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特許7524084電池容量決定方法及び装置、管理システム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電池容量決定方法及び装置、管理システム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/387 20190101AFI20240722BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240722BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240722BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240722BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240722BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240722BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/367
G01R31/382
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 X
H02J7/02 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020573144
(86)(22)【出願日】2020-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2020084333
(87)【国際公開番号】W WO2020216080
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】201910338512.1
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阮 ▲見▼
(72)【発明者】
【氏名】杜 明▲樹▼
(72)【発明者】
【氏名】▲湯▼ 慎之
(72)【発明者】
【氏名】李 世超
(72)【発明者】
【氏名】▲盧▼ ▲艶▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲偉▼
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219510(JP,A)
【文献】特表2018-513378(JP,A)
【文献】特開2018-007410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0324846(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356962(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0095141(US,A1)
【文献】特開2008-039526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0326379(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0218397(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014215309(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0121587(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110988702(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105974326(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105738814(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107690585(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/32-31/36、
31/36-31/396、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36、
H01M 10/42-10/48、
4/00-4/62、
B60L 1/00-3/12、
7/00-13/00、
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の利用可能な容量を決定する方法であって、
前記電池の動作に対応する充電状態(SOC)区間を、前記電池を充電する前の前記電池の第1SOCと前記電池を充電した後の前記電池の第2SOCに基づいて取得し、
前記SOC区間の中に設定された少なくとも1つの放電深度(DOD)区間を決定するステップであって、前記DOD区間は、0~100%であるSOC使用区間内に設定されたSOC動作区間であるステップと、
DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得するステップであって、前記サイクル数は、1つのDOD区間の中の前記電池の動作のサイクルのサイクル数であり、前記サイクル温度は、1つのDOD区間の中の前記電池が動作した電池の温度であるステップと、
回復可能な容量低下量と、前記少なくとも1つのDOD区間、前記サイクル数及び前記サイクル温度との間の対応情報を予め確立するステップと、
前記対応情報に基づいて、前記少なくとも1つのDOD区間、前記サイクル数及び前記サイクル温度に対応する前記電池の回復可能な容量低下量を取得するステップと、
前記回復可能な容量低下量に基づいて、前記電池の実際の利用可能な容量を補正するステップとを備えている方法。
【請求項2】
前記SOC区間に対応する前記少なくとも1つのDOD区間を決定する前記ステップは、
前記電池に対応する0~100%である前記SOC使用区間の中に、前記少なくとも1つのDOD区間を設定する設定情報を取得することと、
前記設定情報に基づいて、前記SOC区間に対応する前記少なくとも1つのDOD区間を決定することとを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
記対応情報に基づいて、かつ前記少なくとも1つのDOD区間、前記サイクル数及び前記サイクル温度に応じて、各DOD区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得するステップと、
前記区間回復可能な容量低下量の少なくとも1つに基づいて、現在の動作での前記電池の一次回復可能な第1容量低下量を取得するステップと、
一次回復可能な前記第1容量低下量に応じて、現在の動作条件下で前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得するステップとをさらに備えている、請求項記載の方法。
【請求項4】
一次回復可能な前記第1容量低下量に応じて、現在の動作条件下で前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得する前記ステップは、
