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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】外科デバイスおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021025100
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2021151467
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】20159760
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ディーアル
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247434(JP,A)
【文献】米国特許第09597160(US,B1)
【文献】特開2008-112968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0151107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
A61B 34/00-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物または人間の患者(11)を外科処置するデバイス(10)であって、
少なくとも1つの器具(14)を提供する装置(12)であって、前記器具(14)に電流(i)を供給するための電圧(u)を生成する発電機(19)と、制御デバイス(21)に記憶されて選択用に提供される選択可能モード(26、27、28)に応じて、前記発電機(19)を制御する当該制御デバイス(21)とを含む装置(12)を備え、前記電流(i)および/または前記電圧(u)の複数の物理パラメータを定義するモードデータ(MD)が、各選択可能モード(26、27、28)に割り当てられ、前記制御デバイス(21)は、選択可能モード(26、27、28)の前記モードデータ(MD)に応じて前記発電機(19)を制御し、
さらに、前記デバイス(10)は、
モード(26、27、28)の手動選択用、さらに、前記選択可能モード(26、27、28)のうちの少なくともいくつかに対する所望の作用強度の調整用に構成される選択デバイス(24)と、
選択された処置者に個々に割り当てられる個人モード(26’、27’)に割り当てられた個人モードデータ(IMD)を記憶することができる、前記装置(12)の外部に配置されたメモリ(16)と、
処置者を個々に識別することができる認証デバイス(32)であって、前記発電機(19)を制御するために、認証された前記処置者の個人モードデータ(IMD)の前記装置(12)への送信および/または前記装置のメモリ(34)に記憶された個人モードデータ(IMD)へのアクセスを可能にするか、またはそのような個人モードデータ(IMD)を生成することができ、さらに、前記認証が終了すれば個人モードデータ(IMD)をブロックするまたは削除する認証デバイス(32)とを備え
選択可能モード(26’、27’)を生成するために、前記電圧(u)および/または前記電流(i)の物理パラメータに関する認証された処置者のユーザ入力を検出し、割り当てられた個人モードデータ(IMD)を生成するモード生成部(33)が設けられ、
前記個人モードデータ(IMD)は、前記選択可能モードおよび前記作用強度の選択において、選択することができる前記作用強度の範囲を超えるような前記電流(i)または前記電圧(u)の物理パラメータを指す
デバイス。
【請求項2】
前記制御デバイス(21)は、調整された前記作用強度に基づいて、前記選択可能モード(26、27、28)の前記物理パラメータ(電圧u、電流i、電力P、仕事W)のうちの少なくとも1つに作用する
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記装置(12)の外部に配置された前記メモリ(16)は、データ接続部(18)を介して前記装置(12)に接続されるまたは接続可能であるサーバ(17)の一部である
請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記認証デバイス(32)は、認証を決定するためのチェックアウトオプションを提供する
請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記個人モードデータ(IMD)は、認証された前記処置者を識別する識別子と共に前記メモリ(34)に転送することができる
