(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】特にモータサイクル用のブレーキ又はクラッチのためのレバー式の改良された作動装置と、レバー式作動装置の分解/組立方法
(51)【国際特許分類】
B62K 23/06 20060101AFI20240722BHJP
B60T 7/10 20060101ALI20240722BHJP
B62L 3/02 20060101ALI20240722BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20240722BHJP
B62L 3/00 20060101ALI20240722BHJP
F16D 25/08 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B62K23/06
B60T7/10 L
B62L3/02 D
B60T17/00 D
B62L3/00 A
F16D25/08 C
(21)【出願番号】P 2021525684
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 IB2019059267
(87)【国際公開番号】W WO2020099968
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】102018000010228
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】デポンティ,アンドレア・
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルデッリ,ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルディ,ピエランジェロ
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-509112(JP,A)
【文献】特開2005-1440(JP,A)
【文献】特開平8-268259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0049945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 23/06
B60T 1/00- 7/10
B60T 15/00- 17/22
B62L 3/02
B62L 3/00
F16D 25/00- 39/00
F16D 48/00- 48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)であって、
フロート(12)を備えた油圧ポンプを収容するポンプ本体(8)と、回転軸(X-X)を定義するレバーピン(20)の周りを回転するように前記ポンプ本体(8)に関連付けられたハブ(16)とを有し、
前記ハブ(16)は、前記フロート(12)を動かすために前記フロート(12)に動作上接続されたチップ(24)と関連づけられており、
前記ポンプ本体(8)は、前記レバーピン(20)のための固定孔(36)が設けられた一対の固定耳部(32)を有し、
前記レバーピン(20)は、関連するレバーアセンブリ(40)を回転自在に支持し、
前記レバー式作動装置(4)は、手動の作動レバー(44)と、前記ハブ(16)を介して前記チップ(24)を作動するために適したレバーガイド(48)とを有し、
前記レバー式作動装置(4)は、前記レバーピン(20)と前記レバーアセンブリ(40)を分解及び/又は交換するために、前記レバーピン(20)と前記レバーアセンブリ(40)を外した後も、前記ハブ(16)を前記ポンプ本体(8)に連結された状態に保つ保持手段(52)を有する、ブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項2】
前記保持手段(52)は、前記ポンプ本体(8)に連結されており、前記レバーアセンブリ(40)と前記レバーピン(20)から機械的に分離されている、請求項1のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項3】
前記保持手段(52)は、
前記回転軸(X-X)を中心に、前記レバーピン(20)及び前記ハブ(16)と同軸に固定されたブッシング(56)を有し、
前記固定孔(36)の一方に少なくとも部分的に挿入されて、前記ポンプ本体(8)に前記ハブ(16)を拘束している、請求項1又は2のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項4】
