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特許7524210CD28 T細胞培養物、組成、およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】CD28 T細胞培養物、組成、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240722BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240722BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240722BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240722BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/76
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021556499
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020023585
(87)【国際公開番号】W WO2020191172
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】102019108125.4
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】62/820,442
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520184664
【氏名又は名称】イマティクス ユーエス,アイエヌシー.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】アルパート,アミール
(72)【発明者】
【氏名】カルラ,マムタ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514517(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099712(WO,A1)
【文献】特表平08-511166(JP,A)
【文献】特表2018-531581(JP,A)
【文献】特表2017-513891(JP,A)
【文献】米国特許第06905680(US,B1)
【文献】Neurol. Med. Chir.,1992年,Vol.32,pp.255-261
【文献】Weng NP. et al.,CD28(-) T cells: their role in the age-associated decline of immune function,Trends immunol.,2009年,Vol.30, No.7 ,pp.306-312,Author Manuscript: avalable in PMC 2010.01.05
【文献】Kasakovski D. et al.,T cell senescence and CAR-T cell exhaustion in hematological malignancies,Journal of hematology & oncology,2018年,Vol.11, No.1, Article No.91,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/00- 5/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者またはドナーから得られた開始末梢血単核細胞(PBMC)中のCD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、および
前記判定された開始PBMCが、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、前記判定された開始PBMCを抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化するステップ、または
前記判定された開始PBMCが、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、前記判定された開始PBMCを抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステッ
含んでなる、養子免疫療法のための有効性が改善されたT細胞を作製する方法。
【請求項2】
前記判定された開始PBMCが、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、前記判定された開始PBMCが、抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記判定された開始PBMCが、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、前記判定された開始PBMCが、抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化開始PBMCからのT細胞をウイルスベクターで形質導入するステップと、前記形質導入T細胞を増殖させるステップとをさらに含んでなる、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記形質導入するステップおよび前記増殖させるステップが、少なくとも1つのサイトカインの存在下で実行される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのサイトカインが、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、およびIL-21から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサイトカインが、IL-7およびIL-15を含んでなる、請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
前記IL-7の濃度が、約1ng/ml~90ng/ml、約1ng/ml~80ng/ml、約1ng/ml~70ng/ml、約1ng/ml~60ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約1ng/ml~40ng/ml、約1ng/ml~30ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約2ng/ml~10ng/ml、約4ng/ml~10ng/ml、約6ng/ml~10ng/ml、または約5ng/ml~10ng/mlである、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
前記IL-15の濃度が、約5ng/ml~500ng/ml、約5ng/ml~400ng/ml、約5ng/ml~300ng/ml、約5ng/ml~200ng/ml、約5ng/ml~150ng/ml、約5ng/ml~100ng/ml、約10ng/ml~100ng/ml、約20ng/ml~100ng/ml、約30ng/ml~100ng/ml、約40ng/ml~100ng/ml、約50ng/ml~100ng/ml、約60ng/ml~100ng/ml、約70ng/ml~100ng/ml、約80ng/ml~100ng/ml、約90ng/ml~100ng/ml、約10ng/ml~50ng/ml、約20ng/ml~50ng/ml、約30ng/ml~50ng/ml、または約40ng/ml~50ng/mlである、請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記形質導入が、約1時間~120時間、約1時間~108時間、約1時間~96時間、約1時間~72時間、約1時間~48時間、約1時間~36時間、約1時間~24時間、約2時間~24時間、約4時間~24時間、約6時間~24時間、約8時間~24時間、約10時間~24時間、約12時間~24時間、約14時間~24時間、約16時間~24時間、約18時間~24時間、約20時間~24時間、または約22時間~24時間の期間内に実行される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスベクターが、T細胞受容体(TCR)を発現するレトロウイルスベクターである、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスベクターが、TCRを発現するレンチウイルスベクターである、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記増殖するステップが、約1日~約30日、約1日~約25日、約1日~約20日、約1日~約15日、約1日~約10日、約2日~約10日、約3日~約10日、約4日~約10日、約5日~約10日、約6日~約10日、約7日~約10日、約8日~約10日、または約9日~約10日の期間内に実行される、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化するステップが、固相支持体上に前記抗CD3抗体および/または前記抗CD28抗体で前記T細胞を固定化するステップを含んでなる、請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗CD3抗体および前記抗CD28抗体がそれぞれ、約0.1μg/ml~約10.0μg/ml、約0.1μg/ml~約8.0μg/ml、約0.1μg/ml~約6.0μg/ml、約0.1μg/ml~約4.0μg/ml、約0.1μg/ml~約2.0μg/ml、約0.1μg/ml~約1.0μg/ml、約0.1μg/ml~約0.8μg/ml、約0.1μg/ml~約0.6μg/ml、約0.1μg/ml~約0.5μg/ml、約0.1μg/ml~約0.25μg/ml、約0.2μg/ml~約0.5μg/ml、約0.2μg/ml~約0.3μg/ml、約0.3μg/ml~約0.5μg/ml、約0.3μg/ml~約0.4μg/ml、または約0.4μg/ml~約0.5μg/mlの濃度を有する、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化するステップが、約1時間~約120時間、約1時間~約108時間、約1時間~約96時間、約1時間~約84時間、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約2時間~約24時間、約4時間~約24時間、約6時間~約24時間、約8時間~約24時間、約10時間~約24時間、約12時間~約24時間、約12時間~約72時間、約24時間~約72時間、約6時間~約48時間、約24時間~約48時間、約6時間~約72時間、または約1時間~約12時間の期間内に実行される、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.分野
