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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】受光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20240722BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01L31/10 B
H01L27/144 K
H01L27/146 F
H01L27/146 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021507126
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007047
(87)【国際公開番号】W WO2020189179
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019052687
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萬田 周治
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-274451(JP,A)
【文献】特開平09-232617(JP,A)
【文献】特開昭57-159072(JP,A)
【文献】特開平02-159775(JP,A)
【文献】特開平01-144687(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1393083(KR,B1)
【文献】特開2012-069941(JP,A)
【文献】特開2007-080920(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
H01L 27/146-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体材料を含む半導体層を形成し、
前記半導体層の一の面上に開口を有するマスク層を形成し、
前記開口内にサイドウォールを形成し、
前記開口を介して不純物を拡散して前記半導体層の前記一の面に第1の不純物拡散領域を形成し、
エッチングにより前記第1の不純物拡散領域内に溝を形成し、
アニール処理にて前記第1の不純物拡散領域よりも不純物濃度の低い第2の不純物拡散領域を前記第1の不純物拡散領域の周囲に形成し
前記アニール処理後に前記溝を介して前記第1の不純物拡散領域に再度不純物を拡散して前記第1の不純物拡散領域を、変曲点を持つ拡散形状とする
受光素子の製造方法。
【請求項2】
前記溝内に金属材料を埋設し、前記受光素子と電気的に接続された第1電極を形成する、請求項1に記載の受光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば赤外線センサ等に用いられる受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、アバランシェフォトダイオード(APD)やPNフォトダイオード等に代表される、亜鉛(Zn)拡散電極からキャリアの読出しを行う半導体デバイスでは、亜鉛濃度は、深さ方向および横方向に一様に分布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-206499号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、上記のような半導体デバイスでは、暗電流の低減が求められている。
【0005】
暗電流を低減することが可能な受光素子の製造方法を提供することが望ましい。
【0008】
本開示の一実施形態の受光素子の製造方法は、化合物半導体材料を含む半導体層を形成し、半導体層の一の面上に開口を有するマスク層を形成し、開口を介して不純物を拡散して半導体層の一の面に第1の不純物拡散領域を形成し、アニール処理にて第1の不純物拡散領域よりも不純物濃度の低い第2の不純物拡散領域を第1の不純物拡散領域の周囲に形成するものである。
【0009】
本開示の一実施形態の受光素子の製造方法では、化合物半導体材料を含む半導体層の一の面に、不純物濃度が段階的に変化する不純物拡散領域が設けられることにより、第1の不純物拡散領域の横方向の電界を緩和する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る受光素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図2図1に示した受光素子の概略構成を表す平面模式図である。
図3A図1に示した受光素子の製造方法の一工程を説明するための断面模式図である。
図3B図3Aに続く工程を表す断面模式図である。
図3C図3Bに続く工程を表す断面模式図である。
図3D図3Cに続く工程を表す断面模式図である。
図3E図3Dに続く工程を表す断面模式図である。
図3F図3Eに続く工程を表す断面模式図である。
図3G図3Fに続く工程を表す断面模式図である。
図3H図3Gに続く工程を表す断面模式図である。
図3I図3Hに続く工程を表す断面模式図である。
図3J図3Iに続く工程を表す断面模式図である。
図3K図3Jに続く工程を表す断面模式図である。
図3L図3Kに続く工程を表す断面模式図である。
図3M図3Lに続く工程を表す断面模式図である。
図3N図3Mに続く工程を表す断面模式図である。
図3O図3Nに続く工程を表す断面模式図である。
図3P図3Oに続く工程を表す断面模式図である。
図3Q図3Pに続く工程を表す断面模式図である。
図3R図3Qに続く工程を表す断面模式図である。
図3S図3Rに続く工程を表す断面模式図である。
図4】本開示の第2の実施の形態に係る受光素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図5図4に示した受光素子の概略構成を表す平面模式図である。
図6】一般的な受光素子の拡散領域およびその周囲における電界強度の変化を説明する図である。
図7図4に示した受光素子の拡散領域およびその周囲における電界強度の変化を説明する図である。
図8A図4に示した受光素子の製造方法の一工程を説明するための断面模式図である。
図8B図8Aに続く工程を表す断面模式図である。
図8C図8Bに続く工程を表す断面模式図である。
図8D図8Cに続く工程を表す断面模式図である。
図8E図8Dに続く工程を表す断面模式図である。
図8F図8Eに続く工程を表す断面模式図である。
図8G図8Fに続く工程を表す断面模式図である。
図8H図8Gに続く工程を表す断面模式図である。
図8I図8Hに続く工程を表す断面模式図である。
図8J図8Iに続く工程を表す断面模式図である。
図8K図8Jに続く工程を表す断面模式図である。
図9】本開示の受光素子を用いた電子機器(カメラ)の一例を表す機能ブロック図である。
図10】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図11】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図12】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図13】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1の実施の形態(段階的に変化する亜鉛拡散領域を有する受光素子の例)
1-1.受光素子の構成
1-2.受光素子の製造方法
1-3.受光素子の動作
1-4.作用・効果
2.第2の実施の形態(撮像装置を構成する受光素子(PNフォトダイオード)に適用した例)
2-1.受光素子の構成
2-2.受光素子の製造方法
2-3.受光素子の動作
2-4.作用・効果
3.適用例
4.応用例
【0012】
<1.第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る受光素子(受光素子1)の断面構成を模式的に表したものである。図2は、図1に示した受光素子1の平面構成を模式的に表したものである。なお、図1は、図2に示したI-I’線における断面構成を表している。この受光素子1は、例えばIII-V族半導体等の化合物半導体材料を用いた、いわゆるアバランシェフォトダイオード(APD)であり、赤外線センサ等に適用されるものである。この受光素子1には、例えば2次元配置された複数の受光単位領域P(画素P)が設けられている。
【0013】
(1-1.受光素子の構成)
受光素子1は、例えば、可視領域(例えば380nm以上780nm未満)~短赤外領域(例えば780nm以上2400nm未満)の波長の光に対して、光電変換機能を有するものであり、例えば、中央部の素子領域R1と、素子領域R1の外側に設けられ、素子領域R1を囲む周辺領域R2とを有している(図2)。受光素子1は、素子基板10と、読出回路基板20とが積層された積層構造を有する。素子基板10は光入射面(光入射面S1)と、光入射面S1と対向すると共に、読出回路基板20と接合される接合面(接合面S2)とを有する。素子基板10は、読出回路基板20に近い位置から配線層10W、第1電極11、ノンドープ層12、キャリア転送層13A、光電変換層14、キャリア転送層13Bおよび第2電極15をこの順に有している。ノンドープ層12、キャリア転送層13A,13Bおよび光電変換層14は、例えば、複数の画素Pに対して共通の半導体層10Sを構成しており、ノンドープ層12の面12S2には、画素P毎に、不純物が拡散した拡散領域12Xが設けられている。本実施の形態の受光素子1では、拡散領域12Xは、第1拡散領域12Aと、第1拡散領域12Aよりも不純物濃度の低い第2拡散領域12Bとを有し、第2拡散領域12Bは、第1拡散領域12Aの周囲に設けられた構成となっている。この第1拡散領域12Aが本開示の「第1の不純物拡散領域」の一具体例に相当し、第2拡散領域12Bが本開示の「第2の不純物拡散領域」の一具体例に相当する。
