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特許7524143プラグ付き電源コード、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】プラグ付き電源コード、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/502 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H01R13/502 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021129507
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023722
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】内田 龍一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-012142(JP,A)
【文献】特開2010-205468(JP,A)
【文献】実開昭56-156284(JP,U)
【文献】米国特許第9325105(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、
それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、前記2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードと、
前記電源コードの先端で露出した前記2本の導体が前記プラグ刃にそれぞれ接続される接続部と、
一対の前記接続部、一対の前記導体の一部、一対の前記プラグ刃の一部を一体的に覆う樹脂材料で形成された中子と、
前記中子、前記絶縁体で被覆された2本の導体の一部を少なくとも覆う、前記中子よりも軟質の樹脂材料で形成されたボディとを備え、
前記絶縁体で被覆された2本の導体は、前記ボディ内部で互いに跨いで交差するねじれ部を有し、
前記ボディは、くびれ部と、前記くびれ部の後端側にあり、横方向に広がった一対のブッシュとを有し、
前記一対のブッシュの間の位置に前記ねじれ部があるプラグ付き電源コード。
【請求項2】
コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、
それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、前記2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードと、
前記電源コードの先端で露出した前記2本の導体が前記プラグ刃にそれぞれ接続される接続部と、
一対の前記接続部、一対の前記導体の一部、一対の前記プラグ刃の一部を一体的に覆う樹脂材料で形成された中子と、
前記中子、前記絶縁体で被覆された2本の導体、及びそれを覆う外皮の一部を少なくとも覆う、前記中子よりも軟質の樹脂材料で形成されたボディとを備え、
前記絶縁体で被覆された2本の導体は、前記外皮の内部で互いに跨いで交差するねじれ部を有し、
前記ボディは、くびれ部と、前記くびれ部の後端側にあり、横方向に広がった一対のブッシュとを有し、
前記一対のブッシュの間の位置に前記ねじれ部があるプラグ付き電源コード。
【請求項3】
2本の導体が交差する領域における前記2本の導体の伸びる方向と、電源コードが伸びる方向と、が成す角度は、30度以下となることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラグ付き電源コード。
【請求項4】
前記ボディは、くびれ部、前記くびれ部の後端となるブッシュ、前記ブッシュよりも後方で電源コードの一部を保護するプロテクタ部を備え、前記プロテクタ部は前記プロテクタ部の終端部に向かうにつれ、断面剛性が徐々に低下することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプラグ付き電源コード。
【請求項5】
前記プロテクタ部は、一部蛇腹形状を形成することを特徴とする請求項4に記載のプラグ付き電源コード。
【請求項6】
コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、前記2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードとを備え、前記プラグ刃、前記電源コードを介して電気機器に電気を供給するプラグ付き電源コードの製造方法であって、
前記電源コードの先端から露出した前記2本の導体と前記プラグ刃とをそれぞれ接続して接続部を形成する第1の工程と、
一対の前記接続部、一対の前記導体の一部、一対の前記プラグ刃の一部を形成型の内部に固定し、樹脂材料を注入することで一体的に覆う中子を形成する第2の工程と、
前記絶縁体で被覆された2本の導体を互いに跨いで交差したねじれ部を形成し、少なくとも前記ねじれ部と前記中子とを形成型に固定し、前記中子よりも軟質の樹脂材料を注入することで一体的に覆うボディを形成する第3の工程と、
