(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】非侵襲血糖測定器及び血糖測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/359 20140101AFI20240722BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240722BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01N21/359
A61B5/1455
G01N21/01 B
(21)【出願番号】P 2020528426
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 CN2019101773
(87)【国際公開番号】W WO2021017052
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】201910700382.1
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】Tsinghua University,Haidian District,Beijing 100084,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲開▼宇
(72)【発明者】
【氏名】蔡 旭升
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲鴻▼博
(72)【発明者】
【氏名】黄 翊▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】フェン ズー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ファン
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 巍
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-126789(JP,A)
【文献】特開2008-191097(JP,A)
【文献】特開2015-215351(JP,A)
【文献】中国実用新案第207457534(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/1455
G01N21/00-21/01
G01N21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源、及び分光計を含み、前記光源から発せられたスペクトルは測定対象を通過した後、前記分光計中に入る入射光を生成することができ、
前記分光計は、
広帯域スペクトルである変調後のスペクトルを得るように、前記入射光を光変調するための光変調層と、
前記光変調層の下に位置し、前記変調後のスペクトルを受信して、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供するための光電検出層と、
前記光電検出層の下に位置し、元のスペクトルを得るように、前記差分応答を再構築するための信号処理回路層とを含み、
前記光変調層は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム材料、シリコンの化合物、ゲルマニウムの化合物、及びIII-V族材料のうちの1つまたは複数の材料で構成され、
前記光変調層は、シリコン平板に2次元パターン構造を形成したものであ
り、
前記広帯域スペクトルである変調後のスペクトルが、異なる領域ごとに異なるスペクトルであり、
前記2次元パターン構造は、異なる領域ごとに異なるスペクトル変調するものであることを特徴とする非侵襲血糖測定器。
【請求項2】
前記光変調層は、底板、及び少なくとも1つの変調ユニットを含み、前記底板は前記光電検出層に設けられ、各前記変調ユニットは前記底板に位置し、各前記変調ユニット内にはいくつかの変調孔が設けられ、各前記変調ユニット内における各前記変調孔は、2次元パターン構造に配列されることを特徴とする請求項1に記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項3】
前記2次元パターン構造は、
各前記2次元パターン構造内のすべての前記変調孔は、同じ断面形状を同時に有し、各前記変調孔は構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列されること、及び/又は
各前記2次元パターン構造内の各前記変調孔は、各々の断面形状をそれぞれ有し、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列されることを含むことを特徴とする請求項2に記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項4】
各前記変調孔は、各々の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、前記配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列されることを特徴とする請求項3に記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項5】
前記変調孔の底部は前記底板を貫通し、又は前記底板を貫通していないことを特徴とする請求項2に記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項6】
前記光電検出層は、少なくとも1つの検出ユニットを含み、前記光変調層の各微光変調ユニットの下には少なくとも1つの前記検出ユニットがそれぞれ対応して設置され、すべての前記検出ユニット同士は、前記信号処理回路層を介して電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項7】
前記分光計は、
前記光変調層と光電検出層との間に位置する光透過媒体層を更に含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項8】
前記光源と分光計は、前記測定対象の両側にそれぞれ設置され、又は
前記光源と分光計は、いずれも前記測定対象の一方の側に設置されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項9】
