(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ペルフルオロ脂環式メチルビニルエーテルのコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 214/26 20060101AFI20240722BHJP
C08F 216/14 20060101ALI20240722BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20240722BHJP
C09D 127/18 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C08F214/26
C08F216/14
C08L27/18
C09D127/18
(21)【出願番号】P 2021526225
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 US2019061066
(87)【国際公開番号】W WO2020102271
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ゲッラ,ミグエル エー.
(72)【発明者】
【氏名】福士 達夫
(72)【発明者】
【氏名】リランド,ブラッドフォード エル.
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016540(JP,A)
【文献】特表平07-501096(JP,A)
【文献】特開2003-160616(JP,A)
【文献】特開2018-087341(JP,A)
【文献】特開2001-354720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08C 19/00- 19/44
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルフルオロポリマーであって、
少なくとも
(a)
10mol%以上且つ88mol%以下のテトラフルオロエチレンモノマー、
(b)相補量の式I
のモノマー:
Rf-CF
2-[OCF(CF
3)CF
2]
n-O-CF=CF
2
[式中、Rfは、6個の炭素原子、11個のフッ素原子、及び脂環式基を含む全フッ素化基であり、nは0,1,又は2である]
及び
(c)任意の他のモノマー
から誘導された、実質的に融点を有しない、ペルフルオロポリマー。
【請求項2】
前記式Iのモノマーが、ペルフルオロ(シクロヘキシルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(3-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2-ジメチルシクロブチルメチルビニルエーテル)、及びペルフルオロ(3-ジメチルシクロブチルメチルビニルエーテル)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のペルフルオロポリマー。
【請求項3】
前記式Iのモノマーが、ペルフルオロ(シクロヘキシルメチルビニルエーテル)を含む、請求項1に記載のペルフルオロポリマー。
【請求項4】
前記(b)が0.5mol%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペルフルオロポリマー。
【請求項5】
前記
(c)が、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルアリルエーテル、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つ
である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のペルフルオロポリマー。
【請求項6】
前記
(c)が、
10mol%
以上の
、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルアリルエーテル、又はこれらの組み合わせ
である、請求項
5に記載のペルフルオロポリマー。
【請求項7】
前記(c)が、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、CF
3
-(CF
2
)
2
-O-CF(CF
3
)-CF
2
-O-CF(CF
3
)-CF
2
-O-CF=CF
2
、ペルフルオロ-メトキシ-メチルビニルエーテル(CF
3
-O-CF
2
-O-CF=CF
2
)、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、請求項5に記載のベルフルオロポリマー。
【請求項8】
前記
(b)が、
10mol%
以上である、請求項1~
3のいずれか一項
に記載のペルフルオロポリマー。
【請求項9】
フルオロポリマーであって、
(a)10mol%以上且つ88mol%以下の、テトラフルオロエチレンから誘導された共重合モノマー単位と、
(b)相補量の、下記式:
【化1】
及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの共重合モノマー単位を含
み、実質的に融点を有しない、フルオロポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーが室温より高いガラス転移温度を有する、請求項
9に記載のフルオロポリマー。
【請求項11】
請求項
9又は10に記載のフルオロポリマーを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)(perfluoro(cycloaliphatic methyl vinyl ether))との非晶質コポリマーが、その組成物と共に記載される。
【発明の概要】
【0002】
全フッ素化ポリマーは、その優れた化学的特性、熱特性、及び表面特性に関して既知である。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロプロピレンとヘキサフルオロエチレンとのコポリマー)、及びPFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロエーテルモノマーとのコポリマー)などの全フッ素化ポリマーは、概して、乏しい光学的透明度及び乏しい溶解度という悩みのある結晶性材料である。
【0003】
非晶質ペルフルオロポリマーが提案されている。例えば、米国特許第4,530,569号(Squire)には、TFE(テトラフルオロエチレン)とペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール(PDD)とのコポリマーが記載されている。しかしながら、PDDモノマーは高価であり、重合は溶液重合である。
【0004】
本開示は、エマルジョン重合を介して重合することができ、且つ/又は製造コストがより低い、非晶質フルオロポリマーを対象とする。
【0005】
一態様では、ペルフルオロポリマーであって、88mol%以下のテトラフルオロエチレンモノマー、及び相補量の式I
Rf-CF2-[OCF(CF3)CF2]nO-CF=CF2 (I)
