(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ラッピングマシン
(51)【国際特許分類】
A01F 25/13 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A01F25/13 Z
(21)【出願番号】P 2020200446
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】横内 博史
(72)【発明者】
【氏名】宮田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】廣川 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】宮西 広樹
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-5723(JP,A)
【文献】特開2002-253042(JP,A)
【文献】特開2018-158744(JP,A)
【文献】実開平4-32901(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第565055(EP,A1)
【文献】特開2003-304732(JP,A)
【文献】特開2010-98982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0024357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 25/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフトアームと回転ローラを備え、
前記リフトアームは、リフトアーム駆動部により、リフトアーム基部を軸に回動しロールベールを抱えるものであり、リフトアーム先端側は、左右に飛び出た取付部を有し、
前記回転ローラは、前記リフトアームの先端から先に向かって、前記取付部の左右に一対設けられており、自在に回転するものであることを特徴とする、
ラッピングマシン。
【請求項2】
前記一対の回転ローラは、先端に行くに従い互いに近接する向きに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のラッピングマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牧草等をロール状(円柱状)に仕上げたロールベールに対してラップフィルムを巻きつけるラッピングマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、特許文献1のように、ラッピングフィルムで全体を巻き付けられたラッピング済みロールベールを圃場に置くとき、リフトアームが補助するラッピングマシンが知られていた。また、ラッピング済みロールベールを縦置くことも特許文献1のように行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアームの先端の両側に一対のローラが飛び出た構造を有するリフトアームが開発(
図53)された。しかし、リフトアームは、もともと圃場に置かれたラッピング前のロールベールをラッピングマシンに積み込むことを目的としたものであり、ラッピング済みロールベールを圃場に縦置くときに最適な構造とはいいがたかった。
そこで、本発明は、ラッピング済みロールベールを縦置く際に、ラッピング済みロールベールの動きをスムーズに補助するリフトアームを備えたラッピングマシンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、リフトアームと回転ローラを備え、前記リフトアームは、リフトアーム駆動部により、リフトアーム基部を軸に回動しロールベールを抱えるものであり、リフトアーム先端側は、旋回方向に対して左右に飛び出た取付部を有し、前記回転ローラは、前記リフトアームの先端から先に向かって、前記取付部の左右に一対設けられており、自在に回転するものであることを特徴とするラッピングマシンとすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
ラッピング済みロールベールを縦置きする際に、ラッピング済みロールベールの外面を回転ローラが回転し、スムーズに縦置きを補助することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ラッピングマシンの説明図(A)斜視図(B)正面図(C)側面図
【
図2】
図1の斜視図の部分図および縦置きアームの断面斜視図
【
図4】縦置き開始工程の説明図(A)ラッピング終了時のラッピングマシンの側面図(B)積み降ろし工程開始時のラッピングマシンの側面図(C)積み降ろし工程開始時のラッピングマシンの斜視図
