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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20240722BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/067
H01L21/78 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020140202
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035702
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030139(JP,A)
【文献】特開2020-069533(JP,A)
【文献】特開2020-043337(JP,A)
【文献】特開2014-010745(JP,A)
【文献】特開2019-118950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/78 - 21/82
G05B 19/18 - 19/416、
19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記対象物に前記レーザ光を照射する照射部と、
前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、設定画面を表示可能な表示部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、前記照射部、前記移動機構及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部からの前記レーザ光を複数の加工光に分岐させ、
複数の前記加工光の複数の集光点のそれぞれを、前記対象物の内部において前記レーザ光の照射方向と垂直な方向の位置が互いに異なる複数の箇所に位置させ、
複数の前記集光点の位置がラインに沿って移動するように、前記移動機構により前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させ、
前記設定画面は、
加工条件の設定に用いられる第1設定画面と、前記第1設定画面とは別で表示され当該加工条件の補正に用いられる第2設定画面と、を含み、
前記ラインは、前記照射方向と垂直な方向に沿って並ぶ第1ライン及び第2ラインを含み、
前記制御部は、複数の前記集光点のうちの第1集光点を前記第1ライン上の箇所に位置させると共に、複数の前記集光点のうちの第2集光点を前記第2ライン上の箇所に位置させ、
前記第1設定画面上で設定される前記加工条件は、前記加工光の出力と、前記加工光の収差と、の少なくとも何れかを含み、
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正は、前記第1集光点に係る出力補正及び収差補正と、前記第2集光点に係る出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含む、レーザ加工装置。
【請求項2】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記対象物に前記レーザ光を照射する照射部と、
前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、設定画面を表示可能な表示部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、前記照射部、前記移動機構及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部からの前記レーザ光を複数の加工光に分岐させ、
複数の前記加工光の複数の集光点のそれぞれを、前記対象物の内部において前記レーザ光の照射方向と垂直な方向の位置が互いに異なる複数の箇所に位置させ、
複数の前記集光点の位置がラインに沿って移動するように、前記移動機構により前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させ、
前記設定画面は、
加工条件の設定に用いられる第1設定画面と、前記第1設定画面とは別で表示され当該加工条件の補正に用いられる第2設定画面と、を含み、
前記ラインは、前記照射方向と垂直な方向に沿って並ぶ第1ライン及び第2ラインを含み、
前記制御部は、複数の前記集光点のうちの第1集光点を前記第1ライン上の箇所に位置させると共に、複数の前記集光点のうちの第2集光点を前記第2ライン上の箇所に位置させ、
前記第1設定画面上で設定される前記加工条件は、前記加工光の出力と、前記加工光の収差と、の少なくとも何れかを含み、
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正は、前記第1ラインに係る出力補正及び収差補正と、前記第2ラインに係る出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含む、レーザ加工装置。
【請求項3】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記対象物に前記レーザ光を照射する照射部と、
前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、設定画面を表示可能な表示部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、前記照射部、前記移動機構及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部からの前記レーザ光を複数の加工光に分岐させ、
複数の前記加工光の複数の集光点のそれぞれを、前記対象物の内部において前記レーザ光の照射方向と垂直な方向の位置が互いに異なる複数の箇所に位置させ、
複数の前記集光点の位置がラインに沿って移動するように、前記移動機構により前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させ、
前記設定画面は、
加工条件の設定に用いられる第1設定画面と、前記第1設定画面とは別で表示され当該加工条件の補正に用いられる第2設定画面と、を含み、
前記制御部は、1つの前記ライン上において前記照射方向に複数列の前記改質領域が形成されるように、複数の前記集光点のそれぞれを前記照射方向に異なる複数の箇所に位置させ、
前記第1設定画面上で設定される前記加工条件は、複数列の前記改質領域のうちの第1改質領域に係る出力及び収差と、複数列の前記改質領域のうちの第2改質領域に係る出力及び収差と、の少なくとも何れかを含み、
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正は、複数の前記集光点のうちの第1集光点に係る出力補正及び収差補正と、複数の前記集光点のうちの第2集光点に係る出力補正及び収差補正と、を含む、レーザ加工装置。
【請求項4】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記対象物に前記レーザ光を照射する照射部と、
前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、設定画面を表示可能な表示部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、前記照射部、前記移動機構及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部からの前記レーザ光を複数の加工光に分岐させ、
複数の前記加工光の複数の集光点のそれぞれを、前記対象物の内部において前記レーザ光の照射方向と垂直な方向の位置が互いに異なる複数の箇所に位置させ、
複数の前記集光点の位置がラインに沿って移動するように、前記移動機構により前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させ、
前記設定画面は、
加工条件の設定に用いられる第1設定画面と、前記第1設定画面とは別で表示され当該加工条件の補正に用いられる第2設定画面と、を含み、
前記制御部は、1つの前記ライン上において前記照射方向に複数列の前記改質領域が形成されるように、複数の前記集光点のそれぞれを前記照射方向に異なる複数の箇所に位置させ、
前記第1設定画面上で設定される前記加工条件は、複数列の前記改質領域のうちの第1改質領域に係る出力及び収差と、複数列の前記改質領域のうちの第2改質領域に係る出力及び収差と、の少なくとも何れかを含み、
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正は、複数の前記集光点を移動させる移動方向が第1移動方向の場合の出力補正及び収差補正と、当該移動方向が前記第1移動方向の反対方向である第2移動方向の場合の出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含む、レーザ加工装置。
【請求項5】
対象物にレーザ光を照射することにより、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記対象物に前記レーザ光を照射する照射部と、
前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、
入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、設定画面を表示可能な表示部と、
前記入力受付部で受け付けた入力に基づいて、前記照射部、前記移動機構及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記照射部からの前記レーザ光を複数の加工光に分岐させ、
複数の前記加工光の複数の集光点のそれぞれを、前記対象物の内部において前記レーザ光の照射方向と垂直な方向の位置が互いに異なる複数の箇所に位置させ、
複数の前記集光点の位置がラインに沿って移動するように、前記移動機構により前記支持部及び前記照射部の少なくとも一方を移動させ、
前記設定画面は、
加工条件の設定に用いられる第1設定画面と、前記第1設定画面とは別で表示され当該加工条件の補正に用いられる第2設定画面と、を含み、
前記制御部は、1つの前記ライン上において前記照射方向に複数列の前記改質領域が形成されるように、複数の前記集光点のそれぞれを前記照射方向に異なる複数の箇所に位置させ、
前記第1設定画面上で設定される前記加工条件は、複数列の前記改質領域のうちの第1改質領域に係る出力及び収差と、複数列の前記改質領域のうちの第2改質領域に係る出力及び収差と、の少なくとも何れかを含み、
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正は、複数の前記集光点を移動させる移動方向が第1移動方向の場合であって前記第1改質領域に係る出力補正及び収差補正と、当該移動方向が前記第1移動方向の場合であって前記第2改質領域に係る出力補正及び収差補正と、当該移動方向が前記第1移動方向の反対方向である第2移動方向の場合であって前記第1改質領域に係る出力補正及び収差補正と、当該移動方向が前記第2移動方向の場合であって前記第2改質領域に係る出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含む、レーザ加工装置。
