(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】バイオマーカー解析のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240722BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240722BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240722BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/543 521
G01N33/53 D
G01N33/00 Z
(21)【出願番号】P 2020550718
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 US2019022913
(87)【国際公開番号】W WO2019183052
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ジャヴィッツ ハロルド スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】クーパー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】グリーンスタイン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リー シャーリー
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-530677(JP,A)
【文献】特表2016-533497(JP,A)
【文献】特表2007-519484(JP,A)
【文献】国際公開第2013/163345(WO,A1)
【文献】特開2017-138323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象と関連付けられた、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値を受信することであって、前記複数のヒト対象のバイオマーカーが、容易に利用できるヒト臨床試験の集団はない病態と関連付けられていることと、
前記複数のヒト対象の濃度値の各々を標準化および重み付けし、標準化および重み付けされた複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値全体の合計を決定することによって、前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定することと、
前記ヒト対象の検定統計量を、検定統計量の閾値と比較することであって、前記検定統計量の閾値が、ヒト以外の霊長類(NHP)対象データに一部基づいて導き出され、前記NHP対象データに関連する複数のヒト対象の濃度値の各々のものを標準化することは、
Z
i=(L
i-M
i)/S
iを
算出することによって、基準値(Z
i)を決定することであって、式中、
L
i
は、前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値の各ヒト対象のバイオマーカー濃度値(C
i
)についての自然対数変換(ln(C
i
))であり、M
iは、前記NHP対象データについてNHPソース集団と比較したヒト参照集団におけるバイオマーカー濃度の自然対数の平均値を表し、S
iは、前記ヒト参照集団における前記バイオマーカー濃度の自然対数の標準偏差を表すこと
を含むことと、
前記ヒト対象の検定統計量
が前記検定統計量の閾値を超えることを判定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の対象のバイオマーカー濃度値を受信することが、
ラテラルフローアッセイ検査ストリップの複数のゾーンの各々から反射する、光の強度を測定することであって、前記複数のヒト対象のバイオマーカーの各々が、前記複数のゾーンのうちの一つのゾーンと関連付けられ、対照は、前記複数のゾーンのうちの少なくとも一つのゾーンと関連付けられることと、
前記複数のゾーンの各ゾーンに対して、前記複数のゾーンのそれぞれのゾーンと関連付けられる、前記複数のヒト対象のバイオマーカーのうちの前記バイオマーカーについて、前記光の強度をヒト対象の濃度値へ変換することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のヒト対象のバイオマーカーが、唾液αアミラーゼ(AMY1)、Flt3リガンド(FLT3L)、および単球走化性タンパク質1(MCP1)を含み、前記病態が、2Gy以上の放射線への曝露である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記病態が、2Gy以上の放射線への曝露である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、前記ヒト対象の検定統計量を決定することが、-ln(P
ij*)で定義される前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値全体の和を決定することを含み、式中、iは、バイオマーカーを示し、P
ij*は、ヒト参照集団の1人が、前記ヒト対象のj番目のサンプルから取得された、対応する前記ヒト対象のバイオマーカー濃度値を上回るバイオマーカー濃度値を有するであろう確率(P
ij)の推定値である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、前記ヒト対象の検定統計量を決定することが、
前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値の各ヒト対象のバイオマーカー濃度値(C
i)について、
L
i=ln(C
i)を
算出することによって、自然対数変換(L
i)を決定することと、
Z
i=(L
i-M
i)/S
iを
算出することによって、基準値(Z
i)を決定することであって、式中、M
iは、前記NHP対象データについてNHPソース集団と比較し、ヒト対象データについてヒトソース集団と比較した、前記ヒト参照集団におけるバイオマーカー濃度の自然対数の平均値を表し、S
iは、前記ヒト参照集団における前記バイオマーカー濃度の自然対数の標準偏差を表すことと、
係数A
iおよび係数B
iを決定することであって、前記係数A
iは、前記ヒト参照集団からの観察結果が、観察される濃度を超える確率P
iを推定するのに使用される、定数の回帰係数を含み、前記係数B
iが、P
iを推定するのに使用される、-ln(C
i)の基準値の回帰係数を含むことと、
確率(P
i)をP
i
*(Z
i,A
i,B
i)と推定することと、
-ln(P
i
*)を
算出することによって、P
i
*の逆自然対数変換を決定することと、
【数1】
を
算出することによって、前記ヒト対象の検定統計量を決定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
C
iが濃度最小値よりも小さいかを判定することであって、C
iが前記濃度最小値よりも小さい場合、-ln(P
i
*)を第1の所定値に設定することと、
C
iが濃度最大値よりも大きいかを判定することであって、C
iが前記濃度最大値よりも大きい場合、-ln(P
i
*)を第2の所定値に設定することと、
-ln(P
i
*)が、-ln(P
i
*)の許容値の上限閾値よりも大きいかを判定することであって、-ln(P
i
*)が前記上限閾値よりも大きい場合、-ln(P
i
*)を前記上限閾値に設定することと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記検定統計量の閾値、M
i、S
i、前記係数A
i、前記係数B
i、前記濃度最小値、前記濃度最大値、または前記上限閾値のうちの一つ以上が、ラテラルフローアッセイ検査ストリップを包含するカートリッジに貼り付けられたRFIDタグによって受信される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト対象
の検定統計量が
、前記
検定統計量の閾値を超えるという表示を、ディスプレイへ出力することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
偽陰性率が、3.6Gy以上に曝露したヒトに対して10%未満であるように、前記NHP対象データに基づいて、前記検定統計量の閾値を予め導き出すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ラテラルフロー方向に沿って流体サンプルのラテラルフローを支援し、複数のゾーンを備える、検査ストリップを受け取るためのポートを備える、筐体であって、複数のヒト対象のバイオマーカーの各々は、前記複数のゾーンのうちの一つのゾーンと関連付けられ、対照は、前記複数のゾーンのうちの少なくとも一つのゾーンと関連付けられ、前記複数のヒト対象のバイオマーカーが、容易に利用できるヒト臨床試験の集団はない病態と関連付けられる、筐体と、
分離可能な光強度測定値を前記複数のゾーンから取得するように構成される、読み取り機と、
前記複数のゾーンの各ゾーンに対して、前記複数のゾーンのそれぞれのゾーンと関連付けられる、前記複数のヒト対象のバイオマーカーのうちの前記バイオマーカーについて、光強度測定値をヒト対象の濃度値へ変換し、
前記複数のヒト対象の濃度値の各々を標準化および重み付けし、標準化および重み付けされた複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値全体の合計を決定することによって、前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定し、
前記ヒト対象の検定統計量を検定統計量の閾値と比較し、前記検定統計量の閾値が、ヒト以外の霊長類(NHP)対象データに基づいて導き出され、前記NHP対象データに関連する複数のヒト対象の濃度値の各々のものを標準化することは、
Z
i=(L
i-M
i)/S
iを
算出することによって、基準値(Z
i)を決定することであって、式中、
L
i
は、前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値の各ヒト対象のバイオマーカー濃度値(C
i
)についての自然対数変換(ln(C
i
))であり、M
iは、前記NHP対象データについてNHPソース集団と比較したヒト参照集団におけるバイオマーカー濃度の自然対数の平均値を表し、S
iは、前記ヒト参照集団における前記バイオマーカー濃度の自然対数の標準偏差を表すことを含み、
前記検定統計量の閾値を超える前記ヒト対象の検定統計量に基づいて、前記ヒト対象が前記病態を有すると判定するように構成される、データアナライザーと、を備える、装置。
【請求項12】
前記複数のヒト対象のバイオマーカーが、単球走化性タンパク質1(MCP1)を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記病態が、2Gy以上の放射線への曝露である、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記データアナライザーが、前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、-ln(P
ij*)の前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値全体の和を決定することによって、前記ヒト対象の検定統計量を決定するように構成され、式中、iは、バイオマーカーを示し、P
ij*は、前記ヒト参照集団の1人が、前記ヒト対象のj番目のサンプルから取得された、対応する前記ヒト対象のバイオマーカー濃度値を上回るバイオマーカー濃度値を有するであろう確率(P
ij)の推定値である、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記データアナライザーが、前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、
前記複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値の各ヒト対象のバイオマーカー濃度値(C
i)について、
L
i=ln(C
i)を
算出することによって、自然対数変換(L
i)を決定することと、
Z
i=(L
i-M
i)/S
iを
算出することによって、基準値(Z
i)を決定することであって、式中、M
iは、前記NHP対象データについてNHPソース集団と比較し、ヒト対象データについてヒトソース集団と比較した、前記ヒト参照集団におけるバイオマーカー濃度の自然対数の平均値を表し、S
iは、前記ヒト参照集団における前記バイオマーカー濃度の自然対数の標準偏差を表すことと、
係数A
iおよび係数B
iを決定することであって、前記係数A
iは、前記ヒト参照集団からの観察結果が、観察される濃度を超える確率P
iを推定するのに使用される、定数の回帰係数を含み、前記係数B
iが、P
iを推定するのに使用される、-ln(C
i)の基準値の回帰係数を含むことと、
確率(P
i)をP
i
*(Z
i,A
i,B
i)と推定することと、
-ln(P
i
*)を
算出することによって、P
i
*の逆自然対数変換を決定することと、
【数2】
を
算出することによって、前記ヒト対象の検定統計量を決定するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
C
iが濃度最小値よりも小さいかを判定することであって、C
iが前記濃度最小値よりも小さい場合、-ln(P
i
*)を第1の所定値に設定することと、
C
iが濃度最大値よりも大きいかを判定することであって、C
iが前記濃度最大値よりも大きい場合、-ln(P
i
*)を第2の所定値に設定することと、
-ln(P
i
*)が、-ln(P
i
*)の許容値の上限閾値よりも大きいかを判定することであって、-ln(P
i
*)が前記上限閾値よりも大きい場合、-ln(P
i
*)を前記上限閾値に設定することと、をさらに含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
ラテラルフローアッセイ検査ストリップを包含するカートリッジに貼り付けられたRFIDタグによって受信される、前記検定統計量の閾値、M
i、S
i、前記係数A
i、前記係数B
i、前記濃度最小値、前記濃度最大値、または前記上限閾値のうちの一つ以上を受信するように構成される、RFID読み取り機をさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ヒト対象が前記病態を有するという表示を出力するように構成される、ディスプレイをさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
偽陰性率が、3.6Gy以上に曝露したヒトに対して10%未満であるように、NHP対象データに基づいて、前記検定統計量の閾値を予め導き出すことをさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
請求項1に記載の前記方法を遂行するためのコンピュータ可読命令を持つ、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、「PERCENTILE ALGORITHM FOR COMBINING BIOMARKERS FOR WITHIN AND CROSS SPECIES ANALYSIS」と題する、2018年3月19日に出願された、米国仮出願番号第62/645021号の優先権を主張し、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、保健福祉省の生物医学先端研究開発局により与えられた契約番号HHSO100201000007Cの下、政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
電離放射線に曝露した可能性のある個人を、トリアージする必要があるときに使用できる放射線生体線量計は、深刻な核事象の後に、時機にかなう効果的な医療を提供し、乏しい医療資源を効率的に使用することを可能にする能力に、著しい影響を与えうる。健康なヒトの放射線反応についてのデータは限られており、そのような研究を実施するのは非倫理的であることから、そうしたデバイスはまだ存在しない。
【発明の概要】
【0004】
以下の全般的な記載、および続く発明を実施するための形態の両方は、例示および説明でしかなく、限定するものではないことは理解されるものとする。
【0005】
ヒト対象と関連付けられた、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値を受信することであって、複数のヒト対象のバイオマーカーが、病態と関連付けられていることと、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定することと、ヒト対象の検定統計量を、検定統計量の閾値と比較することであって、検定統計量の閾値が、ヒト以外の霊長類(NHP)対象データに一部基づいて導き出されることと、検定統計量の閾値を超えるヒト対象の検定統計量に基づいて、ヒト対象が病態を有すると判定することとを含む、方法について記載する。
【0006】
ラテラルフロー方向に沿って流体サンプルのラテラルフローを支援し、複数のゾーンを備える、検査ストリップを受け取るためのポートを備える、筐体であって、複数のヒト対象のバイオマーカーの各々は、複数のゾーンのうちの一つのゾーンと関連付けられ、対照は、複数のゾーンのうちの少なくとも一つのゾーンと関連付けられ、複数のヒト対象のバイオマーカーが、病態と関連付けられる、筐体と、分離可能な光強度測定値を複数のゾーンから取得するように構成される、読み取り機と、複数のゾーンの各ゾーンに対して、複数のゾーンのそれぞれのゾーンと関連付けられる、複数のヒト対象のバイオマーカーのうちのバイオマーカーについて、光強度測定値をヒト対象の濃度値へ変換し、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定し、ヒト対象の検定統計量を検定統計量の閾値と比較し、検定統計量の閾値が、ヒト以外の霊長類(NHP)対象データに一部基づいて導き出され、検定統計量の閾値を超えるヒト対象の検定統計量に基づいて、ヒト対象が病態を有すると判定するように構成される、データアナライザーとを備える、装置について記載する。
