(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 9/123 20100101AFI20240722BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20240722BHJP
【FI】
B62M9/123
B62M6/45
(21)【出願番号】P 2020216990
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】田河 賢治
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013624(JP,A)
【文献】特開2020-055420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111661(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018115084(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/123
B62M 6/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、クランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を備え、
前記変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
第1変速条件および第2変速条件を含む変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、
第1モード、および、前記第1モードとは異なる第2モードを含む制御状態に応じて前記人力駆動車用のコンポーネントを制御可能に構成され、
前記制御状態が前記第1モードの場合、前記第1変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、
前記制御状態が前記第2モードの場合、前記第2変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、
前記制御状態が前記第1モードの場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合、の前記人力駆動車の走行状態に関する参照値である収束参照値に応じて、前記第1変速条件を変更し、
前記制御状態が前記第2モードの場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合、の前記参照値である収束参照値に応じて、前記第2変速条件を変更する、制御装置。
【請求項2】
前記コンポーネントは、前記人力駆動車に推進力を付与するモータを含み、
前記第1モードおよび前記第2モードは、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、前記モータの出力、および、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に対する前記モータの出力の応答速度、の少なくとも1つが相互に異なる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記コンポーネントは、前記変速装置を含む、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記人力駆動車の車種、および、前記人力駆動車の車輪のサイズの少なくとも1つに応じて前記第1モードと、前記第2モードとを切り替える、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記変速条件は、前記人力駆動車の運動状態ごとに設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、クランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を備え、
前記変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
第3変速条件および第4変速条件を含む変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、
前記人力駆動車の運動状態が第1運動状態の場合、前記第3変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、
前記人力駆動車の運動状態が前記第1運動状態とは異なる第2運動状態の場合、前記第4変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、
前記人力駆動車の運動状態が前記第1運動状態の場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合、の前記人力駆動車の走行状態に関する参照値である収束参照値に応じて、前記第3変速条件を変更し、
前記人力駆動車の運動状態が前記第2運動状態の場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合の前記参照値である収束参照値に応じて、前記第4変速条件を変更する、制御装置。
【請求項7】
前記運動状態は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力を含む、請求項5または6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記運動状態は、前記人力駆動車の姿勢を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人力駆動車の姿勢に関するパラメータに応じて前記変速条件を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車のピッチ角度、前記人力駆動車のロール角度、および、前記人力駆動車のヨー角度の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、ライダの快適レベルに応じて前記変速条件を変更可能に構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、第1操作部の操作によって入力される前記ライダの快適レベルに応じて前記変速条件を変更可能に構成される、請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記ライダの快適レベルを検出する検出部の出力に応じて前記変速条件を変更可能に構成される、請求項10に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、第2操作部の操作によって前記変速条件を変更可能に構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記収束参照値は、第1収束参照値と、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合の前記人力駆動車のクランクに付与される力に関する第2収束参照値とを含み、
前記制御部は、前記第1収束参照値、および、前記第2収束参照値に応じて前記変速条件を変更可能に構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記参照値の移動平均または分散値に応じて前記収束参照値を算出する、請求項1から14のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記参照値は、前記クランク軸の回転速度に関する値を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項17】
前記クランク軸の回転速度に関する前記値は、前記クランク軸の回転量、または、前記クランク軸の回転角度を含む、請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度に関する値を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度が所定範囲外の場合に満たされ、
前記制御部は、前記収束参照値に応じて前記所定範囲を変更することによって前記変速条件を変更する、請求項18に記載の制御装置。
【請求項20】
前記人力駆動車が運転収束状態にある場合は、前記クランク軸の回転速度が第1範囲内にある場合である、請求項1から19のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項21】
記憶部をさらに備え、
前記記憶部は、変更後の前記変速条件に関する情報を記憶可能に構成される、請求項1から20のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、人力駆動車の走行状態に応じて変速装置を制御する変速システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、人力駆動車用の変速装置を好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、クランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を備え、前記変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、第1変速条件および第2変速条件を含む変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、第1モード、および、前記第1モードとは異なる第2モードを含む制御状態に応じて前記人力駆動車用のコンポーネントを制御可能に構成され、前記制御状態が前記第1モードの場合、前記第1変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、前記制御状態が前記第2モードの場合、前記第2変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、前記制御状態が前記第1モードの場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合、の前記人力駆動車の走行状態に関する参照値である収束参照値に応じて、前記第1変速条件を変更し、前記制御状態が前記第2モードの場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合、の前記参照値である収束参照値に応じて、前記第2変速条件を変更する。
上記第1側面の制御装置によれば、第1モードと、第2モードと、のそれぞれが有する変速条件を、第1モードと、第2モードと、のそれぞれの収束参照値に応じて変更できる。このため、人力駆動車用の変速装置を好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記コンポーネントは、前記人力駆動車に推進力を付与するモータを含み、前記第1モードおよび前記第2モードは、前記モータによるアシストレベル、前記モータの出力の最大値、前記モータの出力、および、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に対する前記モータの出力の応答速度、の少なくとも1つが相互に異なる。
上記第2側面の制御装置によれば、モータによるアシストレベル、モータの出力の最大値、モータの出力、および、人力駆動車に入力される人力駆動力に対するモータの出力の応答速度、の少なくとも1つが相互に異なる第1モードおよび第2モードのそれぞれにおいて、好適な変速条件によって変速装置を制御できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記コンポーネントは、前記変速装置を含む。
上記第3側面の制御装置によれば、変速装置を第1モードおよび第2モードに応じて制御できる。
【0008】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車種、および、前記人力駆動車の車輪のサイズの少なくとも1つに応じて前記第1モードと、前記第2モードとを切り替える。
上記第4側面の制御装置によれば、人力駆動車の車種、および、人力駆動車の車輪のサイズの少なくとも1つに応じた、第1モードおよび第2モードのそれぞれにおいて、好適な変速条件によって変速装置を制御できる。
【0009】
前記第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の制御装置において、前記変速条件は、前記人力駆動車の運動状態ごとに設定される。