前記非侵襲血糖測定器は、
前記信号処理回路層に接続され、血糖パラメータを得るように、前記元のスペクトルを分析して算出するためのデータ処理モジュールと、
前記データ処理モジュールに接続され、前記血糖パラメータを表示するためのデータ表示モジュールとを更に含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の非侵襲血糖測定器。
【請求項10】
測定対象を光源及び分光計にそれぞれ接続される測定空間内に移動させ、前記光源から発せられたスペクトルを前記測定対象を通過させることにより、前記分光計中に入ることができる入射光を生成すること、
広帯域スペクトルである変調後のスペクトルを得るように、前記入射光を光変調すること、
前記変調後のスペクトルを受信し、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供すること、
元のスペクトルを得るように、前記差分応答を再構築すること、を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の非侵襲血糖測定器に基づく血糖測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2019年7月31日に提出された、出願番号が2019107003821、発明の名称が「非侵襲血糖測定器及び血糖測定方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本公開は、医療測定設備技術の分野に関し、特に、非侵襲血糖測定器、及び血糖測定方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病(Diabetes Mellitus、DMと略称)は、不十分なインスリン分泌又はインスリンの利用障害によって引き起こされる多因子性の代謝疾患であり、慢性高血糖を主な特徴とし、炭水化物、脂肪、タンパク質代謝の障害を伴い、一連の深刻な合併症を引き起こす可能性がある。糖尿病は、人間の健康を脅かす重大な病気の1つである。糖尿病は患者の生活の質を大幅に低下させるだけでなく、世界的な経済的負担も増大させるため、糖尿病の予防と治療に関する研究が急務である。
【0004】
血糖濃度は、糖尿病の状態を反映する重要な指標であり、頻繁に血糖値の測定を行うことは、状態を監視し、早速血糖濃度を通常のレベルに維持することに役に立つ。血糖測定方法は、侵襲式、低侵襲式、および非侵襲式の3つのタイプに分類される。侵襲式および低侵襲式の方法は、精度が高いため臨床で使用されているが、これらの方法では、採血を必要とするために患者に痛みや不快感を与えることが多く、感染のリスクがあり、さらに、一回あたりの測定のコストが高いため、非侵襲式の血糖測定技術は、あらゆる分野の人々から幅広く注目されている。
【0005】
しかし、既存の非侵襲血糖測定器は、測定精度が不十分であるという重大な問題を抱えている。非侵襲血糖測定器の測定精度は、環境および個人差によって大きく影響され、そして、操作が複雑で、携帯性が悪く、リアルタイムで継続的に検出できないなどの欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本公開の実施例は、既存の非侵襲血糖測定器に存在する、測定精度が低いという問題を解決するように、非侵襲血糖測定器及び血糖測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本公開は、上記技術課題を解決するために、非侵襲血糖測定器を提供し、当該非侵襲血糖測定器は、光源、及び分光計を含み、前記光源から発せられたスペクトルは測定対象を通過した後、前記分光計中に入る入射光を生成することができ、
前記分光計は、
変調後のスペクトルを得るように、前記入射光を光変調するための光変調層と、
前記光変調層の下に位置し、前記変調後のスペクトルを受信して、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供するための光電検出層と、
前記光電検出層の下に位置し、元のスペクトルを得るように、前記差分応答を再構築するための信号処理回路層とを含む。
【0008】
一部の実施例において、前記光変調層は、底板、及び少なくとも1つの変調ユニットを含み、前記底板は前記光電検出層に設けられ、各前記変調ユニットは前記底板に位置し、各前記変調ユニット内にはいくつかの変調孔が設けられ、各前記変調ユニット内における各前記変調孔は、2次元パターン構造に配列される。
【0009】
一部の実施例において、前記2次元パターン構造は、
各前記2次元パターン構造内のすべての前記変調孔は、同じ断面形状を同時に有し、各前記変調孔は構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列されること、及び/又は
各前記2次元パターン構造内の各前記変調孔は、各々の断面形状をそれぞれ有し、各前記変調孔は、特定の断面形状に従って組み合わせて配列されることを含む。
【0010】
一部の実施例において、各前記変調孔は、各々の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、前記配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列される。
【0011】
一部の実施例において、前記変調孔の底部は前記底板を貫通し、又は前記底板を貫通していない。
【0012】
一部の実施例において、前記光電検出層は、少なくとも1つの検出ユニットを含み、前記光変調層の各微光変調ユニットの下には少なくとも1つの前記検出ユニットがそれぞれ対応して設置され、すべての前記検出ユニット同士は、前記信号処理回路層を介して電気的に接続される。
【0013】
一部の実施例において、前記分光計は、
前記光変調層と光電検出層との間に位置する光透過媒体層を更に含む。
【0014】
一部の実施例において、前記光源と分光計は、前記測定対象の両側にそれぞれ設置され、又は
前記光源と分光計は、いずれも前記測定対象の一方の側に設置される。
【0015】
一部の実施例において、前記非侵襲血糖測定器は、
前記信号処理回路層に接続され、血糖パラメータを得るように、前記元のスペクトルを分析して算出するためのデータ処理モジュールと、
前記データ処理モジュールに接続され、前記血糖パラメータを表示するためのデータ表示モジュールとを更に含む。