[式中、Rfは、6個の炭素原子、11個のフッ素原子、及び脂環式基を含む全フッ素化基であり、nは0,1,又は2である]によるモノマーから誘導された、実質的に融点を有しない、ペルフルオロポリマーが記載される。
【0006】
別の態様では、フルオロポリマーであって、
【化1】
【化2】
及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの共重合モノマー単位を含む、ペルフルオロポリマーが記載される。
【0007】
上記の概要は、各実施形態を説明することを意図したものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。その他の特徴、目的及び利点は、記載及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例2及び3の波長に対する正透過率パーセントである。
【0009】
【
図2】実施例2及び3の波長に対するヘイズパーセントである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で用いる場合、
用語「a」、「an」及び「the」は、互換的に用いられ、1つ以上を意味し、
用語「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「主鎖」は、ポリマーの開始及び終端の部位を除いたポリマーの主な連続鎖を指す。
「コポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合を指し、トリポリマー(3つの異なるモノマー)、テトラポリマー(4つの異なるモノマー)などを含むことができる。
「架橋」とは、予め形成した2つのポリマー鎖を、化学結合又は化学的な基を使用して連結することを指す。
「相補的」は、ペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)モノマーのモル百分率と、コポリマー中に存在するTFE及び任意の他のモノマーのモル百分率とが、一緒になって100%になることを意味する。
「硬化部位」は、架橋に関与する場合がある、官能基を指す。
「共重合」は、モノマーが一緒に重合してポリマー主鎖を形成することを指す。
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子である。
「全フッ素化」は、全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられている、炭化水素から誘導された基、化合物、又は分子を意味する。しかし、全フッ素化化合物は、酸素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のような、フッ素原子及び炭素原子以外の原子を更に含有してもよい。
「ポリマー」は、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも100,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも500,000ダルトン、少なくとも750,000ダルトン、少なくとも1,000,000ダルトン、又は更には少なくとも1,500,000ダルトンであり、かつポリマーの早期ゲル化を引き起こすほどには高くない数平均分子量(Mn)を有するマクロ構造を指す。
【0011】
更に本明細書では、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0012】
更に本明細書では、「少なくとも1つ」の記載は、1以上の全ての数を含む(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0013】
本明細書で用いる場合、A、B及びC「のうちの少なくとも1つを含む」は、単独の要素A、単独の要素B、単独の要素C、A及びB、A及びC、B及びC、並びに3つ全ての組み合わせを指す。
【0014】
本開示は、テトラフルオロエチレン(TFE)及びペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)から誘導されたペルフルオロポリマーに関する。本明細書に開示されるポリマーは、全フッ素化されており、すなわち、ポリマーがC-F結合を含み、C-H結合を含まないことを意味するが、ポリマーは、重合が開始又は終端するポリマーの末端部にいくつかのC-H結合を有してもよい。ペルフルオロポリマーは非晶質であり、示差走査熱量測定(DSC)によって検出可能な融点を有しない。DSC分析した場合、ポリマーは、DSCで2ミリジュール/gより大きいエンタルピーを有する融点又は溶融転移を有しない。
【0015】
ペルフルオロポリマーは、90、88、85、80、75、70、60、又は更には50mol%以下のTFEから誘導される。一実施形態では、ペルフルオロポリマーは、ペルフルオロポリマー中のモノマーの総モルに基づいて、少なくとも10、20、30、40、50、60、又は更には65mol%のTFEから誘導される。
【0016】
ペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)は、式I:Rf-CF2-[OCF(CF3)CF2]nO-CF=CF2(I)[式中、Rfは、6個の炭素原子、11個のフッ素原子、及び脂環式基を含む全フッ素化基であり、nは0、1、又は2である]によるモノマーである。例示的なRf基としては、ペルフルオロシクロヘキシル、ペルフルオロ(メチルシクロペンチル)、及びペルフルオロ(ジメチルシクロブチル)基が挙げられる。ペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)モノマーは、当該技術分野において既知の技術を用いて、例えば、メチルベンゾエートをフッ素化(例えば、電気化学的フッ素化又は直接フッ素化)し、続いてペルフルオロシクロヘキシル酸フルオリドを単離し、次いで、非プロトン性溶媒中でヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)及び触媒量のフッ化カリウムと反応させ、続いて、HFPO結合付加物を脱カルボキシル化し、1:1結合付加物、ペルフルオロシクロヘキシルメチルビニルエーテル、2:1結合付加物、ペルフルオロシクロヘキシルメトキシプロポキシビニルエーテル、及びより高い結合付加物を単離することによって合成できる。ペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)がどのように合成されたか、及び/又は精製されたかどうかに応じて、ペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)は、ペルフルオロ(シクロヘキシルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(3-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2-ジメチルシクロブチルメチルビニルエーテル)、及び/若しくはペルフルオロ(3-ジメチルシクロブチルメチルビニルエーテル)などの異性体の混合物、又はペルフルオロ(シクロヘキシルメチルビニルエーテル)などの1つの特定の異性体であることができる。Rf基の同様の異性体は、2:1結合付加物で見てとることができる。