【0014】
受光素子1では、素子基板10の光入射面S1から、パッシベーション膜16、第2電極15およびキャリア転送層13Bを介して光電変換層14に光が入射するようになっている。光電変換層14で光電変換された信号電荷は、第1電極11および配線層10Wを介して移動し、読出回路基板20で読み出される。以下、各部の構成について説明する。
【0015】
第1電極11は、光電変換層14で発生した信号電荷(正孔または電子、以下便宜上、信号電荷が正孔であるとして説明する。)を読み出すための電圧が供給される電極(アノード)であり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。第1電極11は、絶縁膜17の開口よりも大きく、第1電極11の一部は埋込層18に設けられている。また、第1電極11の一部は、ノンドープ層12側に突出している。即ち、第1電極11の上面(半導体層10S側の面)は、拡散領域12Xに接すると共に、一部がノンドープ層12内に形成され、第1電極11の下面および側面は埋込層18に接している。隣り合う第1電極11は、絶縁膜17および埋込層18により電気的に分離されている。
【0016】
第1電極11は、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),パラジウム(Pd),亜鉛(Zn),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金により構成されている。第1電極11は、このような構成材料の単膜であってもよく、あるいは、2種以上を組み合わせた積層膜であってもよい。例えば、第1電極11は、チタンおよびタングステンの積層膜(Ti/W)により構成されている。第1電極11の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0017】
半導体層10Sは、多重量子井戸構造を有し、例えば、第1電極11側から、ノンドープ層12、キャリア転送層13A、光電変換層14およびキャリア転送層13Bを含んでいる。ノンドープ層12、キャリア転送層13A,13Bおよび光電変換層14は、互いに同じ平面形状を有し、各々の端面は、平面視で同じ位置に配置されている。
【0018】
ノンドープ層12は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられ、絶縁膜17とキャリア転送層13Aとの間に配置されている。ノンドープ層12には、上記のように、複数の拡散領域12Xが互いに離間して設けられている。具体的には、拡散領域12Xは、画素P毎に配置され、それぞれの拡散領域12Xには第1電極11が接続されている。拡散領域12Xは、例えば、p型不純物を含んでいる。p型不純物としては、例えば亜鉛(Zn)やマグネシウム(Mg)等が挙げられる。ノンドープ層12には、拡散領域12Xによって高電界領域が形成されており、光電変換層14で発生した信号電荷がキャリア転送層13Aを介して転送され、この高電界領域でのアバランシェ効果により信号強度が増加する。
【0019】
本実施の形態では、拡散領域12Xは、不純物濃度が段階的に変化する構成となっている。具体的には、拡散領域12Xは、例えば、第1拡散領域12Aと、第1拡散領域12Aよりも不純物濃度が低い第2拡散領域12Bとからなり、第2拡散領域12Bは、第1拡散領域12Aの周囲に設けられている。第1拡散領域12Aは、例えば2E18cm-3以上8E18cm-3以下の不純物濃度を有し、第2拡散領域12Bは、例えば1E17cm-3以上2E18cm-3以下の不純物濃度を有する。
【0020】
また、第1拡散領域12Aは、変曲点Xを有する拡散形状となっており、例えば、半導体層10Sを構成する各層12,13,14の積層方向(例えば、Z軸方向)に凸部Cを有することが好ましい。この凸部Cは、第2拡散領域12Bを貫通している。即ち、拡散領域12Xは、横方向(XY平面方向)に緩やかな不純物の濃度勾配を、縦方向(Z軸方向)には急峻な不純物の濃度勾配を形成している。これにより、凸部Cに電界が集中すると共に、拡散領域12Xの横方向の電界が緩和され、ノイズの原因となる暗電流の発生が抑制される。
【0021】
更に、拡散領域12Xは、ノンドープ層12内に形成されていることが好ましい。換言すると、第1拡散領域12Aの凸部Cの先端は、ノンドープ層12内にあることが望ましい。これにより、凸部Cとノンドープ層12との隙間に電界を集中させることが可能となり、アバランシェ効果が向上し、感度が向上する。
【0022】
拡散領域12Xには、第1拡散領域12A内に溝tが設けられている。この溝tは、詳細は後述するが、拡散領域12Xを形成する際に設けられるものであり、第1電極11が埋設されている。
【0023】
キャリア転送層13Aは、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。このキャリア転送層13Aは、ノンドープ層12と光電変換層14との間に設けられ、これらに接している。キャリア転送層13Aは、光電変換層14で発生した電荷(例えば、正孔)をノンドープ層12内の高電界領域に転送するためのものであり、例えば、n型の不純物を含む化合物半導体により構成されている。キャリア転送層13Aには、例えば、n型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0024】
光電変換層14は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。この光電変換層14は、キャリア転送層13Aとキャリア転送層13Bとの間に設けられ、これらに接している。光電変換層14は、所定の波長の光を吸収して、信号電荷を発生させるものであり、例えば、i型のIII-V族半導体等の化合物半導体材料により構成されている。光電変換層14を構成する化合物半導体材料としては、例えば、i型のInGaAs(インジウムガリウム砒素)等が挙げられる。光電変換層14では、例えば、可視領域から短赤外領域の波長の光の光電変換がなされるようになっている。
【0025】
キャリア転送層13Bは、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。このキャリア転送層13Bは、光電変換層14と第2電極15との間に設けられ、これらに接している。キャリア転送層13Bは、光電変換層14で発生した電荷(例えば、電子)を第2電極15に転送するためのものであり、例えば、n型の不純物を含む化合物半導体により構成されている。キャリア転送層13Bには、例えば、n型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0026】
第2電極15は、例えば各画素Pに共通の電極として、キャリア転送層13B上(光入射側)に、キャリア転送層13Bに接するように設けられている。第2電極15は、光電変換層14で発生した電荷のうち、信号電荷として用いられない電荷を排出するためのものである(カソード)。例えば、信号電荷として正孔が第1電極11から読み出される場合には、この第2電極15を通じて例えば電子を排出することができる。第2電極15は、例えば赤外線等の入射光を透過可能な導電膜により構成されている。第2電極15には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)またはITiO(In23-TiO2)等を用いることができる。第2電極15は、例えば、隣り合う画素Pを仕切るように、格子状に設けられていてもよい。その場合には、光透過性の低い導電材料を用いることが可能である。
【0027】
パッシベーション膜16は、第2電極15を光入射面S1側から覆っている。パッシベーション膜16は、反射防止機能を有していてもよい。パッシベーション膜16には、例えば窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al23),酸化シリコン(SiO2)および酸化タンタル(Ta23)等を用いることができる。
【0028】
素子基板10は、素子領域R1から周辺領域R2に亘って設けられた導電膜15Bを有している。この導電膜15Bは、OPB(Optical Black)領域R1Bを構成しており、素子領域R1の中央部に対向する領域に開口を有している。即ち、OPB領域R1Bは、受光領域を囲むように設けられている。OPB領域R1Bは、黒レベルの画素信号を得るために用いられる。パッシベーション膜16は、OPB領域R1Bに開口16Hを有している。開口16Hは、例えば、受光領域を囲む額縁状に設けられている(図2)。開口16Hは、例えば平面視で四角形状または円状の孔であってもよい。このパッシベーション膜16の開口16Hにより、第2電極15に導電膜15Bが電気的に接続されている。素子基板10は、さらに、絶縁膜17および埋込層18を有している。絶縁膜17は、半導体層10Sの配線層10Wとの対向面および端面(側面)を覆うように設けられている。埋込層18は、素子領域R1および周辺領域R2の全面に亘って設けられており、素子領域R1および周辺領域R2において同一平面の接合面S2を形成している。
【0029】
