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特許7524189燃料効率を向上するための水素産生システムおよびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】燃料効率を向上するための水素産生システムおよびデバイス
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240722BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 11/032 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20240722BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20240722BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240722BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20240722BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B9/23
C25B9/77
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/081
C25B13/02 302
C25B15/023
C25B15/08 302
F02D19/02 B
F02M21/02 G
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021535288
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2019067182
(87)【国際公開番号】W WO2020132073
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】62/782,202
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521266022
【氏名又は名称】オーウェンズ,ドナルド
【氏名又は名称原語表記】OWENS,Donald
【住所又は居所原語表記】42309 Winchester Road,Ste.E,Temecula,California 92590(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ.ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ビーマン,ウェッブ
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-535000(JP,A)
【文献】特表2014-508213(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076277(WO,A1)
【文献】特開2018-028134(JP,A)
【文献】中国実用新案第206368199(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C25B 1/04
C25B 9/23
C25B 15/08
C25B 15/023
C25B 9/77
C25B 13/02
C25B 11/032
C25B 11/052
C25B 11/081
F02M 21/02
F02D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のセルを含む水素ガスを供給するための携帯型水素供給システムであって、各セルは、
(a)内面、外面、および複数の貫通孔を含む酸素基板;
(b)前記酸素基板の内面上に設けられ、複数の貫通孔に流体連通する第1の拡散層;
(c)前記第1の拡散層上に設けられた陽極;
(d)第1の触媒により被覆された第1の面と、第2の面とを含む膜であって、前記膜の第1の面が前記陽極上に設けられた膜;
(e)前記膜の第2の面上に設けられた陰極;
(f)前記陰極上に設けられた第2の拡散層;
(g)内面、外面、および出力ポートを含む水素基板であって、前記出力ポートは中にガスを流すように構成され、前記内面は第2の拡散層上に設けられた、水素基板;および
(h)前記酸素基板の外面上に設けられたスペーサ
を含み、
前記酸素基板の外面は、互いに密封して貼り付けられ、それによって、前記スペーサを有するリザーバを形成し、水を各セル内に供給して酸素を各セル外に排出し、前記リザーバは前記水を保持するように構成され、各セルの陽極は互いに電気的に結合され、各セルの陰極は互いに電気的に結合された、
携帯型水素供給システム。
【請求項2】
前記陽極および陰極に電気連通する電源をさらに含み、各セルは、前記電源から電力を供給された際に前記水から水素ガスおよび酸素ガスを産生し、前記水素ガスは前記出力ポートを出る、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記膜は選択的透過膜である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記膜はイオン交換膜である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記膜の第2の面は第2の触媒により被覆されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1および第2の触媒は、白金黒およびイリジウム・ルテニウム酸化物からなる群から独立して選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1および第2の拡散層は非導電材から形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1および第2の拡散層はポリプロピレン織メッシュから形成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の拡散層は、前記酸素基板および前記陽極に張力を印加するように構成され、前記第2の拡散層は、前記水素基板および前記陰極に張力を印加するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記陽極および陰極は、それぞれ伝導性の織メッシュから形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記織メッシュはステンレス鋼から形成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記スペーサは前記酸素基板の外面上に形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
