IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図1
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図2
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図3
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図4
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図5
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図6
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図7
  • 特許-回転電機の回転子、および回転電機 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】回転電機の回転子、および回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240722BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/16 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020154691
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048712
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直哉
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大介
(72)【発明者】
【氏名】松原 正克
(72)【発明者】
【氏名】久田 秀樹
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129872(JP,A)
【文献】特開2011-135638(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0525714(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心に回転するシャフトと、
前記シャフトに同軸的に固定された回転子鉄心と、
前記回転子鉄心を前記中心軸線に沿った方向に貫通する孔部に収容される永久磁石と、を備え、
前記永久磁石は、前記中心軸線と垂直な方向に沿った第1の面取り部前記中心軸線に沿った第2の面取り部の双方を有し、
前記第1の面取り部と前記第2の面取り部は、面取り寸法が互いに異なり、
前記第1の面取り部は、前記中心軸線に沿った方向における前記永久磁石の端面の全周に設けられている
回転電機の回転子。
【請求項2】
前記第2の面取り部の前記面取り寸法は、前記第1の面取り部の前記面取り寸法よりも小さい
請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記永久磁石は、
直方体状の母材の角部が面取りされた形態をなし、
前記母材の角部が面取りされて、前記第2の面取り部と同一箇所に前記第1の面取り部と同一の面取り寸法の面取り部を有する比較磁石と同一体積で、かつ前記中心軸線に沿った方向および前記中心軸線と垂直な方向の少なくともいずれかの寸法が前記比較磁石よりも短い
請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記永久磁石は、
直方体状の母材の角部が面取りされた形態をなし、
前記母材の角部が面取りされて、前記第2の面取り部と同一箇所に前記第1の面取り部と同一の面取り寸法の面取り部を有する比較磁石よりも体積が大きく、かつ前記中心軸線に沿った方向および前記中心軸線と垂直な方向の寸法が前記比較磁石と同一である
請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻き付けられた巻線とを有する固定子と、
請求項1から4のいずれか一項に記載の回転子と、を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子、および該回転子を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、永久磁石の目覚ましい研究開発により、高磁気エネルギー積の永久磁石が開発されている。このような永久磁石を用いた永久磁石型の回転電機は、電車や自動車の電動機あるいは発電機として適用されている。通常、永久磁石型の回転電機は、円筒状の固定子と、この固定子の内側に回転自在に支持された円柱形状の回転子とを備えている。
【0003】
かかる永久磁石型の回転電機において、永久磁石は、例えば回転子鉄心に設けられた孔部(埋込孔)に挿入され、接着剤などで回転子鉄心に固定される。このため、永久磁石の埋込孔への挿入時には、永久磁石が回転子鉄心や埋込孔と接触、あるいは衝突するおそれがある。したがって、このような接触時や衝突時における永久磁石の損傷を抑制するべく、永久磁石は、例えば直方体の角部(各辺)に面取りを施した形態をなしている。永久磁石の磁束量は体積に比例し、回転電機の特性、例えば逆起電力やトルクなどは永久磁石の磁束量に比例する。すなわち、これらの回転電機の特性(電気的特性)は、永久磁石の体積に依存する。