本開示は、T細胞の有効性を改善する方法を提供する。一態様では、本開示は、最終倍数増殖、CD8:CD4 T細胞比、相対的最終テロメア長、およびT細胞製品のクローン濃度を強化および予測する方法をさらに提供する。本開示は、それを必要とする対象においてがんを治療する方法、ならびに本明細書に記載される方法によって生産されるT細胞集団もまた提供する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
免疫療法は、がんを治療するための非常に有望なアプローチとしてとして現れた。免疫療法は、細胞療法と低分子/抗体療法とに細分化され得る。細胞療法の分野では、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法が液体腫瘍において強力な臨床的有効性を示しており、T細胞受容体T(TCR-T)細胞ベースの治療法は、様々な固形腫瘍の適応症において有望な初期結果を示している。臨床製品の有効性は、それらの生体内特性によって駆動されてもよく、これは生体外製造プロセス中に大きく刷り込まれてもよい。
【0003】
米国特許第8,383,099号明細書は、例えば、自己由来T細胞を培養することによって;OKT3抗体、IL-2、およびフィーダーリンパ球を使用して培養T細胞を増殖させることによって、対象におけるがんの退行を促進する方法を記載する。
【0004】
米国特許第9,074,185号明細書は、自己由来T細胞を培養するステップと、培養T細胞をCD8+T細胞について濃縮するステップと、OKT3抗体、IL-2、フィーダーリンパ球を用いて培養T細胞数の増殖を提供するステップとを含む、対象におけるがんの退行を促進するためのT細胞注入製品を生成する方法を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
がん患者におけるT細胞の有効性およびACTの予後を改善する必要性がなおもある。この技術的問題の解決策は、特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば、以下を含む、改善された効力を有するT細胞を産生するための方法を提供する:
●患者またはドナーからT細胞の集団を得るステップ、
●得られたT細胞集団におけるCD28+CD8+T細胞の百分率をは判定するステップ、
●判定されたT細胞集団を抗CD3抗体および/または抗CD28抗体で活性化するステップ、
●ここで判定された集団は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD28+CD8+T細胞を含んでなる。
【0007】
本開示は、例えば、以下を含む、改善された効力を有するT細胞を産生するための方法をさらに提供する:
●患者またはドナーからT細胞の集団を得るステップ、
●得られたT細胞集団におけるCD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定されたT細胞集団を抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステップ、
●ここで判定された集団は、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなる。
【0008】
本開示は、例えば、以下を含む、改善された効力を有するT細胞を産生するための生体外方法をさらに提供する:
●単離T細胞集団中で、CD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定されたT細胞集団を抗CD3抗体および/または抗CD28抗体で活性化するステップ、
●ただし判定された集団は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のCD28+CD8+T細胞を含んでなる。
【0009】
本開示は、例えば、以下を含む、改善された効力を有するT細胞を産生するための生体外方法をさらに提供する:
●単離T細胞集団中で、CD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定されたT細胞集団を抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステップ、
●ただし判定された集団は、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなる。
【0010】
一態様では、活性化T細胞集団はウイルスベクターで形質導入され、形質導入T細胞集団は増殖される。さらなる態様では、形質導入および増殖は、少なくとも1つのサイトカインの存在下で実行されてもよい。
【0011】
別の態様では、本開示は、以下を含む免疫療法の有効性が改善されたT細胞を産生するための方法に関する:
●患者またはドナーからCD8+T細胞の集団を得るステップ、
●得られた集団中のCD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定された集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化するステップ、
●ここで判定された集団は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD28+CD8+T細胞を含んでなり、
●活性化T細胞集団をウイルスベクターで形質導入するステップ、
●形質導入T細胞集団を増殖させるステップ。
【0012】
別の態様では、本開示は、以下を含む免疫療法の有効性が改善されたT細胞を産生するための生体外方法に関する:
●単離CD8+T細胞集団中で、CD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定された集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化するステップ、
●ただし判定された集団は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のCD28+CD8+T細胞を含んでなり、
●活性化T細胞集団をウイルスベクターで形質導入するステップ、
●形質導入T細胞集団を増殖させるステップ。
【0013】
別の態様では、本開示は、以下を含む免疫療法の有効性が改善されたT細胞を産生するための方法に関する:
●患者またはドナーからCD8+T細胞の集団を得るステップ、
●得られた集団中のCD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定された集団が、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、判定された集団を抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステップ、
●活性化T細胞集団をウイルスベクターで形質導入するステップ、
●形質導入T細胞集団を増殖させるステップ。
【0014】
別の態様では、本開示は、以下を含む免疫療法の有効性が改善されたT細胞を産生するための生体外方法に関する:
●単離CD8+T細胞集団中で、CD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップ、
●判定された集団が、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、判定された集団を抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステップ、
●活性化T細胞集団をウイルスベクターで形質導入するステップ、
●形質導入T細胞集団を増殖させるステップ。
【0015】
別の態様では、形質導入および増殖は、少なくとも1つのサイトカインの存在下で実行されてもよい。
【0016】
別の態様では、活性化は、T細胞を抗CD3抗体および抗CD28抗体で固相支持体上に固定化することを含んでもよい。
【0017】
別の態様では、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体は、それぞれ約0.1μg/ml~約10.0μg/ml、約0.1μg/ml~約8.0μg/ml、約0.1μg/ml~約6.0μg/ml、約0.1μg/ml~約4.0μg/ml、約0.1μg/ml~約2.0μg/ml、約0.1μg/ml~約1.0μg/ml、約0.1μg/ml~約0.5μg/ml、約0.5μg/ml~約10.0μg/ml、約2μg/ml~約8μg/ml、約3μg/ml~約7μg/ml、約2μg/ml~約5μg/ml、約0.5μg/ml~約2.0μg/ml、または約0.5μg/ml~約2.5μg/mlの濃度を有する。
【0018】
別の態様では、活性化は、約1時間~約120時間、約1時間~約108時間、約1時間~約96時間、約1時間~約84時間、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約2時間~約24時間、約4時間~約24時間、約6時間~約24時間、約8時間~約24時間、約10時間~約24時間、約12時間~約24時間、約12時間~約72時間、約24時間~約72時間、約6時間~約48時間、約24時間~約48時間、約6時間~約72時間、または約1時間~約12時間の期間内に実行されてもよい。
【0019】
