(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】担持触媒合成装置及び微粒子合成装置
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20240722BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20240722BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240722BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20240722BHJP
B22F 1/054 20220101ALI20240722BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240722BHJP
B22F 1/18 20220101ALI20240722BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240722BHJP
【FI】
B01J37/02 101B
B01J35/45
B01J37/08
B01J37/16
B22F1/054
B22F1/14 400
B22F1/18
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2021528273
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2020023634
(87)【国際公開番号】W WO2020262121
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019118840
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健二
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108380(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136956(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150596(WO,A1)
【文献】特表2015-521953(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103769090(CN,A)
【文献】特開2006-087965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B22F 1/00- 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
還元剤を含む液体の第1供給源と、
担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源と、
担体粒子を含む液体の第3供給源と、
前記還元剤を含む液体、前記担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び前記担体粒子を含む液体を合流させる反応部(D)と、
前記第1供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)と、
前記第2供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)と、
前記第3供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(C)と、
前記反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する回収部(E)と、を有し、
前記回収部(E)に接続された圧力調整機構(F)をさらに有することを特徴とする担持触媒合成装置。
【請求項2】
前記送液ルート(B)又は前記送液ルート(C)のいずれか一方、又は、両方に流れる液体を一方向へ移送する機構(G)を有することを特徴とする請求項1に記載の担持触媒合成装置。
【請求項3】
前記送液ルート(C)が攪拌機構(H)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の担持触媒合成装置。
【請求項4】
前記送液ルート(A)において加熱保温機構(I)を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の担持触媒合成装置。
【請求項5】
前記反応部(D)と前記回収部(E)との間に冷却機構(J2)を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の担持触媒合成装置。
【請求項6】
少なくとも、
還元剤を含む液体の第1供給源と、
単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源と、
前記還元剤を含む液体、及び、前記単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体を合流させる反応部(D)と、
前記第1供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)と、
前記第2供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)と、
前記反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する回収部(E)と、を有し、
