(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】CD19-CARを発現するNK細胞によるCD19陽性リンパ悪性腫瘍の排除
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240722BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240722BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240722BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240722BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240722BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240722BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20240722BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20240722BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/26
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2020556293
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 US2019044691
(87)【国際公開番号】W WO2020091869
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-12-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520393015
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ImmunityBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】クリンゲマン,ハンス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ボイセル,ローラン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】スン-シオン,パトリック
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】高堀 栄二
【審判官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517415(JP,A)
【文献】特表2018-510881(JP,A)
【文献】特表2021-525073(JP,A)
【文献】国際公開第2019/152513(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/165291(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/064594(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/129346(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/098306(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N5/00-5/10
C12N15/00-15/62
CA/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19キメラ抗原受容体(CAR)及びFc受容体を発現するNK-92細胞であって、マルチシストロン性DNA構築物を含み、前記マルチシストロン性構築物は、
Fcイプシロン受容体ガンマ(FcεRIγ)細胞質シグナリングドメインを含み、かつ配列番号12のアミノ酸配列を有する前記CD19 CARをコードする、NK-92細胞。
【請求項2】
前記Fc受容体は、CD16である、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項3】
前記Fc受容体は、配列番号2を含む、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項4】
前記マルチシストロン性構築物がIL-2、erIL-2、IL-15、またはerIL-15をさらにコードする、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項5】
前記CD19 CAR、前記Fc受容体、前記erIL-15又はerIL-2の1つ以上の前記コード配列は、ヒト系中での発現のためにコドン最適化されている、請求項4に記載のNK-92細胞。
【請求項6】
CD19発現細胞を殺傷し得る、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK-92細胞。
【請求項7】
前記CD19発現細胞は、腫瘍細胞である、請求項6に記載のNK-92細胞。
【請求項8】
前記腫瘍細胞は、SUP-B15細胞である、請求項7に記載のNK-92細胞。
【請求項9】
前記CD19 CARは、scFv抗体断片を含む、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項10】
前記scFv抗体断片は、配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載のNK-92細胞。
【請求項11】
前記マルチシストロン性構築物は、配列番号9の配列を含み、前記配列は、前記scFv抗体断片をコードする、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項12】
自己開裂ペプチドをコードする配列を含み、前記配列は、前記CD19 CARとCD16との間に位置し、前記配列は、前記CD19 CAR及び前記FcRの等モル発現を可能とする、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項13】
CD16をコードする配列と、IL-2若しくはそのバリアントをコードする配列又はIL-15若しくはそのバリアントをコードする配列との間の内部リボソームエントリー配列(IRES)を含む、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項14】
CD19発現細胞に対する前記NK-92細胞の直接細胞毒性は、エフェクターと標的との比が10である場合、70~100%である、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項15】
前記NK-92細胞のADCC活性は、エフェクターと標的との比が10である場合、30~90%である、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項16】
前記CD19 CARは、配列番号10と少なくとも90%の同一性を共有する配列を含む、請求項1に記載のNK-92細胞。
【請求項17】
請求項1に記載のNK-92細胞を含む医薬組成物を含むキット。
【請求項18】
NK-92細胞を生成する方法であって、
1)Fcイプシロン受容体ガンマ(FcεRIγ)細胞質シグナリングドメインを含み、かつ配列番号12のアミノ酸配列を有するCD19 CAR、
2)CD16、並びに
3)IL-2又はIL-15
をコードするマルチシストロン性ベクターを提供すること、並びに
前記ベクターを前記NK-92細胞中に導入して前記NK-92細胞を生成すること
を含む方法。
【請求項19】
前記ベクターは、自己開裂ペプチドをコードする配列を含み、前記配列は、CARとCD16との間に位置し、前記配列は、CAR及びCD16の等モル発現を可能とする、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記ベクターは、前記CD16コード配列と前記IL-2又はIL-15コード配列との間の内部リボソームエントリー配列(IRES)を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の複数のNK-92細胞を含む、癌を治療するための医薬組成物。
【請求項22】
前記対象の体表面積1m
2当たり約1×10
8~約1×10
11個の改変細胞を、前記対象に投与する、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記癌は、白血病又はリンパ腫である、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記癌は、B細胞悪性腫瘍、HSCT後のB細胞悪性腫瘍、CLL、B-ALL、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、UCBT後のB細胞系統リンパ悪性腫瘍、慢性リンパ性白血病(CLL)、B-非ホジキンリンパ腫(B-NHL)、HSCT後のALL;リンパ腫、難治性濾胞性リンパ腫、又はリンパ芽球性白血病の1つ以上である、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記B細胞悪性腫瘍は、マントル細胞リンパ腫である、請求項
24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記複数のNK-92細胞を、静脈内投与する、請求項
21に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記複数のNK-92細胞を、腫瘍内投与する、請求項
21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月31日に出願された、本発明者らの同時係属中の米国仮特許出願第62/753,719号の優先権を主張する。
【0002】
配列表
38kbサイズの104077.0008PCT Seq_ST25という名称の配列表のASCIIテキストファイルの内容は、2019年7月15日に作成され、本出願とともにEFS-Webを介して電子的に提出されており、参照により全体として組み込まれる。
【0003】
本発明の分野は、癌治療法に関する遺伝子操作細胞である。
【背景技術】
【0004】
背景技術の記載は、本発明の理解において有用であり得る情報を含む。本明細書に提供される情報のいずれも、先行技術であること又は目下特許請求される発明に関連することも、具体的又は暗示的に参照される任意の刊行物が先行技術であることも許容するものではない。
【0005】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が具体的且つ個別的に参照により組み込まれることが示されるのと同程度で参照により組み込まれる。組み込まれる参照文献中の用語の定義又は使用が本明細書に提供されるその用語の定義と矛盾又は反する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、その参照文献中のその用語の定義は適用されない。
【0006】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の主成分を構成する細胞毒性リンパ球である。ナチュラルキラー(NK)細胞は、一般に、循環リンパ球の約10~15%を占め、抗原に関して非特異的に且つ事前の免疫感作なしで標的細胞、例として、ウイルス感染細胞及び多くの悪性腫瘍細胞に結合し、それを殺傷する。Herberman et al.,Science 214:24(1981)。標的細胞の殺傷は、細胞溶解の誘導により生じる。自己NK細胞移植に使用されるNK細胞は、対象からの血液の末梢血リンパ球(「PBL」)画分から単離し、細胞培養物中で拡大して十分数の細胞を得、次いで対象中に再注入する。このような自己NK細胞は、インビボ治療においていくらかの有効性を示している。しかしながら、このような治療法はオートロガスの状況に制限され、全てのNK細胞が細胞溶解性ではないという事実によりさらに複雑になる。
【0007】
NK-92(登録商標)は、非ホジキンリンパ腫を罹患する対象の血液中で発見され、次いでインビトロで不死化された細胞溶解癌細胞系である。NK-92(登録商標)細胞は、NK細胞に由来するが、正常NK細胞によりディスプレイされる主要阻害受容体を欠く一方、活性化受容体の大多数を保持する。しかしながら、NK-92(登録商標)細胞は、正常細胞を攻撃することもなく、それらはヒトにおいて許容不可能な免疫拒絶応答を誘発することもない。NK-92(登録商標)細胞系の特徴付けは、国際公開第1998/049268号パンフレット及び米国特許出願公開第2002-0068044号明細書に開示されている。NK-92(登録商標)細胞は、ある癌の治療における治療剤として評価されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の実施形態において、本開示は、CD19 CAR及びFc受容体を発現するNK-92(登録商標)細胞を提供する。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、CD19 CAR及びFc受容体をコードするマルチシストロン性構築物を含む。一部の実施形態において、Fc受容体は、CD16である。一部の実施形態において、Fc受容体は、配列番号2を含む。一部の実施形態において、マルチシストロン性導入遺伝子は、IL-2又はそのバリアントをコードする配列をさらに含む。一部の実施形態において、IL-2バリアントは、erIL-2である。一部の実施形態において、CD19 CAR、Fc受容体、又はerIL-2の1つ以上のコード配列は、ヒト系中での発現のためにコドン最適化されている。
【0009】
一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、CD19発現細胞、例えば、腫瘍細胞を殺傷し得る。一部の実施形態において、腫瘍細胞は、SUP-B15細胞である。一部の実施形態において、CD19 CARは、scFv抗体断片を含む。一部の実施形態において、scFv抗体断片は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、マルチシストロン性構築物は、配列番号9の配列を含み、その配列は、scFv抗体断片をコードする。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、自己開裂ペプチドをコードする配列を含み、その配列は、CD19 CARとCD16との間に位置し、その配列は、CD19 CAR及びFcRの等モル発現を可能とする。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、CD16をコードする配列と、IL-2又はそのバリアントをコードする配列との間の内部リボソームエントリー配列(IRES)を含む。
【0010】
一部の実施形態において、CD19発現細胞に対するNK-92(登録商標)細胞の直接細胞毒性は、エフェクターと標的との比が10である場合、70~100%である。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞のADCC活性は、エフェクターと標的との比が10である場合、30%~90%である。一部の実施形態において、CD19 CARは、配列番号10と少なくとも90%の同一性を共有する配列を含む。
