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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240722BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/11
A61K8/25
A61K8/46
A61K8/85
A61Q1/02
A61Q1/04
A61Q1/08
A61Q1/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021535333
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028735
(87)【国際公開番号】W WO2021020352
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019138908
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】櫛間 桃子
(72)【発明者】
【氏名】西川 未佳子
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079804(JP,A)
【文献】特開2003-268267(JP,A)
【文献】特表2013-517270(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062803(WO,A1)
【文献】国際公開第1991/006277(WO,A1)
【文献】特表2009-539825(JP,A)
【文献】特表2009-519335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
A61K 8/11
A61K 8/25
A61K 8/46
A61K 8/85
A61Q 1/02
A61Q 1/04
A61Q 1/08
A61Q 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料を内包する多層型カプセル粒子であって、顔料の外観色の一部又は全部がマスキングされた粒子、
(b)化粧料全量に対して~15質量%の非水溶性粉末成分(下記(c)成分を除く)、および、
(c)化粧料全量に対して10質量%以下の色材
を含有し、
前記(a)成分の配合量が化粧料全量に対して0.1~10質量%であり、粒子径が300μm未満であり、
前記(b)成分の平均粒子径が1~50μmであり、(b)成分が雲母、合成金雲母、多孔質シリカ粉末、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、ナイロン粉末およびポリメタクリル酸メチル粉末から選択される1種以上である、固形化粧料。
【請求項2】
硬度が12~55gfである、請求項1に記載の固形化粧料。
【請求項3】
油性化粧料である、請求項1または2に記載の固形化粧料。
【請求項4】
(a)顔料を内包する多層型カプセル粒子であって、顔料の外観色の一部又は全部をマスキングした粒子と、(b)化粧料全量に対して~15質量%の非水溶性粉末成分(下記(c)成分を除く)と、(c)化粧料全量に対して10質量%以下の色材とを含む固形化粧料を皮膚に塗布する工程、および、
化粧料を塗布するときに生じる摩擦力よりも大きい摩擦力を塗布膜に与える工程
を含み、
前記(a)成分の配合量が化粧料全量に対して0.1~10質量%であり、粒子径が300μm未満であり、
前記(b)成分の平均粒子径が1~50μmであり、(b)成分が雲母、合成金雲母、多孔質シリカ粉末、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、ナイロン粉末およびポリメタクリル酸メチル粉末から選択される1種以上である、化粧料塗布膜の色調を変化させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料を皮膚上に塗布した後に塗布膜に摩擦力を加えることによって色調を変化させることができる、固形化粧料およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料、特にメーキャップ化粧料においては、肌に塗布したときの塗膜の発色の良さのみならず、化粧料自体の外観色の目新しさや使用の特殊性も商品価値の重要な要素となっている。
【0003】
化粧料の外観色とは異なる色調を皮膚上で実現させる技術の一つとして、顔料を含む多層カプセル型ないしは凝集型の粒子が用いられている。
例えば、特許文献1では、紫外線散乱剤を多く配合する日焼け止め化粧料において、顔料を内包するカプセル粒子を配合することによって、塗布前には顔料色がマスキングされた鮮やかな外観色を有しながら、塗布時に顔料が放出され、紫外線散乱剤に起因する白浮きが抑制される化粧料が提案されている。
また、特許文献2では、顔料と特定の水溶性高分子とを混合して形成させた軟凝集粒子を内相に含む油中水型乳化化粧料として調製することによって、肌上で塗擦することによりなめらかに崩れて化粧料の外観色とは異なる色調の化粧膜を付与することができる化粧料が提案されている。
【0004】
上記の化粧料は、化粧料自体の外観色と塗布面の色調とが異なるという目新しさはあるものの、その発色は塗布直後であり、発色のタイミングや発色の程度を使用者の好みに応じて調節することができるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-515864号公報
【文献】特開2011-225563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧料を塗布した塗布面に摩擦力を加える(こする)ことによって化粧料の発色を調節することが可能であり、なおかつ、なめらかな使用感触を有する固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、顔料を含む粒子を配合した化粧料において、特定の粉末成分を配合した固形化粧料とすることによって、塗布後に塗膜の色調を変化させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(a)顔料を含む粒子であって、顔料の外観色の一部又は全部がマスキングされた粒子、