前記回収部(E)に接続された圧力調整機構(F)をさらに有することを特徴とする微粒子合成装置。
【請求項7】
前記送液ルート(B)に流れる液体を一方向へ液体を移送する機構(G)を有することを特徴とする請求項6に記載の微粒子合成装置。
【請求項8】
前記送液ルート(A)において加熱保温機構(I)を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の微粒子合成装置。
【請求項9】
前記反応部(D)と前記回収部(E)との間に冷却機構(J2)を有することを特徴とする請求項6~8のいずれか一つに記載の微粒子合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、単金属微粒子又は固溶体微粒子を担体粒子に担持させた担持触媒(以降、担持触媒ともいう。)の連続合成が可能な担持触媒合成装置及び単金属微粒子又は固溶体微粒子の連続合成が可能な微粒子合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等の排ガス浄化処理に用いる触媒や化合物合成などの各種反応処理に用いる触媒には希少金属を含む触媒が広く利用されている。しかし、希少金属は、高価かつ産出量が少ないため、その使用量を抑えながら活性が高いとされる固溶体微粒子が注目され、固溶体微粒子の開発が進められている。
【0003】
このような固溶体微粒子の合成には、トリエチレングリコールなどの高沸点な還元剤を高温に加熱した状態で貴金属塩溶液を徐々に添加することで合成するバッチ式合成が行われている。しかし、合成しようとする還元剤溶液中に存在する貴金属濃度が次第に濃くなるため、粒子径の粗大化が起きるなどの問題があり、粒子径の小さい合金を量産することは困難である。
【0004】
近年では、貴金属量を減らしながらより高活性な触媒を求め、産業上は1nm以下の固溶体微粒子が担体粒子に担持された担持触媒の量産も求められている。このような固溶体微粒子の粗大化を防ぐ手段として、マイクロリアクターを用いた固溶体微粒子の合成方法がある(例えば、特許文献1を参照。)。パラジウム金属塩溶液とルテニウム金属塩溶液とをマイクロリアクター内で還元剤の存在のもと、加圧下で反応させることによって、パラジウムとルテニウムの固溶体微粒子を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術では、平均粒子径が最低でも2.2nmであり、触媒として使用する上で、粒子が活性させるためにはより表面積が大きくなるように0.5~2nmの小粒子化、好ましくは1nm以下の小粒子化を実現することが求められている。また、担持触媒の合成実施例が示されておらず、更に、担持触媒の合成に必要な担体粒子を系内に安定的に導入できる構造は示されていない。
【0007】
特許文献1において、固溶体微粒子の大量合成の達成という成果は得られたものの、固溶体微粒子の粒子径も更に小粒子径化が必要である。すなわち、粒子径を小さくするためには必要な還元力が不足していて、還元力をさらに高めた状態で反応を進めなければならないという課題がある。さらに、量産装置において更なる小粒子径化を実現しなければならないという課題がある。
【0008】
さらに、特許文献1では、担持触媒の合成が装置内でなされていない。更に、担体粒子を導入しながら安定的に担持触媒を量産するという点で、特許文献1では背圧弁における担体粒子の流通が考慮されていないという致命的な欠点を有する。すなわち、固体粒子である担体粒子を装置に導入した際に背圧弁に担体粒子が滞留・閉塞し、所望の流速、圧力、温度で合成反応を進めることができないという課題がある。さらに、量産装置において担体粒子の滞留・閉塞を解決しなければならないという課題がある。
【0009】
そこで本開示の目的は、単金属微粒子又は固溶体微粒子を担体粒子に担持させた担持触媒において、単金属微粒子又は固溶体微粒子の0.5~2nm程度の小粒子径化が実現でき、安定的に担持触媒を量産することができる担持触媒合成装置を提供することである。また、単金属微粒子又は固溶体微粒子の0.5~2nm程度の小粒子径化が実現でき、安定的にこれらの微粒子を量産することができる微粒子合成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、(1)還元剤を含む液体及び単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体、又は、(2)還元剤を含む液体、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び担体粒子を含む液体、を合流させた後に反応させ、さらに得られた反応生成物を回収する箇所に圧力を制御する機構を設けることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る担持触媒合成装置は、少なくとも、還元剤を含む液体の第1供給源と、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源と、担体粒子を含む液体の第3供給源と、前記還元剤を含む液体、前記担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び前記担体粒子を含む液体を合流させる反応部(D)と、前記第1供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)と、前記第2供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)と、前記第3供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(C)と、前記反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する回収部(E)と、を有し、前記回収部(E)に接続された圧力調整機構(F)をさらに有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る担持触媒合成装置では、前記送液ルート(B)又は前記送液ルート(C)のいずれか一方、又は、両方に流れる液体を一方向へ移送する機構(G)を有することが好ましい。