前記電池の1つ以上の先立つ動作に対応する、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量を取得することと、
予め設定された第1計算ルールに従って、1つ以上の一次回復可能な前記第2容量低下量と一次回復可能な前記第1容量低下量とを処理して、現在の動作条件下で前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得することとを含んでいる、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記電池の最後の動作に対応する一次回復可能な第2容量低下量を取得するステップと、
一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な前記第1容量低下量とに対応する2つの重み値を取得し、一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な前記第1容量低下量とに対して、2つの前記重み値に基づいて重み付け計算を行い、現在の動作条件下で前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得するステップとをさらに備えている、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記電池の動作の複数サイクルに対応する複数のSOC区間を取得するステップと、
複数の前記SOC区間に対応する複数のDOD区間を取得し、各DOD区間に対応する前記サイクル数及び前記サイクル温度を取得するステップと、
前記対応情報に基づいて、かつ前記DOD区間、前記サイクル数及び前記サイクル温度に応じて、複数の前記DOD区間に対応する複数の区間回復可能な容量低下量を取得するステップと、
複数の前記区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下で前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得するステップとをさらに備えている、請求項記載の方法。
【請求項7】
複数の前記区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下で前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得する前記ステップは、
複数の前記区間回復可能な容量低下量から各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得することと、
各SOC区間に対応する前記区間回復可能な容量低下量に基づいて、各SOC区間に対応する累積した回復可能な容量低下量を取得することと、
予め設定された第2計算ルールに従って、複数の前記SOC区間に対応する複数の前記累積した回復可能な容量低下量を処理し、現在の動作条件下での前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得することとを含んでいる、請求項記載の方法。
【請求項8】
予め設定された前記第2計算ルールに従って、複数の前記SOC区間に対応する複数の前記累積した回復可能な容量低下量を処理し、現在の動作条件下での前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得することは、
複数の前記累積した回復可能な容量低下量に対応する複数の重み値を取得し、複数の前記累積した回復可能な容量低下量に対して、複数の前記重み値に基づいて重み付け計算を行い、現在の動作条件下での前記電池の前記回復可能な容量低下量を取得することを含んでいる、請求項記載の方法。
【請求項9】
前記回復可能な容量低下量に基づいて、前記電池の前記実際の利用可能な容量を決定する前記ステップは、
電池動作データに基づいて、前記電池の利用可能な第1容量を得ることと、
利用可能な前記第1容量と前記回復可能な容量低下量とに基づいて、前記電池の前記実際の利用可能な容量を計算し、前記実際の利用可能な容量に基づいて前記電池の健康状態を取得することとを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記回復可能な容量低下量が予め設定された閾値以上である条件では、前記電池の前記回復可能な容量低下量を除去する必要があると決定し、呼応して動作を行うと決定するステップを備えている、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
呼応して動作を行うことは、充電及び放電の回数を決定することと、充電及び放電の前記回数に応じて前記電池のフル充電及びフル放電のサイクル動作を行い、前記電池の前記回復可能な容量低下量を除去することとを含んでいる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
電池の利用可能な容量を決定する装置であって、
前記電池の動作に対応する充電状態(SOC)区間を、前記電池を充電する前の前記電池の第1SOCと前記電池を充電した後の前記電池の第2SOCに基づいて取得し、0~100%であるSOC使用区間の中に設定されたSOC動作区間である、前記SOC区間の中に設定された少なくとも1つの放電深度(DOD)区間を決定し、各DOD区間に対応する、1つのDOD区間の中の前記電池の動作のサイクルのサイクル数、及び1つのDOD区間の中の前記電池が動作した電池の温度であるサイクル温度を取得する、第1情報決定ユニットと、
回復可能な容量低下量と、前記少なくとも1つのDOD区間、前記サイクル数及び前記サイクル温度との間の対応情報を予め確立する、マッピング情報設定ユニットと、
前記対応情報に基づいて、前記少なくとも1つのDOD区間、前記サイクル数及び前記サイクル温度に対応する前記電池の回復可能な容量低下量を取得する、回復可能な低下の取得ユニットと、
前記回復可能な容量低下量に基づいて、前記電池の実際の利用可能な容量を補正する、利用可能な容量の補正モジュールと、
前記回復可能な容量低下量が予め設定された閾値以上である条件下で、前記電池の前記回復可能な容量低下量を除去する必要があると決定し、呼応して動作を行うと決定する、回復可能な容量の処理モジュールとを備えている装置。
【請求項13】
請求項12記載の、電池の利用可能な容量を決定する装置を備えている電池管理システム。
【請求項14】
プロセッサーによって実行されたときに、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法を実行する、コンピューター命令を備えているコンピューター可読なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の技術の分野に関し、特に、電池の利用可能な容量を決定する方法及び装置、管理システム、及び記憶媒体に関する。
【0002】
本願は、2019年4月25日に出願された中国特許出願第201910338512.1号に基づくものであり、優先権の利益を主張する。その全体が本願に参照援用される。
【背景技術】
【0003】