導電膜15Bは、OPB領域R1Bから、後述する周辺領域R2の開口H1に亘って設けられている。この導電膜15Bは、上記のように、OPB領域R1Bに設けられたパッシベーション膜16の開口16Hで第2電極15に接すると共に、開口H1を介して読出回路基板20の配線(後述の配線22CB)に接している。これにより、読出回路基板20から導電膜15Bを介して第2電極15に電圧が供給されるようになっている。導電膜15Bは、このような第2電極15への電圧供給経路として機能すると共に、遮光膜としての機能を有し、OPB領域R1Bを形成する。導電膜15Bは、例えば、タングステン(W),アルミニウム(Al),チタン(Ti),モリブデン(Mo),タンタル(Ta)または銅(Cu)を含む金属材料により構成されている。導電膜15B上にパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0030】
キャリア転送層13Bの端部と第2電極15との間には接着層Bが設けられていてもよい。この接着層Bは、後述するように、受光素子1を形成する際に用いられるものであり、半導体層10Sを仮基板(後述の図3Cの仮基板33)に接合する役割を担っている。接着層Bは、例えば酸化シリコン(SiO2)等により構成されている。接着層Bは、例えば、半導体層10Sの端面よりも拡幅して設けられ、半導体層10Sと共に、埋込層18に覆われている。接着層Bと埋込層18との間には、絶縁膜17が設けられている。なお、接着層Bは、周辺領域R2の広い領域に亘って設けられていてもよく、例えば、半導体層10S(素子領域R1)の縁近傍から、開口H1と開口H2との間まで延在していてもよい。あるいは、接着層Bは、半導体層10S(素子領域R1)の縁近傍から、チップ端(チップ端E)まで延在していてもよい。
【0031】
絶縁膜17は、ノンドープ層12と埋込層18との間に設けられると共に、ノンドープ層12、キャリア転送層13A、光電変換層14、キャリア転送層13Bの端面および第2電極15の端面を覆い、周辺領域R2においてパッシベーション膜16に接している。絶縁膜17は、例えば、酸化シリコン(SiO2)または酸化アルミニウム(Al23)等の酸化物を含んで構成されている。複数の膜からなる積層構造により絶縁膜17を構成するようにしてもよい。絶縁膜17は、例えば酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC),窒化シリコン(SiN)およびシリコンカーバイド(SiC)等のシリコン(Si)系絶縁材料により構成するようにしてもよい。絶縁膜17の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0032】
埋込層18は、受光素子1の製造工程で、仮基板(後述の図3Bの仮基板33)と半導体層10Sとの段差を埋めるためのものである。受光素子1では、この埋込層18を形成することで、半導体層10Sと仮基板33との段差に起因した製造工程の不具合の発生が抑えられる。
【0033】
素子領域R1の埋込層18は、第1電極11を覆うように、半導体層10Sと配線層10Wとの間に設けられている。周辺領域R2の埋込層18は、配線層10Wと絶縁膜17との間、および配線層10Wとパッシベーション膜16との間に設けられ、例えば、半導体層10Sの厚み以上の厚みを有している。ここでは、この埋込層18が半導体層10Sを囲んで設けられているので、半導体層10Sの周囲の領域(周辺領域R2)が形成される。これにより、この周辺領域R2に読出回路基板20との接合面S2を設けることができるようになっている。
【0034】
接合面S2側の埋込層18の面は平坦化されており、周辺領域R2では、この平坦化された埋込層18の面に配線層10Wが設けられている。埋込層18には、例えば、酸化シリコン(SiOX),窒化シリコン(SiN),酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC)およびシリコンカーバイド(SiC)等の無機絶縁材料を用いることができる。
【0035】
周辺領域R2の埋込層18には、埋込層18を貫通する開口H1,H2が設けられている。この開口H1,H2は、埋込層18と共に、配線層10Wを貫通し、読出回路基板20に達している。開口H1,H2は、例えば、四角形状の平面形状を有し、素子領域R1を囲むように、各々複数の開口H1,H2が設けられている(図2)。開口H1は、開口H2よりも素子領域R1に近い位置に設けられており、開口H1の側壁および底面は、後述する導電膜15Bに覆われている。開口H1は、第2電極15(導電膜15B)と読出回路基板20の配線(後述の配線22CB)とを接続するためのものであり、パッシベーション膜16、埋込層18および配線層10Wを貫通して設けられている。
【0036】
開口H2は、例えば、開口H1よりもチップ端Eに近い位置に設けられている。この開口H2は、パッシベーション膜16、埋込層18および配線層10Wを貫通し、読出回路基板20のパッド電極(後述のパッド電極22P)に達している。この開口H2を介して、外部と受光素子1との電気的な接続が行われるようになっている。開口H1,H2は、読出回路基板20に達していなくてもよい。例えば、開口H1,H2が、配線層10Wの配線に達し、この配線が読出回路基板20の配線22CB、パッド電極22Pに接続されていてもよい。開口H1,H2は、後述する接着層Bを貫通していてもよい。
【0037】
配線層10Wは、素子領域R1および周辺領域R2に亘って設けられ、読出回路基板20との接合面S2を有している。受光素子1では、この素子基板10の接合面S2が素子領域R1および周辺領域R2に設けられ、例えば素子領域R1の接合面S2と周辺領域R2の接合面S2とは、同一平面を構成している。
【0038】
配線層10Wは、例えば層間絶縁膜19A,19B中に、コンタクト電極19Eおよびダミー電極19EDを有している。例えば、読出回路基板20側に層間絶縁膜19Bが、ノンドープ層12側に層間絶縁膜19Aが配置され、これら層間絶縁膜19A,19Bが積層して設けられている。層間絶縁膜19A,19Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al23),酸化シリコン(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等が挙げられる。層間絶縁膜19A,19Bを同一の無機絶縁材料により構成するようにしてもよい。
【0039】
コンタクト電極19Eは、例えば、素子領域R1に設けられている。コンタクト電極19Eは、第1電極11と読出回路基板20とを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。隣り合うコンタクト電極19Eは、埋込層18および層間絶縁膜19A,19Bにより電気的に分離されている。コンタクト電極19Eは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。ダミー電極19EDは、例えば、周辺領域R2に設けられている。このダミー電極19EDは、後述の配線層20Wのダミー電極22EDに接続されている。このダミー電極19EDおよびダミー電極22EDを設けることにより、周辺領域R2の強度を向上させることが可能となる。ダミー電極19EDは、例えば、コンタクト電極19Eと同一工程で形成されている。ダミー電極19EDは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。
【0040】
光電変換層14で発生した正孔および電子は、それぞれ、第1電極11および第2電極15から読み出される。この読出し動作を高速に行うためには、第1電極11と第2電極15との間の距離を、光電変換するに足る距離であって且つ離間し過ぎない距離にすることが好ましい。即ち、素子基板10の厚みを小さくすることが好ましい。例えば、第1電極11と第2電極15との間の距離または素子基板10の厚みは、10μm以下、さらには、7μm以下、さらには5μm以下である。
【0041】
読出回路基板20は、いわゆるROIC(Readout integrated circuit)であり、素子基板10の接合面S2に接する配線層20Wおよび多層配線層22Cと、この配線層20Wおよび多層配線層22Cを間にして素子基板10に対向する半導体基板21とを有している。
【0042】
読出回路基板20の半導体基板21は、配線層20Wおよび多層配線層22Cを間にして、素子基板10に対向している。この半導体基板21は、例えば、シリコン(Si)により構成されている。半導体基板21の表面(配線層20W側の面)近傍には、複数のトランジスタが設けられている。例えば、この複数のトランジスタを用いて、画素P毎に、読出回路(Read Out Circuit)が構成されている。配線層20Wは、例えば、素子基板10側から、層間絶縁膜22Aおよび層間絶縁膜22Bをこの順に有しており、これら層間絶縁膜22A,22Bは積層して設けられている。例えば、層間絶縁膜22A中に、コンタクト電極22Eおよびダミー電極22EDが設けられている。多層配線層22Cは、配線層20Wを間にして素子基板10に対向して設けられている。例えば、この多層配線層22C中に、パッド電極22Pおよび複数の配線22CBが設けられている。層間絶縁膜22A,22Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al23),酸化シリコン(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等が挙げられる。
【0043】
コンタクト電極22Eは、第1電極11と配線22CBとを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に、画素P毎に設けられている。このコンタクト電極22Eは、素子基板10の接合面S2でコンタクト電極19Eに接している。隣り合うコンタクト電極22Eは、層間絶縁膜22Aにより電気的に分離されている。
