(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】タンパク質のマクロ環化
(51)【国際特許分類】
C07K 1/107 20060101AFI20240722BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C07K1/107
C12N9/10 ZNA
(21)【出願番号】P 2020557254
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 NL2019050229
(87)【国際公開番号】W WO2019203645
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-17
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519191237
【氏名又は名称】スティヒティング ブイユー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,トム ノーバート
(72)【発明者】
【氏名】ペレイ ヒメーノ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ヘニッヒ,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ノイバッハー,サスキア アントニエ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-500831(JP,A)
【文献】特表2016-527180(JP,A)
【文献】Bioconjugate Chemistry,2012年,Vol.23,pp.1856-1863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性に対するポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせの安定性を増加させる方法であって、前記ポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせは、少なくとも2つの2次構造を有する天然の3次構造を示し、前記方法が、
-a)天然の3次構造におけるポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせ内で、C3対称コアを有する3価チオール反応性架橋剤と反応するための空間近接性を有する少なくとも2つの異なる2次構造に位置する3システイン残基を同定することと
-b)反応した架橋剤を含まないポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせの安定性と比較して、変性に対してポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせの天然の3次構造を安定化させる方法において、前記ポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせと3価チオール反応性架橋剤とを接触させることであって、前記架橋剤と前記3システイン残基の各々との共有結合を形成するように接触させることと、を含み、前記3システイン残基のαC原子は、辺の長さが6~23オングストロームの三角形を形成する、方法。
【請求項2】
工程a)において、前記3システイン残基の1つ以上がポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせに導入され、修飾されたポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせが作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせが少なくとも第4のシステイン残基を含み、且つ前記方法が第4のシステインと前記架橋剤との間の共有結合の形成をもたらさない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせが酵素であり、且つ前記第4のシステインが前記酵素の活性部位の一部である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋剤がC
3対称性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤が、式(I):
【化1】
を有し、
式中、
Qが、
【化2】
からなる群から選択されるコア構造であり、
Q中の各破線が、QがLに結合される部位を表し、
各Lが、
【化3】
からなる群から独立して選択されるリンカーであり、
ここで、
各Uが、CH
2及びCF
2から独立して選択され、
Vが、CH
2であり、
Wが、CF
2であり、
Xが、NR、NH、又はOであり、
ここで、Rが、フルオロフォア又はアフィニティーハンドルであり、
nが、2~8の範囲の整数であり、
mが、1~4の範囲の整数であり、
oが、2又は3であり、且つ
vが、2又は3であり、
L中の各破線が、LがQ又はEに結合される部位を表し、
各Eが、
【化4】
からなる群から独立して選択される求電子剤であり、
ここで、
各Xが、NH及びOから独立して選択され、
Yが、F、Cl、Br、Tos(O-SO
2-C
6H
4-CH
3)、及びMes(O-SO
2-CH
3)から選択され、
Zが、CH
2、NH-C(O)-CH
2、又はO-C(O)-CH
2であり、
E中の各破線が、EがLに結合される部位を表す、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋剤が、式(III):
【化5】
を有し、式中、nが1であるか又はnが2である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
変性に対して安定化されたポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせであって、
ポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせが、3システイン残基を含む少なくとも2つの2次構造を有する天然の3次構造を示し、前記3システイン残基が天然の3次構造におけるポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせ内で、C3対称コアを有する3価チオール反応性架橋剤と反応するための空間近接性を有する少なくとも2つの異なる2次構造に位置し、反応した架橋剤を含まないポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせの安定性と比較して、変性に対してポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせの天然の3次構造の安定化において、前記架橋剤と前記3システイン残基の各々との共有結合を形成しており、前記3システイン残基のαC原子は、辺の長さが6~23オングストロームの三角形を形成する、ポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせ。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SrtAのアミノ酸位置番号付けを基準にして、位置111、149、及び177にシステインによるアミノ酸置換を含むソルターゼAポリペプチドであって、好ましくは前記ポリペプチドが配列番号1を有する、ソルターゼAポリペプチドである、請求項8に記載の天然もしくは修飾されたポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせ。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、
下記の配列のアミノ酸位置番号付けを基準にして、位置594、599、及び646にシステインによるアミノ酸置換を含むKIXドメインポリペプチドであ
る、請求項8に記載の天然もしくは修飾されたポリペプチド又はポリペプチドの組み合わせ。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、タンパク質のマクロ環化のための方法及び3価チオール反応性架橋剤に関する。本発明は、タンパク質の安定性を増加させるのに役立つ。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酵素は、ほとんどのバイオテクノロジープロセス及びバイオメディカルプロセスの必須成分であるが[1、2]、多くの場合、所望の苛酷な条件(たとえば昇温又は変性剤の存在)下では安定性が限られるため、その適用範囲は制限される。そのため、タンパク質構造の安定化は、好適な酵素の開発の中心的側面である。タンパク質3次構造の相互作用の複雑性及び配列改変に対する酵素活性の感受性は、酵素安定化の取組みを困難にしている。最小限の侵襲的ストラテジーは、治療適用のバイオ安定性を増加させるために主に適用される共有結合タンパク質修飾(たとえばペグ化又はグリコシル化)の使用を含む[3、4]。代替的に、酵素安定化は、ダイレクト評価を適用するタンパク質配列の改変、コンセンサスベース突然変異誘発、又は非タンパク質原性アミノ酸の導入により補完可能な計算アプローチ[5、6、7、8]を介して達成可能である[9]。これらのアプローチは、改善されたタンパク質コア相互作用、構造剛性化、及び/又は表面電荷分布を目指し、多くの場合、妥当な安定化効果を達成するために複数の最適化ラウンドを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
タンパク質、とくに酵素の安定性を増加させる新しい方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
一態様では、本開示は、タンパク質の安定性を増加させる方法を提供する。タンパク質は少なくとも70アミノ酸を含み、前記方法は、
-a)3システイン残基を含むタンパク質を提供することと、
-b)前記タンパク質と3価チオール反応性架橋剤とを接触させることであって、前記架橋剤と3システイン残基の各々との共有結合を形成するように接触させることと、
を含む。好ましくは、工程a)は、3システイン残基の1つ以上を導入するようにタンパク質を改変することを含む。好ましくは、前記タンパク質は、少なくとも第4のシステイン残基を含み、且つ前記方法は、第4のシステインと架橋剤との間の共有結合の形成をもたらさない。好ましくは、タンパク質は酵素であり、且つ第4のシステインは酵素活性部位の一部である。好ましくは、架橋剤はC3対称性を有する。
【0005】
好ましくは、前記架橋剤は、式(I):
【化1】
を有し、
式中、
Qが、
【化2】
からなる群から選択されるコア構造であり、
Q中の各破線が、QがLに結合される部位を表し、
各Lが、
【化3】
からなる群から独立して選択されるリンカーであり、
ここで、
各Uが、CH
2及びCF
2から独立して選択され、
Vが、CH
2であり、
Wが、CF
2であり、
Xが、NR、NH、又はOであり、
ここで、Rが、フルオロフォア又はアフィニティーハンドルであり、
nが、2~8の範囲の整数であり、
mが、1~4の範囲の整数であり、
oが、2又は3であり、且つ
vが、2又は3であり、
L中の各破線が、LがQ又はEに結合される部位を表し、
各Eが、
【化4】
からなる群から独立して選択される求電子剤であり、
ここで、
各Xが、NH及びOから独立して選択され、
Yが、F、Cl、Br、Tos(O-SO
2-C
6H
4-CH
3)、及びMes(O-SO
2-CH
3)から選択され、
Zが、CH
2、NH-C(O)-CH
2、又はO-C(O)-CH