各セルの前記出力ポートは、内燃式またはディーゼルエンジンの取込みマニホルドに水素ガスを流すように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
各セルは、各水素基板の外面上に設けられたフレームをさらに含み、各フレームは、前記セル対を互いに密封して貼り付けるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
収集された水素ガスから水を分離するように構成されているコレクタをさらに含み、前記コレクタは、
(a)各セルの前記出力ポートに流体連通する入力ポート;
(b)内燃式またはディーゼルエンジンの取込みマニホルドに水素ガスを流すように構成されている出力ポート;および
(c)分離された水をそこから流すように構成されている液体ポート
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記コレクタは、
(d)筐体内に設けられ、前記入力ポートおよび前記出力ポートに流体連通するブーツ;
(e)前記ブーツとは独立しており、前記液体ポートを通じて水を流すように構成されているチャンバ;
(f)前記ブーツ内に設けられ、前記チャンバ内に水を流すように構成されているバルブ;および
(g)前記ブーツ内に設けられ、前記バルブに固定して取り付けられ、前記バルブを開いて分離された水を中に流すように構成されているフロート
をさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記液体ポートに流体連通し、前記分離された水から不純物を濾別するように構成されているフィルタを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記コレクタおよびフィルタのうち一方または両方がタンクに設けられ、前記タンクは、入力ポートおよび出力ポートを含み、流体を前記リザーバに供給するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記タンクの出力ポートと前記リザーバとの間に設けられ、流体を前記タンクから前記リザーバにポンプ移送するように構成されたポンプをさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記タンクに設けられて前記ポンプに電気連通するセンサをさらに含み、前記センサは、前記タンクが所定量の水を受け取っている際に、前記ポンプに電力を供給するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記リザーバに設けられて前記ポンプに電気連通するセンサをさらに含み、前記センサは、前記リザーバ内の水が所定レベルに達している際に、前記ポンプに電力を供給するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
1つまたは複数の追加のセル対をさらに含み、各対の前記リザーバは互いに流体連通し、各水素基板の前記出力ポートは互いに流体連通し、各セル対の前記陰極は互いに電気連通し、各セル対の前記陽極は互いに電気連通する、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
各リザーバ間の流体連通は、第1の対の1枚の酸素基板の外面を別の対の別の酸素基板の外面に接続するチューブを介して提供される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記セル対は、内燃式エンジンまたはディーゼルエンジンを有する運搬器に前記システムを搭載するために構成されたラックに搭載されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記運搬器に設けられて前記システムに電気連通するコントローラをさらに含み、前記コントローラは、前記運搬器に搭載されたセンサから生成されたシグナルに応じて、前記システムの前記陽極および陰極に方向付けされた電力を制御する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記センサは、前記運搬器の前記エンジンに搭載され、前記センサは、前記エンジンが動作すると、真空圧を検出するように構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
(a)運搬器に請求項19に記載のシステムを提供することであって、前記コレクタの前記出力ポートは、前記運搬器の取込みマニホルドに流体連通すること;
(b)前記システムの前記リザーバに水を供給すること;
(c)前記システムのセルの陰極および陽極に電力を供給して、水素ガスおよび酸素ガスを産生すること;
(d)前記産生された水素ガスを前記運搬器の取込みマニホルドに供給し、前記産生された酸素ガスを雰囲気に排出すること;ならびに
(e)前記収集された水を前記システムのリザーバ内にポンプ移送で戻すこと
を含む、エンジンに水素ガスを供給するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる2018年12月19日出願の米国仮特許出願第62/782,202号の、米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を請求するものである。
【0002】
本発明は、概して水素生成デバイスに関し、さらに具体的には、あらゆるサイズの内燃式および/またはディーゼルエンジンと共に用いて排気を低減し燃料効率を増加させることのできる携帯型水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0003】
