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特許7524074揚げ衣用物性改質剤、揚げ衣の物性改質方法、揚げ物用バッター液及び揚げ物
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  • 特許-揚げ衣用物性改質剤、揚げ衣の物性改質方法、揚げ物用バッター液及び揚げ物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】揚げ衣用物性改質剤、揚げ衣の物性改質方法、揚げ物用バッター液及び揚げ物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20240722BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20240722BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240722BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20240722BHJP
【FI】
A23L5/10 D
A23L7/157
A23L13/00 A
A23L13/50
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020563185
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019049998
(87)【国際公開番号】W WO2020137846
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2018240808
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 善樹
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142243(WO,A1)
【文献】特開2000-342210(JP,A)
【文献】松永幸太郎ほか,天ぷらの衣のフライ特性に及ぼす澱粉の影響,応用糖質科学,1998年,第45巻, 第3号,pp.239-246
【文献】特集1 ドーナツ製造に役立つ素材・技術,月刊 フードケミカル,2015年,Vol. 11,pp. 37-42,ISSN:0911-2286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテンと、該グルテン100重量部に対して0.5重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、65℃以上で30分以上加熱処理して得られる改質剤を、揚げ物の衣材に添加することを特徴とする、揚げ衣の物性改質方法であって、揚げ衣の物性改質が室温保存、冷凍保存および60℃保温庫保存を経過した揚げ衣の吸油抑制、吸湿抑制及び澱粉の糊化抑制である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の製造において使用される揚げ衣用物性改質剤、揚げ衣の物性改質方法、該揚げ衣用物性改質剤を用いて製造される揚げ物用バッター液、及び、揚げ物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揚げ物には、食材をそのまま油調加熱する素揚げと、食材表面に衣材を付着させ、油調加熱するブレダータイプ及びバッタータイプがある。ブレダータイプは乾燥した小麦粉等を食材表面にまぶし、食材から出る水分と小麦粉等が合わさることで薄い膜が形成され、これが衣材となる。バッタータイプは小麦粉、水等を予め混ぜ合わせたバッター液を衣材とし、食材に絡めて用いる。衣材に含まれる水は油調加熱により油と置き換わり、衣材はサクサクした食感の衣になる。ブレダータイプ及びバッタータイプの揚げ物は、食材を直接揚げ油に浸すことなく加熱調理出来るため、素揚げよりも食材の栄養成分の溶出が少なく、ジューシー感を保つことが出来る。
【0003】
しかしながら、衣のサクサクとした軽い食感は、時間の経過とともに失われる。その要因は食材に含まれる水分が次第に衣へ移行するため、食材はジューシー感を失うが、衣はふやけて柔らかくなり、不快なネチャつき等を感じさせるようになるためである。
【0004】