前記ブッシング(56)は、固定耳部(32)に作られた前記固定孔(36)に
干渉して連結されている、請求項3のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項5】
前記ブッシング(56)の前記固定孔(36)への連結は、前記ポンプ本体(8)に対する前記ブッシング(56)の前記回転軸(X-X)に平行な軸方向の移動を防止するよう構成されている、請求項4のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項6】
前記ブッシング(56)は、前記ハブ(16)が回転できるように、前記ハブ(16)に隙間を設けた状態で挿入されている、請求項3~5のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項7】
前記ブッシング(56)は、前記固定耳部(32)の間に片持ち部(60)を有し、
前記片持ち部は、前記固定耳部(32)の間の最大軸方向距離(64)よりも短く、前記ハブ(16)の軸方向の厚みよりも小さな厚みを有する自由空間を形成し、
前記厚みと前記最大軸方向距離(64)は、前記回転軸(X-X)に平行な方向の寸法である、請求項3~6のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項8】
前記レバーガイド(48)は、前記レバーピン(20)を収容する前記固定孔(36)に整列された連結孔(84)を有する一対の分岐部(76,80)を備えたフォーク形状を有し、
前記分岐部(76,80)の一方は、前記ポンプ本体(8)の前記固定耳部(32)の間に、前記ブッシング(56)に対して軸方向にオフセットした状態で挿入される、請求項3~7のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項9】
前記ブッシング(56)は、前記固定耳部(32)の間に片持ち部(60)を有し、
前記片持ち部は、前記固定耳部(32)の間の最大軸方向距離(64)よりも短く、前記ハブ(16)の軸方向の厚みよりも小さな厚みを有する自由空間を形成し、
前記厚みと前記最大軸方向距離(64)は、前記回転軸(X-X)に平行な方向の寸法であり、
前記レバーガイド(48)は、前記レバーピン(20)を収容する前記固定孔(36)に整列された連結孔(84)を有する一対の分岐部(76,80)を備えたフォーク形状を有し、
前記分岐部(76,80)の一方は、前記ポンプ本体(8)の前記固定耳部(32)の間に、前記ブッシング(56)に対して軸方向にオフセットした状態で挿入され、
前記分岐部(76、80)は、前記自由空間(68)の内側に挿入される、請求項3~6のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項10】
前記レバーピン(20)は、前記レバーガイド(48)の前記分岐部(76,80)の連結孔(84)に連結される、請求項8のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項11】
前記ブッシング(56)は、前記ブッシング(56)が挿入される前記固定耳部(32)の軸方向の厚みと前記ハブ(16)の前記軸方向の厚み(72)との合計よりも小さい又は同じ高さを有し、
前記固定耳部(32)の前記軸方向の厚みと前記ハブ(16)の前記軸方向の厚み(72)は前記回転軸(X-X)に平行な方向に測定された寸法である、
請求項3~10のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項12】
前記保持手段(52)は、前記ハブ(16)と、前記ポンプ本体(8)の少なくとも一方の内側に配置される、請求項3~11のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項13】
前記レバーピン(20)は、ねじ付き頭部(88)を有し、
前記ねじ付き頭部(88)は、前記ポンプ本体(8)の前記固定耳部(32)に設けたナットねじ(90)に螺合する、請求項3~12のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項14】
前記レバーピン(20)は、前記レバーピン(20)の前記ねじ付き頭部(88)の反対側に安全ナット(94)が螺合される、請求項13のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項15】
前記レバーピン(20)には円筒カラー(96)が設けられ、