【0017】
ペルフルオロポリマーは、相補量の式Iによるペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)から誘導される。例えば、ペルフルオロポリマー中のモノマーの総モルに基づいて、少なくとも0.2、0.4、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は更には50mol%のペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)。一実施形態では、ペルフルオロポリマー中のモノマー上の総モルに基づいて、最大で1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は更には50mol%のペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)が使用される。
【0018】
本明細書に開示されるペルフルオロポリマーは、当該技術分野において既知の他の全フッ素化モノマーから誘導されてもよい。例示的な他のフッ素化モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロクロロエチレン(CTFE)、ペルフルオロビニルエーテル(ペルフルオロアルキルビニルエーテル及びペルフルオロアルコキシビニルエーテルを含む)、ペルフルオロアリルエーテル(ペルフルオロアルキルアリルエーテル及びペルフルオロアルコキシアリルエーテルを含む)、ペルフルオロビス-オレフィン、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール(PDD)、ペルフルオロジメチレン-ビス(ペルフルオロビニルエーテル)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
好適なペルフルオロアルキルビニルモノマーは、一般式:CF2=CF-Rd
f[式中、Rd
fは、1~10、又は更には1~5個の炭素原子のペルフルオロアルキル基を表す]に相当する。
【0020】
本開示において使用し得るペルフルオロビニルエーテルの例としては、式CF2=CF-O-Rf[式中、Rfは、酸素原子がない、又は1個、若しくは2個以上の酸素原子、及び最大で12個、10個、8個、6個、又は更には4個の炭素原子を含有し得る全フッ素化脂肪族基を表す]に相当するものが挙げられる。例示的な全フッ素化ビニルエーテルは、式CF2=CFO(Ra
fO)n(Rb
fO)mRc
f[式中、Ra
f及びRb
fは、1~6個の炭素原子、特に2~6個の炭素原子を含有する異なる直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0~10であり、Rc
fは、炭素原子数1~6個を含有するペルフルオロアルキル基である]に相当する。全フッ素化ビニルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、CF3-(CF2)2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF=CF2及びペルフルオロ-メトキシ-メチルビニルエーテル(CF3-O-CF2-O-CF=CF2)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
本開示において使用し得るペルフルオロアルキルエーテルの例としては、式CF2=CF(CF2)-O-Rf[式中、Rfは、酸素原子がない、又は1個、若しくは2個以上の酸素原子、及び最大10個、最大8個、最大6個、又は更には最大4個の炭素原子を含有し得る全フッ素化脂肪族基を表す]に相当するものが挙げられる。全フッ素化アリルエーテルの具体例としては、CF2=CF2-CF2-O-(CF2)nF[式中、nは1~5の整数である]、及びCF2=CF2-CF2-O-(CF2)x-O-(CF2)y-F[式中、xは2~5の整数、yは1~5の整数である]が挙げられる。全フッ素化アリルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルアリル)エーテル(CF2=CF-CF2-O-CF3)、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n-プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルアリルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルアリルエーテル、及びCF3-(CF2)2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2CF=CF2、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
本開示で使用し得るペルフルオロビス-オレフィンの例としては、式Rf
1Rf
2C=CRf
3-Z-CRf
4=CRf
5Rf
6[式中、Rf
1、Rf
2、Rf
3、Rf
4、及びRf
5は、独立して、F、又は1~18個の炭素原子を含有する全フッ素化アルキル基であり、Zは、直鎖又は分枝鎖である全フッ素化アルキレン又はシクロアルキレン基である]に相当するものが挙げられる。全フッ素化ビス-オレフィンモノマーの具体例としては、CF2=CF-C4F8-CF=CF2、CF2=CF-C2F4-CF=CF2、及びCF2=CF-C6F12-CF=CF2が挙げられる。
【0023】
一実施形態では、ペルフルオロポリマーは、少なくとも0.5、1、5、10、15、20、25、30、40、又は更には50mol%のこれらの他の全フッ素化モノマーから誘導される。一実施形態では、ペルフルオロポリマーは、最大で5、10、15、20、25、30、40、又は更には50mol%のこれらの他の全フッ素化モノマーから誘導される。
【0024】
一実施形態では、ペルフルオロポリマーは、ペルフルオロポリマーが基材への接着を助ける基を含むように合成されてもよい。このような基としては、シラン、ホスフェート、又は特に金属基材への固着時には、カルボン酸基などの酸性基を挙げることができる。典型的には、フッ素化ポリマーを作製するために使用されるモノマー1モル当たり少なくとも0.5、0.75、又は更には1モルの基が必要である。一実施形態では、フッ素化ポリマーを作製するために使用されるモノマー1モル当たり、最大で2、3、4、又は更には5モルの基が必要である。
【0025】
一実施形態では、開示されるペルフルオロポリマーは、PDDから誘導されない。
【0026】
一実施形態では、本明細書に開示されるペルフルオロポリマーは、米国特許第4,897,457号(Nakamuraら)に開示されているものなどのポリマー主鎖に沿って位置する環状基を実質的に含まない(すなわち、5、2、1、又は更には0.5mol%未満の環式基を含む、又は環式基を含まない)。
【0027】
