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特許7524131スマート手術室の手術物品管理方法と手術物品管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】スマート手術室の手術物品管理方法と手術物品管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/98 20160101AFI20240722BHJP
   G16H 40/20 20180101ALI20240722BHJP
【FI】
A61B90/98
G16H40/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021093060
(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公開番号】P2022013719
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】109122075
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522156346
【氏名又は名称】エーアイ バイオエレクトロニック ヘルステック コー., リミテッド.
【氏名又は名称原語表記】AI Bioelectronic Healthtech Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】イェン-ワイ ホ
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-102803(JP,A)
【文献】特開2006-280445(JP,A)
【文献】特開2011-015395(JP,A)
【文献】特表2017-512110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0030345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/98
G16H 40/20
G16H 40/00
A61B 50/00
A61B 34/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術物品を管理するためにスマート手術室の手術物品管理システムに適用し、前記手術物品としてフレキシブルRFIDタグを含むスマート手術室の手術物品管理方法であって、
スキャナーが、前記フレキシブルRFIDタグのタグ位置を取得するステップと、
録画モジュールが、患者の画像を撮影し、前記患者の画像位置を取得するステップと、
処理モジュールが、前記フレキシブルRFIDタグの位置及び前記患者の前記画像位置が重畳しているか否かを判断し、当該重畳している場合には、前記フレキシブルRFIDタグに対応する前記手術物品が前記患者の体内にあることを確認するステップと、
警告モジュールが、前記手術物品が前記患者の体内にある場合、警告を発するステップと、を含むことを特徴とするスマート手術室の手術物品管理方法。
【請求項2】
前記スマート手術室の手術物品管理システムは複数の読み取り領域を含む前記スキャナーをさらに備え、前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置を取得するステップは、前記スキャナーにより前記フレキシブルRFIDタグをスキャンし、且つ前記複数の読み取り領域が前記フレキシブルRFIDタグから伝送された複数の帰還信号を受信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
【請求項3】
前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置を取得するステップは、各読み取り領域が受信した各帰還信号の信号強度に基づいて前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置を計算するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
【請求項4】
信号強度が最も強い前記帰還信号を受信した前記読み取り領域は、前記フレキシブルRFIDタグに最も近いことを特徴とする請求項3に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
【請求項5】
ネットワークモジュールが、前記フレキシブルRFIDタグの前記位置のデータを外部コンピュータに伝送するステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
【請求項6】
前記フレキシブルRFIDタグは輸送履歴を含み、前記方法は、ブロックチェーントラッキングモジュールが前記輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録するステップをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
【請求項7】
手術過程で使用する手術物品を管理するために適用するスマート手術室の手術物品管理システムであって、前記手術物品としてフレキシブルRFIDタグを含み、前記スマート手術室の手術物品管理システムは、
前記フレキシブルRFIDタグをスキャンし、前記フレキシブルRFIDタグのタグ位置を取得するためのスキャナーと、