最近では、ライフスタイルの変化や安全性、簡便性の面から、揚げ物の食べ方が多様化している。家庭における揚げ物は敬遠され、スーパー等の惣菜コーナーで販売されている揚げ物を購入したり、冷蔵・冷凍食品の一つとして購入し、電子レンジで加熱調理して食べるシーンが多くなっている。これらの加工品は、テイクアウト用の包材や電子レンジ加熱用のトレーで包装されており、脆弱化した衣が包材に付着して剥がれ、外観を損ねることが多い。さらに電子レンジで加熱調理する場合は、揚げ物に含まれている水分をマイクロ波が振動させて温めるため、食材から衣へ移行した水分は、衣に含まれる澱粉と合わさって加熱条件下で糊化し、曳きのある食感へと変化することが知られていた。
【0005】
これらの課題に対し、特許文献1ではゼラチン等の可逆性熱凝固素材と卵蛋白等の不可逆性熱凝固素材を、揚げ物用バッターの有効成分とし、大豆繊維、穀粉、澱粉と併用することで、製造直後や冷蔵・冷凍保存後の再加熱に対しても、食材と衣の食感を共に良好に保つことを開示している。また、特許文献2では食用油脂、乳化剤、水を含有する水中油型乳化油脂組成物を揚げ衣用物性改質剤として用い、同様の課題を解決している。さらに、特許文献3では炭素数10~22の脂肪酸残基を有するトリグリセリドで、油脂成分がβ型油脂である粉末油脂組成物が、サクサク感を強めながら油のしみ出しを抑制し、食材と衣の決着性を高めることを開示している。特許文献4ではコーングリッツ等の粗粒物、大豆加工粉末、醸造調味粉末及び微粉パン粉等を含む、から揚げ様衣用組成物は、電子レンジ調理後のから揚げ様食品の食感改良やシート付着防止効果に有効であることを開示している。特許文献5では馬鈴薯澱粉等を水分含量10~25重量%下で、60~200℃で0.1~20時間加熱処理して改質し、揚げ粉として使用すると、製造直後や冷蔵・冷凍保存後の電子レンジ調理に対して、衣のごつごつ感、粉噴き感、サクサク感を失わずに保つことを開示している。
【0006】
しかしながら、前記知見の多くは衣用ミックス粉の組成に特定の穀粉を用いるため、最終的に出来上がる揚げ物の特徴を限定してしまう等の課題があった。また、改質澱粉や油脂加工品は、小麦粉を用いたバッター液と比較すると風味が悪かったり、改良剤自体の日持ちが短い等の問題があった。さらに、コンビニエンスストアやスーパー等の惣菜売り場で使用されるホットウォーマーで保存した後や電子レンジ調理後は、衣がガムのように固く曳きのある食感に変わり、食材のパサつきも目立つ等の課題が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-143244号公報
【文献】特開2018-148845号公報
【文献】特開2018-157779号公報
【文献】特開2015-130820号公報
【文献】特開2009-296961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、油調調理して保存または冷凍保存した揚げ物において、衣の油っぽさを軽減しサクサク感を高めながら、衣に包まれた食材はジューシー感を保つことである。また、とりわけ電子レンジ調理後またはホットウォーマー保存後においては、食材と衣が剥がれにくく、衣がガムのように固く曳きのある食感に変わることを抑制することが課題である。さらに、上記に記載のいずれの調理方法においても、風味が良好である必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、カルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸でグルテンを加熱処理した組成物を、バッター液に添加することにより、上記課題の解決が可能であることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)グルテンと、該グルテン100重量部に対して0.5重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、65℃以上で30分以上加熱処理して得られる揚げ衣用物性改質剤、
(2)グルテンと、該グルテン100重量部に対して0.5重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、65℃以上で30分以上加熱処理して得られる改質剤を、揚げ物の衣材に添加することを特徴とする、揚げ衣の物性改質方法、
(3)揚げ衣の物性改質が、揚げ衣の吸油抑制及び吸湿抑制及び澱粉の糊化抑制である、(2)に記載の方法、
(4)揚げ物用バッター液全重量に対して、請求項1に記載の揚げ衣用物性改質剤を0.1-2重量部含有する、揚げ物用バッター液、
(5)前記(4)に記載の揚げ物用バッター液を用いて得られる揚げ物。