一実施形態では、ペルフルオロポリマーは、少なくとも1つの反応性基を含む全フッ素化ビニルエーテルモノマーから誘導され、反応性基は、酸及び/又はエステルから選択される。例示的な全フッ素化ビニルエーテルモノマーは、式CF2=CF-O-[CF2-CF(CF3)O-]n-(CmF2m)-Y[式中、YはCOOH、COOM、COOR、SO2F、SO3H、SO3M、P(O)(OH)2であり、Mはアニオン性基と電荷バランスがとれているカチオン性金属(例えば、アルカリ)であり、Rは1~6個の炭素原子を含むアルキル基である。]のものである。ペルフルオロポリマーにおけるこれらの反応性基の存在は、本開示のペルフルオロポリマーの基材への改善された結合を可能にすることができる。例示的な全フッ素化ビニルエーテル酸及び全フッ素化ビニルエーテルエステルとしては、CF2=CF-O-[CF2-CF(CF3)O-]n-(CmF2m)-C(=O)OH及びCF2=CF-O-[CF2-CF(CF3)O]n-(CmF2m)-C(=O)OR[式中、nは0又は1であり、mは3~12の整数であり、Rは1~6個の炭素原子を含むアルキル基である]が挙げられる。一実施形態では、(CmF2m)基は直鎖である。別の実施形態では、(CmF2m)基は分枝鎖である。一実施形態では、Rは-CF3である。このような化合物の合成は、米国特許第4,275,226号(Yamabeら)、同第4,138,426号(England)、及び同第6,479,161号(Araki)に開示されている。例示的な化合物としては、CF2=CF-O-C5F10COOH、CF2=CF-O-C5F10COONa、CF2=CF-O-C5F10COOCH3、CF2=CF-O-C4F8SO2F、CF2=CF-O-C4F8SO3H、CF2=CF-O-C4F8SO3K、CF2=CF-O-C4F8P(O)(OH)2が挙げられる。
【0028】
一実施形態では、本明細書に開示されるペルフルオロポリマーは、
【化3】
[式中、
*は、共重合単位がポリマー主鎖中の他の原子に接続されていることを示し、x、y、及びzは、モノマー単位がポリマー主鎖に沿って(ランダムに)現れる数である]及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択された共重合モノマー単位を含む。一実施形態では、x、y、及びzは、独立して、少なくとも2、5、7、10、又は更には12の繰り返し単位である。TFEから誘導され、任意に、他の全フッ素化モノマーから誘導された追加の繰り返し単位は、ペルフルオロポリマー主鎖に沿って存在する。本開示の一実施形態では、共重合単位
【化4】
は、ポリマー主鎖に沿って少なくとも2、5、7、10、又は更には12回ランダムに繰り返される。
【0029】
本開示のペルフルオロポリマーは、既知の重合技術のいずれかによって得ることができるが、フルオロポリマーは、好ましくは、バッチ、セミバッチ、又は連続重合技術を含む既知の方法で実施することができる水性乳化重合プロセスによって作製される。水性乳化重合プロセスに使用するための反応槽は、典型的には、重合反応中に内部圧力に耐えることができる加圧可能な槽である。典型的には、反応槽は、反応装置内容物の完全な混合を生み出す機械的攪拌器と熱交換システムとを含む。任意の量のモノマーが、反応器の槽に入れられてもよい。モノマーは、バッチ式で、又は連続的若しくは半連続的な様式で入れられてもよい。半連続的とは、重合の過程中、複数のモノマーのバッチが槽に入れられることを意味する。モノマーをケトルに添加する独立した比率(independent rate)は、特定のモノマーの経時的な消費率に依存する。好ましくは、モノマーの添加率は、モノマーの消費率、すなわちポリマーへのモノマーの変換率に等しい。
【0030】
反応ケトルには水が入れられ、その量は重要ではない。水相には、概してフッ素化界面活性剤、典型的には非テロゲン性フッ素化界面活性剤も添加されるが、フッ素化界面活性剤を添加しない水性乳化重合も実施され得る。使用する場合、フッ素化界面活性剤は、典型的には、0.01重量%~1重量%の量で使用される。好適なフッ素化界面活性剤としては、水性乳化重合で一般的に用いられる任意のフッ素化界面活性剤が挙げられる。一実施形態では、フッ素化界面活性剤は、以下の一般式
[Rf-O-L-COO-]iXi
+
[式中、Lは直鎖状の、部分若しくは完全フッ素化アルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表し、Rfは直鎖状の、部分若しくは完全フッ素化脂肪族基、又は1個以上の酸素原子が介在する直鎖状の、部分若しくは完全フッ素化基を表し、Xi
+は価数iを有するカチオンを表し、iは1、2又は3である]に対応する。具体例については、例えば、米国特許第7,671,112号(Hintzerら)に記載されている。例示的な乳化剤としては、CF3CF2OCF2CF2OCF2COOH、CHF2(CF2)5COOH、CF3(CF2)6COOH、CF3O(CF2)3OCF(CF3)COOH、CF3CF2CH2OCF2CH2OCF2COOH、CF3O(CF2)3OCHFCF2COOH、CF3O(CF2)3OCF2COOH、CF3(CF2)3(CH2CF2)2CF2CF2CF2COOH、CF3(CF2)2CH2(CF2)2COOH、CF3(CF2)2COOH、CF3(CF2)2(OCF(CF3)CF2)OCF(CF3)COOH、CF3(CF2)2(OCF2CF2)4OCF(CF3)COOH、CF3CF2O(CF2CF2O)3CF2COOH、及びこれらの塩が挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の分子量は、1500、1000、又は更には500グラム/モル未満である。
【0031】
これらのフッ素化フルオロ界面活性剤は、単独で使用されてもよく、それらの2つ以上の混合物として組み合わせで使用されてもよい。界面活性剤の量は臨界ミセル濃度よりかなり低く、一般に、使用される水の質量に基づいて、250~5,000ppm(百万分率(parts per million))、好ましくは250~2000ppm、より好ましくは300~1000ppmの範囲内である。
【0032】
重合は、通常、最初にモノマーを入れた後、反応開始剤又は反応開始剤系を水相に添加することにより開始する。例えば、パーオキシドをフリーラジカル反応開始剤として使用することができる。パーオキシド反応開始剤の具体例としては、過酸化水素、ジアシルパーオキシド、例えばジアセチルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジブチリルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルアセチルパーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド及びジラウリルパーオキシド、並びに更なる水溶性過酸、及び例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はカリウム塩などのそれらの水溶性塩が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に用いることができ、これらの例としては、tert-ブチルパーオキシアセテート及びtert-ブチルパーオキシピバレートが挙げられる。使用することができる反応開始剤の更なる部類は、水溶性アゾ化合物である。反応開始剤として使用するために好適なレドックス系としては、例えば、パーオキソ二硫酸塩と亜硫酸水素塩若しくは二亜硫酸塩との組み合わせ、チオ硫酸塩とパーオキソ二硫酸塩との組み合わせ、又はパーオキソ二硫酸塩とヒドラジンとの組み合わせが挙げられる。使用することができる更なる反応開始剤は、過硫酸塩、過マンガン酸又はマンガン酸(1種若しくは複数)のアンモニウム-アルカリ塩、又はアルカリ土類塩である。用いられる反応開始剤の量は、重合混合物の総重量に基づいて典型的には0.03~2重量%、好ましくは0.05~10重量%である。反応開始剤の全量が重合の開始時に添加されてもよく、又は反応開始剤は、重合中に連続的な方式で重合に添加され得る。開始剤の一部を開始時に添加することもでき、残りを重合中に一度に又は別々の追加部分で添加することもできる。また、例えば鉄、銅及び銀の水溶性塩などの促進剤が好ましくは添加されてもよい。
