(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】転写システム、転写位置決定装置、および転写方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20240722BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240722BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240722BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L33/48
G09F9/00 338
H01L21/52 F
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2021035380
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩光
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087064(JP,A)
【文献】特開2015-031894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0163228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48
G09F 9/00
H01L 21/52
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段によって保持された複数の発光素子を被転写基板へ転写させる転写システムであり、
前記保持手段に保持された状態の各々の前記発光素子の発光特性を測定する発光特性測定部と、
前記発光特性測定部によって得られた前記保持手段上の各々の前記発光素子の発光特性の情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または前記被転写基板上の転写位置情報を作成する転写位置決定部と、
前記転写位置決定部によって作成された転写位置情報をもとに、前記保持手段から前記被転写基板へ前記発光素子を転写させる転写部と、
を備えることを特徴とする、転写システム。
【請求項2】
前記発光特性測定部は、前記保持手段に保持された状態の各々の前記発光素子に活性エネルギー線を照射することにより前記発光素子から発光される蛍光や燐光の波長を測定する波長測定部であることを特徴とする、請求項1に記載の転写システム。
【請求項3】
前記転写部は、レーザーリフトオフにより前記保持手段上の各々の前記発光素子を前記被転写基板へ転写させることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の転写システム。
【請求項4】
前記転写部は、熱圧着により前記保持手段上の各々の前記発光素子を前記被転写基板へ転写させることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の転写システム。
【請求項5】
前記転写部は、超音波により前記保持手段上の各々の前記発光素子を前記被転写基板へ転写させることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の転写システム。
【請求項6】
保持手段によって保持された複数の発光素子を被転写基板へ転写させるにあたり、前記保持手段上の各々の前記発光素子の発光特性の情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または前記被転写基板上の転写位置情報を作成することを特徴とする、転写位置決定装置。
【請求項7】
保持手段によって保持された複数の発光素子を被転写基板へ転写させる転写方法であり、
前記保持手段に保持された状態の各々の前記発光素子の発光特性を測定する発光特性測定工程と、
前記発光特性測定工程によって得られた前記保持手段上の各々の前記発光素子の発光特性の情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または前記被転写基板上の転写位置情報を作成する転写位置決定工程と、
前記転写位置決定工程によって作成された転写位置情報をもとに、前記保持手段から前記被転写基板へ前記発光素子を転写させる転写工程と、
を備えることを特徴とする、転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどの発光素子を配線基板などに転写する、転写システムおよび転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の液晶ディスプレイに代わる次世代表示方法として、LEDを使用したディスプレイの開発が進んでいる。LEDディスプレイでは、FHD(Full High Definition)パネルで1920×1080個、4Kパネルでは3840×2160個もの赤色LED、緑色LED、青色LEDがそれぞれ格子状の配列にて配線基板に高密度に実装されている。
【0003】