上記第5側面の制御装置によれば、人力駆動車の運動状態ごとに有する変速条件を、運動状態ごとの収束参照値に応じて変更できる。
【0010】
本発明の第6側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、クランク軸の回転速度に対する車輪の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置を備え、前記変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、第3変速条件および第4変速条件を含む変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、前記人力駆動車の運動状態が第1運動状態の場合、前記第3変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、前記人力駆動車の運動状態が前記第1運動状態とは異なる第2運動状態の場合、前記第4変速条件に応じて前記変速比を変更するように前記変速装置を動作可能に構成され、前記人力駆動車の運動状態が前記第1運動状態の場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合、の前記人力駆動車の走行状態に関する参照値である収束参照値に応じて、前記第3変速条件を変更し、前記人力駆動車の運動状態が前記第2運動状態の場合、かつ、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合の前記参照値である収束参照値に応じて、前記第4変速条件を変更する。
上記第6側面の制御装置によれば、第1運動状態と、第2運動状態と、のそれぞれが有する変速条件を、第1運動状態と、第2運動状態との、それぞれの収束参照値に応じて変更できる。このため、人力駆動車用の変速装置を好適に制御できる。
【0011】
前記第5または第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記運動状態は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力を含む。
上記第7側面の制御装置によれば、人力駆動車に入力される人力駆動力に応じた運動状態ごとに好適な変速条件によって変速装置を制御できる。
【0012】
前記第5から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記運動状態は、前記人力駆動車の姿勢を含む。
上記第8側面の制御装置によれば、人力駆動車の姿勢に応じた運動状態ごとに好適な変速条件によって変速装置を制御できる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の姿勢に関するパラメータに応じて前記変速条件を変更し、前記パラメータは、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車のピッチ角度、前記人力駆動車のロール角度、および、前記人力駆動車のヨー角度の少なくとも1つを含む。
上記第9側面の制御装置によれば、人力駆動車の加速度、人力駆動車のピッチ角度、人力駆動車のロール角度、および、人力駆動車のヨー角度の少なくとも1つに応じた運動状態ごとに好適な変速条件によって変速装置を制御できる。
【0014】
前記第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、ライダの快適レベルに応じて前記変速条件を変更可能に構成される。
上記第10側面の制御装置によれば、変速条件をライダの快適レベルに応じて変更できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、第1操作部の操作によって入力される前記ライダの快適レベルに応じて前記変速条件を変更可能に構成される。
上記第11側面の制御装置によれば、第1操作部の操作によって入力されるライダの快適レベルに応じて変速条件を変更できる。このため、ライダの意図を好適に変速条件に反映できる。
【0016】
前記第10側面に従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記ライダの快適レベルを検出する検出部の出力に応じて前記変速条件を変更可能に構成される。
上記第12側面の制御装置によれば、検出部の出力によって検出されるライダの快適レベルに応じて変速条件を変更できる。このため、利便性が向上する。
【0017】
前記第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、第2操作部の操作によって前記変速条件を変更可能に構成される。
上記第13側面の制御装置によれば、第2操作部の操作によって、変速条件を変更できるため、変速条件にライダの意図を反映できる。
【0018】
前記第1から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記収束参照値は、第1収束参照値と、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合の前記人力駆動車のクランクに付与される力に関する第2収束参照値とを含み、前記制御部は、前記第1収束参照値、および、前記第2収束参照値に応じて前記変速条件を変更可能に構成される。
上記第14側面の制御装置によれば、第1収束参照値と第2収束参照値と、に応じて変速条件を変更できる。
【0019】
前記第1から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記制御部は、前記参照値の移動平均または分散値に応じて前記収束参照値を算出する。
上記第15側面の制御装置によれば、参照値の移動平均または分散値に応じて収束参照値を算出することによって、参照値の瞬間的なばらつきの影響を低減できる。
【0020】
前記第1から第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、前記参照値は、前記クランク軸の回転速度に関する値を含む。
上記第16側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度に関する値に応じて、変速条件を変更できる。
【0021】
前記第16側面に従う第17側面の制御装置において、前記クランク軸の回転速度に関する前記値は、前記クランク軸の回転量、または、前記クランク軸の回転角度を含む。
上記第17側面の制御装置によれば、クランク軸の回転量、または、クランク軸の回転角度に応じて、変速条件を変更できる。
【0022】
前記第1から17側面のいずれか1つに従う第18側面の制御装置において、前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度に関する値を含む。
上記第18側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度に関する値に応じて、変速条件を変更できる。
【0023】
前記第18側面に従う第19側面の制御装置において、前記変速条件は、前記クランク軸の回転速度が所定範囲外の場合に満たされ、前記制御部は、前記収束参照値に応じて前記所定範囲を変更することによって前記変速条件を変更する。
上記第19側面の制御装置によれば、収束参照値に応じて所定範囲を変更することによって、変速条件を好適に変更できる。
【0024】
前記第1から19側面のいずれか1つに従う第20側面の制御装置において、前記人力駆動車が運転収束状態にある場合は、前記クランク軸の回転速度が第1範囲内にある場合である。
上記第20側面の制御装置によれば、クランク軸の回転速度が第1範囲内にある場合の収束参照値に応じて変速条件を変更できる。
【0025】
前記第1から20側面のいずれか1つに従う第21側面の制御装置において、記憶部をさらに備え、前記記憶部は、変更後の前記変速条件に関する情報を記憶可能に構成される。
上記第21側面の制御装置によれば、変更後の変速条件に関する情報を記憶できるため、次回以降の走行に変更後の変速条件を利用できる。
【発明の効果】
【0026】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車用の変速装置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】第1実施形態の人力駆動車の電気的構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の制御部が実行する運転収束状態の判定処理の一例を示すフローチャート。
【
図4】クランク軸の回転速度の推移を示すチャート。
【
図5】
図2の制御部が実行するコンポーネント制御の一例を示すフローチャート。
【
図6】
図2の制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図2の制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
【
図8】
図2の制御部が実行する変速条件変更処理の一例を示すフローチャート。
【
図9】
図2の制御部が実行する変速条件変更処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態の制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
【
図11】第2実施形態の制御部が実行する制御の一例を示すフローチャート。
【
図12】第3実施形態の制御部が実行する変速条件変更処理の一例を示すフローチャート。
【
図13】第3実施形態の制御部が実行する変速条件変更処理の一例を示すフローチャート。
【
図14】変形例の制御装置が実行する変速条件変更処理に利用されるマップ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1から
図9を参照して、第1実施形態の人力駆動車用の制御装置70について説明する。
図1は、制御装置70が関係する人力駆動車10を示す。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪12を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪12の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪12を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0029】
人力駆動車10は、車輪12と、車体14と、を備える。車輪12は、前輪12Fと、後輪12Rと、を含む。車体14は、フレーム16と、フロントフォーク18と、を含む。フロントフォーク18には、ハンドルバー20がステム22を介して連結されている。
【0030】
本明細書において、以下の方向を示す用語「前(フロント)」、「後ろ(リア)」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「横」、「上方」、および、「下方」、並びに任意の他の類似の方向を示す用語は、人力駆動車10の基準位置(例えば、サドルまたはシート上)においてハンドルバー20を向いた搭乗者を基準に決定されるそれらの方向を指す。
【0031】
人力駆動車10は、人力駆動力が入力されるクランク24をさらに備える。クランク24は、フレーム16に対して回転可能なクランク軸26と、クランク軸26の軸方向の端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム28とを含む。各クランクアーム28には、一対のペダル30がそれぞれ連結される。
【0032】
本実施形態では、駆動輪は、後輪12Rである。後輪12Rは、クランク24が回転することによって駆動される。クランク24は、駆動機構32によって後輪12Rと連結される。駆動機構32は、クランク軸26に連結される第1回転体34を含む。クランク軸26は、第1回転体34と一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク24が前転した場合に、第1回転体34を前転させ、クランク24が後転した場合に、クランク24と第1回転体34との相対回転を許容するように構成される。第1回転体34は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。
【0033】
駆動機構32は、第2回転体36と、連結部材38とをさらに含む。連結部材38は、第1回転体34の回転力を第2回転体36に伝達する。連結部材38は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0034】