【0044】
周辺領域R2に設けられたダミー電極22EDは、素子基板10の接合面S2でダミー電極19EDに接している。このダミー電極22EDは、例えば、コンタクト電極22Eと同一工程で形成されている。コンタクト電極22Eおよびダミー電極22EDは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、読出回路基板20の素子基板10との対向面に露出されている。即ち、コンタクト電極19Eとコンタクト電極22Eとの間、および、ダミー電極19EDとダミー電極22EDとの間で例えばCuCu接合がなされている。これにより、画素Pを微細化することが可能となる。
【0045】
コンタクト電極19Eに接続された配線22CBは、半導体基板21の表面近傍に設けられたトランジスタに接続されており、画素P毎に、第1電極11と読出回路とが接続されるようになっている。開口H1を介して導電膜15Bに接続された配線22CBは、例えば所定の電位に接続されている。このように、光電変換層14で発生した電荷の一方(例えば、正孔)は、第1電極11から、コンタクト電極19E,22Eを介して読出回路に読み出され、光電変換層14で発生した電荷の他方(例えば、電子)は、第2電極15から、導電膜15Bを介して、所定の電位に排出されるようになっている。
【0046】
周辺領域R2に設けられたパッド電極22Pは、外部と電気的な接続を行うためのものである。受光素子1のチップ端E近傍には、素子基板10を貫通し、パッド電極22Pに達する開口H2が設けられ、この開口H2を介して外部と電気的な接続がなされるようになっている。接続は、例えば、ワイヤーボンドまたはバンプ等の方法によりなされる。例えば、開口H2内に配置された外部端子から、第2電極15に、読出回路基板20の配線22CBおよび導電膜15Bを介して所定の電位が供給されるようになっていてもよい。光電変換層14での光電変換の結果、第1電極11から読み出された信号電圧が、コンタクト電極19E,22Eを介して、半導体基板21の読出回路に読み出され、この読出回路を経由して開口H2内に配置された外部端子に出力されるようになっていてもよい。信号電圧は、読出回路と共に、例えば、読出回路基板20に含まれる他の回路を経由して外部端子に出力されるようになっていてもよい。他の回路とは、例えば、信号処理回路および出力回路等である。
【0047】
読出回路基板20の厚みは、素子基板10の厚みよりも大きいことが好ましい。例えば、読出回路基板20の厚みは、素子基板10の厚みよりも、2倍以上、さらには、5倍以上、さらには、10倍以上大きいことが好ましい。あるいは、読出回路基板20の厚みは、例えば、100μm以上、あるいは、150μm以上、あるいは、200μm以上である。このような大きな厚みを有する読出回路基板20により、受光素子1の機械強度が確保される。なお、この読出回路基板20は、回路を形成する半導体基板21を1層のみ含むものであってもよいし、回路を形成する半導体基板21の他に、支持基板等の基板をさらに備えていてもよい。
【0048】
(1-2.受光素子の製造方法)
受光素子1は、例えば次のようにして製造することができる。図3A図3Sは、受光素子1の製造工程を工程順に表したものである。
【0049】
まず、図3Aに示したように、例えばInPからなる成長基板31に、例えば、n型のInPからなるバッファ層32B、i型のInGaAsからなるストッパ層32S、半導体層10Sおよびi型のInGaAsからなるキャップ層15Aをこの順にエピタキシャル成長させる。成長基板31の厚みは、例えば、数百μmであり、半導体層10Sの厚みは、例えば、数μmである。この後、半導体層10S上に接着層Bを成膜する。成長基板31の口径は、例えば、6インチ以下である。半導体層10Sの形成は、例えば、ノンドープ層12を構成するi型のInP、キャリア転送層13Aを構成するn型のInP、光電変換層14を構成するi型のInGaAsおよびキャリア転送層13Bを構成するn型のInPこの順にエピタキシャル成長させて行う。
【0050】
次に、図3Bに示したように、接着層Bを間にして、仮基板33に、半導体層10Sを形成した成長基板31を接合する。仮基板33は、例えば、絶縁層(絶縁層33IA)と、基板33Sを有している。絶縁層33IAは、例えば、接着層Bと基板33Sとの間に配置されている。仮基板33には、成長基板31よりも大きな口径のものを用い、基板33Sには例えば、シリコン(Si)基板を用いる。仮基板33の口径は、例えば8インチ~12インチである。小口径の成長基板31を大口径の仮基板33に接合させることにより、素子基板10を形成する際に大口径の基板用の種々の装置を用いることが可能となる。これにより、例えば、読出回路基板20と素子基板10との接合をCuCu接合にし、画素Pを微細化することができる。仮基板33への成長基板31の接合は、プラズマ活性化接合,常温接合または接着剤を使用した接合(接着剤接合)等により行うようにしてもよい。このように、例えばウェハ状の半導体層10Sを仮基板33に接合する。仮基板33の厚みは、例えば、数百μmである。
【0051】
続いて、図3Cに示したように、バッファ層32Bおよびストッパ層32Sを含む成長基板31を除去する。成長基板31の除去は、機械研削、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨),ウェットエッチングまたはドライエッチング等により行うことができる。このとき、成長基板31が一部残っていてもよい。また、半導体層10Sが一部エッチングされてもよい。
【0052】
次に、図3Dに示したように、例えば、仮基板33のマークに合わせて半導体層10Sを所定の大きさにエッチングする。これにより、複数のチップ状態の半導体層10Sが形成される。
【0053】
続いて、図3E図3Jに示したようにして、半導体層10Sに画素P毎に拡散領域12Xを形成する。なお、図3E図3Jでは1つの画素Pを拡大して図示している。
【0054】
まず、図3Eに示したように、半導体層10S上にハードマスクとして、例えば、SiO2膜35およびSiN膜36をこの順に形成する。次に、SiN膜36上に、フォトレジスト37を形成し、フォトレジスト37およびSiN膜36を貫通する開口h1を形成する。続いて、図3Fに示したように、ウェットエッチングまたはドライエッチング等によりフォトレジスト37を除去すると共に、SiO2膜35を貫通する開口h2を形成する。なお、ハードマスクは、上記SiO2膜/SiN膜の積層膜に限らない。例えば、SiO2膜またはSiN膜の単層膜でも構わない。
【0055】
次に、図3Gに示したように、p型不純物(例えば、亜鉛(Zn))の拡散を行い、拡散領域12A1を形成する。不純物の拡散は、例えば、ジエチル亜鉛(DEZ)ガスやジメチル亜鉛(DMZ)ガスを用い、200℃~600℃条件下における気相拡散によって行う。拡散深さは、キャリア転送層13Bの膜厚よりも10~100nm短い距離であることが好ましい。不純物は、ノンドープ層12の面12Sから略等方拡散され、略半球状の拡散領域12A1が形成される。続いて、図3Hに示したように、開口h2内およびSiN膜36上に、例えば窒化シリコン(SiN),酸化シリコン(SiO2),酸化アルミニウム(Al23),酸化タンタル(Ta25),SiCまたはSiCO等からなるサイドウォール38を形成したのち、開口h2内に、拡散領域12A1内まで貫通する開口h3を形成する。この開口h3が、上記溝tに相当する。開口h3を形成したのち、アニール処理する。これにより、図3Iに示したように、拡散領域12A1の周囲にp型不純物が拡散し、拡散領域12A1よりも不純物濃度の低く、拡散領域12A1と同様に、略半球状の第2拡散領域12Bが形成される。次に、開口h3を介して、再度p型不純物の気相拡散を行い、第1拡散領域12Aの凸部Cに当たる拡散領域12A2を形成する。拡散深さは、例えば、1回目のZn拡散よりも例えば5nm以上短い距離であることが好ましく、略等方拡散される。1回目の拡散距離と2回目の拡散距離の比(1回目/2回目)は、例えば1未満であり、2回目の拡散後に確定するターゲット距離は、開口h3の掘りこみ深さで調整することができる。これにより、変曲点Xを持つ拡散形状を有する第1拡散領域12Aが形成される。
【0056】
続いて、図3Kに示したように、SiO2膜35およびSiN膜36を除去したのち、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を用いて、半導体層10Sの周囲に絶縁膜17を形成する。なお、SiO2膜35およびSiN膜36は必ずしも除去しなくてもよく、これらを絶縁膜17として用いてもよい。次に、図3Lに示したように、半導体層10S上に、第1電極11を形成し、さらに、仮基板33の全面に埋込層18を形成する。例えば、第1電極11は、絶縁膜17に設けた開口に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法または蒸着法等によりチタン(Ti)/タングステン(W)の積層膜を成膜した後、この積層膜をフォトリソグラフィおよびエッチングを用いてパターニングすることにより形成する。埋込層18は、例えば、仮基板33の全面に半導体層10Sを埋め込むように絶縁材料を成膜した後、これをCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化して形成する。これにより、半導体層10Sの周囲(周辺領域R2)および半導体層10Sの上面(仮基板33から最も離れた面)を覆う埋込層18が形成される。