【0016】
本公開は、上記の非侵襲血糖測定器に基づく血糖測定方法を提供し、当該血糖測定方法は、
測定対象を光源及び分光計にそれぞれ接続される測定空間内に移動させ、前記光源から発せられたスペクトルを前記測定対象を通過させることにより、前記分光計中に入ることができる入射光を生成すること、
変調後のスペクトルを得るように、前記入射光を光変調すること、
前記変調後のスペクトルを受信し、前記変調後のスペクトルに差分応答を提供すること、
元のスペクトルを得るように、前記差分応答を再構築すること、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本公開の上記技術方案は以下の有益効果を有する。
【0018】
1、本公開に係る非侵襲血糖測定器は、光源、分光計、及び測定対象が挿入する測定空間を含み、測定空間は、光源及び分光計にそれぞれ接続され、光源から発せられたスペクトルが測定対象を通過した後、分光計中に入る入射光を生成でき、当該入射光は測定対象を通過して測定対象の影響を受けたため、分光計により当該入射光を分光分析して再構築すると、血糖パラメータを含むスペクトルデータを取得することができ、これにより、近赤外分光分析の原理により生体測定対象に対する非接触性非侵襲血糖測定を実現する。
【0019】
2、当該非侵襲血糖測定器における分光計は、変調後のスペクトルを得るように、入射光を光変調するための光変調層と、光変調層の下に位置し、変調後のスペクトルを受信し、変調後のスペクトルに差分応答を提供するための光電検出層と、光電検出層の下に位置し、元のスペクトルを得るように、差分応答を再構築するための信号処理回路層とを含む。当該非侵襲血糖測定器の分光計は、既存の分光計における様々な精密光学部品に取って代わって光変調層を採用するため、マイクロナノ構造の分野への分光計の応用性が実現され、マイクロ統合分光計は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要とせずに作動することができ、分光計の体積を大幅に縮小するとともに、分光分析の精度を向上させることができ、これにより、非侵襲血糖測定器は、高い測定精度、優れた携帯性、リアルタイムのオンライン測定、簡単な操作、安定したパフォーマンス、低い製造コストなどの利点を有し、糖尿病患者の生活の質を大幅に改善でき、幅広い市場の見通しがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれら図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【0021】
【
図1】本公開の実施例に係る非侵襲血糖測定器の構造模式図である。
【
図2】本公開の実施例に係る非侵襲血糖測定器の使用状態図(一)である。
【
図3】本公開の実施例1に係る分光計の構造模式図である。
【
図4】本公開の実施例1に係る分光計の断面図である。
【
図5】本公開の実施例1に係る光変調層の模式図である。
【
図6】本公開の実施例1に係る光電検出層の構造模式図である。
【
図7】本公開の実施例1に係るスペクトル検出の効果図である。
【
図8】本公開の実施例2に係る光変調層の構造模式図である。
【
図9】本公開の実施例3の分光計の構造模式図である。
【
図10】本公開の実施例3の分光計の断面図である。
【
図11】本公開の実施例3の分光計の構造模式図である。
【
図12】本公開の実施例3に係るスペクトル検出の波長強度関係の模式図である。
【
図13】本公開の実施例3に係るスペクトル検出の効果図である。
【
図14】本公開の実施例4に係る分光計の断面図である。
【
図15】本公開の実施例6に係る分光計の断面図である。
【
図16】本公開の実施例7に係る分光計の断面図である。
【
図17】本公開の実施例7に係る分光計の模式図である。
【
図19】は、それぞれ本公開の実施例1~実施例7の分光計の変調孔の加工製造方法のプロセス模式図である。
【
図20】本公開の実施例に係る非侵襲血糖測定器の使用状態図(二)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本公開の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実施例は、本公開を説明するためのものに過ぎず、本公開の範囲を制限するためのものではない。特に明記しない限り、本公開に言及された血糖測定器はいずれも非侵襲血糖測定器の略語である。
【0023】
既存の非侵襲血糖測定器の測定原理は、主にラマン分光技術、偏光測定法、光干渉断層撮影技術、音響光学技術、生体電気インピーダンス分光法、蛍光検出技術、中赤外分光技術、及び近赤外分光技術等がある。各測定技術の原理は、いずれも、それぞれの長所と短所がある。そのうち、近赤外分光技術は、高い精度、低いコスト、高い効率、リアルタイム監視などの利点を持つため、最も有望な非侵襲的血糖測定技術の1つになった。
【0024】
本公開の各実施例は、上記の近赤外分光技術に基づいて、非侵襲血糖測定器を提供し、当該血糖測定器は、近赤外分光分析原理により生体測定対象に対する非接触性の非侵襲血糖測定を実現することができ、高い測定精度、優れた携帯性、リアルタイムのオンライン測定、簡単な操作、安定したパフォーマンス、低い製造コストなどの利点を有し、糖尿病患者の生活の質を大幅に改善でき、幅広い市場の見通しがある。
【0025】
具体的には、
図1に示すように、当該非侵襲血糖測定器は、光源100、及び分光計300を含む。光源100は近赤外光源であり、近赤外分光分析の原理に基づいて、光源100から発せられたスペクトルは測定対象200を通過した後、分光計300中に入る入射光を生成することができる。当該分光計300は、分光計300における精密光学部品に取って代わり、入射光に対する精密な変調を実現することができる。そして、当該分光計300によれば、異なる波長の光に対する変調作用を柔軟に実現することができ、当該変調作用は、光の散乱、吸収、投射、反射、干渉、表面プラズモン、及び共鳴などの作用を含むが、これらに限定されなく、異なる領域間のスペクトル応答の相違性を向上させ、それにより分光計300の分析精度を向上させることができる。
【0026】
具体的に、
図3~
