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特許7524214抗体コード配列をセーフハーバー遺伝子座に挿入するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】抗体コード配列をセーフハーバー遺伝子座に挿入するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240722BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240722BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240722BHJP
   A01K 67/027 20240101ALI20240722BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/13 ZNA
C12N5/10
A01K67/027
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/14
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2021558841
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2020026445
(87)【国際公開番号】W WO2020206162
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】62/828,518
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/887,885
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ハートフォード, スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, チェン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン, グオチュン
(72)【発明者】
【氏名】カラツオス, クリストス
(72)【発明者】
【氏名】ザンブロウィッツ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコポーロス, ジョージ ディー.
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/091512(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0326645(US,A1)
【文献】国際公開第2018/148196(WO,A1)
【文献】NATURE BIOTECHNOLOGY,2005年,VOL.23, No.5,pp.584-590,doi:10.1038/nbt1087
【文献】mAbs,2015年,Vol.7, No.2,pp.403-412,http://dx.doi.org/10.1080/19420862.2015.1008351
【文献】BLOOD,2015年,VOL.126, No.15,pp.1777-1784,DOI 10.1182/blood-2014-12- 615492.
【文献】Molecular Therapy,2007年,Vol.15, No.6,pp.1153-1159,doi:10.1038/sj.mt.6300142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 5/10
A01K 67/027
A61K 48/00
A61K 39/395
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 31/14
A61P 31/12
A61P 31/16
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における1つ以上の肝細胞においてアルブミン遺伝子座の第1イントロンへの抗体コード列の挿入での使用のための組成物であって、ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および抗体コード列を含む外因性ドナー核酸を含み、
前記ヌクレアーゼ剤が、前記アルブミン遺伝子座の第1イントロンにおける標的部位を標的として切断し、前記外因性ドナー核酸が前記アルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入され、
前記抗体は一本鎖抗体ではなく、
前記抗体は重鎖および別個の軽鎖を含み、
前記重鎖コード配列は、前記抗体コード列の軽鎖コード配列の上流にあり、
前記重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、前記軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含み、
前記重鎖と前記軽鎖は2Aペプチドによって連結されており、
前記2AペプチドはT2Aペプチドであり、
フューリン切断部位をコードする核酸は、記重鎖コード配列と軽鎖コード配列との間に含まれ、前記フューリン切断部位は前記2Aペプチドの上流に含まれ、
前記重鎖コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミン分泌シグナル配列に作動可能に連結されており、前記抗体コード配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、
前記挿入された抗体コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結されており、
前記抗体が前記疾患に関連する抗原を標的とする、
組成物。
【請求項2】
前記対象における抗体の発現が、前記対象における前記疾患に対して予防的または治療的効果を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
対象における疾患の治療または予防での使用のための薬学的組成物であって、ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および抗体コード列を含む外因性ドナー核酸を含み、
前記ヌクレアーゼ剤が、前記対象のアルブミン遺伝子座の第1イントロンにおける標的部位を標的として切断し、前記外因性ドナー核酸が前記対象における1つ以上の肝細胞中のアルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入され、
前記抗体は一本鎖抗体ではなく、
前記抗体は重鎖および別個の軽鎖を含み、
前記重鎖コード配列は、前記抗体コード列の軽鎖コード配列の上流にあり、
前記重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、前記軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含み、
前記重鎖と前記軽鎖は2Aペプチドによって連結されており、
前記2AペプチドはT2Aペプチドであり、
フューリン切断部位をコードする核酸は、前記重鎖コード配列と前記軽鎖コード配列との間に含まれ、前記フューリン切断部位は前記2Aペプチドの上流に含まれ、
前記重鎖コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミン分泌シグナル配列に作動可能に連結されており、前記抗体コード配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、
前記挿入された抗体コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結されており、
前記抗体が前記対象において発現され、前記疾患に関連する抗原を標的とする、
薬学的組成物。
【請求項4】
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヌクレアーゼ剤が前記クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質および前記gRNAであり、前記クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質がCas9タンパク質であり、前記gRNAが、
(a)前記標的部位を標的とするCRISPR RNA(crRNA)であって、前記標的部位はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列とすぐ隣接する、CRISPR RNA(crRNA)および
(b)トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)
を含み、任意選択で、前記gRNAが、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、
請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(I)前記抗体コード列が、非相同末端結合を介して挿入されるか、
(II)前記抗体コード列が、相同組換え修復を介して挿入されるか、
(III)前記外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まないか、
(IV)前記外因性ドナー核酸は一本鎖であるか、
(V)前記外因性ドナー核酸は二本鎖であるか、
(VI)前記外因性ドナー核酸中の前記抗体コード列が、各々の側で前記ヌクレアーゼ剤の前記標的部位に隣接し、前記ヌクレアーゼ剤が、前記抗体コード列に隣接する前記標的部位を切断し、前記アルブミン遺伝子座の前記標的部位が、前記抗体コード列が前記アルブミン遺伝子座に正しい方向で挿入された場合、もはや存在しないが、前記抗体コード列が前記アルブミン遺伝子座に反対方向に挿入された場合、再形成され、前記外因性ドナー核酸がアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達で送達され、前記抗体コード列に隣接する前記標的部位の切断が前記AAVの末端逆位配列を除去するか、または
(VII)記外因性分泌シグナル配列は、ROR1分泌シグナル配列である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(I)前記疾患関連抗原ががん関連抗原、感染症関連抗原、ウイルス抗原または細菌抗原であり、任意選択で前記細菌抗原はPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である、および/または
(II)前記抗体が和抗体であるか、または前記抗体は域中和抗体である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(1)前記ウイルス抗原がインフルエンザ血球凝集素抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
(I)前記軽鎖は、配列番号18に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号20に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号76~78に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号79~81に記載の配列に対して一の配列を含むか、もしくは
(II前記軽鎖は、配列番号126に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号128に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号129~131に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号132~134に記載の配列に対して一の配列を含むか、
(2)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
記軽鎖は、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号5に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号64~66に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号67~69に記載の配列に対して一の配列を含むか、たは
(3)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
記軽鎖は、配列番号13に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号15に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号70~72に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号73~75に記載の配列に対して一の配列を含む
請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(I)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が別個の送達ビヒクルに導入されるか、
(II)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が逐次的に導入されるか、
(III)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が同じ送達ビヒクルに一緒に導入されるか、または
(IV)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が同時に導入される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(I)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が単回投与もしくは複数回投与で導入されるか、
(II)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が静脈内注射を介して送達されるか、または
(III)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して、もしくはアデノ関連ウイルス(AAV)媒介送達を介して導入され、任意選択で、前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が両方とも、AAV媒介送達によって導入され、任意選択で、前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、2つの異なるAAVベクターによって導入される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(I)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して導入され、前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、前記Cas9が前記脂質ナノ粒子中にあり、mRNAの形態にあり、前記脂質ナノ粒子中の前記gRNAがRNAの形態にある、ならびに/または
(II)前記外因性ドナー核酸が、AAV媒介送達を介して導入され、前記AAVが一本鎖AAV(ssAAV)もしくは自己相補的AAV(scAAV)であり、任意選択で、前記AAVがAAV8もしくはAAV2/8である、
請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
(I)前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、前記gRNAおよび前記Cas9をコードするmRNAが、脂質ナノ粒子媒介送達を介し導入され、前記外因性ドナー核酸がAAV8媒介送達またはAAV2/8媒介送達を介して導入されるか、または
(II)前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、前記Cas9をコードするDNAが、第1のAAV8におけるAAV8媒介送達もしくは第1のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達を介して導入され、前記外因性ドナー核酸および前記gRNAをコードするDNAが、第2のAAV8におけるAAV8媒介送達または第2のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達を介して導入される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記対象における前記抗体の発現が、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸を導入した後、2週間、4週間、8週間、12週間、または16週間で、少なくとも2.5μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも100μg/mL、少なくとも200μg/mL、少なくとも300μg/mL、少なくとも400μg/mL、少なくとも500μg/mL、少なくとも600μg/mL、少なくとも700μg/mL、少なくとも800μg/mL、少なくとも900μg/mL、または少なくとも1000μg/mの血漿レベルをもたらす、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(I)前記対象が非ヒト哺乳類であり、任意選択で、前記非ヒト哺乳類がラットもしくはマウスであるか、または
(II)前記対象がヒトである、
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達、アデノ随伴ウイルス8(AAV8)媒介送達、またはAAV2/8媒介送達を介して送達され、
前記抗体コード列が、前記対象の1つ以上の肝細胞において非相同末端結合を介して前記アルブミン遺伝子座の前記第1イントロンに挿入され、
前記抗体が、ウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、
前記抗体が広域中和抗体である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
対象の肝細胞におけるアルブミン遺伝子座の第1イントロンへの挿入のための、抗体コード列を含む外因性ドナー核酸を含む組成物であって、
前記抗体は一本鎖抗体ではなく、
前記抗体は重鎖および別個の軽鎖を含み、
前記重鎖コード配列は、前記抗体コード列の軽鎖コード配列の上流にあり、
前記重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、前記軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含み、
前記重鎖と前記軽鎖は2Aペプチドによって連結されており、
前記2AペプチドはT2Aペプチドであり、
フューリン切断部位をコードする核酸は、前記重鎖コード配列と前記軽鎖コード配列との間に含まれ、前記フューリン切断部位は前記2Aペプチドの上流に含まれ、
前記重鎖コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミン分泌シグナル配列に作動可能に連結されており、前記抗体コード配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、
前記挿入された抗体コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結されており、
前記抗体が前記疾患に関連する抗原を標的とする、
組成物。
【請求項17】
(I)前記外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まないか、
(II)前記外因性ドナー核酸は一本鎖であるか、
(III)前記外因性ドナー核酸は二本鎖であるか、
(IV)前記外因性ドナー核酸における前記抗体コード列が、各々の側で前記ヌクレアーゼ剤の前記標的部位に隣接するか、または
(V)記外因性分泌シグナル配列は、ROR1分泌シグナル配列である、
請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
(I)前記疾患関連抗原ががん関連抗原、感染症関連抗原、ウイルス抗原もしくは細菌抗原であり、任意選択で前記細菌抗原はPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である、および/または
(II)前記抗体が和抗体であるか、または前記抗体は域中和抗体である、
請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
(1)前記ウイルス抗原がインフルエンザ血球凝集素抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
(I)前記軽鎖は、配列番号18に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号20に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号76~78に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号79~81に記載の配列に対して一の配列を含むか、もしくは
(II)前記軽鎖は、配列番号126に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号128に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号129~131に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号132~134に記載の配列に対して一の配列を含むか、
(2)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
前記軽鎖は、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号5に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号64~66に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号67~69に記載の配列に対して一の配列を含むか、または
(3)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
前記軽鎖は、配列番号13に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号15に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号70~72に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号73~75に記載の配列に対して一の配列を含む、
請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記外因性ドナー核酸が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、前記AAVが一本鎖AAV(ssAAV)または自己相補的AAV(scAAV)であり、任意選択で、前記AAVがAAV8またはAAV2/8である、請求項16~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記外因性ドナー核酸がアデノ随伴ウイルス-8(AAV8)またはAAV2/8中にあり、
前記抗体が、ウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、
前記抗体が、広域中和抗体である、
請求項16~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
インビボで非ヒト動物の1つ以上の肝細胞、またはインビトロもしくはインビボで非ヒト動物の肝細胞において、アルブミン遺伝子座の第1イントロン抗体コード列を挿入する方法であって、前記非ヒト動物の1つ以上の肝細胞または前記非ヒト動物の肝細胞に、(a)前記アルブミン遺伝子座の第1イントロンにおける標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)前記抗体コード列を含む外因性ドナー核酸を導入することを含み、
前記ヌクレアーゼ剤が前記標的部位を切断し、前記抗体コード列が前記アルブミン遺伝子座の第1イントロンへ挿入されて、改変されたアルブミン遺伝子座を生成し、
前記抗体は一本鎖抗体ではなく、
前記抗体は重鎖および別個の軽鎖を含み、
前記重鎖コード配列は、前記抗体コード列の軽鎖コード配列の上流にあり、
前記重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、前記軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含み、
前記重鎖と前記軽鎖は2Aペプチドによって連結されており、
前記2AペプチドはT2Aペプチドであり、
フューリン切断部位をコードする核酸は、前記重鎖コード配列と前記軽鎖コード配列との間に含まれ、前記フューリン切断部位は前記2Aペプチドの上流に含まれ、
前記重鎖コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミン分泌シグナル配列に作動可能に連結されており、前記抗体コード配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、
前記挿入された抗体コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結されており、
前記抗体が前記疾患に関連する抗原を標的とする、
方法。
【請求項23】
前記動物における抗体の発現が、前記動物における前記疾患に対して予防的または治療的効果を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヌクレアーゼ剤が前記クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質および前記gRNAであり、前記クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質がCas9タンパク質であり、前記gRNAが、
(a)前記標的部位を標的とするCRISPR RNA(crRNA)であって、前記標的部位はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列とすぐ隣接する、CRISPR RNA(crRNA)および
(b)トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)
を含み、任意選択で、少なくとも1つの前記gRNAが、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(I)前記抗体コード列が、非相同末端結合を介して挿入されるか、
(II)前記抗体コード列が、相同組換え修復を介して挿入されるか、
(III)前記外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まないか、
(IV)前記外因性ドナー核酸は一本鎖であるか、
(V)前記外因性ドナー核酸は二本鎖であるか、
(VI)前記外因性ドナー核酸中の前記抗体コード列が、各々の側で前記ヌクレアーゼ剤の前記標的部位に隣接し、前記ヌクレアーゼ剤が、前記抗体コード列に隣接する前記標的部位を切断し、前記アルブミン遺伝子座の前記標的部位が、前記抗体コード列が前記アルブミン遺伝子座に正しい方向で挿入された場合、もはや存在しないが、前記抗体コード列が前記アルブミン遺伝子座に反対方向に挿入された場合、再形成され、前記外因性ドナー核酸がアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達で送達され、前記抗体コード列に隣接する前記標的部位の切断が前記AAVの末端逆位配列を除去するか、または
(VII)記外因性分泌シグナル配列は、ROR1分泌シグナル配列である、
請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
(I)前記疾患関連抗原ががん関連抗原、感染症関連抗原、ウイルス抗原もしくは細菌抗原であり、任意選択で前記細菌抗原はPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である、および/または
(II)前記抗体が和抗体であるか、または前記抗体は、域中和抗体である、
請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