【0007】
本発明の概要は、開示の重大または不可欠な特徴を特定するのではなく、単に開示の特定の特徴および変形を要約することを意図している。他の詳細および特徴について、続くセクションで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、実施形態を示し、本記載と共に方法およびシステムの原理を説明する役割を果たす。
【
図1】
図1は、バイオマーカー濃度の解析に基づいて、ヒト対象が病態を有するかを判定するための例示的なプロセスを示す。
【
図2】
図2は、バイオマーカー濃度の解析に基づいて、ヒト対象が病態を有するかを判定するための例示的なプロセスを示す。
【
図3】
図3は、バイオマーカー濃度の解析に基づいて、ヒト対象が病態を有するかを判定するためのプロセスで使用される、パラメータを決定するための例示的なプロセスを示す。
【
図4】
図4Aは、例示的なラテラルフローアッセイ検査ストリップを示す。
図4Bは、
図4Aのラテラルフローアッセイ検査ストリップの塗布ゾーンへ付けられている、流体サンプルを示す。
図4Cは、流体サンプルが検査ストリップを横断して吸収ゾーンへ流れていった後の、
図4Bのラテラルフローアッセイ検査ストリップを示す。
【
図5】
図5は、開示する方法を行うために構成された、例示的な診断検査システムを示す。
【
図6】
図6は、バイオマーカー濃度の解析に基づいて、ヒト対象が病態を有するかを判定するための例示的なプロセスを示す。
【
図7】
図7は、記載する方法を実施するための動作環境のブロック図を示す。
【
図8】
図8は、M918研究の各線量群および時点について、各タンパク質に対するt検定のp値のlog10を示すヒートマップを示す。
【
図9-1】
図9は、タンパク質AMY1A、FLT3L、AACT、およびIL15に対するM918のイムノアッセイデータからの箱ひげ図を示す。
【
図10-1】
図10は、AACT(上)およびAMY1(下)について、NHPのM073(LBERIコホート1、左)ならびにM103(LBERIコホート2、右)のデータセットの箱ひげ図を示す。
【
図11】
図11は、FLT3L(上)およびMCP1(下)について、NHPのM073(LBERIコホート1、左)ならびにM103(LBERIコホート2、右)のデータセットの箱ひげ図を示す。
【
図12】
図12は、NGALについて、NHPのM073(LBERIコホート1、左)およびM103(LBERIコホート2、右)のデータセットの箱ひげ図を示す。
【
図13】
図13は、NHP(研究M103およびM073より)のAACT、Flt3L、AMY1、NGAL、およびMCP1の倍率変化プロットを示す。
【
図14-1】
図14は、3マーカーパネル(左)および4マーカーパネル(右)について、全894個のNHPサンプルの受信者動作特性(ROC)曲線を示す。
【
図15】
図15は、選択されたNHP部分集団に対する、曝露の推定確率の累積分布関数を示す。
【
図16-1】
図16は、AACT、AMY1、Flt3L、IL15、MCP1、およびNGALについて、ヒトのデータセットの箱ひげ図を示す。全プロットの横目盛りは、測定された血漿中濃度(単位ng/ml)を対数表記(log10)したもの。
【
図17】
図17は、1日3回1.2Gyの同一の分割線量を投与された場合の、4つのタンパク質マーカーAMY1A、FLT3L、MCP1、およびAACTについての、ヒトのTBI患者(上)および正常なNHP(下)の倍率変化プロットを示す。1、2、および3日目に採取されたサンプルは、前日までに投与された累積線量3.6、7.2、および10.8Gyを受けた対象からのものであった。
【
図18-1】
図18は、単一の急性線量3Gyおよび3.6Gy、ならびに3Gyおよび3.6Gyを2回および3回に分割した線量に対する、NHPのAMY1A、FLT3L、およびMCP1の倍率変化プロットを示す。各日の分割線量と急性線量との間に観察された差異に、統計学的有意性はない。
【
図19-1】
図19は、ヒトの正常値、交絡因子群、およびTBI患者の全1051個のサンプルについてのROC曲線を示す。縦線および横線によって、95%の感度および特異度の境界を画定する。総AUCは0.96である。
【
図20】
図20は、タンパク質AMY1、FLT3L、およびMCP1に対する、ヒトの正常値ならびに曝露後のTBI患者の累積分布関数(CDF)プロットを示す。最初の三つのプロットは、各個人のタンパク質についてである。最後のプロットは、三つすべてのタンパク質を使用して得られた分布である。
【
図21-1】
図21は、ヒトの正常値、ならびに3.6および7.2Gyに曝露したTBI患者についての、累積確率対バイオマーカーのすべてにわたる-ln(p)の和のCDFプロットを示す。横線は、累積分布の95パーセンタイルにあり、縦線は、観察結果が約2Gyに曝露した個人のものであるかを予想するための閾値で、x軸と交差する。
【
図22】
図22は、3.6Gyの総分割線量を受けるヒトTBI患者および健康なNHP、ならびに3および4Gyの単一の急性線量を受ける健康なNHPだけでなく、曝露していないヒトおよびNHPの両方のCDFも示す。
【
図23】
図23は、ベースラインおよび様々な放射線被曝量の両方について、NHPの(PCA)検定統計量の分布を示す。
【
図24】
図24は、ベースラインおよび4Gyの曝露の両方について、NHPのPCA検定統計量の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
明細書および添付の特許請求の範囲に使用するとき、単数形「a」、「an」(「一つの」、「1人の」)、および「the」は、文脈が別途明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、本明細書では、「約」一つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現されてもよい。こうした範囲で表現される場合、別の構成は、一つの特定の値から、および/または他方の特定の値を含む。値が近似として表現される場合、先の「約」を使用することによって、特定の値が別の構成を形成することを理解するであろう。さらに、範囲の各々の終点は、他方の終点に関連しても、および他方の終点とは独立しても、どちらでも意味があることは理解されるであろう。
【0010】
「随意の」または「随意で」は、続いて記載する事象もしくは状況が、発生しても発生しなくてもよいことを意味し、記載には、事象または状況が発生する場合、および発生しない場合が含まれる。
【0011】
本明細書の記載および請求項を通して、単語「comprise(備える、含む)」、ならびに「comprising(備えている、含んでいる)」および「comprises」などその単語の変形は、「including but not limited to(含むがこれに限定されない)」を意味し、他の構成要素、整数、またはステップを除外することを意図していない。「Exemplary(例示的な)」は、「an example of(の例)」を意味し、好ましい、または理想的な構成の指示を伝えることを意図していない。「Such as(など)」は、制限的な意味ではなく、説明の目的で使用される。
【0012】
構成要素の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などについて記載するとき、これらの各々様々な個々のおよび集団の組み合わせ、ならびに配列が、明示的に記載されない場合があるものの、各々は本明細書で具体的に検討され記載されていることは理解される。これは、記載する方法のステップを含むがこれに限定されない、本出願のすべての部分に適用される。したがって、行われうる様々な追加のステップがある場合、これらの追加のステップの各々は、記載する方法の任意の特定の構成、または構成の組み合わせで行われてもよいことが理解される。
【0013】
当業者によって理解されるであろうように、ハードウェア、ソフトウェア、またはソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせが実装されうる。さらに、プロセッサ実行可能命令(例えば、コンピュータソフトウェア)を有するコンピュータ可読記憶媒体(例えば、非一時的)上のコンピュータプログラム製品は、記憶媒体の中に具体化される。ハードディスク、CD-ROM、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、メモリスタ(memresistor)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、またはそれらの組み合わせを含む、任意の適切なコンピュータ可読記憶媒体が利用されてもよい。
【0014】
本出願を通して、ブロック図およびフローチャートを参照する。ブロック図およびフローチャートの各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャートの中にあるブロックの組み合わせはそれぞれ、プロセッサ実行可能命令によって実施されうることは理解されよう。これらのプロセッサ実行可能命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされて、機械を生み出すことができ、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置上で実行されるプロセッサ実行可能命令によって、フローチャートの一つまたは複数のブロックで規定される機能を実装するデバイスを作り出す。
【0015】
これらのプロセッサ実行可能命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に、コンピュータ可読メモリに保存されたプロセッサ実行可能命令によって、フローチャートの一つまたは複数のブロックで規定された機能を実施するためのプロセッサ実行可能命令を含む、製造品を生み出すような、ある特定の方式で機能するように指示してもよい、コンピュータ可読メモリに保存されうる。プロセッサ実行可能命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされて、一連の操作ステップを、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で行わせ、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行されるプロセッサ実行可能命令によって、フローチャートの一つまたは複数のブロックで規定された機能を実施するためのステップを提供するような、コンピュータで実施されるプロセスを生み出すことができる。
【0016】
したがって、ブロック図およびフローチャートのブロックは、規定された機能を行うためのデバイスの組み合わせ、すなわち、規定された機能を行うためのステップ、および規定された機能を行うためのプログラム命令手段の組み合わせを支援する。ブロック図およびフローチャートの各ブロック、ならびにブロック図およびフローチャートの中のブロックの組み合わせが、規定された機能もしくはステップを行う専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、または専用ハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせによって実施されうることもまた、理解されるであろう。
【0017】
本発明を実施するための形態は、あるアクションを行う所与の実体を指しうる。この文言は、一部の場合に、所与の実体によって所有および/または制御されるシステム(例えば、コンピュータ)が実際にアクションを行っていることを意味しうることは理解されるべきである。
【0018】
ある態様では、種内または種間解析用の複数のバイオマーカーを使用して、サンプルを、病態を有するか、または病態を有さない対象のものに分類するための、方法およびシステムについて記載する。病態は、例えば、放射線への曝露、敗血症、および同類のものでありうる。実施形態では、サンプルは、規定の閾値を上回って照射されたか、または照射されていない対象のものに分類されてもよい。ヒトのサンプルを評価するのに使用されるパラメータは、ヒト以外の霊長類(NHP)のもの(曝露していない対象のバイオマーカーの平均値および標準偏差などの正規化パラメータ以外)と類似してもよい。方法およびシステムは、バイオマーカーの単調な変換に反応しにくく、正常であるという仮定に左右されない。方法およびシステムが、個々のバイオマーカーの閾値に依存しないという点において、方法およびシステムは連続的である。記載する分類方法は、非照射サンプルから導き出せる。照射サンプルは、分類方法に含めるバイオマーカーを決定し、照射サンプルの分類精度を推定するために使用されうる。方法は、個々のバイオマーカーの影響を強めるか、または弱められるように、かつ、併存疾患を持つ亜集団の偽陽性率を、名目アルファ率(例えば、第1の過誤のリスク)を達成するよう調整できるように調節可能である。
【0019】
記載する方法およびシステムによって、未知のサンプルの中で測定された各バイオマーカーの観測値を、非照射サンプル分布におけるそのバイオマーカーの対応するパーセンタイルへ変換する。パーセンタイルを使用すると、データが正規分布するという任意の想定が取り除かれ、データの単調な変換に反応しにくくなる。次いで、パーセンタイルは、バイオマーカーが、照射された対象からのサンプルで過剰発現(過小発現)する場合、バイオマーカーが、非照射の観察結果分布の上位(または下位)パーセンタイルの中にあるときは、変換されたパーセンタイルがより大きい値を有するように変換される。各バイオマーカーに対する非照射サンプル分布との相違の尺度として、変換したパーセンタイルを使用することで、各バイオマーカーに対する単純な閾値要件を取り除く。これにより、例えば、94パーセンタイルにあるバイオマーカー値を持つ観察結果が、96パーセンタイルにあるバイオマーカー値とほぼ同じ数値を計数することが可能になり、パーセンタイルに渡って組み合わせるときに、方法の感度が増加する。変換したパーセンタイル値の加重和は、各観察について計算される。その後、変換したパーセンタイル値の和に対する閾値を、非照射の観察結果に対する偽陽性率が、事前に規定した値(5%など)となるように計算する。方法は、照射サンプルからのデータの使用に左右されない。方法は、最終和においてバイオマーカーに対する異なる重みを確立することによって、および任意のバイオマーカーの和への寄与を切り捨てることによって調節可能であり、重みおよび切り捨ては亜集団に特異的でありうる。加えて、バイオマーカーの寄与の和に対する異なる閾値を、異なる併存症の亜集団に対して確立して、それら亜集団の偽陽性率が適切に設定されるのを保証することができる。
【0020】
図1に示すように、記載する方法およびシステムは、濃度方法110および分類方法120を含んでもよい。実施形態では、濃度方法110および/または分類方法120の一部もしくはすべては、生体線量計/アナライザーなどの装置に埋め込まれていてもよい。実施形態では、濃度方法110および/または分類方法120の一部もしくはすべてが、生体線量計/アナライザーとは別個のコンピューティングデバイスによって行われてもよい。濃度方法110および/または分類方法120の一部もしくはすべてのステップは、生体線量計/アナライザーのプロセッサによって行われてもよい。濃度方法110および分類方法120によって、生体線量計/アナライザーにより測定された、リニアフローアッセイ(LFA)検査ストリップ上の検査線および対照線からの光信号の強度を、個人が所定の曝露閾値未満、所定の曝露閾値以上、または判定不可能な線量の放射線量に曝露していたかの判定に変換してもよい。
【0021】
分類方法120によって、入力として、複数のバイオマーカー(例えば、最大六つのバイオマーカー(i=1~6))、および一つ以上のLFA検査ストリップにわたり分布する一つ以上の対照線(例えば、二つの対照線(j=1~2))の測定された強度を受信する場合がある。一つ以上のLFA検査ストリップは、LFAカセット内に含有されてもよい。LFAカセットは、RFIDタグを伴って構成されてもよい。測定された強度をバイオマーカー濃度に変換する、分類方法120では、検量線を利用しうる。検量線は、バイオマーカー濃度についての参照データを、アナライザーによって測定された強度と比較することによって、LFA検査ストリップの製造中に経験的に決定されてもよい。検量線は、LFA検査ストリップの異なるロットにわたって変化してもよいため、適用可能な検量線が、LFAカセット上に位置するRFIDタグ上でコードされてもよい。検量線は、RFIDタグ上にパラメータ機能として保存されてもよい。検量線によって出力されるバイオマーカー濃度は、分類方法120への入力として使用されうる。
【0022】
分類方法120で、バイオマーカー濃度を受信し、ヒト対象の検定統計量を決定(推定)することができる。血液サンプルjについて、検定統計量は、-ln(Pij*)であるバイオマーカー全体の和として決定されてもよく、式中、1)iはバイオマーカーを示し、2)Pij*は、参照集団(例えば、放射線に曝露したことのない12歳以上のヒト)の1人が、j番目の血液サンプルから取得された値を上回るバイオマーカー値(単位ng/ml)を有するであろう確率Pijを決定することによって取得される、推定値である。検定統計量の閾値は、参照集団からのサンプルに対して検定統計量を決定することによって決定されてもよく、分布が決定されてもよい。検定統計量の閾値は、参照集団からの検定統計量の値のうちの5%以下が、検定統計量の閾値を上回るように取得されてもよい。実施形態では、検定統計量の閾値は、コンピューティングデバイスと、RFIDタグ上にロードされた検定統計量の閾値とによって決定されうる。次いで、受信したバイオマーカー濃度から推定される検定統計量が決定され、検定統計量の閾値と比較されうる。その後、分類方法120によって、推定された検定統計量(TS:test statistic)および検定統計量の閾値を使用して、以下の二つの結果130のうちの一つに到達する。TS≦検定統計量の閾値は、陰性結果(放射線被曝なしと一致)であり、TS>検定統計量の閾値は、陽性結果(観察結果を曝露していない集団と区別するのに十分な放射線被曝と一致し、曝露量が2Gy以上である場合に、中から高の発生する確率を有する)である。
