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特許7524056ワイヤレス電力伝送システムでの異物検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システムでの異物検出
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240722BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240722BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20240722BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/40
H02J50/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020515661
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018074892
(87)【国際公開番号】W WO2019053194
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】17191588.7
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】エッツ ウィルヘルムス ヘラルドス マリア
(72)【発明者】
【氏名】フェルトマン エディ ヘリット
(72)【発明者】
【氏名】ファン ワヘニンヘン アンドリース
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】衣鳩 文彦
【審判官】寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511109(JP,A)
【文献】特開2016-7124(JP,A)
【文献】特開2016-67066(JP,A)
【文献】特開2010-35408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導電力伝送信号を介して電力を受電器に無線で提供するための送電器であって、
前記電力伝送信号を生成するための送信機コイルと、
前記送信機コイルのための駆動信号を生成するためのドライバであって、電力伝送フェーズの間、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を有する繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に前記電力伝送信号を生成するように前記駆動信号を生成するように構成される、トライバと、
電磁試験信号を生成する試験コイルと、
前記繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に前記電磁試験信号を生成するために前記試験コイルのための試験駆動信号を生成するように構成された試験生成器と、
前記異物検出時間間隔中に前記試験駆動信号に対して測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行するように構成された異物検出器と、
前記試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル及び振幅の少なくとも1つを変化させることにより、適応時間間隔中に前記試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するために前記試験生成器を制御し、前記変動する試験駆動信号に応じて、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル及び振幅のうちの少なくとも1つの値である、試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成されたアダプタと、
前記試験駆動信号パラメータ値を格納するためのメモリと、
を有し、
前記試験生成器は、前記試験駆動信号パラメータ値に応じて、少なくとも1つの異物検出時間間隔中に前記試験駆動信号の信号特性を設定するように構成され、
前記受電器からメッセージを受信するための受信機を有し、前記アダプタが、前記受電器から受信されたメッセージに応じて前記試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される、送電器。
【請求項2】
前記アダプタが、前記受電器から受信されたメッセージによって示される時間における前記変動する試験駆動信号の変動する特性に応じて前記試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される、請求項1に記載の送電器。
【請求項3】
前記アダプタが、前記試験駆動信号を変化させるときに前記試験駆動信号の信号特性を測定し、前記信号特性に応じて前記試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される、請求項1または請求項2に記載の送電器。
【請求項4】
前記アダプタが、前記信号特性の変化率に応じて前記試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される、請求項3に記載の送電器。
【請求項5】
前記アダプタが、前記信号特性の前記変化率の変化を検出したときの試験駆動パラメータ値に応じて前記試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成され、前記試験駆動パラメータ値は、前記試験駆動信号の周波数、電圧、電流、信号レベルおよび/または振幅である請求項4に記載の送電器。
【請求項6】
前記試験駆動信号の前記信号特性が前記試験駆動信号の電流または電圧であり、前記試験駆動信号パラメータ値が前記試験駆動信号の周波数である、請求項3から5のいずれか一項に記載の送電器。
【請求項7】
前記試験生成器が、前記試験駆動信号を生成するように構成されたフルブリッジスイッチ出力回路を有し、前記試験生成器が、電力伝送時間間隔中のフルブリッジ動作モードから異物検出時間間隔中のハーフブリッジ動作モードへと前記フルブリッジスイッチ出力回路の動作モードを変更するように構成される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の送電器。
【請求項8】
前記アダプタが、前記受電器の回路が前記試験駆動信号から電力を抽出し始めたことが検出されたときの前記変動する試験駆動信号の特性の値に応じて前記試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の送電器。
【請求項9】
単一のコイルが前記送信機コイルと前記試験コイルの両方を形成する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の送電器。
【請求項10】
前記試験生成器が、異物検出時間間隔の初期時間間隔中に、前記試験駆動信号の信号特性を初期値から前記試験駆動信号パラメータ値へと徐々に変化させるように構成され、前記初期時間間隔が20ミリ秒以上の期間を持つ、請求項9に記載の送電器。
【請求項11】
受電器及び誘導電力伝送信号を介して前記受電器に無線で電力を供給するための送電器を有する無線電力伝送システムであって、
前記送電器は、
前記電力伝送信号を生成するための送信機コイルと、
前記送信機コイルのための駆動信号を生成するためのドライバであって、電力伝送フェーズの間、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を有する繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に前記電力伝送信号を生成するように前記駆動信号を生成するように構成される、トライバと、
電磁試験信号を生成する試験コイルと、
前記繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に前記電磁試験信号を生成するために前記試験コイルのための試験駆動信号を生成するように構成された試験生成器と、
前記異物検出時間間隔中に前記試験駆動信号に対して測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行するように構成された異物検出器と、
前記試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル及び振幅の少なくとも1つを変化させることにより、適応時間間隔中に前記試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するために前記試験生成器を制御し、前記変動する試験駆動信号及び前記受電器から受信されたメッセージに応じて、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル及び振幅のうちの少なくとも1つの値である、試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成されたアダプタと、
前記試験駆動信号パラメータ値を格納するためのメモリと、
を有し、
前記試験生成器は、前記試験駆動信号パラメータ値に応じて、少なくとも1つの異物検出時間間隔中に前記試験駆動信号の信号特性を設定するように構成され、
前記受電器は、
前記電力伝送信号から電力を抽出するための受電コイルと、
前記適応時間間隔中に動作基準が満たされたことの検出に応じて、前記送電器に前記メッセージを送信するためのメッセージ送信機と、
を有する、無線電力伝送システム。
【請求項12】
前記動作基準が、前記受電器の回路が前記電力伝送信号から電力の抽出を開始するという要件を含む、請求項11に記載の無線電力伝送システム。
【請求項13】
送電器が誘導電力伝送信号を介して受電器に無線で電力を供給する方法であって、前記送電器が、前記電力伝送信号を生成するための送信機コイルと、電磁試験信号を生成するための試験コイルとを有し、当該方法は、
電力伝送フェーズ中に、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を含む繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために前記送信機コイルのための駆動信号を生成し、
前記試験コイルのための試験駆動信号を生成して、前記繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成し、
前記異物検出時間間隔中に前記試験駆動信号に対する測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行し、
前記試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つを変化させることにより、適応時間間隔中に前記試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するために試験発生器を制御し、
前記変動する試験駆動信号及び前記受電器から受信されたメッセージに応じて、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つの値である試験駆動信号パラメータ値を決定し、
前記試験駆動信号パラメータ値を格納し、
少なくとも1つの異物検出時間間隔中に、前記試験駆動信号パラメータ値を読み出し、前記試験駆動信号パラメータ値に応じて前記試験駆動信号の信号特性を設定する、方法。
【請求項14】
受電器および誘導電力伝送信号を介して電力を前記受電器に無線で供給するための送電器を有する無線電力伝送システムのための方法であって、前記送電器は、前記電力伝送信号を生成するための送信機コイルと、電磁試験信号を生成するための試験コイルとを有し、当該方法は、
前記送電器が、
電力伝送フェーズ中に、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を含む繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために前記送信機コイルのための駆動信号を生成するステップと、
前記繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために前記試験コイルのための試験駆動信号を生成するステップと、
前記異物検出時間間隔中に前記試験駆動信号に対する測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行するステップと、
試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つを変化させることにより、適応時間間隔中に前記試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するために試験発生器を制御するステップと、
前記変動する試験駆動信号及び前記受電器から受信されたメッセージに応じて、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つの値である試験駆動信号パラメータ値を決定するステップと、
前記試験駆動信号パラメータ値を格納するステップと、
少なくとも1つの異物検出時間間隔中に、前記試験駆動信号パラメータ値を読み出し、前記試験駆動信号パラメータ値に応じて前記試験駆動信号の信号特性を設定するステップと、
を実行し、
