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特許7524119光学装置、光学検査方法及び光学検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】光学装置、光学検査方法及び光学検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021047701
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146636
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】碓井 隆
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】岡野 英明
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073737(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027797(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/068057(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/218282(WO,A1)
【文献】特開2012-078504(JP,A)
【文献】特開2015-059858(JP,A)
【文献】特開平03-200025(JP,A)
【文献】特開2001-235427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる波長の光をそれぞれ含み、互いに対して相関がない複数のパターン光を物体に順に照明できる照明部と、
前記物体に照明された複数の前記パターン光を受光できる画素を備え、複数の前記パターン光のそれぞれに含まれる複数の前記異なる波長のうち少なくとも2つの波長を分光できる受光部と、
前記照明部が前記物体に順に照明した互いに対して相関がない複数の前記パターン光を前記受光部の前記画素が受光した結果に基づいて複数の前記異なる波長の光に対応する少なくとも2つの信号強度を取得し、前記少なくとも2つの信号強度及び複数の前記パターン光のそれぞれ既知の強度分布の相関に基づいて前記物体の情報を取得する、処理部と、
を具備する、光学装置。
【請求項2】
複数の前記パターン光のそれぞれでの光の強度分布は、前記強度分布上において互いに対して独立している、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
複数の前記パターン光のそれぞれは、前記波長を含み、かつ、互いに対して独立している波長領域を有し、
前記受光部は、複数の前記パターン光のそれぞれの前記波長領域に、複数の前記パターン光を分光できる、
請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記照明部は、第1のダイクロイックミラーを備え、
前記第1のダイクロイックミラーは、独立した前記波長領域を有する複数の前記パターン光を生成する、
請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記受光部は、第2のダイクロイックミラーを備え、
前記第2のダイクロイックミラーは、複数の前記パターン光のそれぞれを互いに対して独立した前記波長領域に分光する、
請求項3又は4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記受光部は、回折光学素子を備え、
前記回折光学素子は、複数の前記パターン光のそれぞれを互いに対して独立した前記波長領域に分光する、
請求項3又は4に記載の光学装置。
【請求項7】
前記照明部は、
光源から入射した光線を焦点面に結像させる結像光学素子と、
前記結像光学素子の前記焦点面に位置するとともに、複数の選択領域を備える光線選択部であって、複数の前記選択領域のそれぞれの波長領域に対応した光線の透過及び反射の少なくとも一方を行う光線選択部と、
を備える、
請求項1~のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項8】
物体の情報を取得する処理部を備え、複数の異なる波長の光をそれぞれ含み、互いに対して相関がない複数のパターン光を前記物体に順に照明する光学装置であって、
前記処理部は、
前記物体に順に照明された互いに対して相関がない複数の前記パターン光のそれぞれに含まれる複数の前記異なる波長の光に対応する少なくとも2つの信号強度を取得し、
前記少なくとも2つの信号強度及び複数の前記パターン光のそれぞれ既知の強度分布の相関に基づいて、前記物体の表面に関する情報を取得する、
光学装置。
【請求項9】
複数の異なる波長の光を含む互いに対して相関がない複数のパターン光を物体に順に照明し、
前記物体に照明された光を受光し、複数の前記パターン光のそれぞれを複数の前記パターン光のそれぞれに対応する複数の前記異なる波長で分光し、
前記物体に順に照明した複数の前記パターン光を受光した結果に基づいて複数の前記異なる波長の光に対応する少なくとも2つの信号強度を取得し、前記少なくとも2つの信号強度及び複数の前記パターン光のそれぞれ既知の強度分布の相関に基づいて、前記物体の情報を取得する、
光学検査方法。
【請求項10】
コンピュータに、
物体に順に照明された互いに対して相関がない複数のパターン光のそれぞれに含まれる複数の異なる波長の光に対応する少なくとも2つの信号強度を取得させ、