請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記メモリ(34)に記憶された、認証された処置者に割り当てられた前記個人モードデータ(IMD)は、別の認証された処置者(リユーザ)がダウンロードできるようにアクセス可能にすることができる
請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
処置デバイス(10)を操作する方法であって、
前記方法において、少なくとも1つの器具(14)を提供する装置(12)の発電機(19)は、電圧(u)を生成して電流(i)を前記器具(14)に供給し、前記発電機(19)は、メモリ(34)に記憶されて選択用に提供される選択可能モード(26、27、28)に応じて制御され、
記電圧(u)および/または前記電流(i)の複数の物理パラメータと、ユーザが調整可能な作用強度とを定義するモードデータ(MD)は、各選択可能モード(26、27、28)の一部であり、
処置者が認証デバイス(32)によって個々に識別されることにより、前記発電機(19)を制御するために、認証された前記処置者の個人モードデータ(IMD)の前記装置(12)への送信および/または前記装置(12)の前記メモリ(34)に記憶された個人モードデータ(IMD)へのアクセスが可能になるか、またはそのような個人モードデータ(IMD)の生成が可能になり、さらに、前記認証が終了すれば前記個人モードデータ(IMD)がブロックされ、または削除され
前記個人モードデータ(IMD)を生成するために、前記選択可能モードおよび前記作用強度の選択において、選択することができる前記作用強度の範囲を超えるような前記電流(i)または前記電圧(u)の物理パラメータが定義される
方法。
【請求項8】
選択された処置者に個々に割り当てられる個人モード(26’、27’)の一部である前記個人モードデータ(IMD)は、前記装置(12)の外部に配置されたメモリ(16)に記憶される
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記個人モードデータ(IMD)は、データ接続部(18)を介して前記装置(12)に接続されるまたは接続可能であるサーバ(17)に記憶される
請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記認証は、チェックアウトオプションによって終了する
請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記電圧(u)および/または前記電流(i)の物理パラメータに関する認証された処置者のユーザ入力を検出し、割り当てられた個人モードデータ(IMD)を生成するモード生成部(33)によって、個人モード(26’、27’)が生成される
請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記個人モードデータ(IMD)は、認証された前記処置者を識別する識別子と共にメモリ(16)に送信され、前記メモリ(16)に記憶された、認証された処置者に割り当てられた前記個人モードデータは、別の認証された処置者(リユーザ)がダウンロードできるようにリリースされる
請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物または人間の患者を外科処置するデバイスと、処置デバイスを操作する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気外科手術では、患者に対して所望の作用、例えば凝固または切開などを施すために、供給装置から電流および電圧が供給される器具が使用される。このために、外科装置は、処置電流を生成する高周波発電機と、予め定義されたモードに応じて発電機を動作させるために典型的にプログラム制御された制御デバイスとを備える。
【0003】
これについて、特許文献1は、そのような外科発電機用の制御プログラムを作成する方法を開示している。この方法は、ステートマシンの形態で、予め定義されたイベントに応じて外科発電機により適応させなければならない状態についての図に基づく。そして、ステートマシンは、器具および/または発電機を制御する制御プログラムに変換される。
【0004】
ステートマシンは、発生するとシステムの予め定義された状態から別の定義された状態への遷移を特徴付ける条件を定義する。しかしながら、ステートマシンは、それ自体では生じない状態への遷移は可能にしない。これは、ユーザが選択することができる状態に関する制限である。装置のユーザインタフェースによるユーザの選択用として、予め定義されたモードしか提供されない場合、同じことが当てはまり、実際に通常行われているように、1つのモードにおいて作用強度を調整することができる。ここでも、ユーザは最終的に、予め定義された状態からしか選択することができない。予め定義された状態は、その効果が承認され、文書化されているため、法的に安全である。このように、処置電流の物理値に直接アクセスすることはできない。
