配列した構造であって、上記構造の周期Λは格子ピッチであって、上記構造の周期Λは光源波長の2倍以上であり、上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)または回転図形はZ軸方向に凹または凸であって、凹部または凸部のXZ断面およびYZ断面形状は略台形形状であって、台形の高さhは格子の深さであって、台形の平行な二辺のうちより長い辺から脚までの傾斜角γは45°以上の傾斜角を有し、上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)の大きさbは上記台形の上底の内接円の直径と下底の内接円の直径の平均であって、上記回転図形の大きさbは上記台形の上底の外接円の直径と下底の外接円の直径の平均であって、上記周期構造のデューティ比D=b/Λと格子の深さhとを用いて表される垂直入射における検出回折光の回折効率ηkl(k,lは(1,0),(-1,0),(0,1),(0,-1)の回折次数)が所定値α2以上となるデューティ比と深さの大きさに規定した格子形状の2次元格子パターンを有する2次元反射型スケールでは、検出回折光の回折効率ηklを所定値α2以上にすることができる。
【0055】
さらに、直交する二次元XY方向に格子ベクトルを有する周期構造であって、X方向およびY方向の格子ベクトルのそれぞれに平行な辺を二辺以上有する4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)または上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)の中心を回転中心として内角の1/2だけ回転させた図形(以下、回転図形という)がX方向およびY方向に等しい周期Λで配列した構造であって、上記構造の周期Λは格子ピッチであって、上記構造の周期Λは光源波長の2倍以上であり、上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)または回転図形はZ軸方向に凹または凸であって、凹部または凸部のXZ断面およびYZ断面形状は略台形形状であって、台形の高さhは格子の深さであって、台形の平行な二辺のうちより長い辺から脚までの傾斜角γは45°以上の傾斜角を有し、上記4p個頂点の正多角形(pは正の整数または無限大)の大きさbは上記台形の上底の内接円の直径と下底の内接円の直径の平均であって、上記回転図形の大きさbは上記台形の上底の外接円の直径と下底の外接円の直径の平均であって、上記周期構造のデューティ比D=b/Λと格子の深さhとを用いて表される垂直入射における0次回折光の回折効率η00が0になるデューティ比D00と深さh00と、検出回折光の回折効率ηkl(k,lは(1,0),(-1,0),(0,1),(0,-1)の回折次数)が最大となるデューティ比D10と深さh10の中間の大きさに上記デューティ比Dと深さhが規定した格子形状の2次元格子パターンを有する2次元反射型スケールでは、垂直入射における0次回折光の回折効率η00と検出回折光の回折効率ηkl(k,lは(1,0),(-1,0),(0,1),(0,-1)の回折次数)を双方から最適化することができる。
【0056】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての2次元反射型スケール10Aについて、
図8の(A)、(B)を用いて説明する。
【0057】
この2次元反射型スケール10Aは、XY方向の測定に用いられるスケールであって、
図8の(A)に示すように、2次元反射型スケール10Aは、2次元反射型回折格子12Aの2次元格子パターンを備えている。
【0058】
2次元反射型回折格子12Aは、XY面内に周期構造をもち、その周期はX方向とY方向で等しく、Λである。格子ピッチΛは光源波長の2倍以上である。また2次元反射型回折格子12AのXY面内の単位構造は、一辺がΛの正方形であり、その中に格子点を一つ含み、格子点は、XおよびY方向の長さが等しい直径bの円である。また、
図8の(B)に示すように、2次元反射型回折格子12Aの格子点はXZ軸方向に凹部または凸部を有し、凹部または凸部の側面は理想的な矩形を有する。すなわち傾斜角γ=90°である。
【0059】
ここで、2次元反射型回折格子12に対して、0次回折光の回折効率を消去できる形状の条件について説明する。
【0060】
図8の(A)に示すように、円がXY方向に無限個並んだ2次元格子であり、2次元格子の格子ピッチはX方向およびY方向のどちらもΛであり、円の直径はbで与えられる。
【0061】
図8の(B)のように格子点はZ軸方向に凹または凸であり、その深さをhとする。格子点はtop(凸)でもbottom(凹)でも良いが、ここではX1-X2断面に示すように格子点がbottomとする。入射角は垂直入射である。
【0062】
1次元位相格子の回折効率の定式化と同様に、2次元反射型回折格子12Aに対しても形状のモデリングから始める。格子点が円である2次元反射型回折格子12Aのbottom部分およびtop部分の形状は、次の式(26)、式(27)のように表される。
【0063】
【0064】
【0065】
ここで、次の式(28)に示すcirc関数と式(29)に示すcomb関数の2種類を導入した。
【0066】
【0067】
【0068】
circ関数のグラフを
図9に示す。また、1次元の場合と同様にΦは、格子のtop部分とbottom部分の位相差を示し、次の式(30)で表される。
【0069】
【0070】
次に、入射平面波が2次元反射型回折格子で反射された直後の波面u(x,y)は、次の式(31)のように表すことができる。
【0071】
【0072】
次に、遠方での波面U(ξx,ξy)は、反射直後の波面の2次元フーリエ変換であり、次の式(32)にて表される。
【0073】
【0074】
ただし、式(32)の最後から二番目の辺を得るにあたり、次の式(33)に示されるbとΛの比で表されるデューティ比Dを定義した。定義から0≦D≦1である。
【0075】
【0076】
デューティ比Dが最大値D=1であるときの2次元反射型回折格子12A′の模式図を
図10に示す。
【0077】
また、最後の辺を得るにあたり、次の式(34)に示すsomb関数を用いた。
【0078】
【0079】