送液ルート(B)及び送液ルート(C)において担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び担体粒子を含む液体の流量及び流速を安定的に規定することができるので、安定的に担持触媒の合成を行うことができる。
【0012】
本発明に係る担持触媒合成装置では、前記送液ルート(C)が攪拌機構(H)を有することが好ましい。水より比重の重い担体粒子がポンプ内で沈降することを抑制し、反応部に送られる担体粒子の濃度を一定にすることができる。
【0013】
本発明に係る担持触媒合成装置では、前記送液ルート(A)において加熱保温機構(I)を有することが好ましい。還元剤を含む液体を室温から反応に必要な温度まで加熱することで、還元に必要な熱量を与えることができる。
【0014】
本発明に係る担持触媒合成装置では、前記反応部(D)と前記回収部(E)との間に冷却機構(J2)を有することが好ましい。反応部(D)で生じた担持触媒を含む液体を急冷することで、単金属微粒子同士のシンタリング若しくは固溶体微粒子同士のシンタリングを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る微粒子合成装置は、少なくとも、還元剤を含む液体の第1供給源と、単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源と、前記還元剤を含む液体、及び、前記単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体を合流させる反応部(D)と、前記第1供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)と、前記第2供給源と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)と、前記反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する回収部(E)と、を有し、前記回収部(E)に接続された圧力調整機構(F)をさらに有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る微粒子合成装置では、前記送液ルート(B)に流れる液体を一方向へ液体を移送する機構(G)を有することが好ましい。送液ルート(B)において単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の流量及び流速を安定的に規定することができるので、安定的に微粒子の合成を行うことができる。
【0017】
本発明に係る微粒子合成装置では、前記送液ルート(A)において加熱保温機構(I)を有することが好ましい。還元剤を含む液体を室温から反応に必要な温度まで加熱することで、還元に必要な熱量を与えることができる。
【0018】
本発明に係る微粒子合成装置では、前記反応部(D)と前記回収部(E)との間に冷却機構(J2)を有することが好ましい。反応部(D)で生じた単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を含む液体を急冷することで、単金属微粒子同士のシンタリング若しくは固溶体微粒子同士のシンタリングを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、単金属微粒子又は固溶体微粒子を担体粒子に担持させた担持触媒において単金属微粒子又は固溶体微粒子の0.5~2nm程度の小粒子径化が実現でき、安定的に担持触媒を量産することができる担持触媒合成装置を提供することができる。また、単金属微粒子又は固溶体微粒子の0.5~2nm程度の小粒子径化が実現でき、安定的にこれらの微粒子を量産することができる微粒子合成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る担持触媒合成装置の第一例の概略図である。
【
図2】本実施形態に係る担持触媒合成装置の第二例の概略図である。
【
図3】本実施形態に係る担持触媒合成装置の第三例の概略図である。
【
図4(A)】液体を一方向へ移送する機構(G)の一例を示す概略図であり、プランジャーを押し下げるときの概略図である。
【
図4(B)】液体を一方向へ移送する機構(G)の一例を示す概略図であり、プランジャーを押し上げるときの概略図である。
【
図5】液体を一方向へ移送する機構(G)がさらに攪拌機構(H)を有するときの一例を示す概略図である。
【
図6】本実施形態に係る担持触媒合成装置の第二例にさらに加熱保持機構(I)及び冷却機構(J1,J2)を設けた担持触媒合成装置の第四例の概略図である。
【
図7】本実施形態に係る微粒子合成装置の第一例の概略図である。
【
図8】本実施形態に係る微粒子合成装置の第二例の概略図である。
【
図9】本実施形態に係る微粒子合成装置の第二例にさらに加熱保持機構(I)及び冷却機構(J1,J2)を設けた微粒子合成装置の第三例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0022】