別の態様では、少なくとも1つのサイトカインは、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0020】
別の態様では、少なくとも1つのサイトカインは、IL-7、IL-15、またはIL-7とIL-15との組み合わせを含む。
【0021】
別の態様では、IL-7の濃度は、約1ng/ml~90ng/ml、約1ng/ml~80ng/ml、約1ng/ml~70ng/ml、約1ng/ml~60ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約1ng/ml~40ng/ml、約1ng/ml~30ng/ml、約1ng/ml~20ng/ml、約1ng/ml~15ng/ml、約1ng/ml~10ng/ml、約2ng/ml~10ng/ml、約4ng/ml~10ng/ml、約6ng/ml~10ng/ml、または約5ng/ml~10ng/mlである。
【0022】
別の態様では、IL-15の濃度は、約5ng/ml~500ng/ml、約10ng/ml~400ng/ml、約15ng/ml~300ng/ml、約5ng/ml~200ng/ml、約5ng/ml~150ng/ml、約5ng/ml~100ng/ml、約10ng/ml~100ng/ml、約20ng/ml~100ng/ml、約30ng/ml~100ng/ml、約40ng/ml~100ng/ml、約50ng/ml~100ng/ml、約60ng/ml~100ng/ml、約70ng/ml~100ng/ml、約80ng/ml~100ng/ml、約90ng/ml~100ng/ml、約10ng/ml~50ng/ml、約1ng/ml~50ng/ml、約5ng/ml~50ng/ml、または約20ng/ml~50ng/mlであってもよい。
【0023】
別の態様では、形質導入は、約1時間~120時間、約12時間~96時間、約24時間~96時間、約24時間~72時間、約10時間~48時間、約1時間~36時間、約1時間~24時間、約2時間~24時間、約4時間~24時間、約6時間~24時間、約8時間~24時間、約10時間~24時間、約1時間~12時間、約14時間~24時間、約1時間~12時間、約6~約18時間の期間内に実行されてもよい。
【0024】
別の態様では、ウイルスベクターは、T細胞受容体(TCR)を発現するレトロウイルスベクターであってもよい。
【0025】
別の態様では、ウイルスベクターは、TCRを発現するレンチウイルスベクターであってもよい。
【0026】
別の態様では、増殖は、約1日~約30日、約5~約30日、約1日~約25日、約2日~約20日、約5日~約15日、約2日~約10日、約3日~約15日、約3日~約20日、約4日~約10日、約5日~約10日、約6日~約10日、約7日~約25日、約8日~約25日、または約9日~約12日の期間内に実行されてもよい。
【0027】
一態様では、本開示は、例えば、患者またはドナーからCD8+T細胞の集団を得るステップと、得られた集団からT細胞CD28+CD8+T細胞を単離するステップと、単離細胞を抗CD3抗体および抗CD28抗体で活性化するステップと、活性化集団をウイルスベクターで形質導入するステップと、形質導入および増殖が少なくとも1つのサイトカインの存在下で実行されてもよい、形質導入された集団を増殖させるステップとを含み、単離細胞が、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD28+CD8+T細胞を含有する、養子免疫療法のための改善された効力を有するT細胞を産生するための方法に関する。
【0028】
別の態様では、本開示は、本開示の方法によって産生されたT細胞に関する。
【0029】
さらなる態様では、本開示は、本開示の方法から入手可能なT細胞、好ましくはT細胞集団、より好ましくは遺伝的形質導入T細胞に関する。本開示のさらなる態様では、T細胞、好ましくはT細胞集団、より好ましくは遺伝的形質導入T細胞は、本開示の方法から直接得られる。
【0030】
一態様では、本明細書に記載の方法によって提供される、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含有する遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなる判定された集団から生成されたものよりも少なくとも約1.2倍高く、少なくとも約1.5倍高く、少なくとも約2倍高く、少なくとも約2.5倍高く、少なくとも約3倍高く、少なくとも約3.5倍高く、少なくとも約4倍高く、少なくとも約4.5倍高く、または少なくとも約5倍高い倍数増殖を示してもよい。
【0031】
一態様では、本明細書に記載の方法によって提供される、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含有する遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなる判定された集団から生成されたものよりも少なくとも約1.2倍高く、少なくとも約1.5倍高く、少なくとも約2倍高く、少なくとも約2.5倍高く、少なくとも約3倍高く、少なくとも約3.5倍高く、少なくとも約4倍高く、少なくとも約4.5倍高く、または少なくとも約5倍高いCD8:CD4 T細胞比を示してもよい。
【0032】
一態様では、本明細書に記載の方法によって提供される、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含有する遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなる判定された集団から生成されたものよりも少なくとも約1.2倍長く、少なくとも約1.5倍長く、少なくとも約2倍長く、少なくとも約2.5倍長く、少なくとも約3倍長く、少なくとも約3.5倍長く、少なくとも約4倍長く、少なくとも約4.5倍長く、または少なくとも約5倍長いテロメア長を示してもよい。
【0033】
一態様では、本明細書に記載の方法によって提供される、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含有する遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなる判定された集団から生成されたものよりも少なくとも約1.2倍高く、少なくとも約1.5倍高く、少なくとも約2倍高く、少なくとも約2.5倍高く、少なくとも約3倍高く、少なくとも約3.5倍高く、少なくとも約4倍高く、少なくとも約4.5倍高く、または少なくとも約5倍高いクローン濃度を示してもよい。
【0034】
別の態様では、本明細書に記載の方法によって生成された遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含有する判定された集団から産生されたT細胞と比較して、より高い倍数増殖、より高いCD8:CD4 T細胞比、より長いテロメア長、および/またはより高いクローン濃度の1つまたは複数を示す。
【0035】
なおも別の態様では、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のCD28+CD8+T細胞を含有する判定された集団から選択された遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含有する判定された集団から生成されたT細胞と比較して、より高い倍数増殖、より高いCD8:CD4 T細胞比、より長いテロメア長、および/またはより高いクローン濃度の1つまたは複数を示す。
【0036】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載された方法によって入手可能な遺伝的形質導入T細胞と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる、例えば、医薬組成物などの組成物に関する。一態様では、本開示は、前述の態様のいずれか1つの方法によって生成された治療有効量のT細胞を患者に投与するステップを含む、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、無害である前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択されるがんを有する患者を治療する方法に関する。
【0037】
さらなる態様では、本開示は、薬剤として使用するための、前述の態様のいずれか1つの方法によって入手可能な遺伝的形質導入T細胞を含んでなる、例えば、医薬組成物などの組成物を指す。
【0038】
さらなる態様では、本開示は、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、無害である前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択されるがんの治療において使用するための、前述の態様のいずれか1つの方法によって入手可能な遺伝的形質導入T細胞を含んでなる、例えば、医薬組成物などの組成物に言及する。
【0039】
さらなる態様では、本開示は、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、無害である前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択されるがんの治療のための、前述の態様のいずれか1つの方法によって入手可能な遺伝的形質導入T細胞を含んでなる、例えば、医薬組成物などの組成物の使用に言及する。
【0040】
さらなる態様では、本開示は、患者からCD8+T細胞の集団を得るステップと、得られた集団中のCD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップと、判定された集団が、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、判定された集団を抗CD3抗体抗CD28抗体で活性化するステップと、または判定された集団が、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、判定された集団を抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステップと、活性化T細胞集団をウイルスベクターで形質導入するステップと、形質導入T細胞集団を増殖させるステップと、および増殖T細胞集団を患者に投与するステップとを含み、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、無害である前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択されるがんを有する患者を治療する方法に言及する。