【0023】
図2は、例示的な分類方法120を示す。201で、一つ以上のバイオマーカー濃度値を受信しうる。バイオマーカー濃度値は、濃度方法110から受信されてもよい。C
iは、i番目のバイオマーカーの濃度(単位ng/ml)を示す。分類方法120が、凍結した静脈血漿サンプルからのELISA測定値のデータセットを使用して導き出されてもよいため、分類方法120に入力される、指先穿刺によるLFAまたはSYS測定によって取得される、全血のバイオマーカー濃度値は、分類方法120を導き出す際に使用される測定値のタイプを、近似するように調整されてもよい。
【0024】
202で、バイオマーカー濃度値を調整してもよい。実施形態では、検出限界(LoD:Limit of Detection)より小さい、いかなるバイオマーカー濃度値も、LoD検出量と等しくなるように設定されうる。LoD検出量の例には、10pg/mlから10ng/mlまでの範囲である濃度が含まれ、アッセイの感度に左右されうる。LoDは、解析手順によって確実に測定できる、最小濃度値を指す。別の実施形態では、分類方法120によって、バイオマーカーに特異的な最小値(Ci-Min)よりも低い濃度Ciを、その最小値に等しくなるように調整してもよい。Ci-Minの値は、任意の特定のタンパク質の生理学的最小値であり、タンパク質によって異なるであろう。i番目のバイオマーカーの最小値は、biomarker_min_Ci_valueとして、RFIDタグなどのデータソース上に保存されうる。下記の表1は、RFIDタグに保存されうる、例示的なパラメータを提供する。実施形態では、Ci-Minを、参照集団からの分布の5パーセンタイルに設定してもよい。例えば、AMY1Aでは、NHPの5パーセンタイルは309ng/mlであり、ヒトの場合は19.81ng/mlである。ステップ202では、負の濃度値の存在を防いでもよい。LoDより小さい値を、LoDと等しく設定する必要性がある事象では、biomarker_min_Ci_valuesは、LoDと等しく設定されうる。Ciがバイオマーカーの最小値以下である場合、そのバイオマーカーについては、ステップ203~207を随意で飛ばしてもよいことは留意されたい。
【0025】
203で、バイオマーカー濃度値に自然対数変換を行ってもよく、その結果、値Liがもたらされる。Liはln(Ci)を示す。これにより、続く統計演算のために「正規」分布の近似値を作成する。
【0026】
204で、標準化されるバイオマーカー濃度値を、Z
i=(L
i-M
i)/S
iを評価することによって決定してもよく、式中、iはバイオマーカーに付けられた指標である。各自然対数変換したバイオマーカーに対する平均値(M
i)および標準偏差値(S
i)は、予め決定されてもよく(例えば、ヒトの「正常値」またはベースラインのNHP観察結果から)、ヒトの値は、カートリッジのRFIDタグなどのデータソース上に保存されてもよい。例えば、平均値M
iは、RFIDタグ上に「biomarker_normal_mean」として保存されてもよく、標準偏差S
iは、「biomarker_normal_std」として保存されてもよい。下記の
図3は、M
iおよびS
iの値の決定に関する、さらなる詳細を提供する。
【0027】
205で、線形回帰係数が決定されうる。線形回帰係数は、予め決定され、RFIDタグなどのデータソース上に保存されてもよい。線形回帰係数は、RFIDタグから読み出されてもよい。線形回帰係数は、1-i番目のバイオマーカーの累積分布関数(CDF)値として、P
iを計算するために、A
iおよびB
iを含んでもよい。下記の
図3は、線形回帰係数の決定に関する、さらなる詳細を提供する。例えば、係数A
iおよびB
iは、「biomarker_coefficient_a」および「biomarker_coefficient_b」として、RFIDタグ上に保存されうる。
【0028】
206で、Piは、Pi*=exp(Ai+BiZi)/(1+exp(Ai+BiZi))と推定されてもよい。メモリ容量が限られる問題は、参照集団に対するPiの全体分布を保存する能力を限定する、生体線量計/アナライザーと関連付けられ、Piの推定によって、その限られたメモリ容量の問題に対処する、技術的改善が提供される。
【0029】
207で、各バイオマーカーに対する上側確率の自然対数の負数を、-ln(Pi*)と決定してもよい。アスタリスクは、Pi*が、経験的Piから直接ではなく、回帰方程式から導き出されることを示す。
【0030】
208で、-ln(Pi*)の値に対するバイオマーカーに特異的な限界(存在する場合)が、RFIDタグから読み取られ、適用されうる。上限および下限の両方が適用されうる。上限は、その限界よりも検定統計量に貢献するバイオマーカーが一つも存在しないのが望ましい場合に適用されるであろう。実施形態では、バイオマーカーに特異的な限界は必要とされない。例えば、選択されたバイオマーカーが、異なる日に高い値を有する場合などである。バイオマーカーの一群が、同日にそれらのピークに達した場合、単一よりも多いバイオマーカーが上昇して、陽性分類を誘発する必要がありうるために、各々の寄与の上限を定める意味がある可能性がある。例えば、検定統計量の閾値が8であり、三つのバイオマーカーのうちの二つの寄与の上限を定めることが望ましい場合には、一つのバイオマーカー(例えば、そのバイオマーカーの-ln(Pi*)の値)の寄与の上限を6に、別のバイオマーカーの値を5に定め、第3のバイオマーカーの値の上限は定めないことがある。これが望ましいかどうかは、特定の組のバイオマーカーおよびアルゴリズムの適用について決定する必要があるだろう。下限もまた、課されうる。例えば、-ln(Pi*)<LoDの場合、-ln(Pi*)の値に所定の値を設定してもよい。実施形態では、曝露していない集団におけるバイオマーカーの分布の5パーセンタイルの下限を適用してもよい。バイオマーカーが、5パーセンタイルより小さい値を有する場合、-ln(Pi*)の値は、-ln(1-.05)=.051に設定される。実施形態では、バイオマーカー最小濃度値(例えば、biomarker_min_Ci_valueとしてRFIDタグ上に保存)より小さいCi値に対して、-ln(Pi*)を、各バイオマーカーに対する上側確率の自然対数の負数の最小値(ln(Pi*)Min)に設定してもよい(例えば、RFIDタグ上にbiomarker_min_LnPi_valueとして保存)。例えば、バイオマーカー最小濃度値が、参照集団の5パーセンタイルである場合、最小値(ln(Pi*)Min)は、-ln(.975)に設定される(例えば、Ciが参照集団の2.5パーセンタイルにある場合に取得されるであろう、-ln(Pi)に対する値)。
【0031】
実施形態では、各バイオマーカーに対する上側確率の自然対数の負数の最大値(ln(Pi*)Max)(例えば、RFIDタグ上にbiomarker_max_LnPi_valueとして保存)が、0よりも大きく、Ciがバイオマーカー最小濃度値(biomarker_min_Ci_value)を上回る場合、-ln(Pi*)はln(Pi*)Maxに設定されてもよい。ほとんどの場合、ln(Pi*)Maxは、-99と等しく設定されると予想され、その場合、この調整は無視できる。しかしながら、バイオマーカー最小濃度値の設定が高すぎる場合(例えば、バイオマーカー濃度に対する最小値が、LoD値に設定されるときに発生しうる)、AiおよびBiの回帰係数(ゼロに設定されるであろう)を計算するのに利用可能な観察結果が少なすぎる場合がある。この場合、ln(Pi*)Maxは-99と等しくは設定されず、バイオマーカー最小濃度値を上回るすべてのCi値は、対応する-ln(Pi*)値をln(Pi*)Maxに設定するであろう。
【0032】
実施形態では、ln(Pi*)Max値が0よりも大きく、Ciが特定のバイオマーカーのバイオマーカー最小濃度値を上回る場合、このバイオマーカーについては、ステップ203から208を随意で飛ばしてもよい。
【0033】
実施形態では、-ln(Pi*)が、バイオマーカーに対する閾値-ln(Pi*)Thよりも大きい場合(例えば、RFIDタグ上にbiomarker_LnPi_thresholdとして保存)、-ln(Pi*)は-ln(Pi*)Thと等しく設定してもよい。ほとんどの場合、-ln(Pi*)Thは、このパラメータが、分類方法120の成果に影響を与える可能性が低いことを実質的に意味する、999に設定されるであろう(例えば、以下に記載する検定統計量の閾値が、10未満の値を有する場合があるため)。パラメータ-ln(Pi*)Thは、一つのバイオマーカーも、対象が検定統計量の閾値を超える、検定統計量をもたらすほど充分に大きくはないことが望ましい場合に利用可能である。
【0034】
209で、検定統計量(TS)をヒト対象に対して決定しうる。検定統計量は、バイオマーカー全体で-ln(Pj*)値を合計することによって決定されうる。
【0035】
210で、決定されたヒト対象のTSは、検定統計量の閾値X(例えば、RFIDタグ上にtest_statistic_thresholdとして保存されうる)と比較されてもよい。検定統計量の閾値は、予め決定され、RFIDタグに保存され、比較のために読み出されうる。検定統計量の閾値の決定に関連する、さらなる詳細を以下に提供する。検定統計量の閾値は、正常なヒトのY%が、Xよりも小さい検定統計量を有するように決定されうる(例えば、Y=95%)。それゆえ、正常なヒトの偽陽性率は1-Yとなろう(例えば、5%)。
211で、決定されたヒト対象の検定統計量は、次いで、検定統計量の閾値との比較に基づいて分類されうる。対象は、決定された検定統計量がXよりも小さい場合には、病態に対して陰性と分類されてもよく、決定された検定統計量がX以上の場合には、病態に対して陽性と分類されてもよい。対象は、決定された検定統計量がX以下の場合には、病態に対して陰性と分類されてもよく、決定された検定統計量がXよりも大きい場合には、病態に対して陽性と分類されてもよい。陽性または陰性の分類結果は、生体線量計/アナライザーのディスプレイへ出力されてもよい。病態がある一定レベルの放射線への曝露を含む実施形態では、陽性の観察結果は、ヒト対象が、2Gy以上に曝露したことがあることを示し、陰性の観察結果は、ヒト対象が曝露したことがないか、または2Gyよりも少ない量に曝露したことがあることを示す。
【0036】
図3は、分類方法120で使用されるパラメータを決定するための、方法300を示す。301で、ソース集団(source population)の正常値が決定されてもよい。「ソースの正常値」という用語は、ソース集団で使用される、すべての観察結果(特定の個人に対する特定時間のバイオマーカー濃度のセット)を指しうる。NHPがソース集団である場合、正常値には、放射線被曝前のすべてのベースライン観察結果を含みうる。ヒトがソース集団である場合、正常は、一般集団の中の12歳以上のヒト(例えば、特に医学的状態または異常な放射線被曝によっては選択しない)でありうる。
【0037】
302で、標的集団が決定されてもよい。これは、アルゴリズムが適用され、観察結果が「陽性」または「陰性」に分類される集団である。本研究では、ヒトに対する「陽性」は2Gy以上の放射線被曝を意味し、NHPに対しては4Gy以上の放射線を意味する。標的集団の「正常」部分集合は、標的集団を標準化する、続くステップで使用されてもよい(ソース集団および標的集団が、異なる種である場合に使用すべきである)。
【0038】
303で、使用するバイオマーカーが、バイオマーカーに対する相対的な重みと共に指定されうる。これら相対的な重みによって、一部のバイオマーカーの重要度を増すか、または減じることが可能になる。これらの重みは「バイオマーカーの重み」と表わされうる。例として、指定されるバイオマーカーには、AMY1、FLT3L、およびMCP1を含んでもよく、バイオマーカーの重みはすべて1である(例えば、すべてのバイオマーカーが、1.0に設定され、同じ重みを有する)。
【0039】
304で、バイオマーカー濃度値を設定してもよい。例えば、各バイオマーカー濃度値が、陽性の観察結果において、陰性であるものと比べてより大きいか、または小さいかを判定しうる。一般性を失うことなく、指定するバイオマーカーのバイオマーカー濃度値は、放射線への曝露と共に増加すると仮定しうる。代わりに、指定するバイオマーカーのバイオマーカー濃度値が、放射線への曝露と共に減少する場合、これらのバイオマーカー濃度値は、逆数(またはこの目的を達成する異なる変換)で置き換えられてもよい。これで、結果として生じるバイオマーカー濃度値が、放射線への曝露と共に増加する。バイオマーカーは、ソース集団および標的集団において同じように振る舞うべきである(例えば、放射線被曝に伴い、両方の集団で増加または減少する)。
【0040】
さらなる例として、外挿の重みを使用して、正常値に関する「ソース」の観察結果を、より大きな集団に外挿するべきであるかを決定してもよい。ソース集団がヒトであるとき、性別および年齢に特有の重みを使用して、結果を米国の12歳以上の集団に外挿してもよい。外挿するべきより大きな集団がない場合、外挿の重みはすべて等しくなりうる。続くステップでは、「重み付け」という用語は、等しいまたは等しくない外挿の重みのいずれかを使用することを意味するものとする。外挿の重みは、ソースの正常値全体で合計して1.0になるように、標準化されうる。
【0041】
随意で、バイオマーカー濃度値が対数変換されてもよい。
【0042】
305で、ソース集団および標的集団が異なる種である場合(例えば、ソースがNHPで、標的がヒトである場合)、観察結果は標準化されうる。ソース集団および標的集団が同じ種である場合、標準化は随意である。その後、二つの集団の各々について、「正常値」の中で(場合により、変換された)バイオマーカー濃度値の重み付け平均(Mi)および重み付け標準偏差(Si)を決定する。各集団に対して計算された平均値(Mi)、および各集団に対して計算された標準偏差(Si)は保存することができる。
【0043】
標準化を行う場合、各観察結果(正常値および異常値)から計算された平均値を差し引き、計算された標準偏差で割る。各集団について、基準値は、Zij=(Cij-Mij)/Sij)によって評価されてもよく、iは観察結果に付けられた指標であり、jはバイオマーカーに付けられた指標である。
【0044】
306で、各バイオマーカーについて、標準化されたソースの観察結果に対する、重み付け累積分布関数(CDF)が決定されうる。バイオマーカー濃度値を最小から最大へソートし、重みを合計して1.0になるように正規化する場合、m番目の観察結果のCDFは、1からmまでの重みの和として定義されうる。この値に(N/(N+1))を乗じてもよく、式中、Nは観察結果の総数であり、これを行わない場合に、後のステップで対数変換により発生しうる問題が減少しうる。
【0045】
307で、Pijは、1-j番目のバイオマーカーのi番目の観察結果のCDF値と決定されうる。例えば、ソース分布に99個の観察結果があり、それらが等しく重み付けされている場合、j番目のバイオマーカーについては、そのバイオマーカーの最大値を持つ観察結果(例えば、観察結果が最大から最小へ順序付けられている場合は第1の値)は、1/100であるPij値を有し、第2の最大値は、2/100と等しいPij値を有し、最小値は99/100であるPij値を有する。
【0046】
308で、j番目のバイオマーカーについて、重み付け線形回帰を実施し、従属変数は、上側確率のロジット(例えば、ln((Pij)/(1-Pij))であり、独立変数は、定数および標準化されたバイオマーカー値Zijである。この回帰の観察結果は、ソースの正常値からのものである。これにより、j番目の標準化されたバイオマーカー値の定数に対して回帰係数「Aj」、および係数に対して回帰係数「Bj」を得る。Pijは、Pij*=(exp(Aj+BjZij)/(1+exp(Aj+BjZij)と推定されてもよい。
【0047】
実施形態では、所与のバイオマーカーi、Ai、およびBiは、重み付け線形回帰の係数であり、独立変数は定数およびZiであり、従属変数はln((Pi)/(1-Pi))であり、Piは、参照集団のi番目のバイオマーカーの観察結果が、Ziよりも大きいという経験的確率である。これにより、i番目の標準化されたバイオマーカー濃度値の定数に対して回帰係数Aj、および係数に対して回帰係数Bjを得るが、それらは、ルックアップテーブルとしてRFIDタグに保存されうる。
【0048】
309で、各バイオマーカーに対する上側確率の自然対数の負数は、-ln(Pij*)として決定されてもよく、式中、アスタリスクは、Pij*が、経験的Pijから直接ではなく、回帰方程式から導き出されることを示す。
【0049】
随意で、-ln(Pij*)に対するバイオマーカーに固有の最大値など、限界を適用してもよい。例えば、j番目のバイオマーカーの最大値は、4.0と指定されてもよく、その場合、そのバイオマーカーに対する-ln(Pij*)の推定値は、min(4.0,-ln(Pij*))で置き換えられるであろう。バイオマーカーに固有の最大値は、特定のバイオマーカーの影響を抑制するのに有用でありうる(そのため、一つのバイオマーカーが大きな値であっても、観察結果を「陽性’と宣言するには十分でない可能性がある)。
【0050】
310で、検定統計量が決定されうる。検定統計量は、バイオマーカー全体で-ln(Pij*)値を合計することによって、各観察結果(標的集団のものを含む)に対して決定されうる。標的集団の-ln(Pij*)値は、ソースの正常値を使用して取得される回帰係数から導き出されることに留意されたい。
【0051】