を有し、
前記ボディは、くびれ部と、前記くびれ部の後端側にあり、横方向に広がった一対のブッシュとを有し、
前記一対のブッシュの間の位置に前記ねじれ部があるプラグ付き電源コードの製造方法。
【請求項7】
コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、前記2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードとを備え、前記プラグ刃、前記電源コードを介して電気機器に電気を供給するプラグ付き電源コードの製造方法であって、
前記絶縁体で被覆された2本の導体を互いに跨いで交差したねじれ部を前記外皮内に形成する第1の工程と、
前記電源コードの先端から露出した前記2本の導体と前記プラグ刃とをそれぞれ接続して接続部を形成する第2の工程と、
一対の前記接続部、一対の前記導体の一部及び前記外皮の一部、一対の前記プラグ刃の一部を形成型の内部に固定し、樹脂材料を注入することで一体的に覆う中子を形成する第3の工程と、
少なくとも前記外皮の一部と前記中子とを形成型に固定し、前記中子よりも軟質の樹脂材料を注入することで一体的に覆うボディを形成する第4の工程と、
を有するプラグ付き電源コードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電気器具のプラグ付き電源コード、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掃除機等の電気器具などに用いられるプラグ付き電源コードは、室内の壁等に取付けられたコンセントに差し込まれるプラグ刃を、コードの芯線の先端部に設けられた導体部に固定し、両者を樹脂などの被覆体で覆うことで、プラグ刃とコードとを固定する構造が一般的である。
【0003】
この際、プラグ刃がコンセントに接続されている状態では、電気器具の動きに応じてコードも引き回されるために左右方向からプラグの屈曲を伴う荷重が負荷されることにより、内部の導体部も屈曲荷重を受け断線することを防止するため、特許文献1では、一対のプラグ刃を収容可能な刃体ホルダーと芯線、芯線と接続するプラグ刃のカシメ片、刃体ホルダーとを一体的に被覆する刃体ホルダーと同等以上の硬度から成る第1被覆体と、この第1被覆体を覆う硬度の低い軟質の第2被覆体とで構成することで、断線を防いでいる。
【0004】
しかし、このような構成では、電気器具の使用時にプラグのボディを急激にコンセントから取外そうとすると、衝撃荷重がプラグに加わり、引張力による延性破壊により導体部が断線してしまうことが起きる。これに対し、特許文献2のように、プラグボディの内部で平行な導体を有する電源コードの2本の芯体をねじることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平07-312253号公報
【文献】特開2000-12142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、ケーブル先端にある外皮部分まで、硬度が高い第1被覆体内に位置してしまうため、外皮の外でねじり、型に入れて樹脂を注入し第1被覆体を形成する際に、ねじり部分での戻り力で芯線とプラグ刃の接続部分がずれてしまうという課題がある。
【0007】
本開示は上述の課題を解決するためになされたもので、より断線の発生しずらいプラグ付き電源コードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るプラグ付き電源コードは、コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードと、電源コードの先端で露出した2本の導体がプラグ刃にそれぞれ接続される接続部と、一対の接続部、一対の導体の一部、一対のプラグ刃の一部を一体的に覆う樹脂材料で形成された中子と、中子、絶縁体で被覆された2本の導体の一部を少なくとも覆う、中子よりも軟質の樹脂材料で形成されたボディとを備え、絶縁体で被覆された2本の導体は、ボディ内部で互いに跨いで交差するねじれ部を有し、ボディは、くびれ部と、くびれ部の後端側にあり、横方向に広がった一対のブッシュとを有し、一対のブッシュの間の位置にねじれ部があるものである。
また、本開示に係るプラグ付き電源コードは、コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードと、電源コードの先端で露出した2本の導体がプラグ刃にそれぞれ接続される接続部と、一対の接続部、一対の導体の一部、一対のプラグ刃の一部を一体的に覆う樹脂材料で形成された中子と、中子、絶縁体で被覆された2本の導体、及びそれを覆う外皮の一部を少なくとも覆う、中子よりも軟質の樹脂材料で形成されたボディとを備え、絶縁体で被覆された2本の導体は、外皮の内部で互いに跨いで交差するねじれ部を有し、ボディは、くびれ部と、くびれ部の後端側にあり、横方向に広がった一対のブッシュとを有し、一対のブッシュの間の位置にねじれ部があるものである。