【0041】
さらなる態様では、本開示は、主要組織適合性複合体(MHC)分子とのペプチド複合体へのTCR結合に言及し、その中ではペプチドは、配列番号1~158からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる。
【0042】
別の態様では、ウイルスベクターは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するレトロウイルスベクターであってもよい。
【0043】
別の態様では、ウイルスベクターは、CARを発現するレンチウイルスベクターであってもよい。
【0044】
別の態様では、CARはCD19 CARであってもよい。
【0045】
さらなる態様では、本開示は、患者からCD8+T細胞の集団を得るステップと、得られた集団中のCD28+CD8+T細胞の百分率を判定するステップと、判定された集団が、少なくとも約50%のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、判定された集団を抗CD3抗体抗CD28抗体で活性化するステップと、または判定された集団が、約50%未満のCD28+CD8+T細胞を含んでなるという条件で、判定された集団を抗CD28抗体の非存在下において抗CD3抗体で活性化するステップと、活性化T細胞集団をウイルスベクターで形質導入するステップと、形質導入T細胞集団を増殖させるステップと、増殖T細胞集団の倍数増殖を判定するステップと、倍数増殖が10倍を超えるという条件で、増殖T細胞集団を患者に投与するステップとを含んでなる、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん腫(RCC)、無害である前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫(MM)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択されるがんを有する患者を治療する方法に言及する。
【0046】
さらなる態様では、倍数増殖は、約2~約50倍、約5~約50倍、約10~約50、約2~約30倍、約10~約20倍、約2~約25倍、約5~約25倍、約7~約20倍、約2~約10倍、約2~約5倍であってもよい。別の態様では、倍数増殖は、2倍を超え、3倍を超え、4倍を超え、5倍を超え、8倍を超え、10倍を超え、または20倍を超えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本開示の性質、目的、および利点のさらなる理解のために、同様の参照番号が同様の要素を示す以下の図面と併せて読まれる、以下の詳細な説明を参照すべきである。
【0048】
図1図1A:本開示の一実施形態に従った、大きな年齢差にわたる健常人PBMCのCD8コンパートメント内のCD28発現の百分率を示す。ドナーは、CD28発現についてフローサイトメトリーによって分析された。Graphpad Prism 7の線形回帰によって判定されたように、線形相関(R=0.7124)が、CD8 T細胞中の開始CD28の間に観察された。図1B:本開示の一実施形態に従った、7日間の製造の終了時における、CD3コンパートメント、すなわち、CD8陽性およびCD4陽性コンパートメント内のCD8陽性細胞の最終百分率を示す。開始CD28百分率および最終CD8百分率は、フローサイトメトリーによって計算された。Graphpad Prism 7の線形回帰によって判定されたように、CD28の開始百分率と最終CD8%の間には、0.8121のRの相関がある。図1C:本開示の一実施形態に従って、7日目までに達成された倍数増殖を示す。開始CD28百分率は、フローサイトメトリーによって計算された。形質導入の日から培養期間の7日目までの総倍数増殖が計算された。Graphpad Prism 7の線形回帰によって判定されたように、CD28の開始百分率と最終倍数増殖の間には、0.8579のRの相関がある。図1D:本開示の一実施形態に従ったフローサイトメトリーによって測定された、最終テロメア長を示す。Graphpad Prism 7の線形回帰によって判定されたように、CD28の開始百分率と最終テロメア長の間には、0.9581のRの相関がある。
図2】本開示の一実施形態に従った、T細胞増殖動態の特性評価を示す。3人の健常ドナーのうち、例えば、93.4%などのより高い(Hi)PBMCのCD8コンパートメント中のCD28発現を有するドナーは、例えば、54.3%などの中程度の(Mid)、および例えば、31.1%などの低い(Low)PBMCのCD8コンパートメント中のCD28発現ドナーと比較して、4日目の細胞数対2日目の細胞数(CD3/CD28による活性化の2日後)によって定義されるように、初期増殖を受け得るより多くのT細胞クローンを含有する。
図3】本開示の一実施形態に従った、クローンの縮小および増殖が、開始CD28百分率と相関することを示す。3人の健常ドナーから、単一分子DNA配列決定が実行され、個々のT細胞クローンが経時的に追跡された。差次的に豊富な百分率は、活性化後と比較して、評価可能なT細胞クローンの総数の増殖または縮小のいずれかである、増殖の10日目までの全てのT細胞クローンの割合を表す。CD28発現細胞の百分率は、開始PBMCからのフローサイトメトリーによって計算された。Graphpad Prism 7の線形回帰によって判定されたように、CD28の開始百分率と差次的に豊富な百分率の間には、0.9726のRの相関がある。
図4】本開示の一実施形態に従った、負のクローン分裂を伴うT細胞増殖の遅延を示す低CD28発現ドナーを示す。集団増殖は、総生細胞に基づいて計算されてもよく、増殖倍数を表してもよい。クローン分裂はlog2(クローン倍数増殖)として計算され、得られた中央値に相当し、負の値、すなわち破線より下の値は、培養中でクローン頻度が縮小したときに得られる一方で、正の値、すなわち破線より上は、培養中でクローン頻度が拡大したときに得られる。全ての点は、活性化後ベースラインとの比較であり、T細胞増殖プロセスの4日目まで計算された。
図5】本開示の別の実施形態に従った、T細胞増殖動態の特性評価を示す。T細胞クローンは、各T細胞クローンのlog(増殖倍数)によって推定された、それらが受けた分裂回数に基づいてビニングされた。初期、中期、および後期の増殖は、製造プロセスの4、7、および10日目に対応する。インサートには、その時点での細胞の総数(Tot)と共に、中央値(Med)および平均値(Avg)のクローン分裂が含まれる。
図6】本開示の別の実施形態に従った、T細胞増殖動態の特性評価を示す。1億個の細胞に到達するために必要な分裂回数は、後期増殖時点までの平均分裂回数に基づいて計算された。
図7】本開示の別の実施形態に従った、T細胞増殖動態の特性評価を示す。正または負の初期増殖(2日目~4日目)を経たT細胞クローン間の平均最終クローン分裂が計算された。P<0.05、**P<.0001。
図8】本開示の別の実施形態に従った、T細胞増殖動態の特性評価を示す。刺激後の固有のバーストに続いて、CD28が低いドナー(例えば、中程度のCD28+および低いCD28+)では固有のクローンが継続的に減少する。固有のT細胞クローンは、T細胞受容体(TCR)CDR3領域の固有のDNA分子読み取り数に由来してもよい。値1の点線は、活性化後に存在したよりもT細胞クローンが少ない点をマークする。クローンの多様性(固有のクローン数)は、初期(4日目)、中期(7日目)、および後期(10日目)のT細胞製造手順全体で測定された。全ての値は、活性化後(2日目)の時点での固有のT細胞クローン数について正規化される。
【発明を実施するための形態】
【0049】
遺伝子改変T細胞を使用した養子T細胞療法は、いくつかの悪性腫瘍の潜在的な治療の選択肢として出現した。細胞療法の製造の中核を成すのは、刺激、遺伝子工学、および増殖方法の組み合わせを用いた製造である。この枠組み内で、治療的に妥当な投与量に対する細胞の増殖と、「生きている薬」の増殖可能性を維持する必要性との間に、微妙なバランスがあってもよい。
【0050】
本明細書に記載されるように、本開示は、T細胞の有効性を改善する方法、および最終倍数増殖、CD8:CD4 T細胞比、相対的最終テロメア長、およびT細胞製品のクローン濃度を強化し予測する方法を提供する。本開示は、それを必要とする対象においてがんを治療する方法、ならびに本明細書に記載される方法によって生産されるT細胞集団もまた提供する。
【0051】
CD28はT細胞上で発現される分子の1つであり、それはT細胞活性化に必要な共刺激シグナルを提供する。CD28は、B7.1(CD80)およびB7.2(CD86)の受容体である。Toll様受容体リガンドによって活性化されると、B7.1発現が抗原提示細胞(APC)において上方制御される。抗原提示細胞上のB7.2発現は構成的である。CD28は、ナイーブT細胞上で構成的に発現される唯一のB7受容体である。TCRに加えてCD28を介した刺激は、様々なインターロイキン(特にIL-2およびIL-6)の産生のために、T細胞に強力な共刺激シグナルを提供し得る。
【0052】
T細胞が長期間にわたって増殖した場合、複数の増殖性サイトカインが存在するにもかかわらず、T細胞はそれらの増殖能を失い、機能的に老化することもある。さらに、CD28の発現は、最終T細胞倍数増殖をはじめとする、複数の製造指標と相関していてもよい。したがって、CD28発現の喪失は、T細胞増殖のボトルネックを生み出してもよく、製造中に特定のT細胞クローンがその他のクローンと比較して非常に有利になってもよい。複数の相関関係を組み合わせた、利用可能な臨床試験データのメタ分析は、より若年の患者がCD28共刺激を伴うT細胞製造により良く反応するようであり、より高齢の患者はCD28共刺激を欠くT細胞製造により良く反応するようであることを示す。
