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  • 特許-脳に指向性を有するAAV変異体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】脳に指向性を有するAAV変異体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/35 20060101AFI20240722BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240722BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20240722BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240722BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20240722BHJP
   C12R 1/93 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
C12N15/35
C12N5/10 ZNA
C12N7/00
C12N15/09 Z
C07K14/015
C12R1:93
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021516202
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2020017495
(87)【国際公開番号】W WO2020218419
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019082417
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302019245
【氏名又は名称】タカラバイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】西江 敏和
(72)【発明者】
【氏名】高島 扶有子
(72)【発明者】
【氏名】榎 竜嗣
(72)【発明者】
【氏名】峰野 純一
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳典
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513486(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103957(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/114143(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0142764(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質変異体をコードする核酸であって、前記ペプチドがAAVキャプシドタンパク質における、AAV2のVP1のアミノ酸番号588番と589番に対応するアミノ酸の間の位置に含有されており、かつ、該AAVキャプシドタンパク質変異体は脳及び/又は肺に対し細胞指向性を有する、核酸。
【請求項2】
AAVキャプシドタンパク質がAAV2由来である請求項1記載の核酸。
【請求項3】
AAV2のVP1のアミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置に前記ペプチドを含有させた請求項2記載の核酸。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸を含む組換えDNA。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸又は請求項4記載の組換えDNAを含む細胞。
【請求項6】
配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体を含むAAV粒子であって、前記ペプチドがAAVキャプシドタンパク質における、AAV2のVP1のアミノ酸番号588番と589番に対応するアミノ酸の間の位置に含有されており、かつ、該AAVキャプシドタンパク質変異体は脳及び/又は肺に対し細胞指向性を有する、AAV粒子。
【請求項7】
AAVキャプシドタンパク質がAAV2由来である請求項6記載のAAV粒子。
【請求項8】
AAV2のVP1のアミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置に前記ペプチドを含有させた請求項7記載のAAV粒子。
【請求項9】
配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体を含むAAV粒子を細胞に接触させる工程を含む、遺伝子導入細胞の製造方法であって、前記ペプチドがAAVキャプシドタンパク質における、AAV2のVP1のアミノ酸番号588番と589番に対応するアミノ酸の間の位置に含有されており、かつ、該AAVキャプシドタンパク質変異体は脳及び/又は肺に対し細胞指向性を有する、方法、但し、ヒト体内で実施する方法を除く。
【請求項10】
AAVキャプシドタンパク質がAAV2由来である請求項9記載の方法。
【請求項11】
AAV2のVP1のアミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置に前記ペプチドを含有させた請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳に指向性を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質の変異体をコードする核酸、当該キャプシドタンパク質の変異体を含むAAV粒子及び当該粒子を使用する遺伝子導入細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AAVは、ふたつのオープンリーディングフレームrep遺伝子及びcap遺伝子を含む4.7kbの1本鎖DNAをゲノムとするウイルスである。rep遺伝子は、ゲノム複製に必要な4種のタンパク質(Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40)をコードし、cap遺伝子は、ウイルスキャプシド形成のために集成する3種のキャプシドタンパク質(VP1、VP2、VP3)及びAssembly-Activating Protein (AAP)を発現する。自然界でのAAVの複製はアデノウイルス、ヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスの存在に左右される。ヘルパーウイルスが存在しない場合、AAVは、そのゲノムがエピソームに維持されるか、又は宿主染色体に組込まれ潜伏状態となる。現在、100を超えるAAV血清型及びクレード(非特許文献1)が同定されているが、特にAAV2が遺伝子送達ベクターとして開発が進められている。
【0003】
1989年にAAV2を基に遺伝子送達ベクターシステムが初めて開発されている。AAVを基にしたベクターは、多くの利点を有することが示されている。野生型AAVは非病原性であり、いずれの既知の疾患とも病原学的関係を有さないので、AAVを基にしたベクターは極めて安全だと言われている。加えてAAVは、効率の高い遺伝子導入能を有する。
【0004】
AAV粒子の投与でさまざまな標的臓器、標的細胞に長期的に安定した遺伝子導入が可能である。現在までに、骨格筋、肝臓(肝細胞)、心臓(心筋細胞)、神経細胞、膵腺細胞、膵島細胞に高い効率で遺伝子を導入することが示されている。更にAAVは、ヒト臨床試験において使用された実績を有する。一方で、AAVのキャプシドタンパク質を改変してAAVの細胞指向性を変化させる試みや、中和抗体によるAAV粒子の除去を回避する試みが行われている。例えば、神経膠細胞、気道上皮細胞、冠動脈血管内皮細胞又は肺などの特定の臓器や細胞に指向性を有するAAVキャプシドの作製や、膠芽腫、メラノーマ、肺がん又は乳がんなどの腫瘍細胞に指向性を有するAAVキャプシドの作製が行われてきた(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Gao他、ジャーナル オブ ウイロロジー(J.Virology)、第78巻、6381-6388頁、2004年
【文献】Adachi K他、ジーン セラピー アンド レギュレーション(Gene Ther.Regul.)、第5巻、31-55頁、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、脳に指向性を有するAAVキャプシドタンパク質変異体を提供し、脳に効率的に遺伝子を導入する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むAAVキャプシドタンパク質を含む目的のAAV粒子を作製し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明を概説すれば、
[1]配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質変異体をコードする核酸、