【0005】
さらに、電気外科発電機を操作する方法が特許文献2から知られており、これにより、電気外科発電機を制御するアルゴリズムが提供され得る。これらのアルゴリズムは、インタープリタによって修正し、処理することができる、いわゆる設定ファイルを使用する。したがって、発電機の制御は設定ファイルに基づく。例えば電力、電流、電圧、エネルギーのような物理パラメータまたは凝固パラメータなどは、例えば1から10または1から5の段階で、ユーザインタフェースによって調整することができる。設定ファイルは、装置または例えばクラウドベースの更新サーバに設けることができる。
【0006】
さらに、特許文献2、特許文献3、特許文献4および特許文献5は、アルゴリズムに基づく外科発電機の制御の態様を示している。特に、プログラムコマンドを用いたユーザによる電気外科発電機のプログラミングは、特許文献5から知られている。そのように作成された制御ソフトウェアは、モバイルコンピュータ読取可能媒体に記憶することができ、かつ/または信号送信によって受信もしくは送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許発明第102009042428号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3028657号明細書
【文献】国際公開第2018/210792号
【文献】欧州特許出願公開第1337194号明細書
【文献】欧州特許第1617776号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一方では必要な処置安全性を得つつ、他方では医療措置の点で処置する医師の制限を最小にすることができる、動物または人間の患者を外科処置するデバイスと、そのようなデバイスを制御する方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のデバイスおよび請求項9に記載の方法は、これらの本質的に相反する要件を満たす。
【0010】
本発明のデバイスは、少なくとも1つの器具を提供する装置を備える。その装置は、器具用の電圧と、器具提供用の電流とを供給する発電機を備える。発電機は、処置者による選択用に処置者が選択できるモードを提供する制御デバイスによって制御される。電流および/または電圧の複数の物理パラメータを定義するモードデータは、各モードの一部である。制御デバイスは、処置者によって選択されたモードのモードデータに応じて発電機を制御する。
【0011】
さらに、装置は、処置者が手動でモードを選択することを可能にする選択デバイスを備える。さらに、選択デバイスは、選択可能モードのうちの少なくとも1つ、好ましくは複数、またはすべてに対して所望の作用強度を調整する可能性を与える。
【0012】
さらに、装置は、適切なデータ接続部を介して、装置の外部に配置されたメモリに接続することができる。メモリは、例えば、データ接続部を介して到達することができるクラウド、ウェブサーバ、また別のメモリ位置にすることができる。データ接続部は、特にデータ網、例えばプライベートデータ網、公衆データ網またはインターネットなどである。選択された処置者に個々に割り当てられる個人モードに割り当てられた個人モードデータは、メモリに記憶することができる。このために、個人モードデータには識別子が割り当てられる。それぞれの識別子は、これらの個人モードデータに対して、選択された処置者がどの権利を有するかを示す。権利は、例えば、個人モードデータを修正し、かつ/または個人モードデータを使用する権限にすることができる。
【0013】
装置は、処置者を個々に識別することを可能にする認証デバイスを備える。処置者は、認証後、自分の権利に応じて個人モードデータを使用する、すなわち例えば、個人モードデータを修正し、それを装置で使用するためにその装置に転送することができる。あるいは、再利用のみ権限が与えられた権限の少ないユーザは、自分の装置で使用するために個人モードデータを転送する認証を受けることができる。
【0014】
さらに、認証デバイスは、個人モードデータの使用を登録し、所望されるまたは必要である場合は個人モードデータを会計部に送信することができる。認証デバイスは、さらに、認証終了後に個人モードデータをブロックし、または削除する。
【0015】