図19に示すように、分光計300は、光変調層1、光電検出層2、及び信号処理回路層3を含む。光変調層1のスペクトル受信表面は測定対象200に面し、光変調層1は、変調後のスペクトルを得るように、入射光を光変調するためのものである。光電検出層2は光変調層1の下に位置し、変調後のスペクトルを受信し、変調後のスペクトルに差分応答を提供するためのものである。信号処理回路層3は、光電検出層2の下に接続され、元のスペクトルを得るように、差分応答を再構築するためのものである。当該分光計300は、既存の分光計における様々な精密光学部品に取って代わって光変調層1を採用するため、マイクロナノ構造の分野への分光計300の応用性が実現され、これにより、分光計300は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要とせずに作動することができ、分光計300の体積を大幅に縮小するとともに、分光分析の精密性を向上させることができる。
【0027】
本実施例に係る非侵襲血糖測定器では、測定対象200の影響を受けた入射光は測定対象200の内部の成分スペクトルを持ち、当該スペクトルは血糖パラメータを含む。当該血糖測定器は、分光計300により入射光に対して分光分析と再構築を行うと、血糖パラメータを含む測定対象200の内部の元のスペクトルデータ取得することができ、取得された元のスペクトルの波長、強度等の情報は血糖などの成分の濃度を反映できる。
【0028】
さらに、非侵襲血糖測定器は、データ処理モジュール400及びデータ表示モジュール500を含む。データ処理モジュール400は分光計300に接続され、データ処理モジュール400により、再構築して得られた元のスペクトルのデータ情報に基づいて、更に血糖濃度等を含む関連する血糖パラメータを算出して得ることができる。データ処理モジュール400は、スペクトルデータ前処理、及び血糖濃度予測モデルを含む。そのうち、スペクトルデータ前処理は、微型分光計300によって測定された血糖濃度のスペクトルデータに存在するノイズを前処理することであり、当該スペクトルデータ前処理に採用される処理方法は、フーリエ変換、微分、及びウェーブレット変換等を含むが、これらに限定されない。血糖濃度予測モデルには、スペクトルデータ情報から、血糖濃度等を含む関連する血糖パラメータに対する予測を得ることを含み、使用されるアルゴリズムは、最小二乗法、主成分分析、及び人工ニューラルネットワークを含むが、これらに限定されない。データ処理モジュール400はデータ表示モジュール500に接続され、データ表示モジュール500はデータ処理モジュール400によって算出された血糖パラメータを表示する。
光源100のスペクトルが測定対象200を通過しやすくするために、好ましくは、光源100及び分光計300はそれぞれ上記の測定空間の両側に対向して設置されればよく、このように、測定空間は光源100と分光計300との間に位置する。
図2に示すものを例とし、光源100及び分光計300はそれぞれ上記測定空間の上下両側に対向して設置され、測定する場合、測定対象200が測定空間内に水平に進入するだけで、光源100によって生じた近赤外スペクトルは測定対象200を通過することができ、測定対象200を通過して生じた入射光は分光計300内に直接入射することができる。当該構造の設置により、近赤外スペクトルは、測定対象200をまっすぐ通過することができ、スペクトル情報取得の正確度が向上する。
【0029】
又は、光源100及び分光計300は、測定空間と同じ側に設置されてもよく、
図20に示すように、測定空間は光源100及び分光計300の同じ側に位置する。
図20に示すものを例とし、光源100及び分光計300は測定空間の下側に同時に設置されるため、光源100と分光計300の上方は測定空間である。光の反射原理により、光源100によって生じされた近赤外スペクトルは、測定対象200内に入ることができ、反射の作用下で、一部又は全部のスペクトルは入射光を形成し分光計300中に入射する。当該構造の設置により、測定空間を拡張し、血糖測定器の使用利便性を向上させることができる。
【0030】
ただし、上記の2種の分光計300及び光源100の位置設置構造は、いずれも本公開の各実施例に係る分光計300に適用可能である。
【0031】
さらに、当該光変調層1上の同一の変調ユニット5内における各変調孔6は、特定の配列規則を有する2次元パターン構造に配列され、異なる2次元パターン構造により、異なる波長の光に対する変調作用を実現し、2次元パターン構造の区別により、異なる領域間のスペクトル応答の相違性をも向上させ、それによって分光計300の分析精度を向上させることができる。
【0032】
以下、具体的には、いくつかの実施例により、本公開の分光計300を詳細に説明する。
【実施例】
【0033】
実施例1
図3及び
図4に示すように、本実施例1に係る分光計300では、光変調層1は、1つの変調ユニット5を含む。当該変調ユニット5内におけるすべての変調孔6はいずれも底板を貫通している。当該変調ユニット5内におけるすべての変調孔6はいずれも同じ特定の断面形状を有し、本実施例1は、
図1に示す楕円形を例とする。すべての変調孔6は、構造パラメーターの大きさの漸次変化順序に従って、2次元パターン構造を形成するようにアレイ状に配列される。当該2次元パターン構造では、すべての変調孔6はアレイ状に配列され、かつすべての変調孔6は、長軸の長さ、短軸の長さ、及び回転角度の小さい順に昇順に行ごと、列ごとに配列されているため、すべての変調孔6は光変調層1の底板に全体として1つの変調ユニット5を構成する。
【0034】
理解できるように、
図5に示すように、本実施例のすべての変調孔6は、いずれも同じ配列規則に従って配列されており、即ち、長軸の長さ、短軸の長さ、及び回転角度の構造パラメーターの小さい順に昇順に、行ごと、列ごとに漸次変化して配列されているため、当該光変調層1におけるすべての変調孔6は、全体として変調ユニット5とみなされてもよく、任意に複数の変調ユニット5に分割されてもよい。任意に分割された変調ユニット5は、スペクトルに対して、いずれも異なる変調作用を持っており、理論的には、無数組の変調後のスペクトルサンプルを取得でき、これにより、元のスペクトルを再構築するためのデータの量が大幅に増加して、広帯域スペクトルのスペクトルパターンの復元に役立つ。そうすると、各変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメータ特性に従って、異なる波長の光に対する当該変調ユニット5の変調作用の効果を決定すればよい。
【0035】
理解できるように、上記の変調孔6の特定の断面形状は、円形、楕円形、十字形、正多角形、星形、又は矩形等を含み、上記各形状の任意の組み合わせであってもよい。それに応じて、上記の変調孔6の構造パラメーターは、内径、長軸の長さ、短軸の長さ、回転角度、角の数、又は辺の長さ等を含む。
