(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】無線通信端末装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20240722BHJP
H01Q 9/26 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q9/26
(21)【出願番号】P 2021016162
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(74)【代理人】
【識別番号】100082636
【氏名又は名称】真田 修治
(72)【発明者】
【氏名】山地 周作
(72)【発明者】
【氏名】森 祐真
(72)【発明者】
【氏名】南 昂希
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】本多 哲也
(72)【発明者】
【氏名】江川 潔
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070544(JP,A)
【文献】特開2000-252725(JP,A)
【文献】特開2002-063552(JP,A)
【文献】特開2009-218878(JP,A)
【文献】特開2014-150334(JP,A)
【文献】特開2005-142851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板状を呈し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有する剛性大なるベースプレートと、
前記ベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、
を有してなることを特徴とする無線通信端末装置。
【請求項2】
無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板上の互いに離隔した部位の上面から所定高さに延びその先端側が前記上面に平行になるように内方に折曲した少なくとも一対のリブ部を有し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有するリブ付きベースプレートと、
前記リブ付きベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、
を有してなることを特徴とする無線通信端末装置。
【請求項3】
前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートには、上面から少なくとも下面に向かう途中に至るまで断面寸法が連続的もしくは段階的に大きくなるような貫通孔が形成され、前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの上側に位置する前記アンテナ装置を含む前記基板と前記緊締部材の全体をカバーし且つ前記貫通孔に充填されて一体的に固化されてなるモールド成型部が形成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末装置。
【請求項4】
前記ベースプレートには、その中心部に前記貫通孔が穿設され、前記貫通孔の中心部から離れた対称位置に皿孔状の挿通孔がそれぞれ穿設され、
前記基板には、その両端側に前記ベースプレートに穿設された前記挿通孔に対応する位置に挿通孔がそれぞれ穿設されてなることを特徴とする請求項3に記載の無線通信端末装置。
【請求項5】
前記リブ付きベースプレートには、その中心部
に貫通孔が穿設され、前記貫通孔の中心部から離れた前記リブ部の対称位置に挿通孔がそれぞれ穿設され、
前記基板には、その両端側に前記リブ付きベースプレートの前記リブ部に穿設された前記挿通孔に対応する位置に挿通孔がそれぞれ穿設されてなることを特徴とする請求項
2に記載の無線通信端末装置。
【請求項6】
前記緊締部材は、前記基板および前記ベースプレートにそれぞれ穿設され
た挿通孔に挿通されるボルトと、前記ベースプレートと前記基板との間隔を規定するナットまたはスペーサと、前記基板を上側から押圧保持するナットとからなることを特徴とする請求項
1に記載の無線通信端末装置。
【請求項7】
前記緊締部材は、前記基板および前記リブ付きベースプレートの前記リブ部にそれぞれ穿設され
た挿通孔に挿通されるボルトと、
前記リブ付きベースプレートと前記基板との間隔を規定する前記リブ部の下面に前記基板の上面を当接した状態で前記リブ部と前記基板に穿設された前記挿通孔に上面から挿通され、下面に突出する前記ボルトに螺合するナットと、からなることを特徴とする請求項
2に記載の無線通信端末装置。
【請求項8】
前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの前記取付部は、前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの両端近傍の対称位置にそれぞれ複数の円孔が形成され、前記構造体に対し、取付ボルトをもって直接または仲介部材を介して設置し得るように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末装置。
【請求項9】
前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの前記貫通孔は、断面より見て、テーパ状、円弧状、円錐状もしくは階段状のいずれかのように、上面から下面に向かうに従って横方向寸法が連続的もしくは段階的に大きくなるように形成してなることを特徴とする請求項3に記載の無線通信端末装置。
【請求項10】
前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの前記貫通孔は、断面より見て、ソロバン玉状、長円弧状、十文字状のいずれかのように、上面から下面に至る中間までは、横方向寸法が連続的もしくは段階的に大きくなり、該中間から該下面に至るまでは、横方向寸法が連続的もしくは段階的に小さくなるように形成してなることを特徴とする請求項3に記載の無線通信端末装置。
【請求項11】
前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレート、前記緊締部材としての前記ボルト、前記ナット並びに前記構造体へ設置するため
の取付部として
の取付ボルトは、高強度の金属材からなり、前記構造体に取り付けた状態において、前記構造体に高い遠心加速度や振動を受けても耐え得る強度を保持するように構成したことを特徴とする請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の無線通信端末装置。
【請求項12】
前記構造体が受ける加速度、変位、トルク、圧力、温度その他の物理量をセンサにより検出し、その検出結果を演算部により演算処理し、その演算結果を前記通信回路により前記アンテナ装置を駆動して無線信号として放射し得るように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末装置。
【請求項13】
前記基板に搭載された前記アンテナ装置は、誘電体基板の主面上に設けられ、中心部に給電部を設けた第一の線状導体と、前記誘電体基板を介して、他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体の各々の両端を一対の接続導体にてそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、
動作周波数におけるインピーダンス成分が、数10+j数100Ωのチップアンテナを、前記給電部から所定距離以上離れた前記第一の線状導体または前記第二の線状導体の対称位置にそれぞれ配置するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末装置。
【請求項14】
前記基板に搭載された前記アンテナ装置は、誘電体基板の主面上に設けられ中心部に給電部を設けた第一の線状導体と、前記誘電体基板を介して他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体の各々の両端を一対の接続導体にてそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、動作周波数におけるインピーダンス成分が数10+j数100Ωのチップアンテナを、前記第一の線状導体または前記第二の線状導体のいずれかの両端にそれぞれ配置するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末装置。
【請求項15】
