(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240722BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240722BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240722BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240722BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240722BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L29/78 616V
H01L29/78 612B
H01L29/78 616L
H01L29/78 618B
H01L29/78 617M
H01L29/78 619B
H01L29/78 617N
G09F9/30 338
G09F9/30 349C
G09F9/00 338
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020194460
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 明紘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/052991(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175086(WO,A1)
【文献】特開2003-257989(JP,A)
【文献】特開2018-054677(JP,A)
【文献】特開2018-074076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0043955(US,A1)
【文献】特開2020-129635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
G09F 9/30
G09F 9/00
H10K 59/10
H05B 33/10
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層を形成し、
前記第1半導体層に第1不純物元素を注入し、
前記第1不純物元素が注入された前記第1半導体層上に第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層上に、
遮光層と、前記第1半導体層の一部と重畳
する第1ゲート電
極と、を形成し、
前記第1ゲート電極をマスクとして、前記第1半導体層に第2不純物元素を注入し、
前記第1ゲート電極、前記遮光層、及び前記第1絶縁層を覆って、第2絶縁層を形成し、
前記遮光層上に、前記第2絶縁層を挟んで、第2半導体層を形成し、
前記第2半導体層及び前記第2絶縁層上に、第3絶縁層を形成し、
前記第3絶縁層上に、前記第1半導体層と接する第1ソース電極及び第1ドレイン電極、及び、前記第2半導体層の一部と重畳して、第2ゲート電極を形成し、
前記第1ソース電極及び前記第1ドレイン電極を通して、前記第1半導体層に第3不純物元素を注入し、前記第1半導体層に第1
ソース領域及び第
1ドレイン領域を形成する、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1半導体層は多結晶シリコン層であり、前記第2半導体層は酸化物半導体層である、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2不純物元素及び前記第3不純物元素は、同じ極性を有し、
前記第1ソース領域は、前記第1ソース電極と接する第1領域を有し、
前記第1ドレイン領域は、前記第1ドレイン電極と接する第2領域を有し、
前記第1半導体層及び前記第1絶縁層の界面近傍の領域において、前記第1領域及び前記第2領域に含まれる前記第3不純物元素の濃度は、前記第1領域以外の前記第1ソース領域及び前記第2領域以外の前記第1ドレイン領域よりも高い、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2不純物元素及び前記第3不純物元素は、同じ極性を有し、
前記第1ソース電極及び前記第1ドレイン電極は、前記第3不純物元素を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2不純物元素及び前記第3不純物元素は、同じ極性を有し、
前記第2ゲート電極は、前記第3不純物元素を含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置において、表示領域の画素回路に酸化物半導体を備えたトランジスタが設けられ、かつ、周辺領域の駆動回路にシリコン半導体を備えたトランジスタが設けられる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-254950号公報
【文献】特開2020-129635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、信頼性が向上したトランジスタを提供でき、表示性能が向上した表示装置が提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る表示装置は、複数の画素が設けられた表示領域と、前記画素を駆動する駆動回路が設けられた非表示領域と、前記駆動回路に設けられ、第1半導体層と、第1ゲート電極と、前記第1半導体層及び前記第1ゲート電極との間に設けられた第1絶縁層と、第1ソース電極と、第1ドレイン電極と、を有する第1トランジスタと、前記複数の画素のそれぞれに設けられ、第2半導体層と、第2ゲート電極と、第2半導体層及び前記第2ゲート電極との間に設けられた第2絶縁層と、第2ソース電極と、第2ドレイン電極と、を有する第2トランジスタと、を備え、前記第1半導体層は多結晶シリコンで形成され、前記第2半導体層は酸化物半導体層で形成され、前記第1半導体層は、前記第1ゲート電極と重畳する第1チャネル形成領域と、第1ソース領域と、第1ドレイン領域と、を有し、前記第1ソース領域のうち前記第1ソース電極と接する第1領域と、及び前記第1ドレイン領域のうち前記第1ドレイン電極と接する第2領域と、を有し、前記第1ソース領域、前記第1ドレイン領域、前記第1領域、及び前記第2領域は、極性を付与する第1不純物元素を有し、前記第1半導体層及び前記第1絶縁層の界面近傍の領域において、前記第1領域及び前記第2領域に含まれる前記第1不純物元素の濃度は、前記第1ソース領域及び前記第1ドレイン領域よりも高い。