前記少なくとも2つの信号強度及び複数の前記パターン光のそれぞれ既知の強度分布の相関に基づいて、前記物体の表面に関する情報を取得させる、
光学検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学装置、光学検査方法及び光学検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、光学装置による物体検査が用いられている。物体検査において、当該物体の詳細な情報を得る手法として、例えば、受光感度の高いシングルピクセル(一画素)を用いたシングルピクセルイメージング(ゴーストイメージング)がある。このようなシングルピクセルイメージングでは、複数の照明光を物体へ投射する際に要する投射時間、いわゆるリードタイムを短縮することが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Optics Express, (米), 2020,Vol. 28, No. 12,p. 28190-28208
【文献】Applied Optics, (米), 1984, Vol. 23, No. 14, p. 2449-2460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数の照明光を物体へ投射する際に要する投射時間を短縮できる光学装置、光学検査方法及び光学検査プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、光学装置は、照明部、受光部及び処理部を具備する。照明部は、複数の異なる波長の光をそれぞれみ、互いに対して相関がない複数のパターン光を物体にに照明できる。受光部は、物体に照明された複数の前記パターン光を受光できる画素を備え、複数のパターン光のそれぞれに含まれる複数の異なる波長のうち少なくとも2つの波長を分光できる。処理部は、照明部が物体にに照明した互いに対して相関がない複数のパターン光を受光部の画素が受光した結果に基づいて複数の異なる波長の光に対応する少なくとも2つの信号強度を取得し、少なくとも2つの信号強度及び複数のパターン光のそれぞれ既知の強度分布の相関に基づいて物体の情報を取得する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る光学装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る光学装置において、物体にパターン光が投射された後、物体を透過したパターン光が受光部の画素により受光されるまでの様子を示す概略図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る光学装置の制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第2の実施形態に係る光学装置の一例を示す概略図である。
図5図5は、第3の実施形態に係る光学装置の一例を示す概略図である。
図6図6は、第3の実施形態の変形例に係る光学装置の一例を示す概略図である。
図7図7は、第4の実施形態に係る光学装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。既出の内容に関して、詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
また、以下の実施形態等においては、物体5の表面が光を透過することを前提として説明するが、これに限るものではない。例えば、物体が光線に対して透明でない場合、物体5の表面は反射面となる。この場合、光線は、反射面で反射して、受光部3に入射する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光学装置の一例を示す概略図である。第1の実施形態に係る光学装置1は、照明部2、受光部3、及び処理部4を備える。また、物体5は、光を反射する。本実施形態では、光は、電磁波として定義される。光は、例えば、可視光、X線、赤外線、近赤外線、遠赤外線、マイクロ波である。照明部2の光源は、可視光を発するものであればよい。可視光とは、光の波長が、例えば420nm以上760nm以下の光である。照明部2の光源は、例えば、LED(Light emitting device)である。なお、照明部2は、プロジェクター照明部であってもよい。
【0010】
照明部2は、光を物体5の表面に向けて照射する。照明部2は、互いに対して異なる波長である複数の光線を射出できる。本実施形態では、照明部2は、第1の波長である第1の光線及び第2の波長である第2の光線を射出する。ある一例では、第1の波長は450nmであり、第2の波長は650nmである。照明部2は、物体5に照明光を投射する。照明部2が投射する照明光は、パターンを有するパターン光である。ここで、パターンとは、照明光の伝搬方向に直交又は略直交する断面において、光の強度が位置によって異なる強度の分布である。照明部2の投射するパターン光は、第1の波長W1の光及び第2の波長W2の光を含む、互いに対して異なるパターンを有するパターン光である。図1の一例に示すように、照明部2は、例えば、第1のパターン光PR1及び第2のパターン光PR2を物体5に投射する。照明部2は、第1のパターン光PR1を物体5に投射した後、第2のパターン光PR2を物体5に投射する。第1のパターン光PR1と第2のパターン光PR2とは、互いに対して相関がない。
【0011】