前記円筒カラー(96)は、前記レバーガイド(48)に対するヒンジとして機能するとともに、前記ブッシング(56)の軸方向端部(98)に対する当接部として機能する、請求項3~14のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項16】
前記フロート(12)は、前記レバーアセンブリの非動作時に流体供給孔(27)の上流側に配置されるプライマリガスケット(26)を有する、請求項3~15のいずれかのブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置(4)。
【請求項17】
ブレーキ又はクラッチ用のレバーを分解/組立する方法であって、前記方法は、
請求項3~16のいずれかのレバー作動式作動装置(4)を提供する工程と、
前記レバーピン(20)を取り除く工程と、
前記ハブ(16)が前記ブッシング(56)に拘束された状態で、前記回転軸(X-X)に直交する径方向に前記レバーアセンブリ(40)を引き抜く工程、を有するブレーキ又はクラッチ用のレバーを分解/組立する方法。
【請求項18】
前記ハブ(16)が前記ブッシング(56)に拘束された状態で、前記径方向から新たなレバーアセンブリ(40)を挿入する工程と、
前記レバーピン(20)によって、前記新たなレバーアセンブリ(40)を固定する工程、を有する請求項17のブレーキ又はクラッチ用のレバーを分解/組立する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にモータサイクル用のブレーキ又はクラッチのためのレバーで操作される改良型作動装置と、レバーで操作される作動装置の解体/組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レバー操作される作動装置(すなわち、ポンプ、ブレーキ、又はクラッチ)の作動レバーを交換する場合、ユーザは、対応するプッシュロッド(ポンプの油圧油を加圧するように設計された作動レバーのプッシャとポンプのフロートとの間の機械的連結を形成している円筒部材)におけるレバーアセンブリを交換しなければならない。
【0003】
安全上の理由から、レバー式作動装置の交換レバーは、プッシュロッドと一緒に提供される。プッシュロッドは、もともと取り付けられていたプッシュロッドよりも長さが短い。
【0004】
この仕組みは、レバーを交換する際に、流体タンクをポンプに流体接続するポンプ供給孔の下流に、フロートに設けたプライマリガスケットが配置されるのを避けるために使用される。
【0005】
確かに、レバーが静止した状態で、ガスケットは常に供給孔の上流側に位置し、ディスクブレーキの場合はブレーキアクションと同時に発生する摩擦材料の摩耗によりパッドに作用するピストンの前進を、流体が穴埋めすることを保証している。
【0006】
または、レバーの静止状態で、プライマリガスケットは供給孔の下流にある場合、流体が補充されず、付随的減速又は乗物の軸の付随的なブロッキングが発生する。
【0007】
同時に、プライマリガスケットと供給孔との間の距離を校正(キャリブレーション)して小さくしなければならない。この距離はレバーの空ストロークを形成しており、ユーザによる感覚を左右するために重要である。
【0008】
そのために、空ストローク(cvf)の校正は重要で、常に工場で決められるデリケートなパラメータである。
【0009】
そのため、現状の交換レバーは、工場で取り付けられるもともとの部品よりもわずかに短いプッシュロッドを有する。そのため、交換部品の公差により、空ストローク(cvf)の変化が交換部品のプッシュロッドの長さに吸収され、プライマリガスケットはポンプ供給孔の下流側に位置しないことが保証される。
【0010】
しかし、レバーを交換すると、空ストロークは増加する傾向がある。そして、ポンプフロートの空ストロークが増加すると、ユーザに対するレバーの感覚が低下する。
【発明の概要】
【0011】
したがって、従来技術に関連して説明した上述の欠点と制約を解消する必要がある。
【0012】
特に、レバー式の改良された作動装置を利用可能にする必要がある。この改良された作動装置により、工場で設定されたパラメータに関連する空ストロークを変えることなく、また、ユーザのレバー間隔を変えることなく、作動レバーを素早くかつ効率良く交換できる。
【0013】
この必要性は、請求項1のレバー式作動装置と請求項17のレバー式作動装置の分解/組立方法によって満足される。
【0014】
ブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置は、