患者の画像を撮影し、前記患者の画像位置を取得するための録画モジュールと、
前記スキャナー及び前記録画モジュールに信号が接続され、前記スキャナーが前記フレキシブルRFIDタグをスキャンして獲得したデータに基づいて前記フレキシブルRFIDタグの位置を取得し、且つ前記フレキシブルRFIDタグの位置及び前記患者の前記画像位置が重畳しているか否かを判断し、当該重畳している場合には、前記フレキシブルRFIDタグに対応する前記手術物品が前記患者の体内にあることを確認するための処理モジュールと、
前記処理モジュールに信号が接続され、前記処理モジュールが前記手術物品が前記患者の体内にあることを確認した場合、警告信号を発信する警告モジュールと、を備えていることを特徴とするスマート手術室の手術物品管理システム。
【請求項8】
前記スキャナーは、前記フレキシブルRFIDタグから伝送された複数の帰還信号を受信する複数の読み取り領域を含むことを特徴とする請求項7に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【請求項9】
前記処理モジュールは各読み取り領域が受信した各帰還信号の信号強度に基づいて前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置をさらに計算することを特徴とする請求項8に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【請求項10】
信号強度が最も強い前記帰還信号を受信した前記読み取り領域は、前記フレキシブルRFIDタグに最も近いことを特徴とする請求項9に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【請求項11】
前記スキャナーに信号が接続され、前記フレキシブルRFIDタグの前記位置のデータを外部コンピュータに伝送するためのネットワークモジュールをさらに備えていることを特徴とする請求項10に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【請求項12】
前記スキャナーに信号が接続されているブロックチェーントラッキングモジュールをさらに備え、前記フレキシブルRFIDタグは輸送履歴を含み、前記ブロックチェーントラッキングモジュールは前記輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録することを特徴とする請求項11に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【請求項13】
前記手術物品として少なくとも1つの手術器具及び少なくとも1つの外科用消耗品を含むことを特徴とする請求項12に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマート手術室の手術物品管理方法と手術物品管理システム(A surgical item managing method and a surgical item managing system for an operating room)に関し、より詳しくは、手術物品を患者の体内に遺残するのを防止するスマート手術室の手術物品管理方法と手術物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、患者の手術を行う場合、メス、止血鉗子、縫合器具等の手術器具と共にガーゼ、綿棒等の消耗品を使用する。一般的な手術手順では、まず患部付近の組織を切開し、患部の切除や縫合等の外科的治療を行う。患部を止血縫合し、且つ全ての手術器具及び消耗品を患者の体内から取り出し、最後に切開した組織を縫合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、医師が忙しかったり疲弊していると手術器具や消耗品を患者の体内から完全に取り出すのを忘れ、患者の身体を縫合した後に、体内の組織を傷付ける可能性のある器械及び消耗品を体内に遺残してしまうことがあった。これは医療の安全及び患者の健康に甚大な影響を及ぼす。
【0004】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、手術物品を患者の体内に遺残するのを防止する方法及び装置を提供し、毎年世界で10%の確率で発生する人体内への手術物品の遺残による医療過誤を解決する。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、その目的は、手術物品が患者の体内に遺残するのを防止するスマート手術室の手術物品管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様のスマート手術室の手術物品管理方法は、手術過程で使用する手術物品を管理するためにスマート手術室の手術物品管理システムに適用し、前記手術物品としてフレキシブルRFIDタグを含む。前記スマート手術室の手術物品管理方法は、
前記フレキシブルRFIDタグのタグ位置を取得するステップと、
患者の画像を撮影し、前記患者の画像位置を取得するステップと、
前記フレキシブルRFIDタグの位置及び前記患者の前記画像位置が重畳しているか否かを判断し、前記フレキシブルRFIDタグが対応する前記手術物品が前記患者の体内にあるか否かを確認するステップと、
前記手術物品が前記患者の体内にある場合、警告を発するステップと、を含む。
【0007】