電池の容量とは、電池に蓄積される電力の量を意味する。電池の利用可能な容量の正確な見積もりは、残留容量、残留エネルギーなどの見積もりに非常に重要であり、また、電池セルのエイジング(老化)状態を反映するための重要なパラメーターである。現在、電池の利用可能な容量を見積もる方法は、一般に、真の容量を求めるためのオフライン容量試験を含む。この電池の利用可能な容量は、較正されたエイジング曲線に従って更新されるか、又は開回路電圧及びSOC-OCV(開回路電圧)曲線に従ってオンラインで更新される。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、いくつかの電池は、回復不能な容量低下と回復可能な容量低下(メモリー効果のような)の2種類の容量低下(capacity fade)が起きている。現在、電池セルの利用可能な容量を見積もる方法は、2つのタイプの容量低下の合計が計算できるに過ぎず、電池の利用可能な容量を正確に求めることはできない。
【0005】
上記のことから、本開示によって解決しようとする技術的課題は、電池の利用可能な容量を決定する方法及び装置、管理システム、及び記憶媒体を提供することである。
【0006】
本開示の一つの態様によれば、電池の利用可能な容量を決定する方法であって、電池の動作に対応するSOC(充電状態)区間を取得し、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD(放電深度)区間を決定するステップと、少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得するステップと、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、電池の回復可能な容量低下量を取得するステップと、回復可能な容量低下量に基づいて、電池の実際の利用可能な容量を決定するステップとを備えている方法が提供される。
【0007】
これに代えて、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を決定するステップは、電池に対応するSOC使用区間の中に、少なくとも1つのDOD区間を設定する設定情報を取得することと、設定情報に基づいて、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を決定することとを含んでいる。
【0008】
これに代えて、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、電池の回復可能な容量低下量を取得するステップは、回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応情報を予め確立することと、対応情報に基づいて、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に対応する回復可能な容量低下量を取得することとを含んでいる。
【0009】
これに代えて、方法はさらに、電池が充電される前の電池の第1SOC、及び電池が充電された後の電池の第2SOCに基づいて、SOC区間を決定するステップと、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を取得し、各DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得するステップと、対応情報に基づいて、かつ少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、各DOD区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得するステップと、区間回復可能な容量低下量の少なくとも1つに基づいて、現在の動作での電池の一次回復可能な第1容量低下量を取得するステップと、一次回復可能な第1容量低下量に応じて、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得するステップとを備えている。
【0010】
これに代えて、一次回復可能な第1容量低下量に応じて、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得するステップは、電池の1つ以上の先立つ動作に対応する、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量を取得することと、予め設定された第1計算ルールに従って、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量とを処理して、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得することとを含んでいる。
【0011】
これに代えて、方法はさらに、電池の最後の動作に対応する一次回復可能な第2容量低下量を取得するステップと、一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量とに対応する2つの重み値を取得し、一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量とに対して、2つの重み値に基づいて重み付け計算を行い、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得するステップとを備えている。
【0012】
これに代えて、方法はさらに、電池の動作の複数サイクルに対応する複数のSOC区間を取得するステップと、複数のSOC区間に対応する複数のDOD区間を取得し、各DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得するステップと、対応情報に基づいて、かつDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、複数のDOD区間に対応する複数の区間回復可能な容量低下量を取得するステップと、複数の区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得するステップとを備えている。
【0013】
これに代えて、複数の区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得するステップは、複数の区間回復可能な容量低下量から各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得することと、各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量に基づいて、各SOC区間に対応する累積した回復可能な容量低下量を取得することと、予め設定された第2計算ルールに従って、複数のSOC区間に対応する複数の累積した回復可能な容量低下量を処理し、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得することとを含んでいる。
【0014】
これに代えて、予め設定された第2計算ルールに従って、複数のSOC区間に対応する複数の累積した回復可能な容量低下量を処理し、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得することは、
複数の累積した回復可能な容量低下量に対応する複数の重み値を取得し、複数の累積した回復可能な容量低下量に対して、複数の重み値に基づいて重み付け計算を行い、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得することを含んでいる。
【0015】
これに代えて、回復可能な容量低下量に基づいて、電池の実際の利用可能な容量を決定するステップは、電池動作データに基づいて、電池の利用可能な第1容量を得ることと、利用可能な第1容量と回復可能な容量低下量とに基づいて、電池の実際の利用可能な容量を計算し、実際の利用可能な容量に基づいて電池の健康状態を取得することとを含んでいる。