このデバイスにより、先の安全基準が満たされ、追加の処置オプションも広がる。しかしながら、認証されていないユーザには、通常のモードが選択的に提供され、選択されたモードの作用強度を調整することができる。認証された処置者は、最高の認証レベルを有する場合、個人モードデータを生成し、かつ/または修正することができ、それによって、電圧および/または電流の物理パラメータ、ならびに、例えば処置期間、最大電力、最大エネルギーなどのさらなるパラメータ、フィードバック制御パラメータ、器具認識の評価などに直接アクセスすることができる。そのように生成された個人モードデータは、データが「属する」この1人の処置者にのみ使用可能である。処置者は、行為に対して特定の認定なしに処置の医療的自由において、これらの個人モードデータを使用することができる。処置者はまた、データシート、すなわち自分が作成した個人モードの記述を作成し、またはそのデータシートを作成させることができ、この記述と個人モードデータとを関連付けることができる。したがって、処置者は、自分が作成した個人モードデータを、権利を得ているリユーザがアクセスできるようにすることができ、リユーザは、認証後、自分の装置に当該個人モードデータをロードして、そこでその個人モードデータを使用できるが修正はできない。リユーザは、個人モードデータと共にデータシート、すなわちモード記述をダウンロードすることができ、次いで、この個人モードを処置の医療的自由において使用することができる。その使用は検出することができ、ライセンスモデルまたは他の会計モデルとして会計モジュールによって借方に記入することができる。個人モードデータの再利用は、登録することができ、個人モードデータの所有者に利用可能にできる。
【0016】
一般に、特定のモードの使用、標準モードまたはさらに個人モードの使用期間または使用回数などを検出すること、および、それらからそれぞれのデータを生成することが可能である。これらのデータは、データ接続部を介して中央サーバに送信されることが規定され得る。これらのデータは、ユーザに装置または器具の使用料を請求する会計モデルの基礎にすることができる。データは、匿名化されている場合、使用またはモードの統計的決定に役立ち得る。
【0017】
個人モードデータの非認可での再利用と、作業者および作業者に付き添われた患者への危険とを避けるために、認証デバイスは、認証された処置者がチェックアウト後に個人モードデータを使用することを禁止するチェックアウトオプションを有することが好ましい。チェックアウトオプションは、例えば、画面上に設けられるオプションにすることができる。あるいは、装置のスイッチを切った後、権限が与えられた処置者の認証後にしか個人モードデータがアクセス可能とならないように、チェックアウトオプションを装置のオン/オフスイッチに接続することができる。これは、個人モードデータが、装置内にメモリに常駐して保持されているか、または装置の外部に設けられたメモリから再度ダウンロードされなければならないかとは無関係である。
【0018】
個人モードデータを異なる処置者に割り当て、それらの処置者の権利を管理することにより、認証された処置者は、異なる処置者が用いて作業する物理装置、および病院の手術室または任意の他の周辺状況とは無関係に、例えばインターネットを介して、任意の場所で異なる処置者の個人モードデータにアクセスすることができる。ユーザは、異なる処置者が開発した処置オプションを使用することができるように、このために構成された異なる処置者の装置にデータをダウンロードすることができる。
【0019】
個人モードの生成を助けるためにモード生成部を設けることができ、モード生成部は、電圧および/もしくは電流または他の値(電力、仕事、クレストファクタなど)の物理パラメータに関する認証された処置者のユーザ入力を検出し、そのユーザ入力から個人モードデータを生成する。個人モードを記憶するメモリも位置することが好ましいサポート中央部門における訓練された専門家の専門的アドバイスの有無にかかわらず、モード生成部によって、供給される電圧または電流の複数の物理パラメータにアクセスすることができる。電圧および/または電流の物理パラメータは、例えば、以下のものにすることができる。
【0020】
ピーク電圧、電圧および/または電流のデューティサイクル、スイッチオン期間、付与される電気的仕事、最大電力、生成されたスパークの強さまたは質を特徴付けるパラメータ、最小電力、電圧または電流の包絡線形状、変調形式、変調深さ、上述のパラメータのうちの1つの経時変化、例えば電流、電圧、抵抗などの測定値に応じた上述のパラメータのうちの1つの変化など。
【0021】
ユーザは、モード生成部を用いて、他の方法では処置者のアクセスから除外されるような電流または電圧の物理パラメータにアクセスできる。その際、処置者(すなわち、医師またはさらに他のユーザ)が自分の医療経験からモードを開発して自分自身で使用するために提供し、そのようなモードを公表して他の医師(リユーザ)が利用できるようにするという可能性がもたらされる。
【0022】