ただしsomb(0)=1である。また、circ関数のフーリエ変換は次の式(35)にて示され、comb関数のフーリエ変換は次の式(36)、式(37)に示されることを利用した。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
J1は1次の第1種ベッセル関数である。2次元フーリエ変換後は周波数ξx,ξyの関数である。ここで、上記式(32)において、δ関数のシフト量を表すnとmがそれぞれx方向およびy方向の回折次数である。
【0084】
上記式(32)は、次のように回折次数ごとに分離することができる。
【0085】
0次回折光(m=n=0)に対しては、次の式(38)のようになる。
【0086】
【0087】
それ以外の高次回折光(m=n=0以外)に対しては、次の式(39)のようになる。
【0088】
【0089】
2次元反射型回折格子の回折効率は、分離した波面の絶対値二乗|U(ξx,ξy)|2であるので、式(38)と式(30)から、0次回折光(n=m=0)の回折効率η00_cは、次の式(40)のようになる。
【0090】
【0091】
また、式(39)と式(30)から、検出回折光の回折効率η±10_c=η0±1_cは、次の式(41)にて表される。
【0092】
【0093】
したがって、この2次元反射型スケール10Aでは、XY面内における単位構造の格子点の長さすなわち円の直径bと格子ピッチΛの比として表されるデューティ比D=b/Λと、上記単位構造のZ軸方向の深さhとを用いて、上記式(1)にて表される0次回折光の回折効率η00における係数aをa=π/4とした上記式(40)で表される0次回折光の回折効率η00_cが、0となるようにデューティ比Dと深さhの大きさを規定することにより、光学式エンコーダ110にとって不要な0次回折光を消去することができる。なお、円の面積(π(b/2)2)をb2で除して係数a=π/4が定まる。
【0094】
0次回折光は光学式エンコーダにとって不要であり、これを完全にキャンセリングするには、上記式(40)においてデューティ比Dおよび格子溝深さhの組み合わせを次の式(42)にて示す条件にすればよい。
【数30】
【0095】
すなわちこの条件において0次回折光の回折効率η00_cは0になる。0次回折光の回折効率η00_cをデューティ比Dおよび格子溝深さhの関数としてプロットした結果を
図11に示す。すなわち、次の式(43)に示すように、デューティ比Dが0.80において0次回折光の回折効率η00_cは0となる。
【0096】
【0097】
一方、光学式エンコーダにとって必要な検出回折光は次数(1,0),(-1,0),(0,1),(0,-1)である。検出回折光の回折効率が最大となるのは、上記式(41)においてデューティ比Dおよび格子溝深さhが次の式(44)に示す条件を満たす場合であり、最大値はη±10_c=η0±1_c=15.8%である。
【0098】
【0099】
ここで、格子溝深さhをλ/4nに固定した場合の、0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をプロットした結果を
図12に示すように、0次回折光をキャンセルできるデューティ比Dが0.80であり、検出回折光を最大化できるデューティ比Dが0.77であり、僅かに異なる。したがってデューティ比Dと格子溝深さhを以下の式(10)であらわされる条件に規定することにより、0次回折光と検出回折光の回折効率の双方から最適化することができる。
【0100】
【0101】
本発明者らの定式化の結果が正しいことを確認するため、表1の条件にて回折効率のシミュレーションを行った結果を
図13に示す。ただし、格子溝深さhは上記式(10)の条件に固定し、回折効率をデューティ比Dの関数として計算した。
図13(A)は格子ピッチ10μmにおけるシミュレーション結果であり、本発明者らの計算結果と良く一致することが確認できる。また
図13(B)は格子ピッチ1.6μmにおけるシミュレーション結果である。一般には、波長に比べて格子周期が小さくなるほど回折効率は
図3の手順で定式化できなくなり、結果として格子点が円である2次元反射型スケール10Aの回折効率は上記式(40)および式(41)から外れるが、格子周期1.6μmにおいては十分上記式(40)および式(41)の適用範囲である。すなわち上記式(40)において0次回折光をキャンセルできるデューティ比Dの条件は式(43)から0.80であり、おなじ条件を適用することで
図13(B)においても0次回折光をほとんど0にできる。同様に上記式(41)において検出回折光を最大化できるデューティ比Dの条件は式(44)から0.77であり、おなじ条件を適用することで
図13(B)においても検出回折光を略最大化できる。
【0102】
【0103】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Aを搭載する光学式エンコーダ110においては、0次回折光の回折効率は所定値α1=15%以下であれば検出回折光の高い回折効率を維持でき、ノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
図14はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、上記式(40)で表される0次回折光の回折効率η00_cをプロットしたグラフである。回折効率η00_cは等値線で表されている。0次回折効率η00_cが所定値α1=15%以下の範囲121も明示されている。たとえば、
図14中に破線で示される以下の式(2)で表される範囲122の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、垂直入射における0次回折効率η00_cが所定値α1=15%以下となる。
【0104】
【0105】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Aを搭載する光学式エンコーダ110においては、検出回折光の回折効率は所定値α2=12%以上であれば十分にノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