【0033】
重合反応の開始中、密封反応器ケトル及びその内容物は、都合よく反応温度まで予熱される。重合温度は、20℃~150℃、好ましくは30℃~110℃、最も好ましくは40℃~100℃である。重合圧力は、典型的には、4~30bar、特に8~20barである。水性乳化重合系は更に、緩衝剤及び錯形成剤などの助剤を含んでもよい。ペルフルオロアルキルパーオキシド又はペルフルオロアシルパーオキシド(例えば、C3F7C(=O)-O-O-C(=O)C3F7)などの有機フリーラジカル反応開始剤を、特に当該技術分野において既知の不活性有機溶媒中で重合が実施される場合に使用することもできる。
【0034】
重合の終了時に得ることができるポリマー固形分の量は、典型的には、10~45重量%、好ましくは20~40重量%である。
【0035】
重合後、得られた水性分散液を濃縮して固形分含有率を増加させることができる。非イオン性界面活性剤(例えば、「TRITON」及び「GENAPOL」の商標名で販売されているもの)を、非イオン性界面活性剤の2~10%の量で使用して、当該技術分野において既知であるように、固形分含有率40~60%まで水性分散液を更に濃縮することができる。例えば、米国特許第6,833,403号(Bladelら)及びカナダ国特許第2522837号(Bladelら)を参照されたい。
【0036】
あるいは、又は水性分散液を濃縮することに加えて、ペルフルオロポリマー粒子を、凝固によって水性分散液から単離し、乾燥させてもよい。このような凝固方法は、当該技術分野において既知であり、電解質又は無機塩(例えば、HCl、H2SO4、HNO3、H3PO4、Na2SO4、MgCl2、炭酸アンモニウムなど)を使用すること、凍結融解サイクルを使用すること、高剪断を適用すること、及び/又は超音波を適用することといった科学的及び物理的方法が挙げられる。
【0037】
一実施形態では、水性エマルジョン中で得られるペルフルオロポリマーの平均粒径は、典型的には、少なくとも50、60、70nm、又は更には80nm、最大で100、200、300、400、又は更には500nm(ナノメートル)である。
【0038】
一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマーから作製された試料は光学的に透明であり、これは、可視スペクトル(約400~800nmの波長)における入射光の高い%正透過率及び低い%ヘイズ(全透過率に対する拡散透過率の比)の両方を有することを意味する。正透過率は、以下の実施例のセクションに記載のように、全透過率及び拡散透過率を測定し、全透過率スペクトルから拡散透過率スペクトルを減算することによって求めることができる。一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマー及び/又はこれから作製された物品は、以下に開示されるUV-Vis法により試験した際、可視光範囲(ここでは400~800nmと定義される)全体にわたって少なくとも75、80、85、又は更には90%の平均正透過率を有する。別の実施形態では、本開示のペルフルオロポリマー及び/又はこれから作製される物品は、以下に開示されるUV-Vis法によって試験した際、500nmで少なくとも75、80、85、又は更には90%の正透過率を有する。ヘイズは、以下に開示されるUV-Vis法において論じられるように、可視スペクトルにおける入射光の拡散透過率の、全透過率に対する比によって求めることができる。ヘイズはまた、CIE光源Cを使用してASTM D1003-13に従って測定することもできる。一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマー及び/又はこれから作製された物品は、15、10、又は更には5%未満のヘイズを有する。別の実施形態では、本開示のペルフルオロポリマー及び/又はこれから作製された物品は、500nmで15、10、又は更には5%未満のヘイズを有する。
【0039】
一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマーは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、又は更には45℃より高く、最大で150、120、110、100、95、90、又は更には80℃のガラス転移温度を有する。理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示されるペルフルオロ脂環式メチルビニルエーテルモノマーは、得られるペルフルオロポリマーのガラス転移温度を上昇させると考えられる。いくつかの実施形態では、ペルフルオロ脂環式メチルビニルエーテルモノマーから誘導されたペルフルオロポリマーは、ペルフルオロ脂環式メチルビニルエーテルモノマーから誘導されなかった同じポリマーのガラス転移温度よりも少なくとも6、7、8、10、又は更には12℃高いガラス転移温度を有する。
【0040】
一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマーは、3M Co.(Maplewood,MN)から入手可能なFC-70、FC-75、及びFC-72を含む「3M FLUORINERT ELECTRONIC LIQUID」の商標名で入手可能なものなどの全フッ素化溶媒、3M Co.から入手可能なNOVEC 7200、7300、及び7500などの「3M NOVEC ENGINEERED FLUID」の商標名で入手可能なものなどの高度にフッ素化された溶媒、並びにThe Chemours Co.(Wilmington DE)から入手可能なR-22を含む「FREON」の商標名で入手可能なもの、及びHalocarbon Products Corp(Peachtree Corners,GA)から入手可能な「Halocarbon 0.8 Oil」の商標名で入手可能なものなどの塩素化溶媒を含むハロゲン化溶媒に可溶性である(少なくとも3、5、7、又は更には10重量%)。
【0041】
一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマーは、溶液の総重量当たり少なくとも0.01、0.1、0.5、1、1.5、又は更には2重量%、最大で2.5、3、4、5、6、8、又は更には10重量%の量で溶媒中に溶解される。一実施形態では、この溶液は、金属(ステンレス鋼、アルミニウムなど)、ガラス、又はプラスチックなどの基材をコーティングするために使用される。例示的な溶媒としては、上記開示のようなハロゲン化溶媒が挙げられる。