前記基板に搭載された前記アンテナ装置は、二層以上の多層誘電体基板上の主面上に設けられた第一の線状導体と、前記多層誘電体基板を介して他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体と、前記多層誘電体基板の中間に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第三の線状導体の各々の両端を一対の接続導体にてそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、動作周波数におけるインピーダンス成分が数10+j数100Ωのチップアンテナを、前記第一の線状導体または前記第二の線状導体のいずれかの両端にそれぞれ配置するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末装置に関し、より詳しくは、小型で、耐久性が高く且つ放射効率の良好な無線通信端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体に無線通信端末装置を装着して、回転体に生じる加速度やトルク等の物理量をセンサで検出し、その物理量を処理部で演算処理し、当該物理量を無線通信回路により駆動してアンテナ装置から無線信号を放射し、離隔した位置に設置される受信アンテナで受信する通信システムが実施されている。
第1の公知例として、無線基板を金属ケースに嵌め込み、エポキシ樹脂等でモールドした構成のものがある。
また、第2の公知例として、高温特性に優れたPEEK材(ポリエーテルエーテルケトンと称する樹脂材料)をハウジングに使用したものがある。
さらにまた、他の公知例として、特開平10-126304号公報(以下、「特許文献1」という)に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1には、小形無線機本体の背面上部にホイップアンテナを有し、前記小形無線機本体の背面部に当該小形無線機本体を金属板上に横に寝かせて置いたときの前記ホイップアンテナの感度特性を調整するためのリブを有し、かつ、前記リブは小形無線機本体を横に寝かせて置いたときに当該小形無線機本体上部側が浮くようにバランスされた位置に設置されたことを特徴とする小形無線機が記載されており、このような構成とすることにより、金属板上でのアンテナ特性が劣化することを防止する効果があると共に、LCD表示面が斜めになるため、見やすくなるという効果があるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記第1の公知例のように構成したものは、
振動や衝撃、遠心加速度に対する耐久性を保持するために、金属ケースをアルミニウムにより構成したものであるが、このように構成した場合、板厚が4mm程度必要となり、小型化、薄型化、軽量化が困難になるだけでなく、特許文献1に示されているようにアンテナが金属に近接すると無線性能が劣化する、という課題がある。
そして、このような金属ケースを回転体に設置する場合、別途専用治具とステンレスバンドで金属シャフトに巻き付ける必要があり、作業が厄介であると共に回転体の計測結果に悪影響を及ぼしかねない、という問題もある。
また、上記第2の公知例の場合、耐遠心加速度(例えば、3000G)を満足するか否かは、仕様上、明らかにされていない。
またこの第2の公知例のものも、回転体に設置する場合、別途専用治具と、ステンレスバンド等を用いて金属シャフトに巻き付ける必要があり、上述した第1の公知例について上述したと同様の問題が残されている。
さらに、上記特許文献1に記載された小形無線機は、移動体通信用の小型無線機であって、高速で回転する回転体に取り付けてみたとしても、大きな遠心加速度には、到底耐え得ない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、振動や衝撃、遠心加速度に対する耐久性を有する無線通信端末装置を提供することにあり、第2の目的とするところは、金属材料を用いて耐久性を保持しつつ、金属材料により電波が遮蔽されることを避けて、放射効率の良好な無線通信端末装置を提供することにあり、第3の目的とするところは、小型、軽量で且つ低コストを実現し得る無線通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明に係る無線通信端末装置は、上記第1、第2および第3の目的を達成するために、
無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板状を呈し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有する剛性大なるベースプレートと、
前記ベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、
を有してなることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載した発明に係る無線通信端末装置は、上記第1、第2および第3の目的を達成するために、
無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板上の互いに離隔した部位の上面から所定高さに延びその先端側が前記上面に平行になるように内方に折曲した少なくとも一対のリブ部を有し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有するリブ付きベースプレートと、
前記リブ付きベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、
を有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動や衝撃、遠心加速度に対する耐久性を有し、金属材料を用いて耐久性を実現しつつ、金属材料により電波が遮蔽されることを極力抑制し、放射効率の良好な無線通信端末装置を提供することができる。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、
無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板状を呈し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有する剛性大なるベースプレートと、
前記ベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、を有してなり、上記ベースプレートと緊締部材との骨格構造により上記基板を所定間隔を有して強固に保持すると共に、電波が金属材により遮蔽されるのを抑制して放射効率を良好にし、さらに、基板を保持する部材としても、ベースプレートと緊締部材のみの簡略な構成からなるため、小型化、低コスト化を実現し得る無線通信端末装置を提供することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、
無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板上の互いに離隔した部位の上面から所定高さに延びその先端側が前記上面に平行になるように内方に折曲した少なくとも一対のリブ部を有し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有するリブ付きベースプレートと、
前記リブ付きベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、を有してなることにより、上記リブ付きベースプレートと緊締部材との骨格構造により上記基板を所定間隔を有して強固に保持すると共に、電波が金属材により遮蔽されるのを抑制して放射効率を良好にし、さらに、基板を保持する部材としても、リブ付きベースプレートと緊締部材のみの簡略な構成からなるため、小型化、低コスト化を実現し得る無線通信端末装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末装置の一部を構成するベースプレートの構成を示すもので、(a)は、斜視図、(b)は、
図1(a)に示すX-X線矢視方向断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末装置の一部を構成するベースプレートとボルトの組立て状態を示すもので、(a)は、斜視図、(b)は、
図2(a)のX-X線矢視方向断面図である。
【
図3】
図2に示す構成のボルトにスペーサとしてのナットを螺合した状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は、
図3(a)のX-X線矢視方向断面図である。
【
図4】
図3に示す構成のベースプレートの上に基板を重ねる前後の状態を示すもので、(a)は、ベースプレートに基板を重ねる前の状態を示す分解斜視図、(b)は、基板を重ねた状態を示す斜視図、(c)は、
図4(b)のX-X線矢視方向断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示すもので、
図4に示す構成のボルトにナットを螺合した完成状態を示すもので、(a)は、斜視図、(b)は、
図5(a)のX-X線矢視方向断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示すものであり、
図5に示す構成のベースプレートの上側に位置するアンテナ装置を含む基板と、ボルト、ナットの全体を一体的にモールド成型した状態を示すもので、(a)は、モールド成型部を二点鎖線をもって示す斜視図、(b)は、モールド成型部を実線で示す第2の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示すものであり、