2であり、
E中の各破線が、EがLに結合される部位を表す。
【0006】
本開示は、本明細書に開示される方法により得られる安定化タンパク質をさらに提供する。好ましくは、タンパク質は、ソルターゼAポリペプチド又はKIXドメインポリペプチドである。
【0007】
本開示は、更に、式II:
【化5】
を有する3価チオール反応性架橋剤を提供し、
式中、
Qが、
【化6】
であり、
Q中の各破線が、QがLに結合される部位を表し、
各Lが、
【化7】
からなる群から独立して選択されるリンカーであり、
ここで、
各Uが、CH
2及びCF
2から独立して選択され、
Vが、CH
2であり、
Wが、CF
2であり、
Xが、NR、NH、又はOであり、
ここで、Rが、フルオロフォア又はアフィニティーハンドルであり、nが、2~8の範囲の整数であり、mが、1~4の範囲の整数であり、
oが、2又は3であり、且つ
vが、2又は3であり、
L中の各破線が、LがQ又はEに結合される部位を表し、
各Eが、
【化8】
からなる群から独立して選択される求電子剤であり、
ここで、
各Xが、NH及びOから独立して選択され、
Yが、F、Cl、Br、Tos(O-SO
2-C
6H
4-CH
3)、及びMes(O-SO
2-CH
3)から選択され、
Zが、CH
2、NH-C(O)-CH
2、又はO-C(O)-CH
2であり、
E中の各破線が、EがLに結合される部位を表す。
【0008】
好ましくは、
Lが、
【化9】
であり、
Uが、CH
2であり、好ましくはnが、2又は3であり、且つ
Eが、
【化10】
であり、
ここで、XがNHであり、且つYがF、Cl、又はBr、好ましくはClである。
【0009】
好ましくは、前記架橋剤が、式(III):
【化11】
であり、式中、nが1であるか又はnが2である。
【0010】
本開示は、チオール基と反応させるための、好ましくはタンパク質中に存在する3システイン残基を架橋するための、本明細書に開示される架橋剤の使用をさらに提供する。
【0011】
本開示は、少なくとも70アミノ酸を含み且つ少なくとも3システイン残基を含むタンパク質をさらに提供する。3システイン残基の各々は、3価チオール反応性架橋剤に共有結合される。好ましくは、3価チオール反応性架橋剤は、本明細書に開示される架橋剤である。
【0012】
本開示は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SrtAのアミノ酸位置番号付けを基準にして位置111、149、及び177にシステインによるアミノ酸置換を含むソルターゼAポリペプチドをさらに提供する。好ましくは、ポリペプチドは配列番号1を有する。
【0013】
本開示は、
図13bのアミノ酸位置番号付けを基準にして位置594、599、及び646にシステインによるアミノ酸置換を含むKIXドメインポリペプチドをさらに提供する。好ましくは、ポリペプチドは
図13cに表される配列を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
【
図1a】モジュラービス又はトリス求電子架橋を用いた安定化タンパク質3次構造へのマクロ環化ストラテジー。
【
図1b】アクセス可能なシステインの架橋のために考慮された求電子剤(マレイミド1、2-ブロモアセトアミド2、2-クロロアセトアミド3、アクリルアミド4)。
【
図2a】環状酵素の生成に使用されるビス求電子剤(b1~b6)。
【
図2b】ハイライトされたシステイン変異位置を有するSrtAのNMR構造(PDB:1ija)。システイン対(同一色)及びそれらの位置が示される。
【
図2c】線状及び架橋SrtA変異体(75μM)のTm値のヒートマップ表示(2c及び2eの緩衝液:20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、3eでは0.01% Tweenを含む)。
【
図2d】SrtA媒介ペプチド転移反応の機序(認識モチーフ:LPETG)。
【
図2e】65℃における線状及び架橋SrtA変異体の酵素活性(野生型SrtAと比べたvr)のヒートマップ表示(10μM酵素、10μM蛍光プローブ)(2c及び2eの緩衝液:20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、3eでは0.01% Tweenを含む)。
【
図3a】ハイライトされたS7にシステイン変異位置を有するSrtAのNMR構造(PDB:1ija)。
【
図3b】トリス求電子剤t1の化学構造及びt1と共にインキュベートした後のタンパク質バンドを示すクーマシー染色SDS-PAGEゲル(50μM S7、1mM t1、50mM HEPES、pH8.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP)。
【
図3c】Tm値を含むSrtA、S4-b3、及びS7-t1の融解曲線(3c及び3dの緩衝液:20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、dでは0.01% Tweenを含む)。
【
図3d】65℃における酵素活性によるプローブ切断の蛍光リードアウト(10μM酵素、10μM蛍光プローブ)(3c及び3dの緩衝液:20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、dでは0.01% Tweenを含む)。
【
図4a】酵素不在下(ライトグレー)、SrtA使用時(ダークグレー)、又はS7-t1使用時(レッド)における蛍光プローブ(●)を用いたペプチド転移反応(65℃で12h)のHPLCクロマトグラム(440nm)。産物形成(▲、■)は、S7-t1(50μM酵素、10μMプローブ、2.5mM GGG)の存在下でのみ観測された。
【
図4b】酵素活性の温度依存性(37℃のSrtAと比べたvr)(10μM酵素、10μMプローブ、2.5mM GGG、緩衝液:20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、0.01% Tween)。値はトリプリケートの平均値である(±1σ、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、ns:有意でない)。
【
図4c】各種濃度のGdnHClに対する37℃における相対酵素活性(GdnHCl不在下のSrtAと比べたvr)(条件及びデータ処理については3bを参照されたい)。
【
図4d】フィブリル形成前(A)並びにGdnHCl(1M)不在下(B)及び存在下(C)での再可溶化後における可溶性α-Syn画分を示すクーマシー染色SDS-PAGEゲル。
【
図4e】フィブリル形成前A(GdnHCl不使用)並びにSrtA又はS7-t1のどちらかの使用時の再可溶化後B(GdnHCl不使用)及びC(1M GdnHCl)における可溶性画分を用いたαsyn標識化の蛍光リードアウト(λem=520nm)。
【
図5】ビス求電子架橋剤の化学構造及び3D ChemDrawを用いて計算されたその長さ。
【
図6a】本研究でクローニング、発現、及び評価されたSrtAのアミノ酸配列。
【
図6b】StrA変異体のリスト(対応色コードでハイライト(
図2b参照))及びNMR構造(PDBコード:1ija)のCα原子間の測定距離。
【
図7a】SrtA酵素活性アッセイの模式図。蛍光プローブの化学構造、HPLCクロマトグラム(10minにわたるリニアグラジエント30%~70%ACN、210nm)、及びMSスペクトル。
【
図7b】37℃(実線)及び65℃(破線)におけるSrtA加水分解活性アッセイのプロット。
【
図8a】HPLC結合高分解能質量分析によるS7及びS7-t1の4システインの修飾状態の解析。以下のトリプシン断片のスペクトルが示される。aa100~134(C111を含む)。遊離システイン残基又はC4H4ON(グレー)修飾体は、MS処理前の酵素(S7又はS7-t1)の遊離システインを表し、一方、C2H2O(レッド)修飾システインは、t1との共有結合修飾を表す。
【
図8b】HPLC結合高分解能質量分析によるS7及びS7-t1の4システインの修飾状態の解析。以下のトリプシン断片のスペクトルが示される。138~151(C149を含む)。遊離システイン残基又はC4H4ON(グレー)修飾体は、MS処理前の酵素(S7又はS7-t1)の遊離システインを表し、一方、C2H2O(レッド)修飾システインは、t1との共有結合修飾を表す。
【
図8c】HPLC結合高分解能質量分析によるS7及びS7-t1の4システインの修飾状態の解析。以下のトリプシン断片のスペクトルが示される。176~190(C177及び活性部位C184を含む)。遊離システイン残基又はC4H4ON(グレー)修飾体は、MS処理前の酵素(S7又はS7-t1)の遊離システインを表し、一方、C2H2O(レッド)修飾システインは、t1との共有結合修飾を表す。
【
図9a】配列番号2:C末端フレキシブルリンカー(ボールド)とSrtA認識モチーフ(グレー)とアフィニティー精製用His6タグ(アンダーライン)とを含むα-シヌクレイン(α-Syn)配列。
【
図9b】蛍光プローブGGGK-FITCの化学構造及びHPLC/MS解析。クロマトグラム(λ=210nm)及びMSスペクトルが示される。
【
図10a】フィブリル形成及びGdnHClによる再可溶化のスキーム(A:フィブリル形成前の精製α-Syn、B:GdnHCl不在下での再可溶化の試行-不溶性α-Synフィブリル、C:GdnHCl(1M)処理後の再可溶化α-シヌクレイン)。
【
図10b】
図4d及び4eに示される全SDS-PAGEゲル(17%SDS)のクーマシー染色(I)及び蛍光リードアウト(II)。
【
図11】熱変性の前及び後のStrA(グレー)及び二環式S7-t1(レッド)のトランスペプチダーゼ活性。未処理タンパク質(StrA及びS7-t1)並びに加熱/冷却サイクルに付されたサンプル(StrA#及びS7-t1#、30minにわたる室温から85℃への加熱及び15minにわたる室温への冷却)が比較される。酵素なしのサンプルを含めた(-)。統計的有意性は、対応のないt検定により評価した(n=3、ns:有意でないp>0.05)。
【
図12a】ハイライトされたK1にシステイン変異位置を有するKIXのNMR構造(PDB:2agh)。二次構造エレメントが命名されている。
【
図12b】Tm値を含むKIX、K1-t1、及びK1-t2の融解曲線。
【
図13a】本研究でサブクローニング、発現、及び評価されたKIXwtのアミノ酸配列。
【
図13b】本研究でサブクローニング、発現、及び評価されたKIX変異体K1のアミノ酸配列。突然変異は緑色でハイライトされる。
【
図13c】KIX NMR構造(PDBコード:2agh)の20コンフォーマーにわたる下線付きアミノ酸位置のCα原子間の平均距離。
【
図13d】S7変異体のシステイン位置。SrtA NMR構造(PDBコード:1ija)の25コンフォーマーにわたる下線付きアミノ酸位置のCα原子間の平均距離。
【
図14a】MLLペプチドの化学構造、HPLCクロマトグラム(10min(3~13min)にわたるリニアグラジエント40%~80%ACN、λ=210nm)、及びMSスペクトル。
【
図14b】KIXwt並びに架橋形態K1-t1及びK1-t2のFPアッセイ。対応するKd値が示される。
【
図15a】t2と共にインキュベートした後のタンパク質バンドを示すクーマシー染色SDS-PAGEゲル(50μM S7、1mM t2、50mM HEPES、pH8.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP)。
【
図15b】S7-t2のm/z値の計算値及び実測値の表。
【
図15d】明白なTm値を含むSrtA及びS7-t2の融解曲線。
【