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、複数の画素が設けられた表示領域と、前記画素を駆動する駆動回路が設けられた非表示領域と、前記駆動回路に設けられ、第1半導体層と、第1ゲート電極と、前記第1半導体層及び前記第1ゲート電極との間に設けられた第1絶縁層と、第1ソース電極と、第1ドレイン電極と、を有する第1トランジスタと、前記複数の画素のそれぞれに設けられ、第2半導体層と、第2ゲート電極と、第2半導体層及び前記第2ゲート電極との間に設けられた第2絶縁層と、第2ソース電極と、第2ドレイン電極と、を有する第2トランジスタと、前記第1ゲート電極と前記第2半導体層との間に設けられた第3絶縁層と、を備え、前記第1半導体層は多結晶シリコンで形成され、前記第2半導体層は酸化物半導体層で形成され、前記第1半導体層は、前記第1ゲート電極と重畳する第1チャネル形成領域と、第1ソース領域と、第1ドレイン領域と、を有し、前記第1ソース領域のうち前記第1ソース電極と接する第1領域と、及び前記第1ドレイン領域のうち前記第1ドレイン電極と接する第2領域と、を有し、前記第1ソース領域、前記第1ドレイン領域、前記第1領域、前記第2領域、前記第2半導体層、前記第1ソース電極、及び第1ドレイン電極、前記第2絶縁層、及び、前記第3絶縁層は、極性を付与する第1不純物元素を有する。
【0007】
また、一実施形態に係る表示装置の製造方法では、第1半導体層を形成し、前記第1半導体層に第1不純物元素を注入し、前記第1不純物元素が注入された前記第1半導体層上に第1絶縁層を形成し、前記第1絶縁層上に、前記第1半導体層の一部と重畳して、第1ゲート電極及び遮光層を形成し、前記第1ゲート電極をマスクとして、前記第1半導体層に第2不純物元素を注入し、前記第1ゲート電極、前記遮光層、及び前記第1絶縁層を覆って、第2絶縁層を形成し、前記遮光層上に、前記第2絶縁層を挟んで、第2半導体層を形成し、前記第2半導体層及び前記第2絶縁層上に、第3絶縁層を形成し、前記第3絶縁層上に、前記第1半導体層と接する第1ソース電極及び第1ドレイン電極、及び、前記第2半導体層の一部と重畳して、第2ゲート電極を形成し、前記第1ソース電極及び前記第1ドレイン電極を通して、前記第1半導体層に第3不純物元素を注入し、前記第1半導体層に第1領域及び第2領域を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の表示装置の平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の表示装置の概念断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の表示装置の部分断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の表示装置の部分断面図である。
【
図5】
図5は、表示装置の作成工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態における表示装置の他の構成例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、表示装置の作成工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、表示装置の作成工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る表示装置について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。
【0011】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0012】
また、第3方向Zの矢印の先端側に表示装置を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における表示装置の断面を見ることを断面視という。
【0013】
図1は、実施形態の表示装置の平面図である。
図1に示す表示装置DSPには、基板SUB1には、表示領域DAと、表示領域DAとは異なる非表示領域NDAと、非表示領域NDAに設けられた駆動回路DRVとが設けられている。
表示領域DAは、複数の画素PXを含み、複数の画素PXは、マトリクス状に配置される。
【0014】
非表示領域NDAは、表示領域DAの外側を囲む周辺領域FAともいう。非表示領域NDAには、駆動回路DRVと、図示しない端子を介して接続される配線基板FPCを有している。駆動素子CTLは、配線基板FPC上に設けられている。駆動素子CTLは、例えばドライバICが挙げられる。
表示装置DSPの外部から、配線基板FPCを介して、映像信号及び各種制御信号が供給される。映像信号は、駆動素子CTL及び駆動回路DRVを介して複数の画素PXに入力される。より具体的には、駆動回路DRVは、表示領域DAに設けられる走査線GL、信号線SL等を制御及び駆動することにより、画素PXを駆動する。
【0015】
表示領域DAには、複数の走査線GL及び複数の信号線SLが設けられている。複数の走査線GLは、第1方向Xに沿って延伸し、第2方向Yに沿って並んで配置されている。複数の信号線SLは、第2方向Yに沿って延伸し、第1方向Xに沿って並んで配置されている。複数の画素PXは、それぞれ、複数の走査線GLのうちの1つ、及び、複数の信号線SLのうちの1つと接続されている。複数の画素PXは、それぞれ、2つの信号線SL及び2つの走査線GLの間の領域に配置されている。複数の画素PXはそれぞれ、後述する発光素子ELMを有する。映像信号及び各種制御信号に基づいて、発光素子ELMが発光する。
あるいは、画素PXとして液晶層を有する画素を設けてもよい。
【0016】
複数の画素PXはそれぞれ、制御素子として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を有している。駆動回路DRVにも、薄膜トランジスタが設けられている。
【0017】
画素PXの制御素子として用いられる薄膜トランジスタは、リーク電流が小さいことが好適である。画像信号が入力されてから、次の画像信号が入力されるまでの間、信号の電圧レベルを維持することができるからである。このような薄膜トランジスタとして、酸化物半導体を活性層として用いる薄膜トランジスタ(酸化物半導体トランジスタ、酸化物半導体薄膜トランジスタともいう)が挙げられる。