【請求項6】
前記照射部は、前記レーザ光を変調する空間光変調器を有し、
前記制御部は、
前記レーザ光が複数の加工光に分岐し、且つ、複数の前記加工光の複数の集光点が、前記照射方向に垂直な方向において互いに異なる箇所に位置するように、前記空間光変調器により前記レーザ光を変調させる、請求項1~5の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第1設定画面上で設定される前記加工条件は、補正パラメータを含み、
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正は、前記補正パラメータ毎に設定される、請求項1~の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
可視光及び赤外光の少なくとも何れかを出射して前記対象物を撮像する撮像部を備え、
前記制御部は、前記第1設定画面及び前記第2設定画面の少なくとも何れかと共に、前記撮像部の撮像結果を前記表示部に表示させる、請求項1~の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記入力受付部でロック解除の入力を受け付けた場合にのみ、前記第2設定画面を前記表示部に表示可能である、請求項1~の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記第2設定画面上で設定される前記加工条件の補正の履歴を記憶する記憶部を備える、請求項1~の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のレーザ加工装置を用いて、前記対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法であって、
前記表示部に表示された前記第1設定画面上において、前記入力受付部を介して前記加工条件を入力するステップと、
前記表示部に表示された前記第2設定画面上において、複数の前記加工光を集光させることによる各加工結果の差、及び/又は、複数の前記集光点を移動させる移動方向の違いによる加工結果の差が小さくなるように、前記入力受付部を介して、前記第1設定画面上にて入力された前記加工条件の補正値を入力するステップと、を備える、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を複数の加工光に分岐して対象物に集光させ、対象物において各加工光の集光点に対応する複数の領域のそれぞれに改質領域を形成するレーザ加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-051011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ加工装置では、例えばGUI(Graphical User Interface)を構成するユーザインタフェースが搭載されている場合、ユーザインタフェースの設定画面上においてユーザが加工条件を入力することで、当該入力に基づきレーザ加工が実施される。しかしこの場合、レーザ光を複数の加工光に分岐して集光させるレーザ加工では、例えば光学系由来の影響等による機差に起因して、同じ加工条件でも加工結果がばらつく可能性が高い。そのため、ユーザが当該機差を考慮して加工条件を入力することが考えられるが、そのような入力は煩雑であり、ユーザにとって使い勝手がよくない。
【0005】
そこで、本発明は、レーザ光を複数の加工光に分岐して集光させるレーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら、加工結果のばらつきを抑制することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することにより、対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、対象物を支持する支持部と、支持部によって支持された対象物にレーザ光を照射する照射部と、支持部及び照射部の少なくとも一方を移動させる移動機構と、入力を受け付ける入力受付部と、入力受付部で受け付けた入力に基づいて、設定画面を表示可能な表示部と、入力受付部で受け付けた入力に基づいて、照射部、移動機構及び表示部を制御する制御部と、を備え、制御部は、照射部からのレーザ光を複数の加工光に分岐させ、複数の加工光の複数の集光点のそれぞれを、対象物の内部においてレーザ光の照射方向と垂直な方向の位置が互いに異なる複数の箇所に位置させ、複数の集光点の位置がラインに沿って移動するように、移動機構により支持部及び照射部の少なくとも一方を移動させ、設定画面は、加工条件の設定に用いられる第1設定画面と、第1設定画面とは別で表示され当該加工条件の補正に用いられる第2設定画面と、を含む。
【0007】
このレーザ加工装置では、レーザ光を複数の加工光に分岐して集光させるレーザ加工(以下、「分岐レーザ加工」ともいう)を実施する際、例えばユーザは、表示部に表示された第1設定画面上において入力受付部を介して加工条件を入力することができる。一方で、例えば管理者、運用者及び保守者等(以下、「管理者等」という)は、表示部に表示された第2設定画面上において、機差に起因して加工結果がばらつかないように、入力受付部を介して当該加工条件を補正することができる。すなわち、ユーザが機差を考慮せずに分岐レーザ加工の加工条件を入力しながら、その裏で、機差に起因して加工結果がばらつかないように管理者等が当該加工条件を補正することができる。したがって、分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら、加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【0008】
本発明に係るレーザ加工装置では、照射部は、レーザ光を変調する空間光変調器を有し、制御部は、レーザ光が複数の加工光に分岐し、且つ、複数の加工光の複数の集光点が、照射方向に垂直な方向において互いに異なる箇所に位置するように、空間光変調器によりレーザ光を変調させてもよい。この場合、空間光変調器を利用して、分岐レーザ加工を実施することができる。
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置では、ラインは、照射方向と垂直な方向に沿って並ぶ第1ライン及び第2ラインを含み、制御部は、複数の集光点のうちの第1集光点を第1ライン上の箇所に位置させると共に、複数の集光点のうちの第2集光点を第2ライン上の箇所に位置させ、第1設定画面上で設定される加工条件は、加工光の出力と、加工光の収差と、の少なくとも何れかを含み、第2設定画面上で設定される加工条件の補正は、第1集光点に係る出力補正及び収差補正と、第2集光点に係る出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含んでいてもよい。これにより、2つのラインに沿って同時に改質領域を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置では、ラインは、照射方向と垂直な方向に沿って並ぶ第1ライン及び第2ラインを含み、制御部は、複数の集光点のうちの第1集光点を第1ライン上の箇所に位置させると共に、複数の集光点のうちの第2集光点を第2ライン上の箇所に位置させ、第1設定画面上で設定される加工条件は、加工光の出力と、加工光の収差と、の少なくとも何れかを含み、第2設定画面上で設定される加工条件の補正は、第1ラインに係る出力補正及び収差補正と、第2ラインに係る出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含んでいてもよい。これにより、2つのラインに沿って同時に改質領域を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。
【0011】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、1つのラインに沿って照射方向に複数列の改質領域が形成されるように、複数の集光点のそれぞれを照射方向に異なる複数の箇所に位置させ、第1設定画面上で設定される加工条件は、複数列の改質領域のうちの第1改質領域に係る出力及び収差と、複数列の改質領域のうちの第2改質領域に係る出力及び収差と、の少なくとも何れかを含み、第2設定画面上で設定される加工条件の補正は、複数の集光点のうちの第1集光点に係る出力補正及び収差補正と、複数の集光点のうちの第2集光点に係る出力補正及び収差補正と、を含んでいてもよい。これにより、1つのラインに沿って同時に複数列の改質領域を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、1つのラインに沿って照射方向に複数列の改質領域が形成されるように、複数の集光点のそれぞれを照射方向に異なる複数の箇所に位置させ、第1設定画面上で設定される加工条件は、複数列の改質領域のうちの第1改質領域に係る出力及び収差と、複数列の改質領域のうちの第2改質領域に係る出力及び収差と、の少なくとも何れかを含み、第2設定画面上で設定される加工条件の補正は、複数の集光点を移動させる移動方向が第1移動方向の場合の出力補正及び収差補正と、当該移動方向が第1移動方向の反対方向である第2移動方向の場合の出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含んでいてもよい。これにより、1つのラインに沿って同時に複数列の改質領域を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、1つのラインに沿って照射方向に複数列の改質領域が形成されるように、複数の集光点のそれぞれを照射方向に異なる複数の箇所に位置させ、第1設定画面上で設定される加工条件は、複数列の改質領域のうちの第1改質領域に係る出力及び収差と、複数列の改質領域のうちの第2改質領域に係る出力及び収差と、の少なくとも何れかを含み、第2設定画面上で設定される加工条件の補正は、複数の集光点を移動させる移動方向が第1移動方向の場合であって第1改質領域に係る出力補正及び収差補正と、当該移動方向が第1移動方向の場合であって第2改質領域に係る出力補正及び収差補正と、当該移動方向が第1移動方向の反対方向である第2移動方向の場合であって第1改質領域に係る出力補正及び収差補正と、当該移動方向が第2移動方向の場合であって第2改質領域に係る出力補正及び収差補正と、の少なくとも何れかを含んでいてもよい。これにより、1つのラインに沿って同時に複数列の改質領域を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置では、第1設定画面上で設定される加工条件は、補正パラメータを含み、第2設定画面上で設定される加工条件の補正は、補正パラメータ毎に設定されていてもよい。これにより、ユーザは、補正パラメータを第1設定画面上で設定することで、その補正パラメータに応じた当該加工条件の補正が可能となる。
【0015】
本発明に係るレーザ加工装置は、可視光及び赤外光の少なくとも何れかを出射して対象物を撮像する撮像部を備え、制御部は、第1設定画面及び第2設定画面の少なくとも何れかと共に、撮像部の撮像結果を表示部に表示させてもよい。これにより、第1設定画面上において入力受付部を介して加工条件を入力する際、及び/又は、第2設定画面上において入力受付部を介して加工条件の補正を入力する際に、撮像部の撮像結果を容易に参照することが可能となる。