(担持触媒合成装置)
図1を参照して担持触媒合成装置を説明する。本実施形態に係る担持触媒合成装置100は、少なくとも、還元剤を含む液体の第1供給源3と、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源1と、担体粒子を含む液体の第3供給源2と、還元剤を含む液体、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び担体粒子を含む液体を合流させる反応部(D)と、第1供給源3と反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)と、第2供給源1と反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)と、第3供給源2と反応部(D)とを結ぶ送液ルート(C)と、反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する回収部(E)と、を有し、回収部(E)に接続された圧力調整機構(F)をさらに有する。本実施形態に係る担持触媒合成装置によれば、背圧弁を用いずに装置内の圧力制御が可能となり、課題であった装置内でスラリーの目詰まりを起こし難くなり、安定的に担持触媒の合成を行うことができる。
【0023】
本実施形態に係る担持触媒合成装置では、反応部(D)において、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体を還元して単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を形成し、還元によって作製された単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を担体粒子に担持することができる。
【0024】
還元剤を含む液体の第1供給源3は、還元剤を含む液体を貯蔵する容器であることが好ましい。還元剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソブロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール等の還元性のある有機溶媒が用いられ、これらを水などの溶媒で希釈してもよく、更に、還元性を調節するためアルカリ、有機酸等を水などの溶媒に添加しても良い。
【0025】
担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源1は、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体を貯蔵する容器であることが好ましい。単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素とは、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金、モリブデン、レニウム、タングステン、3d遷移元素、炭素、ボロン等が挙げられる。単金属微粒子を製造するのであれば、これらの元素のうち、1種の金属元素を含む原料を使用する。この原料を水等の液体で原料溶液に調製する。固溶体微粒子を製造するのであれば、これらの元素のうち、2種以上の金属元素を含む原料を使用する。これらの金属原料を水等の液体で原料溶液に調製する。2種以上の金属元素の組み合わせとしては、合金状態図において固溶する組み合わせ、固溶しない組み合わせ、金属間化合物となる組み合わせがある。
【0026】
担体粒子を含む液体の第3供給源2は、担体粒子を含む液体を貯蔵する容器であることが好ましい。担体粒子の種類としては、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、セリアジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化スズ、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーンなどが挙げられる。担体粒子を含む液体は担体粒子を分散媒で分散した液体であり、分散媒としては水などが挙げられる。分散媒に対して適宜メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソブロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール等の還元性のある有機溶媒が用いられ、適宜、還元性を調節するためアルカリ、有機酸等を分散媒などに添加してもよい。
【0027】
第1供給源3と反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)は、配管を含む。配管内を流れる液体の流量調整手段としては、第1供給源3を反応部(D)よりも高い位置に配置して、高低差を利用する方法がある。この場合、配管のみで還元剤を含む液体を運ぶことができる。このとき、送液ルート(A)にニードルバルブ、ストップバルブなどの流量を絞る弁を配置してもよい。
【0028】
第2供給源1と反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)は、配管を含む。配管内を流れる液体の流量調整手段としては、第2供給源1を反応部(D)よりも高い位置に配置して、高低差を利用する方法がある。このとき送液ルート(A)と同様に、送液ルート(B)にニードルバルブ、ストップバルブなどの流量を絞る弁を配置してもよい。
【0029】