【0042】
一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマーのTgは、少なくとも25、30、35℃、又は更には40℃、最大で50、75、100、又は更には125℃である。
【0043】
一実施形態では、本開示のペルフルオロポリマーは、例えば成形して物品を形成することによって、物品を形成するために使用されてもよく、又は例えばスピンコーティング若しくはディップコーティングを使用してコーティングされてもよい。
【実施例】
【0044】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、総合的な化学物質供給元、例えば、Millipore-Sigma(Saint Louis,Missouri)などから入手したもの、若しくは、入手可能なものであり、又は、通常の方法によって合成することができる。
【0045】
以下の略語をこのセクションで使用する:mL=ミリリットル、g=グラム、重量%=重量パーセント、mmHg=ミリメートル水銀柱、NMR=核磁気共鳴、mol=モル、℃=摂氏温度、psi=平方インチあたりのポンド、MPa=メガパスカル、nm=ナノメートル。
【0046】
特性評価方法(Characterization Methods)
【0047】
ペルフルオロポリマーの融点及びガラス転移温度(Tg)の存在は、窒素気流下での示差走査熱量測定(TA Instruments(New Castle,DE)製DSC、Q2000)によって決定した。試料量を、5mg±0.25mgとした。DSCのサーモグラムは、加熱/冷却/加熱のサイクルのうちの、第2の加熱サイクルから得られた。第1の加熱サイクルは、-80℃で始め、10℃/分の昇温速度で350℃までとした。冷却サイクルを350℃で開始し、10℃/分で-80℃まで冷却した。第2の加熱サイクルは、-80℃で始め、10℃/分の昇温速度で、350℃に戻るまでとした。
【0048】
ペルフルオロポリマーのムーニー粘度値の測定は、ASTM D 1646-06 Type Aと同様の要領とし、MV2000装置(Alpha Technologies,Ohioから入手可能)により、大きな回転子(ML1+10)を121℃で使用した。結果をムーニー単位で報告する。
【0049】
選択された試料の紫外波長及び可視波長(UV-Vis)にわたる正透過率及びヘイズを以下のように求めた:対象とするペルフルオロポリマー(すなわち、実施例2又は3)を、加熱したプレート(200℃に保持される)に押し付け、ペルフルオロポリマーをプレート上で3分間加熱し、次いで、加熱したトッププレート(200℃)をペルフルオロポリマーに押し付け、プレートを200psi(1.38MPa)で3分間一緒にプレスすることによって、直径約5cm及び厚さ約28mil(0.71mm)のフルオロポリマーディスクを作製した。その後、ペルフルオロポリマーをプレートから取り出し、室温まで放冷した。ディスクの2つの異なる部分の%全半球透過率及び拡散透過率スペクトルについて、直径6インチ(150mm)のPELA-1002積分球付属品を装備し、「ASTM Standards on Color and Appearance Measurement」,Third Edition,ASTM,1991に公開されているASTM法E903,D1003,E308らに準拠する分光光度計(PerkinElmer,Inc.(Waltham,MA)から「LAMBDA1050」の商標名で入手可能)を用いて分析した。850nmから250nmまでのデータを、走査速度が約102nm/分、スリット幅が5nm、UV-Vis積分が0.56秒/点、データ間隔が1nmで記録し、各試料の拡散透過率スペクトルを全半球透過率スペクトルから減算してスペクトル透過率を求めた。%ヘイズは、拡散透過率を全透過率で除算することにより求めた。図に報告されたスペクトルは、ディスクの2つの分析部位の平均から取ったものである。平均正透過率及び平均ヘイズは、400~800nmの非加重平均として取られた。
【0050】
実施例1:式I:Rf-CF2-O-CF=CF2(c-C6F11-CF2-O-CF=CF2(MVCc6)及びその異性体を含む)の調製
【0051】
メチルベンゾエート(4000g、29.4mol)を、米国特許第2,567,011号に記載のようにHF中で電気化学的にフッ素化して、40%収率で(3860g、12mol)となるペルフルオロ脂環式酸フルオリド(例えば、c-C6F11-COF及びその異性体)を得た。Parr Instrument Company(Moline,IL,USA)から入手可能な600mLのPARR 4250卓上反応器に、11g(0.2mol)の無水フッ化カリウム(99.5%超の純度、噴霧乾燥、AK Scientificから入手可能)を最初に入れ、密封し、25mmHg真空まで排気した。次いで、反応器に、514g(1.6mol)のペルフルオロ脂環式酸フルオリド及び50gのMillipore-Sigmaから入手可能なジグリムを入れた。反応器を撹拌し、4℃まで冷却した。229g(1.4mol)のChemours Company(Wilmington,DE,USA)から入手可能なヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)を3時間かけて反応器に計量した。反応器を25℃まで加温し、混合物を排出した。カラム分画により、40%収率(入れたペルフルオロシクロヘキシル酸フルオリドの量に基づく)で沸点が156℃であるペルフルオロ脂環式メチルプロポキシ酸フルオリド(例えば、c-C6F11CF2OCF(CF3)COF及びその異性体)311g(0.6mol)を得、356gの出発ペルフルオロ脂環式酸フルオリドは再利用した。HFPOカップリングを更に2回行い、最初のカップリングと組み合わせた。機械的攪拌器、凝縮器及び熱電対を備えた3つ口2L丸底フラスコに、168g(1.6mol)のNa2CO3及び300gのMillipore-Sigmaから入手可能なグリムを入れ、攪拌し、70℃まで加熱した。更なる650g(1.3mol)のペルフルオロ脂環式メチルプロポキシ酸フルオリドを1時間反応させ、CO2を除去した。1時間の保持後、凝縮器を、蒸留のためにレシーバに替え、50mmHg真空下でグリムを除去した。グリムを除去してから、温度を105℃に設定し、フラスコを離した。温度を120℃に上昇させ、脱炭酸により生成したCO2により、真空を大気圧にした。式Iのモノマーを生成し、165℃の最終反応温度になるまでレシーバに回収した。粗生成物を100gのDI(脱イオン)水、続いて100gのDI水中の25gのNa2CO3により、最後に100gのDI水により洗浄した。カラム分画後のフルオロケミカル下相により、収率50%で沸点が114℃の278g(0.7mol)の式Iを得た。19F-NMR(核磁気共鳴)により、式Iによるモノマーが確認された。
【0052】
実施例2式I:Rf-CF2-O-CF=CF2(c-C6F11-CF2-O-CF=CF2(MVCc6)及びその異性体並びに2:1付加物を含む)の調製
【0053】
