IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

<>
  • 特許-ロータリー式切換弁 図1
  • 特許-ロータリー式切換弁 図2
  • 特許-ロータリー式切換弁 図3
  • 特許-ロータリー式切換弁 図4
  • 特許-ロータリー式切換弁 図5
  • 特許-ロータリー式切換弁 図6
  • 特許-ロータリー式切換弁 図7
  • 特許-ロータリー式切換弁 図8
  • 特許-ロータリー式切換弁 図9
  • 特許-ロータリー式切換弁 図10
  • 特許-ロータリー式切換弁 図11
  • 特許-ロータリー式切換弁 図12
  • 特許-ロータリー式切換弁 図13
  • 特許-ロータリー式切換弁 図14
  • 特許-ロータリー式切換弁 図15
  • 特許-ロータリー式切換弁 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ロータリー式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021172933
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2022103053
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020216484
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏光
(72)【発明者】
【氏名】南澤 英樹
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/147932(WO,A1)
【文献】特開平11-044369(JP,A)
【文献】特開2006-183802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/074
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を有するケース部材と、前記弁室に対向して設けられた弁座と、前記弁室内で前記弁座上に軸線を中心として回転可能に配設された主弁と、前記軸線を中心として回転可能に配設されるとともに前記主弁の均圧孔を開閉する副弁とを備え、前記均圧孔を開として前記主弁を回転させることで、前記弁座のポートに連通する流路を切り換えるロータリー式切換弁において、
前記主弁の前記軸線周りの周上で前記副弁側に凸となる主弁凸部が形成されるとともに、前記副弁の前記主弁凸部と同一円周上で前記主弁側に凸となり前記主弁凸部を挟みうるよう離間した2つの副弁凸部が形成され、
前記主弁凸部と前記副弁凸部の前記軸線回りの端部がテーパ面となっており、
前記主弁凸部に前記均圧孔が形成されるとともに、前記2つの副弁凸部の前記軸線方向の端部に前記均圧孔を封止する副弁シール部が形成され、前記2つの副弁凸部の間に前記主弁凸部が位置して、該副弁凸部が該主弁凸部に当接して当該副弁の回転力を前記主弁に伝達するように構成され
前記主弁の当接部が前記弁座に設けられたストッパに当接後に、前記主弁凸部および前記副弁凸部の互いに当接する前記テーパ面の傾斜を使って、前記副弁凸部が前記主弁凸部に乗り上がりつつ前記副弁が回転し続け、前記副弁凸部の前記副弁シール部が前記均圧孔を封止するように構成されていることを特徴とするロータリー式切換弁。
【請求項2】
前記軸線回りで、前記副弁凸部が前記主弁凸部の位置となるとき前記副弁シール部が前記主弁凸部の前記均圧孔を封止し、前記2つの副弁凸部の間に前記主弁凸部が位置するとき前記均圧孔が開となるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項3】
前記主弁の前記均圧孔の副弁収容室側開口部を軸線上方向から見た中心点の軸線との直交位置が、該均圧孔の低圧流路側開口部を軸線下方向から見た中心点の軸線との直交位置に対して前記軸線側にシフトされていることを特徴とする請求項1または2に記載のロータリー式切換弁。
【請求項4】
前記副弁における前記2つの副弁凸部の間に、前記主弁凸部の前記均圧孔に連通可能な均圧流路が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のロータリー式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式の冷凍サイクル等に用いられ、冷媒の流路を切り換えるロータリー式切換弁に関する。
【0002】