個人モードは、例えば、外部コンピュータのプログラムまたはアプリを介して生成することができる。プログラムまたはアプリは、外部専門家によってサーバ、サーバに接続された外部コンピュータ、サーバに接続された装置、もしくは当該コンピュータで、または、処置者もしくは助手によって外科装置自体で実行することができる。次いで、外部コンピュータは、個人モードデータをサーバに直接送ることができ、または、個人モードデータをまず外科装置に転送することができ、次いで、外科装置がそのデータをサーバに送信する。
【0023】
例えば、個人モードは、予め定義されたモードに基づき得る。例えば、施術者の装置は、解剖鉗子の操作に役立つ「preciSECT」モードを提供する。このモードは、最大電圧とクレストファクタが、鉗子において測定された抵抗値によって制御されることを特徴とする。このモードは、意図せず金属トロカールに接触した場合に望ましくない結果を招くため、腹腔鏡手術にはあまり適用することができない。処置者は、個人モードデータを生成する可能性を有するため、腹腔鏡施術中の妨害作用を避ける自分自身の個人モードを生成することができる。
【0024】
また、ユーザによっては、器具、例えば電気メスについて、止血特性がより高く、かつ/または切開特性がより低いことを望む。ユーザは、調整パラメータとして通常アクセスできないクレストファクタおよび電力の制限を適応させることによって、これを実現することができる。
【0025】
別の例は、施術者によって提供される「EndoCutQ」モードである。このモードは、ループを用いたポリープ除去中の切開が速すぎないように、3つの切開パルスにわたって電圧上昇をもたらす。施術者が針器具を用いる内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)中にこのモードを使用しようとする場合、これは、ここでわずかに遅れて最初切開されないため、ユーザによっては厄介である。「EndoCutQ」に基づく個人モードを生成することによって、処置者自身は処置を迅速に行うことができる。
【0026】
別の例は、施術者によって提供される「SwiftCOAG」モードである。このモードの電力および調整電圧は、作用レベルによって適応させることができる。しかしながら施術者によっては、ポンプのクリアランスがより小さい間に、より鋭利に切開し、その後、よりはっきり止血することを望む。最初に電圧および電力をより高く調整し、器具において決定される抵抗によりこれらのパラメータが低下することによって、所望の挙動を実現することができる。その際、このために処置者が個人モードデータを生成する場合、後に自分のために使用することができる、また所望により同僚に許可することができるような処置オプションを、処置者に提供することができる。
【0027】
提案するデバイスと、デバイスをプログラミングするための提案する方法とを用いることで、個人モード生成において、予め定義されたモードが他の器具に適応するため、使用可能な器具の範囲が広がる可能性が生まれる。
【0028】
本発明のこれらおよびさらなる利点、ならびに変更形態および高度な実施形態は、図面、明細書および特許請求の範囲から導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、器具を提供する本発明の装置の機能ブロック図である。
図2図2は、例示的施術において器具が受ける発電機の電圧および電流の経時推移の図である。
図3図3は、ユーザによって修正された、図2による電圧および電流の経時推移の図である。
図4図4は、異なる組織抵抗に対する発電機電圧の経時推移の図である。
図5図5は、ユーザによって修正された、異なる組織抵抗に対する発電機電圧の経時推移の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、人間または動物の患者11の処置に役立つデバイス10を示し、患者11は、電気外科処置が行われる任意の身体部分の断面の形で単に象徴的に図1に示す。中性極13および器具14が接続される装置12は、デバイス10の一部である。器具14は、少なくとも1つの電極15を含み、その電極15を介して処置電流が患者11に伝達され、処置電流は、中性極13によって患者から出て装置12に戻るように流れる。したがって、器具14はモノポーラ器具である。しかしながら、本発明はモノポーラ器具に限定されず、バイポーラ器具またはマルチポーラ器具に使用することもできる。また、器具14は、外科用、腹腔鏡用または内視鏡用に構成された器具にすることもできる。
【0031】
さらに、外部メモリ16は、デバイス10の一部、すなわち、例えば外部サーバ17の一部になり得る装置12の外部に設けられたメモリである。サーバ17および/またはメモリ16は、データ接続部18を介して一時的または継続的に装置12に接続することができる。データ接続部18は、有線電気部品、光学データ接続部もしくは無線接続部、またはそれらの組合せにすることができる。特に、データ接続部は、インターネットを介して実現することができる。