前記受電器が、前記適応時間間隔中に動作基準が満たされたことの検出に応じて、前記送電器に前記メッセージを送信するステップを実行する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送システムにおける異物検出に関し、特に、これに限定されないが、例えば台所用品などの高電力デバイスに誘導電力伝送を提供する電力送信機の異物検出に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のほとんどの電気製品は、外部電源から電力を供給するために専用の電気接点が必要である。ただし、これは実用的ではない傾向があり、ユーザーが物理的にコネクタを挿入するか、物理的な電気的接触を確立する必要がある。通常、電力要件も大きく異なり、現在、ほとんどのデバイスには専用の電源が用意されており、通常のユーザーは多数の異なる電源を使用し、各電源は特定のデバイス専用である。内部バッテリーを使用すると、使用中に電源に有線接続する必要がなくなる場合があるが、バッテリーの再充電(または交換)が必要になるため、これは部分的な解決策に過ぎない。バッテリーの使用は、デバイスの重量と、潜在的にはコストとサイズを大幅に増加させる場合もある。
【0003】
大幅に改善されたユーザーエクスペリエンスを提供するために、電力送信デバイスの送信インダクタから個々のデバイスの受信コイルに電力が誘導的に転送される無線電源を使用することが提案されている。
【0004】
磁気誘導による電力伝送はよく知られた概念であり、主に一次送信機のインダクタ/コイルと二次受信機のコイルとの間に密結合があるトランスに適用される。2つのデバイス間で一次送信機コイルと二次受信機コイルを分離することにより、疎結合トランスの原理に基づいて、これらの間のワイヤレス電力伝送が可能になる。
【0005】
そのような構成により、ワイヤまたは物理的な電気接続を行う必要なく、デバイスへのワイヤレス電力伝送が可能になる。実際、デバイスを送信コイルに隣接して、またはその上に配置して、外部から再充電または給電することができる。例えば、電力送信機デバイスは、電力を供給するためにその上にデバイスを簡単に置くことができる水平面を伴って構成されることができる。
【0006】
さらに、そのようなワイヤレス電力伝送構成は、有利には、送電装置がさまざまな受電装置とともに使用できるように設計することができる。特に、Qi規格として知られるワイヤレス電力伝送アプローチが定義され、現在さらに開発されている。このアプローチにより、Qi規格を満たす電力送信機デバイスは、同じメーカーのものである必要も、互いに専用である必要もなく、Qi規格を満たす電力受信機デバイスと共に使用できる。Qi標準は、(例えば、特定の電力消費に依存して)特定の電力受信装置に動作を適合させるためのいくつかの機能をさらに含む。
【0007】
Qi規格は、Wireless Power Consortiumによって開発されており、詳細については、たとえば下記のWebサイトで確認でき、特に、定義された規格書を見つけることができる:
http://www.wirelesspowerconsortium.com/index.html
【0008】
ワイヤレス電力伝送の潜在的な問題は、例えば送電器の近くにある金属オブジェクトに電力が意図せず伝送される可能性があることである。たとえば、コイン、鍵、指輪などの異物が、電力受信機を受け入れるように配置された電力送信機プラットフォーム上に置かれた場合、送信機コイルによって生成された磁束は、金属物体に渦電流を導入し、その物体を加熱する。熱の増加は非常に重大であり、非常に不利な場合がある。
【0009】
このようなシナリオが発生するリスクを減らすために、電力送信機が異物の存在を検出し、肯定的な検出が発生した場合に送信電力を低減し、ユーザー警告を生成できる異物検出を導入することが提案されている。たとえば、Qiシステムには、異物を検出し、異物が検出された場合に電力を低減する機能が含まれている。具体的には、Qi仕様バージョン1.2.1のセクション11は、異物を検出するさまざまな方法について記述している。
【0010】
そのような異物を検出するための1つの方法は、WO2015018868A1に開示されている。別の例は、未知の電力損失の決定に基づくアプローチを開示する国際公開第2012127335号に提供されている。このアプローチでは、電力受信機と電力送信機の両方が電力を測定し、受信機はその測定された受信電力を電力送信機に伝達する。電力送信機が送信機によって送信された電力と受信機によって受信された電力との間に大きな差を検出すると、不要な異物が存在する可能性があり、安全上の理由から電力伝送が低減または中止されることができる。この電力損失方法では、送電器と受電器によって実行される同期された正確な電力測定が必要である。
【0011】
たとえば、Qi電力伝送規格では、受電装置は、整流された電圧と電流を測定し、それらを乗算して、(例えば、整流器、受信機コイル、受信機の一部である金属部品の損失などの)受電装置の内部電力損失の推定値を加算するなどして、受信された電力を推定する。電力受信機は、決定された受信電力を、例えば4秒ごとの最小レートで電力送信機に報告する。
【0012】
電力送信機は、例えば、インバータのDC入力電圧と電流を測定し、それらを乗算し、そして、例えば、インバータ、一次コイル、および送電器の一部である金属部品の推定電力損失などの送信機の内部電力損失の推定値を減算することで結果を修正することにより、送信電力を推定する。
【0013】
電力送信機は、送信電力から報告された受信電力を減算することにより、電力損失を推定できる。差がしきい値を超えると、送信機は、異物で消費される電力が多すぎると見なし、電力伝送の終了に進むことができる。
【0014】
あるいは、一次コイルと二次コイルによって形成される共振回路の品質またはQ係数を、対応する静電容量と抵抗とともに測定することが提案されている。測定されたQファクターの減少は、異物が存在することを示している場合がある。
【0015】
実際には、Qi規格に記述されている方法を使用して十分な検出精度を達成するのは難しい傾向がある。この困難は、現在の特定の動作条件に関する多くの不確実性によって悪化する。
【0016】
例えば、特定の問題は、友好金属(つまり、受電器または送電器を具体化する、装置の金属部分)の潜在的な存在であり、これらの磁気的および電気的特性は不明である(そして異なる装置間で異なる)可能性があり、補償するのが難しい場合がある。
【0017】
さらに、金属異物内で放散される比較的少量の電力からでさえ望ましくない加熱が生じる可能性がある。したがって、送信電力と受信電力の間のわずかな電力の不一致も検出する必要があり、これは、電力伝送の電力レベルが増加する場合に特に困難になる可能性がある。
【0018】
Qファクター劣化アプローチは、多くのシナリオで、金属物体の存在を検出する感度が高い場合がある。しかし、それでも十分な精度を提供しない可能性があり、たとえば、友好金属の影響を受けることもある。
【0019】
異物検出の性能は、試験が実際に実行されるときに存在する特定の動作条件の影響を受ける。例えば、Qi規格で説明されているように、異物検出の測定が電力伝送初期化プロセスの選択フェーズで実行される場合、電力送信機が測定のために提供する信号は、電力受信機を起動させないように十分に小さくなければならない。しかし、このような小さな信号の場合、信号/ノイズ比は一般的に低く、測定の精度が低下する。
【0020】
別の問題は、異物検出は通常、試験が実行されている動作条件とシナリオが大幅に変動する可能性がある環境において、異物の存在によって引き起こされる比較的小さな変化が検出されることが望ましい、非常に敏感な試験であることである。
したがって、現在のアルゴリズムは最適ではない傾向があり、一部のシナリオおよび例では、最適な性能が得られない場合がある。特に、異物の存在が検出されない、または異物が存在しない場合に異物が誤って検出される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、改善された異物検出が有利であり、特に、柔軟性を高め、コストを削減し、複雑さを軽減し、異物検出を改善し、誤検出と検出漏れを減らし、後方互換性、および/または性能を改善するアプローチが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明は、好ましくは、上記の欠点の1つまたは複数を単独でまたは任意の組み合わせで緩和、軽減、または排除しようとするものである。
【0023】
本発明の一態様によれば、誘導電力伝送信号を介して電力を電力受信機に無線で提供するための電力送信機が提供され、当該電力送信機は、
電力伝送信号を生成するための送信コイルと、
送信コイルのための駆動信号を生成するためのドライバであって、電力伝送フェーズの間、1つの電力伝送時間間隔及び1つの異物検出時間間隔を少なくとも含む繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために駆動信号を生成するように構成される、ドライバと、
電磁テスト信号を生成するための試験コイルと、
繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために試験コイルのための試験駆動信号を生成するように構成された試験生成器と、
異物検出時間間隔中に試験駆動信号に対して測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行するように構成された異物検出器と、
試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル、振幅の少なくとも1つを変更することにより、適応時間間隔中に試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するように試験生成器を制御し、変動する試験駆動信号に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成されたアダプタであって、試験駆動パラメータ値は、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つの値であるアダプタと、
試験駆動信号パラメータ値を保存するためのメモリと、
を有し、
試験発生器は、試験駆動信号パラメータ値に応答して、少なくとも1つの異物検出時間間隔中に試験駆動信号の信号特性を設定するように構成される。
【0024】
本発明は、多くの実施形態において改善された異物検出を提供し得る。多くのシナリオとシステムでは、より正確な異物検出を実現できる。このアプローチは、多くの実施形態において複雑さを軽減し、多くのシステムにおいて高度な後方互換性を提供し得る。具体的には、このアプローチは、たとえばバージョン1.2以前のQi仕様に従って動作するQiワイヤレス電力伝送システムにおける異物検出の改善に特に適している。
【0025】
このアプローチにより、電力伝送フェーズ中の異物検出試験の精度および/または信頼性を向上させることができる。多くの実施形態において、このアプローチは、異物検出試験の不確実性および変動を低減し、それにより性能を改善することができる。このアプローチは、例えば、異物検出中に、特定の、例えば所定の参照シナリオおよび動作点で動作するようにシステムにバイアスをかけてもよい。これにより、異物検出テストの一貫性と予測可能性を改善することができる。特に、電磁試験信号に対する電力受信器の影響のより正確で信頼性の高い推定を可能にし、したがって異物検出器がその補償を改善することを可能にし得る。
【0026】
多くの実施形態では、このアプローチは、特に、電力受信機が有意な電力を抽出しないほど十分に低いが(例えば、電磁テスト信号のレベルが十分に低いために受電器の負荷が明示的または暗黙的に切断されることができる)、依然として異物の影響を正確に検出できるほど十分に高い電磁試験信号を生成することができるように、電力送信機を制御することができる。
【0027】
このアプローチは、多くの実施形態において、異物に対する動作条件の決定を促進または改善することができ、特に、電力受信器による負荷と異物によって引き起こされる変化の検出との間の改善されたトレードオフを提供する動作点の決定を促進または改善することができる。
【0028】
試験駆動パラメータ値は、試験駆動信号の周波数、電圧、電流、信号レベルおよび/または振幅であり得る。
【0029】
多くの実施形態では、異物検出時間間隔の持続時間は、時間フレームの持続時間の5%以下、10%以下または20%以下である。多くの実施形態では、異物検出時間間隔の持続時間は、時間フレームの70%以上、80%以上または90%以上である。
【0030】
異物検出器は、電磁テスト信号の電力レベルと、受電器から受信された、電磁テスト信号の予想される負荷を示す負荷指標によって示される電力との差がしきい値を超える場合に異物が検出されたと判断するように構成されることができる。差がしきい値を下回っている場合、異物検出器は異物が検出されていないと判断することができる。
【0031】
異物検出器は、試験コイルを含む共振回路の品質測定値(駆動信号の測定値から決定される)が閾値を下回った場合に、異物が検出されたと判定するように構成され得る。閾値は通常、電力受信機から受信したメッセージに依存することができる。
【0032】
試験生成器は、適合時間間隔に続く1つまたは複数の異物検出時間間隔中に試験駆動信号に試験駆動パラメータ値を適用するように構成されてもよい。
【0033】
アダプタは、試験駆動信号の電圧、電流および/または電力レベル若しくは振幅、周波数、あるいはデューティサイクルを含む試験駆動信号の1つまたは複数のパラメータを変更することにより、試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するように試験生成器を制御するように構成されることができる。
【0034】