また、本開示に係るプラグ付き電源コードの製造方法は、コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードとを備え、プラグ刃、電源コードを介して電気機器に電気を供給するプラグ付き電源コードの製造方法であって、電源コードの先端から露出した2本の導体とプラグ刃とをそれぞれ接続して接続部を形成する第1の工程と、一対の接続部、一対の導体の一部、一対のプラグ刃の一部を形成型の内部に固定し、樹脂材料を注入することで一体的に覆う中子を形成する第2の工程と、絶縁体で被覆された2本の導体を互いに跨いで交差したねじれ部を形成し、少なくともねじれ部と中子とを形成型に固定し、中子よりも軟質の樹脂材料を注入することで一体的に覆うボディを形成する第3の工程と、を有し、ボディは、くびれ部と、くびれ部の後端側にあり、横方向に広がった一対のブッシュとを有し、一対のブッシュの間の位置にねじれ部があるものである。
また、本開示に係るプラグ付き電源コードの製造方法は、コンセントに、その一部が挿入される一対のプラグ刃と、それぞれ絶縁体で被覆された2本の導体と、2本の導体の外部を覆う外皮とを有する2芯型の電源コードとを備え、プラグ刃、電源コードを介して電気機器に電気を供給するプラグ付き電源コードの製造方法であって、絶縁体で被覆された2本の導体を互いに跨いで交差したねじれ部を外皮内に形成する第1の工程と、電源コードの先端から露出した2本の導体とプラグ刃とをそれぞれ接続して接続部を形成する第2の工程と、一対の接続部、一対の導体の一部及び外皮の一部、一対のプラグ刃の一部を形成型の内部に固定し、樹脂材料を注入することで一体的に覆う中子を形成する第3の工程と、少なくとも外皮の一部と中子とを形成型に固定し、中子よりも軟質の樹脂材料を注入することで一体的に覆うボディを形成する第4の工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
プラグ付き電源コードの断線耐力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの斜視図
図2】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの前面図
図3】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの横面図
図4】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの上面図
図5】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの上方からの内部構成図
図6】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの中子の斜視図
図7】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの作成方法のフロー図
図8】実施の形態1におけるプラグ付き電源コードを引張った場合の力を示す図
図9】実施の形態2におけるプラグ付き電源コードの上方からの内部構成図
図10】実施の形態2におけるプラグ付き電源コードの作成方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、実施の形態1について図面を参照にして詳細を説明する。
図1は、実施の形態1におけるプラグ付き電源コードの斜視図、図2は、プラグ付き電源コードの前面図、図3は、プラグ付き電源コードの横面図、図4は、プラグ付き電源コードの上面図、図5は、プラグ付き電源コードの上方からの内部構成図である。なお、ここでは、コンセントに接続する際、コンセントと対向する面を前とし、プラグ刃の平坦な面の方向を横、又は左右、それを基準に、上下としている。
【0012】
プラグ付き電源コード1は、2個で一対のプラグ刃10と、電源コード20とを有し、コンセントにプラグ刃10が接続されることで、電流が、プラグ刃10、電源コード20を経由して電気機器本体に流れる構成である。
【0013】
プラグ刃10は、長方形の平板形状で、コンセントに挿入される方向と反対の端部に、電源コード20の先端で露出した導体21がスポット溶接で接続させる接続部11を有する。また、接続部11は、導体21を圧着固定するカシメ部を備えている。
【0014】
導体21は、素線が撚り合わされて1本の導体として構成されるもので、素線の材質は、軟銅線から成り、耐屈曲性に適した材料である。また、素線径は細線化するほど、屈曲性に優れており、素線径はφ0.2mm以下である。1本の導体に撚られる素線の本数は、素線径に合わせ、導体の公称断面積を満たす本数で決定される。
【0015】
また、撚られた素線で構成される導体21は、接続部11での接続部分を除いて、電気絶縁をさせるために絶縁体22で覆われている。絶縁体22の材質としては、電源コード20としての屈曲性を満足する為に、軟質の塩化ビニル樹脂である。なお、可塑剤の添加物の配合量を調整することで、屈曲性に適した軟質性に調整することが可能である。
【0016】