【0016】
これに代えて、回復可能な容量低下量が予め設定された閾値以上である条件では、電池の回復可能な容量低下量を除去する必要があると決定し、呼応して動作を行うと決定する。
【0017】
これに代えて、方法はさらに、充電及び放電の回数を決定することと、充電及び放電の回数に応じて電池のフル充電及びフル放電のサイクル動作を行い、電池の回復可能な容量低下量を除去することとを含んでいる。
【0018】
本開示の他の態様によれば、電池の利用可能な容量を決定する装置であって、電池の動作に対応するSOC(充電状態)区間を取得し、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD(放電深度)区間を決定し、少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得する、情報取得モジュールと、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、電池の回復可能な容量低下量を取得する、回復可能な容量の取得モジュールと、回復可能な容量低下量に基づいて、電池の実際の利用可能な容量を決定する、利用可能な容量の補正モジュールと、回復可能な容量低下量が予め設定された閾値以上である条件下で、電池の回復可能な容量低下量を除去する必要があると決定し、呼応して動作を行うと決定する、回復可能な容量の処理モジュールとを備えている装置が提供される。
【0019】
本開示のさらに他の態様によれば、上述した、電池の利用可能な容量を決定する装置を備えている電池管理システムが提供される。
【0020】
本開示のなおさらに他の態様によれば、プロセッサーによって実行されたときに、上述した方法を実行する、コンピューター命令を備えているコンピューター可読なプログラムが提供される。
【0021】
本開示による電池の利用可能な容量を決定する方法及び装置、電池管理システム及び記憶媒体は、電池の動作のSOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間、及び少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得し、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて電池の回復可能な容量低下量を取得し、電池の実際の利用可能な容量を決定する。回復可能な容量低下量を有する電池については、実際の利用可能な容量とSOHを見積もる正確さが向上し、電池の真のエイジング状態を正確に見積もることができ、電池の信頼性を向上させ、電池の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の実施形態、又は先行技術の技術的解決をさらに明確に説明するために、実施形態又は先行技術を述べるのに必要な図面を、以下に簡単に説明する。以下のこの記載での図面は、本開示のいくつかの実施形態に過ぎず、他の図面は、創造的努力を払わずに、当業者によって見いだされることは明らかである。
【0023】
図1】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する方法の一つの実施形態の概略的なフローチャートである。
図2】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する方法の一つの実施形態で、回復可能な容量低下量の取得を示す概略的なフローチャートである。
図3】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する方法の他の一つの実施形態で、回復可能な容量低下量の取得を示す概略的なフローチャートである。
図4】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する方法のさらに別の実施形態における回復可能な容量低下量の取得を示す概略的なフローチャートである。
図5】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する装置の一つの実施形態の概略的なブロック図である。
図6】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する装置の一つの実施形態での情報取得モジュールを示す概略的なブロック図である。
図7】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する装置の一つの実施形態での回復可能な容量の取得モジュールを示す概略的なブロック図である。
図8】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する装置の一つの実施形態での回復可能な低下の取得ユニットを示す概略的なブロック図である。
図9】本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する装置の別の実施形態の概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、添付の図面を参照して以下により包括的に説明される。図面は、本開示の例示的な実施形態を示す。本開示の実施形態での技術的解決は、本開示の実施形態での図面を参照して以下に明確かつ完全に説明される。説明される実施形態は、本開示のいくつかの実施形態に過ぎず、全ての実施形態とは限らないことは明らかである。本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造的努力なしに導き出すことができる他の全ての実施形態が、本開示の保護の範囲内にある。本開示の技術的解決の態様を、さまざまな図面及び実施形態と関連して以下に説明する。
【0025】
以下「第1」、「第2」などの用語は、記述的区別のためにのみ使用されるが、他の特別な意味はない。
【0026】
図1は、本開示による電池の利用可能な容量を決定する方法の一つの実施形態の概略的なフローチャートである。
本開示は図1に示すようにステップ101を含み、これは、電池の動作に対応するSOC(充電状態)区間を取得し、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を決定する。
【0027】
電池は、回復可能な容量低下を伴う単一の電池セル、電池パック、電池モジュールなど、例えば、リチウム電池、リチウム電池パックなどであってよい。電池の動作とは、電池の充電・放電サイクル動作を指し、DOD(放電深度)区間とは、電池に対応するSOC使用区間で設定されたSOC動作区間を指す。電池が充電又は放電されるとき、電池の充電又は放電に対応するSOC動作区間が決定されてよく、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間が決定されてよい。
【0028】
例えば、電池に対応するSOC使用区間は0~100%の範囲であり、5つのDOD区間はSOC使用区間の中に設定され、5つのDOD区間(間隔、グレード)はそれぞれ0~20%、20~40%、40~60%、60~80%、80~100%である。電池が1回放電される場合、この時点での電池の放電に対応するSOC区間(間隔、グレード)は80~20%であり、80~20%のSOC区間は、3つのDOD区間、即ち、20~40%のDOD区間、40~60%のDOD区間、及び60~80%のDOD区間に対応する。
【0029】