これにより、位置記録データを外部ネットワークのブロックチェーンシステムに伝送し、完全な手術過程及び記録を提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、フレキシブルRFIDタグの位置を取得するステップは、フレキシブルRFIDタグをスキャンすると共に複数の帰還信号を受信するステップをさらに含む。
【0009】
本発明の一態様によれば、フレキシブルRFIDタグの位置を取得するステップは、各帰還信号の信号強度に基づいてフレキシブルRFIDタグの位置を計算するステップをさらに含む。
【0010】
本発明の一態様によれば、スマート手術室の手術物品管理方法は、フレキシブルRFIDタグの位置を外部コンピュータやブロックチェーンネットワークに伝送するステップをさらに含む。
【0011】
本発明の一態様によれば、フレキシブルRFIDタグは輸送履歴記録を含み、スマート手術室の手術物品管理方法は輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録するステップをさらに含む。
【0012】
これにより、手術記録を改竄不可能にする効果を達成する。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の別の態様は、手術物品が患者の体内に遺残するのを防止するスマート手術室の手術物品管理システムである。
【0014】
本発明に係るスマート手術室の手術物品管理システムは手術過程で使用する手術物品を管理するために適用し、前記手術物品としてフレキシブルRFIDタグを含む。前記スマート手術室の手術物品管理システムは、
前記フレキシブルRFIDタグをスキャンし、前記フレキシブルRFIDタグのタグ位置を取得するためのスキャナーと、
患者の画像を撮影し、前記患者の画像位置を取得するための録画モジュールと、
前記スキャナー及び前記録画モジュールに信号が接続され、前記スキャナーが前記フレキシブルRFIDタグをスキャンして獲得したデータに基づいて前記フレキシブルRFIDタグの位置を取得し、且つ前記フレキシブルRFIDタグの位置及び前記患者の前記画像位置が重畳しているか否かを判断し、前記フレキシブルRFIDタグが対応する前記手術物品が前記患者の体内にあるか否かを確認するための処理モジュールと、
前記処理モジュールに信号が接続され、前記処理モジュールが前記手術物品が前記患者の体内にあることを確認した場合、警告信号を発信する警告モジュールと、を備えている。
【0015】
本発明の一態様によれば、スキャナーはさらにフレキシブルRFIDタグをスキャンすると共に複数の帰還信号を受信する。
【0016】
本発明の一態様によれば、処理モジュールは各帰還信号の信号強度に基づいてフレキシブルRFIDタグの位置をさらに計算する。
【0017】
本発明の一態様によれば、スマート手術室の手術物品管理システムは、スキャナーに信号が接続され、フレキシブルRFIDタグの位置を外部コンピュータやブロックチェーンネットワークに伝送するためのネットワークモジュールをさらに備えている。
【0018】
本発明の一態様によれば、スマート手術室の手術物品管理システムは、スキャナーに信号が接続され、輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録するためのブロックチェーントラッキングモジュールをさらに備えている。
【0019】
本発明の一態様によれば、手術物品として少なくとも1つの手術器具及び少なくとも1つの外科用消耗品をさらに含む。
【0020】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る手術台の患者とスマート手術室の手術物品管理システムと手術物品を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る手術物品とフレキシブルRFIDタグを示す概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスキャナーの読み取り領域を示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係るスマート手術室の手術物品管理システムとブロックチェーンネットワークと外部コンピュータを示すシステム構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係るスマート手術室の手術物品管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図1乃至図5を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る手術台の患者とスマート手術室の手術物品管理システムと手術物品を示す概略構成図である。図2は本発明の一実施形態に係る手術物品とフレキシブルRFIDタグを示す概略構成図である。図3は本発明の一実施形態に係るスキャナーの読み取り領域を示す概略図である。図4は本発明の一実施形態に係るスマート手術室の手術物品管理システムとブロックチェーンネットワークと外部コンピュータを示すシステム構成図である。図5は本発明の一実施形態に係るスマート手術室の手術物品管理方法を示すフローチャートである。
【0024】
