(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H01L27/146 E
(21)【出願番号】P 2020572145
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2020002674
(87)【国際公開番号】W WO2020166309
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019025595
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 貴弘
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016667(JP,A)
【文献】特開2018-060910(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186026(WO,A1)
【文献】特開2019-009437(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009024(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0259815(US,A1)
【文献】国際公開第2018/066256(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0035736(US,A1)
【文献】国際公開第2018/235895(WO,A1)
【文献】特開2016-015485(JP,A)
【文献】特開2006-147632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配置された有効画素領域および前記有効画素領域の周囲に設けられた周辺領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に設けられると共に、複数の電極からなる第1電極と、前記第1電極と対向配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に順に積層して設けられると共に、前記有効画素領域に延在する
、酸化物半導体材料を含む電荷蓄積層および光電変換層とを有する光電変換部と、
前記光電変換層の上方および側面ならびに前記電荷蓄積層の側面を覆う第1の水素ブロック層と、
前記半導体基板と前記光電変換部との間に設けられた層間絶縁層と、
前記有効画素領域と前記周辺領域との間の少なくとも一部において前記層間絶縁層を分離すると共に
前記有効画素領域の周囲に連続して設けられ、前記第1の水素ブロック層が側面および底面を覆う分離溝と
を備えた撮像素子。
【請求項2】
前記分離溝は、1または複数設けられている、
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記周辺領域に外部出力に用いられる1または複数の伝送電極をさらに有し、
前記分離溝は、前記1または複数の伝送電極よりも前記有効画素領域側に設けられている、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記半導体基板は前記受光面とは反対の面側にロジック基板をさらに有し、
前記伝送電極は前記ロジック基板上に設けられると共に、前記伝送電極上に前記層間絶縁層および前記半導体基板を貫通する開口を有する、
請求項3に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記分離溝は、平面視において、前記1または複数の伝送電極の周囲に連続して設けられている、
請求項3に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記分離溝は、各前記伝送電極毎に設けられている、
請求項5に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記分離溝の深さは、前記層間絶縁層の厚み以上前記開口の深さ以下である、
請求項4に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記分離溝は、前記開口の深さよりも深い、
請求項4に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記光電変換部の受光面側にレンズをさらに有し、
前記レンズは前記第1の水素ブロック層と同じ材料を用いて形成されている、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記光電変換層は、有機材料を用いて形成されている、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項11】
前記光電変換層は、無機材料を用いて形成されている、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項12】
前記有機材料は、ローダミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン誘導体、サブフタロシアニン系色素、クマリン酸色素、トリス-8-ヒドリキシキノリアルミニウム(Alq3)、メラシアニン系色素およびフタロシアニン系色素またはそれらの誘導体である、
請求項10に記載の撮像素子。
【請求項13】
前記無機材料は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、結晶セレン、アモルファスセレン、カルコパイライト系化合物および化合物半導体である、
請求項11に記載の撮像素子。
【請求項14】
前記無機材料は量子ドット形状で用いられている、
請求項11に記載の撮像素子。
【請求項15】
前記電荷蓄積層の下方に第2の水素ブロック層をさらに有する、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項16】
前記第2の水素ブロック層は、前記半導体基板と前記電荷蓄積層との間に設けられている、
請求項15に記載の撮像素子。
【請求項17】
前記光電変換部は、前記第1電極と前記電荷蓄積層との間に絶縁層をさらに有し、
前記絶縁層が前記第2の水素ブロック層として形成されている、
請求項15に記載の撮像素子。
【請求項18】
前記第1の水素ブロック層は、光透過性を有する金属酸化物および光透過性を有する酸化物半導体を含んで形成されている、請求項1に記載の撮像素子。
【請求項19】
撮像素子を備え、
前記撮像素子は、
複数の画素が配置された有効画素領域および前記有効画素領域の周囲に設けられた周辺領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に設けられると共に、複数の電極からなる第1電極と、前記第1電極と対向配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に順に積層して設けられると共に、前記有効画素領域に延在する
、酸化物半導体材料を含む電荷蓄積層および光電変換層とを有する光電変換部と、
前記光電変換層の上方および側面ならびに前記電荷蓄積層の側面を覆う第1の水素ブロック層と、
前記半導体基板と前記光電変換部との間に設けられた層間絶縁層と、
前記有効画素領域と前記周辺領域との間の少なくとも一部において前記層間絶縁層を分離すると共に
前記有効画素領域の周囲に連続して設けられ、前記第1の水素ブロック層が側面および底面を覆う分離溝と
を有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機半導体材料を用いた光電変換層を有する撮像素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像装置では、埋め込み形成されたフォトダイオードを有する半導体基板上に有機半導体材料を用いた有機光電変換層が積層された、いわゆる、積層型撮像素子が用いられている。積層型撮像素子では、1画素から、R/G/Bの信号を取り出すことができ、また、デモザイク処理を必要としないことから、偽色が発生しないといった利点がある。
【0003】
ところが、積層型撮像素子では、以下の課題が存在する。例えば、フォトダイオードからなる無機光電変換部では、光電変換によって生成した電荷は無機光電変換部に一端蓄積された後、浮遊拡散層(フローティングディフュージョン;FD)に転送されるため、無機光電変換部を完全空乏化することができる。一方で、有機光電変換層を有する有機光電変換部では、光電変換によって生成した電荷は、直接浮遊拡散層FDに蓄積されるため、有機光電変換部を完全空乏化することは難しく、これによって、kTCノイズが大きくなり、ランダムノイズが悪化して撮像画質の低下が引き起こされる。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1では、半導体基板の上方に設けられる、第1電極、光電変換層および第2電極が積層されてなる光電変換部において、第1電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して光電変換層と対向配置された電荷蓄積用電極を有する撮像素子が開示されている。この撮像素子では、光電変換によって生成した電荷を電荷蓄積用電極上に蓄えることが可能となるため、露光開始時に電荷蓄積部を完全空乏化し、電荷を消去することが可能となる。その結果、kTCノイズが大きくなり、ランダムノイズが悪化するといった現象の発生が抑制され、撮像画質の低下が低減される。更に、特許文献1では、光電変換層に蓄積した電荷の再結合を防止すると共に、第1電極への転送効率を増加させる構成として、光電変換層を、下層半導体層と上層光電変換層との積層構造とした例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
ところで、上記下層半導体層は、例えばIGZO等の酸化物半導体材料を用いて形成されているが、酸化物半導体材料は、水素によって容易に還元され、酸素欠陥が発生する。このため、下層半導体層が設けられた撮像素子では、動作の安定性が低下する虞があり、信頼性の向上が求められている。
【0007】
信頼性を向上させることが可能な撮像素子および撮像装置を提供することが望ましい。
【0008】
本開示の一実施形態の撮像素子は、複数の画素が配置された有効画素領域および有効画素領域の周囲に設けられた周辺領域を有する半導体基板と、半導体基板の受光面側に設けられると共に、複数の電極からなる第1電極と、第1電極と対向配置された第2電極と、第1電極と第2電極との間に順に積層して設けられると共に、有効画素領域に延在する、酸化物半導体材料を含む電荷蓄積層および光電変換層とを有する光電変換部と、光電変換層の上方および側面ならびに電荷蓄積層の側面を覆う第1の水素ブロック層と、半導体基板と光電変換部との間に設けられた層間絶縁層と、有効画素領域と周辺領域との間の少なくとも一部において層間絶縁層を分離すると共に有効画素領域の周囲に連続して設けられ、第1の水素ブロック層が側面および底面を覆う分離溝とを備えたものである。
【0009】
本開示の一実施形態の撮像装置は、上記本開示の一実施形態の撮像素子を有するものである。
【0010】
本開示の一実施形態の撮像素子および一実施形態の撮像装置では、半導体基板と光電変換部との間に設けられた層間絶縁層を有効画素領域と周辺領域との間で分離する分離溝を設け、その分離溝の側面および底面に、光電変換部を構成する電荷蓄積層および光電変換層の上方ならびに光電変換層および電荷蓄積層の側面を覆う第1の水素ブロック層を延在させた。これにより、層間絶縁層を介した光電変換層および電荷蓄積層への水素の侵入を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る撮像素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図2】
図1に示した撮像素子の平面構成の一例を表す模式図である。
【
図3】
図1に示した撮像素子の平面構成の他の例を表す模式図である。
【
図4】
図1に示した撮像素子の平面構成の他の例を表す模式図である。
【
図5】
図1に示した撮像素子の平面構成の他の例を表す模式図である。
【
図7】
図1に示した撮像素子の下部電極および制御部を構成するトランジスタの配置を表す模式図である。
【
図8A】
図1に示した有機光電変換部を構成する下部電極のレイアウトの一例を表す平面模式図である。
【
図8B】
図8Aに示した下部電極のレイアウトの透視斜視図である。
【
図9A】
図1に示した有機光電変換部を構成する下部電極のレイアウトの他の例を表す平面模式図である。
【
図9B】
図9Aに示した下部電極のレイアウトの透視斜視図である。
【
図10】
図1に示した一の無機光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの一例を表す平面模式図である。
【
図11】
図1に示した他の無機光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの一例を表す平面模式図である。
【
図12】
図1に示した蓄積電極を駆動するための信号線配置図である。
【
図13】隣接する光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の一部を表す図である。
【
図14】隣接する光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の一部を表す図である。
【
図15】隣接する光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の一部を表す図である。
【
図16A】
図1に示した撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
【
図17】
図1に示した撮像素子の一動作例を表すタイミング図である。
【
図18】本開示の変形例1に係る撮像素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図19】
図18に示した撮像素子の平面構成の一例を表す模式図である。
【
図20】本開示の変形例2に係る撮像素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図21】
図20に示した撮像素子の平面構成の一例を表す模式図である。
【
図22】
図20に示した撮像素子の平面構成の他の例を表す模式図である。
【