図15e】65℃における酵素加水分解活性によるプローブ切断の蛍光リードアウト(10μM酵素、10μM蛍光プローブ)。実験d及びeに使用した緩衝液:20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、e)では0.01% Tween20を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態の詳細な説明
変性剤及び昇温に対して酵素の安定化を増加させることもまた、分子内架橋の導入により研究されてきた。追加のジスルフィドブリッジの組込み又は非酵素タンパク質ドメインで最近報告されている還元性環境に非感受性のジスルフィドミミックの導入[10]に関する報告が存在する。そのほか、3次構造でN及びC末端の好適な空間アライメントを必要とするラクタム形成を介するタンパク質末端の架橋が適用されている[11~13]。
【0016】
これらの構造上の前提条件を低減するために、適切にアライメントされたシステイン側鎖との架橋を可能にするように非天然求電子アミノ酸の取込みが探究された[14]。しかしながら、こうした非天然アミノ酸を導入するためのアンバー停止コドン抑制の使用は、タンパク質発現を複雑化する。そのほか、こうした修飾アミノ酸の取込みは、労力がかかるうえにすべての非天然アミノ酸で成功するとは限らない適合化tRNAシンテターゼを必要とするので、リンカーライブラリーのスクリーニングは制限される[15]。したがって、非天然アミノ酸の使用に依拠する架橋アプローチは、いくつかの欠点を抱える。
【0017】
本開示は、非天然アミノ酸の使用に依拠しない架橋タンパク質の生成方法を提供する。タンパク質は、たとえば、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、抗体、レセプター、抗原など、いずれかの機能を有しうる。いくつかの実施形態では、タンパク質は酵素である。当業者には自明のことながら、本明細書に記載の架橋タンパク質は、1ポリペプチド又はペプチド鎖超で構成されたタンパク質を含む。たとえば、抗体は、本開示の模範的タンパク質であり、IgG抗体は、4ペプチド鎖で構成される。レセプターもまた、本開示の模範的タンパク質であり、多くのタンパク質は、たとえばヘテロ又はホモダイマーで構成される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド/ペプチド鎖間で架橋が形成されるように、異なるポリペプチド又はペプチド鎖にシステイン残基が存在する。たとえば、本開示は、ヘテロダイマーレセプターの安定性を増加させる方法を企図する。本明細書で企図される多くの実施形態の一例として、レセプターが3価チオール反応性架橋剤に接触したときに架橋剤が3システイン残基の各々との共有結合をダイマー間で形成するように、一方のレセプターサブユニットに1システイン残基及び他方のレセプターサブユニットに2システイン残基を有するヘテロダイマーレセプターが提供される。
【0018】
特定的には、本方法は、架橋試薬を用いてタンパク質の安定性を改善する。当業者には明らかであるが、安定性の増加とは、架橋なしのタンパク質の安定性と比較した架橋タンパク質の安定性の増加を意味する。本明細書で用いられる「増加した安定性」という用語は、変性に対する耐性の増加又は感受性の減少を意味する。変性とは、2次又は3次構造の損失を意味し、ほとんどのタンパク質の生物学的機能とくに酵素活性は、変性時、低減又は消失される。変性は、機械的撹拌、照射、温度上昇の結果として又は化学変性剤により発生可能である。いくつかの実施形態では、改善された安定性とは、架橋なしのタンパク質と比べて架橋時のより高いフォールドタンパク質対アンフォールドタンパク質比の存在を意味する。改善された安定性は、温度、界面活性剤、変性剤、pHなどのさまざまな条件下で存在するフォールドタンパク質の量を調べることにより決定可能である。好ましい実施形態では、本方法は、熱安定性及び/又は化学変性剤に対する安定性を改善する。
【0019】
いくつかの実施形態では、タンパク質の安定性は、Tmを測定することにより決定可能である。「Tm」という用語は、タンパク質の50%がアンフォールドした温度を意味する。典型的には、Tmが高いほどタンパク質は安定である。いくつかの実施形態では、本方法は、タンパク質のTmを増加させるためのものである。いくつかの実施形態では、タンパク質の安定性は、タンパク質に及ぼす化学剤の影響を測定することにより決定可能である。化学変性剤とは、タンパク質内の非共有結合相互作用及び共有結合を破壊可能な作用剤のことである。模範的化学変性剤としては、グアニジニウムヒドロクロライド、グアナジニウムチオシアネート、ウレア、アセトン、有機溶媒、塩、還元剤(たとえば、ジチオトレイトール、β-メルカプトエタノール、ジニトロチオベンゼン)、界面活性剤、及び酸が挙げられる。プロテアーゼなどの生物学的作用剤もまた、変性剤として作用しうる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、
-a)本明細書に開示される3システイン残基を含むタンパク質(I)を提供することと、
-b)前記タンパク質と本明細書に開示される3価チオール反応性架橋剤とを接触させることであって、架橋剤と3システイン残基の各々との共有結合を形成し架橋タンパク質(II)をもたらすように接触させることと、
を含み、架橋タンパク質(II)は、架橋欠如タンパク質(I)と比較して増加したTm及び/又は変性に対する増加した耐性を有する。
【0021】
本明細書に開示される方法は、3システイン残基を含むタンパク質を提供することを含む。タンパク質は、3価チオール反応性架橋剤と接触して架橋剤と3システイン残基の各々との共有結合を形成する。実施例に記載されるように、ビ環化は、モノ環化と比較してタンパク質3次構造のより強い安定化をもたらすとともに、依然としてタンパク質の機能を保持する。いくつかの実施形態では、架橋される3システイン残基はタンパク質に内在する。しかしながら、ほとんどのタンパク質では、3システイン残基の1つ以上はタンパク質に導入されるであろう。システイン残基の導入は、当業者に公知のいずれかの方法により、たとえば、修飾タンパク質を化学合成することにより又は組換えDNA技術を用いて1つ以上のシステインを導入することにより達成しうる。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、当技術分野で周知の技術により発現ベクターにクローニングして細胞培養で発現させることが可能である。また、本開示が本明細書に記載の結合の1つ超を有するタンパク質を包含することは明らかである。たとえば、システイン残基の3つが架橋可能であるとともに他の3システイン残基が架橋可能である6システイン残基を有するタンパク質を提供しうる。かかる実施形態では、架橋剤は、3システイン残基の各セットに対して同一でありうるか又は異なりうる。
【0022】
ショートペプチドは、一般に、その天然コンフォメーションを保持しない。事実上、多くのペプチドはきわめてフレキシブルである。そのため、ショートペプチドを特定コンフォメーションに拘束して骨格フレキシビリティーを低減する手段として、ペプチドステープリング技術が開発されてきた(たとえば、Lau et al. 2015 Chem Soc Rev 44:91-102にレビューされている)。ショート線状ペプチドを拘束して新規な活性を有する新たな構造を採用することは、薬剤発見にも有用である。たとえば、Bashiruddin et al. (2015 Bioorganic Chemistry 61: 45-50)には、融合三環状ペプチドをリボソーム合成する方法が記載されている。この技術は、新たな構造を有するペプチドのライブラリーを作成するために使用され、次いで、たとえば、とくに新たな機能を同定するためにバイオ活性のスクリーニングに使用可能である。この方法では、N末端のClAc基と、第2の位置の1Cys残基と、任意に離間した下流のさらなる3Cys残基と、を有するペプチドが翻訳され、続いてTBMBが添加される。Bashiruddinらは、40アミノ酸未満の長さを有するショートペプチドを試験しているにすぎない。
【0023】
また、Chen et al. (2012 ChemBioChem 13: 1032-1038)は、高親和性リガンドのスクリーニングのためのペプチドライブラリーに関する。17アミノ酸ペプチドをTCEPで完全に還元し、アセトニトリル(有機溶媒)に溶解されたさまざまなリンカー化合物と共にインキュベートした。著者らは、さまざまなリンカーとランダムペプチドライブラリーとの組合せが構造的にきわめて多様なマクロ環状タンパク質のライブラリーを作成するストラテジーでありうると結論付けている。
【0024】
特定2次構造又はループコンフォメーションのショートアミノ酸鎖を構造的に強化するペプチドステープリングとは異なり、本開示の方法は、タンパク質3次構造の安定性を改善する。本開示は、少なくとも70アミノ酸を有するタンパク質に関する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、少なくとも80アミノ酸さらには少なくとも100アミノ酸を有する。ペプチドの単純構造とは異なり、タンパク質の複数の2次構造は、フォールドしてより複雑な3次元構造を形成する。好ましくは、本方法は、少なくとも2つの識別可能な2次構造を有するタンパク質に関する。好ましくは、本方法で提供されるタンパク質は、フォールドタンパク質、より正確には架橋前に変性されていないタンパク質である。本明細書に説明されるように、本開示の目的の1つは、タンパク質の「天然」フォールディング又は構造を安定化させる方法を提供することである。好ましい実施形態では、本方法は、非架橋タンパク質と比較してタンパク質の(天然)3次構造の安定性を増加させる。
【0025】
本明細書で用いられる場合、タンパク質の「2次構造」は、骨格アミノ基とカルボキシル基との間の水素結合のパターンにより定義される。αヘリックス、βシート、βターン、及びωループは、タンパク質の模範的2次構造である。本明細書で用いられる場合、「3次構造」とは、タンパク質の3次元形状を意味する。
【0026】
タンパク質構造予測技術は当技術分野で周知であり、相同性モデリング及びスレッディングのほか、ニューラルネットワーク、隠れマルコフモデル、及びサポートベクトルマシンを利用するより先進的な方法を含む。そのほか、タンパク質の3次構造は、X線結晶解析や核磁気共鳴(NMR)研究などの公知の方法により決定可能である。Rosettaソフトウェアなどのパブリックに利用可能なソフトウェアもまた、タンパク質構造予測及び新たな構造の設計に使用可能である。Voet, Pratt, Voet: Principles of Biochemistry, 2017 Chapter 6 Proteins: Three-Dimensional Structure for a review on protein folding and secondary structure; structure prediction and determining protein structureを参照されたい。
【0027】
好ましくは、架橋用の3システインは、少なくとも2つの識別可能な2次構造に位置する。たとえば、第1のシステインは、第1のαヘリックスに位置しうるとともに、第2のシステインは、第2のαヘリックスに位置しうる。第3のシステインは、第1若しくは第2のαヘリックスのどちらか又はさらなる2次構造に位置しうる。かかる方法は、架橋が少なくとも2つの2次構造間の安定性を増加させるという利点を有する。より好ましくは、架橋用の3システインは、少なくとも3つの識別可能な2次構造に位置する。
【0028】