受光部3は、外部からの光を通す開口が形成される。受光部3は、開口を通じて入射した光を独立した1つ以上の画素PXにより受光する。画素PXは、受光部3に入射した光に含まれる複数の波長のうち少なくとも2つの波長を分光して受光可能である。本実施形態では、受光部3は1つの画素(シングルピクセル)を備え、照明部2から投射された光を分光して受光する。受光部3が前述の第1のパターン光PR1及び第2のパターン光PR2を受光した場合、画素PXは、第1の波長W1の光及び第2の波長W2の光に分光する。なお、受光部3は、複数の画素PXを備えていてもよい。
【0012】
処理部4は、例えば、コンピュータである。処理部4は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。処理部4に設けられるプロセッサ又は集積回路は、1つであってもよく、複数であってもよい。処理部4は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を実行する。
【0013】
処理部4は、光学装置1において物体5に関する情報を取得する。処理部4は、受光部3が照明部2からの照明光(パターン光)を受光し、画素PXが分光した結果に基づいて、物体5に関する情報を取得する。なお、処理部4は、照明部2及び受光部3を制御してもよい。この場合、例えば、処理部4は、照明部2及び受光部3を同期させて制御してもよい。
【0014】
図2に示すように、光学装置1では、照明部2が、照明光として第1のパターン光PR1を物体5(物体5の表面)に投射する。第1のパターン光PR1に含まれる第1の波長W1の光が、物体5の表面上に形成する投射パターンの強度分布をA0(X)とする。第1のパターン光PR1に含まれる第2の波長W2の光が、物体の表面上に形成する投射パターンの強度分布をB0(X)とする。ここで、Xは、物体5の表面上の位置を示すベクトル、すなわち位置ベクトルである。
【0015】
第1のパターン光PR1に含まれる第1の波長W1の光が物体5を透過すると、投射パターンの強度分布A0(X)は物体の透過率分布に応じて変化する。同様に、第1のパターン光PR1に含まれる第2の波長W2の光が物体5を透過すると、投射パターンの強度分布B0(X)は物体の透過率分布に応じて変化する。物体の透過率の分布に応じて投射パターンが変化する割合をT(X)とすると、第1のパターン光PR1において、第1の波長W1の光が物体5を透過した後の投射パターンの強度分布A1(X)は、A0(X)T(X)と表される。同様に、第2の波長W2の光が物体5を透過した後の投射パターンの強度分布B1(X)は、B0(X)T(X)と表される。
【0016】
物体5を透過した第1のパターン光PR1に含まれる第1の波長W1の光及び第2の波長W2の光が、受光部3の画素PXにより受光される。画素PXは第1のパターン光PR1を分光して受光するため、受光部3は、第1の波長W1の光に対する信号強度IA、及び、第2の波長W2の光に対する信号強度IBを取得する。本実施形態では、画素PXがシングルピクセルであるため、信号強度IAは、物体5を透過して変化した投射パターンの強度分布A1(X)の積分として表される。同様に、信号強度IBは、物体5を透過して変化した投射パターンの強度分布B1(X)の積分として表される。なお、X’は積分変数である。
【0017】
【数1】
【0018】
信号強度(IA,IB)は、位置ベクトルXについて、物体5の表面の全体にわたって被積分量(A0×T,B0×T)を積分した値である。この被積分量において、位置ベクトルXにおける被積分量(A0(X)T(X),B0(X)T(X))は、位置ベクトルXにおける投射パターンの強度分布(A(X),B(X))に対して大きい相関を有する。一方、位置ベクトルXから離れた位置Yの被積分量(A0(Y)T(Y),B0(Y)T(Y))は、位置ベクトルXにおける投射パターンの強度分布(A(X),B(X))に対して小さい相関を有する。そのため、信号強度(IA,IB)と投射パターンの強度分布(A(X),B(X))との相関を取る場合、位置ベクトルXにおける投射パターンの強度分布(A(X),B(X))と、位置ベクトルXにおける被積分量(A0(X)T(X),B0(X)T(X))との相関が大きい。よって、信号強度(IA,IB)と位置ベクトルXにおける投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X))との積を計算すると、(A0(X)A0(X)T(X),B0(X)B0(X)T(X))が算出される。すなわち、位置ベクトルXに関連する値が残る。
【0019】
第1のパターン光PR1の強度分布は、照明部2から投射されているため既知である。すなわち、第1のパターン光PR1において、第1の波長W1の光の強度分布A0(X)及び第2の波長W2の光の強度分布B0(X)は既知である。したがって、処理部4は、信号強度(IA,IB)から、物体の透過率の分布に応じて投射パターンが変化する割合T(X)を算出できる。T(X)は物体5の表面の形状等に依存することから、処理部4はT(X)を算出することにより、物体5の表面の形状を取得できる。このように、処理部4は、信号強度(IA,IB)及び投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X))の相関に基づいて、位置ベクトルX及び位置ベクトルXの近傍の物体5の表面に関する情報を取得する。言い換えると、処理部4は、前述のように処理することで、物体5の表面のいずれの位置における表面の情報も取得できる。よって、処理部4は、物体5の画像情報を取得できる。
【0020】