【0036】
本実施例1に係る光変調層1の底板の厚さは60nm~1200nmであり、光変調層1と光電検出層2は、直接接続され、又は光透過媒体層4を介して接続される。光電検出層2と信号処理回路層3は電気的に接続される。そのうち、
図3に示すように、光検出層におけるすべての変調孔6はいずれも楕円形であり、すべての楕円形変調孔6の長軸の長さ及び短軸の長さはそれぞれ行ごと、列ごとに増大し、かつ
図3における水平方向を横軸とし、垂直方向を縦軸とすると、すべての楕円形変調孔6は、行ごと、列ごとに縦軸から横軸へ回転し、その回転角度が徐々に増大する。すべての変調孔6は全体としての2次元パターン構造を構成し、当該2次元パターン構造は全体としてマトリックス構造であり、当該マトリックス構造の面積範囲は5μm
2~4cm
2である。
【0037】
本実施例に係る分光計300を製造する際には、製造プロセスの加工上で優れた適合性が得られるように、シリコンベースの材料を同時に光変調層1及び光電検出層2の材料に採用する。光変調層1を製造する際には、光検出層2上に光変調層1を直接生成してもよいし、製造された光変調層1を光検出層2に転移してもよい。
【0038】
具体的には、光変調層1の直接生成方法は、具体的に、光検出層2上に、
図3に示すような構造に従って配列された光変調層1を直接堆積生成すること、或いは、まず光電検出層2上にシリコンベースの材料で製造された基板を装着し、次に基板に、
図3に示すような構造に従ってマイクロナノ加工して開孔して、光変調層1を得ることを含む。
【0039】
上記の直接堆積生成の過程は、以下の通りである。第1のステップでは、スパッタリング、化学気相堆積等の方法によって厚さ100nm~400nm(ナノメートル)のシリコン平板を光電検出層2に堆積する。第2のステップでは、フォトリソグラフィ、電子ビーム露光等のパターン転写方法によってその上に必要な2次元パターン構造を作成する。構造は
図5に示される。当該2次元パターン構造は、具体的に、楕円形の変調孔6の短軸及び回転角度のみを漸次変化調整し、楕円の長軸は200nm~1000nmにおける固定値、例えば500nmを取り、短軸の長さは、120nm~500nmの範囲内に変化し、楕円の回転角度は0°~90°の範囲内に変化し、楕円の配列周期は、200nm~1000nmにおける固定値、例えば500nmである。当該2次元パターン構造のパターン全体の範囲は、長さが約115μm、幅が約110μmの矩形アレイ構造である。第3ステップでは、反応性イオンエッチング、誘導結合プラズマエッチング、及びイオンビームエッチング等の方法によりシリコン平板をエッチングして、所望の光変調層1を取得できる。最後に、光変調層1及び光検出層2を、全体として信号処理回路層3に電気的に接続すればよい。
【0040】
上記の光変調層1の転移製造方式は、具体的には、まず、製造された光変調層1を得るために、
図3に示される構造に従ってマイクロナノ加工によって基板に開孔し、次に、当該製造された光変調層1を光電検出層2上に転移することである。具体的には、光変調層1の転移方法の過程は、まず、上記のパラメータに従ってシリコンシート又はSOI(シリコン-絶縁体-シリコンシートの構造を指す)上に光変調層1を製造して取得し、次に、転移の方法によって光電検出層2上に転移し、最後に、光変調層1及び光検出層2を、全体として信号処理回路層3に電気的に接続すればよい。
【0041】
図18及び
図19に示すように、本実施例は他の分光計300の製造過程を更に提供し、具体的には、光電検出層2内には、III-V族検出器、具体的にGaAs/InGaAsの量子井戸検出器が取り付けられる。
図18に示すように、検出器が逆さまにして置いてCMOS回路に結合され、検出器は、GaAs基板1’、及びInGaAs量子井戸光電検出層2を含む。
図19に示すように、直接、基板1’を薄くした後、さらに基板1’にマイクロナノ加工を行い、2次元パターン構造を持たせるように光変調層1を形成すればよい。当該製造過程と上記のマイクロナノ加工開孔との区別は、検出器からなる光電検出層2の上表面を直接マイクロナノ加工の基板1’とすることのみであり、これにより、加工製造された光変調層1と光電検出層2との間の緊密な接続が保証され、ギャップが形成されて光の変調作用の効果に影響を与えることを回避する。
【0042】
理解できるように、本実施例に係る、光に対する変調を実現可能な分光計300は、1次元、2次元フォトニック結晶、表面プラズモン、メタマテリアル、及びメタサーフェスを含むが、これらに限定されない。具体的な材料は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム材料、シリコンの化合物、ゲルマニウムの化合物、金属、及びIII-V族材料等を含んでもよい。そのうち、シリコンの化合物は、窒化ケイ素、シリカ、及び炭化ケイ素等を含むが、これらに限定さない。光透過層の材料は、シリカ及び高分子ポリマー等の低屈折率の材料を含んでもよい。光電検出器は、シリコン検出器(検出範囲は780nm~1100nm)、III-V族半導体(例えばInGaAs/InAlAs、GaAs/AlGaAs)検出器(検出範囲は1000nm~2600nm)、アンチモン化物(例えばInSb)検出器(検出範囲は1μm~6.5μm)、及びHgCdTe検出器(検出範囲は0.7~25μm)等を選択してもよい。
【0043】
図4及び
図6に示すように、本実施例に係る分光計300では、光電検出層2は、いくつかの検出ユニット7を含み、光電検出層2内の各検出ユニット7にはいずれも少なくとも1つの光電検出器が取り付けられ、光電検出器の検出範囲は変調孔6の構造範囲よりわずかに大きい。いくつかの検出ユニット7からなるアレイ構造の光電検出層2は検出された信号を電気的接触を介して信号処理回路層3に送信することができる。本実施例に係る信号処理回路層3は、アルゴリズム処理システムを備え、元のスペクトルを再構築して得るように、当該アルゴリズム処理システムのアルゴリズムにより、差分応答をアルゴリズムに基づいて処理する。当該差分応答は、各変調ユニット5により各々変調して得られた応答スペクトルの信号同士に対して差値を求めることである。当該再構築過程は、上記のデータ処理モジュール400によって完成される。
【0044】