【0011】
一部の実施形態において、本開示は、本開示のNK-92(登録商標)細胞を含む医薬組成物を含むキットを提供する。
【0012】
一部の実施形態において、本開示は、NK-92(登録商標)細胞を生成する方法であって、CD19 CAR及びCD16をコードするベクターを提供すること、並びにベクターをNK-92(登録商標)細胞中に導入してNK-92(登録商標)細胞を生成することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、ベクターは、IL-2をコードする配列をさらに含む。一部の実施形態において、ベクターは、自己開裂ペプチドをコードする配列を含み、その配列は、CARとCD16との間に位置し、その配列は、CAR及びCD16の等モル発現を可能とする。一部の実施形態において、ベクターは、CD16コード配列と、IL-2コード配列との間の内部リボソームエントリー配列(IRES)を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本開示は、対象における癌を治療する方法であって、対象に、治療有効量の組成物を対象に投与することを含み、組成物は、請求項エラー!参照元が見つかりません~エラー!参照元が見つかりませんのいずれかの複数のNK-92(登録商標)細胞を含む方法を提供する。一部の実施形態において、対象の体表面積1m2当たり約1×108~約1×1011個の改変細胞を、対象に投与する。
【0014】
一部の実施形態において、癌は、白血病又はリンパ腫である。
【0015】
一部の実施形態において、癌は、B細胞悪性腫瘍、HSCT後のB細胞悪性腫瘍、CLL、B-ALL、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、UCBT後のB細胞系統リンパ悪性腫瘍、慢性リンパ性白血病(CLL)、B-非ホジキンリンパ腫(B-NHL)、HSCT後のALL;リンパ腫、難治性濾胞性リンパ腫、又はリンパ芽球性白血病の1つ以上である。一部の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、マントル細胞リンパ腫である。一部の実施形態において、複数のNK-92(登録商標)細胞は、静脈内投与される。一部の実施形態において、複数のNK-92(登録商標)細胞は、腫瘍内投与される。
【0016】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものであり、本開示のさらなる説明を提供するものとする。他の目的、利点及び新規特徴部は、当業者に容易に明らかである。
【0017】
目的、特徴部及び利点は、添付の図面とともに考慮される場合、以下の開示の参照時により容易に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1、第2、及び第3世代のCARの構造ドメインの模式的表示である。
【
図2】CARコード配列、P2A配列、CD16コード配列、及びerIL-2コード配列を含むトリシストロン性プラスミドの構成成分を示す。
【
図3A-B】CD19 t-haNK(商標)細胞の表面上でのCD16及びCD19-CARの発現を示すフローサイトメトリー分析の結果を示す。それぞれのプロットの右側のピークは、CD16又はCD19を発現する細胞の集団を表す。
【
図4A-B】
図4Aは、K562細胞に対するCD19 t-haNK(商標)細胞の細胞毒性効果を示す。16B1及び18B1は、2つの異なる日に実施された2つのエレクトロポレーションイベントから得られた2つのCD19 t-haNK(商標)集団である。
図4Bは、細胞毒性アッセイにおける、K562に対する選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンの細胞毒性効果を示す。
【
図5A-B】
図5Aは、SUP-B15細胞に対するCD19 t-haNK(商標)細胞の細胞毒性効果を示す。16B1及び18B1は、2つの異なる日に実施された2つのエレクトロポレーションイベントから得られた2つのCD19 t-haNK(商標)集団である。
図5Bは、細胞毒性アッセイにおける、SUP-B15に対する選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンの細胞毒性効果を示す。
【
図6A-B】
図6Aは、Herceptin(抗Her2抗体)と組み合わせた場合の、SKBr3細胞に対するCD19 t-haNK(商標)細胞のADCC活性を示す。抗CD20抗体Rituxanを対照として使用した。
図6Bは、抗CD20抗体リツキシマブと組み合わせた場合の、CD19KO/CD20+であるSUP-B15細胞に対する選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンのADCC活性を示す。
【
図7】選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンのその倍化時間を示す。
【
図8】培養条件における、選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンからのIL-2放出を示す。
【
図9】IV Raji腫瘍担持動物の生存曲線を示す。統計的分析をログランク(マンテルコックス)検定により行った、
****、P<0.0001。
【
図10】IV Raji腫瘍モデルにおける動物体重変化を示す。データは、平均±SEMである。SEMは、標準偏差をNの平方根により割ったものとして計算した。
【
図11】SC Rajiモデルについての腫瘍成長曲線を示す。データは、平均±SEMである。統計的分析を、2元ANOVAとそれに続くテューキー検定による多重比較を使用して行った;
***、P<0.001;
****、P<0.0001。
【
図12】CD19 t-haNK(商標)が、SC Raji腫瘍担持マウスの肝臓中の転移性疾患負荷を低減させたことを示す。(a)示される処理群からの動物の13日目の全肝画像。黄色矢印は、転移性病変を示す。肝臓を写真撮影前に10%のホルマリン中で少なくとも24時間固定した。(b)示される日の肝臓中の腫瘍細胞の進展割合の定量(HE染色により評価)。13日目:対応のない両側t検定により
*、P=0.0257。11及び15日目についての統計的分析は、限定された試料サイズに起因して実施することができなかった。未加工データについては表4を参照されたい。
【
図13】SC Raji腫瘍モデルにおける動物体重変化を示す。データは、平均±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概要
本開示は、CD19 CAR及びFc受容体を発現するNK-92(登録商標)細胞を提供する。一部の実施形態において、細胞は、IL-2をさらに発現する。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、CD19 CAR及びFc、並びにIL2をコードする核酸配列を含むトリシストロン性構築物を含む。
【0020】
用語
別途規定のない限り、本明細書において使用される全ての技術及び科学用語は、当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0021】
本明細書において、及び以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有することが定義される多数の用語が参照される。
【0022】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものであるにすぎず、限定的なものではない。本明細書において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形も含むものとする。したがって、例えば、「ナチュラルキラー細胞」の言及には、複数のナチュラルキラー細胞が含まれる。
【0023】
全ての数値指定、例えば、pH、温度、時間、濃度、量、及び分子量は、範囲を含め、適宜0.1又は1.0刻みだけ(+)又は(-)に変動する近似値である。常に明示されるわけではないが、全ての数値指定の前に、用語「約」が先行し得ることを理解すべきである。
【0024】
本明細書において使用される「+」は、特定の細胞マーカーの存在を示すために使用される場合、その細胞マーカーが蛍光活性化細胞選別においてアイソタイプ対照に対して検出可能に存在し;又は定量的若しくは半定量的RT-PCRにおいてバックグラウンドを超えて検出可能であることを意味する。
【0025】
本明細書において使用される「-」は、特定の細胞マーカーの存在を示すために使用される場合、その細胞マーカーが蛍光活性化細胞選別においてアイソタイプ対照に対して検出可能に存在せず;又は定量的若しくは半定量的RT-PCRにおいてバックグラウンドを超えて検出可能でないことを意味する。
【0026】
当業者により理解されるとおり、任意の及び全ての目的のため、特に書面による説明の提供に関して、本明細書に開示される全ての範囲は、任意の及び全ての考えられる下位範囲及びその下位範囲の組合せも包含する。任意の列記範囲は、同一の範囲が少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されることを十分に説明し、それを可能とすると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に開示されるそれぞれの範囲は、下位3分の1、中位3分の1及び上位3分の1などに容易に分けることができる。同様に当業者により理解されるとおり、全ての言語、例えば、「最大」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」などは、引用される数を含み、続いて上記の下位範囲に分けることができる範囲を指す。最後に、当業者により理解されるとおり、範囲は、それぞれの個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、又は3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、又は5個の細胞を有する群を指し、以下同様である。
【0027】
本明細書において使用される用語「実質的に同一」は、用語「同等」、又は「実質的に類似」と互換的に使用され、NK-92(登録商標)細胞のある定量可能な特性、例えば、細胞毒性、生存率又は細胞倍化時間などを指す場合、それらの特性の2つの計測値が互いに15%以下異なり、10%以下、8%以下、又は5%以下異なることを指す。
【0028】
常に明示されるわけではないが、本明細書に記載の試薬は単に例示であること及びそのようなものの等価物が当該技術分野において公知であることも理解すべきである。
【0029】
本発明の目的のため、及び別途示されない限り、用語「NK-92(登録商標)(商標)」は、元のNK-92(登録商標)細胞系並びにNK-92(登録商標)細胞系、NK-92(登録商標)細胞のクローン、及び(例えば、外因性遺伝子の導入により)改変されたNK-92(登録商標)細胞を指すものとする。NK-92(登録商標)細胞並びに例示的及びその非限定的な改変は、全てが参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,618,817号明細書;同第8,034,332号明細書;同第8,313,943号明細書;同第9,181,322号明細書;同第9,150,636号明細書;及び米国特許出願公開第10/008,955号明細書に記載されており、それとしては、野生型NK-92(登録商標)、NK-92(登録商標)-CD16、NK-92(登録商標)-CD16-γ、NK-92(登録商標)-CD16-ζ、NK-92(登録商標)-CD16(F176V)、NK-92(登録商標)MI、及びNK-92(登録商標)CIが挙げられる。NK-92(登録商標)細胞は当業者に公知であり、そのような細胞はNantKwest(登録商標),Inc.から容易に入手可能である。
【0030】
本明細書において使用される用語「NK-92(登録商標)細胞」は、Gong et al.(Leukemia,Apr;8(4):652-8(1994))に記載の高度に強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を指し、その権利はNantKwest(登録商標)により保有される(以下、「NK-92(登録商標)細胞」)。
【0031】
本明細書において使用される用語「aNK細胞」は、Gong et al.(Leukemia,Apr;8(4):652-8(1994))に記載の高度に強力なユニーク細胞系に由来する未改変ナチュラルキラー細胞を指し、その権利はNantKwest(登録商標)により保有される(以下、「aNK細胞」)。
【0032】
本明細書において使用される用語「haNK細胞」は、Gong et al.(Leukemia,Apr;8(4):652-8(1994))に記載の高度に強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を指し、その権利はNantKwest(登録商標)により保有され、細胞表面上でCD16を発現するように改変されている(以下、「CD16+NK-92(登録商標)細胞」又は「haNK細胞」)。
【0033】
本明細書において使用される用語「taNK細胞(登録商標)」は、Gong et al.(Leukemia,Apr;8(4):652-8(1994))に記載の高度に強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を指し、その権利はNantKwest(登録商標)により保有され、キメラ抗原受容体を発現するように改変されている(以下、「CAR改変NK-92(登録商標)細胞」又は「taNK細胞(登録商標)」)。
【0034】
本明細書において使用される用語「t-haNK(商標)」細胞は、Gong et al.(Leukemia,Apr;8(4):652-8(1994))に記載の高度に強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を指し、それはNantkWest(登録商標)により保有され、細胞表面上でCD16を発現し、キメラ抗原受容体を発現するように改変されている(以下、「CAR改変CD16+NK-92(登録商標)細胞」又は「t-haNK(商標)細胞」)。一部の実施形態において、腫瘍特異的抗原はCD19であり、それらのNK-92(登録商標)細胞は、CD-19 t-haNK(商標)細胞と称される。
【0035】
本明細書において使用される用語「マルチシストロン性構築物」は、単一mRNA分子に転写され得る組換えDNA構築物を指し、単一mRNA分子は、2つ以上の導入遺伝子をコードする。マルチシストロン性構築物は、それが2つの導入遺伝子をコードする場合はバイシストロン性構築物と称され、それが3つの遺伝子をコードする場合はトリシストロン性構築物と称され、それが4つの遺伝子をコードする場合はクアドロシストロン性構築物と称され、以下同様である。
【0036】
本明細書において使用される用語「キメラ抗原受容体」(CAR)は、細胞内シグナリングドメインと融合している細胞外抗原結合ドメインを指す。CARは、T細胞又はNK細胞中で発現させて細胞毒性を増加させることができる。一般に、細胞外抗原結合ドメインは、目的細胞上に見出される抗原に特異的なscFvである。CAR発現NK-92(登録商標)細胞は、scFvドメインの特異性に基づき、ある抗原を細胞表面上で発現する細胞に標的化される。scFvドメインは、任意の抗原、例として、腫瘍特異的抗原及びウイルス特異的抗原を認識するように遺伝子操作することができる。例えば、CD19 CARは、一部の癌により発現される細胞表面マーカーのCD19を認識する。