(b)化粧料全量に対して2~15質量%の非水溶性粉末成分(色材を除く)、および、
(c)化粧料全量に対して10質量%以下の色材
を含有する、固形化粧料を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、
顔料を含み、顔料の外観色の一部又は全部をマスキングした粒子と、化粧料全量に対して2~15質量%の非水溶性粉末成分(色材を除く)と、化粧料全量に対して10質量%以下の色材とを含む固形化粧料を皮膚に塗布する工程、および、
化粧料を塗布するときに生じる摩擦力よりも大きい摩擦力を塗布膜に与える工程
を含む、化粧料塗布膜の色調を変化させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成とすることにより、化粧料を皮膚上に塗布する際には顔料を含む粒子が粉砕されずに塗布膜に保持される。また、塗布膜に摩擦力を加えることによって、顔料を含む粒子が粉砕され、顔料が放出されるため、使用者の所望の時期および所望の程度に塗布膜の色調を調節することができる。本発明の化粧料は、使用者自らが塗布後に化粧料塗膜の色調を調節することが可能である点で新規である。本発明によれば、塗布後一定時間経過後に再度発色させることが可能であるので、化粧もちに優れる化粧料を得ることができる。また、粉末成分を多く配合しているにもかかわらず、なめらかな使用感を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧料は、(a)顔料を含む粒子、(b)非水溶性粉末成分(色材を除く)、および、(c)色材を含むことを特徴とする。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
<(a)顔料を含む粒子>
本発明に係る化粧料に配合される(a)顔料を含む粒子(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)としては、化粧料に一般的に用いられる顔料の外観色の一部又は全部がマスキングされた粒子であればいずれの形態のものであってもよい。例として、顔料を内包する多層型カプセル粒子、顔料を他の成分と一体化させた凝集粒子等が挙げられる。なかでも、粒子からの顔料放出の調節し易さの観点から、顔料を内包する多層型カプセル粒子が好ましく用いられる。
【0013】
顔料を内包する多層型カプセル粒子は、内部層と1又は複数の外部層を具備する構造を有する。内部層には、赤色無機顔料、黄色無機顔料等の色調顔料が必須成分として内包され、ポリマーを母材とした外部層が内部層を被覆する。ポリマーを母材とした外部層はさらに機能性顔料を含む層によって被覆されてもよい。ポリマーを母材とした外部層と機能性顔料(無機粉末)を含む層はいずれの順で被覆していてもよく、それぞれが単層であっても複層であってもよい。内部層および外部層には任意で無機粉末が含まれうる。
【0014】
母材となるポリマーとしては、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、セルロース等の有機系ポリマーが挙げられる。
本発明における「色調顔料」は、化粧料の色調を変化させる機能を持つものであれば特に限定するものではない。一般に「着色顔料」と呼ばれる顔料、例えば、赤色酸化鉄、酸化鉄/酸化チタン焼結物、カドミウムレッド、モリブデンレッド等の赤色無機顔料や、黄色酸化鉄、酸化セリウム、ビスマスバナジウムイエロー、黄鉛、カドミウムイエロー等の黄色無機顔料等が挙げられる。
本発明における「機能性顔料」は、一般に機能性顔料と呼ばれている窒化ホウ素等のみならず、前記「着色顔料」以外の顔料、例えば、酸化チタン及び酸化亜鉛等の白色顔料、タルク、マイカ及びシリカ等の体質顔料等を包含する。
【0015】
市販製品としては、Magicolor(登録商標)(バイオジェニック社製)、Sugarcapsule Magic SP Series(大東化成工業社製)、TagraCap(商標)(タグラ バイオテクノロジー社製)、およびMicroBeads(商標)(サルボナ テクノロジーズ社製)が挙げられる。
顔料を内包する多層型カプセル粒子は、例えば、米国公開特許第2011/0165208号A1公報(対応する日本特許出願公表2011-529104号公報)に記載されているように、色調顔料、可塑剤およびポリマーを第1の溶媒に均質に混合して第1の混合溶液を調製すること、調製した溶液を噴霧乾燥して、色調顔料がポリマーによって被覆されるコア粒子を形成させること、形成したコア粒子および機能性顔料を第2の溶媒に均質に混合して第2の混合溶液を調製すること、第2の混合溶液を噴霧乾燥して、コア粒子の外部に機能性顔料のコーティング層が形成された多層型カプセル粒子を生成させることによって製造することができる。
【0016】
多層型カプセル粒子において多層とは2層ないしは3層、又は3層以上であることをいい、好ましくは、顔料を内包する内部層とポリマーを母材とした外部層からなる2層構造、又は、顔料を内包する内部層とポリマーを母材とした外部層がさらに機能性顔料を含む層によって被覆された3層構造である。
多層型カプセル粒子の形状は、球形状、角形状、楕円形状などのほか、不定形状であってもよく、形状は問わない。
【0017】
本発明の(a)成分は、そのままの状態で用いることができるが、さらにその表面に、通常用いられている疎水化処理剤で疎水化処理を施して用いることもできる。疎水化表面処理としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理)、脂肪酸処理(パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸石鹸処理(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等による処理)、脂肪酸エステル処理(デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等による処理)等が挙げられる。これらの疎水化処理は、常法に従って行うことができる。