面取りを施した場合、永久磁石は、面取りの分だけ体積、換言すれば磁束量が減少する。このため、永久磁石は、面取りによる磁束量の減少によって生じる回転電機の特性変化を考慮して面取りすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2704666号公報
【文献】国際公開第2017/090159号
【文献】特開2016-174507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、面取りを施した場合であっても永久磁石に起因する回転電機の特性、例えば逆起電力やトルクなどを適切に維持可能な回転子および回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転電機の回転子は、シャフトと、回転子鉄心と、永久磁石とを備える。前記シャフトは、中心軸線を中心に回転する。前記回転子鉄心は、前記シャフトに同軸的に固定される。前記永久磁石は、前記中心軸線と垂直な方向に沿った第1の面取り部前記中心軸線に沿った第2の面取り部の双方を有する。前記第1の面取り部と前記第2の面取り部は、面取り寸法が互いに異なる。前記第1の面取り部は、前記中心軸線に沿った方向における前記永久磁石の端面の全周に設けられている
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る回転電機の概略構成を示す斜視図。
図2】実施形態に係る回転電機の回転子が備える永久磁石の概略的な構成を示す斜視図。
図3図2に示す永久磁石を構成する母材、かつ該永久磁石の面取り前の状態である磁石体の概略的な構成を示す斜視図。
図4図2に示す永久磁石の第1の面取り部の面取り形態を示す模式図。
図5図2に示す永久磁石の第2の面取り部の面取り形態を示す模式図。
図6】実施形態に係る永久磁石(本件磁石)と比較例に係る磁石(比較磁石)の形態および性能の対比を示す図。
図7】実施形態に係る回転電機の回転子が備える永久磁石の第1の面取り部の面取り形態の変形例を示す模式図。
図8】実施形態に係る回転電機の回転子が備える永久磁石の第2の面取り部の面取り形態の変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、この発明の実施形態について説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0009】
図1は、実施形態に係る回転電機1の概略構成を示す斜視図である。回転電機1は、例えば鉄道車両、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)などにおいて、主電動機、駆動モータあるいは発電機として適用される。ただし、回転電機1の用途はこれらに限定されない。以下の説明においては、回転電機1における回転軸(シャフト)30の軸芯(中心軸線)Cに沿った方向を軸方向とし、中心軸線C周りを周方向とする。
【0010】
図1に示すように、回転電機1は、インナーロータ型であり、固定枠(図示省略)に支持された筒状の固定子(ステータ)2と、固定子2の内側に中心軸線Cを中心に回転自在に、かつ中心軸線Cと同軸状に支持された回転子(ロータ)3とを備えている。
【0011】
固定子2は、円筒状の固定子鉄心21と、固定子鉄心21に巻き付けられた巻線(コイル)22とを備えている。固定子鉄心21は、磁性材、例えばケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を多数枚、同芯状に積層して構成されている。固定子鉄心21の内周部には、複数のスロット23が形成されている。複数のスロット23は、周方向に並んでいる。各スロット23は、固定子鉄心21の内周面に開口し、この内周面から径方向に延出している。また、各スロット23は、固定子鉄心21の軸方向の全長に亘って延在している。複数のスロット23を形成することにより、固定子鉄心21の内周部は、回転子3の外周面と対向する複数のティース24を構成している。複数のスロット23に巻線22が埋め込まれ、各ティース24に巻き付けられている。巻線22に電流を流すことにより、固定子2、端的にはティース24に所定の鎖交磁束が形成される。
【0012】
回転子3は、円柱形状のシャフト(回転軸)30と、シャフト30に同軸的に固定された円柱形状の回転子鉄心31と、回転子鉄心31に配置された複数の永久磁石32とを備えている。シャフト30は、軸受33により中心軸線Cを中心に回転自在に支持されている。回転子3は、固定子2の内側に僅かな空隙(エアギャップ)をあけて、固定子2と同芯状に配置されている。すなわち、回転子鉄心31の外周面は、僅かな空隙をあけて、固定子2、端的にはティース24の内周面に対向している。回転子鉄心31は、シャフト30と同芯状に形成された内孔34を有している。シャフト30は、内孔34に挿通および嵌合され、回転子鉄心31と同芯状に伸長している。回転子鉄心31は、磁性材、例えばケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を多数枚、同芯状に積層して構成されている。