第2回転体36は、後輪12Rに連結される。第2回転体36は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体36と後輪12Rとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体36が前転した場合に、後輪12Rを前転させ、第2回転体36が後転した場合に、第2回転体36と後輪12Rとの相対回転を許容するように構成される。本実施形態では、後輪12Rが駆動機構32によってクランク24に連結されるが、前輪12Fおよび後輪12Rの少なくとも1つが、駆動機構32によってクランク24に連結されてもよい。
【0035】
人力駆動車10は、バッテリ40をさらに含む。バッテリ40は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ40は、制御装置70に電力を供給するように構成される。バッテリ40は、好ましくは、制御部72(
図2参照)と電気ケーブルまたは無線通信装置を介して通信可能に接続される。バッテリ40は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部72と通信可能である。
【0036】
人力駆動車10は、クランク軸26の回転速度に対する車輪12の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置42を備える。好ましくは、変速比は、クランク軸26の回転速度に対する駆動輪の回転速度の比率である。
【0037】
変速装置42は、バッテリ40から供給される電力、または、変速装置42に搭載される専用の電源から供給される電力によって動作する。変速装置42は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ46、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速装置42は、アクチュエータによって動作するように構成されてもよい。アクチュエータは、電気アクチュエータを含む。アクチュエータは、例えば、モータを含む。
【0038】
変速装置42がリアディレイラ46を含む場合、リアディレイラ46は、フレーム16のリアエンド48に設けられる。変速装置42がリアディレイラ46を含む場合、駆動機構32は、複数の第2回転体36を備える。リアディレイラ46の駆動に伴って、連結部材38が巻き掛けられる第2回転体36が1つの第2回転体36から他の1つの第2回転体36に変更され、人力駆動車10の変速比が変更される。
【0039】
変速装置42が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば後輪12Rのハブに設けられる。変速装置42は、無段変速機を含んでいてもよい。
【0040】
人力駆動車10は、人力駆動車用のコンポーネント50をさらに備える。コンポーネント50は、人力駆動車10に推進力を付与するモータ52を含む。コンポーネント50は、変速装置42を含んでいてもよい。
【0041】
モータ52は、1または複数の電気モータを含む。電気モータは、例えば、ブラシレスモータである。モータ52は、ペダル30から後輪12Rまでの人力駆動力の動力伝達経路、および、前輪12Fの少なくとも1つに回転力を伝達するように構成される。ペダル30から後輪12Rまでの人力駆動力の動力伝達経路には、後輪12Rも含まれる。
【0042】
本実施形態では、モータ52は、人力駆動車10のフレーム16に設けられ、第1回転体34に回転力を伝達するように構成される。前輪12F、および、後輪12Rの少なくとも1つにモータ52を設ける場合、モータ52は、ハブに設けられて、ハブと共にハブモータを構成してもよい。
【0043】
図2に示すように、人力駆動車10は、参照値検出部54をさらに備える。参照値検出部54は、人力駆動車10の走行状態に関する参照値RVを検出可能に構成される。参照値RVは、第1参照値RV1および第2参照値RV2のうち少なくとも1つを含む。好ましくは、参照値RVは、第1参照値RV1および第2参照値RV2を含む。好ましくは、参照値RVは、クランク軸26の回転速度に関する値を含む。好ましくは、第1参照値RV1は、クランク軸26の回転速度に関する。第2参照値RV2は、人力駆動車10のクランク24に付与される力に関する。第1参照値RV1は、例えば、人力駆動車10のケイデンスである。第2参照値RV2は、例えば、人力駆動力によってクランク24に付与されるトルクである。
【0044】
参照値RVが第1参照値RV1を含む場合、参照値検出部54は、クランク回転検出部56を含む。参照値RVが第2参照値RV2を含む場合、参照値検出部54は、人力駆動力検出部58を含む。
【0045】
クランク回転検出部56は、クランク軸26の回転を検出可能に構成される。クランク回転検出部56は、例えば、人力駆動車10のフレーム16に設けられる。クランク回転検出部56は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含む。磁気センサは、周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石を有する。磁石は、クランク軸26、クランク軸26に連動して回転する部材、または、クランク軸26から第1回転体34までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク軸26に連動して回転する部材は、モータ52の出力軸を含んでもよい。
【0046】
クランク回転検出部56は、クランク軸26の回転に応じた信号を出力する。例えば、クランク軸26と第1回転体34との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、磁石は、第1回転体34に設けられてもよい。クランク回転検出部56は、第1参照値RV1を取得できればどのような構成であってもよく、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。
【0047】
人力駆動力検出部58は、人力駆動力によってクランク24に与えられるトルクを検出可能に構成される。人力駆動力検出部58は、例えば、人力駆動車10のフレーム16、クランク24、または、ペダル30に設けられる。人力駆動力検出部58は、第2参照値RV2に応じた信号を出力するように構成される。
【0048】
人力駆動力検出部58は、例えば、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力によってクランク24に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサは、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。
【0049】
トルクセンサは、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸26、クランク軸26と第1回転体34との間において人力駆動力を伝達する部材、クランクアーム28、および、ペダル30である。人力駆動力検出部58は、人力駆動力に関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル30に与えられる圧力を検出するセンサ、または、連結部材38の張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0050】
人力駆動車10は、操作部60をさらに備える。操作部60は、例えば、ハンドルバー20に設けられる。変速装置42は、操作部60への操作に応じて、変速比を変更するように動作可能に構成される。操作部60は、シフトアップ操作部およびシフトダウン操作部を備えていてもよい。ライダがシフトアップ操作部を操作する場合、変速比を大きくするように変速装置42が動作する。ライダがシフトダウン操作部を操作する場合、変速比を小さくするように変速装置42が動作する。
【0051】
制御装置70は、制御部72を備える。制御部72は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部72は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部72は、バッテリ40から供給される電力によって動作する。制御部72は、クランク回転検出部56、人力駆動力検出部58、および、操作部60、と無線通信装置または電気ケーブルを介して、接続される。
【0052】
制御装置70は、記憶部74をさらに備える。記憶部74は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。記憶部74には、各種制御処理に用いられる情報、および、各種制御プログラムが記憶される。
【0053】
制御部72は、変速装置42を制御する。制御部72は、操作部60への操作に応じて変速装置42のアクチュエータを駆動させることによって、変速比を変更するように変速装置42を動作させる。制御部72は、変速条件が満たされる場合、人力駆動車10の変速比を変更するように変速装置42を動作させる。
【0054】
好ましくは、制御部72は、制御状態に応じて変速装置42を制御する。制御状態は、第1制御状態と、第1制御状態とは異なる第2制御状態と、を有する。制御部72は、制御状態が第1制御状態の場合、変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作させる。好ましくは、制御部72は、制御状態が第1制御状態の場合、人力駆動車10の走行状態に関する参照値RVを含む変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作させる。制御部72は、制御状態が第2制御状態の場合、操作部60への操作に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作させる。制御部72は、制御状態が第1制御状態の場合において、操作部60への操作に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成されてもよい。
【0055】
制御部72は、少なくとも1つの変速条件を有する。制御部72は、人力駆動車10の走行状態に関する参照値RVを含む変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作させる。参照値RVを含む変速条件とは、変速条件が参照値RVに関する条件であることを意味する。例えば、変速条件は、クランク軸26の回転速度に関する値を含む。
【0056】
好ましくは、変速条件は、参照値RVが所定範囲外の場合に満たされる。好ましくは、変速条件は、第1参照値RV1が所定範囲外の場合に満たされる。好ましくは、変速条件は、クランク軸26の回転速度が所定範囲外の場合に満たされる。例えば、制御部72は、クランク軸26の回転速度が所定範囲よりも大きくなると、変速比が大きくなるように変速装置42を制御する。例えば、制御部72は、クランク軸26の回転速度が所定範囲よりも小さくなると、変速比が小さくなるように変速装置42を制御する。
【0057】
本実施形態では、制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の参照値RVである収束参照値CRVに応じて、変速条件を変更する。好ましくは、記憶部74は、変更後の変速条件に関する情報を記憶可能に構成される。例えば、人力駆動車10に電源が入れられ、かつ、制御状態が第1制御状態の場合、制御部72は、記憶部74に記憶されている変速条件を用いて変速装置42を制御する。言い換えれば、運転収束状態は、人力駆動車10の走行が過渡状態ではない状態のことであり、人力駆動車10の走行が安定している状態のことである。
【0058】
好ましくは、収束参照値CRVは、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の第1参照値RV1である第1収束参照値CRV1と、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の第2参照値RV2である第2収束参照値CRV2と、を含む。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態にある場合のクランク軸26の回転速度に関する第1収束参照値CRV1、および、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の人力駆動車10のクランク24に付与される力に関する第2収束参照値CRV2のうち少なくとも1つに応じて、変速条件を変更する。好ましくは、制御部72は、第1収束参照値CRV1、および、第2収束参照値CRV2に応じて変速条件を変更可能に構成される。