このように配線基板へ高密度に実装される各色LEDは、たとえば約50um×50umといった微小寸法を有する、いわゆるマイクロLEDであり、特許文献1に示すようにサファイアなどの成長基板上に窒化ガリウムの結晶をエピタキシャル成長させる工程などを経て得られ、基板上で上記寸法のチップ状にダイシングされる。このように形成されたLEDチップは、1回もしくは複数回の転写工程を経て成長基板から配線基板へ転写される。その後、熱圧着などの実装工程を経て、配線基板にLEDチップが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなLEDディスプレイは、むらが無く均一に発光することが求められている。しかしながら、LEDチップ自体はその特性上、同一の成長基板から得られる多量のLEDチップであっても発光波長には少なからず個体差がある。ここで、LEDチップが配線基板上に実装された状態において、発光波長の分布における最頻値(モード値)の発光波長から大きく外れた発光波長で発光するLEDチップが所定数以上集合していた場合には、その集合部分はディスプレイの発光時に人間にはむらとして視認され、むら範囲のLEDチップを交換しない限りそのディスプレイは製品として活用することができない。
【0006】
一方、最頻値の発光波長と所定長以上の差がある発光波長のLEDチップを配線基板への転写には利用しないようにすることによって、むらの発生を軽減することは可能だが、この場合LEDチップの歩留まりが悪化するため、LEDディスプレイの製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
本願発明は、上記問題点を鑑み、発光素子の歩留まりを高く維持しつつむらを発生させないディスプレイを形成するための転写システム、転写位置決定装置、および転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の転写システムは、保持手段によって保持された複数の発光素子を被転写基板へ転写させる転写システムであり、前記保持手段に保持された状態の各々の前記発光素子の発光特性を測定する発光特性測定部と、前記発光特性測定部によって得られた前記保持手段上の各々の前記発光素子の発光特性の情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または前記被転写基板上の転写位置情報を作成する転写位置決定部と、前記転写位置決定部によって作成された転写位置情報をもとに、前記保持手段から前記被転写基板へ前記発光素子を転写させる転写部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
この転写システムにより、各々の発光素子の発光特性を測定して得られた情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または被転写基板上の転写位置情報を作成することにより、製品にむらが生じない範囲で比較的発光特性に差がある発光素子もディスプレイの形成に用いるように転写位置情報の作成を行うことで、発光素子の歩留まりを高く維持しつつむらを発生させないディスプレイを形成することができる。
【0010】
また、前記発光特性測定部は、前記保持手段に保持された状態の各々の前記発光素子に活性エネルギー線を照射することにより前記発光素子から発光される蛍光や燐光の波長を測定する波長測定部であると良い。
【0011】
こうすることにより、保持手段上で各発光素子を結線することなく各発光素子の発光特性を容易に確認することができる。
【0012】
また、前記転写部は、レーザーリフトオフにより前記保持手段上の各々の前記発光素子を前記被転写基板へ転写させても良い。
【0013】
また、前記転写部は、熱圧着により前記保持手段上の各々の前記発光素子を前記被転写基板へ転写させても良い。
【0014】
また、前記転写部は、超音波により前記保持手段上の各々の前記発光素子を前記被転写基板へ転写させても良い。
【0015】
また、上記課題を解決するために本発明の転写位置決定装置は、保持手段によって保持された複数の発光素子を被転写基板へ転写させるにあたり、前記保持手段上の各々の前記発光素子の発光特性の情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または前記被転写基板上の転写位置情報を作成することを特徴としている。
【0016】
この転写位置決定装置により、各々の発光素子の発光特性を測定して得られた情報をもとに、各々の発光素子に対し転写可否および/または被転写基板上の転写位置情報を作成することにより、製品にむらが生じない範囲で比較的発光特性に差がある発光素子もディスプレイの形成に用いるように転写位置情報の作成を行うことで、発光素子の歩留まりを高く維持しつつむらを発生させないディスプレイを形成するための情報を下流の工程に渡すことができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明の転写方法は、保持手段によって保持された複数の発光素子を被転写基板へ転写させる転写方法であり、前記保持手段に保持された状態の各々の前記発光素子の発光特性を測定する発光特性測定工程と、前記発光特性測定工程によって得られた前記保持手段上の各々の前記発光素子の発光特性の情報をもとに、各々の前記発光素子に対し転写可否および/または前記被転写基板上の転写位置情報を作成する転写位置決定工程と、前記転写位置決定工程によって作成された転写位置情報をもとに、前記保持手段から前記被転写基板へ前記発光素子を転写させる転写工程と、を備えることを特徴としている。
【0018】