【0057】
埋込層18を形成した後、図3Mに示したように、埋込層18を間にして半導体層10Sに対向する配線層10Wを形成する。例えば、埋込層18上に、層間絶縁膜19Aおよび層間絶縁膜19Bをこの順に成膜した後、層間絶縁膜19A,19Bの第1電極11に対向する領域に開口を形成する。この層間絶縁膜19A,19Bの開口に、蒸着法,PVD法またはメッキ法等により銅(Cu)膜を成膜した後、例えばCMP法を用いて銅膜の表面を研磨することによりコンタクト電極19Eを形成する。例えば、このコンタクト電極19Eの形成工程と同一工程で、周辺領域R2にはダミー電極19ED(図1)を形成する。
【0058】
配線層10Wを形成した後、図3Nに示したように、配線層10Wを間にして、仮基板33に読出回路基板20を貼り合わせる。このとき、読出回路基板20には、予め配線層20Wを形成しておく。読出回路基板20の配線層20Wは、コンタクト電極22E、ダミー電極22EDを有しており、読出回路基板20を仮基板33に貼り合わせる際には、例えば、配線層20Wのコンタクト電極22E、ダミー電極22EDと配線層10Wのコンタクト電極19E、ダミー電極19EDとがCuCu接合される。より具体的には、素子領域R1では、コンタクト電極19Eとコンタクト電極22Eとが接合された接合面S2が形成され、周辺領域R2ではダミー電極19EDとダミー電極22EDとが接合された接合面S2が形成される。ここでは、素子基板10の周辺領域R2も、読出回路基板20に接合される。
【0059】
仮基板33に読出回路基板20を貼り合わせた後、図3Oに示したように、仮基板33を除去する。仮基板33は、例えば、機械研削、ウェットエッチングまたはドライエッチング等を用いることにより除去することができる。
【0060】
仮基板33を除去した後、図3Pに示したように、接着層B等も除去し、半導体層10Sの表面を露出させる。このとき、半導体層10Sの不要な層を除去するようにしてもよい。また、半導体層10Sの開口部以外の絶縁層33IAまたは絶縁膜17を一部残すようにしてもよく、あるいは、埋込層18を途中まで掘り込んでもよい。
【0061】
続いて、図3Qに示したように、仮基板33が除去されることにより露出された半導体層10Sの面(配線層10Wが設けられた面と反対の面)上に第2電極15およびパッシベーション膜16をこの順に形成する。その後、図3Rに示したように、開口H1および導電膜15Bを形成する。これにより、第2電極15と読出回路基板20とが電気的に接続される。
【0062】
最後に、図3Sに示したように、素子基板10を貫通し、読出回路基板20のパッド電極22Pに達する開口H2を形成する。これにより、図1に示した受光素子1が完成する。
【0063】
(1-3.受光素子の動作)
受光素子1では、パッシベーション膜16、第2電極15およびキャリア転送層13Bを介して、光電変換層14へ光(例えば可視領域および赤外領域の波長の光)が入射すると、この光が光電変換層14において吸収される。これにより、光電変換層14では正孔(ホール)および電子の対が発生する(光電変換される)。このとき、例えば第1電極11に所定の電圧が印加されると、第1拡散領域12Aの凸部Cとn型のInPからなるキャリア転送層13Aとの間に空乏層が広がり、高電界領域が形成される。高電界領域ではアバランシェ増倍によりキャリアが増倍される。高電界領域に生じたキャリア(電荷)のうちの一方の電荷(例えば正孔)は、信号電荷としてノンドープ層12内の拡散領域12Xに移動し、拡散領域12Xから第1電極11へ収集される。この信号電荷が、コンタクト電極19E,22Eを通じて半導体基板21に移動し、画素P毎に読み出される。
【0064】
(1-4.作用・効果)
本実施の形態の受光素子1では、半導体層10S(具体的には、ノンドープ層12)の第1電極11と接する面に、不純物濃度が段階的に変化する拡散領域12Xが設けられている。これにより、例えば、横方向の電界が緩和される。以下、これについて説明する。
【0065】
アバランシェフォトダイオード(APD)やPNフォトダイオード等の半導体デバイスでは、亜鉛(Zn)拡散電極からキャリアの読出しを行っている。上記半導体デバイスでは、亜鉛は、半導体層の深さ方向および横方向に一様に分布しており、APDでは、亜鉛拡散領域の側壁部でのAPD発生による感度の低下が課題となっている。また、PNフォトダイオードにおいては、強電界での暗電流の発生が課題となっている。
【0066】
これに対して、本実施の形態の受光素子1では、半導体層10S(具体的には、ノンドープ層12)の第1電極11との接する面に、不純物濃度が段階的に変化する拡散領域12Xを設けるようにした。この拡散領域12Xは、例えば、第1拡散領域12Aと、第1拡散領域12Aよりも不純物濃度の低い第2拡散領域12Bとを有し、第2拡散領域12Bは、第1拡散領域12Aの周囲に設けられた構成となっている。これにより、例えば、横方向の電界を緩和することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、第1拡散領域12Aは、変曲点Xを有する拡散形状となっており、半導体層10Sの積層方向(例えば、Z軸方向)に第2拡散領域12Bを貫通する凸部Cを有する。これにより、凸部Cに電界を集中させることが可能となる。
【0068】
以上により、本実施の形態の受光素子1では、感度の低下やノイズの原因となる暗電流の発生が抑制される。
【0069】
また、本実施の形態では、拡散領域12Xを、1回目のp型不純物の拡散後に溝tを形成し、再度、p型不純物を拡散するようにしたので、拡散領域12XのXY平面方向の幅が削減される。よって、画素サイズ縮小化することが可能となる。
【0070】
更に、本実施の形態では、第1電極11の一部をノンドープ層12に埋設するようにしたので、ノンドープ層12と第1電極11との接触面積が増加し、接触抵抗が低下する。よって、転送効率を向上させることが可能となる。
【0071】
以下、第2の実施の形態について説明するが、以降の説明において上記第1の実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0072】
<2.第2の実施の形態>
図4は、本開示の第2の実施の形態に係る受光素子(受光素子2)の断面構成を模式的に表したものである。図5は、図4に示した受光素子2の平面構成を模式的に表したものである。なお、図4は、図5に示したII-II’線における断面構成を表している。この受光素子2は、例えばIII-V族半導体等の化合物半導体材料を用いた赤外線センサ等に適用されるものであり、例えば、可視領域(例えば380nm以上780nm未満)~短赤外領域(例えば780nm以上2400nm未満)の波長の光に、光電変換機能を有するPNフォトダイオードである。
【0073】
(2-1.受光素子の構成)
受光素子2は、例えば、中央部の素子領域R1と、素子領域R1の外側に設けられ、素子領域R1を囲む周辺領域R2とを有している(図5)。受光素子2は、上記第1の実施の形態における受光素子1と同様に、素子基板40と、読出回路基板20とが積層された積層構造を有する。素子基板40は光入射面(光入射面S3)と、光入射面S3と対向すると共に、読出回路基板20と接合される接合面(接合面S4)とを有する。素子基板40は、読出回路基板20に近い位置から配線層10W、第1電極41、第1コンタクト層42、光電変換層43および第2コンタクト層44および第2電極45をこの順に有している。第1コンタクト層42、光電変換層43および第2コンタクト層44は、例えば、複数の画素Pに対して共通の半導体層40Sを構成しており、第1コンタクト層42の面42S2には、画素P毎に、不純物が拡散した拡散領域42Xが設けられている。本実施の形態の受光素子2では、拡散領域42Xは、第1拡散領域42Aと、第1拡散領域42Aよりも不純物濃度の低い第2拡散領域42Bとを有し、第2拡散領域42Bは、第1拡散領域42Aの周囲に設けられた構成となっている。この第1拡散領域42Aが本開示の「第1の不純物拡散領域」の一具体例に相当し、第2拡散領域42Bが本開示の「第2の不純物拡散領域」の一具体例に相当する。
【0074】
受光素子2では、素子基板40の光入射面S3から、パッシベーション膜16、第2電極45および第2コンタクト層44を介して光電変換層43に光が入射するようになっている。光電変換層43で光電変換された信号電荷は、第1電極41および配線層10Wを介して移動し、読出回路基板20で読み出される。以下、各部の構成について説明する。
【0075】
第1電極41は、第1コンタクト層42で発生した信号電荷(正孔または電子、以下便宜上、信号電荷が正孔であるとして説明する。)を読み出すための電圧が供給される電極(アノード)であり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。第1電極41は、絶縁膜17の開口よりも大きく、第1電極41の一部は埋込層18に設けられている。また、第1電極41の一部は、上記第1電極11と同様に、第1コンタクト層42側に突出している。即ち、第1電極41の上面(半導体層40S側の面)は、拡散領域42Xに接すると共に、一部が第1コンタクト層42内に形成され、第1電極41の下面および側面は埋込層18に接している。隣り合う第1電極41は、絶縁膜17および埋込層18により電気的に分離されている。
【0076】