酸化物半導体には、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)、ZnON(Zinc Oxide Nitride)、IGO(Indium Gallium Oxide)等がある。
【0018】
酸化物半導体は、リーク電流が小さいが、キャリアの移動度が小さい。そのため高速駆動が必要なTFTでは、不適当な場合がある。
多結晶シリコン(Low Temperature Poly-Si:LTPS)を活性層として有する薄膜トランジスタ(多結晶シリコントランジスタ、多結晶シリコン薄膜トランジスタともいう)は、移動度が高い。そこで駆動回路DRVに設けられる薄膜トランジスタには、多結晶シリコンを活性層として用いる薄膜トランジスタが好適である。
画素PXに酸化物半導体を有する薄膜トランジスタ、駆動回路DRVに多結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタを用いる表示装置DSPは、リーク電流低下及び高速駆動の両方の効果を得ることが可能となる。本実施形態では、多結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタを、第1薄膜トランジスタ又は第1トランジスタ、酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタを、第2薄膜トランジスタ又は第2トランジスタともいう。
【0019】
図2は、実施形態の表示装置の概念断面図である。図面を見易くするために、一部の構成要素のハッチングは省略している。
図2に示す表示装置DSPは、基材BA1、絶縁層UC1、遮光層LS1、絶縁層UC2、トランジスタTr1、絶縁層ILI1、絶縁層ILI2、トランジスタTr2、絶縁層ILI3、絶縁層ILI4、絶縁層PAS1、絶縁層PLN1、接続電極NE、絶縁層PLN2、画素電極PE、有機EL層ELY、共通電極CE、絶縁層PAS2を有している。
トランジスタTr1及びTr2は、それぞれ、第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタに該当する。すなわち、トランジスタTr1は、多結晶シリコントランジスタであり、トランジスタTr2は、酸化物半導体トランジスタである。
【0020】
基材BA1の材料は、ガラスや樹脂である。このような樹脂として、例えば、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂が挙げられる。
絶縁層UC1は、ガラス等からの不純物をブロックするもので、例えば、酸化珪素や窒化珪素の単層又は積層で形成されている。
遮光層LS1は、トランジスタTr1の半導体層を遮光する機能を有する。遮光層LS1が、金属層である場合は、トランジスタTr1のバックゲートとしての機能を有していてもよい。その場合は、遮光層LS1は、トランジスタTr1に含まれるといえる。
【0021】
遮光層LS1及び絶縁層UC1上に、絶縁層UC2が設けられている。絶縁層UC2は、絶縁層UC1と同様の材料で形成されていればよい。
絶縁層UC2上に、トランジスタTr1の活性層である半導体層SC1が設けられている。半導体層SC1は、上述の多結晶シリコンで形成されている。半導体層SC1を、第1半導体層又は多結晶シリコン層と呼ぶこともある。
半導体層SC1には、ゲート電極GE1と重畳するチャネル形成領域、後述するソース電極SE1と重畳するソース領域、後述するドレイン電極DE1と重畳するドレイン領域を有している。
【0022】
半導体層SC1及び絶縁層UC2上に、絶縁層GI1が設けられている。絶縁層GI1は、例えば酸化珪素で形成されている。絶縁層GI1は、トランジスタTr1のゲート絶縁層である。
絶縁層GI1上には、トランジスタTr1のゲート電極GE1、電極LE1、遮光層LS2が設けられている。換言すると、絶縁層GI1は、半導体層SC1及びゲート電極GE1との間に設けられている。ゲート電極GE1、電極LE1、遮光層LS2は、例えば、モリブデンタングステン合金(MoW)や、アルミニウム合金をチタンで挟んだ積層体で形成される。
【0023】
電極LE1は、絶縁層UC2及びGI1に設けられたコンタクトホールを介して、遮光層LS1と接続されている。上述のように、遮光層LS1がトランジスタTr1のバックゲートとして機能する場合は、電極LE1を介して信号が入力される。
遮光層LS2は、トランジスタTr2の活性層を遮光する。遮光層LS2は、トランジスタTr2のバックゲートとして機能してもよい。その場合は、遮光層LS2は、トランジスタTr2に含まれるといえる。
【0024】
ゲート電極GE1、電極LE1、遮光層LS2を覆って、絶縁層GI1上に、絶縁層ILI1が設けられている。絶縁層ILI1は、例えば、窒化珪素で形成されている。
絶縁層ILI1上には、絶縁層ILI2が設けられている。絶縁層ILI2は、例えば、酸化珪素で形成されている。絶縁層ILI1及びILI2は、トランジスタTr1の層間絶縁層として機能する。絶縁層ILI1及びILI2は、遮光層LS2と半導体層SC2の絶縁層としても機能する。
【0025】
絶縁層ILI2上に、遮光層LS2と重畳して、半導体層SC2が設けられる。半導体層SC2は、上述の酸化物半導体で形成されている。半導体層SC2を、第2半導体層又は酸化物半導体層と呼ぶこともある。
半導体層SC2には、ゲート電極GE2と重畳するチャネル形成領域、後述するソース電極SE2と重畳するソース領域、後述するドレイン電極DE2と重畳するドレイン領域を有している。ゲート電極GE2は、走査線GLと電気的に接続されている。ゲート電極GE2は、走査線GLと一体形成されていてもよい。
【0026】
半導体層SC2及び絶縁層ILI2上に、絶縁層GI2が設けられている。絶縁層GI2は、例えば酸化珪素又は窒素を含む酸化珪素で形成される。絶縁層GI2は、トランジスタTr2のゲート絶縁層として機能する。半導体層SC2は、絶縁層ILI2及びGI2との間に設けられているともいえる。
絶縁層GI2上に、半導体層SC2のチャネル形成領域と重畳してゲート電極GE2、半導体層SC1のソース領域と重畳してソース電極SE1a、半導体層SC1のドレイン領域と重畳してドレイン電極DE1、電極LE1と接続する電極LE2が設けられている。換言すると、絶縁層GI2は、半導体層SC2及びゲート電極GE2との間に設けられている。ゲート電極GE2、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1、電極LE2は、それぞれ、例えば、アルミニウム合金層をチタン膜で挟持した積層膜、モリブデン層、又はモリブデンとタングステンの合金層で形成されている。