図6(b)のX-X線矢視方向断面をもって示す断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る無線通信端末装置を構成するリブ付きベースプレート、基板、ボルトおよびナットを示すもので、(a)は、基板をリブ付きベースプレートに組付ける前の状態を示す分解斜視図、(b)は、リブ付きベースプレートの上面側に基板をボルトとナットをもって緊締した状態を示す斜視図、(c)は、その正面図である。
【
図9】(a)は、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る無線通信端末装置を構成するリブ付きベースプレートと、基板と、ボルトと、ナットを分離して示す分解斜視図、(b)は、ベースプレート上に所定間隔を有して基板をリブ部に当接してボルトとナットにより組み立てた状態を示す斜視図、(c)は、その正面図を示す。
【
図10】
図1(b)、
図8(a)、等に示されるベースプレートまたはリブ付きベースプレートに形成される貫通孔の例を示すもので、(a)~(c)は、断面より見て上面から下面に向かうに従って、横方向寸法が連続的もしくは段階的に大きくなるように形成してなる断面図であり、(d)~(f)は、断面より見て、上面から下面に至る中間までは横方向寸法が連続的もしくは段階的に大きくなるように形成してなり、中間から下面に向かうに従って、連続的もしくは段階的に小さくなるように形成してなる断面図である。
【
図11】本発明に係る無線通信端末装置の基板にアンテナ装置を装着する前の状態を上面側から見た分解斜視図である。
【
図12】本発明に係る無線通信端末装置の基板にアンテナ装置を装着する前の状態を下面側から見た分解斜視図である。
【
図13】本発明に係る無線通信端末装置の基板にアンテナ装置を装着した状態を上面側から見た斜視図である。
【
図14】本発明の無線通信端末装置に搭載するアンテナ装置に係る第1の実施の形態の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図15】本発明の無線通信端末装置に搭載するアンテナ装置に係る第2の実施の形態の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図16】本発明の無線通信端末装置に搭載するアンテナ装置の第2の実施の形態に係るアンテナ装置に無線基板を付加してなる外観構成を示す斜視図である。
【
図17】
図16に示すアンテナ装置の具体的な第1の実施例の構成を示す図で、(a)は、正面図、(b)は、右側面図である。
【
図18】本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図19】本発明の第4の実施の形態に係るアンテナ装置の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図20】本発明のアンテナ装置の第3の実施の形態の変形である第2の実施例の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図21】単体のインピーダンス成分が、40+j300Ω前後となるチップアンテナ単体のインピーダンス特性図である。
【
図22】
図17に示す第1の実施例に係るアンテナ装置において、単体のインピーダンス成分が40+j300Ω前後となるチップアンテナを接続した際のインピーダンス特性図である。
【
図23】
図17に示す第1の実施例に係るアンテナ装置と給電部との間に整合回路を装荷した場合のインピーダンス特性図である。
【
図24】
図17に示す第1の実施例に示すアンテナ装置における放射特性をシミュレーションにより求めた放射特性図である。
【
図25】
図24および
図26の放射特性図のx軸、y軸、z軸の各方向を示すための概略斜視図である。
【
図26】
図17に示す第1の実施例に係るアンテナ装置における放射特性を実際に計測して得た放射特性図である。
【
図27】第1の実施例に係るアンテナ装置の自由空間における放射特性と、アンテナ装置を金属に近接させたときの放射特性とを対比する図であり、このうち、(a)は、アンテナ装置を自由空間においた状態におけるx軸、y軸、z軸の各方向を共に示す概略斜視図であり、(b)は、第1の実施例の自由空間におけるインピーダンス特性図であり、(c)は、第1の実施例のアンテナ装置を、エポキシ樹脂でモールドし、金属板に近接(5mmの間隔)した状態を示す斜視図であり、(d)は、(c)の実施例のインピーダンス特性図、(e)~(h)は、第1の実施例のアンテナ装置を自由空間においた場合であって、周波数が異なる毎の放射特性をそれぞれ示す放射特性図であり、(i)~(l)は、上述した(c)図に示すようにアンテナ装置に金属を近接した場合であって、周波数が異なる毎の放射特性をそれぞれ示す放射特性図である。
【
図28】本発明に係る無線通信端末装置のように基板に対しベースプレートが近接して存在する場合と、存在しない場合における受信電力(dB)の比較をした特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態および実施例に基づき、図面を参照して、本発明の無線通信端末装置について、詳細に説明する。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1~
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末装置の組立手順を説明するための図面および完成形体の構成を示す図面である。
即ち、
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信端末装置の一部を構成するベースプレートの構成を示すもので、このうち、(a)は、ベースプレートの外観構成を示す斜視図、(b)は、
図1(a)のX-X線矢視方向断面図である。
ベースプレート11は、矩形状の平板からなり、ほぼ中心部に、上面から下面に向かうに従って、横方向寸法が連続的に大きくなるテーパ状を呈する貫通孔11aが形成されている。
また、ベースプレート11には、上記貫通孔11aの中心部から離れた対称位置に、下面側が皿孔状を呈する挿通孔11bが、それぞれ穿設され、さらに、ベースプレート11の両端近傍の対称位置にそれぞれ複数(この場合4個)の円孔11cがそれぞれ穿設されている。
【0014】
ベースプレート11は、詳しくは後述するが、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に上記取付部としての円孔11cにボルトを挿通し固定して使用されるため、剛性の大きい金属、例えば、耐荷重が528N(ニュートン)を有し、34300m/s
2の加速度に耐え得る鋼材(例えば、SUS301-CSP-Hからなるステインレス鋼材)が望ましい。但し、構造体の対象によっては、上記の強度を必須とするものではなく、所定の剛性を有するものであってもよい。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信端末装置の一部を構成するベースプレート11とボルト13の結合状態を示すもので、(a)は、斜視図、(b)は、
図2(a)のX-X線矢視方向断面図である。
図2において、ベースプレート11の挿通孔11bは、下面から上面に向かうに従って、直径寸法が減少するテーパ状の孔に形成されてなり、この挿通孔11bに挿通されるボルト13は、首部が上記テーパ孔に適合するようなテーパを有する六角穴付き皿ボルトが用いられる。
【0015】
図3は、
図2に示す構成のボルト13にスペーサ14としてのナットを螺合した状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は、
図3(a)X-X線矢視方向断面図である。
即ち、ベースプレート11の挿通孔11bの下面側からボルト13としての六角穴付き皿ボルトを挿通し、ベースプレート11の上面側からスペーサ14としてのボルトを螺合して固定する。
図4は、
図3に示す構成のベースプレート11の上側に基板12を重ねる前後の状態を示すもので、(a)は、ベースプレート11に基板12を重ねる前の状態を示す分解斜視図、(b)は、重ねた後の状態を示す斜視図、(c)は、
図4(b)のX-X線矢視方向断面である。
即ち、ベースプレート11と基板12との間に、所定間隔Dを設けるために、スペーサ14を介挿してなるものである。スペーサ14は、ボルトでもワッシャでも所定間隔を保持し得るものでよい。
【0016】
図5は、本発明に係る第1の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示すもので、(a)は斜視図、(b)は、
図5(a)のX-X線矢視方向断面図である。
図5(a)、(b)に示す無線通信端末装置10は、ベースプレート11と、基板12と、上記ベースプレート11上に、所定間隔を維持するためのスペーサ14を介在した状態で基板12を重ねて固定支持する緊締手段としてのボルト13とナット15により構成されている。
