(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるための装置
(51)【国際特許分類】
F26B 9/08 20060101AFI20240722BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F26B9/08
G21F9/30 571Z
(21)【出願番号】P 2020573471
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 RU2019001053
(87)【国際公開番号】W WO2020214058
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-11-17
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】518312460
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“ロスエネルゴアトム”
(73)【特許権者】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベロコン デニス エフゲネエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コルチャノフ アレクサンドル ヴァレレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クキエフ ドミトリー アルキポヴィチ
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260981(JP,A)
【文献】特開2001-305287(JP,A)
【文献】特開2003-088830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/08
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるための装置であって、
密閉された円筒形の本体を備え、
前記本体の上部に放出チョークが配置され、
使用済みイオン交換樹脂を前記本
体内に供給するノズルが配置され、
前記本体底部に、使用済みイオン交換樹脂を回収するノズルが、当該ノズルを開閉可能なロック装置とともに設置され、
前記本体の外部ヒーターと、前記本体の内部に回転可能に一直線に駆動軸とが配置され、前記駆動軸には、攪拌機が配され、
前記駆動軸にしっかりと固定されたアンカーミキサーとしての前記攪拌機が設けられ、
ミキサーブレードは、本体の底面と側面の内面の形状に従って形成され、前記駆動軸の、アンカーミキサーが固定された場所に対して、上側に上部スクリュー螺旋体が配置され、下側に下部スクリュー螺旋体が配置され、
乾燥したイオン交換樹脂を回収するためのノズルの内側に一直線に、下部スクリュー螺旋体を備えた駆動軸の下部を配置し、乾燥したイオン交換樹脂を回収するための前記ノズルの下部外側には、水タンクが設置されており、前記ノズルの下部には、前記ノズルの内部空洞を前記水タンクの空洞に接続するための穴が設けられており、前記ノズルが前記ロック装置で閉じられているときに前記本体内の液体が重力によって前記ノズルの穴を通って前記水タンクに排出される
ことを特徴とする使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるための装置。
【請求項2】
前記アンカーミキサーのブレードと上部スクリュー螺旋体は、本体の外部ヒーターの加熱領域の高さを超えて、駆動軸に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の使用済みイオン交換樹脂を乾燥するための装置。
【請求項3】
前記水タンクは、前記ノズルの下端に同軸に設置された円筒形の形状からなり、水を排出するための特別なチョークを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の使用済みイオン交換樹脂を乾燥するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電、特に使用済みイオン交換樹脂(SIER:Spent Ion-Exchange Resins)の乾燥に関するものであり、原子力発電所又は放射性廃棄物の処理のための特別なプラントで使用することができる。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂は、原子力発電所で広く使用されており、蒸発プラントの凝縮の良好なフィルタリングを行なう第1回路と第2回路において、他の補助水システムにおいて、また、原子力発電所の廃炉において、水質管理を保証する。使用の過程で、かなりの量のSIERが蓄積し、これらの樹脂をその後の保管のために処理する必要がある。SIERの残留水分含有量が5重量%以下であれば、密閉された保護容器内で、SIERの長期間、安全な保管が可能である。この制限は、密閉された保護容器の保管/廃棄中に、残留水分が放射性分解する可能性によって、規定されている。
【0003】
放射性イオン交換樹脂の熱処理のためのプラントがよく知られている(特許文献1)。このプラントは、供給及び排出ユニットとヒーターとを備えた熱反応器を含む。このプラントは、主パイプにより熱反応器に接続された水蒸気凝縮器、主パイプを介して、水蒸気凝縮器に接続された凝縮液レシーバー、及び、入口が凝縮液レシーバーに接続され、出口が空気除去用の主パイプに接続されている真空ポンプを含む。
【0004】
プロセスのエネルギー効率が低いことが上述したSIER乾燥方法の欠点の一つである。
【0005】
使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるためのプラントは、円筒形の本体を備える(特許文献2)。その上部には、蒸気とガスを排出するためのチョークが設けられている。本体の底部には、本体内に使用済みイオン交換樹脂を供給するためのノズル、及び、使用済みイオン交換樹脂を回収するためのノズルが設けられ、ロック装置を備えている。これは、プロトタイプとして選択された最も近い技術的解決策である。
【0006】
円筒型の本体は、本体に対して外部のヒーターを備え、本体内部において、一直線に配され、攪拌機を備え、駆動軸によって回転可能である。
【0007】
最も近い類似物の欠点は、プロセスの低い限定された容量であり、乾燥時間が長く、したがってエネルギー消費が増加することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】ロシア国実用新案第121396号
【文献】ロシア国実用新案第161811号