【0027】
絶縁層GI2、ゲート電極GE2、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1,及び電極LE
2を覆って、絶縁層ILI3が設けられている。絶縁層ILI3上に、絶縁層ILI4が設けられている。絶縁層ILI3及びILI4は、それぞれ、窒化珪素及び酸化珪素で形成される。
【0028】
絶縁層ILI4上に、ソース電極SE1aと接続されるソース電極SE1b、半導体層SC2のソース領域と重畳してソース電極SE2、半導体層SC2のドレイン領域と重畳してドレイン電極DE2が設けられている。ソース電極SE1b、ソース電極SE2、及びドレイン電極DE2は、例えば、アルミニウム合金層をチタン膜で挟持した積層膜で形成される。
ソース電極SE1a及びSE1bを併せて、ソース電極SE1とする。ソース電極SE1bは、信号線SLと一体形成されていてもよい。ソース電極SE1(ソース電極SE1a及びSE1b)が信号線SLと一体形成されていてもよい。
【0029】
絶縁層ILI4、ソース電極SE1b、ソース電極SE2、及びドレイン電極DE2を覆って、絶縁層PAS1が設けられている。絶縁層PAS1は、例えば酸化珪素で形成されている。
絶縁層PAS1を覆って、絶縁層PLN1が設けられている。絶縁層PLN1は、有機絶縁材料、例えばポリイミドで形成されている。
絶縁層PLN1上には、ドレイン電極DE2に接続される接続電極NEが設けられている。接続電極NEは、例えば、アルミニウム合金層をチタン膜で挟持した積層膜で形成される。本実施形態では、接続電極NEを設ける構成について説明したが、これに限定されない。接続電極NEを設けず、後述する画素電極PEを直接ドレイン電極DE2に接続する構成であってもよい。
【0030】
絶縁層PLN1及び接続電極NEを覆って、絶縁層PLN2が設けられている。絶縁層PLN2は、有機絶縁材料、例えばポリイミドで形成されている。絶縁層PLN1及びPLN2は、トランジスタ等により生じる、基板SUB1の凹凸を平坦化する機能を有する。
絶縁層PLN2上には、接続電極NEに接続する画素電極PEが設けられている。上述のように、画素電極PEは、ドレイン電極DE2と接続されていてもよい。
画素電極PEは、反射性を有する第1導電層、及び透光性を有する第2導電層の積層構造であってもよい。例えば、第1導電層の材料として、銀(Ag)、第2導電層の材料として、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)を用い、画素電極PEが、IZO、Ag、IZOがこの順に積層された積層構造で形成されていてもよい。
【0031】
隣り合う画素電極PEとの間に、バンクBK(凸部、リブ、隔壁ともいう)が設けられる。バンクBKの材料として、絶縁層PLN1及びPLN2の材料と同様の有機材料が用いられる。バンクBKは、画素電極PEの一部を露出するように開口される。また、開口部OPの端部は、なだらかなテーパ形状となることが好ましい。開口部OPの端部が急峻な形状となっていると、後に形成される有機EL層ELYにカバレッジ不良が生じる。
【0032】
画素電極PEと重畳して、隣り合うバンクBKとの間に、有機EL層ELYが設けられている。有機EL層ELYは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいる。なお本明細書では、有機EL層ELYを有機材料層ともいう。有機EL層ELYは、少なくとも発光層を含んでおり、他の層は必要に応じて適宜設ければよい。
【0033】
有機EL層ELY及びバンクBKを覆って、共通電極CEが設けられる。共通電極CEは、例えば、第1層及び第2層を含んでいてもよい。第2層は第1層よりも透過率が高くてもよい。例えば、第1層として、マグネシウム-銀合金(MgAg)やイッテルビウム-銀合金(YbAg)の薄膜を形成してもよい。第2層として、透明電極、例えばインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)や、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を形成する。
本実施形態では、画素電極PEが陽極となり、共通電極CEが陰極となる。有機EL層ELYで生じた発光は、上方に取り出される。すなわち表示装置DSPは、トップエミッション構造を有している。
【0034】
共通電極CEを覆って、絶縁層PAS2が設けられる。詳細は後述するが、絶縁層PAS2は、外部から水分が有機EL層ELYに侵入することを防止する機能や光学調整機能を有している。絶縁層PAS2としてはガスバリア性の高いものが好適である。絶縁層PAS2として、例えば、有機絶縁層と窒素を含む無機絶縁層との積層であってもよい。あるいは絶縁層PAS2として、例えば、有機絶縁層を、窒素を含む無機絶縁層2層で挟持した絶縁層が挙げられる。さらにあるいは、無機絶縁層を2層積層した構造であってもよい。当該有機絶縁層の材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。当該窒素を含む無機絶縁層の材料としては、例えば、窒化シリコン、窒化アルミニウムが挙げられる。
図示しないが、絶縁層PAS2上に、さらに有機樹脂層や、基材BA1に対向する基材BA2を設けてもよい。
【0035】
図3は、実施形態の表示装置の部分断面図である。図面を見易くするために、一部の構成要素の表示や、一部の構成要素のハッチングは省略している。上述のように、トランジスタTr1は、多結晶シリコントランジスタであり、トランジスタTr2は、酸化物半導体トランジスタである。
半導体層SC1は、チャネル形成領域RC1、ソース領域RS1、ドレイン領域RD1を有している。チャネル形成領域RC1及びソース領域RS1、並びに、チャネル形成領域RC1及びドレイン領域RD1との間には、それぞれ、低濃度不純物領域(Lightly Doped Drain:LDDともいう)LDD1及びLDD2が設けられている。低濃度不純物領域LDD1及びLDD2は、ドレイン領域RD1よりも不純物濃度が低い。ドレイン領域RD1の不純物濃度は、ソース領域RS1と同様でよい。すなわち低濃度不純物領域LDD1及びLDD2は、ソース領域RS1よりも不純物濃度が低い。ただし低濃度不純物領域LDD1及びLDD2は、形成しなくてもよい。当該不純物元素は、トランジスタTr1に極性を付与する不純物元素であり、不純物元素の種類については後述する。