本実施形態では、第1のパターン光PR1の投射後、照明部2が、照明光として第2のパターン光PR2を物体5(物体5の表面)に投射する。第2のパターン光PR2に含まれる第1の波長W1の光が、物体5の表面上に形成する投射パターンの強度分布をC0(X)とする。第2のパターン光PR2に含まれる第2の波長W2の光が、物体の表面上に形成する投射パターンの強度分布をD0(X)とする。
【0021】
第1のパターン光PR1の場合と同様にして、受光部3の画素PXが第2のパターン光PR2を受光し、受光部3は、第1の波長W1の光に対する信号強度IC、及び、第2の波長W2の光に対する信号強度IDを取得する。処理部4は、前述と同様にして、信号強度(IA,IB,IC,ID)と投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X),C0(X),D0(X))の相関を取ることにより、位置ベクトルX及び位置ベクトルXの近傍の物体5の表面に関する情報を取得する。このように、光学装置1では、第1のパターン光PR1及び第2のパターン光PR2から、4つの信号強度(IA,IB,IC,ID)及び4つの投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X),C0(X),D0(X))を取得する。すなわち、光学装置1では、パターン光の数と比べて、信号強度の数及び投射パターンの強度分布の数が多い。よって、本実施形態の光学装置1では、物体5の形状に関する情報をより正確に取得できる。
【0022】
図3は、光学装置1の処理部4により実行される処理の一例を示す。図3の処理は、光学装置1において測定作業がされるたびに、処理部4によって実行される。したがって、図3の処理は、光学装置1の1回の作業において少なくとも実行される処理を示す。図3の処理が処理部4で実行される前に、光学装置1では、照明部2から物体5の表面に照射された第1のパターン光PR1及び第2のパターン光PR2を、受光部3の画素PXが前述のようにして受光する。
【0023】
処理部4は、受光部3から、第1のパターン光PR1の第1の波長W1の光の強度分布A0(X)、第1のパターン光PR1の第2の波長W2の光の強度分布B0(X)、第2のパターン光PR2の第1の波長W1の光の強度分布C0(X)、第2のパターン光PR2の第2の波長W2の光の強度分布D0(X)を取得する(S101)。処理部4は、受光部3から、第1のパターン光PR1に含まれる第1の波長W1の光の信号強度IA、第1のパターン光PR1に含まれる第2の波長W2の光の信号強度IB、第2のパターン光PR2に含まれる第1の波長W1の光の信号強度IC、第2のパターン光PR2に含まれる第2の波長W2の光の信号強度IDを取得する(S102)。処理部4は、4つの信号強度(IA,IB,IC,ID)と4つの強度分布(A0(X),B0(X),C0(X),D0(X))との相関をとる(S103)。これにより、処理部4は、物体5の表面の情報T(X)を算出する(S104)。以上により、物体5の表面の情報T(X)が取得されるため、光学装置1では、物体5の画像情報を取得できる。
【0024】
本実施形態の光学装置1では、照明部2、受光部3及び処理部4を具備する。照明部2は、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体5に同時期に照明できる。受光部3は、物体5に照明された光を受光できる画素PXを備え、複数のパターン光のそれぞれに含まれる複数の異なる波長のうち少なくとも2つの波長を分光できる。処理部4は、照明部2が物体5に同時期に照明した複数のパターン光を受光部3の画素PXが受光した結果に基づいて、物体5の情報を取得する。これにより、本実施形態の光学装置1では、複数の照明光を物体へ投射する際に要する投射時間を短縮できる。そのため、本実施形態の光学装置1では、例えば、パターン光のパターン数を増大させても、パターン光を投射する際に要する投射時間を増大させることなく、複数のパターン光を物体へ投射できる。
【0025】
本実施形態の光学装置1では、複数のパターン光のそれぞれでの光の強度分布は、強度分布上において互いに対して独立していることが好ましい。これにより、複数のパターン光の強度分布が相関しないため、複数のパターン光を物体5に同時期に照明した場合であっても、前述のようにして処理部4が物体5の情報を取得できる。よって、本実施形態の光学装置1では、複数の照明光を物体へ投射する際に要する投射時間を短縮できる。
【0026】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る光学装置1を示す概略図である。第2の実施形態に係る光学装置1は、前述の実施形態に係る光学装置1と同様であり、照明部2、受光部3及び処理部4を備える。
【0027】
本実施形態の光学装置1では、照明部2は、第1の照明部21A、第2の照明部21B、ミラーMR及びビームスプリッターBSを備える。第1の照明部21Aは、第1の波長W1の光を含む第1の光線R1を射出する。第1の照明部21Aから射出された第1の光線R1は、ビームスプリッターBSにより反射され、物体5を照明する。第2の照明部21Bは、第2の波長W2の光を含む第2の光線R2を射出する。第2の照明部21Bから射出された第2の光線R2は、ミラーMRで反射されるとともに、ビームスプリッターBSを透過して、物体5を照明する。
【0028】
本実施形態では、第1の照明部21Aが射出する第1の光線R1の第1の波長スペクトルと、第2の照明部21Bが射出する第2の光線R2の第2の波長スペクトルとは、互いに対して異なり、かつ、波長スペクトルの波長領域が重ならない。すなわち、第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルとは、互いに対して独立な波長領域を有する波長スペクトルである。