【0059】
好ましくは、第1収束参照値CRV1は、人力駆動車10が運転収束状態にある場合のクランク軸26の回転速度の収束値である。好ましくは、第2収束参照値CRV2は、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の人力駆動車10のライダがクランク24に付与するトルクの収束値である。
【0060】
好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の走行を開始してからの第1期間、および、変速装置42による変速が行われてからの第2期間の少なくとも1つにおける収束参照値CRVによって、変速条件を変更しない。好ましくは、制御部72は、人力駆動車10の走行を開始してからの第1期間、および、変速装置42による変速が行われてからの第2期間の少なくとも1つに代えてまたは加えて、変速装置42による変速が行われる直前の第3期間の少なくとも1つにおける収束参照値CRVによって、変速条件を変更しない。制御部72は、例えば、人力駆動車10の走行を開始してからの第1期間、変速装置42による変速が行われてからの第2期間、および、変速装置42による変速が行われる直前の第3期間の少なくとも1つの期間において、運転収束状態と判定した場合、該当期間における収束参照値CRVによって変速条件を変更しない。制御部72は、例えば、人力駆動車10の走行を開始してからの第1期間、変速装置42による変速が行われてからの第2期間、および、変速装置42による変速が行われる直前の第3期間の少なくとも1つの期間である場合には運転収束状態ではないと判定し、その期間における参照値RVに基づく収束参照値CRVの計算をしなくてもよい。
【0061】
好ましくは、人力駆動車10が運転収束状態にある場合は、クランク軸26の回転速度が第1範囲A1内にある場合である。人力駆動車10が運転収束状態にある場合は、クランク軸26の回転速度が第2範囲A2内にある場合である。第1範囲A1と、第2範囲A2は同一の範囲である。本実施形態では、クランク軸26の回転速度を第1参照値RV1として説明する。
【0062】
図3、および、
図4を参照して、制御部72が実行する人力駆動車10の運転収束状態の判定処理について説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部72は、
図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0063】
ステップS11において、制御部72は、第1所定期間TN1にわたって第1参照値RV1を取得する。制御部72は、ステップS11において、取得した第1参照値RV1から、第1所定期間TN1における最大値MA1および最小値MB1を取得し、ステップS12に移行する。
【0064】
ステップS12において、制御部72は、最大値MA1と最小値MB1との差を算出し、最大値MA1と最小値MB1との差が第1範囲A1外か否かを判定する。最大値MA1と最小値MB1との差が第1範囲A1外である場合、制御部72は、ステップS13に移行する。ステップS13において、制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではないと判定し、処理を終了する。
【0065】
ステップS12において、最大値MA1と最小値MB1との差が第1範囲A1内である場合、制御部72は、ステップS14に移行する。ステップS14において、制御部72は、第1所定期間TN1よりも長い第2所定期間TN2が経過するまで、第1参照値RV1を取得する。ステップS14において、制御部72は、第2所定期間TN2における第1参照値RV1の最大値MA2および最小値MB2を取得し、ステップS15に移行する。
【0066】
ステップS15において、制御部72は、最大値MA2と最小値MB2との差を算出し、最大値MA2と最小値MB2との差が第1範囲A1外か否かを判定する。最大値MA2と最小値MB2との差が第1範囲A1外の場合、制御部72は、ステップS13に移行する。ステップS13において、制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではないと判定し、処理を終了する。
【0067】
ステップS15において、最大値MA2と最小値MB2との差が第1範囲A1内の場合、制御部72は、ステップS16に移行する。ステップS16において、制御部72は、第2所定期間TN2よりも長い第3所定期間TN3が経過するまで、第1参照値RV1を取得する。ステップS16において、制御部72は、第3所定期間TN3における第1参照値RV1の最大値MA3および最小値MB3を取得し、ステップS17に移行する。
【0068】
ステップS17において、制御部72は、最大値MA3と最小値MB3との差を算出し、最大値MA3と最小値MB3との差が第1範囲A1外か否かを判定する。最大値MA3と最小値MB3との差が第1範囲A1外の場合、制御部72は、ステップS13に移行する。ステップS13において、制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではないと判定し、処理を終了する。
【0069】
ステップS17において、最大値MA3と最小値MB3との差が第1範囲A1内の場合、制御部72は、ステップS18に移行する。ステップS18において、制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態であると判定し、処理を終了する。
【0070】
図4に示すように、制御部72は、第3所定期間TN3にわたって、最大値MAと最小値MBとの差が第1範囲A1内である状態を、運転収束状態と定義する。運転収束状態の場合、制御部72は、第1収束参照値CRV1および第2収束参照値CRV2を取得する。好ましくは、運転収束状態の場合であっても、制御部72は、人力駆動車10の走行を開始してからの第1期間、変速装置42による変速が行われてからの第2期間、および、変速装置42による変速が行われる直前の第3期間の少なくとも1つにおける収束参照値CRVを取得しない。制御部72は、人力駆動車10の走行を開始してからの第1期間、変速装置42による変速が行われてからの第2期間、および、変速装置42による変速が行われる直前の第3期間の少なくとも1つは、運転収束状態ではないと判定するようにしてもよい。
【0071】
制御部72は、
図3および
図4に示される方法以外によって、運転収束状態を定義してもよい。制御部72は、各種演算において、参照値RVの移動平均値、および、分散値等を用いてもよい。制御部72は、参照値RVの移動平均または分散値に応じて収束参照値CRVを算出してもよい。例えば、参照値RVの移動平均が所定値平均範囲内の場合、参照値RVが運転収束状態にあると判定し、最新の参照値RVの移動平均を収束参照値CRVとする。例えば、参照値RVの分散値が所定の範囲内の場合、参照値RVが運転収束状態にあると判定し、最新の参照値RV、または、直近の複数回の参照値RVの検出値の平均値を収束参照値CRVとする。
【0072】
好ましくは、制御部72は、第1モード、および、第1モードとは異なる第2モードを含む制御状態に応じて人力駆動車用のコンポーネント50を制御可能に構成される。
【0073】
コンポーネント50がモータ52を含む場合、例えば、第1モードおよび第2モードは、モータ52によるアシストレベル、モータ52の出力の最大値、モータ52の出力、および、人力駆動車10に入力される人力駆動力に対するモータ52の出力の応答速度、の少なくとも1つが相互に異なる。
【0074】
制御部72は、例えば、モータ52によるアシストレベルが、予め定めるアシストレベルになるようにモータ52を制御するように構成される。アシストレベルは、人力駆動力に対するモータ52によるアシスト力の比率、または、クランク軸26の回転速度に対するモータ52によるアシスト力の比率を含む。人力駆動力に対するモータ52によるアシスト力の比率を、アシスト比率と記載する場合がある。アシスト比率は、人力駆動車10の人力トルクに対するアシストトルクのトルク比率であってもよく、人力仕事率に対するモータ52によるアシスト仕事率の比率であってもよい。
【0075】
制御部72は、アシスト力が最大値以下になるようにモータ52を制御するように構成される。モータ52の出力が第1回転体34に入力され、かつ、アシスト力がトルクによって表される場合、制御部72は、アシストトルクが最大値以下になるようにモータ52を制御するように構成される。好ましくは、最大値は、20Nm以上200Nm以下の範囲の値である。最大値は、例えば、モータ52の出力特性によって決定される。モータ52の出力が第1回転体34に入力され、かつ、アシスト力が仕事率によって表される場合、制御部72は、アシスト仕事率が最大値以下になるようにモータ52を制御するように構成される。
【0076】
好ましくは、モータ52の応答速度は、人力駆動力またはクランク軸26の回転速度が増加する場合における第1応答速度と、人力駆動力またはクランク軸26の回転速度が減少する場合における第2応答速度との少なくとも1つを含む。モータ52の応答速度は、モータ52の制御パラメータの単位時間当たりの変化量に対するモータ52の出力の単位時間当たりの変化量によって表される。
【0077】
制御部72は、例えば、第1フィルタによって第1応答速度を変更する。第1フィルタは、例えば、第1時定数を有するローパスフィルタを含む。制御部72は、第1フィルタの第1時定数を変更することによって第1応答速度を変更する。制御部72は、人力駆動力からモータ52の出力を算出するためのゲインを変更することによって第1応答速度を変更するようにしてもよい。第1フィルタは、例えば、演算処理装置において予め定めるソフトウェアを実行することによって構成される。
【0078】
制御部72は、例えば、第2フィルタによって第2応答速度を変更する。第2フィルタは、例えば、第2時定数を有するローパスフィルタを含む。制御部72は、第2フィルタの第2時定数を変更することによって第2応答速度を変更する。制御部72は、人力駆動力からモータ52の出力を算出するためのゲインを変更することによって第2応答速度を変更するようにしてもよい。第2フィルタは、例えば、演算処理装置において予め定めるソフトウェアを実行することによって構成される。
【0079】
制御部72は、人力駆動車10の車種、および、人力駆動車10の車輪12のサイズの少なくとも1つに応じて第1モードと、第2モードとを切り替えてもよい。例えば、記憶部74には、第1モードにおいて用いられる情報と、第2モードにおいて用いられる情報とが記憶される。好ましくは、制御部72は、外部装置からの入力信号、または、人力駆動車10に設けられるモード切り替え操作部への操作によって第1モードと第2モードとを切り替え可能に構成される。第1モードと、第2モードとは、ライダが変更するように構成されてもよく、出荷時に第1モードと第2モードとのいずれかが選択されていてもよい。この場合、コンポーネント50は、例えば、モータ52、変速装置42、ブレーキ装置、アジャスタブルシートポスト、サスペンション装置、および、サイクルコンピュータの少なくとも1つを含む。
【0080】
コンポーネント50が変速装置42を含む場合、第1モードおよび第2モードは、第2制御状態において設けられるモードであってもよい。この場合、第1モードおよび第2モードごとに変速条件が設定される。例えば、第1モードの変速条件は、第2モードの変速条件と異なる。この場合、第1モードおよび第2モードは、例えば、人力駆動車10の走行路の環境等に対応付けられるモードである。走行路の環境は、例えば、山道、街中、および、レース用のコース等である。
【0081】
図5を参照して、
図2の制御装置70が実行するコンポーネント50の制御の一例について説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図5に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部72は、
図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0082】
ステップS21において、制御部72は、制御状態の切り替え要求があるか否かを判定する。例えば、制御部72は、人力駆動車10のライダが制御状態を切り替える制御状態切り替え操作部を操作する場合、制御状態の切り替え要求があると判定する。制御状態の切り替え要求がない場合、制御部72は、処理を終了する。制御状態の切り替え要求がある場合、制御部72はステップS22に移行する。