3システイン残基は、好適には、本明細書に開示される架橋剤と3システイン残基の各々との共有結合を形成可能なようにタンパク質内に位置する。好ましくは、システイン残基は、1次アミノ酸配列で少なくとも3アミノ酸分離されるとともに依然として空間近接する。好ましくは、3システイン残基のαC原子は、辺の長さが6~23オングストロームの三角形を形成する。好ましくは、システインは、タンパク質の同一側を向いている。
【0029】
架橋用のタンパク質に1システイン残基以上を導入するとき、ペプチドステープリングの当技術分野で公知の設計原理を考慮しうる。たとえば、αヘリックスの同一面上に位置するペプチドのアミノ酸残基を共有結合で連結又は「ステープル」可能であることは公知である。かかる残基の間隔は、一般に、i,i+4、i+7、i+11、i+12、i+14、及びi+15である。βシートの安定性を促進するために、ステープルされる残基の間隔は、一般に、i、i,i+2、i+4、i+6、i+8、i+10などである。ステープルは、剛性を付与してペプチドの所望の2次構造を強化する。
【0030】
3システイン残基の好ましい位置は、埋込み位置でもコア位置でもないことが好ましい。本明細書で用いられる「埋込み位置」とは、タンパク質の内側の位置及び/又は溶媒にアクセス不能若しくはほぼアクセス不能な位置を意味する。タンパク質のアクセス可能表面積は、いくつかの異なる予測方法により決定可能である(たとえば、Zheng, et al., Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics. 2004;57:558-564、及びFaraggi et al., Proteins. 2014 Nov; 82(11): 3170-3176を参照されたい)。好ましくは、3システイン残基は、3次構造の表面上に位置し、且つ結合(たとえば、リガンド結合、基質認識)に関与しない。
【0031】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、本方法の結果として架橋されない少なくとも第4のシステイン残基を含む。かかる方法は、タンパク質がたとえば結合ドメイン又は酵素活性部位に生物的役割を有するシステイン残基を含むときにとくに有用である。実施例に記載されるように、修飾SrtAポリペプチドへの本方法の適用は、驚くべきことに、組換え導入された3システイン残基の架橋をもたらしたが、酵素活性にきわめて重要な内因性システイン残基を架橋しなかった。
【0032】
本明細書に開示される方法の利点の1つは、架橋が天然に存在しないアミノ酸に依拠しないことである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、天然に存在しないアミノ酸を含まない。「天然に存在しないアミノ酸」という用語は、その側鎖機能性が天然に存在するアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む。天然に存在するアミノ酸は、20共通アミノ酸、すなわち、アラニン、アルギニン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、セリン、トレオニン、ヒスチジン、リシン、メチオニン、プロリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、さらにはピロリシン及びセレノシスチンを含む。
【0033】
非内因性システイン残基がタンパク質に導入される実施形態では、修飾の効果は、たとえば生物学的活性アッセイで決定可能である。たとえば、タンパク質が酵素である場合、1システイン以上が導入されたタンパク質の酵素活性を測定可能である。酵素活性のいくらの損失は許容可能であるが、酵素活性を顕著に低減する修飾は回避されるべきである。たとえば、結合性(たとえば親和性及び特異性)やタンパク質活性(たとえば下流のシグナリング)などの効果を決定するために、類似のアッセイを実施可能である。タンパク質の生物学的活性を測定するin vitroスクリーニング法は周知である。
【0034】
本開示は、本明細書に開示されるように、タンパク質安定性を増加させるための3価チオール反応性架橋剤に関する。本明細書で用いられる場合、「架橋剤」という用語は、1つ以上の共有結合により分子たとえばタンパク質を化学結合可能な試薬を意味する。架橋試薬は「3価チオール反応性」である。すなわち、スルフヒドリル基たとえばシステインのチオール側鎖に装着可能な3つの反応性末端を含有する。好ましくは、架橋剤のチオール反応性末端は求電子剤を含む。好ましくは、架橋剤はホモ3官能性であり、より正確には各チオール反応性末端は同一官能基を有する。好ましくは、架橋剤はC3対称コアを有する。これには、(トリ)架橋タンパク質の一形態のみが形成されるという利点がある。3価チオール反応性架橋剤は当技術分野で公知である(たとえば26~29を参照されたい)。しかしながら、かかる架橋剤が、タンパク質の機能(とくに結合活性又は酵素機能)を維持しつつ、少なくとも70アミノ酸を有するタンパク質の安定性を増加可能であることは報告されていなかった。
【0035】
いくつかの実施形態では、3価チオール反応性架橋剤は、フルオロフォア又はアフィニティーハンドルを含む。好適なフルオロフォアは当技術分野で周知であり、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、AMCA、Marina Blue色素、及びCascade Blue色素(Invitrogenから入手可能)を含む。アフィニティーハンドルとは、検出及び/又は精製に使用可能な分子を意味する。好適なアフィニティーハンドルは当技術分野で公知であり、抗体、2本鎖DNA配列、修飾核酸、及び核酸ミミック、たとえば、ペプチド核酸、ロックド核酸、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、リガンド、レセプター、ペプチド、又はコグネイト結合剤を容易に入手可能な低分子を含みうる。好適なアフィニティータグは、ペプチド「タグ」、たとえば、ポリヒスチジン、カルモジュリン、Sタグ、SBPタグ、Strepタグ、V5、FLAG、HA、及びMycタグである。他の好適なアフィニティータグは当技術分野で周知である。
【0036】
架橋反応は、当技術分野で公知の条件下で行われる。たとえば、Mattson et al. Molecular Biology Reports 1993, Volume 17:pp 167-183、Paramelle et al. Proteomics 2013 13:438-456を参照されたい。一般的には、反応は、pH6~8及び4~40℃の温度で行われる。任意選択的に、架橋反応の効率及び/又は特異性は、MSを用いて決定可能である。本明細書にさらに記載されるように、本開示の目的の1つは、タンパク質の「天然」フォールディング又は構造を安定化させる方法を提供することである。好ましくは、反応は、タンパク質の3次構造を破壊しない条件下で行われる。いくつかの架橋剤は、溶解のために有機溶媒を必要とする。有機溶媒の存在は、タンパク質の変性をもたらしうる。好ましい実施形態では、反応は有機溶媒を用いることなく行われる。好ましい架橋剤は、溶解用有機溶媒を必要としないものである。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、架橋タンパク質の安定性を決定することをさらに含む。たとえば、本明細書に記載されるように熱安定性及び/又は化学的安定性を決定し、架橋されていないタンパク質と比較可能である。架橋の生物学的活性もまた決定可能である。
【0038】
本開示は、式(I):
【化12】
を有する架橋剤をさらに提供する。
式中、
Qは、
【化13】
からなる群から選択されるコア構造であり、
Q中の各破線は、QがLに結合される部位を表し、各Lは、
【化14】
からなる群から独立して選択されるリンカーであり、
各Uは、CH
2及びCF
2から独立して選択され、
Vは、CH
2であり、
Wは、CF
2であり、
Xは、NR、NH、又はOであり、
ここで、Rは、フルオロフォア又はアフィニティーハンドルであり、
nは、2~8の範囲の整数であり、
mは、1~4の範囲の整数であり、
oは、2又は3であり、且つ
vは、2又は3であり、
L中の各破線は、LがQ又はEに結合される部位を表し、各Eは、
【化15】
からなる群から独立して選択される求電子剤であり、
各Xは、NH及びOから独立して選択され、
Yは、F、Cl、Br、Tos(O-SO
2-C
6H
4-CH
3)、及びMes(O-SO
2-CH
3)から選択され、
Zは、CH
2、NH-C(O)-CH
2、又はO-C(O)-CH
2であり、
E中の各破線は、EがLに結合される部位を表す。
【0039】
好ましくは、Lは、
【化16】
であり、Uは、CH
2であり、好ましくはnは、2又は3であり、及び/又は
Eは、
【化17】
であり、好ましくはXは、NHであり、且つYは、F、Cl、又はBr、好ましくはClである。
【0040】
理論により拘束されることを望むものではないが、非親水性コア(すなわちQ)を有する3価架橋剤は、タンパク質の架橋に、より適すると考えられる。トリス求電子剤を利用する公知のペプチドステープリング技術では、芳香族コアを有する架橋剤が一般に使用される。こうした場合には、コア構造は、疎水性コアとして機能し、それに近接して非極性アミノ酸側鎖をアライメントする。しかしながら、好ましい本方法では、非芳香族架橋剤がタンパク質の表面上に位置するであろう。好ましくは、Qは、
【化18】
である。
【0041】
本開示は、式II:
【化19】
を有する架橋剤をさらに提供する。
式中、
Qは、
【化20】
であり、
Q中の各破線は、QがLに結合される部位を表し、各Lは、
【化21】
からなる群から独立して選択されるリンカーであり、
各Uは、CH
2及びCF
2から独立して選択され、
Vは、CH
2であり、
Wは、CF
2であり、
Xは、NR、NH、又はOであり、
ここで、Rは、フルオロフォア又はアフィニティーハンドルであり、nは、2~8の範囲の整数であり、mは、1~4の範囲の整数であり、
oは、2又は3であり、且つ
vは、2又は3であり、
L中の各破線は、LがQ又はEに結合される部位を表し、各Eは、
【化22】
からなる群から独立して選択される求電子剤であり、
各Xは、NH及びOから独立して選択され、
Yは、F、Cl、Br、Tos(O-SO
2-C
6H
4-CH
3)、及びMes(O-SO
2-CH
3)から選択され、
Zは、CH
2、NH-C(O)-CH
2、又はO-C(O)-CH
2であり、
E中の各破線は、EがLに結合される部位を表す。
【0042】
好ましくは、Lは、
【化23】
であり、Uは、CH
2であり、好ましくはnは、2又は3であり、及び/又は
Eは、
【化24】
であり、好ましくはXは、NHであり、且つYは、F、Cl、又はBr、好ましくはClである。
【0043】
好ましい実施形態では、架橋剤は、式III:
【化25】
である。式中、nは1であるか又はnは2である。実施例で実証されるように、かかる架橋剤は、溶解用有機溶媒を必要としない。
【0044】
上記の架橋剤は、チオール基との反応にとくに有用である。したがって、それらはシステイン残基を架橋するために使用可能であるとともに、たとえば本明細書に記載の方法で3価チオール反応性架橋剤として使用可能である。
【0045】
本開示は、本明細書に開示される方法により得られる安定化タンパク質をさらに提供する。一実施形態では、本開示は、(たとえば少なくとも70アミノ酸を含み且つ少なくとも3システイン残基を含む本明細書に開示される)タンパク質を提供する。3システイン残基の各々は、3価チオール反応性架橋剤に共有結合される。好ましくは、タンパク質は、(I)、(II)、又は(III)の式を有する架橋剤により架橋される。模範的実施形態では、タンパク質は、ソルターゼA(SrtA)ポリペプチドである。好ましくは、SrtAは、式(III)で架橋される。
【0046】