実施例2は、以下の変更を除いて、実施例1と同じように作製した:23g(0.4mol)の無水フッ化カリウム、450g(1.4mol)のペルフルオロ脂環式酸フルオリド、60gのテトラグリム(ジグリムの代わり)。60gのアジポニトリル(Alfa Aesar)を使用して、ペルフルオロ脂環式酸フルオリド及びテトラグリムと共に反応器を入れた。252g(1.5mol)のHFPOの添加については、3時間ではなく2時間かけて添加した。カラム分画により、77%収率(反応したペルフルオロシクロヘキシル酸フルオリドの量に基づく)で沸点が156℃であるペルフルオロ脂環式メチルプロポキシ酸フルオリド(例えば、c-C6F11CF2OCF(CF3)COF及びその異性体)294gを得、出発ペルフルオロ脂環式酸フルオリド196gは回収し、後のHFPOカップリングで再利用した。また、154g(0.23mol)の2:1HPFO付加物、ペルフルオロ脂環式メトキシプロポキシプロパニル酸フルオリド及びその異性体も単離した。ペルフルオロ脂環式メトキシプロポキシプロパニル酸フルオリド及びその異性体を脱炭酸し、上記実施例1に記載のように精製して、沸点が114℃である式Iを得、減圧下(75mmの真空)で第2の留分を得、沸点が98~110℃である2:1HFPO付加物(c-C6F11CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2)140gを分離した。19F-NMR(核磁気共鳴)により、1:1及び2:1付加物が確認された。
【0054】
乳化溶液の調製
【0055】
3M Companyから3M FLUORINERT ELECTRONIC LIQUID FC-70の商標名で入手可能な液体1.5重量%を添加したCF3-O-(CF2)3-O-CFH-CF2-COONH4(米国特許第7,671,112号の実施例11に記載のように調製)30重量%を含む水溶液を調製した。
【0056】
MVCc6液1の調製
【0057】
乳化溶液中22重量%の式I(上記から)を含む、式Iの水溶液を調製した。
【0058】
MVCc6液2の調製
【0059】
乳化溶液中60重量%の式I(上記から)を含む、式Iの水溶液を調製した。
【0060】
実施例3:フルオロポリマーAの調製
【0061】
4リットルの反応器に1,850gの水を入れ、排気した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応器を72.2℃(162°F)まで加熱し、5.2gのリン酸カリウムを48gの乳化溶液、5.2gの過硫酸アンモニウム、及び4.26gの水酸化アンモニウムと共に添加した。真空を解き、反応器をペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)で0psi(0MPa)まで加圧した。次いで、反応器を、0.88の重量比のTFE(テトラフルオロエチレン)とPPVEとで145psi(1.0MPa)まで加圧した。反応器を650rpmで攪拌した。重合反応でのモノマー消費により反応器の圧力が降下するのに伴い、0.76の重量比のTFEとPPVEとを反応器に連続して供給し、圧力を145psi(1.0MPa)に維持した。5%(25g)のTFEを添加したとき、MVCc6溶液1を0.76の重量比でPPVE供給原料に供給した。284分後、モノマーの供給を中止し、反応器を冷却した。得られた水性分散液は、固形分含有率が30.4重量%、及びpHが2.4であった。水性分散物の粒径は189nmであった。
【0062】
水性分散液を凝固させるために、同じ量のMgCl2/DI水溶液を水性分散液に添加した。このMgCl2/DI水溶液は、MgCl2・6H2Oとして1.25重量%を含有するものであった。水性分散液を攪拌し、凝固させた。フルオロポリマーは、19F-NMRで、76mol%のTFE、23mol%のPPVE、及び1.0mol%の式Iの共重合単位を含有していた。ペルフルオロポリマーは、DSCによって試験した際、識別可能な融点を有しておらず、Tgは12.1℃であった。ペルフルオロポリマーは、121℃で10.3ムーニー単位のムーニー粘度ML[1+10]を有した。溶媒(d3-ペルフルオロトルエン)を用いた19F及び1H NMR分析により、コポリマーは、TFEを約76.0mol%、PPVEを22.9mol%、ペルフルオロシクロヘキシルメチルビニルエーテルを0.49モル%、ペルフルオロ(2-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)異性体とペルフルオロ(3-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)異性体との混合物を0.54mol%、及びペルフルオロ(2-ジメチルシクロブチルビニルエーテル)異性体と、ペルフルオロ(3-ジメチルシクロブチルビニルエーテル)異性体と、ペルフルオロ(1-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)異性体との混合物を0.035mol%含有していたことが示された。
【0063】
比較例:フルオロポリマーBの調製
【0064】
フルオロポリマーBは、式Iのモノマーが反応器に供給されなかったことを除いて、フルオロポリマーAのように調製した。214分後、モノマーの供給を中止し、反応器を冷却した。得られた水性分散液は、固形分含有率が34重量%、及びpHが2.9であった。水性分散物の粒径は85nmであった。
【0065】
凝固するために、同じ量のMgCl2/DI水溶液を水性分散液に添加した。このMgCl2/DI水溶液は、MgCl2・6H2Oとして1.25重量%を含有するものであった。水性分散液を攪拌し、凝固させた。ペルフルオロポリマーは、DSCによって試験した際、識別可能な融点を有しておらず、Tgは4.4℃であった。ペルフルオロポリマーは、121℃で1.3ムーニー単位未満のムーニー粘度ML[1+10]を有した。
【0066】
実施例4:フルオロポリマーCの調製
【0067】
4リットルの反応器に2,000gの水を入れ、排気した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応器を57.2℃(135°F)まで加熱した。反応器に、28gの乳化溶液、75gのMVCc6溶液2、4.26gの水酸化アンモニウム、及び5.2gの過硫酸アンモニウムを添加した。真空を窒素で解き、反応器をTFEで0.52MPa(75psi)まで加圧した。反応器を650rpmで攪拌した。重合反応でのモノマー消費により反応器の圧力が降下するのに伴い、1.54の重量比のMVCc6溶液2とTFEとを反応器に連続して供給し、圧力を0.52MPa(75psi)に維持した。229分後、モノマーの供給を中止し、反応器を冷却した。得られた水性分散液は、固形分含有率が19.0重量%、及びpHが3.0であった。分散物の粒径は695nmであった。
【0068】
水性分散液を凍結凝固させ、DI水で繰り返し洗浄し、次いで130℃で乾燥させた。式Iのモノマーのペルフルオロポリマーへの組み込みは、150℃で固体状態
19F-NMRを使用して、サイクリングでのCF共鳴(-184ppm)を使用して定量化し、フルオロポリマーは、86.5mol%のTFE及び13.5mol%の式Iの共重合単位を含有していた。ペルフルオロポリマーは、DSCによって試験した際、識別可能な融点を有しておらず、Tgは40.5℃であった。400~800nmの%正透過率を