従来、この種のロータリー式切換弁(四方切換弁)として、例えば特許第4602593号公報(特許文献1)に開示されたものがある。特許文献1のものは、冷房から暖房または暖房から冷房に切り換えるとき、弁座上の主弁を回転させるものであるが、この主弁を回転させる際に、副弁により主弁の均圧孔を開とし、主弁にかかる圧力差を軽減するような構造が用いられている。すなわち、副弁が回転して均圧孔を開いて、主弁を圧力差にて弁座から浮かせた状態で回転させた後、副弁が反回転することにより均圧孔を閉じ、主弁を着座させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4602593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものでは、副弁が均圧孔を閉じる際に主弁は弁座から浮いているため、主弁の回転方向に対する摩擦が殆ど無い状態、あるいは押しばねを介して主弁が駆動部と回転一体の状態となり、副弁の反回転するときに主弁も一緒に回転してしまい、均圧孔を正常に閉じることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、主弁の均圧孔を開閉する副弁を備えたロータリー式切換弁において、主弁の安定した切り換え動作を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータリー式切換弁は、弁室を有するケース部材と、前記弁室に対向して設けられた弁座と、前記弁室内で前記弁座上に軸線を中心として回転可能に配設された主弁と、前記軸線を中心として回転可能に配設されるとともに前記主弁の均圧孔を開閉する副弁とを備え、前記均圧孔を開として前記主弁を回転させることで、前記弁座のポートに連通する流路を切り換えるロータリー式切換弁において、前記主弁の前記軸線周りの周上で前記副弁側に凸となる主弁凸部が形成されるとともに、前記副弁の前記主弁凸部と同一円周上で前記主弁側に凸となり前記主弁凸部を挟みうるよう離間した2つの副弁凸部が形成され、前記主弁凸部と前記副弁凸部の前記軸線回りの端部がテーパ面となっており、前記主弁凸部に前記均圧孔が形成されるとともに、前記2つの副弁凸部の前記軸線方向の端部に前記均圧孔を封止する副弁シール部が形成され、前記2つの副弁凸部の間に前記主弁凸部が位置して、該副弁凸部が該主弁凸部に当接して当該副弁の回転力を前記主弁に伝達するよう構成され、前記主弁の当接部が前記弁座に設けられたストッパに当接後に、前記主弁凸部および前記副弁凸部の互いに当接する前記テーパ面の傾斜を使って、前記副弁凸部が前記主弁凸部に乗り上がりつつ前記副弁が回転し続け、前記副弁凸部の前記副弁シール部が前記均圧孔を封止するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
この際、前記軸線回りで、前記副弁凸部が前記主弁凸部の位置となるとき前記副弁シール部が前記主弁凸部の前記均圧孔を封止し、前記2つの副弁凸部の間に前記主弁凸部が位置するとき前記均圧孔が開となるよう構成されていることを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【0009】
また、前記主弁の前記均圧孔の副弁収容室側開口部を軸線上方向から見た中心点の軸線との直交位置が、該均圧孔の低圧流路側開口部を軸線下方向から見た中心点の軸線との直交位置に対して前記軸線側にシフトされていることを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【0010】
また、前記副弁における前記2つの副弁凸部の間に、前記主弁凸部の前記均圧孔に連通可能な均圧流路が形成されていることを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のロータリー式切換弁によれば、2つの副弁凸部の間に主弁凸部が位置して主弁凸部に形成された均圧孔が開となる状態で、副弁凸部が主弁凸部に当接して当該副弁の回転力を主弁に伝達するよう構成されているので、主弁の安定した切り換え動作を行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の着座状態の要部縦断面図である。
図2】実施形態におけるロータリー式切換弁の均圧孔開状態の要部縦断面図である。
図3】実施形態におけるロータリー式切換弁の冷房運転時の主弁の着座位置を示す図である。
図4】実施形態におけるロータリー式切換弁の暖房運転時の主弁の着座位置を示す図である。
図5】実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の斜視図である。
図6】実施形態におけるロータリー式切換弁の副弁の斜視図である。
図7】実施形態における副弁と主弁の動作を説明する簡易表示図である。
図8】実施形態におけるロータリー式切換弁の初期状態を示す図である。
図9】実施形態におけるロータリー式切換弁の流路切換中の前段の状態を示す図である。
図10】実施形態におけるロータリー式切換弁の流路切換中の後段の状態を示す図である。