[2]AAVキャプシドタンパク質がAAV2由来である[1]記載の核酸、
[3]AAV2のVP1のアミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置に前記ペプチドを含有させた[2]記載の核酸、
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の核酸を含む組換えDNA、
[5][1]~[3]のいずれか1項に記載の核酸又は[4]記載の組換えDNAを含む細胞、
[6]配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体を含むAAV粒子、
[7]AAVキャプシドタンパク質がAAV2由来である[6]記載のAAV粒子、
[8]AAV2のVP1のアミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置に前記ペプチドを含有させた[7]記載のAAV粒子、
[9]配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体を含むAAV粒子を細胞に接触させる工程を含む、遺伝子導入細胞の製造方法、
[10]AAVキャプシドタンパク質がAAV2由来である[9]記載の方法、
[11]AAV2のVP1のアミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置に前記ペプチドを含有させた[10]記載の方法、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、脳への遺伝子導入に有用な遺伝子導入システムが提供される。本発明のAAV粒子は脳に対し高い細胞指向性を有し、導入した遺伝子を強く発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】キャプシドタンパク質にランダムペプチドを含有させる核酸構築物の作製方法を示す図である。
図2】本発明のAAVキャプシドタンパク質変異体の指向性評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「アデノ随伴ウイルス」は、パルボウイルス科、ディペンドウイルス属に属する、ヒトを含む霊長目の動物やその他の哺乳類に感染する小型のウイルスを示す。以下、Adeno Associated Virusを省略してAAVと記載する。AAVはエンベロープを持たない正20面体の外殻(キャプシド)とその内部に1本の1本鎖DNAを有する。本明細書において、AAVは野生型ウイルス及びその派生物を含み、特に記載する場合を除き全ての血清型及びクレードを含む。
【0012】
本明細書において「ベクター」は、ポリヌクレオチドを含む又はポリヌクレオチドに会合して、ポリヌクレオチドの細胞への送達を媒介するために使用することができる分子又は分子の会合体を意味する。例えば、プラスミドベクターやファージベクターなどのベクターDNA、ウイルスベクター粒子、リポソーム、及び他の遺伝子送達ビヒクルが挙げられ、これらは特に記載する場合を除き全てベクターに含まれる。
【0013】
本明細書において「キャプシドタンパク質」は、AAVのゲノムに存在するcap遺伝子にコードされるタンパク質で、AAVのキャプシドを構成するタンパク質を意味する。野生型AAVゲノムは3種類のキャプシドタンパク質をコードし、VP1、VP2及びVP3が存在する。本明細書においては、VP1、VP2及びVP3のいずれもがキャプシドタンパク質に含まれる。
【0014】
本明細書において、アミノ酸の置換、欠失、挿入および/または付加に関して「数個」とは、基準となるアミノ酸配列の長さにもよるが、例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9個をいう。
【0015】
(1)AAVキャプシドタンパク質変異体をコードする核酸
本発明の核酸は、配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体をコードする核酸である。好適には、本発明の核酸は、配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体をコードする核酸である。さらに好適には、本発明の核酸は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体をコードする核酸である。上記配列番号で示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドは、該ペプチドをAAVキャプシドタンパク質に含有させた場合に、上記配列番号で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体の細胞指向性が維持されるペプチドである。すなわち、上記配列番号で示されるアミノ酸配列において置換、欠失、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は、上記配列番号で示されるアミノ酸配列を含むペプチドが該ペプチドを含有するAAVキャプシドタンパク質変異体に与える細胞指向性が維持されるかぎり限定されず、例えば、置換、欠失および/または挿入の場合、例えば1~5個、好ましくは1~4個、さらに好ましくは1、2または3個であり、付加の場合、例えば1~9個、好ましくは1~8個、さらに好ましくは1~7個、さらに好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~5個、さらに好ましくは1、2、3または4個であってもよい。
【0016】
例えば、前記のAAVキャプシドタンパク質変異体に含有させるペプチドは、配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。上記配列番号で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むペプチドは、該ペプチドをAAVキャプシドタンパク質に含有させた場合に、上記配列番号で示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体の細胞指向性が維持される。
【0017】
例えば、前記のAAVキャプシドタンパク質変異体に含有させるペプチドは、
式I: XGXGWV;
式II: XGWV;
式III: XGX1011WV;
式IV: X1213GX14GX15V;
式V: X1617GX18GWX19;または
式VI: X2021GX22REX23
[式中、X~X23はいずれかのアミノ酸残基であり、Gはグリシンを表し、Wはトリプトファンを表し、Vはバリンを表し、Rはアルギニンを表し、Eはグルタミン酸を表す。]
で示されるアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。好適には、式I(XGXGWV)中、XはE(グルタミン酸)、G(グリシン)またはT(トレオニン)であり、XはR(アルギニン)、T(トレオニン)、S(セリン)、N(アスパラギン)、E(グルタミン酸)またはD(アスパラギン酸)であり、XはV(バリン)、H(ヒスチジン)、R、M(メチオニン)またはL(ロイシン)である。好適には、式II(XGWV)中、XはA(アラニン)またはEであり、XはD、GまたはAであり、XはK(リジン)、Q(グルタミン)またはNであり、XはVまたはLである。好適には、式III(XGX1011WV)中、XはA、EまたはGであり、XはS、D、GまたはRであり、X10はT、M、DまたはVであり、X11はR、V、SまたはTである。好適には、式IV(X1213GX14GX15V)中、X12はD、E、GまたはRであり、X13はA、G、DまたはVであり、X14はI、H、D、F(フェニルアラニン)、GまたはLであり、X15はY(チロシン)、F、R、GまたはVである。好適には、式V(X1617GX18GWX19)中、X16はA、EまたはGであり、X17はG、RまたはSであり、X18はV、HまたはDであり、X19はT、G、K、I(イソロイシン)またはAである。好適には、式VI(X2021GX22REX23)中、X20はEまたはAであり、X21はYまたはHであり、X22はFまたはYであり、X23はGまたはP(プロリン)である。
【0018】