SrtAは、原核生物酵素のソルターゼファミリーに属するトランスペプチダーゼである。それは、タンパク質の特異的標識化を可能にする重要なバイオ分子ツールである[16~18]。しかしながら、より高い温度又は変性剤が必要とされるとき、標識化効率は劇的に低下し、この酵素の適用性を制限する。実施例に記載されるように、本開示は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SrtAのアミノ酸位置番号付けを基準にして位置111、149、及び177にシステインを有するSrtAポリペプチドの生成を記述する。この修飾タンパク質を3価チオール反応性架橋剤で架橋すると、融解温度が11.2℃上昇するとともにグアニジニウムヒドロクロライドに対する耐性が増加することから、安定性の増加が示唆される。好ましい実施形態では、SrtAポリペプチドは、アミノ酸配列:
GSHMQAKPQIPKDKSKVAGYIEIPDADIKEPVYPGPATPEQLNRGVSFAEENESLDDQNISIAGHTFIDRPNYQFTNLKAAKKGSMVYFKVGNETRKYKMTSIRDVKPTDVGVLDEQKGKDKQLTLITCDDYNEKTGVWEKRKIFVATEV(配列番号1)
を有する。
【0047】
実施例に記載されるように、本明細書に開示される架橋SrtAは、野生型(非架橋)SrtAが十分な活性を提供しない条件下でタンパク質標識実験に使用可能である。本開示は、好ましくはグアニジニウムヒドロクロライドなどの化学変性剤の存在下でタンパク質/細胞を標識するための本明細書に開示される架橋SrtAの使用をさらに提供する。
【0048】
模範的実施形態では、タンパク質はKIXドメインポリペプチドである。好ましくは、KIXドメインは、式(III)又は式(IV)で架橋される。本開示は、3価チオール反応性架橋剤に共有結合される3システイン残基を含むKIXドメインポリペプチドを提供する。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「to comprise(~を含む)」とは、その非限定的な意味で用いられ、その単語に続くアイテムを含むが特定的に挙げられていないアイテムを除外するものではないことを意味する。そのほか、動詞の「to consist(~からなる)」は、「to consist essentially of(~から本質的になる)」で置き換えうる。つまり、本明細書に定義される化合物又は補助化合物は、本発明のユニークな特徴を変化させない追加の成分であれば特定的に明記された以外の追加の成分を含みうる。
【0050】
冠詞の「a(1つの)」及び「an(1つの)」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味するものとして用いられる。例として、「an element(エレメント)」は、1つのエレメント又は1超のエレメントを意味する。
【0051】
数値との関連で用いられるときの「approximately(約)」又は「about(約)」という語(approximately 10(約10)、about 10(約10))は、好ましくは、10という所与の値がそれよりも1%大きい又は小さい値でありうることを意味する。
【0052】
以下の実施例で本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明を明確化する役割を果たすにすぎない。
【実施例】
【0053】
実施例
実施例1
ここで、我々は、完全にタンパク質原性アミノ酸で構成されたタンパク質の翻訳後修飾を介する酵素の安定化のための構造ベースストラテジーを報告する。アクセス可能システイン残基対を提示する酵素変異体セットをステープルするためにビス求電子剤のライブラリーを使用した(
図1a)。得られる単環状タンパク質の安定化挙動に基づいて、熱変性及び化学変性に対する大幅に増加した耐性を示す二環状酵素を設計した。
【0054】
我々は、我々の安定化努力目標として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ソルターゼA(SrtA、aa60~206)を選択した。SrtAを安定化させるために、我々は、ペプチドを拘束するために以前に適用された[19~23]且つシステイン残基対を標的とするビス求電子剤の使用を含む架橋ストラテジーを考慮した。SrtAは、その活性にきわめて重要な活性部位に位置する単一システインを含有する。最初に、我々は、活性部位システインと反応しない官能基を探求するために溶媒露出システインの共有結合修飾に以前に使用した4つの求電子剤(1~4、
図1b)を試験した。2-クロロアセトアミド(3)及びアクリルアミド(4)ではなく2つの最も反応性の求電子剤マレイミド(1)及び2-ブロモアセトアミド(2)と共にインキュベートしたとき、調製スケールのタンパク質修飾に好適な条件は、このきわめて重要なシステインの実質的な修飾をもたらした。チオールはアクリルアミドへの可逆的付加を示す傾向があるので、我々は、求電子剤として2-クロロアセトアミドを選択し、広範にわたる距離(21Åまで、
図5)を生じる8~17ブリッジング原子を有するビス求電子リンカーセット(b1~b6、
図2a)を設計した。
【0055】
次いで、3次構造全体の安定化を目指して、システイン対をSrtAに導入するのに好適な位置を選択した。我々は、(i)基質認識に関与しない表面残基を考慮し、(ii)2つの異なる二次構造エレメントに位置するとともに(iii)依然として空間近接(NMR構造PDB:1ijaに基づいて距離<20Å)する対を選択した。これらの基準に基づいて、6つのSrtA変異体(S1~S6、
図2b、
図6)を設計し、E.コリ(E. coli)で異種発現させ、そして精製した。続いて、すべてのビス求電子剤とのステープリング反応を実施し、各種変換度を示した。MS及びSDS-PAGEにより環化物の形成を確認した。我々は、S1、S3、S4、及びS6では、すべての架橋で高変換率を観測したが、S5では、最短架橋(b1)で低効率を示した。S2では、すべての架橋剤で低収率が観測された。反応後、タンパク質サンプルを透析し、未反応ビス求電子剤を除去した。
【0056】
最初に、トリプトファン蛍光の変化を介して、(透析後に得られた)すべての非修飾変異体及び架橋変異体の融解温度(Tm)を決定した(
図2c)。SrtA(Tm=59.4℃)と比較して、S3以外のすべての非架橋変異体は、より低い熱安定性を示す(ΔTm=+2.9℃)。酵素架橋は、環状S3形態の強い安定化をもたらしたが(ΔTm≧+10.1℃)、残りの変異体ではより中程度の効果が観測された。変異体での最安定形態は、S1b1(ΔTm=+2.8℃)、S2b2(ΔTm=+0.4℃)、S4b3(ΔTm=+4.4℃)、S5b5(ΔTm=+3.4℃)、及びS6b1(ΔTm=+3.9℃)である。
【0057】
SrtAは、ショートペプチド配列(LPETG、
図2d)を認識し、それを切断し、そのN末端断片とアシル中間体を形成するトランスペプチダーゼである。次いで、中間体は、好ましくは、オリゴグリシンのN末端により攻撃され、新たなペプチド結合を形成する(
図2d)。好適な求核剤の不在下で、水はアシル中間体を攻撃し、加水分解するであろう(
図2d)。トランスペプチダーゼ活性を調べるために、フルオロフォア/クエンチャー対がSrtA処理により分離される以前に報告されたプローブ系を適用した(
図7)。活性スクリーニングでは、我々は、野生型SrtAが強い能力低下(4%の残存活性、
図7)を示す65℃での加水分解反応を選択した[24、25]。SrtA(vr=1、
図2e)と比べて、いくつかの架橋酵素は増加した活性を示す。驚くべきことに、S3の熱安定性環状形態は、低減された酵素活性を提供する(
図2e)。これとは対照的に、S4及びS5の架橋形態は、ロバストな活性増強を示す(>2倍、薄赤色及び暗赤色、
図2e)。全体的に最も高い活性増大は、SrtAの3.4倍の活性のS4-b3で観測される。まとめると、65℃で観測される活性の改善は中程度であることから、3次構造の十分な安定化を付与するにはモノ環化では十分でない可能性があることが示唆される。
【0058】
タンパク質3次構造のより強い安定化を達成するために、我々は酵素のビ環化を目指した。注目すべきこととして、2つの最良性能SrtA変異体S4及びS5(薄青色及び暗青色、
図2b)は、1つの変異部位(aa149)を共有する。それらのシステイン置換の同時導入(aa111、149、及び177)は、トリス求電子剤との反応により二環状タンパク質を形成可能な変異体S7(
図3a)を生成する。二環状ペプチド[26~28]及びミニタンパク質[29]の以前に報告された合成からの類推により、我々は我々の架橋剤でC3対称コアを選択し、我々はそれを3つの2-クロロアセトアミド基で修飾した(t1、
図3b)。13ブリッジング原子を提供するようにトリス求電子剤t1を設計し、それによりS4(b3/b4:10/11原子)及びS5(b5/b6:14/17原子)に好ましい架橋範囲内にした。S7とt1との架橋反応は効率的に進行し、ステープル酵素S7-t1を提供する(
図3b)。分析HPLC/MS解析は、S7の定量的変換率を示し、予想分子量を有する生成物の形成を明確に示す。高分解能MS解析は、適正修飾部位(システイン111、149、及び177)を確認するとともに、ステープリング後の活性部位システインの非修飾状態も検証する(
図8)。S7-t1の熱安定性を調べて、我々は大幅に増加した融解温度(Tm=70.6℃、
図3c)を観測した。これはSrtAの値(Tm=59.4℃)よりも11.2℃高く、最活性単環状タンパク質S4-b3の値(Tm=63.8℃)よりも6.8℃高い。次いで、我々は、単環状形態に対して記載したように65℃でS7-t1の酵素活性を決定した(
図3d)。その優れた熱安定性に呼応して、我々は、SrtA(8.7倍)及び最活性単環状酵素S4-b3(2.6倍、
図3d)と比較したときに65℃で強く増加した酵素活性を観測する。
【0059】
これまで、我々は、求核剤として水を用いて加水分解条件下で酵素活性を調べた(加水分解、
図2d)。タンパク質標識化へのS7-t1の適用を想定して、次いで、我々は、上記の蛍光プローブを用いて、ただし、今度は求核剤トリグリシンの存在下で、65℃でそのペプチド転移性能を調べた(転移、
図2d)。リードアウトとしてHPLC/MSを用いて(
図4a)、我々は、再度、いずれの酵素も用いない処理(ライトグレー)に類似したSrtAによるごく弱い基質変換のみ(ダークグレー)を観測した。S7-t1の存在下では(レッド、
図4a)、出発材料のシグナル(●)は大幅に減少し、2つの新たなピークが現れた。MSに基づいて、一方のピークはC末端断片(▲)、他方のピークはトリグリシンにライゲートされたと思われるN末端断片(■)に帰属された。重要なこととして、加水分解物(Dabcyl-QALPET)のシグナルは検出されなかったことから、S7-t1の適正機能が検証される。昇温下でのタンパク質アンフォールディングが可逆的であるかを評価するために、我々は、加熱の前及び後で37℃でSrtA及びS7-t1の酵素活性を比較した(85℃
図11)。注目すべきこととして、両方の酵素のトランスペプチダーゼ活性は、加熱/冷却サイクルの影響を受けないことから、可逆的アンフォールディングが示唆される。
【0060】
次の実験セットでは、我々は、再度蛍光リードアウトを用いてペプチド転移反応の熱活性プロファイルを決定した(
図4b)。37℃~55℃では、SrtA(グレー)及びS7-t1(レッド)の酵素活性は、類似したごく弱い温度依存性を呈するにすぎない。55℃超では、両方の酵素が活性の損失を生じ、SrtAでは非常に激しく、65℃ではほぼ完全な不活性化をもたらす(