【
図5】積み降ろし工程中の説明図(A)積み降ろし途中時のラッピングマシンの側面図(B)圃場にロールベールを降ろした時のラッピングマシンの側面図
【
図6】積み降ろし工程終了から縦置き工程の説明図(右側に縦置き)(A)積み降ろし工程終了時の説明図(A-1)積み降ろし工程終了時のラッピングマシンの正面図(A-2)積み降ろしたロールベールの底面図(A-3)積み降ろしたロールベールの斜視図(ラッピングマシンは図示せず)(B)右に縦置く縦置き工程の斜視図
【
図7】積み降ろし工程終了から縦置き工程の説明図(左側に縦置き)(A-1)積み降ろし工程終了時のラッピングマシンの正面図(A-2)積み降ろしたロールベールの底面図(A-3)積み降ろしたロールベールの斜視図(ラッピングマシンは図示せず)(B)左に縦置く縦置き工程の斜視図(C)従来例
【
図8】縦置き工程中のロールベールの動きの説明図(A)右に縦置く工程図(B)左に縦置く工程図
【
図9】実施例のラッピングマシンを使用した集積所におけるラッピング作業の説明図
【
図10】ベールグリッパの側面図(A)底面を横に向けて置かれているロールベールを把持している状態の側面図(B)縦置かれたロールベールを把持している状態の側面図
【
図11】ロールベールを縦置けない従来のラッピングマシンを使用した集積所におけるラッピング作業の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(ラッピングマシン)
本発明でいうラッピングマシン1は、自走式及び牽引車(トラクタ等)によって直装されるものや牽引されるものなどいずれのものも含まれる。
【0009】
(ロールベール)
本発明でいうロールベールRは、作物をロールベーラなどのロールベール成形装置によって、円柱状に圧縮成型したものであり、フィルムでラッピング(巻回)された状態のものである。「ラッピング前のロールベールR」などと特に断りのない限り、単に「ロールベールR」というときは、フィルムがラッピング(巻回)された状態のものをいう。
【0010】
(ロールベールにされる作物)
ここで、作物とは、ソルガム、デントコーンや牧草などの飼料作物などである。
【0011】
(ロールベールの置かれた状態)
ラッピング前のロールベールRは、ロールベーラで成形され、圃場に放出される。この時のロールベールRの置かれた状態は、円筒状のロールベールRの中心軸が圃場面と平行となっている状態で圃場に置かれている。特に置かれた状態を言わない場合や「圃場に置かれたラッピング前のロールベール」などいう場合は、円筒状のロールベールRの中心軸が圃場面と平行となって置かれていることを表している。
これに対して、ロールベールRを縦置きした状態とは、ロールベールRの中心軸が圃場面に対して鉛直である状態であり、円形の底面を接地させて立てた状態をいう。本発明では、ロールベールRが、ラッピングマシン1によって縦置きした状態で圃場に置かれる。
【0012】
本発明でいう各種駆動部は油圧、電動など、どのようなものでもよく実施例に限定されるものではない。
【0013】
(実施例1)
ロールベールRは、底面がラップフィルムの重なりが周面R6より多重で厚いため、作物の残幹などの突起物が刺さるなどの原因により、底面に孔が開きにくい。実施例1のラッピングマシン1は、孔の開きにくい底面を下にロールベールRを縦置くものである。
【0014】
(ラッピングマシンの主要な装置の概略)
実施例1のラッピングマシン1に搭載された主要な装置の概略について説明する。ラッピングマシン1は、ラップフィルム巻き付け関連装置とロールベール積み込み積み降ろし関連装置を有している。ただし、一部装置(部材)は、双方に関連している。
図1は、ラッピングマシン1の説明図である。
図1(A)は斜視図、
図1は(B)正面図、
図1(C)は側面図である。
(ラップフィルム巻き付け関連装置)
ロールベール支承部21は、圃場に置かれたラッピング前のロールベールを載せるものである。そして、ラッピング前のロールベールRは、ロールベールRの周面R6が当接するようにエンドレスベルト212上に載置される。エンドレスベルト212は、前後に一対設けられた転動ローラ213により回転し、ラッピング前のロールベールRを、中心軸(水平方向の軸)を中心に回転させる。
図1(C)のハッチングで示したロールベール支承部機台2は、ロールベール支承部21を下から支えるものである。ラッピング作業時には、ロールベール支承部21は、ロールベール支承部機台2に設けられた、支承部回動軸216を中心に回転する。