図15はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、上記式(41)で表される検出回折光の回折効率η±10_c=η0±1_cをプロットしたグラフである。回折効率η±10_c=η0±1_cは等値線で表されている。検出回折効率が12%以上の範囲123も明示されている。たとえば、
図15中に破線で示される以下の式(6)で表される範囲124の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、検出回折効率が12%以上となる。
【0106】
【0107】
すなわち、格子点が円の2次元反射型回折格子12Aを2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10Aでは、2次元反射型回折格子12Aのデューティ比Dを0.7~0.87、格子溝深さhを(2.5λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下にするように最適化したものとなる。また、2次元反射型回折格子12Aのデューティ比Dを0.66~0.87、格子溝深さhを(2.35λ)/(4πn)~(3.9λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上にするように最適化したものとなる。
【0108】
また、2次元反射型回折格子12Aのデューティ比Dを0.77~0.80の中間値、格子溝深さhをλ/4nに規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光と光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率の双方から最適化した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10Aとなる。
【0109】
[第1実施形態のより具体的な実施例]
図16は格子点が円であるが、製造プロセスにおいて意図せずテーパーが発生した場合を示す。2次元反射型回折格子12A″の断面形状は完全な矩形(γ=90°)ではなく台形(γ<90°)である。
【0110】
シミュレーション条件は表1と同じであるが、テーパー角γを有する2次元反射型回折格子12A″の0次回折光と検出回折光の回折効率のシミュレーション結果を
図17(A),(B)にそれぞれ示す。ただし格子周期は1.6μmであり、テーパー角γはγ=90°, 60°,45°のそれぞれについて計算した。図より、テーパーが45°あったとしても、90°の結果と大きくは異ならならない。すなわちテーパーが45°あったとしても、十分上記式(40)および式(41)が適用できる。
【0111】
すなわち、格子点が円であり断面形状は台形(γ<90°)である2次元反射型回折格子12A″を2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10A″においても、2次元反射型回折格子12A″のデューティ比Dを0.7~0.87、格子溝深さhを(2.5λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下に最適化できる。同様に2次元反射型回折格子12A″のデューティ比Dを0.66~0.87、格子溝深さhを(2.35λ)/(4πn)~(3.9λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上に最適化できる。
【0112】
さらに、2次元反射型回折格子12A″のデューティ比Dを0.77~0.80の中間値、格子溝深さhをλ/4nに規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光と光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率の双方から最適化した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10A″となる。凹部に代えて、凸部を設ける場合も同様である。
[第2実施形態]
【0113】
次に、本発明の第2実施形態としての2次元反射型スケール10Bについて、
図18の(A)、(B)を用いて説明する。この例で凹部が周期配置されるが、凸部が周期配置されてもよい。
【0114】
この2次元反射型スケール10Bは、XY方向の測定に用いられるスケールであって、
図18の(A)に示すように、2次元反射型回折格子12Bの2次元格子パターンを備えている。
【0115】
2次元反射型回折格子12Bは、XY面内に周期構造をもち、その周期はX方向とY方向で等しく、Λである。また2次元反射型回折格子12BのXY面内の単位構造は、一辺がΛの正方形であり、その中に格子点を一つ含み、格子点は、XおよびY方向の長さが等しい1辺の長さbの正方形である。また、
図18の(B)に示すように、格子点はXZ軸方向に凹部または凸部を有し、凹部または凸部の側面は理想的な矩形を有する。すなわち傾斜角γ=90°である。
【0116】
すなわち、この2次元反射型スケール10Bでは、正方形がXY方向に無限個並んだ2次元反射型回折格子12Bであり、2次元格子の格子ピッチはX方向およびY方向のどちらもΛであり、正方形の一辺は長さがb、すなわち、内接円の直径bで与えられるとする。格子点はZ軸方向に凹または凸であり、その深さをhとする。格子点はtop(凸)でもbottom(凹)でも良いが、ここではX1-X2断面に示すように格子点がbottomとする。入射角は垂直入射である。
【0117】
格子点が正方形である2次元反射型回折格子12Bのbottom部分およびtop部分の形状は次の式(45)および式(46)にて表される。
【0118】
【0119】
【0120】
次に、反射直後の光の波面u(x,y)の定式化を次の式(47)にて行う。
【0121】
【0122】
さらに、遠方での波面U(ξx,ξy)の定式化を次の式(48)にて行う。これは反射直後の光の波面のフーリエ変換である。
【0123】
【0124】
最後に、各回折次数に対する回折効率を計算する。0次回折光(n=m=0)の回折効率η00_sは、次の式(49)にて表される。
【0125】
【0126】
また、検出回折光の回折効率η±10_s=η0±1_sは、次の式(50)にて表される。
【0127】
【0128】