図23】本開示の変形例3に係る撮像素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図24】
図23に示した撮像素子の平面構成の一例を表す模式図である。
【
図25】本開示の変形例4に係る撮像素子の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図26】本開示の変形例4に係る撮像素子の概略構成の他の例を表す断面模式図である。
【
図27】本開示の変形例5に係る撮像素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図28】本開示の変形例6に係る撮像素子の概略構成を表す断面模式図である。
【
図29】本開示の第2の実施の形態に係る撮像素子の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図30】本開示の第2の実施の形態に係る撮像素子の概略構成の他の例を表す断面模式図である。
【
図31】本開示の変形例7に係る有機光電変換部を構成する下部電極のレイアウトの他の例を表す平面模式図である。
【
図32】本開示の変形例7に係る一の無機光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの他の例を表す平面模式図である。
【
図33】本開示の変形例7に係る他の無機光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの他の例を表す平面模式図である。
【
図34】本開示の変形例7に係る光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の他の例を表す図である。
【
図35】本開示の変形例7に係る光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の他の例を表す図である。
【
図36】本開示の変形例7に係る光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の他の例を表す図である。
【
図37】本開示の変形例7に係る光電変換部およびこれに関連する各種トランジスタに接続される配線の他の例を表す図である。
【
図38】
図1などに示した撮像素子を画素として用いた撮像装置の構成を表すブロック図である。
【
図39】
図38に示した撮像装置を用いた電子機器(カメラ)の一例を表す機能ブロック図である。
【
図40】体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図41】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図42】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図43】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【
図44】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1の実施の形態(有効画素領域と周辺領域との間に層間絶縁層を分離する分離溝を有する撮像素子の例)
1-1.撮像素子の構成
1-2.撮像素子の製造方法
1-3.作用・効果
2.変形例1(分離溝を有効画素領域の周囲に2重に設けた例)
3.変形例2(分離溝をパッド電極の周囲に設けた例)
4.変形例3(分離溝を有効画素領域の周囲およびパッド電極の周囲にそれぞれ設けた例)
5.変形例4(分離溝の深さの例)
6.変形例5(光電変換部20の下層に第2の水素ブロック層を設けた例)
7.変形例6(下部電極上の絶縁層を第2の水素ブロック層として形成した例)
8.第2の実施の形態
(有効画素領域と周辺領域との間に、さらにガードリングを有する撮像素子の例)
9.変形例7(画素レイアウトの他の例)
10.適用例
11.応用例
【0013】
<1.第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子10A)の断面構成を模式的に表したものである。
図2は、
図1に示した撮像素子10Aの平面構成の一例を模式的に表したものであり、
図3~
図5は、
図1に示した撮像素子10Aの平面構成の他の例を模式的に表したものである。なお、
図1は、
図2に示したI-I線における断面を表している。
図6は、
図1に示した撮像素子10Aの等価回路図である。
図7は、
図1に示した撮像素子10の下部電極21および制御部を構成するトランジスタの配置を模式的に表したものである。撮像素子10Aは、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像装置(撮像装置1;
図38参照)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。撮像装置1は、複数の画素が配置された有効画素領域110Aと、その周辺に設けられ、例えば行走査部131などの周辺回路が形成された周辺領域110Bとを有する。複数の画素には、それぞれ、撮像素子10Aが形成されている。
【0014】
撮像素子10Aは、半導体基板30の受光面(第1面;面30S1)に光電変換部20が設けられたものであり、光電変換部20は、半導体基板30側から、複数の電極からなる下部電極21(第1電極)、絶縁層22、電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25(第2電極)がこの順に積層された構成を有する。電荷蓄積層23および光電変換層24は、有効画素領域110Aに設けられた複数の画素に対する共通層として、例えば有効画素領域110Aの全面に延在して形成されており、さらに、光電変換層24の上方および側面ならびに電荷蓄積層23の側面を覆う水素ブロック層26(第1の水素ブロック層)が形成されている。本実施の形態の撮像素子10Aは、半導体基板30と光電変換部20との間に、有効画素領域110A側と周辺領域110B側と分離する分離溝29Hを有する層間絶縁層29が設けられたものである。分離溝29Hの側面および底面は水素ブロック層26によって覆われている。この分離溝29Hが、本開示の「分離溝」の一具体例に相当する。なお、撮像素子10Aは、互いに隣接する4つの画素が、それぞれに対応する1つのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3を共有する、画素共有構造を有するものである。
【0015】
(1-1.撮像素子の構成)
撮像素子10Aは、例えば、有機材料を用いて形成された1つの光電変換部20と、2つの無機光電変換部32B,32Rとが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型の撮像素子である。光電変換部20は、上記のように、半導体基板30の第1面(裏面;面30S1)側に設けられている。無機光電変換部32B,32Rは、半導体基板30内に埋め込み形成され、半導体基板30の厚み方向に積層されている。
【0016】
光電変換部20は、詳細は後述するが、対向配置された下部電極21と上部電極25との間に、電荷蓄積層23および光電変換層24を有し、下部電極21と電荷蓄積層23との間には、絶縁層22が設けられている。光電変換部20は、下部電極21が複数の電極(読み出し電極21A、蓄積電極21Bおよびシールド電極21C)から構成されている。読み出し電極21Aは、絶縁層22に形成された開口22Hを介して電荷蓄積層23と電気的に接続されている。光電変換層24は、p型半導体およびn型半導体を含んで構成され、層内にバルクヘテロ接合構造を有する。バルクヘテロ接合構造は、p型半導体およびn型半導体が混ざり合うことで形成されたp/n接合面である。
【0017】
光電変換部20と、無機光電変換部32B,32Rとは、互いに異なる波長域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。具体的には、例えば、光電変換部20では、緑(G)の色信号を取得する。無機光電変換部32B,32Rでは、吸収係数の違いにより、それぞれ、青(B)および赤(R)の色信号を取得する。これにより、撮像素子10Aでは、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0018】
なお、本実施の形態では、光電変換によって生じる電子および正孔の対(電子-正孔対)のうち、電子を信号電荷として読み出す場合(n型半導体領域を光電変換層とする場合)について説明する。また、図中において、「p」「n」に付した「+(プラス)」は、p型またはn型の不純物濃度が高いことを表している。
【0019】
半導体基板30の第2面(表面;30S2)には、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD1(半導体基板30内の領域35),FD2,FD3と、転送トランジスタTR2trs,TR3trsと、アンプトランジスタ(変調素子)TR1amp,TR2ampと、リセットトランジスタTR1rst,TR2rstと、選択トランジスタTR1sel,TR2selが設けられている。なお、図面では、半導体基板30の第1面(面30S1)側を光入射側S1、第2面(面30S2)側を配線層側S2と表している。半導体基板30の第2面(面30S2)側には、多層配線層40と、ロジック基板60と、支持基板70とがこの順に積層されている。
【0020】
多層配線層40は、例えば、配線層41,42,43が絶縁層44内に積層された構成を有している。ロジック基板60には、ロジック回路(図示せず)と、外部出力に用いられるパッド電極61(伝送電極)が設けられている。パッド電極61は、周辺領域110Bにおいて、ロジック基板60の半導体基板30側の面上に複数(
図2では6つ)配設されている。複数のパッド電極61は、
図2に示したように、例えば矩形形状を有するロジック基板60の1辺に、一方向(例えばZ軸方向)に配置されているがこれに限らない。例えば
図3に示したように、ロジック基板60の対向する2辺に配置してもよいし、例えば
図4に示したように、交差する2辺に配置してもよい。あるいは、例えば
図5に示したように、4辺それぞれに配置してもよい。また、
図2~
図5では、複数のパッド電極61を配置した例を示したが、パッド電極61は1つでもよい。パッド電極61上には、半導体基板30および多層配線層40を貫通する開口Hが設けられている。パッド電極61は、この開口Hを介して外部と電気的な接続がなされるようになっている。接続は、例えば、ワイヤボンドまたはバンプなどの方法によりなされる。
【0021】
光電変換部20は、上記のように、下部電極21、絶縁層22、電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25が、半導体基板30の第1面(面30S1)の側からこの順に積層されている。下部電極21は、例えば、撮像素子10Aごとに分離形成されると共に、絶縁層22を間に互いに分離された読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bと、互いに隣接する4つの画素を囲うシールド電極21Cとから構成されている。下部電極21のうち、読み出し電極21Aは、例えば
図8Aおよび
図9Aに示したように、互いに隣接する2つあるいは4つの画素間で共有されると共に、絶縁層22に設けられた開口22Hを介して電荷蓄積層23と電気的に接続されている。電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25は、
図1では、複数の撮像素子10Aに共通した連続層として設けられ、有効画素領域110Aの全面に延在している。上部電極25上には、さらに水素ブロック層26が設けられている。水素ブロック層26は、例えば周辺領域110Bにおいて、上部電極25上から上部電極25、光電変換層24、電荷蓄積層23および絶縁層22の側面を覆うように設けられている。
【0022】
半導体基板30の第1面(面30S1)と下部電極21との間には、例えば、固定電荷層27、絶縁層28および層間絶縁層29が、半導体基板30側からこの順に設けられている。層間絶縁層29には、上記のように、有効画素領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝29Hが周辺領域110Bに設けられている。上記水素ブロック層26は、さらに、層間絶縁層29上を延在し、層間絶縁層29に設けられた分離溝29Hの側面および底面を被覆している。水素ブロック層26上には、第1保護層51およびオンチップレンズ層52がこの順に設けられている。
【0023】
半導体基板30の第1面(面30S1)と第2面(面30S2)との間には貫通電極34A,34B,34Cが設けられている。貫通電極34Aは、光電変換部20の読み出し電極21Aと電気的に接続されており、光電変換部20は、貫通電極34を介して、例えば、アンプトランジスタTR1ampのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD1を兼ねるリセットトランジスタRST(リセットトランジスタTR1rst)の一方のソース/ドレイン領域に接続されている。これにより、撮像素子10Aでは、半導体基板30の第1面(面30S21)側の光電変換部20で生じた電荷(ここでは、電子)を半導体基板30の第2面(面30S2)側に良好に転送し、特性を高めることが可能となっている。貫通電極34Bは、光電変換部20の蓄積電極21Bと電気的に接続されており、これにより、蓄積電極21Bには、読み出し電極21Aと独立して電圧を印加可能となっている。貫通電極34Cは、シールド電極21Cと電気的に接続されており、これにより、隣接する画素への電荷のリークが抑制されている。
【0024】
貫通電極34A,34B,34Cの下端は、配線層41にそれぞれ接続されている。特に、貫通電極34Aは、配線層41内の接続部41Aに接続されており、接続部41Aと、フローティングディフュージョンFD1(領域35)とは、例えば、下部第1コンタクト45を介して接続されている。貫通電極34Aの上端は、例えば、パッド部35A、ビアV2、パッド部36AおよびビアV1を介して読み出し電極21Aに接続されている。
【0025】
貫通電極34Aは、例えば、互いに隣接する4つの画素に対して1つずつ設けられている。貫通電極34Aは、各画素の光電変換部20とアンプトランジスタTR1ampのゲートGampおよびフローティングディフュージョンFD1とのコネクタとしての機能を有すると共に、光電変換部20において生じた電荷(ここでは、電子)の伝送経路となっている。
【0026】