【0083】
制御部72は、ステップS22において、制御状態が第1モードか否かを判定する。制御状態が第1モードである場合、制御部72は、ステップS23に移行する。制御部72は、ステップS23において、制御状態を第2モードに切り替え、第2モードにおいてコンポーネント50を制御して、処理を終了する。
【0084】
制御部72は、ステップS22において、制御状態が第1モードではない場合、ステップS24に移行する。制御部72は、ステップS24において制御状態を第1モードに切り替え、第1モードにおいてコンポーネント50を制御して、処理を終了する。
【0085】
制御部72は、制御状態が第2制御状態の場合の収束参照値CRVに応じて、変速条件を変更する。好ましくは、制御部72は、制御状態が第2制御状態の場合の第1収束参照値CRV1、および、制御状態が第2制御状態の場合の第2収束参照値CRV2のうち少なくとも1つに応じて、変速条件を変更する。
【0086】
本実施形態では、制御部72は、第1変速条件および第2変速条件を含む変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成される。制御部72は、制御状態が第1モードの場合、第1変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成される。制御部72は、制御状態が第2モードの場合、第2変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成される。
【0087】
制御部72は、制御状態が第1モードの場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合、の人力駆動車10の走行状態に関する参照値RVである収束参照値CRVAに応じて、第1変速条件を変更する。制御部72は、制御状態が第2モードの場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合、の参照値RVである収束参照値CRVBに応じて、第2変速条件を変更する。収束参照値CRVAは、制御状態が第1モードの場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の参照値RVの値である。収束参照値CRVBは、制御状態が第2モードの場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の参照値RVの値である。収束参照値CRVAは、収束参照値CRVBと異なる値であってもよく、同一の値であってもよい。好ましくは、収束参照値CRVAおよび収束参照値CRVBは、第1収束参照値CRV1である。
【0088】
図6および
図7を参照して、
図2の制御部72が実行する制御の一例について説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図6に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部72は、
図6および
図7のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS31からの処理を繰り返す。
【0089】
制御部72は、ステップS31において、制御状態が第1制御状態であるか否かを判定する。ステップS31において、制御状態が第1制御状態である場合、制御部72はステップS32に移行する。制御部72は、ステップS32において、制御状態が第1モードか否かを判定する。ステップS32において、制御状態が第1モードである場合、制御部72は、ステップS33に移行する。
【0090】
制御部72は、ステップS33において、人力駆動車10が運転収束状態であるか否かを判定する。ステップS33において、制御部72は、
図3および
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではない場合、ステップS35に移行する。ステップS33において、人力駆動車10が運転収束状態の場合、制御部72は、ステップS34に移行する。
【0091】
制御部72は、ステップS34において、収束参照値CRVAに応じて第1変速条件を変更し、ステップS35に移行する。制御部72は、ステップS35において、第1変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、第1変速条件が満たされない場合、ステップS37に移行する。第1変速条件が満たされる場合、制御部72は、ステップS36に移行する。制御部72は、ステップS36において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0092】
制御部72は、ステップS37において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS37において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0093】
ステップS37において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS38に移行する。制御部72は、ステップS38において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0094】
制御部72は、ステップS32において、制御状態が第1モードではない場合、ステップS39に移行する。制御部72は、ステップS39において、制御状態が第2モードであるか否かを判定する。ステップS39において制御状態が第2モードである場合、制御部72は、ステップS40に移行する。
【0095】
制御部72は、ステップS40において、人力駆動車10が運転収束状態であるか否かを判定する。ステップS40において、制御部72は、
図3、および、
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではない場合、ステップS42に移行する。人力駆動車10が運転収束状態である場合、制御部72は、ステップS41に移行する。
【0096】
制御部72は、ステップS41において、収束参照値CRVBに応じて第2変速条件を変更し、ステップS42に移行する。制御部72は、ステップS42において、第2変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、第2変速条件が満たされない場合、ステップS44に移行する。第2変速条件が満たされる場合、制御部72は、ステップS43に移行する。制御部72は、ステップS43において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0097】
制御部72は、ステップS44において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS44において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0098】
ステップS44において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS45に移行する。制御部72は、ステップS45において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0099】
制御部72は、ステップS39において、制御状態が第2モードでない場合、処理を終了する。例えば、制御状態は、第1モード、および、第2モードとは異なるモードを含んでいてもよい。制御状態が、第1モード、および、第2モードとは異なるモードを含み、かつ、ステップS39において否定判定の場合、制御部72は、制御状態が第1モード、および、第2モードとは異なるモードであるか否かを判定してもよい。制御状態が第1モード、および、第2モードとは異なるモードであると判定される場合、制御部72は、ステップS33からステップS38、または、ステップS40からステップS45と同様の処理を行ってもよい。制御状態が第1モードおよび第2モードのみを含む場合、ステップS39の処理を省略し、ステップS32において第1モードではないと判定される場合、制御部72は、ステップS40に移行するようにしてもよい。
【0100】
制御部72は、ステップS31において、制御状態が第1制御状態ではない場合、
図7のステップS46に移行する。制御部72は、ステップS46において、制御状態が第2制御状態であるか否かを判定する。
【0101】
ステップS46において、制御状態が第2制御状態である場合、制御部72は、ステップS47に移行する。制御部72は、ステップS47において、制御状態が第1モードであるか否かを判定する。ステップS47において、制御状態が第1モードの場合、制御部72は、ステップS48に移行する。
【0102】
制御部72は、ステップS48において、人力駆動車10が運転収束状態か否かを判定する。ステップS48において、制御部72は、
図3および
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。ステップS48において、人力駆動車10が運転収束状態でない場合、制御部72は、ステップS50に移行する。ステップS48において、人力駆動車10が運転収束状態である場合、制御部72は、ステップS49に移行する。
【0103】
制御部72は、ステップS49において、収束参照値CRVAに応じて第1変速条件を変更し、ステップS50に移行する。制御部72は、ステップS50において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS50において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0104】
ステップS50において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS51に移行する。制御部72は、ステップS51において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0105】
制御部72は、ステップS47において、制御状態が第1モードではない場合、ステップS52に移行する。制御部72は、ステップS52において、制御状態が第2モードであるか否かを判定する。ステップS52で第2モードの場合、制御部72は、ステップS53に移行する。
【0106】
制御部72は、ステップS53において、人力駆動車10が運転収束状態であるか否かを判定する。ステップS53において、制御部72は、
図3および
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。ステップS53において、人力駆動車10が運転収束状態でない場合、制御部72は、ステップS55に移行する。人力駆動車10が運転収束状態の場合、制御部72は、ステップS54に移行する。
【0107】
制御部72は、ステップS54において、収束参照値CRVBに応じて第2変速条件を変更し、ステップS55に移行する。制御部72は、ステップS55において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS55において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0108】
ステップS55において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0109】
制御部72は、ステップS52において、制御状態が第2モードでないと判定される場合、処理を終了する。制御状態が、第1モード、および、第2モードとは異なるモードを含み、かつ、ステップS52において否定判定の場合、制御部72は、制御状態が第1モード、および、第2モードとは異なるモードであるか否かを判定してもよい。制御状態が、第1モード、および、第2モードとは異なるモードの場合、制御部72は、ステップS48からステップS51、または、ステップS53からステップS56と同様の処理を行ってもよい。制御状態が第1モードおよび第2モードのみを含む場合、ステップS52の処理を省略し、ステップS47において第1モードではないと判定される場合、制御部72は、ステップS53に移行するようにしてもよい。
【0110】