例えば、式Iで示されるアミノ酸配列を含むペプチドには、限定するものではないが、配列番号18、20、21、22、46、55、59および60からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号18、20、21、22、46、55、59および60からなる群より選択されるアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドが包含される。例えば、式IIで示されるアミノ酸配列を含むペプチドには、限定するものではないが、配列番号25、29および32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号25、29および32からなる群より選択されるアミノ酸配列において1~4個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドが包含される。例えば、式IIIで示されるアミノ酸配列を含むペプチドには、限定するものではないが、配列番号15、24、38、48および54からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号15、24、38、48および54からなる群より選択されるアミノ酸配列において1~4個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドが包含される。例えば、式IVで示されるアミノ酸配列を含むペプチドには、限定するものではないが、配列番号19、31、35、44、56および58からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号19、31、35、44、56および58からなる群より選択されるアミノ酸配列において1~4個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドが包含される。例えば、式Vで示されるアミノ酸配列を含むペプチドには、限定するものではないが、配列番号26、39、42、43、47および50からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号26、39、42、43、47および50からなる群より選択されるアミノ酸配列において1~4個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドが包含される。例えば、式VIで示されるアミノ酸配列を含むペプチドには、限定するものではないが、配列番号16または17で示されるアミノ酸配列を含むペプチド、あるいは配列番号16または17で示されるアミノ酸配列において1~4個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含むペプチドが包含される。
【0019】
本発明の核酸がコードするAAVキャプシドタンパク質変異体は、1型AAV(AAV1)、2型AAV(AAV2)、3型AAV(AAV3A、AAV3Bなど)、4型AAV(AAV4)、5型AAV(AAV5)、6型AAV(AAV6)、7型AAV(AAV7)、8型AAV(AAV8)、9型AAV(AAV9)、10型AAV(AAV10)、11型AAV(AAV11)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAVなど、任意の野生型AAVキャプシドタンパク質に上記ペプチドを挿入するか、又はAAVキャプシドタンパク質のアミノ酸配列の一部を上記ペプチドで置換する(すなわち、AAVキャプシドタンパク質に上記ペプチドを含有させる)ことにより調製することができる。本発明においては、AAV2のキャプシドタンパク質が特に好適に使用できる。
【0020】
本発明の核酸がコードするAAVキャプシドタンパク質変異体は、野生型のAAVキャプシドタンパク質に上記ペプチドが保持されている以外に、1~数個または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたタンパク質であっても良い。該「上記ペプチドが保持されている以外に、1~数個または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたタンパク質」は、元のタンパク質の性質、例えば、上記ペプチドによって付与されるAAVキャプシドタンパク質変異体の細胞指向性、キャプシド形成能、キャプシドタンパク質の機能(例えば、ウイルスゲノムの保護、宿主細胞侵入後の脱殻等)等を維持するタンパク質である。
【0021】
さらに、本発明においてAAVキャプシドタンパク質に含有させるペプチドのN末端及び/又はC末端にはスペーサー配列を付加させてもよい。スペーサー配列は1~5アミノ酸残基が好適である。スペーサー配列のアミノ酸は特に限定は無いが、例えばグリシン、アラニン及びセリンからなる群より選択されるアミノ酸が使用できる。
【0022】
ペプチドを含有させるAAVキャプシドタンパク質は、AAVのVP1、VP2及びVP3のいずれもが使用できる。VP1のみ、VP2のみ又はVP3のみにペプチドを含有させても良く、VP1~VP3の全てのキャプシドタンパク質にペプチドを含有させても良い。さらに、VP1及びVP2、VP2及びVP3、VP1及びVP3の組合せのように、2種類のキャプシドタンパク質に含有させても良い。VP1~VP3は、AAVゲノムのcap遺伝子領域にコードされている。本発明の一態様として、VP1~VP3に共通した領域にペプチドを含有させて、VP1~VP3の全てに変異を導入することができる。また、別の態様として、AAVのcap遺伝子領域とは別に、VP1、VP2又はVP3をコードする遺伝子を準備し、この遺伝子に変異を導入することができる。この場合、変異を導入した遺伝子にコードされるキャプシドタンパク質に対応する野生型キャプシドタンパク質がAAVのcap遺伝子領域から発現しないような処置を行っても良い。
【0023】
本発明の核酸がコードするAAVキャプシドタンパク質変異体においてペプチドを含有させる位置は、AAV2のVP1の場合、アミノ酸番号588番とアミノ酸番号589番との間の位置が好ましい。AAV2のVP1のアミノ酸番号588番はアルギニンであり、AAV2のVP1のアミノ酸番号589番はグルタミンである。また、AAV2 VP1のアミノ酸番号588番は、AAV2のVP2のアミノ酸番号451番、AAV2のVP3のアミノ酸番号386番に相当する。AAVキャプシドタンパク質としてAAV2以外の血清型またはクレードのAAVに由来するキャプシドタンパク質を使用する場合、好ましくは、該AAVキャプシドタンパク質における、AAV2のVP1のアミノ酸番号588番と589番に対応するアミノ酸の間の位置にペプチドを含有させる。AAV2のVP1のアミノ酸番号588番のアミノ酸に対応する、AAV2以外の血清型またはクレードのAAVのキャプシドタンパク質のアミノ酸を、当業者は容易に特定することができる。例えば、Gaoら、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U S A.)、第99巻、第18号、11854-11859頁、2002年に記載されるVP1のアミノ酸配列のアライメントを参照することができる。例えば、AAV2のVP1のアミノ酸番号588番は、AAV1では589番、AAV7では590番、AAV8では591番である。
【0024】
本発明の核酸は、適切な制御配列と作動可能に連結してもよい。制御配列には、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流の調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム進入部位(IRES)、エンハンサーなどが含まれる。プロモーター配列には、誘導性プロモーター配列、構成的プロモーター配列が含まれる。制御配列はキャプシドタンパク質の由来となるAAVに固有のものであっても外来性のものであってもよく、天然配列であっても合成配列であってもよい。このような、AAVキャプシドタンパク質変異体を発現可能な組換えDNAも本発明に包含される。
【0025】
本発明の組換えDNAは、試験管内、生体外及び生体内の細胞へ本発明の核酸を送達し、当該細胞にAAVキャプシドタンパク質変異体を発現する能力を付与するのに有用である。そして、本発明の核酸が送達された細胞はAAV粒子を製造するのに有用である。当該組換えDNAは特に、動物細胞、より好ましくは哺乳類細胞へ本発明の核酸を送達又は導入するのに用いることができる。
【0026】
本発明では、ベクターとして使用されているDNAに本発明の核酸を保持させて本発明の組換えDNAを作製することができる。例えば、プラスミドDNA、ファージDNA、トランスポゾン、コスミドDNA、エピソーマルDNA、ウイルスゲノムが使用できる。
【0027】
(2)本発明の核酸を含む細胞
本発明はまた、本発明の核酸、具体的には前記(1)の組換えDNAを含む宿主細胞、例えば単離された宿主細胞を提供する。単離された細胞は、例えばインビトロで維持されている細胞株である。本発明の宿主細胞は、以下に説明するように本発明のAAV粒子の製造に有用である。本発明の宿主細胞がAAV粒子を製造するために使用される場合、これは「パッケージング細胞」又は「プロデューサー細胞」と称することがある。本発明の宿主細胞は、前記(1)記載の本発明の組換えDNAがゲノムに組み込まれても良く、AAVキャプシドタンパク質変異体を一過性に発現するように前記の組換えDNAが細胞内に保持されていても良い。
【0028】
宿主細胞への本発明の組換えDNAの導入は、公知の方法により実施することができる。例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿法、細胞への直接的微量注入法、リポソーム媒介型遺伝子導入法、高速微粒子銃を使用する核酸送達法などを使用できる。また、ウイルスベクターを使用する場合には、当該ベクターに適した感染法を選択すればよい。このような確立された技術を用いて、本発明の組換えDNAは宿主細胞の染色体に安定的に、又は宿主細胞の細胞質に一過性に導入される。安定した形質転換のために、選択マーカー、例えばネオマイシン耐性遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしている)、ハイグロマイシンB耐性遺伝子(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードしている)などの周知の選択マーカーを本発明の組換えDNAに連結することができる。