第3供給源2と反応部(D)とを結ぶ送液ルート(C)は、配管を含む。配管内を流れる液体の流量調整手段としては、第3供給源2を反応部(D)よりも高い位置に配置して、高低差を利用する方法がある。このとき送液ルート(A)と同様に、送液ルート(C)にニードルバルブ、ストップバルブなどの流量を絞る弁を配置してもよい。
【0030】
送液ルート(B)と送液ルート(C)は、それぞれ別々に反応部(D)に接続されていてもよい。
図1に示すように、反応部(D)に到達前に送液ルート(B)と送液ルート(C)を合流させ、合流させた共用ルート(B,C)を反応部(D)に接続されていてもよい。
【0031】
本実施形態に係る担持触媒合成装置では、送液ルート(B)又は送液ルート(C)のいずれか一方、又は、両方に流れる液体を一方向へ移送する機構(G)を有することが好ましい。
図2に示した担持触媒合成装置200では、送液ルート(B)及び送液ルート(C)の両方に、機構(G)を有する形態を示した。この形態では、送液ルート(B)及び送液ルート(C)において担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び担体粒子を含む液体の流量及び流速を安定的に規定することができるので、安定的に担持触媒の合成を行うことができる。
【0032】
図2に示すように本実施形態に係る担持触媒合成装置200は、送液ルート(A)に流れる液体を一方向へ移送する機構(G)をさらに有していても良い。この形態では、送液ルート(A)において還元剤を含む液体の流量及び流速を安定的に規定することができるので、安定的に担持触媒の合成を行うことができる。
【0033】
機構(G)は、配管内を流れる液体の流量調整手段であり、例えば、プランジャー、シリンダー又はレギュレーターである。
【0034】
図3に示すように本実施形態に係る担持触媒合成装置300では、
図2に示すような第2供給源1と送液ルート(B)及び第3供給源2と送液ルート(C)を有する代わりに、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体と担体粒子を含む液体との混合液を貯蔵する第4供給源4と、送液ルート(B)及び送液ルート(C)との共用ルート(B,C)とを有していても良い。
【0035】
次に、
図4(A)及び
図4(B)を参照する。
図4(A)及び
図4(B)は液体を一方向へ移送する機構(G)の一例を示す概略図であり、
図4(A)はプランジャーを押し下げるときの概略図であり、
図4(B)はプランジャーを押し上げるときの概略図である。
図4(A)に示すように、プランジャー12を押し下げるとき、吐出側のボール10bは吐出側配管11bを閉じ、吸込側のボール10aは吸込側配管11aを開ける。この結果、空間13内の容積が大きくなると共に液体の貯留量が大きくなる。次に
図4(B)に示すように、プランジャー12を押し上げるとき、吐出側のボール10bは吐出側配管11bを開け、吸込側のボール10aは吸込側配管11aを閉じる。この結果、空間13内の容積が小さくなると共に液体の貯留量が小さくなり、減った液体の貯留量が吐出側から出る液体の吐出量となる。送液ルート(B)、送液ルート(C)及び送液ルート(A)において、機構(G)によって送液量が調整され、逆流が抑制され、脈動が生じることなく、反応部(D)へ液体を連続的に同じ流速で移送することができる。プランジャーはシングルプランジャー方式でもよくダブルプランジャー方式でもよく、ローラーポンプ方式、シリンジポンプ方式を用いてもよい。
図4(A)及び
図4(B)において、吸込側のボール10a及び吐出側のボール10bを用いる逆止弁の代わりに電磁弁又はボールバルブを用いてもよい。また、プランジャーの代わりにダイヤフラムを用いてもよい。
【0036】
本実施形態に係る担持触媒合成装置では、送液ルート(C)が攪拌機構(H)を有することが好ましい。送液ルート(C)から担体粒子を反応部(D)に移送するときに、機構(G)を設けるが、機構(G)の箇所において、担体粒子が下方に沈むことがある。このため、機構(G)に攪拌機構(H)を設けることによって、担体粒子が機構(G)の箇所の下方に沈むことを抑制し、担体粒子を反応部(D)に均一に移送することができる。
図5は、液体を一方向へ移送する機構(G)がさらに攪拌機構(H)を有するときの一例を示す概略図である。攪拌機構(H)としては、
図5に示した攪拌羽14である。攪拌機構(H)の別例としては、液体循環装置、スターラーなどが挙げられる。
【0037】
反応部(D)は、還元剤を含む液体、担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び担体粒子を含む液体を1箇所に合流させる反応容器である。反応容器の形状、容積、容器内での液体の流れ方を各種選択・調整することによって、反応条件を制御することも可能である。反応容器には配管形状の容器も含まれる。反応部(D)は、加圧下で反応を進めることができるように、圧力容器であることが好ましい。さらに、反応部(D)は、中に入れられた液体を加熱する加熱手段をしてもよく、加熱手段は、例えば、抵抗発熱体、遠赤外線照射装置、マイクロ波照射装置、直接通電加熱、誘電加熱、誘導加熱、電気炉、ヒーターなどである。
【0038】
回収部(E)は、反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する容器である。回収部(E)は、反応部(D)において加圧下で反応を進めることができるように、圧力容器であることが好ましい。
【0039】