即ち、上述したように、六角穴付き皿ボルトであるボルト13を、ベースプレート11の中心部から離れた対称位置にそれぞれ穿設されたテーパ状に形成された2つの挿通孔11b、スペーサ14の円孔および基板12の対象位置に穿設された挿通孔12bに下面側から順に挿通し、基板12の上面に突出したボルト13にナット15を螺合し、例えば六角レンチとスパナ等を用いて強固に締付け固定する。
尚、この第1の実施の形態においては、ベースプレート11の中心部に貫通孔11aを設けないものとする。
【0017】
そして、上記無線通信端末装置10を、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体(図示せず)に取付けるには、ベースプレート11の両端近傍の対称位置にそれぞれ穿設された複数(4つ)の円孔11c、11c、・・・の上部から取付ボルト(図示せず)を挿通し、上記構造体または仲介部材(図示せず)に形成されたボルトねじ穴に螺合し、例えば、六角レンチ、スパナ等の工具を用いて、強固に取付ける。
尚、ベースプレート11は、上述したように高強度な鋼材(例えば、ステンレス鋼材)が望ましいが、緊締部材としてのボルト13、ナット15、取付ボルト(図示せず)も同様に高強度な鋼材(SCM、SUS等)を用いることが望ましい。
即ち、本発明に係る無線通信端末装置10の装着対象となる構造体は、振動や衝撃、遠心加速度を受けるものであることを想定している。
より詳しくは、本発明に係る構造体は、例えば、構造体が回転体である場合には、遠心加速度(例えば、最大3400m/s2)に対する耐久性を有し、また、プレス機である場合には、圧縮加速度(衝撃力)に対する耐久性を有し、削岩機のようなものである場合には、振動、衝撃、遠心加速度に耐え得る強度(例えば、取付ボルトで言えば強度区分10.9SSS規格)を有することを考慮したものである。
【0018】
これに対し、本発明に係る無線通信端末装置10を構成する基板12は、絶縁性の材料、例えばガラスエポキシ樹脂や、誘電体セラミックや、テフロン(登録商標)などよりなるため、強度は、小さい。
しかしながら、基板12は、高強度のベースプレート11の上面側にスペーサ14を介して高強度のボルト13、ナット15からなる緊締部材で強固に固定されてなるので、高い振動や衝撃、遠心加速度に対しても耐久性を保持することができる。
また、上記第1の実施の形態における無線通信端末装置によれば、ベースプレート11上に所定間隔を有した状態で前記基板12を緊締部材としてのボルト13、スペーサ14およびナット15で保持するだけの骨組構造からなるので、電波が金属材により遮蔽されるのを抑制して放射効率を良好にしている。さらに、基板12を保持する部材としてもベースプレート11と緊締部材(13,14,15)のみの簡略な構成からなるため、小型化、低コスト化並びに軽量化を実現することができる。
【0019】
また、ベースプレート11上に、所定間隔Dを有した状態で基板12を固定支持する構成とすることにより、最小間隔としては、アンテナ装置(後述する)として要求される通信性能(例えば、放射効率、通信距離、帯域内偏差など)に基づき考慮され、最大間隔としては、無線通信端末装置10として要求される機械的条件(例えば厚さ)等を考慮して上記所定間隔Dを設定可能とし、汎用性をもたせるようにしている。
即ち、基板12に対する金属材としてのベースプレート11の間隔Dが小さくなるにつれて、帯域内の上限、下限の周波数利得が低減し、また、放射効率などの通信性能が低下し、通信距離が短くなるなどの傾向があるため、無線通信端末装置10が適用される構造体に要求される性能に応じて上記所定間隔Dの最短値を設定すればよく、一方、上記所定間隔Dの最大値としては、構造体に設置した場合の厚さ(高さ)方向の制約や強度等を考慮して設定可能とし、汎用性(自由度)をもたせるようにしている。
因に、
図5に示す実施の形態においては、D=1.6mmに設定したもので上述した条件を満足したものとしている。
【0020】
〔第2の実施の形態〕
図6(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示すもので、このうち、(a)は、モールド成型部を二点鎖線をもって示す斜視図、(b)は、モールド成型部を実線で示す斜視図である。
また、
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信端末装置の全体構成を示すもので、
図6(b)のX-X線矢視方向断面図である。
この第2の実施の形態に係る無線通信端末装置10´は、第1の実施の形態に係る無線通信端末装置10に対し、
図5(a)、(b)に示す構成、即ち、ベースプレート11の上側に位置するアンテナ装置を含む基板12と、ボルト13、スペーサ14、ナット15、ベースプレート11の上面の一部と、後述するベースプレート11の中央部に穿設された貫通孔11aの内部に至るまで、全体を一体的にモールド成型したものである。
尚、モールド樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が望ましい。
【0021】
ベースプレート11の、両端部の複数の円孔11c、11c・・・が形成された取付部および下面側は、モールド成型されていないが、ベースプレート11に形成された貫通孔11aの内部に充填されたモールド成型部16の一部が同一平面上に露出されている。
上述したように、モールド成型部16は、ベースプレート11の中央部に上面から下面に向かうに従って、断面寸法が大きくなるような貫通孔11aに、モールド樹脂液が注入固化され、いわゆる抜け止め構成とされ、さらに、ベースプレート11の上面側の基板12の上下、ボルト13、スペーサ14、ナット15の周囲を囲繞するように一体的にモールド成型されてなるので、例えば、構造体に装着された無線通信端末装置10´に上下方向や横方向に大きな遠心加速度、振動、衝撃等を受けても充分に耐え得る構造となっている。
尚、ベースプレート11の貫通孔11a形状としては、
図10(a)、(b)に示すように、ベースプレート11の上面から下面に至るまで、断面寸法が連続的に大きくなるような、いわゆる(a)のテーパ状、(b)の円弧状(円錐状を含む)に形成することが、加工の容易性の観点から望ましい。
【0022】
また、
図10(c)に示すように、貫通孔11aとして、上面から下面に向かうに従って、段階的に断面形状が大きくなる階段状(または凸形状)に形成してもよい。
また、
図10(d)、(e)および(f)に示すように、ベースプレート11の貫通孔11aとして、上面から下面に向かう途中までは、断面形状が連続的もしくは段階的に大きくなり、途中から下面に向かうに従って、連続的もしくは段階的に断面形状が小さくなる、いわゆる、ソロバン玉状、長円状および十文字状に形成してもよい。
要するに、ベースプレート11の貫通孔11aは、上面側の横方向の寸法が小さく下面に向かうにつれて横寸法が大きく形成されていればよく、貫通孔は、円孔であっても角孔であってもよい。
【0023】
〔第3の実施の形態〕
図8(a)、(b)、(c)は、本発明の第3の実施の形態に係る無線通信端末装置20全体構成を示すもので、このうち(a)は、基板22をリブ付きベースプレート21に組付ける前の状態を示す分解斜視図、(b)は、リブ付きベースプレート21の上面側に所定間隔を有して基板22をボルト23とナット25とをもって緊締した状態を示す斜視図、(c)は、その正面図である。
この第3の実施の形態は、第1の実施の形態とは、ベースプレート11に代えてリブ付きベースプレート21を採用した点が異なっている。
即ち、この第3の実施の形態のリブ付きベースプレート21は、平板上の互いに離隔した部位の上面から所定高さに延び、その先端側が互いに内方に向くように直角に折曲した一対のリブ部21d、21dを設けてなるものである。
【0024】
これをより詳しく説明すれば、上記リブ付きベースプレート21は、平板の両端から互いに平行で且つ所定の長さに亘る2本のスリットを形成され、当該2本のスリットの間の部分を各端部から上方に向けて直角に立ち上げ、さらに、その立ち上げ中間部からさらに直角に内方に折れ曲がって平板面に対し平行な一対のリブ部21d、21dを有してなる。換言すれば、このリブ付きベースプレート21は、平板上の互いに離隔した部位の上面から所定高さに延び、その先端側が前記上面に平行になるように内方に折曲した一対のリブ部21d、21dを有してなるものである。
一対のリブ部21d、21dには、挿通孔21b、21bがそれぞれ穿設されている。
リブ付きベースプレート21のリブ部21dの下面に基板22の上面を当接してボルト23とナット25で緊締した状態で、基板22の下面とリブ付きベースプレート21の上面との間隔が、上述した所定間隔Dとなる。
尚、
図8において、リブ付きベースプレート21の中間部には、上面から下面に向かうに断面寸法が次第に大きくなる貫通孔21aが穿設されているが、この貫通孔21aの形状としては、
図10(a)~(f)に例示するような形状であってもよい。
【0025】
また、基板22には、その両端側に上記リブ部21dに形成した挿通孔21bに対応する位置に一対の挿通孔22bがそれぞれ形成されている。