【0032】
外部サーバ17は、別個のハードウェアの形態で、または複数のサーバを含み、かつ複数の顧客に役立つハードウェア内の仮想マシンとして実現することができる。特に、外部サーバ17は、異なる位置に、特に異なる病院または処置センターにも位置する複数の装置12に接続されるまたは接続可能であることが規定され得る。このために構成された1つのメーカーの装置12すべてを、同じサーバ17に接続するか、または接続可能にすることができる。
【0033】
装置12は、器具14に高周波電圧uを供給し、それぞれの高周波電流iが患者11を介して流れ得るようにする発電機19を備える。電圧uおよび/または電流iを所望の形で供給するために、発電機19は、制御デバイス21に接続された制御入力部20を含む。制御デバイス21は、この目的のためにそれぞれのメモリ22に設けられたモードデータMDに従って発電機19を制御する。コンピュータ支援装置制御部のメモリ部は、メモリ22として機能することができ、その装置制御部により、上記および下記の機能、特に制御デバイス21の機能もすべて実現される。
【0034】
モードデータは、電圧uおよび/または電流iの複数の物理パラメータを予め定義し、制御デバイス21は、この要求に従って発電機19を制御する。割り当てられたメモリ22から制御デバイス21へのモードデータMDの送信を図1に矢印23で表す。
【0035】
選択デバイス24は、装置12の一部、特にその制御部の一部であり、モードを選択し、このために、例えば実制御素子を有する制御盤または仮想制御素子を有するタッチ画面25を含む。また、タッチパッド、携帯電話または別の入力/出力デバイスなどの、記号を表すための他の適切な各デバイスも、選択デバイス24として適切である。選択デバイス24は、装置12の一部にすることができ、または装置12とは別々に構成することができ、次いで、データ接続部を介して装置12に接続することができる。
【0036】
選択デバイス24は、異なるモードをそれぞれの制御素子26、27、28によって選択することを可能にする。例えば、モード26は切開モード、モード27は精密切開モード、およびモード28は凝固モードにすることができる。例えば、3つのモノポーラ切開モード(autoCUT、highCUT、dryCUT)、2つの内視鏡切開モード(endoCUTQ、endoCUTI)、および2つのバイポーラ切開モード(autoCUT bipolar、highCUT bipolar)が、施術者の実装置において区別される。凝固については、全部で11個の異なるモードが確立されている(softCoag、swiftCoag、TwinCoag、preciseSect、sprayCoag、forced APC、pulsed APC、precise APC、soft Coag bipolar、forced Coag bipolar、Thermosil)。さらなる選択スイッチ29、30、31またはそれぞれの入力パネルは、選択可能な各モード26、27、28またはその選択スイッチに割り当てることができ、選択スイッチを介してモードの強度を調整することができる。それによって、強度すなわち作用強度は、典型的に、それぞれの選択されたモード26、27または28ごとに排他的な選択可能かつ定義可能な値である。
【0037】
これについて、図2を参照する。図2は、器具14の接続時における電圧uの推移を示す。ほんの一例として、非変調高周波電圧を有するモード、例えば切開モードをこの目的のために示す。異なる調整可能な作用強度が、発電機19が生成する高周波電圧の異なるピーク電圧に割り当てられる。低い作用強度では、高周波電圧uのピーク値は小さい。高い作用強度では、高周波電圧uのピーク値は高い。例えば、ピーク値は入力手段29を介して選択することができる。
【0038】
他のモード、例えば精密切開モードまたは凝固モードでは、一般に、それぞれの入力手段29、30、31において選択することができる作用強度は、他の物理パラメータも指し得る。例として、発電機の内部抵抗、最大電流、最小電流、最大電力、最小電力、変換された電気的仕事、クレストファクタ、変調形式、オン/オフ変調を有するパルス休止比率またはデューティサイクル、単一高周波電圧パルスの上昇期間および/または下降期間、パルスまたはパルスシーケンスの繰り返し率、最大スイッチオン時間、起動開始時の電力増加期間、起動開始時の起動電力量などが挙げられる。しかしながら、いずれの場合も、作用強度に影響を及ぼすために入力手段が当該物理パラメータにどのように作用するかは設定されており、先に述べた入力手段および選択スイッチを用いて変えることはできない。