さらに方法は、ステップ102を含み、これは少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得する。
【0030】
サイクル数は、少なくとも1つのDOD区間での電池のサイクル動作の回数である。例えば、20~40%である少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数は、20~40%である少なくとも1つのDOD区間での電池の充放電のサイクル数である。サイクル温度は、電池が少なくとも1つのDOD区間内で動作する電池温度である。例えば、20~40%である少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル温度は、この動作での20~40%である少なくとも1つのDOD区間での電池の温度である。
【0031】
さらに方法はステップ103を含み、これは、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0032】
少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、電池の回復可能な容量低下量を得るには、さまざまな方法があってよい。例えば、回復可能な容量低下量の大きさは、実験によって得られてよい。回復可能な容量低下量の大きさと、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応が確立される。この対応に基づいて、回復可能な容量低下量を得てよい。
【0033】
さらに方法はステップ104を含み、これは、回復可能な容量低下量に基づいて、電池の実際の利用可能な容量を決定する。
【0034】
電池は、充放電プロセスにおいて、回復不能な容量低下及び回復可能な容量低下を伴うことがある。回復不能な容量低下は、電池の電池セルのエイジングによって引き起こされる利用不能な容量であり、回復可能な容量低下は、電池セルのサイクル動作においてある調節を行った後に電池セルによって再び放出され得る容量である。この容量は、電池セルのエイジング状態を反映し得ない。回復可能な容量低下により、現在の電池セルの真のエイジング状態が過大評価される可能性がある。従って、回復可能な容量低下量を用いて電池の実際の利用可能な容量を補正する必要があり、電池の実際の利用可能な容量は、電池の真の利用可能な容量である。
【0035】
一つの実施形態では、電池の動作のSOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を取得する、いくつかの方法があってよい。例えば、電池に対応するSOC使用区間の中に少なくとも1つのDOD区間を設定する設定情報を取得し、その設定情報に基づいて、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を決定する。
【0036】
例えば、電池に対応するSOC使用区間の中に少なくとも1つのDOD区間を設定する設定情報は、それぞれ0~20%、20~40%、40~60%、60~80%、80~100%の5つのDOD区間に関する情報である。設定情報に基づいて、SOC区間20~60%に対応する少なくとも1つのDOD区間は、20~40%の少なくとも1つのDOD区間、及び40~60%の少なくとも1つのDOD区間であると決定される。
【0037】
図2は、本開示による電池の利用可能な容量を決定する方法の一つの実施形態で、回復可能な容量低下量の取得を示す概略的なフローチャートである。
本開示は図2に示すようにステップ201を含む。ステップ201は、回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応情報を、予め確立する。
【0038】
回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応情報は、実験データを通して確立されてよい。対応情報は、関数関係、テーブル、モデルなどを含む。
【0039】
さらにこの方法は、ステップ202を含み、対応情報に基づいて、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に対応する回復可能な容量低下量を取得する。
【0040】
異なるDOD区間、異なるサイクル数及び異なるサイクル温度に対応する、回復可能な容量低下量は、オフライン実験によって較正される。動作条件サイクル試験は、回復可能な容量低下特性を有する電池上でオフラインで実施され、異なるDOD区間、異なるサイクル数及び異なるサイクル温度に対応する回復可能な容量低下量を試験する。電池の電池セルの回復可能な容量低下量は、さまざまな容量試験フローを通して得られてよい。
【0041】
例えば、電池セルの容量は、電池セルの容量試験中に試験され、いくつかのフル充電及びフル放電のサイクルの下で回復可能な容量低下量を伴わない電池セルの利用可能な容量が、カウントされる。電池セル及び電池セル並列サンプルは、異なるDOD区間かつ異なるサイクル温度条件下でサイクルで使用され、電池セルの一部の充放電の容量は、数サイクル後に検出される。他の電池セルは、サイクルが続けられ、Nサイクル後の電池セルの充放電の容量が測定される。最後に、現在の条件下で回復可能な容量低下量を伴わない電池セルの利用可能な容量が、電池セルの容量試験及びフル充電及びフル放電のサイクルの下で、カウントされる。
【0042】
回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の、対応の関数関係又はテーブル対応などが、統計的に解析される。例えば、回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応テーブルが、以下の表1に示すように確立される。
【表1】
【0043】
表1:回復可能な容量低下量と、少なくとも1回のDOD区間及びT1でのサイクル数との間の対応表
【0044】
表1で、T1はサイクル温度であり、N1,N2,...,NXは異なるサイクル数を表し、[S1,S2],...,[SA,SB]は異なるDOD区間を表す。表1で、D1,...,D1Xは異なる動作条件下での電池の区間回復可能な(interval recoverable,区間において回復可能な)容量低下量を表す。D1,...,D1Xは正又は負であってよく、D1,...,D1Xは関連する試験、実験などを通して取得してよい。
【0045】
回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応は、複数の異なる温度の程度の条件下でのテーブルを含んでよい。例えば、T2、T3、T4のような複数のサイクル温度がある一つの電池に設定され、関連する試験及び実験が行われる。複数のサイクル温度T2、T3、T4での回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間と、サイクル数との間の対応の、複数のテーブルを得る。表1に、各テーブルの内容を示してある。
【0046】
一つの実施形態では、SOC区間が複数の完全なDOD区間に対応できない場合、例えば、30~60%のSOC区間のうちの30~40%の区間が、少なくとも1つの20~40%のDOD区間に対応する場合、この時点での電池の動作での少なくとも1つの20~40%のDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度が決定され、対応する係数が設定される。回復可能な容量低下量が計算された場合、少なくとも1つの20~40%のDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に対応する区間回復可能な容量低下量が、係数に乗じられる。同様に、サイクル温度がTIとT2との間にある場合、サイクル温度はT1と決定されてよく、対応する係数が設定されてよく、T1での区間回復可能な容量低下量は、回復可能なエネルギー情報が得られたときに、この係数が乗算されてよい。