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、入力受付部でロック解除の入力を受け付けた場合にのみ、第2設定画面を表示部に表示可能であってもよい。これにより、例えばロック解除できないユーザによる第2設定画面上での加工条件の補正を禁止することができる。
【0017】
本発明に係るレーザ加工装置は、第2設定画面上で設定される加工条件の補正の履歴を記憶する記憶部を備えていてもよい。これにより、記憶部に記憶された履歴を参酌することにより、加工結果のばらつきの状況を把握することが可能となる。
【0018】
本発明に係るレーザ加工方法は、上記レーザ加工装置を用いて、対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工方法であって、表示部に表示された第1設定画面上において、入力受付部を介して加工条件を入力するステップと、表示部に表示された第2設定画面上において、複数の加工光を集光させることによる各加工結果の差、及び/又は、複数の集光点を移動させる移動方向の違いによる加工結果の差が小さくなるように、入力受付部を介して、第1設定画面上にて入力された加工条件の補正値を入力するステップと、を備える。
【0019】
このレーザ加工方法では、分岐レーザ加工を実施する際、例えばユーザは、表示部に表示された第1設定画面上において加工条件を入力する。一方で、例えば管理者等は、表示部に表示された第2設定画面上において、加工結果がばらつかないように当該加工条件を補正する。すなわち、ユーザが機差を考慮せずに分岐レーザ加工の加工条件を入力しながら、その裏で、機差に起因して加工結果がばらつかないように管理者等が当該加工条件を補正することができる。したがって、分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら、加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザ光を複数の加工光に分岐して集光させるレーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら、加工結果のばらつきを抑制することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
図2図2は、図1の対象物を示す平面図である。
図3図3は、図2の対象物の一部分を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る分岐レーザ加工を説明する斜視図である。
図5図5は、図1のユーザインタフェースを示す概略図である。
図6図6(a)は、第1実施形態に係る第1設定画面の例を示す概略図である。図6(b)は、第1実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図7図7は、第2実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図8図8は、第3実施形態に係る分岐レーザ加工を説明する斜視図である。
図9図9(a)は、第3実施形態に係る第1設定画面の例を示す概略図である。図9(b)は、第3実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図10図10は、第4実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図11図11(a)は、第5実施形態に係る分岐レーザ加工を説明する断面図である。図11(b)は、第5実施形態に係る分岐レーザ加工を説明する他の断面図である。
図12図12(a)は、第5実施形態に係る第1設定画面の例を示す概略図である。図12(b)は、第5実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図13図13は、第6実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図14図14は、第7実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図15図15(a)は、第8実施形態に係る第1設定画面の例を示す概略図である。図15(b)は、第8実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図16図16(a)は、第9実施形態に係る分岐レーザ加工を説明する断面図である。図16(b)は、第9実施形態に係る分岐レーザ加工を説明する他の断面図である。
図17図17(a)は、第9実施形態に係る第1設定画面の例を示す概略図である。図17(b)は、第9実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図18図18は、第10実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図19図19は、第11実施形態に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
図20図20(a)は、変形例に係る第2設定画面の例を示す概略図である。図20(b)は、他の変形例に係る第2設定画面の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1に示されるように、レーザ加工装置1は、支持部2と、光源3と、光軸調整部4と、空間光変調器5と、集光部6と、光軸モニタ部7と、可視撮像部8Aと、赤外撮像部8Bと、移動機構9と、管理ユニット10と、を備えている。レーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することで対象物11に改質領域12を形成する装置である。以下の説明では、互いに直交する3方向を、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向という。本実施形態では、X方向は第1水平方向であり、Y方向は第1水平方向に垂直な第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0024】
支持部2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルム(図示省略)を吸着することで、対象物11の表面11a及び裏面11bがZ方向と直交するように対象物11を支持する。支持部2は、X方向及びY方向のそれぞれの方向に沿って移動可能である。支持部2は、Z方向に沿った回転軸を中心に回転可能である。
【0025】
光源3は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出射する。レーザ光Lは、対象物11に対して透過性を有している。光軸調整部4は、光源3から出射されたレーザ光Lの光軸を調整する。本実施形態では、光軸調整部4は、光源3から出射されたレーザ光Lの進行方向をZ方向に沿うように変更しつつ、レーザ光Lの光軸を調整する。光軸調整部4は、例えば、位置及び角度の調整が可能な複数の反射ミラーによって構成されている。
【0026】
空間光変調器5は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。空間光変調器5は、光源3から出射されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器5は、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。空間光変調器5では、その液晶層に表示する変調パターンを適宜設定することで、レーザ光Lの変調が可能である。本実施形態では、光軸調整部4からZ方向に沿って下側に進行したレーザ光Lがレーザ加工ヘッドH内に入射し、レーザ加工ヘッドH内に入射したレーザ光LがミラーH1によってY方向に対して角度を成すように水平に反射され、ミラーH1によって反射されたレーザ光Lが空間光変調器5に入射する。空間光変調器5は、そのように入射したレーザ光LをY方向に沿って水平に反射しつつ変調する。
【0027】
集光部6は、レーザ加工ヘッドHの底壁に取り付けられている。集光部6は、空間光変調器5によって変調されたレーザ光Lを、支持部2によって支持された対象物11に集光する。本実施形態では、空間光変調器5によってY方向に沿って水平に反射されたレーザ光LがダイクロイックミラーH2によってZ方向に沿って下側に反射され、ダイクロイックミラーH2によって反射されたレーザ光Lが集光部6に入射する。集光部6は、そのように入射したレーザ光Lを対象物11に集光する。集光部6は、集光レンズユニット61が駆動機構62を介してレーザ加工ヘッドHの底壁に取り付けられることで構成されている。駆動機構62は、例えば圧電素子の駆動力によって、集光レンズユニット61をZ方向に沿って移動させる。
【0028】
なお、レーザ加工ヘッドH内において、空間光変調器5と集光部6との間には、結像光学系(図示省略)が配置されている。結像光学系は、空間光変調器5の反射面と集光部6の入射瞳面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、空間光変調器5の反射面でのレーザ光Lの像(空間光変調器5によって変調されたレーザ光Lの像)が集光部6の入射瞳面に転像(結像)される。レーザ加工ヘッドHの底壁には、X方向において集光レンズユニット61の両側に位置するように1対の測距センサS1,S2が取り付けられている。各測距センサS1,S2は、対象物11の裏面11bに対して測距用の光(例えば、レーザ光)を出射し、裏面11bで反射された測距用の光を検出することで、裏面11bの変位データを取得する。レーザ加工ヘッドHは、照射部を構成する。
【0029】
光軸モニタ部7は、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。光軸モニタ部7は、ダイクロイックミラーH2を透過したレーザ光Lの一部を検出する。光軸モニタ部7による検出結果は、例えば、集光レンズユニット61に入射するレーザ光Lの光軸と集光レンズユニット61の光軸との関係を示す。可視撮像部8Aは、可視光Vを出射し、可視光Vによる対象物11の像を画像として取得する撮像部である。可視撮像部8Aは、レーザ加工ヘッドH内に配置されている。本実施形態では、可視撮像部8Aから出射された可視光VがダイクロイックミラーH2及び集光部6を介して対象物11の裏面11bに照射され、裏面11bで反射された可視光Vが集光部6及びダイクロイックミラーH2を介して可視撮像部8Aで検出される。赤外撮像部8Bは、赤外光を出射し、赤外光による対象物11の像を赤外線画像として取得する撮像部である。赤外撮像部8Bは、レーザ加工ヘッドHの側壁に取り付けられている。
【0030】
移動機構9は、レーザ加工ヘッドH及び支持部2の少なくとも何れかをX方向、Y方向及びZ方向に移動させる機構を含む。移動機構9は、レーザ光Lの集光点CがX方向、Y方向及びZ方向に移動するように、モータ等の公知の駆動装置の駆動力によりレーザ加工ヘッドH及び支持部2の少なくとも何れかを駆動する。また、移動機構9は、支持部2を回転させる機構を含む。移動機構9は、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により支持部2を回転駆動する。