【0013】
図1に示す例において、回転子3には、複数磁極、一例として四つの極数が設定されている。回転子鉄心31は、これらの磁極に対応して形成された孔部35を有している。図1に示す例では、四つの孔部35が円周方向へほぼ等間隔で並んで配置され、回転子鉄心31を軸方向の全長に亘って貫通している。孔部35の断面は、永久磁石32の断面形状とほぼ相似形(一例として矩形状)をなしている。ここでの断面は、軸方向と直交する平面での断面である。各孔部35には、例えば永久磁石32が一つずつ収容され、接着剤などで回転子鉄心31に固定されている。これにより、回転子鉄心31には、一つの磁極ごとに一つの永久磁石32が埋設される。ただし、一つの孔部35に複数の永久磁石が収容される形態であってもよい。
【0014】
図2は、永久磁石32の概略的な構成を示す斜視図である。図2に示すように、永久磁石32は、扁平の板状に全体が構成され、回転子鉄心31の軸方向の全長とほぼ同じ長さを有している。実施形態では、永久磁石32が回転子鉄心31の軸方向の全長とほぼ同一長の単一の磁石である場合を一例として想定する。すなわち、永久磁石32の軸方向の寸法(軸方向長)ML1は、回転子鉄心31の軸方向の寸法とほぼ一致しており、実施形態においては永久磁石32の長手方向の寸法である。換言すれば、軸方向長ML1は、後述する磁石体Mの両端面S1,S2間の距離に相当する。かかる永久磁石32は、長手方向が軸方向に沿うように、孔部35に収容されている。永久磁石32の着磁方向は、孔部35への挿入方向(軸方向)と垂直な方向に沿った方向である。例えば、後述する短辺部1Laに沿った方向である。なお、永久磁石32は、軸方向に複数に分割された磁石を組み合わせて構成されていてもよい。この場合には、複数の磁石の軸方向の合計長さを回転子鉄心31の軸方向長とほぼ一致させればよい。
【0015】
永久磁石32は、図3に示すような直方体(以下、磁石体Mという)の各角部M0,M1,M2がそれぞれ面取りされた面取り部4を有する形態をなしている。磁石体Mは、永久磁石32を構成する母材であり、永久磁石32の面取り前の状態の磁性部材である。磁石体Mは、長手方向の端面S1,S2を規定する第1の辺部1Lと、長手方向に沿った四つの側面S3,S4,S5,S6を規定する第2の辺部2Lとを有する。第1の辺部1Lは、永久磁石32の孔部35への挿入方向(軸方向)と垂直な方向に沿った方向の辺部であり、四つの短辺部1Laと四つの中辺部1Lbを含む。第2の辺部2Lは、永久磁石32の孔部35への挿入方向(軸方向)に沿った辺部であり、四つの長辺部2Laを含む。ただし、これら各辺部1La,1Lb,2Laの寸法の長短関係は、上記の関係に限定されない。例えば、短辺部1Laと中辺部1Lbは同一寸法であってもよいし、長辺部2Laは短辺部1Laや中辺部1Lbよりも短くてもよい。
【0016】
磁石体Mは、端面S1,S2、第1の側面S3,S5、第2の側面S4,S6を有する六面体である。長手方向の端面S1,S2は、一対の短辺部1Laと一対の中辺部1Lbにより規定される。第1の側面S3,S5は、一対の短辺部1Laと一対の長辺部2Laにより規定される。第2の側面S4,S6は、一対の中辺部1Lbと一対の長辺部2Laにより規定される。
また、角部M0は、第1の側面S3,S5と第2の側面S4,S6とにより規定され、長辺部2Laを形成する。角部M1は、端面S1,S2と第1の側面S3,S5とにより規定され、短辺部1Laを形成する。角部M2は、端面S1,S2と第2の側面S4,S6とにより規定され、中辺部1Lbを形成する。
【0017】
永久磁石32の面取り部4は、これらの角部M0,M1,M2をそれぞれ面取りして形成されている。面取り部4は、第1の面取り部41と第2の面取り部42を有している。第1の面取り部41は、永久磁石32の孔部35への挿入方向(軸方向)と垂直な方向に沿った少なくとも一つ(実施形態では八つ)の面取り部41a,41bである。第2の面取り部42は、永久磁石32の孔部35への挿入方向(軸方向)に沿った少なくとも一つ(実施形態では四つ)の面取り部42aである。
【0018】
第1の面取り部41は、角部M1に形成された面取り部41aと、角部M2に形成された面取り部41bとを含む。これらの面取り部41a,41bが形成されることで、永久磁石32においては、磁石体Mの第1の辺部1L、つまり短辺部1Laと中辺部1Lbを含む八つの辺部が欠損した状態となる。また、面取り部42aが形成されることで、永久磁石32においては、磁石体Mの第2の辺部2L、つまり四つの長辺部2Laが欠損した状態となる。
【0019】
図2に示す例において、面取り部41a,41b,42aは、いずれも角部M1,M2,M0を斜め45度に削ったC面取りとされている。ただし、各面取り部41a,41b,42aの面取りの形態はこれに限定されない。例えば、面取り部は、角部M1,M2,M0を丸く(曲面状に)削ったR面取りとされてもよい。R面取りの形態については、変形例として後述する。また、面取り形態の異なる面取り部が混在していてもよい。なお、面取り部41a,41b,42aの形成方法は、特に限定されない。例えば切削、バレル研磨やバフ研磨などの任意の加工法を適用できる。