【0047】
テーブルの方法の他に、回復可能な容量低下量と少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との対応は、関数関係を求める関数フィッティングによって求められてよく、回帰方程式やニューラルネットワーク法などを採用してよい。
【0048】
図3は、本開示による電池の利用可能な容量を決定する方法の他の一つの実施形態で、回復可能な容量低下量の取得を示す概略図である。本開示は図3に示すように下記を含む。
ステップ301であり、電池が充電される前の電池の第1SOC、及び電池が充電された後の電池の第2SOCに基づいてSOC区間を決定する。
ステップ302であり、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を取得し、各DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得する。
ステップ303であり、対応情報に基づいて、かつ少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、各DOD区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得する。
ステップ304であり、少なくとも1つの区間回復可能な容量低下量に基づいて、現在の動作での電池の一次回復可能な一次回復可能な(single recoverable,1回で又は一括で回復可能な)第1容量低下量を取得する。
【0049】
例えば、電池充電のためのSOC区間は第1SOCから第2SOCまでである。SOC区間に対応する複数のDOD区間が得られてよく、各DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度が得られてよい。各DOD区間に対応する区間回復可能な容量低下量は、テーブルルックアップ(ルックアップテーブル)又は関数関係によって、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に従って得られてよい。得られた複数の区間回復可能な容量低下量の加算を行って、現在の動作での電池の一次回復可能な第1容量低下量を取得する。
【0050】
さらにこの方法は、ステップ305を含み、ステップ305は、一次回復可能な第1容量低下量に応じて、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0051】
現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を、一次回復可能な第1容量低下量に応じて取得するには、さまざまな方法があってよい。例えば、電池の1つ以上の先立つ動作に対応する、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量が取得され、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量及び一次回復可能な第1容量低下量が、予め設定された第1計算ルールに従って処理され、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量が取得される。
【0052】
重み付け計算ルールなどを含んで、さまざまな第1計算ルールが存在してよい。例えば、電池の最後の動作に対応する一次回復可能な第2容量低下量が得られ、一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量に対応する2つの重み値が得られる。2つの重み値に基づいて一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量に重み付け計算を行い、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を得る。
【0053】
一つの実施形態では、各充電前の電池のSOC値及び充電後のSOC値が記録され、SOC区間が得られ、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間が得られ、少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度が得られる。電池の現在の動作での、一次回復可能な第1容量低下量は、テーブルルックアップ又は関数関係を通して計算される。電池の複数の先立つ動作に対応する、複数の一次回復可能な第2容量低下量は、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を得るために、第1計算ルールに基づいて計算される。
【0054】
例えば、電池の最後の充電に対応する一次回復可能な第2容量低下量D1が取得され、電池の現在の動作に対応する一次回復可能な第1容量低下量D2が取得される。その後、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量は、Dnew=αD1+αD2である。ここで、α及びαは重み値(重み係数)であり、α及びαの数値範囲は[-1,1]である。今回、電池を充電した後に、電池の回復可能な容量低下量が更新できる。
【0055】
図4は、本開示による電池の利用可能な容量を決定する方法のさらに他の一つの実施形態で、回復可能な容量低下量の取得を示す概略図である。本開示は図4に示すように下記を含む。
ステップ401であり、電池の複数の使用サイクルに対応する複数のSOC区間を取得する。
ステップ402であり、複数のSOC区間に対応する複数のDOD区間を取得し、各DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得する。
ステップ403であり、対応情報に基づいて、かつDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、複数のDOD区間に対応する複数の区間回復可能な容量低下量を取得する。
ステップ404であり、複数の区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0056】
複数の区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を得るには、さまざまな方法があってよい。例えば、各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量は、複数の区間回復可能な容量低下量から得られ、各SOC区間に対応する累積した回復可能な容量低下量は、各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量に基づいて得られる。複数のSOC区間に対応する複数の累積した回復可能な容量低下量は、予め設定された第2計算ルールに従って処理され、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量が得られる。
【0057】