【0031】
管理ユニット10は、制御部101と、ユーザインタフェース102と、記憶部103と、を有する。制御部101は、レーザ加工装置1の各部の動作を制御する。制御部101は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部101では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。ユーザインタフェース102は、各種データの表示及び入力を行う。ユーザインタフェース102は、グラフィックベースの操作体系を有するGUI(Graphical User Interface)を構成する。
【0032】
ユーザインタフェース102は、例えばタッチパネル、キーボード、マウス、マイク、タブレット型端末、モニタ等の少なくとも何れかを含む。ユーザインタフェース102は、例えばタッチ入力、キーボード入力、マウス操作、音声入力等により、各種の入力を受付け可能である。ユーザインタフェース102は、その表示画面上に各種の情報を表示可能である。ユーザインタフェース102は、入力を受け付ける入力受付部、及び、受け付けた入力に基づき設定画面を表示可能な表示部に相当する。記憶部103は、例えばハードディスク等であり、各種データを記憶する。
【0033】
以上のように構成されたレーザ加工装置1では、対象物11の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点(少なくとも集光領域の一部)Cに対応する部分においてレーザ光Lが吸収され、対象物11の内部に改質領域12が形成される。改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、複数の改質スポット12s及び複数の改質スポット12sから延びる亀裂を含む。
【0034】
一例として、対象物11を切断するためのライン15に沿って、対象物11の内部に改質領域12を形成する場合におけるレーザ加工装置1の動作について説明する。
【0035】
まず、レーザ加工装置1は、対象物11に設定されたライン15がX方向に平行となるように支持部2を回転させる。レーザ加工装置1は、赤外撮像部8Bによって取得された画像(例えば、対象物11が有する機能素子層の像)に基づいて、Z方向から見た場合にレーザ光Lの集光点Cがライン15上に位置するように、X方向及びY方向のそれぞれの方向に沿って支持部2を移動させる。レーザ加工装置1は、可視撮像部8Aによって取得された画像(例えば、対象物11の表面11aの像)に基づいて、レーザ光Lの集光点Cが表面11a上に位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドH(すなわち、集光部6)を移動させる(ハイトセット)。レーザ加工装置1は、その位置を基準として、レーザ光Lの集光点Cが表面11aから所定深さに位置するように、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッドHを移動させる。
【0036】
続いて、レーザ加工装置1は、光源3からレーザ光Lを出射させると共に、レーザ光Lの集光点Cがライン15に沿って相対的に移動するように、X方向に沿って支持部2を移動させる。以下、「対象物11に対するレーザ光Lの相対的移動方向」を「加工進行方向」という。このとき、レーザ加工装置1は、1対の測距センサS1,S2のうちレーザ光Lの加工進行方向における前側に位置する測距センサによって取得された表面11aの変位データに基づいて、レーザ光Lの集光点Cが表面11aから所定深さに位置するように、集光部6の駆動機構62を動作させる。
【0037】
以上により、ライン15に沿って且つ対象物11の表面11aから一定深さに、1列の改質領域12が形成される。パルス発振方式によって光源3からレーザ光Lが出射されると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポット12sの集合である。隣り合う改質スポット12sは、レーザ光Lのパルスピッチ(対象物11に対する集光点Cの相対的な移動速度をレーザ光Lの繰り返し周波数で除した値)によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。本実施形態では、Z方向がレーザ光Lの照射方向であり、表面11aがレーザ光入射面である。Z方向における表面11aからの集光点Cの位置(所定深さ)を、「Z位置」とも称する。
【0038】
図2及び図3に示されるように、対象物11は、円板状に形成されたウェハである。対象物11は、半導体基板21上に機能素子層22が積層されることで構成されている。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。半導体基板21は、第1表面21a及び第1表面21aとは反対側の第2表面21bを有している。第2表面21bは、対象物11の第2表面20bである。半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられている。なお、半導体基板21には、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。機能素子層22は、半導体基板21の第1表面21aに設けられている。機能素子層22は、半導体基板21の第1表面21aに沿ってマトリックス状に配列された複数の機能素子22aを含む。各機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。各機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。
【0039】
対象物11には、ライン15が設定されている。ライン15は、改質領域12の形成を予定するラインである。対象物11は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、対象物11の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間(より具体的には、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在するストリート領域23の中央)を通るように、対象物11の第2表面21bに沿って格子状に延在している。各ライン15は、レーザ加工装置1によって対象物11に設定された仮想的なラインである。なお、各ライン15は、対象物11に実際に引かれたラインであってもよい。ライン15の設定は、管理ユニット10において行うことができる。ライン15は、座標指定されたものであってもよい。
【0040】
図1に戻り、制御部101は、レーザ光Lが複数の加工光に分岐し、且つ、複数の加工光の複数の集光点がX方向及び/又はY方向において互いに異なる箇所に位置するように、空間光変調器5によりレーザ光Lを変調させる。具体的には、制御部101は、空間光変調器5を制御し、空間光変調器5の液晶層56に所定の変調パターン(回折パターンを含む変調パターン等)を表示させた状態で光源3からレーザ光Lを出射させ、集光部6によってレーザ光Lを対象物11に集光させる。これにより、制御部101は、レーザ加工ヘッドHからのレーザ光Lを複数の加工光に分岐させ、複数の加工光の各集光点Cを対象物11の内部において水平方向に互いに異なる複数の箇所に位置させる。
【0041】
本実施形態の制御部101は、図4に示される分岐レーザ加工を実施させる。図4に示される分岐レーザ加工では、レーザ光Lを第1加工光L1及び第2加工光L2に分岐(回折)させる。第1加工光L1の集光点Cである第1集光点C1を、第1ライン15A上における対象物11の内部に位置させる。第2加工光L2の集光点Cである第2集光点C2を、第2ライン15B上における対象物11の内部に位置させる。そして、レーザ光Lの照射に併せて、第1及び第2加工光L1,L2の第1及び第2集光点C1,C2の位置が第1及び第2ライン15A,15Bに沿って加工進行方向K1に移動するように、移動機構9により支持部2及びレーザ加工ヘッドHの少なくとも一方を移動させる。
【0042】
なお、第1加工光L1は-1次光に対応し、第2加工光L2は+1次光に対応する。第1ライン15A及び第2ライン15Bは、Z方向と垂直な方向に沿って並ぶライン15である。図示する例では、第1ライン15Aと第2ライン15Bとは隣接する。第1及び第2加工光L1,L2は、Z方向と加工進行方向K1とに直交する方向であるインデックス方向(以下、単に「インデックス方向」という)にレーザ光Lが分岐されてなる。第1及び第2集光点C1,C2の位置は、インデックス方向のみにおいて異なる。同時形成される複数の改質スポット12sの間隔(第1加工光L1の集光による改質スポット12sと第2加工光L2の集光による改質スポット12sとの間隔)が、分岐ピッチである。
【0043】
本実施形態の制御部101は、ユーザインタフェース102で受け付けた入力に基づいて、当該ユーザインタフェース102の表示を制御する。制御部101は、図1及び図5に示されるように、可視撮像部8A及び赤外撮像部8Bの少なくとも何れかによる撮像結果の画像102Aを、ユーザインタフェース102に表示させる。これと共に、制御部101は、分岐レーザ加工の設定に係る設定画面102Bをユーザインタフェース102に表示させる。つまり、制御部101は、ユーザインタフェース102の1つの表示画面に、画像102Aと設定画面102Bとを並ぶように表示させる。表示させる画像102Aの調整及び切替え等は、ユーザインタフェース102で受け付けた入力に基づいて行うことができる。
【0044】
図6(a)及び図6(b)に示されるように、設定画面102Bは、第1設定画面G11と、第2設定画面G12と、を含む。制御部101は、ユーザインタフェース102で受け付けた入力に基づいて、第1設定画面G11及び第2設定画面G12のうちの何れか一方を設定画面102Bとしてユーザインタフェース102に表示させる。
【0045】
第1設定画面G11は、分岐レーザ加工の加工条件の設定に用いられる設定画面である。第1設定画面G11は、ユーザ(特にエンドユーザ)に用いられるユーザ用の設定画面である。第1設定画面G11は、加工条件の設定のための操作に用いる画像を含む。第1設定画面G11上における加工条件の設定(入力)は、選択式であってもよいし、数値入力式であってもよい。
【0046】
第2設定画面G12は、第1設定画面G11で設定される当該加工条件の補正に用いられる設定画面である。第2設定画面G12は、例えば管理者、運用者及び保守者等(以下、「管理者等」という)に用いられる管理者等用の設定画面である。第2設定画面G12は、加工条件の設定の補正のための操作に用いる画像を含む。第2設定画面G12上における加工条件の補正の設定(入力)は、選択式であってもよいし、数値入力式であってもよい。
【0047】
第2設定画面G12は、第1設定画面G11とは別で表示される。別で表示される場合とは、例えば、画像として渾然一体になっていない場合、区分可能である場合、一つのフォームとなっていない場合、同時に表示されない場合、別々で表示される場合、及びこれらの少なくとも何れかを含む場合である。第2設定画面G12は、ユーザに対して非開示の設定画面である。
【0048】