圧力調整機構(F)は回収部(E)に接続されている。圧力調整機構(F)は回収部(E)に配管を介して接続されていてもよい。また、圧力調整機構(F)は回収部(E)に一体化した状態で接続されていてもよい。圧力調整機構(F)は、例えばプランジャー、シリンダー、レギュレーターなどの加圧・減圧手段があるが、装置の摩耗や目詰まりが起きにくいシリンダーが好ましい。圧力調整機構(F)によって、回収部(E)の内部の圧力と、回収部(E)と配管を介して接続されている反応部(D)内の圧力とが調整される。反応部(D)よりも上流側である送液ルート(A)、送液ルート(B)、送液ルート(C)についても反応部(D)に接続されていることからルートの内部空間が加圧状態とされることとなるが、その圧力よりも高い圧力にて液体が反応部(D)に向けて送液される。単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を担持した担体を有する液体を回収部(E)にて回収するときに、圧力調整機構(F)で回収部(E)内の圧力を調整することによって反応部(D)内の圧力が調整され、結果として反応部(D)において単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素の還元を助長する。還元を助長しうる条件とするためには、高いエネルギーを与えることが好ましく、反応部(D)において還元剤を高温にしつつ沸騰しないように圧力調整機構(F)によって回収部(E)内の圧力を調整することが可能である。
【0040】
図6に示すように、本実施形態に係る担持触媒合成装置400では、送液ルート(A)において加熱保温機構(I)を有することが好ましい。還元剤を含む液体を室温から反応に必要な温度まで加熱することで、還元に必要な熱量を与えることができ、還元剤の反応性を向上させることができる。加熱保持機構(I)としては、直接通電加熱、誘電加熱、誘導加熱、電気炉、ヒーターによる加熱等があるが、配管への伝熱による予期せぬ金属塩の還元等を避け、温度コントロールの応答性が高いとされる直接通電加熱、誘電加熱又は誘導加熱がより好ましい。
【0041】
図6に示すように、本実施形態に係る担持触媒合成装置400では、反応部(D)と回収部(E)との間に冷却機構(J2)を有することが好ましい。反応部(D)で生じた担持触媒を含む液体を急冷することで、単金属微粒子のシンタリング若しくは固溶体微粒子同士のシンタリングを抑制することができる。粒子同士のシンタリングをより抑制するために、冷却機構(J2)は、反応部(D)に可能な限り近い位置に設けることが好ましく、冷却機構(J2)の端部のうち反応部(D)に近いほうの端部が反応部(D)に対して1~1000mm離した位置に設けることがより好ましい。冷却機構(J2)は、反応部(D)と回収部(E)との間に設けられているが、冷却機構(J2)に加えて更に、冷却機構(J1)を設けてもよい。担持するナノ粒子を構成する元素を含む液体及び担体粒子を含む液体が送液ルート(B)および送液ルート(C)を通じて反応部(D)に導かれるところ、反応部(D)に導かれる直前に冷却機構(J1)を設けてもよい。伝熱の影響による予期せぬ金属の析出を予防するために、必要に応じて送液ルート(B)及び/又は送液ルート(C)に冷却機構(J1)を設けてもよい。冷却手段としては、水冷、空冷などが挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る担持触媒合成装置を用いた担持触媒の作製例としては、還元剤として、エタノール含有水溶液を含む液体を第1供給源3に入れ、還元剤を移送する送液ルート(A)において、加熱保温機構(I)によって室温~450℃までヒーターを用いて加熱し、反応部(D)に移送する。担持する単金属元素を含む液体として、Pd原料溶液とRu原料溶液を第2供給源1に入れ、送液ルート(B)を介して反応部(D)に移送する。担持される担体として、アルミナを含む液体を第3供給源2に入れ、流れる液体を一方向へ移送する機構(G)、攪拌機構(H)を稼働させながら反応部(D)に移送する。エタノール含有水溶液、Pd原料溶液、Ru原料溶液、アルミナは反応部(D)で合流した後、エタノール含有水溶液によって、Pd原料、Ru原料は、アルミナ上で同時に還元されつつ、Pd元素とRu元素は結合されて固溶体微粒子を形成し、固溶体微粒子はアルミナ上に担持されて担持触媒が形成される。形成された担持触媒は、冷却機構(J2)の水冷を用いて室温まで急冷する。急冷によって粒子同士のシンタリングが抑制される。急冷された担持触媒は、圧力調整機構(F)に接続された回収部(E)内に回収されると共に、圧力を0.1MPa~138MPaに制御することによって還元剤の沸騰を抑制し、圧力を上げることによって装置全体の圧力が向上し、反応部(D)内の反応の活性が向上する。
【0043】
(微粒子合成装置)
次に微粒子合成装置を説明するが、担持触媒合成装置と共通する内容を含むため、相違する点を中心に説明する。
【0044】
まず、
図7を参照して微粒子合成装置を説明する。本実施形態に係る微粒子合成装置500は、少なくとも、還元剤を含む液体の第1供給源3と、単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源1と、前記還元剤を含む液体、及び、前記単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体を合流させる反応部(D)と、前記第1供給源3と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(A)と、前記第2供給源1と前記反応部(D)とを結ぶ送液ルート(B)と、前記反応部(D)に配管を介して接続され、生成した反応物を回収する回収部(E)と、を有し、前記回収部(E)に接続された圧力調整機構(F)をさらに有する。本実施形態に係る微粒子合成装置によれば、背圧弁を用いずに装置内の圧力制御が可能となり、課題であった装置内で単金属微粒子若しくは固溶体微粒子の目詰まりを起こし難くなり、安定的に単金属微粒子若しくは固溶体微粒子の合成を行うことができる。