図4b)。S7-t1では、活性低減はかなり小さく、37℃と比べて63%(65℃で)及び27%(70℃で)の残存活性を有する。SrtAと比較して、S7-t1は、熱ストレスに対して約10℃増加した耐性を示し、これはその+11.2℃高い融解温度と良く相関する。増強された熱安定性は、多くの場合、グアニジニウムヒドロクロライド(GdnHCl)などの変性剤に対する耐性と相俟って生じる。そうした理由から、トランスペプチダーゼ活性に及ぼすGdnHClの影響を調べたところ、0.5Mまでの変性剤濃度に対してSrtA及びS7t1の依存性は低いことが明らかになった(
図4c)。0.75~1.5Mでは、S7-t1はSrtAよりも有意に活性である。1M GdnHClでは最も顕著となり、SrtAは、いずれの検出可能酵素活性も示さないが(vr<1%、
図4c)、S7-t1は、依然として40%の残存活性(GdnHCl不在と比較して)を提供する。より高いGdnHCl濃度(≧2M)では、両方の酵素がその酵素活性を失う。
【0061】
これまで、我々は、ショート試験ペプチドの標識化にS7-t1を適用した。次いで、我々は、とくに野生型SrtAが十分な活性を提供しない条件下でもS7-t1がタンパク質標識化に有用であるかに関心を払った。その目的のために、我々は、対象タンパク質としてα-シヌクレイン(α-Syn)を選択した。α-Synは140アミノ酸を含み、パーキンソン病をはじめとする各種神経変性疾患の発症に関連する病原性フィブリルを形成可能である[30]。αSynフィブリルは、GdnHClを用いて可溶化可能である[31]。我々は、標識化を可能にするためにC末端SrtA認識モチーフを有するαSyn形態を設計した。発現及び精製の後、可溶性α-Syn(A)をフィブリル形成及び超遠心分離に付した[31]。不溶性フィブリルを洗浄し、GdnHCl(1M)欠如(B)又は含有(C)のどちらかの緩衝液で処理した[31]。得られた可溶性画分(B及びC)とα-Synの精製可溶性形態(A、
図4d)とを比較したとき、我々は、GdnHClの不在下(B)ではなく存在下(C)でのみ再可溶化を明確に観測した。タンパク質標識化を調べるために、これらの可溶性サンプル(A、B、C)をSrtA又はS7-t1のどちらか及び蛍光基質と共にインキュベートした(
図9)。次いで、我々は、リードアウト用の蛍光イメージャーを利用してSDS-PAGEを介して解析を実施した。フィブリル形成前したがってGdnHCl不在下の可溶性α-Syn(A)では、SrtA及びS7-t1は強力なバンドをもたらすことから、効率的タンパク質標識化が示唆される(
図4e)。予想通り、GdnHCl欠如したがって同様に可溶性α-Syn欠如の再可溶化条件下(B)では、我々はいずれの蛍光シグナルも観測しなかった(B、
図4e)。それとは対照的に、GdnHCl(1M)を用いた再可溶化では、α-Syn標識化は、野生型SrtA(C)ではなくS7-t1でのみ発生する。注目すべきこととして、S7-t1の蛍光バンド強度の差(A対C、
図4e)は、可溶性画分のα-Synの量(A対C、
図4d)と良く相関することから、GdnHClの存在下でのS7t1の良好な標識化効率が示唆される。
【0062】
ビ環化を介するタンパク質安定化のより広範な適用性を評価するために、我々は、第2の標的としてヒトCREB結合タンパク質由来のKIXドメインを選択した(
図5a)。KIXは、中心の3つのαヘリックスバンドル(α1、α2、α3)で構成される複数のタンパク質結合パートナーを有するアダプタードメインである。このバンドルとC末端310ヘリックス(G1)との間の接合は、構造完全性にきわめて重要である(
図12a)[34]。そのため、我々は、システイン取込みに好適な3つの位置の3次構造安定化検索のためにこの領域に焦点を当てた。SrtA安定化時の我々の経験に基づいて、次のガイドラインを適用した。すなわち、(i)溶媒アクセス可能残基を考慮した。それは(ii)3つの識別可能な2次構造に位置するとともに、(iii)タンパク質の同一側を向き、且つ(iv)辺の長さが6~17Å(Cα-Cα距離)の三角形にまたがる。これらの基準に基づいて、我々は、システイン置換用としてH594、L599、及びR646を選択し、KIX変異体K1を得た(
図12a、
図12)。
【0063】
架橋のために、我々はトリス求電子剤t1(n=2、
図3b)及びより短い形態t2(n=1)を選択した。なぜなら、K1中の3つの変異部位間の距離(7.8、10.0、及び11.5Å、
図12)がS7中(8.5、12.4、及び15.7Å、
図13d)よりも短いことに、我々は気付いたからである。両方のトリス求電子剤の架橋は、SDS-PAGE及びHPLC-MS解析により確認されるように効率的に進行する(データは示されていない)。架橋が3次構造に影響を及ぼすかを評価するために、我々は、KIX並びに両方の二環状変異体(K1-t1及びK1-t2)のその結合パートナーMLLへの親和性を比較した。蛍光偏光アッセイを用いて、我々は、KIX、K1-t1、及びK1-t2への類似した結合親和性を観測した(それぞれ、Kd=0.6、0.9、及び0.9μM、
図14)。次いで、我々は、3つのタンパク質の見掛けの融解温度を測定し(
図12b)、KIXと比較したときにK1-t1及びK1-t2で強く増加した熱安定性(それぞれΔTm=+20.6℃及び+24.6℃)を見いだした。注目すべきこととして、両方のトリス求電子剤は、類似した安定化効果を有し、より短い架橋t2が最良の性能を発揮した。また、これらの結果に基づいて、我々は、StrA変異体S7に対するトリス求電子剤t2の効果を評価することに関心を払った。架橋反応は効率的に進行し、二環状酵素S7-t2をもたらす(
図15)。注目すべきこととして、我々は、S7-t2(ΔTm=+11.5℃、
図15)でS7-t1(ΔTm=+11.2℃)と類似した熱安定化を観測することから、架橋の長さのマイナーな変動に対する耐性が示唆される。
【0064】
まとめると、我々は、全体がタンパク質原性アミノ酸で構成された天然タンパク質へのモジュラー架橋の組込みを可能にする、酵素の安定化のための構造ベースアプローチを報告する。我々は、一連のモノ環化SrtA変異体を探究し、熱変性及び化学変性に対する大幅に増加した耐性を呈する二環状酵素S7t1の設計をもたらした。重要なこととして、S7t1は、1M GdnHClの存在下でのα-Synの標識化が効率的であることを実証した。この条件下では、野生型SrtAは酵素活性を示さなかった。我々は、我々のSrtA変異体でこの問題に遭遇しなかったとはいえ、追加の表面露出システイン残基が環化反応時に望ましくない副生物もたらす可能性があることに留意することが重要である。かかる場合には、これらのシステインを変更するか(たとえばセリンに)又は触媒活性が必要であれば架橋時に活性部位をブロックすることが必要であろう。SrtAでの我々の知見から、我々は、タンパク質のビ環化及び安定化のガイドラインを導出し、それをKIXドメインに適用した。3つのシステインKIX変異体を設計し、2つの異なるC3対称トリス求電子剤と反応させ、両方とも大幅に増加した熱安定性を有する2つの二環状KIX形態を得た。全体的に見て、我々のアプローチは、全体がタンパク質原性アミノ酸で構成された組換えタンパク質の構造ベース安定化を促進する。タンパク質環化のための合成求電子剤の使用は、さまざまなチューナブル架橋構成の容易な利用手段を与える。追加の特徴として、我々は、アフィニティーハンドル(たとえば酵素精製/リサイクル用)[32]や近接ベースソルターゼ媒介ライゲーション用リガンドなどの追加の官能基の導入を可能にする架橋剤の使用を想定する[33]。まとめると、提示されたタンパク質安定化技術は、追加の官能基の同時取込みの機会を提供する新規な安定化酵素の迅速な利用手段を与える可能性を有する。
【0065】
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【0066】
方法
1.1 ペプチド合成及び特徴付け
標準的Fmocベース固相ペプチド合成(SPPS)プロトコルに従ってFmoc-Rink Amid MBHA樹脂(Iris Biotech GmbH)上でペプチド合成をマニュアルで実施した。樹脂の初期アミンローディングに対して計算された4eq.を用いて、すべてのFmoc保護アミノ酸をカップリングした。カップリング条件は、第1のカップリング反応(20分)では、ジメチルホルムアミド(DMF)中の、4eq.の(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、4eq.のオキシマ、及び8eq.のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)であった。第2のカップリング(45分)では、DMF中の、4eq.のベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)及び8eq.のDIPEAを使用した。Fmoc脱保護は、DMF中の20%ピペリジン溶液を用いて樹脂を15分間処理して達成した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)は、DMF中の3eq.のその異性体及び6eq.のDIPEAを用いて2hにわたり2回カップリングした。処理後、TFA:H2O:TIPS(95:2.5:2.5)溶液(2×2h)でペプチドを樹脂から切断し、Et2Oを用いて-20℃で沈殿させた。Freezone4.5-105℃フリーズドライシステム(Labconco)で凍結乾燥後、ペプチドをH2O:アセトニトリル(1:1)に溶解し、Nucleodur C18逆相カラム(10×125mm、110Å、粒子サイズ5μm、Macherey-Nagel、溶媒A:H2O+0.1%TFA、溶媒B:アセトニトリル+0.1%TFA、6mL min-1の流量)を用いて逆相半分取HPLCで精製した。得られた生成物を凍結乾燥した。
【0067】
ペプチドの同一性及び純度は、Zorbax Eclipse,XDB-C18逆相カラム(4.6×150mm、粒子サイズ5μm、Agilent、溶媒A:H2O+0.1%TFA、溶媒B:アセトニトリル+0.1%TFA、1mL min-1の流量)を備えたHPLC-MSシステム(Agilent Technologies)で実施されたHPLC/ESI-MS解析により確認した。FITC標識化ペプチドは、V-550UV/VIS分光測光器(Jasco)を用いて測光定量した。GGGK-FITCペプチドに対して、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)中で494nmの吸光度を測定し、吸光係数ε(FITC)494=77000M-1 cm-1を用いて濃度を計算した。Dabcyl-QALPETGEK-FITCペプチドに対して、494nmのDabcyl吸収を追加的に考慮した(ε(Dabcyl)494=14000M-1 cm-1)。
【0068】
1.2 タンパク質の発現及び精製
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)SrtAのaa60~206をコードする修飾pET28a(+)ベクターは、AG Musacchio (Max Planck Institute, Dortmund, Germany)により提供された。変異体S1~S7は、各々対応するN末端His6タグ付きタンパク質をもたらす部位指向突然変異誘発(Quikchange(商標)、Stratagene)、制限及びライゲーション、又はin vivoクローニングを用いた配列修飾のいずれかにより得た(