図1乃至図4に示すように、本発明の一実施例では、スマート手術室の手術物品管理システム1は手術過程で使用する手術物品900の管理に適用し、手術物品900が患者100の体内に遺残するのを防止し、医療過誤及び医事紛争を減少させ、患者の再感染を防止し、且つ医療に掛かる医員も減らす。このシステムは手術後のスマート手術室の必須設備となる。患者100を手術台200の上に寝かせて手術を行う。手術物品900は例えば手術器具キットであり、位置決めチップを有していると共に可撓性の生分解プラスチックで製造され、手術物品900として2つのフレキシブルRFIDタグ901、901aと、手術器具910と、外科用消耗品920と、を含む。手術器具910は例えばメスであり、柄は生分解プラスチックで製造されている。外科用消耗品920は例えばガーゼであり、生分解プラスチックで製造されている。但し、手術器具910及び外科用消耗品920の数量は上述のものに限られず、少なくとも1つ以上の任意の数量に変更可能である。手術器具910の種類はハサミ、鉗子、開創器、止血鉗子、縫合器具等の手術を行うための用具である。外科用消耗品920の種類は布巾、手術用スポンジ、綿棒、または手術に用いる他の消耗品である。
【0025】
本発明の一実施例では、2つのフレキシブルRFIDタグ901、901aは感知チップであり、手術器具910及び外科用消耗品920にそれぞれ設置されている。2つのフレキシブルRFIDタグ901、901aはRFID(Radio Frequency Identification)方式で接続されている手術器具910及び外科用消耗品920の手術器具910及び外科用消耗品920の種類、製造日時、輸送履歴及び日時等の情報を記録する。フレキシブルRFIDタグ901、901aが記録する情報は外部コンピュータ800により入力される。但し、手術器具910及び外科用消耗品920の情報は上述のものに限られず、設計の必要に応じて改変可能である。フレキシブルRFIDタグの数量も複数に限られず、手術器具及び外科用消耗品の数量に応じて1つ以上に改変可能である。好適なフレキシブルRFIDタグ901、901aの無線周波数は高周波である3M~30MHzの範囲であり、実際の実験によると、高周波範囲内の無線周波数は人体を有効的に透過し、人体に影響を与えない点に留意すべきである。一実施例では、フレキシブルRFIDタグ901、901aの無線周波数はISM(Industrial Scientific Medical)周波帯に規定されている13.56MHzとし、その周波数の読み取り距離は約1.5mである。フレキシブルRFIDタグ901、901aの数量も2つに限定されず、手術器具910及び外科用消耗品920の数量に応じて1つ以上の任意の数量に変更可能である。外部コンピュータ800は例えば手術中央制御室のホストコンピューターでもよく、外部のブロックチェーンネットワークに接続され、手術過程で完全な記録を取得し、且つ前記記録は改竄不能であり、分散化及び医療従事者と患者双方の権益の保障を達成する。
【0026】
スマート手術室の手術物品管理システム1はスキャナー20と、警告モジュール30と、ネットワークモジュール40と、ブロックチェーントラッキングモジュール50と、処理モジュール60と、メモリー70と、録画モジュール80と、を備えている。図1図3に示すように、一実施例では、スキャナー20はRFIDタグが内蔵されている読み取り機のスキャンプラットフォームであり、手術台200の直上約1~5mの箇所に位置していると共に手術台200に向けられている。スキャナー20は手術台200に向けてフレキシブルRFIDタグ901、901aをスキャンし、且つ複数のフレキシブルRFIDタグ901、901aがスキャナー20に伝送した帰還信号を受信し、帰還信号は処理モジュール60に伝送された後にフレキシブルRFIDタグ901、901aの位置の計算に用いられる。スキャナー20は複数の読み取り領域21を有し、各読み取り領域21は位置決め座標(X、Y)をそれぞれ有している。位置決め座標のX値は読み取り領域に基づいて上から下にかけてA乃至Hの順に配列され、位置決め座標のY値は読み取り領域に基づいて左から右にかけて1乃至4の順に配列されている。スキャナー20がフレキシブルRFIDタグ901、901aをスキャンした後、スキャンされたフレキシブルRFIDタグ901、901aが帰還信号をスキャナー20の各読み取り領域21に伝送する。各フレキシブルRFIDタグ901、901aと各読み取り領域21との間の距離が異なるため、各読み取り領域21は異なる信号強度を取得する。例えば、位置決め座標(E,3)の読み取り領域21はフレキシブルRFIDタグ901に最も近いため、受信したフレキシブルRFIDタグ901の帰還信号の信号強度が最も強くなり、位置決め座標(E,3)の読み取り領域21の周囲にある読み取り領域21(即ち、位置決め座標がそれぞれ(E,2)、(E,4)、(D,3)、(F,3)となる読み取り領域21)はフレキシブルRFIDタグ901から遠いため、受信した帰還信号の信号強度がやや弱くなる。各読み取り領域21が取得した帰還信号の信号強度のデータは処理モジュール60に伝送され、処理モジュール60が信号強度の違いに基づいてフレキシブルRFIDタグ901の位置を計算する。また、フレキシブルRFIDタグ901、901aが全て手術台200にない場合、各読み取り領域21がフレキシブルRFIDタグをスキャンしても信号強度が正常値よりも低くなり、ひいてはフレキシブルRFIDタグをスキャンできなくなる。この場合、フレキシブルRFIDタグが全て手術台200にないことが確認され、よって患者100の体内にも遺残していないことになる。
【0027】