311で、検定統計量の閾値が決定されうる。検定統計量の閾値(X)は、TSがXより大きいソースの観察結果の重みの和が、ソース集団に対する望ましい偽陽性率(FPR)と等しくなるように、値Xを決定することによって決定されうる。不定ゾーンが存在しないとき、TSがX以下である場合、観察結果は、陰性に分類されてもよく、TSがXより大きい場合、陽性に分類される。不定ゾーンがある場合、そのゾーンの中の確率の総計を指定しうる。例えば、不定ゾーンが、ソースの正常値のうちの3%を包含し、FPRが名目上5%に設定される場合、値X_upperは、ソースの正常値のうちの3.5%がX_upperを上回るように決定されてもよく(すなわち、5%-3%/2)、値X_lowerは、ソースの正常値のうちの6.5%が、X_lowerを上回るように決定されてもよい(すなわち、5%+3%.2)。X_lowerとX_upperとの間の値は、「不定」に分類されうる。X_upperを上回る値は陽性に分類されてもよく、X_lowerを下回る値は陰性に分類されてもよい。
【0052】
検定統計量の閾値は、ヒトの参照集団のアルファパーセント(例えば、5%)が、閾値よりも大きいTSを有するように決定される。参照集団サンプルの偽陽性率は、それゆえアルファである。0よりも大きく2Gyよりも小さい放射線被曝に対する偽陽性率は、アルファよりも大きいであろう。
【0053】
こうして方法300によって決定されたパラメータは、生体線量計/アナライザーのRFIDタグなどのデータ記憶部に保存され、分類方法120によって利用されうる。
【0054】
実施形態では、一つ以上のLFA検査ストリップ上の検査線および対照線からの光信号の強度を測定し、個人が病態(例えば、a)所定の曝露閾値よりも少ない(陰性結果)、またはb)所定の曝露閾値以上(陽性結果)の放射線量への曝露)を有するかを判定するための、迅速診断検査(RDT:rapid diagnostic test)装置について開示する。RDTは、行うのが迅速で簡単な医療診断検査である。RDTは、予備または緊急の医療スクリーニングに適し、資源が限定された医療施設で使用するためのものであり、顕微鏡検査の有用な代替を、これら他の解析ツールを使用する信頼できる診断が利用できない、または訓練された人員が不足する状況に提供する。また、かつては臨床検査でのみ診断を行うことができた状況において、一次医療でのポイントオブケア(POC)検査も可能になる。RDTは、酵素免疫測定法(ELISA)またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの臨床診断方法を必要とせず、最小限訓練を受けた人員によって、実験機器とは独立して行うことができ、結果を迅速に送達する。
【0055】
記載するRDTは、尿試験紙またはカセットの形式を採用する。患者から採取される生体試料(血液など)は、検査ストリップ(またはカード)上のサンプルパッドに、特定の試薬と共に塗布される。ある時間の長さの後(検査による)、検査ストリップ(カード)ウィンドウの中の特定の帯の有無によって、関心のある特定の抗原が、患者のサンプルに存在するかを示す。通常、1滴のサンプル(例えば、血液)が、一つの穴(サンプルウェル)を通ってRDTに追加され、その後、何滴かの緩衝液が大抵、別の穴(緩衝液ウェル)を通って追加される。緩衝液は、RDTの全長に沿ってサンプルを輸送する。ラテラルフローアッセイは、RDTにおいて重要なツールである。
【0056】
ラテラルフローアッセイ検査キットは、現在、ホルモン、代謝物、毒素、病原体由来の抗原、または他のバイオマーカーなど、多種多様な医療および環境条件または化合物の検査に利用できる。
図4Aは、共通基質407上にサンプル受け取りゾーン402、標識ゾーン404、検出ゾーン405、および吸収ゾーン406を含む、ラテラルフロー検査ストリップ400を示す。これらのゾーン402~406は、通常、流体が、サンプル受け取りゾーン402から吸収ゾーン406へ流れるのを、毛細管作用によって可能にする、材料(例えば、化学処理したニトロセルロース)から作製される。検出ゾーン405は、流体サンプルの中で標的バイオマーカーの有無を検出するための検査領域408と、アッセイ検査の完了を示すための制御領域409とを含む。
【0057】
図4Bおよび
図4Cは、検査ストリップ400の例示的な実装によって行われる、アッセイを示す。流体サンプル410(例えば、血液、尿、または唾液)は、サンプル受け取りゾーン402に塗布される。
図4Bおよび
図4Cに示す例では、流体サンプル410は、標的バイオマーカー411(例えば、検査ストリップ400によって検定できる、分子または化合物)を含む。毛細管作用によって、液体サンプル410を下流へ、標的バイオマーカー411の間接標識のための物質412を包含する、標識ゾーン404の中へ引き込む。図示する例では、標識物質412は、接着した色素分子414を持つ、免疫グロブリン413を含む。免疫グロブリン413は、標的バイオマーカー411を特異的に結合して、標識された標的バイオマーカー複合体を形成する。一部の他の実施では、標識物質412は、標的バイオマーカー411を特異的に結合して、標識された標的バイオマーカー複合体を形成する、非免疫グロブリン標識化合物である。
【0058】
標識された標的バイオマーカー複合体は、過剰量の標識物質412と共に、ラテラルフローの進路に沿って、標的バイオマーカー411を特異的に結合できる固定化化合物415を包含する、検出ゾーン405の検査領域408の中へ輸送される。図示する例では、固定化化合物415は、標識された標的バイオマーカー複合体を特異的に結合し、それによって、標識された標的バイオマーカー複合体を検査領域408に保持する、免疫グロブリンである。サンプルの中の標識されたバイオマーカーの有無は、通常、検査領域408に標識物質の蓄積の結果として現れる、検査領域408の視覚的に検出可能な着色によって証明される。
【0059】
制御領域409は、アッセイが行われ完了したことを示すように設計される。制御領域409の中の化合物416は、標識物質412を結合し保持する。標識物質412は、通常、充分な量の標識物質412が蓄積した後に、制御領域409で目に見えるようになる。標的バイオマーカー411が、サンプルの中に存在しないとき、検査領域408は着色されず、一方、制御領域409は、アッセイが行われたと示すために着色されるであろう。吸収ゾーン406で、過剰量の流体サンプル410を捕捉する。
【0060】
検査領域408および/または制御領域409の光学検査を使用して、バイオマーカー濃度の定量アッセイ測定値を提供することができる。
【0061】
図5は、筐体502、光学読み取り機504、データアナライザー506、RFID読み取り機508、およびメモリ510を含む、診断検査システム500の実施形態を示す。電源518によって、光学読み取り機504、データアナライザー506、RFID読み取り機508、および結果インジケーター516を含む、診断検査システム500のアクティブな構成要素へ電力を供給する。電源518は、例えば、交換式バッテリーまたは充電式バッテリーによって実装されうる。
【0062】
筐体502は、LFA検査ストリップカセット514を受け取るためのポート512を含む。LFA検査ストリップカセット514は、一つ以上のLFA検査ストリップを備えうる。LFA検査ストリップカセット514は、RFIDタグ522(または診断検査システム500にアクセス可能な他のデータソース)を備えうる。検査ストリップカセット514が、ポート512の中に装填されるとき、光学読み取り機504は、検査ストリップカセット514から光強度測定値を取得する。概して、光強度測定値は、フィルタリングされなくてもよく、または波長および偏光のうちの少なくとも一つの観点から、フィルタリングされうる。データアナライザー506は、本明細書に記載するように、一つ以上の方法を行ってもよい。実施形態では、データアナライザー506は、光強度測定値に濃度方法110を行い、濃度方法110の出力時に分類方法120を行ってもよい。結果インジケーター516は、データアナライザー506によって行われる、方法の結果のうちの一つ以上の表示を提供する。一部の実施では、診断検査システム500は、廃棄可能な、または単回使用の用途に使用することが可能になる、比較的安価な構成要素から製作される。
【0063】
筐体502は、プラスチックおよび金属を含む、多種多様な材料のうちのいずれか一つで作られうる。筐体502は、光学読み取り機504、データアナライザー506、電源518、および診断検査システム500の他の構成要素のための保護囲いを形成する。筐体502はまた、光学読み取り機504に関連して、検査ストリップカセット514を機械的に登録するレセプタクルも画定する。レセプタクルは、
図4Aに示すタイプの検査ストリップを含む、多種多様な異なるタイプの検査ストリップおよび検査ストリップカセット514のうちのいずれか一つを受け取るように設計されうる。
【0064】
概して、検査ストリップカセット514の各々が、ラテラルフロー方向520に沿って、流体サンプルのラテラルフローを支援し、標識を標的バイオマーカーに結合する標識物質を包含する標識ゾーンと、標的バイオマーカーを結合する固定化物質を包含する、少なくとも一つの検査領域を含む検出ゾーンとを含む。検査領域および/または制御領域の少なくとも一部分を含む、検出ゾーンの一つ以上のエリアは、光学読み取り機504による光学検査のために露出している。検出ゾーンの露出エリアは、光学的に透明な窓によって覆われていてもよく、または覆われていなくてもよい。
【0065】
光学読み取り機504は、検査ストリップカセット514の検出ゾーンの露出エリアを光学的に点検するための、一つ以上の光電子構成要素を含む。一部の実施では、光学読み取り機504は、少なくとも一つの光源および少なくとも一つの光検出器を含む。一部の実施では、光源が半導体発光ダイオードを含んでもよく、光検出器が半導体フォトダイオードを含んでもよい。検査ストリップカセット514によって使用される標識の性質に応じて、光源は、ある特定の波長範囲内の光、またはある特定の偏光を持つ光を放出するように設計されうる。例えば、標識が、量子ドットなどの蛍光標識である場合、光源は、標識から蛍光を誘起する波長範囲の光で、検査ストリップカセット514の検出ゾーンの露出エリアを照らすように設計されるであろう。同様に、光検出器は、検出ゾーンの露出エリアから、光を選択的に捕捉するように設計されうる。例えば、標識が蛍光標識である場合、光検出器は、標識によって放出される、またはある特定の偏光の光を持つ蛍光灯の波長範囲内で、選択的に光を捕捉するように設計されるであろう。一方、標識が反射性標識である場合、光検出器は、光源によって放出される光の波長範囲内の光を、選択的に捕捉するように設計されるであろう。これらの目的で、光検出器は、捕捉した光の波長範囲または偏光軸を画定する、一つ以上の光学フィルターを含みうる。
【0066】
別のアプローチでは、光学読み取り機504は、測定ゾーン(例えば、制御)の外側と、検出ゾーンの内側とからの検出信号の値を補間することによって、測定ゾーンから信号強度のベースラインを生成しうる。標識された固定化標的バイオマーカー複合体を表す信号強度の値は、ベースラインに対して定量化されうる。
【0067】
データアナライザー506は、光学読み取り機504によって取得される、光強度測定値を処理する。概して、データアナライザー506は、デジタル電子回路の中、もしくはコンピュータハードウェア、ファームウェアもしくはソフトウェアの中を含む、任意のコンピューティングまたは処理環境に実装されてもよい。一部の実施形態では、データアナライザー506は、プロセッサ(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、またはASIC)およびアナログデジタル変換器を含む。図示する実施形態では、データアナライザー506は、診断検査システム500の筐体502内に組み込まれる。他の実施形態では、データアナライザー506は、コンピュータなど、診断検査システム500と有線または無線接続を介して通信しうる、別個のデバイスの中に位置する。
【0068】
データアナライザー506によって、RFID読み取り機508を係合して、検査ストリップカセット514上のRFIDタグ522からデータを取得してもよい。RFID読み取り機508は、無線エアインターフェースを介して、一つ以上のRFIDタグ522へ情報を送信するように構成されてもよい。エアインターフェースによって、RFID読み取り機508が、電力、クエリーデータ、およびタイミング情報をRFIDタグ522へ提供することが可能になり、それに応じて、RFIDタグ522が応答データを提供してもよい。具体的には、RFIDタグ522は、受信した無線周波数(RF)信号から電力を取り出してもよく、関連するアンテナのインピーダンスを変調することによって、応答データをRFID読み取り機508へ後方散乱してもよい。半二重通信の実施形態では、読み取り機からタグへの送信中に、RFID読み取り機508によって、RF波形を情報(例えば、ビット)で変調しうる。タグから読み取り機への送信中には、RFID読み取り機508が、連続波(CW)無線周波数信号を送信する。その後、RFIDタグ522は、CW信号をビットで後方散乱変調し、RFID読み取り機508へ戻すように送信される、無線周波数(RF)情報波形を作り出す。
【0069】
RFIDタグ522は、エアインターフェースを介して無線周波数信号の受信および送信を促進するように、RFID回路(例えば、RFID集積回路(IC))および結合アンテナ(または複数のアンテナ)の組み合わせであってもよい。RFID回路およびアンテナは、通常、基材または底基板(例えば、プラスチック材または紙材)上に位置して、それによって、RFIDタグ522を構成する。RFIDタグ522は、いくつかの従属部品を含んでもよく、それらのうちのいずれか一つ以上が、RFIDタグ522の一部を形成する、一つ以上の集積回路上に実装されてもよい。具体的には、RFIDタグ522は、結合アンテナを介して受信される無線周波数信号の処理を促進し、また、結合アンテナを介して無線周波数信号(例えば、変調された後方散乱信号)の送信を促進する、構成要素を含みうる。コアが、RFIDタグ522の操作および状態を制御するために動作し、一方、メモリは、とりわけ、タグ識別子、製品識別子、RFIDタグ522の構成に適用可能な構成値、本明細書に開示する一つ以上の方法を行うためのパラメータ、一つ以上のアルゴリズム、および同類のもののうちの一つ以上を保存する。RFIDタグ522は、エアインターフェースを介して、電力を無線信号から取り出す、「パッシブ」タグでありうる。別の方法として、RFIDタグ522が、「アクティブ」タグであり、RFIDタグ522に電力を供給する電源を含んでもよい。
【0070】
RFIDタグ522は、ヒト対象の検定統計量(TS)を計算するのに使用されるパラメータを保存し、TSを検定統計量の閾値と比較するように構成されてもよい。下記の表1は、RFIDタグ522上に保存されうる、例示的なパラメータを提供する。
【表1】
【0071】
概して、結果インジケーター516は、アッセイ検査の一つ以上の結果を示すための、多種多様な異なる機構のうちのいずれか一つを含みうる。一部の実装では、結果インジケーター516は、例えば、陽性の検査結果およびアッセイ検査の完了(例えば、充分な量の標識物質412が、制御領域に蓄積されたとき)を示すために起動される、一つ以上の光(例えば、発光ダイオード)を含む。他の実装では、結果インジケーター516は、アッセイ検査の結果を提示するための、英数字表示(例えば、2または3文字の発光ダイオード配列)を含む。他の実施形態では、結果インジケーター516が、ディスプレイ画面(例えば、LCD)を備えうる。
【0072】
データアナライザー506は、RFIDタグ522上に保存されるパラメータを、RFID読み取り機508を介して受信するように構成されうる。データアナライザー506が、本明細書に記載する一つ以上の方法を行うように構成されうる。実施形態では、データアナライザー506が、濃度方法110を行うように構成されうる。実施形態では、データアナライザー506が、分類方法120を行うように構成されうる。実施形態では、データアナライザー506が、濃度方法110および分類方法120を行うように構成されうる。実施形態では、データアナライザー506が、分類方法600を行うように構成されうる。実施形態では、データアナライザー506が、濃度方法110および分類方法600を行うように構成されうる。
【0073】
図6は分類方法600を示す。分類方法600は、データアナライザー506によって行われてもよい。分類方法600によって、NHP集団について予め査定したバイオマーカー濃度の組み合わせを査定することによって、ヒト対象用の治療計画の必要性を決定してもよい。実施形態では、病態には、容易に利用できるヒト臨床試験の集団はない。方法600は、ヒト対象と関連付けられた、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値を受信すること(610)であって、複数のヒト対象のバイオマーカーが、病態と関連付けられていることと、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定すること(620)と、ヒト対象の検定統計量を、検定統計量の閾値と比較すること(630)であって、検定統計量の閾値が、ヒト以外の霊長類(NHP)対象データに一部基づいて導き出されることと、検定統計量の閾値を超えるヒト対象の検定統計量に基づいて、ヒト対象が病態を有する、またはヒト対象が病態を有さないと判定すること(640)とを含みうる。検定統計量の閾値は、NHP対象データに一部基づいて、かつヒト対象データに一部基づいて導き出されてもよい。
【0074】
複数の対象のバイオマーカー濃度値の受信には、ラテラルフローアッセイ検査ストリップの複数のゾーンの各々から反射する、光の強度を測定することであって、複数のヒト対象のバイオマーカーの各々が、複数のゾーンのうちの一つのゾーンと関連付けられ、対照は、複数のゾーンのうちの少なくとも一つのゾーンと関連付けられることと、複数のゾーンの各ゾーンに対して、複数のゾーンのそれぞれのゾーンと関連付けられる、複数のヒト対象のバイオマーカーのうちのバイオマーカーについて、光の強度をヒト対象の濃度値へ変換することとを含みうる。病態は、2Gy以上の放射線への曝露でありうる。
【0075】