図11】実施形態におけるロータリー式切換弁の流路切換の完了状態を示す図である。
図12】実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図13】他の実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の斜視図である。
図14】他の実施形態におけるロータリー式切換弁の副弁の斜視図である。
図15】実施形態におけるロータリー式切換弁を示し、(A)は主弁凸部の説明図であり、(B)は副弁凸部の説明図である。
図16】他の実施形態におけるロータリー式切換弁を示し、(A)は主弁凸部の説明図であり、(B)は副弁凸部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のロータリー式切換弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態におけるロータリー式切換弁の均圧孔閉状態(主弁の着座状態)の要部縦断面図、図2は同ロータリー式切換弁の均圧孔開状態(主弁の浮上状態)の要部縦断面図、図3は同ロータリー式切換弁の冷房運転時の主弁の着座位置を示す図、図4は同ロータリー式切換弁の暖房運転時の主弁の着座位置を示す図、図5は同ロータリー式切換弁の主弁の斜視図、図6は同ロータリー式切換弁の副弁の斜視図である。図3及び図4において斜線(ハッチング)を付けた部位は主弁が弁座に着座して接触している部分を示している。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1及び図2の図面における上下に対応する。
【0014】
この実施形態のロータリー式切換弁100は、主弁1と、副弁2と、弁座部材3と、ケース部材4と、駆動部5と、中心軸6と、を有している。弁座部材3は、薄型円柱状の弁座31と、この弁座31の外周に形成されたフランジ部32と、を備えて構成されている。また、ケース部材4には略円筒状の弁室4Aが形成されている。弁室4A内には、主弁1、副弁2、駆動部5及び中心軸6が収容されており、中心軸6が、主弁1、副弁2及び駆動部5を貫通して、弁座部材3とケース部材4との間に配設されている。そして、ケース部材4の弁室4Aの開口部に弁座31が嵌合され、フランジ部32をケース部材4の下端に当接させるようにして、弁座部材3がケース部材4に取り付けられている。
【0015】
主弁1は、樹脂で形成された外周が円形の部材であり、弁座31側の袴部11と円筒状のピストン部12と軸受け部13とを一体に形成して構成され、ピストン部12の周囲にはピストンリング12aが配設されている。そして、中心の軸受け部13を中心軸6が貫通することで、主弁1は中心軸6の軸線Xの回りに回動自在に配設されている。また、弁室4Aの上部のピストン部12が収容される空間は円柱状のガイド孔41となっており、主弁1はピストンリング12aをガイド孔41の側面に摺動させて中心軸6の軸線X方向に移動可能となっている。
【0016】
また、主弁1の袴部11には、軸線Xの片側においてドーム状に穿たれた低圧流路11Aが形成されるとともに、低圧流路11Aの天井の中央より軸線X側寄りには、ピストン部12の内側の副弁収容室12Aに連通する均圧孔11aが形成されている(貫通孔11bを介して均圧孔11aが形成されている)。また、袴部11の弁座部材3側の底面には、低圧流路11Aの外周を囲うように摺動リブ111が形成されるとともに、摺動リブ111の軸線Xとは反対側の2か所に摺動リブ112,112が形成されている。さらに、袴部11は、低圧流路11Aに対して軸線Xの反対側に後述のDポート31Dが常時開放している高圧空間11Bが形成され、この高圧空間11Bの外側は略90°の範囲において開口されており、この開口部分の軸線X周り方向の両端は、それぞれストップピン当接部113となっている。このストップピン当接部113は、弁座31に設けられたストップピン31aに当接する。
【0017】
また、図5(A)に示すように、ピストン部12の内側は略円柱状の副弁収容室12Aとなっており、この副弁収容室12Aの底部には、軸線X周りの周上で副弁2側に凸となる主弁凸部121が形成されている。この主弁凸部121は、円周回りの断面形状が台形状であり、円周回り方向の左右両方の端部がテーパ面となっている。そして、この主弁凸部121には、副弁収容室12Aに開口する前記均圧孔11aが形成されている。この主弁凸部121は1つでも良いが、この実施形態では、この主弁凸部121の他に、外形が主弁凸部121と同様で均圧孔のない主弁凸部が3つ、円周回りに等間隔(等角度)で形成されている。また、副弁収容室12Aの内周面の2カ所には軸線X側に突出する副弁ストッパ122,122が形成されている。
【0018】