【0037】
本明細書において使用される用語「腫瘍特異的抗原」は、癌又は新生物細胞上に存在するが、癌細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞上では検出可能でない抗原を指す。本明細書において使用される腫瘍特異的抗原は、腫瘍関連抗原、すなわち、癌細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞と比較して高いレベルにおいて癌細胞上で発現される抗原も指す。
【0038】
本明細書において使用される用語「標的」は、腫瘍の標的化を指す場合、腫瘍細胞(すなわち、標的細胞)を認識し、殺傷するNK-92(登録商標)細胞の能力を指す。この文脈における用語「標的化される」は、例えば、腫瘍により発現される細胞表面抗原を認識し、それに結合するNK-92(登録商標)細胞により発現されるCARの能力を指す。
【0039】
用語「抗体」は、任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、又は標的抗原への特異的結合についてインタクト抗体と競合し得るその断片を指し、それとしては、キメラ、ヒト化、完全ヒト、及び二重特異的抗体が挙げられる。インタクト抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含むが、一部の例において、より少ない鎖を含み得、例えば、ラクダにおいて天然に発生する抗体は、重鎖のみを含み得る。抗体は、もっぱら単一資源に由来し得、又は抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来するような「キメラ」であり得る。抗原結合タンパク質、抗体、又は結合断片は、ハイブリドーマ中で組換えDNA技術により、又はインタクト抗体の酵素的若しくは化学的開裂により産生することができる。別途示されない限り、用語「抗体」は、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含む抗体に加え、それらの誘導体、バリアント、断片、及びムテインを含む。さらに、明示的に排除されない限り、抗体としては、モノクローナル抗体、二重特異的抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書において「抗体模倣物」と称されることがある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物(本明細書において「抗体コンジュゲート」と称されることがある)、及びそれらの断片がそれぞれ挙げられる。一部の実施形態において、この用語は、ペプチボディも含む。
【0040】
用語「対象」は、非ヒト動物、例として、哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、及びヤギ、並びにヒトを指す。対象という用語は、本明細書に記載の疾患のための治療が必要とされる患者も指す。
【0041】
「任意選択」又は「場合により」は、続いて記載されるイベント又は状況が生じても生じなくてもよいこと、並びに記載がイベント又は状況が生じる例及び生じない例を含むことを意味する。
【0042】
用語「含む」は、組成物及び方法が記載された要素を含むが、他の要素を排除するものでないことを意味するものとする。「から本質的になる」は、組成物及び方法を定義するために使用される場合、その組合せに対して任意の本質的に重要な他の要素を排除することを意味するものとする。例えば、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求の範囲の基本的且つ新規の特徴に実質的に影響を与えない他の要素を排除しない。「からなる」は、微量を上回る量の他の成分及び実質的な方法ステップを排除することを意味する。これらの移行語のそれぞれにより定義される実施態様は、本開示の範囲内である。
【0043】
本明細書において使用される用語「細胞毒性」及び「細胞溶解性」は、エフェクター細胞、例えば、NK細胞の活性を記載するために使用される場合、同義であるものとする。一般に、細胞毒性活性は、種々の生物学的、生化学的、又は生物物理学的機序のいずれかによる標的細胞の殺傷に関する。細胞溶解は、より具体的には、エフェクターが標的細胞の原形質膜を溶解し、それによりその物理的統合性を破壊する活性を指す。これは、標的細胞の殺傷をもたらす。理論による拘束を望むものではないが、NK細胞の細胞毒性効果は細胞溶解に起因すると考えられる。
【0044】
細胞/細胞集団に関する用語「殺傷する」は、その細胞/細胞集団の死滅をもたらす任意のタイプの操作を含むものとする。
【0045】
用語「サイトカイン」は、免疫系の細胞に影響を与える生物分子の一般的クラスを指す。例示的なサイトカインとしては、限定されるものではないが、FLT3リガンド、インターフェロン及びインターロイキン(IL)、特にIL-2、IL-12、IL-15、IL-18及びIL-21が挙げられる。
【0046】
用語「患者」、「対象」、「個体」などは、本明細書では互換的に用いられ、本明細書に記載の方法に適する任意の動物、又はインビトロ若しくはインサイチューにかかわらずその細胞を指す。ある非限定的な実施形態において、患者、対象、又は個体はヒトである。
【0047】
用語「治療する」又は「治療」は、対象、例えば、ヒトにおける本明細書に記載の疾患又は障害の治療を包含し、(i)疾患若しくは障害を阻害すること、すなわち、その発生を停止させること;(ii)疾患若しくは障害を緩和すること、すなわち、障害の退縮を引き起こすこと;(iii)障害の進行を減速させること;及び/又は(iv)疾患若しくは障害の1つ以上の症状を阻害し、緩和し、若しくはその進行を減速させることを含む。対象にモノクローナル抗体又はナチュラルキラー細胞を「投与する」又は対象へのそれらの「投与」という用語は、目的の機能を果たすために抗体又は細胞を導入又は送達する任意の経路を含む。投与は、細胞又はモノクローナル抗体の送達に好適な任意の経路により実施することができる。したがって、送達経路としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下送達を挙げることができる。一部の実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、例えば腫瘍中への注射により腫瘍に直接投与する。一部の実施形態において、本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞は、例えば、注射、注入又は移植(皮下、静脈内、筋肉内、小胞内、腫瘍内又は腹腔内)により非経口投与する。
【0048】
用語「発現」は、遺伝子産物の産生を指す。
【0049】
本明細書において使用される用語「細胞毒性」は、エフェクター細胞、例えば、NK細胞の活性を記載するために使用される場合、種々の生物学的、生化学的、又は生物物理学的機序のいずれかによる標的細胞の殺傷に関する。
【0050】
用語「減少させる」、「低減された」、「低減」及び「減少」は全て、参照レベルと比較して少なくとも10%だけの減少、例えば、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%だけの減少若しくは100%を含む最大100%の減少(すなわち、参照サンプルと比較して不存在のレベル)、又は参照レベルと比較して10~100%の任意の減少を指すために本明細書において使用される。
【0051】
用語「癌」は、哺乳動物中に見出される全てのタイプの癌、新生物、又は悪性腫瘍、例として、白血病、癌腫及び肉腫を指す。例示的な癌としては、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮及び髄芽腫の癌が挙げられる。追加の例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、癌、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽腫、食道癌、泌尿生殖器癌、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、膵内分泌部及び膵外分泌部の新生物、並びに前立腺癌が挙げられる。
【0052】
用語「治療有効量」又は「有効量」は、非治療患者に対して疾患の症状を改善するために要求される量を指す。疾患の治療的処置のために本開示を実施するために使用される有効量の活性化合物は、投与方式、対象の年齢、体重、及び全身健康状態に応じて変動する。最終的には、主治医又は獣医師は、適切量及び投与量レジメンを決定する。このような量は、「有効」量と称される。
【0053】
表題又は副題は読者の簡便性のために本明細書において使用することができ、それらは本開示の範囲に影響を与えるものではない。さらに、本明細書において使用される一部の用語は以下により具体的に定義される。
【0054】
NK-92(登録商標)細胞
NK-92(登録商標)は、非ホジキンリンパ腫を罹患する対象の血液中で発見され、次いでインビトロで不死化された細胞溶解癌細胞系である。NK-92(登録商標)細胞はNK細胞に由来するが、正常NK細胞によりディスプレイされる主要な阻害受容体を欠く一方、活性化受容体の大多数を保持する。しかしながら、NK-92(登録商標)細胞は正常細胞を攻撃することもなく、それらはヒトにおいて許容不可能な免疫拒絶応答を誘発することもない。NK-92(登録商標)細胞系の特徴付けは、国際公開第1998/049268号パンフレット及び米国特許出願公開第2002-0068044号明細書に開示されている。NK-92(登録商標)細胞は、ある癌の治療における治療剤として評価されている。
【0055】
ベクター
本明細書に記載の改変細胞を産生するために細胞を形質移入するためのベクターが、本明細書に記載される。一実施形態において、本明細書に記載のベクターは、一過的発現ベクターである。このようなベクターを使用して導入される外因性導入遺伝子は細胞の核ゲノム中にインテグレートされず;したがって、ベクター複製の不存在下で外来導入遺伝子は分解され、又は経時的に希釈される。
【0056】
一実施形態において、本明細書に記載のベクターは、細胞の安定的形質移入を可能とする。一実施形態において、ベクターは、細胞のゲノム中への導入遺伝子の取り込みを可能とする。一実施形態において、ベクターは、陽性選択マーカーを有する。陽性選択マーカーとしては、任意の遺伝子を発現しない細胞を殺傷する条件下で細胞が成長するのを可能とする任意の遺伝子が挙げられる。非限定的な例としては、抗生物質耐性、例えば、ジェネティシン(Tn5からのNeo遺伝子)が挙げられる。
【0057】
一実施形態において、ベクターは、プラスミドベクターである。一実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。当業者により理解されるとおり、任意の好適なベクターを使用することができる。好適なベクターは、当該技術分野において周知である。
【0058】
一部の実施形態において、細胞は、目的タンパク質(例えば、CAR)をコードするmRNAにより形質移入される。mRNAの形質移入は、タンパク質の一過的発現をもたらす。一実施形態において、NK-92(登録商標)細胞中へのmRNAの形質移入は、細胞の投与直前に実施される。一実施形態において、細胞の投与「直前」は、投与の約15分~約48時間前を指す。好ましくは、mRNA形質移入は、投与の約5時間~約24時間前に実施される。
【0059】
CD19
CD19は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質である。これは、単一膜貫通ドメイン、細胞質C末端、及び細胞外N末端を有する。CD19は、正常及び新生物B細胞、並びに濾胞性樹状細胞についてのバイオマーカーであり、B細胞受容体依存性及び非依存性シグナリングの両方のモジュレートを介する内因性B細胞シグナリング閾値の樹立に決定的に関与する。
【0060】
CD19は、ほとんどの急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)及びB細胞リンパ腫において発現される。B細胞悪性腫瘍の大多数は、CD19を正常~高レベルにおいて発現する(ALLの80%、B細胞リンパ腫の88%、及びB細胞白血病の100%)。CD19はB細胞のホールマークであるが、骨髄悪性腫瘍の症例、例として、AML症例の2%においても観察されている。Wang et al.,Exp.Hematol.Oncol.Nov.29,2012;1:36。CD19と関連する悪性腫瘍の非限定的な例を、表1に示す。
【0061】
【0062】
CAR
腫瘍細胞をその同一組織に由来する正常細胞から区別する表現型変化は、特異的遺伝子産物の発現の1つ以上の変化、例として、正常細胞表面構成成分の損失又は他の細胞表面構成成分(すなわち、対応する正常、非癌性組織中で検出可能でない抗原)の獲得と関連することが多い。新生物若しくは腫瘍細胞中で発現されるが、正常細胞中では発現されない抗原、又は正常細胞中で見出されるレベルを実質的に上回るレベルにおいて新生物細胞中で発現される抗原は、「腫瘍特異的抗原」又は「腫瘍関連抗原」と称されている。腫瘍特異的抗原は、癌免疫療法のための標的として使用されている。1つのこのような治療法は、免疫細胞、例として、T細胞及びNK細胞の表面上で発現されるキメラ抗原受容体(CAR)を利用して癌細胞に対する細胞毒性を改善する。CARは、少なくとも1つの細胞内シグナリングドメインに結合している単鎖可変断片(scFv)を含む。scFvは、標的細胞(例えば、癌細胞)上の抗原を認識し、それに結合し、エフェクター細胞活性化をトリガーする。シグナリングドメインは、受容体による細胞内シグナリングに重要である免疫受容体チロシンベース活性化ドメイン(ITAM)を含有する。
【0063】
本開示は、細胞表面上で少なくともキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作されたNK-92(登録商標)細胞を提供する。CARは、細胞外抗原認識部分(通常、特異的抗体の可変ドメインに由来する、と、特異的抗原が認識されると細胞溶解応答をトリガーし得る細胞内シグナリングドメイン(単一又は追加の共刺激エレメントを有する)とを組み合わせる。複数のタイプのCARが存在し、それら全てを本出願において使用することができる。第1世代のCARは、1つの細胞質シグナリングドメインを含有する。シグナリングドメインは、例えば、1つのITAMを含有するFcイプシロン受容体ガンマ(FcεRIγ)に、又は3つのITAMを含有するCD3ζに由来し得る。CD3ζ CARは、腫瘍根絶においてFcεRIγ CARよりも効率的であることが考えられる。例えば、Haynes,et al.2001,J.Immunology 166:182-187;Cartellieri,et al.2010,J.Biomed and Biotech,Vol.2010,Article ID 956304を参照されたい。第2及び第3世代CARは、複数のシグナリングドメイン、例えば、CD3ζの細胞質シグナリングドメイン及び共刺激シグナリングドメイン、例えば、CD28/CD134/CD137/ICOS及びCD28/CD134と、単一CARとを組み合わせてNK-92(登録商標)細胞の活性化及び増殖を促進する。したがって、一部の実施形態において、CD19 t-haNK(商標)細胞により発現されるCD19 CARは、CD8からのヒンジ領域、及び/又はCD28の膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態において、CD19 CARは、FcεRIγの細胞質シグナリングドメインを含む。一部の実施形態において、CD19 CARは、CD3ζの細胞質シグナリングドメインを含む。ヒンジ領域、CD28の膜貫通ドメイン及びFcεRIγ又はCD3ζの細胞質シグナリングドメインの例は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/674,936号明細書に開示されている。