複数のヒト対象のバイオマーカーが、唾液αアミラーゼ(AMY1)、Flt3リガンド(FLT3L)、または単球走化性タンパク質1(MCP1)のうちの一つ以上を含んでもよく、病態が、2Gy以上の放射線への曝露である。バイオマーカーAMY1、FLT3L、およびMCP1が、放射線被曝を測定するために選択されているものの、本明細書に記載する装置および関連する方法は、対象が病態を有するか、または有さないかを判定するために、バイオマーカー値の組み合わせを測定し、対応する閾値に対して査定する、他の病態を査定するのに使用できることに留意すべきである。
【0076】
複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定することが、-ln(Pij*)の複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値全体の和を決定することを含み、式中、iは、バイオマーカーを示し、Pij*は、参照集団の1人が、ヒト対象のj番目のサンプルから取得された、対応するヒト対象のバイオマーカー濃度値を上回るバイオマーカー濃度値を有するであろう確率(Pij)の推定値である。
【0077】
複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値に基づいて、ヒト対象の検定統計量を決定することが、複数のヒト対象のバイオマーカー濃度値の各ヒト対象のバイオマーカー濃度値(C
i)について、L
i=ln(C
i)を評価することによって、自然対数変換(L
i)を決定することと、Z
i=(L
i-M
i)/S
iを評価することによって、基準値(Z
i)を決定することであって、式中、M
iは、参照集団におけるバイオマーカー濃度の自然対数の平均値を表し、S
iは、参照集団におけるバイオマーカー濃度の自然対数の標準偏差を表すことと、係数A
iおよび係数B
iを決定することであって、係数A
iは、参照集団からの観察結果が、観察される濃度を超える確率P
iを推定するのに使用される、定数の回帰係数を含み、係数B
iが、P
iを推定するのに使用される、-ln(C
i)の基準値の回帰係数を含むことと、確率(P
i)をP
i
*(Z
i,A
i,B
i)と推定することと、-ln(P
i
*)を評価することによって、P
i
*の逆自然対数変換を決定することと、
【数1】
を評価することによって、ヒト対象の検定統計量を決定することとを含みうる。
【0078】
方法600は、Ciが濃度最小値よりも小さいかを判定することであって、Ciが濃度最小値よりも小さい場合、-ln(Pi
*)を第1の所定値に設定することと、Ciが濃度最大値よりも大きいかを判定することであって、Ciが濃度最大値よりも大きい場合、-ln(Pi
*)を第2の所定値に設定することと、-ln(Pi
*)が、-ln(Pi
*)の許容値の上限閾値よりも大きいかを判定することであって、-ln(Pi
*)が上限閾値よりも大きい場合、-ln(Pi
*)を上限閾値に設定することとをさらに含みうる。
【0079】
検定統計量の閾値、Mi、Si、係数Ai、係数Bi、濃度最小値、濃度最大値、または上限閾値のうちの一つ以上が、ラテラルフローアッセイ検査ストリップを包含するカートリッジに貼り付けられたRFIDタグによって受信される。
【0080】
方法600は、ヒト対象が病態を有するという表示を、ディスプレイへ出力することをさらに含みうる。
【0081】
方法600は、偽陰性率が、3.6Gy以上に曝露したヒトに対して10%未満であるように、ヒト以外の霊長類(NHP)対象データに一部基づいて、検定統計量の閾値を予め導き出すことをさらに含みうる。
【0082】
図7は、サーバ702と、ネットワーク704を通じて接続される診断検査システム500との非限定的な例を含む、環境700を描写するブロック図である。ある態様では、いずれかの記載する方法の一部またはすべてのステップが、本明細書に記載するような、コンピューティングデバイス上で行われてもよい。サーバ702は、方法110、方法120、方法300、方法600、方法110、方法120、方法300、方法600によって生成されるパラメータ、方法110、方法120、方法300、方法600によって利用されるパラメータ、および同類のもののうちの一つ以上を保存し、ならびに/または行うように構成される、一つまたは複数のコンピュータを備えることができる。診断検査システム500は、例えば、ラップトップコンピュータまたはデスクトップコンピュータなど、ユーザインターフェース720を操作するように構成される、一つもしくは複数のコンピュータを備えることができる。複数の診断検査システム500は、例えば、インターネットなどのネットワーク704を介してサーバ702に接続できる。診断検査システム500のユーザは、ユーザインターフェース720と情報を交換し、ならびに/またはそうでなければ、方法110、方法120、および/もしくは方法600を、ユーザインターフェース720を介して実行させてもよい。ユーザインターフェース720は、方法110、方法120、および/または方法600の結果を表示するように構成されていてもよい。
【0083】
サーバ702および診断検査システム500は、ハードウェアアーキテクチャの点から、概して、プロセッサ708、メモリシステム710、入力/出力(I/O)インターフェース712、およびネットワークインターフェース714を含む、デジタルコンピュータでありうる。これらの構成要素(708、710、712、および714)は、ローカルインターフェース716を介して通信連結される。ローカルインターフェース716は、例えば、当該技術分野で知られるような、一つ以上のバス、または他の有線もしくは無線接続でありうるが、それらに限定されない。ローカルインターフェース716は、コントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、および受信機など、簡略化のために省略されている、通信を可能にする追加要素を有することができる。さらに、ローカルインターフェースは、前述の構成要素間の適切な通信を可能にするアドレス、制御、および/またはデータ接続を含みうる。
【0084】
プロセッサ708は、特にメモリシステム710に保存される、ソフトウェアを実行するためのハードウェアデバイスでありうる。プロセッサ708は、いかなる特注の、もしくは市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、サーバ702および診断検査システム500と関連付けられたいくつかのプロセッサ間の補助プロセッサ、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップまたはチップセットの形態である)、または概して、ソフトウェア命令を実行するためのいかなるデバイスでありうる。サーバ702または診断検査システム500が動作中のとき、プロセッサ708は、メモリシステム710内に保存されたソフトウェアを実行し、メモリシステム710からおよびメモリシステム710へデータを伝達し、ソフトウェアに従ってサーバ702および診断検査システム500の動作を概して制御するように構成できる。診断検査システム500のプロセッサ708は、方法110、方法120、および/または方法600を行うために、ソフトウェアを実行するように構成されていてもよい。サーバ702のプロセッサ708は、方法110、方法120、方法300、および/または方法600を行うために、ソフトウェアを実行するように構成されていてもよい。
【0085】
I/Oインターフェース712は、一つ以上のデバイスもしくは構成要素からユーザ入力を受信するように、および/または一つ以上のデバイスもしくは構成要素へシステム出力を提供するために使用できる。ユーザ入力は、例えば、キーボードおよび/またはマウスを介して提供できる。システム出力は、ディスプレイデバイスおよびプリンタ(図示せず)を介して提供できる。I/Oインターフェース712は、例えば、シリアルポート、パラレルポート、スモールコンピュータシステムインターフェース(SCSI)、IRインターフェース、RFインターフェース、および/またはユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースを含みうる。
図5に関連して前に記載したように、診断検査システム500は、RFID読み取り機および光学読み取り機など、入力/出力(I/O)インターフェース712を備えうる。
【0086】
ネットワークインターフェース714は、ネットワーク704上の外部サーバ702または診断検査システム500から送受信するのに使用できる。ネットワークインターフェース714は、例えば、10BaseTイーサネットアダプタ、100BaseTイーサネットアダプタ、LAN PHYイーサネットアダプタ、トークンリングアダプタ、無線ネットワークアダプタ(例えば、WiFi)、またはいかなる他の適切なネットワークインターフェースデバイスを含みうる。ネットワークインターフェース714は、ネットワーク704上の適切な通信を可能にするアドレス、制御、および/またはデータ接続を含みうる。
【0087】
メモリシステム710は、揮発性メモリ素子(例えば、ランダムアクセスメモリ(例えば、DRAM、SRAM、SDRAMなどのRAM))および非揮発性メモリ素子(例えば、ROM、ハードドライブ、テープ、CDROM、DVDROMなど)のうちのいずれか一つまたは組み合わせを含むことができる。さらに、メモリシステム710は、電子、磁気、光学および/または他のタイプの記憶媒体を組み込みうる。メモリシステム710は、様々な構成要素が互いに遠隔に据えられるが、プロセッサ708によってアクセスできる、分散アーキテクチャを有することができることに留意されたい。メモリシステム710は、方法110、方法120、方法300、および/もしくは方法600によって生成され、および/または利用されるパラメータ、ならびにそれらの方法のパラメータを保存するために構成されうる。
【0088】
メモリシステム710の中のソフトウェアには、一つ以上のソフトウェアプログラムを含んでもよく、それらの各々が、論理機能を実施するための実行可能な命令の順序付けられたリストを含む。
図7の例では、サーバ702のメモリシステム710の中にあるソフトウェアが、方法110、方法120、方法300、方法600、および適切なオペレーティングシステム(O/S)718を含むことができる。
図7の例では、診断検査システム500のメモリシステム710の中にあるソフトウェアが、方法110、方法120、方法600、ユーザインターフェース720、および適切なオペレーティングシステム(O/S)718を含むことができる。オペレーティングシステム718は、基本的に、オペレーティングシステム718、ユーザインターフェース720など、他のコンピュータプログラムの実行を制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイルおよびデータの管理、メモリ管理、ならびに通信制御および関係サービスを提供する。
【0089】
説明のために、アプリケーションプログラム、およびオペレーティングシステム718などの他の実行可能なプログラム構成要素は、本明細書では別々のブロックとして図示しているものの、このようなプログラムおよび構成要素は、サーバ702および/または診断検査システム500の異なる記憶装置構成要素に、様々なタイミングで存在できることが認識される。方法110、方法120、方法300、方法600、および/またはユーザインターフェース720の実施は、非一時的コンピュータ可読媒体の何らかの形態に保存できるか、またはそれらにわたって送信できる。開示する方法のいずれも、コンピュータ可読媒体上に具体化される、コンピュータ可読命令によって行うことができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータがアクセスできる、いかなる利用可能な媒体でもありうる。例として、限定を意味するものではないが、コンピュータ可読媒体は、「コンピュータ記憶媒体」および「通信媒体」を備えることができる。「コンピュータ記憶媒体」は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなど、情報を保存するための任意の方法または技術に実装される、揮発性および非揮発性、取り外し可能なおよび取り外し不可能な媒体を備えることができる。例示的なコンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶部、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または望ましい情報を記憶するのに使用でき、コンピュータによってアクセスできる、いかなる他の媒体も備えることができる。
【0090】
特定の構成について記載してきたが、本明細書の構成は、あらゆる点で、制限ではなく可能な構成であることを意図しているため、範囲が、説明する特定の構成に限定されることは意図していない。
【0091】
別途明示的に言及されていない限り、本明細書で説明するいずれの方法も、そのステップを特定の順序で行うことが必要であると解釈されることを、決して意図していない。したがって、方法請求項が、そのステップが続くと順序を実際に列挙していないか、またはそうでなければ、ステップが特定の順序に限定されると、請求項もしくは明細書の中で具体的には述べていない場合、順序を暗示することは、いかなる点でも全く意図していない。これは、ステップの配置または操作フローに関する論理的事項、文法構成または句読法に由来する平明な意味、明細書に記載する構成の数またはタイプを含む、解釈に対して起こりうるいかなる非明示的な基盤にも当てはまる。
【0092】
実施例
【0093】
何万もの個人を比較的短期間に評価する必要があるであろう、重大な核事象が起きた後には、吸収された放射線量について個人を迅速にトリアージして、効果的な医療および効率的な医療資源の使用を保証する必要がある。大部分の曝露した個人には、物理的線量計がないであろうため、記載する方法を使用して、指先穿刺血液サンプルから簡単に取得できる、血液タンパク質の特定のパネルの解析に基づく被曝線量を査定しうる。癌の治療として全身放射線療法の分割線量を受けるヒト患者において増加する、三つのタンパク質バイオマーカーのパネルが特定されている。これらのタンパク質バイオマーカーは、唾液αアミラーゼ(AMY1)、Flt3リガンド(FLT3L)、および単球走化性タンパク質1(MCP1)である。さらに、これらのタンパク質は、電離放射線の単一の急性線量または分割線量のいずれかを受けるヒト以外の霊長類において、類似する放射線反応を呈する。記載する方法で、放射線療法の患者、正常で健康な個人、ならびに糖尿病、肥満、関節炎、妊娠、および免疫不全の個人だけでなく、熱傷、外傷、および軽度の感染を持つ個人も含む、数個の特殊集団群から取得した、1051個のヒトサンプルから成るデータセットを、高精度で分類するために、この三つのタンパク質の使用を実証した。本明細書に記載する生体線量計/アナライザーは、大量の死傷者を出す核事象における放射線被曝のトリアージで使用する、指先穿刺の血液サンプル中のこれら三つのタンパク質を迅速に測定できる。
【0094】
記載する生体線量計/アナライザーは、放射線および核事象に続いて、曝露の可能性がある個人をトリアージするのに使用できる、ポイントオブケア(POC)放射線生体線量計である。記載する生体線量計/アナライザーは、<2Gyと>2Gyとの吸収線量を区別することができ、曝露後1~7日の時間窓で取得されるサンプルに対して、高い分類精度を有し、すべての年齢群の米国人口統計範囲にわたって同等に働き、米国の母集団だけでなく、保健福祉省(HHS)によって指定された特殊集団群にも広く認められる共通の医学的状態によって交絡しない。加えて、デバイスは、最小限訓練を受けた個人によって操作可能であり、30分かからずに指先穿刺血液サンプルから結果を提供する。
【0095】
宿主応答の血漿セットは、閾値レベル(ヒトでは2Gyだが、動物モデルでは異なる)、またはそれを上回る電離放射線への曝露を示すタンパク質であった。姉妹論文[Balogら、Development of a point-of-care radiation biodosimeter:studies using novel protein biobiomarker panels in non-human primates、Int.Jour.Radiation Biology、2019]では、三つの大規模なヒト以外の霊長類(NHP)研究から取得された結果について論じ、電離放射線の急性吸収線量に応答して、NHPにおいて有意に上昇するタンパク質バイオマーカーのパネルが特定されている。これらのバイオマーカーには、α1-アンチキモトリプシン(AACT)、唾液αアミラーゼ(AMY1)、Flt3リガンド(FLT3L)、および単球走化性タンパク質1(MCP1)が含まれる。このバイオマーカーのパネルを、NHP血液の血漿サンプルの大きなデータセットを、高精度で分類するように実証し、これらのマーカーのベースラインレベル、および大量の放射線吸収線量後に続くレベルが、ラテラルフロー検査を使用して直接検出できると立証する。より早期の論文[Bazanら、Int.J.Radiation Oncology Biol Phys.90(3):612-9、2013]では、ヒトの放射線療法患者における初期の観察結果に基づいて、ヒトおいて有用な放射線バイオマーカーでありうるタンパク質についての、我々の初期研究の一部について論じていた。本論文では、放射線療法患者だけでなく、いくつかの特殊集団群からのさらなる結果も提示し、NHPで観察されたものと結果を比較し、放射線の生物学的線量測定に有用である、タンパク質の特定パネルを明らかにする。
【0096】
三つのバイオマーカーAMY1、FLT3L、およびMCP1は、数日の期間にわたり投与される電離放射線の分割線量を受けるヒトの放射線療法患者において、有意に増加する。本明細書に記載する方法を使用して、この三つのバイオマーカーのパネルによって、1051個のヒトサンプルから成るデータセットを、92%の精度、90%の感度、および93%の特異度で分類した。このヒトのデータセットは、正常で健康な個人、いくつかの特殊集団群、および全身放射線の分割線量を受けたヒトの放射線療法患者から取得されたサンプルから成る。三つのマーカーは、ヒトの放射線療法患者において、NHPで観察されるものと類似する、放射線反応を呈する。
【0097】