図6に示すように、副弁2は、主弁1のピストン部12の副弁収容室12A内に収納される略半円盤状のフランジ部21とその中央のボス部22とを有しており、このボス部22の中心には略長方形の角孔22aが形成されている。また、フランジ部21の主弁1側の面には、主弁凸部121と同一円周上で主弁1側に凸となる2つの副弁凸部211,211が形成されている。この2つの副弁凸部211,211は、円周回りの断面形状が台形状であり、円周回り方向の左右両方向の端部がテーパ面となっている。そして、この2つの副弁凸部211,211は、主弁凸部121を挟みうるように円周回りで離間して形成されている。そして、この2つの副弁凸部211,211の間(中間位置)には、主弁1の均圧孔11aに連通可能な均圧流路21aが形成されている。また、副弁凸部211,211の軸線X方向の端部は、主弁1の主弁凸部121の均圧孔11aを封止する副弁シール部となっている。さらに、フランジ部21の軸線X回りの端部は、主弁当接部212,212となっており、この主弁当接部212,212は主弁1の副弁ストッパ122,122に択一的に当接する。
【0019】
図3及び図4に示すように、弁座31には、弁室4Aと圧縮機の冷媒の吐出側に連通されるDポート31D、低圧流路11Aと圧縮機の冷媒の吸入側に連通されるSポート31S、室外熱交換器側に連通されるC切換ポート31C及び室内熱交換器側に連通されるE切換ポート31Eが、それぞれ形成されている。なお、これらのポートはそれぞれ90°ずつ離間する位置に開口されている。
【0020】
図1に示すように、駆動部5は、中心軸6に回動可能に配置されたウォームホイール51と、このウォームホイール51に歯合されたウォーム歯車52と、を有し、このウォーム歯車52は図示しないモータの駆動軸に固定されている。ウォームホイール51は、副弁2側に突出するカム部51aを有しており、ウォームホイール51は、このカム部51aによって中心軸6に回転可能に配置されている。また、このカム部51aは、副弁2の略長方形の角孔22aに嵌合されている。これにより、副弁2はウォームホイール51に対して軸線X周りの回動が規制された状態で軸線X方向にのみ摺動可能となり、この副弁2はウォームホイール51と共に協働して回動する。また、ウォームホイール51と副弁2との間には、副弁2を主弁1側に付勢するコイルバネ53が配設されている。
【0021】
図7は副弁2と主弁1の動作を説明する簡易表示図であり、軸線X回りの部位を直線上に展開して示す図である。また、図8図11は、流路切換時の副弁2と主弁1の動作に応じた状態変化を示す図であり、図8は初期状態、図9は流路切換中の前段の状態、図10は流路切換中の後段の状態、図11は流路切換の完了状態をそれぞれ示している。また、図8図11において、(B)図は(A)図に示す矢印Aの方向から見た一部破砕図である。
【0022】
まず、図1図7(A)及び図8の状態では、副弁2の副弁凸部211が主弁凸部121の均圧孔11aを閉じている。そして、駆動部5が作動(図1の上から見て反時計回りに回転)すると、ウォーム歯車52とウォームホイール51との駆動力が、ウォームホイール51のカム部51aを介して副弁2に回転力が加わり、副弁2が軸線X周りの反時計回りに回転する。なお、このとき、均圧孔11aが閉じられて主弁1は圧力差により弁座31に押しつけられた状態であるため、副弁2が回転しても主弁1は弁座31との摩擦力により回転できず、副弁2だけが回転する。副弁2が回転すると、副弁凸部211が主弁凸部121上をスライドして、主弁凸部121の均圧孔11aが均圧流路21aにより開かれる。これにより、主弁1の上部の流体の圧力が低圧流路11A内(低圧側)へ逃げる。これにより、主弁1の上部側が低圧となるため、高圧空間11Bと弁室4Aの高圧との差圧により、主弁1には上向きの力が発生し、図7(B)、図2及び図9に示すように、主弁1が弁座31から浮上し、副弁凸部211と主弁凸部121とが互い違いに噛み合う。
【0023】
そして、更に反時計回りに回転させることで、図7(C)のように副弁2の他方の副弁凸部211が軸線X回りの周方向の左右両端部であるテーパ面(斜面)の一方(反時計回転のため、右端部のテーパ面)が主弁凸部121の周方向の左右両端部であるテーパ面(斜面)の一方(反時計回転のため、左端部のテーパ面)に当接し、主弁1が副弁2と共に回転し、図7(D)及び図10のように、主弁1のストップピン当接部113がストップピン31aに当接する。この状態で副弁2を更に反時計回転で回転させると、主弁1はストップピン31aと当接していることで、これ以上反時計回り方向に回転できないため、図7(E)のように、副弁凸部211が、主弁凸部121と当接している互いのテーパ面の傾斜を使って主弁凸部121に乗り上がり、更に回転させることにより、図7(F)及び図11のように、副弁2の主弁当接部212は主弁1の副弁ストッパ122に周方向に当接し副弁2が回転停止するとともに、他方の副弁凸部211が主弁凸部121の均圧孔11aを閉じる。これにより、ピストンリング12a(及びピストン部12)とガイド孔41とのクリアランスを介してピストン部12の上部へ流れ込んだ高圧の流体が、均圧孔11aから低圧流路11Aに逃げることができないため、主弁1の上側が高圧となり、図7(F)及び図11のように、主弁1の上部と低圧流路11A内(低圧側)との圧力差により、主弁1が弁座31に着座する。