【0020】
図2に示すように、永久磁石32は、磁石体Mの各角部M0,M1,M2の面取り寸法が異なる面取り部4を含む形態をなしている。具体的には、永久磁石32は、面取り寸法が互いに異なる第1の面取り部41と第2の面取り部42を有し、第2の面取り部42の面取り部42aの面取り寸法は、第1の面取り部41の面取り部41a,41bの面取り寸法よりも小さい。実施形態においては、四つの面取り部42aの面取り寸法がいずれの面取り部41a,41bの面取り寸法よりも小さく設定されている。
【0021】
図4および図5には、面取り部41a,41b,42aの面取りの形態の一例を示す。図4は、第1の面取り部41である面取り部41a,41bの面取り形態を示す図である。図5は、第2の面取り部42である面取り部42aの面取り形態を示す図である。
【0022】
図4に示すように、面取り部41a,41bの面取り寸法は、L1に設定されている。すなわち、磁石体Mにおいて、例えば角部M1を規定する両面(端面S1,S2と第1の側面S3,S5)を寸法L1の範囲で削り落とすことで面取り部41aが形成されている。また、磁石体Mにおいて、例えば角部M2を規定する両面(端面S1,S2と第2の側面S4,S6)を寸法L1の範囲で削り落とすことで面取り部41bが形成されている。
【0023】
これに対し、図5に示すように、面取り部42aの面取り寸法は、L2に設定されている。面取り寸法L2は、面取り寸法L1よりも小さい。すなわち、磁石体Mにおいて、例えば角部M0を規定する両面(側面S3,S5と側面S4,S6)を寸法L2の範囲で削り落とすことで面取り部42aが形成されている。これにより、面取り部42aは、面取り部41a,41bよりも面取り寸法が小さくなる。
【0024】
面取り寸法L1,L2の具体的な比率は、永久磁石32に要求される磁束量、つまり体積に応じて設定可能である。例えば、面取り寸法L2は、面取り寸法L1の半分以下程度に設定される(L2≦L1/2)。
【0025】
このように本実施形態によれば、永久磁石32は、面取り部42aの面取り寸法L2が面取り部41a,41bの面取り寸法L1よりも小さい。したがって、面取り部42aの面取り寸法L2を面取り部41a,41bの面取り寸法L1と一致させた場合と比べ、面取り部42aによる磁石体Mの体積減少を抑えることができる。
【0026】
図6は、本件磁石(永久磁石32)と比較例に係る磁石(以下、比較磁石という)の形態および性能の対比を示す図である。比較磁石は、面取り部42aの面取り寸法L2を面取り部41a,41bの面取り寸法L1と一致させた永久磁石である(L2=L1)。すなわち、比較磁石は、永久磁石32と同一素材の母材(磁石体)の角部が面取りされて、第2の面取り部42(具体的には四つの面取り部42a)と同一箇所に第1の面取り部41と同一の面取り寸法(L1)の面取り部を有する。図6に示す本件磁石の軸方向長、磁石体積、逆起電力、100%トルク、25%トルクの各値は、比較磁石を100[%]とした場合の値である。
【0027】
図6に示すように、本件磁石は、面取り寸法が比較磁石よりも小さく(L2<L1)、面取り部42aによる体積の減少が比較磁石よりも少ない。このため、軸方向の寸法(軸方向長)を比較磁石よりも短くした場合であっても、本件磁石を比較磁石と同一体積とすることが可能となる。この場合、軸方向長(図2に示す寸法ML1)を比較磁石よりも短縮させた永久磁石32であっても、比較磁石と同程度の逆起電圧、トルクなどの回転電機1の特性(電気的特性)を維持できる。このように電気的特性を維持しつつ、軸方向長を短縮させることができるため、本件磁石は比較磁石よりも磁石コストを低減できる。
【0028】
また、本件磁石によれば、回転電機1において、比較磁石と同程度の逆起電圧、トルクなどの電気的特性を、比較磁石より軸方向長を短縮させても維持できる。すなわち、比較磁石よりも軸方向長を短縮させた小型の永久磁石であっても、比較磁石と同程度の電気的特性が得られる。なお、本件磁石において、比較磁石よりも寸法を短縮させる箇所は、軸方向の寸法(軸方向長ML1)に限られない。例えば軸方向の寸法に代えてもしくは加えて、本件磁石は、軸方向と垂直な方向の寸法(図2にML2やML3で示す寸法)を比較磁石より短縮させてもよい。寸法ML2は、図3に示す磁石体Mの短辺部1Laに沿った方向の寸法(図3に示す例では、側面S4,S6間の距離)である。寸法ML3は、図3に示す磁石体Mの中辺部1Lbに沿った方向の寸法(図3に示す例では、側面S3,S5間の距離)である。
【0029】
その一方で、軸方向長およびこれと垂直する方向の寸法(図2に示す各寸法ML1,ML2,ML3)を比較磁石と同一とした場合、本件磁石は、面取り部42aによる体積の減少が比較磁石と比べて少ないため、比較磁石よりも体積を大きくできる。したがって、本件磁石によれば、体積が拡大された分だけ逆起電圧、トルクなどの回転電機1の電気的特性を比較磁石よりも高めることができる。
【0030】