第3の実施の形態に係る無線通信端末装置20は、リブ付きベースプレート21と基板22との所定間隔Dを規定するリブ部21dの下面に基板22の上面を当接した状態で、リブ部21dと基板22に穿設された挿通孔21bと挿通孔22bに上面からボルト23を挿通し、下面に突出するボルト23にナット25を螺合し、例えば、六角レンチをスパナ等を用いて強固に締付け固定する。
そして、第3の実施の形態における無線通信端末装置20は、第1の実施の形態に係る無線通信端末装置10に対し、スペーサ14を用いる代わりにリブ部21dに、その機能を持たせた点にあり、その他の構成は、同じである。
【0026】
即ち、無線通信端末装置20を、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に取付ける方法も共通であり、さらには、リブ付きベースプレート21、ボルト23、ナット25等は、高強度な鋼材(SUS、SCM等)を用いることが望ましく、リブ付きベースプレート21と基板22との間の所定間隔Dの設定についても同様の要領で行うことになる。
尚、第3の実施の形態におけるリブ付きベースプレート21では、一対のリブ部21d、21dを設置した例を示したが、リブ部21d、21dを、例えば、ベースプレート21の上面に、二対、三対等、必要により複数対増設するようにしてもよい。
このように増設が可能なるようにした場合、無線通信端末装置が小型のものから大型のものに至るまで、対応が可能となる。
【0027】
〔第3の実施の形態の変形例〕
図9(a)、(b)、(c)は、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る無線通信端末装置30の全体構成を示すもので、このうち、(a)は、リブ付きベースプレート31と、基板32と、ボルト33とナット35を分離して示す分解斜視図、(b)は、リブ付きベースプレート31のリブ部31dの下面に基板32の上面を当接した状態で、リブ部31aおよび基板32にそれぞれ穿設された挿通孔31bおよび32bにボルト33を上方から順に挿通し、基板32の下面から突出するボルト33の雄ねじ部にナット35を螺合し、強固に締付けた状態を示す斜視図、(c)は、その正面図である。
尚、無線通信端末装置30を振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に取付けるには、上述したと同様に、リブ付きベースプレート31に穿設された円孔31cの上部から取付ボルト(図示せず)を挿通し、構造体(場合により仲介部材)に形成されたねじ穴に螺合し、強固に締付けて固定することは、上記第1、第2および第3の実施の形態に示すものと同様である。
【0028】
第3の実施の形態に対する第3の実施の形態の変形例の相違点は、リブ付きベースプレート31のリブ31dがリブ付きベースプレート31の上面に溶接により固着されている点にある。
即ち、
図9に示すリブ付きベースプレート31のリブ部31dは、L字と逆L字を逆さにした鉤状を呈し、平板上面の互いに離隔した部位に平板上面から所定の高さに垂直に延びる部分と、その先端側半分が互いに内方に直角に折れ曲がった部分とからなり、垂直に延びた部分の下面は、リブ付きベースプレート31の上面に溶接により固着されてなる。
尚、リブ付きベースプレート31dと31dは、L字と逆L字を逆さにした鉤状を呈するものであるが、平板上面の互いに離隔した部位に、平板上面から所定の高さに延びる部分は必ずしも垂直に延びるものに限らず、多少傾斜して延びるものであってもよく、また、その先端側部分は、必ずしも直角に折れ曲がるものに限らず、要は、内方に向かう部分が平板上面に平行になればよい。
このように、リブ部31dを溶接により固着する場合、水平をなすリブ部31dの下面は、上記所定間隔Dを定める部分になるので、溶接後に、リブ部31dの下面を、切削したり、研磨して精度を確保するようにしてもよい。
その他の機能については、第1および第3の実施の形態と同様である。
【0029】
次に、本発明に係る無線通信端末装置のアンテナ装置について説明する。
図11は、基板にアンテナ装置を装着する前の状態を上面側から見た斜視図、
図12は、基板にアンテナ装置を装着する前の状態をした面側から見た斜視図、
図13は、基板にアンテナ装置を装着した状態を上面側から見た斜視図であり、このようなアンテナ装置は、第1~第3の実施の形態および第3の実施の形態の変形例において装着されているものとする。
図11において、アンテナ装置36は、チップアンテナ37を含んで構成されている。
尚、上記アンテナ装置36およびチップアンテナ37は、共に半田で基板12に接続固定されている。
基板12の中央上面側に設けられた筐体部38の中には、図示は省略するが、構造体が受ける加速度、変位、トルク、圧力、温度その他の物理量を別設のセンサにより検出し、その検出結果を適宜、増幅、A/D変換、演算、記憶等を司る処理部やその処理結果を受けて、上記アンテナ装置36を駆動して無線信号を放射するための通信回路等が、格納されているものとする。
【0030】
ところで、本件出願人は、本発明に係る無線通信端末装置に搭載されるアンテナ装置として好適な新規なアンテナ装置に係る発明(以下、「先願発明」という)について、特願2019-133811号として特許出願を行った。
そして、上記先願発明に係るアンテナ装置は、本発明に係るアンテナ装置に好適なものであるので、以下「本発明に係るアンテナ装置」と定義し、説明する。
但し、以下に述べるアンテナ装置は、本発明に係る無線通信端末装置の基板に搭載されるアンテナ装置として好適なものではあるが、他のアンテナ装置を本発明に係る無線通信端末装置に適用することを否定するものではないことを付記する。
そして、以下の説明において、「本発明」とは、無線通信端末装置に係る発明ではなく、上述したように、アンテナ装置に係る発明についての記載であることを付記する。
【0031】
本発明は、金属に近接して設置されるようなテレメータ端末用として好適な小型のアンテナ装置に関するものである。
アンテナ装置に係る本発明は、その第1の目的とするところは、金属への近接時にインピーダンスの劣化が少なく高利得なアンテナ装置を提供することにあり、第2の目的とするところは、小形化を実現し得るアンテナ装置を提供することにあり、第3の目的とするところは、構成の簡単化を図り、コストの低減化を図り得るアンテナ装置を提供することにある。
以下、本発明の実施の形態および実施例に基づき、図面を参照して、本発明のアンテナ装置について、詳細に説明する。
【0032】
〔アンテナ装置に係る第1の実施の形態〕
図14は、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の要部の構成を示す斜視図である。
図14に示すアンテナ装置は、誘電体基板1、分割された第一の線状導体2(2a,2b)、第二の線状導体3、2つのチップアンテナ4(4a,4b)、2つの接続導体5(5a,5b)、給電部6、接地部8および無線基板(グランド基板)7を具備している。
誘電体基板1は、ガラスエポキシ樹脂からなる基板であるが、誘電体セラミックやテフロン(登録商標)を代用することもでき、特に材質を限定するものではない。
第一の線状導体2(2a,2b)は、給電部6を境に、中央で二分されており、それぞれ誘電体基板1の主面(
図13において、前面側の面)に設けられている。
この第一の線状導体2(2a,2b)の長さ方向の中央に一対の給電線路が接続され、一方の線路が給電部6に接続され、他方の線路が接地部(グラウンド)8に接続されている。
【0033】
第二の線状導体3は、誘電体基板1を介して、第一の線状導体2(2a,2b)と対向または平行するように、誘電体基板1の他面側(
図13における背面側)に設けられている。
第一の接続導体5(5a)は、誘電体基板1を貫通するようにスルーホール状に設けられおり、第一の線状導体2(2a)の一端(右端)および第二の線状導体3の一方端(右端)同士を接続している。
第二の接続導体5(5b)は、誘電体基板1を、貫通するように同様にスルーホール状に設けられており、第一の線状導体2(2b)の一端(左端)および第二の線状導体3の他方端(左端)同士を接続している。
第一の線状導体2(2a,2b)、第二の線状導体3、給電線路(給電部6、接地部8)、第一および第二の接続導体5aおよび5bは、導電性の良好な種々の材料、例えば、金、銀、銅およびそれ等の合金等の良導性の金属を用いて形成することができる。
【0034】
第一の線状導体2aと2bの中心部に給電部6が設けられており、この給電部6から所定距離以上離れた第一の線状導体2aおよび2bの中間の対称位置に第一のチップアンテナ4aおよび第二のチップアンテナ4bがそれぞれ回路挿入されている。
チップアンテナ4a,4bの第一の線状導体2a,2b上における配置位置は、給電部6の位置(中心)から所定距離以上離れた中間の対称の位置に設定することが条件とされる。
その理由は、給電部6と接地部8の付近は、電流分布が高く、その近傍にチップアンテナを配置した場合には、インダクタンス値のばらつき等により、折り返しダイポールアンテナの入力インピーダンスのばらつき等が発生する、という弊害が生じるため、このような弊害が生じないような所定の距離以上離れた対称位置を設定する必要があるからである。
【0035】