本発明の一実施例では、警告モジュール30は例えばスキャナー20に設置されていると共にスキャナー20に信号が接続されている警告ランプであり、警告モジュール30はスキャナー20が何れか1つのフレキシブルRFIDタグ901、901aの位置が患者100の体内にあることを確認した場合、発光形態の警告を発する。但し、警告モジュール30は警告機能を有している他の設備でもよく、例えば、警告音を発する音響機器でもよい。
【0028】
本発明の一実施例では、ネットワークモジュール40は、スキャナー20に設置されていると共にスキャナー20に信号が接続されているネットワークカードである。ネットワークモジュール40はフレキシブルRFIDタグ901、901aの位置を外部コンピュータ800に伝送し、且つネットワークモジュール40は外部コンピュータ800をスマート手術室の手術物品管理システム1に接続して操作するために用いられてもよい。
【0029】
本発明の一実施例では、ブロックチェーントラッキングモジュール50はスキャナー20に設置されていると共にスキャナー20に信号が接続されている。ブロックチェーントラッキングモジュール50は演算チップであり、外部のブロックチェーンネットワーク700に信号が接続され、ブロックチェーントラッキングモジュール50はフレキシブルRFIDタグ901、901aの輸送履歴を外部のブロックチェーンネットワーク700に記録する。フレキシブルRFIDタグ901、901aの輸送履歴記録は手術を行う地点、手術物品900の手術器具910及び外科用消耗品920の保存及び輸送過程等を含む。本発明に係るフレキシブルRFIDタグ901、901aの輸送履歴は医療従事者が外部コンピュータ800により輸送履歴情報をブロックチェーントラッキングモジュール50に入力して記録し、ブロックチェーントラッキングモジュール50により輸送履歴を外部のブロックチェーンネットワーク700に記録する。これにより、ブロックチェーンを利用して追跡可能となり、記録が改竄されにくくなるという特性により、手術物品900の手術器具910及び外科用消耗品920の輸送履歴を明確に記録して管理可能となる。
【0030】
本発明の一実施例では、処理モジュール60は例えば、スキャナー20に設置されていると共にスキャナー20、警告モジュール30、ネットワークモジュール40、ブロックチェーントラッキングモジュール50、メモリー70、及び録画モジュール80に信号が接続されている中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)である。処理モジュール60はスキャナー20、警告モジュール30、ネットワークモジュール40、ブロックチェーントラッキングモジュール50、メモリー70、及び録画モジュール80と協調して動作すると共にこれらを制御する。処理モジュール60は各帰還信号の信号強度に基づいてフレキシブルRFIDタグ901、901aの位置を計算し、フレキシブルRFIDタグ901、901aの位置及び患者100の前記位置が重畳しているか否かを判断し、フレキシブルRFIDタグ901、901aの位置が患者100の体内にあるか否かを確認する。
【0031】
本発明の一実施例では、メモリー70は処理モジュール60に信号が接続され、メモリー70はスマート手術室の手術物品管理方法を実行するために必要なデータ及びソフトウェアを保存するために用いられている。録画モジュール80は撮影レンズであり、スキャナー20に設置され、患者100を撮影して患者100の位置を取得するために用いられている。
【0032】
図1乃至図4に示すように、本発明の一実施例では、スマート手術室の手術物品管理方法がコンピュータープログラムソフトウェアとしてプログラムされ、且つメモリー70に保存されている。医師が手術台200上で患者100に対し手術を行って患者100の身体を縫合する段階に至った際に、手術物品900が患者100の体内に遺残するのを防止するため、看護師が外部コンピュータ800をスマート手術室の手術物品管理システム1に接続し、スマート手術室の手術物品管理システム1にスマート手術室の手術物品管理方法のソフトウェアを実行させる。この際、スマート手術室の手術物品管理システム1はまずステップ101を実行し、フレキシブルRFIDタグをスキャンすると共に複数の帰還信号を受信する。
【0033】
本発明の一実施例では、手術台200の上方にあるスキャナー20の各読み取り領域21は手術台200に向けてスキャンすることでフレキシブルRFIDタグ901、901aをスキャンする。スキャンされたフレキシブルRFIDタグ901、901aは帰還信号をスキャナー20の各読み取り領域21に伝送する。各フレキシブルRFIDタグ901、901aの位置が異なるため、各読み取り領域21が異なる信号強度を取得する。
【0034】
次いで、スマート手術室の手術物品管理システム1のステップ102を実行し、各帰還信号の信号強度に基づいてフレキシブルRFIDタグの位置を計算する。
【0035】
各読み取り領域21が取得した帰還信号の信号強度のデータが処理モジュール60に伝送され、処理モジュール60が信号強度の違いに基づいてフレキシブルRFIDタグ901の位置を計算する。本実施例では、位置決め座標(E,3)の読み取り領域21が受信したフレキシブルRFIDタグ901の帰還信号の信号強度が最も強く、位置決め座標(E,3)の読み取り領域21の周囲の読み取り領域21(即ち、位置決め座標をそれぞれ(E,2)、(E,4)、(D,3)、(F,3)とする読み取り領域21)が受信した帰還信号の信号強度はやや弱い。よって、上述の読み取り領域21が受信した帰還信号の異なる信号強度のデータが処理モジュール60に伝送され、処理モジュール60が信号強度の違いに基づいて位置決め座標(E,3)の読み取り領域21がフレキシブルRFIDタグ901に最も近いと判断し、これによりフレキシブルRFIDタグ901の位置が位置決め座標(E,3)の読み取り領域21の直下に位置していることを算出する。