を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、カルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸でグルテンを加熱処理した組成物を、揚げ衣用物性改質剤として衣材の原材料に添加すると、揚げ物の衣の油っぽさが軽減され、衣に包まれた食材にはジューシー感があり、時間を経過してもサクサク感のある衣を有する揚げ物にすることが可能である。さらに、電子レンジ調理後またはホットウォーマー保存後においては、食材と衣が剥がれにくく、衣がガムのように固く曳きのある食感に変わることを防ぎ、サクサク感のある衣を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】揚げ工程と保存方法
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明において用いられるグルテンは、由来となる穀物も分離方法も特に限定されないが、小麦由来のグルテンが好ましい。また、分離されたグルテンは、分離したままのウェットタイプ(生グルテン)であっても、また、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)などの各種乾燥方法を用いて乾燥させて粉末状にした活性グルテンのいずれであってもよいが、活性グルテンが好ましい。活性グルテンを用いる場合、その水分含量は、好ましくは10%未満、より好ましくは9%未満、さらに好ましくは8%未満、最も好ましくは6%未満である。
【0015】
本発明において用いられる有機酸は、カルボニル基を同一分子内に2つ以上、好ましくは、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸で、異性体はシス体であってもトランス体であってもよく、ラセミ体であってもよい。カルボニル基を2つ以上、同一分子内に有する有機酸としては、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸が好ましく、コハク酸またはリンゴ酸がより好ましく、コハク酸がさらに好ましい。また、有機酸は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明において、グルテンと、カルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸(以下、単に有機酸という)とを含有する溶液を加熱処理する際、グルテンに対する有機酸の量は、例えばグルテン100重量部に対し、0.5重量部以上、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上、さらに好ましくは4.0重量部以上である。また、グルテンに対する有機酸の量の上限は、特に限定されないが、グルテンと有機酸が十分に反応し、最終製品に有機酸の味が残らないようにするために、例えば、グルテン100重量部に対し、100重量部未満、好ましくは50重量部未満、より好ましくは15重量部未満、さらに好ましくは13.5重量部未満、さらにより好ましくは12重量部未満、最も好ましくは10重量部以下である。
【0017】
上記加熱処理は、有機酸を液体の媒体に溶解させた状態で用いることが好ましく、その媒体となる液体は、水が好ましい。グルテンと有機酸を含む溶液の調製方法は、グルテンを液体に分散させた後、有機酸や有機酸の溶解液を添加する方法、グルテンに対して、有機酸の溶解液を添加する方法、グルテンと有機酸を混合したものに、液体を添加する方法、グルテンと有機酸を混合したものを、液体に添加する方法のいずれであってもよい。
【0018】
上記加熱処理の温度は、65℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。40℃では、グルテン等がダマになり、50℃~60℃では、ダマにはならないが、目的の改良されたグルテンを得ることができない。また、加熱処理の温度の上限は特にないが、水溶液での反応であり、反応物が熱変性を受けるタンパク質ということを考慮すると、100℃以下、好ましくは100℃未満、より好ましくは95℃未満、さらに好ましくは90℃以下である。
【0019】
上記加熱処理より得られたグルテンと有機酸の反応物は、そのまま、または、乾燥させて、固形化や粉末化し、本発明の揚げ衣用物性改質剤として用いることができる。乾燥方法は特に限定されず、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、ドラム乾燥法(ドラムドライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)などの各種乾燥方法を用いることができる。