フロートを備えた油圧ポンプを収容するポンプ本体と、回転軸(X-X)を定義するレバーピンの周りを回転するように前記ポンプ本体に関連付けられたハブとを有し、
前記ハブは、前記フロートを動かすために前記フロートに動作上接続されたチップと関連づけられており、
前記ポンプ本体は、前記レバーピンのための固定孔が設けられた一対の固定耳部を有し、
前記レバーピンは、関連するレバーアセンブリを回転自在に支持し
前記レバー式作動装置は、手動の作動レバーと、前記ハブを介して前記チップを作動するために適したレバーガイドとを有し、
前記作動装置は、前記レバーピンと前記レバーアセンブリを分解及び/又は交換するために、前記レバーピンと前記レバーアセンブリを外した後も、前記ハブを前記ポンプ本体に連結された状態に保つ保持手段を有する。
【0015】
可能性のある実施形態によれば、前記保持手段は、前記ポンプ本体に連結されており、前記レバーアセンブリと前記レバーピンから機械的に分離されている。
【0016】
可能性のある実施形態によれば、
前記保持手段は、
前記回転軸(X-X)を中心に、前記レバーピン及び前記ハブと同軸に固定されたブッシングを有し、
前記固定孔の一方に少なくとも部分的に挿入されて、前記ポンプ本体に前記ハブを拘束している。
【0017】
可能性のある実施形態によれば、前記ブッシングは、固定耳部に作られた前記固定孔に干渉して連結されている。
【0018】
可能性のある実施形態によれば、前記ブッシングの前記固定孔への連結は、前記ポンプ本体に対する前記ブッシングの前記回転軸(X-X)に平行な軸方向の移動を防止するよう構成されている。
【0019】
可能性のある実施形態によれば、前記ブッシングは、前記ハブが回転できるように、前記ハブに隙間を設けた状態で挿入されている。
【0020】
可能性のある実施形態によれば、
前記ブッシングは、前記耳部の間に片持ち部を有し、
前記片持ち部は、前記耳部の間の最大軸方向距離よりも短く、前記ハブの軸方向の厚みよりも小さな厚みを有する自由空間を形成し、
前記厚みと前記距離は、前記回転軸(X-X)に平行な方向の寸法である。
【0021】
可能性のある実施形態によれば、
前記レバーガイドは、前記レバーピンを収容する前記固定孔に整列された連結孔を有する一対の分岐部を備えたフォーク形状を有し、
前記分岐部の一方は、前記ポンプ本体の前記固定耳部の間に、前記ブッシング(56)に対して軸方向にオフセットした状態で挿入される。
【0022】
可能性のある実施形態によれば、前記分岐部は、前記自由空間の内側に挿入される。
【0023】
可能性のある実施形態によれば、前記レバーピンは、前記レバーガイドの前記分岐部の連結孔に連結される。
【0024】
可能性のある実施形態によれば、前記ブッシングは、前記ブッシングが挿入される前記固定耳部の軸方向の厚みと前記ハブの前記軸方向の厚みとの合計よりも小さい又は同じ高さを有し、前記厚みは前記回転軸(X-X)に平行な方向に測定された寸法である。
【0025】
可能性のある実施形態によれば、前記保持手段は、前記ハブと、前記ポンプ手段の少なくとも一方の内側に配置される。
【0026】
可能性のある実施形態によれば、
前記レバーピンは、ねじ付き頭部を有し、
前記ねじ付き頭部は、前記ポンプ本体の前記固定耳部に設けたナットねじに螺合する。
【0027】
可能性のある実施形態によれば、前記レバーピンは、前記レバーピンの前記ねじ付き頭部の反対側に安全ナットが螺合される。
【0028】
可能性のある実施形態によれば、
前記レバーピンには円筒カラーが設けられ、
前記円筒カラーは、前記レバーガイドに対するヒンジとして機能するとともに、前記ブッシングの軸方向端部に対する当接部として機能する。
【0029】
可能性のある実施形態によれば、前記フロートは、前記レバーアセンブリの非動作時に流体供給孔の上流側に配置されるプライマリガスケットを有する。
【0030】
可能性のある実施形態によれば、本発明はブレーキ又はクラッチ用のレバーを分解/組立する方法であって、
上述のいずれかのレバー作動式作動装置を提供する工程と、
前記レバーピンを取り除く工程と、
前記ハブが前記ブッシングに拘束された状態で、前記回転軸(X-X)に直交する径方向に前記レバーアセンブリを引き抜く工程を有する。
【0031】
可能性のある実施形態によれば、
ブレーキ又はクラッチ用のレバーを分解/組立する方法は、
前記ハブが前記ブッシングに拘束された状態で、前記径方向から新たなレバーアセンブリを挿入する工程と、
前記レバーピンによって、前記新たなレバーアセンブリを固定する工程を有する。
【0032】