したがって、この2次元反射型スケール10Bでは、XY面内における単位構造の格子点の長さすなわち正方形の1辺の長さ(内接円の直径)bと格子ピッチΛの比として表されるデューティ比D=b/Λと、上記単位構造のZ軸方向の深さhと、を用いて、上記式(1)にて表される0次回折光の回折効率η00における係数aをa=1とした上記式(49)で表される0次回折光の回折効率η00_sが、0となるようにデューティ比Dと格子溝深さhの大きさを規定することによって、光学式エンコーダ110にとって不要な0次回折光を消去することができる。なお、正方形の面積b2をb2で除して、係数a=1が定まる。
【0129】
0次回折光は光学式エンコーダ110にとって不要であり、これを完全にキャンセリングするには、式(49)においてデューティ比Dおよび格子溝深さhの組み合わせを次の式(51)にて示す条件にすればよい。
【0130】
【0131】
すなわち、この式(51)にて示す条件において格子点が正方形である2次元反射型回折格子の0次回折光の回折効率η00_sは0になる。デューティ比Dは、1/√2=0.71である。
【0132】
一方、光学式エンコーダにとって必要な検出回折光の回折効率が最大となるのは、上記式(50)においてデューティ比Dおよび格子溝深さhが次の式(52)に示す条件を満たす場合であり、最大値はη±10_s=η0±1_s=13.6%である。
【0133】
【0134】
格子溝深さhをλ/4nに固定した場合の、0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比Dの関係をプロットした結果を
図19に示す。0次回折光をキャンセルできるデューティ比Dが0.71であり、検出回折光を最大化できるデューティ比Dが0.66であり、僅かに異なる。したがってデューティ比Dと格子溝深さhを以下の式(11)であらわされる条件に規定することにより、0次回折光と検出回折光の回折効率の双方から最適化することができる。
【0135】
【0136】
本発明者らの定式化の結果が正しいことを確認するため、回折効率のシミュレーションを行った結果を
図20に示す。
図20(A)は格子ピッチ10μmにおけるシミュレーション結果であり、
図20(B)は格子ピッチ1.6μmにおけるシミュレーション結果である。シミュレーションの条件は表1と同じであるが、格子点は正方形に変更した。本発明者らの計算結果と良く一致することが確認できる。
【0137】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Bを搭載する光学式エンコーダ110においては、0次回折光の回折効率は所定値α1=15%以下であれば検出回折光の高い回折効率を維持でき、ノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
図21はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、上記式(49)で表される0次回折光の回折効率η00_sをプロットしたグラフである。回折効率η00_sは等値線で表されている。0次回折効率が所定値α1=15%以下の範囲131も明示されている。たとえば、
図21中に破線で示される以下の式(3)で表される範囲132の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、垂直入射における0次回折効率η00_cが所定値α1=15%以下となる。
【0138】
【0139】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Aを搭載する光学式エンコーダ110においては、検出回折光の回折効率は所定値α2=12%以上であれば十分にノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
図22はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、上記式(50)で表される検出回折光の回折効率η±10_s=η0±1_sをプロットしたグラフである。回折効率η±10_s=η0±1_sは等値線で表されている。検出回折効率が所定値α2=12%以上の範囲133も明示されている。たとえば、
図22中に破線で示される以下の式(7)で表される範囲134の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、検出回折効率が所定値α2=12%以上となる。
【0140】
【0141】
すなわち、格子点が正方形の2次元反射型回折格子12Bを2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10Bでは、2次元反射型回折格子12Bのデューティ比Dを0.61~0.78、格子溝深さhを(2.5λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下にするように最適化したものとなる。また、2次元反射型回折格子12Bのデューティ比Dを0.58~0.70、格子溝深さhを(2.65λ)/(4πn)~(3.65λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上にするように最適化したものとなる。
【0142】
また、2次元反射型回折格子12Bのデューティ比Dを0.66~0.71の中間値、格子溝深さhをλ/4nに規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光と光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率の双方から最適化した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10Bとなる。
[第2実施形態のより具体的な実施例]
【0143】
図23は格子点が正方形であるが、製造プロセスにおいて意図せずテーパーが発生した場合を示す。2次元反射型回折格子12B″の断面形状は完全な矩形(γ=90°)ではなく台形(γ<90°)である。
【0144】
シミュレーション条件は表1と同じであるが、格子点を正方形に変更し、テーパー角γを有する2次元反射型回折格子12B″の0次回折光と検出回折光の回折効率のシミュレーション結果を
図24(A),(B)にそれぞれ示す。ただし格子周期は1.6μmであり、テーパー角γはγ=90°, 60°,45°のそれぞれについて計算した。