排気物は環境上の懸念により課題となりつつある。内燃式エンジンは、本質的に非効率的である。内燃式エンジンでは、燃焼チャンバ内に進む燃料の100%は、ガソリンエンジンでもディーゼルエンジンでも燃焼過程の間には燃えない。あらゆる内燃式エンジンの排気は、一酸化炭素、未燃の炭化水素、および窒素の酸化物を含む。ガソリンエンジンには、触媒コンバータを用いて、触媒化学反応を経て燃焼のいくつかの毒性副産物を変換し、毒性物質を減らす。ディーゼルエンジンでの燃焼過程は、ガソリンエンジンのものとは異なる。ガソリンエンジンが点火プラグを用いてガソリンの燃焼を開始するのに対し、ディーゼルエンジンは圧縮に依存してディーゼル燃料の燃焼を開始する。ディーゼルエンジンの燃焼過程が異なるため、ディーゼルエンジンからの排気物はまた、適切に制御されない際には健康への害因を生じ得るガスと微小粒子との混合物を含有する。ディーゼル粒子物は、ディーゼル排気物を作り出す複合混合物の一部である。しかし、ガソリン燃焼がディーゼル燃焼とは異なるとはいえ、粒子物はやはり生じ、ガソリン排気物を作り出す複合混合物であることに留意されたい。
【0004】
ディーゼル排気物は、ガス相または粒子相の2つのどちらかから構成され、どちらの相もリスクに寄与する。ガス相は、都会の有害な多くの空気汚染物質、例えばアセトアルデヒド、アクロレイン、ベンゼン、1,3-ブタジエン、ホルムアルデヒド、および多環芳香族炭化水素などから構成される。粒子相もまた、異なる多くのタイプの粒子を有し、それらはサイズまたは成分によって分類することができる。健康上の最大の懸念であるディーゼル微粒子のサイズは、微細粒子および超微細粒子のカテゴリーにあるものである。これらの微細粒子および超微細粒子の構成成分は、有機化合物、硫酸塩、硝酸塩、金属、および他の微量元素などの化合物が吸着された元素状炭素から構成されることがある。ディーゼル排気物は、多様なディーゼルエンジン、すなわちトラック、バス、および自動車の路上走行用ディーゼルエンジン、ならびに機関車、海洋船舶、および重量装備を含めた路上外走行用ディーゼルエンジンから放出される。
【0005】
微粒子物質を低減する現在の技術は、微粒子排気フィルタを組み込むか、または微粒子物質が排気器に到達すると燃焼するようにする排気システムを使用するかのどちらかに基づくものである。排気フィルタを使用する際には、排気フィルタが最大能力に達しているか否かを決定する能動的なモニタリングが必要であることがある。さらに、微粒子物質を燃焼する排気システムは、典型的には複合型の高価なシステムである。
【0006】
水素混焼は、内燃式および/またはディーゼルエンジンにおける排気を低減するのに有効であることが実証されている。HHOガスを作り出す数多くのデバイスが販売されているが、このガスは別名ブラウンガスとしても知られ、排気物を低減するためのガソリンおよびディーゼルエンジンへの供給物として用いられる。HHOガスは2部の水素と1部の酸素とからなる。これらのデバイスは典型的には、水酸化物または重曹などの電解質を用いて、電解水を酸水素ガスに分解する電解槽を含む。
【0007】
しかし、あらゆる内燃式および/またはディーゼルエンジンにエンジンのサイズに関わらず用いることのできるシステムなどこれまでにはない。排気を低減し効率を向上するのに必要な水素の量は、エンジンのサイズによって変わる。例えば、1.6リットルのエンジンの小型ディーゼル運搬器の排気を低減するために必要な水素は、スクールバスや軍事用ジープの6.5リットルのディーゼルエンジン、または発電機、船、ヘリコプターなど用いられるような50~100リットルエンジンに必要な水素とは大きく異なるものとなろう。そのため、排気を低減し燃料効率を上げるためにあらゆるサイズの内燃式および/またはディーゼルエンジンと共に用いることができる、携帯型水素供給システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、モジュール式のアプローチを用いて電解槽システムを形成することができるという知見に基づくものであり、このアプローチでは、電解槽システムは、接続されている内燃式および/またはディーゼルエンジンの水素供給の必要性に応じて、1つまたは複数のカートリッジを含む。
【0009】
したがって、一形態では、本発明は、内燃式またはディーゼルエンジンに水素ガスを供給するための携帯型水素供給システムを提供する。本システムは1対のセルを含み、各セルは、内面、外面、および複数の貫通孔を含む酸素基板;酸素基板の内面上に設けられ、複数の貫通孔に流体連通する第1の拡散層;第1の拡散層上に設けられた陽極;第1の触媒により被覆された第1の面と、第2の面とを含む膜であって、膜の第1の面が陽極上に設けられた膜;膜の第2の面上に設けられた陰極;陰極上に設けられた第2の拡散層;内面、外面、および出力ポートを含む水素基板であって、出力ポートが中にガスを流すように構成され、内面が第2の拡散層上に設けられた、水素基板;および酸素基板の外面上に設けられたスペーサを含む。様々な実施形態では、酸素基板の外面は、互いに密封して貼り付けられ、それによって、スペーサを有するリザーバを形成し、リザーバは水を保持するように構成され、水を各セル内に供給して酸素を各セル外に排出し、各セルの陽極は互いに電気的に結合され、各セルの陰極は互いに電気的に結合されている。様々な実施形態では、本システムのセル対は、内燃式エンジンまたはディーゼルエンジンを有する運搬器に本システムを搭載するために構成されているラックに搭載されてもよい。
【0010】
様々な実施形態では、本システムは、陽極および陰極に電気連通する電源をさらに含み、各セルは、電源から電力を供給されている際に水から水素ガスおよび酸素ガスを産生し、水素ガスが前記出力ポートを出る。様々な実施形態では、膜はイオン交換膜などの選択的透過膜であってもよい。様々な実施形態では、膜の第2の面は第2の触媒により被覆されており、第2の触媒は第1の触媒と同じであっても異なっていてもよい。様々な実施形態では、第1および第2の触媒は、白金黒およびイリジウム・ルテニウム酸化物からなる群から独立して選択される。
【0011】
様々な実施形態では、第1および第2の拡散層のそれぞれは、ポリプロピレン織メッシュなどの非導電材から形成されていてもよい。様々な実施形態では、第1の拡散層は、酸素基板および陽極に張力を印加するように構成されていてもよく、第2の拡散層は、水素基板および陰極に張力を印加するように構成されていてもよい。様々な実施形態では、前記陽極および陰極のそれぞれは、ステンレス鋼メッシュなどの伝導性の織メッシュから形成されていてもよい。様々な実施形態では、スペーサは酸素基板の外面上に単一のユニットとして形成されていてもよい。