図6)。これらのコンストラクトをE. coli BL21 Gold (DE3) (Agilent Technologies)にトランスフォームした。トランスフォーマントを用いてLuria Broth (LB)(50μg mL-1カナマイシン)一晩前培養物に接種した(37℃でインキュベート)。この培養物を用いてTerrific Broth(TB)培養物(2L)に接種し、0.7のOD600に達するまで37℃でインキュベートした。0.5mM IPTGの添加によりタンパク質発現を誘発し、培養物を25℃で一晩インキュベートした。遠心分離により細胞を採取し、ライシス緩衝液(50mMトリス(pH7.5)、150mM NaCl、2mM TCEP、10%グリセロール(v/v))に再懸濁し、マイクロフリュイダイザーで破壊した。遠心分離(70000rcf、4℃、45min)により細胞ライセートから細胞デブリを除去した。続く精製工程はすべて4℃で実施した。FPLCアフィニティークロマトグラフィー(HisTrap(商標) Fast Flow Crude 5 mL,GE Healthcare)を介して上清からSrtA及び変異体S1~S7を単離した。5CV洗浄緩衝液(50mMトリス(pH7.5)、150mM NaCl、2mM TCEP、5%グリセロール(v/v)、20mMイミダゾール)でカラムを洗浄した。トロンビン緩衝液(50mMトリス(pH8)、100mM NaCl、2.5mM CaCl2、1mM DTT)中4℃でトロンビン切断(5U mg-1)をカラム上で一晩実施し、標的タンパク質溶出液を得た。トロンビン酵素からSrtA及び変異体を分離するために、サイズ排除クロマトグラフィーを実施した(20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP中のAekta Pure, Column HiLoad 16/600 Superdex 75 pg, GE Healthcare)。限外濾過(Amicon, Merck、10kDaカットオフ)を介して精製タンパク質を25mg mL-1まで濃縮し、スナップ凍結し、-80℃で貯蔵した。
【0069】
C末端フレキシブルリンカー、SrtA認識部位、さらにはアフィニティー精製用His6タグを含有するα-シヌクレイン(α-Syn)コンストラクトのコード配列(
図9)を遺伝子合成品(Integrated DNA Technologies)として購入し、制限(NcoI及びXhoI)並びにライゲーションを介してpET28a(+)ベクターにサブクローニングした。タンパク質発現のために、ベクターをE. coli BL21 Gold (DE3)にトランスフォームした。トランスフォーマントを用いて一晩LB前培養物に接種した(50μg mL-1カナマイシン、37℃)。この培養物を用いてカナマイシン(50μg mL-1)含有LB培養物(2L)に接種し、0.7のOD600に達するまで37℃でインキュベートした。タンパク質発現は、0.5mM IPTGの添加により誘発して37℃で4h実施した。遠心分離により細胞を採取し、ライシス緩衝液(50mMトリス(pH7.5)、150mM NaCl)に再懸濁し、超音波処理(1sオン2sオフ、40%出力、0℃で4×30sサイクル)により破壊した。遠心分離(70000rcf、1h)により細胞ライセートから細胞デブリを除去した。フォローアップ精製工程はすべて4℃で実施した。アフィニティークロマトグラフィー(Aekta Pure, HisTrap(商標) Fast Flow Crude 5 mL, GE Healthcare)を介してα-Synを上清から単離した。5mMイミダゾールを含有するライシス緩衝液を用いて洗浄を実施した。イミダゾールグラジエント(5mM~500mM)でカラムからαSynを溶出させた。タンパク質含有画分をプールし、PBS緩衝液(pH7.4)に対して4℃で一晩透析した(Slide A Lyzer Dialysis Cassette, Thermo、3.5kDaカットオフ)。得られた純粋α-Synを限外濾過(Amicon, Merck、3kDaカットオフ)を介して5mg mL-1まで濃縮し、フィブリル形成に付した。
【0070】
Gateway attB1及びattB2(Thermo)アタッチメントとPreScissionプロテアーゼ認識部位とを含有するKIX及びK1コンストラクトのコード配列(
図13)は、合成品であり、Integrated DNA Technologiesから購入した。その後、コード領域をpDONR201ベクター(BP Clonase酵素ミックス、Thermo)に導入した。続いて、LR Clonase酵素ミックス(Thermo)を利用してコード領域をpGEX-4t-3 Gateway適合目標ベクターに導入した。得られた発現ベクターをE. coli BL21 Gold (DE3)にトランスフォームした。トランスフォーマントを用いて一晩LB前培養物(100μg mL-1アンピシリン、37℃)に接種し、続いてこの培養物を用いてアンピシリン(100μg mL-1)含有TB培養物(2L)に接種し、1のOD600に達するまで37℃でインキュベートした。タンパク質発現は、0.5mM IPTGの添加により誘発して20℃で一晩実施した。遠心分離により細胞を採取し、ライシス緩衝液(50mMトリス(pH7.4)、500mM NaCl、2mM PMSF、及び2mM DTT)に再懸濁と、マイクロフリュイダイザーを用いて破壊した。遠心分離(70000rcf、4℃、60min)により細胞ライセートから細胞デブリを除去した。続く精製工程はすべて4℃で実施した。アフィニティークロマトグラフィー(Aekta Pure, GSTPrep(商標) FF 16/10, GE Healthcare)を介してKIX及びK1を上清から単離した。ベースライン(OD280)に達するまで、洗浄緩衝液(50mMトリス(pH7.4)、100mM NaCl、2mM DTT)で洗浄を実施した。洗浄緩衝液中4℃でPreScission切断をカラム上で一晩実施した。得られた標的タンパク質を、限外濾過を介して約6mg mL-1まで濃縮した(Amicon, Merck、3kDaカットオフ、r.t.)。続いてサイズ排除クロマトグラフィーを実施した(25mM HEPES(pH7.4)、100mM NaCl、2mM TCEP中のAekta Pure, Column HiLoad 16/600 Superdex 75 pg, GE Healthcare)。精製タンパク質を6mg mL-1まで濃縮し(Amicon、Merck、3kDaカットオフ、r.t.)、スナップ凍結し、-80℃で貯蔵した。
【0071】
生成されたベクターコンストラクトはすべて、サンガーシーケンシングにより配列確認された。タンパク質はすべて、SDS-PAGEを介してその品質を確認した。
【0072】
1.3 α-Synフィブリルの形成及び再可溶化
フィブリル形成のために、4mLの精製可溶性α-Syn(5mg mL-1)を37℃、1250rpmで4日間撹拌した。得られた懸濁液を600μLアリコートで超遠心分離した(135000rcf、4℃、45min)。Nanodrop(OD280)を介して上清のタンパク質含有率を定量し、フィブリル形成の効率をモニターした。上清の除去後、SrtA緩衝液(4×500μL、20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP)でペレットを十分に洗浄した。再可溶化のために、穏やかに振盪しながらGdnHClあり(1M)又はなしのどちらかでSrtA緩衝液中室温でフィブリルサンプルを3h処理した。上清を続く標識化に使用した。
【0073】
1.4 α-Syn標識化反応
再可溶化α-Syn画分をSrtA緩衝液(+/-1M GdnHCl)で1:6希釈して初期GndHCl濃度を維持し、2mM GGGK-FITCと100μM SrtA又はS7-t1のどちらかとで補足した。標識用サンプルを350rpm及び37℃で16hインキュベートした。Gel Doc XRシステム(BioRad)で蛍光に関してSDS-PAGEゲル上でサンプルを解析した。次いで、ゲルをクーマシーに染色した(
図10)。
【0074】
1.5 ビス及びトリス求電子架橋剤の合成及び特徴付け
0℃のH2O/DCM(2:3、18mL)中のK2CO3(33mmol、3.3eq.)の溶液に、対応するジアミン(10mmol、1eq.)を添加した。得られた混合物を冷却し、その後、クロロアセチルクロライド(22mmol、2.2eq.)を0℃で1hにわたり滴下した。添加終了後、氷浴を除去し、混合物を室温で一晩撹拌した。所望の生成物をDCMで3回抽出した。続いて、有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。生成物の同一性は、NMRにより確認した。トリス求電子架橋剤t1に対して、当量を調整して同一プロトコルを使用した。いずれの架橋反応でも、新たに調製された架橋剤を使用しなければならない。
【0075】
N,N’-ビス(クロロアセチル)-1,2-エチレンジアミン(b1)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.27 (bs, CONH, 2H), 4.04 (s, CH2, 4H), 3.17 (m, CH2, 4H).
N,N’-ビス(クロロアセチル)-1,3-プロピレンジアミン(b2)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.20 (m, CONH, 2H), 4.04 (s, CH2, 4H), 3.10 (td, J = 6.9, 5.7 Hz, CH2, 4H), 1.57 (p, J = 6.9 Hz, CH2, 2H).
N,N’-ビス(クロロアセチル)-1,4-ブタンジアミン(b3)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.19 (m, CONH, 2H), 4.02 (s, CH2, 4H), 3.08 (m, CH2, 4H), 1.41 (m, CH2, 4H).
N,N’-(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(2-クロロアセタミド)(b4)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.92 (bs, CONH, 2H), 4.07 (s, CH2, 4H), 3.59 (m, CH2, 4H), 3.53 (m, CH2, 4H).
N,N’-((エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(2-クロロアセタミド)(b5)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.23 (m, CONH, 2H), 4.06 (s, CH2, 4H), 3.52 (m, CH2, 4H), 3.44 (t, J = 5.8 Hz, CH2, 4H), 3.25 (q, J = 5.8 Hz, CH2, 4H).
N,N’-(((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(2-クロロアセタミド)(b6)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.23 (m, CONH, 2H), 4.06 (s, CH2, 4H), 3.52 (m, CH2, 8H), 3.44 (t, J = 5.8 Hz, CH2, 4H), 3.25 (q, J = 5.8 Hz, CH2, 4H).
N,N’,N’’-(ニトリロトリス(プロパン-3,1-ジイル))トリス(2-クロロアセタミド)(t1)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.23 (t, J = 5.6 Hz, CONH, 3H), 4.03 (s, CH2, 6H), 3.10 (q, J = 6.6 Hz, CH2, 6H), 2.34 (t, J = 6.9 Hz, CH2, 6H), 1.52 (p, J = 7.1 Hz, CH2, 6H).