第2設定画面G12は、例えば管理者等からロック解除の入力がなされた後の一定期間にのみ、ユーザインタフェース102に表示可能とされる。つまり、制御部101は、ユーザインタフェース102でロック解除の入力を受け付けた場合にのみ、第2設定画面G12をユーザインタフェース102に表示可能である。ロック解除の入力としては、特に限定されないが、例えばパスワード入力等が挙げられる。なお、ユーザインタフェース102でロック解除の入力を受け付けてから一定期間が経過した後には、ユーザインタフェース102に第2設定画面G12が表示されている場合、強制的に当該第2設定画面G12に代えて第1設定画面G11を表示させてもよい。
【0049】
図6(a)に示される例では、第1設定画面G11上で設定される加工条件は、レーザ光Lの分岐数と、分岐ピッチと、Z位置と、加工光の出力と、加工光の球面収差と、を含む。加工光の出力は、複数の加工光それぞれの出力に対応する。加工光の球面収差は、複数の加工光それぞれが集束するときの球面収差に対応する。パラメータの「基準」は、その程度が予め設定された基準値であることを意味する。基準値は、実測等により求めることができる。図中の「X1」、「A1」及び「B1」は、説明の便宜上の表記であって、任意の値を意味する。
【0050】
図6(b)に示される例では、第2設定画面G12上で設定される加工条件の補正は、第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と、第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G12では、複数の集光点C毎に出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。集光点Cに係る出力補正とは、当該集光点Cを形成する加工光の出力についての補正である。集光点Cに係る球面収差補正とは、当該集光点Cを形成する加工光が集光するときの球面収差についての補正である。パラメータの「基準-1」は、その程度が予め設定された基準値よりも1段階小さいことを意味する。各パラメータの「基準+1」は、その程度が予め設定された基準値よりも1段階大きいことを意味する。
【0051】
なお、加工条件及びその補正の表現は、図6(a)及び図6(b)に示される例に特に限定されない。例えば、第2設定画面G12における「第1集光点」及び「第2集光点」の表記に代えて、加工進行方向K1に対して左側及び右側の集光点Cであること意味する「左点」及び「右点」としてもよい。例えば、第2設定画面G12における「第1集光点」及び「第2集光点」の表記に代えて、第1加工光L1が-1次光であり、第2加工光L2が+1次光であることを意味する「-1次光」及び「+1次光」としてもよい。例えば、第1設定画面G11及び第2設定画面G12における「基準」及び「基準±α(αは整数)」の表記に代えて、数値表記としてもよいし、大中小等の段階の表記としてもよい。
【0052】
加工条件の種別は、図6(a)及び図6(b)に示される例に特に限定されない。例えば、第1設定画面G11で設定される加工条件は、非点収差を含んでいてもよい。第2設定画面G12で設定される加工条件の補正は、非点収差補正を含んでいてもよい。第1設定画面G11で設定される加工条件は、ビーム形状(楕円率等)を含んでいてもよい。第2設定画面G12で設定される加工条件の補正は、ビーム形状の補正を含んでいてもよい。第2設定画面G12で設定される加工条件の補正は、Z位置の補正を含んでいてもよい。
【0053】
図1に示されるように、制御部101は、ユーザインタフェース102で受け付けた入力に基づいて、レーザ加工ヘッドH及び移動機構9を制御する。制御部101は、第1設定画面G11で設定された加工条件及び第2設定画面G12で設定された加工条件の補正に基づいて、レーザ加工ヘッドH及び移動機構9の駆動を制御する。具体的には、制御部101は、第1設定画面G11上で設定されたレーザ光Lの分岐数、分岐ピッチ、加工光の出力及び加工光の球面収差と、第2設定画面G12上で設定された第1及び第2集光点C1,C2に係る出力補正及び球面収差補正と、に基づいて、空間光変調器5を制御する。制御部101は、第1設定画面G12上で設定されたZ位置に基づいて、移動機構9を制御する。
【0054】
記憶部103は、第2設定画面G12上で設定された加工条件の補正の履歴(ログ)を、第1設定画面G12上で設定された加工条件と関連付けて記憶する。制御部101は、ユーザインタフェース102を介して当該補正の履歴を表示させる操作が入力された場合、ユーザインタフェース102上に当該補正の履歴を表示させる。
【0055】
次に、レーザ加工装置1により分岐レーザ加工を行う場合の一例を説明する。
【0056】
ユーザは、ユーザインタフェース102に表示されている第1設定画面G11上において、例えばタッチ入力等により、分岐レーザ加工の加工条件を入力する。これにより、入力された加工条件に基づいて分岐レーザ加工が実施される。ここでは、第1及び第2ライン15A,15Bのそれぞれに沿って第1及び第2加工光L1,L2のそれぞれが走査される(図4参照)。その結果、第1及び第2ライン15A,15Bのそれぞれに沿って、対象物11の内部に改質領域12が形成される。
【0057】
このとき、分岐レーザ加工では、光学系由来の影響等による機差に起因して、同じ加工条件でも加工結果がばらつく場合がある。例えば分岐レーザ加工では、機差に起因して、第1及び第2加工光L1,L2を集光させることによる各加工結果(改質スポット12sからの亀裂量)がばらつく場合がある。
【0058】
そこでこの場合、管理者等は、ユーザインタフェース102でロック解除の入力を行った後、ユーザインタフェース102で画面切替えの入力を行い、第1設定画面G11に代えて裏画面としての第2設定画面G12を表示させる。管理者等は、ユーザインタフェース102に表示させた第2設定画面G12上において、第1及び第2加工光L1,L2の集光による各加工結果の差が小さくなるように、加工条件の補正値を入力する。その結果、ユーザによる第1設定画面G12の入力はそのままにして、分岐レーザ加工の加工結果のばらつきが抑制されることとなる。
【0059】
以上、レーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、分岐レーザ加工を実施する際、例えばユーザは、ユーザインタフェース102に表示された第1設定画面G11上にて加工条件を入力することができる。一方で、例えば管理者等は、ユーザインタフェース102に表示された第2設定画面G12上において、機差に起因して加工結果がばらつかないように当該加工条件を補正することができる。すなわち、ユーザが機差を考慮せずに分岐レーザ加工の加工条件を入力しながら、その裏で、機差に起因して加工結果がばらつかないように管理者等が当該加工条件を補正することができる。したがって、分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら、加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。なお、ユーザは必ずしも機差に関する知識及び経験を有している訳ではないことから、ユーザに機差を考慮した入力をさせる構成は現実的ではない。この点においても、ユーザが機差を考慮せずに加工条件できるレーザ加工装置1及びレーザ加工方法は有効である。
【0060】
レーザ加工装置1では、レーザ加工ヘッドHは空間光変調器5を有する。レーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、レーザ光Lが第1及び第2加工光L1,L2に分岐し且つそれらの第1及び第2集光点C1,C2がX方向及び/又はY方向において互いに異なる箇所に位置するように、空間光変調器5によりレーザ光Lを変調させる。この場合、空間光変調器5を利用して、分岐レーザ加工を実施することができる。
【0061】
レーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、ライン15は、第1及び第2ライン15A,15Bを含み、第1加工光L1の第1集光点C1を第1ライン15A上の箇所に位置させると共に、第2加工光L2の第2集光点C2を第2ライン15B上の箇所に位置させる。第1設定画面G11上で設定される加工条件は、加工光の出力と、加工光の球面収差と、を含む。第2設定画面G12上で設定される加工条件の補正は、第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と、第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。これにより、2つのライン15に沿って同時に改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G12では、集光点C毎の表記で加工条件を補正し、各集光点Cの加工結果のばらつきを補正できる。
【0062】
レーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、第1設定画面G11と共に又は第2設定画面G12と共に、可視撮像部8A及び赤外撮像部8Bの少なくとも何れかによる撮像結果の画像102Aをユーザインタフェース102に表示させる。これにより、ユーザが第1設定画面G11上にて加工条件を入力する際、及び、第2設定画面G12上にて加工条件の補正を入力する際に、可視撮像部8A及び赤外撮像部8Bの撮像結果を容易に参照することができる。
【0063】
レーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、ユーザインタフェース102でロック解除の入力を受け付けた場合にのみ、第2設定画面G12をユーザインタフェース102に表示可能である。これにより、例えばロック解除できないユーザによる第2設定画面G12上での加工条件の補正を禁止することができる。
【0064】
レーザ加工装置1及びレーザ加工方法は、第2設定画面G12上で設定される加工条件の補正の履歴を記憶部103に記憶する。記憶部103に記憶された履歴を参酌することにより、加工結果のばらつきの状況を把握することができる。
【0065】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0066】
図7に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第2設定画面G12(図6(b)参照)に代えて第2設定画面G22を含む。第2設定画面G22上で設定される加工条件の補正は、第1ライン15Aに係る出力補正及び球面収差補正と、第2ライン15Bに係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G22では、複数のライン15毎に出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G22は第2設定画面G12と同様である。ライン15に係る出力補正とは、当該ライン15に沿って走査する加工光の出力についての補正である。ライン15に係る球面収差補正とは、当該ライン15に沿って走査する加工光が集束するときの球面収差についての補正である。
【0067】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0068】
本実施形態では、第2設定画面G22上で設定される加工条件の補正は、第1ライン15Aに係る出力補正及び球面収差補正と、第2ライン15Bに係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。これにより、2つのライン15に沿って同時に改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G22では、ライン15毎の表記で加工条件を補正し、各ライン15の加工結果のばらつきを補正できる。