【0012】
様々な実施形態では、各セルの前記出力ポートは、内燃式またはディーゼルエンジンの取込みマニホルドに水素ガスを流すように構成されている。様々な実施形態では、各セルは、各水素基板の外面上に設けられたフレームをさらに含み、各フレームは、セル対を互いに密封して貼り付けるように構成されている
【0013】
本システムは、収集された水素ガスから水を分離するように構成されているコレクタをさらに含んでいてもよい。様々な実施形態では、コレクタは、各セルの出力ポートに流体連通する入力ポート、内燃式またはディーゼルエンジンの取込みマニホルドに水素ガスを流すように構成されている出力ポート、および分離された水をそこから流すように構成されている液体ポートを含む。様々な実施形態では、コレクタはまた、筐体内に設けられ、入力ポートおよび出力ポートに流体連通するブーツ;ブーツとは独立しており、液体ポートを通じて水を流すように構成されているチャンバ;ブーツ内に設けられ、チャンバ内に水を流すように構成されているバルブ;およびブーツ内に設けられ、バルブに固定して取り付けられたフロートをさらに含み、フロートは、バルブを開いて分離された水を中に流すように構成されている。様々な実施形態では、本システムはまた、液体ポートに流体連通し、分離された水から不純物を濾別するように構成されているフィルタを含む。様々な実施形態では、コレクタおよびフィルタのうち一方または両方がタンクに設けられ、タンクは、入力ポートおよび出力ポートを含み、流体をリザーバに供給するように構成されている。
【0014】
本システムは、タンクの出力ポートとリザーバとの間に設けられ、流体をタンクからリザーバにポンプ移送するように構成されたポンプをさらに含んでいてもよい。様々な実施形態では、本システムはまた、タンクに設けられてポンプに電気連通するセンサをさらに含んでいてもよく、センサは、タンクが所定量の水を受け取っている際に、ポンプに電力を供給するように構成されている。様々な実施形態では、本システムはまた、リザーバに設けられてポンプに電気連通するセンサをさらに含んでいてもよく、センサは、リザーバ内の水が所定レベルに達している際に、ポンプに電力を供給するように構成されている。
【0015】
本システムはまた、1つまたは複数の追加のセル対をさらに含んでいてもよく、各対のリザーバは互いに流体連通し、各水素基板の出力ポートは互いに流体連通し、各セル対の陰極は互いに電気連通し、各セル対の陽極は互いに電気連通する。様々な実施形態では、各リザーバ間の流体連通は、第1の対の1枚の酸素基板の外面を別の対の別の酸素基板の外面に接続するチューブを介して提供される。
【0016】
本システムは、運搬器に設けられて本システムに電気連通するコントローラをさらに含んでいてもよい。様々な実施形態では、コントローラは、運搬器に搭載されたセンサから生成されたシグナルに応じて、本システムの陽極および陰極に方向付けられた電力を制御し、そのように配されている際には、ポンプに方向付けられた電力をさらに制御することがある。様々な実施形態では、センサは、運搬器のエンジンに搭載され、コントローラセンサは、エンジンが作動すると真空圧を検出するように構成されている。
【0017】
別の態様では、本発明は、内燃式および/またはディーゼルエンジンに水素ガスを供給するための方法を提供する。本方法は、本明細書に示される携帯型水素供給システムに電力を供給することを含み、コレクタの出力ポートは、運搬器の取込みマニホルドに流体連通する。様々な実施形態では、本方法はまた、本システムのリザーバに水を供給すること;本システムのセルの陰極および陽極に電力を供給して、水素ガスおよび酸素ガスを産生すること;産生された水素ガスを運搬器の取込みマニホルドに供給し、産生された酸素ガスを雰囲気に排出すること;ならびに収集された水を本システムのリザーバ内にポンプ移送で戻すことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本システムの例示的な実施形態を示す図である。
【0019】
図2】追加の部品を有する本システムの例示的な実施形態を示す図である。
【0020】
図3A】本システムに用いられる例示的なセル対の斜視図を示す図である。
【0021】
図3B】スペーサを有する例示的なセル対の斜視図を示す図である。
【0022】
図4A】互いに貼り付けられてリザーバを形成する例示的なセル対の斜視図を示す図である。
【0023】
図4B】互いに貼り付けられてリザーバを形成する例示的なセル対の斜視図を示す図である。
【0024】
図5】本システムに用いるための例示的なセルの断面図を示す図である。
【0025】
図6】本システムの例示的なセルの部品を示す分解組立図を示す図である。
【0026】
図7】本システムの例示的なコレクタの断面図を示す図である。
【0027】
図8】エンジンとそれに搭載された本システムとを有する運搬器の部分断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、モジュール式のアプローチを用いて電解槽システムを形成することができるという知見に基づくものであり、このアプローチでは、電解槽システムは、接続されている内燃式および/またはディーゼルエンジンの水素供給の必要性に応じて、水から水素ガスを産生する1つまたは複数のセル対を含む。
【0029】
本願の構成および方法を記載する前に、記載される具体的な構成、方法、および実験条件は様々となり得ることから、本発明がそのような構成、方法、および条件に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみに限定されるものとなることから、本明細書に使用される用語は、具体的な実施形態を記載する目的のみのためにあって、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0030】
別段に定めのない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または等価の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験に用いることができるが、好適な方法および材料を以下記載する。