【0053】
本開示の一態様では、CD28陽性CD8+T細胞の開始百分率は、1)倍数T細胞増殖、2)CD8:CD4 T細胞比(またはCD3陽性細胞の%CD8陽性細胞)、および3)最終T細胞製品対テロメア長の正確な予測を可能にするバイオマーカーとして使用されてもよい。さらに、CDR3 DNA配列決定を使用して、様々な開始CD28発現レベルを有するドナーからのクローン集団が追跡されてもよい。この分析から、異なるCD28開始発現レベルは、T細胞製造プロセス全体を通じてクローン増殖動態に有意差をもたらしてもよい。
【0054】
T細胞製造のプロセスは、PBMC由来のT細胞の単離、活性化、および増殖に依存する。活性化は、CD3およびCD28に対する固定化作動性抗体と、それに続くサイトカイン環境での増殖を介して達成されてもよい。製造中に、治療効果に影響を与えてもよい、倍数T細胞増殖およびCD8+:CD4+細胞比などの製品特性が追跡されて、最低限の基準が満たされてもよい。したがって、これらの指標に影響を及ぼし、臨床製造の結果に影響を与え得る要因について、より深い知識を有することが望ましい場合がある。
【0055】
例えば、T細胞製品を製造するプロセスは、一般的に5つのステップに分けられてもよい:(1)患者末梢血単核細胞(PBMC)を単離するための白血球アフェレーシス、(2)活性化、(3)非ウイルス性またはウイルスコード化TCR/CARベクターによるPBMCからのT細胞の遺伝子修飾、(4)臨床的に適切な用量を作製するためのT細胞の増殖、および(5)T細胞注入前の患者の任意選択的なリンパ球枯渇、および患者への改変T細胞の注入。T細胞コンパートメントの活性化は、αCD28抗体を介した共刺激刺激の存在下または非存在下で、主に作動性αCD3抗体の使用を介して達成されもよく、通常はIL-2の増殖がそれに続くが、IL-7IL-15がナイーブT細胞最終製品を産生してもよい。
【0056】
増殖プロセス中、T細胞はTCR刺激の除去のために、増殖と縮小の間でバランスが取れていてもよい。製造中に、T細胞は終末分化したエフェクター細胞へと分化し、このプロセスはPBMCの最初の分化状態に依存していてもよい。より高齢のドナーからのPBMCは、CD28陰性CD8+T細胞が濃縮されていてもよい。さらに、非アポトーシス性の外因性FasベースのT細胞-T細胞相互作用が、ナイーブT細胞の分化をを駆動してもよい。これらの観察結果は、特定のT細胞が、T細胞の生体外増殖中に、その他のT細胞を凌駕してもよいことを示す。したがって、この縮小と増殖の力学は、クローンレベルで解明されなくてはならない。
【0057】
特定の態様では、本明細書所のT細胞は、ヒト末梢血単核球(PBMC)、CG-CSFでの刺激後に採取されたPBM、骨髄、または臍帯血由来のT細胞などの初代ヒトT細胞を含んでもよい。条件は、mRNAおよびDNAおよび電気穿孔の使用を含んでもよい。形質移入に続いて、細胞は、即座に輸液されてもよく、または保存されてもよい。特定の態様では、形質移入に続いて、細胞への遺伝子移入から約1日、約2日、約3日、約4日、または約5日以上以内に、細胞をバルク集団として数日間、数週間、または数ヶ月間、生体外で増殖させてもよい。
【0058】
さらなる態様では、形質移入に続いて形質移入体がクローン化されてもよく、単一の組み込まれたまたはエピソーム的に維持された発現カセットまたはプラスミドの存在、およびTCRの発現を実証するクローンが、生体外で増殖されてもよい。増殖のために選択されたクローンは、ペプチド発現標的細胞を特異的に認識して溶解する能力を実証してもよい。組換えT細胞は、IL-2での刺激、または共通γ鎖に結合するその他のサイトカイン(例えば、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21など)での刺激によって増殖させてもよい。組換えT細胞は、人工抗原提示細胞での刺激によって増殖させてもよい。組換えT細胞は、人工抗原提示細胞上で増殖させてもよく、またはT細胞表面上のCD3を架橋するOKT3などの抗体を用いて増殖させてもよい。組換えT細胞のサブセットは、人工抗原提示細胞上で欠失させてもよく、またはT細胞表面上でCD52に結合するCampathなどの抗体を用いて欠失させてもよい。さらなる態様では、遺伝子改変細胞は凍結保存されてもよい。
【0059】
「活性化」という用語は、十分に刺激されて、検出可能な細胞増殖を誘導するT細胞の状態を指す。特定の実施形態では、活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能に付随し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、増殖中のT細胞を指す。T細胞の完全な活性化には、TCRを介して生成されたシグナルだけでは不十分であり、1つまたは複数の二次的シグナルまたは共刺激シグナルもまた必要である。したがって、T細胞活性化は、TCR/CD3複合体を介した一次刺激シグナルと、1つまたは複数の二次的共刺激シグナルとを含んでなる。共刺激は、CD3/TCR複合体を介したまたはCD2を介した刺激などの一次活性化シグナルを受信したT細胞による、増殖および/またはサイトカイン産生によって証明され得る。
【0060】
特定の態様では、本開示は、TCRをコード化するDNAコンストラクトを含有する発現ベクターでT細胞を形質移入するステップと、次に、任意選択的に、抗原陽性細胞、組換え抗原、または受容体に対する抗体で細胞を刺激して、細胞を増殖させるステップとを含んでなる、抗原特異的再誘導されたT細胞を作製しおよび/または増殖させる方法を含んでもよい。
【0061】
別の態様では、裸のDNAまたはRNAを使用して、電気穿孔、またはその他の非ウイルス性遺伝子移入(ソノポレーションなどであるが、これに限定されるものではない)によって、T細胞を安定に形質移入し、再誘導する方法が提供される。ほとんどの研究者らは、異種遺伝子をT細胞に輸送するために、ウイルスベクターを使用している。裸のDNAまたはRNAを使用することで、再誘導T細胞の製造に必要な時間が短縮され得る。「裸のDNAまたはRNA」は、発現のために適切な方向で発現カセットまたはベクターに含有されるTCRをコード化するDNAまたはRNAを意味する。本開示の電気穿孔法は、TCRを発現してその表面に保有する、安定な形質移入体を生成する。
【0062】
特定の態様では、TCRコンストラクトは、裸のDNAとしてまたは適切なベクター内で対象自身のT細胞に導入されてもよい。当該技術分野の裸のDNAを使用した電気穿孔によるT細胞の安定的な形質移入の方法。例えば、その内容全体が参照により援用される、米国特許第6,410,319号明細書を参照されたい。裸のDNAは、一般に、発現のために適切な方向でプラスミド発現ベクターに含有される、本開示のTCRをコード化するDNAを指す。有利なことに、裸のDNAの使用は、本開示のTCRを発現するT細胞を製造するための所用時間を短縮する。
【0063】
代案としては、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)を使用して、TCRコンストラクトがT細胞に導入され得る。本開示の方法に従って使用するのに適したベクターは、対象のT細胞において自己複製しない。ウイルスに基づく多数のベクターが知られており、その中では、細胞内に維持されるウイルスのコピー数は十分に低く、細胞の生存能が維持される。例示的なベクターとしては、pFB-neoベクター(STRATAGENE(登録商標))、ならびにHIV、SV40、EBV、HSV、またはBPVに基づくベクターが挙げられる。
【0064】
形質移入または形質導入されたT細胞が、所望の調節を有する表面膜タンパク質として、TCRコンストラクトを所望レベルで発現できることが確立されたら、TCRが宿主細胞において所望のシグナル誘導を提供するために機能的であるかどうかが、判定され得る。引き続いて、形質導入T細胞が対象に再導入または投与され、対象における抗腫瘍応答が活性化される。
【0065】
投与を容易にするために、本開示に従った形質導入T細胞は、さらに薬学的に許容可能であり得る適切な担体または希釈剤を用いて、医薬組成物にされまたは生体内投与に適したインプラントにされ得る。このような組成物またはインプラントを製造するための手段は、当該技術分野で記載されている(例えば、参照によりその内容全体が本明細書に援用される、Remington's Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mack,ed.(1980、を参照されたい)。適切な場合には、形質導入T細胞は、それぞれの投与経路のための通常の方法で、カプセル、溶液、注射、吸入剤、または煙霧剤のなどの半固体または液体の形態の調製物に製剤化され得る。当該技術分野で公知の手段を利用して、組成物が標的組織または器官に到達するまで、組成物の放出および吸収が防止または最小化され、または組成物の時限放出が確実にされ得る。しかし、望ましくは、細胞がTCRを発現することを妨げない、薬学的に許容可能な形態が用いられる。したがって、望ましくは、形質導入T細胞は、平衡塩類溶液、好ましくはハンク平衡塩類溶液、または生理食塩水を含有する、医薬組成物にされ得る。
【0066】
本開示の方法を使用して、感染性疾患またはがんの治療で使用するための選択されたT細胞集団が増殖され得る。得られたT細胞集団は遺伝的に形質導入されて、免疫療法に使用され得るか、または感染性因子の生体外分析のために使用され得る。T細胞集団の十分な数への増殖に続いて、増殖T細胞は個人に戻されてもよい。本開示の方法はまた、T細胞の再生可能な供給源を提供してもよい。したがって、個人からのT細胞を生体外で増殖させ得て、増殖した集団の一部が個人に再投与され得て、別の部分は長期保存および引き続く増殖と個人への投与のためにアリコートで冷凍され得る。同様に、がんに罹患した個人から腫瘍浸潤性リンパ球の集団が得られ、T細胞を刺激して十分な数に増殖されて個人に戻され得る。
【0067】
一態様では、T細胞の増殖および/または活性化は、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21の1つまたは複数の存在下で行われる。別の態様では、T細胞の増殖および/または活性化は、IL-2単独、IL-7単独、IL-15単独、IL-2とIL-15の組み合わせ、またはIL-7とIL-15の組み合わせで行われる。