これら三つのマーカーについてはすべて、放射線損傷との関連で、以前から文献で報告されていた。唾液αアミラーゼ(AMY1)は、唾液腺で高度に発現し、耳下腺への放射線損傷を示すことで知られる[Kishimaら、Am J Roentgenol Radium Therapy Nucl Med.94:271~291、1965]。唾液組織の照射に起因する、AMY1の上昇もまた観察され、正常な組織における放射線の早期影響に特有な生化学的尺度を提供してきた[Guipaudら、Ann Ist Super Sanita.45(3):278~286、2009]。AMY1は照射後に増加を示し、偶発的に照射された患者のトリアージに[Citrinら、Radiation Oncology.7:64 doi:10.1186/1748-717X-7-64、2002]、および全身照射を受ける放射線療法の患者に[Barrettら、Br.Med.J.285:170~171、1982;Jungleeら、Clin Chem 32:609~610、1986]優れた基準を提供してきた。唾液腺機能の早期の変化は、一部の頭頸部癌に対する加速放射線療法または通常分割放射線治療のいずれかを受けている患者で、類似して顕著である[Guipaudら、Ann Ist Super Sanita.45(3):278~286、2009;Leslieら、Radiotherapy and Oncology.24(1):27~31、1992]。
【0098】
Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)は、様々な血球前駆細胞の増殖および分化を刺激するように、他の増殖因子との相乗効果で働く、造血サイトカインである。放射線療法の最初の5日間の血漿のFLT3L濃度は、非ヒト霊長類モデルにおける放射線量と直接相関する[Berthoら、Intern J Rad Biol.77:703~712、2001]。放射免疫療法を受ける患者に対して、FLT3Lを調整した赤色骨髄放射線量は、血液毒性と相関する。FLT3Lは、骨髄への放射線誘発性損傷に続いて発現する[Keninsら、Journal of Experimental Medicine.205(3):523~531、2008]。FLT3Lの監視は、偶発的に電離放射線に曝露した犠牲者の主要な生理系に対する傷害の重症度と相関する[Berthoら、Radiation Research.169(5):543~550、2008;Berthoら、Biomarkers.14(2):94~102、2009]。
【0099】
単球走化性タンパク質-1(MCP-1/CCL2)は、恒常的または酸化ストレスによる誘発後のいずれかに、様々な細胞型によって生み出される、単球の強力な走化性因子である[Deshmaneら、Journal of Interferon & Cytokine Research.29(6):313~326、2009]。MCP-1は、感染症(例えば、結核)、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチ)、および癌(例えば、乳癌)から活動性炎症の病巣へ、単球を補充することが実証されている[Deshmaneら、Journal of Interferon & Cytokine Research.29(6):313~326、2009]。MCP1レベルは、照射(6週間にわたって30分割で60Gy)で治療される、非小細胞肺癌(NSCLC:non-small cell lung cancer)の患者で観察されている[Sivaら、PLOS ONE 9(10):e109560、2014]。肺の平均放射線量は、血漿MCP-1レベルにおける1時間での減少と相関した。肺毒性を維持していた患者は、呼吸器毒性のない患者と比較したとき、放射線治療後1時間でMCP-1レベルが著しく減少していた。しかしながら、4週間でのMCP-1濃度は、重度の毒性を持たない患者と比較して、重度の肺毒性を持つ患者で増加した。放射線療法中のサイトカイン濃度の測定は、肺毒性を予測するのに役立ちうる。
【0100】
電離放射線は、髄膜腫細胞株[Nallaら、Cellular Signalling.23(8):1299~1310、2011]、ラット肝臓細胞[Moriconiら、Radiation Research.169(2):162~169、2008]、およびヒト肺内皮細胞[Gauglerら、Radiation Research.163(5):479~487、2005]におけるMCP-1の発現を誘起することが示されている。
【0101】
ヒト以外の霊長類による研究
NHPサンプルを、いくつかの異なる照射研究から取得した。動物の使用および研究プロトコルは、すべての参加研究所で動物実験委員会(IACUC:Institutional Animal Care and Use Committee)によって、およびスポンサーによって承認された。最初の大規模な研究は、CitoxLab(カナダ、モントリオール)で実施された。これに続いて、LBERI(ニューメキシコ州アルバカーキ)でさらに二つの大規模な研究が実施された。CitoxLabでの研究(SRI M918)は、0、1、2、4、8、および10Gyの単一の急性TBI吸収線量を受ける6つの線量群に割り当てられた、総計50匹の動物(約4歳)から構成された(0Gyの偽動物(sham animal)は10Gy群に再び割り当てられた)。各線量群は、10(雄5M/雌5)匹の動物から構成された。動物は、Co60源からのガンマ線に60cGy/分の線量率で曝露された。総計300個の静脈血液サンプルが、照射前、照射後(4~12時間)、ならびに照射後1、2、3、および7日目の6時点で全動物から採取された。すべての照射群は、1日目から7日目まで、線量に依存した重症度に伴いリンパ球数を含む白血球の有意な減少を提示した。好中球数および血小板数の減少、ならびに体重の減少もまた、8および10Gyに曝露した動物に観察された。
【0102】
LBERIでの研究は、CitoxLabで行われたものに類似した、二つの大規模な急性TBI曝露研究から構成された。これら二つの研究(SRI M073およびM103)は、10(雄5/雌5)匹の動物の6つの線量群に割り当てられた、60匹の動物(約4歳)から構成された。M073研究では、線量群は0、2、4、6、8、および10Gyであった。M103研究では、線量群は0、1、2、4、6、および8Gyであった。総計294個および300個の静脈血液サンプルが、M073研究およびM103研究において、照射前、ならびに照射後1、3、5、および7日目の5時点で採取された(M073で採取されたサンプル数の減少は、研究から除去された10Gy群の動物によって生じた)。動物は、6MVリニアックのX線ビームから、50~80cGy/分の線量率でTBI吸収線量を受けた。
【0103】
すべての照射群は、1日目から7日目まで、線量に依存した重症度に伴い白血球数の減少を提示した。
【0104】
全三つの研究から取得された全NHPの急性曝露サンプルセットは、1から10Gyの範囲で放射線の吸収線量を受け、照射後1から7日の時間窓に採血されたNHPからだけでなく、正常な(ベースライン)NHPからもの895個のサンプルから成る。
【0105】
サンプル採取
静脈血液は、血漿タンパク質の保存のために、単一のBDTM P100採血システムを使用して採取した。8mLの容量まで収集されなかった管は、部分的採取として識別した。各管は、8~10回反転して、P100抗凝固薬を完全に混合し、その後、発泡スチロール容器の内部で、濡れた氷の層上にあるジッパー付きのビニール袋の中に置かれた。血液を包含する各P100管は、1600gで30分間、遠心分離された。適切なサイズの先端を持つ1000illマイクロピペッターを使用して、血漿の500illアリコートを、P100管の最上層から、適切な数の個々のねじ蓋付き1.5mL微量遠心機管の中へ移動した。これらのアリコート管を、ドライアイス上でのSRIへの輸送まで、-80℃で保存した。受け取った全サンプルを、質量分析またはイムノアッセイによる解析まで-80℃で保存した。
【0106】
サンプル解析方法
最初にマーカーを発見するためのタンデム質量分析
サンプルのLC-MS/MS解析では、無標識の定量的ショットガン(ボトムアップ)LC-MS/MSプロテオミクスアプローチを利用した[Wangら、Anal.Chem.75(18):4818-26、2003、Linら、Anal.Chem.78(16):5762-7、2006]。このアプローチでは、特定のプロテアーゼ酵素が、全血漿などのタンパク質の混成物を消化して、ペプチドの混合物を生み出す。次いで、ペプチド混合物が、実クロマトグラフィー時間(real chromatographic time)で、フルスキャンMSモードでペプチドの高解像度で正確な質量測定値を獲得し、フラグメンテーションMS/MSモードでペプチドの配列情報を取得する能力を有する、ハイブリッドOrbitrap質量分析計(Thermo Scientific)にオンラインで接続する、逆相キャピラリーHPLCによって分離される。このように、何千ものペプチドを、自動化ソフトウェアパッケージを使用して、単一の解析で同時にプロファイルし、同定することができる。ペプチド配列およびタンパク質同定は、データベース検索(ByOnic/ComByne、PARC)によって決定されるが、相対的な定量情報は、MSモードでのサンプルからサンプルへの対応するペプチドのイオン電流を比較することによって取得される(SIEVE、Thermo Scientific)。全体として、これは、候補のバイオマーカーを特定するための、効率的で不偏のアプローチを表し、血漿レベルが電離放射線に敏感であるタンパク質を見い出すように、この研究では広範囲に適用された。
【0107】
イムノアッセイ
イムノアッセイは、二度繰り返して行われ、従来のELISAまたはLuminexマルチプレックスプラットフォームのいずれかを利用した。両方のアッセイタイプは、サンドイッチ形式で行われる(測定される分析物は、二つの一次抗体、捕捉抗体と検出抗体との間で結合する)。ELISAアッセイは、市販のキットを使用して、8つの異なるタンパク質標的に対して行われた。Luminexアッセイは、NHPの代謝およびサイトカインパネルを使用して、35個の異なるタンパク質で行われた。各アッセイプレートは、アッセイの可変性を評価するために、一つ以上の血漿サンプル標準物質を含んでいた。CVは3.6%から11.7%の範囲に及び、平均CVは10%であった。
【0108】
マーカー検証用標的定量質量分析アッセイ
実行可能な市販のELISAまたはLuminexキットのない、見込みのありそうなタンパク質のうちのいくつかについて、サンプルの大きな部分集合にわたる、複数の反応モニタリング[Kondratら、Anal.Chem.50:2017~2021、1978]解析に基づいて、定量質量分析の標準として使用されうる、合成の安定同位体標識ペプチドを注文した。これにより、異なる放射線量曝露群を分類するとき、これらの潜在的に有望なタンパク質の有用性を調査するために、これらの一部の定量的データを含めることが可能になった。
【0109】
各NHP研究のために行ったアッセイ、および解析に使用した方法の概要を、表2に提供する。
【表2】
【0110】
統計解析法
データ解析は、いくつかの異なる解析パッケージを使用して行い、それらは、フリーウェアとして利用可能で、生物統計学コミュニティ内で広く使用されている、Rとして知られる包括的統計解析パッケージ、Matlab Statisticsツールパック、ならびにStata統計およびデータ解析ソフトウェアであった。初期データ処理として、ELISAおよびLuminex機器によって生み出された、未加工データファイルの読み込み、および各血漿サンプルに対する各タンパク質データのエクセルスプレッドシートから成る、マスタデータファイルの作成を行った。標準的な解析には、各タンパク質についての箱ひげ図、ヒストグラム、アッセイCV、相関表、および倍率変化プロットの作成が含まれた。変換したデータが、未変換のデータよりも正規分布することが分かったため、大部分の解析は、対数変換データで行われた。照射の結果としてベースラインから著しく変化するタンパク質を特定するために、線形回帰だけでなく、対応および独立t検定の両方も行った。データセットは、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、および条件付き推論ツリーを含んだ、いくつかの教師付き分類子を使用して分類された。これらの解析の一部からの結果を、以下のセクションに提示する。
【0111】
結果
タンデム質量分析結果
M918のNHP研究からの血漿サンプルのLC-MS/MS解析によって、多くの新しい放射線応答性タンパク質を特定し、いくつかの既知である放射線応答性タンパク質の予想される変化を確認した。この研究で観察された放射線応答性タンパク質には、ハプトグロビン、インターα-トリプシンインヒビター重鎖H4、α1-酸性糖タンパク質1様アイソフォーム2、ヘモペキシン、セルピンペプチダーゼインヒビター、α1-アンチキモトリプシン(AACT)、C反応性タンパク(CRP)、および血清アミロイドAタンパク質様アイソフォーム1(SAA)が含まれていた。それらの増加したタンパク質の中で、SAA、CRP、ハプトグロビン、およびAACTが、照射によって最大の倍率変化をすることが分かった。MSで観察された、他の見込みのある放射線応答性タンパク質には、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL、またリポカリン2としても知られる)、インスリン様増殖因子結合タンパク質4(IGFBP4)、シスタチンM/シスタチン6、イズロン酸2-スルファターゼアイソフォーム4(IDS4)、リンパ管内皮ヒアルロン酸受容体1(LYVE1)、プロパジン、およびカタラーゼアイソフォーム2が含まれていた。これらのタンパク質の倍率変化は、8Gyおよび10Gyのサンプルで、7日目に2倍から20倍よりも大きい範囲に及んだ。表3では、M918のNHPサンプルのLC-MS/MS解析に基づいて、血漿中で増加または減少のいずれかが見られたタンパク質を要約する。
【表3】
【0112】
イムノアッセイの結果
t検定および箱ひげ図
M918イムノアッセイ結果の初期解析は、t検定を使用して、各日、各線量群について照射群と対照群とを比較することで構成された。
図8は、各日および各容量の各タンパク質について、t検定のp値のlog10のヒートマップの結果を示す。ヒートマップから分かるように、放射線応答性タンパク質には、IL15、IL18、MCP1、AACT、FLT3L、SAA、NGAL、およびAMY1を含む。すべて、照射後に有意な変化を示した(p<1e-4)。
図9は、タンパク質AMY1A、FLT3L、AACT、およびIL15に対するM918のイムノアッセイデータからの箱ひげ図を示す。図から分かるように、すべてが照射前の値から有意に増加し、各々、照射後に異なる時間経過を辿る。M073およびM103研究について類似の解析を行い、M918研究で取得した結果を確認した。
【0113】
放射線応答性タンパク質のパネルを測定する、単純なラテラルフローアッセイを開発することを意図しているため、続く解析では、サンプルの調製なしに(ラテラルフロー検査ストリップへの塗布前の、血漿からの細胞材料の分離、および血漿と緩衝液との混合以外)、全血中にベースラインで検出されうるタンパク質マーカーに焦点を当てた。これに基づいて、ラテラルフロー検査用の候補タンパク質には、AACT、AMY1、FLT3L、NGAL、およびMCP1を含めた。
図10、
図11、および
図12は、これら5つのタンパク質に対するM073およびM103研究からの箱ひげ図を示す。図から分かるように、5つすべてのタンパク質が、各々、異なる時間経過を辿るものの、線量に依存する形で照射後堅調に増加する。
【0114】
AACTは、放射線照射後すべての日で上昇し、血漿濃度が線量と共に増加しているが、放射線照射後、日ごとに減少する。2Gy以上の曝露によって生じる濃度は、明らかに対照と区別可能である。
【0115】
AMY1は、放射線照射後の1日目は有意に上昇するが、3日目までにベースラインに戻る。AMY1の血漿濃度は、線量と共に増加する。2Gy以上の曝露によって生じる濃度は、明らかに対照と区別可能である。
【0116】
FLT3Lは、放射線照射後の3日目に上昇し始め、7日目まで有意に増加する。血漿濃度は、線量と共に増加する。すべての曝露(1Gy以上)における濃度は、明らかに対照と区別される。
【0117】
NGALは、1日目に有意に上昇し、3日目に僅かに上昇し、より低い曝露については5日目までにほぼベースラインに戻る。濃度は、線量と共に増加する。高曝露量(8および10Gy)では、M073データに7日目まである程度の上昇が見られるが、M103データには見られない。1日目では、2Gy以上の曝露量は、明らかに対照と区別される。
【0118】
MCP1は、曝露後すべての日で有意に上昇している。濃度は、線量と共に増加する。濃度は、低曝露量でおそらく僅かな減少があるものの、7日目まで比較的安定したままである。4Gy以上の曝露における濃度は、明らかに対照と区別される。
【0119】
倍率変化のプロット
図13は、AACT、FLT3L、AMY1、NGAL、およびMCP1について、M073/M103を組み合わせたNHP研究で観察される倍率変化を示す。各線量群について、0日目(放射線照射前)の血漿レベルの平均値を、各タンパク質に対して計算した。その後、放射線照射後1、3、5、および7日目に各線量群に対して観察された血漿レベルを、各タンパク質について0日目の血漿レベルの平均値に正規化した。FLT3Lは、最高線量レベルで、7日目に最大倍率変化である約20を呈する。AMY1およびNGALは、最高線量レベルで、1日目に最大倍率変化(それぞれ約8および6)を呈する。AACTは、おおよそ3の中程度の倍率変化を呈し、1日目でピークになり、その後、曝露後に連日ゆっくりと減少する。MCP1は、最高線量レベルについては5日目でおおよそ10であるピークの倍率変化、および1日目におおよそ6の倍率変化を示す。
【0120】
分類解析