【0031】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される際に、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段に明確に指示しない限り複数の参照を含む。ゆえに例えば、「aセル」または「theセル」という言及は、本明細書に記載されたタイプの1つまたは複数のセルを含み、当業者には本開示などを読むと明らかになってゆくものとなる。
【0032】
用語「含むこと(comprising)」、は、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」、または「という特徴を有する(characterizedby)」、”と互換的に用いられ、包括的またはオープンエンドの言葉であり、追加の未記載の要素または方法工程を除外するものではない。句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。句「から実質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の範囲を、特定された材料または工程、および特許請求の範囲に記載された発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないものに限定する。本開示は、これらの句のそれぞれの範囲に対応する本発明の実施形態、構成、および方法を想定している。そのため、記載された要素または工程を含む構成または方法は、構成または方法がそれらの要素または工程から実質的になるかまたはなる、具体的な実施形態を想定している。
【0033】
本明細書に用いられる際に、「または」とは、別段に述べない限り「および/または」を意味する。さらに、用語「含むこと(including)」ならびに他の形態、例えば「含む(includes)、および「含まれる(included)を用いることは限定的ではない。
【0034】
ここで図1、2、および8を参照すると、本発明は、内燃式またはディーゼルエンジンに水素ガスを供給するための携帯型水素供給システム1を提供し、この水素供給システムは、運搬器200に確実に搭載されていてもよいし、独立型ディーゼル電力発生器などの電力生成デバイスの内燃式またはディーゼルエンジンに近接近していてもよい。水素ガスをエンジン220の空気取込み口に方向付けて、エンジン220の燃焼チャンバにおける燃料の燃焼を向上させることができる。様々な実施形態では、運搬器200のエンジン220の要求に応じて、特定の速度でおよび特定のガス圧下で、水素を空気取込み口(すなわち、取込みマニホルド)230に方向付けることができる。よって、システム1は、真空スイッチ215または他のエンジンセンサを利用して、システム1に供給される電力を調節することができ、したがって、エンジン220が動作しているおよび/または汚染物が増加している際の(すなわちアイドリング時の)スピードで動作している際にのみ、水素ガスの産生を制御することができる。
【0035】
システム1は、少なくとも1対のセル10を含み、セル対10は合わさって、電解槽対3に隣接して流体連通するリザーバ105を形成し、それゆえにリザーバ105は、重力によって水7をセル対10に供給する(図4Aおよび図4Bを参照)。様々な実施形態では、システム1は、本システムの取り付けられたエンジンのサイズに応じて、1対を超えるセル10を含むことがある。例えば、小型内燃式エンジンは、単一のセル対10を有するシステム1のみを要することがあり、大型のディーゼルエンジンは、十分な量の水素ガスをそこに供給するための(図1および図2に示されるような)2対以上のセル10を要することがある。1対を超えるセル10が利用される実施形態では、各セル対10の各リザーバ105は、間に流体連通をもたらすように相互接続されていてもよい。様々な実施形態では、本システムは、各セル対10の一部の外面上に設けられて各セル対10の各リザーバ105の間に水を流すように構成されている、チューブまたはパイプ195をさらに含んでいてもよい。様々な実施形態では、システム1に供給される水は非電解水である。
【0036】
システム1は、電源100との電気連通に配された電解槽3に陽極12および陰極14をさらに含む。この電源110は、運搬器の電気システム(すなわち、運搬器の交流発電器および/もしくは運搬器のバッテリ)、スタンドアロン・バッテリ、ソーラーセル、またはそれらの任意の組合せとすることができる。ゆえに、電力がシステム1の陽極12および陰極14に電圧の形で供給されている際に、水がリザーバ105に配され、電解槽3は、生成された電界の影響下でプロトン、電子、およびガス状酸素を形成する。ガス状酸素は、リザーバ105を通じて泡の形で電解槽3を離れるのに対し、プロトンは、印加された電解の影響下で電解槽3を通じて移動し、電子は、その中に作り出された回路を通じて移動する。プロトンおよび電子は、負電荷の電極(すなわち陰極70)で組み合わされて純粋なガス状水素を形成し、出力ポート95を介して出る。セル対10の各セル5の出力ポート95は、次いで組み合わされて単一の水素供給パイプ115となり、このパイプは、ガス状水素を運搬器のエンジンに送るように構成されていてもよい。
【0037】
図3A図3B図4A、および図4Bを参照すると、セル対10の一方のセル5の酸素基板15を他方のセル5の酸素基板15に密封して貼り付けることによって、セル対10が形成される。そのため、各セル対10は、電解槽対3内に水を送り込む単一のリザーバ105を含み、その場合に各電解槽が各セル内に形成されるものと理解されてもよい。
【0038】
ここで図5および図6を参照すると、各セル5は、内面20、外面25、およびそれらを通じて設けられた複数の貫通孔30を有する、酸素基板15を含む。貫通孔30は、水がリザーバ105から各セルの電解槽3内に流れることが可能になるように構成されている。酸素基板15は任意の剛性の非導電材、例えばプラスチック、ガラス、またはプラスチック層などの非導電層により被覆された金属などから、形成されていてもよい。様々な実施形態では、酸素基板15はポリカーボネートから形成される。
【0039】
第1の拡散層35は、酸素基板15の内面20上に設けられ、複数の貫通孔30に流体連通する。第1の拡散層35は、複数の貫通孔30を覆うようにサイズ調整されて形作られてもよく、酸素基板15の外縁に向かって延びていてもよい。様々な実施形態では、第1の拡散層35は、織材または非織材などの非導電材から形成されるが、尤も、第1の拡散層35が(例えば、表面張力を介して)水滴を捕捉して保持するように構成されているとともにまた、酸素基板15とセル5の次の層との間に張力を与えて表面接触面積をセル5の層のうち最大にするという条件でのことである(図6を参照)。様々な実施形態では、第1の拡散層35は、ポリプロピレン織から形成されていてもよい。