このように本件磁石によれば、面取りを施した場合であっても、永久磁石に起因する回転電機1の特性、例えば逆起電力やトルクなどの電気的特性を適切に維持可能な回転子3を実現でき、ひいてはかかる電気的特性に優れた回転電機1を実現できる。
【0031】
なお、永久磁石は、面取り部41もしくは面取り部42のいずれか一方のみを有する形態であってもよい。例えば、永久磁石は、磁石体Mの角部M1,M2に図4に示すような面取り部41a,41bが形成され、図5に二点鎖線で示すように角部M0が残された形態であってもよい。また例えば、永久磁石は、磁石体Mの角部M1,M2が図4に二点鎖線で示すように残され、図5に示すような面取り部42aが角部M0に形成された形態であってもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。かかる新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0033】
上述した実施形態では、面取り部41a,41b,42aは、いずれも角部M1,M2,M0を斜め45度に落としたC面取りとされている。ただし、各面取り部41a,41b,42aの面取りの形態はこれに限定されない。例えば、面取り部は、角部M1,M2,M0を丸く(曲面状に)削ったR面取りであってもよい。さらに、面取り形態の異なる面取り部、例えばC面取り部とR面取り部が混在していてもよい。
【0034】
図7および図8には、面取り部4の面取り形態をR面取りとした変形例を示す。図7は、第1の面取り部41である面取り部41a,41bの変形例(面取り部43a,43b)に係る面取り形態を示す図である。図8は、第2の面取り部42である面取り部42aの変形例(面取り部44a)に係る面取り形態を示す図である。
【0035】
図7に示すように、面取り部43a,43bの面取り寸法は、L1に設定されている。すなわち、磁石体Mにおいて、例えば角部M1を規定する両面(端面S1,S2と第1の側面S3,S5)を曲率半径L1で曲面状に削り落とすことで面取り部43aが形成されている。また、磁石体Mにおいて、例えば角部M2を規定する両面(端面S1,S2と第2の側面S4,S6)を曲率半径L1で曲面状に削り落とすことで面取り部43bが形成されている。
【0036】
これに対し、図8に示すように、面取り部44aの面取り寸法は、L2に設定されている。面取り寸法L2は、面取り寸法L1よりも小さい。すなわち、磁石体Mにおいて、例えば角部M0を規定する両面(側面S3,S5と側面S4,S6)を曲率半径L2で曲面状に削り落とすことで面取り部44aが形成されている。これにより、面取り部44aは、面取り部43a,43bよりも面取り寸法が小さくなる。例えば、面取り寸法(曲率半径)L2は、面取り寸法(曲率半径)L1の半分以下程度に設定される(L2≦L1/2)。
【0037】
また、永久磁石32は、磁石体Mの一部の角部M1、一部の角部M2、一部の角部M0がそれぞれ面取り(同一形態であるか異なる形態であるかは問わない)された形態であってもよい。例えば、実施形態の永久磁石32には、磁石体Mの四つの角部M0(長辺部2La)に対応する四つの面取り部42aを形成したが、面取り部42aは、四つの角部M0(長辺部2La)のすべてに対応して形成されなくてもよい。例えば、四つの角部M0のうち、一つの角部M0のみ、あるいは二つもしくは三つの角部M0に対応するように、面取り部42aが形成されていてもよい。また、面取り部41a,41bは、永久磁石32の孔部35への挿入方向の前側にのみ形成され、後側には形成されていなくともよい。
これにより、孔部35への挿入性を確保しながら、永久磁石32の小型化や回転電機1の電気的特性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
なお、永久磁石は、面取り部41もしくは面取り部42のいずれか一方のみを有する形態であってもよい。例えば、永久磁石は、磁石体Mの角部M1,M2に図7に示すような面取り部43a,43bが形成され、図8に二点鎖線で示すように角部M0が残された形態であってもよい。また例えば、永久磁石は、磁石体Mの角部M1,M2が図7に二点鎖線で示すように残され、図8に示すような面取り部44aが角部M0に形成された形態であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…回転電機、2…固定子(ステータ)、3…回転子(ロータ)、4…面取り部、21…固定子鉄心、22…巻線(コイル)、23…スロット、24…ティース、30…回転軸(シャフト)、31…回転子鉄心、32…永久磁石、33…軸受、34…内孔、35…孔部、41…第1の面取り部、41a,41b,42a,43a,43b,44a…面取り部、42…第2の面取り部、L1,L2…面取り寸法、M…磁石体、M0,M1,M2…角部、ML1…永久磁石の長手方向の寸法(軸方向長)、ML2…永久磁石の短辺部に沿った方向の寸法、ML3…永久磁石の中辺部に沿った方向の寸法、S1,S2…永久磁石(磁石体)の端面、S3,S4,S5,S6…永久磁石(磁石体)の側面、1L…第1の辺部、1La…短辺部、1Lb…中辺部、2L…第2の辺部、2La…長辺部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8