【0064】
従来の刊行物、例えば、Haynes,et al.2001,J.Immunology 166:182-187及びCartellieri,et al.2010,J.Biomed and Biotech,Vol.2010,Article ID 956304は、CD3ζ CARが腫瘍根絶においてFcεRIγ CARよりも有効であり得ることを開示している一方、本件で、本発明者らは、驚くべきことに、且つ予想外に、そのようなものは、本明細書に開示の細胞、組成物、及び方法について当てはまらないことを見出した。実際、本発明者らは、本明細書に開示のNK-92(登録商標)細胞がFcεRIγ CARドメインを有する場合、それは、CD3ζ CARを有する場合と同程度に有効であり、又は一部の実施形態において、それよりもさらに有効であることを見出した。
【0065】
場合により、CARは、CD19に特異的である。一部の実施形態において、CD19は、ヒトCD19である。一部の実施形態において、CD19 CARは、配列番号10のアミノ酸配列を含むscFv断片を含む。一部の実施形態において、CD19 CARは、配列番号12のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CD19 t-haNK(商標)細胞は、配列番号10をコードする配列番号9の核酸配列を含む。一部の実施形態において、CD19 t-haNK(商標)細胞は、配列番号12をコードする配列番号11の核酸配列を含む。一部の実施形態において、CD19 t-haNK(商標)細胞は、配列番号13のトリシストロン性構築物を含む。
【0066】
一部の実施形態において、CD19 CARポリペプチドは、配列番号10と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を共有する配列を含む。一部の実施形態において、エピトープタグペプチド、例えば、FLAG、myc、ポリヒスチジン、又はV5をポリペプチドのアミノ末端ドメインに付加して抗エピトープタグペプチドモノクローナル又はポリクローナル抗体の使用による細胞表面検出を支援することができる。
【0067】
例において、当該技術分野において公知の方法、例えば、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を使用してバリアントポリペプチドを作製する。部位特異的突然変異誘発(Carter,1986;Zoller and Smith,1987)、カセット突然変異誘発、制限選択突然変異誘発(Wells et al.,1985)又は他の公知の技術をクローニングされたDNAに対して実施してCD16バリアントを産生する(Ausubel,2002;Sambrook and Russell,2001)。
【0068】
一部の実施形態において、CD19 CARをコードするポリヌクレオチドを突然変異させてCARの機能を変更せずにCARをコードするアミノ酸配列を変更する。例えば、「非必須」アミノ酸残基におけるアミノ酸置換をもたらすポリヌクレオチド置換を、配列番号9又は配列番号11中で作製することができる。
【0069】
1つのクラスのアミノ酸を同一クラスの別のアミノ酸により置き換える配列番号10又は12中の保存的置換は、その置換がポリペプチドの活性を実質的に変更しない限り、開示されるバリアントの範囲内に収まる。保存的置換は、当業者に周知である。(1)ポリペプチド骨格の構造、例えば、β-シート又はα-ヘリカル立体構造、(2)電荷、(3)疎水性、又は(4)標的部位の側鎖のかさ高さに影響を与える非保存的置換は、ポリペプチド機能又は免疫学的アイデンティティを改変し得る。非保存的置換は、それらのクラスの1つのメンバーと、別のクラスとの交換を伴う。置換は、保存的置換部位又はより好ましくは、非保存部位中に導入することができる。
【0070】
例において、当該技術分野において公知の方法、例えば、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を使用してバリアントポリペプチドを産生する。部位特異的突然変異誘発(Carter,1986;Zoller and Smith,1987)、カセット突然変異誘発、制限選択突然変異誘発(Wells et al.,1985)又は他の公知の技術をクローニングされたDNAに対して実施してバリアントを産生することができる(Ausubel,2002;Sambrook and Russell,2001)。
【0071】
場合により、CD19 t-haNK細胞(商標)を使用して癌、特に、CD19を発現する癌を治療することができる。場合により、癌は、白血病(例として、急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(例として、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病))及び慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ性白血病)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、例として、限定されるものではないが、肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫からなる群から選択される。
【0072】
Fc受容体
一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、少なくとも1つのFc受容体を発現するように改変されており、その結果、少なくとも1つのFc受容体は、NK-92(登録商標)細胞の細胞表面上でディスプレイされる。Fc受容体は、抗体のFc部分に結合する。いくつかのFc受容体は公知であり、それらの好ましいリガンド、親和性、発現、及び抗体への結合後の効果により異なる。
【0073】
【0074】
【0075】
一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、細胞表面上でFc受容体タンパク質を発現するように改変されている。
【0076】
一部の実施形態において、Fc受容体は、CD16である。本開示の目的のため、CD16の特異的アミノ酸残基は、配列番号2、又は配列番号1に対して1つの位置において異なる配列番号1を参照して指定される。したがって、CD16ポリペプチドの「158位における」アミノ酸残基は、CD16ポリペプチド及び配列番号2が最大でアラインされる場合、配列番号2(又は配列番号1)の158位に対応するアミノ酸残基である。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、タンパク質の成熟形態、例えば、配列番号1の158位におけるフェニルアラニンを有するヒトCD16を発現するように改変されている。典型的な実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、タンパク質の成熟形態、例えば、配列番号2の158位におけるバリンを有するヒトCD16の高親和性形態を発現するように改変されている。成熟タンパク質の158位は、天然シグナルペプチドを含むCD16配列の176位に対応する。一部の実施形態において、CD16ポリペプチドは、配列番号3又は配列番号4の前駆体(すなわち、天然シグナルペプチドを有する)ポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドによりコードされる。したがって、一実施形態において、Fc受容体は、FcγRIII-A(CD16)を含む。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、配列番号1(FcγRIII-A又は158位におけるフェニルアラニン(F-158)を有するCD16と少なくとも90%の配列同一性;又は配列番号2(158位におけるバリン(F158V)を有するCD16、より高親和性の形態)と少なくとも90%の同一性を有するFc受容体コードポリペプチドを発現するように遺伝子改変されている。
【0077】
一部の実施形態において、CD16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、全長CD16の176位(成熟CD16タンパク質の158位に対応する)におけるフェニルアラニンを有するシグナルペプチドを含む全長天然発生CD16をコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性を有する。一部の実施形態において、CD16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、176位(成熟タンパク質の158位に対応する)におけるバリンを有するシグナルペプチドを含む全長天然発生CD16をコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性を有する。一部の実施形態において、CD16をコードするポリヌクレオチドは、配列番号13と少なくとも70%、80%、90%、又は95%の同一性を有し、シグナルペプチドを含む全長CD16ポリペプチドの176位をコードするポリヌクレオチドの位置におけるバリンをコードするコドンを含む。一部の実施形態において、CD16をコードするポリヌクレオチドは、配列番号13を含むが、全長CD16の176位におけるバリンをコードするコドンを有する。
【0078】
一部の実施形態において、CD16ポリヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号2と少なくとも70%、80%、90%、又は95%の同一性を有するポリペプチドをコードする。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2と少なくとも70%、80%、90%、又は95%の同一性を有するポリペプチドをコードし、配列番号2を参照して決定される158位におけるバリンを含む。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号2をコードする。一部の実施形態において、CD16ポリヌクレオチドは、シグナル配列を有し若しくは有さないCD16の細胞外ドメイン、又は全長CD16の任意の他の断片、又は別のタンパク質のアミノ酸配列に融合しているCD16の少なくとも部分配列を包含するキメラ受容体をコードする。他の実施形態において、エピトープタグペプチド、例えば、FLAG、myc、ポリヒスチジン、又はV5を成熟ポリペプチドのアミノ末端ドメインに付加して抗エピトープタグペプチドモノクローナル又はポリクローナル抗体の使用による細胞表面検出を支援することができる。
【0079】
一部の実施形態において、相同性CD16ポリヌクレオチドは、約150~約700、約750、又は約800個のポリヌクレオチド長さであり得るが、700~800個超のポリヌクレオチドを有するCD16バリアントは本開示の範囲内である。
【0080】
相同性ポリヌクレオチド配列としては、CD16のバリアントをコードするポリペプチド配列をコードするものが挙げられる。相同性ポリヌクレオチド配列としては、配列番号1に関する天然発生アレルバリエーションも挙げられる。配列番号1若しくは配列番号2のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、その天然発生バリアント、又は配列番号1若しくは配列番号2と少なくとも70%同一、若しくは少なくとも80%、90%、若しくは95%同一である配列をコードする任意のポリヌクレオチドによるNK-92(登録商標)細胞の形質移入は、本開示の範囲内である。一部の実施形態において、相同性ポリヌクレオチド配列は、配列番号1又は配列番号2中の保存的アミノ酸置換をコードする。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、天然ポリヌクレオチド配列と異なるが、同一のポリペプチドをコードする縮重相同性CD16ポリヌクレオチド配列を使用して形質移入される。
【0081】
他の例において、CD16アミノ酸配列を変化させる多型を有するcDNA配列、例えば、CD16遺伝子中の遺伝子多型を示す個体間のアレルバリエーションなどを使用して、NK-92(登録商標)細胞を改変する。他の例において、配列番号1の配列と異なるポリヌクレオチド配列を有する他の種からのCD16遺伝子を使用してNK-92(登録商標)細胞を改変する。
【0082】
バリアントポリペプチドは、当該技術分野において公知の方法、例えば、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR突然変異誘発を使用して作製することができる。部位特異的突然変異誘発(Carter,1986;Zoller and Smith,1987)、カセット突然変異誘発、制限選択突然変異誘発(Wells et al.,1985)又は他の公知の技術をクローニングされたDNAに対して実施してCD16バリアントを産生することができる(Ausubel,2002;Sambrook and Russell,2001)。
【0083】
一部の実施形態において、CD16をコードするポリヌクレオチドを突然変異させてCD16の機能を変更せずにCD16をコードするアミノ酸配列を変更する。例えば、例えば、「非必須」アミノ酸残基におけるアミノ酸置換をもたらすポリヌクレオチド置換を、配列番号1又は配列番号2中で作製することができる。
【0084】
1つのクラスのアミノ酸を同一クラスの別のアミノ酸により置き換える配列番号1又は配列番号2中の保存的置換は、その置換がポリペプチドの活性を実質的に変更しない限り、開示されるCD16バリアントの範囲内に収まる。保存的置換は、当業者に周知である。(1)ポリペプチド骨格の構造、例えば、β-シート又はα-ヘリカル立体構造、(2)電荷、(3)疎水性、又は(4)標的部位の側鎖のかさ高さに影響を与える非保存的置換は、CD16ポリペプチド機能又は免疫学的アイデンティティを改変し得る。非保存的置換は、それらのクラスの1つのメンバーと、別のクラスとの交換を伴う。置換は、保存的置換部位又はより好ましくは、非保存部位中に導入することができる。
【0085】
一部の実施形態において、CD16ポリペプチドバリアントは、少なくとも200個のアミノ酸長さであり、配列番号1又は配列番号2と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態において、CD16ポリペプチドバリアントは、少なくとも225個のアミノ酸長さであり、配列番号1又は配列番号2と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態において、CD16ポリペプチドバリアントは、配列番号2を参照して決定される158位におけるバリンを有する。
【0086】