さらに、これら絶縁体22で被覆された2本の導体21は、外皮23によって一体に覆われている。この外皮23も、塩化ビニル樹脂で構成されるが、形状は、電源コード20としての軽量性を優先する為、平型キャブタイヤコードとしており、扁平形状により、電気機器のコードリール機構で巻き取られた際、電気機器に収容される収容体積を抑制している。但し、電源コードの断面を基準にX軸、Y軸とした場合、平型キャブタイヤコードは屈曲強度に異方性を持ち合わせており、平型キャブタイヤコードに対する屈曲方向により、屈曲性が異なる。使用する電気機器の特性に合わせて、丸型キャブタイヤコードの外皮形状としてもよい。
【0017】
また、それぞれ一対の接続部11、導体21、プラグ刃10の一部は、樹脂材料から構成された中子30により一体的に覆われている。
図6は、中子30の斜視図であり、前面にプラグ刃10が突出するプラグ刃口30aが形成され、後面に、導体21が突出させる1対の導体口(図示せず)が形成され、接続部11の部分が、完全に覆われたようになる。また、1対のプラグ刃10の間には、上下に貫通した貫通孔30bが設けられている。
【0018】
さらに、中子30、絶縁体22で被覆された導体21、プラグ刃10の一部は、プラグの外殻を成すボディ40で覆われている。ボディ40は、中子30よりも軟質の樹脂材料から構成され、例えば、屈曲性を満たす軟質特性、難燃性を満たす軟質の塩化ビニル樹脂が望ましい。また、ボディ40は、上方から見ると、使用者がプラグ刃10をコンセントから抜き差しし易いように、前面から後方に向かって狭くなるようなくびれ部41が形成され、その後端に、横方向に少し広がったブッシュ42が設けられている。ブッシュ42は、電気機器のコードリール機構で電源コード20が巻き取られた際に、ブッシュ42がコードリール機構にぶつかることで、巻き取りを停止させるストッパーの役割を担っている。また、1対のブッシュ42の間の位置で、絶縁体22で被覆された2本の導体21は、互いの導体21を跨ぐように交差したねじれ部24を形成しており、図5(b)に示すように、2本の導体が伸びる方向と、電源コードが伸びる方向とが成す角度θは、30度以下になっている。
【0019】
また、ボディ40は、ブッシュよりも後方に電源コード20の一部を保護するプロテクタ部43を有している。そして、ねじれ部24よりもプロテクタ部43方向で、外皮23が、絶縁体22で被覆された2本の導体21を一体に覆っている。
【0020】
プロテクタ部43は、図3に示すように、蛇腹部43aとプロテクタ終端部43bとからなっている。また、蛇腹部43aは、(a)断面D-Dから(c)断面F-Fにかけて、プロテクタ部の軟質樹脂の肉厚が上下左右いずれかが徐々に小さくなっている。
【0021】
一般的に、プラグ付き電源コードのプロテクタ部は、電源コードの保護を目的とすると同時に、ボディの屈曲性強度に影響を与える部位である。そして、プロテクタ部全体の剛性が小さく、極端に柔らかい場合、ブッシュより前方は構造体として断面剛性が高い為、断面剛性に急激な変化によりプロテクタ部とブッシュの境で大きな曲率が発生し、導体が断線に至る可能性が高い。反対に、プロテクタ部全体の剛性が高い場合、プロテクタ部の終端部と電源コードの境で急激な剛性変化が生じ、断線に至る可能性がある。
【0022】
その為、図3のように、蛇腹部43aはプロテクタ部の終端部に向かうにつれ、断面剛性が徐々に低下させることで、極端な剛性変化を生じない構成とし、導体の断線要因となる大きな曲率を回避し、耐屈曲強度を向上させている。
【0023】
次に、プラグ付き電源コードの作成方法について、図7に基づいて説明する。
まず、プラグ刃10の接続部11に、電源コード20の先端で露出した導体21をスポット溶接するとともに、カシメ部でカシメて、固定する(第1の工程:S1)。
次に、プラグ刃10の一部、接続部11、及び導体21部分を、形成型に固定し、内部に樹脂材料を注入し、固定させ、中子30を形成する(第2の工程:S2)。なお、この段階では、電源コード20をねじってはいないため、ねじれ部24は存在せず、並列な2本の導体となっている。
【0024】
次に、電源コードをねじってねじれ部24を形成し、S2で製造した中子30、及び、プラグ刃10や外皮23等の一部とともに、別の形成型に固定し、内部に中子30よりも軟質の樹脂材料を注入することで、プロテクタ部43を含むボディ40を一体的に形成する(第3の工程:S3)。なお、この段階で、注入した樹脂材料が、中子30の貫通孔30bにも充填し、固定させる。
【0025】
このような構成では、中子30は、急激な引張力、すなわち衝撃荷重がプラグ付き電源コードに加わった際に、接続部11へ生じる応力を抑制する働きがある。
【0026】
さらに、屈曲した状態でプラグ付き電源コードに衝撃力が生じると、電源コード、ボディの屈曲方向の半径方向の衝撃荷重が大きくなり、一方に荷重が集中することで、導体が断線し易くなるが、中子30は、接続部11と一体的に1部品で構成されている為、屈曲時に衝撃荷重が加わった際に、一方のみに集中していた荷重は、他方にも荷重が負荷され、結果として、接続部11に加わる荷重が分散する効果が望める。