多くの実施形態では、変動する試験駆動信号の変化するパラメータ(テスト駆動信号の周波数、電圧、電流、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つ)は、テスト駆動パラメータ値が決定されるパラメータと同じである(テスト駆動信号の周波数、電圧、電流、信号レベル、振幅の少なくとも1つの同じパラメータ)。試験発生器(211)は、試験駆動信号パラメータ値に応じて、少なくとも1つの異物検出時間間隔中に試験駆動信号の信号特性を設定するように構成され、ここで、信号特性は、試験駆動パラメータ値の周波数、電圧、電流、信号レベル、および振幅の少なくとも1つである。
【0035】
本発明の任意の特徴によれば、電力送信機は、電力受信機からメッセージを受信するための受信機をさらに備え、アダプタは、電力受信機から受信されたメッセージに応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される。
【0036】
これは、多くの実施形態において改善された異物検出動作を提供し、多くの実施形態において、異物検出時間間隔中の異物検出のための適切な動作点の改善された決定を可能にし得る。このアプローチは、特に、異物検出のための電力送信機の動作点が、電力受信機で実行された測定に基づくことを可能にし得る。
【0037】
本発明の任意の特徴によれば、アダプタは、受電器から受信されたメッセージによって示される時間における変動する試験駆動信号の変化する特性に応じて、テスト駆動信号パラメータ値を決定するように構成される。
【0038】
これにより、多くの実施形態において、決定の複雑さを低く維持しながら、適切な動作点の正確な決定が可能になり得る。
【0039】
本発明の任意の特徴によれば、アダプタは、試験駆動信号を変化させるときにテスト駆動信号の信号特性を測定し、信号特性に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される。
【0040】
これは、多くの実施形態において改善された異物検出動作を提供し、多くの実施形態において、異物検出時間間隔中の異物検出のための適切な動作点の改善された決定を可能にし得る。
【0041】
このアプローチは、多くの実施形態において、試験駆動パラメータ値の決定が電力送信機による動作(のみ)に基づくことを可能にし得る。多くの実施形態では、試験駆動パラメータ値を決定するために、適応時間間隔中に電力受信機による動作は不要である。このアプローチは、後方互換性を改善することができ、特に、既に配備されているレガシー電力受信機に対応することができる。
【0042】
決定される信号特性は、決定および/または変更されるテスト駆動パラメータと同じでもよいが、多くの実施形態では異なるパラメータである。信号特性は、具体的には、電圧、電流、レベル、および/または(たとえば、振幅または平均レベルなど)電力測定であり得る。
【0043】
本発明の任意の特徴によれば、アダプタは、信号特性の変化率に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される。
【0044】
これは、多くの実施形態において特に有利な動作および異物検出を提供し得る。
【0045】
本発明の任意の特徴によれば、アダプタは、信号特性の変化率の変化を検出するときの試験駆動パラメータの値に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成される。
【0046】
これは、多くの実施形態において特に有利な動作および異物検出を提供し得る。
【0047】
本発明の任意の特徴によれば、試験駆動信号の信号特性は、試験駆動信号の電流または電圧であり、試験駆動信号パラメータ値は、試験駆動信号の周波数である。
【0048】
これは、多くの実施形態において特に有利な動作および異物検出を提供し得る。信号特性は、具体的には、テスト駆動信号の電流または電圧であり得る。
【0049】
本発明の任意の特徴によれば、試験生成器は、試験ドライブ信号を生成するように構成されたフルブリッジスイッチ出力回路を備え、試験生成器は、フルブリッジスイッチ出力回路の動作モードを、電力伝送時間間隔中のフルブリッジ動作モードから異物検出時間間隔中のハーフブリッジ動作モードに変更するように構成される。
【0050】
これは、多くの実施形態において改善された性能を提供し得る。
【0051】
多くの実施形態では、試験生成器は、動作モードをフルブリッジ動作モードからハーフブリッジ動作モードに徐々に変更するように構成されてもよい。これは、例えば、フルブリッジスイッチ出力回路の1つまたは複数のスイッチを制御するスイッチ信号のデューティサイクルの緩やかな変更によって実行されてもよい。
【0052】
本発明の任意の特徴によれば、アダプタは、受電装置の回路がテスト駆動信号から電力の抽出を開始することが検出される、変動する試験駆動信号の特性の値に応じて、テスト駆動信号のパラメータ値を決定するように構成される。
【0053】
これは、多くの実施形態において特に効率的なアプローチを提供し得る。
【0054】
本発明の任意の特徴によれば、単一のコイルが送信コイルと試験コイルの両方を形成する。
【0055】
これにより、多くの実施形態において、より複雑度の低い電力送信機が可能になる場合がある。
【0056】
多くの実施形態では、試験コイルと送信機コイルは同じコイルであってもよい。多くの実施形態では、ドライバと試験発生器は同じエンティティであってもよく、したがって同じ回路が駆動信号と試験駆動信号の両方を生成してもよい。多くの実施形態では、電力伝達信号および試験駆動信号は、多くのパラメータ値を共有してもよく、例えば、それらは同じ周波数を有してもよい。
【0057】
本発明の任意の特徴によれば、試験駆動発生器は、異物検出時間間隔の初期時間間隔中に、試験駆動信号の信号特性を初期値から試験駆動信号パラメータ値に徐々に変化させるように構成され、初期時間間隔は20ミリ秒以上の期間を持つ。
【0058】
これは、多くの実施形態において改善された性能を提供し得る。
【0059】
本発明の一態様によれば、無線電力伝送システムが提供され、当該無線電力伝送システムは、電力受信器および誘導電力伝送信号を介して電力を電力受信器に無線で提供するための電力送信器を有し、電力送信機は、
電力伝送信号を生成するための送信コイルと、
送信機コイルのための駆動信号を生成するドライバであって、電力伝送フェーズ中に、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を含む繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために駆動信号を生成するように構成されるドライバと、
電磁試験信号を生成するための試験コイルと、
繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために試験コイルのための試験駆動信号を生成するように構成された試験生成器と、
異物検出時間間隔中に試験駆動信号に対する測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行するように構成された異物検出器と、
試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび振幅の少なくとも1つを変更することにより、適応時間間隔中にテストコイルの変動する試験駆動信号を生成するように試験生成器を制御し、変動する試験駆動信号と受電装置から受信したメッセージに応じて、試験駆動信号パラメータ値を決定し、変動する試験駆動信号および受電器から受信したメッセージに応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成されたアダプタであって、試験駆動パラメータ値は、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル、および振幅の少なくとも1つの値であるアダプタと、
試験駆動信号パラメータ値を保存するためのメモリと、
を有し、
試験発生器は、試験駆動信号パラメータ値に応じて少なくとも1つの異物検出時間間隔中に試験駆動信号の信号特性を設定するように構成され、
電力受信機は、
電力伝送信号から電力を抽出するための受電コイルと、
適応時間間隔中に動作基準が満たされたことの検出に応じて、電力送信機にメッセージを送信するためのメッセージ送信機、
を有する。
【0060】
本発明のオプションの特徴によれば、動作基準は、電力受信機の回路が電力伝送信号から電力を抽出し始めるという要件を含む。
【0061】
本発明の一態様によれば、誘導電力伝送信号を介して電力を電力受信機に無線で提供するための電力送信機のための方法が提供され、電力送信機は、電力伝送信号を生成するための送信コイルと、電磁試験信号を生成するための試験コイルとを有し、当該方法は、
電力伝送フェーズ中に、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を含む繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送信コイルのための駆動信号を生成し、
繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために試験コイルのための試験駆動信号を生成し、
異物検出時間間隔中にテスト駆動信号に対する測定されたパラメータに応じて異物検出テストを実行し、
試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル、および振幅の少なくとも1つを変化させることにより、適応時間間隔中にテストコイルの変動する試験駆動信号を生成するように試験生成器を制御して、
変動する試験駆動信号に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定し、試験駆動パラメータ値は周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル、および振幅の少なくとも1つの値であり、
試験駆動信号パラメータ値を保存し、
少なくとも1つの異物検出時間間隔中、試験駆動信号パラメータ値を取得し、試験駆動信号パラメータ値に応じて試験駆動信号の信号特性を設定する。
【0062】
本発明の一態様によれば、電力受信機および誘導電力伝送信号を介して電力を電力受信機に無線で提供するための電力送信機を含む無線電力伝送システムのための方法が提供され、電力送信機は、電力伝送信号を生成するための送信コイルと、電磁試験信号を生成するための試験コイルとを有し、
当該方法は、電力送信機が、
電力伝送フェーズ中に、少なくとも1つの電力伝送時間間隔および1つの異物検出時間間隔を含む繰り返し時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送信号を生成するために送信コイルのための駆動信号を生成するステップと、
繰り返し時間フレームの異物検出時間間隔中に電磁試験信号を生成するために試験コイルのための試験駆動信号を生成するステップと、
異物検出時間間隔中に試験駆動信号に対する測定されたパラメータに応じて異物検出試験を実行するステップと、
試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル、および振幅の少なくとも1つを変更することにより、適応時間間隔中に試験コイルのための変動する試験駆動信号を生成するように試験生成器を制御し、変動する試験駆動信号に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するステップであって、試験駆動パラメータ値は、周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベル、および振幅の少なくとも1つの値であるステップと、
試験駆動信号パラメータ値を保存するステップと、
少なくとも1つの異物検出時間間隔中、試験駆動信号パラメータ値を取得し、試験駆動信号パラメータ値に応じて試験駆動信号の信号特性を設定するステップと、
を実行し、
電力受信機が、適応時間間隔中に動作基準が満たされたことの検出に応じてメッセージを電力送信機に送信するステップを実行する。
【0063】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴、および利点は、以下に説明する実施形態を参照して明らかになり、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
本発明の実施形態は、図面を参照して、単なる一例として説明される。
図1】本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの要素の例を示す図。
図2】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機の要素の例を示す図。
図3】電力送信機用のハーフブリッジインバータの例を示す図。
図4】電力送信機用のフルブリッジインバータの例を示す図。
図5】本発明のいくつかの実施形態による電力受信機の要素の例を示す図。
図6】本発明のいくつかの実施形態による電力受信機の要素の例を示す図。
図7図1の無線電力伝送システムの時間フレームの例を示す図。
図8】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機の要素の例を示す図。
図9】本発明のいくつかの実施形態による送電器および受電器の要素の例を示す図。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、それぞれフルブリッジおよびハーフブリッジインバータ出力回路によって生成される試験駆動信号の要素の例を示す図。
図11】本発明のいくつかの実施形態による、電力送信機の周波数の関数としての送信コイル電流の例を示す図。
図12】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機の周波数の関数としての送信コイル電流の例を示す図。