【0018】
本発明の(a)成分の粒子径は、300μm未満、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、最も好ましくは60μm以下である。ここで、粒子径は数平均径を指す。粒子径が300μm以上である場合には、化粧料の使用感触が劣る傾向がある。
【0019】
本発明に係る化粧料における(a)成分の配合量は、塗布面での望ましい視覚効果を達成するために有効な量である限り特に限定されない。例えば、化粧料全量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.5~9.0質量%、さらに好ましくは1.0~8.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると色調の変化が得られにくく、10質量%を超えると使用性が悪くなる傾向がある。
【0020】
<(b)非水溶性粉末成分>
本発明に係る化粧料に配合される(b)非水溶性粉末成分(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)としては、通常化粧料に配合可能な非水溶性の粉末であれば特に限定されず、無機粉末および有機粉末から選択できる。ただし、後述する(c)色材、製品の成形時に配合される粉末の充填剤や分散剤は(b)成分に含まない。(b)非水溶性粉末成分としては、球状、板状、塊状など種種の形状のものを用いることができる。本発明においては、平均粒子径が1~50μmであるものを用いるのが好ましい。また、本発明の化粧料をスティック状に調製する場合には、平均粒子径が2~30μmであるものを用いるのが好ましい。
【0021】
無機粉末には、天然、合成のいずれのものも任意に用いることができ、限定するものではないが、タルク、カオリン、雲母(マイカ)、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、合成金雲母、合成金雲母鉄、紅雲母、黒雲母、焼成タルク、焼成セリサイト、焼成白雲母、焼成金雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、真球状シリカ、多孔質シリカ粒子、ホウケイ酸(Ca/Al)、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化鉄、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、フォトクロミック性酸化チタン(酸化鉄を焼結した二酸化チタン)、還元亜鉛華等が挙げられる。
【0022】
有機粉末には、限定するものではないが、シリコーンエラストマー粉末(例として、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー[商品名:KSP-100(信越化学工業社製)])、シリコーン粉末(例として、ポリメチルシルセスキオキサン[商品名:トスパール2000B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)])、シリコーンレジン被覆シリコーンエラストマー粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)(例として、ナイロン-12[商品名:SP-500(東レ社製)])、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末(例として、メタクリル酸メチルクロスポリマー[商品名:マイクロスフェアM-306、M-330(松本油脂製薬社製)])、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、架橋されたポリウレタン共重合体樹脂粉末(例として、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー[商品名:プラスティックパウダーD(トシキ社製)])、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末(例として、セルロース[商品名:セルフローC-25(チッソ社製)])、コーンスターチ等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる粉末成分は、疎水化表面処理が施されていてもよい。疎水化表面処理としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理)、脂肪酸処理(パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸石鹸処理(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等による処理)、脂肪酸エステル処理(デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等による処理)等が挙げられる。これらの疎水化処理は、常法に従って行うことができる。
【0024】
本発明の(b)成分としては、上記粉末成分を1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。本発明の(b)成分としては、雲母、合成金雲母、多孔質シリカ粉末、シリコーンエラストマー粉末、シリコーン粉末、ナイロン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末から選択される1種以上を用いることが好ましく、合成金雲母、シリカ、ナイロン、メタクリル酸メチルクロスポリマーから選択される1種以上を用いるのがさらに好ましい。
【0025】
本発明に係る化粧料における(b)成分の配合量は、化粧料全量に対して、2~15質量%であり、好ましくは3~10質量%である。配合量が2質量%未満であると色調の変化が得られにくく、15質量%を超えるとなめらかな使用感が得られにくい。
【0026】