制御部72は、ステップS46において、制御状態が第2制御状態ではないと判定される場合、処理を終了する。制御状態は、第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態を含んでいてもよい。制御状態が、第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態を含み、かつ、ステップS46において否定判定の場合、制御部72は、制御状態が第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態であるか否かを判定してもよい。第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態の場合、制御部72は、ステップS32からステップS45、または、ステップS47からS56と同様の処理を行ってもよい。制御状態が第1制御状態および第2制御状態のみを含む場合、ステップS46の処理を省略し、ステップS31において第1制御状態ではないと判定される場合、制御部72は、ステップS47に移行するようにしてもよい。
【0111】
制御部72は、収束参照値CRVに応じて所定範囲を変更することによって変速条件を変更する。好ましくは、制御部72は、第1収束参照値CRV1に応じて所定範囲を変更することによって変速条件を変更する。好ましくは、制御部72は、所定範囲の上限値および下限値の少なくとも1つを変更することによって、所定範囲を変更する。好ましくは、制御部72は、所定範囲の上限値および下限値の両方を変更することによって所定範囲を変更する。好ましくは、制御部72は、所定範囲の大きさを変更せずに、所定範囲の上限値および下限値を変更する。
【0112】
制御部72は、収束参照値CRVと、所定範囲に含まれる第1所定値と、の差D、に応じて所定範囲を規定する規定値を所定変更値だけ変更する。好ましくは、制御部72は、第1収束参照値CRV1と、所定範囲に含まれる第1所定値と、の差D、に応じて所定範囲を規定する規定値を所定変更値だけ変更する。規定値は、所定範囲の上限値および下限値の少なくとも1つを含む。好ましくは、規定値は、所定範囲の上限値および下限値の両方を含む。制御部72は、所定範囲の上限値および下限値を所定変更値だけ変更することによって、所定範囲を変更する。第1所定値は、例えば、所定範囲の中央値である。
【0113】
好ましくは、制御部72は、所定範囲の中央値が収束参照値CRVに近づくように、所定範囲を変更する。例えば、収束参照値CRVが、所定範囲の中央値よりも大きい場合、制御部72は、規定値を所定変更値だけ増加させる。例えば、収束参照値CRVが、所定範囲の中央値よりも小さい場合、制御部72は、規定値を所定変更値だけ減少させる。
【0114】
制御部72は、差Dの絶対値が第1差D1以上である場合、規定値を第1変更値ずつ変更する。制御部72は、例えば、差Dの絶対値が第1差D1以上である場合、規定値を第1変更値ずつ所定変更値になるまで変更する。第1変更値は任意に設定可能である。第1変更値は、例えば、所定範囲がケイデンスと対応する場合、1rpm以上の数値である。
【0115】
制御部72は、差Dの絶対値が第1差D1よりも大きい第2差D2以上である場合、規定値を第1変更値よりも大きい第2変更値ずつ変更する。制御部72は、例えば、差Dの絶対値が第1差D1よりも大きい第2差D2以上である場合、規定値を第1変更値よりも大きい第2変更値ずつ所定変更値になるまで変更する。第2変更値は任意に設定可能である。第2変更値は、例えば、所定範囲がケイデンスと対応する場合、2rpm以上の数値である。
【0116】
制御部72は、差Dの絶対値が第1差D1よりも小さい第3差D3以内である場合、変速条件を変更しない。所定変更値は、第1変更値、および、第2変更値とは異なる変更値を含んでいてもよい。好ましくは、第1差D1、および、第3差D3は整数である。第1差D1および第3差D3は同一の数値であってもよい。
【0117】
好ましくは、制御部72は、第2収束参照値CRV2に応じて、所定変更値を変更する。制御部72は、第1差D1、第2差D2、および、第3差D3の少なくとも1つを、第2収束参照値CRV2に応じて変更する。制御部72は、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1内の場合、第2収束参照値CRV2に応じて、所定変更値を変更しない。好ましくは、第1範囲B1は、15Nm以上、かつ、40Nm以下である。第1範囲B1は、例えば、ライダの負荷が適切な負荷か否かを判定可能な範囲が設定される。
【0118】
収束参照値CRVが、第1モードの収束参照値CRVA、および、第2モードの収束参照値CRVBを含む場合、制御部72は、第1モードの場合、第1モードの収束参照値CRVAに応じて、第1変速条件の所定範囲を変更し、第2モードの収束参照値CRVBに応じて第2変速条件の所定範囲を変更する。
【0119】
図8および
図9を参照して、
図2の制御部72が実行する変速条件の変更処理の一例を説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図8に示すフローチャートのステップS61に移行する。制御部72は、
図8および
図9のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS61からの処理を繰り返す。
【0120】
制御部72は、ステップS61において、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1内であるか否かを判定する。第2収束参照値CRV2が第1範囲B1内である場合、制御部72は、ステップS62に移行する。
【0121】
制御部72は、ステップS62において、差Dの絶対値が第3差D3以内か否かを判定する。ステップS62において、差Dの絶対値が第3差D3以内の場合、制御部72は、処理を終了する。ステップS62において、差Dの絶対値が第3差D3より大きい場合、制御部72は、ステップS63に移行する。
【0122】
制御部72は、ステップS63において、差Dの絶対値が第1差D1以上か否かを判定する。ステップS63において、差Dの絶対値が第1差D1より小さい場合、制御部72は、処理を終了する。
【0123】
ステップS63において、差Dの絶対値が第1差D1以上の場合、制御部72は、ステップS64に移行する。制御部72は、ステップS64において、差Dの絶対値が第2差D2以上か否かを判定する。
【0124】
ステップS64において、差Dの絶対値が第2差D2以上の場合、制御部72は、ステップS65に移行する。制御部72は、ステップS65において、規定値を第2変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0125】
制御部72は、ステップS64において、差Dの絶対値が第2差D2よりも小さい場合、ステップS66に移行する。制御部72は、ステップS66において、規定値を第1変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0126】
ステップS61において、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1外の場合、制御部72は、
図9に示す、ステップS67に移行する。制御部72は、ステップS67において、第2収束参照値CRV2に応じて第1所定値を変更し、ステップS68に移行する。制御部72は、例えば、第1所定値を、第2所定値だけ変更する。制御部72は、ステップS67において第1所定値を変更する場合、所定範囲は変更しない。制御部72は、ステップS68において、第2所定値を変更せずに、第2収束参照値CRV
2に応じて、第1差D1、第2差D2、および、第3差D3を変更してもよい。
【0127】
制御部72は、ステップS68において、差Dの絶対値が第3差D3以内か否かを判定する。ステップS68において、差Dの絶対値が第3差D3以内の場合、制御部72は、処理を終了する。ステップS68において、差Dの絶対値が第3差D3より大きい場合、制御部72は、ステップS69に移行する。
【0128】
制御部72は、ステップS69において、差Dの絶対値が第1差D1以上か否かを判定する。ステップS69において、差Dの絶対値が第1差D1より小さい場合、制御部72は、処理を終了する。
【0129】
ステップS69において、差Dの絶対値が第1差D1以上の場合、制御部72は、ステップS70に移行する。制御部72は、ステップS70において、差Dの絶対値が第2差D2以上か否かを判定する。
【0130】
ステップS70において、差Dの絶対値が第2差D2以上である場合、制御部72は、ステップS71に移行する。制御部72は、ステップS71において、規定値を第2変更値ずつ変更し、処理を終了する。第2変更値は任意に設定可能である。
【0131】
制御部72は、ステップS70において、差Dの絶対値が第2差D2よりも小さい場合、ステップS72に移行する。制御部72は、ステップS72において、規定値を第1変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0132】
<第2実施形態>
図10および
図11を参照して、第2実施形態の人力駆動車用の制御装置70について説明する。第2実施形態の人力駆動車用の制御装置70は、第1実施形態の人力駆動車用の制御装置70と共通する構成を含むため、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0133】
変速条件は、人力駆動車10の運動状態ごとに設定される。制御部72は、第3変速条件および第4変速条件を含む変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成される。
【0134】
制御部72は、人力駆動車10の運動状態が第1運動状態の場合、第3変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成される。制御部72は、人力駆動車10の運動状態が第1運動状態とは異なる第2運動状態の場合、第4変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を動作可能に構成される。
【0135】
制御部72は、人力駆動車10の運動状態が第1運動状態の場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合、の人力駆動車10の走行状態に関する参照値RVである収束参照値CRVXに応じて、第3変速条件を変更する。制御部72は、人力駆動車10の運動状態が第2運動状態の場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合、の参照値RVである収束参照値CRVYに応じて、第4変速条件を変更する。
【0136】
例えば、運動状態は、人力駆動車10に入力される人力駆動力を含む。運動状態が人力駆動車10に入力される人力駆動力を含む場合、人力駆動車10は人力駆動力検出部58を備える。運動状態が人力駆動車10の姿勢に関するパラメータを含み、姿勢に関するパラメータが人力駆動車10の加速度を含む場合、人力駆動車10は車速検出部、および、加速度検出部の少なくとも1つをさらに備える。人力駆動車10が車速検出部を有する場合、車速検出部が検出する車速から加速度を演算する。
【0137】
例えば、運動状態は、人力駆動車10の姿勢を含む。制御部72は、人力駆動車10の姿勢に関するパラメータに応じて変速条件を変更し、パラメータは、人力駆動車10の加速度、人力駆動車10のピッチ角度、人力駆動車10のロール角度、および、人力駆動車10のヨー角度の少なくとも1つを含む。
【0138】
運動状態が人力駆動車10の姿勢に関するパラメータを含み、姿勢に関するパラメータが人力駆動車10のピッチ角度、人力駆動車10のロール角度、および、人力駆動車10のヨー角度の少なくとも1つを含む場合、人力駆動車10は姿勢角検出部をさらに備える。姿勢角検出部は、人力駆動車10のピッチ角度、人力駆動車10のロール角度、および、人力駆動車10のヨー角度の少なくとも1つを、人力駆動車10の車体14の進行方向に対する傾斜角度によって検出できる。
【0139】
運動状態が第1運動状態の場合は、例えば、運動状態に関するパラメータが第1所定範囲内にある場合と対応する。運動状態が第2運動状態の場合は、例えば、運動状態に関するパラメータが第1所定範囲とは異なる第2所定範囲内にある場合と対応する。
【0140】
収束参照値CRVXは、運動状態が第1運動状態の場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の参照値RVの値である。収束参照値CRVYは、運動状態が第2運動状態の場合、かつ、人力駆動車10が運転収束状態にある場合の参照値RVの値である。収束参照値CRVXは、収束参照値CRVYと異なる値であってもよく、同一の値であってもよい。好ましくは、収束参照値CRVXおよび収束参照値CRVYは、第1収束参照値CRV1である。