本実施の形態におけるアンテナ装置は、給電部6および接地部8に各端部が接続された第一の線状導体2aおよび2bの中間部に配設されたチップアンテナ4aおよび4bと、第一および第二の接続導体5aおよび5bをそれぞれ介して第二の線状導体3の両端に接続される回路構成となっている。
ダイポールアンテナが配設された誘電体基板1から所定間隔(例えば、5mm)を設けて主面側に、無線基板7が重設されている。尚、誘電体基板1は、上述した第1~第3の実施の形態における基板12、22、32に対応するものである。
また、給電部6と接地部8の入力端側には、アンテナ装置単体のインピーダンスとシステム機器の定格のインピーダンスとを整合させるための整合回路を設けるのが一般的である。整合回路を装荷した場合のインピーダンス特性の改良例については、
図21を参照して後述する。
上述のように構成された第1の実施の形態によれば、従来例のものよりも装荷するチップアンテナの数が2個で足り、その分且つ小型化を図ることができ、さらには、金属近接時にインピーダンスの劣化の少ないアンテナ装置を実現することができる。
【0036】
〔アンテナ装置に係る第2の実施の形態〕
図15、
図16、
図17は、本発明の第2の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す。このうち、
図15は、第2の実施の形態に係るアンテナ装置の外観構成を模式的に示す斜視図であり、
図16は、
図15に示すアンテナ装置に、無線基板を付加してなる外観構成を模式的に示す斜視図であり、
図17は、
図16に示す第2の実施の形態に係るアンテナ装置を具体的な数値をもって示す第1の実施例の構成を示すもので、
図17(a)は、正面図、
図17(b)は、左側面図である。
この第2の実施の形態に係るアンテナ装置は、第1の実施の形態に係るアンテナ装置に対し、第一および第二のチップアンテナの配設位置が異なっているだけで、その他の構成については、共通となっている。即ち、この第2の実施の形態に係るアンテナ装置のチップアンテナ4(4a,4b)の配設位置は、第一の線状導体2aおよび2bの両端または第二の線状導体3の両端にそれぞれ配置するように構成した点が異なっている。
【0037】
従って、第2の実施の形態に係るアンテナ装置のその他の構成部分については、第1の実施の形態に係るアンテナ装置について記載したところを援用し、重複した説明は、省略する。
上述したように、動作周波数におけるインピーダンス成分が数10+j数100Ωのチップアンテナ4(4a,4b)を、第一の線状導体2(2a,2b)の両端または第二の線状導体3の両端に配設することで、第1の実施の形態に係るアンテナ装置に比べ、ダイポールアンテナの入力インピーダンスのばらつきがなく、金属に近接した状態で使用してもインピーダンスの劣化が少なく、帯域、利得共に優れた特性を有するアンテナ装置を実現することができる。
【0038】
〔第1の実施例〕
尚、上述したアンテナ装置に係る第2の実施の形態を具体的に示す第1の実施例を、
図17に示すアンテナ装置について説明する。
図17に示すように、誘電体基板1は、ガラスエポキシ基板からなり、正面形状において、幅52mm、高さ33mm、厚さ2mmに形成されている。
第一の線状導体2(2a,2b)および第二の線状導体3は、(材質:銅箔)からなり、厚さが数10μm、線幅が、2mmに形成されている。
チップアンテナ4(4a,4b)は、動作周波数におけるインピーダンス成分が、40+j300Ω前後であり、動作周波数は、2.4GHz帯である。
接続導体5(5a,5b)の材質は、銅箔である。
また、無線基板7は、銅箔からなり、正面から見て、幅52mm、高さ26mm、厚さ2mmに形成され、無線基板7の上端縁からチップアンテナ4(4a,4b)までの間隔は、5mm程度離れている。
尚、本実施例に係るアンテナ装置の放射特性の実測においては、アンテナ装置と金属との近接距離は、5mmに設定するものとする。
【0039】
次に、本実施例に係る
図17に示すアンテナ装置の各種特性について、
図21~
図27に基づいて説明する。
図21は、単体のインピーダンス成分が、40+j300Ωとなるチップアンテナを接続した際のチップアンテナ単体のインピーダンス特性図であり、
図22は、
図17に示す第1の実施例に係るアンテナ装置のインピーダンス特性図であり、
図23は、
図17に示す第1の実施例に係るアンテナ装置と、給電部との間に整合回路を装荷した場合のインピーダンス特性図である。
これら
図21~
図23において、動作周波数帯は、2.4GHz帯である。通常、ダイポールアンテナのインピーダンスは、73.1+j42.5Ω、その折り返し構成を有する折り返しダイポールアンテナのインピーダンス特性は、4倍の約293Ωとなるが、誘電体基板1と無線基板7とは、5mmの間隔で近接し、且つ折り返し部の開口部が2mmであることから、2つのチップアンテナ4a,4bを接続した際に、
図22に示すように、約25Ω程度の折り返しダイポールアンテナとなっていることが分かる。
【0040】
しかしながら、上記構成のままのインピーダンス特性では、未だアンテナとして使えないので、実際には、50Ωに近づけるために、整合回路を通す必要がある。
アンテナのインピーダンスと、システム(例えば、アンプ)のインピーダンスの整合が取られていないと、アンテナから放射するはずの信号がシステム側に反射することになる。
通常は、ディスクリートインダクタやキャパシタと伝送線路からなる整合回路で、給電線から見たアンテナ側の特性インピーダンスのインピーダンス値を、給電線(システム側)の特性インピーダンスのインピーダンス値(同軸ケーブルは、たいてい50Ωか75Ωであるが、本実施例の場合、50Ωに一致(インピーダンスの整合)させ、給電線とアンテナ間でエネルギーの反射がないようにしている。
【0041】
そこで、
図17(a)に示す、アンテナ装置の給電部6と、接地部8との間に整合回路を装荷した場合のインピーダンス特性図を示す。
上記アンテナ装置は、
図23のインピーダンス特性図に示されるように、2.4~2.5GHzの周波数帯域において、インピーダンス値は、約50Ωが実現されており、VSWR(電圧定在波比)が、1.6以下の広帯域特性を有するアンテナとして動作している。電圧定在波比(Voltage Standing Ware Radio:略して、VSWRという)とは、インピーダンスの不整合等により反射信号が発生し、入力信号が影響を受けて生じる信号(定在波)の最大電圧(Vmax)と最小電圧(Vmin)との比であり、VSWR値が小さい程、反射によるロスが少ないとされる。
一般に、VSWR値は、1.5以下が理想、3以下が実用上の限界とされており、本実施例のように、VSWRが、1.6であるということは、理想状態から殆ど損失がないアンテナである、ということができる。
【0042】
次に、
図24~
図26を参照して、本実施例のアンテナ装置における放射特性について説明する。
図24は、
図17に示す第1の実施例に示すアンテナ装置におけるシミュレーションにより得た放射特性図である。
また、
図26は、
図17に示す第1の実施例に示すアンテナ装置における放射特性を実際に計測して得た放射特性図である。
図24、
図26において、細い線で描かれている直交偏波成分である水平偏波〔E(ψ)成分〕の利得は、シミュレーションと実測では、大きく異なっている。
これに対し、
図24、
図26において、太い線で描かれている主偏波成分である〔E(θ)成分〕は、計算、実測共に良く一致しており、最大利得は、共に、+1.5dBi程度であり、比較的損失が少ないアンテナとなっている。
【0043】
次に、
図27(a)~(l)を参照して、第1の実施例に係るアンテナ装置の自由空間における放射特性と、当該アンテナ装置を金属に一定距離近接したときの放射特性を対比して説明する。
図27のうち、(a)は、アンテナ装置を自由空間においた状態におけるx軸、y軸、z軸の各方向を共に示す概略斜視図であり、(b)は、第1の実施例の自由空間におけるインピーダンス特性図であり、(c)は、第1の実施例のアンテナ装置を、エポキシ樹脂でモールドし、金属板に近接(5mmの間隔)した状態を示す斜視図であり、(d)は、(c)の実施例のインピーダンス特性図、(e)~(h)は、第1の実施例のアンテナ装置を自由空間においた場合であって、周波数が異なる毎の放射特性をそれぞれ示す放射特性図であり、(i)~(l)は、上述した(c)図に示すようにアンテナ装置に金属を近接した場合であって、周波数が異なる毎の放射特性をそれぞれ示す放射特性図である。
【0044】
図27に示すように、動作周波数が、2.2GHz、2.4GHz、2.5GHzおよび2.6GHzである場合に分けて、自由空間におかれたときと、金属近接時について、それぞれ放射特性図(放射パターン)対応配列している。
折り返しダイポールアンテナは、自己平衡系のアンテナであるため、主偏波は、水平偏波H(
図27においては、細線で描かれている)となる筈であるが、本実施例に係るダイポールアンテナは、自由空間における
図27(e)~(h)に示すように、2.5GHz付近を境に、周波数が2.5GHz付近より低い場合は、主偏波が垂直偏波V(
図27においては、太線で描かれている)となり、2.5GHz付近より高い場合は、水平偏波Hとなっており、動作モードが変化していることを示している。