ラップフィルム巻き付け装置7から出されたフィルムの端部は、ロールベール支承部21に係止されているため、ロールベール支承部21が支承部回動軸216を中心に回動することでフィルムが繰り出され、ロールベール支承部21上に載置されたラッピング前のロールベールRの外面にフィルムを巻きつけて行く。このとき、ラッピング前のロールベールRは、支承部回動軸216による鉛直方向の回りの回動とエンドレスベルト212による水平方向の回りの回動により、鉛直と水平の2方向に同時に回動される。ラッピング前のロールベールRの周面R6と底面R7(
図8参照)は隙間なくラップフィルムで包装される。円柱状のロールベールRの形状は、周面積より底面積の方が小さく、底面R7の方が厚くラップフィルムで巻かれる。
【0015】
(ロールベール積み込み積み降ろし関連装置)
図1(C)のハッチングで示したロールベール支承部機台2は、傾動軸22を中心に、図示されていないダンプシリンダで後ろに向けて倒れる。詳細な動作については、後述するが、ロールベール支承部機台2は後方の圃場側に傾動する。ロールベール支承部機台2の傾動に伴って圃場近くまで回動したロールベール支承部21は、圃場に置かれたラッピング前のロールベールRをラッピングマシン1に積み込むのに機能する。また、ロールベールRを縦置く際にも機能する。
リフトアーム4は、先端側に左右に突出した取付部42を有している。一対の回転ローラ43は、取付部42の左右にそれぞれ設けられており、先端に行く従い、互いに近接する向きに設けられている。また、回転ローラ43は、自在に回転する。
リフトアーム4は、
図1(C)のハッチングで示したロールベール支承部機台2に取り付けられているものであり、ロールベール支承部機台2が傾動すればリフトアーム4も傾動する。そして、リフトアーム4は、ロールベール支承部機台2に対してリフトアーム回動軸45を軸にしてリフトアーム駆動部41(リフトアームシリンダ)で上下に回動する。リフトアーム4が回動しロールベールRを押さえつけることで、ロールベール支承部21にロールベールRが抱きかかえられる。
以上のように、リフトアーム4は、ラッピング前のロールベールRをロールベール支承部21との間に挟んで抱きかかえ、ラッピングマシン1に積み込む機能を有する。また積み降ろしの際には、リフトアーム4は、ロールベールRがロールベール支承部21から転げ落ちないように強く抱きかかえ、ロールベール支承部21との間で強くロールベールRを保持する。
【0016】
図1(B)および
図2に示されていように、縦置きアーム5は、ロールベール支承部機台2の後端23に設けられた縦置きアーム回動軸52に取り付けられている。縦置きアーム回動軸52は、ロールベール支承部機台2の後端23のどこでもよいが、実施例1では
図1(B)のように、後端23の右側に配置されている。
ロールベールRを縦置く際に重要な働きをする縦置きアーム5は、基端側に縦置きアーム駆動部51(縦置きアームシリンダ)を有しており縦置きアーム回動軸52を中心に回動するようになっている。
図2は、
図1の斜視図の部分図であり、縦置きアーム5の動きの説明している。仮想回動面59は、縦置きアーム5の回動面を示しており、仮想回動面59内の任意の位置で停止できるようになっている。点線で示した縦置きアーム5は、ロールベール支承部機台2の後端23に沿って収納している状態である。これに対して、実線で示した縦置きアーム5は、縦置き工程中の状態となっているものであり、詳しくは後述する。
また、
図2の縦置きアーム5の断面斜視図は、縦置きアーム5の断面構造を示すものである。縦置きアーム5の棒状の部分は、円柱状の芯材54に中空円筒状のローラ材55がはめ込まれている構造をしている。ローラ材55は芯材54の周囲を自由に回るように構成されているため、ロールベールRを縦置く際に、縦置きアーム5がロールベールRの周面R6と接触し滑ったとしても、ローラ材55が回転し、ロールベールRに巻かれたラップフィルムを破損させることが無いようになっている。
【0017】
(リフトアームの詳細説明)
図3はリフトアーム4の先端部の拡大図である。リフトアーム4先端側は、左右に飛び出た取付部42が設けられている。取付部42は、左右に一対の回転ローラ軸431が強固に固定されている。回転ローラ43は、中央に孔の開いた円柱状の形状をしており、回転ローラ軸431に回転ローラ43の孔を通し、回転ローラ軸431に抜け止め46を締結することで、取り付けられる。回転ローラ43は、回転ローラ軸431の回りを自在に回転可能なように取り付けられている。
一対の回転ローラ43は、先端に行くに従い互いに近接する向きに取り付けられていることが好ましい。すなわち、一対の回転ローラ43は、取付部側間隔S1が広く、先端側間隔S2が狭いように取り付けられている。
【0018】
(縦置き開始工程)
図4は縦置き開始工程の説明図である。
図4(A)はラッピング終了時のラッピングマシン1の側面図である。リフトアーム4と縦置きアーム5は、フィルムを巻きつけている間はロールベールRから退避した位置に置かれる。