図24より、テーパーが45°あったとしても、90°の結果から大きくは異ならない。すなわちテーパーが45°あったとしても、十分上記式(49)および式(50)が適用できる。
【0145】
すなわち、格子点が正方形であり断面形状は台形(γ<90°)である2次元反射型回折格子12B″を2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10B″においても、2次元反射型回折格子12B″のデューティ比Dを0.61~0.78、格子溝深さhを(2.5λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下に最適化できる。同様に2次元反射型回折格子12B″のデューティ比Dを0.58~0.70、格子溝深さhを(2.65λ)/(4πn)~(3.65λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上に最適化できる。
【0146】
さらに、2次元反射型回折格子12B″のデューティ比Dを0.66~0.71の中間値、格子溝深さhをλ/4nに規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光と光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率の双方から最適化した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10B″となる。凹部に代えて、凸部を設ける場合も同様である。
[第3実施形態]
【0147】
次に、本発明の第3実施形態としての2次元反射型スケール10Cについて、
図25の(A)、(B)を用いて説明する。この例で凹部が周期配置されるが、凸部が周期配置されてもよい。
【0148】
この2次元反射型スケール10Cは、XY方向の測定に用いられるスケールであって、
図25の(A)に示すように、2次元反射型回折格子12Cの2次元格子パターンを備えている。
【0149】
2次元反射型回折格子12Cは、Z軸周りに45度回転した正方形がXY方向に無限個並んだ2次元格子であり、2次元格子の格子ピッチはX方向およびY方向のどちらもΛであり、正方形の対角線の長さがb、すなわち、外接円の直径で与えられるとする。すなわち、b=Λにおいて隣合う格子点がつながる。格子点はZ軸方向に凹または凸であり、その深さをhとする。格子点はtop(凸)でもbottom(凹)でも良いが、ここではX1-X2断面に示すように格子点がbottomとする。また、凹部または凸部の側面は理想的な矩形を有する。すなわち傾斜角γ=90°である。入射角は垂直入射である。
【0150】
このように、格子点がZ軸周りに45度回転した正方形である2次元反射型回折格子12Cの回折効率は、格子点が正方形である場合の式(49),式(50)を45度方向に回転したものである。0次回折光(n=m=0)の回折効率η00_dは次の式(53)にて表される。式(53)は、上記式(1)にて表される0次回折光の回折効率η00_dにおける係数aをa=1/2とした式に相当する。なお、Z軸周りに45度回転した正方形の面積(b2/2)をb2で除して、係数a=1/2が定まる。
【0151】
【0152】
また、検出回折光の回折効率η±10_d=η0±1_dは次の式(54)にて表される。
【0153】
【0154】
0次回折光は光学式エンコーダにとって不要であり、これを完全にキャンセリングするには、上記式(53)においてデューティ比Dおよび格子溝深さhの組み合わせを次の式(55)に示す条件にすればよい
【0155】
【0156】
この条件において格子点がZ軸周りに45度回転した正方形である2次元反射型回折格子12Cの0次回折光の回折効率η00_dは0になる。デューティ比Dは上記式(33)の定義から0≦D≦1である。デューティ比Dが最大値D=1であるときの2次元反射型回折格子12C′の模式図を
図26に示す。ただし、たとえば露光プロセスによって、
図26のようなZ軸周りに45度回転した正方形の格子点を形成する場合、4個の頂点すべてにおいてエッジを形成し、なおかつ最適形状であるデューティ比1の構造を実現するためには、 隣り合った格子の頂点と頂点を一致させなければならないという製法上の困難さががある。つまり、他の2次元格子パターンとは異なる幾何的特性を有しており、現実性が低い理論上の形態ということができる。
【0157】
一方、光学式エンコーダ110にとって必要な検出回折光の回折効率が最大となるのは、式(54)においてデューティ比Dおよび格子溝深さhが次の式(56)に示す条件を満たすときである。
【0158】
【0159】
回折効率の最大値はη±10_d=η0±1_d=16.4%である。
【0160】
格子溝深さhをλ/4nに固定した場合の、0次回折光、検出回折光、および高次回折光の回折効率とデューティ比の関係をプロットした結果を
図27に示す。
【0161】
0次回折光をキャンセルできるデューティ比Dと検出回折光を最大化できるデューティ比Dはともに1.0である。
【0162】
この2次元反射型スケール10Cでは、XY面内における単位構造の格子点の長さすなわち正方形の対角線の長さ(外接円の直径)bと格子ピッチΛの比として表されるデューティ比D=b/Λと、上記単位構造のZ軸方向の深さhとを用いて、上記式(1)にて表される0次回折光の回折効率η00における係数aをa=1とした上記式(53)にて表される0次回折光の回折効率η00_dが、0となるようにデューティ比Dと深さhの大きさを規定することによって、2次元反射型スケール10Cでは、光学式エンコーダ110にとって不要な0次回折光を消去することができる。
【0163】
また、格子点がZ軸周りに45°回転した正方形である2次元反射型回折格子12Cの2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10Cにおいて、以下の式(12)の条件に格子形状を規定することで不要な0次回折光をキャンセリングすることができ、同時に光学式エンコーダ必要な検出回折光の回折効率を最大化することが可能である。
【0164】
【0165】
本発明者らの定式化の結果が正しいことを確認するため、回折効率のシミュレーションを行った結果を