この転写方法により、各々の発光素子の発光特性を測定して得られた情報をもとに、各々の発光素子に対し転写可否および/または被転写基板上の転写位置情報を作成することにより、製品にむらが生じない範囲で比較的発光特性に差がある発光素子もディスプレイの形成に用いるように転写位置情報の作成を行うことで、発光素子の歩留まりを高く維持しつつむらを発生させないディスプレイを形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の転写システム、転写位置決定装置、および転写方法により、むらを発生させないディスプレイを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における転写システムを説明する図である。
【
図2】転写システムが有する波長測定部によって得られた保持手段上の発光素子の発光波長分布および転写位置決定部によるグループ分けの結果を示す図である。
【
図3】転写位置決定部によるグループ分けを反映した保持手段上の発光素子を示す図である。
【
図4】転写位置決定部により決定された転写位置情報が反映されて発光素子が転写された被転写基板の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態における転写方法を説明する図である。
【
図6】他の実施形態における転写位置決定部によるグループ分けの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態における転写システム1について、
図1を参照して説明する。
【0022】
本実施形態の転写システム1は、転写部10、波長測定部20、および転写位置決定部30を有し、保持手段3によって保持されている複数の発光素子2を転写部10によって被転写基板4へ転写する。また、保持手段3上での発光素子2の配置(レイアウト)をそのまま被転写基板4上のレイアウトに反映するわけでなく、波長測定部20が保持手段3上での各発光素子2の発光波長を測定し、そこで得られた各発光素子2の発光波長の情報に基づいて、転写位置決定部30が各発光素子2の被転写基板4上での転写位置を決定する。この転写位置情報に基づいて、転写部10が各発光素子2を被転写基板4へ転写する。
【0023】
ここで、本実施形態では、発光素子2はマイクロLEDチップであり、被転写基板4はディスプレイ用の回路基板である。被転写基板4には、赤色、緑色、青色の発光素子2が配置され、配置される個数は、被転写基板4がFHD(Full High Definition)パネル向けの回路基板であった場合は各色1920×1080個、4Kパネル向けの回路基板であった場合は3840×2160個にも及ぶ。
【0024】
また、保持手段3は、LEDチップをエピタキシャル成長させるベースとなる成長基板でも良く、また、複数回の転写を経て成長基板から回路基板への発光素子2の転写を完了させる場合の中間基板であっても良い。また、保持手段3の形状は、ウェハ状であっても良く、四角の板状であっても良い。また、保持手段3による発光素子2の保持形態は、本実施形態ではレーザーアブレーションを生じさせることが可能な公知の形態が適用されている。
【0025】
なお、本説明では、水平方向であり互いに直交する方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向と呼び、鉛直方向をZ軸方向と呼ぶ。
【0026】
転写部10は、本実施形態ではレーザーリフトオフを利用することによって保持手段3が保持する発光素子2を被転写基板4へ転写するものであり、レーザー光源11、ガルバノミラー12、Fθレンズ13、吸着ハンド14、および載置部15を備える。
【0027】
この転写部10内では、保持手段3は、発光素子2が保持されている面(表面とする)が水平かつ下向きとなるように、吸着ハンド14によって裏面が吸着把持されている。また、被転写基板4は、発光素子2が転写される面(表面とする)が水平かつ上向きとなるように、載置部15によって裏面が吸着把持されている。また、保持手段3と被転写基板4は上下に対向し、保持手段3の方が上側に位置する。
【0028】
レーザー光源11は、1本のレーザー光L1を出射する装置であり、本実施形態ではYAGレーザー、可視光レーザー、紫外線レーザーなどのレーザー光を出射する。
【0029】
ガルバノミラー12は、2枚のミラーを有し、これらミラーの位置および角度を制御することにより、入射される光線を任意の方向へ出射させる。
【0030】
レーザー光源11から発せられたパルス状のレーザー光L1は、ガルバノミラー12およびFθレンズ13を経由し、吸着ハンド14に把持された保持手段3に照射される。そして、保持手段3に照射されたレーザー光L1は、保持手段3を透過して保持手段3と発光素子2との界面に到達し、この界面においてレーザーアブレーションを生じさせる。このレーザーアブレーションにより、発光素子2は付勢されて保持手段3から分離し、直下の被転写基板4に転写される。なお、本説明では、このようにレーザーアブレーションによって保持手段3から発光素子2を分離させることをレーザーリフトオフと呼ぶ。
【0031】
ここで、レーザー光L1は、ガルバノミラー12によって光路が制御され、保持手段3の任意の位置に照射可能となっている。このようにガルバノミラー12を有することにより、保持手段3に保持された任意の位置の発光素子2をレーザーリフトオフさせることができる。
【0032】
また、載置部15は移動ステージ16によってX軸方向およびY軸方向に移動可能となっており、保持手段3に対して被転写基板4をX軸方向およびY軸方向に相対移動させる。この移動ステージ16による被転写基板4の位置制御および上記のガルバノミラー12によるレーザー光L1の照射位置制御を組み合わせることにより、保持手段3に保持されている任意の位置の発光素子2を被転写基板4上の任意の位置に転写することが可能である。