【0029】
図4に示すように、本実施形態においても、前述の実施形態と同様に、照明部2が、照明光として第1のパターン光PR1を物体5(物体5の表面)に投射する。本実施形態では、照明部2が第1の照明部21A及び第2の照明部21Bを備える。そのため、第1のパターン光PR1は、第1の照明部21Aが第1の波長W1の光を含む第1の光線R1を射出し、第2の照明部21Bが第2の波長W2の光を含む第2の光線R2を射出することで形成される。第1のパターン光PR1は、前述の実施形態と同様に、受光部3が分光して画素PXが受光する。処理部4は、前述の実施形態と同様にして、信号強度(IA,IB)と投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X))との相関に基づいて物体の透過率の分布に応じて投射パターンが変化する割合T(X)を算出し、物体5の表面の形状を取得する。
【0030】
ただし、本実施形態の光学装置1では、第1の光線R1の波長スペクトルと第2の光線R2の波長スペクトルとが、互いに対して独立している。そのため、信号強度(IA,IB)と投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X))との相関をとる場合、信号強度IAと相関するのは実質的に投射パターンの強度分布A(X)であり、信号強度IBと相関するのは実質的に投射パターンの強度分布B(X)である。すなわち、第1の照明光R1による投射パターンと第2の照明光R2による投射パターンとが、互いに対して実質的に相関しない。したがって、本実施形態の光学装置1では、第1の照明部21Aが形成するパターン光及び第2の照明部21Bが形成するパターン光を、1つの第1のパターン光PR1として、物体5に同時期に投射できる。よって、本実施形態の光学装置1では、複数の照明光を物体へ投射する際に要する投射時間を短縮できる。
【0031】
本実施形態では、前述したように照明部2の構成が第1の実施形態と異なるが、照明部2は第1の実施形態と同様に、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体5に同時期に照明できる。そのため、処理部4は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。すなわち、処理部4は、図4に示す処理S101~S104を実行する。よって、光学装置1は、第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0032】
本実施形態では、前述の実施形態等と同様の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を奏する。本実施形態の光学装置1では、複数のパターン光が互いに対して独立した波長領域を有する。受光部3は、複数のパターン光のそれぞれに対応する波長領域に、複数のパターン光を分光できる。これにより、本実施形態の光学装置1では、物体5の形状に関する情報をさらに正確に取得できる。
【0033】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る光学装置1を示す概略図である。第3の実施形態に係る光学装置1は、前述の実施形態に係る光学装置1と同様であり、照明部2、受光部3及び処理部4を備える。なお、図5に示す光学装置1の概略図では、照明部2及び受光部3の両方が分光する構成(第1の照明部21A、第2の照明部21B、第1の受光部31A、第2の受光部31B)を備えているが、これに限るものではない。本実施形態に係る光学装置1では、少なくとも受光部3が分光する構成(第1の受光部31A、第2の受光部31B)を備えていればよい。
【0034】
本実施形態の光学装置1では、照明部2は、第1の照明部21A、第2の照明部21B、ミラーMR及びダイクロイックミラー(第1のダイクロイックミラー)DM1を備える。第1の照明部21Aから射出された第1の光線R1は、ダイクロイックミラーDM1により反射され、物体5に照明される。第2の照明部21Bは、第2の波長W2の光を含む第2の光線R2を射出する。第2の照明部21Bから射出された第2の光線R2は、ミラーMRで反射されるとともに、ダイクロイックミラーDM1を透過して物体5に照明される。
【0035】
また、本実施形態においても、第1の照明部21Aが射出する第1の光線R1の第1の波長スペクトルと、第2の照明部21Bが射出する第2の光線R2の第2の波長スペクトルとは、互いに対して異なり、かつ、波長スペクトルの波長領域が重ならない。すなわち、第1の波長スペクトルと第2の波長スペクトルとは、互いに対して独立な波長領域の波長スペクトルである。
【0036】
受光部3は、ダイクロイックミラー(第2のダイクロイックミラー)DM2、第1の受光部31A及び第2の受光部31Bを備える。受光部3に第1の光線R1が入射すると、第1の光線R1はダイクロイックミラーDM2で反射されて第1の受光部31Aに入射する。受光部3に第2の光線R2が入射すると、第2の光線R2はダイクロイックミラーDM2で透過されて第2の受光部31Bに入射する。
【0037】
図5に示すように、本実施形態においても、前述の実施形態と同様に、照明部2が、照明光として第1のパターン光PR1を物体5(物体5の表面)に投射する。本実施形態では、照明部2が第1の照明部21A及び第2の照明部21Bを備える。そのため、第1のパターン光PR1は、第1の照明部21Aが第1の波長W1の光を含む第1の光線R1を射出し、第2の照明部21Bが第2の波長W2の光を含む第2の光線R2を射出することで形成される。すなわち、本実施形態の光学装置1では、ダイクロイックミラーDM1が、第1のパターン光PR1を生成する。