【0069】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。第3実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0070】
本実施形態の制御部101は、図8に示される分岐レーザ加工を実施させる。図8に示される分岐レーザ加工では、レーザ光Lを第1加工光L1、第2加工光L2及び第3加工光L3に分岐させる。第1加工光L1の第1集光点C1を、第1ライン15A上における対象物11の内部に位置させる。第2加工光L2の第2集光点C2を、第2ライン15B上における対象物11の内部に位置させる。第3加工光L3の第3集光点C3を、第3ライン15C上における対象物11の内部に位置させる。そして、レーザ光Lの照射に併せて、第1~第3集光点C1,C2,C3の位置が第1~第3ライン15A,15B,15Cに沿って加工進行方向K1に移動するように、移動機構9により支持部2及びレーザ加工ヘッドHの少なくとも一方を移動させる。
【0071】
なお、第1加工光L1は-1次光に対応し、第2加工光L2は+1次光に対応し、第3加工光L3は0次光に対応する。第1~第3ライン15A,15B,15Cは、Z方向と垂直な方向に沿って並ぶライン15である。図示する例では、第1ライン15Aと第3ライン15Cとは隣接し、第2ライン15Bと第3ライン15Cとは隣接する。第1~第3加工光L1,L2,L3は、インデックス方向にレーザ光Lが分岐されてなる。第1~第3集光点C1,C2,C3の位置は、インデックス方向のみにおいて異なる。
【0072】
図9(a)及び図9(b)に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第1設定画面G11(図6(a)参照)に代えて第1設定画面G31を含み、第2設定画面G12(図6(b)参照)に代えて第2設定画面G32を含む。
【0073】
図9(a)に示されるように、第1設定画面G31上で設定される加工条件は、レーザ光Lの分岐数と、分岐ピッチと、Z位置と、加工光の出力と、加工光の球面収差と、を含む。その他について、第1設定画面G31は第1設定画面G11と同様である。図9(b)に示されるように、第2設定画面G32上で設定される加工条件の補正は、第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と、第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正と、第3集光点C3に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G32では、複数の集光点C毎に出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G32は第2設定画面G12と同様である。
【0074】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。なお、第2設定画面G12における「第1集光点」、「第2集光点」及び「第3集光点」の表記に代えて、加工進行方向K1に対して左側、右側及び中央の集光点Cであること意味する「左点」、「右点」及び「中点」としてもよい。
【0075】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。第4実施形態の説明では、第3実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0076】
図10に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第2設定画面G32(図9(b)参照)に代えて第2設定画面G42を含む。第2設定画面G42上で設定される加工条件の補正は、第1ライン15Aに係る出力補正及び球面収差補正と、第2ライン15Bに係る出力補正及び球面収差補正と、第3ライン15Cに係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G22では、複数のライン15毎に出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G42は第2設定画面G32と同様である。
【0077】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0078】
本実施形態では、第2設定画面G42上で設定される加工条件の補正は、第1~第3ライン15A,15B,15Cに係る出力補正及び球面収差補正を含む。これにより、3つのライン15に沿って同時に改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G42では、ライン15を基準にして加工条件を補正できるため、ライン15毎に加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【0079】
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。第5実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0080】
本実施形態の制御部101は、図11(a)及び図11(b)に示される分岐レーザ加工を実施させる。図11(a)及び図11(b)に示される分岐レーザ加工では、レーザ光Lを複数の加工光に分岐させる。1つのライン15に沿ってZ方向に複数列の改質領域12が形成されるように、複数の集光点CのそれぞれをZ方向及び加工進行方向K1に異なる複数の箇所に位置させる。そして、レーザ光Lの照射に併せて、複数の集光点Cの位置がライン15に沿って加工進行方向K1に移動するように、移動機構9により支持部2及びレーザ加工ヘッドHの少なくとも一方を移動させる。
【0081】
具体的には、図11(a)に示されるように、制御部101は、レーザ光Lを第1及び第2加工光L1,L2に分岐させて対象物11に集光させる。制御部101は、1つのライン15に沿って第1改質領域121及び第2改質領域122が形成されるように、第1加工光L1の第1集光点C1及び第2加工光L2の第2集光点C2のそれぞれを、Z方向及びX方向に異なる複数の箇所に位置させる。これにより、第1加工光L1の集光により第1改質領域121が形成され、第2加工光L2の集光により第2改質領域122が形成される。制御部101は、レーザ光Lの照射に併せて、ライン15に沿って、往路方向K11に第1及び第2集光点C1,C2を移動させる。
【0082】
第2改質領域122は、第1改質領域121よりも表面11a側に位置する。往路方向K11は、X方向の一方側へ向かう加工進行方向K1であって、第1移動方向に相当する。第1集光点C1は、第2集光点C2よりも往路方向K11の前側に位置する。第1集光点C1は、第2集光点C2よりも裏面11b側に位置する。
【0083】
また、図11(b)に示されるように、制御部101は、1つのライン15に沿って第1改質領域121及び第2改質領域122が形成されるように、第2集光点C2及び第1集光点C1のそれぞれを、Z方向及びX方向に異なる複数の箇所に位置させる。これにより、第1加工光L1の集光により第2改質領域122が形成され、第2加工光L2の集光により第1改質領域121が形成される。制御部101は、レーザ光Lの照射に併せて、ライン15に沿って、復路方向K12に第1及び第2集光点C1,C2を移動させる。
【0084】
復路方向K12は、X方向の他方側へ向かう加工進行方向K1であって、第1移動方向の反対方向である第2移動方向に相当する。第2集光点C2は、第1集光点C1よりも復路方向K12の前側に位置する。第2集光点C2は、第1集光点C1よりも裏面11b側に位置する。
【0085】
図12(a)及び図12(b)に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第1設定画面G11(図6(a)参照)に代えて第1設定画面G51を含み、第2設定画面G12(図6(b)参照)に代えて第2設定画面G52を含む。
【0086】
図12(a)に示されるように、第1設定画面G51上で設定される加工条件は、レーザ光Lの分岐数と、第1改質領域121及び第2改質領域122のそれぞれに係るZ位置、出力及び球面収差と、を含む。つまり、第1設定画面G51では、複数の改質領域12毎にZ位置、出力及び球面収差を設定することが可能である。その他について、第1設定画面G51は第1設定画面G11と同様である。改質領域12に係る出力とは、当該改質領域12を形成する加工光の出力である。改質領域12に係る球面収差とは、当該改質領域12を形成する加工光が集光するときの球面収差である。図中の「A2」、「B2」、「C2」、「D2」、「E2」及び「F2」は、説明の便宜上の表記であって、任意の値を意味する。
【0087】
図12(b)に示されるように、第2設定画面G52上で設定される加工条件の補正は、第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と、第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G52では、複数の集光点C毎に出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G52は第2設定画面G12と同様である。
【0088】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0089】
本実施形態では、1つのライン15に沿って複数列の改質領域12が形成されるように複数の集光点CのそれぞれをZ方向に異なる複数の箇所に位置させる。第1設定画面G51上で設定される加工条件は、第1改質領域121に係る出力及び球面収差と、第2改質領域122に係る出力及び球面収差と、を含む。第2設定画面G52上で設定される加工条件の補正は、第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と、第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。これにより、1つのライン15に沿って同時に複数列の改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第1設定画面G51では、改質領域12毎に加工条件を設定することが可能となる。
【0090】
[第6実施形態]
第6実施形態について説明する。第6実施形態の説明では、第5実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0091】
図13に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第2設定画面G52(図12(b)参照)に代えて第2設定画面G62を含む。第2設定画面G62上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11の場合(図11(a)参照)における出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が復路方向K12の場合(図11(b)参照)における出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G62では、加工進行方向K1が往路方向K11及び復路方向K12の何れかであるかによって出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G62は第2設定画面G52と同様である。