本実施例では、いくつかの変調孔6は、同時に1つの検出ユニット7に対応してもよく、各変調孔6はそれぞれ1つ又は複数の検出ユニット7に対応してもよく、つまり、各変調ユニット5は1つ又は複数の検出ユニット7に垂直方向に対応すればよく、このように、同一の変調ユニット5には少なくとも1つの変調孔6が少なくとも1つの検出ユニット7に対応することを満たしていればよい。当該構造の設置により、当該変調ユニット5が少なくとも1種の波長の入射光を常に変調できることを保証し、変調された光が検出ユニット7によって受信できることを保証する。検出ユニット7が作動時に互いに干渉することを防止するために、好ましくは、隣接する2つの検出ユニット7の間に隙間8を置く。
【0045】
本実施例に係る分光計300の、スペクトルに対する検出の完全なフローは、以下の通りである。まず、スペクトルが光変調層1の上方から分光計300中に入射すると、光変調層1による変調を経て、異なる変調ユニット5内において異なる応答スペクトルを得る。変調された各応答スペクトルはそれぞれ光電検出層2に照射され、対応して設置された検出ユニット7が受信した応答スペクトルは互いに異なり、これにより、差分応答が得られ、最後に、信号処理回路層3は、アルゴリズム処理システムにより差分応答を処理し、それにより、再構築で元のスペクトルを得る。
【0046】
図5は、以上の実施例により実際に製造して得られた分光計300が分光分析する場合の分光分析の効果を示す。
図7から分かるように、当該分光計300は、スペクトル範囲が550nm~750nm、スペクトル幅が200nmのスペクトルに対する検出を実現でき、また、スペクトルに対する測定の正確率が94.5%を超える効果を達成した。
【0047】
実施例2
本実施例2に係る分光計300の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法は、いずれも実施例1と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない、相違点は次の通りである。
【0048】
図8に示すように、本実施例に係る分光計300では、光変調層1には全体としての変調ユニット5が設けられている。当該変調ユニット5に設けた2次元パターン構造における各変調孔6は、各々の特定の断面形状をそれぞれ有しており、各変調孔6は、特定の断面形状に従って自由に組み合わせて配列される。具体的には、当該2次元パターン構造内において、一部の変調孔6の特定の断面形状は同じであり、同じ特定の断面形状を有する各変調孔6は複数の変調孔6の群を構成し、各変調孔6の群の特定の断面形状は互いに異なり、且つすべての変調孔6は自由に組み合わされている。
【0049】
理解できるように、当該変調ユニット5は、全体として、1種の特定の波長のスペクトルを変調するものと見なされてもよく、複数種の異なる波長のスペクトルを変調できるように、いくつかの変調孔6の変調ユニットに自由に分割されてもよく、光変調の柔軟性と多様性を高める。
【0050】
実施例3
本実施例3に係る分光計300の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法は、いずれも実施例2と基本的に同じであり、同じ点についてここで説明しない。相違点は次の通りである。
【0051】
図9及び
図10に示すように、本実施例に係る分光計300の光変調層1には、2つ又は2つ以上の変調ユニット5が配列されている。各変調ユニット5において、各変調孔6が特定の断面形状に従って組み合わせて配列される場合、その配列の順序は、予定の周期順序で行ごと又は列ごとに配列される。
【0052】
本実施例では、全ての変調孔6は、特定の断面形状に従っていくつかの変調ユニット5に分割されており、各変調ユニット5内における変調孔6の特定の断面形状は互いに異なる。同一の変調ユニット5内における変調孔6は、同じ特定の断面形状を有するが、各変調孔6の配列順序は、構造パラメータの大きさの漸次変化順序に従ってアレイ状に配列される。これにより、各変調ユニット5は、いずれも異なる変調作用を有し、異なる波長のスペクトルを変調することができる。変調の必要に応じて、変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメーターの漸次変化順序、及び/又は変調孔6の特定の断面形状を変更すると、現在の変調ユニット5の変調作用、及び/又は変調対象を変更することができる。
【0053】
具体的には、
図11に示すように、光変調層1の底板には、3つの変調ユニット5が分布し、それぞれ、第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、及び第3の変調ユニット13である。そのうち、第1の変調ユニット11内における変調孔6はいずれも円形であり、かつ各変調孔6の構造パラメーターはいずれも同じであり、当該第1の変調ユニット11は入力スペクトルに対して第1種の変調方式を有し、第2の変調ユニット12内における変調孔6はいずれも楕円形であり、各変調孔6は、構造パラメーターの大きさに応じて行ごとに周期的に配列され、即ち、横置きの楕円形変調孔6と縦置きの楕円形変調孔6は行ごとに交互に配列され、当該第2の変調ユニット12は入力スペクトルに対して第2種の変調方式を有し、第3の変調ユニット13内における変調孔6はいずれもひし形であり、各変調孔6は構造パラメーターの大きさに応じて行ごと、列ごとに周期的に配列され、即ち、横置きのひし形変調孔6と縦置きのひし形変調孔6は行ごとに交互に配列されると共に、横置きのひし形変調孔6と縦置きのひし形変調孔6は列ごとに交互に配列され、当該第3の変調ユニット13は入力スペクトルに対して第3種の変調方式を有する。
【0054】
理解できるように、本実施例に記載される「異なる波長の光に対してある種類の変調方式を有する」ことは、散乱、吸収、透射、反射、干渉、表面プラズモン、共鳴等の作用を含むが、これらに限定されない。第1種、第2種、及び第3種の光変調方式は互いに異なる。変調ユニット5内における変調孔6の構造に対する設置により、異なるユニット間のスペクトル応答の相違を向上させることができ、ユニットの数を増やすことにより、異なるスペクトル間の相違に対する感度を向上させることができる。
【0055】
理解できるように、異なる入射スペクトルを測定する場合、各変調ユニット5内における変調孔6の構造パラメーターを変更することにより変調作用を変更することができ、構造パラメーターの変更は、2次元パターン構造の変調孔の配列周期、変調孔の半径、及び変調ユニットの辺の長さ、デューティ比、及び厚さ等の各パラメータのうちの1種及びこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。そのうち、デューティ比とは、光変調層1の総面積に対する変調孔6の面積の比をいう。