【0033】
波長測定部20は本説明でいう発光特性測定部の一実施形態であって、本実施形態ではフォトルミネッセンスを利用して保持手段3上の各発光素子2の発光特性の一種である発光波長を測定するものであり、レーザー光源21、波長測定器22、および載置部23を備える。
【0034】
この波長測定部20内では、保持手段3は、発光素子2が保持されている面(表面)が水平かつ上向きとなるように、載置部23によって裏面が吸着把持されている。
【0035】
レーザー光源21は、1本のレーザー光L2を出射する装置であり、本実施形態ではYAGレーザー、可視光レーザー、紫外線レーザーなどのレーザー光を出射する。
【0036】
上記レーザー光は、本発明における活性エネルギー線の一実施形態であり、レーザー光以外に、活性エネルギー線は電磁波や粒子線、量子ビーム、素粒子ビーム等も含む。
【0037】
波長測定器22は、自身に入射した光の波長を測定するものであり、公知の光波長計が適用される。
【0038】
保持手段3上の所定の位置の発光素子2にレーザー光L2が入射されると、発光素子2内の電子が励起される。この電子が基底状態に戻る際に蛍光や燐光といった放出光L3を放出する(いわゆるフォトルミネッセンス)。この放出光L3を波長測定器22で取り込み、この放出光L3の波長を測定することにより、発光素子2を結線することなく所定の発光素子2の発光波長を測定することが可能である。
【0039】
また、載置部23は移動ステージ24によってX軸方向およびY軸方向に移動可能となっており、レーザー光源21および波長測定器22に対して保持手段3をX軸方向およびY軸方向に相対移動させる。この移動ステージ24による保持手段3の位置制御により、保持手段3に保持されている任意の位置の発光素子2の発光波長を測定することが可能である。この波長測定部20により、保持手段3が保持する全ての発光素子2の発光波長が測定される。
【0040】
転写位置決定部30は本説明では転写位置決定装置とも呼び、本実施形態では転写部10および波長測定部20の動作を制御するコンピュータであって、波長測定部20によって得られた保持手段3上の各発光素子2の発光波長の情報をもとに、各発光素子2の被転写基板4上の転写位置の情報(転写位置情報)を作成するプログラムを有する。この転写位置情報をもとに、転写部10は保持手段3上の所定の発光素子2を被転写基板4上の所定の位置に転写する。
【0041】
次に、転写位置決定部30による転写位置情報の作成プロセスを
図2乃至4を用いて説明する。
【0042】
図2は、波長測定部20によって得られた保持手段3上の発光素子2の発光波長の分布を示すグラフである。横軸は発光波長、縦軸は各発光波長で発光する発光素子2の個数(素子数)である。
【0043】
同一の成長基板からエピタキシャル成長した同一色の発光素子2であっても、発光波長には各発光素子2で多少の差があり、
図2に示すような正規分布に似た分布が形成される。
【0044】
ここで、この分布に対して最頻値(モード値)をとる発光波長を含む所定の波長範囲のグループAとグループAより外側のグループであるグループBと2つのグループに分類したとする。そして、グループAに属する発光波長の発光素子2をモード素子2A、グループBに属する発光波長の発光素子2を非モード素子2Bと呼ぶ。このとき、モード素子2Aの数の方が非モード素子2Bの数よりも少なくなるよう、グループAとグループBの境界値が設定されている。
【0045】
図3は、上記のグループ分けを反映したときの保持手段3上の発光素子2の配列の一例を示す図であり、非モード素子2Bにはハッチングをかけている。
【0046】
図3のように保持手段3上で非モード素子2Bが密集していた場合、仮に保持手段3上のこの配列の通り被転写基板4上に転写してしまうと、被転写基板4上の発光素子2を発光させたときに非モード素子2Bの集合とその周囲のモード素子2Aとの間で色味の差が目立ち、むらとして視認されてしまうおそれがある。これに対し、本発明では転写位置決定部30が保持手段3上の各々の発光素子2の発光特性の情報をもとに、最終製品であるディスプレイでむらが生じない範囲で非モード素子2Bを被転写基板4へ配置するよう、転写位置情報を作成する。
【0047】
図4は、転写位置決定部30により決定された転写位置情報が反映されて発光素子2が転写された被転写基板4の一例を示す図である。
【0048】
ディスプレイの外周部は、人間の視覚上、中央部などと比較してむらが目立ちにくい。そこで
図4に示す例では、被転写基板4の外周部には非モード素子2Bが優先的に利用、転写されるよう、転写位置決定部30により転写位置情報が作成され、それに従って保持手段3から被転写基板4へ発光素子2が転写されている。
【0049】
このように、むらが目立ちにくい外周部が有効に活用されることにより、非モード素子2Bもディスプレイの形成に利用することが可能であり、発光素子の歩留まりを高く維持しつつむらを発生させないディスプレイを形成することができる。
【0050】
ここで、本実施形態では、
図2におけるグループAとグループBの境界となる発光波長は、発光波長の分布を鑑みて手動で設定することが可能となっている。たとえば、赤色LEDでは600nm~780nm、緑色LEDでは505nm~530nm、青色LEDでは470~485nmの発光波長の範囲をグループAとし、その範囲から外れる発光波長の範囲をグループBと手動で設定して、転写位置決定部30はこの条件をもとにモード素子2Aと非モード素子2Bの配置を計算する。また、このような発光波長の範囲は、転写位置決定部30が自動で決定するようにしても良い。