図13】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機の周波数の関数としての送信コイル電流の例を示す図。
図14】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機の周波数の関数としての送信コイル電流の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下の説明は、Qi規格から知られているような電力伝送アプローチを利用する無線電力伝送システムに適用可能な本発明の実施形態に焦点を当てている。しかしながら、本発明はこの用途に限定されず、他の多くの無線電力伝送システムに適用され得ることが理解されるであろう。
【0066】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの例を示している。電力伝送システムは、送信機コイル/インダクタ103を含む(またはそれに結合される)電力送信機101を備える。システムは、受信機コイル/インダクタ107を含む(またはそれに結合される)電力受信機105をさらに備える。
【0067】
このシステムは、電力送信機101から電力受信機105に電力を誘導的に伝送する電磁電力伝送信号を提供する。具体的には、送電器101は電磁信号を生成し、これは送信機コイルまたはインダクタ103によって磁束として伝播される。電力伝送信号の周波数は通常約20 kHzから約500 kHzであり、Qi互換システムの場合は通常95 kHzから205 kHzの範囲である(または、例えば高出力キッチン用途の場合、周波数は、例えば、典型的には20kHzから80kHzの間の範囲にあり得る)。送電コイル103と受電コイル107とは疎結合されており、受電コイル107は送電器101からの電力伝送信号(の少なくとも一部)を取り出す。したがって、送電コイル103から受電コイル107への無線誘導結合を介して、送電器101から受電器105へ電力が伝達される。電力伝送信号という用語は、主に、送信機コイル103と受電コイル107の間の誘導信号/磁場(磁束信号)を指すために使用されるが、等価により、送信機コイル103に提供されるか、または受電コイル107によって取り出される電気信号への言及として考えられ、そして使用され得ることが理解されよう。
【0068】
この例では、受電器105は、具体的には、受信機コイル107を介して電力を受け取る受電器である。しかし、他の実施形態では、電力受信器105は、金属加熱要素などの金属要素を含むことができ、その場合、電力伝送信号は渦電流を直接誘導し、その要素の直接的な加熱をもたらす。
【0069】
システムは、かなりの電力レベルを伝送するように構成され、具体的には、電力送信機は、多くの実施形態で500mW、1W、5W、50W、100Wまたは500Wを超える電力レベルをサポートすることができる。例えば、Qi対応アプリケーションでは、電力伝送は通常、低電力アプリケーションの場合は1~5Wの電力範囲(基本電力プロファイル)であり、Qi仕様バージョン1.2では最大15W、電動工具、ラップトップ、ドローン、ロボットなどの高出力アプリケーション向けで最大100Wの範囲であり、またキッチン用途などの非常に高出力の用途では、100 Wを超え、最大1000 Wを超える。
【0070】
以下では、送電器101および受電器105の動作は、一般にQi規格に従った(本明細書に記載される(または結果として生じる)変更および機能強化を除く)
、またはWireless Power Consortiumが開発中の高出力キッチン仕様に適した実施形態を具体的に参照して説明される。特に、送電器101および受電器105は、Qi規格バージョン1.0、1.1または1.2の要素に従うか、またはそれと実質的に互換性がある(本明細書に記載の(または結果としての)修正および強化を除く)。
【0071】
ワイヤレス電力伝送システムでは、物体(典型的には、電力伝送信号から電力を抽出し、電力送信機101または電力受信機105の一部ではない、すなわち、電力伝送への意図しない、望ましくないおよび/または干渉する要素である導電性要素)の存在は、電力伝送において非常に不利になる場合がある。このような望ましくない物体は、この分野において、異物(Foreign Object)として知られる。
【0072】
異物は、動作に電力損失を追加することで効率を低下させるだけでなく、電力伝送動作自体を悪化させる可能性もある(例えば、電力伝送効率を妨げる、または電力制御ループによって直接制御されない電力を抽出するなど)。さらに、異物中の電流(特に異物の金属部分の渦電流)の誘導は、異物の非常に望ましくない加熱をもたらす場合があります。
【0073】
このようなシナリオに対処するために、Qiなどのワイヤレス電力伝送システムには、異物検出機能が含まれている。具体的には、電力送信機は、異物が存在するかどうかを検出しようとする機能を備えている。そうである場合、電力送信機は、例えば、電力伝送を終了するか、伝送可能な電力の最大量を減らすことができる。
【0074】
Qi規格で提案されている現在のアプローチは、(送信電力と報告された受信電力の比較による)電力損失の検出または出力共振回路の品質Qの低下の検出に基づいている。ただし、現在の使用では、これらのアプローチは多くのシナリオで最適に及ばない性能を提供することがわかっており、特に、不正確な検出につながる可能性があり、検出に失敗したり、そのような物体が存在しないにも関わらず誤検出が発生したりする可能性がある。
【0075】
異物の検出は、受電装置が電力伝送フェーズに入る前(たとえば、電力伝送の初期化中)または電力伝送フェーズ中に実行されることができる。電力伝送フェーズ中の検出は、多くの場合、測定された送信電力と受信電力の比較に基づいており、一方、電力伝送フェーズの前に行われる検出は、多くの場合、たとえば小さな測定信号を使用して送信コイルの品質係数を測定することによる反射インピーダンスの測定に基づいている。
【0076】
従来の異物検出は、部分的には、送電器特性、受電器特性、適用される試験条件などのばらつきと不確実性を含む、異物検出が実行される特定の動作条件とシナリオのばらつきと不確実性のために、最適ではない傾向がある。
【0077】
異物検出試験の課題の例は、十分に信頼できる異物検出を達成するために十分に正確な測定を実行するための要件である。これにより、検出精度を高めるために、可能な限り強力な信号を生成することが望まれる場合がある。しかしながら、これにより、受電器および存在する異物の電力消費が増加する場合がある。検出性能は、適用される特定の信号レベルに敏感である場合があり、通常は要件が競合する。
【0078】
図1のシステムは、動作を適合させて異物検出のトレードオフを改善しようとする異物検出のアプローチを使用する。このアプローチは、多くの実施形態において、改善された異物検出を提供し得、具体的には、多くの実施形態において、より正確かつ/または信頼できる異物検出を提供し得る。このアプローチにより、複雑さおよびリソース要件が低くなる。このアプローチの利点は、特にQiワイヤレス電力伝送システムなどの多くの既存のシステムに含めるのに適しており、実際、ほとんどの場合、わずかな変更で実現できる。
【0079】
以下で詳しく説明されるように、このアプローチは、電力伝送フェーズ中に時分割アプローチを利用し、異物検出と電力伝送は、例えば、別々の時間間隔で実行され、それにより、これらの間の干渉(具体的には、異物検出に対する電力伝達の影響)を大幅に減らすことができる。さらに、生成された電磁信号のパラメータは、特定の試験シナリオに適合されることができる。これは、例えば、システムが電力伝送フェーズに入る前に実行され得る適応プロセスを通じて達成され得る。
【0080】
以下では、図1のシステムがより詳細に説明される。この例では、電磁電力伝送信号と異物検出に使用される電磁試験信号とは、(異なるドライバで駆動される)2つの異なるコイルによって生成される。さらに、信号は異なる用語で参照され、すなわち、電力伝送時間間隔中に生成される電磁信号は電力伝送信号と呼ばれ、異物検出時間間隔中に生成される電磁信号は、電磁試験信号または単に試験信号と呼ばれる。しかしながら、多くの実施形態では、電力伝送時間間隔と異物検出時間間隔の両方で同じコイルから電磁信号が生成されることができ、実際、同じドライバなどが、電力伝送時間間隔と異物検出時間間隔の両方に使用されることができることが理解されるだろう。実際、多くの実施形態では、試験信号への言及は、異物検出時間間隔中の電力伝送信号と同等と見なされ得る。
【0081】
図2は、図1の電力送信機101の要素をより詳細に示している。
【0082】
送電器101は、送信機コイル103に供給される(電力伝送)駆動信号を生成することができるドライバ201を含み、送信機コイル103は次に、電磁電力伝送信号を生成し、それにより受電器105に電力伝送を提供する。電力伝送信号は、電力伝送フェーズの電力伝送時間間隔中に提供される。
【0083】
ドライバ201は、通常、当業者に周知のようにフルまたはハーフブリッジを駆動することにより通常形成されるインバータの形の出力回路を備えてもよい。
【0084】
ドライバ203は、送信機インダクタ103に供給される電流および電圧を生成する。ドライバ203は、典型的には、DC電圧から交流信号を生成するインバータの形の駆動回路である。ドライバ203の出力は、典型的には、スイッチブリッジのスイッチの適切なスイッチングにより駆動信号を生成するスイッチブリッジである。図3は、ハーフブリッジスイッチブリッジ/インバータを示している。スイッチS1とS2は、同時に閉じられないように制御される。交互にS1が閉じてS2が開き、S2が閉じてS1が開く。スイッチは所望の周波数で開閉され、それにより出力において交流信号を生成する。通常、インバータの出力は、共振コンデンサを介して送信機インダクタに接続される。図4は、フルブリッジスイッチブリッジ/インバータを示している。スイッチS1とS2は、同時に閉じられないように制御される。スイッチS3とS4は、同時に閉じられないように制御される。交互に、スイッチS1とS4が閉じられてS2とS3が開き、S2とS3が閉じられてS1とS4が開き、それにより、出力において方形波信号が生成される。スイッチは、所望の周波数で開閉される。
【0085】
送電器101は、所望の動作原理に従って送電器101の動作を制御するように構成された送電器コントローラ203をさらに有する。具体的には、電力送信機101は、Qi規格に従って電力制御を実行するのに必要な多くの機能を含むことができる。
【0086】
送電器コントローラ203は、特に、ドライバ201による駆動信号の生成を制御するように構成され、駆動信号の電力レベル、したがって生成される電力伝送信号のレベルを特に制御することができる。電力送信機コントローラ203は、電力制御フェーズ中に電力受信機105から受信された電力制御メッセージに応じて、電力伝送信号の電力レベルを制御する電力ループコントローラを有する。
【0087】
電力受信機105からデータおよびメッセージを受信するために、電力送信機101は、電力受信機105からデータおよびメッセージを受信するように構成されたメッセージ受信機205を有する(当業者には理解されるように、データメッセージは1ビット以上の情報を提供し得る)。この例では、電力受信機105は、送信機コイル103によって生成された電力伝送信号を負荷変調するように構成され、メッセージ受信機205は、送信機コイル103の電圧および/または電流の変動を感知し、これらに基づいて負荷変調を復調するように構成されている。当業者は、例えば、Qi無線電力伝送システムで使用されるような負荷変調の原理を知っているので、これらはさらに詳細には説明されない。
【0088】
いくつかの実施形態では、通信は、別個の通信コイルを使用して、または実際に送信機コイル103を使用して達成され得る、別個の通信チャネルを使用して実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、近距離無線通信が実装されてもよく、または(例えば、13.56MHzの搬送周波数を有する)高周波搬送波が電力伝送信号に重畳されてもよい。
【0089】
電力送信機101は、異物検出試験を実行するように、すなわち、生成された電磁場内に望ましくない導電性要素が存在する可能性があるかどうかを特に検出するように構成される異物検出器207をさらに有する。
【0090】
このシステムでは、異物検出試験は、異物検出時間間隔中に実行された測定に基づく。これらの異物検出時間間隔の間、送電器101は、何らかの異物が存在するか否かを評価する目的で動作条件が設定される異物検出モードで動作し始める。
【0091】
例えば、電力送信機101が電力伝送信号および電磁試験信号を生成するために異なるコイルを使用する実施形態では、電力送信機101は電力伝送信号を完全にオフにし、電磁試験信号を適切な値に設定することができる。同じコイルを使用して電力伝送信号と電磁試験信号を生成する実施形態では、コイルの駆動信号を、電力伝送に適した動作点から異物検出に適した動作点に変更することができる。したがって、多くの実施形態では、駆動信号、したがって電力伝送信号および/または電磁試験信号の電流、電圧、周波数、デューティサイクル、電力またはレベルは、電力伝送時間間隔と異物検出時間間隔との間で変更される。多くの実施形態では、電力伝送信号の電力またはレベルは、電力伝送制御ループ機能によって決定された電力レベルから、予め決定された値などの、電力伝送制御ループ機能によって決定されない電力レベルに変更される。多くの実施形態では、電磁信号の電力またはレベルは、第1電力レベルから第2電力レベルに変更されることができる。第1電力レベルは、所定のまたは名目上のレベルであってもよく(具体的にはゼロであってもよい)、または、例えば、電力伝送電力制御ループによって決定されてもよい。第2電力レベルは、以前に決定されたレベルであってもよく、電力伝送電力制御ループから独立していてもよい。