【0029】
宿主細胞には、例えば、マウス細胞、及び霊長類細胞(例えば、ヒト細胞)などを含む哺乳類細胞、昆虫細胞などの、様々な細胞が使用できる。適当な哺乳類細胞は、初代細胞及び細胞株を含むがこれらに限定されるものではなく、適当な細胞株として、293細胞、COS細胞、HeLa細胞、Vero細胞、3T3マウス線維芽細胞、C3H10T1/2線維芽細胞、CHO細胞やこれらの細胞から派生した細胞などが挙げられる。
【0030】
(3)本発明の核酸にコードされるアミノ酸配列を含有させたAAVキャプシドタンパク質を含むAAV粒子
本発明のAAV粒子は、前記(1)に記載されるペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体を含むAAV粒子である。本発明のAAV粒子は、前記(2)に記載される宿主細胞により製造することができる。本発明のAAV粒子は、脳に指向性を有し、脳への遺伝子導入に有用である。脳には、神経細胞とグリア細胞(ミクログリア、オリゴデンドロサイト、アストロサイト)などの脳細胞が含まれる。本発明のAAV粒子により導入された遺伝子は、前記組織、器官及び細胞で強く発現される。
【0031】
AAV粒子は、AAV粒子の製造に必要ないくつかの成分を含む細胞をパッケージング細胞として利用して製造することができる。第1の成分は、宿主細胞内で複製及びAAV粒子にパッケージングされ得る組換えAAVのベクターゲノム(発現ベクターとも呼ばれる)である。組換えAAVのベクターゲノムは、所望の異種ポリヌクレオチドと、その両側に、すなわち5’及び3’側にそれぞれAAV逆方向末端反復(ITR)配列が位置する。所望の異種ポリヌクレオチドは、その発現のための制御配列を有しうる。ITR配列の塩基配列は公知であり、例えば、AAV2のITR配列については、Kotin R.Mら、ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第5巻、793-801頁、1994年を参照することができる。さらに、ITR配列として、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7など、様々なAAV血清型のいずれかに由来するITR配列を使用することができる。本発明において使用されるITR配列は、野生型AAV由来の配列でも良く、ヌクレオチドの挿入、欠失又は置換により変更されていても良い。ITR配列は、Repタンパク質の存在下で、組換えAAVのベクターゲノムの複製を可能にし、AAV粒子形成の際にキャプシド粒子内への組込みを可能にする。
【0032】
本発明のAAV粒子に搭載可能な所望の異種ポリヌクレオチドは、一般にサイズが約5キロベース(kb)未満であり、例えばレシピエントに欠損した又は失われた所望のタンパク質をコードする遺伝子、所望の生物学的又は治療的作用(例えば、抗菌、抗ウイルス又は抗腫瘍作用)を有するタンパク質をコードする遺伝子、有害な又は望ましくないタンパク質の産生を阻害又は低下するRNAをコードする所望のヌクレオチド配列、抗原性タンパク質をコードするヌクレオチド配列など、目的に応じて適宜設定することができる。
【0033】
本発明の一態様として、組換えAAVのベクターゲノムは、cap遺伝子領域及び/又はrep遺伝子領域を欠いており、この態様の組換えAAVのベクターゲノムがパッケージングされたAAV粒子は、感染した細胞内で単独で再度AAV粒子に複製されない。
【0034】
AAV粒子の製造に必要な第2の成分は、野生型AAVにコードされているタンパク質を提供する構築物である。この構築物は、AAV粒子の形成のために必要なAAV遺伝子産物を提供するAAV由来の遺伝子をコードしている。すなわち、主要なAAV ORFであるrep遺伝子領域及びcap遺伝子領域のコード領域の一方又は両方を含む。本発明のAAV粒子を製造するために、少なくとも配列表の配列番号15~配列番号62からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含有させたAAVキャプシドタンパク質変異体をコードする核酸をcap遺伝子として使用する。この変異体を発現する能力を有している、前記(2)に記載される本発明の宿主細胞をAAV粒子の製造に使用することができる。AAV粒子は多数のキャプシドタンパク質から構成される外殻を有するが、全てのキャプシドタンパク質が変異体であっても良く、その一部が変異体で残りが野生型のキャプシドタンパク質でもあっても良い。さらに、本発明のAAV粒子に含まれるキャプシドタンパク質変異体は1種類の変異体であっても良く、複数種の変異体であっても良い。
【0035】
AAVのrep遺伝子は、rep遺伝子コード領域に含まれ、複製タンパク質Rep 78、Rep 68、Rep 52及びRep 40をコードする遺伝子を含む。これらのRep発現産物は、AAVゲノムDNA複製起点の認識、結合及びニッキング、DNAヘリカーゼ活性及びAAV由来プロモーターの転写の変更を含む、多くの機能を有することが示されている。
【0036】
AAV粒子の製造に必要な第3の成分は、AAV複製のためのヘルパーウイルス機能(アクセサリー機能とも呼ばれる)である。ヘルパー機能の導入には一般にアデノウイルスが使用されるが、例えば1型又は2型単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスなどのウイルスも使用することができる。ウイルスを使用する場合は、宿主細胞にウイルスをヘルパーウイルスとして感染させる。例えば、アデノウイルスの初期遺伝子の発現のみがAAV粒子のパッケージングに必要なので、後期遺伝子発現を呈さないアデノウイルスを用いてもよい。後期遺伝子発現を欠損するアデノウイルス変異体(例えばts100K又はts149アデノウイルス変異体)を使用することができる。あるいは、ヘルパーウイルスから単離したヘルパーウイルス機能に必要な核酸を使用し、ヘルパーウイルス機能を提供する核酸構築物を作製して宿主細胞に導入することができる。ヘルパーウイルス機能を提供する構築物は、1種又は複数のヘルパーウイルス機能を提供するヌクレオチド配列を含み、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド又は他のウイルスの形で宿主細胞に提供される。
【0037】
AAV粒子を製造するために、前記(a)第1の成分である組換えAAVのベクターゲノムを宿主細胞に導入する工程、(b)第2の成分であるAAVヘルパー機能を提供する構築物を宿主細胞に導入する工程、(c)第3の成分であるヘルパーウイルス機能を宿主細胞に導入する工程、を実施する。これらの工程は同時に実施されても良く、順番に実施されても良い。工程(a)~(c)の順番はどのような順番であっても良い。宿主細胞に第1~第3の成分が導入されることにより、rep遺伝子の発現産物は、組換えAAVのベクターゲノムを切出し、複製する。発現されたキャプシドタンパク質はキャプシドを形成し、組換えAAVのベクターゲノムがキャプシドにパッケージングされてAAV粒子が産生される。そして、この宿主細胞がAAVキャプシドタンパク質変異体を発現する場合、産生されたAAV粒子の外殻にはAAVキャプシドタンパク質変異体が含まれている。
【0038】
AAV粒子は、宿主細胞の培養上清やその細胞溶解物から、CsCl密度勾配遠心分離のような様々な精製法を用いてAAV粒子を単離、精製することができる。前記(c)工程にウイルスが使用される場合、例えば、AAV粒子とヘルパーウイルスとを、サイズに基づいて分離する工程を加えてもよい。また、ヘパリンに対する親和性の差に基づいて、AAV粒子をヘルパーウイルスから分離することもできる。さらに、残存するヘルパーウイルスは、公知の方法を用いて失活することができる。例えばアデノウイルスは、約60℃の温度で、例えば20分間又はそれ以上加熱することにより失活することができる。AAV粒子は熱に極めて安定であるため、この処置はヘルパーウイルスとして使用したアデノウイルスの選択的除去に有効である。
【0039】
(4)本発明の遺伝子導入細胞の製造方法
前記(3)により得られる本発明のAAV粒子は、遺伝子治療やその他の目的で、所望の異種ポリヌクレオチドの細胞への送達のために使用される。一般にAAV粒子は、インビボ又はインビトロのいずれかで細胞へ導入される。インビトロで導入する場合、生体より取得された細胞にAAV粒子を接触させることにより導入する。この細胞を生体に移植することもできる。細胞を生体に導入する場合は、薬学的組成物として製剤化し、筋肉内、静脈内、皮下及び腹腔内投与などの様々な技術を利用できる。インビボで形質導入する場合は、AAV粒子を薬学的組成物として製剤化し、一般に非経口投与する(例えば、筋肉内、皮下、腫瘍内、経皮、髄腔内などの投与経路により投与する)。AAV粒子を含む薬学的組成物は、薬剤として許容される担体、及び必要に応じて他の薬剤、医薬品、安定化剤、緩衝液、担体、アジュバント、希釈液などを含んでいてもよい。
【実施例
【0040】
以下、実施例にて本願発明を説明するが、本願発明は実施例により特に限定されるものではない。
【0041】