次いで、積み降ろし工程が始まる。
図4(B)は積み降ろし工程開始時のラッピングマシン1の側面図であり、
図4(C)積み降ろし工程開始時のラッピングマシン1の斜視図である。リフトアーム4は降ろされ、ロールベールRを回転ローラ43で強く抱える。また、縦置きアーム5は、ロールベールをラッピングマシン1の右側に縦置くか、左側に縦置くかで角度は異なるが、所定の角度まで縦置きアーム駆動部51により立ち上げられる。
図4(C)では、ロールベールRの左端面と右端面の丁度中間に点線が付記してあり、ロールベールRの中間線R2を表している。縦置きアーム5は、基部側がロールベールRの右側にあり、縦置きアーム先端部53は中間線R2を超えて左側にある。
【0019】
(ロールベールをラッピングマシンの右側に縦置く場合)
図5は積み降ろし工程中の説明図である。
図5(A)は積み降ろし途中時のラッピングマシン1の側面図であり、
図5(B)は圃場にロールベールRを降ろした時のラッピングマシン1の側面図である。
ロールベール支承部機台2、傾動軸22を軸として図示しないダンプシリンダにより次第に圃場側に傾動して行く。ロールベールRは、リフトアーム4の回転ローラ43とロールベール支承部21との間に挟まれて、積み降ろし工程中転がり落ちることはない。やがて、ロールベールRは圃場に接地し、ロールベール支承部機台2の傾動は停止し積み降ろし工程は終了する。積み降ろし工程終了時には、縦置きアーム5は圃場とロールベールRとの間に挟まれている。
【0020】
図6は、積み降ろし工程終了から縦置き工程の説明図(右側に縦置き)である。
図6(A-1)は積み降ろし工程終了時のラッピングマシン1の正面図である。
図5(B)のラッピングマシン1を正面から観た図が
図6(A-1)であり、縦置きアーム先端部53は、ロールベールRの中間線R2より左側にある。そして、積み降ろしたロールベールRの底面図が
図6(A-2)である。積み降ろされたロールベールRは倒れた円柱のように積み降ろされるためロールベールRが接地する箇所は、接地ラインR1で示したようにライン状になる。もっとも、ロールベールRは柔らかく自重で若干押しつぶされるからライン状といっても幅のあるラインとなる。
縦置きアーム先端部53が、この接地ラインR1を越えて、かつ、縦置きアーム5と接地ラインR1の交点R4がロールベールRの中間線R2より左にある。倒れた円柱状のロールベールRと縦置きアーム5が接触するのは、接地ラインR1との交点R4の1箇所のみであることが、
図6(A-3)のロールベールRの斜視図から分かる。
【0021】
この状態で、縦置き工程に移る。縦置き工程は、再びロールベール支承部機台2をラッピングマシン1側に傾動する工程である。ロールベール支承部21と縦置きアーム5はロールベール支承部機台2と共にラッピングマシン1側に持ち上がって行く。縦置きアーム5は、ロールベールRと交点R4で接触し、やがて、この交点R4を持ち上げる。重心R5の位置は交点R4より右側にあるため、ロールベールRは、倒れた円柱状のロールベールRの右下端にある回動支点R3を中心に時計回りに回動し始める。
図6(B)はその様子を図示している。
ロールベールRがロールベール支承部21から離れる方向に動くと、縦置きアーム5がロールベールRと接触しなくなり、縦置くことが不可能となる。この時、リフトアーム4の回転ローラ43は、ロールベールRの周面R6に接しながら、同じ方向に回転し、ロールベールRがロールベール支承部21から離れすぎないように、また、ロールベールRの縦置き中の回転を妨げないように優しく補助する。リフトアーム4の回転ローラ43は、ロールベールRがロールベール支承部21から離れる方向に動くことを防ぐために機能するものであるから、軽くロールベールRに接触する程度に制御されていればよく、強くロールベールを押圧していない。
ロールベールRは、ある程度持ち上がると、重心位置も移動しやがて自律的に右側に縦置かれることになる。圃場が右側を下に傾斜している場合、ロールベールRは勢いよく右側に転がり、再び倒れてしまう懸念がある。リフトアーム4は、不必要に速い速度でロールベールRが右側に倒れることを防ぐ役割も果たす。
リフトアーム4は、このような役割を果たした後、所定のタイミングでリフトアーム駆動部41の駆動により持ち上げられ、ロールベールRから離れる。
そして 、ロールベールRは、周面R6に比べてフィルムが厚く巻かれた底面R7を下にして静かに圃場に縦置かれる。
【0022】
回転ローラ43は、ロールベールRの周面R6に接しながら、ロールベールRの縦置きを補助する作用を奏する。回転ローラ43が回転するため、縦置き工程中にロールベールRに巻かれたフィルムに対して過度な負担をかけることが無い。
【0023】
(ロールベールをラッピングマシンの左側に縦置く場合)