本発明は、上記構成とすることにより、化粧料を皮膚上に塗布する際には顔料を含む粒子が粉砕されずに塗布面に保持される。また、塗布面の皮膚同士をこすり合わせる、あるいは、指で塗布面をこするなどして、化粧料を皮膚に塗布するときに生じる摩擦力よりも大きい摩擦力を加える(塗布膜をなじませる)ことによって、顔料を含む粒子が粉砕され、顔料が放出されて塗布膜の色調に変化が生じる。本発明によれば、使用者の所望の時期および所望の程度に塗布膜の色調を調節することができる。
【0027】
<(c)色材>
本発明に係る化粧料に配合される(c)色材(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)としては、通常化粧料に配合可能な色材であれば特に限定されない。例として、有機合成色素(タール色素、染料、レーキ、有機顔料を含む)、天然色素、および無機顔料から選択できる。
【0028】
有機合成色素としては、法定色素別表1~3に記載された色素、具体的には、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、黄色4号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、黄色201号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色205号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、褐色201号、紫色201号、紫色401号、黄色403号、赤色401号、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色226号、赤色228号等が挙げられる。
【0029】
天然色素としては、β-カロチン等のカロチノイド系、フラボノイド系、フラビン系、キノン系、ポルフィリン系、ジケトン系、ベタシアニジン系の色素が挙げられる。
【0030】
無機顔料としては、赤色酸化鉄(ベンガラ)、酸化鉄/酸化チタン焼結物、カドミウムレッド、モリブデンレッド、黄色酸化鉄、酸化セリウム、ビスマスバナジウムイエロー、黄鉛、カドミウムイエロー、酸化鉄、酸化クロム、群青、紺青、カーボンブラック等の着色顔料;酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料;雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等の真珠光沢顔料等が挙げられる。
【0031】
本発明に係る化粧料における(c)成分の配合量は、化粧料の外観および塗布時の皮膚上での発色について望ましい視覚効果を達成するために有効な量である限り特に限定されない。本発明においては、化粧料全量に対して15質量%未満、好ましくは10質量%以下であり、例えば、0~10質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%とすることによって、塗布膜での色調変化の効果が得られ易くなる。
【0032】
本発明の化粧料の硬度は、5~1200gf(グラム重)である。本発明の化粧料をスティック状に調製する場合の硬度は12~55gfであり、さらに15~55gfとするのが好ましい。ここで「硬度」は、スティック状にした試料に、硬度計(FUDO社製)を用いて荷重(20mm/s押した後、50gf開放)をかけ、試料が折れるまでの荷重回数を測定し、脆性を評価した場合の値をいう。
化粧料の硬度が5gf未満であると、基剤が柔らかすぎて、顔料を含む粒子が粉砕されず、十分な発色が得られない。また、化粧料の硬度が1200gfを超えると、基剤が固すぎて使用性が悪くなる。
【0033】
本発明において、固形とは、一定の形状を保つことができる程度に固体化している状態を言う。この場合、形状はスティック状に限らず、広口容器に充填されているバーム状(軟膏状)や一定の形状を保つことができるクリーム状のものも包含される。
【0034】
本発明の化粧料においては、化粧料を皮膚に塗布する際に生じる摩擦力に比して大きい摩擦力が塗布後に加わると、(a)成分が粉砕され、顔料が放出される。ここで、塗布後に加える摩擦力としては、具体的には0.01N~2N程度であり、1~20秒程度こすると(a)成分が粉砕され、色変化が生じる。
【0035】
本発明の化粧料においては、色調を変化させるために、化粧料を皮膚に塗布する際に生じる摩擦力よりも大きな摩擦力を加える必要がある。本発明の化粧料をスティック状に調製した場合には、塗布する際に生じる摩擦力を小さく抑えることができる。よって、スティック状化粧料は、化粧料塗布膜中に(a)成分が十分に保持されることに寄与する。
【0036】
その他の任意成分
<油分>
本発明に係る化粧料に配合される油分としては、化粧料に一般的に用いられる油分であって、常温(25℃)で固体または半固体の固形油分および常温(25℃)で液体の液状油分から選択される。
【0037】
固形油分としては、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、バリコワックス、ポリエチレンワックス、シリコンワックス、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、バチルアルコール、カルナウバロウ、ミツロウ(ビースワックス)、キャンデリラロウ、ホホバロウ、ラノリン、セラックロウ、鯨ロウ、モクロウ、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、ポリエチレン末、ワセリン、各種の水添加動植物油脂、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等が挙げられる。
【0038】