(1)前記ウイルス抗原がインフルエンザ血球凝集素抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
(I)前記軽鎖は、配列番号18に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号20に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号76~78に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号79~81に記載の配列に対して一の配列を含むか、もしくは、
(II前記軽鎖は、配列番号126に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号128に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号129~131に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号132~134に記載の配列に対して一の配列を含むか、たは
(2)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
記軽鎖は、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号5に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号64~66に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号67~69に記載の配列に対して一の配列を含むか、たは
(3)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
記軽鎖は、配列番号13に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号15に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号70~72に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号73~75に記載の配列に対して一の配列を含む
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(I)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が別個の送達ビヒクルに導入されるか、
(II)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が逐次的に導入されるか、
(III)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が同じ送達ビヒクルに一緒に導入されるか、または
(IV)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が同時に導入される、
請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(I)前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が単回投与もしくは複数回投与で導入されるか、
(II)前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が静脈内注射を介して送達されるか、または
(III)前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して、もしくはアデノ関連ウイルス(AAV)媒介送達を介して導入され、任意選択で、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が両方とも、AAV媒介送達によって導入され、任意選択で、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、2つの異なるAAVベクターによって導入される、
請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
(I)前記ヌクレアーゼ剤もしくは前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して導入され、前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、前記Cas9が前記脂質ナノ粒子中にあり、mRNAの形態にあり、前記脂質ナノ粒子中の前記gRNAがRNAの形態にある、ならびに/または
(II)前記外因性ドナー核酸が、AAV媒介送達を介して導入され、前記AAVが一本鎖AAV(ssAAV)もしくは自己相補的AAV(scAAV)であり、任意選択で、前記AAVがAAV8もしくはAAV2/8である、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(I)前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、前記方法が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して前記gRNAおよび前記Cas9をコードするmRNAを導入することを含み、前記外因性ドナー核酸がAAV8媒介送達もしくはAAV2/8媒介送達を介して導入されるか、または
(II)前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、前記方法が、第1のAAV8におけるAAV8媒介送達もしくは第1のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達を介して前記Cas9をコードするDNAを導入すること、および前記外因性ドナー核酸および前記gRNAをコードするDNAを、第2のAAV8におけるAAV8媒介送達または第2のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達を介して導入することを含む、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記動物における前記抗体の発現が、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸を導入した後、2週間、4週間、8週間、12週間、または16週間で、少なくとも2.5μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも100μg/mL、少なくとも200μg/mL、少なくとも300μg/mL、少なくとも400μg/mL、少なくとも500μg/mL、少なくとも600μg/mL、少なくとも700μg/mL、少なくとも800μg/mL、少なくとも900μg/mL、または少なくとも1000μg/mの血漿レベルをもたらす、請求項22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記非ヒト動物が非ヒト哺乳類であり、任意選択で、前記非ヒト哺乳類がラットまたはマウスである、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達、アデノ随伴ウイルス8(AAV8)媒介送達、またはAAV2/8媒介送達を介して送達され、
前記抗体が、ウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、
前記抗体が広域中和抗体である、
請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
アルブミン遺伝子座の第1イントロンに組み込まれた外因性抗体コード列を含む非ヒト動物の肝細胞であって、前記非ヒト動物の肝細胞は個々の動物に発生できず、
前記抗体は一本鎖抗体ではなく、
前記抗体は重鎖および別個の軽鎖を含み、
前記重鎖コード配列は、前記抗体コード列の軽鎖コード配列の上流にあり、
前記重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、前記軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含み、
前記重鎖と前記軽鎖は2Aペプチドによって連結されており、
前記2AペプチドはT2Aペプチドであり、
フューリン切断部位をコードする核酸は、前記重鎖コード配列と前記軽鎖コード配列との間に含まれ、前記フューリン切断部位は前記2Aペプチドの上流に含まれ、
前記重鎖コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミン分泌シグナル配列に作動可能に連結されており、前記抗体コード配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、
前記挿入された抗体コード配列が、前記改変されたアルブミン遺伝子座における内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結されており、
前記抗体が前記疾患に関連する抗原を標的とする、
非ヒト動物の肝細胞。
【請求項37】
記外因性分泌シグナル配列は、ROR1分泌シグナル配列である、請求項36に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項38】
前記非ヒト動物における抗体の発現が、前記非ヒト動物における前記疾患に対して予防的または治療的効果を有する、請求項36又は37に記載の非ヒト動物の肝細胞。
【請求項39】
(I)前記疾患関連抗原ががん関連抗原、感染症関連抗原、ウイルス抗原もしくは細菌抗原であり、任意選択で前記細菌抗原はPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である、および/または
(II)前記抗体が和抗体であるか、または前記抗体は域中和抗体である、
請求項36~38のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項40】
(1)前記ウイルス抗原がインフルエンザ血球凝集素抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
(I)前記軽鎖は、配列番号18に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号20に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号76~78に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号79~81に記載の配列に対して一の配列を含むか、もしくは
(II前記軽鎖は、配列番号126に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号128に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号129~131に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号132~134に記載の配列に対して一の配列を含むまたは
(2)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
記軽鎖は、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号5に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号64~66に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号67~69に記載の配列に対して一の配列を含むか、たは
(3)前記ウイルス抗原が、ジカエンベロープ(Env)抗原であり、前記抗体が鎖CDR1~3を含む軽鎖と鎖CDR1~3を含む重鎖とを含み、
記軽鎖は、配列番号13に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、前記重鎖は、配列番号15に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含み、
鎖CDR1~3がそれぞれ配列番号70~72に記載の配列に対して一の配列を含み、前記鎖CDR1~3が、それぞれ配列番号73~75に記載の配列に対して一の配列を含む
請求項39に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項41】
前記非ヒト動物が非ヒト哺乳類であり、任意選択で、前記非ヒト哺乳類がラットまたはマウスである、請求項36~40のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【請求項42】
前記抗体が、ウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、
前記抗体が広域中和抗体である、
請求項36~41のいずれか一項に記載の非ヒト動物細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月3日に出願された米国出願第62/828,518号および2019年8月16日に出願された米国出願第62/887,885号の権益を主張し、これらのそれぞれは、すべて目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表への参照
ファイル544998SEQLIST.txtに記述された配列表は186キロバイトであり、2020年4月2日に作成され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
中和抗体は、抗菌および抗ウイルス免疫において重要な役割を果たし、細菌性またはウイルス性疾患の予防または調節に役立つ。感染または能動ワクチン接種の際に免疫系によって作られた抗体は、細菌またはウイルスの表面上の容易にアクセス可能なループに焦点を合わせる傾向があり、それらはしばしば大きな配列および立体配座の変動性を有する。しかしながら、細菌またはウイルスの集団はこれらの抗体をすばやく回避することができ、抗体は機能に不可欠ではないタンパク質の部分を攻撃している。広域中和抗体はこれらの問題を克服することができるが、これらの抗体は通常遅すぎて疾患からの効果的な保護を提供できず、そのような抗体による治療は短期間の保護しか提供しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた抗原結合タンパク質のコード配列を含む動物、およびインビボで動物においてセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質のコード配列を組み込むための方法が提供される。同様に、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた抗原結合タンパク質のコード配列を含む細胞、ゲノム、または遺伝子、およびインビトロまたはインビボでの細胞、ゲノム、または遺伝子のセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質のコード配列を組み込むための方法が提供される。一態様では、インビボで動物においてセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法が提供される。いくつかのそのような方法は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物に導入することを含み、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成される。いくつかのそのような方法は、(a)セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物に導入することを含み、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成される。同様に、インビトロまたはインビボで細胞においてセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法が提供される。いくつかのそのような方法は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を細胞に導入することを含み、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成される。いくつかのそのような方法は、(a)セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を細胞に導入することを含み、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成される。別の態様では、対象(例えば、インビボの動物または細胞)内のセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入することでの使用のための、ヌクレアーゼ剤および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、ヌクレアーゼ剤は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、外因性ドナー核酸は、セーフハーバー遺伝子座に挿入される、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸が提供される。別の態様では、対象(例えば、インビボの動物または細胞)内のセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入することでの使用のための、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、ヌクレアーゼ剤は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、外因性ドナー核酸は、セーフハーバー遺伝子座に挿入される、ヌクレアーゼ剤または1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸が提供される。いくつかのそのような方法は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物または細胞に導入することを含み得、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成される。いくつかのそのような方法は、(a)セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物または細胞に導入することを含み得、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成される。別の態様では、対象(例えば、動物)における疾患の治療または予防の実施(予防)での使用のための、ヌクレアーゼ剤および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、ヌクレアーゼ剤は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、外因性ドナー核酸は、セーフハーバー遺伝子座に挿入され、抗原結合タンパク質は対象で発現し、疾患に関連する抗原を標的とする、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸が提供される。別の態様では、対象(例えば、動物)における疾患の治療または予防の実施(予防)での使用のための、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、ヌクレアーゼ剤は、対象のセーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、外因性ドナー核酸は、セーフハーバー遺伝子座に挿入され、抗原結合タンパク質は対象で発現し、疾患に関連する抗原を標的とする、ヌクレアーゼ剤または1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸が提供される。いくつかのそのような方法は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物に導入することを含み得、抗原結合タンパク質が疾患と関連する抗原を標的とし、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成され、それにより、抗原結合タンパク質は動物で発現し、疾患に関連する抗原に結合する。いくつかのそのような方法は、(a)セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物に導入することを含み得、抗原結合タンパク質は疾患と関連する抗原を標的とし、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成され、それにより、抗原結合タンパク質は動物で発現し、疾患に関連する抗原に結合する。
【0005】
いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質は、疾患関連抗原を標的とする。いくつかのそのような方法では、動物における抗原結合タンパク質の、動物における疾患に対する予防的または治療的効果を有する。別の態様では、疾患を有するか、またはそのリスクのある動物における疾患を治療または予防を実施する方法が提供される。いくつかのそのような方法は、セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物に導入することを含み得、抗原結合タンパク質が疾患と関連する抗原を標的とし、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成され、それにより、抗原結合タンパク質は動物で発現し、疾患に関連する抗原に結合する。いくつかのそのような方法は、(a)セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物に導入することを含み得、抗原結合タンパク質は疾患と関連する抗原を標的とし、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に挿入され、改変されたセーフハーバー遺伝子座が生成され、それにより、抗原結合タンパク質は動物で発現し、疾患に関連する抗原に結合する。
【0006】
いくつかのそのような方法では、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は、セーフハーバー遺伝子座の内因性プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかのそのような方法では、改変されたセーフハーバー遺伝子座は、内因性分泌シグナルおよび抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードする。
【0007】
いくつかのそのような方法では、セーフハーバー遺伝子座はアルブミン遺伝子座である。任意選択で、抗原結合タンパク質をコードする配列は、アルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入される。
【0008】
いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質をコードする配列は、動物の1つ以上の肝細胞のセーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0009】
いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である。任意選択で、ヌクレアーゼ剤は、Casタンパク質およびgRNAであり、Casタンパク質はCas9タンパク質であり、gRNAは、(a)標的部位を標的とするCRISPR RNA(crRNA)(標的部位はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列とすぐ隣接する)、および(b)トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。任意選択で、少なくとも1つのgRNAは、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0010】
いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質をコードする配列は、非相同末端結合を介して挿入される。いくつかのそのような方法では、外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まない。いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質をコードする配列は、相同組換え修復を介して挿入される。いくつかのそのような方法では、外因性ドナー核酸は一本鎖である。いくつかのそのような方法では、外因性ドナー核酸は二本鎖である。
【0011】
いくつかのそのような方法では、外因性ドナー核酸中の抗原結合タンパク質をコードする配列が、各々の側でヌクレアーゼ剤の標的部位に隣接し、ヌクレアーゼ剤が、抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する標的部位を切断する。任意選択で、セーフハーバー遺伝子座の標的部位が、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に正しい方向で挿入された場合、もはや存在しないが、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子座に反対方向に挿入された場合、再形成される。任意選択で、外因性ドナー核酸がアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達で送達され、抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する標的部位の切断がAAVの末端逆位配列を除去する。
【0012】
いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質が、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体、scFV、bis-scFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab)、二重可変ドメイン抗原結合タンパク質、単一可変ドメイン抗原結合タンパク質、二重特異性T細胞エンゲージャー(engager)、またはデイビスボディ(Davisbody)である。いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質は一本鎖抗原結合タンパク質ではない。任意選択で、抗原結合タンパク質は、重鎖と別個の軽鎖とを含み、任意選択で、重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含む。いくつかのそのような方法では、重鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の軽鎖コード配列の上流にある。任意選択で、抗原結合タンパク質をコードする配列は、軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む。いくつかのそのような方法では、軽鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の重鎖コード配列の上流にある。任意選択で、抗原結合タンパク質をコードする配列は、重鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む。いくつかのそのような方法では、外因性分泌シグナル配列は、ROR1分泌シグナル配列である。
【0013】
いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質をコードする配列は、2Aペプチドまたは配列内リボソーム進入部位(IRES)によって連結された重鎖と軽鎖をコードする。任意選択で、重鎖と軽鎖は2Aペプチドによって連結されている。任意選択で、2AペプチドはT2Aペプチドである。
【0014】
いくつかのそのような方法では、疾患関連抗原はがん関連抗原である。いくつかのそのような方法でが、疾患関連抗原は、細菌抗原などの感染症関連抗原である。任意選択で、細菌抗原はPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である。いくつかのそのような方法では、疾患関連抗原はウイルス抗原である。任意選択で、ウイルス抗原はインフルエンザ抗原またはジカ抗原である。
【0015】