一部の実施形態において、CD16ポリペプチドをコードする核酸は、CD16融合タンパク質をコードし得る。CD16融合ポリペプチドとしては、非CD16ポリペプチドと融合しているCD16の任意の部分又はCD16全体が挙げられる。融合ポリペプチドは、組換え方法を使用して簡便に作出される。例えば、CD16ポリペプチド、例えば、配列番号1又は配列番号2をコードするポリヌクレオチドは、非CD16コードポリヌクレオチド(例えば、異種タンパク質のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)とインフレームで融合される。一部の実施形態において、異種ポリペプチド配列がCD16のC末端に融合しており、又はCD16中に内部的に位置する融合ポリペプチドを作出することができる。典型的には、CD16細胞質ドメインの最大約30%を置き換えることができる。このような改変は、発現を向上させ、又は細胞毒性(例えば、ADCC応答性)を向上させ得る。他の例において、キメラタンパク質、例えば、他のリンパ球活性化受容体、例として、限定されるものではないが、Ig-a、Ig-B、CD3-e、CD3-d、DAP-12及びDAP-10からのドメインが、CD16細胞質ドメインの一部と置き換わる。
【0087】
融合遺伝子は、慣用の技術、例として、自動化DNA合成装置及び2つの連続する遺伝子断片(続いてこれをアニールし、再増幅させてキメラ遺伝子配列を生成することができる)間の相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用するPCR増幅により合成することができる(Ausubel,2002)。融合部分へのインフレームでのCD16のサブクローニングを容易にする多くのベクターが市販されている。
【0088】
サイトカイン
NK-92(登録商標)細胞の細胞毒性は、サイトカイン(例えば、インターロイキン-2(IL-2))の存在に依存的である。市販スケール培養でNK-92細胞を維持し、拡大するために必要とされる外因的に添加されるIL-2を使用するコストは、かなりのものである。NK92(登録商標)細胞の活性化を継続するために十分な量のIL-2のヒト対象への投与は、有害副作用を引き起こす。
【0089】
一実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、少なくとも1つのサイトカインを発現するように改変されている。特に、少なくとも1つのサイトカインは、IL-2(配列番号6)、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、又はそのバリアントである。一部の実施形態において、サイトカインは、IL-2、IL-15、又はそのバリアントである。ある実施形態において、IL-2は、小胞体に標的化されるバリアントであり、IL-15は、小胞体に標的化されるバリアントである。
【0090】
一実施形態において、IL-2は、IL-2を小胞体に指向するシグナル配列とともにクローニング及び発現される(erIL-2)(配列番号7)。これは、IL-2を細胞外に放出させずにオートクリン活性化に十分なレベルにおけるIL-2の発現を可能とする。Konstantinidis et al“Targeting IL-2 to the endoplasmic reticulum confines autocrine growth stimulation to NK-92(R)cells”Exp Hematol.2005 Feb;33(2):159-64を参照されたい。FcR発現NK-92(登録商標)細胞の継続的活性化は、例えば、自殺遺伝子の存在により防止することができる。
【0091】
自殺遺伝子
用語「自殺遺伝子」は、自殺遺伝子を発現する細胞の陰性選択を可能とする導入遺伝子を指す。自殺遺伝子は、その遺伝子を発現する細胞を選択剤の導入により殺傷することができる安全系として使用される。これは、組換え遺伝子が制御不能な細胞成長をもたらす突然変異を引き起こす場合、又は細胞自体がそのような成長をし得る場合に望ましい。多数の自殺遺伝子系、例として、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、大腸菌(Escherichia coli)gpt遺伝子、及び大腸菌(E.coli)Deo遺伝子が同定されている。典型的には、自殺遺伝子は、細胞に対する悪影響を有さないが、規定の化合物の存在下でその細胞を殺傷するタンパク質をコードする。したがって、自殺遺伝子は、典型的には、系の一部である。
【0092】
一実施形態において、自殺遺伝子は、NK-92(登録商標)細胞中で活性である。一実施形態において、自殺遺伝子は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。TK遺伝子は、野生型又は突然変異TK遺伝子(例えば、tk30、tk75、sr39tk)であり得る。TKタンパク質を発現する細胞は、ガンシクロビルを使用して殺傷することができる。
【0093】
別の実施形態において、自殺遺伝子は、5-フルオロシトシンの存在下で細胞に毒性であるシトシンデアミナーゼである。Garcia-Sanchez et al.“Cytosine deaminase adenoviral vector and 5-fluorocytosine selectively reduce breast cancer cells 1 million-fold when they contaminate hematopoietic cells:a potential purging method for autologous transplantation.”Blood.1998 Jul 15;92(2):672-82。
【0094】
別の実施形態において、自殺遺伝子は、イホスファミド又はシクロホスファミドの存在下で毒性であるシトクロムP450である。例えば、Touati et al.“A suicide gene therapy combining the improvement of cyclophosphamide tumor cytotoxicity and the development of an anti-tumor immune response.”Curr Gene Ther.2014;14(3):236-46を参照されたい。
【0095】
別の実施形態において、自殺遺伝子は、iCasp9である。Di Stasi,(2011)“Inducible apoptosis as a safety switch for adoptive cell therapy.”N Engl J Med 365:1673-1683。Morgan,“Live and Let Die:A New Suicide Gene Therapy Moves to the Clinic”Molecular Therapy(2012);20:11-13も参照されたい。iCasp9は、低分子AP1903の存在下でアポトーシスを誘導する。AP1903は生物学的に不活性な低分子であり、臨床試験において良好に忍容性であることが示されており、養子細胞療法の状況において使用されている。
【0096】
コドン最適化
一部の実施形態において、aNK細胞を形質転換するために使用される構築物の配列は、ヒト系中でのCD19 CAR、CD16、及び/又はerIL-2の発現効率を最大化するようにコドン最適化されている。コドン最適化は、典型的には、天然配列のコドンの少なくとも1つ、2つ以上、又はかなりの数を、発現系の遺伝子においてより高頻度に又は最も高頻度に使用されるコドンにより置き換えることにより核酸配列を改変することにより実施される。コドン最適化を翻訳速度に使用し、又はそれを使用して所望の特性、例えば、非最適化配列を使用して産生される転写産物と比較して長い半減期を有する組換えRNA転写産物を産生することができる。コドン最適化の方法は容易に利用可能であり、例えば、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)からのGeneArt(商標);http://genomes.urv.es/OPTIMIZERにおいて無料でアクセス可能なOptimizer、及びDNA 2.0(Newark,California)からのGeneGPS Expression Optimization Technologyである。特定の実施形態において、CD19 CARのコード配列はコドン最適化されており、配列番号9に記載の配列を含む。
【0097】
導入遺伝子発現
導入遺伝子は、当業者に公知の任意の機序により発現ベクター中に遺伝子操作することができる。複数の導入遺伝子を細胞中に挿入すべき場合、導入遺伝子は、同一の発現ベクター又は異なる発現ベクター中に遺伝子操作することができる。
【0098】
一部の実施形態において、細胞は、発現させるべきトランスジェニックタンパク質をコードするmRNAにより形質移入される。
【0099】
導入遺伝子及びmRNAは、当該技術分野において公知の任意の形質移入法、例として、非限定的な例として、感染、エレクトロポレーション、リポフェクション、ヌクレオフェクション、又は「遺伝子銃」を使用してNK-92(登録商標)細胞中に導入することができる。
【0100】
CD19 CARを発現するNK-92(登録商標)細胞
本開示は、CD19 CAR及びFcRを発現する改変NK-92(登録商標)細胞を提供する。場合により、改変NK-92(登録商標)細胞は、IL-2をさらに発現する。
【0101】
一部の実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、マルチシストロン性導入遺伝子を含み、マルチシストロン性導入遺伝子は、キメラ抗原受容体及びFc受容体、並びに場合によりIL-2をコードする。
【0102】
一部の実施形態において、FcRは、CD16である。一部の実施形態において、CD16は、配列番号2を含み、又はそれからなる高親和性CD16である。一部の実施形態において、IL-2は、配列番号7を含み、又はそれからなるerIL-2である。
【0103】
一部の実施形態において、CD19 CARコード配列及びCD16コード配列は、同一のmRNAからコードされるCD19 CAR及びCD16の等モル発現を産生するための自己開裂ペプチドをコードする配列により離隔している。自己開裂ペプチド及びそのコード配列は周知であり、例えば、関連の開示が参照により本明細書に組み込まれるWang et al.,Scientific Reports 5,Article number 16273(2015)に開示されている。自己開裂ペプチドの非限定的な例としては、ブタテッショウウイルス-1 2A(P2A)、トセア・アシグナ(thosea asigna)ウイルス2A(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス2A(E2A)、カイコ(B.mori)の細胞質多角体病ウイルス(BmCPV 2A)、及び軟化病ウイルス(BmIFV 2A)が挙げられる。一部の実施形態において、自己開裂ペプチドは、配列番号8:ggaagcggagctactaacttcagcctgctgaagcaggctggagacgtggaggagaaccctggacctによりコードされるP2Aペプチドである。
【0104】
一部の実施形態において、CD16コード配列及びerIL-2コード配列は、核酸配列から転写されるmRNAの内部領域からの翻訳の開始を可能とする内部リボソームエントリー配列(IRES)により離隔している。
【0105】
一部の実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、単一mRNAからCAR、高親和性CD16、及びerIL-2を発現するトリシストロン性構築物を含む。一部の実施形態において、トリシストロン性構築物は、配列番号11に記載の配列を含む。CARのインテグレーションは、エフェクター細胞が、CARにより認識される標的を発現する標的細胞に特異的にエンゲージし、それを殺傷するのを可能とし;CD16のインテグレーションは、治療モノクローナル抗体と組み合わせた場合にADCCを可能とし;erIL2は外因性IL-2の不存在下で細胞拡大を可能とし、導入遺伝子発現についての選択圧を維持する。1つの実例的なトリシストロン性構築物を
図2に示す。
【0106】
CAR及びCD16(例えば、高親和性CD16)、並びにerIL-2を発現する改変NK-92(登録商標)細胞を産生するため、マルチシストロン性プラスミドを、例えば、エレクトロポレーションによりaNK細胞中に導入する。形質転換NK-92(登録商標)細胞は、IL-2を有さない培地中で成長させ、個々のクローンを形質転換NK-92(登録商標)細胞から、限定希釈クローニングにより選択し、基準、例として、例えば、高レベルのCAR及びCD16発現、細胞毒性、ADCC、成長速度、及び/又はIL-2分泌に基づき特徴付けすることができる。好適なクローンは、表面マーカー、例えば、CD3、CD16、CD54、CD56、NKG2D、及び/又はNKp30も、aNK細胞のものと実質的に類似するレベルにおいて発現し得る。場合により、全ゲノムシーケンシング(WGS)を実施して導入遺伝子インテグレーション部位を決定する。これらの基準の1つ以上を満たすクローンをさらなる開発のために選択し、それを使用して診療所において患者を治療することができる。
【0107】
発現
IL-2の発現は、IL-2不含条件における改変NK-92(登録商標)細胞の能力により確認することができる。CAR及びCD16の発現は、フローサイトメトリーにより計測することができる。CD19 CAR、CD16、及びIL-2(例えば、erIL-2)のコード配列を含むトリシストロン性構築物により形質転換されたNK-92(登録商標)細胞について、典型的には、IL-2不含条件で成長し得る形質転換細胞の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%が、CAR及びCD16の両方の高い発現レベルも示す。
【0108】
場合により、形質転換NK-92(登録商標)細胞のIL-2分泌レベルは、種々の時点において当該技術分野において周知の方法を使用して、例えば、ELISAにより計測することができる。
【0109】
一部の実施形態において、培養上清中のIL-2レベルを計測して細胞培養培地に放出されるIL-2のレベルを決定する。一部の実施形態において、細胞ペレット中のIL-2レベルを計測してIL-2の総細胞内レベルを評価する。一部の実施形態において、上清中のIL-2量及び細胞ペレット中のIL-2量の両方を計測して形質転換NK-92(登録商標)細胞により産生されるIL-2の総量を決定する。
【0110】
場合により、形質転換NK-92(登録商標)細胞の他の表面マーカーは、フローサイトメトリーにより計測することができる。これらのマーカーとしては、限定されるものではないが、CD54、CD56、NKG2D、NKp30、及びCD3が挙げられる。好適なクローンは、同一の成長条件下でaNK細胞とそれらのマーカーの実質的に類似する発現レベルを実証したものである。
【0111】
細胞毒性
場合により、トリシストロン性プラスミドにより形質転換されたNK-92(登録商標)細胞の細胞毒性は、フローベース細胞毒性アッセイを使用して評価することができる。エフェクター細胞(NK-92(登録商標)細胞)及びフルオロフォア標識標的細胞、例えば、腫瘍細胞を、異なるエフェクターと標的との比において混合する。ヨウ化プロピジウム(PI)を細胞に添加することができ、試料をフローサイトメーターにより分析した。好ましくは、標的細胞を標識するために使用されるフルオロフォアは、フローサイトメーターによりPIから区別することができる。一部の実施形態において、フルオロフォアは、CFSEである。一部の実施形態において、フルオロフォアは、PKHGL67である。細胞毒性は、フルオロフォア陽性標的集団内のPI陽性細胞の%により決定することができる。
【0112】