フローティングディフュージョンFD1(リセットトランジスタTR1rstの一方のソース/ドレイン領域)の隣にはリセットトランジスタTR1rstのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷を、リセットトランジスタTR1rstによりリセットすることが可能となる。
【0027】
本実施の形態の撮像素子10Aでは、上部電極25側から光電変換部20に入射した光は、光電変換層24で吸収される。これによって生じた励起子は、光電変換層24を構成する電子供与体と電子受容体との界面に移動し、励起子分離、即ち、電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷(電子および正孔)は、キャリアの濃度差による拡散や、陽極(ここでは、上部電極25)と陰極(ここでは、下部電極21)との仕事関数の差による内部電界によってそれぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流として検出される。また、下部電極21と上部電極25との間に電位を印加することによって、電子および正孔の輸送方向を制御することができる。
【0028】
以下、各部の構成や材料などについて説明する。
【0029】
光電変換部20は、選択的な波長域(例えば、450nm以上650nm以下)の一部または全部の波長域に対応する緑色光を吸収して、電子-正孔対を発生させる光電変換素子である。
【0030】
下部電極21は、上記のように、分離形成された読み出し電極21A、蓄積電極21Bおよびシールド電極21Cから構成されている。読み出し電極21Aは、光電変換層24内で発生した電荷(ここでは、電子)をフローティングディフュージョンFD1に転送するためのものであり、例えば、ビアV1、パッド部36A、ビアV2、パッド部35A、貫通電極34A、接続部41Aおよび下部第1コンタクト45を介してフローティングディフュージョンFD1に接続されている。蓄積電極21Bは、光電変換層24内で発生した電荷のうち、信号電荷として電子を電荷蓄積層23内に蓄積するためのものである。蓄積電極21Bは、半導体基板30内に形成された無機光電変換部32B,32Rの受光面と正対して、これらの受光面を覆う領域に設けられている。蓄積電極21Bは、読み出し電極21Aよりも大きいことが好ましく、これにより、多くの電荷を蓄積することができる。シールド電極21Cは、上記のように、隣接する画素への電荷のリークを抑制するためのものである。
【0031】
下部電極21は、光透過性を有する導電膜により構成され、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)により構成されている。但し、下部電極21の構成材料としては、このITOの他にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO2)系材料、あるいは亜鉛酸化物(ZnO)にドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)添加のガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウム(In)添加のインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、この他にも、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIN2O4、CdO、ZnSnO3などを用いてもよい。下部電極21の厚みは、例えば20nm~200nmであることが好ましく、より好ましくは、30nm以上100nm以下である。
【0032】
絶縁層22は、蓄積電極21Bと電荷蓄積層23とを電気的に絶縁するためのものである。絶縁層22は、下部電極21を覆うように、例えば、層間絶縁層29および下部電極21上に設けられている。また、絶縁層22には、下部電極21のうち、読み出し電極21A上に開口22Hが設けられており、この開口22Hを介して、読み出し電極21Aと電荷蓄積層23とが電気的に接続されている。絶縁層22は、例えば、例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)および酸窒化シリコン(SiON)などのうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。なお、上記化学式は一例であり、上記表記の他、化学量論に則さない同種の化合物も含むものとする。以下に記載する化学式についても同様である。絶縁層22の厚みは、例えば、20nm~500nmである。
【0033】
電荷蓄積層23は、光電変換層24の下層、具体的には、絶縁層22と光電変換層24との間に設けられ、光電変換層24で発生した信号電荷(ここでは、電子)を蓄積するためのものである。電荷蓄積層23は、光電変換層24よりも電荷の移動度が高く、且つ、バンドギャップが大きな材料を用いて形成されていることが好ましい。例えば、電荷蓄積層23の構成材料のバンドギャップは、3.0eV以上であることが好ましい。このような材料としては、例えば、IGZOなどの酸化物半導体材料および有機半導体材料などが挙げられる。有機半導体材料としては、例えば、遷移金属ダイカルコゲナイド、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、グラフェン、カーボンナノチューブ、縮合多環炭化水素化合物および縮合複素環化合物などが挙げられる。電荷蓄積層23の厚みは、例えば10nm以上300nm以下である。上記材料によって構成された電荷蓄積層23を光電変換層24の下層に設けることにより、電荷蓄積時における電荷の再結合を防止し、転送効率を向上させることが可能となる。
【0034】
光電変換層24は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。光電変換層24は、例えば、それぞれp型半導体またはn型半導体として機能する有機材料(p型半導体材料またはn型半導体材料)を2種以上含んで構成されている。光電変換層24は、層内に、このp型半導体材料とn型半導体材料との接合面(p/n接合面)を有する。p型半導体は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能するものであり、n型半導体は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能するものである。光電変換層24は、光を吸収した際に生じる励起子が電子と正孔とに分離する場を提供するものであり、具体的には、電子供与体と電子受容体との界面(p/n接合面)において、励起子が電子と正孔とに分離する。
【0035】
光電変換層24は、p型半導体材料およびn型半導体材料の他に、所定の波長域の光を光電変換する一方、他の波長域の光を透過させる有機材料、いわゆる色素材料を含んで構成されていてもよい。光電変換層24をp型半導体材料、n型半導体材料および色素材料の3種類の有機材料を用いて形成する場合には、p型半導体材料およびn型半導体材料は、可視領域(例えば、450nm~800nm)において光透過性を有する材料であることが好ましい。光電変換層24の厚みは、例えば50nm~500nmである。
【0036】
光電変換層24を構成する有機材料としては以下の材料が挙げられる。例えば、色素材料としては、ローダミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン誘導体、サブフタロシアニン系色素およびそれらの誘導体が挙げられる。この他、色素材料以外の有機材料としては、ペンタセン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、フラーレンおよびそれらの誘導体が挙げられる。光電変換層24は、上記有機材料を2種以上組み合わせて構成されている。上記有機材料は、その組み合わせによってp型半導体またはn型半導体として機能する。
【0037】
なお、本実施の形態では、光電変換部20は、緑色光を光電変換する素子としたが、青色光または赤色光を光電変換する素子として構成するようにしてもよい。その場合には、光電変換層24を構成する色素材料としては、以下が挙げられる。青色光を光電変換する場合には、例えば、クマリン酸色素、トリス-8-ヒドリキシキノリアルミニウム(Alq3)、メラシアニン系色素およびそれらの誘導体が挙げられる。赤色光を光電変換する場合には、例えば、フタロシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0038】
また、光電変換層24には、以下の有機材料を用いてもよい。上記以外の有機材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、およびフルオランテンあるいはそれらの誘導体のうちのいずれか1種が好適に用いられる。あるいは、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレンおよびジアセチレンなどの重合体やそれらの誘導体を用いてもよい。加えて、金属錯体色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フェニルキサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ロダシアニン系色素、キサンテン系色素、大環状アザアヌレン系色素、アズレン系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、アントラセンおよびピレンなどの縮合多環芳香族および芳香環あるいは複素環化合物が縮合した鎖状化合物、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基を結合鎖として持つキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾールなどの二つの含窒素複素環、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基により結合したシアニン系類似の色素などを好ましく用いることができる。なお、上記金属錯体色素としては、ジチオール金属錯体系色素、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、またはルテニウム錯体色素が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0039】
更に、本実施の形態では、有機材料を用いて光電変換層24を構成する例を示したがこれに限らない。例えば、光電変換層24は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、結晶セレン、アモルファスセレン、カルコパイライト系化合物および化合物半導体などの無機材料を用いて構成するようにしてもよい。カルコパイライト系化合物の一例としては、CIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2およびAgInSe2などが挙げられる。化合物半導体の一例としては、GaAs、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInPおよびInGaAsP等のIII-V族化合物半導体の他に、CdSe、CdS、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、ZnSe、ZnS、PbSe、PbSなどが挙げられる。上記無機材料は、例えば、量子ドット形状で用いられる。
【0040】
光電変換層24と下部電極21との間(例えば、電荷蓄積層23と光電変換層24との間)および光電変換層24と上部電極25との間には、他の層が設けられていてもよい。具体的には、例えば、下部電極21側から順に、電荷蓄積層23、電子ブロッキング膜、光電変換層24、正孔ブロッキング膜および仕事関数調整層などが積層されていてもよい。更に、下部電極21と光電変換層24との間に下引き層および正孔輸送層や、光電変換層24と上部電極25との間にバッファ層や電子輸送層を設けるようにしてもよい。
【0041】
上部電極25は、下部電極21と同様に光透過性を有する導電膜により構成されている。撮像素子10Aを1つの画素として用いた撮像装置1では、上部電極25は画素毎に分離されていてもよいし、各画素に共通の電極として形成されていてもよい。上部電極25の厚みは、例えば10nm~200nmである。上部電極25には、図示していないが、配線が電気的に接続されており、上部電極25に電圧が印加させるようになっている。
【0042】
水素ブロック層26は、電荷蓄積層23や光電変換層24への水素(H2)の侵入を抑制するためのものであり、上記のように、有効画素領域110A内において上部電極25上に設けられ、周辺領域110Bにおいて、上部電極25の上面から上部電極25、光電変換層24、電荷蓄積層23の側面ならびに絶縁層22の上面および側面を介して層間絶縁層29に積層され、例えば周辺領域110Bの端部まで延在して形成されている。更に、層間絶縁層29には、上記のように、有効画素領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝29Hが設けられており、水素ブロック層26は、この分離溝29Hの側面および底面も被覆している。
【0043】
水素ブロック層26を構成する材料としては、例えば絶縁材料が挙げられる。具体的には、光透過性を有し、高い封止性を有する材料を用いることが好ましく、このような材料としては、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属酸化物、窒化シリコン、炭素含有シリコン酸化物(SiOC)などが挙げられる。あるいは、水素ブロック層26には、ITO(インジウム錫酸化物)などの酸化物半導体を用いてもよい。また、水素ブロック層26は、例えば、絶縁層22よりも水素含有量が少ない、もしくは、膜自身が水素を含まないことが好ましい。更に、水素ブロック層26は、応力が小さく、さらに紫外線吸収能を有することが好ましい。更にまた、含有する水分量が少ない膜を形成すると共に、水分(H2O)の侵入を抑制することが好ましい。以上から、水素ブロック層26の材料としては、上記材料の中でも酸化アルミニウムを用いることが望ましい。水素ブロック層26は、上記材料を用いて形成された単層膜、あるいは上記材料のうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。水素ブロック層26の厚みは、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0044】