初期の分類解析では、M918のデータセットに集中し、三つの異なる教師付き分類アルゴリズム、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン(SVM)、および条件付き推論ツリー(CIツリー)を使用した。アプローチは、イムノアッセイデータの中で特定された、放射線応答性タンパク質の異なる組み合わせを使用して、二つの吸収線量群のうちの一つにデータを分類し、最良の成果を生む組み合わせを特定するものであった。この解析については、NHPの吸収線量4Gyが、ヒトの吸収線量2Gyとほぼ同じ生物学的効果を有すると仮定した(各種についての推定LD50に基づく)。したがって、>4Gyの吸収線量は、分類子によって陽性とみなされ、<4Gyの曝露は陰性とみなされる。表4は、使用される各分類子に対してスコアの高いタンパク質パネルの、代表的なセットの分類結果を示す。表に示すこれらの結果は、データセットの5倍の交差検証を7回反復することによって取得された。三つすべての分類子によって、類似の結果を得ることに留意されたい。また、Flt3LおよびAACTは概して、最良の成果を生むパネルに含まれるが、しかしながら、いくつかの他のタンパク質(CRP、IL15、MCP1、NGAL、AMY1A、およびHP)は、類似の結果を得るように互換的に使用できる。表4は、5倍の交差検証に基づく、12個の異なるタンパク質パネルの精度(Acc)、偽陰性率(FNR)、および偽陽性率(FPR)を示す。定性的には、結果は精度において、SVMとロジスティック回帰との間で類似している。加えて、同じサンプルが、両方の統計学習アルゴリズムによって繰り返し誤って分類される。全体的には、CIツリーが僅かに悪化するが、しかしながら、パネルの全般的なランキングは類似しており、誤分類されたサンプルには、ロジスティック回帰およびSVMの両方により誤って分類された、サンプルの上位集合である傾向があった。
【表4】
【0121】
三つの分類アルゴリズムが、M918データセットで同等に働くため、続く解析は、ロジスティック回帰を使用して行った。解析については、タンパク質の二つの特定の組み合わせ、AACT、AMY1、FLT3L、およびMCP1から成る4マーカーパネル、およびAMY1、FLT3L、およびMCP1から成る3マーカーパネルに焦点を合わせた。AACTを除外した3マーカーパネルを考慮する根拠は、このマーカーが、ヒトの放射線療法患者において、放射線に応答しないようであるからである[Balogら 、Development of a biodosimeter for radiation triage using novel blood protein biomarker panels in humans and non-human primates、Int.Jour.Radiation Biology、2019]。これらのタンパク質は、ポイントオブケア検査での使用に適する、高品質な抗体の市場での入手可能度に基づいて選択した。
【0122】
2x2分類表およびROC曲線
表5では、3または4バイオマーカーパネルのいずれかを使用して、採取の0日目(照射前)から照射後7日目までの時点の、0から10Gyの吸収線量範囲を網羅する、全三つの急性研究からのNHPサンプルを分類する、LR分類子のパフォーマンスを要約する。分類子を使用する際、NHPとヒトとの線量の等価性に関して全く想定しないことを選び、そのため、2Gyを分類子のカットオフとして使用し、>2Gyの吸収線量を受けた対象からのサンプルを陽性とみなし、2Gy未満のものを陰性とみなした。表から、二つのパネルが同等に働くことが分かる。3マーカーパネルは、総合感度94%および総合特異度90%をそれぞれ達成し、偽陰性率(FNR)6%および偽陽性率(FPR)10%にそれぞれ対応する。4マーカーパネルは、それぞれ感度95%および特異度92%で、僅かにより良好に働き、FNR5%およびFPR8%にそれぞれ対応する。両パネルに対応する受信者動作特性(ROC)曲線を
図14に示し、おおよそ0.98のAUCを有する。ROC曲線は、主成分分析(PCA)検定統計量に対する一連のカットオフ点にわたって、感度と(1-特異度)との間のトレードオフを描写するプロットである。表5は、3または4バイオマーカーパネルを使用して、0日目から7日目まで0Gyから10Gyの全NHPサンプルから取得された分類結果を示す。感度および特異度はそれぞれ、3バイオマーカーに対して92.4%および94.4%、ならびに4バイオマーカーに対して94.4%および93.7%である。MCP1を一つのサンプルで測定しなかったため、分類したサンプルの総数は894個であった。
【0123】
【0124】
線量および日数による分類結果
表6および表7は、各線量および曝露後の各日について、3バイオマーカーパネルまたは4バイオマーカーパネルのいずれかを使用して、陽性と分類された観察結果の割合を示す。また、一覧として示すのは、各線量および各時点に対する、観察結果(対象)の数である。吸収線量>2Gyでは、真陽性率が高く、範囲が2Gyで>75%から、より高い吸収線量で>94%にまで増加することに留意されたい。表6は、各線量/日数の部分集団について、3バイオマーカーパネルを使用したNHPの分類結果を示す。赤枠内に観察できるように、吸収線量>2Gy、かつ0日目以降、観察結果の大部分が陽性とみなされている。
【表6】
【0125】
表7は、各線量/日数の部分集団について、4バイオマーカーパネルを使用したNHPの分類結果を示す。赤枠内に観察できるように、吸収線量>2Gy、かつ0日目以降、観察結果の大部分が陽性とみなされている。
【表7】
【0126】
NHPに対する曝露の推定確率のグラフ
NHPデータにロジスティック回帰を使用して、各観察結果に対して曝露の確率を推定し、
図15に、3バイオマーカーパネルについて、線量別に累積分布関数をプロットした。まず、バイオマーカーを対数変換し、次いで、平均を変換したベースライン値(別途、研究ごとに)で割ることによって正規化した。曝露は>2.0Gyの累積線量として定義した。その後、曝露の推定確率のロジットの累積分布関数を、同じ累積線量の観察結果群についてグラフ化した。
図8に見られるように、曝露の増加に伴い、CDFはグラフの右へシフトする。吸収線量>2Gyの曲線は、ベースライン(0Gy)の動物の曲線とは明らかに区別可能であり、サンプルを二つの吸収線量群のうちの一つに正しく分類する際に、三つのバイオマーカーのみのパネルが有用であることを示す。
【0127】
動物実験
電離放射線に曝露した可能性のある個人を、トリアージする必要があるときに使用できる放射線生体線量計は、深刻な核事象の後に、時機にかなう効果的な医療を提供し、乏しい医療資源を効率的に使用することを可能にする能力に、著しい影響を与えうる。こうしたデバイスは、吸収された放射線量を示し、個人が>2.0Gyの吸収線量を受けたかの定性的アセスメントを提供する、バイオマーカーのパネルを迅速に検出できなくてはならない。健康なヒトの放射線反応についてのデータが限定的であり、そうした研究を実施するのは非倫理的であることから、非侵襲的に採取できる少量の血液サンプル中で検出されうる、放射線の生物学的線量測定用のタンパク質バイオマーカーの適切なパネルを特定するために、三つの大きなヒト以外の霊長類での照射研究の結果を提示する。これらの研究では、使用する質量分析は、放射線被曝に続いて有意に変化する、少なくとも30個のタンパク質を特定するのに使用された。これらのタンパク質の様々な部分集合によって、0~10Gyの吸収線量範囲および曝露後1~7日目時点を網羅する、894個のサンプルから成るNHPデータセットを正確に分類できる。未知のサンプルを二つの吸収線量群に正確に分類するように、必要に応じる生体線量計に使用できる、3または4バイオマーカーの特定のパネルは、イムノアッセイを使用して検出され特定された。
【0128】
ヒトでの臨床試験
使用したすべてのヒトサンプルは、適切な治験審査委員会が承認した治験実施計画書の下、インフォームドコンセントにより取得された。ヒトである放射線療法患者のサンプルは、スタンフォード大学メディカルセンター(SUMC:Stanford University Medical Center)で取得された。加えて、健康なドナーだけでなく、外傷および感染症のある個人を含む、いくつかの特殊集団群からのサンプルもまた、スタンフォードで取得された。健康なドナーからのサンプルだけでなく、肥満、糖尿病、関節リウマチ、免疫不全、および妊娠の個人を含む、いくつかの特殊集団群からのサンプルが、Bioreclamationから商業的に取得された。熱傷患者のサンプルは、UCデイビスメディカルセンター(UCDMC:UC Davis Medical Center)で取得され、免疫不全のサンプルは、デューク大学メディカルセンター(Duke University Medical Center)から取得した。
【0129】
放射線療法患者
これらの患者は、通常18歳から65歳の間であり、主に白血病またはリンパ腫の治療を受けていた。患者は、放射線治療前の21日以内にいずれかの化学療法を受けていた場合、または以前にいずれかの放射線治療を受けていた場合、研究から除外された。SUMCで使用される、TBI患者に対して最もよく見られる治療計画には、1~3日目に線量120cGyを3回、および4日目に2回を含み、最初の線量後の各回は3時間空ける。TBIは、0.13~0.17Gy/分の線量率で、等しく加重された2回のビーム(前~後/後~前)による15MV光子で送達された。肺を保護するために、特注のブロックが各患者用に設計された。総計232個のサンプルを、65人の患者から採取した。TBIサンプルは、1日目の治療前に全65(男35/女30)人の患者から、2日目の治療前(3回目の後)に60(男32/女28)人の患者から、3日目(6回目の後)に60(男31/女29)人の患者から、および4日目(9回目の後)に47(男24/女23)人の患者から採取され、0、3.6、7.2、および10.8Gyの累積総吸収線量に対応する。
【0130】
対照群および特殊集団群
サンプルは、対照群および特殊集団群の両方から採取された。対照群は、健康なドナーのサンプル272個(男155/女117)から成り、成人154人(年齢幅22~65歳)、青年期61人(年齢幅12~21歳)、および老齢期57人(年齢幅>65歳)の個人から構成されていた。これらのサンプルは、SUMCおよびBioreclamationの両方から取得され、米国を表す人口統計分布を網羅した。
【0131】
追加の血液サンプルがBioreclamationから購入され、96(男50/女50)人の2型糖尿病、88(男50/女38)人の肥満(BMI>30)、100人の妊娠、および89(男44/女45)人の関節リウマチ患者が含まれた。外傷を経験した53(男39/女14)人の個人、および軽度の感染がある61(男19/女42)人の個人からの血液サンプルが、SUMCによって採取された。これらの個人は、通常、骨折、裂傷、ナイフ創、および射創を経験したか、または上気道感染症であった。12人の免疫不全の個人(CD4数<200)からのサンプルは、Bioreclamationおよびデュークの両方から取得した。UCDMCへの入院後1から7日の期間にわたり、複数の時点で採取された、総計48個のサンプルを、10(男9/女1)人の熱傷患者から取得した。熱傷患者は、18歳以上という条件で研究に含められ、熱傷以外に入院診断はなく、全体表面積の10%以上だが、30%以下を含む熱傷があった。
【0132】
採血
血漿タンパク質の保存のために、単一のBDTM P100採血システムを使用して静脈血液を採取した。管は容量8mL一杯にまで採取され、各々8~10回反転して、P100抗凝固薬を完全に混合し、その後、発泡スチロール容器の内部で、濡れた氷の層上にあるジッパー付きのビニール袋の中に置かれた。血液を包含する各P100管は、1600gで30分間、遠心分離された。適切なサイズの先端を持つ1000μlマイクロピペッターを使用して、血漿の500illアリコートを、P100管の最上層から、適切な数の個々のねじ蓋付き1.5mL微量遠心機管の中へ移動した。これらのアリコート管を、ドライアイス上でのSRIへの輸送まで、-80℃で保存した。受け取った全サンプルを、質量分析またはイムノアッセイによる解析まで-80℃で保存した。
【0133】
NHP研究
NHPサンプルは、他の場所[Balogら、Development of a point-of-care radiation biodosimeter:studies using novel protein biomarker panels in non-human primates、Int.Jour.Radiation Biology、2019]により詳細に記載されるように、いくつかの異なる照射研究から取得した。これらは、CioxLab(カナダ、モントリオール)およびLBERI(ニューメキシコ州アルバカーキ)で行われた、三つの大きなTBI急性曝露研究から構成された。全三つの研究から取得された全NHPの急性曝露サンプルセットは、1から10Gyの範囲で放射線の吸収線量を受け、照射後1から7日の時間窓に採血されたNHPからだけでなく、正常な(ベースライン)NHPからもの895個のサンプルから成る。各線量群は、10(雄5/雌5)匹の動物(約4歳)を包含していた。動物の使用および研究プロトコルは、すべての参加研究所で動物実験委員会(IACUC:Institutional Animal Care and Use Committee)によって、およびスポンサーによって承認された。
【0134】
これらの急性照射研究に加えて、急性および分割曝露の両方を含んだ、二つの別のNHP照射研究が、LBERIで実施された。これらの研究で、動物は、X線6MVの急性線量、2分割線量、または3分割線量のいずれかを、Varian 600cリニアックから、50~80cGy/分の線量率で受けた。単一の急性線量の動物は、線量の半分を左右の側面各々へ送達する、両側方式で照射を受けた。分割線量の動物は、各分割を動物の単一側面に受け、回ごとに側面を交互に入れ替えた。
【0135】
二つの分割線量方式を使用し、TBI療法を受けるヒト患者に共通して使用される、照射プロトコルを模倣することを選んだ。第1の方式は、1日2回、分割線量1.5Gyの投与から構成された。第2の方式は、1日3回、分割線量1.2Gyの投与から構成された。これらの方式は、二つの研究に適用された。第1の研究では、線量分割は、0日目に開始して連続する4日間行われ、2または3分割線量方式それぞれについて、1、2、3、および4日目に3、6、9、および12Gyまたは3.6、7.2、10.8、および13.2Gyのいずれかの総累積線量となった。第2の研究では、線量分割は、0日目にのみ行われ、各方式それぞれについて、3または3.6Gyのいずれかの総累積線量となった。分割線量群は、第1の研究では12(雄6/雌6)匹の動物、および第2の研究では8(雄4/雌4)匹の動物から構成された。第1の研究の急性曝露群は、12Gyの単一線量を受ける3(雌2/雄1)匹の動物、および13.2Gyの単一線量を受ける4(雄2/雌2)匹の動物から構成された。第2の研究では、8(雄4/雌4)匹の動物の2群が、3Gyまたは3.6Gyのいずれかの単一の急性線量を受けた。両方の研究で、照射3日前、ならびに1、2、3、4、および7日目の照射に先立って、各動物から血液サンプルが採取された。
【0136】
イムノアッセイ
イムノアッセイは、サンドイッチ形式で行われる従来のELISAを使用して、二度繰り返して行われた。ELISAアッセイは、ヒトサンプルで、市販のキットを使用して、6つの異なるタンパク質標的に対して行われた。これらの標的には、AACT、AMY1、FLT3L、IL15、MCP1、およびNGALを含めた。各アッセイプレートは、アッセイの可変性を評価するために、一つ以上の血漿サンプル標準物質を含んでいた。すべてのアッセイに対して、プレート間CVは2.3%から14%の範囲に及んだ。
【0137】
他の場所[Balogら、Development of a biodosimeter for radiation triage using novel blood protein biomarker panels in humans and non-human primates、Int.Jour.Radiation Biology、2019]に記載されるように、NHPサンプルで実施するイムノアッセイは、サンドイッチ形式で従来のELISAを利用して、二度繰り返して行われた。ELISAアッセイは、ヒトサンプルと同じ6つのタンパク質標的について行われた。各アッセイプレートは、アッセイの可変性を評価するために、一つ以上の血漿サンプル標準物質を含んでいた。すべてのNHPアッセイに対して、プレート間CVは3.6%から11.7%の範囲に及び、平均CVは10%であった。
【0138】
統計解析法
データ解析は、いくつかの異なる解析パッケージを使用して行い、それらは、フリーウェアとして利用可能で、生物統計学コミュニティ内で広く使用されている、Rとして知られる包括的統計解析パッケージ、Matlab Statisticsツールパック、ならびにStata統計およびデータ解析ソフトウェアであった。初期データ処理として、ELISA機器によって生み出された、未加工データファイルの読み込み、および各血漿サンプルに対する各タンパク質データのエクセルスプレッドシートから成る、マスタデータファイルの作成を行った。標準的な解析には、各タンパク質についての箱ひげ図、ヒストグラム、アッセイCV、相関表、および倍率変化プロットの作成が含まれた。変換したデータが、未変換のデータよりも正規分布することが分かったため、大部分の解析は、対数変換データで行われた。照射の結果としてベースラインから著しく変化するタンパク質を特定するために、線形回帰だけでなく、対応および独立t検定の両方も行った。データセットは、記載する分類方法だけでなく、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、および条件付き推論ツリーを含んだ、いくつかの教師付き分類子も使用して分類された。
【0139】