第1電極41は、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),パラジウム(Pd),亜鉛(Zn),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金により構成されている。第1電極41は、このような構成材料の単膜であってもよく、あるいは、2種以上を組み合わせた積層膜であってもよい。例えば、第1電極41は、チタンおよびタングステンの積層膜(Ti/W)により構成されている。第1電極41の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0077】
半導体層40Sは、例えば、第1電極41側から、第1コンタクト層42、光電変換層43および第2コンタクト層44を含んでいる。第1コンタクト層42、光電変換層43および第2コンタクト層44は、互いに同じ平面形状を有し、各々の端面は、平面視で同じ位置に配置されている。
【0078】
第1コンタクト層42は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられ、絶縁膜17と光電変換層43との間に配置されている。第1コンタクト層42は、隣り合う画素Pを電気的に分離するためのものであり、第1コンタクト層42には、例えば複数の拡散領域42Xが設けられている。第1コンタクト層42に、光電変換層43を構成する化合物半導体材料のバンドギャップよりも大きなバンドギャップの化合物半導体材料を用いることにより、暗電流を抑えることも可能となる。第1コンタクト層42には、例えばn型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0079】
第1コンタクト層42に設けられた拡散領域42Xは、互いに離間して配置されている。具体的には、拡散領域42Xは、画素P毎に配置され、それぞれの拡散領域42Xに第1電極41が接続されている。拡散領域42Xは、光電変換層43で発生した信号電荷を画素P毎に読み出すためのものであり、例えば、p型不純物を含んでいる。p型不純物としては、例えば亜鉛(Zn)やマグネシウム(Mg)等が挙げられる。このように、拡散領域42Xと、拡散領域42X以外の第1コンタクト層42との間にpn接合界面が形成され、隣り合う画素Pが電気的に分離されるようになっている。
【0080】
本実施の形態では、拡散領域42Xは、不純物濃度が段階的に変化する構成となっている。具体的には、拡散領域42Xは、例えば、第1拡散領域42Aと、第1拡散領域42Aよりも不純物濃度が低い第2拡散領域42Bとからなり、第2拡散領域42Bは、第1拡散領域42Aの周囲に設けられている。第1拡散領域42Aは、例えば2E18cm-3以上8E18cm-3以下の不純物濃度を有し、第2拡散領域42Bは、例えば1E17cm-3以上2E18cm-3以下の不純物濃度を有する。
【0081】
図6は、参考例としての不純物が均質に分布した拡散領域420Aを有する受光素子における拡散領域420Xおよびその近傍の断面構成(B)および電界強度の変化(A)を表したものである。図7は、本開示の受光素子2における拡散領域42Xおよびその近傍の断面構成(B)および電界強度の変化(A)を表したものである。本実施の形態の受光素子2は、第1拡散領域42Aの周囲に第1拡散領域42Aよりも不純物濃度の低い第2拡散領域42Bを有する。このため、拡散領域42Xおよびその近傍の電界強度の変化は、参考例としての受光素子(図6)と比較して緩やかになっている。
【0082】
また、第1拡散領域42Aは、変曲点Xを有する拡散形状となっており、例えば、半導体層40Sを構成する各層42,43,44の積層方向(例えば、Z軸方向)に凸部Cを有することが好ましい。この凸部Cは、第2拡散領域42Bを貫通している。即ち、拡散領域42Xは、横方向(XY平面方向)に緩やかな不純物の濃度勾配を、縦方向(Z軸方向)には急峻な不純物の濃度勾配を形成している。暗電流の起因となる欠陥は、第1コンタクト層42の表面が支配的である。これに対して、第1拡散領域42Aを上記のような形状とすることにより、凸部Cに電界が集中すると共に、拡散領域42Xの横方向の電界が緩和され、第1コンタクト層42表面の欠陥を介した暗電流の発生確率が低減される。
【0083】
更に、拡散領域42Xの一部は、光電変換層43の厚み方向の一部に張り出して設けられていることが好ましい。換言すると、第1拡散領域42Aの凸部Cの先端は、光電変換層43内にあることが望ましい。結晶内部では、不純物(例えば、Zn)の拡散領域からバンドギャップの小さいInGaAs層に形成される空乏層からの暗電流が支配的となる。これに対して、本実施の形態では、第1拡散領域42Aに凸部Cを設け、その先端が光電変換層43内にあるようにしたので、不純物拡散領域(第1拡散領域42A)とInGaAs層(光電変換層43)とのコンタクト部分が最小限に留められるようになり、暗電流の発生確率がさらに低減される。
【0084】
拡散領域42Xには、上記第1の実施の形態における拡散領域12Xと同様に、第1拡散領域42A内に溝tが設けられている。この溝tには、第1電極41が埋設されている。
【0085】
光電変換層43は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。この光電変換層43は、第1コンタクト層42と第2コンタクト層44との間に設けられ、これらに接している。光電変換層43は、所定の波長の光を吸収して、信号電荷を発生させるものであり、例えば、i型のIII-V族半導体等の化合物半導体材料により構成されている。光電変換層43を構成する化合物半導体材料としては、例えば、InGaAs(インジウムガリウム砒素),InAsSb(インジウム砒素アンチモン),InAs(インジウム砒素),InSb(インジムアンチモン)およびHgCdTe(水銀カドミウムテルル)等が挙げられる。Ge(ゲルマニウム)により光電変換層43を構成するようにしてもよい。光電変換層43では、例えば、可視領域から短赤外領域の波長の光の光電変換がなされるようになっている。
【0086】
第2コンタクト層44は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。この第2コンタクト層44は、光電変換層43と第2電極45との間に設けられ、これらに接している。第2コンタクト層44は、第2電極45から排出される電荷が移動する領域であり、例えば、n型の不純物を含む化合物半導体により構成されている。第2コンタクト層44には、例えば、n型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0087】
第2電極45は、例えば各画素Pに共通の電極として、第2コンタクト層44上(光入射側)に、第2コンタクト層44に接するように設けられている。第2電極45は、光電変換層43で発生した電荷のうち、信号電荷として用いられない電荷を排出するためのものである(カソード)。例えば、信号電荷として正孔が第1電極41から読み出される場合には、この第2電極45を通じて例えば電子を排出することができる。第2電極45は、例えば赤外線等の入射光を透過可能な導電膜により構成されている。第2電極45には、例えば、ITOまたはITiO(In23-TiO2)等を用いることができる。第2電極45は、例えば、隣り合う画素Pを仕切るように、格子状に設けられていてもよい。その場合には、光透過性の低い導電材料を用いることが可能である。
【0088】
(2-1.受光素子の製造方法)
受光素子2は、例えば次のようにして製造することができる。図8A図8Kは、受光素子1の製造工程を工程順に表したものである。
【0089】
まず、図8Aに示したように、例えばInPからなる成長基板51に、例えば、n型のInPからなるバッファ層52B、i型のInGaAsからなるストッパ層52S、半導体層40Sおよびi型のInGaAsからなるキャップ層45Aをこの順にエピタキシャル成長させる。成長基板51の厚みは、例えば、数百μmであり、半導体層40Sの厚みは、例えば、数μmである。この後、半導体層40S上に接着層Bを成膜する。成長基板51の口径は、例えば、6インチ以下である。半導体層40Sの形成は、例えば、第1コンタクト層42を構成するn型のInP、光電変換層43を構成するn型のInGaAsおよび第2コンタクト層44を構成するn型のInPをこの順にエピタキシャル成長させて行う。
【0090】
次に、図8Bに示したように、接着層Bを間にして、仮基板53に、半導体層40Sを形成した成長基板51を接合する。仮基板53は、例えば、絶縁層(絶縁層53IA)と、基板53Sを有している。絶縁層53IAは、例えば、接着層Bと基板53Sとの間に配置されている。仮基板53には、成長基板51よりも大きな口径のものを用い、基板53Sには例えば、シリコン(Si)基板を用いる。仮基板53の口径は、例えば8インチ~12インチである。小口径の成長基板51を大口径の仮基板53に接合させることにより、素子基板40を形成する際に大口径の基板用の種々の装置を用いることが可能となる。これにより、例えば、読出回路基板20と素子基板40との接合をCuCu接合にし、画素Pを微細化することができる。仮基板53への成長基板51の接合は、プラズマ活性化接合,常温接合または接着剤を使用した接合(接着剤接合)等により行うようにしてもよい。このように、例えばウェハ状の半導体層40Sを仮基板53に接合する。仮基板53の厚みは、例えば、数百μmである。
【0091】
続いて、図8Cに示したように、バッファ層52Bおよびストッパ層52Sを含む成長基板51を除去する。成長基板51の除去は、機械研削、CMP,ウェットエッチングまたはドライエッチング等により行うことができる。このとき、成長基板51が一部残っていてもよい。また、半導体層40Sが一部エッチングされてもよい。
【0092】
次に、図8Dに示したように、例えば、仮基板53のマークに合わせて半導体層40Sを所定の大きさにエッチングする。これにより、複数のチップ状態の半導体層40Sが形成される。
【0093】