固定電荷層27は、正の固定電荷を有する膜でもよいし、負の固定電荷を有する膜でもよい。負の固定電荷を有する膜の材料としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化ランタン(La2O3)、酸化プラセオジム(Pr2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ネオジム(Nd2O3)、酸化プロメチウム(Pm2O3)、酸化サマリウム(Sm2O3)、酸化ユウロピウム(Eu2O3)、酸化ガドリニウム(Gd2O3)、酸化テルビウム(Tb2O3)、酸化ジスプロシウム(Dy2O3)、酸化ホルミウム(Ho2O3)、酸化ツリウム(Tm2O3)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)、酸化ルテチウム(Lu2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化ハフニウム(HfON)、酸窒化アルミニウム(AlON)などが挙げられる。
【0045】
固定電荷層27は、2種類以上の膜を積層した構成を有していてもよい。それにより、例えば負の固定電荷を有する膜の場合には正孔蓄積層としての機能をさらに高めることが可能である。
【0046】
絶縁層28は、半導体基板30の第1面(面30S1)に形成された固定電荷層27上および貫通電極34A,34B,34Cが形成される貫通孔30H1,30H2,30H3内において固定電荷層27と貫通電極34A,34B,34Cとの間に設けられ、貫通電極34と半導体基板30との間を電気的に絶縁するためのものである。絶縁層28の材料は特に限定されないが、例えば、酸化シリコン、TEOS、窒化シリコンおよび酸窒化シリコンなどによって形成されている。
【0047】
層間絶縁層29は、半導体基板30(具体的には、絶縁層28)と光電変換部20との間に設けられたものである。層間絶縁層29の層内には、例えば、読み出し電極21Aと貫通電極34Aとを電気的に接続するパッド部35A,36A、蓄積電極21Bと貫通電極34Bとを電気的に接続するパッド部35B,36B、シールド電極21Cと貫通電極34Cとを電気的に接続するパッド部35C,36Cおよび各電極とパッド部とを電気的に接続するビアV1,V2などの配線が設けられている。層間絶縁層29は、絶縁層28と同様に、例えば、酸化シリコン、TEOS、窒化シリコンおよび酸窒化シリコンなどのうちの1種よりなる単層膜、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0048】
層間絶縁層29には、さらに、周辺領域110Bにおいて有効画素領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝29Hが設けられている。この分離溝29Hは、具体的には、平面視において、周辺領域110Bの周縁部に配置されたパッド電極61上に設けられた開口Hと有効画素領域110Aとの間に設けられている。分離溝29Hの側面および底面は、上記のように水素ブロック層26によって覆われており、これにより、例えば、開口Hから層間絶縁層29を介した電荷蓄積層23や光電変換層24への水素の侵入が抑制される。本実施の形態では、分離溝29Hは、周辺領域110Bにおいて、有効画素領域110Aを囲むように、連続して設けられている。なお、分離溝29Hは、層間絶縁層29および絶縁層28を貫通し、半導体基板30の第1面(面30S1)まで達していることが好ましいがこれに限らない。
【0049】
第1保護層51は、例えば、有効画素領域110Aおよび周辺領域110Bを含む、半導体基板30の全面に設けられている。第1保護層51は、例えば、光透過性を有すると共に、高い封止性を有する材料を用いて形成することが好ましい。このような材料としては、例えば酸化アルミニウム、窒化シリコンおよび炭素含有シリコン酸化物などの絶縁材料が挙げられる。また、第1保護層51は、水素ブロック層26と同様に、例えば、絶縁層22よりも水素含有量が少ない、もしくは、膜自身が水素を含まないことが好ましい。更に、第1保護層51は、応力が小さく、さらに紫外線吸収能を有することが好ましい。更にまた、第1保護層51は、含有する水分量が少ないことが好ましく、水分(H2O)の侵入を抑制することが好ましい。以上のことから、第1保護層51の材料としては、上記材料の中でも酸化アルミニウムを用いることが望ましい。酸化アルミニウムを用いて第1保護層51を形成することで、第1保護層51に水素ブロック機能が付加されると共に、水素ブロック層26と第1保護層51とを一括で形成することが可能となる。
【0050】
なお、第1保護層51は、上記絶縁層28および層間絶縁層29と同様の材料を用いて形成してもよい。例えば、第1保護層51は、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコンなどのうちの1種よりなる単層膜か、あるいは、酸化アルミニウム、窒化シリコン、炭素含有シリコン酸化膜、酸化シリコンおよび酸窒化シリコンのうちの2種以上よりなる積層膜としてもよい。第1保護層51の厚みは、例えば、100nmから1000nmである。
【0051】
第1保護層51上には、有効画素領域110Aにおいて例えば単位画素P毎にオンチップレンズ52L(マイクロレンズ)が形成されたオンチップレンズ層52が設けられている。オンチップレンズ52Lは、上方から入射した光を、光電変換部20、無機光電変換部32Bおよび無機光電変換部32Rの各受光面へ集光させるものである。なお、オンチップレンズ52Lの下方には、分光を制御するカラーフィルタなどの光学部材を設けるようにしてもよい。オンチップレンズ層52の材料としては、無機膜として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの他に、水素ブロック層26に用いられる酸化アルミニウムが挙げられる。酸化アルミニウムを用いてオンチップレンズ層52を形成することで、オンチップレンズ層52には、レンズ機能に加えて水素ブロック機能が付加される。また、酸化アルミニウムを用いて第1保護層51およびオンチップレンズ層52を形成することで、水素ブロック層26、第1保護層51およびオンチップレンズ層52を一括で形成することも可能となる。この他、オンチップレンズ層52は、有機膜中に例えば金属微粒子が分散された金属酸化物含有樹脂を用いて形成するようにしてもよい。
【0052】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成され、所定の領域(例えば画素部1a)にpウェル31を有している。pウェル31の第2面(面30S2)には、上述した転送トランジスタTR1trs,TR2trs,TR3trs、アンプトランジスタTR1amp,TR2amp、リセットトランジスタTR1rst,TR2rst、選択トランジスタTR1sel,TR2selなどが設けられている。半導体基板30の周辺領域110Bには、ロジック回路を構成する、例えば、画素読み出し回路や画素駆動回路などが設けられていてもよい。
【0053】
撮像素子10Aは、上記のように、1つのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3を、互いに隣接する4つの画素が共有するようにレイアウトされている。
図8Aは、光電変換部20を構成する下部電極21のレイアウトの一例を表したものであり、
図8Bは、
図8Aに示した下部電極21のレイアウトを透視斜視図として表したものである。
図9Aは、光電変換部20を構成する下部電極21のレイアウトの一例を表したものであり、
図9Bは、
図9Aに示した下部電極21のレイアウトを透視斜視図として表したものである。
図10は、無機光電変換部32Bおよびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの一例を表したものである。
図11は、無機光電変換部Rおよびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの一例を表したものである。
図12は、光電変換部20において、蓄積電極21Bを駆動するための信号配線の一例を表したものである。
図13~
図15は、各光電変換部20,32B,32Rおよびこれらに関連する各種トランジスタに接続される配線の一例を表したものである。
【0054】
光電変換部20では、互いに隣接する4つの光電変換部20は1つのフローティングディフュージョンFD1に接続されている。フローティングディフュージョンFD1には、1つのリセットトランジスタTR1rstと電源線Vddが直列に接続されている。また、これとは別に、フローティングディフュージョンFD1には、アンプトランジスタTR1ampおよび選択トランジスタTR1selのそれぞれ1つと信号線(データ出力線)VSL1とが直列に接続されている。本実施の形態の光電変換部20では、互いに隣接する4つの蓄積電極21Bと、それぞれ各画素毎に1つずつ設けられたリセットトランジスタTR1rst、アンプトランジスタTR1ampおよび選択トランジスタTR1selとで、互いに隣接する4つの光電変換部20の読み出し動作およびリセット動作を担う1組の制御部(第1の制御部)を構成している。互いに隣接する4つの光電変換部20から信号電荷を読み出す際には、この第1の制御部を用いて、例えば時分割して順番に読み出し処理が行われる。
【0055】
無機光電変換部32Bでは、互いに隣接する4つのフォトダイオードPD2が、各画素毎に1つずつ設けられた4つの転送トランジスタTR2trsを介して、1つのフローティングディフュージョンFD2に接続されている。
【0056】
無機光電変換部32Rでは、無機光電変換部32Bと同様に、互いに隣接する4つのフォトダイオードPD3が、各画素毎に1つずつ設けられた4つの転送トランジスタTR3trsを介して、1つのフローティングディフュージョンFD3に接続されている。
【0057】
1つのフローティングディフュージョンFD2には、1つのリセットトランジスタTR2rstと、電源線Vddが直列に接続されている。また、これとは別に、フローティングディフュージョンFD2には、アンプトランジスタTR2ampおよび選択トランジスタTR2selのそれぞれ1つと信号線(データ出力線)VSL2が直列に接続されている。本実施の形態のように画素共有構造を有する撮像素子10Aでは、無機光電変換部32Bおよび無機光電変換部32Rは、各画素毎に設けられた転送トランジスタTR2trsおよび転送トランジスタTR3trsと、各画素毎に1つずつ設けられたリセットトランジスタTR2rst、アンプトランジスタTR2ampおよび選択トランジスタTR2selとで、互いに隣接する4つの無機光電変換部32Bおよび無機光電変換部32Rの読み出し動作およびリセット動作を担う1組の制御部(第2の制御部)を構成している。即ち、4画素分の積層型の撮像素子10Aに備わる4つの無機光電変換部32Bおよび4つの無機光電変換部32Rでは、転送トランジスタTR2trs,TR3trsを除いて、1組の制御部(第2の制御部)を共有した構成となっている。互いに隣接する4つの無機光電変換部32Bに対応するフローティングディフュージョンFD2および4つの無機光電変換部32Rに対応するフローティングディフュージョンFD3から信号電荷を読み出す際には、この第2の制御部を用いて、例えば時分割して順番に読み出し処理が行われる。
【0058】
なお、本実施の形態では、互いに隣接する4つの無機光電変換部32Bおよび無機光電変換部32Rが共有するフローティングディフュージョンFD2,FD3は、それぞれ、1画素分ずつ離間した場所に配置されている。これにより、撮像素子10Aの高集積化を実現することが可能となる。
【0059】
(1-2.撮像素子の製造方法)
本実施の形態の撮像素子10Aは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0060】
まず、半導体基板30内に、第1の導電型のウェルとして例えばpウェル31を形成し、このpウェル31内に第2の導電型(例えばn型)の無機光電変換部32B,32Rを形成する。半導体基板30の第1面(面30S1)近傍にはp+領域を形成する。
【0061】
半導体基板30の第2面(面30S2)には、例えばフローティングディフュージョンFD1~FD3となるn+領域を形成したのち、ゲート絶縁膜33と、各種転送トランジスタTR1trs,TR2trs,TR3trs、選択トランジスタTR1sel,TR2sel、アンプトランジスタTR1amp,TR2ampおよびリセットトランジスタTR1rst,TR2rstの各ゲートを含むゲート配線層47とを形成する。これにより、各種転送トランジスタTR1trs,TR2trs,TR3trs、選択トランジスタTR1sel,TR2sel、アンプトランジスタTR1amp,TR2ampおよびリセットトランジスタTR1rst,TR2rstが形成される。更に、半導体基板30の第2面(面30S2)上に、下部第1コンタクト45および接続部41Aを含む配線層41~43および絶縁層44からなる多層配線層40を形成する。
【0062】
半導体基板30の基体としては、例えば、半導体基板30と、埋込み酸化膜(図示せず)と、保持基板(図示せず)とを積層したSOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。埋込み酸化膜および保持基板は、半導体基板30の第1面(面30S1)に接合されている。イオン注入後、アニール処理を行う。
【0063】
次いで、半導体基板30の第2面(面30S2)側(多層配線層40側)にロジック基板60が形成された支持基板70を接合して、上下反転する。続いて、半導体基板30をSOI基板の埋込み酸化膜および保持基板から分離し、半導体基板30の第1面(面30S1)を露出させる。以上の工程は、イオン注入およびCVD(Chemical Vapor Deposition)など、通常のCMOSプロセスで使用されている技術にて行うことが可能である。
【0064】
次いで、例えばドライエッチングにより半導体基板30を第1面(面30S1)側から加工し、例えば環状の貫通孔30H1,30H2,30H3,30H4を形成する。貫通孔30H1~30H3の深さは、半導体基板30の第1面(面30S1)から第2面(面30S2)まで貫通するものである。
【0065】