【0036】
続いて、スマート手術室の手術物品管理システム1のステップ103を実行し、患者を撮影し、患者の位置を取得する。
【0037】
録画モジュール80が手術台200上の患者100を撮影し、患者100の位置の画像を取得する。録画モジュール80が撮影した患者100の位置の画像は処理モジュール60に伝送される。録画モジュール80は重要な手術部分の全工程を録画して記録し、証拠を撮影してブロックチェーンネットワークにアップロードする。
【0038】
次いで、スマート手術室の手術物品管理システム1のステップ104を実行する。フレキシブルRFIDタグの位置及び患者の位置が重畳しているか否かを判断し、フレキシブルRFIDタグの位置是が患者の体内にあるか否かを確認する。
【0039】
処理モジュール60は信号強度の違いに基づいてフレキシブルRFIDタグ901の位置を算出し、録画モジュール80が伝送した患者100の位置の画像を取得した後、処理モジュール60がフレキシブルRFIDタグ901の位置及び録画モジュール80が伝送した患者100の位置の画像を比較し、フレキシブルRFIDタグ901の位置が患者100の身体の位置に重畳しているか否か確認する。重畳している場合、フレキシブルRFIDタグ901の位置が患者100の体内にあることが分かる。重畳していない場合、フレキシブルRFIDタグ901の位置が患者100の体内にないことが分かる。
【0040】
フレキシブルRFIDタグ901の位置が患者の体内にないことを確認した場合、医師は患者100の身体を縫合して手術を完了し、この方法を終了する。反対に、フレキシブルRFIDタグ901の位置が患者100の体内にあることを確認した場合、スマート手術室の手術物品管理システム1はステップ105を実行し、警告を発する。
【0041】
処理モジュール60はフレキシブルRFIDタグ901の位置が患者100の体内にあることを確認したメッセージを警告モジュール30に伝送し、警告モジュール30が発光形態の警告を発するように制御する。これにより、フレキシブルRFIDタグ901に接続している手術器具910が患者100の体内にあることを医師に即時通知し、医師は患者100の身体を縫合する前にフレキシブルRFIDタグ901に接続している手術器具910を患者100の体内から取り出す。
【0042】
次いで、スマート手術室の手術物品管理システム1はステップ106を実行し、フレキシブルRFIDタグの位置を外部コンピュータに伝送する。
【0043】
処理モジュール60はフレキシブルRFIDタグ901の位置を算出した後、フレキシブルRFIDタグ901の位置をネットワークモジュール40に伝送する。ネットワークモジュール40はフレキシブルRFIDタグ901の位置を外部コンピュータ800に伝送し、外部コンピュータ800がフレキシブルRFIDタグ901の位置を手術の参照データとして記録する。
【0044】
最後に、スマート手術室の手術物品管理システム1はステップ107を実行し、輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録する。
【0045】
医療従事者は外部コンピュータ800を操作してフレキシブルRFIDタグ901、901aの輸送履歴をブロックチェーントラッキングモジュール50に入力し、ブロックチェーントラッキングモジュール50によりフレキシブルRFIDタグ901、901aの輸送履歴を外部のブロックチェーンネットワーク700に記録する。ブロックチェーンの物品輸送履歴追跡機能により、手術物品900の手術器具910及び外科用消耗品920の対応する手術地点、保存、及び輸送の過程等が全て外部のブロックチェーンネットワーク700に記録される。これにより、ブロックチェーンにより追跡可能となり、記録が改竄されにくくなるという特性により、手術器具910及び外科用消耗品920の輸送履歴を明確に記録して管理する。
【0046】
本発明に係るスマート手術室の手術物品管理システム1及びスマート手術室の手術物品管理方法により、医療従事者が患者の手術を行う際に、手術物品が患者の体内に遺残することを防止し、医療の安全性を高めている。また、手術物品の輸送履歴を追跡し、且つ手術物品の部分的構造が生分解プラスチックで製造されているため、環境保護効果も備えている。
【0047】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
〔付記1〕
手術過程で使用する手術物品を管理するためにスマート手術室の手術物品管理システムに適用し、前記手術物品としてフレキシブルRFIDタグを含むスマート手術室の手術物品管理方法であって、
前記フレキシブルRFIDタグのタグ位置を取得するステップと、
患者の画像を撮影し、前記患者の画像位置を取得するステップと、
前記フレキシブルRFIDタグの位置及び前記患者の前記画像位置が重畳しているか否かを判断し、前記フレキシブルRFIDタグが対応する前記手術物品が前記患者の体内にあるか否かを確認するステップと、
前記手術物品が前記患者の体内にある場合、警告を発するステップと、を含むことを特徴とするスマート手術室の手術物品管理方法。
〔付記2〕