【0092】
このような本実施形態では、分岐レーザ加工を行う場合、管理者等は、ユーザインタフェース102に表示された第2設定画面G62上において、加工進行方向K1が往路方向K11であるか復路方向K12であるかの違いによる各加工結果の差が小さくなるように、加工条件の補正値を入力する。
【0093】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0094】
本実施形態では、第2設定画面G62上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11である場合及び復路方向K12である場合の出力補正及び球面収差補正を含む。これにより、1つのライン15に沿って同時に複数列の改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G62では、加工進行方向K1の違いによって加工条件を補正できるため、加工進行方向K1に応じて総体的に(大まかに)加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【0095】
[第7実施形態]
第7実施形態について説明する。第7実施形態の説明では、第6実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0096】
図14に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第2設定画面G62(図13参照)に代えて第2設定画面G72を含む。第2設定画面G72上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11の場合であって第1改質領域121に係る出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が往路方向K11の場合であって第2改質領域122に係る出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が復路方向K12の場合であって第1改質領域121に係る出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が復路方向K12の場合であって第2改質領域122に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G72では、複数の改質領域12毎に且つ加工進行方向K1が往路方向K11及び復路方向K12の何れかであるかによって、出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G72は第2設定画面G62と同様である。
【0097】
このような本実施形態では、分岐レーザ加工を行う場合、管理者等は、ユーザインタフェース102に表示された第2設定画面G72上において、第1及び第2加工光L1,L2を集光させることによる各加工結果の差、及び、加工進行方向K1が往路方向K11であるか復路方向K12であるかの違いによる加工結果の差が小さくなるように、加工条件の補正値を入力する。
【0098】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0099】
本実施形態では、第2設定画面G72上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11である場合及び復路方向K12である場合のそれぞれにおける第1及び第2改質領域121,122に係る出力補正及び球面収差補正を含む。これにより、1つのライン15に沿って同時に複数列の改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G72では、加工進行方向K1及び改質領域12の違いによって加工条件を補正できるため、加工進行方向K1及び改質領域12に応じて加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【0100】
[第8実施形態]
第8実施形態について説明する。第8実施形態の説明では、第5実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0101】
図15(a)及び図15(b)に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第1設定画面G51(図12(a)参照)に代えて第1設定画面G81を含み、第2設定画面G52(図12(b)参照)に代えて第2設定画面G82を含む。
【0102】
図12(a)に示されるように、第1設定画面G81上で設定される加工条件は、補正パラメータを含む。補正パラメータは、加工条件の補正のパターン、傾向、程度等を表すパラメータである。補正パラメータは、例えば数値で表されている。その他について、第1設定画面G81は第1設定画面G51と同様である。図12(b)に示されるように、第2設定画面G52上で設定される第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正とは、補正パラメータ毎にグループ化されて設定されている。その他について、第2設定画面G82は第2設定画面G52と同様である。
【0103】
制御部101は、第2設定画面G82で設定されている補正パラメータの各グループから、第1設定画面G81で設定された補正パラメータに対応するグループを選択グループとして選択する。制御部101は、第2設定画面G82上で設定された当該選択グループにおける出力補正及び球面収差補正に更に基づき、空間光変調器5を制御する。
【0104】
このような本実施形態では、分岐レーザ加工を行う場合、管理者等は、ユーザインタフェース102に表示された第2設定画面G82上において、第1及び第2加工光L1,L2を集光させることによる各加工結果の差が小さくなるように、加工条件の補正値を補正パラメータ毎にグループ化して入力する。ユーザは、ユーザインタフェース102に表示された第1設定画面G81上にて、分岐レーザ加工の加工条件を入力すると共に、所望の補正パラメータを入力する。これにより、ユーザが入力した加工条件と、管理者等が入力し且つユーザが補正パラメータとして選択した加工条件の補正と、基づいて、分岐レーザ加工が実施される。
【0105】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0106】
本実施形態では、第1設定画面G81上で設定される加工条件は、補正パラメータを含み、第2設定画面G82上で設定される加工条件の補正は、補正パラメータ毎に設定されている。これにより、ユーザは、補正パラメータを第1設定画面G81上で設定することで、その補正パラメータに応じた当該加工条件の補正が可能となる。管理者等は、加工条件の補正のグループを補正パラメータ毎に幾つか設定することができ、ユーザは、補正パラメータを設定することで、加工条件の補正を大まかに調整することが可能となる。
【0107】
[第9実施形態]
第9実施形態について説明する。第9実施形態の説明では、第5実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0108】
本実施形態の制御部101は、図16(a)に示されるように、レーザ光Lを第1~第3加工光L1,L2.L3に分岐させて対象物11に集光させる。制御部101は、1つのライン15に沿って第1改質領域121、第2改質領域122及び第3改質領域123が形成されるように、第1加工光L1の第1集光点C1、第3加工光L3の第3集光点C3及び第2加工光L2の第2集光点C2のそれぞれを、Z方向及びX方向に異なる複数の箇所に位置させる。これにより、第1加工光L1の集光により第1改質領域121が形成され、第3加工光L3の集光により第2改質領域122が形成され、第2加工光L2の集光により第3改質領域123が形成される。制御部101は、レーザ光Lの照射に併せて、ライン15に沿って、往路方向K11に第1~第3集光点C1,C2,C3を移動させる。
【0109】
第2改質領域122は、第1改質領域121よりも表面11a側に位置する。第3改質領域123は、第2改質領域122よりも表面11a側に位置する。第1集光点C1は、第3集光点C3よりも往路方向K11の前側に位置する。第3集光点C3は、第2集光点C2よりも往路方向K11の前側に位置する。第1集光点C1は、第2集光点C2よりも裏面11b側に位置する。第3集光点C3は、Z方向における第1集光点C1と第2集光点C2との間に位置する。
【0110】
また、図16(b)に示されるように、制御部101は、1つのライン15に沿って第1改質領域121、第2改質領域122及び第3改質領域123が形成されるように、第2集光点C2、第3集光点C3及び第1集光点C1のそれぞれを、Z方向及びX方向に異なる複数の箇所に位置させる。これにより、第2加工光L2の集光により第1改質領域121が形成され、第3加工光L3の集光により第2改質領域122が形成され、第1加工光L1の集光により第3改質領域123が形成される。制御部101は、レーザ光Lの照射に併せて、ライン15に沿って、復路方向K12に第1~第3集光点C1,C2,C3を移動させる。
【0111】
第2集光点C2は、第3集光点C3よりも復路方向K12の前側に位置する。第3集光点C3は、第1集光点C1よりも復路方向K12の前側に位置する。第1集光点C1は、第2集光点C2よりも表面11a側に位置する。第3集光点C3は、Z方向における第1集光点C1と第2集光点C2との間に位置する。
【0112】
図17(a)及び図17(b)に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第1設定画面G51(図12(a)参照)に代えて第1設定画面G91を含み、第2設定画面G52(図12(b)参照)に代えて第2設定画面G92を含む。
【0113】
図17(a)に示されるように、第1設定画面G91上で設定される加工条件は、レーザ光Lの分岐数と、第1~第3改質領域121,122,123のそれぞれに係るZ位置、出力及び球面収差と、を含む。つまり、第1設定画面G91では、複数の改質領域12毎にZ位置、出力及び球面収差を設定することが可能である。その他について、第1設定画面G91は第1設定画面G51と同様である。図中の「A3」、「B3」、「C3」、「D3」、「E3」、「F3」「G3」、「H3」及び「I3」は、説明の便宜上の表記であって、任意の値を意味する。
【0114】
図17(b)に示されるように、第2設定画面G92上で設定される加工条件の補正は、第1集光点C1に係る出力補正及び球面収差補正と、第2集光点C2に係る出力補正及び球面収差補正と、第3集光点C3に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G92では、複数の集光点C毎に出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G92は第2設定画面G52と同様である。