いくつかのそのような方法では、ウイルス抗原はインフルエンザ血球凝集素抗原である。任意選択で、抗原結合タンパク質は、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖と3つの重鎖CDRを含む重鎖とを含み、(I)軽鎖は、配列番号18に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号20に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRがそれぞれ配列番号76~78に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3本の重鎖CDRが、それぞれ配列番号79~81に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(II)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号120に記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含み;あるいは、(III)軽鎖は、配列番号126に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号128に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号129~131に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号132~134に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(IV)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号146に記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含む。
【0016】
いくつかのそのような方法では、ウイルス抗原は、ジカエンベロープ(Env)抗原である。任意選択で、抗原結合タンパク質は、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖と3つの重鎖CDRを含む重鎖とを含み、(I)軽鎖は、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号5に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRがそれぞれ配列番号64~66に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3つの重鎖CDRがそれぞれ配列番号67~69に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(II)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号115に記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含む。任意選択で、抗原結合タンパク質は、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖と3つの重鎖CDRを含む重鎖とを含み、(I)軽鎖は、配列番号13に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号15に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRがそれぞれ配列番号70~72に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3つの重鎖CDRがそれぞれ配列番号73~75に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(II)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号116~119のうちのいずれか1つに記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含む。
【0017】
いくつかのそのような方法では、疾患関連抗原は細菌抗原である。
【0018】
いくつかのそのような方法では、抗原結合タンパク質は、中和抗原結合タンパク質または中和抗体である。任意選択で、抗原結合タンパク質は、広域中和抗原結合タンパク質または広域中和抗体である。
【0019】
いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、別々の送達ビヒクルに導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は、別個の送達ビヒクルに導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、同じ送達ビヒクルに一緒に導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は、同じ送達ビヒクルに一緒に導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は同時に導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は同時に導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、逐次的に導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は逐次的に導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、単回投与で導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は、単回投与で導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および/または外因性ドナー核酸は、複数回投与で導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および/または外因性ドナー核酸は、複数回投与で導入される。いくつかのそのような方法にでは、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、静脈内注射によって送達される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は、静脈内注射によって送達される。
【0020】
いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、脂質ナノ粒子媒介送達によって、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達によって導入される。任意選択で、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸の両方が、AAV媒介送達によって導入される。任意選択で、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸は、複数の異なるAAVベクターによって(例えば、2つの異なるAAVベクターによって)導入される。任意選択で、AAVはAAV8またはAAV2/8である。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は、脂質ナノ粒子媒介送達によって、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達によって導入される。任意選択で、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸と外因性ドナー核酸は両方とも、AAV媒介送達によって導入される。任意選択で、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸は、複数の異なるAAVベクターによって(例えば、2つの異なるAAVベクターによって)導入される。任意選択で、AAVはAAV8またはAAV2/8である。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、脂質ナノ粒子を介した送達によって導入される。任意選択で、脂質ナノ粒子は、50:38.5:10:1.5のモル比でDlin-MC3-DMA(MC3)、コレステロール、DSPC、およびPEG-DMGを含む。いくつかのそのような方法では、脂質ナノ粒子のヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である。任意選択で、Cas9はmRNAの形態であり、gRNAはRNAの形態である。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸は、脂質ナノ粒子媒介送達によって導入される。任意選択で、脂質ナノ粒子は、50:38.5:10:1.5のモル比でDlin-MC3-DMA(MC3)、コレステロール、DSPC、およびPEG-DMGを含む。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である。任意選択で、Cas9は脂質ナノ粒子にあり、mRNAの形態であり、脂質ナノ粒子にあるgRNAはRNAの形態である。
【0021】
いくつかのそのような方法では、外因性ドナー核酸は、AAV媒介送達によって導入される。任意選択で、AAVは一本鎖AAV(ssAAV)である。任意選択で、AAVは自己相補的AAV(scAAV)である。任意選択で、AAVはAAV8またはAAV2/8である。
【0022】
いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、脂質ナノ粒子媒介送達を介して導入されるクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)をコードするmRNAおよびガイドRNA(gRNA)を含み、外因性ドナー核酸は、AAV8媒介またはAAV2/8媒介送達によって導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)をコードするDNAおよびガイドRNA(gRNA)をコードするDNAを含み、Cas9をコードするDNAは、第1のAAV8におけるAAV8媒介送達または第1のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達によって導入され、gRNAをコードするDNAおよび外因性ドナー核酸は、第2のAAV8におけるAAV8媒介送達または第2のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達によって導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、方法は、脂質ナノ粒子媒介送達によってgRNAおよびCas9をコードするmRNAを導入することを含み、外因性ドナー核酸がAAV8媒介送達またはAAV2/8媒介送達によって導入される。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、方法は、第1のAAV8におけるAAV8媒介送達または第1のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達によってCas9をコードするDNAを導入することと、第2のAAV8におけるAAV8媒介送達または第2のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達によって外因性ドナー核酸およびgRNAをコードするDNAを導入することと、を含む。
【0023】
いくつかのそのような方法では、動物における抗原結合タンパク質の発現は、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、または約8週間で、少なくとも約2.5、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、または少なくとも約500μg/mLの血漿レベルをもたらす。いくつかのそのような方法では、動物における抗原結合タンパク質の発現は、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、約8週間、約12週間、または約16週間で、少なくとも約2.5μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約100μg/mL、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、少なくとも約500μg/mL、少なくとも約600μg/mL、少なくとも約700μg/mL、少なくとも約800μg/mL、少なくとも約900μg/mL、または少なくとも約1000μg/mLの血漿レベルをもたらす。
【0024】
いくつかのそのような方法では、動物は非ヒト動物である。任意選択で、動物は非ヒト哺乳動物である。任意選択で、非ヒト哺乳動物はラットまたはマウスである。いくつかのそのような方法では、動物はヒトである。
【0025】
いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー配列は、脂質ナノ粒子媒介送達、アデノ随伴ウイルス8(AAV8)媒介送達、またはAAV2/8媒介送達によって送達され、抗原結合タンパク質をコードする配列は、非相同末端結合によって、動物の1つ以上の肝細胞内で内因性アルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入され、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結され、改変されたアルブミン遺伝子座が内因性アルブミン分泌シグナルと抗原結合シグナルとを含むキメラタンパク質をコードし、抗原結合タンパク質がウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、抗原結合タンパク質が広域中和抗体であり、抗原結合タンパク質をコードする配列は、2Aペプチドによって連結された重鎖と別個の軽鎖とをコードする。任意選択で、重鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の軽鎖コード配列の上流にあり、抗原結合タンパク質をコードする配列が、軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である。
【0026】
いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー配列は、脂質ナノ粒子媒介送達、アデノ関連ウイルス8(AAV8)媒介送達、またはAAV2/8媒介送達によって送達され、抗原結合タンパク質をコードする配列は、動物の1つ以上の肝細胞内で非相同末端結合によって内因性アルブミン遺伝子座に挿入され、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は、内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結され、改変されたアルブミン遺伝子座は、内因性アルブミン分泌シグナルと抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードし、抗原結合タンパク質はウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、抗原結合タンパク質は広域中和抗体であり、抗原結合タンパク質をコードする配列は、2Aペプチドによって連結された重鎖と別個の軽鎖とをコードする。任意選択で、重鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の軽鎖コード配列の上流にあり、抗原結合タンパク質をコードする配列が、軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である。
【0027】
別の態様では、上記の方法のいずれかによって生産された動物が提供される。別の態様では、上記の方法のいずれかによって生成された細胞、改変されたゲノム、または改変されたセーフハーバー遺伝子が提供される。別の態様では、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた外因性抗原結合タンパク質をコードする配列を含む動物、細胞、またはゲノムが提供される。
【0028】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は、セーフハーバー遺伝子座の内因性プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムにおいて、改変されたセーフハーバー遺伝子座は、内因性分泌シグナルと抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードする。
【0029】
一部のそのような動物、細胞、またはゲノムでは、セーフハーバー遺伝子座はアルブミン遺伝子座である。必要に応じて、抗原結合タンパク質をコードする配列は、アルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入される。
【0030】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質をコードする配列は、動物の1つ以上の肝細胞のセーフハーバー遺伝子座に挿入される。
【0031】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質が、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体、scFV、bis-scFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab)、二重可変ドメイン抗原結合タンパク質、単一可変ドメイン抗原結合タンパク質、二重特異性T細胞エンゲージャー、またはデイビスボディである。任意選択で、抗原結合タンパク質は一本鎖抗原結合タンパク質ではない。任意選択で、抗原結合タンパク質は、重鎖と別個の軽鎖とを含み、任意選択で、重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、軽鎖コード配列は、VおよびJ遺伝子セグメントを含む。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、重鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の軽鎖コード配列の上流にある。任意選択で、抗原結合タンパク質をコードする配列は、軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、軽鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の重鎖コード配列の上流にある。任意選択で、抗原結合タンパク質をコードする配列は、重鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、外因性分泌シグナル配列は、ROR1分泌シグナル配列である。
【0032】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質をコードする配列は、2Aペプチドまたは配列内リボソーム進入部位(IRES)によって連結された重鎖と軽鎖をコードする。任意選択で、重鎖と軽鎖は2Aペプチドによって連結されている。任意選択で、2AペプチドはT2Aペプチドである。
【0033】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質は、疾患関連抗原を標的とする。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物における抗原結合タンパク質の、動物における疾患に対する予防的または治療的効果を有する。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、疾患関連抗原はがん関連抗原である。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、疾患関連抗原は感染症関連抗原である。任意選択で、疾患関連抗原はウイルス抗原である。任意選択で、ウイルス抗原はインフルエンザ抗原またはジカ抗原である。
【0034】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、ウイルス抗原はインフルエンザ血球凝集素抗原である。任意選択で、抗原結合タンパク質は、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖と3つの重鎖CDRを含む重鎖とを含み、(I)軽鎖は、配列番号18に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号20に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRがそれぞれ配列番号76~78に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3本の重鎖CDRが、それぞれ配列番号79~81に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(II)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号120に記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含み;あるいは、(III)軽鎖は、配列番号126に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号128に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号129~131に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号132~134に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(IV)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号146に記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含む。
【0035】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、ウイルス抗原は、ジカエンベロープ(Env)抗原である。任意選択で、抗原結合タンパク質は、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖と3つの重鎖CDRを含む重鎖とを含み、(I)軽鎖は、配列番号3に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号5に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRがそれぞれ配列番号64~66に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3つの重鎖CDRがそれぞれ配列番号67~69に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(II)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号115に記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含む。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質は、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖と3つの重鎖CDRを含む重鎖とを含み、(I)軽鎖は、配列番号13に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、重鎖は、配列番号15に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、任意選択で、3つの軽鎖CDRがそれぞれ配列番号70~72に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、3つの重鎖CDRがそれぞれ配列番号73~75に記載の配列に対して少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり;あるいは、(II)改変されたセーフハーバー遺伝子座は、配列番号116~119のうちのいずれか1つに記載の配列に対して少なくとも90%同一のコード配列を含む。
【0036】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、疾患関連抗原は細菌抗原である。任意選択で、細菌抗原はPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である。
【0037】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質は中和抗原結合タンパク質または中和抗体である。任意選択で、抗原結合タンパク質は、広域中和抗原結合タンパク質または広域中和抗体である。
【0038】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物における抗原結合タンパク質の発現は、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、または約8週間で、少なくとも約2.5μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約100μg/mL、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、または少なくとも約500μg/mLの血漿レベルをもたらす。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物における抗原結合タンパク質の発現は、ヌクレアーゼ剤および外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、約8週間、約12週間、または約16週間で、少なくとも約2.5μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約100μg/mL、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、少なくとも約500μg/mL、少なくとも約600μg/mL、少なくとも約700μg/mL、少なくとも約800μg/mL、少なくとも約900μg/mL、または少なくとも約1000μg/mLの血漿レベルをもたらす。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物における抗原結合タンパク質の発現が、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、または約8週間で、少なくとも約2.5μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約100μg/mL、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、または少なくとも約500μg/mLの血漿レベルをもたらす。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物における抗原結合タンパク質の発現は、ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、約8週間、約12週間、または約16週間で、少なくとも約2.5μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約100μg/mL、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、少なくとも約500μg/mL、少なくとも約600μg/mL、少なくとも約700μg/mL、少なくとも約800μg/mL、少なくとも約900μg/mL、または少なくとも約1000μg/mLの血漿レベルをもたらす。
【0039】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物は非ヒト動物である。任意選択で、動物は非ヒト哺乳動物である。任意選択で、非ヒト哺乳動物はラットまたはマウスである。いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、動物はヒトである。
【0040】