場合により、トリシストロン性プラスミドにより形質転換されたNK-92(登録商標)細胞の細胞毒性は、当分野において周知の方法を使用して試験することもできる。NK-92(登録商標)細胞の細胞毒性は、それらの直接細胞毒性又はADCC活性により反映することができる。産生されたNK-92(登録商標)細胞の直接細胞毒性、異常細胞、例えば、腫瘍細胞を標的化し、殺傷する能力は、当該技術分野において周知の方法、例えば、Klingemann et al.(Cancer Immunol.Immunother.33:395-397(1991))により記載された手順を使用する51Cr放出アッセイ(Gong et al.(Leukemia,Apr;8(4):652-8(1994))により評価することができる。一部の実施形態において、標的細胞は、t-haNK(商標)細胞の表面上で発現されるCARにより認識され得る抗原を発現する。簡潔に述べると、51Cr標識標的細胞をNK-92(登録商標)細胞と混合し、溶解させる。特異的細胞毒性の割合は、放出される51Crの量に基づき計算することができる。米国特許出願公開第20020068044号明細書を参照されたい。
【0113】
或いは、産生されるNK-92(登録商標)細胞の直接細胞毒性は、カルセイン放出アッセイを使用して評価することもできる。例えば、NK-92(登録商標)細胞(アッセイにおいてエフェクターと称される)をカルセイン負荷標的細胞(アッセイにおいて標的と称される)と、ある比において混合することができる。一定時間のインキュベーション後、標的細胞から放出されたカルセインを、例えば、蛍光プレートリーダーにより評価することができる。
【0114】
各アッセイにおいて使用されるエフェクターと標的との比は変動し得、場合により、エフェクター:標的比は、20:1、15:1、10:1、8:1、又は5:1であり得;好ましくは、エフェクター:標的比は、10:1である。標的細胞は、NK-92(登録商標)細胞(t-haNK(商標)細胞)上のCARにより認識され得る抗原分子を発現する任意の細胞であり得る。例えば、SUP-B15細胞はCD19 CARにより認識され得、CD19 t-haNK(商標)細胞についての標的細胞である。NK-92(登録商標)細胞の細胞毒性の値は、使用される標的細胞のタイプ及びエフェクター:標的比に応じて変動し得る。一般に、本明細書に記載の方法を使用して産生されるNK-92(登録商標)細胞は、60~100%、例えば、70~100%又は80~100%の細胞毒性を有し得る。一部の場合、NK-92(登録商標)細胞は、カルセイン放出アッセイにより1:10のエフェクター:標的比を使用した場合、80~100%、例えば、82~100%、85~100%、87~100%、88~100%、又は89~100%の細胞毒性を有し得る。
【0115】
場合により、評価されるNK-92(登録商標)細胞、例えば、t-haNK(商標)細胞の細胞毒性は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)である。NK-92(登録商標)細胞のADCC活性を計測する方法は、標的細胞を認識し得る抗体も添加することを除き上記の直接細胞毒性を計測する方法と類似する。NK細胞のFc受容体は細胞結合抗体を認識し、細胞溶解反応をトリガーし、標的細胞を殺傷する。1つの実例的な例において、t-haNK(商標)細胞は、Herceptin(抗Her2抗体)及びSKBr3(標的細胞)とインキュベートすることができ、SKBr3細胞の殺傷は、上記の標的細胞の内部構成成分、例えば、51Cr若しくはカルセインの放出により、又は標的細胞のPI染色により計測することができる。
【0116】
倍化時間
NK-92(登録商標)細胞、例えば、t-haNK(商標)細胞の成長速度は、細胞倍化時間、すなわち、細胞が初期の細胞数の2倍に到達するまで増殖するのに要する時間を使用して評価することができる。倍化時間は、NK-92(登録商標)細胞の成長速度と反比例し;倍化時間が長いほど、成長速度は遅い。
【0117】
WGS
場合により、形質転換NK-92(登録商標)細胞の全ゲノムシーケンシング(WGS)を実施してマルチシストロン性構築物の挿入部位を同定する。
【0118】
治療用途
本開示はまた、疾患の任意の病期における対象における任意のタイプの癌を治療する方法を提供する。好適な癌の非限定的な例としては、癌腫、黒色腫、又は肉腫が挙げられる。一部の実施形態において、本発明を使用して造血系由来の癌、例えば、白血病又はリンパ腫を治療する。一部の実施形態において、癌は、固形腫瘍である。
【0119】
一部の実施形態において、対象における任意のタイプの癌を治療する方法は、患者に治療有効量の上記のNK-92(登録商標)細胞を投与し、それにより癌を治療することを含む。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、Fc受容体、例えば、配列番号2に記載の配列を有する高親和性Fc受容体を発現する。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、CD19 CAR、Fc受容体及びIL-2を発現する。一部の実施形態において、改変NK-92(登録商標)細胞は、マルチシストロン性構築物を含み、マルチシストロン性構築物は、キメラ抗原受容体及びFc受容体をコードする。
【0120】
治療が必要とされる対象を、本明細書に記載の改変NK-92(登録商標)細胞により治療する方法も提供される。一部の実施形態において、対象又は患者は、癌又は感染性疾患、例えば、ウイルス感染を罹患する。
【0121】
改変NK-92(登録商標)細胞は、個体に絶対数の細胞だけ投与することができ、例えば、前記個体に、約1000個の細胞/注射~最大約100億個の細胞/注射、例えば、1注射当たり約、少なくとも約、又は多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、5×103個(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の任意の範囲(端点を含む)を投与することができる。したがって、本開示はまた、複数のNK-92(登録商標)細胞を含む組成物であって、細胞の数は、1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、又は5×103個(など)である組成物を提供する。
【0122】
他の実施形態において、前記個体に、約1000個の細胞/注射/m2~最大約100億個の細胞/注射/m2、例えば、1注射当たり約、少なくとも約、又は多くとも約1×108個/m2、1×107個/m2、5×107個/m2、1×106個/m2、5×106個/m2、1×105個/m2、5×105個/m2、1×104個/m2、5×104個/m2、1×103個/m2、5×103個/m2(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の任意の範囲(端点を含む)を投与することができる。
【0123】
他の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、そのような個体に相対数の細胞だけ投与することができ、例えば、前記個体に、個体1キログラム当たり約1000個の細胞~最大約100億個の細胞、例えば、個体1キログラム当たり約、少なくとも約、又は多くても約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、又は5×103個(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の任意の範囲(端点を含む)を投与することができる。
【0124】
他の実施形態において、総用量は体表面積のm2により算出することができ、それとしては、1m2当たり約1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107個、又はいずれか2つの数字間の任意の範囲(端点を含む)が挙げられる。平均的な人間は、約1.6m2~約1.8m2である。好ましい実施形態において、約10億~約30億個のNK-92(登録商標)細胞が患者に投与される。他の実施形態において、1用量当たり注射されるNK-92(登録商標)細胞の量は体表面積のm2により算出することができ、それとしては、1m2当たり1×1011、1×1010、1×109、1×108、1×107個が挙げられる。人間についての平均体表面積は1.6~1.8m2である。
【0125】
他の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、そのような個体に相対数の細胞だけ投与することができ、例えば、前記個体に、個体1キログラム当たり約1000個の細胞~最大約100億個の細胞、例えば、約、少なくとも約、又は多くとも約1×108、1×107、5×107、1×106、5×106、1×105、5×105、1×104、5×104、1×103、又は5×103個(など)のNK-92(登録商標)細胞、又はいずれか2つの数字間の任意の範囲(端点を含む)を投与することができる。
【0126】
NK-92(登録商標)細胞は、癌を有する患者に1回投与することができ、又はそれらは複数回、例えば、治療の間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22若しくは23時間ごとに1回、又は1、2、3、4、5、6若しくは7日ごとに1回、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週若しくはそれを超える週ごとに1回、又はいずれか2つの数字間の任意の範囲(端点を含む)ごとに1回、投与することができる。
【0127】
一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、NK-92(登録商標)細胞及び媒体、例えばヒト血清又はその同等物を含む組成物中で投与される。一部の実施形態において、媒体はヒト血清アルブミンを含む。一部の実施形態において、媒体はヒト血漿を含む。一部の実施形態において、媒体は、約1%~約15%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。一部の実施形態において、媒体は、約1%~約10%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。一部の実施形態において、媒体は、約1%~約5%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。好ましい実施態様において、媒体は、約2.5%のヒト血清又はヒト血清同等物を含む。一部の実施形態において、血清は、ヒトAB血清である。一部の実施形態において、ヒト治療における使用に許容可能な血清代用物がヒト血清の代わりに使用される。このような血清代用物は、当該技術分野において公知であり、又は今後開発され得る。15%を超える濃度のヒト血清を使用することができるが、約5%を上回る濃度は費用が高すぎることが企図される。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、NK-92(登録商標)細胞と細胞生存を支持する等張液とを含む組成物中で投与される。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、凍結保存試料から再構成させた組成物中で投与される。
【0128】
NK-92(登録商標)細胞を含む薬学的に許容可能な組成物は、種々の担体及び賦形剤を含み得る。種々の水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などを使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に不所望な物質を有さない。好適な担体及び賦形剤並びにそれらの配合物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,David B.Troy,ed.,Lippicott Williams & Wilkins(2005)に記載されている。薬学的に許容可能な担体は、生物学的にもその他でも不所望でない材料を意味し、すなわち、その材料は、不所望な生物学的効果を引き起こすこともなく、それが含有される医薬組成物の他の構成成分と有害な形で相互作用することもなく、対象に投与される。対象に投与される場合、担体は、場合により、活性成分の分解を最小化するように、及び対象における有害副作用を最小化するように選択される。本明細書において使用される、薬学的に許容可能という用語は、生理学的に許容可能及び薬理学的に許容可能と同義的に使用される。医薬組成物は一般に、緩衝及び貯蔵時の保存性のための薬剤を含み、投与経路に応じた適切な送達のための緩衝剤及び担体を含み得る。
【0129】
インビボ又はインビトロでの使用のためのこれらの組成物は、細胞に用いられる滅菌技術により滅菌することができる。組成物は、適切な生理学的状態に要求される許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、並びに毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び乳酸ナトリウムなどを含有し得る。これらの配合物中の細胞及び/又は他の薬剤の濃度は変動し得、主に、選択される特定の投与方式及び対象の要求に従って液体量、粘性、及び体重など基づき選択される。
【0130】
一実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、治療される癌のための1つ以上の他の治療又は薬剤と併用して患者に投与される。一部の実施形態において、治療される癌のための1つ以上の他の治療としては、例えば、抗体、放射線照射、化学療法、幹細胞移植、又はホルモン療法が挙げられる。
【0131】
一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞及び他の癌薬剤/治療は、同時に又はほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20、又は30分以内)投与される。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞及び他の癌薬剤/治療は、連続的に投与される。一部の実施形態において、他の癌治療/薬剤は、NK-92(登録商標)細胞の投与の1、2、又は3日後に投与される。
【0132】
一実施形態において、他の癌薬剤は、抗体である。一実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、疾患細胞を標的化する抗体と併用して投与される。一実施形態において、NK-92(登録商標)細胞及び抗体は、患者に一緒に投与され、例えば、同一の配合物中で;別個に、例えば、別個の配合物中で、併用して;又は別個に、例えば、異なる投与スケジュールで若しくはその日の異なる時間に投与することができる。別個に投与される場合、抗体は、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は腫瘍内注射を介して投与することができる。
【0133】
一部の実施形態において、本開示のNK-92(登録商標)細胞は、治療抗体及び/又は他の抗癌剤との組合せで使用される。治療抗体を使用して癌関連又は腫瘍関連マーカーを発現する細胞を標的化することができる。癌治療モノクローナル抗体の例を、表4に示す。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、Fc受容体、例えば、配列番号2に記載の配列を有する高親和性Fc受容体を発現する。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、haNK(登録商標)細胞である。一実施形態において、治療抗体は、アベルマブである。
【0134】
【0135】
【0136】