半導体層SC2は、チャネル形成領域RC2、ソース領域RS2、ドレイン領域RD2を有している。
【0036】
ソース領域RS1のうちソース電極SE1a(SE1)と接する領域、及びドレイン領域RD1のうちドレイン電極DE1と接する領域に、領域TI1及びTI2が設けられている。詳細は後述するが、半導体層SC1及び絶縁層GI1との界面近傍において、領域TI1の不純物濃度は、ソース領域RS1のうち他の領域より高い。半導体層SC1及び絶縁層GI1との界面近傍において、領域TI2の不純物濃度は、ドレイン領域RD1のうち他の領域より高い。不純物濃度の高い領域TI1及びTI2を、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1と接する領域に形成することで、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1、並びに、半導体層SC1とのコンタクト抵抗の上昇を抑制することができる。
領域TI1及びTI2の不純物元素は、ソース領域RS1及びドレイン領域RD1と同じ元素である。トランジスタTr1がnチャネル型トランジスタであれば、当該不純物元素は、例えばリン(P)であればよい。トランジスタTr1がpチャネル型トランジスタであれば、当該不純物元素は、例えばホウ素(B)であればよい。
【0037】
領域TI1及びTI2は、半導体層SC1に電気的なコンタクトを得るためのコンタクトホール部において、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1を通して、不純物元素IM1が半導体層SC1に注入されることにより形成される。トランジスタTr1において、上述のコンタクトホールを形成しない領域では、絶縁層GI1、ILI1、ILI2、及びGI2が存在するため、半導体層SC1の深さまで不純物元素IM1が届かず、半導体層SC1に不純物元素IM1が注入されない。換言すると、不純物元素IM1は、領域TI1及びTI2に濃度の極大が位置する。一方、領域TI1及びTI2以外の半導体層SC1には、不純物元素IM1が注入されない。
トランジスタTr2において、ゲート電極GE2が存在する領域では、ゲート電極GE2と絶縁層GI2がマスクとなり、半導体層SC2に不純物元素IM1が注入されない。不純物元素IM1が注入されない上述の領域が、チャネル形成領域RC1となる。一方、ゲート電極GE2が存在しない領域では、不純物元素IM1が絶縁層GI2を通して、半導体層SC2に注入される。換言すると、不純物元素IM1は、半導体層SC2で濃度が極大となるように注入される。半導体層SC2で不純物元素IM1が注入された領域がソース領域RS2及びドレイン領域RD2となる。
不純物元素IM1がこのような濃度分布をとるためには、注入時の印加電圧を調整すればよい。当該注入工程での不純物元素IM1の濃度を濃度CN1とする。領域TI1及びTI2中の不純物元素IM1の濃度を濃度CT1とする。
【0038】
半導体層SC1のうち、キャリア(電子又はホール)が流れる領域は、半導体層SC1及び絶縁層GI1との界面近傍である。領域TI1及びTI2では、上述のように、不純物元素IM1の濃度の極大の位置が半導体層SC1及び絶縁層GI1との界面近傍にある。一方、ソース領域RS1及びドレイン領域RD1のうち、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1が存在しない領域、すなわち領域TI1及びTI2ではない他の領域において、半導体層SC1及び絶縁層GI1との界面近傍での不純物元素IM1の濃度は、領域TI1及びTI2よりも低い。上述のように、不純物元素IM1が、半導体層SC1の深さまで届かないためである。
【0039】
当該注入工程は、酸化珪素で形成された絶縁層GI2の終端化処理を兼ねている。半導体層SC2は、絶縁層GI2中に存在する欠陥準位のために、信頼性が低下する恐れがある。欠陥準位は主として酸化珪素中の余剰酸素に起因する。当該欠陥は、トランジスタTr2が駆動中に、電子トラップとして機能してしまう。これによりトランジスタTr2の信頼性が低下してしまう。
【0040】
絶縁層GI2中の欠陥修復には、水素の終端化を利用することも可能である。しかしながら、酸化物半導体トランジスタたるトランジスタTr2では、過剰な水素によりしきい値Vthが大きくディプリートする恐れが生じる。極端なVthシフト(ディプリート)はトランジスタTr2を備える表示装置DSPの動作異常を引き起こす恐れがある。よって、表示装置DSPにおいては、水素による絶縁層GI2の終端化は好ましくない。
本実施形態においては、水素の代わりに不純物元素IM1、例えばリンやホウ素により、絶縁層GI2の終端化を行っている。
【0041】
上述したように当該注入工程により、半導体層SC2の低抵抗化を行うことが可能である。酸化物半導体である半導体層SC2に不純物元素を打ち込むと、半導体層SC2に欠陥準位が生じる。これにより半導体層SC2の低抵抗化を図ることが可能である。
【0042】
図4は、実施形態の表示装置の部分断面図である。
図4では、ゲート電極GE2、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1を、総じて金属層GM2としている。なお
図4は、半導体層SC2が設けられていない領域の断面図である。
不純物元素IM1の注入工程で、金属層GM2が設けられた領域では、金属層GM2を通して不純物元素IM1が注入される。金属層GM2の一部に不純物元素IM1を含む領域TIa2、及び、絶縁層GI2中の金属層GM2と重畳した一部に不純物元素IM1を含む領域TIa1が形成される。
金属層GM2及び絶縁層GI2の界面をIF1、絶縁層GI2及びILI2の界面をIF2とする。領域TIa2は、金属層GM2のうち界面IF1の近傍に位置する。領域TIa1は、絶縁層GI2のうち界面IF1の近傍に位置する。
【0043】
金属層GM2が設けられない領域では、絶縁層ILI2の一部に不純物元素IM1を含む領域TIb1、及び絶縁層GI2の一部に不純物元素IM1を含む領域TIb2が形成される。領域TIb1は、絶縁層ILI2のうち界面IF2の近傍に位置する。領域TIb2は、絶縁層GI2のうち界面IF2の近傍に位置する。