重み付け計算ルールなどを含む、さまざまな第2計算ルールが存在してよい。例えば、複数の累積した回復可能な容量低下量に対応する複数の重み値が得られ、当該複数の重み値に基づいて複数の累積した回復可能な容量低下量に対して重み付け計算が行われ、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量が得られる。
【0058】
一つの実施形態では、電池の複数の充電サイクルに対応する複数のSOC区間が得られる。複数のSOC区間に対応する複数のDOD区間が得られる。各DOD区間に対応する複数のサイクル及びサイクル温度が得られる。テーブルルックアップ又は関数関係に従って、かつDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に従って、電池の動作の複数のSOC区間に対応する、複数の累積した区間回復可能な容量低下量が得られる。
【0059】
電池の動作の複数のSOC区間に対応する累積した回復可能な容量低下量は、それぞれ、電池の動作の複数のSOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量に基づいて得られる。例えば、各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量が加算され、各SOC区間に対応する累積した回復可能な容量低下量が得られる。複数のSOC区間に対応する複数の累積した回復可能な容量低下量が計算され、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量が得られる。
【0060】
例えば、複数のSOC区間に対応する複数の累積した回復可能な容量低下量は、D1,D2,...,DNであり、電池の現在の回復可能な容量低下量は、Dnew=α+α+...+αn-1n-1+αである。ここで、α~αは重み値(重み係数)であり、数値範囲は[-1,1]である。電池の回復可能な容量低下量は、電池の複数サイクルの動作後に更新される。
【0061】
一つの実施形態では、現在測定されている容量の値は、電池の動作状態が電池容量の見積もりのための条件に達したとき、又は電池容量試験がサービスの部署で実施されたときに、記録される。電池容量の見積もりのための条件は、さまざまな条件、例えば、電池の動作サイクル数が閾値に達することであってよい。
【0062】
電池の実際の利用可能な容量を、回復可能な容量低下量に基づいて決定するには、さまざまな方法があってよい。例えば、電池の利用可能な第1容量(初期容量)は、電池の動作データに基づいて得られる。電池の実際の利用可能な容量は、利用可能な第1容量と回復可能な容量低下量とから計算される。電池の健康状態は、実際の利用可能な容量に基づいて得られる。電池の利用可能な第1容量を得るためには、さまざまな方法、例えば、電池動作データに基づいて累積されたアンペア時の値の線形補間によって電池の利用可能な第1容量を計算するなどの方法があってよい。電池は、充電及び放電の間に回復可能な容量低下の部分を有してよい。電池の利用可能な第1容量は電池セルのエイジング状態を反映し得ないため、回復可能な容量低下量が、電池の実際の利用可能な容量を得るために電池の利用可能な第1容量に加えられてよい。
【0063】
回復可能な容量低下量が予め設定された閾値以上である場合、電池の回復可能な容量低下量を除去(解消)する必要があることが決定される。それに呼応して動作が行われる。従って、この動作は、充電及び放電サイクルの数を決定し、電池の回復可能な容量低下量を除去するために、充電及び放電サイクルの数に応じて電池上でフル充電及びフル放電のサイクル動作を実行することを含む。
【0064】
例えば、回復可能な容量低下量又は容量低下量が予め設定された閾値に達し、これがユーザーの外出に影響を与える場合、回復可能な容量低下量を除去するために、電池を維持するよう、又はフル充電及びフル放電のN回のサイクルを実行して回復可能な容量低下を除去するよう、ユーザーに促す必要がある。ここで、Nは、実験によって測定された現在の回復可能な容量低下量の下で容量低下を除去するために必要な充放電サイクルの数である。
【0065】
健康状態(SOH)は、電池の性能と寿命を反映する重要なパラメーターであり、SOHは電池セルの真のエイジング状態を見積もるために使用される。電池の健康状態SOHは、しばしば、エイジング(老化)した電池の容量と新しい電池セルの容量との比率を意味する。電池は長期間使用すると必然的にエイジング(老化)又は劣化するため、電池容量が著しく低減する。電池容量が減衰してもSOHが補正されない場合、電池の充電状態(SOC)の計算誤差が増大する可能性があり、過電流リスクなどの問題が乗じる。実際の使用可能な容量に基づいて、電池の健康状態を取得するには、さまざまな方法がある。例えば、電池のSOH=実際の利用可能な容量/容量の公称値である。容量の公称値は出荷時に予め設定された標準容量値であってよい。
【0066】
図5に示すように、一つの実施形態で本開示は、電池の利用可能な容量を決定する装置50を提供し、これは、情報取得モジュール51と、回復可能な容量の取得モジュール52と、利用可能な容量の補正モジュール53と、回復可能な容量の処理モジュール54とを含む。情報取得モジュール51は、電池の動作に対応するSOC区間を取得し、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を決定し、少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得する。情報取得モジュール51は、電池に対応するSOC使用区間の中に少なくとも1つのDOD区間を設定する設定情報を取得してよく、設定情報に基づいて、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を決定してよい。回復可能な容量の取得モジュール52は、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に従って、電池の回復可能な容量低下量を得るものである。利用可能な容量の補正モジュール53は、回復可能な容量低下量に基づいて電池の実際の利用可能な容量を決定するものである。
【0067】
図7に示すように、一つの実施形態で、回復可能な容量の取得モジュール52は、マッピング情報設定ユニット521と、回復可能な低下(減衰)の取得ユニット522とを備えている。マッピング情報設定ユニット521は、回復可能な容量低下量と、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度との間の対応情報を、予め確立する。回復可能な低下の取得ユニット522は、対応情報に基づいて、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に対応する回復可能な容量低下量を取得する。
【0068】
図6に示すように、情報取得モジュール51は、第1情報決定ユニット511と、第2情報決定ユニット512とを備えている。図8に示すように、回復可能な低下の取得ユニット522は、第1取得ユニット523及び第2取得ユニット524を備えている。
【0069】