実施例1 AAV2ランダムペプチドプラスミドライブラリーの作製
AAV2のゲノムを搭載したプラスミドベクターpAV1(ATCC Number:37215)を汎用宿主(Distribution host)のEscherichia coli HB101より抽出した。抽出したプラスミドから制限酵素BglII(タカラバイオ社製)によりAAV2のゲノムDNA(約4.7kb)を切り出した。このゲノムDNAをpUC118 BamHI/BAP(タカラバイオ社製)に挿入し、得られたプラスミドDNAをAAV2WG/pUC118とした。
【0042】
AAV2WG/pUC118を制限酵素ScaI(タカラバイオ社製)で処理し、cap遺伝子の1190番目から2017番目の塩基を含む約0.8kbの断片を得た。この断片をpUC118 HincII/BAP(タカラバイオ社製)に挿入し、得られたプラスミドDNAをCap-ScaI/pUC118とした。次に、PCR法を用いてCap-ScaI/pUC118のCap遺伝子の1759番目から1761番目の塩基配列AAC(587N)をCAG(587Q)に変換、1764番目と1765番目の塩基の間にスペーサーとしてGGC、スタッファーとしてCAAG、さらにスペーサーとしてGCCの10塩基を挿入、1765番目から1773番目の塩基CAA(589Q)GCA(590A)GCT(591A)をCAG(589Q)GCG(590A)GCC(591A)に変換、という一連の改変を実施した(カッコ内の文字はアミノ酸番号及びコードするアミノ酸を示す)。これによりに制限酵素SfiIの認識部位が2か所とそのSfiI認識部位に挟まれたスペーサー、スタッファー、スペーサーが挿入された。Cap遺伝子の1756番目から1773番目の変換前後の塩基配列を図1に示し、変換前の塩基配列を配列表の配列番号1に、変換後の塩基配列を配列番号2に示す。塩基配列を変換した後のプラスミドDNAをCap-ScaI-S4/pUC118とした。Cap-ScaI-S4/pUC118のCap遺伝子部分をIn-Fusion CloningのためにPCR法により増幅し、約0.8kbの断片を得、これをインサートDNAとした。
【0043】
AAV2WG/pUC118のアンピシリン耐性遺伝子内の制限酵素ScaIの認識部位、及びRep遺伝子内にある制限酵素SfiIの認識部位を、PCR法によって塩基配列に変異を導入することにより、これら制限酵素が認識しない配列に改変した。ScaI認識部位についてはアンピシリン耐性遺伝子の304番目から306番目の塩基配列GAG(E)をGAA(E)に変換した。変換前の塩基配列を配列番号3に、変換後の塩基配列を配列番号4に示す。SfiIの認識部位についてはRep遺伝子の217番目~219番目の塩基配列GCC(A)をGCA(A)に変換した。変換前の塩基配列を配列番号5に、変換後の塩基配列を配列番号6に示す。こうして得られたプラスミドDNAをScaI(タカラバイオ社製)で処理し、Cap遺伝子の一部である約0.8kbが欠落した線状のベクターを得た。これをIn-Fusion Cloningのための線状ベクターとした。
【0044】
次にIn-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(クロンテック社製)とCloning Enhancer(クロンテック社製)を用いて前記の線状ベクターにインサートDNAを挿入し、ディレクショナルクローニングを行った。こうして得られたプラスミドDNAをAAV2WG-Cap-ScaI-S4/pUC118Sxとした。
【0045】
7アミノ酸のランダムペプチドをコードする塩基配列を含むオリゴDNA(配列番号7)を人工合成により作製し、プライマー(配列番号8)及びKlenow Fragment(タカラバイオ社製)を用いて、37℃で3時間反応させることでオリゴDNAから二本鎖DNAを調製した。Nucleotide removal kit(キアゲン社製)を用いて精製した二本鎖DNAを制限酵素BglI(タカラバイオ社製)を用いて消化した。このDNAをDNA ligation kit<Mighty Mix>(タカラバイオ社製)を用いてSfiIで消化したAAV2WG-Cap-ScaI-S4/pUC118Sxに挿入したプラスミドをAAV2WG-RPL/pUC118Sxとし、AAV2ランダムペプチドプラスミドライブラリーとして使用した。
【0046】
実施例2 AAV2ランダムペプチドウイルスライブラリーの作製
(1)AAV293細胞の播種
培養したAAV293細胞(Stratagene社製)を回収後、10%FBS及び2mM L-グルタミン酸ナトリウムを含むDMEM(シグマ社製)で5×10細胞/mLとなるように懸濁した。細胞培養用T225cmフラスコ(コーニング社製)にAAV293細胞を含む溶液を40mL添加し、37℃のCOインキュベーターで72時間培養した。
【0047】
(2)AAV293細胞へのプラスミド導入
実施例1で得たAAV2WG-RPL/pUC118Sx 400ng及びpHELP(cellbiolabs社製)を40μgずつ、一般的なリン酸カルシウム法を用いてAAV293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの6時間後、培地を完全に除去し、2%FBS及び2mM L-グルタミン酸ナトリウムを含むDMEM 40mLを添加し、37℃のCOインキュベーターで48時間培養した。
【0048】
(3)AAV2ランダムペプチドウイルスライブラリーの回収
培養中のT225cmフラスコに、0.5M EDTAを0.5mL添加して数分間静置した。その後、ピペッティングでAAV293細胞を剥離させて50mLチューブに回収し、300×g、10分間遠心後、上清を除去した。フラスコ1枚あたり2mLのTBS(トリス緩衝生理食塩水)に細胞を再懸濁後、エタノール/ドライアイスで15分間、37℃のウォーターバスで15分間、ボルテックス1分間の一連の処理を3回繰り返し、AAV-ランダムペプチドウイルスライブラリーを含む細胞破砕液を回収した。この溶液に、TBS 1mLあたり、1M MgClを5μL、Benzonase(登録商標)ヌクレアーゼ(メルク社製)を終濃度200U/mLとなるように添加し、37℃で30分間反応させた。その後、0.5M EDTAをTBS 1mLあたり6.5μL添加して反応を停止させた。この細胞破砕液を10000rpm、4℃、10分間遠心後、上清を回収しAAVベクター溶液とした。
【0049】
(4)AAVベクター溶液のリアルタイムPCRによる力価定量
AAVベクター溶液2μLに、10×DNaseIバッファー2μL、注射用水(大塚製薬社製)15.2μL、DNaseI(タカラバイオ社製)0.8μLを添加し、37℃で1時間インキュベートし、遊離のゲノムDNAやプラスミドDNAを除去した。DNaseIを不活化するために99℃、10分間の熱処理後、注射用水15μL、10×ProKバッファー[0.1M Tris-HCl (pH7.8)、0.1M EDTA、5% SDS]4μL、Proteinase K(タカラバイオ社製)1μLを添加し、55℃で1時間インキュベートした。その後、Proteinase Kを不活化するために95℃10分間処理した。このサンプルに対し、SYBR(登録商標) Premix ExTaq2(タカラバイオ社製)及びプライマー(配列番号9及び配列番号10)を用いて、キットに添付の説明書に従いAAVの力価定量を行った。なおサンプルは、注射用水で50倍希釈した溶液を2μL用いた。また、標準品として、pAV1を制限酵素で消化し、線状化したDNAを用いた。
【0050】
実施例3 AAV2ランダムペプチドウイルスライブラリーの精製
(1)塩化セシウム密度勾配遠心分離による精製1
超遠心用の40PAチューブ(HITACHI-KOKI社製)に、底から比重1.5に調製した塩化セシウム溶液を4mL、比重1.25に調製した塩化セシウム溶液を4mL、実施例2-(4)で調製したAAVベクター溶液を28mLの順に重層し、超遠心機HIMAC(HITACHI-KOKI社製)で25000rpm、16℃、3時間遠心した。遠心後、上から28mLの溶液を除き、続いて上から0.7mLずつ溶液を採取して1.5mLチューブにそれぞれ回収した。実施例2-(4)と同様の方法で、各回収液に含まれるAAV粒子の力価を定量した。
【0051】
(2)塩化セシウム密度勾配遠心分離による精製2
実施例3-(1)で力価の高かった数フラクションに、比重1.39に調製した塩化セシウム溶液を加えて、10.5mLにフィルアップした。この溶液を超遠心用13PAチューブ(HITACHI-KOKI社製)に添加し、超遠心機で38000rpm、18℃、16時間遠心した。遠心後、チューブの上から順に0.7mLずつ採取して内容液を回収した。各回収液のAAV粒子の力価を実施例2-(4)と同様の方法で定量した。
【0052】
(3)透析による脱塩
実施例3-(2)で力価の高かった数フラクションを混合し、Slide-A-lyzer透析カセット(Pierce社製)に添加した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)1Lにより4℃で3時間の透析を2回、PBS/5%ソルビトール溶液500mLにより4℃で一晩透析を行うことで精製AAV溶液の脱塩を行った。その後、溶液を回収し、0.22μmフィルター(ミリポア社製)で滅菌後、使用するまで-80℃で保存した。また別途、精製AAV粒子の力価を実施例2-(4)と同様の方法で定量した。