【0068】
本開示はまた、固相表面に共役された、T細胞増殖のためにT細胞に共刺激シグナルを提供する薬剤(例えば、抗CD28抗体、B7-1またはB7-2リガンド)を含有する組成物に関係してもよく、それは、同じ固相表面に共役された、T細胞に一次活性化シグナルを提供する薬剤(例えば、抗CD3抗体)をさらに含んでもよい。これらの薬剤は、好ましくは、ビーズまたはフラスコまたはバッグに付着されてもよい。異なる固相表面に共役された各薬剤(すなわち、第1の固相表面に共役された、一次T細胞活性化シグナルを提供する薬剤、および第2の固相表面に共役された、共刺激シグナルを提供する薬剤)を含んでなる組成物もまた、本開示の範囲内であってもよい。
【0069】
本発明の組成物は単位用量剤形で提供され得て、その中では、例えば、注射などの各投与単位が、所定量の組成物を単独で、またはその他の活性剤との適切な組み合わせで含有してもよい。本明細書の用法では、単位用量剤形という用語は、ヒトおよび動物対象のための単位投薬量として適切な物理的離散単位を指し、各単位は、適切な場合には薬学的に許容可能な希釈剤、担体、またはビヒクルと関連して、単独で、またはその他の活性剤との組み合わせで、所望の効果を生じるのに十分な量で計算された本発明の組成物の所定量を含む。本開示の新規の単位用量剤形の仕様は、特定の対象における医薬組成物に関連する特定の薬力学に依存する。
【0070】
長期的な特異的抗腫瘍応答が確立されて、このような治療の非存在下で帰結するよりも、腫瘍のサイズを縮小させまたは腫瘍の増殖または再増殖を排除するように、望ましくは単離された形質導入T細胞の有効量または十分な数が組成物中に存在して、対象に導入される。望ましくは、対象に再導入された形質導入T細胞の量は、形質導入T細胞が存在しないこと以外は同じである条件と比較して、腫瘍サイズの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、または約99%の減少を引き起こしてもよい。
【0071】
したがって、投与される形質導入T細胞の量は、投与経路を考慮すべきであり、所望の治療応答を達成するのに十分な数の形質導入T細胞が導入されるような量でなくてはならない。さらに、本明細書に記載の組成物に含まれる各活性剤の量(例えば、接触させる各細胞あたりの量、または特定の体重あたりの量)は、異なる用途において変動し得る。一般に、形質導入T細胞の濃度は、好ましくは、治療される対象に少なくとも約1×10~約1×10個の形質導入T細胞/m(またはkg)患者、なおもより望ましくは、約1×10~約5×10個の形質導入T細胞/m(またはkg)患者を提供するのに十分であるべきであるが、それを上回る例えば、5×10細胞/m(またはkg)患者を超える、またはそれを下回る例えば、1×10細胞/m(またはkg)患者未満などの任意の適切量が利用され得る。投与スケジュールは、十分確立された細胞ベースの治療法に基づき得て(例えば、参照によりその内容全体が本明細書に援用される、米国特許第4,690,915号明細書を参照されたい)、または交互の持続輸液ストラテジーが用いられ得る。
【0072】
これらの値は、本開示の方法を本発明の実施のために最適化する際に、実務家によって利用される、一連の形質導入T細胞の一般的ガイダンスを提供してもよい。本明細書におけるこのような範囲の列挙は、特定の用途で正当化されるかもしれないように、より多いまたはより少ない量の成分の使用を決して排除するものではない。例えば、実際の用量およびスケジュールは、組成物がその他の医薬組成物と組み合わせて投与されるかどうかによって、または薬物動態、薬物消長、および代謝における個人間の差異によって変動し得る。当業者は、特定の状況の要件に従って、容易に任意の必要な調節をし得る。
【0073】
一態様では、腫瘍関連抗原、本明細書に記載される方法および実施形態で使用できる、TAAペプチドとしては、例えば、米国特許第20160187351号明細書、米国特許第20170165335号明細書、米国特許第20170035807号明細書、米国特許第20160280759号明細書、米国特許第20160287687号明細書、米国特許第20160346371号明細書、米国特許第20160368965号明細書、米国特許第20170022251号明細書、米国特許第20170002055号明細書、米国特許第20170029486号明細書、米国特許第20170037089号明細書、U.米国特許第20170136108号明細書、米国特許第20170101473号明細書、米国特許第20170096461号明細書、米国特許第20170165337号明細書、米国特許第20170189505号明細書、米国特許第20170173132号明細書、米国特許第20170296640号明細書、米国特許第20170253633号明細書、米国特許第20170260249号明細書、米国特許第20180051080号明細書、および米国特許第20180164315号明細書に記載される腫瘍関連抗原(TAA)ペプチドが挙げられ、これらの各出版物の内容およびその中に記載されている配列リストは、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0074】
一態様では、本明細書に記載されるT細胞は、上記の特許および刊行物の1つまたは複数に記載されるTAAペプチドを提示する細胞を選択的に認識する。
【0075】
別の態様では、本明細書に記載される方法および実施形態で使用できるTAAは、配列番号1~配列番号158から選択される少なくとも1つを含む。一態様では、T細胞は、配列番号1~158に記載される、または本明細書に記載の特許または出願のいずれかに記載される、TAAペプチドを提示する細胞を選択的に認識する。
【0076】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0077】
一態様では、本明細書に記載される方法と共に使用できるT細胞受容体としては、例えば、米国特許第20170267738号明細書、米国特許第20170312350号明細書、米国特許第20180051080号明細書、米国特許第20180164315号明細書、米国特許第2010161396号明細書、米国特許第2010162922号明細書、米国特許第20180273602号明細書、米国特許第20190002556号明細書、米国特許第20180135039号明細書に記載されるものが挙げられ、これらの各出版物の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0078】
当該技術分野の熟練当業者によって理解されるであろうように、本明細書に記載の方法によって生成された遺伝的形質導入T細胞は、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のCD28+CD8+T細胞を含有する判定された集団から生成されたT細胞T細胞と比較して、より高い倍数増殖、より高いCD8:CD4 T細胞比、より長いテロメア長、および/またはより高いクローン濃度の1つまたは複数を示すので、本明細書に記載の方法によって生成された遺伝的形質導入T細胞は、改善された効力、より具体的には、養子免疫療法などの免疫療法に対する改善された効力を有する。
【実施例
【0079】
T細胞製造プロトコルの設計においては、所望の細胞数を満たすためにT細胞を増殖させる必要性と、最終的T細胞製品の増殖能を維持することの間でバランスが存在してもよい。このパラダイム内では、開始PBMC集団の属性に基づいて製造の結果を予測することに、利点があってもよい。
【0080】
観察されたT細胞発現プロファイルの不均一性は、選択圧のための必要基準が存在してもよいことを示唆する。この圧力は、理論上は、特定のT細胞集団の複製能力を制限してもよい。共刺激分子の分析から、開始CD8細胞およびT細胞増殖プロトコル全体を通じて、CD28発現が失われてもよい。当然のことながら、これにより2種類のCD8 T細胞、すなわち与えられたCD28共刺激の恩恵を受けるものと、恩恵を受けないものとが生成する。以下の実施例は、CD28の固有の重要性、および開始CD28表現型と複数の製造指標との相関関係を示す。
【0081】
実施例1
T細胞製造
健常ドナー全血をHemacareから購入し、Ficoll勾配によってPBMCを単離した。4℃のPBS(Lonza17-516F)中の1μg/mlの抗CD3(eBioscience 16-0037-85)および1μg/mlの抗CD28(eBioscience 16-0289-85)抗体で一晩被覆された組織培養フラスコ上に、1×10個の生PBMC/mlを蒔種することによって、5%ヒトAB血清(Gemini 100-318)を補充したTexMACS(Miltenyi 130-097-196)培地中で、PBMCを16~24時間活性化した。翌日、全細胞を単離して、1×10個の生細胞/mlに再懸濁し、5mlをGrex24ウェルプレート(Wilson Wolf 80192M)のウェル内に播種した。細胞は、10ng/mlのIL-7(peprotech 200-07)、100ng/mlのIL-15(peprotech 200-15)、および10μg/mlの硫酸プロタミンの存在下で、模擬形質転換するか、またはTCRレンティウイルスコンストラクト(Lentigenによって製造される)で形質転換した。翌日、細胞に、上記濃度でIL-7およびIL-15を補充した35mlの完全TexMACSを供給した。細胞は、所望の製造時間(すなわち、合計4、7、または10日間)に応じて、2、5、または8日間さらに培養した。製造後、細胞をカウントし、Cyrostore10内で5×10/mlで凍結し、-80℃に16~24時間置き、必要になるまでLN2気相で長期保存した。
【0082】
PkH67染色
PkH67(Sigma PKH67GL)染色は、7日目または10日目の製造された細胞に比べてより大きな細胞サイズを考慮して、4日目の製造された細胞を2倍の濃度で染色したことを除いて、製造業者のプロトコルに従って実施した。PkH染色は、フローサイトメトリー生存色素染色前に実施した。
【0083】
CDR3配列決定(Adaptive Biotech)およびT細胞受容体可変β鎖配列決定解析