【0024】
前述したように、副弁2の回転により主弁凸部121の均圧孔11aを開き、主弁1を所定位置まで回転させた後、均圧孔11aを閉じるとき副弁2を反回転させることなく同方向に回転させている。したがって、主弁1を所定位置に保持したまま均圧孔11aを確実に閉じることができ、主弁1の安定した切り換え動作が得られる。この効果は、主弁凸部121と副弁凸部211の軸線X回りの円周回り方向の左右両方の端部がテーパ面となっているからこそ、主弁1がストッパ当接後に、副弁凸部211が、弁凸部121と当接している互いのテーパ面の傾斜を使って主弁凸部121に乗り上がり、回転し続け、均圧孔11aを閉じることができるため、発揮できるものである。なお、テーパ面の角度については、使用条件の仕様(高差圧条件、または、低差圧条件や流体条件等)や各部構造等によって、適宜の設計変更するものであり、この条件等による設計変更の角度範囲は含まれる。テーパ角度とは、主弁凸部121及び、副弁凸部211の円周回りの断面形状の台形状部分の片方のテーパ面と台形の底面との角度のことであり、通常、30°から75°が好ましい範囲である。さらに好ましくは、45°から60°の範囲が良い。
【0025】
ここで、主弁凸部121は少なくとも1つあれば良い。また、副弁凸部211は少なくとも2つあれば良い。しかし、以上の実施形態では、主弁凸部121と副弁凸部211は、それぞれ軸線X回りの回転対称な位置に同数ずつ(実施形態では4個ずつ)形成されているので、副弁凸部211が主弁凸部121と軸線X方向で対向接触した状態(均圧孔11aが閉の状態)で副弁2が軸線Xに対して安定した位置を維持でき、流体の漏れ等もなく安定した動作が得られる。
【0026】
また、図1のように、均圧孔11aは貫通孔11bの上部で導通しており、この均圧孔11aと貫通孔11bは両方合わせて主弁1の「均圧孔」として機能するものである。主弁凸部121の均圧孔11aの副弁収容室12A側開口部を軸線上方向から見た中心点の軸線Xとの直交位置は、低圧流路11Aから軸線X方向(上方向)に開いた「均圧孔」としての貫通孔11bの低圧流路11A側開口部を軸線下方向から見た中心点の軸線Xとの直交位置に対して軸線Xに近い位置(軸線X側にシフトした位置)に形成されている。すなわち、主弁凸部121と副弁凸部211も貫通孔11bの低圧流路11A側開口部を軸線下方向から見た中心点の軸線Xとの直交方向に対して軸線Xに近い位置(軸線X側にシフトした位置)に形成されている。したがって、貫通孔11bの低圧流路11A側開口部を軸線下方向から見た中心点の位置(軸線Xからの位置)に軸線X方向(上方向)に開いた均圧孔を開けた場合よりも、副弁凸部211が主弁凸部121に乗り上げる際の回転トルクが小さくなり、駆動部5の動力を小さくできる。また、図1等の実施形態では、貫通孔11bは軸線方向(上方向)に開いた孔としたが、軸線方向に開く穴に限定するものではなく、軸線方向に対し、傾いた斜め孔としても良い。また、上記実施形態では、軸線X方向(上方向)に開いた均圧孔11aと、軸線X方向(上方向)に開いた貫通孔11bの2つの孔の構造を図で説明したが、両方の孔共に軸線方向に対し、傾いた斜め孔としても良い。また、上記実施形態では、均圧孔11a、及び、貫通孔11bと連通した2つの孔を両方合わせて主弁1の均圧孔として機能することを図で説明したが、2つ孔に限定するものではなく、例えば、軸線方向に対し、傾いた斜め孔として1つの均圧孔だけとしても良い。また、本実施形態において、副弁2における2つの副弁凸部211の間に、主弁凸部121の均圧孔11aに連通可能な均圧流路21aが形成されていることによる効果は以下の通りである。均圧流路21aが形成されていない場合でも、均圧孔11aが開いた時に、主弁と副弁の狭い隙間を流れ、低圧流路11Aと副弁収容室12Aとを均圧することは可能ではあるが、均圧流路21aが形成されていることで、より確実に、早く、低圧流路11Aと副弁収容室12Aとを均圧をすることができる。
【0027】
図12は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図であり、空気調和機の冷凍サイクルシステムの例である。空気調和機は、圧縮機50、室外熱交換器60,膨張弁70、室内熱交換器80、実施形態のロータリー式切換弁100を有しており、これらの各要素は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムを構成している。