第1情報決定ユニット511は、充電前の電池の第1SOCと充電後の電池の第2SOCとに基づいてSOC区間を決定し、SOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間を求め、各DOD区間に対応するサイクル数とサイクル温度を求める。対応情報に基づき、かつ少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に従って、第1取得ユニット523は、各DOD区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得する。第1取得ユニット523は、少なくとも1つの区間回復可能な容量低下量に基づいて、現在の動作での電池の一次回復可能な第1容量低下量を取得し、一次回復可能な第1容量低下量に基づいて、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0070】
第1取得ユニット523は、電池の1つ以上の先立つ動作に対応する、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量を取得し、1つ以上の一次回復可能な第2容量低下量及び一次回復可能な第1容量低下量を、予め設定された第1計算ルールに従って処理して、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0071】
第1取得ユニット523は、電池の最後の動作に対応する一次回復可能な第2容量低下量を取得する。一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量とに対応する2つの重み値を取得する。2つの重み値に基づいて、一次回復可能な第2容量低下量と一次回復可能な第1容量低下量に、重み付け計算を行い、現在の動作条件下で電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0072】
第2情報決定ユニット512は、電池の複数サイクルに対応する複数のSOC区間を取得し、複数のSOC区間に対応する複数のDOD区間を取得する。第2情報決定ユニット512は、各DOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得する。対応情報に基づき、かつDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて、第2取得ユニット524は、複数のDOD区間に対応する複数の区間回復可能な容量低下量を取得する。第2取得ユニット524は、複数の区間回復可能な容量低下量に応じて、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0073】
第2取得ユニット524は、複数の区間回復可能な容量低下量から、各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量を取得する。第2取得ユニット524は、各SOC区間に対応する区間回復可能な容量低下量に基づいて、各SOC区間に対応する累積した回復可能な容量低下量を取得する。予め設定された第2計算ルールに従って、複数のSOC区間に対応する複数の累積した回復可能な容量低下量を処理して、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0074】
第2取得ユニット524は、複数の累積した回復可能な容量低下量に対応する複数の重み値を取得し、複数の重み値に基づいて、複数の累積した回復可能な容量低下量に対して重み付け計算を行い、現在の動作条件下での電池の回復可能な容量低下量を取得する。
【0075】
利用可能な容量の補正モジュール53は、電池動作データに基づいて電池の利用可能な第1容量を取得し、利用可能な第1容量と回復可能な容量低下量とに基づいて電池の実際の利用可能な容量を計算し、実際の利用可能な容量に基づいて電池の健康状態を取得する。
【0076】
回復可能な容量低下量が予め設定された閾値以上である場合、回復可能な容量の処理モジュール54は、電池の回復可能な容量低下量を除去する必要があると判断し、それに呼応して動作を行う。回復可能な容量の処理モジュール54は、充電及び放電の回数を決定し、充電及び放電の回数に応じて電池上でフル充電及びフル放電のサイクル動作を行い、電池の回復可能な容量低下量を除去する。
【0077】
図9は、本開示に係り、電池の利用可能な容量を決定する装置の別の実施形態のブロック図である。図9に示すように装置は、メモリー91、プロセッサー92、通信インターフェース93及びバス94を備えてよい。メモリー91は命令を記憶するものであり、プロセッサー92はメモリー91に結合され、プロセッサー92は、メモリー91に記憶された命令に基づいて電池の利用可能な容量を決定する上述の方法を実行するように構成される。
【0078】
メモリー91は、高速RAMメモリー、不揮発性メモリーなどであってよく、さらにメモリー91はメモリーアレイであってよい。またメモリー91は、ブロックに分割されてよく、ブロックは、あるルールに従って仮想ボリュームの中で組み合わせられてよい。プロセッサー92は、本開示による電池の利用可能な容量を決定する方法を実施するように構成された、中央処理装置CPU、又は特定用途向け集積回路(ASIC)、又は1つ以上の集積回路であってよい。
【0079】
一つの実施形態では、本開示は、上記実施形態の任意の1つのように、電池の利用可能な容量を決定する装置を備えている電池管理システムを提供する。電池管理システムは、車両などに設置されてよく、電池を管理してよい。
【0080】
一つの実施形態では、本開示は、プロセッサーによって実行されると、上記実施形態の任意の1つのように、電池の利用可能な容量を決定する方法を実施する、コンピューター命令を記憶したコンピューター可読な記憶媒体を提供する。
【0081】
上記実施形態での電池の利用可能な容量を決定する方法及び装置、電池管理システム及び記憶媒体は、電池の動作のSOC区間に対応する少なくとも1つのDOD区間、及び少なくとも1つのDOD区間に対応するサイクル数及びサイクル温度を取得し、少なくとも1つのDOD区間、サイクル数及びサイクル温度に応じて電池の回復可能な容量低下量を取得し、電池の利用可能な容量を補正する。回復可能な容量低下量を有する電池に関して、電池の回復可能な容量低下量が得られる。利用可能な容量は、回復可能な容量低下量に基づいて見積もられる。これは、実際の利用可能な容量及びSOHを見積もる正確さを向上させるので、電池の信頼性を向上させ、電池の寿命及びユーザーの使用経験を引き延ばすことができる。
【0082】
本開示の方法及びシステムは、いくつかの方法で実施されてよい。例えば、本開示の方法及びシステムは、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアの任意の組み合わせによって実施されてよい。方法のステップの上記の順序は、例示のためのものに過ぎず、本開示の方法のステップは、特に断りのない限り、具体的に上述した順序に限定されない。さらに、いくつかの実施形態では、本開示は、記録媒体に記録されたプログラムとして実施されてよく、プログラムは、本開示による方法を実施する機械可読な命令を含む。従って、本開示による方法を実行するプログラムを記憶する記録媒体にも本開示は及ぶ。
【0083】
本開示の説明は、説明及び説明の目的のために提示されたものであり、網羅することは意図せず、また、開示された形態の開示に限定することを意図しない。当業者には、多数の改変及び変形例が明らかになる。本開示の原理及びその実際的な用途を最もよく説明するため、また、本分野の当業者が本開示を理解し、従って、特定の用途に適したさまざまな改変を施したさまざまな実施形態を構成することを可能にするために、実施形態は選択され説明されたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9