このようなNK-92(登録商標)細胞の投与は、モノクローナル抗体の投与と同時に、又は連続様式で実施することができる。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、対象がモノクローナル抗体により治療された後に対象に投与される。或いは、NK-92(登録商標)細胞は、同時に、例えば、モノクローナル抗体の24時間以内に投与することができる。
【0137】
一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、静脈内投与される。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、骨髄中に直接注入される。
【0138】
したがって、本開示は、癌又はウイルス感染の治療が必要とされる患者における癌又はウイルス感染を治療する方法であって、患者に治療有効量の本明細書に開示のNK-92(登録商標)細胞を投与し、それにより癌を治療することを含む方法を提供する。
【0139】
キット
本明細書に記載の複数のNK-92(登録商標)細胞を含む組成物を使用する癌又は感染性疾患の治療のためのキットも開示される。一部の実施形態において、本開示のキットは、少なくとも1つのモノクローナル抗体も含み得る。キット中に含まれるNK-92(登録商標)細胞は、CAR及びFc受容体を発現する。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、IL-2、例えば、erIL-2、又はIL-15、例えば、erIL-15をさらに発現する。一部の実施形態において、NK-92(登録商標)細胞は、マルチシストロン性構築物を含み、マルチシストロン性構築物は、キメラ抗原受容体、Fc受容体、及び場合によりIL-2又はIL-15をコードする。
【0140】
ある実施形態において、キットは、NK-92(登録商標)細胞の投与前、投与と同時、又は投与後に投与すべき追加の化合物、例えば、治療有効化合物又は薬物を含有し得る。このような化合物の例としては、抗体、ビタミン、ミネラル、フルドロコルチゾン、イブプロフェン、リドカイン、キニジン、化学療法薬などが挙げられる。
【0141】
種々の実施形態において、キットの使用説明書は、癌又は感染性疾患の治療においてキット構成成分を使用するための指示を含む。説明書は、NK-92(登録商標)細胞の取扱方法に関する情報(例えば、解凍及び/又は培養)をさらに含有し得る。説明書は、投与量及び投与頻度に関する指針をさらに含み得る。
【0142】
ある実施形態において、キットは、本明細書に記載の1つ以上の組成物、例えば、本明細書に記載のNK-92(登録商標)細胞を含む組成物が充填された1つ以上の容器をさらに含む。場合により、キットが癌、例えば、本明細書に記載のものを治療するためのものであることを示すラベルが、このような容器に伴うことがある。場合により、ラベルは、医薬又は生物製品の製造、使用又は販売を規制する当局により処方される形態の通知も含み、その通知は、ヒト投与についての製造、使用又は販売の当局による承認を反映する。
【0143】
本開示の方法及び組成物に使用することができ、それらと併用して使用することができ、それらの調製において使用することができ、又はそれらの産物である材料、組成物、及び構成成分が開示される。これら及び他の材料は本明細書において開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループなどが記載される場合、これらの化合物のそれぞれの種々の個々の及び集合的な組合せ及び順列の具体的な言及が明示されていないことがあるが、それぞれが本明細書において具体的に企図及び記載されることが理解される。例えば、方法が開示及び考察され、その方法を含む多数の分子に対して行うことができる多数の改変が考察される場合、方法のそれぞれの及びあらゆる組合せ及び順列、並びに考えられる改変は、そうでないことが具体的に示されない限り、具体的に企図される。同様に、これらの任意のサブセット又は組合せも具体的に企図及び開示される。この概念は、本開示の全ての態様、例として、限定されるものではないが、開示の組成物を使用する方法におけるステップに適用される。したがって、実施することができる種々の追加のステップが存在する場合、それらの追加のステップのそれぞれを、任意の規定の方法ステップ又は開示の方法の方法ステップの組合せにより実施することができること、及びそれぞれのそのような組合せ又は組合せのサブセットが具体的に企図され、開示されているとみなすべきことが理解される。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は、実例的な目的のためのものにすぎず、限定として解釈すべきではない。以下の実施例を良好に実施することを同様に可能とする、当業者が利用可能な種々の代替技術及び手順が存在する。
【0145】
実施例1:PD-1 CAR改変NK-92(登録商標)細胞の産生
CD19 CARを、CD16及びerIL-2導入遺伝子も含有するトリシストロン性プラスミドpNEUKv1 FcR_IL-2ベクター中にクローニングした。トリシストロン性プラスミドを、aNK細胞中にエレクトロポレーションした。IL-2依存的である未形質転換aNK細胞はIL-2枯渇培地中で生存し得なかったため、CD19 CAR発現NK-92(登録商標)細胞をIL-2枯渇培地により選択した。
【0146】
限定希釈クローニング
ポリクローナルCD19 t-haNK(商標)プール培養物のアリコートを、IL-2補給なしの成長培地中で3個の細胞/mlの密度に希釈した。この細胞懸濁液を96ウェルプレート中でウェル当たり200μlの容量においてアリコート化し、それはウェル当たり平均0.6個の細胞に対応した。プレートを37℃において10日間インキュベートし、次いで細胞成長について目視により確認した。目下、クローンと命名される合計20個の培養物をピックし、大型容器に移し、それらの初期成長速度に従って番号付与し、クローン#1~10を最初に継代することができた。
【0147】
実施例2:生物学的分析法
細胞培養:
ポリクローナル及びクローナルCD19 t-haNK(商標)細胞は、5%の熱不活性化ヒトAB血清(CMV陰性試験ドナー由来)が補給され、IL-2を有さない成長培地中で培養した。
【0148】
aNK細胞は、5%の熱不活性化ヒトAB血清(CMV陰性試験ドナー由来)及び500IU/mlの組換えヒトIL-2が補給された成長培地中で培養した。
【0149】
haNK細胞は、5%の熱不活性化ヒトAB血清(CMV陰性試験ドナー由来)が補給され、IL-2を有さない成長培地中で培養した。
【0150】
K562細胞は、10%の熱不活性化ウシ胎児血清及び抗生物質/抗真菌薬のカクテルが補給されたRPMI-1640中で培養した。K562細胞は、2~5日間ごと、又は培養培地が黄色を呈するごとに継代した。
【0151】
SUP-B15及びSUP-B15CD19KO/CD20+細胞は、20%の熱不活性化ウシ胎児血清、55uMのベータ-メルカプトエタノール、及び抗生物質/抗真菌薬のカクテルが補給されたRPMI-1640中で培養した。それ以外では、細胞を上記のK562細胞と同様に継代した。
【0152】
フローサイトメトリー分析のための抗体染色:
細胞を遠心分離により回収し、FACS緩衝液(1×D-PBS中5%のFBS)中で2回洗浄し、1mlのFACS緩衝液中で再懸濁させた。表面タンパク質の直接的なフルオロフォアコンジュゲート抗体染色のため、細胞を適切なコンジュゲート抗体(又はアイソタイプ対照)と4℃において暗所で20分間インキュベートし、次いでFACS緩衝液中で2回洗浄した。CARタンパク質の検出のため、細胞をビオチン化抗F(ab’)2断片抗体とインキュベートし、次いでストレプトアビジン-APC抗体とインキュベートした。試料をMACSQuantフローサイトメーター上で分析した。
【0153】
成長アッセイ:
5%の熱不活性化ヒトAB血清が補給された成長培地中で再懸濁させた1×105個の細胞/mLの初期濃度(1日目)から、培養物を3日目、5日目、及び7日目に自動細胞計数装置により計数した。成長速度を以下の式:
倍化時間(時間)=
[持続時間(時間)×log(2)]/[log(最終細胞密度)-log(初期細胞密度)]
により計算した。
【0154】
細胞毒性:
懸濁液-成長細胞系を、細胞培養物の上下のピペッティングにより再懸濁させた。細胞生存率を自動計数(トリパンブルー排除法)により決定した。標的細胞をCFSE色素により標識し、要求される細胞濃度への標的及びエフェクター細胞の希釈を、10%の熱不活性化FBS及び抗生物質/抗真菌薬が補給されたRPMI-1640中で行った。エフェクター及び標的細胞を異なるエフェクターと標的との比(20:1、10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.62:1、0.31:1、及び0.15:1のE:T)において96ウェルプレート中で混合し、5%のCO2雰囲気の37℃のインキュベーター中で4時間同時培養した。次いで、死細胞の蛍光標識のためにPIを添加し、アッセイをMACSquantフローサイトメトリー装置上で分析した。
【0155】
ADCC:
懸濁液-成長細胞系を、細胞培養物の上下のピペッティングにより再懸濁させた。細胞生存率を自動計数(トリパンブルー排除法)により決定した。標的細胞をPKH67-GL色素により標識し、要求される細胞濃度への標的及びエフェクター細胞の希釈を、10%の熱不活性化FBS及び抗生物質/抗真菌薬が補給されたRPMI-1640中で行った。標的細胞をモノクローナル抗体のトラスツズマブ、リツキシマブと、又は抗体なしで室温において30分間プレインキュベートした。次いで、抗体標識標的細胞(及び無抗体対照)をエフェクター細胞と異なるエフェクターと標的との比(20:1、10:1、5:1、2.5:1、1.25:1、0.62:1、0.31:1、及び0.15:1のE:T)において96ウェルプレート中で混合し、5%のCO2雰囲気の37℃のインキュベーター中で4時間同時培養した。次いで、死細胞の蛍光標識のためにPIを添加し、アッセイをMACSquantフローサイトメトリー装置上で分析した。
【0156】
IL-2の定量
分析用細胞をD-PBS1×中で洗浄して残りの培地を除去し、新鮮成長培地中で再懸濁させ、2つの96ウェルプレート中でそれぞれ105個の細胞/ウェル(=200μl/ウェル)の密度において3つ組でアリコート化し、プレートを37℃において5%のCO2加湿インキュベーター中でインキュベートした。プレートの一方のセットを24時間のインキュベーション後に分析のために取り出し、他方を48時間後に取り出した。分析用試料上清を、細胞を除去するための500×gにおける5分間の第1の遠心分離ステップとそれに続く細胞残屑を除去するための2000×gにおける5分間の第2の遠心分離により調製した。試料上清を分析まで-80℃において冷凍した。500×gの遠心分離ステップからの細胞ペレットを再懸濁させ、3つ組をプールし、細胞密度を記録した。試料上清中のIL-2の濃度を、ThermoFisher Scientific(Waltham,MA)から入手可能なヒトIL-2 ELISA検出キットを製造業者の説明書に従って使用して計測し、提供されるスタンダードと比較した。IL-2濃度を24及び48時間における細胞数に正規化し、pg/ml/105個の細胞として表現した。
【0157】
実施例3:改変NK-92(登録商標)細胞の表現型
CD19 t-haNK(商標)細胞中でのCD19 CARの発現をフローサイトメトリーにより計測し、結果は、CD19 t-haNK(商標)細胞がIL-2の不存在下で成長し得、細胞の80%超が高レベルの両方のCD16(
図3A)及びCAR(
図3B)を発現することを示した。
【0158】
別個の実験において、20個の選択クローンを、CD19CAR(ビオチン化F(ab’)2断片特異的一次抗体及びストレプトアビジン-APC二次抗体により検出)及びCD16(3G8モノクローナル抗体により検出)の表面発現についてフローサイトメトリーによりスクリーニングした。複数の陽性集団、CD16についての低い染色強度、又は高いバックグラウンドを示したクローンを廃棄した。
【0159】
【0160】
選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンにおける6つのNK細胞マーカーの発現プロファイルを抗体染色及びフローサイトメトリーにより決定し、aNKと比較した。全てのクローン及びaNKはCD3発現について陰性であった一方、aNKのみがCD16発現について陰性であった。全てのクローンはCD54、CD56、NKp30、及びNKG2Dの発現について陽性であり、それらの発現レベルはaNK対照と類似であった。
【0161】
【0162】
実施例4:標的細胞系に対するCD19 t-haNK(商標)細胞の細胞毒性
CD19 t-haNK(商標)細胞の細胞毒性を、標的細胞のK562細胞、SUP-B15細胞、及びSKBr細胞とインキュベートすることにより分析した。
図4Aは、CD19 t-haNK(商標)細胞がK562細胞(標的細胞)の殺傷において親aNK細胞と同等の細胞毒性を維持したことを示す。16B1及び18B1は、異なる日に実施された2つのエレクトロポレーションイベントから得られた2つのCD19 t-haNK(商標)集団である。
【0163】
別個の実験において、選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンを、K562標的細胞系(CD19-、NK感受性)に対するフローサイトメトリーベースインビトロ細胞毒性アッセイにおけるエフェクターとして使用した。全てのクローンは、4時間の細胞毒性アッセイにおいてK562に対する効率的な細胞溶解活性を示した。CD19 t-haNK(商標)クローンについての平均最大殺傷効率は、10:1の比においてaNK対照についての84.1±2.4%と比較して70.9±10.1%~84.4±0.6%であった(n=2~5)。
図4Bを参照されたい。
【0164】
図5Aは、CD19 t-haNK(商標)細胞が、aNK(商標)耐性、CD19陽性SUP-B15細胞系の向上した特異的殺傷を実証し、10のエフェクターと標的との比において細胞の約10~20%のみがaNK細胞により殺傷されたのに対して、細胞の約80~90%がCD19 t-haNK(商標)細胞により殺傷されたことを示す。
【0165】
別個の実験において、選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンを、SUP-B15標的細胞系(CD19+、NK耐性)に対するフローサイトメトリーベースインビトロ細胞毒性アッセイにおけるエフェクターとして使用した。全てのクローンは、4時間の細胞毒性アッセイにおいて耐性SUP-B15を効率的に標的化し、殺傷し得た。CD19 t-haNK(商標)クローンについての平均最大殺傷効率は、10:1の比においてaNK対照についての10.8±7.4%と比較して85.7±0.1%~92.2±1.2%であった(n=2~5)。
図5Bを参照されたい。
【0166】
図6Aは、SKBr3細胞(CD19-、Her2/neu+)に対するCD19 t-haNK(商標)細胞のADCC活性が、抗Her2/neu抗体Herceptinと組み合わせた場合、CD16(158V)受容体のみを発現するhaNK(登録商標)細胞のものと同等であったことを示す。
【0167】