【0092】
したがって、異物検出が実行される間隔の間、すなわち、異物検出時間間隔の間、異物検出器207は、異物が存在すると見なされるかどうかを判断するために条件を評価する。異物検出時間間隔中に、電力送信機101は電磁試験信号を生成し、異物検出はこの信号の特徴および特性の評価に基づく。
【0093】
例えば、試験駆動信号の電力レベルは、生成された電磁試験信号から抽出された電力を反映することができ、これは、(通常、それを受電器105からの予想される電力抽出と比較することにより)潜在的な異物によって抽出される電力の指標として使用されることができる。電磁試験信号の電力レベルは、電磁界内の導電性要素(受信器コイル107を含む)によって電磁試験信号から抽出された電力を反映する。したがって、それは、電力受信器105と存在する可能性のある異物の組み合わせによって抽出された電力を示す。したがって、電磁信号の電力レベルと電力受信器105によって抽出された電力との差は、存在する異物によって抽出された電力を反する。異物検出は、例えば、複雑さの低い検出であってもよい。例えば、電磁信号の電力レベルの差(以下、送信電力レベルと呼ぶ)が、電力受信機105によって抽出された報告電力(以下、受信電力レベルと呼ぶ)を超える場合に、異物検出が発生したと見なされることができる。
【0094】
したがって、このアプローチでは、異物検出は、送信電力レベルと報告された受信電力レベルとの間の電力レベル比較に基づく。異物の検出に対する反応は、それぞれの実施形態では異なり得る。しかし、多くの実施形態では、電力送信機101は、異物の検出に応じて(少なくとも一時的に)電力伝送を終了するように構成されることができる。
【0095】
試験信号を生成するために、電力送信機101は、試験発生器211に結合された試験コイル209を備える。試験発生器211は、異物検出時間間隔中に電磁試験信号を提供するために試験コイル209用の試験駆動信号を生成するように構成される。試験駆動信号は、試験コイル209に供給される電気信号であり、結果として電磁試験信号が生成され、すなわち、試験コイル209は、試験駆動信号に応じた電界強度で対応する電磁界を生成する。 試験生成器211は、ドライバ201と実質的に同じ機能を備えてもよく、例えば、試験発生器211の出力はハーフまたはフルブリッジインバータであり得る。実際、前述のように、多くの実施形態では、試験発生器211はドライバ201によって実現され、試験コイル209は送信機コイル103によって実現されてもよい。したがって、以下では、試験発生器211および試験コイル209へのすべての参照は、電力伝送信号および電磁試験信号の両方の生成に同じコイルが使用される実施形態では、ドライバ201および試験コイル209への参照であると適切に見なされ得る。
【0096】
電力送信機は、試験駆動信号の1つまたは複数のパラメータの適切な値を決定するように構成されたアダプタ213をさらに備える。この試験駆動信号パラメータ値は、電力伝送フェーズの(少なくとも1つの)異物検出時間間隔中に適用される。アダプタ213の動作については後でさらに詳しく説明される。
【0097】
図5は、図1の受電器105のいくつかの例示的な要素を示している。
【0098】
受信機コイル107は、負荷出力回路505を介して受信機コイル107を負荷503に結合する電力受信機コントローラ501に結合される。電力受信機コントローラ501および負荷出力回路505は、受信機コイル107によって抽出された電力を負荷503に対する適切な供給に変換する電力制御経路を含む。加えて、電力受信機コントローラ501は、電力伝送を実行するために必要な様々な電力受信機コントローラ機能、特にQi規格に従って電力伝送を実行するために必要な機能を含むことができる。
【0099】
電力受信機105から電力送信機101への通信をサポートするために、電力受信機105は負荷変調器507を備える。負荷変調器507は、電力送信機101に送信されるべきデータに応じて受信機コイル107の負荷を変化させるように構成される。次に、負荷変動は、当業者に知られているように、電力送信機101によって検出および復調される。
【0100】
電力受信器105は、適切なメッセージを生成し、電力伝送信号がメッセージに従って変調されるように負荷変調器を制御し、それにより電力送信器101が送信されたメッセージを検出できるように構成されるメッセージコントローラ511をさらに備える。
【0101】
図6は、受電器105の電力経路の一例の要素の回路図を示す。この例では、電力受信機105は、LRXという名称で呼ばれる受信機コイル107を含む。この例では、受信機コイル107は共振回路の一部であり、それに応じて電力受信機105は共振コンデンサCRXも含む。受信機コイル107は電磁信号にさらされ、それに応じてAC電圧/電流がコイルに誘導される。共振回路は整流器ブリッジに結合され、ブリッジの出力に平滑コンデンサC1が結合される。したがって、コンデンサC1にDC電圧が生成される。DC電圧のリップルの大きさは、平滑コンデンサのサイズと負荷に依存する。
【0102】
ブリッジB1および平滑コンデンサC1は、参照符号RLで示される負荷503に結合されている。また、負荷503は単純な受動ポートとして示されているが、当然、任意の適切な負荷であってもよいことも理解されよう。例えば、負荷503は、充電されるべきバッテリ、携帯電話、または別の通信または計算デバイスであってもよく、単純な受動負荷などであってもよい。実際、負荷503は、外部負荷または専用の内部負荷である必要はなく、例えば、受電器105自体の要素を含んでもよい。したがって、図5および図6に示される負荷503は、受信機コイル107/電磁信号の任意の負荷を表すと考えられ得る。
【0103】
図6は、スイッチSのスイッチングに基づいて共振回路に並列に接続または切断できる負荷変調コンデンサC2をさらに示している。負荷変調器507/メッセージコントローラ511は、電力送信機101に送信されるべきデータに応じて変調コンデンサC2の負荷を接続および切断できるようにスイッチSを制御し、それにより負荷変調を提供するように構成される。
【0104】
電力受信機105は、電力送信機101との電力制御ループを確立するように構成された電力コントローラ509を含む。具体的には、電力コントローラ509は、電力制御メッセージを電力送信機101に送信することができ、それに応じて、電力送信機101は、電力伝送時間間隔中に電力伝送信号の電力レベルを変更し得る。通常、電力コントローラ509は、電力送信機101が電力レベルを増加または減少させる要求を示す電力制御エラーメッセージを生成し得る。電力コントローラ509は、測定された値を基準値と比較することにより、適切なエラーメッセージを決定してもよい。電力伝送中、電力コントローラ509は、提供された電力レベルを必要な電力レベルと比較し、この比較に基づいて増加または減少した電力レベルを要求してもよい。
【0105】
前述のように、システムは、電力伝送フェーズ中に、少なくとも1つの電力伝送時間間隔と1つの異物検出時間間隔を含む繰り返し時間フレームを適用する。そのような繰り返し時間フレームの例が図7に示されており、電力伝送時間間隔はPTで示され、異物検出時間間隔はDで示されている。この例では、各時間フレームFRMは、1つの異物検出時間間隔と1つの電力伝送時間間隔のみを含み、これら(および時間フレーム自体)は各フレームで同じ期間を持つ。しかしながら、他の実施形態では、他の時間間隔も時間フレームに含まれてもよく(例えば、通信間隔)、あるいは、複数の異物検出時間間隔および/または電力伝送時間間隔が各時間フレームに含まれてもよいことが理解されるだろう。特に、後で詳しく説明するように、一部の時間フレームには適応時間間隔が含まれることができる(または一部の時間フレームにおいて、異物検出時間間隔が適応時間間隔に置き換えられることができる)。さらに、いくつかの実施形態では、それぞれの時間間隔(および実際には時間フレーム自体)の持続時間は動的に変化し得る。
【0106】
したがって、このアプローチでは、異物検出と電力伝送が時間領域で分離されるため、電力伝送から異物検出への相互干渉が低減される。したがって、電力伝送の動作条件の変動に起因する変動性と不確実性は、異物検出から隔離され、より信頼性が高く正確な異物検出が可能になる。
【0107】
そして、電力伝送信号時間間隔において、電力送信機は、電力伝送フェーズの時間フレームの電力伝送時間間隔中に電力伝送を実行するように構成される。特に、これらの時間間隔の間に、電力送信機101および電力受信機105は、電力制御ループを動作させてもよい(電力制御ループは、電力伝送信号時間間隔内の通信に基づいてもよく、または、例えば、専用の通信時間間隔など、電力伝送信号時間間隔外の通信に基づいてもよい)。 例えば、各異物時間間隔は、複数の交互に起きる電力伝送信号時間間隔および通信時間間隔によって分離されてもよい。したがって、伝送される電力のレベルは動的に変化し得る。電力伝送フェーズの時間フレームの異物検出時間間隔では、駆動信号、したがって電磁試験信号の少なくとも1つのパラメータは、異物検出時間間隔の前に実行される適応動作中に決定された値に設定される。したがって、異物検出時間間隔において、パラメータは予め決定された値に設定されることができる(すなわち、異物検出時間間隔の前に、多くの場合、電力伝送段階の前に決定される)。対照的に、パラメータは、電力伝送時間間隔中にこの予め決定された値に制約されなくてもよい。
【0108】
例えば、電力伝送時間間隔中に、システムは、電力受信機からの電力制御メッセージに応じて電力伝送信号の電力レベルを変えることができる電力制御ループを動作させてもよい。電力制御ループは、駆動信号/電力伝送信号の電流、電圧および周波数の少なくとも1つを制御/変更することができる。対照的に、異物検出時間間隔の間、電力伝送時間間隔中に電力制御ループによって変更されたパラメータは、電力伝送フェーズの前に決定された所定の値に設定され得る。
【0109】
電力伝送信号と電磁試験信号の両方に同じコイルが使用される多くの実施形態では、電力送信機は、電力伝送時間間隔に対して異物検出時間間隔中に電力伝送信号のレベルを下げるように構成されてもよい。多くの状況では、電力伝送信号の電力レベルは、たとえば10-100Wのレベルなどの高レベルまで、または多くのアプリケーション(キッチン用品への電力伝送など)においてさらに大幅に増加する場合がある。しかしながら、異物検出時間間隔の間、生成される電磁信号の電力レベルは、電力伝送時間間隔中の現在のまたは最大許容電力よりもはるかに低い所定のレベルまで低減され得る。例えば、電力レベルは、1Wを超えない所定のレベルに設定されてもよい。言い換えると、異物検出時間間隔中の電磁試験信号の電力は、電力伝送時間間隔中の電力伝送信号の最大許容電力レベルよりも実質的に(例えば、2、5、または10倍以上)低い電力レベルに制約され得る。
【0110】
特定の異物検出時間間隔を含む時間フレームを適用することに加えて、システムは、生成される電磁試験信号の1つまたは複数のパラメータ(または特性)の値が多くの実施形態では電力伝送フェーズの前に実行できる適応プロセスに基づいて適応されるアプローチも適用する。したがって、この適応プロセスは、電力伝送フェーズの前に電磁試験信号の1つまたは複数のパラメータ/特性の好ましい値を決定し、その後の電力伝送フェーズの異物検出時間間隔中にこの好ましい値を適用する。いくつかの実施形態では、電力伝達フェーズ中に、適応プロセスを、例えば定期的に繰り返すことができる。
【0111】
電力送信機101は、具体的には、電力伝送フェーズ中に実行され得るが、多くの場合、電力伝送フェーズ前に追加的または代替的に実行される適応時間間隔中に試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成されたアダプタ213を備える。例えば、多くの実施形態では、電力伝送初期化フェーズが適応時間間隔を含むことができ、この電力伝送フェーズ前の適応時間間隔で決定された試験駆動信号パラメータ値は電力伝送フェーズを通して使用され得る。他の実施形態では、適応時間間隔は、代替または追加として、電力伝送フェーズ中に、例えば異物検出時間間隔を置き換えることにより、実施されることができ、新しく決定された試験駆動信号パラメータ値は、その後の異物検出時間間隔に使用される。したがって、異物検出時間間隔および電力伝送間隔に加えて、システムは1つまたは複数の適応時間間隔も使用する。システムは、異なる時間間隔で実行される少なくとも3つの異なる動作モードを含む。電力伝送中に、送電器から受電器への電力伝送が実行される少なくとも1つの電力伝送時間間隔と、異物検出が実行される1つの異物検出時間間隔とを含む繰り返し時間フレームが採用される。さらに、(少なくとも1つの)後続の異物検出時間間隔で使用されるべき試験駆動信号のパラメータの値を決定するために、適応動作が実行される1つ以上の適応時間間隔が採用される。適応時間間隔は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の繰り返し時間フレームに含まれてもよい。代替的または追加的に、適応時間間隔は、電力伝送に先行してもよく、例えば、電力伝送初期化フェーズの一部として実行されてもよい。
【0112】
したがって、異なる時間間隔で異なる動作が実行される。正確な異物検出を実行するために通常は定期的に電力伝送が繰り返される電力伝送動作を実現するために、電力伝送時間間隔と異物検出時間間隔が繰り返し、しばしば交互に実行される。さらに、システムは、別の適応時間間隔において、後続の異物検出試験が適応/較正される専用の適応動作を実行する。この適応/較正は、試験駆動信号のパラメータの値を決定することにより、特に、使用される試験駆動信号の周波数、電圧、電流、デューティサイクル、信号レベルおよび/または振幅の値を決定することにより、実行される。
【0113】