いくつかのそのような動物、細胞、またはゲノムでは、抗原結合タンパク質をコードする配列は、動物の1つ以上の肝細胞内で内因性アルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入され、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結され、改変されたアルブミン遺伝子座が内因性アルブミン分泌シグナルと抗原結合シグナルとを含むキメラタンパク質をコードし、抗原結合タンパク質がウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、抗原結合タンパク質が広域中和抗体であり、抗原結合タンパク質をコードする配列は、2Aペプチドによって連結された重鎖と別個の軽鎖とをコードする。任意選択で、重鎖コード配列は、抗原結合タンパク質をコードする配列の軽鎖コード配列の上流にあり、抗原結合タンパク質をコードする配列が、軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である。
【0041】
別の態様では、セーフハーバー遺伝子座に挿入するための抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸が提供される。別の態様では、セーフハーバー遺伝子に組み込まれた抗原結合タンパク質のコード配列を含むセーフハーバー遺伝子が提供される。別の態様では、改変されたセーフハーバー遺伝子を生成するための方法であって、セーフハーバー遺伝子を、セーフハーバー遺伝子内の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤および抗原結合タンパク質コード配列を含む外因性ドナー核酸と接触させることを含み、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がセーフハーバー遺伝子に挿入されて、改変されたセーフハーバー遺伝子を生成する、方法が提供される。別の態様では、低改変されたセーフハーバー遺伝子を生成するための方法であって、セーフハーバー遺伝子を、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸と接触させることを含み、抗原結合タンパク質をコードする配列はセーフハーバー遺伝子に挿入されて、改変されたセーフハーバー遺伝子を生成する、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】内因性アルブミン遺伝子座の第1イントロンに抗体遺伝子を挿入するための一般的な概略図を示す(原寸に比例していない)。SDはスプライスドナー部位を指し、SAはマウスアルブミン遺伝子の第1イントロン由来のスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体軽鎖(例えば、抗ジカ、REGN4504)を指し、HCは抗体重鎖(例えば、抗ジカ、REGN4504)を指し、mAlbssは内因性アルブミン遺伝子のエキソン1によってコードされるアルブミン分泌シグナルペプチドを指し、ssはマウスRor1シグナルペプチドを指し、sWPREはウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメントを指し、PolyAはSV40ポリA配列を指し、2Aはブタテッショウウイルス-1(P2A)由来の2A自己切断ペプチドを指す。
図2】脂質ナノ粒子(LNP)によるCas9 mRNAとアルブミン標的化gRNA(ガイドRNA1バージョン1(N-Cap)またはバージョン2)のマウス肝臓への送達、およびAAV2/8 AlbSA 4504抗ジカ抗体ドナー配列(P2A自己切断ペプチドによって連結された軽鎖および重鎖)の送達に続く、抗ジカ抗体のマウスアルブミン遺伝子座への挿入を試験する実験設計を示す。
図3】Cas9 mRNAおよびアルブミン標的化gRNAで構成されるLNP(ガイドRNA1バージョン1(N-Cap)またはバージョン2のいずれか)とAAV2/8 AlbSA 4504抗ジカ抗体ドナー配列との共注射後、7日目(1週目)、14日目(2週目)、および28日目(4週目)のマウスの血漿サンプルでELISAにより測定したREGN4504抗ジカ抗体(組み込まれたAAV)の発現を示す。y軸はhIgG濃度を示す。
図4】Cas9-gRNA LNPおよびAAV2/8 AlbSA4504抗ジカ抗体ドナー配列の注射後4週間目に採取された血漿サンプルにおけるジカ中和アッセイの結果を示す。陽性対照抗体(REGN4504抗ジカ抗体)の結果も示される。
図5】組み込まれたAAVによって産生された抗体のウエスタンブロット分析を示す。15番は、Cas9 mRNAとガイドRNA1v1を含むLNPを注射したマウスの1つである。17番は、Cas9 mRNAとガイドRNA1v2を含むLNPを注射したマウスの1つである。
図6】マウスアルブミン遺伝子座のイントロン1への相同性非依存性標的挿入媒介の一方向AAV-REGN4446標的挿入の概略図を示す。hU6 gRNA1は、ヒトU6プロモーターによって駆動されるガイドRNA 1v1の発現カセットである。SAはマウスアルブミン遺伝子の第1イントロン由来のスプライシングアクセプターを指し、HCは抗ジカREGN4446の重鎖を指し、フューリンはフューリン切断部位を指し、2Aは2A自己切断ペプチドを指し(口蹄疫ウイルス18(F2A)、ブタテッショウウイルス-1(P2A)、およびthosea asignaウイルス(T2A)由来の2Aが試験された)、Ssはシグナル配列を指し(この例ではマウスアルブミンシグナル配列とマウスRor1シグナル配列が試験された)、LCは抗ジカREGN4446の軽鎖を指し、WPREはウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメントを指し、PolyAはウシ成長ホルモンポリA配列を指す。AAVはCas9レディーマウスに注射された。
図7図6に示すような、アルブミン標的化gRNA(gRNA 1 v1)抗ジカ(REGN4446)抗体ドナー配列のCas9レディーマウスへのAAV2/8による送達後のマウスアルブミン遺伝子座の第1イントロンへの抗ジカ抗体(REGN4446)の挿入を試験するための実験設計を示す。ウイルスはCas9レディーマウスに静脈内注射された。抗体価、結合、および機能アッセイのために、10日目、28日目、および56日目に血清を収集した。挿入率およびmRNAレベル測定のために70日目にマウスを解体した。
図8】アルブミン標的化gRNA(gRNA1v1)および様々な抗ジカ(REGN4446)抗体ドナー配列をコードするAAVの注射後、10日目、28日目、および56日目のCas9レディーマウス由来の血漿サンプルでの4446抗ジカ抗体(組み込まれたAAV)の発現を示す。エピソームAAV(CMVおよびCASI)ならびに組み込まれたAAV(F2A/Albss、P2A/Albss、T2A/Albss、およびT2A/RORss)の結果が示される。
図9】エピソームAAV(CMV LC T2A RORss HC;CASI HC T2A RORss LC)または組み込まれたAAV(gRNA1v1 HC T2A RORss LC)から発現した抗体のウエスタンブロット分析を示す。
図10】エピソームAAV(CMV LC T2A RORss HC;CASI HC T2A RORss LC)または組み込まれたAAV(gRNA1v1 HC F2A Albss LC;gRNA1 HC P2A Albss LC;gRNA1 HC T2A Albss LC;gRNA1 HC T2A RORssLC;およびgRNA1HC T2A LC)から発現した抗体の結合能(ジカエンベロープタンパク質に対する結合)を示す。陽性対照抗体(REGN4446抗ジカ抗体)の結果も示される。
図11】エピソームAAV(CMV LC T2A RORss HC;CASI HC T2A RORss LC)または組み込まれたAAV(gRNA1v1 HC F2A Albss LC;gRNA1 HC P2A Albss LC;gRNA1 HC T2A Albss LC;gRNA1 HC T2A RORssLC;およびgRNA1HC T2A LC)から発現した抗体の中和アッセイの結果(ジカ感染)を示す。陽性対照抗体(REGN4446抗ジカ抗体)の結果も示される。
図12A】エピソームAAV(CMV LC T2A RORss HC;CASI HC T2A RORss LC)または組み込まれたAAV(F2A/Albss;P2A/Albss;T2A/Albss;およびT2A/RORss)も注射後のCas9レディーマウスの肝臓におけるインデル率を示す。
図12B】TAQMAN qPCRによって測定されたときの、Cas9レディーマウスの肝臓における、エピソームAAV(CMV LC T2A RORss HC;CASI HC T2A RORss LC)または組み込まれたAAV(F2A/Albss;P2A/Albss;T2A/Albss;およびT2A/RORss)から発現した抗体(mAlb-REGN4446)のmRNAレベルを示す。
図13】Cas9とgRNAの両方の発現カセットを担持するAAVのゲノム構造を示している。
図14】4つの異なるプロモーターによって駆動されるtRNAGln gRNA(標的遺伝子1を標的とする)およびCas9を担持するAAV2/8ウイルスの注射前と後(注射後35日目)の血清標的タンパク質1レベルを示す。
図15】1つはCas9を担持し、もう1つはgRNAと挿入テンプレートを担持する2つのAAVを注射したマウスの抗体レベルを示す。この図は、1つはアルブミン標的化gRNA(gRNA1v1)と抗ジカ(REGN4446)抗体ドナー配列(T2A/RORss)をコードし、もう1つはSerpinAPプロモーターによって駆動されるCas9配列を担持する、2つのAAVの注射後、11日目と28日目のC57BL/6マウスの血清サンプルにおける4446抗ジカ抗体(組み込まれたAAV)の発現を示す。マウスあたり2つの異なるレベルのウイルスゲノム(Dual-LowおよびDual-High)でのエピソームAAV(CASI HC T2A RORss LC)と組み込まれたAAVの結果が示される。ガイドのみの群では、Cas9配列を担持するAAVが送達されなかったため、組み込みは起きなかった。
図16】エピソームAAVまたは組み込まれたAAV(デュアルAAV実験)から発現した中和アッセイの結果(ジカ感染)を示す。
図17】脂質ナノ粒子(LNP)によるCas9 mRNAとアルブミン標的化gRNA(gRNA1v1)のマウス肝臓への送達、およびAAV2/8 AlbSA 3263抗HA抗体ドナー配列(P2A自己切断ペプチドによって連結された軽鎖と重鎖)の送達に続く、マウスアルブミン遺伝子座の第1イントロンへの抗HA(インフルエンザ血球凝集素)抗体の挿入を試験する実験設計を示す。
図18】注射後11、28、42、56、118日目に、1つがCas9を担持し、もう1つがgRNAと挿入テンプレートを担持する2つのAAVを注射したマウスのマウス血清中の循環抗体レベルを示す。エピソーム発現とCas9媒介組み込みの比較が示される。C57BL/6マウスでの実験結果を左のパネルに示し、BALB/cマウスでの実験結果を右のパネルに示す。
図19】エピソームAAVまたは組み込まれたAAV(デュアルAAV実験)から発現した抗体の結合能(ジカエンベロープタンパク質への結合)を示す。黒丸とひし形はC57BL/6マウスでの実験を表し、白丸とひし形はBALB/cマウスでの実験を表す。ナイーブマウス血清にスパイクした陽性対照抗体(REGN4446抗ジカ抗体)の結果も示される。
図20】力価、結合、抗体の質、中和のアッセイを含む、マウスアルブミン遺伝子座の第1イントロンへの抗ジカ抗体の挿入を試験するための実験計画を示す。また、この実験で共送達された2つのAAVのゲノム構造も示す。
図21】C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスにおける、エピソームAAVまたは組み込まれたAAV(デュアルAAV実験)から発現した抗体の中和アッセイの結果(ジカ感染)を示す。ナイーブマウス血清にスパイクした陽性対照抗体(REGN4446抗ジカ抗体)の結果も示される。
図22】エピソームAAVまたは組み込まれたAAV(デュアルAAV実験)から発現した抗体のインビボジカ接種実験計画を示す。
図23】以下で処理されたマウスにおけるジカウイルスによる接種の1日前のhIgG血清レベルを示す。(1)PBS(生理食塩水);(2)オフターゲット対照抗体(CAG HC T2A RORss LC)(非ジカmAB)をエピソーム発現するAAV2/8;(3)低用量(1.0E+11 VG/マウス)または(4)高用量(5.0E+11 VG/マウス)の、REGN4446抗ジカ抗体(CASI HC_T2A_RORss_LC)をエピソーム発現するAAV2/8(それぞれ、エピソーム-低用量およびエピソーム-高用量);(5)低用量(5E+11 VG/マウス/ベクター)または(6)高用量(1E+12 VG/マウス/ベクター)の2つのAAV、1つはgRNA1とREGN4446 mAb発現カセット(HC_T2A_RORss_LC)を担持し、第2のものはserpinAPプロモーターによって駆動されるCas9カセットを担持する(それぞれ挿入-低および挿入-高);あるいは(7)200μgのCHO精製REGN4446抗ジカmAB(CHO精製)。
図24A図23と同じ群であるが、感染していない対照も含むジカ接種実験の結果(生存パーセント)を示す。
図24B図24Aと同じデータを示すが、力価で並べ替えている。図の上の表の値は、ジカウイルスの接種の1日前に測定されたモノクローナル抗体のレベル(μg/mL)であり、コードは、mABテンプレートを送達したAAVのタイプ(エピソーム発現のための単一AAV、またはCas9媒介組み込みおよび低用量もしくは高用量のいずれかのためのデュアルAAVのいずれか)である。
図25】以下で処理されたマウスのhIgG血清レベルを示す。(1)PBS(生理食塩水);(2)REGN4446抗ジカ(CASI HC_T2A_RORss_LC)(エピソーム-5日目-抗ジカ);(3)H1H29339P抗PcrV(CAG HC_T2A_RORss_LC)(エピソーム-5日目-抗PcrV);(4)H1H11829N2抗HA(CAG LC_T2A_RORss_HC)(エピソーム-5日目-抗HA);(5)H1H29339P抗PcrV(HC_T2A_RORss_LC)(挿入-12日目-抗PcrV);または(6)H1H11829N2抗HA(LC_T2A_RORss_HC)(挿入-12日目-抗HA)。エピソームAAV実験はC57BL/6マウスで実施され、挿入実験はCas9レディーマウスで実施された。
図26】エピソームAAV(CAG HC_T2A_RORss_LC)または組み込まれたAAV(HC_T2A_RORss_LC)から発現した抗PcrV抗体の結合能(PcrVタンパク質への結合)を示す。精製された陽性対照抗体(H1H29339P抗PcrV抗体)の結果も示される。エピソーム抗ジカ抗体を陰性対照として使用した。
図27】細胞毒性アッセイの結果を示す。P.aeruginosa株6077PcrV媒介性細胞毒性効果は、エピソームAAV(CAG HC_T2A_RORss_LC)または組み込まれたAAV(HC_T2A_RORss_LC)から発現した抗PcrV抗体によって中和される。比較のために、PBSまたはナイーブマウス血清のいずれかで希釈したCHO精製抗PcrV抗体の結果を示す。エピソームAAV(CASI HC_T2A_RORss_LC)から発現した抗ジカ抗体を陰性対照として使用した。
図28】エピソームAAV(CAG LC_T2A_RORss_HC)または組み込まれたAAV(LC_T2A_RORss_HC)から発現した抗体の結合能(HAタンパク質への結合)を示す。精製された陽性対照抗体(H1H11829N2抗HA抗体)の結果も示される。エピソーム抗ジカ抗体を陰性対照として使用した。
図29】中和アッセイの結果を示す。インフルエンザ株H1N1A/PR/8/1934は、エピソームAAV(CAG LC_T2A_RORss_HC)または組み込まれたAAV(LC_T2A_RORss_HC)から発現した抗HA抗体によって中和される。精製された陽性対照抗体(H1H11829N2抗HA抗体)の結果も示される。精製した抗Feld1抗体および血清のみを陰性対照として使用した。
図30】エピソームAAVまたは組み込まれたAAV(デュアルAAV実験)から発現した抗体のインビボシュードモナス接種実験計画法を示している。
図31】以下で処理したマウスにおける、9日前(シュードモナスの接種の7日前)にAAVを注射したC57BL/6およびBALB/cマウスのhIgG力価を示す。(1)PBS;(2)アイソタイプ対照抗体H1H11829N2抗HA(CAG LC_T2A_RORss_HC)(抗HA)をエピソーム発現するAAV2/8;(3)低用量(1.0E+10 VG/マウス)または(4)高用量(1.0E+11 VG/マウス)のH1H29339P抗PcrV抗体(CAG HC_T2A_RORss_LC)をエピソーム発現するAAV2/8(エピソーム-低用量およびエピソーム-高)、(5)低用量(1E+11 VG/マウス/ベクター)または(6)高用量(1E+12 VG/マウス/ベクター)の2つのAAV、1つはgRNA1とH1H29339P抗PcrV mAb発現カセット(HC_T2A_RORss_LC)を担持し、第2のものはserpinAPプロモーターによって駆動されるCas9カセットを担持する(それぞれ挿入-低および挿入-高);あるいは(7)低用量(0.2mg/kg)または(8)高用量(1.0mg/kg)のCHO精製H1H29339P抗PcrV mAB(それぞれ、0.2mpk CHOおよび1.0mpk CHO)。
図32A】感染していない対照、保護されていない細菌のみの対照、保護されていないアイソタイプ対照も含む、図31のエピソーム-低(CAG低)、エピソーム-高(CAG高)、挿入-低(KI低)、挿入-図31の高(KI高)群での、C57BL/6マウスでのシュードモナス接種実験(生存パーセント)の結果を示す。
図32B】感染していない対照、保護されていない細菌のみの対照、保護されていないアイソタイプ対照も含む、図31のエピソーム-低(CAG低)、エピソーム-高(CAG高)、挿入-低(KI低)、挿入-図31の高(KI高)群での、BALB/cマウスでのシュードモナス接種実験(生存パーセント)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
本明細書で互換的に使用される、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、コードされたおよびコード化されていないアミノ酸ならびに化学的または生化学的に修飾されるかまたは誘導体化されたアミノ酸を含む、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を含む。これらの用語には、修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドなどの修飾されたポリマーが含まれる。「ドメイン」という用語は、特定の機能または構造を有するタンパク質またはポリペプチドの任意の部分を指す。
【0044】
本明細書で互換的に使用される、「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはそれらの類似体もしくは修飾バージョンを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらには、一本鎖、二本鎖、および多重鎖DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、およびプリン塩基、ピリミジン塩基、または他の天然、化学修飾、生化学修飾、非天然、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。
【0045】
「ゲノムに組み込まれた」という用語は、ヌクレオチド配列が細胞のゲノムに組み込まれるように、細胞に導入されている核酸を指す。細胞のゲノムへの核酸の安定した組み込みのために、任意のプロトコールを使用してよい。
【0046】
「発現ベクター」または「発現コンストラクト」または「発現カセット」という用語は、特定の宿主細胞または生命体における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列に作動可能に連結された所望のコード配列を含む組換え核酸を指す。原核生物での発現に必要な核酸配列には、通常、プロモーター、オペレーター(任意選択)、リボソーム結合部位、およびその他の配列が含まれる。真核細胞は一般に、プロモーター、エンハンサー、終結およびポリアデニル化シグナルを利用することが知られており、必要な発現を犠牲にすることなく、一部の要素を削除したり、他の要素を追加したりできる。
【0047】
「ターゲティングベクター」という用語は、相同組換え、非相同末端結合媒介ライゲーション、または細胞のゲノム中の標的位置への組換えの他の手段によって導入され得る組換え核酸を指す。
【0048】
「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、ウイルスベクター粒子へのパッケージングに十分な、またはそれを許容する要素を含む組換え核酸を指す。ベクターおよび/または粒子は、DNA、RNA、または他の核酸を、インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれかで細胞に導入する目的で利用することができる。ウイルスベクターの多くの形態が知られている。
【0049】
細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、タンパク質、および核酸に関して「分離された」という用語は、通常インサイチュで存在し得る他の細菌、ウイルス、細胞、または他の成分に関して比較的精製されている細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、タンパク質、および核酸、細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、タンパク質、および核酸の実質的に純粋な調製物までを含み、ならびにそれらの実質的に純粋な調製物を含む。「単離された」という用語はまた、天然に存在する対応物を有さず、化学的に合成され、それにより他の細胞、組織(例えば、肝臓サンプル)、タンパク質、および核酸が実質的に混入していないか、またはそれらに天然に付随する(例えば、他の細胞タンパク質、ポリヌクレオチド、もしくは他の成分)ほとんどの他の成分(例えば、細胞成分)から分離もしくは精製されているタンパク質および核酸も含む。
【0050】
「野生型」という用語は、(変異型、病変した、改変したなどとは対照的に)正常な状態または文脈に見られるような構造および/または活性を有する実体を指す。野生型遺伝子およびポリペプチドは、多くの場合、複数の異なる形態(例えば、対立遺伝子)で存在する。
【0051】
「内因性配列」という用語は、細胞または動物内で天然に存在する核酸配列を指す。例えば、動物の内因性アルブミン配列は、動物のアルブミン遺伝子座で天然に存在する天然のアルブミン配列を指す。
【0052】
「外因性」分子または配列には、その形態で細胞に通常は存在しない分子または配列が含まれる。通常の存在には、細胞の特定の発生段階および環境条件に関する存在が含まれる。外因性分子または配列には、例えば、細胞内の対応する内因性配列の変異バージョン、例えば、内因性配列のヒト化バージョンが含まれ得るか、または細胞内であるが、異なる形態の(すなわち、染色体内ではない)内因性配列に対応する配列が含まれ得る。対照的に、内因性分子または配列は、その形態で、特定の細胞において、特定の発生段階で、特定の環境条件下で通常存在する分子または配列を含む。
【0053】
核酸またはタンパク質の文脈で使用される場合の「異種」という用語は、核酸またはタンパク質が、同じ分子内で一緒に天然に存在しない少なくとも2つのセグメントを含むことを示す。例えば、「異種」という用語は、核酸のセグメントまたはタンパク質のセグメントに関して使用される場合、核酸またはタンパク質が、自然界で互いに同じ関係(例えば、一緒に結合されている)で見出されない2つ以上のサブ配列を含むことを示す。一例として、核酸ベクターの「異種」領域は、自然界で他の分子と関連して見出されない、別の核酸分子内の、または別の核酸分子に結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸ベクターの異種領域は、自然界でコード配列に関連して見出されない配列に隣接するコード配列を含み得る。同様に、タンパク質の「異種」領域は、自然界で他のペプチドと関連して見出されない別のペプチド分子内にあるか、または別のペプチド分子に結合したアミノ酸のセグメントである(例えば、融合タンパク質、またはタグ付きタンパク質)。同様に、核酸またはタンパク質は、異種標識または異種の分泌または局在化配列を含むことができる。
【0054】
「コドン最適化」は、アミノ酸を指定する3塩基対のコドンの組み合わせの多様性によって示されるように、コドンの縮重を利用し、一般に、天然アミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって、特定の宿主細胞における発現の増強のために核酸配列を改変するプロセスを含む。例えば、Cas9タンパク質をコードする核酸は、天然に存在する核酸配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、または他の任意の宿主細胞を含む、所与の原核細胞または真核細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。コドン使用表は、例えば「コドン使用データベース」で容易に入手できる。これらの表は、様々な方法で適合させることができる。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるNakamura et al.(2000)Nucleic Acids Research 28:292を参照されたい。特定の宿主における発現のための特定の配列のコドン最適化のためのコンピュータアルゴリズム(例えば、Gene Forgeを参照のこと)もまた利用可能である。
【0055】
「遺伝子座」という用語は、遺伝子(または重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドをコードする配列、または生物のゲノムの染色体上の位置の特定の位置を指す。例えば、「アルブミン遺伝子座」は、アルブミン遺伝子、アルブミンDNA配列、アルブミンをコードする配列、またはそのような配列が常駐すると同定されている生物のゲノムの染色体上のアルブミンの位置の特定の位置を指し得る。「アルブミン遺伝子座」は、例えば、エンハンサー、プロモーター、5’および/または3’非翻訳領域(UTR)、またはそれらの組み合わせを含む、アルブミン遺伝子の調節エレメントを含み得る。
【0056】
「遺伝子」という用語は、自然に存在する場合、少なくとも1つのコーディング領域と少なくとも1つの非コーディング領域を含む可能性のある染色体内のDNA配列を指す。産物(例えば、非限定的に、RNA産物および/またはポリペプチド産物)をコードする染色体中のDNA配列は、非コードイントロンで中断されたコード領域および5’端と3’端の両方のコード領域に隣接して位置する配列を含み得、遺伝子が全長のmRNA(5’および3’の非翻訳配列を含む)に対応するようなる。さらに、調節配列を含む他の非コード配列(例えば、非限定的に、プロモーター、エンハンサー、および転写因子結合部位)、ポリアデニル化シグナル、配列内リボソーム進入部位、サイレンサー、絶縁配列、およびマトリックス結合領域も遺伝子に存在してもよい。これらの配列は、遺伝子のコード領域に近接(例えば、非限定的に、10kb以内)してもよく、または離れていてもよく、それらは遺伝子の転写と翻訳のレベルまたは速度に影響を及ぼす。
【0057】
「対立遺伝子」という用語は、遺伝子のバリアントを指す。いくつかの遺伝子は、染色体上の同じ位置、または遺伝子座に位置する様々な異なる形態を有する。二倍体生物は、各遺伝子座に2つの対立遺伝子を有する。対立遺伝子の各ペアは、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、特定の遺伝子座に2つの同一の対立遺伝子がある場合はホモ接合であり、2つの対立遺伝子が異なる場合はヘテロ接合であると記載される。
【0058】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼIIが特定のポリヌクレオチド配列のための適切な転写開始部位でRNA合成を開始することを指示することができるTATAボックスを通常含むDNAの調節領域である。プロモーターは、転写開始速度に影響を及ぼす他の領域をさらに含み得る。本明細書に開示されるプロモーター配列は、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を調節する。プロモーターは、本明細書に開示される1つ以上の細胞型(例えば、真核細胞、非ヒト哺乳動物細胞、ヒト細胞、げっ歯類細胞、多能性細胞、一細胞期胚、分化した細胞、またはそれらの組み合わせ)において活性であり得る。プロモーターは、例えば、構成的に活性なプロモーター、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば、発生的に調節されたプロモーター)、または空間的に制限されたプロモーター(例えば、細胞特異的または組織特異的プロモーター)であり得る。プロモーターの例は、例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2013/176772において見出すことができる。