【0028】
冷凍サイクルシステムの流路は、実施形態のロータリー式切換弁100により冷房運転及び暖房運転の2通りの流路に切換えられ、冷房運転時には主弁1を上記説明のように反時計回りに回転させることで、図12(A)の状態となり、暖房運転時には主弁1を上記説明とは逆の時計回りに回転させることで、図12(B)の状態となる。なお、この図12に示すロータリー式切換弁100は、弁座部3の裏側から見た状態として、要部の位置関係のみを示し、主弁1の一部の破線表示と実線は弁座と当接した部分を図示してある。また、前記Sポート31S、Dポート31D、E切換ポート31E、C切換ポート31Cは符号を省略し、それぞれ「S」、「D」、「E」、「C」の記号で示してある。
【0029】
図12(A)の冷房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁の低圧流路11AによりSポート「S」がE切換ポート「E」に接続され、高圧空間11BによりDポート「D」がC切換ポート「C」に接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機50で圧縮された流体としての冷媒がロータリー式切換弁100のDポート「D」に流入してC切換ポート「C」から室外熱交換器60に流入され、室外熱交換器60から流出する冷媒が、膨張弁70に流入される。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室内熱交換器80に供給される。この室内熱交換器80から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でE切換ポート「E」からSポート「S」に流れ、Sポート「S」から圧縮機50へ循環される。
【0030】
図12(B)の暖房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁の低圧流路11AによりSポート「S」がC切換ポート「C」に接続され、高圧空間11BによりDポート「D」がE切換ポート「E」に接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機50で圧縮された冷媒がロータリー式切換弁100のDポート「D」に流入してE切換ポート「E」から室内熱交換器80に流入され、室内熱交換器80から流出する冷媒が、膨張弁70に流入される。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室外熱交換器60に供給される。この室外熱交換器60から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でC切換ポート「C」からSポート「S」に流れ、Sポート「S」から圧縮機50へ循環される。
【0031】
なお、以上の実施形態の説明では、冷凍サイクル運転中等の差圧の付いた条件での説明であったため、図2図7(B)、図7(C)、図7(D)、図7(E)、図9、及び図10は、均圧孔11aが開いた状態では、主弁が弁座から浮くため、浮いた図とし、流路切換の説明も主弁が浮いた前提で説明してきたが、冷凍サイクル運転停止中等の差圧の付かない条件の時でも、主弁が弁座から浮かない状態ではあるが、主弁凸部と副弁凸部は噛み合って当接し、流路の切替えは可能である。従って、上記の実施形態の説明の様に主弁が浮くことは前提ではなく、浮いても、浮かなくても流路の切り替えが本構成で実現することができる。
【0032】
また、以上の実施形態の説明では、主に冷房運転への流路切換えまでの説明を図7の簡易表示図等を使い、反時計方向に回転にて、主弁1がストッパピン31aに当接で回転停止し、更なる回転により、副弁2が副弁ストッパ122に当接で回転停止し、主弁1が弁座3に着座し切換完了するところまで説明してきた。切換え機能上は、ここまでの説明で問題ないが、この上記の切換え完了状態(図11、及び、図7(F))のまま終了した場合、駆動部5からの回転負荷(トルク)が反時計回転方向に加わったまま終了することとなり、例えば、ウォームホイール51と螺合されたウォーム歯車52との噛み合い部分に反回転方向にトルクが加わったまま(残留トルクが残ったまま)となってしまい、長期間この状態のまま放置して使用すると、樹脂の歯車であった場合に噛み合っている歯車部がクリープを起こし、歯車が変形して、回転伝達できなくなったり、また、主弁1と副弁2も樹脂であった場合、副弁の主弁当接部212面や、ここに当接している主弁1の副弁ストッパ122の面がクリープを起こし、変形することで、均圧孔11aが開き気味になってしまったりすること等で、主弁1が弁漏れする虞があった。これに対し、上記の流路切換え完了状態(図11、及び、図7(F))の後に副弁を微少に(歯車の噛み合い隙間のバックラッシュ量以内の微少回転量)モータの駆動軸を逆回転(上記説明の反時計回りで流路切換えに対する逆回転すなわち時計回りの回転)させて切換え動作を完了させることで、歯車部の噛み合い部や副弁2と主弁1の回転当接面部に残留トルクが残ったままとならないため、歯車部のクリープや主弁1の弁漏れが抑制できる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0034】