【0051】
図5は、上記の実施形態の転写システムを用いた転写方法を説明するフロー図である。
【0052】
図5(a)は、保持手段3から被転写基板4への発光素子2の転写に関する一連のプロセスを示すフロー図である。
【0053】
まず、波長測定部20へ保持手段3が投入され(ステップS1)、波長測定部20にて保持手段3上の各発光素子2の発光波長が測定される(ステップS2)。なお、本説明ではこのステップS2のように保持手段3によって保持された状態の各発光素子2の発光波長といった発光特性を測定する工程を発光特性測定工程と呼ぶ。
【0054】
次に、上記発光特性測定工程で得られた各発光素子2の発光波長の情報をもとに各発光素子2の分類を行い、被転写基板4への転写位置を決定する。具体的には、分類の条件が設定され(ステップS3)、この分類によって非モード素子2Bと識別された発光素子2が被転写基板4の外周部に配置されるよう、転写位置決定部30が各々の発光素子2の被転写基板4への転写位置情報を作成する(ステップS4)。なお、本説明ではこのステップS4のように各々の発光素子2の被転写基板4への転写位置情報を作成する工程を転写位置決定工程と呼ぶ。
【0055】
ステップS3における分類条件設定の詳細を
図5(b)に示す。この工程では、
図2におけるグループAとグループBとを識別する境界値が各色の発光素子2に対して設定される。本実施形態では発光素子2は赤色素子、緑色素子、青色素子の3種類があり、それぞれの色の発光素子2に対してグループ分け(分類)の境界値が設定される(ステップS11、ステップS12、ステップS13)。この境界値の設定は手動で行われても良く、また、たとえば転写位置決定部30が自動で行っても良い。また、本実施形態では一連のプロセスの中にこの分類条件設定の工程が組まれているが、ステップS1よりも前の段階で予めこの設定が行われていても良い。
【0056】
図5(a)のフローの説明に戻る。ステップS4で転写位置情報が作成された後、保持手段3は波長測定部20から取り出され、転写部10へ投入される。また、被転写基板4も転写部10へ投入される(ステップS5)。そして最後に、転写位置情報に従って転写部10は保持手段3から被転写基板4へモード素子2A、非モード素子2Bを転写させる(ステップS6)。本説明では、このステップS6のように転写位置決定工程によって得られた転写位置情報をもとに、保持手段3から被転写基板4へ発光素子2を転写させる工程を転写工程と呼ぶ。
【0057】
この転写工程が完了することにより、むらが視認されることが無いように発光素子2が転写された被転写基板4が完成する。この後は実装などの後工程に移っても良く、また、万が一の不具合を検出するためにむら検査が実施されても良い。
【0058】
図6は、他の実施形態における転写位置決定部30によるグループ分けの結果を示す図である。
【0059】
発光素子2の発光波長の分布に対するグループ分けは、必ずしも2グループでなくとも良い。本実施形態では、保持手段3上の発光素子2は、最頻値の発光波長を含む範囲のグループであるグループD、グループDの外側に隣接する発光波長範囲のグループであるグループE、グループEの外側に隣接する発光波長範囲のグループであるグループFの3つのグループに分類されている。
【0060】
そして、発光素子2を被転写基板4に転写する際、発光波長の最頻値から最も離れた波長範囲のグループであるグループFに属する発光素子2を除いて、グループDに属するモード素子とグループEに属する非モード素子のみを転写するよう、転写位置決定部30は転写位置情報を作成する。このように、転写位置決定部30は被転写基板4への転写位置のみならず転写可否も情報として作成しても良い。
【0061】
こうすることにより、歩留まりは若干低くなるものの、非モード素子の数を比較的少なくすることができるため、むらが生じないように非モード素子群が配置された転写位置情報を転写位置決定部30が容易に形成できる。
【0062】
以上の転写システム、転写位置決定装置、および転写方法により、発光素子の歩留まりを高く維持しつつむらを発生させないディスプレイを形成することが可能である。
【0063】
ここで、本発明の転写システム、転写位置決定装置、および転写方法は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、発光特性測定部によって測定する発光素子2の発光特性は、発光波長に限らず、たとえば各々の発光素子2の発光輝度などを測定しても良い。
【0064】
また、転写部10による発光素子2の転写手法は、レーザーリフトオフに限らず他の公知の手法が用いられても良い。たとえば、熱圧着や超音波などを利用した、いわゆるボンディングにより発光素子2を転写しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 転写システム
2 発光素子
2A モード素子
2B 非モード素子
3 保持手段
4 被転写基板
10 転写部
11 レーザー光源
12 ガルバノミラー
13 Fθレンズ
14 吸着ハンド
15 載置部
16 移動ステージ
20 波長測定部
21 レーザー光源
22 波長測定器
23 載置部
24 移動ステージ
30 転写位置決定部
A グループ
B グループ
C グループ
D グループ
E グループ
L1 レーザー光
L2 レーザー光
L3 放出光
W 距離