【0020】
本発明の揚げ衣用物性改質剤は、そのまま食材表面に付着させて用いてもよいが、通常、食材表面に付着させ油調加熱するブレダータイプ及びバッタータイプの揚げ物用の衣材に小麦粉等の原料とともに含有させ、本発明のブレダータイプまたはバッタータイプの衣材として用いられる。
これらの衣材に含有させる本発明の揚げ衣用物性改良剤の量は、0.1-2重量%であり、好ましくは0.3-1.5重量%であり、さらに好ましくは0.4-0.8重量%である。
【0021】
本発明のブレダータイプの衣材は、そのまま食材の表面に付着させて用いられる。
本発明のバッタータイプの衣材は、水を適量加えて、本発明のバッター液として用いられる。
【0022】
本発明の揚げ物用バッター液における揚げ衣用物性改質剤の含有量は、揚げ物用バッター液全重量に対して0.1-2重量%であり、好ましくは0.3-1.5重量%であり、さらに好ましくは0.4-0.8重量%である。0.1重量%未満の場合には、油調調理後、及び、常温で長時間保存した後、及び、冷蔵・冷凍保存後に電子レンジ調理した後において、サクサク感があり、油っぽくない衣になりにくかったり、食材のジューシー感が得られにくい。また、衣に含まれる小麦粉由来の澱粉の糊化を防ぎにくくなる。また、2%を超えても大きな影響は見られないが、10%以上添加すると風味に影響する場合がある。
【0023】
本発明のバッター液に食材を浸漬し、パン粉付けもしくはそのままの状態で油調加熱する。油調加熱の条件は揚げ物の種類に応じて適宜設定されるが、例えばから揚げの場合、160-210℃の食用油脂中で3-8分油調加熱することにより製造することができる。油調加熱に使用される油脂としては、パーム油、コーン油等の一般的に揚げ物に用いる食用油脂であれば、特に制限されない。
本発明の衣材の用いられる揚げ物としては、例えば、から揚げ、天ぷら、フリッター、コロッケ、とんかつ、メンチカツ、白身魚フライ、竜田揚げ等があげられる。
また、小麦粉と水と食塩を主体とし、かつ加熱される食品である餃子、シュウマイ、春巻きの皮に含有させてもよい。該皮を用いて製造した餃子、シュウマイ、春巻きは、油調した場合、油っぽくなく、サクサクした食感を感じられるものとなる。
【0024】
本発明において、揚げ物用麺皮とは、春巻き、餃子、シュウマイ、パン等の中具を包むシートであって、本発明の揚げ衣用物性改質剤を含有する以外は、常法により製造したものを用いることができる。
【0025】
揚げ物用麺皮における揚げ衣用物性改質剤の添加量は、揚げ物用麺皮に使用する小麦粉に対して対粉0.1-10重量%であり、好ましくは0.1-5重量%であり、さらに好ましくは0.5-5重量%である。0.1重量%未満の場合には、油調調理後、及び、常温で長時間保存した後、及び、冷蔵・冷凍保存後に電子レンジ調理した後において、油っぽさが軽減させにくく、サクサク感のある食感になりにくかったり、衣の剥がれや澱粉の糊化防止に効果を得にくくなる。また、10%以上添加すると風味に影響する場合がある。例えば、麺皮原料には小麦粉、食塩、水を用い、本発明の組成物を0.6重量%添加する。小麦粉に対する水の配合量は、当該組成物を添加した場合にも変える必要はなく、加水率35-40%で調節する。混捏して生地を休ませた後、圧延機にて厚さ0.2-2mmに延ばし、適した形状に型抜き、裁断する。なお、本発明においては、具材を包むシート状のものであれば、小麦粉以外の穀物粉、例えば、米粉、そば粉等を原材料として使用してもよい。
【実施例
【0026】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。揚げ衣用物性改質剤の添加効果は、鶏のから揚げで評価した。
【0027】
(揚げ衣用物性改質剤の作製)
蒸留水500mLに、コハク酸4.00gを添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて80℃まで加熱した。80℃達温後、300分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対してホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバットに広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量7.0W/W%)を得た。
フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、揚げ衣用物性改質剤を得た。
【0028】
(鶏肉の前処理)