【0141】
収束参照値CRVが、第1運動状態の収束参照値CRVX、および、第2運動状態の収束参照値CRVYを含む場合、制御部72は、第1運動状態の場合、第1運動状態の収束参照値CRVXに応じて、第3変速条件の所定範囲を変更し、第2運動状態の収束参照値CRVYに応じて第4変速条件の所定範囲を変更する。
【0142】
図10および
図11を参照して、
図2の制御部72が実行する制御の一例について説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図10に示すフローチャートのステップS81に移行する。制御部72は、
図10および
図11のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS81からの処理を繰り返す。
【0143】
制御部72は、ステップS81において、制御状態が第1制御状態であるか否かを判定する。ステップS81において、制御状態が第1制御状態である場合、制御部72はステップS82に移行する。制御部72は、ステップS82において、運動状態が第1運動状態か否かを判定する。ステップS82において、運動状態が第1運動状態である場合、制御部72は、ステップS83に移行する。
【0144】
制御部72は、ステップS83において、人力駆動車10が運転収束状態であるか否かを判定する。ステップS83において、制御部72は、
図3および
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではない場合、ステップS85に移行する。ステップS83において、人力駆動車10が運転収束状態の場合、制御部72は、ステップS84に移行する。
【0145】
制御部72は、ステップS84において、収束参照値CRVXに応じて第3変速条件を変更し、ステップS85に移行する。制御部72は、ステップS85において、第3変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、第3変速条件が満たされない場合、ステップS87に移行する。第3変速条件が満たされる場合、制御部72は、ステップS86に移行する。制御部72は、ステップS86において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0146】
制御部72は、ステップS87において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS87において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0147】
ステップS87において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS88に移行する。制御部72は、ステップS88において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0148】
制御部72は、ステップS82において、運動状態が第1運動状態ではない場合、ステップS89に移行する。制御部72は、ステップS89において、運動状態が第2運動状態であるか否かを判定する。ステップS89において運動状態が第2運動状態である場合、制御部72は、ステップS90に移行する。
【0149】
制御部72は、ステップS90において、人力駆動車10が運転収束状態であるか否かを判定する。ステップS90において、制御部72は、
図3、および、
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。制御部72は、人力駆動車10が運転収束状態ではない場合、ステップS92に移行する。人力駆動車10が運転収束状態である場合、制御部72は、ステップS91に移行する。
【0150】
制御部72は、ステップS91において、収束参照値CRVYに応じて第4変速条件を変更し、ステップS92に移行する。制御部72は、ステップS92において、第4変速条件が満たされるか否かを判定する。制御部72は、第4変速条件が満たされない場合、ステップS94に移行する。第4変速条件が満たされる場合、制御部72は、ステップS93に移行する。制御部72は、ステップS93において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0151】
制御部72は、ステップS94において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS94において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0152】
ステップS94において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS95に移行する。制御部72は、ステップS95において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0153】
制御部72は、ステップS89において、運動状態が第2運動状態でない場合、処理を終了する。例えば、運動状態は、第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態を含んでいてもよい。運動状態が、第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態を含み、かつ、ステップS89において否定判定の場合、制御部72は、運動状態が第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態であるか否かを判定してもよい。運動状態が第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態であると判定される場合、制御部72は、ステップS83からステップS88、または、ステップS90からステップS95と同様の処理を行ってもよい。運動状態が第1運動状態および第2運動状態のみを含む場合、ステップS89の処理を省略し、ステップS82において第1運動状態ではないと判定される場合、制御部72は、ステップS90に移行するようにしてもよい。
【0154】
制御部72は、ステップS
81において、制御状態が第1制御状態ではない場合、
図11のステップS96に移行する。制御部72は、ステップS96において、制御状態が第2制御状態であるか否かを判定する。
【0155】
ステップS96において、制御状態が第2制御状態である場合、制御部72は、ステップS97に移行する。制御部72は、ステップS97において、運動状態が第1運動状態であるか否かを判定する。ステップS97において、運動状態が第1運動状態の場合、制御部72は、ステップS98に移行する。
【0156】
制御部72は、ステップS98において、人力駆動車10が運転収束状態か否かを判定する。ステップS98において、制御部72は、
図3および
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。ステップS98において、人力駆動車10が運転収束状態ではない場合、制御部72は、ステップS100に移行する。ステップS98において、人力駆動車10が運転収束状態である場合、制御部72は、ステップS99に移行する。
【0157】
制御部72は、ステップS99において、収束参照値CRVXに応じて第3変速条件を変更し、ステップS100に移行する。制御部72は、ステップS100において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS100において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0158】
ステップS100において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS101に移行する。制御部72は、ステップS101において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0159】
制御部72は、ステップS97において、運動状態が第1運動状態ではない場合、ステップS102に移行する。制御部72は、ステップS102において、運動状態が第2運動状態であるか否かを判定する。ステップS102で第2運動状態の場合、制御部72は、ステップS103に移行する。
【0160】
制御部72は、ステップS103において、人力駆動車10が運転収束状態であるか否かを判定する。ステップS103において、制御部72は、
図3および
図4の処理によって、運転収束状態を判定する。ステップS103において、人力駆動車10が運転収束状態ではない場合、制御部72は、ステップS105に移行する。人力駆動車10が運転収束状態の場合、制御部72は、ステップS104に移行する。
【0161】
制御部72は、ステップS104において、収束参照値CRVYに応じて第4変速条件を変更し、ステップS105に移行する。制御部72は、ステップS105において、操作部60への操作があるか否かを判定する。ステップS105において、操作部60への操作がない場合、制御部72は、処理を終了する。
【0162】
ステップS105において、操作部60への操作がある場合、制御部72は、ステップS106に移行する。制御部72は、ステップS106において、変速比を変更するように変速装置42を動作させ、処理を終了する。
【0163】
制御部72は、ステップS102において、制御状態が第2モードでないと判定される場合、処理を終了する。運動状態が、第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態を含み、かつ、ステップS102において否定判定の場合、制御部72は、運動状態が第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態であるか否かを判定してもよい。運動状態が、第1運動状態、および、第2運動状態とは異なる運動状態の場合、制御部72は、ステップS98からステップS101、または、ステップS103からステップS106と同様の処理を行ってもよい。運動状態が第1運動状態および第2運動状態のみを含む場合、ステップS102の処理を省略し、ステップS97において第1運動状態ではないと判定される場合、制御部72は、ステップS103に移行するようにしてもよい。
【0164】
制御部72は、ステップS96において、制御状態が第2制御状態ではないと判定される場合、処理を終了する。制御状態は、第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態を含んでいてもよい。制御状態が、第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態を含み、かつ、ステップS96において否定判定の場合、制御部72は、制御状態が第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態であるか否かを判定してもよい。第1制御状態、および、第2制御状態とは異なる制御状態の場合、制御部72は、ステップS82からステップS95、または、ステップS97からS106と同様の処理を行ってもよい。制御状態が第1制御状態および第2制御状態のみを含む場合、ステップS96の処理を省略し、ステップS81において第1制御状態ではないと判定される場合、制御部72は、ステップS97に移行するようにしてもよい。
【0165】
<第3実施形態>
図8、
図12、および、
図13を参照して、第3実施形態の人力駆動車用の制御装置70について説明する。第3実施形態の人力駆動車用の制御装置70は、第1実施形態の人力駆動車用の制御装置70、および、第2実施形態の人力駆動車用の制御装置70と共通する構成を含むため、第1実施形態、および、第2実施形態と共通する構成については、第1実施形態、および、第2実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0166】
制御部72は、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1よりも大きい場合と、第1範囲B1よりも小さい場合とにおいて、第2所定値を異ならせるようにしてもよい。第2収束参照値CRV2が第1範囲B1よりも大きい場合の第2所定値は、第3所定値である。第2収束参照値CRV2が第1範囲B1よりも小さい場合の第2所定値は、第4所定値である。好ましくは、第3所定値は、負の値であり、第4所定値は正の値である。
【0167】