即ち、2.5GHzより低い周波数の場合、アンテナエレメントと主偏波は、直交しており、主の放射源は、筐体(無線基板)となる。
【0045】
図27(i)~(l)に見られるように、2.2GHz~2.6GHzまでの間においては、垂直偏波Vの大きさが、次第に小さくなっているのに対し、水平偏波(H)の大きさが、次第に大きくなっており、これが特徴の1つとなっている。
そのため、金属に近接してアンテナ装置を配置した場合においては、
図27(i)~(l)に見られるように、インピーダンス特性は、多少低くなるものの、周波数が、2.5GHzより低い場合は、主偏波がアンテナエレメントと直交している場合においても、垂直偏波成分(Vの波形成分)が大きく寄与し、水平偏波成分の不足を補うように作用している。
即ち、自己平衡作用により損失が殆どない、という現象を呈している。従って、本発明によれば、金属に近接(5mmの間隔)した状態で使用しても、インピーダンスの劣化が少なく、帯域、利得共に優れた特性を有するアンテナ装置を提供
することができる。
【0046】
〔アンテナ装置に係る第3の実施の形態〕
図18は、本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置の要部の構成を模式的に示す斜視図である。
図18に示すアンテナ装置は、二以上の多層誘電体基板1(1a、1b)、分割された第一の線状導体2(2a、2b)、第二の線状導体3、第三の線状導体9の二つのチップアンテナ4(4a、4b)、二つの接続導体5(5a、5b)、給電部6、接地部8を具備している。多層誘電体基板1は、主面側(上面側)の誘電体基板1aと他面側(下面側)の誘電体基板1bとの二層からなるが、第三の線状導体9を添着するために薄い誘電体基板1c(図示せず)を、誘電体基板1aと1bの中間に介挿する場合があるので、その場合は、三層構造となる。これら多層誘電体基板1a、1b、1cの材質は、第1の実施の形態のものと、同じくガラスエポキシ樹脂その他、誘電体セラミックやテフロン(登録商標)であってもよい。
【0047】
第一の線状導体2(2a、2b)は、給電部6を境に、中央で二分されており、それぞれ第一の誘電体基板1aの主面(
図18において、上面側の面)に設けられている。
この第一の線状導体2(2a、2b)の長さ方向の中央に一対の給電線路が接続され、一方の線路が給電部6に接続され、他方の線路が接地部(グラウンド)8に接続されている。
第二の線状導体3は、第一および第二の誘電体基板1aおよび1bを介して、第一の線状導体2(2a,2b)と対向または平行するように、第二の誘電体基板1bの他面側(
図18における下面側)に設けられている。
第三の線状導体9は、第一の誘電体基板1aを介して、第一の線状導体2(2a,2b)と対向または平行するように、第一の誘電体基板1aの他面側(下面側)に設けられている。
【0048】
第一の接続導体5aは、第一および第二の誘電体基板1aおよび1bを貫通するようにスルーホール状に設けられおり、第一の線状導体2(2a)および第三の線状導体9の各一方端同士をそれぞれ接続している。
第二の接続導体5bは、第一および第二の誘電体基板1aおよび1bを、貫通するように同様にスルーホール状に設けられており、第一の線状導体2(2b)、第二の線状導体3および第三の線状導体9の他方端同士をそれぞれ接続している。
第一の線状導体2(2a,2b)、第二の線状導体3、第三の線状導体9、給電線路(給電部6、接地部8)、第一および第二の接続導体5aおよび5bは、導電性の良好な種々の材料、例えば、金、銀、銅およびそれ等の合金等の良導性の金属を用いて形成することができる。
尚、第一および第二の接続導体5aおよび5bは、誘電体基板1a,1bにスルーホール状に設けることに限らず、複数の線状導体を電気的に接続する手段であればよい。
【0049】
第一の線状導体2aと2bの中心部に給電部8が設けられており、この給電部8を中心としてその両端部の対称位置に、第一のアンテナ4aと第二のアンテナ4bがそれぞれ回路挿入されている。
この第3の実施の形態におけるアンテナ装置は、給電部6および接地部8に各端部が接続された第一の線状導体2aおよび2bの両端部に配設されたチップアンテナ4aおよび4bと、第一および第二の接続導体5aおよび5bをそれぞれ介して第二の線状導体3および第三の線状導体9の両端に接続される回路構成となっている。
また、給電部6と接地部8の入力端側には、アンテナ装置単体のインピーダンスとシステム機器の定格のインピーダンスとを整合させるための整合回路を設ける。
【0050】
上述のように構成された第3の実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態のものよりも多層化された分だけステップアップ比が向上することにより、更なる小型化を実施することができ、第1、第2の実施の形態におけるアンテナ装置と同様、チップアンテナの数が少なく、帯域、利得と共に優れた特性を有するアンテナ装置を実現することができる。
【0051】
〔アンテナ装置に係る第4の実施の形態〕
図19は、本発明の第4の実施の形態に係るアンテナ装置の外観構成を模式的に示す斜視図である。
この第4の実施の形態に係るアンテナ装置は、第3の実施の形態に係るアンテナ装置に対し、チップアンテナの配設個数が増えた点が異なっているだけで、その他の構成については、基本的に共通となっている。即ち、この第4の実施の形態に係るアンテナ装置のチップアンテナ4の配設位置は、第一の線状導体2aおよび2bの両端および第二の線状導体3の両端にそれぞれ回路挿入するように構成した点、即ち、4個のチップアンテナを具備する点が異なっている。
従って、第4の実施の形態に係るアンテナ装置のその他の構成部分については、第3の実施の形態に係るアンテナ装置について記載したところを援用し、重複した説明は、省略する。
【0052】
上述したように、インピーダンス成分が数10+j数100Ωの第一、第二のチップアンテナ4(4a,4b)を、第一の線状導体2(2a,2b)の両端に配設し、第三、第四のチップアンテナ4c、4dを第二の線状導体3の両端に配設することで、第3の実施の形態に係るアンテナ装置に比べ、チップアンテナとステップアップ比との相乗効果により、更なる小型化を実現することができ、金属に近接した状態で使用してもインピーダンスの劣化が少なく、帯域、利得共に優れた特性を有するアンテナ装置を実現することができる。
【0053】
〔第3の実施の形態の変形に係る第2の実施例〕
図20は、
図18に示した本発明の第3の実施の形態の変形である第2の実施例の構成を具体的に示す斜視図である。
図20に示すように、第1の誘電体基板1aは、ガラスエポキシ基板からなり、その寸法は、図示を省略したが、
図17(a)、(b)に示すものと同様とする。
第1の実施例と異なる点は、第一層の誘電体基板1aと、第二層目の誘電体基板1bとの間が、第1の実施例の場合、密着されているが、第2の実施例の場合、4mmの間隔をもって離間して、開口部を設けた点が異なっている。
そして、折り返しダイポールアンテナの正面から見た長さが、第1の実施例においては、
図17に示す通り、33mmであるのに対し、第2の実施例の場合、20mmに抑えられている点で異なっている。
【0054】
上述したように、第2の実施例におけるダイポールアンテナの開口径を4mmと大きくしたことにより、そのエレメント長を一層の短縮化を実現することができたのである。
即ち、第1の実施例のダイポールアンテナは、正面寸法と背面寸法が33mmであり、多層誘電体基板の厚さが2mmであるので、全長は、33mm×2+2mm×2=70mmであった。
これに対し、第2の実施例のダイポールアンテナは、正面寸法と背面寸法が20mmであり、多層誘電体の厚さが4mmであるので、全長は、20mm×2+4mm×2=48mmまで小型化が可能となった。
以上、詳述したところの各実施の形態によれば、小型化を実現しつつ、金属に近接した状態で使用しても、インピーダンス劣化がなく、帯域、利得と共に優れた特性を有するアンテナ装置を提供することができる。
【0055】
その結果、本発明に係る無線通信端末装置において、ベースプレートと基板との間隔(所定間隔)を、1.6mmに設定したところの受信電力(dB)は、
図28に示すように、ベースプレートがない場合に比べて殆ど差が見られない、という結果が得られた。
因に、本例に用いたダイポールアンテナは、中心周波数が2440MHz、上限周波数が2480MHz、下限周波数が2405MHzの帯域であるところ、
図28の破線で示されるように、帯域内での利得差が然程大きくなく、
図28の実線で示される、ベースプレートが無い場合と比べても、大きな差はなく、ベースプレートの影響をあまり受けていないことが分かる。
【0056】
上述した本発明に係る無線通信端末装置について、その要旨とするところを整理すると、以下の通りである。
先ず、本発明の無線通信端末装置は、無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板状を呈し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有する剛性大なるベースプレートと、
前記ベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、