図28に示す。シミュレーションの条件は表1と同じであるが、格子点はZ軸周りに45度回転した正方形に変更した。
図28(A)は格子ピッチ10μmにおけるシミュレーション結果であり、
図28(B)は格子ピッチ1.6μmにおけるシミュレーション結果である。本発明者らの計算結果と良く一致することが確認できる。
【0166】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Cを搭載する光学式エンコーダ110においては、0次回折光の回折効率は所定値α1=15%以下であれば検出回折光の高い回折効率を維持でき、ノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
図29はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、上記式(53)で表される0次回折光の回折効率η00_dをプロットしたグラフである。回折効率η00_dは等値線で表されている。0次回折効率が所定値α1=15%以下の範囲141も明示されている。たとえば、
図29中に破線で示される以下の式(4)で表される範囲142の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、垂直入射における0次回折効率η00_dが所定値α1=15%以下となる。
【0167】
【0168】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Cを搭載する光学式エンコーダ110においては、検出回折光の回折効率は所定値α2=12%以上であれば十分にノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
図30はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、上記式(54)で表される検出回折光の回折効率η±10_d=η0±1_dをプロットしたグラフである。回折効率η±10_d=η0±1_dは等値線で表されている。検出回折効率が所定値α2=12%以上の範囲143も明示されている。たとえば、
図30中に破線で示される以下の式(8)で表される範囲144の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、検出回折効率が所定値α2=12%以上となる。
【数53】
【0169】
すなわち、格子点がZ軸周りに45°回転した正方形である2次元反射型回折格子12Cを2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10Cでは、2次元反射型回折格子12Cのデューティ比Dを0.87~1、格子溝深さhを(2.5λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下にするように最適化したものとなる。また、2次元反射型回折格子12Cのデューティ比Dを0.83~1、格子溝深さhを(2.3λ)/(4πn)~(3.95λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上にするように最適化したものとなる。
[第3施形態のより具体的な実施例]
【0170】
図31は格子点がZ軸周りに45°回転した正方形であって、製造プロセスにおいて意図せずテーパーが発生した場合を示す。2次元反射型回折格子12C″の断面形状は完全な矩形(γ=90°)ではなく台形(γ<90°)である。
【0171】
シミュレーション条件は表1と同じであるが、格子点がZ軸周りに45°回転した正方形であって、テーパー角γを有する2次元反射型回折格子12C″の0次回折光と検出回折光の回折効率のシミュレーション結果を
図32(A),(B)にそれぞれ示す。ただし格子周期は1.6μmであり、テーパー角γはγ=90°, 60°,45°のそれぞれについて計算した。
図32より、テーパーが45°あったとしても、90°の結果から大きくは異ならない。すなわちテーパーが45°あったとしても、十分上記式(53)および式(54)が適用できる。
【0172】
すなわち、格子点がZ軸周りに45°回転した正方形であり断面形状は台形(γ<90°)である2次元反射型回折格子12C″を2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10C″においても、2次元反射型回折格子12C″のデューティ比Dを0.87~1、格子溝深さhを(2.5λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下に最適化できる。同様に2次元反射型回折格子12C″のデューティ比Dを0.83~1、格子溝深さhを(2.3λ)/(4πn)~(3.95λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上に最適化できる。
【0173】
さらに、2次元反射型回折格子12C″のデューティ比Dを1、格子溝深さhをλ/4nに規定した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10C″は、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を0にするとともに光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率が最大になるように最適化できる。凹部に代えて、凸部を設ける場合も同様である。
[第4実施形態]
【0174】
次に、本発明の第4実施形態としての2次元反射型スケール10Dについて、
図33の(A)、(B)を用いて説明する。この例で凹部が周期配置されるが、凸部が周期配置されてもよい。
【0175】
この2次元反射型スケール10Dは、XY方向の測定に用いられるスケールであって、
図33の(A)に示すように、2次元反射型回折格子12DのXY面内において格子点が八角形である2次元格子パターンを備えている。
【0176】