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、SIERの乾燥プロセスを強化し、エネルギー消費を低減し、乾燥プロセスが完了した後のSIERの排出を加速することである。
【0010】
本発明によって達成される技術的結果は、SIERを乾燥するプロセスの時間及びエネルギー消費を低減し、ならびに、乾燥プロセスが完了した後のSIERの排出を加速することである。
【0011】
示される技術的成果は、以下により、達成される。つまり、使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるためのプラントの密閉された円筒形の本体の上部において、放出チョーク及び本体の内部に使用済みイオン交換樹脂を供給するためのノズルが取り付けられる。また、本体の底部に、乾燥したイオン交換樹脂を回収するためのノズルが取り付けられる。当該ノズルは、ロック装置を備える。本体の外部ヒーター及び回転可能に本体内部に一直線状に設けられた駆動軸を備える。駆動軸には、攪拌機が取り付けられている。また、駆動軸にしっかりと固定されたアンカーミキサーとして攪拌機を設けることが提案されている。ミキサーブレードは、本体の底部と側面の内面の形状に従い、ここで、アンカーミキサーは、一方向の上部スクリュー螺旋体と一方向の下部スクリュー螺旋体を含んで、固定されている。下部スクリュー螺旋体が取り付けられた駆動軸の下方部は、乾燥したイオン交換を排出するためのノズルの内側に、一直線状に設けられている。乾燥したイオン交換を排出するための上記ノズルは、水排出装置に取り付けられている。
【0012】
駆動軸に配置されたアンカーミキサーと上部スクリュー螺旋体のブレードの高さは、主に、本体の外部ヒーターによる加熱エリアよりも高い。
【0013】
水排出装置は、円筒形の水タンクの形状により構成され、ノズルの下端に、同軸に、設けられており、排出されたイオン交換樹脂を回収することを目的とし、水を排出するための特別のチョークを含み、排出されたイオン交換樹脂を回収するためのノズルの下方円筒部の周辺に、水タンクの空洞とノズルの内部の空洞とを接続するための穴が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】複数の変形例の1つにおける使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるためのプラントの構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるためのプラントは、密閉された円筒形の本体1を含み、その上部には、放出チョーク(blow-off choke)2が設けられ、本体1内に使用済みイオン交換樹脂を供給するためのノズル3が設けられている。また、底部には、使用済みイオン交換樹脂を回収するためのノズル4が設けられ、ロック装置(図には示されていない)及び水を排出するための装置に取り付けられている。密閉された円筒形の本体1は、外部ヒーター5を備えている。
【0016】
密閉された円筒形の本体1には、一直線に、攪拌機を備えた駆動軸6が、回転可能に取り付けられている。アンカーミキサー7としての攪拌機は、駆動軸6にしっかりと固定され、アンカーミキサー7の形で作られ、ミキサーブレードは、密閉された円筒形の本体1の底部及び側面部分の形状に従うように形成され、一方向の上部スクリュー螺旋体8及び一方向の下部スクリュー螺旋体9を含むようにアンカーミキサー7が固定されている位置において、駆動軸6の上部及び下部に配置されている。下部スクリュー螺旋体9を備えた駆動軸6の下部は、乾燥したイオン交換樹脂を排出するためにノズル4の内側に、一直線に、配置されている。
【0017】
図1に示すように、使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるためのプラントのモデルにおいて、駆動軸6に配置されたアンカーミキサー7のブレード及び上部スクリュー螺旋体8は、外部ヒーター5の加熱エリアの高さよりも高い位置に設けられている。また、水を排出するための装置は、円筒形の水タンク10として設けられ、乾燥イオン交換樹脂を回収するためのノズル4の下端に同軸外側に設置され、水を排出するチョーク11を備える。排出されるイオン交換樹脂を排出するためのノズル4の下部円筒部分の周囲に沿って、ノズル4の内部空洞を水タンク10の空洞と接続する穴12が設けられている。
【0018】
使用済みイオン交換樹脂を乾燥させるためのプラントは、次のように機能する。
【0019】
乾燥したイオン交換樹脂を回収するためのノズル4は、ロック装置で閉じられている。固相:液(S:L)の質量比が1:1から1:3の脱水SIERは、使用済みイオン交換樹脂を供給するためのノズル4を介して密閉円筒形の本体1に供給される。この場合、余分な液体は、乾燥したイオン交換樹脂を排出するために、ノズル4の下部円筒部分に開けられた穴12を通って、密閉された円筒形の本体1から重力によって、円筒形の水タンク10に、排出される。次に、それは、チョーク11を通して、放射性排水システムに排出される。密閉された円筒形の本体1が満たされた後、SIERの供給を停止し、放出チョーク2を介して密閉された円筒形の本体1の内部に真空を作り出す。外部ヒーター5(電気または蒸気)をオンにし、アンカーミキサー7及び一方向の上部スクリュー螺旋体8と下部スクリュー螺旋体9をしっかりと固定し、駆動軸6の回転を開始する。この場合、一方向の上部スクリュー螺旋体8及び一方向の下部スクリュー螺旋体9は、駆動軸6と共に、乾燥イオン交換樹脂を排水するためのノズル4からSIERが押し上げられる方向に回転し、密閉された円筒形の本体1の下部は、本体1内を移動し始め、さらに他のアンカーミキサーのブレードにより、強く混合される。乾燥プロセス中、外部ヒーター5の手段により、SIERの温度は、SIERの熱分解を防ぐために、90°C以下に維持される。SIERの乾燥プロセスが終了したとき、外部ヒーター5がオフになり、駆動軸6が回転を停止する。プラントから排出する前に、SIERは、50°Cを超えない温度に冷却される。
【0020】
乾燥したイオン交換樹脂を回収し、乾燥したSIERを排出するために、密閉された保護容器をノズル4の下に設置する。乾燥したイオン交換樹脂を回収するためのノズル4の下部に設置されたロック装置を開き、乾燥したSIERが容器に排出される。乾燥したSIERを排出するプロセスを改善及び加速するために、駆動軸6の逆回転が開始される。この場合、一方向の上部スクリュー螺旋体8及び一方向の下部スクリュー螺旋体9は、駆動軸6と共に、密閉された円筒形の本体1及び乾燥イオン交換樹脂を回収するためのノズル4から、SIERが押し下げられる方向に、回転し、それらは、密閉保護容器に排出される。
【0021】
本発明は、乾燥中のSIERの効果的な混合により、また、乾燥終了後のSIERの排出の加速により、エネルギー消費の減少、プロセスの促進、及び乾燥時間の大幅な短縮を確実にする。