本発明のさらなる特徴と利点は、好ましいが非限定的な実施形態の以下の説明から理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、従来のレバー式作動装置の分解斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るレバー式作動装置の組み立てた状態の詳細を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のレバー式作動装置の組み立てた状態の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本発明のレバー式作動装置の組み立てた状態の斜視図を示す。
【
図5】
図5は、
図3,4のレバー式作動装置の組み立てた状態の詳細を示す、作動レバーのピンの位置における断面図である。
【
図6a】
図6aは、本発明に係るレバー式作動装置の一連の組立工程の断面図を示す。
【
図6b】
図6bは、本発明に係るレバー式作動装置の一連の組立工程の断面図を示す。
【
図6c】
図6cは、本発明に係るレバー式作動装置の一連の組立工程の断面図を示す。
【
図6d】
図6dは、本発明に係るレバー式作動装置の一連の組立工程の断面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明に係るレバー式作動装置の分解工程の斜視図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0034】
以下に説明する複数の実施形態に共通する部材の要素又は部分は、同じ符号を用いて示す。上述の図面を参照すると、ビークル(乗物)(特にモータサイクル)のブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置は、全体が符号4で示されている。
【0035】
ブレーキ又はクラッチ用のレバー式作動装置4は、フロート12を有する油圧ポンプを収容したポンプ本体8と、回転軸X-Xを定義するレバーピンを中心にポンプ本体8に回転自在に取り付けられたハブ16を有する。
【0036】
ハブ16は、フロートを作動するために、該フロート12に動作上接続されたチップ24と連結されている。
【0037】
フロート12は、プライマリガスケット26を有する。プライマリガスケット26は、レバー式作動装置4が静止状態、すなわち非動作状態で、流体供給孔27の上流側に配置される。
【0038】
ポンプ本体8はまた、関連する支持部、典型的にはモータサイクルのハンドルバーに、公知の方法で固定するための固定手段28を有する。
【0039】
ポンプ本体8は一対の固定耳部32を有する。耳部32には、レバーピン20のための固定孔36が設けられている。
【0040】
レバーピン20は、関連するレバーアセンブリ40を回転可能に支持する。レバーアセンブリ40は、装置4を作動するためにユーザによって把持されて引かれるのに適した手動の作動レバー44と、ハブ16を介してチップ24を動作するのに適したレバーガイド48を有する。
【0041】
作動レバー44とレバーガイド48は、一つの部品であってもよい。
【0042】
レバー式作動装置4は保持手段52を有するのが好都合である。保持手段52は、分解及び/又は組立のためにレバーピン20とレバーアセンブリ40を外した後も、ポンプ本体8に連結されたハブ16を保持する。
【0043】
保持手段52は、ポンプ本体8に連結されており、レバーアセンブリ40とレバーピン20から機械的に分離されている。これにより、以下に説明するように、レバーアセンブリ40は、ハブ16とチップ24を取り除く必要なく、またチップ24を静止位置に再校正する必要なく、外すことができる。
【0044】
実施形態によれば、上述の保持手段52は、回転軸X-Xの周りに、レバーピン20とハブ16に同軸的に取り付けられたブッシング56を有する。ブッシング56は、ハブ16がポンプ本体8に拘束されるように、固定孔36の一方に少なくとも一部が挿入される。
【0045】
好ましくは、ブッシング56は、固定耳部32に形成された固定孔36に、干渉した状態で連結される。
【0046】
ブッシング56と固定孔36と間の干渉連結により、ポンプ本体8に対して、回転軸X-Xに平行な軸方向にブッシング56が移動するのを防止している。
【0047】
ブッシング56は、ハブ16が回転できるように、ハブ16との間に隙間を有する状態で挿入される。この回転は、作動レバー44とレバーガイド48の回転を、ハブ16とチップ24を経由したレバー44の並進運動に変換するように働く。ハブ16は、レバーアセンブリ40の回転運動に応じて回転する。
【0048】
好ましくは、保持手段52は、ハブ16とポンプ本体8の固定耳部32との内側に配置される。