【0038】
第1のパターン光PR1において、第1の光線R1はダイクロイックミラーDM2で反射されて第1の受光部31Aの画素PX1が受光し、第2の光線R2はダイクロイックミラーDM2で透過されて第2の受光部31Bの画素PX2が受光する。すなわち、ダイクロイックミラーDM2が、複数のパターン光のそれぞれを互いに対して独立した波長領域に分光する。第1の受光部31Aは信号強度IAを取得し、第2の受光部31Bは信号強度IBを取得する。処理部4は、前述の実施形態と同様にして、信号強度(IA,IB)と投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X))との相関に基づいて物体の透過率の分布に応じて投射パターンが変化する割合T(X)を算出し、物体5の表面の形状を取得する。
【0039】
ただし、本実施形態の光学装置1では、第1の光線R1の波長スペクトルと第2の光線R2の波長スペクトルとが、互いに対して独立している。加えて、受光部3では、ダイクロイックミラーDM2により、第1の波長W1の光を含む第1の光線R1と第2の波長W1の光を含む第2の光線R2とが、完全に分離される。すなわち、第1の光線R1の波長領域と第2の光線R2の波長領域とが完全に分離されるとともに、第1の光線R1による投射パターンと第2の光線R2による投射パターンとが完全に分離される。そのため、信号強度(IA,IB)と投射パターンの強度分布(A0(X),B0(X))との相関をとる場合、信号強度IAは投射パターンの強度分布A(X)に実質的に相関し、信号強度IBは投射パターンの強度分布B(X)に実質的に相関する。すなわち、第1の照明光R1による投射パターンと第2の照明光R2による投射パターンとが、互いに対して実質的に相関しない。したがって、本実施形態の光学装置1では、第1の照明部21Aが形成するパターン光及び第2の照明部21Bが形成するパターン光を、1つの第1のパターン光PR1として物体5に投射しても、受光部3で2つのパターン光を完全に分離することができる。
【0040】
本実施形態では、前述したように照明部2の構成及び受光部3の構成が前述の実施形態と異なるが、照明部2は前述の実施形態と同様に、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体5に同時期に照明できる。また、受光部3は、複数のパターン光のそれぞれを対応する波長で分光できる。そのため、処理部4は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。すなわち、処理部4は、図4に示す処理S101~S104を実行する。よって、光学装置1は、前述の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0041】
本実施形態では、前述の実施形態等と同様の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を奏する。本実施形態の光学装置1の受光部3では、ダイクロイックミラーDM2により、第1の波長W1の光を含む第1の光線R1と第2の波長W2の光を含む第2の光線R2とが、完全に分離される。これにより、本実施形態の光学装置1では、物体5の形状に関する情報をより一層正確に取得できる。
【0042】
(第3の実施形態の変形例)
照明部2は、互いに対して異なる3以上の波長を有する投射パターンを物体5に投射してもよい。照明部2は、例えば、3板式のプロジェクター照明である。この場合、受光部3は複数の(2以上の)ダイクロイックミラーを備える。受光部3は、照明部2が物体5に投射した互いに対して異なる3以上の波長を有する投射パターンを受光する。受光部3は、複数のダイクロイックミラーにより投射パターンを前述のようにして分離する。処理部4は、それぞれの信号強度及び対応する投射パターンの強度分布に基づいて、物体5の表面の形状を取得する。
【0043】
また、照明部2は、互いに対して異なるN個の波長を有する投射パターンを物体5に投射してもよい(Nは2以上の自然数)。この場合、照明部2は、(N-1)個のダイクロイックミラー及びN個の照明部を備える。また、受光部3は(N-1)個のダイクロイックミラーを備える。受光部3は、照明部2が物体5に投射した互いに対して異なるN個の波長を有する投射パターンを受光する。受光部3は、複数のダイクロイックミラーにより投射パターンを前述のようにして分離する。処理部4は、それぞれの信号強度及び対応する投射パターンの強度分布に基づいて、物体5の表面の形状を取得する。なお、照明部2及び受光部3に設けられるダイクロイックミラーは、回折光学素子DOE1,DOE2であってもよい(図6参照)。
【0044】