【0059】
構成的プロモーターは、すべての組織またはすべての発生段階の特定の組織で活性があるものである。構成的プロモーターの例としては、ヒトサイトメガロウイルス最初期(hCMV)、マウスサイトメガロウイルス最初期(mCMV)、ヒト伸長因子1アルファ(hEF1α)、マウス伸長因子1アルファ(mEF1α)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ニワトリベータアクチンハイブリッド(CAGまたはCBh)、SV40初期、およびベータ2チューブリンプロモーターが挙げられる。
【0060】
誘導性プロモーターの例としては、例えば、化学的に調節されたプロモーターおよび物理的に調節されたプロモーターが挙げられる。化学的に調節されるプロモーターとしては、例えば、アルコール調節プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcA)遺伝子プロモーター)、テトラサイクリン調節プロモーター(例えば、テトラサイクリン応答性プロモーター、テトラサイクリンオペレーター配列(tetO)、tet-Onプロモーター、もしくはtet-Offプロモーター)、ステロイド調節プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体、エストロゲン受容体のプロモーター、もしくはエクジソン受容体のプロモーター)、または金属調節プロモーター(例えば、金属タンパク質プロモーター)が挙げられる。物理的に調節されるプロモーターとしては、例えば、温度調節プロモーター(例えば、熱ショックプロモーター)、および光調節プロモーター(例えば、光誘導性プロモーターまたは光抑制性プロモーター)が挙げられる。
【0061】
組織特異的プロモーターは、例えば、ニューロン特異的プロモーター、グリア特異的プロモーター、筋細胞特異的プロモーター、心臓細胞特異的プロモーター、腎臓細胞特異的プロモーター、骨細胞特異的プロモーター、内皮細胞特異的プロモーター、または免疫細胞特異的プロモーター(例えば、B細胞プロモーターまたはT細胞プロモーター)であり得る。
【0062】
発生的に調節されるプロモーターとしては、例えば、発生の胚段階の間のみ、または成体細胞においてのみ活性なプロモーターが挙げられる。
【0063】
「作動可能に連結」または「作動可能に連結されている」は、近位の2つ以上の構成要素(例えば、プロモーターおよび別の配列エレメント)を含み、その両方の成分が正常に機能し、かつ構成要素の少なくとも1つが他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぶ機能を媒介し得る可能性をもたらす。例えば、プロモーターが、1つ以上の転写調節因子の存在または非存在に応じてコード配列の転写のレベルを制御する場合、そのプロモーターは、コード配列に作動可能に連結され得る。作動可能な連結は、そのような配列が相互に近接していること、またはトランスに作用する(例えば、調節配列が、コード配列の転写を制御するために離れて作用し得る)ことを含み得る。
【0064】
核酸の「相補性」とは、核酸の一方の鎖のヌクレオチド配列が、その核酸塩基群の配向のために、反対側の核酸鎖の別の配列と水素結合を形成することを意味する。DNAの相補的塩基は通常AとT、CとGである。RNAでは通常CとG、UとAである。相補性は完全または実質的/十分であり得る。2つの核酸間の完全な相補性は、2つの核酸が二重鎖を形成できることを意味し、二重鎖のすべての塩基がワトソン-クリック対形成によって相補的な塩基に結合する。「実質的」または「十分」に相補的とは、一方の鎖の配列が反対側の鎖の配列と完全におよび/または完全に相補的ではないが、2つの鎖の塩基間で十分な結合が起こり、ハイブリダイゼーション条件のセット(例えば、塩濃度と温度)で安定したハイブリッド複合体を形成することを意味する。このような条件は、配列と標準的な数学的計算を使用してハイブリダイズした鎖のTm(融解温度)を予測するか、日常的な方法を使用してTmを経験的に決定することによって予測できる。Tmは、2つの核酸鎖の間に形成されるハイブリダイゼーション複合体の集団が50%変性する(すなわち、二本鎖核酸分子の集団が一本鎖に半分解離する)温度を含む。Tmより低い温度では、ハイブリダイゼーション複合体の形成が有利であるが、Tmより高い温度では、ハイブリダイゼーション複合体中の鎖の融解または分離が有利である。他の既知のTm計算は核酸の構造的特徴を考慮するが、Tmは、例えば、Tm=81.5+0.41(G+C%)を使用することにより、1M NaCl水溶液中の既知のG+C含有量を有する核酸について推定され得る。
【0065】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的な配列を含むことを要求するが、塩基間のミスマッチも可能である。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適切な条件は、周知の変数である、核酸の長さおよび相補性の度合いに依存する。2つの核酸配列間の相補性の度合いがより大きいと、それらの配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値がより大きくなる。短い区間の相補性(例えば、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、または18以下のヌクレオチドにわたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションについて、ミスマッチの位置は、重要になる(上述のSambrook et al.の11.7~-11.8を参照)。典型的には、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の例示的な最小の長さは、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約22ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、および少なくとも約30ヌクレオチドを含む。さらに、温度および洗浄溶液の塩濃度は、相補性の領域の長さおよび相補性の度合いなどの要素に従って、必要に応じて調整され得る。
【0066】
ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズするべきその標的核酸の配列と100%相補性である必要はない。さらに、ポリヌクレオチドは、1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズし、介在するセグメント、または隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しない(例えば、ループ構造、またはヘアピン構造)ようになってもよい。ポリヌクレオチド(例えば、gRNA)は、それらが標的とされている標的核酸配列内の標的領域に対する少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の配列相補性を含み得る。例えば、20ヌクレオチドのうち18ヌクレオチドが標的領域に相補的であり、したがって特異的にハイブリダイズするであろうgRNAは、90%の相補性を表すであろう。この例において、残りの非相補性ヌクレオチドは、相補性ヌクレオチドとクラスターを形成するか、散在していてもよく、互いに、または相補性ヌクレオチドと連続的である必要はない。
【0067】
核酸内の特定の区間の核酸配列間の相補性パーセントは、BLASTプログラム(基本的なローカルアラインメント検索ツール)およびPowerBLASTプログラム(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410、Zhang and Madden(1997)Genome Res.7:649-656)またはGap program (Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を使用して(デフォルト設定を使用し、これは(Smith and Waterman(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)のアルゴリズムを使用する)、日常的に決定できる。
【0068】
本明細書で提供される方法および組成物は、様々な異なる成分を使用する。記載全体の一部の成分には、活性バリアントと断片を含めることができる。このような成分には、例えば、Casタンパク質、CRISPR RNA、tracrRNA、およびガイドRNAが含まれる。これらの成分のそれぞれの生物学的活性は、本明細書のいずこかに記載されている。「機能性」という用語は、生物学的活性または機能を示すタンパク質または核酸(またはその断片、もしくはバリアント)の生来の能力を指す。そのような生物学的活性または機能には、例えば、Casタンパク質がガイドRNAおよび標的DNA配列に結合する能力が含まれ得る。機能的断片またはバリアントの生物学的機能は、元の分子と比較して同じであるか、または実際に変更され得る(例えば、それらの特異性または選択性または有効性に関して)が、分子の基本的な生物学的機能を保持する。
【0069】
「バリアント」という用語は、集団で最も一般的な配列とは異なるヌクレオチド配列(例えば、1ヌクレオチド)、または集団で最も一般的な配列とは異なるタンパク質配列(例えば、1アミノ酸)を指す。
【0070】
「断片」という用語は、タンパク質に言及する場合、全長タンパク質よりも短いか、または少ないアミノ酸を有するタンパク質を意味する。「断片」という用語は、核酸に言及する場合、全長の核酸よりも短いか、または少ないヌクレオチドを有する核酸を意味する。断片は、例えば、N末端断片(すなわち、タンパク質のC末端の一部の除去)、C末端断片(すなわち、タンパク質のN末端の一部の除去)、または内部断片(すなわち、タンパク質のN末端とC末端のそれぞれの一部の除去)であり得る。断片は、例えば、核酸断片を指す場合、5’断片(すなわち、核酸の3’末端の一部の除去)、3’断片(すなわち、核酸の5’末端の一部の除去)、または内部断片(すなわち、核酸の5’末端と3’末端のそれぞれの一部の除去)であり得る。
【0071】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較ウィンドウで最大の一致のためにアラインさせる場合、同じである2つの配列の残基を指す。タンパク質に関して、配列同一性のパーセンテージを使用する場合、同一ではない残基位置は多くの場合に、保存的アミノ酸置換によって異なり、その保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有し、したがって、分子の機能特性を変化させない他のアミノ酸残基で置換されている。配列が保存的置換で異なる場合、配列同一性パーセントを、置換の保存的性質について補正するために、上方に調整してもよい。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。この調整を行う手段は、周知である。典型的には、これは、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコアリングして、それによって、配列同一性パーセンテージを増加させることを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換がゼロのスコアを与えられる場合に、保存的置換は、ゼロから1のスコアを与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)で実行されるように計算される。
【0072】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列(完全にマッチする残基の数が最大)を比較することによって決定される値を含み、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのための(付加また欠失を含まない)参照配列と比較した場合に、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に発生する位置の数を決定して一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数で割ること、および結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。特に明記しない限り(例えば、短い方の配列が、連結された非相同配列を含む)、比較ウィンドウは、比較される2つの配列のうちの短い方の全長である。
【0073】
特に明記しない限り、配列同一性/類似性の値は、パラメーター:50のGAP重量および3の長さ重量、およびnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用するヌクレオチド配列の同一性%および類似性%;8のGAP重量および2の長さ重量、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用するアミノ酸配列の同一性%および類似性%を使用し、GAPバージョン10またはその任意の同等のプログラムを使用して得られた値を指す。「同等のプログラム」は、問題の任意の2つの配列について、GAPバージョン10によって生成された対応するアラインメントと比較した場合、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致および同一のパーセント配列同一性を有するアラインメントを生成する任意の配列比較プログラムを含む。
【0074】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、配列中に通常存在するアミノ酸の、類似のサイズ、電荷、または極性の、異なるアミノ酸との置換を指す。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、またはロイシンなどの非極性(疎水性)残基の、別の非極性残基との置換が含まれる。同様に、保存的置換の例には、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、またはグリシンとセリンの間などの、1つの極性(親水性)残基の別のものとの置換が含まれる。加えて、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの塩基性残基から別のものへの置換、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのある酸性残基から別の酸性残基への置換は、保存的置換の追加の例である。非保存的置換の例には、非極性(疎水性)アミノ酸残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、またはメチオニンから極性(親水性)残基、例えば、システイン、グルタミン、グルタミン酸、またはリシンへの、および/または極性残基から非極性残基への置換が含まれる。典型的なアミノ酸の分類は、以下の表1に要約されている。
【0075】
【表1】
【0076】
「相同」配列(例えば、核酸配列)は、例えば、既知の参照配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるような、既知の参照配列と同一か、または実質的に同様である配列のいずれかを含む。相同配列は、例えば、オルソロガス配列およびパラロガス配列を含み得る。例えば、相同遺伝子は典型的には、種分化イベント(オルソロガス遺伝子)または遺伝子重複イベント(パラロガス遺伝子)のいずれかを介して、共通の祖先DNA配列から派生する。「オルソロガス」遺伝子には、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化した様々な種の遺伝子が含まれる。オーソログは典型的には、進化の過程で同じ機能を保持している。「パラロガス」遺伝子には、ゲノム内の重複によって関連する遺伝子が含まれる。パラログは、進化の過程で新しい機能を進化させることができる。
【0077】
「インビトロ」という用語は、人工環境、および人工環境(例えば、試験管または単離された細胞もしくは細胞株)内で生じるプロセスまたは反応を含む。「インビボ」という用語は、天然環境(例えば、細胞または生物または身体)、および天然環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。「エクスビボ」という用語は、個体の体から取り出された細胞、およびそのような細胞内で起こるプロセスまたは反応を含む。
【0078】
「レポーター遺伝子」という用語は、内因性または異種プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントに作動可能に連結されたレポーター遺伝子配列を含むコンストラクトがプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントの活性化に必要な因子を含む(または含むようにすることができる)細胞に導入される場合、容易かつ定量的にアッセイされる遺伝子産物(典型的には酵素)をコードする配列を有する核酸を指す。レポーター遺伝子の例としては、ベータガラクトシダーゼ(lacZ)をコードする遺伝子、細菌のクロランフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、ベータグルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子、および蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。「レポータータンパク質」は、レポーター遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「蛍光レポータータンパク質」という用語は、蛍光に基づいて検出可能なレポータータンパク質を意味し、ここで、蛍光は、レポータータンパク質から直接、蛍光発生基質に対するレポータータンパク質の活性、または蛍光タグ付き化合物への結合について親和性を有するタンパク質のいずれかからのものであり得る。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、エメラルド、アザミグリーン、モノメリックアザミグリーン、CopGFP、AceGFP、およびZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、シトリン、ヴィーナス、YPet、PhiYFP、およびZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、BFP、eBFP、eBFP2、アズライト、mKalamal、GFPuv、サファイア、およびTサファイア)、シアン蛍光タンパク質(例えば、CFP、eCFP、セルリアン、CyPet、AmCyanl、およびMidoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、RFP、mKate、mKate2、mPlum、DsRedモノマー、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、およびJred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomer Kusabira-Orange、mTangerine、およびtdTomato)、ならびにフローサイトメトリー法で細胞内の存在を検出できるその他の適切な蛍光タンパク質が挙げられる。
【0080】
二本鎖切断(DSB)に応答する修復は、主に2つの保存されたDNA修復経路(相同組換え(HR)と非相同末端結合(NHEJ))を介して行われる。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kasparek&Humphrey(2011)Semin.Cell Dev.Biol.22(8):886-897を参照されたい。同様に、外因性ドナー核酸によって媒介される標的核酸の修復は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換の任意のプロセスを含み得る。
【0081】
「組換え」という用語は、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報を交換する任意のプロセスを含み、任意のメカニズムによって起こり得る。組換えは、相同組換え修復(HDR)または相同組換え(HR)を介して発生する可能性がある。HDRまたはHRには、ヌクレオチド配列の相同性を必要とする可能性のある核酸修復の形式が含まれ、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)の修復のテンプレートとして「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の導入をもたらす。特定の理論に拘束されることを望まないが、そのような導入は、壊れた標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/またはドナーが標的の一部となる遺伝情報を再合成するために使用される合成依存的鎖アニーリング、および/または関連するプロセスを含み得る。場合によっては、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が標的DNAに組み込まれる。すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wang et al.(2013)Cell 153:910-918、Mandalos et al.(2012)PLoS ONE 7:e45768:1-9、およびWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530-532を参照されたい。
【0082】
非相同末端結合(NHEJ)は、相同テンプレートを必要とせずに、切断末端を互いにまたは外因性配列への直接ライゲーションによる、核酸における二本鎖切断の修復を含む。NHEJによる非隣接配列のライゲーションは、多くの場合、二本鎖切断部位の近くで欠失、挿入、または転座を引き起こす可能性がある。例えば、NHEJはまた、切断末端を外因性ドナー核酸の末端と直接ライゲーションすること(すなわち、NHEJベースの捕捉)により、外因性ドナー核酸の標的化された組み込みをもたらすことができる。このようなNHEJを介した標的組み込みは、相同組換え修復(HDR)経路が容易に使用できない場合(例えば、非分裂細胞、一次細胞、および相同性に基づくDNA修復を不十分に行う細胞)、外因性ドナー核酸の挿入に適している。さらに、相同組換え修復とは対照的に、切断部位に隣接する配列同一性の大きな領域に関する知識は必要なく、これは、ゲノム配列の知識が限られているゲノムを有する生物への標的化挿入を試みるときに有益である。組み込みは、外因性ドナー核酸と切断されたゲノム配列との間の平滑末端のライゲーションを介して、または切断されたゲノム配列のヌクレアーゼ剤によって生成されたものと互換性がある突出に隣接する外因性ドナー核酸を使用する突出末端(すなわち、5’または3’突出を有する)のライゲーションを介して進行することができる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2011/020722、WO2014/033644、WO2014/089290、およびMaresca et al.(2013)Genome Res.23(3):539-546を参照されたい。平滑末端がライゲーションされる場合、断片結合に必要なマイクロホモロジーの領域を生成するために標的および/またはドナー切除が必要になる場合があり、これにより標的配列に望ましくない変化が生じる可能性がある。
【0083】
1つ以上の列挙された要素を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物または方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含み得る。例えば、タンパク質を「含む(comprises)」または「含む(includes)」組成物は、タンパク質を単独で、または他の成分との組み合わせで含有し得る。「本質的に~からなる」という移行句は、請求項の範囲が、請求項に記載された特定の要素、および特許請求された発明の基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさない要素を包含すると解釈されることを意味する。したがって、本発明の請求項で使用される場合の「本質的に~からなる」という用語は、「含む」と同等であると解釈されることを意図するものではない。
【0084】
「任意選択的の」または「任意選択で」は、引き続いて記載された事象または状況が起こっても起こらなくてもよく、および説明が、当該事象または状況が起こる場合の例およびそれが起こらない場合の例を含むことを意味する。
【0085】
値の範囲の指定は、その範囲内の、またはその範囲を定義するすべての整数、およびその範囲内の整数によって定義されるすべての部分範囲を含む。
【0086】
文脈から特に明らかでない限り、「約」という用語は記載された値の±5である値を包含する。
【0087】
「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに代替物(「または」)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0088】
「または」という用語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを指し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0089】
冠詞「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈が別段に明確に規定していない限り、複数形の言及を含む。例えば、「タンパク質」または「少なくとも1つのタンパク質」という用語は、それらの混合物を含む複数のタンパク質を含むことができる。
【0090】
統計的に有意なとは、p≦0.05を意味する。
(発明を実施するための形態)
【0091】
I.概要
中和抗体は、抗菌および抗ウイルス免疫において重要な役割を果たし、細菌性またはウイルス性疾患の予防または調節に役立つ。このような抗体は、細胞が生物学的に持つ効果を中和することにより、抗原または感染体から細胞を防御する。
【0092】
能動ワクチン接種は、一般的にウイルス性疾患と闘うための最良のアプローチと考えられており、細菌性疾患と闘うためにも同様に使用できる。能動免疫とは、身体を抗原にさらして適応免疫応答を生成するプロセスを指す。応答が発生するまでに数日/数週間かかるが、数年続く場合がある。受動免疫とは、感染から保護するために、外因性の供給源から事前に形成された特異的抗体を提供するプロセスを指す。しかし、個人の免疫システムは刺激されていないため、免疫記憶は生成されない。その結果、受動免疫は即時であるが、短命の保護を提供する。保護は数年ではなく数日から数か月続く。受動免疫は、ワクチン接種に比べていくつかの利点がある。特に、受動免疫は、新しい薬剤耐性微生物の出現、薬物療法に反応しない疾患、および従来のワクチンに応答できない免疫系障害のある固体にとって魅力的なアプローチになっている。
【0093】
感染または能動ワクチン接種の際に免疫系によって作られた抗体は、細菌またはウイルスの表面上の容易にアクセス可能なループに焦点を合わせる傾向があり、それらはしばしば大きな配列および立体配座の変動性を有する。これは、細菌またはウイルスの集団はこれらの抗体をすばやく回避することができ、抗体は機能に不可欠ではないタンパク質の部分を攻撃するという2つの理由で問題である。例えば、HIVのようないくつかのウイルスに対する効果的なワクチンの開発への障害は、そのようなウイルスが変異して多数の準種に進化するという並外れた能力である。細菌またはウイルスの多くの株または準種を攻撃するため「広域」と呼ばれ、細菌またはウイルスの主要な機能部位を攻撃して感染を阻止するため「中和」と呼ばれる、広域中和抗体は、これらの問題を克服できる。しかしながら、これらの抗体は通常遅すぎて疾患からの効果的な保護を提供できず、そのような抗体による治療は短期間の保護しか提供しない。
【0094】