図4には示さないが、絶縁層ILI2及びGI2との間に半導体層SC2が設けられている場合(
図3参照)、領域TIb1は半導体層SC2中に形成される。その場合は、領域TIb1及びTIb2についての説明は、絶縁層ILI2を半導体層SC2に読み替えればよい。
領域TIa1及びTIa2を併せて領域TIaと呼ぶ。領域TIb1及びTIb2を併せて領域TIbと呼ぶ。領域TIa及びTIbは、それぞれ、不純物元素IM1を含んでいる。不純物元素IM1は、例えばホウ素とする。ただし
図3と同様に不純物元素IM1はリンであってもよい。
【0044】
金属層GM2を通して絶縁層GI2に不純物元素IM1を注入するには、金属層GM2の厚さを超えるような印加電圧で行う必要がある。このような印加電圧で不純物元素IM1を注入すると、金属層GM2が設けられない領域における絶縁層ILI2及びGI2では、第3方向Zと逆方向(深さ方向ともいう)において、金属層GM2及び絶縁層GI2の界面から離れた部分で、不純物元素IM1の濃度の極大が位置する。
【0045】
言い換えると、領域TIaは界面IF1を含み、領域TIbは界面IF2を含んでいる。領域TIaは、第3方向Zに対して、領域TIbよりも上方に位置している。
絶縁層GI2のうち、領域TIbの上方の領域であり、金属層GM2と重畳しない領域をTIcとすると、領域TIcの不純物濃度は、領域TIbより低い。また領域TIcの不純物濃度は、領域TIaより低い。
【0046】
図3及び
図4に示されるようにトランジスタTr1の半導体層SC1のソース領域RS1、ドレイン領域RD1、領域TI1、領域TI2、並びに、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1は、不純物元素IM1を含んでいる。
トランジスタTr2の半導体層SC2、絶縁層GI2及びゲート電極GE2は、不純物元素IM1を含んでいる。
トランジスタTr1及びTr2との間に配置される絶縁層ILI2は、不純物元素IM1を含んでいる。
【0047】
図5(A)から
図5(C)は、表示装置の作成工程を示す断面図である。
図5(A)から
図5(C)において、トランジスタTr1はnチャネル型トランジスタである。図示しない基材上に絶縁層UCが形成される。絶縁層UC上に、半導体層SC1の材料である半導体膜が成膜される。半導体膜の成膜後、例えば、レーザ照射にてアニールを行う。その後、当該半導体膜が島状に形成されることにより、半導体層SC1が形成される。
半導体層SC1のキャリア濃度調整のために不純物元素IM2を注入する(
図5(A)参照)。不純物元素IM2は、例えばホウ素である。当該注入工程における不純物元素IM2の濃度をCN2とすると、濃度CN2は濃度CN1より低い。半導体層SC1に含まれる不純物元素IM2の濃度をCT2とする。不純物元素IM2を注入後、半導体層SC1を覆って絶縁層GI1を形成する。
【0048】
絶縁層GI1上に、半導体層SC1の一部と重畳して、ゲート電極GE1、及び、トランジスタTr2の遮光層LS2を形成する。
絶縁層GI1を介し、ゲート電極GE1をマスクとして、半導体層SC1に不純物元素IM3を注入する(
図5(B)参照)。不純物元素IM3は、不純物元素IM1と同じ極性を有する不純物元素、例えばリンである。当該注入工程における不純物元素IM3の濃度をCN3とすると、濃度CN3は濃度CN1より低い。半導体層SC1のうち、不純物元素IM2が注入され、不純物元素IM3が注入されない領域は、チャネル形成領域RC1となる。すなわち、チャネル形成領域RC1は、不純物元素IM2を含んでおり、不純物元素IM3は含まない。チャネル形成領域RC1中の不純物元素IM2の濃度は、上述する濃度CT2である。
【0049】
不純物元素IM3を注入後、絶縁層ILI1及びILI2を形成する。絶縁層ILI2上に、半導体層SC2の材料である酸化物半導体膜が成膜される。当該酸化物半導体膜を島状に形成することにより、半導体層SC2が形成される(
図5(C)参照)。
半導体層SC2を覆って、絶縁層GI2を形成する。絶縁層GI2、ILI2、ILI1、及びGI1に、半導体層SC1に達するコンタクトホールを形成する。
絶縁層GI2上に、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1、及びゲート電極GE2の材料となる金属膜を成膜する。当該金属膜は、コンタクトホールを介して、半導体層SC1に接続する。当該金属膜を成形し、ソース電極SE1a、ドレイン電極DE1、及びゲート電極GE2を形成する。
【0050】
ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1を通して半導体層SC1に、絶縁層GI2を通して半導体層SC2に不純物元素IM1を注入する(
図3参照)。上述のように、不純物元素IM1及びIM3は同極性であるが、不純物元素IM1の濃度CN1は不純物元素IM3の濃度CN3より高い。これにより、トランジスタTr1の半導体層SC1に、領域TI1を含むソース領域RS1、及び、領域TI2を含むドレイン領域RD1が形成される。なお絶縁層GI1成膜後にレジストを用いて低濃度不純物領域形成用のマスクを形成し、不純物元素IM5を注入することで、低濃度不純物領域LDD1及びLDD2を形成してもよい。不純物元素IM5は、例えばリンである。
また
図4の領域TIa2と同様に、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1のうち、半導体層SC1及びソース電極SE1aとの界面近傍の領域、並びに、半導体層SC1及びドレイン電極DE1との界面近傍の領域は、不純物元素IM1を含んでいる。
【0051】
当該注入工程では同時に、トランジスタTr2において、ゲート電極GE2と重畳する領域の絶縁層GI2中の欠陥修復が行われ、余剰酸素が低減される。同時に、ゲート電極GE2が重畳しない領域の半導体層SC2では欠陥準位が生じ、半導体層SC2が低抵抗化する。
図4の領域TIa2と同様に、ゲート電極GE2のうち、ゲート電極GE2と絶縁層GI2との界面近傍の領域は、不純物元素IM1を含んでいる。領域TIa1と同様に、絶縁層GI2のうち、ゲート電極GE2と重畳し、ゲート電極GE2と絶縁層GI2との界面近傍の領域は、不純物元素IM1を含んでいる。
絶縁層GI2のうち、ゲート電極GE2と重畳せず、絶縁層GI2と半導体層SC2との界面近傍の領域は、不純物元素IM1を含んでいる。半導体層SC2のうち、ゲート電極GE2と重畳せず、絶縁層GI2と半導体層SC2との界面近傍の領域は、不純物元素IM1を含んでいる。