ヒトTCRβ鎖のCDR3領域の免疫配列決定は、immunoSEQ(登録商標)アッセイ(ワシントン州シアトルのAdaptive Biotechnologies)を用いて実施した。抽出されたゲノムDNAは、バイアス制御されたマルチプレックスPCR中で増幅させ、高スループット配列決定がそれに続いた。さらなる解析のために、各固有のTCRβ CDR3領域の絶対量を同定して定量化するために、配列を畳み込んでフィルタリングした。
【0084】
フローサイトメトリーの染色および取得
生細胞を定量化し、PBS中で1~2×10個の生細胞/mlに再懸濁し、次に製造業者のプロトコルに従って、Live-Dead aqua(Thermo Fisher L34957)染色で染色した。次に細胞を流動緩衝液で洗浄し、所望の抗体混合物(CD3 PerCp-Cy5.5 Biolegend 300328、Vb8 PE Biolegend、348104、CD45Ro PE-Cy7 Biolegend 304230、CD95 APC-fire750 Biolegend 305638、CD8 BV605 BD 564116、CD27 BV650 Biolegend 302827、CD62L BV785 Biolegend 304830)で再懸濁し、残りの表面染色の前に、CCR7(CCR7 BV41 Biolegend 353208)染色を血清なしでRPMIで37℃で実行したことを除いては、暗所で4℃で15~30分間染色した。次に、細胞を流動緩衝液で洗浄し、固定緩衝液中に再懸濁して、BD FortessaまたはMiltenyi MACSQuant分析装置上で取得するまで4℃で保存した。
【0085】
テロメア長判定
相対テロメア長は、製造業者の指示(Dako/Agilent K5327)に従って判定した。簡潔に述べると、T細胞と対照腫瘍細胞1301(4Nゲノム)とを1:1の比率で混合した。次に、細胞を透過処理し、テロメアPNA FITCプローブを一晩ハイブリダイズした。翌日、対比ヨウ化プロピジウム染色を実施して無傷の細胞を識別し、フローサイトメトリーによって細胞を取得した。試験細胞のテロメア長は、対照腫瘍細胞株1301のテロメア長に対する比率として計算した。
【0086】
実施例2
CD8+T細胞上のCD28発現はIL-7およびIL-15による生体外T細胞増殖のバイオマーカーとして機能する
CD8 T細胞中のCD28の年齢相関損失
ドナー間の選択圧については、ドナー間に固有の不均一性が存在してもよい。PBMCからのT細胞製品の製造は、抗原特異的細胞溶解性CD8 T細胞を効率的に活性化し増殖させる能力に依存する。このプロセス中に、最小投与量として細胞の増殖を追跡する必要性があってもよい。この必要性は、多くの場合、臨床試験の設計に基づいて満たされてもよい。高齢のPBMCからのT細胞製品の製造は、血液中のCD28陰性CD8+T細胞の蓄積によって複雑になり得る。
【0087】
図1Aは、CD28プロファイリングから、ドナーが高齢であるほど、CD28を発現するCD8細胞の開始百分率が低く、Graphpad Prism 7の線形回帰によって判定されたように、R相関が0.7124であることを示す。これらの細胞は、同族ペプチドとCD3/CD28を介した刺激との双方に対して、増殖能が低下していてもよい。
【0088】
IL-7およびIL-15は、T細胞増殖中のIL-2の使用と比較して、T細胞のナイーブ性を維持してもよい。したがって、IL-7およびIL-15は臨床製造のための好ましい方法であってもよい。さらに、CD28-陰性CD8+T細胞は、IL15に応答して、それらのCD28陽性相当物と同等に増殖してもよい。CD28発現がIL-7およびIL-15の存在下でPBMC由来T細胞の製造にどのように影響するかを比較するために、6人の健常ドナーから得られたT細胞を臨床様プロセスを使用して製造した。
【0089】
CD28開始百分率は、T細胞増殖中の最終CD8百分率と相関する
CD8コンパートメント中のCD28発現は年齢と相関していてもよいため、CD28発現に依存するその他の製造指標もまた偏っていてもよい。細胞溶解性CD4細胞が同定されているとはいえ、腫瘍細胞溶解性機能を遂行するのは主にCD8コンパートメントであることから、T細胞増殖の終了時に、CD8:CD4細胞比(またはCD3陽性細胞の%CD8陽性細胞)を測定してもよい。したがって、CD8細胞中の開始CD28発現と、細胞の最終百分率との間には相関関係があってもよい。
【0090】
図1Bは、CD8+T細胞コンパートメント中のCD28発現の開始百分率と、培養7日目(中期増殖)のCD3陽性細胞の最終%CD8陽性細胞との間に、0.8121のR相関関係があることを示す。これらの結果は、CD28発現がCD8+T細胞の選択圧の推進力として機能してもよいことを示唆する。
【0091】
CD28開始百分率は倍数増殖と相関する
臨床T細胞増殖プロトコルは、多くの場合、発生した個体数倍加を理解するための測定基準として、最終製品の倍数増殖を測定する。
【0092】
図1Cは、増殖プロトコルにおいて、7日目(中期増殖)までに、Rの相関が0.8579となり、倍数増殖と開始CD28発現レベルとの間に明確な相関関係があったことを示す。CD4+細胞と比較したCD8+細胞の増殖は、CD8+T細胞中のCD28発現の開始百分率と密接に相関している。これらの結果は、PBMCの開始表現型に基づいて臨床的拡大が成功するかどうかを予測し得るので、製造プロセスの開発に影響を与える。
【0093】
テロメア長の減少はCD28発現の開始と相関する
細胞は高度に分化して最終的には老化するので、テロメア長の損失は機能不全細胞の証明である。テロメラーゼの発現は、CD3+CD28刺激に続くCD4またはCD8コンパートメントのCD28発現細胞に限定されてもよい。したがって、最終相対テロメア長も、このCD28発現細胞画分に対応していてもよい。
【0094】
図1Dは、T細胞製品の最終相対テロメア長が、細胞の開始CD28百分率と最終相対テロメア長との間の0.9581のR相関関係で、開始培養中のCD8+T細胞上のCD28発現のレベルと密接に相関してもよいことを示す。この分析は、複数の健常ドナーと複数の非小細胞肺がん患者に由来するPBMCから実行された。このデータは、IL-7/IL-15ベースのT細胞製造の結果が培養開始前に予測され得て、養子T細胞製造プロトコルの設計に重要な影響を与えてもよいことを示唆する。例えば、注入された細胞治療製品の持続性は、がん患者の臨床転帰と相関していてもよいので、注入された腫瘍細胞浸潤性リンパ球(TIL)臨床製品の最終テロメア長は、T細胞クローンの持続性と関連していてもよい。
【0095】
総合すると、開始CD8+T細胞のCD28発現を測定することによって、IL-7およびIL-15を用いて製造されたT細胞製品の最終的なCD8%、倍数増殖、および相対テロメア長を合理的に予測し得る。同じCD28発現との相関は、CD8+T細胞と比較して老化中により高いレベルでのCD28発現を維持してもよいCD4+T細胞の文脈では、見られないこともあることに留意されたい。
【0096】
実施例3
CD8+T細胞上のCD28発現はT細胞クローンの偏った増殖に関連している
開始PBMC中のCD28発現の増加はT細胞製造中に有利な増殖動態をもたらす
T細胞の増殖中にクローン集団の増殖を特徴付けるために、個々のT細胞クローンの増殖動態を、製造プロセス中にクローンDNAの配列と各クローン集団内の絶対数によって追跡した。個々のクローンを追跡する場合、増殖プロセスの初期(4日目)、中期(7日目)、および後期(10日目)に、T細胞クローン集団内のクローン分裂とT細胞の絶対数を測定した。
【0097】
例えば、CD28low(31.1%)、CD28mid(54.3%)、またはCD28high(93.4%)発現レベルに基づいて、CD8+T細胞のCDR3 DNA配列決定を介した、クローンT細胞の増殖と縮小の力学を特徴付けるために、PBMCを作動性CD3/CD28抗体で一晩刺激して模擬形質導入し、製造プロセスの4日目、7日目、および10日目の増殖プロセス中に試料採取した。細胞計数は各試料採取点で実行され、T細胞数は各クローン集団内で計算されたので、クローン分裂回数は次の式を使用して計算されてもよい:
クローン倍数増殖=(最終クローン数/開始クローン数)
クローンあたり推定分裂回数=Log2(クローン倍数増殖)。
【0098】
特定のCD8+T細胞集団の増殖を定量化すると共に、クローン集団の縮小もまた定量化してもよいが、これは増殖染色ベースの技術では可能でないこともある。
【0099】
図2は、開始PBMCが、CD28high(93.4%)の初期の増殖上の利点をもたらし、製造中にT細胞クローンのほぼ3分の2(63.41%)が活性化ステップ(2日目)と4日目の間で増殖することを示す。対照的に、CD28の発現量が少ない開始集団は、製造の初期段階でほとんどのT細胞クローンが縮小するという動態を示し、その中ではCD28mid(54.3%)とCD28low(31.1%)の集団は、それぞれ初期増殖クローンの23.74%と1.19%を含有した。すなわち、CD28midおよびCD28lowを発現するサンプルの76.26%および98.81%は、初期増殖段階でそれぞれ縮小した。これは、これらの2つの対象集団のこの段階の負の倍数増殖と一致した一方で、CD28highサンプルは正の倍数増殖を示した。したがって、クローンレベルでT細胞製造を特徴付けることによって、増殖プロセスの初期にT細胞クローンの有意な縮小が生じてもよく、これはCD28発現CD8+細胞の開始百分率と反比例してもよい。
【0100】
クローンの縮小および増殖は開始CD28百分率と相関する
単一培養から、個々のT細胞クローン頻度を追跡し、活性化後(2日目)の時点と比較した。この比較から、有意に頻度が上がったクローンと下がったクローンを評価し、その合計を差示的に豊富な百分率とした。
【0101】
図3は、差示的に豊富な百分率と開始CD28百分率の間に強い相関関係があることを示す(R=0.9726)。開始サンプル中のCD28の量が少ないほど、差示的に豊富になったクローンの百分率が高くなる。これは、特定の集団におけるCD28の欠如が、その他のクローンがその中に向けて増殖するための生態学的ニッチを生み出し、CD28の欠如が、T細胞増殖延長プロトコル中に死滅してもよい集団を生み出すことを示唆する。