広域中和抗体などの抗原結合タンパク質のコード配列をインビボで動物のアルブミン遺伝子座などのセーフハーバー遺伝子座に組み込むための、方法および組成物が本明細書で提供される。抗原結合タンパク質をコードする配列は、一本鎖抗原結合タンパク質ではない抗原結合タンパク質を生成するために、同じセーフハーバー遺伝子座に組み込まれた重鎖コード配列および別個の軽鎖コード配列を含み得る。同様に、インビボで動物の任意のゲノム遺伝子座に広域中和抗体などの抗原結合タンパク質のコード配列を組み込むための方法および組成物が本明細書で提供される。抗原結合タンパク質をコードする配列は、一本鎖抗原結合タンパク質ではない抗原結合タンパク質を生成するために、同じゲノム遺伝子座に組み込まれた重鎖コード配列および別個の軽鎖コード配列を含み得る。そのような方法は、感染症を含む多くの疾患の治療ウィンドウに到達する高レベルの抗体発現をもたらし、典型的に、細胞あたり複数のコピーで持続するエピソームベクターによって達成される発現レベルに匹敵する。本明細書に開示される方法におけるコード配列の組み込みは、非複製エピソームが細胞分裂を通じて漸進的かつ迅速に希釈されるため、導入遺伝子の保持が非複製エピソームベクターで問題となる可能性があるため、非組み込みエピソームベクターよりも有利である。細胞分裂では、AAV DNAは細胞分裂によって希釈されるため、治療応答を継続するには、より多くのウイルスを投与する必要がある。これらのその後の曝露は、ウイルスの急速な中和をもたらし、したがって、宿主応答の低下をもたらす可能性がある。しかしながら、これらの問題は、本明細書に開示される組み込み方法が使用される場合には発生しない。本明細書に開示される方法によって達成される抗体発現のレベルは、ウイルスおよび細菌などの感染性病原体による感染から動物を保護するか、またはそのような感染性病原体による感染を治療することができる。しかしながら、方法および組成物は、ウイルスまたは細菌の抗原を標的とする治療用抗体に限定されず、他の治療用抗体も包含する。
【0095】
II.セーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入する方法
インビボで細胞または動物のセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法が本明細書で提供される。同様に、インビトロまたはエクスビボで細胞においてセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法が本明細書で提供される。同様に、インビボで細胞または動物においてゲノム遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法が本明細書で提供される。同様に、インビトロまたはエクスビボで細胞においてゲノム遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法が提供される。同様に、対象(例えば、インビボの動物または細胞)内のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入することでの使用のための、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、ヌクレアーゼ剤は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、外因性ドナー核酸は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入される、ヌクレアーゼ剤または(1つ以上の核酸)および外因性ドナー核酸が提供される。同様に、対象(例えば、インビボでの動物または細胞)のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入する際に使用するための、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、外因性ドナー核酸は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入される、外因性ドナー核酸が提供される。同様に、対象(例えば、動物)における疾患の治療または予防の実施(予防)での使用のための、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、ヌクレアーゼ剤は、対象のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、外因性ドナー核酸は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入され、抗原結合タンパク質は対象で発現し、疾患に関連する抗原を標的とする、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および外因性ドナー核酸が提供される。同様に、対象(例えば、動物)における疾患の治療または予防の実施(予防)での使用のための、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、外因性ドナー核酸は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入され、抗原結合タンパク質は対象で発現し、疾患に関連する抗原を標的とする、外因性ドナー核酸が提供される。そのような方法は、例えば、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物または細胞に導入することを含み得る。ヌクレアーゼ剤は、標的部位を切断することができ、抗原結合タンパク質をコードする配列がゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入されて、改変されたゲノム遺伝子またはセーフハーバー遺伝子座をもたらす。代替的に、そのような方法は、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を動物または細胞に導入することを含み得る。抗原結合タンパク質をコードする配列は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入され(例えば、相同組換えまたは組換えまたは挿入のための他の任意のメカニズムを介して)、改変されたゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座をもたらす。同様に、抗原結合タンパク質をコードする配列をゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子に挿入するための方法、または抗原結合タンパク質をコードする配列をゲノム遺伝子座またはゲノム内のセーフハーバー遺伝子座に挿入するための方法が提供される。そのような方法は、例えば、ゲノム遺伝子またはセーフハーバー遺伝子またはゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座を、ゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤(あるいはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸と接触させることを含み得、ヌクレアーゼ剤が標的部位を切断し、抗原結合タンパク質をコードする配列がゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座に挿入され、改変されたゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座をもたらす。代替的に、そのような方法は、ゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座を、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸と接触させることを含み得、抗原結合タンパク質をコードする配列は、ゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座に挿入され、改変されたゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座をもたらす。任意選択で、ゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座の異なる標的部位を標的とする2つ以上のヌクレアーゼ剤を使用することができる。改変されたゲノム遺伝子/遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子/遺伝子座は、抗原結合タンパク質をコードする配列についてヘテロ接合性またはホモ接合性であり得る。
【0096】
任意選択で、そのような方法は、動物における抗原結合タンパク質の発現および/または活性を評価することをさらに含むことができる。そのような方法の例は、抗原結合タンパク質(およびコード配列)の例、ヌクレアーゼ剤の種類、外因性ドナー核酸の種類、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の種類、およびそのような方法で使用できる動物の種類と同様に、本明細書のいずこかに開示されている。いくつかの方法では、動物からの血清または血漿サンプルにおける抗原結合タンパク質の発現は、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および外因性ドナー配列の注射後、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、または約6ヶ月の時点で、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約1500、少なくとも約2000、少なくとも約2500、少なくとも約3000、少なくとも約3500、少なくとも約4000、少なくとも約4500、少なくとも約5000、少なくとも約5500、少なくとも約6000、少なくとも約6500、少なくとも約7000、少なくとも約7500、少なくとも約8000、少なくとも約8500、少なくとも約9000、少なくとも約9500、少なくとも約10000、少なくとも約20000、少なくとも約30000、少なくとも約40000、少なくとも約50000、少なくとも約60000、少なくとも約70000、少なくとも約80000、少なくとも約90000、少なくとも約100000、少なくとも約110000、少なくとも約120000、少なくとも約130000、少なくとも約140000、少なくとも約150000、少なくとも約200000、少なくとも約250000、少なくとも約300000、少なくとも約350000、少なくとも約400000、少なくとも約500000、少なくとも約600000、少なくとも約700000、少なくとも約800000、少なくとも約900000、または少なくとも約1000000ng/mL(すなわち、少なくとも約0.5、少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4、少なくとも約4.5、少なくとも約5、少なくとも約5.5、少なくとも約6、少なくとも約6.5、少なくとも約7、少なくとも約7.5、少なくとも約8、少なくとも約8.5、少なくとも約9、少なくとも約9.5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約350、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、または少なくとも約1000μg/mL)である。例えば、発現は、注射後、約2週間、約4週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約13週間、約14週間、約15週間、約16週間、約17週間、約18週間、約19週間、約20週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、または約6ヶ月で、少なくとも約2500、少なくとも約5000、少なくとも約10000、少なくとも約100000、少なくとも約400000、少なくとも約500000、少なくとも約600000、少なくとも約700000、少なくとも約800000、少なくとも約900000、または少なくとも約1000000ng/mL(すなわち、少なくとも約2.5、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、または少なくとも約1500μg/mL)であり得る。抗原結合タンパク質または抗体が細菌またはウイルス抗原を標的とするいくつかの方法では、感染率は、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および外因性ドナー配列の注射後、(例えば、中和アッセイで決定される場合、)約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、または約6ヶ月の時点で、陰性対照サンプルの感染性と比較して、約95%未満、約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30未満%、約25%未満に低下する。例えば、感染性は、注射後約2週間で、約65%未満、約60%未満、または約55%未満に低下し得る。
【0097】
ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および外因性ドナー配列は、本明細書のいずこかに開示されているように、任意の送達方法(例えば、AAV、LNP、またはHDD)および任意の投与経路を介して、任意の形態(例えば、DNAまたはガイドRNAのRNA;DNA、RNA、またはCasタンパク質のタンパク質)で導入することができる。1つの具体的な例において、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)は、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達によって送達され、外因性ドナー核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達(例えば、AAV8を媒介送達またはAAV2/8媒介送達)を介して送達される。例えば、ヌクレアーゼ剤はCRISPR/Cas9であり得、Cas9 mRNAおよびゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座(例えば、アルブミンのイントロン1)を標的とするgRNAは、LNP媒介送達を介して送達され得、外因性ドナー核酸は、AAV8媒介送達またはAAV2/8媒介送達を介して送達され得る。別の具体的な例では、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と外因性ドナー核酸の両方は、AAV媒介送達を介して(例えば、2つの別々のAAV8またはAAV2/8などの2つの別個のAAVを介して)送達される。例えば、第1のAAV(例えば、AAV8またはAAV2/8)は、Cas9発現カセットを担持することができ、第2のAAV(例えば、AAV8またはAAV2/8)は、gRNA発現カセットおよび外因性ドナー核酸を担持することができる。代替的に、第1のAAV(例えば、AAV8またはAAV2/8)は、Cas9発現カセットおよびgRNA発現カセットを担持することができ、第2のAAV(例えば、AAV8またはAAV2/8)は、外因性ドナー核酸を担持することができる。U6プロモーターまたはsmall tRNA Glnなど、様々なプロモーターを使用してgRNAの発現を駆動することができる。同様に、Cas9の発現を駆動するために様々なプロモーターを使用できる。いくつかの方法では、Cas9コード配列がAAVコンストラクトに適合することができるように小さなプロモーターが使用される。そのようなプロモーターの例としては、Efs、SV40、または肝臓特異的エンハンサー(例えば、HBVウイルス由来のE2またはセルピンA遺伝子由来のセルピンA)およびコアプロモーター(例えば、本明細書に開示されたE2P合成プロモーターまたはセルピンAP合成プロモーター)を含む合成プロモーターが挙げられる。
【0098】
抗原結合タンパク質をコードする配列は、動物の特定の種類の細胞に挿入することができる。ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および外因性ドナー配列を動物に導入するための方法およびビヒクルは、動物のどのタイプの細胞が標的とされるかに影響を及ぼし得る。いくつかの方法では、例えば、抗原結合タンパク質をコードする配列は、肝細胞のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入される。ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)および外因性ドナー配列を動物に導入するための方法およびビヒクル(脂質ナノ粒子媒介送達およびAAV8媒介送達またはAAV2/8媒介送達などの肝臓を標的とする方法およびビヒクルを含む)は、本明細書のいずこかでより詳細に開示されている。
【0099】
ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座、特にアルブミンセーフハーバー遺伝子座への抗原結合タンパク質をコードする配列の標的化挿入は、複数の利点を提供する。そのような方法は、抗原結合タンパク質をコードする配列の安定した長期発現を可能にするための安定した改変をもたらす。アルブミンのセーフハーバー遺伝子座に関して、そのような方法は、天然のアルブミンエンハンサー/プロモーターの高い転写活性を利用することができる。インビボ遺伝子ターゲティングでは、修正された細胞を積極的に選択することが不可能な場合があり、限られた数の細胞をターゲティングしても、疾患の表現型を修正するのに十分な分泌タンパク質が得られない場合がある。肝臓を指向する遺伝子導入は、たとえごく一部の肝細胞しか標的にされていなくても、肝臓が大量のタンパク質を血中に分泌する能力があるため、魅力的である。
【0100】
抗原結合タンパク質をコードする配列は、外因性ドナー核酸の外因性プロモーターに作動可能に連結することができる。使用できるプロモーターのタイプの例は、本明細書のいずこかに開示されている。代替的に、抗原結合タンパク質配列は、プロモーターのない遺伝子を含むことができ、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の内因性プロモーターに作動可能に連結され得る。内因性プロモーターの使用は、外因性ドナー配列にプロモーターを含める必要がなく、例えば、AAVでは通常効率的にパッケージングされない可能性があるより大きな導入遺伝子のパッケージングを可能にするため、有利である。例えば、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列は、内因性アルブミン遺伝子座に挿入され、内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結されて、主に肝組織において高い発現レベルをもたらすことができる。
【0101】
任意選択で、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の内因性遺伝子の一部またはすべてを、抗原結合タンパク質をコードする配列の挿入時に発現させることができる。代替的に、いくつかの実施形態では、内因性ゲノム遺伝子またはセーフハーバー遺伝子のいずれも発現させることができない。一例として、改変されたゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座は、内因性分泌シグナルと抗原結合タンパク質とを含むキメラタンパク質をコードすることができる。例えば、アルブミン遺伝子の第1エキソンは、最終的なタンパク質産物から切断される分泌ペプチドをコードするため、アルブミン遺伝子座の第1イントロンを標的にすることができる。このようなシナリオでは、スプライスアクセプターと抗原結合タンパク質をコードする配列を担持するプロモーターのない抗原結合タンパク質カセットが、抗原結合タンパク質の発現と分泌をサポートする。アルブミンエキソン1と組み込まれた抗原結合タンパク質をコードする配列との間のスプライシングは、抗原結合タンパク質配列に作動可能に連結された内因性分泌ペプチドを含むキメラmRNAおよびタンパク質を作成する。
【0102】
外因性ドナー配列の抗原結合タンパク質をコードする配列は、任意の手段でゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入することができる。二本鎖切断(DSB)に応答する修復は、主に2つの保存されたDNA修復経路(相同組換え(HR)と非相同末端結合(NHEJ))を介して行われる。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kasparek&Humphrey(2011)Seminars in Cell&Dev.Biol.22:886-897を参照されたい。同様に、外因性ドナー核酸によって媒介される標的核酸の修復は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換の任意のプロセスを含み得る。
【0103】
「組換え」という用語は、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報を交換する任意のプロセスを含み、任意のメカニズムによって起こり得る。組換えは、相同組換え修復(HDR)または相同組換え(HR)を介して発生する可能性がある。HDRまたはHRには、ヌクレオチド配列の相同性を必要とする可能性のある核酸修復の形式が含まれ、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験した分子)の修復のテンプレートとして「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の導入をもたらす。特定の理論に拘束されることを望まないが、そのような導入は、壊れた標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/またはドナーが標的の一部となる遺伝情報を再合成するために使用される合成依存的鎖アニーリング、および/または関連するプロセスを含み得る。場合によっては、ドナーポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチドの一部、ドナーポリヌクレオチドのコピー、またはドナーポリヌクレオチドのコピーの一部が標的DNAに組み込まれる。すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wang et al.(2013)Cell 153:910-918、Mandalos et al.(2012)PLoS ONE 7:e45768:1-9、およびWang et al.(2013)Nat Biotechnol.31:530-532を参照されたい。
【0104】
NHEJは、相同テンプレートを必要とせずに、切断末端を互いにまたは外因性配列への直接ライゲーションによる、核酸における二本鎖切断の修復を含む。NHEJによる非隣接配列のライゲーションは、多くの場合、二本鎖切断部位の近くで欠失、挿入、または転座を引き起こす可能性がある。例えば、NHEJはまた、切断末端を外因性ドナー核酸の末端と直接ライゲーションすること(すなわち、NHEJベースの捕捉)により、外因性ドナー核酸の標的化された組み込みをもたらすことができる。このようなNHEJを介した標的組み込みは、相同組換え修復(HDR)経路が容易に使用できない場合(例えば、非分裂細胞、一次細胞、および相同性に基づくDNA修復を不十分に行う細胞)、外因性ドナー核酸の挿入に適している。さらに、相同組換え修復とは対照的に、切断部位に隣接する配列同一性の大きな領域に関する知識は必要なく、これは、ゲノム配列の知識が限られているゲノムを有する生物への標的化挿入を試みるときに有益である。組み込みは、外因性ドナー核酸と切断されたゲノム配列との間の平滑末端のライゲーションを介して、または切断されたゲノム配列のヌクレアーゼ剤によって生成されたものと互換性がある突出に隣接する外因性ドナー核酸を使用する突出末端(すなわち、5’または3’突出を有する)のライゲーションを介して進行することができる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2011/020722、WO2014/033644、WO2014/089290、およびMaresca et al.(2013)Genome Res.23(3):539-546を参照されたい。平滑末端がライゲーションされる場合、断片結合に必要なマイクロホモロジーの領域を生成するために標的および/またはドナー切除が必要になる場合があり、これにより標的配列に望ましくない変化が生じる可能性がある。
【0105】
具体的な例では、外因性ドナー核酸は、相同性に依存しない標的化された組み込み(例えば、方向性のある相同性に依存しない標的化された組み込み)を介して挿入され得る。例えば、外因性ドナー核酸の抗原結合タンパク質をコードする配列は、ヌクレアーゼ剤の標的部位が両側に隣接している(例えば、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座と同じ標的部位、および同じヌクレアーゼ剤がゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位を切断するために使用される)。次いで、ヌクレアーゼ剤は、抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する標的部位を切断することができる。具体的な例では、外因性ドナー核酸は、AAV媒介送達で送達され、抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する標的部位の切断は、AAVの末端逆位配列(ITR)を除去することができる。ITRを除去すると、繰り返された配列のために配列決定作業が妨げられる可能性があるため、成功したターゲティングの評価が容易になる。いくつかの方法では、抗原結合タンパク質をコードする配列が正しい方向でゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入された場合、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位(例えば、隣接するプロトスペーサー隣接モチーフを含むgRNA標的配列)はもはや存在しないが、抗原結合タンパク質のコード配列がゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に反対方向に挿入されると再形成される。これは、抗原結合タンパク質をコードする配列が発現のために正しい方向に挿入されることを確実にするのに役立ち得る。
【0106】
A.CRISPR/Casヌクレアーゼおよびその他のヌクレアーゼ剤
1.CRISPR/Casシステム
本明細書に開示される方法および組成物は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムまたはそのようなシステムの構成要素を利用して、細胞内のゲノム(例えば、ゲノム遺伝子座またはゲノム内のセーフハーバー遺伝子座、例えばアルブミン遺伝子座)を改変することができる。CRISPR/Casシステムには、Cas遺伝子の発現に関与する、またはその活性を指示する転写産物およびその他の要素が含まれている。CRISPR/Casシステムは、例えば、タイプI、タイプII、タイプIIIシステム、またはタイプVシステム(例えば、サブタイプV-AまたはサブタイプV-B)であり得る。本明細書に開示される方法および組成物は、核酸の部位特異的結合または切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体を形成したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによってCRISPR/Casシステムを使用することができる。
【0107】
本明細書に開示される組成物および方法で使用されるCRISPR/Casシステムは、天然に存在しなくてもよい。「天然に存在しない」システムには、システムの1つ以上の構成要素が天然に存在する状態から改変または変異されているか、自然に関連付けられている少なくとも1つの他の構成要素がないか、またはそれらが自然に関連付けられていない少なくとも1つの他の構成要素に関連付けられているなど、人間の手の関与を示すものが含まれる。例えば、一部のCRISPR/Casシステムは、天然に存在しないgRNAとCasタンパク質を含む天然に存在しないCRISPR複合体を使用するか、天然に存在しないCasタンパク質を使用するか、天然に存在しないgRNAを使用する。
【0108】
a.Casタンパク質
Casタンパク質は一般に、ガイドRNAと相互作用できる少なくとも1つのRNA認識または結合ドメインを含む。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNアーゼドメインまたはRNアーゼドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、および他のドメインを含み得る。いくつかのそのようなドメイン(例えば、DNアーゼドメイン)は、天然のCasタンパク質に由来してもよい。他のそのようなドメインを付加して、改変されたCasタンパク質を作ってもよい。ヌクレアーゼドメインは、核酸分子の共有結合の切断を含む、核酸切断のための触媒活性を有する。切断は、平滑末端または千鳥状の末端を生成してもよく、一本鎖または二本鎖であってもよい。例えば、野生型のCas9タンパク質は、通常、平滑の切断産物を生成する。代替的に、野生型Cpf1タンパク質(例えば、FnCpf1)は、5ヌクレオチドの5’突出を有する切断産物をもたらすことができ、切断は、非標的鎖のPAM配列から18番目の塩基対の後に発生し、標的鎖の23番目の塩基の後に発生する。Casタンパク質は、完全な切断活性を有し、標的ゲノム遺伝子座で二本鎖切断を作成することができ(例えば、平滑末端を持つ二本鎖切断)、またはそれは、標的ゲノム遺伝子座で一本鎖切断を作成するニッカーゼであってもよい。