【0027】
さらに、プラグ付き電源コードの通電時に、導体の温度上昇により、接続部を覆うボディの硬度が軟化することで保持が弱くなり、接続部に生じる荷重が増加する。この場合、1対の接続部を、個々に、個別に中子で覆う構成として、個々に接続部を保護するようなものでは、温度上昇時のボディの軟質に対し、追従するようにボディ内部の中子の位置も変化するため、接続部の保護の効果が小さいことが実験結果からわかった。それに対し、一体的に一対の接続部11を覆う中子30の構成では、ボディ40内部に構造物を内包することができ、さらにボディ40の外殻を構成する軟質樹脂よりも硬度の高い樹脂とすることで、温度変化に依存することなく、接続部11の保護を確保することができる。
【0028】
また、2本の導体21を平行にした状態では、屈曲の際に、プラグ付き電源コードの長手方向の中心を通る中立軸に対し、中立軸より短手方向へ離れるほど、応力は増加するので、繰り返し荷重が負荷されるような環境で使用した場合、断線し易くなる。さらに屈曲した際、断面剛性が大きく変化し、例えば、曲率の大きくなるボディのブッシュ近傍で断線し易くなる。しかし、2本の導体21は、ボディ内部で互いに跨ぐように交差してねじれ部24を形成し、一対の接続部11それぞれに接続される配線とすることで、断線位置近傍での応力増加の抑制を可能にすることができる。
【0029】
さらに、プラグ刃10の一部、接続部11、及び導体21部分を固定する中子30を形成した後に、電源コード20をねじってねじれ部24を作り、ボディ40で固定するようにしたので、製造工程において、ねじりにより、1対の接続部11の位置がずれてしまうことを防ぐことができる。
【0030】
さらに、2本の導体が交差する領域において、2本の導体が伸びる方向と、電源コードが伸びる方向とが成す角度θは、30度以下にしている。図8に示すように、電源コードを引張る際に、引張力Fが接続部に同様の荷重で生じると想定した場合、導体には引張力Ftが働くこととなる。引張力Ftは、角度θが大きくなるに従い、荷重は大きくなる。よって、導体の断線耐力を向上する為に、角度θを30度以下にすることで、接続部11、導体21に生じる応力の低減を可能にする効果がある。
【0031】
なお、プラグ刃10と導体21との接続を強化するため、接続部11の外皮23側方向に、絶縁体22を圧着する絶縁体抑え部を設けてもよい。
【0032】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2におけるプラグ付き電源コードの上方からの内部構成図である。
図9では、互いの導体21を跨ぐように交差したねじれ部24aが、外皮23に覆われて固定され、外皮23の先端部分が中子30の中に固定されているという点で、図5と異なる。
【0033】
図9の、プラグ付き電源コードの作成方法について、図10に基づいて説明する。
まず、絶縁体22で被覆された2本の導体21は、互いの導体21を跨ぐように交差したねじれ部24aを形成し、その状態で、外皮23を引き延ばしてねじれ部24aを覆い、樹脂などを用いて外皮23に固定させる(第1の工程:S11)。
次に、プラグ刃10の接続部11に、電源コード20の先端で露出した導体21をスポット溶接するとともに、カシメ部でカシメて、固定する(第2の工程:S12)。
次に、プラグ刃10の一部、接続部11、導体21、及び外皮23のプラグ刃10方向先端部分を形成型に固定し、内部に樹脂材料を注入し、固定させ、中子30を形成する(第3の工程:S13)。この段階で、ねじれ部24aは存在するが、外皮23に固定されているため、戻りの力がかかることはない。
【0034】
次に、ステップ13で製造した中子30、外皮23の一部等を別の形成型に固定し、内部に中子30よりも軟質の樹脂材料を注入することで、プロテクタ部43を含むボディ40を一体的に形成する(第4の工程:S14)。なお、この段階で、注入した樹脂材料が、中子30の貫通孔30bにも充填し、固定させる。
【0035】
このように、2本の導体を一体的に覆う外皮の前端部の位置は、ボディ内部の中子まで延在することで、耐屈曲強度を向上することが可能となる。上面から見た際に、ボディ内部で導体のみ配線されている場合、中子の後端部と導体の絶縁体がボディ内部で接触することで、絶縁体を損傷する可能性がある。ボディ内部まで延在させることで、絶縁体の損傷を防ぎ、断線耐力を向上する効果が望める。また、外皮の内部で導体を交差させてことで、電源コード製造時に電線を交差させることとなり、ボディの成形、例えば射出成形前に電線を交差させる作業工程が省略でき、電線交差作業の忘れ防止が可能となり、品質管理の向上が望める。
【符号の説明】
【0036】
1 プラグ付き電源コード、10 プラグ刃、11 接続部、20 電源コード、21 導体、22 絶縁体、23 外皮、24 ねじれ部、24a ねじれ部、30 中子、
30a プラグ刃口、30b 貫通孔、40 ボディ、41 くびれ部、42 ブッシュ、43 プロテクタ部、43a 蛇腹部、43b プロテクタ終端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10