図7は、積み降ろし工程終了から縦置き工程の説明図(左側に縦置き)である。
図7(A-1)は積み降ろし工程終了時のラッピングマシン1の正面図である。このとき、縦置きアーム先端部53は、ロールベールRの中間線R2より右側にあり、積み降ろしたロールベールRの底面図が
図7(A-2)である。積み降ろされたロールベールRは倒れた円柱のように積み降ろされるためロールベールRが接地する箇所は、接地ラインR1で示したようにライン状になる。
【0024】
縦置きアーム先端部53が、この接地ラインR1を超え、かつ、縦置きアーム5と接地ラインR1の交点R4がロールベールRの中間線R2を右側にある。倒れた円柱状のロールベールRと縦置きアーム5が接触するのは、接地ラインR1との交点R4の1箇所のみであることが、
図7(A-3)のロールベールRの斜視図から分かる。
【0025】
この状態で、縦置き工程に移る。ロールベール支承部21と縦置きアーム5はロールベール支承部機台2と共にラッピングマシン1側に持ち上がって行く。縦置きアーム5は、ロールベールRと交点R4で接触しており、ロールベールRを持ち上げる。重心R5の位置は交点R4より左側にあるため、ロールベールRは、倒れた円柱状のロールベールRの左下端にある回動支点R3を中心に回動し始める。
図7(B)はその様子を図示している。
この時、リフトアーム4はロールベールRを押圧しており、リフトアーム4の回転ローラ43は、ロールベールRの周面R6に接しながら、同じ方向に滑らかに回転し縦置きを補助する。回転ローラ43は回転するため、ロールベールRの周面R6のフィルムが破れることを防ぐ。また、回転ローラ43がロールベールRをロールベール支承部21側に押し付けるため、ロールベールRがロールベール支承部21から離れる方向に動いてしまうことを防いでいる。
ロールベールRは、ある程度持ち上がるにつれて重心R5の位置が移動し、やがて自律的に左側に縦置かれる。そして、ロールベールRは、周面R6に比べてフィルムが厚く巻かれた底面R7を下にして静かに圃場に縦置かれる。
【0026】
図7(C)は従来例である。ロールベールRは、左側に縦置かれようとしている。このとき、ロールベールRは回動支点R3を中心に矢印の向きに回動している。従来の回転ローラ9の回転軸は水平方向であり、従来の回転ローラ9は円滑に回転できない。そのため、引きずるようにロールベールRの周面R6を移動する。底面と比べてフィルムが薄いロールベールRの周面R6は、従来の回転ローラ9により傷つけられる可能性が高くなる。
【0027】
図8は、縦置き工程中のロールベールRの動きの説明図であり、
図8(A)は右に縦置く工程図、
図8(B)は左に縦置く工程図である。ロールベールRは、回動支点R3を支点として半円状で示した矢印の方向に回動する。R7は、ロールベールRの底面である。図中の点線は、縦置き工程前のロールベールRの位置を示している。
前記一対の回転ローラ43は、ロールベールRを右に縦置いても、左に縦置いても滑らかに回転するように、先端に行くに従い互いに近接する向きに取り付けられている。
【0028】
(左側と右側を選択して縦置ける作用効果)
ラッピングマシンでラッピング前のロールベールRをラッピングする場合、大きく2つのやり方がある。一つは、ロールベーラが圃場に放出したロールベールRをその場でラッピングする場合である。ラッピングされたロールベールRは、やがてベールグリッパなどにより集められ、そして、トラックなどで圃場外へ運ばれることになる。圃場内のロールベールRをできる限り効率的に運ぶため、道路に近い側、あるいは、ロールベールRの集積所に近い側に縦置くことで、運搬距離を短くしロールベールRを回収する作業能率を高めることができる。
【0029】
もう一つは、ラッピング前のロールベールRを圃場の所定箇所を集積所として集めておき、まとめてラッピングを行う場合である。
図9は実施例のラッピングマシンを使用した集積所におけるラッピング作業の説明図である。この場合、ラッピングマシン1は、移動することはなく、ラッピング前のロールベールRをラッピングマシン1に載せるには、
図10のようなベールグリッパ8が用いられることが多い。
図10は、ベールグリッパ8の側面図であり、
図10(A)は底面R7を横に向けて置かれているロールベールRを把持している状態の側面図である。
図10(A)を観ても分かるように底面R7を横に向けて置かれているロールベールRを把持するには、ベールグリッパ8の支持腕81がロールベールRの周面R6を挟み付ける必要がある。そのため、底面R7を横に向けて置かれているロールベールRを把持するには、ベールグリッパ8は必ずロールベールRの底面R7または上面方向からアプローチする必要がある。
また、