【0109】
Casタンパク質の例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Csm1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、およびCu1966、ならびにそれらの相同体または改変バージョンが挙げられる。
【0110】
例示的なCasタンパク質は、Cas9タンパク質またはCas9タンパク質に由来するタンパク質である。Cas9タンパク質はタイプII CRISPR/Casシステム由来のものであり、典型的には、保存された構造を持つ4つの重要なモチーフを共有している。モチーフ1、2、4はRuvC様のモチーフで、モチーフ3はHNHモチーフである。例示的なCas9タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus種、Staphylococcus aureus、Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinaespiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptomyces viridochromogenes、Streptosporangium roseum、Streptosporangium roseum、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas種、Crocosphaera watsonii、Cyanothece種、Microcystis aeruginosa、Synechococcus種、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor becscii、Candidatus Desulforudis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter種、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、Nostoc種、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira種、Lyngbya種、Microcoleus chthonoplastes、Oscillatoria種、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanus、Acaryochloris marina、Neisseria meningitidis、またはCampylobacter jejuniに由来する。Cas9ファミリーメンバーの追加の例は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/131833に記載されている。S.pyogenes由来のCas9(SpCas9)(SwissProtアクセッション番号Q99ZW2が割り当てられている)は、例示的なCas9タンパク質である。例示的なSpCas9タンパク質配列は、配列番号62(配列番号61に示されているDNA配列によってコードされている)に示されている。例示的なSpCas9 mRNA配列は、配列番号63に示されている。S.aureus由来のCas9(SaCas9)(UniProtアクセッション番号J7RUA5が割り当てられている)は、別の例示的なCas9タンパク質である。Campylobacter jejuni由来のCas9(CjCas9)(UniProtアクセッション番号Q0P897が割り当てられている)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim et al.,(2017)Nat.Comm.8:14500を参照されたい。SaCas9はSpCas9よりも小さく、CjCas9はSaCas9とSpCas9の両方よりも小さい。Neisseria meningitidis由来のCas9(Nme2Cas9)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるEdraki et al.,(2019)Mol.Cell 73(4):714-726を参照されたい。Streptococcus thermophilus由来のCas9タンパク質(例えば、CRISPR1遺伝子座によってコードされるStreptococcus thermophilus LMD-9 Cas9(St1Cas9)またはCRISPR3遺伝子座由来のStreptococcus thermophilus(St3Cas9))は他の例示的なCas9タンパク質である。Francisella novicida由来のCas9(FnCas9)または代替PAM(E1369R/E1449H/R1556A置換)を認識するRHA Francisella novicida Cas9バリアントは、他の例示的なCas9タンパク質である。これらおよび他の例示的なCas9タンパク質は、例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cebrian-Serrano and Davies(2017)Mamm.Genome 28(7):247-261に概説される。
【0111】
Casタンパク質の別の例は、Cpf1(PrevotellaおよびFrancisella 1由来のCRISPR)タンパク質である。Cpf1は、Cas9の対応するドメインに相同なRuvC様ヌクレアーゼドメインと、Cas9の特徴的なアルギニンリッチクラスターに対応するものを含む大きなタンパク質(約1300アミノ酸)である。しかしながら、Cpf1はCas9タンパク質に存在するHNHヌクレアーゼドメインを欠いており、HNHドメインを含む長いインサートを含むCas9とは対照的に、RuvC様ドメインはCpf1配列に隣接している。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zetsche et al.(2015)Cell 163(3):759-771を参照されたい。例示的なCpf1タンパク質は、Francisella tularensis 1、Francisella tularensis亜種、novicida、Prevotella albensis、Lachnospiraceae細菌MC2017 1、Butyrivibrio proteoclasticus、Peregrinibacteria細菌GW2011_GWA2_33_10、Parcubacteria細菌GW2011_GWC2_44_17、Smithella種SCADC、Acidaminococcus種BV3L6、Lachnospiraceae細菌MA2020、Candidatus Methanoplasma termitum、Eubacterium eligens、Moraxella bovoculi 237、Leptospira inadai、Lachnospiraceae細菌ND2006、Porphyromonas crevioricanis 3、Prevotella disiens、およびPorphyromonas macacaeに由来する。Francisella novicida U112由来のCpf1(FnCpf1;割り当てられたUniProtアクセッション番号A0Q7Q2)は、例示的なCpf1タンパク質である。
【0112】
Casタンパク質は、野生型タンパク質(すなわち、天然に存在するもの)、改変されたCasタンパク質(すなわち、Casタンパク質バリアント)、または野生型または改変されたCasタンパク質の断片であり得る。Casタンパク質はまた、野生型または改変されたCasタンパク質の触媒活性に関して、活性なバリアントまたは断片であり得る。触媒活性に関する活性なバリアントまたは断片は、野生型または修飾されたCasタンパク質またはその一部に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含み得、活性なバリアントは、所望の切断部位で切断する能力を保持し、したがってニック誘導または二本鎖切断誘導活性を保持する。ニック誘導または二本鎖切断誘導活性のアッセイは知られており、一般に、切断部位を含むDNA基質上のCasタンパク質の全体的な活性および特異性を測定する。
【0113】
改変されたCasタンパク質の一例は、改変されたSpCas9-HF1タンパク質であり、非特異的DNA接触を減らすように設計された改変(N497A/R661A/Q695A/Q926A)を含むStreptococcus pyogenesのCas9の忠実度の高いバリアントである。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kleinstiver et al.(2016)Nature 529(7587):490-495を参照されたい。改変されたCasタンパク質の別の例は、オフターゲット効果を低減するように設計された改変されたeSpCas9バリアント(K848A/K1003A/R1060A)である。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Slaymaker et al.(2016)Science 351(6268):84-88を参照されたい。他のSpCas9バリアントには、K855AおよびK810A/K1003A/R1060Aが含まれる。これらおよび他の改変されたCas9タンパク質は、例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cebrian-Serrano and Davies(2017)Mamm.Genome 28(7):247-261に概説される。改変されたCas9タンパク質の別の例はxCas9であり、これは拡張された範囲のPAM配列を認識できるSpCas9バリアントである。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hu et al.(2018)Nature 556:57-63を参照されたい。
【0114】
Casタンパク質は、核酸結合親和性、核酸結合特異性、および酵素活性のうちの1つ以上を増加または減少させるように改変することができる。Casタンパク質は、安定性など、タンパク質の他の活性または特性を変更するように改変することもできる。例えば、Casタンパク質の1つ以上のヌクレアーゼドメインを改変、欠失、または不活性化することができ、またはCasタンパク質を短縮して、タンパク質の機能に必須ではないドメインを除去するか、またはCasタンパク質の活性または特性を最適化(例えば、増強または低減)することができる。
【0115】
Casタンパク質は、DNアーゼドメインなどの少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含むことができる。例えば、野生型Cpf1タンパク質は、一般に、おそらく二量体構成で、標的DNAの両方の鎖を切断するRuvC様ドメインを含む。Casタンパク質は、DNアーゼドメインなどの少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを含むこともできる。例えば、野生型Cas9タンパク質は一般にRuvC様ヌクレアーゼドメインとHNH様ヌクレアーゼドメインを含む。RuvCドメインとHNHドメインはそれぞれ、二本鎖DNAの異なる鎖を切断して、DNAに二本鎖切断を行うことができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Jinek et al.(2012)Science 337(6096):816-821を参照されたい。
【0116】
ヌクレアーゼドメインの1つ以上またはすべてを欠失または変異させることで、それらがもはや機能しなくさせたり、ヌクレアーゼ活性が低下させたりすることができる。例えば、Cas9タンパク質でヌクレアーゼドメインの1つが欠失または変異している場合、結果として得られるCas9タンパク質はニッカーゼと呼ばれ、二本鎖標的DNA内で一本鎖切断を生成できるが、二本鎖切断は生成できない(すなわち、相補鎖または非相補鎖を切断できるが、両方を切断することはできない)。両方のヌクレアーゼドメインが欠失または変異した場合、結果として得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力が低下する(例えば、ヌクレアーゼヌルもしくはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質、または触媒作用が破壊されているCasタンパク質(dCas))。Cas9をニッカーゼに変換する変異の例は、S.pyogenes由来のCas9のRuvCドメインにおけるD10A(Cas9の位置10でアスパラギン酸からアラニン)変異である。同様に、S.pyogenes由来のCas9のHNHドメインにあるH939A(アミノ酸位置839でのヒスチジンからアラニン)、H840A(アミノ酸位置840でのヒスチジンからアラニン)、またはN863A(アミノ酸位置N863でのヒスチジンからアラニン)はCas9をニッカーゼに変換できる。Cas9をニッカーゼに変換する変異の他の例には、S.thermophilus由来のCas9への対応する変異が含まれる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sapranauskas et al.(2011)Nucleic Acids Res.39(21):9275-9282およびWO2013/141680を参照されたい。このような変異は、部位特異的変異導入、PCR媒介変異導入、または全遺伝子合成などの方法を使用して生成することができる。ニッカーゼを作成する他の変異の例は、例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2013/176772およびWO2013/142578に見出すことができる。Casタンパク質においてすべてのヌクレアーゼドメインが欠失または変異している(例えば、Cas9タンパク質において両方のヌクレアーゼドメインが欠失または変異している)場合、結果として生じるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力が低下する(例えば、ヌクレアーゼヌル、またはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質)。1つの具体的な例は、D10A/H840AのS.pyogenesのCas9の二重変異体、またはS.pyogenesのCas9と最適に整列した場合の別の種由来のCas9の対応する二重変異体である。別の具体的な例は、D10A/N863AのS.pyogenesのCas9の二重変異体、またはS.pyogenesのCas9と最適に整列した場合の別の種由来のCas9の対応する二重変異体である。
【0117】
xCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例は、SpCas9について前述したものと同じである。Staphylococcus aureusのCas9タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている。例えば、Staphylococcus aureusのCas9酵素(SaCas9)は、位置N580での置換(例えば、N580A置換)および位置D10での置換(例えば、D10A置換)を含み得、ヌクレアーゼ不活性Casタンパク質をもたらす。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/106236を参照されたい。Nme2Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている(例えば、D16AとH588Aの組み合わせ)。St1Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている(例えば、D9A、D598A、H599A、およびN622Aの組み合わせ)。St3Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている(例えば、D10AとN870Aの組み合わせ)。CjCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている(例えば、D8AとH559Aの組み合わせ)。FnCas9およびRHA FnCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている(例えば、N995A)。
【0118】
Cpf1タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている。Francisella novicida U112(FnCpf1)、Acidaminococcus種BV3L6(AsCpf1)、Lachnospiraceae細菌ND2006(LbCpf1)、およびMoraxella bovoculi 237(MbCpf1 Cpf1)由来のCpf1タンパク質を参照すると、このような変異には、AsCpf1の908、993、もしくは1263の位置、またはCpf1オーソログの対応する位置、またはLbCpf1の832、925、947、もしくは1180の位置、またはCpf1オーソログの対応する位置が含まれ得る。そのような変異は、例えば、AsCpf1の変異D908A、E993A、およびD1263AまたはCpf1オーソログの対応する変異、またはLbCpf1のD832A、E925A、D947A、およびD1180AまたはCpf1オーソログの対応する変異のうちの1つ以上を含み得る。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0208243を参照されたい。
【0119】
Casタンパク質はまた、融合タンパク質として異種ポリペプチドに作動可能に連結することができる。例えば、Casタンパク質は切断ドメインまたはエピジェネティック修飾ドメインに融合させることができる。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/089290を参照されたい。Casタンパク質は、安定性の増加または減少を提供する異種ポリペプチドに融合することもできる。融合ドメインまたは異種ポリペプチドは、Casタンパク質のN末端、C末端、または内部に位置してもよい。
【0120】
一例として、Casタンパク質は、細胞内局在化を提供する1つ以上の異種ポリペプチドに融合してもよい。そのような異種ポリペプチドは、例えば、核を標的とするための単一部分SV40 NLSおよび/または二部分アルファインポーチンNLSなどの1つ以上の核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリアを標的とするためのミトコンドリア局在化シグナル、ER保持シグナルなどを含んでもよい。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.282(8):5101-5105を参照されたい。このような細胞内局在化シグナルは、Casタンパク質のN末端、C末端、または任意の場所に位置してもよい。NLSは、塩基性アミノ酸の区間を含むことができ、一部分配列または二部分配列であってよい。任意選択で、Casタンパク質は、N末端にNLS(例えば、アルファ-インポーチンNLSまたは単一部分NLS)およびC末端にNLS(例えば、SV40 NLSまたは二部分NLS)を含む2つ以上のNLSを含んでもよい。Casタンパク質はまた、N末端に2つ以上のNLSおよび/またはC末端に2つ以上のNLSを含み得る。
【0121】
Casタンパク質は、細胞透過性ドメインまたはタンパク質導入ドメインに作動可能に連結してもよい。例えば、細胞透過性ドメインは、HIV-1 TATタンパク質、ヒトB型肝炎ウイルス由来のTLM細胞透過性モチーフ、MPG、Pep-1、VP22、単純ヘルペスウイルス由来の細胞透過性ペプチド、またはポリアルギニンペプチド配列に由来してもよい。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2014/089290およびWO2013/176772を参照されたい。細胞透過性ドメインは、Casタンパク質のN末端、C末端、または任意の場所に配置し得る。
【0122】
Casタンパク質はまた、追跡または精製を容易にするために、蛍光タンパク質、精製タグ、またはエピトープタグなどの異種ポリペプチドに作動可能に連結してもよい。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、エメラルド、アザミグリーン、モノメリックアザミグリーン、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、シトリン、ヴィーナス、YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、eBFP、eBFP2、アズライト、mKalamal、GFPuv、サファイア、Tサファイア)、シアン蛍光タンパク質(例えば、eCFP、セルリアン、CyPet、AmCyanl、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRedモノマー、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomer Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomatoなど)、およびその他の適切な蛍光タンパク質が挙げられる。タグの例としては、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、血球凝集素(HA)、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、ヒスチジン(His)、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)、およびカルモジュリンが挙げられる。
【0123】
Casタンパク質は、標識された核酸またはドナー配列に係留してもよい。そのような係留(すなわち、物理的結合)は、共有相互作用または非共有相互作用を介して達成することができ、係留は、直接(例えば、タンパク質またはインテイン修飾上のシステインまたはリジン残基の修飾によって達成することができる直接融合または化学的結合を介して)、またはストレプトアビジンまたはアプタマーなどの1つ以上の介在するリンカーまたはアダプター分子を介して達成することができる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pierce et al.(2005)Mini Rev.Med.Chem.5(1):41-55、Duckworth et al.(2007)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.46(46):8819-8822、Schaeffer and Dixon(2009)Australian J.Chem.62(10):1328-1332、Goodman et al.(2009)Chembiochem.10(9):1551-1557、およびKhatwani et al.(2012)Bioorg.Med.Chem.20(14):4532-4539を参照されたい。タンパク質-核酸コンジュゲートを合成するための非共有戦略には、ビオチン-ストレプトアビジンおよびニッケル-ヒスチジン法が含まれる。共有結合タンパク質-核酸コンジュゲートは、様々な化学物質を使用して適切に機能化された核酸とタンパク質を接続することによって合成できる。これらの化学物質のいくつかは、タンパク質表面のアミノ酸残基(例えば、リジンアミンまたはシステインチオール)へのオリゴヌクレオチドの直接結合を含むが、他のより複雑なスキームは、タンパク質の翻訳後修飾または触媒もしくは反応性タンパク質ドメインの関与を必要とする。タンパク質の核酸への共有結合の方法には、例えば、オリゴヌクレオチドのタンパク質リジンまたはシステイン残基への化学的架橋、発現されたタンパク質ライゲーション、化学酵素的方法、および光アプタマーの使用が含まれ得る。標識された核酸またはドナー配列は、Casタンパク質のC末端、N末端、または内部領域に係留されていてもよい。一例では、標識された核酸またはドナー配列は、Casタンパク質のC末端またはN末端に係留される。同様に、Casタンパク質は、標識された核酸またはドナー配列の5’末端、3’末端、または内部領域に係留されていてもよい。すなわち、標識された核酸またはドナー配列は、任意の方向および極性で係留してもよい。例えば、Casタンパク質は、標識された核酸またはドナー配列の5’末端または3’末端に係留されていてもよい。
【0124】
Casタンパク質は任意の形態で提供してもよい。例えば、Casタンパク質は、gRNAと複合体を形成したCasタンパク質などのタンパク質の形態で提供してもよい。代替的に、Casタンパク質は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))またはDNAなどの、Casタンパク質をコードする核酸の形態で提供してもよい。任意選択で、Casタンパク質をコードする核酸は、特定の細胞または生物におけるタンパク質への効率的な翻訳のためにコドン最適化してもよい。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。Casタンパク質をコードする核酸が細胞に導入されると、Casタンパク質は、一過性に、条件付きで、または構成的に細胞内で発現され得る。
【0125】
mRNAとして提供されるCasタンパク質は、安定性および/または免疫原性の特性を改善するために修飾することができる。修飾は、mRNA内の1つ以上のヌクレオシドに対して行うことができる。mRNA核酸塩基への化学修飾の例には、シュードウリジン、1-メチル-シュードウリジン、および5-メチル-シチジンが含まれる。例えば、N1-メチルシュードウリジンを含むキャップされポリアデニル化されたCas mRNAを使用することができる。同様に、Cas mRNAは、同義のコドンを使用してウリジンを枯渇させることによって修飾することができる。
【0126】
Casタンパク質をコードする核酸は、細胞のゲノムに安定して組み込まれ、細胞内で活性のあるプロモーターに作動可能に連結することができる。代替的に、Casタンパク質をコードする核酸は、発現コンストラクト中のプロモーターに作動可能に連結され得る。発現コンストラクトは、遺伝子または他の目的の核酸配列(例えば、Cas遺伝子)の発現を指示することができ、そのような目的の核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸コンストラクトを含む。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、gRNAをコードするDNAを含むベクター内に存在してもよい。代替的に、それは、gRNAをコードするDNAを含むベクターとは別のベクターまたはプラスミドであってもよい。発現コンストラクトにおいて使用することができるプロモーターとしては、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生が制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、または1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであってよい。任意選択で、プロモーターは、一方向のCasタンパク質と他の方向のガイドRNAの両方の発現を駆動する双方向プロモーターであってもよい。このような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(DSE)、近位配列要素(PSE)、およびTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、ならびに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSEおよびTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターで構成してもよい。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSEとTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSEおよびTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0074535を参照されたい。双方向プロモーターを使用してCasタンパク質とガイドRNAをコードする遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0127】