【0053】
実施例4 AAV2ランダムペプチドライブラリーのスクリーニング
(1)マウスへの尾静脈投与
実施例3-(3)で得られた精製AAV粒子を、1.5×1014ウイルスゲノム(VG)/kgとなるように、BALB/cマウスの尾静脈から投与した。投与72時間後に脳を回収し、NucleoSpin(登録商標) tissue(マッハライ・ナーゲル社製)を用いてゲノムDNAを抽出した(ラウンド1)。
【0054】
(2)PCRによるランダムペプチド配列のリクローニング
実施例4-(1)で抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PrimeSTAR(登録商標) GXL DNA polymerase(タカラバイオ社製)を用いてランダムペプチド配列をコードするDNAを増幅した。プライマーはフォワードプライマー1(配列番号11)及びリバースプライマー1(配列番号12)を用いた。PCRを98℃10秒、55℃15秒、68℃40秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。続いて、この反応液の1/25量を用いてフォワードプライマー2(配列番号13)及びリバースプライマー2(配列番号14)を用いて同量の反応液を調製した。PCRを98℃10秒、55℃15秒、68℃15秒を1サイクルとして30サイクル実施した。この反応液からNucleospin extract II(マッハライ・ナーゲル社製)を用いてDNAを精製し、制限酵素BglIを用いて切断した。電気泳動後、Nucleospin extract IIを用いて精製し、DNA ligation kit<Mighty Mix>を用いて、実施例1で調製したAAV2WG-Cap-ScaI-S4/pUC118Sxにリクローニングした。
【0055】
(3)AAV2ランダムペプチドウイルスライブラリーの製造と精製
実施例4-(2)で得たプラスミドを使用し、実施例2及び実施例3と同様の方法で、AAV2ランダムペプチドウイルスライブラリーの製造とAAV粒子の精製を行った。
【0056】
(4)スクリーニング
実施例4-(1)と同様の方法でスクリーニング(マウスへのAAV粒子の投与と脳の回収)を行い、ゲノムDNAを抽出した(ラウンド2)。さらに、抽出したゲノムDNAを使用して、再度リクリーニング、ライブラリー製造と精製及びスクリーニングを行いゲノムDNAを抽出した(ラウンド3)。
【0057】
(5)ランダムペプチドのシークエンシング
各スクリーニング段階(ラウンド1~ラウンド3)のAAVランダムペプチドプラスミドライブラリーのシークエンシングを行った。そのうちラウンド2およびラウンド3に脳へ集積したクローンがコードするペプチド配列と出現回数を表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1及び表2に示すように、特定のペプチド配列を含有するキャプシドを有するAAVが脳に集積していることがわかった。なかでも、ラウンド3で確認された配列であるGSGVTWV(配列番号15)、AHGYREP(配列番号16)、EYGFREG(配列番号17)、及びETGHGWV(配列番号18)は脳に感染しやすい配列であることが示唆された。
【0061】
また、ラウンド2で確認された配列とスペーサーとを含む配列である、配列番号63~配列番号110が脳に感染しやすい配列であることが示唆された。特に、ラウンド3で確認された配列とスペーサーとを含む配列である、GGSGVTWVA(配列番号63)、GAHGYREPA(配列番号64)、GEYGFREGA(配列番号65)、及びGETGHGWVA(配列番号66)が脳に感染しやすい配列であることが示唆された。
【0062】
実施例5 取得ペプチド配列を持つAAVベクターの指向性評価
(1)取得ペプチド配列をもつpRCヘルパープラスミドの構築
実施例4-(5)で得られたペプチド配列(配列番号15~20)を持つAAV2WG-Cap-ScaI-S4/pUC118Sxクローンを制限酵素SnaBI(タカラバイオ社製)及びHindIII(タカラバイオ社製)で消化して得た断片と、pAAVRC2ベクター(CELL BIOLABS社製)をSnaBI及びHindIIIで消化して得たベクター断片とを、DNA ligation kit<Mighty Mix>(タカラバイオ社製)を用いて連結し、ヘルパープラスミドpRC-GSGVTWV、pRC-AHGYREP、pRC-EYGFREG、pRC-ETGHGWV、pRC-GGGIGYV、及びpRC-ERGVGWVを得た。
【0063】
(2)AAV2-LacZキャプシド変異体の製造と精製
pAAV-LacZ(タカラバイオ社製)、pHELP及び実施例5-(1)で調製したpRCヘルパープラスミド(pRC-GSGVTWV、pRC-AHGYREP、pRC-EYGFREG、pRC-ETGHGWV、pRC-GGGIGYV、又はpRC-ERGVGWV)を、PEIpro(Polyplus社製)を用いて、T225cmフラスコに播種しておいた293T細胞にトランスフェクションした。なお、ペプチド配列をもつpRCヘルパープラスミドの代わりに野生型キャプシドを搭載したpRC2ベクターをトランスフェクションし、対照とした。トランスフェクションされた293T細胞を、37℃のCOインキュベーターで72時間培養した。T225cmフラスコからAAVを含む上清を回収し、AVBセファロース(GEヘルスケア社製)を用いてAAVをアフィニティ精製した。その後、限外ろ過によりAAVを濃縮精製することでAAV精製溶液を調製した。その後、実施例2-(4)に示した方法で、AAVベクターの力価を定量した。
【0064】
(3)AAV精製溶液のマウスへの投与
実施例5-(2)で得たAAV精製溶液を0.22μmフィルターろ過を行った後に、マウス一匹当たり0.5×1011VG/マウスとなるように、マウス尾静脈から投与した。
【0065】
(4)脳及びその他組織からのゲノムDNA調製及びAAVゲノムの定量
実施例5-(3)でAAVを投与したマウスを、4週間後に安楽死させ、各組織を回収した。NucleoSpin tissue(マッハライ・ナーゲル社製)を用いて、各組織からゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAをサンプルとしてリアルタイムPCRを実施し、各組織中に含まれるAAVベクターゲノム量を定量した。各組織中の全ゲノムDNA1μg当たりのAAVゲノムDNAの分子数を図2に示す。
【0066】
図2から、GSGVTWV、AHGYREP、EYGFREG、ETGHGWV、GGGIGYV及びERGVGWVのペプチド配列を有するキャプシドのAAVベクターは脳に移行しやすいことが示された。さらに、脳だけでなく、肺への指向性も示すAAVベクターもあった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により、全身投与により脳に指向性を有するAAVキャプシドタンパク質変異体、あるいはアミノ酸配列を提供され、脳に効率的に遺伝子を導入する方法が提供される。
【配列表フリーテキスト】
【0068】
SEQ ID NO:1: AAV2 capsid 586-591 coding sequence
SEQ ID NO:2: Converted AAV2 capsid coding sequence
SEQ ID NO:3: Ampicillin resistance gene before conversion
SEQ ID NO:4: Ampicillin resistance gene after conversion
SEQ ID NO:5: AAV2 rep gene before conversion
SEQ ID NO:6: AAV2 rep gene after conversion
SEQ ID NO:7: DNA sequence coding random peptide
SEQ ID NO:8: Primer for synthesizing double strand DNA
SEQ ID NO:9: Forward primer for quantitation of AAV titer
SEQ ID NO:10: Reverse primer for quantitation of AAV titer
SEQ ID NO:11: Forward primer1 for amplification of random peptide coding region
SEQ ID NO:12: Reverse primer1 for amplification of random peptide coding region
SEQ ID NO:13: Forward primer2 for amplification of random peptide coding region
SEQ ID NO:14: Reverse primer2 for amplification of random peptide coding region