続いて、図8E図8Jに示したようにして、半導体層40Sに画素P毎に拡散領域42Xを形成する。なお、図8E図8Jでは1つの画素Pを拡大して図示している。
【0094】
まず、図8Eに示したように、半導体層40S上にハードマスクとしてSiO2膜35およびSiN膜36をこの順に形成する。次に、SiN膜36上に、フォトレジスト37を形成し、フォトレジスト37およびSiN膜36を貫通する開口h4を形成する。続いて、図8Fに示したように、ウェットエッチングまたはドライエッチング等によりフォトレジスト37を除去すると共に、SiO2膜35を貫通する開口h5を形成する。なお、ハードマスクは、上記第1の実施の形態と同様に、上記SiO2膜/SiN膜の積層膜に限らない。例えば、SiO2膜またはSiN膜の単層膜でも構わない。
【0095】
次に、図8Gに示したように、p型不純物(例えば、亜鉛(Zn))の拡散を行い、拡散領域42A1を形成する。不純物の拡散は、例えば、ジエチル亜鉛(DEZ)ガスやジメチル亜鉛(DMZ)ガスを用い、200℃~600℃条件下における気相拡散によって行う。拡散深さは、例えば、第1コンタクト層42の膜厚(例えば、300nm)に対して100nm~300nmとすることが好ましい。不純物は、第1コンタクト層42の面42Sから略等方拡散され、略半球状の拡散領域42A1が形成される。続いて、図8Hに示したように、開口h5内およびSiN膜36上に、例えば窒化シリコン(SiN),酸化シリコン(SiO2),酸化アルミニウム(Al23),酸化タンタル(Ta25),SiCまたはSiCO等からなるサイドウォール38を形成したのち、開口h5内に、拡散領域42A1内まで貫通する開口h6を形成する。この開口h6が、上記溝tに相当する。開口h6を形成したのち、アニール処理する。これにより、図8Iに示したように、拡散領域42A1の周囲にp型不純物が拡散し、拡散領域42A1よりも不純物濃度の低く、拡散領域42A1と同様に、略半球状の第2拡散領域42Bが形成される。次に、開口h6を介して、再度p型不純物の気相拡散を行い、第1拡散領域42Aの凸部Cに当たる拡散領域42A2を形成する。拡散深さは、例えば、1回目のZn拡散よりも例えば5nm以上短い距離であることが好ましく、略等方拡散される。1回目の拡散距離と2回目の拡散距離の比(1回目/2回目)は、例えば1未満であり、2回目の拡散後に確定するターゲット距離は、開口h6の掘りこみ深さで調整することができる。これにより、変曲点Xを持つ拡散形状を有する第1拡散領域42Aが形成される。
【0096】
続いて、図8Kに示したように、例えば酸化シリコン(SiO2)を用いて、半導体層40Sの周囲に絶縁膜17を形成する。なお、SiO2膜35およびSiN膜36については、上記第1の実施の形態と同様に、必ずしも除去しなくてもよく、これらを絶縁膜17として用いてもよい。以降、上記第1の実施の形態と同様の工程を経ることで、図4に示した受光素子2が完成する。
【0097】
(2-3.受光素子の動作)
受光素子2では、パッシベーション膜16、第2電極45および第2コンタクト層44を介して、光電変換層43へ光(例えば可視領域および赤外領域の波長の光)が入射すると、この光が光電変換層43において吸収される。これにより、光電変換層43では正孔(ホール)および電子の対が発生する(光電変換される)。このとき、例えば第1電極41に所定の電圧が印加されると、光電変換層43に電位勾配が生じ、発生した電荷のうち一方の電荷(例えば正孔)が、信号電荷として拡散領域42Xに移動し、拡散領域42Xから第1電極41へ収集される。この信号電荷が、コンタクト電極19E,22Eを通じて半導体基板21に移動し、画素P毎に読み出される。
【0098】
(2-4.作用・効果)
本実施の形態の受光素子2は、半導体層40S(具体的には、第1コンタクト層42)の第1電極41と接する面に、不純物濃度が段階的に変化する拡散領域42Xが設けられている。この拡散領域42Xは、例えば、第1拡散領域42Aと、第1拡散領域42Aよりも不純物濃度の低い第2拡散領域42Bを有し、第2拡散領域42Bは、第1拡散領域42Aの周囲に設けられた構成となっている。これにより、例えば、横方向の電界が緩和される。
【0099】
また、本実施の形態では、第1拡散領域42Aは、変曲点Xを有する拡散形状となっており、半導体層40Sの積層方向(例えば、Z軸方向)に第2拡散領域42Bを貫通する凸部Cを有する。これにより、凸部Cに電界が集中させることが可能となる。
【0100】
以上により、本実施の形態の受光素子2では、上記第1の実施の形態と同様に、ノイズの原因となる暗電流の発生が抑制することが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態では、拡散領域42Xを、1回目のp型不純物の拡散後に溝tを形成し、再度、p型不純物を拡散するようにしたので、拡散領域42XのXY平面方向の幅が削減される。よって、画素サイズ縮小化することが可能となる。
【0102】
更に、本実施の形態では、溝tに第1電極41を埋設するようにしたので、第1コンタクト層42と第1電極41との接触面積が増加し、接触抵抗が低下する。よって、転送効率を向上させることが可能となる。
【0103】
<3.適用例>
(適用例1)
上記実施の形態等において説明した受光素子1(または、受光素子2)は、例えば、撮像素子に適用される。この撮像素子は、例えば赤外線イメージセンサである。
【0104】
(適用例2)
上述の受光素子1,2は、例えば赤外領域を撮像可能なカメラ等、様々なタイプの電子機器(撮像装置)に適用することができる。図9に、その一例として、電子機器3の概略構成を示す。この電子機器3は、例えば静止画または動画を撮影可能なカメラであり、例えば受光素子1により構成された撮像素子4と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、撮像素子4およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0105】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を撮像素子4へ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、撮像素子4への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、撮像素子4の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、撮像素子4から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリ等の記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0106】
更に、本実施の形態等において説明した受光素子1,2は、下記電子機器(カプセル内視鏡および車両等の移動体)にも適用することが可能である。
【0107】
<4.応用例>
(応用例1.内視鏡手術システム)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0108】
図10は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0109】
図10では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0110】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0111】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0112】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0113】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0114】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0115】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0116】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0117】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0118】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0119】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0120】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注すると共に当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0121】