多くの実施形態では、適応時間間隔は、異物検出時間間隔および電力伝送時間間隔と重複しない。いくつかの実施形態では、異物検出を実行すると同時に適応を実行することが可能である。例えば、以下で説明するように、適応は、変動する試験駆動信号を生成し、この変動に基づいて試験駆動信号パラメータ値を決定することに基づく。いくつかの実施形態では、この変動中に異物検出も実行することができ、例えば、電力抽出が所定のレベルを超える場合、異物が検出されたとみなすことができる。
【0114】
しかしながら、ほとんどの実施形態では、適応時間間隔は、異物検出時間間隔と電力伝送時間間隔の両方とつながっていない/重複しない。多くの実施形態において、適応時間間隔は、電力伝送初期化の一部として含まれてもよく、(例えば、異物が存在しないことをユーザが手動で確認した後に)異物が存在しないという仮定の下で実行されてもよい。また、適応時間間隔は、電力伝送フェーズ中に実行される場合でも、異物検出時間間隔と電力伝送時間間隔とは別個で重複しない。例えば、いくつかの時間フレームは、1つ(または複数)の異物検出時間間隔および1つまたは複数の電力伝送間隔に加えて、適応時間間隔を含むこともできる。
【0115】
したがって、ほとんどの実施形態では、適応時間間隔は、異物検出時間間隔とつながっておらず/非重複で/分離されており、具体的には、通常の電力伝送および/または異物検出が実行されない適応時間間隔において適応が実行される。
【0116】
適応時間間隔の間、アダプタ213は、試験発生器211を制御して変動する試験駆動信号を生成するように構成される。したがって、アダプタ213は、試験生成器を制御することができ、その結果、例えば、試験駆動信号の電流(振幅)、電圧(振幅)、周波数、デューティサイクルおよび/またはレベルを変化させるなど、試験駆動信号の信号特性を変化させる。
【0117】
次に、アダプタ213は、試験駆動信号のこの変動の結果をモニタし、変動する試験駆動信号に対する決定された反応に基づいて適切な試験駆動信号パラメータ値を決定することができる。具体的には、アダプタ213は、特定の状態またはイベントが発生したことを検出するように構成され、特定のイベントが検出されたときの変動する試験駆動信号の特性に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定することができる。
【0118】
例えば、アダプタ213は、試験駆動信号、ひいては電磁試験信号のレベル(例えば、電流または電圧振幅)を変えることができ、受電器がメッセージを送信することにより試験信号が大きすぎることを示すときを検出することができる。その後の異物検出時間間隔の試験駆動信号のレベルは、(ちょうど)大きすぎることを受電器が示すときの試験駆動信号のレベルに基づいて設定されることができる。例えば、試験駆動信号のレベルは、例えば、大きすぎることを受電器が示したときの試験駆動信号のレベルよりも10%低くなるように設定されることができる。
【0119】
別の例として、アダプタ213は、試験駆動信号の周波数を変えることができ、適応時間間隔中に試験コイルに供給される電流を連続的にモニタすることができる。多くの実施形態では、試験コイルは共振回路の一部であり、周波数が共振周波数に近づくにつれて電流が増加する。電流が所定の閾値に達する周波数を検出し、これが発生したときの試験駆動信号の周波数を決定し、その後の異物検出時間間隔における試験駆動信号に使用することができる。
【0120】
さらに別の例として、アダプタ213は、試験駆動信号のデューティサイクルを変更してもよい。デューティサイクルが50%に近いと、電力受信機において最も強い誘導信号が生成されることができ、一方、デューティサイクルが0%に近い(または100%に近い)と、誘導信号が小さくなる。したがって、デューティサイクルは、例えば0%(または100%)から50%に向かって徐々に変更されることができ、その結果、誘導信号のレベルが徐々に増加する。たとえば、或る測定された電力または電流に達するデューティサイクルが記録されることができ(または、例えば、誘導信号が所望のレベルに到達したことを示すメッセージが電力受信機から受信されるデューティサイクルが記録されることができ)、このデューティサイクルが、その後の異物検出時間間隔に使用されることができる。いくつかの実施形態では、デューティサイクルは、試験駆動信号がゼロでない値を有する時間の割合と見なされ得ることが理解されるであろう。他の実施形態では、デューティサイクルは、試験駆動信号が非ゼロ値かつ所定の極性を有する時間の割合と見なすことができる。
【0121】
したがって、いくつかの実施形態では、アダプタ213は、或る状態またはイベントが検出されたときの変動する試験駆動信号の特性の値に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定することができる。
【0122】
アダプタ213は、決定された試験駆動信号パラメータ値を記憶するようにアダプタ213が構成されるメモリ215に結合される。その後の異物検出時間間隔では、アダプタ213は、試験駆動信号パラメータ値を読み出し、これを試験生成器211に提供することができる(または試験生成器211はそれを直接読み出すことができる)。次に、試験発生器211は、試験駆動信号パラメータ値に応じて試験駆動信号の信号特性を設定する。通常、試験駆動信号パラメータ値は、試験生成器211によって所望の信号特性として直接使用されてもよい(例えば、格納される試験駆動信号パラメータ値は、後続の異物検出時間間隔中に使用されるテスト駆動信号の周波数、デューティサイクル、またはレベルであり得る)。 多くの実施形態では、検出されるイベントまたは状態は、受電器の一部の回路がテスト駆動信号から電力を抽出し始め、具体的には受電器または負荷のバッテリまたは他のエネルギー貯蔵器が電力を抽出し始めることである。
【0123】
例えば、多くの実施形態では、電磁試験信号のレベルが十分に小さい限り、電磁試験信号から抽出される電力は最小限である。しかしながら、レベルが所定のレベルを超えて増加する場合、多くの実施形態において、電力受信器が電磁試験信号から電力を抽出し始める。
【0124】
このアプローチは、同じドライバとコイル、すなわち出力共振回路によって生成される(したがって、同じ周波数帯域の周波数を持つ傾向がある)という意味で、電磁試験信号と電力伝送信号が同じ信号である実施形態に特に適し、有利であり得る。以下の説明はそのような実施形態に焦点を合わせ、したがって、電力伝送信号、ドライバ201、および送信コイル103への参照は、それぞれ電磁試験信号、試験発生器211、試験コイル209への参照に相当し、その逆も同様である。したがって、以下の説明は、明確さと簡潔さのために、ドライバ201が試験生成器211を実装し、送信コイル103が試験コイル209を実装し、生成される電力伝送信号と電磁テスト信号が(異なる時間間隔における)パラメータが変更された同じ信号と見なすことができる実施形態に向けられる。したがって、以下の説明では、電力伝送信号、ドライバ201、および送信コイル103を参照する傾向があるが、これらの参照は、必要に応じて試験発生器211、試験コイル209、および電磁試験信号への参照に置き換えることができることを理解されたい。図8は、特定の例示的なアプローチによる図1の電力送信機を示している。
【0125】
送電器101および受電器105の電力伝送経路の原理図を示す図9をさらに参照して、特定の例について説明する。この例では、送信コイル103は受信共振コンデンサ901とともに共振回路を形成し、同様に受信コイル107は受信共振コンデンサ903とともに共振回路を形成する。これにより、当業者に分かるように、多くの実施形態でより効率的な電力伝送が可能になるだろう。また、駆動信号の周波数を制御することにより、電力伝送信号を制御することもできる。
【0126】
この例では、受信共振回路は、受信コイル107の誘導電流/電圧を整流する整流器ブリッジ(D1-D4)を介して電力受信器の残りの部分に結合される。さらに、コンデンサまたはバッテリ905(または他の適切なエネルギー貯蔵器)が、整流ブリッジを横断して結合され、当技術分野で周知のように整流電流/電圧を平滑化する。この例では、負荷503がバッテリ905を直接横断して結合されるように示されている。したがって、この例では、負荷503は、主負荷503および電力伝送信号から電力を供給される電力受信機の他の(例えば制御)回路の両方を含む、電力伝送信号によって電力を供給される総負荷を表すと見なされ得る。
【0127】
異物検出を可能な限り正確に実行するために、異物検出中に受電器による電力伝送信号の負荷の影響を最小限に抑えることが望ましい。これは、電力伝送信号の全体的な負荷を軽減し、これにより、異物による電力伝送信号の負荷を検出しやすくなる(例えば、電力受信機(例えば、友好的な金属を含む)によって電力伝送信号から抽出される電力が減少すると、異物によって抽出される電力が検出しやすくなる)。さらに、それは、異物検出時間間隔中の動作条件の変動を低減する傾向があり、それにより、異物の存在によって引き起こされる変化を検出しやすくする。
【0128】
異物検出を改善するためのオプションは、異物検出時間間隔中に負荷503を切断することである。これは、例えば、負荷503と一列に負荷スイッチS1を含めて、異物検出時間間隔の開始時に負荷スイッチを開き、異物検出時間間隔の終了時に負荷スイッチを閉じることにより実現され得る。ただし、このようなアプローチでは、スイッチの異物検出時間間隔への非常に精密な同期が必要になるため、送電器と受電器が精密に同期している必要がある。しかしながら、これにより複雑さが増し、実際に達成するのが困難になる場合がある。
【0129】
さらに、このアプローチでは、すべての受電装置に負荷スイッチと対応する制御機能とを装備する必要があり、それによりコストと複雑さが増す(たとえば、不正な受電装置が負荷を切断できない場合、システムの堅牢性が低下する可能性がある)。
【0130】
また、従来の電力受信機には異物検出時間間隔中に負荷を切断する機能がないため、このアプローチは後方互換性を低下させる可能性がある。
【0131】
さらに、負荷がないと整流器の電圧が大幅に上昇する可能性があり、これにより、脆弱な電子回路が高電圧にさらされて、この回路が損傷する危険性があるため、負荷の能動的な切断は望ましくない場合がある。これは特に、送電器と受電器間の同期が理想的でない場合である。
【0132】
しかしながら、現在のアプローチのいくつかの実施形態によれば、負荷503は、異物検出時間間隔の間電力伝送信号が誘導電圧ではどの整流器も導通できないほど非常に低いレベルに制御されることにより、電力伝送信号から(ただし電力受信機からではない)効果的に切断されることができる。
【0133】
例えば、電力伝送時間間隔中、電力伝送信号は(電力制御ループによって)制御されて、バッテリが例えば約12Vの平均電圧を得るのに十分な電力を伝送することができる。異物検出時間間隔の間、電力伝送信号をはるかに低い値に設定して、誘導信号がたとえば6Vの電圧を超えないようにすることができる。したがって、バッテリ電圧がこの電圧を下回らないように異物検出時間間隔が十分に短い限り、整流器は導通せず、負荷503(および実際にバッテリー)は電力伝送信号から効果的に切断される。したがって、この場合、電力伝送信号の負荷は友好金属の負荷に限定され、それによってはるかに正確な異物検出が可能になる。
【0134】
しかしながら、そのようなアプローチは、多くのシナリオでパフォーマンスを向上させる可能性がある一方(たとえば、異物検出時間間隔中に負荷503をバッテリ905に連続的に接続できるようにする)、電力伝送信号(ひいていは駆動信号)の最適な設定を見つけることは、多くのシナリオにおいて困難な作業である。一方では、整流器が導通せず、電力受信器による電力伝送信号の負荷が最小限に抑えられることを保証するために、電力伝送信号のレベルが可能な限り低いことが望ましい。しかしながら、同時に、異物の検出の確率を改善するために、レベルができるだけ高いことが望ましい。
【0135】
この問題は、動作条件が予測不可能であり、シナリオや受電装置によって異なる傾向があるという事実によってさらに悪化する。たとえば、バッテリが電流を引き出し始めるポイントは、異物検出時間間隔の持続時間(つまり異物検出時間間隔中に変化する場合がある)、受電器の負荷、バッテリ電圧などに依存する場合がある。
【0136】
いくつかの実施形態では、試験駆動信号/電力伝送信号の適切な設定は、電力伝送信号を変化させて、電力受信機の所定の回路が電流を流し始める点を検出する適応時間間隔中にシステムによって決定されることができる。例えば、送信コイル103の駆動信号のレベルが非常に低い値から増加される場合、受信機での誘導電圧は、バッテリ905の電圧を超えない(例えば、バッテリは、前のフェーズ中に、または、例えば、適合時間間隔が電力伝送フェーズ中にある場合の電力伝送時間時間間隔中に、適切なレベルに事前充電されているだろう)。しかしながら、信号レベルが増加すると、誘導された信号は、ある段階において、整流器が導通を開始して、バッテリが電力伝送信号から電流を引き出すレベルに達する。このレベルが、(後述するように、直接または間接的に、受電装置または送電装置によって)検出される。次いで、この時点での試験駆動信号のパラメータが決定され、後続の異物検出時間間隔中に試験駆動信号に使用する適切なパラメータ値が決定され得る。例えば、そのレベルは、バッテリ905が電流を引き出し始め始めることが検出されたレベルに対して、例えば、50%低くすることができる。
【0137】
したがって、このアプローチは、異物検出時間間隔中のテスト駆動信号の適切なパラメータの改善された設定を可能にすることができ、負荷503が電力伝送信号から効果的に切り離されることを依然として保証しながら、電磁試験信号を可能な限り大きくすることができる。
【0138】