【0045】
本実施形態に係る微粒子合成装置では、反応部(D)において、単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体を還元して単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を形成することができる。
【0046】
第1供給源3、還元剤の種類、第2供給源1、送液ルート(A)、送液ルート(B)、反応部(D)、回収部(E)及び圧力調整機構(F)については、本実施形態に係る担持触媒合成装置の場合と同様である。また、単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の種類は、本実施形態に係る担持触媒合成装置の場合における「担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の種類」と同様である。
【0047】
本実施形態に係る微粒子合成装置では、前記送液ルート(B)に流れる液体を一方向へ液体を移送する機構(G)を有することが好ましい。送液ルート(B)において単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の流量及び流速を安定的に規定することができるので、安定的に微粒子の合成を行うことができる。
図8に示した担持触媒合成装置600では、送液ルート(B)及び送液ルート(A)の両方に、機構(G)を有する形態を示した。この形態では、送液ルート(B)及び送液ルート(A)において単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体及び還元剤を含む液体の流量及び流速を安定的に規定することができるので、安定的に微粒子の合成を行うことができる。
【0048】
機構(G)の具体的な構造については、本実施形態に係る担持触媒合成装置の場合と同様である。
【0049】
本実施形態に係る微粒子合成装置では、
図9に示すように、送液ルート(A)において加熱保温機構(I)を有することが好ましい。還元剤を含む液体を室温から反応に必要な温度まで加熱することで、還元に必要な熱量を与えることができる。加熱保温機構(I)の具体的な構造については、本実施形態に係る担持触媒合成装置の場合と同様である。
【0050】
本実施形態に係る微粒子合成装置では、
図9に示すように、反応部(D)と回収部(E)との間に冷却機構(J2)を有することが好ましい。反応部(D)で生じた単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を含む液体を急冷することで、粒子同士のシンタリングを抑制することができる。冷却機構(J2)の具体的な構造については、本実施形態に係る担持触媒合成装置の場合と同様である。冷却機構(J2)に加えて更に、冷却機構(J1)を設けてもよい。ナノ粒子を構成する元素を含む液体が送液ルート(B)を通じて反応部(D)に導かれるところ、反応部(D)に導かれる直前に冷却機構(J1)を設けてもよい。伝熱の影響による予期せぬ金属の析出を予防するために、必要に応じて送液ルート(B)に冷却機構(J1)を設けてもよい。冷却機構(J1)の具体的な構造については、本実施形態に係る担持触媒合成装置の場合と同様である。
【0051】
本実施形態に係る微粒子合成装置を用いた微粒子の作製例としては、還元剤として、エタノール含有水溶液を含む液体を第1供給源3に入れ、還元剤を移送する送液ルート(A)において、加熱保温機構(I)によって室温~450℃までヒーターを用いて加熱し、反応部(D)に移送する。固溶体微粒子を構成する元素を含む液体として、Pd原料溶液とRu原料溶液を第2供給源1に入れ、送液ルート(B)を介して反応部(D)に移送する。エタノール含有水溶液、Pd原料溶液とRu原料溶液は反応部(D)で合流した後、エタノール含有水溶液によって、Pd原料及びRu原料は、同時に還元されつつ、Pd元素とRu元素は結合されて固溶体微粒子が形成される。形成された固溶体微粒子は、冷却機構(J2)の水冷を用いて室温まで急冷する。急冷によって粒子同士のシンタリングが抑制される。急冷された固溶体微粒子は、圧力調整機構(F)に接続された回収部(E)内に回収されると共に、圧力を0.1MPa~138MPaに制御することによって還元剤の沸騰を抑制し、圧力を上げることによって装置全体の圧力が向上し、反応部(D)内の反応の活性が向上する。
【符号の説明】
【0052】
100,200,300,400 担持触媒合成装置
500,600,700 微粒子合成装置
A 第1供給源と反応部とを結ぶ送液ルート
B 第2供給源と反応部とを結ぶ送液ルート
C 第3供給源と反応部とを結ぶ送液ルート
(B,C) 送液ルート(B)及び送液ルート(C)との共用ルート
D 反応部
E 回収部
F 圧力調整機構
G 液体を一方向へ移送する機構
H 攪拌機構
I 加熱保温機構
J1,J2 冷却機構
1 単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体の第2供給源
2 担体粒子を含む液体の第3供給源
3 還元剤を含む液体の第1供給源
4 担持する単金属微粒子若しくは固溶体微粒子を構成する元素を含む液体と担体粒子を含む液体との混合液を貯蔵する第4供給源
10a 吸込側のボール
10b 吐出側のボール
11a 吸込側配管
11b 吐出側配管
12 プランジャー
13 空間
14 攪拌羽