例えば、前述した実施形態では、主弁凸部121と副弁凸部211とが、それぞれ軸線X回りの回転対称な位置に4個ずつ形成されている場合について述べたが、本発明はこれに限ることはない。
【0035】
ここで、図13図16を参照しながら、本発明の他の実施形態におけるロータリー式切換弁について説明する。図13は本発明の他の実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の斜視図、図14は同ロータリー式切換弁の副弁の斜視図である。また、図16(A)は同ロータリー式切換弁の主弁凸部の説明図、図16(B)は同ロータリー式切換弁の副弁凸部の説明図である。なお、図15(A)は図1図2図5図6図8図11の実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁凸部の説明図、また、図15(B)は、図1図2図5図6図8図11の実施形態におけるロータリー式切換弁の副弁凸部の説明図である。
【0036】
具体的に、図5(A)、図6(B)との対応部分に、それぞれ同一符号を付した図13図14に示すように、主弁凸部121及び副弁凸部211は、それぞれ軸線X回りの回転対称な位置に3個ずつ形成されることが好ましい。
【0037】
この場合、図13に示すように、主弁1の副弁収容室12Aの底部には、軸線X周りの周上で副弁2側に凸となる主弁凸部121が3個形成されている。この主弁凸部121は、円周回りの断面形状が台形状であり、円周回り方向の左右両方の端部がテーパ面となっている。そして、この主弁凸部121のうちの1つには、副弁収容室12Aに開口する均圧孔11aが形成されており、他の2つには、均圧孔が形成されていない。そして、これら3つの主弁凸部が、円周回りに等間隔(等角度)で形成されている。また、副弁収容室12Aの内周面の2カ所には、軸線X側に突出する副弁ストッパ122,122が形成されている。
【0038】
また、図14に示すように、副弁2におけるフランジ部21の主弁1側の面には、主弁凸部121と同一円周上で主弁1側に凸となる3個の副弁凸部211が形成されていることが好ましい。これら3つの副弁凸部211は、円周回りの断面形状が台形状であり、円周回り方向の左右両方向の端部がテーパ面となっている。そして、この3つの副弁凸部211は、主弁凸部121及び主弁1の均圧孔11aに連通可能な均圧流路21aを挟みうるように円周回りに等間隔(等角度)で形成されている。また、副弁凸部211の軸線X方向の端部は、主弁1の主弁凸部121の均圧孔11aを封止する副弁シール部となっている。さらに、フランジ部21の軸線X回りの端部は、主弁当接部212,212となっており、これら主弁当接部212,212は主弁1の副弁ストッパ122,122に択一的に当接する。
【0039】
このように、主弁凸部121及び副弁凸部211を、それぞれ軸線X回りの回転対称な位置に3つずつ設けた場合(図16(A)、図16(B))、副弁凸部211が主弁凸部121と軸線X方向で対向接触した状態(すなわち、均圧孔11aが閉の状態)で、副弁2が軸線Xに対してより安定した位置を維持できる。また、主弁凸部121及び副弁凸部211を4つずつ設けた場合(図15(A)、図15(B))と比較して、均圧孔「閉」状態時における主弁凸部121の上面121aと、副弁凸部211の上面211aと、のシール幅H(主弁凸部121の上面121aにおける均圧孔11aの開口端と、主弁凸部121の上面121aから前記テーパ面(斜面)への始まり線との最小長さ)を大きく確保することができる。よって、弁漏れ性を更に向上させることができ、より安定した動作が得られる。
【符号の説明】
【0040】
1 主弁
11A 低圧流路
11B 高圧空間
11a 均圧孔
11b 貫通孔
113 ストップピン当接部
12 ピストン部
121 主弁凸部
2 副弁
21 フランジ部
211 副弁凸部
3 弁座部材
31 弁座
31D Dポート
31S Sポート
31E E切換ポート
31C C切換ポート
31a ストップピン
4 ケース部材
4A 弁室
5 駆動部
51 ウォームホイール
51a カム部
52 ウォーム歯車
53 コイルバネ
6 中心軸
X 軸線
50 圧縮機
60 室外熱交換器
70 膨張弁
80 室内熱交換器
100 ロータリー式切換弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16