続いて、半導体基板30の第1面(面30S1)および貫通孔30Hの側面に、例えば原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法を用いて固定電荷層27を成膜する。これにより、半導体基板30の第1面(面30S1)、貫通孔30H1,30H2,30H3,30H4の側面および底面に連続する固定電荷層27が形成される。次に、固定電荷層27の半導体基板30の第1面(面30S1)上および貫通孔30H1,30H2,30H3,30H4内に絶縁層28を成膜したのち、さらに、絶縁層28上に、層間絶縁層29を構成する絶縁膜を成膜する。
【0066】
続いて、例えばドライエッチングにより貫通孔30H1,30H2,30H3内に形成された絶縁層28内に、層間絶縁層29を構成する絶縁膜、絶縁層28および固定電荷層27および絶縁層44を貫通し、接続部41Aに到達する貫通孔を形成する。なお、このとき、第1面(面30S1)上の層間絶縁層29を構成する絶縁膜も薄膜化される。次に、層間絶縁層29を構成する絶縁膜上および貫通孔27H内に導電膜を成膜したのち、導電膜上の所定の位置にフォトレジストPRを形成する。その後、エッチングおよびフォトレジストPRを除去することで、半導体基板30の第1面(面30S1)上にパッド部35A,35B,35Cをそれぞれ有する貫通電極34A,34B,34Cが形成される。
【0067】
次に、層間絶縁層29を構成する絶縁膜および貫通電極34A,34B,34C上に、それぞれビアV2、パッド部36,36B,36C、ビアV1を形成したのち、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて層間絶縁層29の表面を平坦化する。続いて、層間絶縁層29上に導電膜を成膜したのち、導電膜の所定の位置にフォトレジストPRを形成する。その後、エッチングおよびフォトレジストPRを除去することで、読み出し電極21A、蓄積電極21Bおよびシールド電極21Cを形成する。次に、層間絶縁層29および読み出し電極21A、蓄積電極21Bおよびシールド電極21C上に絶縁層22を成膜したのち、読み出し電極21A上に開口22Hを設ける。続いて、絶縁層22上に、電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25を形成する。
【0068】
なお、有機材料を用いて電荷蓄積層23やその他有機層を形成する場合には、真空工程において連続的に(真空一貫プロセスで)形成することが望ましい。また、光電変換層24の成膜方法としては、必ずしも真空蒸着法を用いた手法に限らず、他の手法、例えば、スピンコート技術やプリント技術などを用いてもよい。
【0069】
続いて、
図16Aに示したように、上部電極25上の有効画素領域110Aにハードマスクとして、例えば酸化アルミニウム膜26Bを、例えば物理気相成長(physical vapor deposition;PVD)法を用いて、例えば10nm~50nmの厚みで形成する。なお、成膜方法はこれに限らず、例えば、CVD法やALD法を用いてもよい。PVD法の成膜方法としては、例えば、EB(電子ビーム)蒸着法、各種スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング法、RF-DC結合形バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法)などが挙げられる。特に、上部電極25の表面粗さが大きい場合には、被覆性に優れるCVD/ALD法を用いて成膜することが好ましい。但し、CVD/ALD法は、PVD法と比較して成膜レートが顕著に小さい。このため、PVD法で十分に上部電極25を被覆できるのであれば、PVD法を用いることが好ましい。次に、例えばリソグラフィ法を用いて酸化アルミニウム膜26Bをパターニングし、ハードマスクを形成する。なお、後述する
図16Bでは、フォトレジストPRを除去した例を示しているが、酸化アルミニウム膜26Bをパターニングした後にレジストを残し、次の工程を実施するようにしてもよい。
【0070】
次に、
図16Bに示したように、酸化アルミニウム膜26Bをハードマスクとして周辺領域110Bに形成された電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25をエッチングする。続いて、絶縁層22をエッチングする。次に、絶縁層22、酸化アルミニウム膜26Bおよび層間絶縁層29上にフォトレジストPRをパターニングしたのち、例えば
図16Cに示したように、周辺領域110Bに、有効画素領域110Aを囲むと共に、層間絶縁層29および絶縁層28を貫通する分離溝29Hを形成する。
【0071】
続いて、
図16Dに示したように、酸化アルミニウム膜26B上、上部電極25、光電変換層24、電荷蓄積層23および絶縁層22の側面、ならびに分離溝29Hの側面および底面を含む層間絶縁層29の全面に亘って、例えばPVD法を用いて酸化アルミニウム膜26Aを、例えば50nm~1000nmの厚みで成膜する。これにより、酸化アルミニウム膜26A,26Bからなる水素ブロック層26が形成される。なお、酸化アルミニウム膜26Aは、酸化アルミニウム膜26Bと同様に、CVD法やALD法を用いて形成してもよく、例えば、電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25の段差が大きい場合には被覆性の優れるCVD/ALD法を、成膜レートの高さおよび半導体基板30の反り(ストレス)調整を優先する場合には、PVD法を用いることが好ましい。更に、PVD法とCVD/ALD法とを組み合わせて積層膜からなる水素ブロック層26を形成するようにしてもよい。次に、水素ブロック層26上に、第1保護層51を成膜し、分離溝29Hを埋設する。最後に、第1保護層51上にオンチップレンズ層52を形成する。以上により、
図1に示した撮像素子10Aが完成する。
【0072】
撮像素子10Aでは、光電変換部20に、オンチップレンズ52Lを介して光が入射すると、その光は、光電変換部20、無機光電変換部32B,32Rの順に通過し、その通過過程において緑、青、赤の色光毎に光電変換される。以下、各色の信号取得動作について説明する。
【0073】
(光電変換部20による緑色信号の取得)
撮像素子10Aへ入射した光のうち、まず、緑色光が光電変換部20において選択的に検出(吸収)され、光電変換される。
【0074】
光電変換部20は、貫通電極34Aを介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampとフローティングディフュージョンFD1とに接続されている。よって、光電変換部20で発生した電子-正孔対のうちの電子が、下部電極21側から取り出され、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面(面30S2)側へ転送され、フローティングディフュージョンFD1に蓄積される。これと同時に、アンプトランジスタAMPにより、光電変換部20で生じた電荷量が電圧に変調される。
【0075】
また、フローティングディフュージョンFD1の隣には、リセットトランジスタTR1rstのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷は、リセットトランジスタTR1rstによりリセットされる。
【0076】
ここでは、光電変換部20が、貫通電極34Aを介して、アンプトランジスタTR1ampだけでなくフローティングディフュージョンFD1にも接続されているので、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷をリセットトランジスタTR1rstにより容易にリセットすることが可能となる。
【0077】
これに対して、貫通電極34AとフローティングディフュージョンFD1とが接続されていない場合には、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷をリセットすることが困難となり、大きな電圧をかけて上部電極25側へ引き抜くことになる。そのため、光電変換層24がダメージを受ける虞がある。また、短時間でのリセットを可能とする構造は暗時ノイズの増大を招き、トレードオフとなるため、この構造は困難である。
【0078】
図17は、撮像素子10Aの一動作例を表したものである。(A)は、蓄積電極21Bにおける電位を示し、(B)は、フローティングディフュージョンFD1(読み出し電極21A)における電位を示し、(C)は、リセットトランジスタTR1rstのゲート(Gsel)における電位を示したものである。撮像素子10Aでは、読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bは、それぞれ個別に電圧が印加されるようになっている。
【0079】
撮像素子10Aでは、蓄積期間においては、駆動回路から読み出し電極21Aに電位V1が印加され、蓄積電極21Bに電位V2が印加される。ここで、電位V1,V2は、V2>V1とする。これにより、光電変換によって生じた電荷(ここでは、電子)は、蓄積電極21Bに引きつけられ、蓄積電極21Bと対向する電荷蓄積層23の領域に蓄積される(蓄積期間)。因みに、蓄積電極21Bと対向する電荷蓄積層23の領域の電位は、光電変換の時間経過に伴い、より負側の値となる。なお、正孔は、上部電極25から駆動回路へと送出される。
【0080】
撮像素子10Aでは、蓄積期間の後期においてリセット動作がなされる。具体的には、タイミングt1において、走査部は、リセット信号RSTの電圧を低レベルから高レベルに変化させる。これにより、単位画素Pでは、リセットトランジスタTR1rstがオン状態になり、その結果、フローティングディフュージョンFD1の電圧が電源電圧VDDに設定され、フローティングディフュージョンFD1の電圧がリセットされる(リセット期間)。
【0081】
リセット動作の完了後、電荷の読み出しが行われる。具体的には、タイミングt2において、駆動回路から読み出し電極21Aには電位V3が印加され、蓄積電極21Bには電位V4が印加される。ここで、電位V3,V4は、V3<V4とする。これにより、蓄積電極21Bに対応する領域に蓄積されていた電荷(ここでは、電子)は、読み出し電極21AからフローティングディフュージョンFD1へと読み出される。即ち、電荷蓄積層23に蓄積された電荷が制御部に読み出される(転送期間)。
【0082】
読み出し動作完了後、再び、駆動回路から読み出し電極21Aに電位V1が印加され、蓄積電極21Bに電位V2が印加される。これにより、光電変換によって生じた電荷(ここでは、電子)は、蓄積電極21Bに引きつけられ、蓄積電極21Bと対向する光電変換層24の領域に蓄積される(蓄積期間)。
【0083】
(無機光電変換部32B,32Rによる青色信号および赤色信号の取得)
続いて、光電変換部20を透過した光のうち、青色光は無機光電変換部32B、赤色光は無機光電変換部32Rにおいて、それぞれ順に吸収され、光電変換される。無機光電変換部32Bでは、入射した青色光に対応した電子が無機光電変換部32Bのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTR2trsによりフローティングディフュージョンFD2へと転送される。同様に、無機光電変換部32Rでは、入射した赤色光に対応した電子が無機光電変換部32Rのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTR3trsによりフローティングディフュージョンFD3へと転送される。
【0084】
(1-3.作用・効果)
前述したように、近年、CCDイメージセンサ、あるいはCMOSイメージセンサなどの撮像装置では、1画素から、R/G/Bの信号を取り出すことができ、且つ、デモザイク処理を必要としないことから、偽色が発生しない積層型撮像素子が用いられている。この積層型撮像素子は、フォトダイオードが埋め込み形成された半導体基板上に、有機半導体材料を用いた有機光電変換層を備えた有機光電変換部が積層された構成を有する。
【0085】
但し、上記のような積層型撮像素子では、有機光電変換部において生成された電荷は、直接浮遊拡散層FDに蓄積される。このため、有機光電変換部を完全空乏化することは難しく、kTCノイズが大きくなり、ランダムノイズが悪化して撮像画質の低下を引き起こす。このため、有機光電変換部の電荷蓄積部を完全空乏化することが可能な積層型撮像素子として、半導体基板の上方に配置された有機光電変換部において、有機光電変換層を間に対向配置された一対の電極(第1電極および第2電極)のうちの一方の電極(例えば、第1電極)側に、第1電極と離間して配置され、且つ、絶縁層を介して有機光電変換層と対向配置された電荷蓄積用電極を設けた撮像素子が開発されている。
【0086】
この撮像素子では、有機光電変換層を、例えば酸化物半導体材料を用いて形成された下層半導体層と、有機半導体材料を用いて形成された上層光電変換層との積層構造とすることにより、有機光電変換層に蓄積された電荷の再結合を防止すると共に、第1電極への転送効率を増加させることが可能となっている。しかしながら、下層半導体層を構成する酸化物半導体材料は水素によって還元されやすく、これによって酸素欠陥が発生し、動作の安定性が低下する虞がある。
【0087】
これに対して、本実施の形態の撮像素子10Aでは、半導体基板30と光電変換部20との間に設けられた層間絶縁層29を分離する分離溝29Hを、有効画素領域110Aを囲むように周辺領域110Bに設け、分離溝29Hの側面および底面を、水素ブロック層26で覆うようにした。この水素ブロック層26は、例えば酸化アルミニウムによって形成されており、例えば、有効画素領域110Aに延在する上部電極25の上面、上部電極25、光電変換層24、電荷蓄積層23および絶縁層22の側面を覆い、周辺領域110Bにおいて、層間絶縁層29上に直接積層されている。これにより、上部電極25側から、および、例えばパッド電極61上に設けられた開口Hから層間絶縁層29を介した、下部電極21側からの電荷蓄積層23および光電変換層24への水素(H2)の侵入を抑制する。
【0088】
以上のように、本実施の形態では、周辺領域110Bにおいて、有効画素領域110Aを囲むように半導体基板30と光電変換部20との間に設けられた層間絶縁層29を分離する分離溝29Hを設け、その側面および底面を水素ブロック層26で覆うようにした。これにより、層間絶縁層29を介した電荷蓄積層23および光電変換層24への水素(H2)の侵入が抑制され、例えば、電荷蓄積層23における酸素欠陥の発生が低減されるようになり、動作の安定性が向上する。即ち、撮像素子10Aおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0089】