前記スマート手術室の手術物品管理システムは複数の読み取り領域を含むスキャナーをさらに備え、前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置を取得するステップは、前記スキャナーにより前記フレキシブルRFIDタグをスキャンし、且つ前記複数の読み取り領域が前記フレキシブルRFIDタグから伝送された複数の帰還信号を受信するステップをさらに含むことを特徴とする付記1に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
〔付記3〕
前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置を取得するステップは、各読み取り領域が受信した各帰還信号の信号強度に基づいて前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置を計算するステップをさらに含むことを特徴とする付記2に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
〔付記4〕
信号強度が最も強い前記帰還信号を受信した前記読み取り領域は、前記フレキシブルRFIDタグに最も近いことを特徴とする付記3に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
〔付記5〕
前記フレキシブルRFIDタグの前記位置のデータを外部コンピュータに伝送するステップをさらに含むことを特徴とする付記4に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
〔付記6〕
前記フレキシブルRFIDタグは輸送履歴を含み、前記方法は前記輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録するステップをさらに含むことを特徴とする付記5に記載のスマート手術室の手術物品管理方法。
〔付記7〕
手術過程で使用する手術物品を管理するために適用するスマート手術室の手術物品管理システムであって、前記手術物品としてフレキシブルRFIDタグを含み、前記スマート手術室の手術物品管理システムは、
前記フレキシブルRFIDタグをスキャンし、前記フレキシブルRFIDタグのタグ位置を取得するためのスキャナーと、
患者の画像を撮影し、前記患者の画像位置を取得するための録画モジュールと、
前記スキャナー及び前記録画モジュールに信号が接続され、前記スキャナーが前記フレキシブルRFIDタグをスキャンして獲得したデータに基づいて前記フレキシブルRFIDタグの位置を取得し、且つ前記フレキシブルRFIDタグの位置及び前記患者の前記画像位置が重畳しているか否かを判断し、前記フレキシブルRFIDタグが対応する前記手術物品が前記患者の体内にあるか否かを確認するための処理モジュールと、
前記処理モジュールに信号が接続され、前記処理モジュールが前記手術物品が前記患者の体内にあることを確認した場合、警告信号を発信する警告モジュールと、を備えていることを特徴とするスマート手術室の手術物品管理システム。
〔付記8〕
前記スキャナーは、前記フレキシブルRFIDタグから伝送された複数の帰還信号を受信する複数の読み取り領域を含むことを特徴とする付記7に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
〔付記9〕
前記処理モジュールは各読み取り領域が受信した各帰還信号の信号強度に基づいて前記フレキシブルRFIDタグの前記タグ位置をさらに計算することを特徴とする付記8に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
〔付記10〕
信号強度が最も強い前記帰還信号を受信した前記読み取り領域は、前記フレキシブルRFIDタグに最も近いことを特徴とする付記9に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
〔付記11〕
前記スキャナーに信号が接続され、前記フレキシブルRFIDタグの前記位置のデータを外部コンピュータに伝送するためのネットワークモジュールをさらに備えていることを特徴とする付記10に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
〔付記12〕
前記スキャナーに信号が接続されているブロックチェーントラッキングモジュールをさらに備え、前記フレキシブルRFIDタグは輸送履歴を含み、前記ブロックチェーントラッキングモジュールは前記輸送履歴をブロックチェーンネットワークに記録することを特徴とする付記11に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
〔付記13〕
前記手術物品として少なくとも1つの手術器具及び少なくとも1つの外科用消耗品を含むことを特徴とする付記12に記載のスマート手術室の手術物品管理システム。
【符号の説明】
【0048】
1 スマート手術室の手術物品管理システム
20 スキャナー
21 読み取り領域
30 警告モジュール
40 ネットワークモジュール
50 ブロックチェーントラッキングモジュール
60 処理モジュール
70 メモリー
80 録画モジュール
100 患者
200 手術台
700 ブロックチェーンネットワーク
800 外部コンピュータ
900 手術物品
901 フレキシブルRFIDタグ
901a フレキシブルRFIDタグ
910 手術器具
920 外科用消耗品
図1
図2
図3
図4
図5