鶏胸肉を肉たたきで表裏30回叩き、さらにテンダライザーで鶏胸肉の角度を変えながら、30カ所程度筋切りをした。筋、皮、余分な脂肪の部位を取り除き、15-20gずつに切り分け、ピックル液に漬け込んで冷蔵庫で8時間保存した。ピックル液は、3.4gの重炭酸ナトリウム、13.5gのトリポリリン酸ソーダ、68.2gの馬鈴薯澱粉、13.6gの食塩、80.6gの脂質40%植物クリーム、20.5gの粉末ガラスープ、1.4gのキタンサンガム、3.4gの砂糖、340.9gの水、136.4gの氷を混合し、調製した。切り分けた鶏胸肉と肉の重量に対して約45重量%のピックル液をステンレスジャーに入れ、15回転/分、3時間タンブリングを行った。揉み込んだ鶏胸肉をザルに取り、余分なピックル液は落とした後、表1に示す評価用のバッターに浸した。水100gを100としたときに添加した各原材料のg重量を表中に記載した。
【0029】
【表1】
【0030】
(揚げ工程及び保存方法)
揚げ工程と保存方法を図1のフローチャートに示した。鶏胸肉を表1に示すバッター液に浸した後、全体量の半分を170℃で2分間油調し、冷凍した。冷凍9日後に、凍ったままのから揚げの一部を電子レンジで再加熱(500ワット/時間、3分間)し、加熱終了後0時間(実施例4)と1時間(実施例5)が経過した時点で、官能評価を行った。また、別の一部は170℃で4分間再油調し、60℃の保温庫で0時間(実施例6)、1時間(実施例7)、2時間(実施例8)、3時間(実施例9)、4時間(実施例10)、6時間(実施例11)が経過した後、官能評価を行った。バッターを付けた後の残りの半分の鶏肉は170℃で4分間油調し、一部を油調後すぐに官能評価した(実施例1)。また、別の一部は油調終了後、室温25℃で20時間が経過した後、官能評価した(実施例2)。また別の一部は油調終了後、室温25℃で20時間保存し、食べる前に電子レンジで加熱して官能評価した(実施例3)。
【0031】
(官能評価)
実施例1-11のから揚げについて、「衣のサクサクした食感」「衣の油っぽさ」「肉のジューシー感」「肉のやわらかさ」「風味」「衣の曳きの強さ」を専門パネラー4名で評価した。各項目について評価基準を記した。
「衣のサクサクした食感」
×:サクサクしていない
○:ややサクサクしている
◎:サクサクしている
「衣の油っぽさ」
×:油っぽい
○:やや油っぽい
◎:油っぽくなく軽い
「肉のジューシー感」
×:ジャーシー感がない
○:ややジューシー感がある
◎:ジューシー感がある
「肉のやわらかさ」
×:硬い
○:やや硬い
◎:やわらかい
「風味」
○:良い
×:悪い
「衣の曳きの強さ」
×:曳きが強い
○:やや曳きがある
◎:曳きを感じない
【0032】
(結果)
官能評価の結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
【0034】
揚げ衣用物性改質剤を鶏のから揚げのバッター液に添加して油調調理を行うと、揚げたて直後では、添加しない場合と比較して、サクサクした食感を呈し、油っぽさを軽減し、ジューシー感のあるから揚げとなった。油調調理後に時間が経過した場合でも、揚げ衣用物性改質剤を添加したから揚げは油っぽさが軽減させていた。電子レンジで加熱調理しても、油っぽさがなく、衣の曳きがない良好な食感を保持した。冷凍した場合には、冷凍庫から取り出した後に電子レンジで加熱調理すると、揚げ衣用物性改質剤を添加した唐揚げは油っぽさがなく、肉がやわらかかった。電子レンジで加熱調理を行って、時間を経過しても肉のやわらかさは持続した。冷凍した唐揚げを再度油調調理した場合には、揚げ衣用物性改質剤を添加したから揚げは油っぽさがなく、肉はやわらかく、ジューシー感があり、長時間品質を保持した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明してきたように、本発明によると、グルテンと、該グルテン100重量部に対して0.5重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、65℃以上で30分以上加熱処理して得られる揚げ物用物性改質剤は、揚げ物の衣材の原材料として用いることにより、衣においてサクサクした食感を呈し、油っぽさを軽減させ、食材のジューシー感ややわらかさを保持することが出来る。また、電子レンジによる加熱調理で問題となる衣のゴムのような曳きのある食感についても改善することが出来る。本発明の揚げ衣用物性改質剤を用いることによって、ライフスタイルの変化とともに需要が増えている冷凍食品や惣菜の揚げ物について、より簡便に品質を向上させることが可能になると考えられる。
図1