【0039】
これまで記載した調整可能性における装置12によって提供されるモードは、装置のメーカーによって承認され、認定される。これらのモード26、27、28毎に、および装置12のメモリに設けられたまたはサーバ17からダウンロードすることができる一般に提供される追加のモード毎に、精密モード記述が存在する。したがって、処置者は、提供されるモードおよびその施術方法に関して迅速かつ確実に通知することができる。よって、発電機19の動作タイプを、メモリ22に設けられたモードデータMDに制限することは、患者の安全性という目的にかなう。しかしながら、これは、装置12の応用可能性を制限する。
【0040】
本発明によれば、処置者は、装置12の一般に認定もリリースもされていない追加の個人モードを使用できることが規定される。このために、選択デバイス24は認証デバイス32を含み、この認証デバイス32を介して、ユーザは自身のユーザアカウントを設定することができ、次いで、例えば名前およびパスワードによって、常に自分のユーザアカウントにログインすることができる。このユーザアカウントは、主として、サーバ17に設定されることが好ましい。さらに、または代替として、ユーザアカウントは、原本またはコピーとして装置12に設けることもできる。ユーザは、装置12でサインオンした場合、追加の制御盤33または他の入力手段を介して電圧uまたは電流iの物理パラメータ、例えば、最大または最小ピーク電圧、最大または最小ピーク電流、最大または最小電力、実行された最大または最小仕事、最大または最小スイッチオン期間、切開開始パラメータ(切開開始中の電流、電圧または他の値)、デューティサイクル、応答時間、減衰時間、休止期間、フィードバック制御パラメータなどに直接アクセスできる。例えば、処置者は、予め設定され提供されたモードを選択し、そのモードを作用強度の調整範囲を超えて変えることができる。これに基づいて、処置者は、割り当てられたメモリ34に設けることができる個人モードデータIMDを生成する。したがって、制御盤33と、制御盤33に接続されたソフトウェアモジュールとが個人モード生成部を形成する。
【0041】
メモリ34は、装置制御部のメモリ領域またはさらに別個のメモリにすることもできる。個人モードデータは、起動中に制御デバイス21に送信され、これを図1に矢印35で表す。その際、処置者は、修正したモードまたは完全に個別のモードを生成し、そのモードを処置の医療的自由において自分の処置目的に使用することができる。
【0042】
さらに、装置12は、データ接続部18を介してサーバ17の通信ブロック37に接続さるまたは接続可能である通信モジュール36を備えることができる。それによって、通信モジュール36は、認証された処置者によって作成された個人モードデータIMDをサーバ17に、および通信ブロック37を介してメモリ16に送信する。
【0043】
しかしながら、サーバ17は、少なくとも、認証されたユーザによって生成された個人モードデータIMDの受動記憶だけに役立つのではないことが好ましい。むしろ、通信ブロック37は、適切な支援プログラムによって個人モードデータIMDの生成中に支援を得ることができる。例えば、器具14もしくは発電機19の熱的もしくは電気的過負荷、またはさらに患者11の予想される負傷を示す個人モードデータIMDを修正する手段を設けることができる。そのような手段は、例えば、患者の電力閾値、または最大電圧もしくは最大電流のアクセスを示す単純なコンパレータにすることができる。また、上記のような手段は、アルゴリズムに基づく人工知能にしたり、またはさらに、学習可能で、別の方法で生成された個人モードデータIMDから著しく逸脱している場合、異なる処置者によって作成された複数の個人モードデータに基づいて警告を出力する人工知能にしたりすることもできる。通信ブロック37は、例えば、連絡窓口としての医療および技術熟練者として応対可能であり、かつ個人モードデータIMDを修正する人間である処置者のためのインタフェースを含むこともできる。
【0044】
個人モードデータIMDに基づく操作の説明については、まず図2を参照する。これにより、ユーザは、まず共通認定モード、例えば切開モード26、ひいては最も高い作用強度、すなわち最も高い電圧ピーク値を選択したと考えられる。患者への施術中、図2に示す電流推移が生じ得る。この電流推移は、電流が、抵抗の高い組織に流れると最小となり、組織抵抗の低い組織に流れると最大になる。本発明を明確にするために、ここでは、例えば図2の38における結果として生じるピーク電流は望ましくないと考える。処置者は、より低い作用強度を調整することで、そのようなピーク電流を避けることができるであろう。しかしながら、これにより、例えば39のように、抵抗が高い組織では電流が低すぎてしまうであろう。本発明の装置では、処置者はここで、図3に示すように個人モードを生成する可能性を有する。このために、処置者は、例えばピーク電流の最大絶対値|imax|を定義する。その際、処置者は、最大作用強度を有するが電流は最大絶対値|imax|を超えない個人モードを生成した。