別の実験において、選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンを、改変SUP-B15標的細胞系(CD19-、CD20+、Her2-neu-、NK耐性)に対するフローサイトメトリーベースインビトロADCCアッセイにおけるエフェクターとして、抗CD20リツキシマブモノクローナル抗体との、又は抗Her2-neuトラスツズマブモノクローナル抗体との組合せで使用した。4時間の細胞毒性アッセイにおいて、全てのクローンは、抗CD20抗体リツキシマブと組み合わせた場合、耐性SUP-B15CD19KO/CD20+を効率的に標的化し、殺傷し得た。CD19 t-haNK(商標)クローンについての最大殺傷効率は、10:1の比においてhaNK(登録商標)対照についての67.1%と比較して63.7%~77.8%であった(n=1~2)。haNK(登録商標)も、CD19 t-haNK(商標)クローンも、抗Her2/neu対照抗体トラスツズマブと組み合わせた場合、標的SUP-B15CD19KO/CD20+細胞を殺傷し得なかった(CD19 t-haNK(商標)クローンについての最大殺傷効率は、10:1の比において7.7%~21.9%であり、haNK(登録商標)については4.1%であった)。CD19 t-haNK(商標)クローンについてのADCC媒介殺傷は、10:1の比においてhaNK(登録商標)対照についての62.7%と比較して46.4%~65.2%であった。
図6Bを参照されたい。
【0168】
実施例5:CD19 t-haNK(商標)細胞の他の特性
選択されたCD19 t-haNK(商標)クローンの集団倍化時間を培地交換なしの7日間にわたる細胞成長アッセイにより決定し、平均倍化時間を計算した。全てのクローンは、aNK対照についての34.5時間と比較して33.1~54.5時間の範囲の集団倍化時間を有した。
図7を参照されたい。
【0169】
CD19 t-haNK(商標)クローンを6ウェルプレート中の培養物中に10e5個の細胞/mlの密度においてIL-2なしで配置し、培養物上清を24及び48時間後に回収した。上清をELISAにより分析してCD19 t-haNK(商標)細胞によるERIL-2の潜在的放出を検出し、計測した。培養物中で24時間後、CD19 t-haNK(商標)クローンは16.1~1278.5pg/ml/105個の細胞を放出した。
図8を参照されたい。
【0170】
実施例6:CD19 t-haNK(商標):NSGマウスにおけるRajiヒトバーキットリンパ腫の静脈内及び皮下モデルにおけるCD19標的化t-haNK(商標)細胞の抗腫瘍活性の評価
CD19 t-haNK(商標)は、CD19に対するキメラ抗原受容体(CAR)を発現してB細胞系統の血液癌を治療するナチュラルキラー細胞である。本試験において、CD19 t-haNK(商標)の反復静脈内(IV)投与の抗腫瘍効果を、NSGマウスにおけるIV及び皮下(SC)Rajiゼノグラフトモデルの両方において評価した。両方のモデルにおいて、CD19 t-haNK(商標)細胞は有意な治療効力を実証した。具体的には、IV腫瘍モデルにおいて、CD19 t-haNK(商標)細胞は、ビヒクル対照と比較して動物生存期間を有意に改善した。SC腫瘍モデルにおいて、CD19 t-haNK(商標)は、腫瘍成長を有意に抑制し、動物罹病/死亡イベントの数を低減させ、肝臓中の転移性疾患負荷を顕著に減少させ得た。
【0171】
CD19に対するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する標的化aNK細胞はRaji腫瘍担持NSGマウスにおける効力を示しており、これはCAR発現細胞における標的特異的細胞毒性に起因する可能性が最も高いことが既に示されている(例えば、Oelsner et al,Cytotherapy,2017を参照されたい)。この試験において、CD19 t-haNK(商標)細胞の効力を、Rajiゼノグラフトモデルの2つの異なるバリエーション:1)静脈内(IV)接種Raji細胞;及び2)皮下(SC)接種Raji腫瘍において評価し、両方のモデルは、CD19 t-haNK(商標)細胞の反復IV投与を受容した。追加の動物群(B及びE群)も元の試験プロトコルに含めてこのモデルにおいて評価したが、それらはCD19 t-haNK(商標)効力決定と無関連であったため、この報告には含まれないことに留意されたい(簡略的な実験設計についての表6を参照されたい)。
【0172】
実施例7:CD19 t-haNK(商標)試験のための材料
CD19 t-haNK(商標)細胞(クローン19.6):CD19 t-haNK(商標)細胞を5%の熱不活性化ヒトAB血清が補給された成長培地中で培養し、次いでProcess Development,NantKwest(登録商標),Inc.,Torrey Pinesにより提供されるプロトコルを行った。
【0173】
試験動物:使用された試験動物は、試験開始時(隔離飼育後)に9~10週齢及び試験開始時に20~27グラムの体重を有する雌NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスであった。20匹の動物をIV腫瘍モデル用とした一方、12匹をSC腫瘍モデル用とした。動物の供給業者は、The Jackson Laboratory(610 Main Street Bar Harbor,ME 04609 US)であった。無菌ステンレス鋼の耳標を、識別のために携帯型装着器によりそれぞれのマウスに適用した。さらに、それぞれのケージは、試験番号及び動物番号情報を含有するケージカードを有した。
【0174】
Raji癌細胞系:Raji細胞を最初にATCC(カタログ#CCL-86(商標);ロット#61723871)から購入し、次いでPreclinical Development,NantKwest(登録商標),Incにより拡大し、調製した。細胞は、2018年3月18日にIDEXXにより認証された(認証レポートについての付録2を参照されたい)。細胞培養培地は、10%のウシ胎児血清、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)が補給されたATCC配合RPMI-1640培地であった。指数増殖期のRaji細胞(第12継代)を、遠心分離により回収した。細胞を洗浄し、IV接種のために5×105個の生細胞/mLの濃度において無血清培地中で、及びSC移植のために2.5×106個の生細胞/mLの濃度において培地/Matrigel(1:1 v/v)中で再懸濁させた。細胞を動物注射前に氷上で貯蔵した。インビボ試験において使用された細胞は、96%は生存率を有した。
【0175】
Raji IVモデル:20匹の動物に、外側尾静脈を介して0.2mLのRaji細胞懸濁液を27ゲージ針によりIV注射した(1×105個の細胞の接種材料)。
【0176】
Raji SCモデル:12匹の動物に、両脇腹上に0.1mLのRaji細胞懸濁液を25ゲージ針によりSC移植した(2.5×105個の細胞の接種材料)。
【0177】
実施例8:CD19 t-haNK(商標)試験についての実験手順
IV Rajiモデル:1日目と定義された癌細胞接種後24時間以内に、20匹の動物を体重に従って10匹の2つの群に偽無作為化して群間の類似の平均体重を達成した。2、5、8、10、12、及び17日目、指数増殖期の成長させたCD19 t-haNK(商標)細胞を遠心分離により回収し、200μLの注射容量によるマウス当たり1×107個の細胞の用量におけるIV投与のために5×107個の細胞/mLの濃度において成長培地中で配合した。表6に示されるとおり、A群の動物はビヒクル対照を受容した一方、C群の動物はCD19 t-haNK(商標)細胞を受容した。
【0178】
動物を腫瘍細胞注射前及び週2回秤量した。動物を死亡/罹病(G0~G4)及び毒性の臨床的徴候(T1~T12;表6を参照されたい)について毎日観察した。麻痺又は瀕死動物を安楽死させた。動物をCO2吸入により安楽死させ、次いで頸椎脱臼を行った。死亡イベント(安楽死又は自然死)を死亡記録(Death Log)において記録し、集計して生存曲線を計算した。
【0179】
SC Rajiモデル:SC腫瘍移植後、動物を腫瘍樹立について少なくとも週2回試験した。腫瘍が触診可能になった時、腫瘍容積(TV)をデジタル携帯型測径器により週1回~2回計測し、この式:TV=長さ×幅2/2[長さは腫瘍の最大直径であり、幅は最短直径である]を使用して計算した。平均腫瘍容積が注射可能なサイズに達した時(この症例において195mm3;移植の24日後)、12匹の腫瘍担持動物を6匹の2つの群に偽無作為化して群間の類似の腫瘍容積を達成した。これを0日目と定義した。1、4、7、9、11、及び13日目、指数増殖期の成長させたCD19 t-haNK(商標)細胞を遠心分離により回収し、1000cGyガンマ線照射に供し、200μLの注射容量によるマウス当たり1×107個の細胞の用量におけるIV投与のために5×107個の細胞/mLの濃度において成長培地中で配合した。表6に示されるとおり、D群の動物はビヒクル溶液を受容した一方、F群の動物はCD19 t-haNK(商標)細胞を受容した。動物を腫瘍細胞注射前及び次いで週2回秤量した。
【0180】
動物を、死亡/罹病(G0~G4)及び毒性の臨床的徴候(T1~T12)について毎日観察した。麻痺又は瀕死動物を安楽死させた。瀕死動物をそれらが罹病を示したらすぐに安楽死させた一方、生存動物を組織回収のために予定安楽死に供した。具体的には、生存動物の半数(最大3匹のマウス/群)を、13日目に試験品投与の最後の投与の6時間後において安楽死させた。残りの動物を15日目に最後の投与の48時間後において安楽死させた。安楽死は、最終心臓内出血後に動物を深麻酔下に置きながら頸椎脱臼により実施した。血液/血清試料は、この試験の部分において分析せず、したがってこの報告には含めなかった。
【0181】
終了時、解剖を実施し、可視の肉眼的病変を有する器官を摘出し、10%のホルマリン中で固定し、腫瘍/転移性疾患負荷の組織学的評価のために提携病理学実験室(Seventh Wave Laboratories)に提出した。
【0182】
【0183】
実施例9:CD19 t-haNK(商標)試験についてのデータ分析
以下の式:腫瘍容積=長さ×幅2/2(長さ及び幅は、それぞれ腫瘍の最長及び最短直径である)を使用して腫瘍容積を計算した。
【0184】
腫瘍成長阻害(TGI)計算を以下のとおり行った:TGI=(TC-Tt)/ΔTC×100%(式中、Tc及びTtは、それぞれ試験終了時の対照及び処理群についての平均腫瘍容積であり、ΔTcは、対照群における平均腫瘍容積の変化である)。
【0185】
腫瘍成長曲線を、2元ANOVAとそれに続くテューキー検定による多重比較により分析した。生存曲線を、ログランク(マンテルコックス)検定により分析した。個々の日の肝転移性疾患負荷の差を、対応のない両側t検定により分析した。P<0.05を統計的に有意とみなす。全ての統計的分析は、GraphPad Prismバージョン7を使用して実施した。
【0186】
実施例10:CD19 t-haNK(商標)試験についてのIV Rajiモデル結果
IV腫瘍モデルにおける主なリードアウトは、動物生存期間であった。動物の死亡と見出された場合又は疾患関連罹病及び/若しくは麻痺に起因して動物を安楽性させた場合、死亡イベントを計数した。
図9に示されるとおり、ビヒクル対照と比較して、CD19 t-haNK(商標)細胞処理は、動物の生存率を有意に改善し得、ビヒクル対照群における21.5日間に対して27日間の中央生存期間をもたらした(P<0.0001)。動物体重変化も試験全体にわたりモニタリングした。
図10に示されるとおり、CD19 t-haNK(商標)処理動物は、処理を最初に開始した場合に中程度(10%未満)及び短期の体重損失を実証し、これはIV NK注入を受容した動物における希少な現象でなく、CD19 t-haNK(商標)細胞に特異的でない。これらの体重は、疾患進行に起因して再び減少する前に処理の第1週後に回復し得た。
【0187】
実施例11:CD19 t-haNK(商標)試験についてのSC Rajiモデル結果
SC腫瘍モデルにおける主なリードアウトは、腫瘍成長であった。
図11に示されるとおり、CD19 t-haNK(商標)細胞は、ビヒクル対照群と比較して7日目以降に明らかな且つ統計的に有意な腫瘍成長阻害を実証し、試験終了時(13日目)のTGIは49%であった。
【0188】
さらに、Rajiは侵襲性リンパ腫モデルであるため、SC接種した場合であっても、癌細胞は播種し得、複数の転移部位を発症し得、それは最終的に動物罹病及び/又は死亡をもたらした。ビヒクル群において、11日目~13日目に瀕死で、したがって安楽死させた合計3匹の動物(50%)が存在した。対照的に、CD19 t-haNK(商標)細胞群において予定外の死亡イベントは存在しなかった(表7)。
【0189】
さらに、肝転移の定性的低減が、解剖の間にCD19 t-haNK(商標)処理動物において観察された(
図12a)。疾患負荷の半定量的推定を、代表的にサンプリングされたHE染色肝切片について提携病理学研究室(Seventh Wave Laboratories)により実施した。
図12b及び表8にまとめられるとおり、試験が進行するにつれて疾患負荷の増加の明確な傾向が存在した。CD19 t-haNK(商標)処理動物の肝臓は、ビヒクル対照と比較して顕著に低い割合の癌浸潤面積を示した。少ない試料数及び対照群における予定外の早期の死亡に起因して、統計的分析を13日目のデータに対してのみ実施することができた。この分析は、疾患負荷の有意差を示し、対照群における浸潤が30%であるのに対してCD19 t-haNK(商標)処理動物における浸潤は平均10%であった。体重変化を試験全体にわたりモニタリングし、IV Rajiモデルと同様に、CD19 t-haNK(商標)処理動物は、中程度(10%未満)及び一過的な体重損失を治療レジメンの最初において実証した(
図13)。
【0190】
【0191】
【0192】
実施例12:CD19 t-haNK(商標)試験の結論
反復IV投与レジメンにおけるCD19 t-haNK(商標)細胞の抗腫瘍効力を評価するため、それぞれIV及びSC腫瘍接種を用いるRajiゼノグラフトモデルの2つのバリエーションをこの試験において利用した。IV腫瘍モデルにおいて、CD19 t-haNK(商標)細胞は、動物生存期間を有意に改善し得、ビヒクル対照群と比較して中央生存期間を5.5日間だけ延長させた(26%の増加)。SC腫瘍モデルにおいて、CD19 t-haNK(商標)細胞は、腫瘍成長を有意に抑制し得、試験終了時に49%のTGIをもたらした。さらに、CD19 t-haNK(商標)処理は、動物の罹病/死亡イベントの数を低減させ得(対照群における3匹/6匹に対してCD19 t-haNK(商標)処理動物における0匹/6匹)、SC Raji腫瘍担持動物の肝臓中の転移性疾患負荷を顕著に減少させ得た。まとめると、CD19 t-haNK(商標)細胞は、Rajiゼノグラフトモデルの両方のバリエーションにおいてビヒクル対照と比較して有意な治療効力を示した。
【0193】
本明細書における本発明の概念から逸脱することなく、既に記載のものに加えてさらに多くの改変が可能であることが当業者には明らかであるはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲以外では限定されるべきではない。さらに、本明細書及び特許請求の範囲の両方の解釈にあたり、全ての用語は、文脈に一致して最も広く考えられる様式で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、要素、構成成分、又はステップを非排他的に指すものとして解釈されるべきであり、参照される要素、構成成分、又はステップが存在し得、又はそれらを利用することができ、又は明示的に参照されていない他の要素、構成成分、若しくはステップと組み合わせることができることを示す。本明細書、特許請求の範囲がA、B、C...及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つを指す場合、その文章は、AとNでも、BとNなどでもなく、その群からの1つのみの要素を必要とするものとして解釈されるべきである。
【配列表】