液状油分としては、例えば、オリーブ油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、小麦胚芽油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、タートル油、ミンク油、パーシック油、サザンカ油、アマニ油、エノ油、カヤ油、日本キリ油、メドゥフォーム油、スクワレン、スクワラン、植物性スクワラン、ホホバアルコール、流動パラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、オクタン酸セチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2-ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2-オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリグリセリン、オレイン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ポリシロキサン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸へキシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、フッ素変性油、トリオクタノイン、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等が挙げられる。
【0039】
本発明の化粧料においては、皮膚に塗布した際の伸び広がりや肌とのなじみをよくする観点から、固形油分と液状油分を組み合わせて用いることが好ましい。
【0040】
本発明の化粧料には、上記の配合成分に加えて、必要に応じて、油溶性皮膜剤、界面活性剤、低級アルコール(エタノール等)、保湿剤、紫外線吸収剤、増粘剤、分散剤、安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、ビタミン類、血行促進剤、美白剤、皮膚賦活剤、薬効成分、動植物からの抽出物、香料等の、化粧料に一般的に用いられる成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものではない。
【0041】
本発明の化粧料は固形であり、油性型、油中水型あるいは水中油型の乳化型等に調製することが可能であり、クリーム状、バーム状、スティック状の剤形とすることができる。また、粉末を多量に配合した粉末固形化粧料に調製してもよい。
【0042】
また、本発明の化粧料は、種種の化粧料に調製することができるが、メーキャップ化粧料、特に口唇、目元、頬用のカラーメーキャップ化粧料に調製することにより本発明の効果が好適に発揮される。
【0043】
本発明に係る固形化粧料は、従来から用いられている方法に従って製造することができる。例えば、油分および粉末成分を別途混合し、油分に粉末成分を加えて撹拌し、充填し、必要に応じてプレスを行うことなどにより製造することができる。あるいは、本発明の化粧料を乳化型化粧料として調製する場合には、油性成分と水性成分とを別々に必要に応じて加熱しながら混合し、油相中に水相を乳化し、次いで得られた乳化物を容器に充填して徐冷することにより製造できる。
【0044】
本発明の化粧料は、化粧料を皮膚に塗布した後に、使用者自らが化粧料塗膜の色調を調節することが可能である点で新規である。
したがって、本発明は、(A)本発明の固形化粧料を皮膚に塗布する工程、および、(B)化粧料を皮膚に塗布するときに生じる摩擦力よりも大きい摩擦力を塗布膜に与える工程を含む、化粧料塗布膜の色調を変化させる方法を提供する。化粧料を皮膚に塗布するときに生じる摩擦力よりも大きい摩擦力とは、0.01~2N程度の力であることが好ましい。
【実施例
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0046】
実施例に先立ち、本発明で用いた評価法を説明する。
(1)硬度
スティック状に調製した試料に、硬度計(FUDO社製)を用いて荷重(20mm/s押した後、50gf開放)をかけ、試料が折れるまでの荷重回数を測定し、脆性を評価した。
【0047】
(2)色調変化
触覚フォースプレート上の人工皮膚に試料を塗布し、摩擦力と摩擦時間が一定になるように摩擦したときに生じる塗布面の色調変化を視覚的に観察した。
A++:非常に明確な色調変化が観察できた。
A+:明確な色調変化が観察できた。
A:色調変化が観察できた。
B:わずかに色調変化が観察された。
C:色調変化が観察できなかった。
【0048】
(3)使用感
10名の専門パネルによる実使用試験によって評価した。具体的には、専門パネルの顔面に調製した試料を指で塗布し、塗り広げる際の使用感触について官能評価を行った。ここで、試験例1をコントロールとし、コントロールと比較したときの評価をスコア化し、各パネルによる点数の総和をパネル人数で割った平均値を算出し、下記評価基準に従い、評価結果とした。
(スコア化基準)
+2:試料1に比べて、非常になめらかに塗り広がる
+1:試料1に比べて、なめらかに塗り広がる
0:同程度に塗り広がる
-1:試料1に比べて、やや塗り広げ難い
-2:試料1に比べて、ボソボソとして塗り広げ難い
(評価基準)
A++:パネル10名の平均値が、+2.0点以上
A+:パネル10名の平均値が、+1.0以上+2.0点未満
A:パネル10名の平均値が、0以上+1.0点未満
B:パネル10名の平均値が、-0.5以上0点未満
C:パネル10名の平均値が、-0.5未満
【0049】
(試験例1~19)
下記表1および表2に示す試験例1~19を調製した。具体的には、ホモミキサーを用いて混合した油性成分に粉末を分散させた後、よく混合した水性成分を添加して組成物を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1の試験例1~14は、粉末成分の配合量が異なる。粉末成分の配合量が1質量%以下の場合には、色調の変化が観察できなかった。
一方、粉末成分の配合量が20質量%以上になると、塗布時の使用感が悪くなった。
【0052】
【表2】
【0053】
上記表2の試験例15~19は、色材の配合量が異なる。いずれの試験例も使用感が優れていたが、色材を15質量%以上配合した試験例では、色調変化の効果が得られにくかった。
【0054】
(試験例20~28)
次に、下記表3に示す試験例20~28を調製した。試験例20~28は用いた粉末成分が異なる。
【0055】
【表3】
【0056】
粉末成分の種類に限らず、上記組成物は塗膜に摩擦力を加えることにより十分な色調変化が観察できた。また、いずれの組成物も使用感触に優れていた。