このアプローチは、電力受信機での誘導電圧がバッテリ905(または、例えば、コンデンサー)の(最小)電圧よりも低く、異物検出時間間隔において電磁試験信号を適用することにより、受電器の負荷503を暗黙的に切断することを伴い得る。多くのシナリオでの有利な結果は、整流器を導通させるのに必要な電圧よりもわずかに低い誘導電圧が得られる電磁テスト信号を適用することである。これにより、負荷を電力伝送信号から切り離したまま、最大の電磁テスト信号レベルが可能になる。
【0139】
説明されたアプローチでは、システムは、適応時間間隔中に、電磁試験信号が変化して受電器で誘導される電圧が変化するように、試験駆動信号を変化させるようになっている。具体的には、電力伝送信号/誘導信号のレベルは、適切な値を決定するために、そして典型的には、整流器が導通を開始して電力がバッテリに供給されるように誘導信号が十分に高いレベルを検出するために、適応時間間隔中に変化されることができる。多くの実施形態では、電力伝送信号のレベルは、出力回路によって変化される試験駆動信号の電圧および/または電流によって(たとえば、変化するインバータへの供給電圧によって)直接変化されることができる。他の実施形態では、試験駆動信号の(したがって、電力伝送信号および誘導信号の)周波数を変更することにより、電力伝送信号を変更することができる。共振出力回路を使用する実施形態では、これは、受電器における変動する誘導信号レベルに直接変換される。適応時間間隔中に決定され、後続の異物検出時間間隔中に適用されるパラメータは、適応時間間隔中に変化したパラメータと同じであり、具体的にはテスト駆動信号の電流、電圧、レベルおよび/または周波数であることが理解されるだろう
。また、いくつかの実施形態では、複数のパラメータを変更し、決定し、将来の異物検出時間間隔で使用できることも理解されよう。
【0140】
いくつかの実施形態において、適切な動作状態の検出は、電力受信機105において実行されてもよく、これは、この検出が行われたことを示すメッセージを電力送信機101に伝達してもよい。具体的には、電力受信器105は、通常はバッテリまたはコンデンサなどのエネルギー貯蔵器である所定の回路に流れる電流を測定し、電流が特定の条件を満たしていることを示すメッセージを電力送信器101に送信するように構成されてもよい。典型的には、電力受信機105は、電流が回路に流れ始めたことを検出し、これが起こったときに電力送信機101にメッセージを送信するように構成されてもよい。
【0141】
したがって、メッセージ受信機205は、電力受信機105から検出メッセージを受信するように構成され、これが起こると、検出メッセージが受信されたことがアダプタ213に通知される。次に、アダプタ213は、このメッセージに応答してテスト駆動信号パラメータ値を決定することに進む。典型的には、検出メッセージは検出のタイミングを示し、アダプタ213は、検出が示された時点における変動するパラメータの値に応じて試験駆動信号パラメータ値を設定する。
【0142】
いくつかの実施形態では、メッセージのタイミング自体が検出のタイミングの表示であり得る。例えば、アダプタ213は、適合時間間隔中に、試験駆動信号の周波数を、送電器および受電器の共振周波数から比較的遠い値からこれに近い周波数に向かってゆっくりと変化させることができる。これにより、受電器における誘導電圧が増加し、ある段階でこれがバッテリの電圧を超えて、電流がこれに流入し始める。受電器は、整流器を流れる電流を継続的に測定し、電流が流れ始めたことを検出する。それに応じて、検出メッセージが電力送信機に送信され、これを受信したことに応答して、電力送信機101は、現在の周波数を記録し、後続の異物検出時間間隔中に適用する適切な周波数を決定するためにアダプタ213を起動し得る。例えば、比較的高い電磁試験信号レベルをもたらしつつも、依然として受電器で誘導される電圧が整流器が導通しないようにするために十分に低く、負荷が電力伝送信号から効果的に切り離されることを保証する電磁試験信号の駆動周波数を生成するために、現在の値に所定の周波数オフセットを適用することができる。
【0143】
そのようなアプローチは、適応時間間隔が十分に長く、テスト駆動信号の変動が十分に遅く、通信遅延を許容可能にする実施形態に適しているだろう。受電器105での検出から送電器でのパラメータの決定までの遅延中の試験駆動信号パラメータの変化は、例えば、最大遅延中のテスト駆動信号の周波数変動よりも大きい適切に大きな周波数オフセットを適用することにより、試験駆動信号パラメータ値の決定の際に補償され得る。
【0144】
他の実施形態では、電力受信機からのメッセージは、追加的または代替的に、電流の検出の時間を直接示すデータを含んでもよい。次いで、電力送信機は、示された時間の試験駆動信号パラメータ値を決定し、このパラメータを使用して、異物検出時間間隔のための好ましい試験駆動信号パラメータ値を設定してもよい。そのようなアプローチは、いくつかの実施形態では、試験駆動信号パラメータ値のより正確な設定を可能にし、例えば、より小さな周波数オフセットを使用できるようにするが、送電器と受電器との間のより正確な時間同期を必要とする傾向がある。
【0145】
いくつかの実施形態では、アダプタ213は、電力受信機からのメッセージに応じて適応時間間隔中に試験駆動信号のパラメータを変更するように構成されてもよい。例えば、システムは、周波数や振幅などの試験駆動信号の所与のパラメータを電力送信機が変更することを要求する制御メッセージを電力受信機が送信し、電力送信機がそれに応じてパラメータの変更を進めることができる、適応モードに入ることができる。受電器は、整流器が電流を流すかどうかを新しい動作点で測定する。流さない場合、受電装置での誘導電圧/電流を増加させて測定を繰り返すために、試験駆動信号パラメータの変更を要求することができる。整流器が実際に電流を流していることを受電器が検出するまで、これを繰り返すことができる。これが検出されると、代わりに電力受信機は、この状態が検出されたこと、ひいては、パラメータの現在の設定では負荷が電力伝送信号から完全に切り離されないことを示すメッセージを送信することができる。次に、アダプタ213は、試験駆動信号パラメータの現在のレベルに基づいて、または例えば以前のレベルに基づいて、異物検出時間間隔において使用されるべき試験駆動信号パラメータ値の決定に進むことができる(たとえば、整流器を流れる電流が検出されない最高レベルに設定することができる)。
【0146】
受電器ベースのアプローチは、多くの実施形態において適切な試験駆動信号パラメータ値の正確な決定を提供し得る。ただし、複雑さを増す可能性があり、特に電力受信機がこのような動作に対応している必要がある。これは、たとえば、すでに展開されているシステムにこのアプローチが導入される場合、すべてのレガシー電力受信機に当てはまるわけではない。
【0147】
いくつかの実施形態では、電力送信機は、電力受信機からのメッセージに依存することなく適切な動作点を検出するように構成されてもよい。アダプタ213は、試験駆動信号の周波数、電流、電圧、電力、振幅、またはレベルなどの試験駆動信号を変化させるときに、試験駆動信号の信号特性を測定するように構成されてもよい。次いで、テスト駆動信号パラメータ値が、測定された信号特性に応じて決定され得る。通常、測定される信号特性は、アダプタ213によって変更されるものとは異なる。例えば、アダプタ213は、試験駆動信号の周波数を変えることができ、例えば、送信コイル103に供給される電流および/または試験駆動信号の電圧(振幅)を測定することにより、電力送信機から抽出される電力をさらに測定することができる。次に、この測定に基づいてテスト駆動信号パラメータ値を決定し、通常、測定された特性が所定の条件を満たすときの、変更されるテスト駆動信号のパラメータの値からテスト駆動信号パラメータ値を決定することができる。例えば、テスト駆動信号パラメータ値は、測定された電流または電圧が特定の基準を満たすときのテスト駆動信号周波数から決定されることができる。
【0148】
簡単な例として、試験駆動信号パラメータ値は、測定された電流または電圧が所与のレベルを超える周波数に対する所定の周波数オフセットに対応する周波数として決定される周波数であってもよい。多くの実施形態では、アダプタ213は、信号特性の変化率に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成されてもよい。変化率は、変化するパラメータの変化率(通常は、時間に対する変化率に相当する)に対して決定されることができ、具体的には、周波数の変化に対する駆動信号の測定された電流または電圧(の振幅)の変化率などである。次に、アダプタ213は、変化率を評価することにより特定の動作条件を検出することができ、試験駆動信号パラメータ値は、この駆動条件が検出されたときの変化するパラメータの値に基づいて決定されることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、試験駆動信号パラメータ値は、送信コイル103に供給される電流の変化率が所与の所定の閾値を超えることが検出されたときの試験駆動信号周波数に固定の周波数オフセットを適用することにより決定されることができる。
【0149】
多くの実施形態では、アダプタ213は、信号特性の変化率の変化を検出したときの試験駆動パラメータの値に応じて試験駆動信号パラメータ値を決定するように構成され得る。具体的には、多くの実施形態では、テスト駆動信号の測定された電流および/または電圧(の振幅)の変化率の変化によって、受電器の整流器が導通し始めるポイント、したがって電力受信機が電力伝送信号から電力の抽出を開始する(および負荷を電力伝送信号に結合する)ポイントが検出される。多くのシナリオでは、測定されたパラメータの変化率のこのような変化の検出は、測定された特性がしきい値を超えて増加することに基づく検出よりも正確な検出を提供する。
【0150】
整流器が導通し始める正確なポイントは、通常、バッテリ/コンデンサの電圧にも依存する。ただし、提供されたエネルギー貯蔵器が適応間隔の期間および経験される最大負荷に対して十分に大きい場合、電圧は適応間隔中に比較的一定であり得る。他の実施形態では、エネルギー貯蔵電圧の低下は、試験駆動パラメータ値を決定するために補償されてもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵器の負荷は、例えば、適応間隔中に負荷503を切断することにより、適応間隔中に低減され得る。
【0151】
前述のように、ドライバ201および/または試験生成器211は、フルブリッジまたはハーフブリッジスイッチ回路の形態の出力回路で実装されてもよい。ドライバ201と試験生成器211が同じ出力回路を使用して実装されているいくつかの実施形態では、ドライバ201の出力回路は、異物検出時間間隔中にテスト駆動信号を生成し、電力伝送間隔中に電力伝送駆動信号を生成するフルブリッジスイッチ出力回路であってもよい。
【0152】
いくつかのそのような実施形態では、フルブリッジスイッチ出力回路の動作モードは、電力伝送時間間隔中のフルブリッジ動作モードから異物検出時間間隔中のハーフブリッジ動作モードに変更される/切り替えられることができる。したがって、フルブリッジスイッチ出力回路の動作は、生成される駆動信号の目的に応じて時間間隔において異なる場合がある。
【0153】
フルブリッジスイッチ出力回路がフルブリッジモードで動作している場合、送信コイル103を備え、フルブリッジスイッチ出力回路からの駆動信号によって駆動される電力伝送出力回路(への接続)の両側における電圧を変化させるように構成される。フルブリッジスイッチ出力回路がハーフブリッジモードで動作している場合、送信コイル103を備え、フルブリッジスイッチ出力回路からの駆動信号により駆動される電力伝送出力回路(への接続)の片側のみで電圧を変化させるように構成される。言い換えれば、フルブリッジスイッチ出力回路は、送信機コイル103を含む電力伝送出力回路への2つの接続を提供する。フルブリッジモードでは、これらの接続の両方において切り替えられる/変動する電圧が発生するが、ハーフブリッジモードでは、接続の一方は実質的に一定の電圧に保たれる。
【0154】
ほとんどの実施形態では、フルブリッジスイッチ出力回路がハーフブリッジモードで動作する場合に比べて、フルブリッジスイッチ出力回路がフルブリッジモードで動作する場合に生成されるテスト駆動信号の電圧は2倍になる。
【0155】
具体的な例として、フルブリッジスイッチ出力回路は、フルブリッジモードで動作している場合、両方のレッグの接続ポイントで電圧が変化するように、ブリッジの2つのレッグを駆動する/切り替えることができる。駆動信号を制御して、2つのブリッジ・レッグQ1/Q2およびQ3/Q4の駆動周波数と2つのレッグ間の位相を変化させることができ、図14に示すように、振幅がUdcでデューティサイクルがDutyの方形波駆動電圧をもたらす。この電圧は、送信機コイル103を含む電力伝送出力回路を駆動し、特定の例では共振コンデンサCTXも駆動する。
【0156】
フルブリッジスイッチ出力回路がハーフブリッジモードで動作している場合、たとえばスイッチQ4を連続的に短絡させたまま、一方のレッグ(たとえばQ1/Q2)の駆動/スイッチ信号の周波数を変えることができる。 これにより、電力伝送出力回路の片側が一定の電圧に保たれ、図14に示すように、0.5 * Udcの振幅の方形波駆動電圧が得られる。したがって、この電圧は、特定の場合に送信コイル103と共振コンデンサCTXを含む電力伝送回路を駆動する。言い換えれば、フルブリッジスイッチ出力回路は、送信機コイル103を含む(および特定の例では共振コンデンサCTXも含む)電力伝送出力回路を駆動するための2つの回路構成を効果的に提供し得る。フルブリッジモードでは、これらの接続の両方で切り替えられる/変動する電圧が発生するが、ハーフブリッジモードでは、接続の1つが実質的に一定の電圧に保たれる。
【0157】