SEQ ID NO:15: Peptide sequence GSGVTWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:16: Peptide sequence AHGYREP for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:17: Peptide sequence EYGFREG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:18: Peptide sequence ETGHGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:19: Peptide sequence GGGIGYV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:20: Peptide sequence ERGVGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:21: Peptide sequence ENGVGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:22: Peptide sequence GSGVGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:23: Peptide sequence ADGITWG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:24: Peptide sequence ADGTRWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:25: Peptide sequence ADKVGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:26: Peptide sequence AGGVGWT for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:27: Peptide sequence AGGVTGV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:28: Peptide sequence AGNAGGM for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:29: Peptide sequence AGQLGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:30: Peptide sequence ARGTEWE for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:31: Peptide sequence DAGHGFV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:32: Peptide sequence EANVGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:33: Peptide sequence ECGLGEG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:34: Peptide sequence EGEVTWL for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:35: Peptide sequence EGGDGRV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:36: Peptide sequence EGGFGEA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:37: Peptide sequence EGGG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:38: Peptide sequence EGGMVWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:39: Peptide sequence EGGVGWT for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:40: Peptide sequence EGGVMWL for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:41: Peptide sequence EGQVTWL for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:42: Peptide sequence ERGHGWG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:43: Peptide sequence ESGVGWK for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:44: Peptide sequence GDGFGGV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:45: Peptide sequence GDGVTWA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:46: Peptide sequence GEGRGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:47: Peptide sequence GGGDGWI for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:48: Peptide sequence GGGDSWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:49: Peptide sequence GGGIAWVAQAAL for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:50: Peptide sequence GGGVGWA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:51: Peptide sequence GKGQVME for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:52: Peptide sequence GNGTGGG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:53: Peptide sequence GQGGHME for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:54: Peptide sequence GRGVTWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:55: Peptide sequence GSGMGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:56: Peptide sequence GVGGGVV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:57: Peptide sequence NDVRGRV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:58: Peptide sequence RDGLGFV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:59: Peptide sequence TDGLGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:60: Peptide sequence TEGHGWV for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:61: Peptide sequence VAERLYG for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:62: Peptide sequence VARGAGE for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:63: Peptide sequence GGSGVTWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:64: Peptide sequence GAHGYREPA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:65: Peptide sequence GEYGFREGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:66: Peptide sequence GETGHGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:67: Peptide sequence GGGGIGYVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:68: Peptide sequence GERGVGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:69: Peptide sequence GENGVGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:70: Peptide sequence GGSGVGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:71: Peptide sequence GADGITWGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:72: Peptide sequence GADGTRWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:73: Peptide sequence GADKVGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:74: Peptide sequence GAGGVGWTA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:75: Peptide sequence GAGGVTGVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:76: Peptide sequence GAGNAGGMA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:77: Peptide sequence GAGQLGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:78: Peptide sequence GARGTEWEA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:79: Peptide sequence GDAGHGFVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:80: Peptide sequence GEANVGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:81: Peptide sequence GECGLGEGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:82: Peptide sequence GEGEVTWLA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:83: Peptide sequence GEGGDGRVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:84: Peptide sequence GEGGFGEAA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:85: Peptide sequence GEGGGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:86: Peptide sequence GEGGMVWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:87: Peptide sequence GEGGVGWTA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:88: Peptide sequence GEGGVMWLA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:89: Peptide sequence GEGQVTWLA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:90: Peptide sequence GERGHGWGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:91: Peptide sequence GESGVGWKA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:92: Peptide sequence GGDGFGGVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:93: Peptide sequence GGDGVTWAA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:94: Peptide sequence GGEGRGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:95: Peptide sequence GGGGDGWIA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:96: Peptide sequence GGGGDSWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:97: Peptide sequence GGGGIAWVAQAALA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:98: Peptide sequence GGGGVGWAA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:99: Peptide sequence GGKGQVMEA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:100: Peptide sequence GGNGTGGGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:101: Peptide sequence GGQGGHMEA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:102: Peptide sequence GGRGVTWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:103: Peptide sequence GGSGMGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:104: Peptide sequence GGVGGGVVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:105: Peptide sequence GNDVRGRVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:106: Peptide sequence GRDGLGFVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:107: Peptide sequence GTDGLGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:108: Peptide sequence GTEGHGWVA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:109: Peptide sequence GVAERLYGA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:110: Peptide sequence GVARGAGEA for AAV capsid protein mutant
SEQ ID NO:111: Peptide sequence represented by Formula I
SEQ ID NO:112: Peptide sequence represented by Formula II
SEQ ID NO:113: Peptide sequence represented by Formula III
SEQ ID NO:114: Peptide sequence represented by Formula IV
SEQ ID NO:115: Peptide sequence represented by Formula V
SEQ ID NO:116: Peptide sequence represented by Formula VI
図1
図2
【配列表】
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