2次元反射型回折格子12Dは、八角形がXY方向に無限個並んだ2次元格子であり、2次元格子の格子ピッチはX方向およびY方向のどちらもΛであり、八角形の向かい合う辺と辺との距離がb、すなわち、内接円の直径にて与えられるとする。すなわち、b=Λにおいて隣合う格子点がつながる。格子点はZ軸方向に凹または凸であり、その深さをhとする。格子点はtop(凸)でもbottom(凹)でも良いが、ここではX1-X2断面に示すように格子点がbottomとする。また、凹部または凸部の側面は理想的な矩形を有する。すなわち傾斜角γ=90°である。入射角は垂直入射である。
【0177】
格子点が八角形である場合について回折効率のシミュレーションを行った結果を
図34に示す。シミュレーションの条件は表1と同じであるが、格子点は八角形に変更した。
図34(A)は格子ピッチ10μmにおけるシミュレーション結果であり、
図34(B)は格子ピッチ1.6μmにおけるシミュレーション結果である。格子点が八角形であるときの回折効率のデューティ比依存性は、格子点が円の場合と同じ傾向を示す。したがって、格子点が八角形である場合に0次回折光を消去可能な形状の条件は、格子点が円の場合の条件から類推することが可能である。また、格子点が八角形である場合に検出回折光を最大化する形状の条件は、格子点が円の場合の条件から類推することが可能である。
【0178】
図34のシミュレーション結果から、光学式エンコーダ110にとって不要な0次回折光の回折効率η00_oは、デューティ比Dおよび格子溝深さhの組み合わせが次の式(57)に示す条件において略0にすることができた。このシミュレーション結果は、上記式(1)にて表される0次回折光の回折効率η00_oにおける係数aをa=1/√2とした場合と整合する。なお、八方形の面積(2√2)×(b/2)
2)をb
2除して、係数a=1/√2が定まる。
【0179】
【0180】
格子ピッチ10μmの場合、上記式(57)の条件において格子点が八角形である2次元反射型回折格子12Dの0次回折光の回折効率η00_oは0.4%を示した。
【0181】
格子ピッチ1.6μmの場合、上記式(57)の条件において格子点が八角形である2次元反射型回折格子12Dの0次回折光の回折効率η00_oは0.8%を示した。
【0182】
一方、
図34のシミュレーション結果から、光学式エンコーダ110にとって必要な検出回折光の回折効率η±10_o=η0±1_oは、次の式(58)に示す条件において略最大にすることができた。
【0183】
【0184】
格子ピッチ10μmの場合、上記式(58)の条件において格子点が八角形である2次元反射型回折格子12Dの検出回折光の回折効率η±10_o=η0±1_oは16.5%を示した。
【0185】
格子ピッチ1.6μmの場合、上記式(58)の条件において格子点が八角形である2次元反射型回折格子12Dの検出回折光の回折効率η±10_o=η0±1_oは18.3%を示した。
【0186】
すなわち、格子点が八角形の2次元反射型回折格子12Dを2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10Dでは、2次元反射型回折格子12Dのデューティ比Dを0.83、格子溝深さhをλ/4nに規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を略0にするように最適化したものとなり、2次元反射型回折格子12Dのデューティ比Dを0.77、格子溝深さhをλ/4nに規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を略最大化するように最適化したものとなる。
【0187】
また、2次元反射型回折格子12Dのデューティ比Dと格子溝深さhを以下の式(13)の条件に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光と光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率の双方から最適化した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10Dとなる。
【0188】
【0189】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Dを搭載する光学式エンコーダ110においては、0次回折光の回折効率は所定値α1=15%以下であれば検出回折光の高い回折効率を維持でき、ノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
【0190】
図35はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、0次回折光の回折効率η00_oをシミュレーションした結果である。シミュレーションの条件は表1と同じであるが、格子点は八角形に変更した。格子ピッチ1.6μmにおけるシミュレーション結果である。格子溝深さhは固定されていない。回折効率η00_oは等値線で表されている。0次回折効率が所定値α1=15%以下の範囲151も明示されている。たとえば、
図35中に破線で示される以下の式(5)で表される範囲152の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、垂直入射における0次回折効率η00_oが所定値α1=15%以下となる。
【0191】
【0192】
本発明者らが想定する2次元反射型スケール10Dを搭載する光学式エンコーダ110においては、検出回折光の回折効率は所定値α2=12%以上であれば十分にノイズ特性の良い光学式エンコーダを実現できる。
【0193】
図36はデューティ比D=b/Λと、Z軸方向の深さhとを用いて、検出回折光の回折効率η±10_o=η0±1_oをプロットしたグラフである。シミュレーションした結果である。シミュレーションの条件は表1と同じであるが、格子点は八角形に変更した。格子ピッチ1.6μmにおけるシミュレーション結果である。格子溝深さhは固定されていない。回折効率η±10_o=η0±1_oは等値線で表されている。検出回折効率が所定値α2=12%以上の範囲153も明示されている。たとえば、
図36中に破線で示される以下の式(9)で表される範囲154の中にデューティ比と格子溝深さがあれば、検出回折効率が所定値α2=12%以上となる。
【0194】
【0195】