特定の例では、電力伝送出力回路(送信コイル103(LTX)および特定の例では共振コンデンサCTXも含む)を駆動する(たとえば図9のインバータの形の)フルブリッジスイッチ出力回路は、負荷に電力を転送している間はフルブリッジモードで動作し、異物検出の時間間隔ではハーフブリッジモードで動作するように制御される。さらに、2つのモード間の移行は、多くの実施形態において漸進的に行われ、設定可能な時間にわたって広がる。これにより、多くのシナリオで、異物検出時間間隔における測定を開始するときに信号が安定し、さらに可聴ノイズとEMCの問題が軽減されることが保証される。
【0158】
このアプローチの利点は次の通り:
【0159】
電力伝送中、インバータはフルブリッジモードで動作し、フルブリッジの周波数および/または(左右のブリッジ・レッグ間の位相シフトを制御することにより)デューティサイクルを調整することによって、伝送される電力を制御できる。これにより、例えば100 kHzから142 kHzの間のように周波数範囲を制限したままで、電力伝送の広い制御範囲が可能になる。
【0160】
ハーフブリッジモードでは、駆動信号の振幅は半分になり(0.5 * Udc)、そしてこれにより、送信機コイルに同じ電流を流しながら、振幅Udcの駆動信号でデューティサイクルが小さいフルブリッジモードと比較して、電力受信機の負荷への漏れ電流が大幅に減少する。これは、ハーフブリッジモードでは、デューティサイクルが小さいフルブリッジモードと比較して、大幅に高い送信機コイル電流を適用できると同時に、電力受信機の負荷への漏れ電流を同じレベルに維持できることを意味する。
【0161】
多くの実施形態では、フルブリッジモードとハーフブリッジモード(どちらの方向でも)との間の変更/切り替えは、漸進的な移行であり得る。多くの実施形態では、移行は、100マイクロ秒以上、200マイクロ秒以上、または500マイクロ秒以上の持続時間を有し得る。移行は、例えば、図14の例に示されるように、スイッチ信号の1つのデューティサイクルの漸進的な変化によって漸進的になされることができる。デューティサイクルは、たとえば、フルブリッジモードで動作しているときの約50%からハーフブリッジモードで動作しているときの実質的にゼロに変更できる(通常、フルブリッジ出力回路の残りの半分のスイッチ信号のデューティサイクルは一定で、両方の動作モードで通常約50%である)。
【0162】
多くの実施形態では、試験駆動信号パラメータ値は、異物検出時間間隔中と同じ動作モードを使用してさらに決定され、すなわち、ドライバ201/試験発生器211は、適応時間間隔中にハーフブリッジモードで動作するように構成される。
【0163】
以下では、図9を参照してそのようなアプローチの特定の例を説明する。
【0164】
この例では、電力伝送時間間隔において、電力送信機は、周波数とフルブリッジインバータの左右のブリッジ・レッグ間の位相とを調整することにより、電力伝送信号を制御する。
【0165】
異物検出モードでは、すなわち、異物検出の時間間隔中に、電力送信機は、たとえばQ4を短絡状態にしてQ3を開いたままにすることで、ハーフブリッジモードで動作し、電磁試験信号は、試験駆動信号の周波数を調整することで制御されることができる。
【0166】
電力送信機は、DC電圧源からインバータに供給されるDC電力を測定することにより、消費電力を測定できる。さらに、インバータと共振タンクの損失を差し引くことにより、送信された電力(電力送信機の外部で消費された電力=電力受信機によって消費された電力+存在する異物によって消費された電力)を推定することができる。
【0167】
異物が存在しない状態でインバータへの入力電力が測定される特定の電磁テスト信号に対して、(電力送信機および電力受信機における電力損失は変更されていないと仮定して)入力電力の変化(増加)は異物における電力損失が発生している可能性があることを示している。
【0168】
適応時間間隔の前に、異物が存在せず、したがってシステムは試験駆動信号の適切な設定を決定して適切な電磁試験信号を生成することに進むことができる
ことを確認することができ、結果は保存されて、前述のように後続の異物検出時間間隔で使用できる。次いで、電力送信機は、異物検出時間間隔中にインバータへの入力電力を測定し、適合時間間隔中に測定された値との差を計算することができる。この差が所定のしきい値を超えて増加した場合、異物が検出されたと判断されることができる。
【0169】
インバータは、電力伝送時間間隔ではフルブリッジモードで動作し、適応時間間隔および異物検出時間間隔ではハーフブリッジモードで動作するように制御される。
【0170】
図10は、それぞれフルブリッジおよびハーフブリッジインバーターモードの動作周波数の関数としてのピークツーピーク送信機コイル電流の例を示している。1つの曲線1001は、デューティサイクルが50%(90度の位相シフト)のフルブリッジモードで動作する場合の送信機コイル電流を示し、2つ目の曲線1003は、ハーフブリッジモードで動作する場合の送信機コイル電流を示す。この例では、フルブリッジモードを適用する場合は165 kHzで、ハーフブリッジモードで動作する場合は120 kHzで、電力受信機の整流器が導通し始めることが判明した。これらの2つの状況で得られた送信機コイル電流の測定値は、それぞれ2A及び4.3Aピークピークであった。したがって、この例は、ハーフブリッジ動作モードには、整流器が導通を開始する前に、非常に高い電磁試験信号フィールドを生成するという利点があることが判明したことを示している。これにより、異物における電力消費を大幅に簡単に検出できる。
【0171】
漸進的な移行の持続時間は、異なる実施形態では異なり得、正確な動的特性は、個々の実施形態の個々の選択および要件に依存し得ることが理解されるだろう
。しかしながら、多くの実施形態では、フルブリッジモードからハーフブリッジモードへ、およびハーフブリッジモードからフルブリッジモードへの移行期間は、10ミリ秒以上、20ミリ秒以上、30ミリ秒以上、50ミリ秒以上、または100ミリ秒以上である。
【0172】
2つのモード間の漸進的な/穏やかな移行は、さまざまな態様で実現できる。1つのオプションは、フルブリッジスイッチ出力回路の左ハーフブリッジと右ハーフブリッジの制御タイミングを徐々に変更することである。
【0173】
たとえば、フルブリッジモードでは、Q1の左アップ制御信号は動作サイクルの50%の間にアクティブになり、一方、Q2の左ダウン制御信号は動作サイクルの相補的な50%の間にアクティブになる。同じことがQ3とQ4にも当てはまる。フルブリッジ動作のデューティサイクルは、Q1、Q2の組み合わせとQ3、Q4の組み合わせの間で位相をシフトすることによって実現される。
【0174】
ハーフブリッジモードでは、フルブリッジの半分、たとえばQ3、Q4の組み合わせは、フルブリッジモードと同じように制御され、一方、残りの半分、たとえばQ1、Q2の組み合わせでは、1つの部分、たとえばQ1は開いたままであり、一方、他の部分、例えばQ2は短絡している。たとえば、Q1の左アップ制御信号は動作サイクルの0%の時間にアクティブになり、一方、Q2の左ダウン制御信号は動作サイクルの100%の時間にアクティブになる。
【0175】
フルブリッジからハーフブリッジへの穏やかな移行は、2つのレッグのうちの1つの上下の制御信号間のアクティブ化時間の比率を、50%アップと50%ダウンから0%アップと100%ダウンへと徐々に変更することで実現できる。フルブリッジからハーフブリッジへのこの穏やかな移行は、たとえば20動作サイクルで実現でき、各サイクルでは、動作サイクルの2.5%で上のレッグが減少し、動作サイクルの2.5%で下のレッグが増加する。ハーフブリッジからフルブリッジへの穏やかな移行は、逆の動作で実現できる。
【0176】
上記のアプローチに従って動作するインバータの信号の例を図12に示す。この図において、上の信号はインバータによって生成されたテスト駆動信号の電圧に対応し、中央の図は送信コイル103を流れる電流を示し、下の信号は異物検出時間間隔のタイミングを示す制御信号である。図13図14は、それぞれフルブリッジモードからハーフブリッジモードへの移行、およびハーフブリッジモードからフルブリッジモードへの移行に対する、インバータのトランジスタの対応する制御信号を示している。
【0177】
ほとんどの実施形態では、適応時間間隔中に値が決定されるパラメータは、変更されるパラメータと同じであることが理解されよう。例えば、アダプタ213は、試験駆動信号の電圧を変化させ、例えば電流が増加し始める(受電器の整流器が導通し始めることを示す)電圧を決定することができる。次いで、後続の異物検出時間間隔で使用する試験駆動信号の電圧は、例えば、所定のマージンだけ低減した検出された電圧として決定され得る。同じアプローチが、例えば、電流、信号レベル、振幅、または周波数に使用されてもよい。他の実施形態では、変更されるパラメータは、値が決定されるパラメータと異なっていてもよい。例えば、アダプタ213は、電圧を変化させ、電流が実質的に増加し始めるときを検出することができる。後続の異物検出時間間隔の電流は、検出されたレベルを超えないように制限される。
【0178】
他の実施形態では、アダプタ213は、1つのパラメータを変更し、所与のイベント(例えば、電流が増加するか、電力受信機からメッセージが受信される)が発生する値を検出することができる。次に、変化するパラメータの決定された値に基づいて、別のパラメータの値を決定する。
【0179】
例えば、アダプタ213は、所与の不変の周波数に対して電圧を変化させ、電流が増加する(電力受信器の整流器が導通し始める)ときを検出することができる。これが発生する電圧は、電圧を周波数に関連付ける所定のルックアップテーブルにおけるルックアップテーブルの入力パラメータとして使用されることができる。たとえば、設計または製造段階で、適切な周波数を検出された電圧に関連付けるためにいくつかのテストが実行されることができ、これに基づいてルックアップテーブルが生成されることができる。いくつかの実施形態では、変更されるパラメータのパラメータ値を別のパラメータの適切な値に関連付けるための式を決定するためのテストが実行され、アダプタ213はこれらを使用して適切なパラメータ値を決定し得る。
【0180】
明確にするための上記の説明は、異なる機能回路、ユニット、およびプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明したことが理解されるであろう。しかしながら、本発明を損なうことなく、異なる機能回路、ユニットまたはプロセッサ間での機能の任意の適切な分配を使用できることは明らかであろう。例えば、別個のプロセッサまたはコントローラによって実行されるように示されている機能は、同じプロセッサまたはコントローラによって実行されてもよい。したがって、特定の機能ユニットまたは回路への参照は、厳密な論理的または物理的な構造または組織を示すのではなく、説明した機能を提供するための適切な手段への参照とのみ見なされる。
【0181】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせを含む任意の適切な形式で実装することができる。本発明は、オプションとして、少なくとも部分的に、1つ以上のデータプロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサで実行されるコンピュータソフトウェアとして実装されてもよい。本発明の実施形態の要素およびコンポーネントは、任意の適切な方法で物理的、機能的、および論理的に実装されてもよい。実際、機能は、単一のユニット、複数のユニット、または他の機能ユニットの一部として実装されてもよい。したがって、本発明は、単一のユニットで実施されてもよく、または異なるユニット、回路、およびプロセッサ間で物理的および機能的に分散されてもよい。
【0182】
本発明はいくつかの実施形態に関連して説明されたが、本明細書に記載された特定の形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。加えて、或る特徴が特定の実施形態に関連して説明されるように見えるかもしれないが、当業者は、説明される実施形態の様々な特徴が本発明に従って組み合わされ得ることを認識するであろう。請求項において、含む、有するという用語は、他の要素またはステップの存在を排除しない。
【0183】
好ましい値への参照は、異物検出初期化モードで決定された値である以上の制限を意味しないこと、すなわち、適応プロセスで決定されるために好ましいことが理解されるであろう。好ましい値への参照は、たとえば第一の値への参照に置き換えることができる。
【0184】
さらに、個々にリストされているが、複数の手段、要素、回路、または方法のステップは、たとえば単一の回路、ユニット、またはプロセッサによって実装されてもよい。加えて、個々の特徴は異なる請求項に含まれる可能性があるが、これらは有利に組み合わされる可能性があり、異なる請求項に含まれることは、特徴の組み合わせが実現可能および/または有利でないことを意味しない。また、クレームの1つのカテゴリに或る特徴を含めることは、このカテゴリへの制限を意味するものではなく、その特徴が必要に応じて他のクレームカテゴリに等しく適用できることを示する。さらに、クレーム内の特徴の順序は、それらの特徴が動作しなければならない特定の順序を意味するものではなく、特に方法クレーム内の個々のステップの順序は、ステップがこの順序で実行されなければならないことを意味しない。むしろ、ステップは任意の適切な順序で実行されてもよい。さらに、単数の参照は複数を除外しない。したがって、「a」、「an」、「first」、「second」などへの言及は、複数を排除するものではない。 特許請求の範囲の参照符号は、明確化のための例として提供されているに過ぎず、特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
図1
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