を有してなることを特徴としている(請求項1に対応する)。
【0057】
また、本発明の無線通信端末装置は、無線信号を生成する通信回路と前記通信回路により駆動されて無線信号を放射するアンテナ装置を搭載した基板と、
平板上の互いに離隔した部位の上面から所定高さに延びその先端側が前記上面に平行になるように内方に折曲した少なくとも一対のリブ部を有し、前記基板の下側に配置され、振動や衝撃、遠心加速度を受ける構造体に固定するための取付部を両端に有するリブ付きベースプレートと、
前記リブ付きベースプレート上に所定間隔を有した状態で前記基板を固定支持する緊締部材と、
を有してなることを特徴としている(請求項2に対応する)。
【0058】
また、本発明の無線通信端末装置の前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートには、上面から少なくとも下面に向かう途中に至るまで断面寸法が連続的もしくは段階的に大きくなるような貫通孔が形成され、前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの上側に位置する前記アンテナ装置を含む前記基板と前記緊締部材の全体をカバーし且つ前記貫通孔に充填されて一体的に固化されてなるモールド成型部が形成されてなることを特徴としている(請求項3に対応する)。
また、本発明の無線通信端末装置の前記ベースプレートには、その中心部に前記貫通孔が穿設され、前記貫通孔の中心部から離れた対称位置に皿孔状の挿通孔がそれぞれ穿設され、
前記基板には、その両端側に前記ベースプレートに穿設された前記挿通孔に対応する位置に挿通孔がそれぞれ穿設されてなることを特徴としている(請求項4に対応する)。
【0059】
また、本発明の無線通信端末装置の前記リブ付きベースプレートには、その中心部に貫通孔が穿設され、前記貫通孔の中心部から離れた前記リブ部の対称位置に挿通孔がそれぞれ穿設され、
前記基板には、その両端側に前記リブ付きベースプレートの前記リブ部に穿設された前記挿通孔に対応する位置に、挿通孔がそれぞれ穿設されてなることを特徴としている(請求項5に対応する)。
また、本発明の無線通信端末装置の前記緊締部材は、前記基板および前記ベースプレートにそれぞれ穿設された挿通孔に挿通されるボルトと、前記ベースプレートと前記基板との間隔を規定するナットまたはスペーサと、前記基板を上側から押圧保持するナットとからなることを特徴としている(請求項6に対応する)。
【0060】
また、本発明の無線通信端末装置の前記緊締部材は、前記基板および前記リブ付きベースプレートの前記リブ部にそれぞれ穿設された挿通孔に挿通されるボルトと、
前記リブ付きベースプレートと前記基板との間隔を規定する前記リブ部の下面に前記基板の上面を当接した状態で前記リブ部と前記基板に穿設された前記挿通孔に上面から挿通され、下面に突出する前記ボルトに螺合するナットと、からなることを特徴としている(請求項7に対応する)。
また、本発明の無線通信端末装置の前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの前記取付部は、前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの両端近傍の対称位置にそれぞれ複数の円孔が形成され、前記構造体に対し、取付ボルトをもって直接または仲介部材を介して設置し得るように構成したことを特徴としている(請求項8に対応する)。
【0061】
また、本発明の無線通信端末装置の前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの前記貫通孔は、断面より見て、テーパ状、円弧状、円錐状もしくは階段状のいずれかのように、上面から下面に向かうに従って横方向寸法が連続的もしくは段階的に大きくなるように形成してなることを特徴としている(請求項9に対応する)。
また、本発明の無線通信端末装置の前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレートの前記貫通孔は、断面より見て、ソロバン玉状、長円弧状、十文字状のいずれかのように、上面から下面に至る中間までは横方向寸法が連続的もしくは段階的に大きくなり、該中間から該下面に至るまでは、横方向寸法が連続的もしくは段階的に小さくなるように形成してなることを特徴としている(請求項10に対応する)。
【0062】
また、本発明の無線通信端末装置の前記ベースプレートまたは前記リブ付きベースプレート、前記緊締部材としての前記ボルト、前記ナット並びに前記構造体へ設置するための取付部としての取付ボルトは、高強度の金属材からなり、前記構造体に取り付けた状態において、前記構造体に高い加速度や振動を受けても耐え得る強度を保持するように構成したことを特徴としている(請求項11に対応する)。
また、本発明の無線通信端末装置の前記構造体が受ける加速度、変位、トルク、圧力、温度その他の物理量をセンサにより検出し、その検出結果を前記演算部により演算処理し、その演算結果を前記通信回路により前記アンテナ装置を駆動して無線信号として放射し得るように構成したことを特徴としている(請求項12に対応する)。
【0063】
また、本発明の無線通信端末装置の前記基板に搭載された前記アンテナ装置は、誘電体基板の主面上に設けられ、中心部に給電部を設けた第一の線状導体と、前記誘電体基板を介して、他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体の各々の両端を一対の接続導体にてそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、
動作周波数におけるインピーダンス成分が、数10+j数100Ωのチップアンテナを、前記給電部から所定距離以上離れた前記第一の線状導体または前記第二の線状導体の対称位置にそれぞれ配置するように構成したことを特徴としている(請求項13に対応する)。
【0064】
また、本発明の無線通信端末装置の前記基板に搭載された前記アンテナ装置は、誘電体基板の主面上に設けられ中心部に給電部を設けた第一の線状導体と、前記誘電体基板を介して他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体の各々の両端を一対の接続導体にてそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、動作周波数におけるインピーダンス成分が数10+j数100Ωのチップアンテナを、前記第一の線状導体または前記第二の線状導体のいずれかの両端にそれぞれ配置するように構成したことを特徴としている(請求項14に対応する)。
また、本発明の無線通信端末装置の前記基板に搭載された前記アンテナ装置は、二層以上の多層誘電体基板上の主面上に設けられた第一の線状導体と、前記多層誘電体基板を介して他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体と、前記多層誘電体基板の中間に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第三の線状導体の各々の両端を一対の接続導体にてそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、動作周波数におけるインピーダンス成分が数10+j数100Ωのチップアンテナを、前記第一の線状導体または前記第二の線状導体のいずれかの両端にそれぞれ配置するように構成したことを特徴している(請求項15に対応する)。
【0065】
また、請求項15に記載のアンテナ装置において、
前記多層誘電体基板のうち、第一層の誘電体基板の主面上に設けられた第一の線状導体と、
前記多層誘電体のうち、第二層の誘電体基板の他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第二の線状導体と、
前記第一層の誘電体基板を介して他面側に前記第一の線状導体と対向または平行するように配置された第三の線状導体の各両端を一対の接続導体にそれぞれ接続した折り返しダイポールアンテナにおいて、前記第一層の誘電体基板と、前記第二層の誘電体基板とを、所定の間隔をもって離間して開口部を設けるようにしてもよい。
また、動作周波数における前記インピーダンス成分が数10+j数100Ωの前記チップアンテナを、前記第一の線状導体および前記第二の線状導体の両端にそれぞれ配置するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1(1a,1b) 誘電体基板
2(2a,2b) 第一の線状導体
3 第二の線状導体
4(4a,4b,4c,4d) チップアンテナ
5(5a,5b) 接続導体
6 給電部
7 無線基板
8 接地部
9 第三の線状導体
11 ベースプレート
11a、21a、31a 貫通孔
11b、21b、22b、31b、32b 挿通孔
11c、21c、31c 円孔
12、22、32 基板
13、23、33 ボルト
14 スペーサ
15、25、35 ナット
16 モールド成型部
21、31 リブ付きベースプレート
21d、31d リブ部
36 アンテナ装置
37 チップアンテナ
38 筐体部