すなわち、格子点が八角形である2次元反射型回折格子12Dを2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10Dでは、2次元反射型回折格子12Dのデューティ比Dを0.7~0.89、格子溝深さhを(2.8λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下にするように最適化できる。また、2次元反射型回折格子12Dのデューティ比Dを0.61~0.91、格子溝深さhを(2.4λ)/(4πn)~(4.1λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上に最適化したものとなる。
[第4施形態のより具体的な実施例]
【0196】
図37は格子点が八角形であって、製造プロセスにおいて意図せずテーパーが発生した場合を示す。2次元反射型回折格子12D″の断面形状は完全な矩形(γ=90°)ではなく台形(γ<90°)である。
【0197】
シミュレーション条件は表1と同じであるが、格子点が八角形であって、テーパー角γを有する2次元反射型回折格子12D″の0次回折光と検出回折光の回折効率のシミュレーション結果を
図38(A),(B)にそれぞれ示す。ただし格子周期は1.6μmであり、テーパー角γはγ=90°, 60°,45°のそれぞれについて計算した。
図38より、テーパーが45°あったとしても、90°の結果から大きくは異ならない。
【0198】
すなわち、格子点が八角形であり断面形状は台形(γ<90°)である2次元反射型回折格子12D″を2次元格子パターンとして備える2次元反射型スケール10D″においても、2次元反射型回折格子12D″のデューティ比Dを0.7~0.89、格子溝深さhを(2.8λ)/(4πn)~(3.8λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を所定値α1、すなわち15%以下にするように最適化できる。同様に2次元反射型回折格子12D″のデューティ比Dを0.61~0.91、格子溝深さhを(2.4λ)/(4πn)~(4.1λ)/(4πn)に規定することにより、光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率を所定値α2、すなわち12%以上にするように最適化できる。
【0199】
さらに、2次元反射型回折格子12D″のデューティ比Dを0.77~0.83、格子溝深さhをλ/4nに規定した2次元格子パターンを備える2次元反射型スケール10D″は、光学式エンコーダ110に不要な0次回折光を略0にするとともに光学式エンコーダ110が必要な検出回折光の回折効率が略最大になるように最適化できる。凹部に代えて、凸部を設ける場合も同様である。
【0200】
入射角が0°~5°の場合において、上述の計算結果およびシミュレーション結果が有効であると認められる。
【0201】
なお、2次元反射型スケール10に2次元格子パターンとして備えられる上述の如き2次元回折格子12は、例えば
図39の一部断面斜視図に模式的に示すように、例えばレーザー描画法や電子描画法、または干渉露光法を用いることで、基材15に格子溝を刻むことで該基材15上に配置形成することができる。レーザー描画法や干渉露光法もしくは電子描画法により格子溝を形成する場合は、基材にはあらかじめ被加工膜、および感光性樹脂14を塗布する必要があり、エッチングにより所定の形状に削り取る。干渉露光法の場合の格子溝は最下部から順に主成分を酸化クロムとする薄膜層、主成分をクロムとする薄膜層、主成分を酸化クロムとする最表面の薄膜層の順に構成されている。また、上記の露光法・描画法等によって作成されたパターンを原板として基材上に塗布した樹脂にインプリント成型して格子溝を成型してもよく、その場合の2次元回折格子12は樹脂である。さらに、その上に反射性の金属膜13を塗布することで、2次元反射型回折格子12となる。反射性の金属膜13はたとえば金、銀、アルミ等であり、これらを主成分として含む合金であってもよい。この成膜はスパッタリングで行うが、その厚みは入射光が透過しないほど十分な厚みである必要がある。なお上記格子溝の成型方法により成型された2次元格子パターンにおいて、格子点の平面形状は完全な正多角角形ではなく頂点が多少ラウンドするが、上記回折効率の計算式への影響はほとんどない。保護材16の材料はガラス(石英)、ガラスセラミックス、樹脂等の透明性材料である。保護材16が接着性のない材料である場合は、2次元反射型回折格子12と保護材16を接着剤で接合する。接着剤は透明性の高い樹脂であることが望ましく、その屈折率は保護材16の屈折率と一致させる必要がある。接着剤の材料は、アクリレート系、もしくはエポキシ系樹脂などである。保護材16と接着剤の屈折率が、上述した反射した反射光が通過する領域の屈折率nに相当する。石英の屈折率nは、1.45であり、接着剤の屈折率nは、たとえば石英と同じか同等の透明の接着剤を用いている。
【0202】
上述の実施形態では、シリコン基板などに凹凸を形成し、反射面としての金などの金属材料で反射層を凹凸表面に積層させているが、この形態に限定されない。例えば、金属基板に直接凹凸を形成するような形態でもよい。この場合、反射層を形成しなくても、すでに凹凸表面が反射面になっている。また、この凹凸表面基板と、石英などの保護層と、を接着剤で付けているが、この形態に限られない。凹凸表面が露出している形態でもよい。この場合、入射してくる光が凹凸表面で反射された際に、反射光に作用している領域は、空気になる。
【符号の説明】
【0203】
10、10A、10A″、10B、10B″、10C、10C″、10D、10D″ 2次元反射型スケール、11 凹部、12、12A、12A′、12A″、12B、12B″、12C、12C′、12C″、12D、12D″ 2次元反射型回折格子(2次元格子パターン)、13 金属膜、14 感光性樹脂、15 基板、16 保護材、100 2次元変位測定装置、110 光学式エンコーダ、110X、110Y センサヘッド、121、131、141、151 0次光の回折効率が所定値α1以下となるデューティ比と格子溝深さの範囲、122、132、142、152 0次光の回折効率が所定値α1以下となる代表的なデューティ比と格子溝深さの範囲、123、133、143、153 検出光の回折効率が所定値α2以上となるデューティ比と格子溝深の範囲、124、134、144、154 検出光の回折効率が所定値α2以上となる代表的なデューティ比と格子溝深の範囲