例えば、第1参照値RV1がケイデンスであり、第2参照値RV2が人力駆動力によってクランク24に付与されるトルクである場合、第2収束参照値CRV2であるトルクの収束値が第1範囲B1よりも大きい場合には、制御部72は第1収束参照値CRV1との比較に用いられる第1所定値であり、ケイデンスと対応する第1所定値が小さくなるように変更する。言い換えれば、トルクが大きい場合には、制御部72は相対的に小さい第1所定値と第1収束参照値CRV1とを比較する。
【0168】
例えば、第1参照値RV1がケイデンスであり、第2参照値RV2が人力駆動力によってクランク24に付与されるトルクである場合、第2収束参照値CRV2であるトルクの収束値が第1範囲B1よりも小さい場合には、制御部72は第1収束参照値CRV1との比較に用いられる第1所定値であり、ケイデンスと対応する第1所定値が大きくなるように変更する。言い換えれば、トルクが小さい場合には、制御部72は相対的に大きい第1所定値と第1収束参照値CRV1とを比較する。
【0169】
所定範囲がケイデンスと対応する場合、好ましくは、第3所定値は、-15rpm以上、0rpm以下であり、より好ましくは、第3所定値は、-13rpm以上、-2rpm以下であり、より好ましくは、第3所定値は、-8rpm以上、-4rpm以下である。所定範囲がケイデンスと対応する場合、例えば、第3所定値は、-6rpmである。
【0170】
所定範囲がケイデンスと対応する場合、好ましくは、第4所定値は、0rpm以上、15rpm以下であり、より好ましくは、第4所定値は、2rpm以上、13rpm以下であり、より好ましくは、第4所定値は、4rpm以上、8rpm以下である。所定範囲がケイデンスと対応する場合、例えば、第4所定値は、6rpmである。
【0171】
図8、
図12、および、
図13を参照して、
図2の制御部72が実行する変速条件の変更処理の一例を説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図8に示すフローチャートのステップS61に移行する。制御部72は、
図8、
図12、および、
図13のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS61からの処理を繰り返す。
【0172】
制御部72は、ステップS61において、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1内であるか否かを判定する。第2収束参照値CRV2が第1範囲B1内である場合、制御部72は、ステップS62に移行する。第2収束参照値CRV2が第1範囲B1外の場合、制御部72は、
図12に示す、ステップS111に移行する。
【0173】
制御部72は、ステップS111において、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1よりも大きいか否かを判定する。ステップS111において、第2収束参照値CRV2が第1範囲B1よりも大きい場合、制御部72は、ステップS112に移行する。
【0174】
制御部72は、ステップS112において、第1所定値を第3所定値だけ変更し、ステップS113に移行する。
【0175】
制御部72は、ステップS113において、差Dの絶対値が第3差D3以内か否かを判定する。ステップS113において、差Dの絶対値が第3差D3以内の場合、制御部72は、処理を終了する。ステップS113において、差Dの絶対値が第3差D3より大きい場合、制御部72は、ステップS114に移行する。
【0176】
制御部72は、ステップS114において、差Dの絶対値が第1差D1以上か否かを判定する。ステップS114において、差Dの絶対値が第1差D1より小さい場合、制御部72は、処理を終了する。
【0177】
ステップS114において、差Dの絶対値が第1差D1以上の場合、制御部72は、ステップS115に移行する。制御部72は、ステップS115において、差Dの絶対値が第2差D2以上か否かを判定する。
【0178】
ステップS115において、差Dの絶対値が第2差D2以上の場合、制御部72は、ステップS116に移行する。制御部72は、ステップS116において、規定値を第2変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0179】
制御部72は、ステップS115において、差Dの絶対値が第2差D2よりも小さい場合、ステップS117に移行する。制御部72は、ステップS117において、規定値を第1変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0180】
ステップS111において、第2収束参照値CRV2が第1範囲
B1よりも小さい場合、制御部72は、
図13のステップS118に移行する。制御部72は、ステップS118において、第1所定値を第4所定値だけ変更し、ステップS119に移行する。
【0181】
制御部72は、ステップS119において、差Dの絶対値が第3差D3以内か否かを判定する。ステップS119において、差Dの絶対値が第3差D3以内の場合、制御部72は、処理を終了する。ステップS119において、差Dの絶対値が第3差D3より大きい場合、制御部72は、ステップS120に移行する。
【0182】
制御部72は、ステップS120において、差Dの絶対値が第1差D1以上か否かを判定する。ステップS120において、差Dの絶対値が第1差D1より小さい場合、制御部72は、処理を終了する。
【0183】
ステップS120において、差Dの絶対値が第1差D1以上の場合、制御部72は、ステップS121に移行する。制御部72は、ステップS121において、差Dの絶対値が第2差D2以上か否かを判定する。
【0184】
ステップS121において、差Dの絶対値が第2差D2以上である場合、制御部72は、ステップS122に移行する。制御部72は、ステップS122において、規定値を第2変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0185】
制御部72は、ステップS121において、差Dの絶対値が第2差D2よりも小さい場合、ステップS123に移行する。制御部72は、ステップS123において、規定値を第1変更値ずつ変更し、処理を終了する。
【0186】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0187】
・制御部72は、第2収束参照値CRV2に応じて、第1範囲B1を変更してもよい。
図14を参照して、制御部72が、第2収束参照値CRV2に応じて第1範囲B1を変更する処理について説明する。
図14において、第1範囲B1の上限値および下限値は、二点鎖線で示される。設定値は、第1範囲B1を設定する値である。設定値は、例えば、人力駆動車10の走行開始時点では、基準値に設定される。設定値が基準値である場合、第1範囲B1は、例えば、15Nm以上、かつ、40Nm以下である。設定値が大きくなるほど、第1範囲B1の上限値および下限値は小さくなる。第2収束参照値CRV2が基準値以上の場合、制御部72は、設定値を大きくすることによって、第1範囲B1の上限と下限とを小さくする。第2収束参照値CRV2が基準値より小さい場合、制御部72は、設定値を小さくすることによって、第1範囲B1の上限と下限とが大きくなるようにする。好ましくは、制御部72は、設定値を第1設定値よりも小さくしない。第1設定値は、例えば、基準値よりも5Nm小さい値である。好ましくは、制御部72は、設定値を第2設定値よりも大きくしない。第2設定値は、例えば、基準値よりも10Nm大きい値である。
【0188】
・変速条件は、変速比ごとに設けられてもよい。例えば、変速装置42が変速比を段階的に変更可能に構成される場合、変速条件は、変速比の段階に応じて異なっていてもよい。
【0189】
・制御部72は、3つ以上のモードを含む制御状態においてコンポーネント50を制御するようにしてもよい。この場合、第1モードおよび第2モードの少なくとも1つが複数のモードを有していてもよい。好ましくは、制御部72は、3つ以上のモードごとにコンポーネント50を制御可能に構成される。
【0190】
・第1実施形態において、変速条件は、人力駆動車10の運動状態ごとに設定されてもよい。この場合、例えば、第1モードにおける運動状態ごとに異なる第1変速条件が設定され、第2モードにおける運動状態ごとに異なる第2変速条件が設定される。例えば、制御部72は、第1制御状態において、制御状態が第1モード、かつ、第1運動状態の場合は、第1-1変速条件に応じて変速比を変更する。例えば、制御部72は、第1制御状態において、制御状態が第1モード、かつ、第2運動状態の場合は、第1-2変速条件に応じて変速比を変更する。例えば、制御部72は、第1制御状態において、制御状態が第2モード、かつ、第1運動状態の場合は、第2-1変速条件に応じて変速比を変更する。例えば、制御部72は、第1制御状態において、制御状態が第2モード、かつ、第2運動状態の場合は、第2-2変速条件に応じて変速比を変更する。制御部72は、各変速条件と対応するモードおよび運動状態における収束参照値CRVに応じて、そのモードおよび運動状態と対応する変速条件を変更する。
【0191】
・制御部72は、第1制御状態の場合の収束参照値CRVに応じて変速条件を変更し、かつ、第2制御状態の場合の収束参照値CRVに応じて変速条件を変更しないようにしてもよい。
【0192】
・制御部72は、第2制御状態の場合の収束参照値CRVに応じて変速条件を変更し、かつ、第1制御状態の場合の収束参照値CRVに応じて変速条件を変更しないようにしてもよい。
【0193】
・制御部72は、第1モードおよび第2モードにおいて、同一の変速条件に応じて変速比を変更するように変速装置42を制御するようにしてもよい。
【0194】
・コンポーネント50は、バッテリ40、アジャスタブルシートポスト、ABS(Anti-lock Brake System)の少なくとも1つを含んでいてもよい。コンポーネント50がバッテリ40を含む場合、例えば、第1モードおよび第2モードに応じてバッテリ40の電力消費量を変更する。コンポーネント50がアジャスタブルシートポストを含む場合、例えば、第1モードおよび第2モードに応じてサドルの高さを変更する。コンポーネント50がABSを含む場合、例えば、第1モードおよび第2モードに応じてブレーキ装置の制動力を変更する。
【0195】
・制御部72は、ライダの快適レベルに応じて変速条件を変更可能に構成されてもよい。制御部72は、
図2に破線で示す第1操作部62の操作によって入力されるライダの快適レベルに応じて変速条件を変更可能に構成されてもよい。この場合、第1操作部62は、例えば、人力駆動車10のハンドルバー20に設けられる。制御部72は、
図2に破線で示すライダの快適レベルを検出する検出部64の出力に応じて変速条件を変更可能に構成されてもよい。ライダの快適レベルを検出する検出部64は、人力駆動車10のライダの顔画像、および、生体情報少なくとも1つを検出し、ライダの快適レベルを推定する。生体情報は、ライダの心拍数、筋電位、および、脳波などを含む。制御部72は、例えば、ライダの快適レベルが、ライダにとって好適なレベルである場合、そのときの参照値RVに応じて所定変更値を変更する。制御部72は、例えば、ライダの快適レベルが、ライダにとって好適なレベルである場合、そのときの参照値RVに応じて所定範囲を変更する。
【0196】
・制御部72は、制御状態が第1制御状態の場合において、操作部60への操作に応じて変速条件を変更可能に構成されてもよい。例えば、制御部72は、制御状態が第1制御状態の場合において、シフトアップ操作部が操作される場合、所定範囲の規定値が小さくなるように変速条件を変更する。例えば、制御部72は、制御状態が第1制御状態の場合において、シフトダウン操作部が操作される場合、所定範囲の規定値が大きくなるように変速条件を変更する。
【0197】
・制御部72は、
図2に破線で示す第2操作部66の操作によって変速条件を変更可能に構成される。第2操作部66は、人力駆動車10に設けられてもよく、外部装置に設けられてもよい。制御部72は、例えば、第2操作部66の操作によって所定範囲を変更する。例えば、ライダが人力駆動車10の走行開始前に第2操作部66を操作することによって所定範囲が変更される。
【0198】
・変速条件は、第2参照値RV2を含んでいてもよい。変速条件は、第2参照値RV2が所定範囲外の場合に満たされる。好ましくは、変速条件は、人力駆動力によって付与されるトルクが所定範囲外の場合に満たされる。
【0199】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0200】
10…人力駆動車、12…車輪、24…クランク、26…クランク軸、42…変速装置、50…コンポーネント、52…モータ、62…第1操作部、64…検出部、66…第2操作部、70…制御装置、72…制御部、74…記憶部。