【0040】
第1の拡散層35上に設けられるのは陽極40である。陽極40は、第1の拡散層35を実質的に覆うようにサイズ調整されて形作られていてもよく、酸素基板15の外面25を越えて延びる陽極延長部42を含んでいてもよい。様々な実施形態では、陽極40は、金属ワイヤメッシュなどの伝導性材料から形成されていてもよい。様々な実施形態では、陽極40はステンレス鋼ワイヤメッシュから形成される。ゆえに、セル5が完全に組み立てられている際に、第1の拡散層35は、酸素基板15および陽極40に張力を印加して、陽極40とセル5の次の層との間の表面接触面積を最大にするように構成されている。
【0041】
陽極40上に設けられるのは、第1の面47と第2の面49とを有する膜45であり、第1の面47は陽極に接して配される。膜45は典型的には、イオン交換膜などの選択的透過膜である。様々な実施形態では、膜45は、スルホン酸基(SOH)を含有するフッ化ポリマー膜としてもよい。そのような膜は、E.I.デュポン・ド・ヌムール社、ウィルミントン、デラウェア州によりNAFION(登録商標)の商標の下で商業的に入手可能である。このような膜は、酸素および水素などのガスを実質的に浸透しない一方で、イオンの迅速な移送を可能とする。理論に縛られる訳ではないが、スルホン基は、容易にその水素を正電荷の原子またはプロトンとして、下記の式により遊離する:SOH→SO +H。これらのイオン形態または電荷形態により、水は膜構造内に貫通することが可能になるが、産生ガス、すなわち分子の水素Hおよび酸素Oが可能ではない。結果として得られる水和プロトンHは自由に動くのに対し、スルホン酸イオンSO は、膜45のポリマー側鎖に固定されたままとなる。そのため、電界が膜45じゅうに印可されている際に、水和プロトンが負電荷の電極(すなわち陰極70、下記)に引き寄せられる。移動する電荷は電流と同一であるため、膜45は電気の伝導体として働く。このように膜45は、セル5内で、別々の反応体および輸送プロトンとしての役割を果たす。
【0042】
様々な実施形態では、膜45の第1の面47は、第1の触媒55により処理または被覆されていてもよく、それゆえに第1の触媒は、陽極40と膜45の第1の面47との間に設けられる。第1の触媒55は、表面改質のため、当技術分野に公知の任意の方法によって膜45の第1の面47に塗布されていてもよい。例えば、スラリーは第1の触媒55から形成されていてもよく、結果として得られるスラリーは、膜の第1の面47上に塗装、噴霧、またはグラフトされていてもよい。同様に、膜45の第2の面49は、第2の触媒65により処理されていてもよく、それゆえに第2の触媒65は、膜45とセル5の次の層との間に設けられる。第1の触媒55のように、第2の触媒65は、表面改質のため、当技術分野に公知の任意の方法によって膜45の第2の面49に塗布されていてもよい。図が第1の触媒55と第2の触媒65との両方を組み込むことを示している一方で、第1の触媒55のみまたは第2の触媒65のみを用いてセル5が形成されてもよいことが理解されるべきである。第1の触媒55および第2の触媒65に用いられることがある例示的な材料としては、以下に限定されないが、白金黒およびイリジウム・ルテニウム酸化物が挙げられる。第1の触媒55と第2の触媒65のそれぞれについて異なる材料の使用を図が例示する一方で、第1の触媒55および第2の触媒65が同じ材料から形成されていてもよいことが理解されるべきである。
【0043】
膜45の第2の面上に設けられるのは陰極70である。しかし、膜45の第2の面49上に設けられた第2の触媒65を組み込む実施形態では、第2の触媒65が膜45の第2の面49と陰極70との間に配されることが理解されよう。陽極40と同様に、陰極70は膜45を実質的に覆うようにサイズ調整されて形作られていてもよく、酸素基板15の外面25を越えて延びる陰極延長部72を含んでいてもよい。様々な実施形態では、陰極70、金属ワイヤメッシュなどの伝導性材料から形成されていてもよい。様々な実施形態では、陰極70はステンレス鋼ワイヤメッシュから形成される。
【0044】
第2の拡散層75は、陰極70上に設けられる。第1の拡散層35と同様に、第2の拡散層75は、陰極70を実質的に覆うようにサイズ調整されて形作られてもよく、酸素基板15の外縁に向かって延びていてもよい。様々な実施形態では、第2の拡散層75は、織材または非織材などの非導電材から形成されるが、追加的に、同様に(例えば、表面張力を介して)水滴を捕捉して保持するように構成されているとともにまた、陰極70とセル5の次の層との間に張力を与えて表面接触面積をセル5の層のうちいっそう増加させる(図6を参照)。様々な実施形態では、第2の拡散層75は、ポリプロピレン織から形成されていてもよい。
【0045】
第2の拡散層75上に設けられるのは、内面85、外面90、および出力ポート95を有する水素基板80であり、出力ポート95はそこを通じて設けられた貫通孔である。出力ポート95は、陽極40および陰極70に印加された電圧によって作り出されたガス状水素を、セル5から流すように構成されている。したがって、水素基板80の内面85は、第2の拡散層75に接して設けられる。そのため、第2の拡散層75は、陰極70とセル5の水素基板80との間に追加の張力を配して、セル5の層のうちいっそう表面接触面積を増加させるように構成されていることがある(図6を参照)。酸素基板15と同様に、水素基板80は任意の剛性の非導電材、例えばプラスチック、ガラス、またはまたはプラスチック層などの非導電層により被覆された金属などから形成されていてもよい。様々な実施形態では、水素基板80はポリカーボネートから形成される。
【0046】