【0076】
1.6 求電子剤によるタンパク質修飾
野生型SrtAと共に4つの異なる求電子剤の反応性を評価した。そのため、35℃及び350rpmで架橋緩衝液(50mM HEPES(pH8.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、及び2mM TCEP)中で2mM求電子剤(アクリルアミド1、2-ブロモアセトアミド2、2-クロロアセトアミド3、又は4マレイミド酪酸4)と共に50μM SrtAを24hインキュベートした。MSにより反応を解析した。
【0077】
タンパク質変異体S1~S6を反応緩衝液(50mM HEPES(pH8.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、及び2mM TCEP)で50μMに希釈し、35℃及び350rpmで0.5mMビス求電子架橋剤(b1~b6、DMSO中50mM)と共に24hインキュベートした。反応を停止するために、限外濾過(Amicon Ultra遠心濾過機、0.5mL、Merck、10kDaカットオフ)により溶液を濃縮し、低分子量ビス求電子架橋剤を除去するためにSrtA緩衝液(20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP)で5回洗浄し、緩衝液を交換して最終架橋タンパク質変異体を濃縮した。得られたタンパク質をスナップ凍結し、-80℃で貯蔵した。変異体S7とトリス求電子架橋剤t1との架橋のために、t1の濃度のみを0.5mMではなく1mMに変化させて、上記のプロトコルを適用した(
図3b)。
【0078】
1.7 融解温度(Tm)の測定
20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEPで各タンパク質を75μMに希釈した。35%の励磁パワーを用いて1℃ min-1の加熱速度でPrometheus NT.48 (NanoTemper Technologies)により温度をスキャンした(20~95℃)。350nm及び330nmの蛍光強度比(F350/F330)を温度に対してプロットし、Nanotemper technologiesプロトコルを用いてTm値を決定した。
【0079】
1.8 酵素的加水分解アッセイ
StrA(
図7)及び変異体によるプローブDabcyl-QALPETGEK-FITCの加水分解は、増加した蛍光を呈する切断産物GEK-FITCを提供する。リアルタイムPCRシステム(StepOnePlus(商標) Real-Time PCR System, Applied Biosystems)を用いて所与の温度で(16hにわたり10分ステップで)蛍光(FAMチャネル、520nm)を測定することにより蛍光の変化をモニターした。Tween(最終濃度0.01%)が補足されたSrtA緩衝液(20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP)で酵素を20μMに希釈した。得られた酵素溶液を同一緩衝液中でペプチドプローブ(Dabcyl-QALPETGEK-FITC)の20μM溶液と1:1混合した(最終体積20μL、10μMプローブ、10μM酵素)。酵素なしのサンプルをブランクとして使用した。蛍光リードアウトをバックグラウンド減算し、時間に対してプロットした。曲線の直線部分の傾きを酵素活性の尺度として決定した(v)。続いて、v値をv(SrtA)で除算し、相対活性を得た。
【0080】
1.9 酵素的ペプチド転移アッセイ
蛍光リードアウト
このアッセイは、上記の加水分解アッセイと同様に実施したが、2.5mMトリグリシン(G3、Sigma-Aldrich)の存在下で行った。SrtA及びS7-t1の熱活性プロファイルを作成するために、各種温度(37℃、45℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃)でペプチド転移活性を決定した。トリプリケートを測定し、平均し、エラーバー(1σ)と共にプロットした。統計的有意性は、対応のないt検定(GraphPad)により評価した。p値<0.05を統計的に有意であるとみなした(ns:有意でない、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
図4b)。
【0081】
ペプチド転移活性のHPLC-MSモニタリング
SrtA及びS7-t1に対して65℃で反応を実施した。反応条件:50μM POI(SrtA又はS7-t1)、10μMペプチドプローブ(Dabcyl-QALPETGEK-FITC)、SrtA緩衝液(20mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP)中の2.5mM G3、65℃、12h、350rpm。1%TFAの添加により反応混合物をクエンチした。これらの反応の生成物をHPLC-MSにより解析した(
図4a)。
【0082】
GdnHClの存在下のペプチド転移活性
変性剤GdnHClの存在下でSrtA及びS7-t1のペプチド転移活性効率を評価した。固定のPOI(10μM)、ペプチドプローブ(10μM)、及びG3(2.5mM)の濃度並びに固定の温度(37℃)でのペプチド転移活性を、いくつかのGdnHCl濃度(0M、0.5M、0.75M、1.0M、1.5M、及び2.0M)で測定した。トリプリケートを測定し、平均し、エラーバー(1σ)と共にプロットした。統計的有意性は、対応のないt検定(GraphPad)により評価した。p値<0.05を統計的に有意であるとみなした(ns:有意でない、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
図4c)。
【0083】
1.10 SrtA及びS7-t1のフォールディング可逆性
20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、5mM CaCl2、2mM TCEP、及び0.01% Tween 20でSrtA及びS7-t1を20μMに希釈した。これらの溶液をThermoMixer (HTA-BioTec)で30minにわたり室温から85℃に加熱し、次いで、60分にわたり室温に冷却した。その後、予加熱されていないタンパク質の新たに調製された溶液と一緒に37℃でタンパク質のペプチド転移活性を評価した。
【0084】
1.11 HPLC結合高分解能質量分析
非修飾S7及び二環状S7-t1を、まず1mM DTTと共に、次いで5.5mMヨードアセトアミドと共に、インキュベートし、8Mウレアで変性させ、最後に消化させた。最初に、LysC(和光(商標)、日本、大阪)を3時間使用し(タンパク質対酵素比50:1)、4体積の50mM重炭酸アンモニウム(AMBIC、pH8.3)で2.0Mウレアの最終濃度に希釈した後、シーケンシンググレード修飾トリプシン(Promega(商標), Madison, WI、タンパク質対酵素比50:1)でペプチドを37℃で一晩消化させた。ペプチドをC18ステージチップ上で脱塩し、0.1%ギ酸を含む65minグラジエント5~60%アセトニトリルを用いて、UltiMate(商標)3000 RSLCnanoシステム(ThermoFisher Scientific, Germany)上でPepMap100 RSLC C18ナノHPLCカラム(2μm、100Å、75ID×25cm、nanoViper, Dionex, Germany)で100~300ngのペプチドを分離し、次いで、Q Exactive(商標) Hybrid Quadrupole-Orbitrap Mass Spectrometer HF (ThermoFisher Scientific)でナノエレクトロスプレー源(Nanospray Flex Ion Scource, Thermo Scientific)を介して直接スプレーした。ナノHPLCを四重極オービトラップ質量分析計に結合するために、標準的被覆SilicaTip(ID20μm、Tip-ID10μm、New Objective, Woburn, MA, USA)を使用した。1回のサーベイスキャン、続いて10回のMS/MSスキャンを行うデータ依存モードでQ Exactive(商標)HFを操作した。分解能70000で質量範囲300~1650m/zでMSスペクトルを取得し、続いて、分解能17500で高エネルギー衝突解離(HCD)MS/MSスキャンまで行った。得られた生のファイルは、可変修飾として脱アミド化(de、Asn及びGln用)、酸化(ox、Met用)、カルバミドメチル化(ca、Cys用)、及びt1レムナント(cl、C2H2O[-H]、Cys用)を用いてS7に対してAndromedaサーチアルゴリズム検索を含むMaxQuantソフトウェア(バージョン1.5.2.18)で処理した。フル質量スペクトルの質量確度は、第1のサーチでは20ppm、第2のサーチでは4.5ppm、及びMS/MSスペクトルでは20ppmに設定した。2回の誤切断は許容した。ペプチド及び部位デコイ画分で1%の偽発見率カットオフを適用した。
【0085】
1.12 蛍光偏光アッセイ(FP)
FITC標識化ペプチドFITC-O2Oc-GNILPSDI(Nle)DFVLKNTP-NH2を用いて、混合系統白血病(MLL)転写因子へのK1-t1及びK1-t2の結合を評価した。この配列はMLLに由来し、全体を通してMLLペプチドとして参照する。25mM HEPES(pH7.4)、100mM NaCl、及び2mM TCEP中の40nM MLLペプチドの溶液を調製した。同一緩衝液を用いて384ウェルプレート(ブラック、丸底、Corning)上でKIX、K1-t1、及びK1-t2の3倍稀釈を14工程で実施した。次いで、5μLの40nM MLLペプチド溶液を添加し、最終20μLの溶液をr.t.でインキュベートした。70μM~0μMの最終タンパク質範囲を使用した。1hインキュベートした後、λ(ex)=485nm及びλ(em)=525nmでSpark 20Mプレートリーダー(Tecan)を用いて蛍光偏光を測定した。GraphPad Prismソフトウェアで用量-反応曲線の非線形回帰分析を適用することによりKdを決定した。
【0086】
実施例2
アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は、多くの異なる基質分子に対してアルデヒド部分からカルボン酸への高化学選択的酸化に適用されてきた[T. Knaus, V. Tseliou, L. D. Humphreys, N. S. Scrutton, F. G. Mutti, Green Chemistry 2018 1]。融解温度は47℃よりもわずかに高い。つまり、わずか2~4時間後にALDHの触媒活性は顕著に低減される。架橋ALDHは、酵素の熱安定性を改善したりバイオ触媒的酸化時にその「寿命」を増加させたりするのに役立ちうる。ウシ水晶体由来のALDH(ALDH-Bov)は、4次構造が入手可能であるホモダイマー及び/又はテトラマーを形成する。マルチマーの3つのモノマーを架橋するために、以下のアミノ酸配列を有するALDH-Bovポリペプチドのアミノ酸位置番号付けを基準にして位置73、414、499にシステインを有するALDH-Bovポリペプチドを設計し、マルチマーの2つのモノマーを架橋するために、位置72、238、448にシステインを有するALDH-Bovポリペプチドを設計する。
MSSSAMPDVPAPLTNLQFKYTKIFINNEWHSSVSGKKFPVFNPATEEKLCEVEEGDKEDVDKAVKAARQAFQIGSPWRTMDASERGRLLNKLADLIERDHLLLATMEAMNGGKLFSNAYLMDLGGCIKTLRYCAGWADKIQGRTIPMDGNFFTYTRSEPVGVCGQIIPWNFPLLMFLWKIGPALSCGNTVVVKPAEQTPLTALHMGSLIKEAGFPPGVVNIVPGYGPTAGAAISSHMDVDKVAFTGSTEVGKLIKEAAGKSNLKRVSLELGGKSPCIVFADADLDNAVEFAHQGVFYHQGQCCIAASRLFVEESIYDEFVRRSVERAKKYVLGNPLTPGVSQGPQIDKEQYEKILDLIESGKKEGAKLECGGGPWGNKGYFIQPTVFSDVTDDMRIAKEEIFGPVQQIMKFKSLDDVIKRANNTFYGLSAGIFTNDIDKAITVSSALQSGTVWVNCYSVVSAQCPFGGFKMSGNGRELGEYGFHEYTEVKTVTIKISQKNS.
【0087】
かかる架橋ALDH-Bovポリペプチドは、増加した熱安定性を有すると予想される。
【配列表】