本変形例では、前述したように照明部2の構成及び/又は受光部3の構成が前述の実施形態と異なるが、照明部2は前述の実施形態と同様に、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体5に同時期に照明できる。受光部3は、複数のパターン光のそれぞれを対応する波長で分光できる。そのため、処理部4は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。すなわち、処理部4は、図4に示す処理S101~S104を実行する。よって、光学装置1は、前述の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0045】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る光学装置1を示す概略図である。第4の実施形態に係る光学装置1は、前述の実施形態に係る光学装置1と同様であり、照明部2、受光部3及び処理部4を備える。照明部2は、光源6、粗面部7、結像光学素子8及び光線選択部9を備える。図7では、結像光学素子8の光軸と平行又は略平行な光軸方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す)、結像光学素子8の焦点面FPと平行又は略平行であり、かつ、光軸方向に直交又は略直交する第1の方向(矢印X1及び矢印X2で示す)、及び、光軸方向及び第1の方向の両方に交差する第2の方向が規定される。本実施形態では、照明部2において、光軸方向に沿って、光源6、粗面部7、結像光学素子8及び光線選択部9がこの順に配置される。また、光軸方向に沿って、照明部2、物体5及び受光部3がこの順に並ぶ。すなわち、光学装置1では、光軸方向に沿って、光源6、粗面部7、結像光学素子8、光線選択部9、物体5及び受光部3がこの順に並ぶ。
【0046】
光源6は、照明部2の光源である。光源6は、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、レーザー光源である。なお、光源6は、X線、紫外線、赤外線、ミリ波、マイクロ波等の電磁波を発するものであれば特に限定されるものではない。本実施形態では、光源6は、第1の波長W1の光、第2の波長W2の光及び第3の波長W3の光を少なくとも射出する。ある一例では、第1の波長は450nmであり、第2の波長は650nmであり、第3の波長は550nmである。
【0047】
粗面部7は、粗面部7に入射した光線を透過させる。粗面部7を透過した複数の波長を含む光線は、互いに対して異なる方向に伝搬される。粗面部7の粗面が適度に荒らされている場合、粗面部7を透過した複数の波長を含む光線は、互いに対して相関することなく、かつ、互いに対して異なる方向に(ランダムに)伝搬される。
【0048】
結像光学素子8は、粗面上の物点Pを、物体面上の像点Qに実質的に結像させる。また、無限遠方から結像光学素子8に入射する光線を、焦点面FP(focal plane)に結像させる。結像光学素子8は物点Pを像点Qに結像させるものであれば特に限定されるものではない。結像光学素子8は、例えば、単レンズ、組レンズ、凸面ミラー及びこれらの組み合わせである。結像光学素子8に入射した光線は、光線が結像光学素子8に入射した方向に応じて焦点面FPを通過する位置が決まる。すなわち、図7において、光線角度θ1で結像光学素子8に入射する光線は、光線角度θ1が同一の値であれば、焦点面FPの同じ位置を通過する。ある一例において、θ1がゼロである場合、すなわち結像光学素子8の光軸に沿って結像光学素子8に光線が入射する場合、光線は、焦点面FPと光軸とが交差する点を通過する。
【0049】
光線選択部9は、結像光学素子8の焦点面FPと一致する位置に配置される。光線選択部9は、少なくとも2つの選択領域を備える。光線選択部9の各選択領域は、例えば、固有の波長領域の光線を透過させ、その波長領域から外れる波長領域の光線の透過を遮断するカラーフィルタである。光線が選択領域に到達すると、選択領域に固有の波長領域が選択領域を通過する。すなわち、選択領域に固有の波長領域を有する光が、選択領域を通過できる。本実施形態では、第1の選択領域91、第2の選択領域92及び第3の選択領域93を備える。また、第1の選択領域91、第2の選択領域92及び第3の選択領域93のそれぞれを通過した光線の波長領域は、互いに対して異なる波長領域である。すなわち、3つの波長領域は互いに対して異なるとともに、3つの波長領域は互いに対して独立している。第1の選択領域91は第1の波長W1を含む波長領域の光を透過し、第2の選択領域92は第2の波長W2を含む波長領域の光を透過し、第3の選択領域93は第3の波長W3を含む波長領域の光を透過する。なお、光線選択部9は、光を透過しない絞り部94を備える。
【0050】
図7に示すように、本実施形態では、光源6から射出される光線が、粗面部7の粗面を透過することにより、第1の光線R1~第3の光線R3で示すように、ランダムな方向へ伝搬される。第1の光線R1は、第1の波長W1の光を含み、第2の光線R2は、第2の波長W2の光を含み、第3の光線R3は、第1の波長W3の光を含む。第1の光線R1~第3の光線R3は結像光学素子8により結像され、物体面状の像点Qに向かう。
【0051】
第1の光線R1は、光線選択部9の第1の選択領域91を透過する。そのため、光線選択部9は、第1の光線R1のうち、第1の波長W1を含む波長領域の光を透過する。第2の光線R2は、光線選択部9の第2の選択領域92を透過する。そのため、光線選択部9は、第2の光線R2のうち、第2の波長W2を含む波長領域の光を透過する。第3の光線R3は、光線選択部9の第3の選択領域93を透過する。そのため、光線選択部9は、第3の光線R3のうち、第3の波長W3を含む波長領域の光を透過する。
【0052】
これにより、光線選択部9を透過した後の第1の光線R1、第2の光線R2及び第3の光線R3は、互いに対して独立な波長領域を有する。すなわち、第1の光線R1の波長スペクトル、第2の光線R2の波長スペクトル及び第3の光線R3の波長スペクトルが、互いに対して独立している。そして、第1の光線R1~第3の光線R3が、物体5上の像点Qで結像する。さらに、第1の光線R1~第3の光線R3は物体5を透過し、受光部3で分光されて画素PXにより受光される。