図3Aおよび図3Bに示されるように、酸素基板15の内面20と水素基板80の内面85とが互いに密封して貼り付けられ、その間に上記の層が挟まれていてもよい(図6を参照)。酸素基板15および水素基板80からの材料を互いに貼り付けるための任意の公知の方法が本明細書に用いられてもよいが、尤も、結果として得られる貼り合せが、セル5外への意図しない漏出を防ぐように水密であるという条件でのことである。例えば、酸素基板15および水素基板80は、エポキシド接着剤(すなわちエポキシ)または他の公知の接着剤を用いて、(例えば、有向の加熱もしくはレーザを用いて)材料を互いに融合することによって、または各基板の外縁周りに設けられた結合フィルムもしくは接着テープを用いて水密な封を形成することによって、互いに結合されてもよい。様々な実施形態では、結合フィルムまたは接着テープ92(例えば3M VHB 4905および/またはVHB 4910など)は、水素基板80の内面85の外縁に適用される。多層の結合フィルムまたは接着テープ92を用いて、セル5の上記の層によって作り出される厚さを占めてもよいことを理解するべきである。結果として得られる個々のセル5が、その後、互いにかみ合わされるとともに、一方のセル5の酸素基板15の複数の貫通孔30が、別のセル5の酸素基板15の複数の貫通孔30に対向し、それによってセル対10が形成されてもよい。
【0047】
図3Bに示されるように、セル対10は、1つまたは複数のスペーサ100をセル対10の酸素基板15の一方または両方の外面25上に設けてさらに含んでいてもよい。図3Bが、一方のセル5の外面25上に設けられた3つのスペーサ100を示しているとはいえ、任意の理に適った数のスペーサ100を利用してもよいことを理解するべきである。スペーサ100は、任意の剛性の非導電材、例えばガラス、プラスチック、またはプラスチック層により被覆された金属などから形成されていてもよい。様々な実施形態では、スペーサ100は、酸素基板15のものと同じ材料から形成され、さらに酸素基板15の外面25内に一体化してスペーサ100と酸素基板15とが単一のユニットとして形成されるようしてもよい。一方のセル5上に形成されるスペーサ100の数は、セル対10の別のセル5の酸素基板15の外面25上に形成されるスペーサ100の数とは異なっていてもよいことを理解するべきである。例えば、一方のセル5の酸素基板15の外面25は、2つのスペーサ100を有して形成されてもよく、別のセル5の酸素基板15の外面25は、1つのスペーサを有して形成されてもよい。同様に、一方のセルの酸素基板15の外面25は、単一のスペーサ100を有して形成されてもよく、また別のセルの酸素基板15の外面25は、スペーサ100を有さず形成されていてもよい。
【0048】
したがって、図4Aおよび図4Bに示されるように、一方のセル5の酸素基板15の外面25が、別のセル5の酸素基板15の外面25にかみ合わされている際に、スペーサ100は、両方の酸素基板15の少なくとも一部を転置して(すなわち曲げて)その間にリザーバ105を形成し、陽極40および陰極70と膜45との表面接触面積を増やす役割を果たす。そのため、リザーバを作り出し、表面の接触を増やすのに必要なスペーサ100の数は、1から3以上に及ぶことがある。各セルの酸素基板15は、酸素基板15を形成する材料を貼り付けるための任意の公知の方法を用いて互いに密封して貼り付けられていてもよいが、尤も、結果として得られる貼り合せが、セル対10外への意図しない漏出を防ぐように水密であるという条件でのことである。スペーサ100が酸素基板15の外面15に一体化して形成されない実施形態では、スペーサ100は、一方のセル5と他方とを密封して貼り付ける前、間、または後に、各セル5のそれぞれの酸素基板15の間に挿入されてもよい。様々な実施形態では、セル対10は、各セル5の水素基板80の外面90の外縁周りにフレーム110をさらに設けて含んでいてもよい。そのように利用される際には、フレーム110は、各酸素基板15に向けて追加の圧縮力を印可して、一方のセル5と他方との水密な貼り合せを確実にもたらすように構成されていることがある。様々な実施形態では、フレーム110は、水素基板80の外面90の外縁周りにそれぞれ設けられた単一のユニットの対として形成されていてもよいし、各フレーム110が、水素基板80の外面90の外縁周りに設けられた(示されるような)複数のユニットから形成されていてもよい。フレームは、各セル5の水素基板80および酸素基板15を通って密封して横断するように構成されている、複数の留め具112をさらに含んでいてもよい。
【0049】
リザーバ105に対応するセル対10が形成されると、各セル5の陽極延長部42が互いに電気的に結合され、それによってセル対10用に単一の陽極/電極12を形成してもよい。例えば、第1のセル5の陽極延長部42は、対のうちの第2のセル5の水素基板80の方向に折り曲げられていることがあるとともに、第2のセル5の陽極延長部42は、第1のセル5の水素基板80に向かって折り曲げられており、両方の陽極延長部42は互いに結合されていてもよい。結果として得られるセル対10の単一の陽極12は、したがって、セル対10の側面18上に位置するものとなる。同様に、各セル5の陰極延長部72は、互いに電気的に結合され、それによってセル対10用に単一の陰極/電極14を形成していてよい。陽極延長部42と同様に、第1のセル5の陰極延長部72は、対のうちの第2のセル5の水素基板80の方向に折り曲げられていることがあるとともに、第2のセル5の陰極延長部72は、第1のセル5の水素基板80に向かって折り曲げられており、両方の陰極延長部72は互いに結合されていてもよい。結果として得られるセル対10の単一の陰極14は、したがって、セル対10の側面24上に位置するものとなる。様々な実施形態では、セル対10の各側面(18および24)は、互いに正反対である。陽極延長部および陰極延長部(42、72)をそれぞれ結合するために、2つの金属材を電気的に結合するための任意の方法が用いられてよい。例えば、それぞれの延長部(42、72)は、溶接、半田付けを用いて、または伝導性接着剤を用いて結合されてよいが、尤も、それぞれの延長部(42、72)の各対の間に電気連通があるという条件でのことである。
【0050】