【0049】
これに関して、実施形態によれば、ブッシング56は、ブッシング56が挿入される固定耳部32の軸方向の厚みとハブ16の軸方向の厚みの合計よりも小さいか又は同じ高さを有する。この軸方向の厚みは、回転軸X-Xに平行に測定されたものである。
【0050】
好ましくは、ブッシング56は、固定耳部32の間に片持ち部分60を有する。片持ち部分60は、耳部32の間の最大軸方向長さ64よりも小さい。これにより、ハブ16の軸方向の厚み72よりも小さな厚みを有する自由空間68が形成される。これらの厚みと距離は、回転軸X-Xに平行に測定されたものである。
【0051】
上述の構成により、ブッシングを少なくとも部分的に外さない限り、ハブ16は偶発的にブッシング56、さらにはポンプ本体8から外れることがない。したがって、ハブ16は、対応するチップ24と共に、所定の場所に留まり、工場で校正された空ストローク(cvf)が変わることはない。
【0052】
一つの実施形態によれば、レバーガイド48は、一対の分岐部76,80を有するフォーク形状を有する。分岐部76,80は、レバーピン20を収容する固定孔36に整列する連結孔84が形成されている。分岐部76,80の一方は、ブッシング56に対して軸方向にオフセットした状態で、ポンプ本体8の固定耳部32の間に挿入される。
【0053】
好ましくは、分岐部は自由空間68の内側に挿入される。
【0054】
レバーピン20は、レバーガイド48の分岐部76,80の連結孔84に、隙間をあけた状態で連結される。これにより、レバーアセンブリ40は、ユーザが手動で力を加えると、回転軸X-Xを中心に自由に回転する。
【0055】
レバーピン20は、種々の構成を備えてもよい。
【0056】
例えば、レバーピン20には、ポンプ本体8の固定耳部32に形成されたナットねじ90に噛み合うねじ付き頭部88を設ける。
【0057】
好ましくは、レバーピン20には、レバーピン20のねじ頭部88の反対側に噛み合う安全ナット94を設ける。
【0058】
実施形態によれば、レバーピン20には、レバーガイド48のヒンジとして機能し且つブッシング56の軸方向端部98に対する当接部として機能する円筒カラー96を設ける。
【0059】
本発明に係るレバー作動装置の組立及び分解方法を説明する。
【0060】
レバーアセンブリ40を分解して交換するためには、特に、安全ナット94とレバーピン20を外し、レバーピン20をポンプ本体8から取り除く。この時点で、レバーアセンブリ40は、解放され、ポンプ本体8のその他の部分から自由に分離される。
【0061】
ブッシング56によってポンプ本体8に拘束されているため、その動作中、ハブ16はもとの位置、特にポンプ本体8の固定孔36に留まる。したがって、工場で校正された空ストローク(cvf)が変わることはない。
【0062】
図6a~
図6dに示されるように、再び組立てる順序は逆である。
【0063】
ハブ6は、ポンプ本体にブッシング56が固定されているので、組立及び分解の間、常にポンプ本体8に拘束されている。
【0064】
上述のことが理解されるように、本発明のレバー式作動装置によれば、解決すべきこととして当業界で紹介された課題を解消する。
【0065】
本発明によれば、特に工場で設定される空ストロークは、レバーの交換作業中に変更されることがないため、性能と安全の点で有利である。
【0066】
確かに、本発明は、レバーの交換中、工場で設定されたパラメータを変えることがないという目的をもって、空ストロークを校正する必要のないレバーアセンブリを得ることができる。
【0067】
したがって、ポンプの空ストロークを変えることなく、レバーを交換できる。
【0068】
これは、空ストロークの決定に関連する部品をレバーアセンブリから除くということによって得られる。
【0069】
特に、レバーを交換する作業の間、ハブはポンプアセンブリに留まり、レバーアセンブリのその他の部分から解放されることで十分である。これにより、レバーアセンブリは、工場で設定されたポンプの空ストロークの校正を変えることなく、分解し交換できる。
【0070】
したがって、現在公知の形態に関して、レバー交換作業が簡単になる。
【0071】
ポンプアセンブリの上部(目に見える部分)は、ユーザの目には何も変わらないように、同じ位置に留まる。
【0072】
本発明の解決策により、レバーの交換に関連する種々の部品数は公知の解決策よりも少なくなり、それによりコストも低減する。
【0073】
当業者は、偶発的な特有の必要性に応えるために、上述のレバー式作動装置にいくつかの変更を加えることができ、それらはすべて特許請求の範囲に記載した本発明の範囲に含まれるものである。