【0052】
上述のように、当該注入工程では、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1を超える印加電圧で、不純物元素IM1が注入される。ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1が存在する領域ではソース電極SE1a及びドレイン電極DE1と絶縁層GI2の界面近傍に不純物元素IM1の濃度の極大が位置する。一方、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1が存在しない領域の絶縁層GI2、ILI2、ILI1、GI1では、第3方向Zと逆方向において、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1との界面から離れた位置で、不純物元素IM1の濃度の極大が位置する。換言すると、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1と絶縁層GI2の界面よりも下層の領域TIb1で、不純物元素IM1の濃度が大きくなる。
【0053】
本実施形態により、トランジスタTr1の半導体層SC1において、ソース領域RS1の領域TI1及びドレイン領域RD1の領域TI2の形成、並びに、トランジスタTr2における半導体層SC2のソース領域RS2及びドレイン領域RD2の低抵抗化、及び絶縁層GI2中の欠陥修復を、同一工程で行うことができる。
トランジスタTr1は、半導体層SC1のうち、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1が接する領域に、領域TI1及びTI2を有している。領域TI1及びTI2では、半導体層SC1及び絶縁層GI1の近傍に不純物元素IM1の濃度の極大が位置している。これにより、半導体層SC1、並びに、ソース電極SE1a及びドレイン電極DE1とのコンタクト抵抗の上昇を抑制することができる。
【0054】
図3及び
図4では、不純物元素IM1、IM3及びIM5がn型を付与する不純物元素、例えばリン、半導体層SC1のキャリア濃度制御用の不純物元素IM2は、例えばホウ素である例について説明した。これによりnチャネル型トランジスタであるTr1を得ることが可能である。
不純物元素IM1、IM3及びIM5はp型を付与する不純物元素(例えばホウ素)であってもよい。この場合、トランジスタTr1は、pチャネル型トランジスタとなる。
【0055】
以上本実施形態により、トランジスタTr1及びTr2の信頼性を向上させることができ、表示装置DSPの表示性能の向上が図れる。
【0056】
<構成例1>
図6は、実施形態における表示装置の他の構成例を示す断面図である。
図6に示した構成例では、
図3に示した構成例と比較して、多結晶シリコントランジスタがnチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタを備えるという点で異なっている。
図6に示す表示装置DSPは、nチャネル型多結晶シリコントランジスタであるトランジスタTr1n、pチャネル型多結晶シリコントランジスタであるトランジスタTr1p、及び、酸化物半導体トランジスタであるトランジスタTr2を有している。トランジスタTr1n及びTr1pは、それぞれのドレイン領域RD1n及びRD1pがドレイン電極DE1で相補的に接続される、CMOSトランジスタTr1cを構成する。トランジスタTr1n及びTr1pは、それぞれ独立したトランジスタであってもよい。
【0057】
トランジスタTr1nの半導体層SC1nは、チャネル形成領域RC1n、ソース領域RS1n、ドレイン領域RD1nを有している。チャネル形成領域RC1n及びソース領域RS1n、並びに、チャネル形成領域RC1n及びドレイン領域RD1nとの間には、それぞれ、低濃度不純物領域LDD1及びLDD2が設けられている。チャネル形成領域RC1nは、ゲート電極GE1nと重畳している。ソース領域RS1nと重畳してソース電極SE1an、ドレイン領域RD1nと重畳してドレイン電極DE1が設けられている。
【0058】
トランジスタTr1pの半導体層SC1pは、チャネル形成領域RC1p、ソース領域RS1p、ドレイン領域RD1pを有している。チャネル形成領域RC1pは、ゲート電極GE1pと重畳している。ソース領域RS1pと重畳してソース電極SE1ap、ドレイン領域RD1pと重畳してドレイン電極DE1が設けられている。
【0059】
トランジスタTr2の半導体層SC2は、チャネル形成領域RC2、ソース領域RS2、ドレイン領域RD2を有している。チャネル形成領域RC2は、ゲート電極GE2と重畳する。
図6には表示しないが、
図2同様、半導体層SC2のソース領域RS2及びドレイン領域RD2それぞれに重畳する、ソース電極SE2及びドレイン電極DE2を有している。
不純物元素IM1は、
図3で説明した内容と同様である。
マスクMK1については後述する。
【0060】
図7(A)から
図7(B)、
図8(A)から
図8(B)は、表示装置の作成工程を示す断面図である。
図示しない基材上に絶縁層UC2(UC)が形成される。絶縁層UC上に、半導体層SC1の材料である半導体膜が成膜される。半導体膜の成膜後、例えば、レーザ照射にてアニールを行う。その後、当該半導体膜が島状に形成されることにより、半導体層SC1n及びSC1pが形成される。
半導体層SC1n及びSC1pに不純物元素IM2を注入する(
図7(A)参照)。不純物元素IM2は、不純物元素IM1と逆の極性を有する不純物元素、例えばホウ素である。当該注入工程における不純物元素IM2の濃度をCN2とすると、濃度CN2は不純物元素IM1の濃度CN1より低い。半導体層SC1n及びSC1p中の不純物元素IM2の濃度をCT1とする。不純物元素IM2を注入後、半導体層SC1n及びSC1pを覆って絶縁層GI1を形成する。
【0061】
絶縁層GI1上に、半導体層SC1nの一部と重畳してゲート電極GE1n、半導体層SC1pの一部と重畳してゲート電極GE1p、及び、トランジスタTr2の遮光層LS2を形成する。
絶縁層GI1を介し、ゲート電極GE1nをマスクとして、半導体層SC1nに、及び、ゲート電極GE1pをマスクとして、半導体層SC1pに、不純物元素IM3を注入する(
図7(B)参照)。不純物元素IM3は、不純物元素IM1と同じ極性を有する不純物元素、例えばリンである。当該注入工程における不純物元素IM3の濃度をCN3とすると、濃度CN3は濃度CN1より低い。