また、本実施の形態では、含有する水素量が少ないことに加えて、含有する水分量が少ない膜を形成可能な材料を用いて水素ブロック層26を形成することにより、光電変換層24への水分(H2O)の侵入が抑制され、光電変換層24の劣化を防ぐことが可能となる。
【0090】
次に、第2の実施の形態および変形例1~7について説明する。なお、第1の実施の形態の撮像素子10Aに対応する構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
<2.変形例1>
図18は、本開示の変形例(変形例1)係る撮像素子(撮像素子10B)の断面構成を模式的に表したものである。
図19は、
図18に示した撮像素子10Bの平面構成の一例を模式的に表したものである。なお、
図18は、
図19に示したII-II線における断面を表している。撮像素子10Bは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本変形例の撮像素子10Bは、
図18および
図19に示したように、周辺領域110Bに、層間絶縁層29を分離すると共に、有効画素領域110Aを囲む分離溝を2重(分離溝29H1および分離溝20H2)に設けた点が上記第1の実施の形態の撮像素子10Aとは異なる。
【0092】
このように、有効画素領域110Aを囲む分離溝29Hは、複数設けるようにしてもよい。これにより、下部電極21側から電荷蓄積層23への水素(H2)の侵入をさらに抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Gおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0093】
<3.変形例2>
図20は、本開示の変形例(変形例2)係る撮像素子(撮像素子10C)の断面構成を模式的に表したものである。
図21は、
図20に示した撮像素子10Cの平面構成の一例を模式的に表したものである。なお、
図20は、
図21に示したIII-III線における断面を表している。撮像素子10Cは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本変形例の撮像素子10Cは、
図20および
図21に示したように、周辺領域110Bに配設された複数のパッド電極61上にそれぞれ形成された開口Hを囲むように分離溝29Hを設けた点が上記第1の実施の形態の撮像素子10Aとは異なる。
【0094】
また、
図21では、複数のパッド電極61上にそれぞれ形成された複数(ここでは6つ)の開口Hをそれぞれ個別に囲む分離溝29Hを設けた例を示したが、これに限らない。例えば、
図22に示したように、分離溝29Hは、例えば周辺領域110Bの1辺に沿って配列された複数の開口Hをまとめて囲むようにしてもよい。
【0095】
層間絶縁層29を介した電荷蓄積層23および光電変換層24への水素(H2)の侵入は、主に、パッド電極61上に設けられ、オンチップレンズ層52からパッド電極61まで貫通する開口Hの側面から起こる。このため、開口Hを囲むように層間絶縁層29を分離する分離溝29Hを設けることで、下部電極21側から電荷蓄積層23への水素(H2)の侵入の大部分を抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Gおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性を向上させることが可能となる。
【0096】
<4.変形例3>
図23は、本開示の変形例(変形例3)係る撮像素子(撮像素子10D)の断面構成を模式的に表したものである。
図24は、
図23に示した撮像素子10Dの平面構成の一例を模式的に表したものである。なお、
図23は、
図24に示したIV-IV線における断面を表している。撮像素子10Dは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本変形例の撮像素子10Dは、例えば、第1の実施の形態と変形例2とを組み合わせたものであり、
図23および
図24に示したように、周辺領域110Bにおいて層間絶縁層29を分離する分離溝(分離溝29H3および分離溝29H4)を、有効画素領域110Aの周囲および複数のパッド電極61上にそれぞれ形成された開口Hの周囲の両方に、それぞれ設けたものである。
【0097】
このように、有効画素領域110Aおよびパッド電極61上の開口Hをそれぞれ分離溝29H3および分離溝29H4で囲むことにより、下部電極21側から電荷蓄積層23への水素(H2)の侵入をさらに抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Gおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0098】
<5.変形例4>
図25は、本開示の変形例(変形例4)係る撮像素子(撮像素子10E)の断面構成の一例を模式的に表したものである。撮像素子10Eは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本変形例の撮像素子10Eは、層間絶縁層29を分離する分離溝29Hをロジック基板60まで貫通させた点が上記第1の実施の形態とは異なる。
【0099】
上記第1の実施の形態および変形例1~3では、分離溝29Hが半導体基板30の第1面(面S1)まで貫通している例を示したが、分離溝29Hの深さ(D1)はこれに限らない。分離溝29Hの深さ(D1)は、開口Hの層間絶縁層29の表面(面29S)からパッド電極61までの深さ(D2)よりも浅くてもよいし、本変形例のように深くてもよい。また、上記第1の実施の形態および変形例1~3では、分離溝29Hの底面は半導体基板30の第1面(面30S1)となっているが、例えば、半導体基板30の内部に形成してもよい。
【0100】
このように、層間絶縁層29を分離する分離溝29Hは、ロジック基板60まで貫通するように形成してもよい。これにより、開口Hから、例えば、絶縁層44および貫通電極34A,34B,34Cが貫通する貫通孔34H1,34H2,34H3などを介した電荷蓄積層23への水素(H2)の侵入を抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Gおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0101】
この他、例えば、
図26に示した撮像素子10Fのように、多層配線層40を構成する絶縁層44を有効画素領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝40Hを別途設けるようにしてもよい。これにより、撮像素子10Fは、撮像素子10Eと同様の効果を得ることができる。なお、分離溝40Hの側面および底面には、分離溝29Hと同様に、例えば酸化アルミニウムからなる絶縁層48を形成することが好ましく、さらに、分離溝40H内を絶縁層49で埋設することが好ましい。絶縁層49の材料としては、例えば第1保護層51と同様の材料が挙げられる。
【0102】
<6.変形例5>
図27は、本開示の変形例(変形例5)係る撮像素子(撮像素子10G)の断面構成の一部を模式的に表したものである。撮像素子10Gは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。撮像素子10Gは、下部電極21の下層、例えば、層間絶縁層29上にさらに水素ブロック層81(第2の水素ブロック層)を設けたものである。また、撮像素子10Gは、絶縁層22、電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25が同一の端面を有するように形成されている。本変形例の撮像素子10Gは、上記2点が、第1の実施の形態の撮像素子10Aとは異なる。
【0103】
水素ブロック層81は、上記のように、層間絶縁層29上に、例えば有効画素領域110Aおよび周辺領域110Bの全面に設けられたものであり、電荷蓄積層23の下方からの水素(H2)の侵入を抑制するためのものである。水素ブロック層81を構成する材料としては、例えば、絶縁材料が挙げられる。具体的には、光透過性を有し、高い封止性を有する材料を用いることが好ましく、このような材料としては、例えば酸化アルミニウム、窒化シリコン、炭素含有シリコン酸化膜などが挙げられる。また、水素ブロック層81は、例えば、絶縁層22よりも水素含有量が少ない、もしくは、膜自身が水素を含まないことが好ましい。更に、水素ブロック層81は、応力が小さくい。以上から、水素ブロック層81の材料としては、上記材料の中でも酸化アルミニウムを用いることが望ましい。水素ブロック層81の厚みは、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0104】
以上のように、本変形例では、下部電極21の下層に水素ブロック層81をさらに設けるようにした。これにより、下部電極21側から電荷蓄積層23への水素(H2)の侵入をさらに抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Gおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0105】
なお、本変形例では、下部電極21の下層に設けられる水素ブロック層81を、下部電極21の直下に設けた例を示したが、これに限らない。水素ブロック層81は、半導体基板30と下部電極21との間に設けられていればよく、例えば、層間絶縁層29内に形成するようにしてもよい。
【0106】
<7.変形例6>
図28は、本開示の変形例(変形例6)に係る撮像素子(撮像素子10H)の断面構成の一部を模式的に表したものである。撮像素子10Hは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。撮像素子10Hは、上記第1の実施の形態において下部電極21と電荷蓄積層23との間を電気的に絶縁する絶縁層として、水素ブロック層26および水素ブロック層81と同様の材料を用いた絶縁層92を設けたものである。また、撮像素子10Hでは、絶縁層92は、例えば有効画素領域110Aおよび周辺領域110Bに亘って形成されている。本変形例の撮像素子10Hは、上記2点が、第1の実施の形態の撮像素子10Aとは異なる。
【0107】
絶縁層92は、蓄積電極21Bおよびシールド電極21Cと電荷蓄積層23とを電気的に絶縁すると共に、電荷蓄積層23の下方からの水素(H2)の侵入を抑制するためのものである。絶縁層92を構成する材料としては、水素ブロック層26および水素ブロック層81と同様に、光透過性を有し、高い封止性を有することが好ましい。更に、欠陥の少ない緻密な膜であることが好ましい。このような材料としては、例えば酸化アルミニウムが挙げられる。
【0108】
以上のように、本変形例では、蓄積電極21Bおよびシールド電極21Cと電荷蓄積層23とを電気的に絶縁する絶縁層92を、例えば酸化アルミニウムを用いて形成するようにしたので、絶縁層92には、水素ブロック層としての機能が付加され、電荷蓄積層23の下方からの水素(H2)の侵入を抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Hおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0109】
<8.第2の実施の形態>
図29は、本開示の第2の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子10I)の断面構成の一例を表したものである。撮像素子10Iは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどの電子機器に用いられるCMOSイメージセンサなどの撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。撮像装置1は、複数の画素が配置された有効画素領域110Aと、その周辺に設けられ、例えば行走査部131などの周辺回路が形成された周辺領域110Bとを有する。複数の画素には、それぞれ、撮像素子10Iが形成されている。
【0110】
本実施の形態の撮像素子10Iは、上記第1の実施の形態の撮像素子10Aの構成要素に加えて、周辺領域110Bにおいて、例えば層間絶縁層29を分離する分離溝29Hよりも有効画素領域110A側に、半導体基板30を貫通する貫通電極34Dがさらに設けられている。貫通電極34Dは、パッド部35DおよびビアV2を介してパッド部36Dと電気的に接続されている。パッド部36D上には、
図29に示したように、第1保護層51および水素ブロック層26を貫通し、パッド部36を露出させる開口51H1が設けられている。開口51H1の側面および底面は配線53によって覆われている。配線53は、開口51Hの底面においてパッド部36Dに接続されると共に、ガードリング55を構成している。配線53は、さらに、第1保護層51上を延在し、上部電極25上において第1保護層51を貫通する開口51H2の底面において上部電極25に接続されている。これにより、上部電極25は、配線53、パッド部36D、ビアV2およびパッド部35Dを介して貫通電極34Dと電気的に接続され、電圧が印加されるようになっている。また、この上部電極25、配線53、パッド部36D、ビアV2、パッド部35Dおよび貫通電極34Dは、光電変換部20において生じた電荷(ここでは、正孔)の伝送経路として機能する。
【0111】
本実施の形態では、第1保護層51および配線53上には、さらに、第2保護層54が設けられており、開口51H1および開口51H2は、この第2保護層54によって埋設されている。第2保護層54の材料としては、第1保護層51と同様の材料が挙げられる。周辺領域110Bの第2保護層54上には、遮光膜56が設けられている。遮光膜56の材料としては、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)あるいはアルミニウム(Al)が挙げられ、遮光膜56は、例えばW/TiN/Tiの積層膜あるいはWの単層膜として構成されている。遮光膜56の厚みは、例えば50nm以上400nm以下である。第2保護層54および遮光膜56上には、撮像素子10Aと同様に、オンチップレンズ層52が設けられている。
【0112】
以上のように、本実施の形態では、周辺領域110Bにガードリング55を形成するようにした。これにより、外部からの水素(H2)や水分(H2O)の侵入をさらに抑制することが可能となる。よって、撮像素子10Iおよびこれを備えた撮像装置1の信頼性をさらに向上させることが可能となる。
【0113】
また、
図29では、ガードリング55の外側に分離溝29Hが設けられた例を示したが、分離溝29Hは、例えば