システム1が動作する間、セル対10の出力ポート95およびリザーバ105からそれぞれ、水素ガスおよび酸素ガスが出てくるにつれて、それらに少量の水7が含まれることがある。分かるように、酸素ガスに含まれる水分は、酸素が雰囲気に出てゆくと、リザーバ105に含まれる残りの水7によって捕捉される。水素ガスに含まれる水に対処するために、システム1はコレクタ120をさらに含むことがあり、コレクタ120は、図2に示されるように、システム1の水素供給パイプ115に流体連通して設けられており、水素ガスがエンジン220の取込みマニホルド230に供給される前に、収集された水素ガスから水を分離するように構成されている。様々な実施形態では、コレクタ120は、水素ガスを運搬器のエンジンに流す前に、その筐体122内に水素ガスを貯えるようにさらに構成されていてもよい。図7に示されるように、コレクタ120は、筐体122、入力ポート130、出力ポート135、および液体ポート145を含む。入力ポート130は、例えば水素供給パイプ115を介して、各セル5の出力ポート95に流体連通して配されている。出力ポート135は、エンジンの取込みマニホルドに流体連通して配されており、乾燥したまたは実質的に乾燥した水素ガスをエンジンの取込みマニホルドに流すように構成されている。液体ポート145は、筐体122内に設けられており、分離した水147をコレクタ120外へ流すように構成されている。様々な実施形態では、液体ポート145は、本システムのリザーバ105に流体連通して配されて、分離された水を本システム内へと再循環させて追加の水素ガスを生成する。コレクタ120は、筐体122内に設けられたブーツ140をさらに含んでいてもよく、ブーツ140は、その入力ポート130および出力ポート135に流体連通して配される。こうして、分離された水147は、重力によってブーツ140の底に流れ、所定量の分離された水147が収集されるまで中に収集される。ブーツ140内に設けられるのは、チャンバ152内に水を流すように構成されたバルブ150であることがあり、チャンバ152は、ブーツとは独立しており、分離された水147を液体ポート145を通して流すように構成されている。バルブ150に固定して取り付けられるのはフロート155であることがあり、フロートは、分離された水147のレベルがブーツ140の底に対して所定の高さに達している際に、バルブを開くように構成されている。バルブ150が開いた際に、分離された水147は液体ポート145を通って流れてもよい。
【0051】
図2に戻ると、システム1は、コレクタ120の液体ポート145に流体連通して配されているフィルタ165をさらに含むことがある。フィルタ165は、システム1内に組み込まれて、システム1のリザーバ105内に再循環させる前に、分離された水147中の任意の不純物を濾別してもよい。そのため、示すように、コレクタ120およびフィルタ165は、運搬器に固定して搭載されたタンク170に配されることがある。タンク170は、入力ポート172と出力ポート180とを有することがあり、その場合、タンク170は、システム1のリザーバ105に供給されるものとなる水を受け取って貯えるように構成されている。そのため、コレクタ120およびフィルタ165がタンク170内に配されている実施形態では、フィルタ165は、コレクタ120から受け取った分離された水を、リザーバ105に配されるものとなる水の供給源に直接的に供給してもよい。本システムはまた、タンク170の出力ポート180とシステム1のリザーバ105との間に設けられたポンプ185を含むことがある。様々な実施形態では、ポンプ185は、配管182を介して、タンク170とリザーバ105との間に流体連通して設けられる。ポンプは、システム1の電源100に電気連通して設けられてもよく、以下の場合に、タンクからリザーバ105に水をポンプ移送するように構成されていてもよい:(i)タンクが所定量の水を受け取る場合;(ii)リザーバの水の量が所定レベルに達している(ならびにそれゆえに、本システムが追加の水を要する)場合;または(iii)運搬器のエンジンによる水素の需要が、本システムの使用の結果としてリザーバ105内の水が間断なく漸減している程度のものである場合。したがって、システム1は、タンクに設けられてポンプに電気連通するセンサ300をさらに含むことがあり、センサ300は、タンク170が所定量の水を受け取っている際に、電力をポンプ185に供給するように構成されている。同様に、システム1は、リザーバ105に設けられてポンプ185に電気連通するセンサ310をさらに含むことがあり、センサ310は、リザーバ105の水が所定レベルに達している際に、電源をポンプ185に供給するように構成されている。理解されるように、システム1は、1つまたは複数の上記のセンサを含むことがあり、それらは、相前後してまたは独立して電力をポンプ185に供給するように構成されていてもよい。
【0052】
図8に示されるように、システム1は、運搬器200のエンジン220に近接近して固定されて搭載されてもよい。システム1は、ラックまたはブラケット205を含むことがあり、ラックまたはブラケット205は、エンジン220または運搬器200の一部を動かすことによる損傷の可能性を避けながら、本システムを所定位置に確実に保持するように構成されている。そのため、システム1のセル対10は、システム1の様々な部品を修理し易くするように搭載されることがある。例えば、セル対10のリザーバ105にアクセスし易くして、独立したタンク170を利用しない構成で水の追加を容易にするように、セル対10を搭載することができる。様々な実施形態では、本システムは、運搬器200内に組み込まれるかまたは設けられるコントローラ210をさらに含むことがあり、その場合、コントローラ210は、電源100に電気連通する。コントローラ210をシステム1内に組み込む際に、ポンプ185(利用する場合)および全てのセンサ(300、310、真空スイッチ215、および/または他のエンジンセンサ)は全てコントローラ210に電気連通するものとなり、それゆえにコントローラ210は、1つまたは複数のセンサから受信したシグナルに応答して、システム1の陽極12および陰極14ならびに/またはポンプ185に電力を供給するように構成されている。
【0053】
エンジン220への給電が所定レベルを超えず、システム1により産生されエンジン220に供給される水素の量が設定範囲にある際に、携帯型水素供給システム1は、ガソリンまたはディーゼル動力エンジンにおいて最適に動作する。動作では、エンジンの動作の特徴に応じて、エンジン220への給電が増加するにつれて、水素の需要は増加または減少のどちらかにすることができる。電力がその後システム1に供給されて、各セル5の電解槽3内に電界を産生し、それによって、供給された水から水素ガスおよび酸素ガスを産生する。上記のように、産生された水素ガスはエンジン220の取込みマニホルド230に方向付けられ、一方で、産生された酸素は雰囲気に排出される。
【0054】
本発明が上記の開示を参照して記載されてきたとはいえ、改変および変形は本発明の趣旨と範囲内に包含されることが理解されよう。したがって、本発明は下記の特許請求の範囲にのみによって制限されない。

図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8