【0056】
理解できるように、本実施例に係るマイクロ統合分光計300には、例えば実施例1に係る変調ユニット5、又は実施例2に係る変調ユニット5、又は実施例1及び実施例2に係る変調ユニット5の組み合わせを使用することができる。
【0057】
本実施例では、光変調層1は、厚さが200nm~500nmの窒化ケイ素平板からなるものである。光変調層1には、合計で100~200個の変調ユニット5が設けられ、各変調ユニット5は、長さが4μm~60μm、幅が4μm~60μmである。各変調ユニット5の内部では、変調孔6の特定の断面形状として、様々な幾何学的形状が採用され、各変調ユニット5内では、同一の形状で周期に配列され、そのデューティ比が10%~90%である。その他の構造は、実施例1又は実施例2と同じである。
【0058】
図12及び
図13は、いずれも、以上の実施例により実際に製造して得られた分光計300が分光分析する場合の分光分析の効果を示す。本実施例に係る光変調層1は、主に単一波長スペクトルを検出し、その波長強度関係の効果は
図12に示すように、測定スペクトルと実際のスペクトルの中心波長との誤差が0.4nm未満であり、その検出効果は
図13に示すように、光強度の正確率は99.89%を超えている。
【0059】
実施例4
本実施例4は、上記のいずれかの実施例に係る分光計300の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法に基づいて、分光計300及びスペクトル変調方法を提供する。本実施例4と前述の各実施例との同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0060】
図14に示すように、本実施例4に係る分光計300は、光変調層1と光電検出層2との間に位置する光透過媒体層4を更に含む。具体的には、当該光透過媒体層4は、厚さが50nm~1μm、材料がシリカであってもよい。
【0061】
本実施例に係るマイクロ統合分光計300では、光変調層1を製造する際には直接堆積成長プロセスを採用すると、化学気相堆積、スパッタリング、及びスピンコーティング等の方式により当該光透過媒体層4をスペクトル検出層に被覆してから、光変調層1の一部をその上に堆積及びエッチングすればよい。転移プロセスの方式を採用すると、シリカを光変調層1の製造基板とし、基板の上半分に対する直接マイクロナノ開孔加工で光変調層1を製造してから、シリカ基板の下半分を直接光透過媒体層4とし、製造された光変調層1と光透過媒体層4の2つの部分を全体として光検出層上に転移すればよい。
【0062】
理解できるように、本実施例に係る光透過媒体層4は、光電検出層2の上方の光変調層1を全体として、光電検出層2に対してぶら下がり状態になるように、外部の支持構造により支持するように設置されてもよく、こうすると、光変調層1と光電検出層2との間の空気部分は光透過媒体層4である。
【0063】
実施例5
本実施例5は、実施例2に基づいて、分光計300及びスペクトル変調方法を更に提供する。本実施例5と実施例2と同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0064】
本実施例5に係る光変調層1は、厚さが150~300nmの炭化ケイ素の水平底板からなる。光変調層1には、合計で150~300個のユニットを有し、各ユニットは、長さが15~20μm、幅が15~20μmである。同一の変調ユニット5における各変調孔6の特定の断面形状はいずれも円形であり、各ユニット5同士の円孔配列周期、孔の半径、及びデューティ比等のパラメータは互いに異なる。具体的なパラメータ範囲は、周期の範囲が180nm~850nm、孔の半径の範囲が20nm~780nm、デューティ比の範囲が10%~92%である。光電検出層2において少なくもとも1つにはInGaAs検出器が取り付けられている。
【0065】
本実施例に係る分光計300の製造プロセスは、まず光変調層1を製造してから、光電検出層2上に転移する転移プロセスの方式を採用する。
【0066】
実施例6
本実施例6は、上記のいずれかの実施例に係る分光計300の構造、原理、スペクトル変調方法、及び製造方法に基づいて、分光計300及びスペクトル変調方法を提供する。本実施例6と前述の各実施例との同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0067】
図15に示すように、本実施例6に係る分光計300では、各変調孔6はいずれも底板を貫通していない。理解できるように、変調孔6が底板を貫通しているかどうかにかかわらず、光変調層1の変調作用に悪影響を与えない。これは、光変調層1に用いられるシリコンベース材料又は他の材料がいずれも透光材料であり、スペクトルが光変調層1に入射すると、各変調ユニット5の構造に影響されて変調作用が生じるが、変調孔6の底部がスペクトル変調に悪影響を与えないからである。
【0068】
本実施例に係る分光計300では、光変調層1の変調孔6の底部から底板の底部まで厚さは60nm~1200nm、底板全体の厚さは120nm~2000nmである。
【0069】
実施例7
本実施例7は、上記の各実施例の組み合わせに基づいて、分光計300及びスペクトル変調方法を提供する。本実施例7と上記の各実施例との同じ点についてここで説明しなく、相違点は次の通りである。
【0070】
図16及び
図17に示すように、本実施例7に係る分光計300では、光変調層1の底板には、5つの変調ユニット5が分布し、それぞれ第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、第3の変調ユニット13、第4の変調ユニット14、及び第5の変調ユニット15であり、そのうち、第5の変調ユニット15は、範囲が最も大きく、その面積が前の4つの変調ユニットの合計以上である。
【0071】