図1に示し、400~800nmの%ヘイズを
図2に示す。400~800nmの範囲にわたる平均正透過率は82.4%であった。400~800nm範囲にわたる平均ヘイズは8.2%であった。
【0069】
実施例5:フルオロポリマーDの調製
【0070】
4リットルの反応器に2,000gの水を入れ、排気した。この真空及び加圧を3回繰り返した。酸素を除去した後、反応器を57.2℃(135°F)まで加熱した。反応器に、28gの乳化溶液、75gのMVCc6溶液2、4.26gの水酸化アンモニウム、及び5.2gの過硫酸アンモニウムを添加した。真空を窒素で解き、反応器をTFEで0.52MPa(75psi)まで加圧した。反応器を650rpmで攪拌した。重合反応でのモノマー消費により反応器の圧力が降下するのに伴い、1.83の重量比のMVCc6溶液2とTFEとを反応器に連続して供給し、圧力を0.52MPa(75psi)に維持した。280分後、モノマーの供給を中止し、反応器を冷却した。得られた分散液は、固形分含有率が20.6重量%、及びpHが3.4であった。水性分散物の粒径は493nmであった。
【0071】
水性分散液を凍結凝固させ、DI水で繰り返し洗浄し、次いで130℃で乾燥させた。式Iのモノマーのペルフルオロポリマーへの組み込みは、150℃で固体状態19F-NMRを使用して、サイクリングでのCF共鳴(-184ppm)を使用して定量化し、フルオロポリマーは、79.5mol%のTFE及び20.5mol%のMVCc6の共重合単位を含有していた。
【0072】
ペルフルオロポリマーは、DSCによって試験した際、識別可能な融点を有しておらず、Tgは41.7℃であった。400~800nmの%正透過率を
図1に示し、400~800nmの%ヘイズを
図2に示す。400~800nmの範囲にわたる平均正透過率は92.2%であった。400~800nm範囲にわたる平均ヘイズは2.5%であった。
【0073】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明の予見可能な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ又は参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。
本願発明は以下の態様を包含する。
(項目1)
ペルフルオロポリマーであって、
少なくとも
(a)88mol%以下のテトラフルオロエチレンモノマー、及び
(b)相補量の式I
Rf-CF
2
-[OCF(CF
3
)CF
2
]
n
-O-CF=CF
2
[式中、Rfは、6個の炭素原子、11個のフッ素原子、及び脂環式基を含む全フッ素化基であり、nは0,1,又は2である]によるモノマーから誘導された、
実質的に融点を有しない、ペルフルオロポリマー。
(項目2)
前記式Iのモノマーが、ペルフルオロ(シクロヘキシルメチルビニルエーテル)を含む、項目1に記載のペルフルオロポリマー。
(項目3)
前記式Iのモノマーが、ペルフルオロ(シクロヘキシルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(3-メチルシクロペンチルメチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2-ジメチルシクロブチルメチルビニルエーテル)、及びペルフルオロ(3-ジメチルシクロブチルメチルビニルエーテル)のうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のペルフルオロポリマー。
(項目4)
前記ペルフルオロポリマーが、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルアリルエーテル、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから更に誘導される、項目1~3のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目5)
前記ペルフルオロポリマーが、少なくとも10mol%のペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルアリルエーテル、又はこれらの組み合わせから更に誘導される、項目4に記載のペルフルオロポリマー。
(項目6)
前記ペルフルオロポリマーが、少なくとも15mol%のペルフルオロ(脂環式メチルビニルエーテル)モノマーから誘導される、項目1~5のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目7)
前記ペルフルオロポリマーが、全フッ素化ビニルエーテル酸、全フッ素化ビニルエーテルエステル、全フッ素化ビニルエーテルスルホネート、全フッ素化ビニルエーテルスルホニルフルオリド、全フッ素化ビニルエーテルホスフェート、又はこれらの組み合わせから更に誘導される、項目1~6のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目8)
前記ペルフルオロポリマーのガラス転移温度が室温より高い、項目1~7のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目9)
前記ペルフルオロポリマーが光学的に透明である、項目1~8のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目10)
前記ペルフルオロポリマーが、可視範囲全体にわたって少なくとも75%の平均正透過率を有する、項目1~9のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目11)
前記ペルフルオロポリマーが、可視範囲全体にわたって15%未満の平均ヘイズを有する、項目1~10のいずれかに記載のペルフルオロポリマー。
(項目12)
フルオロポリマーであって、
【化1】
及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの共重合モノマー単位を含む、フルオロポリマー。
(項目13)
前記ポリマーが、実質的に融点を有しない、項目12に記載のフルオロポリマー。
(項目14)
前記ポリマーが室温より高いガラス転移温度を有する、項目12又は13に記載のフルオロポリマー。
(項目15)
前記フルオロポリマーが光学的に透明である、項目12~14のいずれかに記載のフルオロポリマー。
(項目16)
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンから誘導された共重合単位を更に含む、項目12~15のういずれかに記載のフルオロポリマー。
(項目17)
前記フルオロポリマーが、88モル%以下の、テトラフルオロエチレンから誘導された共重合単位を含む、項目16に記載のフルオロポリマー。
(項目18)
前記フルオロポリマーが、全フッ素化ビニルエーテル酸、全フッ素化ビニルエーテルエステル、又はこれらの組み合わせから誘導された共重合単位を更に含む、項目12~15のいずれかに記載のフルオロポリマー。
(項目19)
項目12~18のいずれかに記載のフルオロポリマーを含む、組成物。
(項目20)
前記組成物がコーティングである、項目19に記載の組成物。