図10(B)は縦置かれたロールベールRを把持している状態の側面図である。ベールグリッパ8の支持腕は底面R7を横に向けて置かれているロールベールRと縦置かれたロールベールRのいずれでも把持できるようにヘッドが回動できるように構成されている。
図10(B)を観ても分かるように、ベールグリッパ8の支持腕81は、縦置かれたロールベールRの周面R6を把持する。縦置かれたロールベールRは、四周のどの方向から観ても同じ形状であり、ベールグリッパ8が縦置かれたロールベールRを把持する際は、四周のどの方向からでもアプローチできる。
【0030】
図9に説明を戻すと、ハッチングの付されたロールベールRは、ラッピング済みのロールベールRを示しており、既に2つのラッピング済みロールベールRが手前に集められている。(工程1)では、図示していないベールグリッパ8により、矢印で示すように、ラッピング前のロールベールRがラッピングマシン1に載せられ、ラッピング作業が行われる。
(工程2)は、ロールベールRを圃場に降ろし縦置いた直後の状態である。
(工程3)は、縦置かれたロールベールRを図示していないベールグリッパ8で運ぶ工程である。前述したように縦置かれたロールベールRは、円柱形であり、四周のどの方向から観ても形状が変化することはない。ベールグリッパ8はどのよう方向から縦置かれたロールベールRにアプローチしてもロールベールRを把持できる。ベールグリッパ8は、作業効率の良い方向からアプローチしてラッピング済みロールベールRを集積場所まで移動させる。
作業者は、ベールグリッパ8の動きを考え、ラッピングマシン1を操作して右側と左側のうち、作業効率の良い方向へロールベールRを縦置くことができる。
【0031】
図11は、従来の縦置くことができないラッピングマシン1を使用した集積所におけるラッピング作業の説明図である。
(従来工程1)は、
図9の実施例の(工程1)と何ら変わることはない。(従来工程2)では、従来のラッピングマシン1がロールベールRを縦置くことができないものであるため、ロールベールRは底面R7を横に向け周面R6が圃場と接地するように降ろされる。そのため、
図9の実施例では存在しなかった(従来工程3)が加わる。(従来工程3)は、ロールベールRを縦置く作業である。このとき、前述したように、ベールグリッパ8が、底面R7を横に向けて置かれているロールベールRを把持するには、必ずロールベールRの底面R7または上面方向からアプローチする必要がある。
図9の(工程3)と異なり、ベールグリッパ8はどの方向からでもアプローチできるものではなく、作業効率を大きく落とすこととなる。その後(従来工程4)で、縦置かれたロールベールRベールグリッパ8ラッピング済みロールベールRを集積場所まで移動させる。
このように、従来の縦置くことができないラッピングマシン1では、ベールグリッパ8との連携作業において、作業効率を落とすこととなる。
【0032】
本発明の実施例の作用効果について、(左側と右側を選択して縦置ける作用効果)の項目を設けて説明してきた。実施例のラッピングマシン1は、ラップフィルムの厚いロールベールRの底面R7を下にして縦置くことでロールベールRに穴が開くことを防ぐ。穴が開けば、穴を塞ぐためにさらにラップフィルムが消費されることとなるから、実施例のラッピングマシン1は環境負荷の低減に寄与している。そして、このようなラッピングマシン1の作用効果にとどまらず、ロールベールRを集める、運搬するなどの農作業全体の作業効率に寄与し、燃料や資源を節約できるものである。実施例のラッピングマシン1は、国際連合が主導する持続可能な開発目標である「持続可能な農業を促進する」ことに貢献することができる。
【0033】
以上、本発明に係る実施例のラッピングマシン1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造や構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
【0034】
また、前述の実施例や実施形態は、その目的および構成などに特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
R ロールベール
R1 接地ライン
R2 中間線
R3 回動支点
R4 交点
R5 重心
R6 周面
R7 底面
1 ラッピングマシン
2 ロールベール支承部機台
21 ロールベール支承部
212 エンドレスベルト
213 転動ローラ
22 傾動軸
23 後端
4 リフトアーム
41 リフトアーム駆動部
42 取付部
43 回転ローラ
431 回転ローラ軸
45 リフトアーム回動軸
46 抜け止め
S1 取付部側間隔
S2 先端側間隔
5 縦置きアーム
51 縦置きアーム駆動部
52 縦置きアーム回動軸
53 縦置きアーム先端部
54 芯材
55 ローラ材
59 仮想回動面
8 ベールグリッパ
81 支持腕
9 従来の回転ローラ