具体的には、第1の変調ユニット11、第2の変調ユニット12、第3の変調ユニット13、第4の変調ユニット14は全体としてアレイに配列され、そのうち、前の3つの変調ユニット11、12、13内における変調孔6の配列方式は実施例3に係る変調孔6の配列方式と同じ、第4の変調ユニット14は第1の変調ユニット11の変調孔6の特定の断面形状と同じ、いずれも円形であるが、第4の変調ユニット14の変調孔6の構造パラメーターは第1の変調ユニット11の変調孔6の構造パラメーターと異なり、具体的には、第4の変調ユニット14の変調孔6の内径は第1の変調ユニット11の変調孔6の内径より小さいため、第4の変調ユニット14は入力スペクトルに対して第4種の変調方式を有する。第5の変調ユニット15における各変調孔6が形成する2次元パターン構造は、実施例1に係る2次元パターン構造と同じであると、第5の変調ユニット15は入力スペクトルに対して第5種の変調方式を有する。
【0072】
これで分かるように、本実施例7に係る光変調層1は、異なるユニット同士における異なる変調孔6の特定の断面形状の区別、及び同一のユニット内における特定の変調孔6の配列方式により、変調孔6の特定の断面形状、変調孔6の構造パラメーター、及び変調孔6の配列周期を変更することで異なる波長のスペクトルに対して異なる変調作用を実行することを実現する。
【0073】
理解できるように、実施例1と実施例2の漸次変化式アレイの変調ユニット5の構造に対して、その任意に分割された変調ユニット5は、スペクトルに対して、いずれも異なる変調効果を持っており、理論的には、無数組の変調後のスペクトルサンプルを取得でき、これにより、元のスペクトルを再構築するためのデータの量が大幅に増加して、広帯域スペクトルのスペクトルパターンの復元に役立つ。
【0074】
実施例3の周期式変調ユニット5の構造に対して、その周期構造は2次元周期の分散、共鳴作用を生じさせることができ、共鳴作用は、フォトニック結晶のエネルギーバンド制御、及び2次元格子の共鳴等の原理を含むが、これらに限定されない。共鳴作用により、特定の波長に対する検出の精度を高めることができる。
【0075】
上記の実施例1、実施例2、及び実施例3における変調ユニット5をチップに同時に応用する場合、上記2種の利点を組み合わせることができる。かつ、光変調層のサイズ範囲をアッパーカットする場合、上記の3つの実施例に係る分光計300は、いずれもミクロンオーダー又はそれより小さい構造に製造されることができ、これは、マイクロ統合分光計300の小型化・微型化生産及び使用にとって重要な意義を有する。上記の光変調層1は、異なる光電検出器からなる光電検出層と組み合わせて、原則として、全帯域のスペクトル検出を実現することができ、それにより分光計300の広域スペクトルの検出性能を更に向上させる。
【0076】
以上のように、本実施例に係る非侵襲血糖測定器は、光源100、分光計300、及び測定対象が挿入する測定空間を含み、測定空間は、光源及び分光計300にそれぞれ接続され、光源から発せられたスペクトルが測定対象を通過した後、分光計300中に入る入射光を生成でき、当該入射光は測定対象を通過して測定対象の影響を受けたため、分光計300により当該入射光を分光分析して再構築すると、血糖パラメータを含むスペクトルデータを取得することができ、これにより、近赤外分光分析の原理により生体測定対象に対する非接触性非侵襲血糖測定を実現する。
【0077】
2、当該非侵襲血糖測定器における分光計300は、変調後のスペクトルを得るように、入射光を光変調するための光変調層と、光変調層の下に位置し、変調後のスペクトルを受信し、変調後のスペクトルに差分応答を提供するための光電検出層と、光電検出層の下に位置し、元のスペクトルを得るように、差分応答を再構築するための信号処理回路層とを含む。当該非侵襲血糖測定器の分光計300は、既存の分光計300における様々な精密光学部品に取って代わって光変調層を採用するため、マイクロナノ構造の分野内への分光計300の応用性が実現され、これにより、マイクロ統合分光計300は、格子、プリズム、ミラー、又は他の類似する空間分光素子を必要とせずに作動することができ、分光計300の体積を大幅に縮小するとともに、分光分析の精度を向上させることができ、これにより、非侵襲血糖測定器は、高い測定精度、優れた携帯性、リアルタイムのオンライン測定、簡単な操作、安定したパフォーマンス、低い製造コストなどの利点を有し、糖尿病患者の生活の質を大幅に改善でき、幅広い市場の見通しがある。
【0078】
本公開の実施例は、例示、説明するためのものであり、網羅的なものではなく、又は本公開を開示された形態に限定するものではない。多くの修正及び変更は当業者にとって明らかである。実施例は、本公開の原理及び実際の応用をよりよく説明し、当業者が本公開を理解して特定の用途に適した様々な修正を与えた様々な実施例を設計できるようにするために選択して説明された。
【0079】
本公開の説明において、特に明記しない限り、「複数」及び「いくつか」とはいずれも二つ又は二つ以上を意味し、特に明記しない限り、「ノッチ状」とは平らな断面以外の形状を意味する。「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」、「前端」、「後端」、「ヘッド」、「テール」等の用語で示す方位又は位置関係は、図示に基づく方位又は位置関係であり、本公開を便利に又は簡単に説明するためのものだけであり、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位で構造され、操作されると指示又は暗示するものではないため、本公開に対する限定と理解されるべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、説明するためのものに過ぎず、比較的な重要性を指示又は暗示すると理解されるべきではない。
本公開の説明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」等の用語の意味は広く理解されるべきであり、例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能であり、機械的な接続や、電気的な接続でも可能であり、直接互いに接続することや、中間媒体を介して間接に互いに接続することも可能である。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本公開での具体的な意味を理解することができる。
【符号の説明】
【0080】
100 光源、200 測定対象、300 分光計、400 データ処理モジュール、500 データ表示モジュール、1’ 基板、1 光変調層、2 光電検出層、3 信号処理回路層、4 光透過媒体層、5 変調ユニット、6 マイクロナノ孔、7 検出ユニット、8 隙間、11 第1の変調ユニット、12 第2の変調ユニット、13 第3の変調ユニット、14 第4の変調ユニット、15 第5の変調ユニット