【0045】
処置者は、この個人モードをメモリ34に記憶することができ、その個人モードを後で繰り返すためにアクセス可能にすることができる。このために、処置者は、装置12に対して本人であることを証明しなければならない。この個人モードは、処置の医療的自由において、当該個人モードの使用が認証される処置者にのみ提供される。そのような処置者は、個人モードの生成者または使用の権限を得た人のいずれかである。
【0046】
しかしながら処置者は、同僚もダウンロードできるように、サーバ17に個人モードデータIMDを設けることができる。この目的のために、処置者の個人モードデータIMDは、認証された処置者が入力デバイス25を介して入力してサーバ17に個人モードデータIMDをアップロードする識別子、例えば名前を得る。このために、認証された処置者はまた、再利用の条件、例えば許可条件を定義するか、またはそれらの条件を予め定義されたリストから選択して自分の個人モードと関連付けることもできる。
【0047】
個人モードデータIMDの生成は、電圧、電流、または他の電気的パラメータの制限に限定されない。また、モードに対して質的修正を行うことができ、または個人モードを生成することができる。これについて、図4および図5を参照する。図4は、決定された組織抵抗に電圧uが適合している精密切開モード27を示す。組織抵抗が非常に高い場合、電圧推移Aが生じる。組織抵抗が減少するに伴い、電圧推移は変化して、組織抵抗が非常に低い場合の電圧推移Dに達するまで、距離が大きくなり、パルスが短くなる。
【0048】
処置者は、例えば、組織抵抗が低いおよび非常に低い場合(CおよびD)に器具14が望ましくない挙動をしている(例えば、切開抵抗が高すぎる)ことを認識した場合、選択された認証用切開モードを修正することができる。例えば、処置者は、図5の電圧推移C’に示すように、組織抵抗が低い場合に減衰したパルスをパルス休止中に挿入することができる。組織抵抗が非常に低い場合には、処置者は、例えば、ほんの一例として電圧推移D’に示すように、低い高周波電圧をパルス休止中に印加することができる。さらに、電圧推移および/もしくは電流推移の他のパラメータ、または他の電気的パラメータも変えることができる。
【0049】
このように生成された個人モードは、非認定個人モードとしてサーバ17にロードされ、許可後に再利用されるようにサーバ17に設けられるため、このモードを他の処置者にアクセス可能にし得ることがここでも再度当てはまる。
【0050】
患者を外科処置する本発明のデバイスは、異なるモード26、27、28を選択することができる、発電機19を有する装置12を備える。提供されるモード26、27、28の選択に加え、それらの作用強度を調整するために、認証された処置者は、自分および該当する場合はさらにリユーザとして選択された同僚のために少なくとも1つの個人モードと、関連付けされた個人モードデータIMDとを装置12内に生成することができ、それらに基づいて、発電機19は認定モードの範囲を超えて動作する。その際、そうでなければ拒否されるであろう処置可能性が処置者に与えられる。一実施形態において、個人モードの生成は、認証された処置者が装置の物理的限界内で完全に自由にすべての調整を行うことができるように制約なしに実行することができる。また、患者および作業者にとっての危険を制限し、または排除するために、装置制御部によって調整可能性を制限することもできる。さらに、装置制御部によって、異なる認証に基づいて調整可能性の異なる制限を予め設定することもできる。
【符号の説明】
【0051】
10 デバイス
11 患者
12 装置
13 中性極
14 器具
15 電極
16 外部メモリ
17 外部サーバ
18 データ接続部
19 発電機
20 発電機20の制御入力部
21 制御デバイス
MD モードデータ
IMD 個人モードデータ
22 モードデータMD用メモリ
23 矢印
24 選択デバイス
25 タッチ画面
26 モード(選択スイッチ):切開モード
27 モード(選択スイッチ):精密切開モード
28 モード(選択スイッチ):凝固モード
29 切開モード作用強度の入力手段
30 精密切開モード作用強度の入力手段
31 凝固モード作用強度の入力手段
32 認証デバイス
33 制御盤、モード生成部
26’、27’ 個人モード
34 個別データモードデータIMD用メモリ
35 矢印
36 通信モジュール
37 通信ブロック
38 ピーク電流
39 最小電流
|imax| 最大電流絶対値
図1
図2
図3
図4
図5