【0102】
CD28の発現量が少ないドナーは負の中央値のクローン分裂を伴うT細胞増殖の遅延を示す
CD28ボトルネックがT細胞培養中に存在する場合、CD28を発現した細胞の開始百分率に基づいて、T細胞集団の増殖における予想された遅延がある。同様に、全てのT細胞クローンがすぐに増殖できた場合、増殖プロトコルの早期にクローンあたりの正の分裂回数が予測される。
【0103】
図4は、例えば、CD28midとCD28lowなどのCD28の発現量が低いものと中程度のものでは、活性化後(2日目)と増殖後4日目の間に集団増殖が負であることを示し、これは、これらの2つの時点の間に細胞数が縮小したことを示唆して、ボトルネック事象の定義を満たす。さらに、高CD28発現培養(例えば、CD28high)についてのみ、全体として正のクローン分裂が観察され、この培養では高い百分率のT細胞クローンが即座に分裂できたことを示す。
【0104】
図5は、クローン集団の分裂を追跡した場合、CD28lowサンプルが増殖の最後に非正規分布の分裂パターンを示す一方で、CD28midとCD28high集団は、同様の平均および中央値のクローン分裂によって示されるように、より正規分布した特性評価、すなわち製造全体にわたるクローン分裂の正規分布を示す。
【0105】
縮小の増加と初期増殖の減少に一致して、CD28low集団は、培養中で所定のレベルの増殖に達するために、クローン分裂回数の増加を必要としてもよい。すなわち、開始CD28発現が低いほど、同じ数のT細胞に到達するためにより多くの分裂が必要になってもよい。
【0106】
図6は、CD28low集団が1×10細胞の増殖に至るまでに1.96回のクローン分裂を必要とした一方で、CD28mid集団は1.64回、CD28high集団は同じ細胞数でも0.96回しか分裂しなかったことを示す。
【0107】
総合して、このデータは、高CD28開始集団が、T細胞縮小の減少と必要なT細胞分裂回数の減少によって特徴付けられるより有利なT細胞増殖を経てよいことを示す。
【0108】
これらの結果は、T細胞集団のCD28発現が高いほど、初期T細胞クローン増殖の可能性が高いことを示唆する。さらに、定義された細胞数あたりのT細胞分裂回数の減少は、CD28の発現の増加がT細胞増殖性を維持してもよいことを示唆する。
【0109】
特定のクローン集団の初期増殖が、増殖プロセスを通じて維持され得るかどうかを判定するために、正または負の初期増殖(2日目から4日目)を経た、例えば、CD28high、CD28mid、およびCD28lowなどのT細胞クローンの間の最終クローン分裂の平均値を算出した。
【0110】
図7は、CD28の発現にかかわりなく、全てのT細胞集団において、初期増殖クローンは、増殖プロセスの終わり(2日目から4日目)までに分裂する可能性が統計的に高いことを示す。
【0111】
DNAクローン配列決定によるCD28の発現が低いドナーにおける増殖中の固有のT細胞クローンの減少
製造の活性化段階では、活性化誘導細胞死(AICD)が発生してもよく、より若年の、よりナイーブ様のT細胞は、より高齢のエフェクター様細胞と比較してより高い増殖性を有してもよい。したがって、これらの要因は、T細胞の製造におけるボトルネックをもたらしてもよく、例えば、T細胞クローン集団が全集団から除去される一方で、その他は最終製品中に保持される。T細胞製品に対するAICDの影響を調査するために、製造プロセス全体を通じてクローン多様性(または濃度)を固有のT細胞クローン集団の相対数の尺度として判定した。
【0112】
培養全体を通じて固有のT細胞クローンの数を追跡すると、ボトルネックが存在する場合、ボトルネック事象後の固有のT細胞クローンの数に大きな変動があると予想される。クローン濃度は、配列決定からのDNA分子の読み取り回数について正規化された固有のT細胞クローンの数を計算するための測定値であってもよい。
【0113】
図8は、CD28発現に関係なく、全てのT細胞集団について、活性化後(2日目)から初期増殖(4日目)までクローン濃度(またはクローン多様性)が増加したことを示し、これは、以前は検出不能であった低頻度のクローンの増殖を表している可能性が高い。最大のクローン多様性は、増殖プロセスのこの初期段階で達成されてもよく、測定基準は、チェックポイント療法および化学療法に対する臨床的奏功の改善に関連してもよいことに留意されたい。この初期バーストに続いて、CD28lowおよびCD28midを発現する集団のクローン多様性が有意に減少し、製造プロセスを生き延びることができない固有のT細胞クローンの縮小を表す。増殖の初期と後期の時点の間(4日目から10日目)のクローン多様性のこの減少は、増殖が続くにつれてかなりのクローンの除去があったことを示唆する。対照的に、CD28highは、製造プロセス全体を通じて同様のクローンレベルを維持した。これらの結果は、開始PBMC培養に中のCD28発現レベルが、CD8+T細胞コンパートメントの多岐にわたる増殖動態と強く関連していてもよいことを示唆する。クローン多様性の欠如は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の4年生存率の低下と関連していたので、これらの結果はT細胞製品の有効性に影響を与えてもよい。T細胞の持続性は、T細胞製品の有効性に寄与してもよい。弱い非同族のTCR-pMHC相互作用は、T細胞の恒常性増殖と持続に寄与してもよい。したがって、CD28発現量が低い開始T細胞から調製されたものなどの最終T細胞製品中のクローン多様性の欠如の不利な点としては、自己持続性非同族のTCR-pMHC生存シグナルに遭遇する確率が低いことに起因する、T細胞の恒常性増殖の低下が挙げられてもよい。
【0114】
実施例4
より若年の患者はCD28共刺激によって製造された場合にCD19 CAR療法に対する応答が改善される
提案された生体外T細胞増殖ボトルネックの有意性をさらに探索するために、臨床試験メタ分析を実施して、高齢患者におけるCD28発現の喪失が臨床傾向を生み出すかどうかを調査した。以前のデータに基づくと、T細胞製造(CD3単独またはCD28との併用)に基づいて、より高齢の患者はより若年の患者とは異なって動作する。
【0115】
40件のT細胞療法の臨床試験が公開されている。その多くは、未確認の部分(たとえば、試験されていない新規TCRまたはCAR分子)を使用した初期段階の試験である。メタ分析は、一様で比較可能なデータセットを生成するための選別ステップを必要とした。選別および編纂の後、合計107人の患者データ点のCD19悪性腫瘍を標的化する7件の臨床試験を解析した。この解析から、45歳未満の患者は、CD3単独(44.44%)と比較して、CD3+CD28で細胞を製造した場合の臨床的予後がより良好であった(66.67%)。対照的に、患者が45歳を超える場合、CD3+CD28法(30.00%)でなくCD3単独(71.43%)で製造することの利点があった(表1)。
【0116】
【表2】
表1:CD28共刺激の差示的効果。データは、合計47個のデータ点を用いた、4件のCD19 CAR試験のメタ分析からのものである。45歳未満の患者は、45歳を超える患者と比較して、製造時にCD28共刺激を与えられた場合により良く機能したが、45歳を超える患者は、CD28共刺激を与えられなかった場合により良く機能した。換言すれば、45歳未満の患者はT細胞製造のCD3+CD28法の恩恵を受けてもよく、45歳を超える患者はT細胞製造のCD3単独法の恩恵を受けてもよい。CR=完全奏効、PR=部分奏効、SD=安定した疾患、NR/PD=無応答/進行性疾患、NE=評価不能。各臨床的奏効は、出典の臨床試験解析に基づいて定義された。
【0117】
利用可能な臨床試験データのこのメタ分析は、例えば、45歳未満などのより若年の患者が、CD28共刺激を伴うT細胞製造により良く応答するように見えることを示す一方で、例えば、45歳を超えるなどのより高齢の患者は、CD28共刺激を欠くT細胞製造に対してより良く応答するように見える。
【0118】
臨床的奏効率は多発性骨髄腫に対する臨床試験における生体外増殖倍数と相関する
複数の臨床および前臨床調査は、表現型的により若年の低分化型T細胞が、より高齢の高分化型T細胞製品と比較してより性能が優れていることを示唆する。製造データ(図1および2)に基づくと、CD28を高発現する(より若年の)開始PBMCは、生体外でより高い倍数増殖を達成してもよく、表現型的に低分化型の最終生成物をもたらしてもよい。したがって、より若く、低分化型の開始PBMCを同じ期間使用してT細胞を製造し、それらを培養してより高い倍数増殖を達成することによって、低分化型で、より強力な臨床製品を得てもよい。
【0119】
表2は、αBCMA多発性骨髄腫CARの臨床試験から、細胞培養が生体外で10倍を超える倍数増殖を達成した場合、57%の応答率があったことを示す。比較すると、培養物が10倍の倍数増殖を達成できなかった場合、0%の応答率があった。これらの観察結果は、T細胞の効力を予測する際の翻訳関連性と製造中心のモデルをさらに支持する。
【0120】
【表3】
表2:生体外製造指標は多発性骨髄腫における臨床的奏効と相関する。臨床製造からのデータを臨床的奏効率と組み合わせて、製造中に達成されたCD3+細胞の倍数増殖によって選別した。奏効率は、グループ内の患者の総数に対するPRまたはCRを達成した患者の数として計算された。PR=部分奏効、SD=安定した疾患、CR=完全奏効。
【0121】
本開示の利点としては、開始CD8+T細胞のCD28発現を測定することによる、最終CD8%、倍数増殖、およびT細胞製品の相対テロメア長の予測と、CD28+CD8+T細胞集団の開始%中のCD28発現に基づく個別化治療とが挙げられてもよい。さらに、本開示の製造は、様々な製造期間、開始細胞数、刺激条件、および異なる増殖培地で個別化されてもよい。これによって、例えば、倍数増殖などの生体外製造指標が改善されてもよく、より良い臨床転帰と相関してもよい。本開示の細胞療法製造は、患者に非常に特異的であってもよく、特定のグループは、それらの開始細胞表現型に基づいて製造に対してより良くまたはより悪く応答する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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