図30に示したように、ガードリング55よりも内側(有効画素領域110A側)に設けるようにしてもよい。
【0114】
<9.変形例7>
図31は、本開示の変形例(変形例7)に係る、例えば撮像素子10Aの光電変換部20を構成する下部電極21のレイアウトの他の例を表したものである。
図32は、本開示の変形例に係る撮像素子10Aの無機光電変換部32Bおよびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの他の例を表したものである。
図33は、本開示の変形例に係る、例えば撮像素子10Aの無機光電変換部Rおよびこれに関連する各種トランジスタのレイアウトの他の例を表したものである。
図34~
図37は、各光電変換部20,32B,32Rおよびこれらに関連する各種トランジスタに接続される配線の他の例を表したものである。上記第1の実施の形態では、互いに隣接する4つの画素が、それぞれに対応する1つのフローティングディフュージョンFD1,FD2,FD3を共有する、画素共有構造を備えた例を示したが、これに限らない。例えば、上記第1の実施の形態における撮像素子10Aは、
図31~
図37に示したように、画素共有構造を持たない、いわゆる単画素構造の積層型撮像素子として形成することができる。
【0115】
<10.適用例>
(適用例1)
図38は、上記第1の形態(または、第2の実施の形態および変形例1~7)において説明した撮像素子10A(または、撮像素子10B~10D)を各画素に用いた撮像装置(撮像装置1)の全体構成を表したものである。この撮像装置1は、CMOSイメージセンサであり、半導体基板30上に、撮像エリアとしての画素部1aを有すると共に、この画素部1aの周辺領域に、例えば、行走査部131、水平選択部133、列走査部134およびシステム制御部132からなる周辺回路部130を有している。なお、画素部1aが、上記第1の実施の形態等における有効画素領域110Aに相当する。
【0116】
画素部1aは、例えば、行列状に2次元配置された複数の単位画素P(撮像素子10に相当)を有している。この単位画素Pには、例えば、画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部131の各行に対応した出力端に接続されている。
【0117】
行走査部131は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、画素部1aの各単位画素Pを、例えば、行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部131によって選択走査された画素行の各単位画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部133に供給される。水平選択部133は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチなどによって構成されている。
【0118】
列走査部134は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、水平選択部133の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この列走査部134による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線135に出力され、当該水平信号線135を通して半導体基板30の外部へ伝送される。
【0119】
行走査部131、水平選択部133、列走査部134および水平信号線135からなる回路部分は、半導体基板30上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブルなどにより接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0120】
システム制御部132は、半導体基板30の外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータなどを受け取り、また、撮像装置1の内部情報などのデータを出力するものである。システム制御部132はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部131、水平選択部133および列走査部134などの周辺回路の駆動制御を行う。
【0121】
(適用例2)
上記撮像装置1は、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどのカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話など、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。
図39に、その一例として、電子機器2(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器2は、例えば、静止画または動画を撮影可能なビデオカメラであり、撮像装置1と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、撮像装置1およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0122】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を撮像装置1の画素部1aへ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、撮像装置1への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、撮像装置1の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、撮像装置1から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリなどの記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタなどに出力される。
【0123】
更に、上記撮像装置1は、下記電子機器(カプセル型内視鏡10100および車両等の移動体)にも適用することが可能である。
【0124】
<11.応用例>
<体内情報取得システムへの応用例>
更に、本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0125】
図40は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る、カプセル型内視鏡を用いた患者の体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【0126】
体内情報取得システム10001は、カプセル型内視鏡10100と、外部制御装置10200とから構成される。
【0127】
カプセル型内視鏡10100は、検査時に、患者によって飲み込まれる。カプセル型内視鏡10100は、撮像機能及び無線通信機能を有し、患者から自然排出されるまでの間、胃や腸等の臓器の内部を蠕動運動等によって移動しつつ、当該臓器の内部の画像(以下、体内画像ともいう)を所定の間隔で順次撮像し、その体内画像についての情報を体外の外部制御装置10200に順次無線送信する。
【0128】
外部制御装置10200は、体内情報取得システム10001の動作を統括的に制御する。また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信されてくる体内画像についての情報を受信し、受信した体内画像についての情報に基づいて、表示装置(図示せず)に当該体内画像を表示するための画像データを生成する。
【0129】
体内情報取得システム10001では、このようにして、カプセル型内視鏡10100が飲み込まれてから排出されるまでの間、患者の体内の様子を撮像した体内画像を随時得ることができる。
【0130】
カプセル型内視鏡10100と外部制御装置10200の構成及び機能についてより詳細に説明する。
【0131】
カプセル型内視鏡10100は、カプセル型の筐体10101を有し、その筐体10101内には、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、給電部10115、電源部10116、及び制御部10117が収納されている。
【0132】
光源部10111は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、撮像部10112の撮像視野に対して光を照射する。
【0133】
撮像部10112は、撮像素子、及び当該撮像素子の前段に設けられる複数のレンズからなる光学系から構成される。観察対象である体組織に照射された光の反射光(以下、観察光という)は、当該光学系によって集光され、当該撮像素子に入射する。撮像部10112では、撮像素子において、そこに入射した観察光が光電変換され、その観察光に対応する画像信号が生成される。撮像部10112によって生成された画像信号は、画像処理部10113に提供される。
【0134】
画像処理部10113は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサによって構成され、撮像部10112によって生成された画像信号に対して各種の信号処理を行う。画像処理部10113は、信号処理を施した画像信号を、RAWデータとして無線通信部10114に提供する。
【0135】
無線通信部10114は、画像処理部10113によって信号処理が施された画像信号に対して変調処理等の所定の処理を行い、その画像信号を、アンテナ10114Aを介して外部制御装置10200に送信する。また、無線通信部10114は、外部制御装置10200から、カプセル型内視鏡10100の駆動制御に関する制御信号を、アンテナ10114Aを介して受信する。無線通信部10114は、外部制御装置10200から受信した制御信号を制御部10117に提供する。
【0136】
給電部10115は、受電用のアンテナコイル、当該アンテナコイルに発生した電流から電力を再生する電力再生回路、及び昇圧回路等から構成される。給電部10115では、いわゆる非接触充電の原理を用いて電力が生成される。
【0137】
電源部10116は、二次電池によって構成され、給電部10115によって生成された電力を蓄電する。
図40では、図面が煩雑になることを避けるために、電源部10116からの電力の供給先を示す矢印等の図示を省略しているが、電源部10116に蓄電された電力は、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び制御部10117に供給され、これらの駆動に用いられ得る。
【0138】
制御部10117は、CPU等のプロセッサによって構成され、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び、給電部10115の駆動を、外部制御装置10200から送信される制御信号に従って適宜制御する。
【0139】
外部制御装置10200は、CPU,GPU等のプロセッサ、又はプロセッサとメモリ等の記憶素子が混載されたマイクロコンピュータ若しくは制御基板等で構成される。外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100の制御部10117に対して制御信号を、アンテナ10200Aを介して送信することにより、カプセル型内視鏡10100の動作を制御する。カプセル型内視鏡10100では、例えば、外部制御装置10200からの制御信号により、光源部10111における観察対象に対する光の照射条件が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、撮像条件(例えば、撮像部10112におけるフレームレート、露出値等)が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、画像処理部10113における処理の内容や、無線通信部10114が画像信号を送信する条件(例えば、送信間隔、送信画像数等)が変更されてもよい。
【0140】
また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信される画像信号に対して、各種の画像処理を施し、撮像された体内画像を表示装置に表示するための画像データを生成する。当該画像処理としては、例えば現像処理(デモザイク処理)、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の信号処理を行うことができる。外部制御装置10200は、表示装置の駆動を制御して、生成した画像データに基づいて撮像された体内画像を表示させる。あるいは、外部制御装置10200は、生成した画像データを記録装置(図示せず)に記録させたり、印刷装置(図示せず)に印刷出力させてもよい。
【0141】
以上、本開示に係る技術が適用され得る体内情報取得システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部10112に適用され得る。これにより、検出精度が向上する。
【0142】
<内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0143】
図41は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0144】
図41では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0145】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0146】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0147】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0148】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0149】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0150】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0151】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0152】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0153】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0154】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0155】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0156】