半導体層SC1nのうち、不純物元素IM2が注入され、不純物元素IM3が注入されない領域は、チャネル形成領域RC1nとなる。すなわち、チャネル形成領域RC1nは、不純物元素IM2を含んでおり、不純物元素IM3は含まない。チャネル形成領域RC1n中の不純物元素IM2の濃度は、上述のように濃度CT1である。
【0062】
半導体層SC1pのうち、不純物元素IM2が注入され、不純物元素IM3が注入されない領域は、チャネル形成領域RC1pとなる。すなわち、チャネル形成領域RC1pは、不純物元素IM2を含んでおり、不純物元素IM3は含まない。チャネル形成領域RC1p中の不純物元素IM2の濃度は、上述のように濃度CT1である。
ただし、当該注入工程において、半導体層SC1pに不純物元素IM3を注入しなくてもよい。その場合は、半導体層SC1pを覆ってマスクを形成し、不純物元素IM3が半導体層SC1pに注入されないようにすればよい。
【0063】
不純物元素IM3注入後、半導体層SC1n及びゲート電極GE1nを覆ってマスクMK2を形成する。次いで、不純物元素IM4を濃度CN4で、半導体層SC1pに注入する(
図8(A)参照)。不純物元素IM4は、ゲート電極GE1pをマスクとして、半導体層SC1pに注入される。不純物元素IM4は、不純物元素IM1と逆の極性を有する不純物元素、例えばホウ素である。このとき濃度CN4は、濃度CN3より高い。
半導体層SC1pに、不純物元素IM3が注入されている場合は、不純物元素IM4の注入により、半導体層SC1p中のチャネル形成領域RC1p以外の領域の極性が反転し、ソース領域RS1p及びドレイン領域RD1pが形成される。不純物元素IM3が注入されていない場合においても、不純物元素IM4の注入により、ソース領域RS1p及びドレイン領域RD1pが形成される。
【0064】
不純物元素IM4の注入後、絶縁層ILI1及びILI2を形成する。絶縁層ILI2上に、半導体層SC2の材料である酸化物半導体膜が成膜される。当該酸化物半導体膜を島状に形成することにより、半導体層SC2が形成される(
図8(B)参照)。
半導体層SC2を覆って、絶縁層GI2を形成する。絶縁層GI2、ILI2、ILI1、及びGI1に、半導体層SC1n及びSC1pそれぞれに達するコンタクトホールを形成する。
絶縁層GI2上に、ソース電極SE1an、ドレイン電極DE1、ソース電極SE1ap、及びゲート電極GE2の材料となる金属膜を成膜する。当該金属膜は、コンタクトホールを介して、半導体層SC1n及びSC1pそれぞれに接続する。当該金属膜を成形し、ソース電極SE1an、ドレイン電極DE1、ソース電極SE1ap、及びゲート電極GE2を形成する。
【0065】
半導体層SC1p、ゲート電極GE1p、ソース電極SE1ap、及びドレイン電極DE1の一部を覆ってマスクMK1を形成する。次いで、ソース電極SE1an及びドレイン電極DE1を通して半導体層SC1nに、ゲート電極GE2を通して絶縁層GI2に、ゲート電極GE2の存在しない部分において絶縁層GI2を通して半導体層SC2に不純物元素IM1を濃度CN1で注入する(
図6参照)。上述のように、不純物元素IM1及びIM3は同極性であるが、不純物元素IM1の濃度CN1は不純物元素IM3の濃度CN3より高い。
【0066】
これにより、トランジスタTr1の半導体層SC1nに、領域TI1を含むソース領域RS1n、及び、領域TI2を含むドレイン領域RD1nが形成される。
図3と同様、絶縁層GI1成膜後にレジストを用いて低濃度不純物領域形成用のマスクを形成し、不純物元素IM5を注入することで、低濃度不純物領域LDD1及びLDD2を形成してもよい。
当該不純物元素IM1注入工程では同時に、トランジスタTr2において、絶縁層GI2中の欠陥修復が行われ、余剰酸素が低減される。同時に、酸化物半導体層である半導体層SC2では欠陥準位が生じ、半導体層SC2が低抵抗化する。
【0067】
本構成例により、トランジスタTr1n、Tr1p、及びTr2の信頼性を向上させることができ、表示装置DSPの表示性能の向上が図れる。
本構成例においても、実施形態と同様の効果を奏する。
【0068】
本明細書では、トランジスタTr1及びTr2を、それぞれ、第1トランジスタ及び第2トランジスタともいう。または、トランジスタTr1n、Tr1p、及びTr2を、それぞれ、第1トランジスタ、第2トランジスタ、及び、第3トランジスタともいう。
上述のように、半導体層SC1及びSC2を、それぞれ、第1半導体層及び第2半導体層ともいう。半導体層SC1及びSC2を、それぞれ、多結晶シリコン層及び酸化物半導体層ともいう。半導体層SC1n、SC2、及びSC1pを、それぞれ、第1半導体層、第2半導体層、及び、第3半導体層ともいう。半導体層SC1n、SC1p、及びSC2を、それぞれ、第1多結晶シリコン層、第2多結晶シリコン層、及び、酸化物半導体層ともいう。
領域TI1及びTI2を、それぞれ、第1領域及び第2領域ともいう。
【0069】
絶縁層GI1及びGI2を、それぞれ、第1絶縁層及び第2絶縁層ともいう。絶縁層ILI2を、第3絶縁層ともいう。
不純物元素IM1を第1不純物元素、不純物元素IM1と逆の極性を付与する不純物元素、例えば、不純物元素IM4を第2不純物元素ともいう。
注入される不純物元素の順番に基づいて、不純物元素IM2、IM3、及びIM1を、第1不純物元素、第2不純物元素、及び第3不純物元素ともいう。不純物元素IM2、IM3、IM4、及びIM1を、第1不純物元素、第2不純物元素、第3不純物元素、及び第4不純物元素ともいう。
【0070】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
CN1…濃度、CN2…濃度、CN3…濃度、CN4…濃度、CT1…濃度、CT2…濃度、DA…表示領域、DE1…ドレイン電極、GE1…ゲート電極、GI…絶縁層、GI1…絶縁層、GI2…絶縁層、IL1…不純物元素、ILI1…絶縁層、ILI2…絶縁層、ILI3…絶縁層、ILI4…絶縁層、IM1…不純物元素、IM2…不純物元素、IM3…不純物元素、IM4…不純物元素、IM5…不純物元素、RC1…チャネル形成領域、RD1…ドレイン領域、RD1n…ドレイン領域、RD2…ドレイン領域、RS1…ソース領域、RS2…ソース領域、SC1…半導体層、SC2…半導体層、SE1…ソース電極、SE1a…ソース電極、TI1…領域、TI2…領域、TIa…領域、TIa1…領域、TIa2…領域、TIb…領域、TIb1…領域、TIb2…領域、TIc…領域、Tr1…トランジスタ、Tr2…トランジスタ。