図11は、図10に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0122】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0123】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0124】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0125】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0126】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0127】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0128】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0129】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0130】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0131】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0132】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0133】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0134】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0135】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0136】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0137】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0138】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、より鮮明な術部画像を得ることができるため、術者が術部を確実に確認することが可能になる。
【0139】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0140】
(応用例2.移動体)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0141】
図12は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0142】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図12に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0143】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0144】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0145】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させると共に、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0146】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0147】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0148】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0149】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0150】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0151】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図12の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0152】
図13は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0153】
図13では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0154】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0155】
なお、図13には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0156】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0157】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0158】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0159】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0160】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、より見やすい撮影画像を得ることができるため、ドライバの疲労を軽減することが可能になる。
【0161】
更に、本実施の形態等において説明した受光素子1,2は、監視カメラ,生体認証システムおよびサーモグラフィ等の電子機器にも適用することが可能である。監視カメラは、例えばナイトビジョンシステム(暗視)のものである。受光素子1または受光素子2を監視カメラに適用することにより、夜間の歩行者および動物等を遠くから認識することが可能となる。また、受光素子1または受光素子2を車載カメラとして適用すると、ヘッドライトや天候の影響を受けにくい。例えば、煙および霧等の影響を受けずに、撮影画像を得ることができる。更に、物体の形状の認識も可能となる。また、サーモグラフィでは、非接触温度測定が可能となる。サーモグラフィでは、温度分布や発熱も検出可能である。加えて、受光素子1,2は、炎、水分またはガス等を検知する電子機器にも適用可能である。
【0162】
以上、第1,第2の実施の形態および適用例ならびに応用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した受光素子1,2の層構成は一例であり、更に他の層を備えていてもよい。また、各層の材料や厚みも一例であって、上述のものに限定されるものではない。例えば、上記第2の実施の形態では、第1コンタクト層42、光電変換層43および第2コンタクト層44により半導体層40Sを構成する場合について説明したが、半導体層10Sは光電変換層43を含んでいればよい。例えば、第1コンタクト層42および第2コンタクト層44を設けなくてもよく、あるいは、他の層を含んでいてもよい。
【0163】
更に、上記実施の形態等では、素子基板(例えば、素子基板10)と読出回路基板20とをCuCu接合によって接合した例を示したが、例えば、バンプを介して接合するようにしてもよい。
【0164】
更にまた、上記実施の形態等では、便宜上、信号電荷が正孔である場合について説明したが、信号電荷は電子であってもよい。例えば、拡散領域がn型の不純物を含んでいてもよい。
【0165】
加えて、上記実施の形態等では、本技術の半導体素子の一具体例の受光素子を説明したが、本技術の半導体素子は受光素子以外であってもよい。例えば、本技術の半導体素子は、発光素子であってもよい。
【0166】
また、上記実施の形態等において説明した効果は一例であり、他の効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【0167】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。以下の構成の本技術によれば、化合物半導体材料を含む半導体層の一の面に、不純物濃度が段階的に変化する不純物拡散領域を設けるようにしたので、横方向の電界を緩和することができる。よって、暗電流を低減することが可能となる。
(1
合物半導体材料を含む半導体層を形成し、
前記半導体層の一の面上に開口を有するマスク層を形成し、
前記開口内にサイドウォールを形成し、
前記開口を介して不純物を拡散して前記半導体層の前記一の面に第1の不純物拡散領域を形成し、
エッチングにより前記第1の不純物拡散領域内に溝を形成し、
アニール処理にて前記第1の不純物拡散領域よりも不純物濃度の低い第2の不純物拡散領域を前記第1の不純物拡散領域の周囲に形成し
前記アニール処理後に前記溝を介して前記第1の不純物拡散領域に再度不純物を拡散して前記第1の不純物拡散領域を、変曲点を持つ拡散形状とする
受光素子の製造方法。
(2)
前記溝内に金属材料を埋設し、前記受光素子と電気的に接続された第1電極を形成する、前記(1)に記載の受光素子の製造方法。
【0168】
本出願は、日本国特許庁において2019年3月20日に出願された日本特許出願番号2019-052687号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0169】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図3O
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図3Q
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図3S
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図8K
図9
図10
図11
図12
図13