図42は、
図41に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0157】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0158】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0159】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0160】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0161】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0162】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0163】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0164】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0165】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0166】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0167】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0168】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0169】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0170】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0171】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0172】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0173】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0174】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0175】
<移動体への応用例>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0176】
図43は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0177】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図43に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0178】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0179】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0180】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0181】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0182】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0183】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0184】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0185】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0186】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図43の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0187】
図44は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0188】
図44では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0189】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0190】
なお、
図44には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0191】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0192】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0193】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0194】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0195】
以上、第1,第2の実施の形態、変形例1~7および適用例ならびに応用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態などに限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、第1,第2の実施の形態および変形例1~7は、例えば、第1の実施の形態と変形例2とを組み合わせた例として説明した変形例3のように、互いに組み合わせることができる。
【0196】
また、例えば、上記第1の実施の形態では、撮像素子10Aとして、緑色光を検出する光電変換部20と、青色光,赤色光をそれぞれ検出する無機光電変換部32B,32Rとを積層させた構成としたが、本開示内容はこのような構造に限定されるものではない。即ち、光電変換部20において赤色光あるいは青色光を検出するようにしてもよいし、無機光電変換部において緑色光を検出するようにしてもよい。
【0197】
更に、半導体基板30の受光面(第1面30S1)側に配設される光電変換部(例えば光電変換部20)および半導体基板30に埋め込み形成される無機光電変換部(例えば、無機光電変換部32B,32R)の数やその比率も限定されるものではない。例えば、半導体基板30の受光面(第1面30S1)側に複数の光電変換部を設け、複数色の色信号が得られるようにしてもよい。
【0198】
更にまた、上記実施の形態などでは、下部電極21を構成する複数の電極として、読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bの2つの電極から構成した例を示したが、この他に、転送電極あるいは排出電極などの3つあるいは4つ以上の電極を設けるようにしてもよい。
【0199】
また、上記第1の実施の形態では、電荷蓄積層23、光電変換層24および上部電極25を複数の撮像素子10Aに共通した連続層として形成した例を示したが、画素Pごとに分離して形成するようにしてもよい。但し、その場合には、電荷蓄積層23および光電変換層24に対する加工ダメージの影響により、暗電流特性が悪化する虞がある。更に、上記第1の実施の形態のように、複数の撮像素子10Aに共通した連続層として有効画素領域110A内において延在形成した場合には、画素間が光電変換層で接続されるため、画素間の電荷混入による混色は発生する虞がある。これに対しては、上述したように、シールド電極21Cを設けることで抑制される。
【0200】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0201】
なお、本開示は、以下のような構成であってもよい。以下の本技術の構成によれば、層間絶縁層を介した光電変換層および電荷蓄積層への水素の侵入が抑制されるようになり、信頼性を向上させることが可能となる。
(1)
複数の画素が配置された有効画素領域および前記有効画素領域の周囲に設けられた周辺領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に設けられると共に、複数の電極からなる第1電極と、前記第1電極と対向配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に順に積層して設けられると共に、前記有効画素領域に延在する、酸化物半導体材料を含む電荷蓄積層および光電変換層とを有する光電変換部と、
前記光電変換層の上方および側面ならびに前記電荷蓄積層の側面を覆う第1の水素ブロック層と、
前記半導体基板と前記光電変換部との間に設けられた層間絶縁層と、
前記有効画素領域と前記周辺領域との間の少なくとも一部において前記層間絶縁層を分離すると共に前記有効画素領域の周囲に連続して設けられ、前記第1の水素ブロック層が側面および底面を覆う分離溝と
を備えた撮像素子。
(2)
前記分離溝は、1または複数設けられている、前記(1)に記載の撮像素子。
(3)
前記周辺領域に外部出力に用いられる1または複数の伝送電極をさらに有し、
前記分離溝は、前記1または複数の伝送電極よりも前記有効画素領域側に設けられている、前記(1)または(2)に記載の撮像素子。
(4)
前記半導体基板は前記受光面とは反対の面側にロジック基板をさらに有し、
前記伝送電極は前記ロジック基板上に設けられると共に、前記伝送電極上に前記層間絶縁層および前記半導体基板を貫通する開口を有する、前記(3)に記載の撮像素子。
(5)
前記分離溝は、平面視において、前記1または複数の伝送電極の周囲に連続して設けられている、前記(3)または(4)に記載の撮像素子。
(6)
前記分離溝は、各前記伝送電極毎に設けられている、前記(5)に記載の撮像素子。
(7)
前記分離溝の深さは、前記層間絶縁層の厚み以上前記開口の深さ以下である、前記(4)乃至(6)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(8)
前記分離溝は、前記開口の深さよりも深い、前記(4)乃至(7)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(9)
前記光電変換部の受光面側にレンズをさらに有し、
前記レンズは前記第1の水素ブロック層と同じ材料を用いて形成されている、前記(1)乃至(8)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(10)
前記光電変換層は、有機材料を用いて形成されている、前記(1)乃至(9)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(11)
前記光電変換層は、無機材料を用いて形成されている、前記(1)乃至(10)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(12)
前記有機材料は、ローダミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン誘導体、サブフタロシアニン系色素、クマリン酸色素、トリス-8-ヒドリキシキノリアルミニウム(Alq3)、メラシアニン系色素およびフタロシアニン系色素またはそれらの誘導体である、前記(10)に記載の撮像素子。
(13)
前記無機材料は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、結晶セレン、アモルファスセレン、カルコパイライト系化合物および化合物半導体である、前記(11)に記載の撮像素子。
(14)
前記無機材料は量子ドット形状で用いられている、前記(11)に記載の撮像素子。
(15)
前記電荷蓄積層の下方に第2の水素ブロック層をさらに有する、前記(1)乃至(14)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(16)
前記第2の水素ブロック層は、前記半導体基板と前記電荷蓄積層との間に設けられている、前記(15)に記載の撮像素子。
(17)
前記光電変換部は、前記第1電極と前記電荷蓄積層との間に絶縁層をさらに有し、
前記絶縁層が前記第2の水素ブロック層として形成されている、前記(15)または(16)に記載の撮像素子。
(18)
前記第1の水素ブロック層は、光透過性を有する金属酸化物および光透過性を有する酸化物半導体を含んで形成されている、前記(1)乃至(17)のうちのいずれか1つに記載の撮像素子。
(19)
撮像素子を備え、
前記撮像素子は、
複数の画素が配置された有効画素領域および前記有効画素領域の周囲に設けられた周辺領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に設けられると共に、複数の電極からなる第1電極と、前記第1電極と対向配置された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に順に積層して設けられると共に、前記有効画素領域に延在する、酸化物半導体材料を含む電荷蓄積層および光電変換層とを有する光電変換部と、
前記光電変換層の上方および側面ならびに前記電荷蓄積層の側面を覆う第1の水素ブロック層と、
前記半導体基板と前記光電変換部との間に設けられた層間絶縁層と、
前記有効画素領域と前記周辺領域との間の少なくとも一部において前記層間絶縁層を分離すると共に前記有効画素領域の周囲に連続して設けられ、前記第1の水素ブロック層が側面および底面を覆う分離溝と
を有する撮像装置。
【0202】
本出願は、日本国特許庁において2019年2月15日に出願された日本特許出願番号2019-025595号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0203】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。