【0115】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0116】
[第10実施形態]
第10実施形態について説明する。第10実施形態の説明では、第9実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0117】
図18に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第2設定画面G92(図17(b)参照)に代えて第2設定画面G102を含む。第2設定画面G102上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11の場合(図16(a)参照)における出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が復路方向K12の場合(図16(b)参照)における出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G102では、加工進行方向K1が往路方向K11及び復路方向K12の何れかであるかによって出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G102は第2設定画面G92と同様である。
【0118】
このような本実施形態では、分岐レーザ加工を行う場合、管理者等は、ユーザインタフェース102に表示された第2設定画面G102上において、加工進行方向K1が往路方向K11であるか復路方向K12であるかの違いによる各加工結果の差が小さくなるように、加工条件の補正値を入力する。
【0119】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0120】
本実施形態では、第2設定画面G102上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11である場合及び復路方向K12である場合の出力補正及び球面収差補正を含む。これにより、1つのライン15に沿って同時に複数列の改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G102では、加工進行方向K1の違いによって加工条件を補正できるため、加工進行方向K1に応じて総体的に加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【0121】
[第11実施形態]
第11実施形態について説明する。第11実施形態の説明では、第10実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0122】
図19に示されるように、本実施形態の設定画面102Bは、第2設定画面G102(図18参照)に代えて第2設定画面G112を含む。第2設定画面G112上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11の場合であって第1改質領域121に係る出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が往路方向K11の場合であって第2改質領域122に係る出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が復路方向K12の場合であって第1改質領域121に係る出力補正及び球面収差補正と、加工進行方向K1が復路方向K12の場合であって第2改質領域122に係る出力補正及び球面収差補正と、を含む。つまり、第2設定画面G112では、複数の改質領域12毎に且つ加工進行方向K1が往路方向K11及び復路方向K12の何れかであるかによって、出力補正及び球面収差補正を行うことが可能である。その他について、第2設定画面G112は第2設定画面G102と同様である。
【0123】
このような本実施形態では、分岐レーザ加工を行う場合、管理者等は、ユーザインタフェース102に表示された第2設定画面G102上において、第1及び第2加工光L1,L2を集光させることによる各加工結果の差、及び、加工進行方向K1が往路方向K11であるか復路方向K12であるかの違いによる加工結果の差が小さくなるように、加工条件の補正値を入力する。
【0124】
以上、本実施形態においても、上記実施形態の効果と同様の効果、すなわち、分岐レーザ加工を実施する場合においてユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制できる等の効果が奏される。
【0125】
本実施形態では、第2設定画面G112上で設定される加工条件の補正は、加工進行方向K1が往路方向K11である場合及び復路方向K12である場合のそれぞれにおける第1及び第2改質領域121,122に係る出力補正及び球面収差補正を含む。これにより、1つのライン15に沿って同時に複数列の改質領域12を形成する分岐レーザ加工を実施する場合において、ユーザの使い勝手を高めながら加工結果のばらつきを抑制することを具体的に実現できる。特に、第2設定画面G72では、加工進行方向K1及び改質領域12の違いによって加工条件を補正できるため、加工進行方向K1及び改質領域12に応じて加工結果のばらつきを抑制することが可能となる。
【0126】
[変形例]
以上、本発明の一態様は、上述した実施形態に限定されない。
【0127】
上記実施形態では、レーザ光Lの分岐数(加工光の数)は限定されず、上述した2分岐及び3分岐だけでなく、4分岐以上であってもよい。上記実施形態では、例えば第1設定画面においてユーザが所望の分岐数を入力することで、当該分岐数の加工光による分岐レーザ加工を実施することができる。また、上記実施形態では、例えば第1設定画面においてユーザが所望の分岐数を入力することで、それに応じて第1設定画面及び第2設定画面を変化(設定欄を増減)させることができる。
【0128】
上記実施形態では、入力受付部及び表示部として、ユーザインタフェース102を備えたが、これに限定されない。入力受付部と表示部とは、別構成であってもよい。入力受付部及び表示部としては、種々の公知装置を用いることができる。上記実施形態では、撮像結果の画像102Aをユーザインタフェース102に表示させたが、この画像102Aは無くてもよい。上記実施形態では、第1設定画面と第2設定画面とを切り替えてユーザインタフェース102に表示したが、これらを別で表示できれば、第1設定画面と第2設定画面との双方をユーザインタフェース102に表示させてもよい。
【0129】
上記実施形態は、照射部として複数のレーザ加工ヘッドHを備えていてもよい。上記実施形態では、空間光変調器5は反射型の空間光変調器に限定されず、透過型の空間光変調器を採用してもよい。上記実施形態では、複数の加工光それぞれの集光点Cの間隔は、等しくてもよいし、異なっていてもよい。上記実施形態では、レーザ加工ヘッドH及び支持部2の双方が移動機構9により移動可能であるが、これらの少なくとも一方が移動機構9により移動可能であればよい。
【0130】
上記実施形態では、対象物11の種類、対象物11の形状、対象物11のサイズ、対象物11が有する結晶方位の数及び方向、並びに、対象物11の主面の面方位は特に限定されない。上記実施形態では、対象物11は、結晶構造を有する結晶材料を含んで形成されていてもよいし、これに代えてもしくは加えて、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料を含んで形成されていてもよい。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。例えば対象物11は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO、ダイアモンド、GaOx、サファイア(Al)、ガリウム砒素、リン化インジウム、ガラス、及び無アルカリガラスの少なくとも何れかで形成された基板を含んでいてもよい。
【0131】
上記実施形態では、改質領域12は、例えば対象物11の内部に形成された結晶領域、再結晶領域、又は、ゲッタリング領域であってもよい。結晶領域は、対象物11の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、一旦は蒸発、プラズマ化あるいは溶融した後、再凝固する際に単結晶あるいは多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域であり、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。上記実施形態は、アブレーション等の加工へ適用されてもよい。
【0132】
上記実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法は、その少なくとも一部を互いに組み合わせてもよい。換言すると、上記第1~第11実施形態のうちの何れかは、上記第1~第11実施形態のうちの何れか以外の実施形態における一部又は全部を含んでいてもよい。例えば上記実施形態では、レーザ光Lをインデックス方向に分岐するのに加えて加工進行方向K1に分岐するレーザ分岐加工を実施してもよい。この場合、このような分岐に応じた加工条件を第1設定画面で設定可能とし、当該加工条件の補正を第2設定画面で設定可能としてもよい。
【0133】
上記実施形態では、収差の種類は特に限定されない。例えば収差は、球面収差、非点収差及びコマ収差等の少なくとも何れかを含んでいてもよい。上記実施形態では、必ずしも第1設定画面で設定されるパラメータだけが第2設定画面での補正の対象になるわけではない。第2設定画面で補正できるパラメータは、第1設定画面で設定するパラメータとは異なるパラメータの補正を含んでいてもよい。第2設定画面による加工条件の補正は、特に限定されず、例えば集光状態の補正を含んでいてもよい。例えば上記第1実施形態において、ユーザインタフェース102にユーザ用として第1設定画面G11(図6(a)参照)を表示させる一方で、管理者等用として図20(a)の第2設定画面G122を表示させてもよい。また例えば上記第1実施形態において、ユーザインタフェース102にユーザ用として第1設定画面G11(図6(a)参照)を表示させる一方で、管理者等用として図20(b)の第2設定画面G132を表示させてもよい。
【0134】
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1…レーザ加工装置、2…支持部、5…空間光変調器、8A…可視撮像部(撮像部)、8B…赤外撮像部(撮像部)、9…移動機構、11…対象物、12…改質領域、15…ライン、15A…第1ライン、15B…第2ライン、101…制御部、102…ユーザインタフェース(入力受付部,表示部)、102A…画像(撮像部の撮像結果)、102B…設定画面、103…記憶部、121…第1改質領域、122…第2改質領域、123…第3改質領域、C…集光点、C1…第1集光点、C2…第2集光点、C3…第3集光点、G11,G31,G51,G81,G91…第1設定画面、G12,G22,G32,G42,G52,G62,G72,G82,G92,G102,G112,G122,G132…第2設定画面、H…レーザ加工ヘッド(照射部)、L…レーザ光、L1…第1加工光(加工光)、L2…第2加工光(加工光)、L3…第3加工光(加工光)。
図1
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