【0053】
前述の実施形態等と同様に、受光部3で受光する第1の光線R1~第3の光線R3は、第1の光線R1の波長スペクトル、第2の光線R2の波長スペクトル及び第3の光線R3の波長スペクトルが、互いに対して独立している。そのため、第1の光線R1、第2の光線R2及び第3の光線R3が、互いに対して実質的に相関しない。したがって、本実施形態の光学装置1では、第1の光線R1、第2の光線R2及び第3の光線R3を、同時期又はほとんど同時期に物体5に投射しても、受光部3で3つの光線に完全に分離することができる。したがって、前述の実施形態等と同様にして、処理部4は、信号強度と投射パターンの強度分布と相関に基づいて、物体の透過率分布に応じて投射パターンが変化する割合を算出し、物体5の表面の形状を取得する。
【0054】
本実施形態では、前述したように照明部2の構成が前述の実施形態と異なるが、照明部2は前述の実施形態と同様に、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体5に同時期に照明できる。そのため、処理部4は、第1の実施形態と同様の処理を実行する。すなわち、処理部4は、図4に示す処理S101~S104を実行する。よって、光学装置1は、前述の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0055】
これらの少なくとも一つの実施形態の光学装置1では、照明部2が、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体に同時期に照明できる。受光部3は、物体に照明された光を受光できる画素PXを備え、複数のパターン光のそれぞれに含まれる複数の異なる波長のうち少なくとも2つの波長を分光できる。処理部4は、照明部2が物体5に同時期に照明した複数のパターン光を受光部3の画素PXが受光した結果に基づいて、物体5の情報を取得する。これにより、光学装置1では、複数の照明光を物体5へ投射する際に要する投射時間を短縮できる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
[付記1]
複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体に同時期に照明できる照明部と、 前記物体に照明された光を受光できる画素を備え、複数の前記パターン光のそれぞれに含まれる複数の前記異なる波長のうち少なくとも2つの波長を分光できる受光部と、
前記照明部が前記物体に同時期に照明した複数の前記パターン光を前記受光部の前記画素が受光した結果に基づいて、前記物体の情報を取得する処理部と、
を具備する、光学装置。
[付記2]
複数の前記パターン光のそれぞれでの光の強度分布は、前記強度分布上において互いに対して独立している、
付記1に記載の光学装置。
[付記3]
複数の前記パターン光のそれぞれは、前記波長を含み、かつ、互いに対して独立している波長領域を有し、
前記受光部は、複数の前記パターン光のそれぞれの前記波長領域に、複数の前記パターン光を分光できる、
付記1又は2に記載の光学装置。
[付記4]
前記照明部は、第1のダイクロイックミラーを備え、
前記第1のダイクロイックミラーは、独立した前記波長領域を有する複数の前記パターン光を生成する、
付記3に記載の光学装置。
[付記5]
前記受光部は、第2のダイクロイックミラーを備え、
前記第2のダイクロイックミラーは、複数の前記パターン光のそれぞれを互いに対して独立した前記波長領域に分光する、
付記3又は4に記載の光学装置。
[付記6]
前記受光部は、回折光学素子を備え、
前記回折光学素子は、複数の前記パターン光のそれぞれを互いに対して独立した前記波長領域に分光する、
付記3又は4に記載の光学装置。
[付記7]
前記照明部は、
光源から入射した光線を焦点面に結像させる結像光学素子と、
前記結像光学素子の前記焦点面に位置するとともに、複数の選択領域を備える光線選択部であって、複数の前記選択領域のそれぞれの波長領域に対応した光線の透過及び反射の少なくとも一方を行う光線選択部と、
を備える、
付記1~6のいずれか1に記載の光学装置。
[付記8]
物体の情報を取得する処理部を備え、複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を前記物体に同時期に照明する光学装置であって、
前記処理部は、
前記物体に同時期に照明された複数の前記パターン光のそれぞれに含まれる複数の前記異なる波長の光に対応する信号強度を取得し、
複数の前記信号強度及び複数の前記パターン光の強度分布の相関に基づいて、前記物体の表面に関する情報を取得する、
光学装置。
[付記9]
複数の異なる波長の光を含む複数のパターン光を物体に同時期に照明し、
前記物体に照明された光を受光し、複数の前記パターン光のそれぞれを複数の前記パターン光のそれぞれに対応する複数の前記異なる波長で分光し、
前記物体に同時期に照明した複数の前記パターン光を受光した結果に基づいて、前記物体の情報を取得する、
光学検査方法。
[付記10]
コンピュータに、
物体に同時期に照明された複数のパターン光のそれぞれに含まれる複数の異なる波長の光に対応する信号強度を取得させ、
複数の前記信号強度及び複数の前記パターン光の強度分布の相関に基づいて、前記物体の表面に関する情報を取得させる、
光学検査プログラム。
【符号の説明】
【0057】
1…光学装置、2…照明部、3…受光部、4…処理部、PX…画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7