記載する分類方法によって、未知のサンプルからのバイオマーカー濃度を、そのバイオマーカーについて健常者の濃度の分布と比較する。この比較の結果は、未知のサンプルで測定したものよりも大きいバイオマーカー濃度を有する、正常で健康な対象の割合である、値pである。この値は、未知のサンプルのバイオマーカーについての「上側確率」呼ばれる。このプロセスは、パネルの中の全バイオマーカーに対して繰り返され、検定統計量(TS)は、各バイオマーカーの-ln(p)を合計することによって取得される。未知のサンプルから取得されたTS値は、その後、検査結果が陽性または陰性のどちらかを決定するように、閾値と比較される。TSの閾値は、放射線に曝露したことのない健常者についての観察結果から取得され、5%の偽陽性率を得るように設定された(これはFPRをFNRと交換するために変えることができる)。このアプローチは、確率を組み合わせるフィッシャーの方法[Fisher、Statistical Methods for Research Workers、Oliver and Boyd(エディンバラ)、ISBN 0-05-002170-2、1925]に類似し、バイオマーカーのパネルを使用する本用途に、(1)正常値の分布にのみ基づくため、照射された個人または動物からのデータは必要とせず、(2)単一のバイオマーカーから多数のバイオマーカーに拡張可能であり、(3)正規化および標準化データセットに対して、アルゴリズムは、ヒトおよびNHPの種に影響を受けず(各種のベースラインタンパク質濃度によって増減した後、ヒトについて開発したアルゴリズムをNHPに適用することができ、逆の場合も同じ)、(4)ヒトとNHPとの線量の等価性に関して全く想定しないといった、いくつかの利点を提供する。本解析では、すべてのデータをまず対数変換し、次いで、変換された各タンパク質の平均値および標準偏差を、正常で健康な対象に対して計算する。その後、本データセットは、各タンパク質の各測定値から、正常値の平均濃度を差し引き、正常値の標準偏差で割ることによって標準化される。この手順は、各種に対して別々に行われる。
【0140】
ヒトでの研究結果
イムノアッセイ
図16は、対照、特殊集団、およびTBI群(非標準化または正規化データの)のタンパク質AACT、AMY1、FLt3L、IL15、MCP、およびNGALについての、ヒトのデータセットの箱ひげ図を示す。タンパク質濃度の比較的大きな変動により、タンパク質濃度(単位ng/ml)のlog10をプロットする。
【0141】
ヒト血漿サンプルの解析から取得されたELISAデータ(表8)を使用して、対照群に対する様々なヒト交絡因子群のt検定比較を行った。表8は、各群について、関心のあるタンパク質が、対照と比較して高い(下矢印)または低い(上矢印)かを示す。上または下矢印は、p値が0.05よりも小さく、それゆえ、統計学的に有意である可能性が高いことを示す。複数の比較を修正するために、全検査にわたって、任意の統計学的に有意な偽の結果がある可能性が、5%以下であることを保証するために、ボンフェローニ補正係数を各p値に適用した。任意の所与のタンパク質については、特殊集団群の一部と対照との間に差異があるものの、特殊群はいずれも、放射線療法患者に観察されたものと類似する、関心のある5つのタンパク質(AACT、AMY1、FLT3L、NGAL、MCP1)のパターンを呈していない。
図17に示すように、表9は、ELISAによって測定されたタンパク質AMY1、Flt3L、MCP1、AACT、NGAL、およびIL15について、各ヒトの部分集団の平均血漿濃度(単位ng/ml)および95%信頼区間を一覧に示す。表中の赤枠は、各バイオマーカーについて、ヒトの放射線療法患者に観察された平均濃度を強調している。マーカーAMY1、FLT3L、およびMCP1について、これらの患者において、吸収放射線量と共に増加する平均値を観察していることに留意されたい。AACTについては有意な変化は観察されず、NGALレベルは低下することが観察され、IL15の箱ひげ図は、増加する吸収線量と共に僅かな増加を示している。
【0142】
AACTについて、
図16の箱ひげ図は、対照と比較して、このタンパク質のレベルに有意な変化が観察されないため、このタンパク質が、ヒトのTBI患者において放射線応答性があるとは言えないことを示す。これは、AACTが、強く放射線に応答するようであり、増加する吸収線量と共に増加する、NHPで観察されるものとは明瞭に異なる[Balogら、Development of a point-of-care radiation biodosimeter:studies using novel protein biomarker panels in non-human primates、Int.Jour.Radiation Biology、2019]。現在のところ、AACTの放射線反応が、ヒトのTBI患者とNHPとでこれほど異なる理由は明らかではない。外傷および熱傷患者群のAACTレベルは、対照群と比べて増加しているようである。表8のt検定結果、および表9の平均血漿濃度は、これらの結果を反映している。TBI患者のAACTのレベルは、対照群のレベルと統計学的に異ならない。外傷および熱傷の部分集団は、対照群とは有意に異なり、両方ともに非常に低いp値を呈する。
【0143】
TBI患者の部分集団のAMY1レベルは、強い放射線反応を示し、平均値レベルは、対照および放射線被曝前の同じ対象の両方と比べて、有意に増加している。曝露後のAMY1レベルは、累積放射線量に強く依存しているとは言えず、ベースラインを有意に上回って増加し(p値<.0001)、最高線量で下降するようである(だが、依然として充分にベースラインを上回る)。表8のt検定結果は、いくつかの他の部分集団が、対照と比べてAMY1レベルで軽度の上昇を見せることを示している。これらには、妊娠および関節リウマチの個人が含まれる。しかしながら、箱ひげ図および表9で分かるように、これらの部分集団の上昇は、曝露後の放射線療法患者で観察されるものよりも遥かに少ない。熱傷患者および曝露前のTBI患者両方のAMY1レベルは、対照で観察されたものよりも低い。
【0144】
FLT3Lの箱ひげ図は、曝露後のTBI患者が、対照よりも有意に上昇する血漿レベルを有し、そのレベルが、曝露後に増加する線量および時間と共に増加することを示す。糖尿病、関節リウマチ、熱傷、および外傷群を除き、他の部分集団は、対照に類似するレベルを有する。これもまた、t検定の表に反映されている。曝露後のTBI患者はすべて、高い統計的信頼性を持つ対照に比べて上昇する、FLT3Lレベルを呈する(p値<.0001)。熱傷および外傷患者に観察された、より低いFLT3Lレベルは、統計学的に有意であると言える(p値<.0001)。糖尿病および関節炎の個人に観察された、FLT3Lの上昇レベルは、表9から分かるように、曝露後のTBI患者に観察されたものを十分に下回る。
【0145】
MCP1レベルは、TBI患者において吸収線量と共に中程度の増加を呈し、対照群のレベルと統計学的に区別可能である(p値<.0001)。糖尿病、妊娠、および関節リウマチの部分集団を除いて、すべての他の部分集団は、対照群と類似し、統計学的に区別できないレベルを呈する。表8から分かるように、糖尿病および関節リウマチの部分集団については、MCP1レベルで観察された上昇は、TBI患者で観察されたものを充分に下回る。妊娠の部分集団は、対照で観察されたものを下回るレベルを示す。放射線照射前のTBI患者が、対照と比べて有意な上昇を示す(p値=.03)が、表9から分かるように、この部分集団の平均血漿濃度は、曝露後の同じ個人に観察されたものを充分に下回る。
【0146】
IL15のデータは、各部分集団の中における個人の数の約半分のみに限定される(また、熱傷およびICの部分集団に対して欠落している)ものの、箱ひげ図は、血漿レベルが、曝露後のTBI患者に対して僅かに増加することを示す。しかしながら、t検定結果は、TBIの曝露後の部分集団と対照との間に、統計学的に有意な差異はないことを示している。AACTの場合のように、この結果は、IL15が、強く放射線に応答し、増加する吸収線量と共に増加する、NHPで観察されるものとは明瞭に異なる[Balogら、発表予定]。このマーカーの放射線反応が、ヒトおよびNHPにおいて異なる理由は明らかではない。
【0147】
NGALについて、箱ひげ図は、このタンパク質の血漿レベルが、放射線被曝と共に減少するようであることを示す。t検定結果によって、このことが確認され、また、特殊集団の部分集団のうちのいくつかが、対照と比べて有意な差異を見せることも示される。熱傷、糖尿病、妊娠、およびRA(関節リウマチ)の部分集団すべてが、対照に比べて上昇するNGALのレベルを呈する。
【0148】
これらの結果、特に表2から、三つのタンパク質AMY1、FLT3L、およびMCP1によって、ヒトのTBI患者に(および、外挿によって、TBIにさらされた正常で健康なヒトに)特有の記述子を提供する。三つすべてが、放射線の吸収線量に応答して有意に上昇し、RA患者を除いて、研究した他のヒト部分集団は、類似の挙動を呈さない。これらマーカーのすべてが、対照に比べて上昇していると言えるRA患者については、下記のように、本分類子によってこれらの対象に、より高い偽陽性率を示す。また、以下で論じるように。IL15もしくはNGALのいずれか、または両方を含むことでは、本分類結果は改善しない。
【0149】
表8は、ヒトのデータセットからのt検定結果を示す。矢印は、結果として生じるp値が、統計学的に有意であった(<0.05)ことを示す。上下矢印は、タンパク質レベルが対照群と比べてより高いか、または低いことを示す。括弧の中の数字は、結果として生じるp値である。結果は、複数の比較にボンフェローニ補正を使用して、log10変換されたデータについて取得された。TBIの結果は、時点および総線量によって示される部分集合に分離される。例えば、d1ds360は、1日目(day 1)のサンプルで、総累積線量(dose)360cGyを意味する。
【表8】
【0150】
図17に示す表9は、各ヒトの部分集団について、バイオマーカー濃度(単位ng/ml)の平均値および95%信頼上下限を示す。Nは、各群における対象の数である※。赤枠によって、ヒトの放射線療法患者で観察された平均値を強調している。
【0151】
※AACT、NGAL、およびIL15のデータは、免疫不全患者に利用できない。IL15値は、熱傷患者に利用できず、他の各部分集団中の個人のうち約半分が利用可能であるのみである。
【0152】
ヒトおよびNHPデータの比較
類似の分割線量に対する倍率変化の比較
3つのバイオマーカーAMY1、FLT3L、およびMCP1の血漿濃度は、電離放射線に応答して、ヒトおよびNHPの両方で増加し、概して、増加する累積吸収線量と共に増加する。前に言及したように、AACTは、NHPで放射線に応答して増加するが、ヒトのTBI患者では増加しない。
図18では、これら四つのタンパク質について、ヒトのTBI患者およびNHPで測定した倍率変化を比較する。NHPの倍率変化は、NHPが、ヒトのTBI患者と同じ分割線量を受けた研究より取得し、つまり、1日につき3回×1.2Gyを連続する3日間受け、累積吸収線量がそれぞれ3.6、7.2、および10.8Gyとなった後、1、2、および3日目にサンプルを採取した。図に示すように、類似の分割線量プロトコルについて、倍率変化パターンは両方の種で類似するものの、倍率変化の大きさは、特にAMY1で異なる。
【0153】
NHPの急性/分割線量比較
NHPの急性対分割線量の比較は、同じ累積線量について、同じ日に投与された場合、
図19に示すように、関心のあるバイオマーカーを上昇させる点において、分割線量は急性線量に類似することを示している。各日の分割線量プロトコルと急性線量プロトコルとのt検定比較によって、統計学的に有意でないp値がもたらされる。並べ替え検定も行い、動物を無作為に様々な曝露群に割り当てる、1000回の反復によって、t検定比較の結果を確認した。しかしながら、各線量群に8(雄4/雌4)匹の動物のみであることを考えると、この結果は予備的とみなすべきである。分割および急性線量プロトコルを比較する将来の研究では、検出力の向上のために、追加の動物を包含すべきである。
【0154】
ヒトデータセットの分類
正常値、特殊集団、およびTBI患者を含むヒト対象について、表10は、3バイオマーカーパネルおよびパーセンタイル分類アルゴリズムを使用して、陽性と分類された観察結果の割合を示す。正常なベースラインのヒトでは、偽陽性率は4.8%であった。すべての曝露していないヒトでは、全体の偽陽性率は8.8%であった。観察された誤差率は、糖尿病(9.4%)および肥満(6.8%)である個人で、ベースライン率よりも僅かに高く、関節リウマチ(21.3%)および軽度の感染(13.1%)患者で有意に高かった。非曝露のTBI患者では、偽陽性率は9.2%であった。放射線に曝露したTBI患者については、3.6、7.2、および10.8Gyの累積分割線量を受けた個人に対して、偽陰性率はそれぞれ10%、5%、および15%であった。
【0155】
IL15もしくはNGALのいずれか、または両方を本パネルに含むことで、IL15がヒトサンプルの約半分で測定されたという事実から、サンプルセットをおおよそ半分減らすものの、分類精度は向上しないことに留意するのは重要である。本パネルに両方を含むことで、サンプルのデータセットが508個に減少し、.995のAUC、6.7%のFPR、および0%のFNRをもたらす。3マーカーパネルで同じ508個のサンプルセットを分類すると、.997のAUC、5.9%のFPR、および0%のFNRという結果になる。
【0156】
表10は、3バイオマーカーパネルを使用した、すべてのヒトの部分集団に対する分類概要を示す。吸収されたTBI線量>3.6Gyでは、観察結果の大部分が陽性とみなされる。Nは、48個のサンプルが10人の熱傷患者から取得された、熱傷患者を除く、各部分集団中の対象の総数である。
【表10】
【0157】
表11は、ヒト対象のすべてについての本分類方式および3バイオマーカーパネルのパフォーマンスを要約している。表から、偽陰性率(FNR)9.6%および偽陽性率(FPR)7.4%に対応して、全体感度90.4%および特異度92.6%と推測される。対応するROC曲を
図20に示し、AUCは0.96である。
【0158】
表11は、3バイオマーカーパネルを使用して、全ヒトサンプルから取得した分類結果を示す。対応する感度および特異度は、それぞれ90.4%および92.6%である。
【表11】
【0159】
ヒトおよびNHPデータセットのCDF
累積分布関数(CDF)は、様々なヒトおよびNHPデータセットを評価ならびに比較するのに有用なツールである。各タンパク質だけでなく、ヒトの正常値およびTBI患者の複合合計に対するCDFプロットも、
図21に示す。この図では、TBI患者については、AMY1Aが、正規分布から右へ最大のシフトを呈し、それゆえ、最も強力な影響を与えることが分かる。MCP1は、正規分布から最小のシフトを呈し、それゆえ、3つのタンパク質の中で与える影響が最も弱い。CDFプロットは、x軸上に示す値よりも少ない値を取る、測定されたパラメータの観測値の確率または割合(例えば、バイオマーカー濃度または主成分分析(PCA)検定統計量)を示す。例えば、タンパク質AMY1のCDFプロットでは、x軸上の値が500ng/mlの場合、x=500で曲線の高さは、タンパク質が500ng/ml以下である確率である。
【0160】
図22は、正規CDFプロットの95%閾値レベルを伴う、正常値、ならびに0、3.6、および7.2Gyの分割TBI曝露レベルでの、上で論じたヒト対象についての検定統計量(TS)値(-ln(p)の和)の累積分布関数(CDF)を示す。図から分かるように、CDFプロットは、より高い曝露量に対して、ますます大きな右へのシフトを呈する。類似の傾向は、同等のNHPのCDFプロットに見られる。
【0161】
ヒトおよびNHPのCDFの比較
図23は、3.6Gyの総分割線量を受けるヒトTBI患者および健康なNHP、ならびに3および4Gyの単一の急性線量を受ける健康なNHPだけでなく、曝露していないヒトおよびNHPの両方のCDFもプロットしている。各種の場合、複合バイオマーカーのCDFの計算は、独立して行われる。曝露後1から7日目の時間窓を網羅するNHPデータとは対照的に、このヒトデータは、使用された特定のTBI治療プロトコルに基づいているため、全1~7日目にわたっては平均化しないことに留意されたい。
【0162】
これらのCDFのいくつかの特徴は、注目に値する。ベースラインのヒトおよびNHPのCDFは、ほぼ同一であり、種の正規化データ入力を使用して、各種に対して同等の結果が取得されることを実証している。
【0163】
既に述べたように、曲線は、増加する吸収放射線量と共に右へシフトし、両方の種について、曝露した対象と曝露していない対象とを分かりやすく見分けられる。3.6Gyの分割線量のNHPおよびTBIのヒト対象に対するCDFは、ほぼ同一であり、類似の放射線反応を示す。3Gyおよび4GyのNHPの急性線量の曲線は、3.6Gyの曲線を上手く挟んでいる。このことから、電離放射線の急性吸収線量を受けるNHPから取得する結果によって、急性曝露に対する健康なヒトの反応を予測できる可能性があると結論づけられる。最後に、NHPの研究に基づき、急性および分割曝露の両方について、本バイオマーカーパネルに対して類似の放射線反応が観察される。
【0164】
図24は、様々な濃度(すなわち、曝露前、および1、2、4、6、または8Gyへの曝露後)に曝露したNHPについて、検定統計量の値の推定分布を示す。曲線は、各曲線下の全面積が1.0である(その曝露レベルで観察結果の100%を表す)、密度分布である。密度分布は、基本的に、観察結果のヒストグラムの平滑化バージョンである。TS閾値の左側に対する各曲線下面積の割合は、陰性分類の予想割合であり、TS閾値の右側に対する割合は、陽性分類の予想割合である。7.49のTS閾値を選択して、曝露していないNHPおよびヒトに対して非常に低い陽性の割合、および4Gyに曝露したNHPに対して非常に高い陽性の割合を得た。PCAアルゴリズムが、バイオマーカーの異なるセットに適用される場合、新しい閾値は、陽性率が放射線曝露線量にわたってどのように変化するかを検討し、感度および特異度についての考慮事項のバランスを最も上手く保つ値を選択することによって決定されうる。
図25は、ベースライン(すなわち、曝露前)および4Gyへの曝露後の密度分布を示すのみの、
図23の簡略版である。
【0165】
様々な修正および変形が、範囲または精神から逸脱することなくなされうることは、当業者には明らかであろう。本明細書に記載する仕様および実践を考慮することで、他の構成が当業者に明らかとなるであろう。真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示され、本明細書および記載する構成は、例示としてのみ考慮されることが意図される。