様々なプロモーターを使用して、Cas発現またはCas9発現を駆動できる。いくつかの方法では、CasまたはCas9コード配列がAAVコンストラクトに適合することができるように小さなプロモーターが使用される。そのようなプロモーターの例としては、Efs、SV40、または肝臓特異的エンハンサー(例えば、HBVウイルス由来のE2またはセルピンA遺伝子由来のセルピンA)およびコアプロモーター(例えば、E2P合成プロモーターまたはセルピンAP合成プロモーター)を含む合成プロモーターが挙げられる。
【0128】
b.ガイドRNA
「ガイドRNA」または「gRNA」は、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)に結合し、Casタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子である。ガイドRNAは、「DNA標的化セグメント」と「タンパク質結合セグメント」の2つのセグメントで構成できる。「セグメント」は、RNA中のヌクレオチドの連続したストレッチなどの、分子のセクションまたは領域を含む。Cas9用などの一部のgRNAは、「アクチベーター-RNA」(例えば、tracrRNA)と「ターゲッター-RNA」(例えば、CRISPR RNAまたはcrRNA)の2つの別個のRNA分子を含むことができる。他のgRNAは単一RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)であり、これは「単一分子gRNA」、「単一ガイドRNA」、または「sgRNA」と呼ばれることもある。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2013/176772、WO2014/065596、WO2014/089290、WO2014/093622、WO2014/099750、WO2013/142578、およびWO2014/131833を参照されたい。例えば、Cas9の場合、シングルガイドRNAは、tracrRNAに(例えば、リンカーを介して)融合したcrRNAを含むことができる。例えば、Cpf1の場合、標的配列への結合を実現するために必要なのはcrRNAだけである。「ガイドRNA」および「gRNA」という用語は、二重分子(すなわち、モジュラー)gRNAおよび単一分子gRNAの両方を含む。
【0129】
例示的な2分子gRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」または「ターゲッターRNA」または「crRNA」または「crRNAリピート」)分子および対応するtracrRNA様(「トランス作用性CRISPR RNA」または「アクチベーター-RNA」または「tracrRNA」)分子を含む。crRNAは、gRNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)と、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成するヌクレオチドの区間の両方を含む。DNA標的化セグメントの下流(3’)に位置するcrRNAテールの例は、GUUUUAGAGCUAUGCU(配列番号51)を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。本明細書に開示されるDNA標的化セグメントのいずれも、配列番号51の5’末端に結合して、crRNAを形成することができる。
【0130】
対応するtracrRNA(アクチベーター-RNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の残りの半分を形成するヌクレオチドの区間を含む。crRNAのヌクレオチドの区間は、tracrRNAのヌクレオチドの区間と相補的であり、ハイブリダイズして、gRNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二重鎖を形成する。そのようなとき、各crRNAは対応するtracrRNAを有すると言える。例示的なtracrRNA配列は、AGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU(配列番号52)、AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(配列番号121)、またはGUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(配列番号122)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0131】
crRNAとtracrRNAの両方が必要なシステムでは、crRNAと対応するtracrRNAがハイブリダイズして、gRNAを形成する。crRNAのみが必要なシステムでは、crRNAはgRNAであってもよい。crRNAはさらに、標的DNAの相補鎖にハイブリダイズする一本鎖DNA標的化セグメントを提供する。細胞内での修飾に使用する場合、特定のcrRNAまたはtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が使用される種に特異的になるように設計できる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mali et al.(2013)Science 339(6121):823-826、Jinek et al.(2012)Science 337(6096):816-821、Hwang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31(3):227-229、Jiang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31(3):233-239、およびCong et al.(2013)Science 339(6121):819-823を参照されたい。
【0132】
所与のgRNAのDNA標的化セグメント(crRNA)は、以下により詳細に記載されるように、標的DNAの相補鎖上の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。gRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的に標的DNAと相互作用する。そのようなとき、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変動してもよく、gRNAおよび標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。対象のgRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズするように改変することができる。天然に存在するcrRNAは、CRISPR/Casシステムと生物によって異なるが、21から46ヌクレオチドの長さの2つのダイレクトリピート(DR)が隣接する、21から72ヌクレオチドの長さの標的化セグメントをしばしば含む(例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2014/131833を参照されたい)。S.pyogenesの場合、DRは36ヌクレオチド長であり、標的化セグメントは30ヌクレオチド長である。3’に位置するDRは、対応するtracrRNAに相補的であり、ハイブリダイズし、転じて、tracrRNAはCasタンパク質に結合する。
【0133】
DNA標的化セグメントは、例えば、少なくとも約12、15、17、18、19、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さを有してもよい。そのようなDNA標的化セグメントは、例えば、約12~約100、約12~約80、約12~約50、約12~約40、約12~約30、約12~約25、または約12~約20ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、DNA標的化セグメントは約15~約25ヌクレオチド(例えば、約17~約20ヌクレオチド、または約17、18、19、または20ヌクレオチド)であってよい。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0024523を参照されたい。S.pyogenes由来のCas9の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、16~20ヌクレオチド長、または17~20ヌクレオチド長である。S.aureus由来のCas9の場合、典型的なDNA標的化セグメントは21~23ヌクレオチド長である。Cpf1の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、少なくとも16ヌクレオチド長または少なくとも18ヌクレオチド長である。
【0134】
tracrRNAは、任意の形態(例えば、完全長tracrRNAまたは活性部分tracrRNA)であってよく、様々な長さであってよい。それらは、一次転写物または処理された形態を含んでもよい。例えば、tracrRNA(単一ガイドRNAの一部として、または2分子gRNAの一部としての別個の分子として)は、野生型tracrRNA配列(例えば、野生型tracrRNA配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、またはそれ以上のヌクレオチド)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。S.pyogenes由来の野生型tracrRNA配列の例には、171ヌクレオチド、89ヌクレオチド、75ヌクレオチド、および65ヌクレオチドのバージョンが含まれる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Deltcheva et al.(2011)Nature 471(7340):602-607、WO2014/093661を参照されたい。シングルガイドRNA(sgRNA)内のtracrRNAの例には、sgRNAの+48、+54、+67、および+85バージョン内にあるtracrRNAセグメントが含まれ、「+n」は、野生型tracrRNAの最大+nヌクレオチドがsgRNAに含まれていることを示す。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、US8,697,359を参照されたい。
【0135】
ガイドRNAのDNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であってよい。DNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、約20個の連続するヌクレオチドにわたって少なくとも60%であってよい。一例として、DNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の5’末端にある14個の連続するヌクレオチドに対して100%であってよく、そして残りの部分に対して0%まで低くてもよい。このような場合、DNA標的化セグメントは14ヌクレオチドの長さであるとみなすことができる。別の例として、DNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の5’末端にある7個の連続するヌクレオチドに対して100%であってよく、そして残りの部分に対して0%まで低くてもよい。このような場合、DNA標的化セグメントは7ヌクレオチドの長さであるとみなすことができる。一部のガイドRNAでは、DNA標的化セグメント内の少なくとも17個のヌクレオチドが標的DNAの相補鎖に相補的である。例えば、DNA標的化セグメントは20ヌクレオチド長であり、標的DNAの相補鎖との1、2、または3個のミスマッチを含んでもよい。一例では、ミスマッチは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に対応する相補鎖(すなわち、PAM配列の逆相補体)の領域に隣接していない(例えば、ミスマッチは、ガイドRNAのDNA標的化セグメントの5’末端にあるか、またはミスマッチは、PAM配列に対応する相補鎖の領域から少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19塩基対離れている)。
【0136】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的な2つのヌクレオチドの区間を含むことができる。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドはハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA)を形成する。対象のgRNAのタンパク質結合セグメントはCasタンパク質と相互作用し、gRNAは結合したCasタンパク質をDNA標的化セグメントを介して標的化DNA内の特定のヌクレオチド配列に誘導する。
【0137】
シングルガイドRNAは、DNA標的化セグメントと足場配列(すなわち、ガイドRNAのタンパク質結合またはCas結合配列)を含んでもよい。例えば、そのようなガイドRNAは、3’足場配列に結合した5’DNA標的化セグメントを有してもよい。例示的な足場配列は、以下を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる:GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU(バージョン1;配列番号53);GUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン2;配列番号54);GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン3;配列番号55);GUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン4;配列番号56);およびGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU(バージョン5;配列番号57);GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(バージョン6;配列番号123);またはGUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUU(バージョン7;配列番号124)。本明細書に開示されるガイドRNA標的配列のいずれかを標的とするガイドRNAは、例えば、ガイドRNAの3’末端の例示的なガイドRNA足場配列のいずれかに融合したガイドRNAの5’末端のDNA標的化セグメントを含んでもよい。すなわち、本明細書に開示されるDNA標的化セグメントのいずれも、上述の足場配列のうちのいずれかの5’末端に結合して、単一ガイドRNA(キメラガイドRNA)を形成することができる。
【0138】
ガイドRNAは、追加の望ましい特徴(例えば、改変または調節された安定性;細胞内標的化;蛍光標識による追跡;タンパク質またはタンパク質複合体の結合部位など)を提供する改変または配列を含み得る。そのような改変の例としては、例えば、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G));3’ポリアデニル化テール(すなわち、3’ポリ(A)テール);リボスイッチ配列(例えば、タンパク質および/またはタンパク質複合体による調節された安定性および/または調節されたアクセス可能性を可能にするため);安定性制御シーケンス;dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列;RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する改変または配列;追跡を提供する改変または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進する部分への結合、蛍光検出を可能にする配列など);タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する改変または配列、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。改変の他の例には、操作されたステムループ二重構造、操作されたバルジ領域、ステムループ二重構造の3’の操作されたヘアピン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2015/0376586を参照されたい。バルジは、crRNA様領域と最小のtracrRNA様領域で構成される二重鎖内のヌクレオチドの対になっていない領域であり得る。バルジは、二重鎖の片側に、対になっていない5’-XXXY-3’を含むことができる。ここで、Xは任意のプリンであり、Yは反対側の鎖のヌクレオチドおよび二重鎖の反対側の対になっていないヌクレオチドとゆらぎ塩基対を形成できるヌクレオチドであり得る。
【0139】
修飾されていない核酸は分解されやすい可能性がある。外因性の核酸はまた、自然免疫応答を誘発する可能性がある。修飾は、安定性を導入し、免疫原性を低下させるのに役立つ。ガイドRNAは、例えば、以下のうちの1つ以上を含む修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドを含むことができる:(1)ホスホジエステル骨格結合における、非結合リン酸酸素の1つもしくは両方および/または結合リン酸酸素の1つ以上の改変もしくは置換;(2)リボース糖の2’ヒドロキシルの改変または置換などのリボース糖の構成要素の改変または置換;(3)リン酸部分の脱リン酸化リンカーによる置換;(4)天然に存在する核酸塩基の修飾または置換;(5)リボース-リン酸骨格の置換または修飾;(6)オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端の修飾(例えば、末端リン酸基の除去、修飾、もしくは置換、または部分の結合);ならびに(7)糖の修飾。他の可能なガイドRNA修飾には、ウラシルまたはポリウラシルトラクトの修飾または置換が含まれる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2015/048577およびUS2016/0237455を参照されたい。同様の改変を、Cas mRNAなどのCasをコードする核酸に加えることができる。例えば、Cas mRNAは、同義のコドンを使用してウリジンを枯渇させることによって修飾することができる。
【0140】
一例として、ガイドRNAの5’または3’末端のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含んでもよい(例えば、塩基は、ホスホロチオエート基である修飾リン酸基を有してもよい)。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’または3’末端の2、3、または4個の末端ヌクレオチド間のホスホロチオエート結合を含んでもよい。別の例として、ガイドRNAの5’および/または3’末端のヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾を有してもよい。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’および/または3’末端(例えば、5’末端)の2、3、または4個の末端ヌクレオチドに2’-O-メチル修飾を含んでもよい。例えば、すべての目的のためにぞれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2017/173054A1およびFinn et al.(2018)Cell Rep.22(9):2227-2235を参照されたい。1つの具体的な例において、ガイドRNAは、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。別の具体的な例では、ガイドRNAは、Cas9タンパク質と相互作用しないすべての2’OH基が2’-O-メチル類似体に置き換えられ、Cas9と最小限の相互作用をゆするガイドRNAのテール領域は、5’および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合で修飾されている。さらに、DNA標的化セグメントは、一部の塩基に2’-フルオロ修飾を有する。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yin et al.(2017)Nat.Biotech.35(12):1179-1187を参照されたい。改変されたガイドRNAの他の例は、例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2018/107028A1に提供されている。そのような化学修飾は、例えば、エキソヌクレアーゼからのより優れた安定性および保護をガイドRNAに提供して、それらが未修飾のガイドRNAよりも長く細胞内に存続することを可能にする。このような化学修飾は、例えば、RNAを積極的に分解したり、細胞死をもたらす免疫カスケードを引き起こしたりする可能性のある自然免疫応答から保護することもできる。
【0141】
ガイドRNAはどのような形態で提供してもよい。例えば、gRNAは、2つの分子(別個のcrRNAとtracrRNA)または1つの分子(sgRNA)のいずれかとして、または任意選択でCasタンパク質との複合体の形態で、RNAの形態で提供してもよい。gRNAはまた、gRNAをコードするDNAの形態で提供してもよい。gRNAをコードするDNAは、単一のRNA分子(sgRNA)または別個のRNA分子(例えば、別個のcrRNAとtracrRNA)をコードしてもよい。後者の場合、gRNAをコードするDNAは、1つのDNA分子として、またはそれぞれcrRNAとtracrRNAをコードする別個のDNA分子として提供してもよい。
【0142】
gRNAがDNAの形態で提供される場合、gRNAは一過性、条件付き、または構成的に細胞内で発現してもよい。gRNAをコードするDNAは、細胞のゲノムに安定して組み込まれ、細胞内で活性のあるプロモーターに作動可能に連結してもよい。代替的に、gRNAをコードするDNAは、発現コンストラクトのプロモーターに作動可能に連結してもよい。例えば、gRNAをコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸などの異種核酸を含むベクター内にあってもよい。代替的に、それは、Casタンパク質をコードする核酸を含むベクターとは別のベクターまたはプラスミドにあってもよい。そのような発現コンストラクトにおいて使用することができるプロモーターとしては、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生が制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、または1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであってよい。そのようなプロモーターはまた、例えば、双方向プロモーターであってよい。適切なプロモーターの具体例としては、ヒトU6プロモーター、ラットU6ポリメラーゼIIIプロモーター、またはマウスU6ポリメラーゼIIIプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターが挙げられる。別の例では、small tRNA Glnを使用して、ガイドRNAの発現を駆動してもよい。
【0143】
代替的に、gRNAは他の様々な方法で調製してもよい。例えば、gRNAは、例えば、T7 RNAポリメラーゼを使用するインビトロ転写によって調製してもよい(例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2014/089290およびWO2014/065596を参照されたい)。ガイドRNAは、化学合成によって調製された合成分子にしてもよい。例えば、ガイドRNAを化学的に合成して、2’-O-メチル類似体および最初の3個の5’および3’末端RNA残基に3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含めてもよい。
【0144】
ガイドRNA(またはガイドRNAをコードする核酸)は、1個以上のガイドRNA(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上のガイドRNA)と、ガイドRNAの安定性を増加させる(例えば、所定の保存条件下(例えば、-20℃、4℃、または周囲温度)で、分解産物が閾値未満、例えば出発核酸またはタンパク質の0.5重量%未満のままである期間を延長する、あるいはインビボでの安定性を増加させる)担体と、を含む組成物であり得る。そのような担体の非限定的な例としては、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D、L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質渦巻状物、および脂質微小管が挙げられる。そのような組成物は、Cas9タンパク質などのCasタンパク質、またはCasタンパク質をコードする核酸をさらに含んでもよい。
【0145】
c.ガイドRNA標的配列
ガイドRNAの標的DNAには、結合に十分な条件が存在する場合に、gRNAのDNA標的化セグメントが結合するDNAに存在する核酸配列が含まれる。適切なDNA/RNA結合条件には、細胞に通常存在する生理学的条件が含まれる。他の適切なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当該技術分野で知られている(例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)を参照されたい)。gRNAに相補的でハイブリダイズする標的DNAの鎖は「相補的鎖」と呼ぶことができ、「相補的鎖」に相補的である(したがってCasタンパク質またはgRNAに相補的ではない)標的DNAの鎖は、「非相補鎖」または「テンプレート鎖」と呼ぶことができる。
【0146】
標的DNAは、ガイドRNAがハイブリダイズする相補鎖上の配列と非相補鎖上の対応する配列(例えば、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する)の両方を含む。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「ガイドRNA標的配列」という用語は、ガイドRNAが相補鎖上でハイブリダイズする配列に対応する(すなわち、その逆相補体)非相補鎖上の配列を具体的に指す。すなわち、ガイドRNA標的配列は、PAMに隣接する非相補的鎖上の配列(例えば、Cas9の場合、PAMの上流または5’)を指す。ガイドRNA標的配列はガイドRNAのDNA標的化セグメントと同等であるが、ウラシルの代わりにチミンを使用している。一例として、SpCas9酵素のガイドRNA標的配列は、非相補鎖上の5’-NGG-3’PAMの上流の配列を参照することができる。ガイドRNAは、標的DNAの相補鎖に対して相補性を持つように設計されており、ガイドRNAのDNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖とのハイブリダイゼーションにより、CRISPR複合体の形成が促進される。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性が存在するならば、完全な相補性は必要とは限らない。ガイドRNAが本明細書でガイドRNA標的配列を標的とするものとして言及される場合、それは、ガイドRNAが、非相補鎖上のガイドRNA標的配列の逆相補体である標的DNAの相補鎖配列にハイブリダイズすることを意味する。
【0147】
標的DNAまたはガイドRNA標的配列は、任意のポリヌクレオチドを含むことができ、例えば、細胞の核または細胞質内、あるいはミトコンドリアまたは葉緑体などの細胞の細胞小器官内に位置することができる。標的DNAまたはガイドRNA標的配列は、細胞に対して内因性または外因性の任意の核酸配列であってよい。ガイドRNA標的配列は、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列または非コード配列(例えば、調節配列)であってよく、または両方を含んでもよい。
【0148】
Casタンパク質による標的DNAの部位特異的結合および切断は、(i)ガイドRNAと標的DNAの相補鎖との間の塩基対形成相補性と、(ii)標的DNAの非相補鎖にあるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフとの両方によって決定される位置で起こり得る。PAMはガイドRNA標的配列に隣接することができる。任意選択で、ガイドRNA標的配列の3’末端にPAMを隣接させることができる(例えば、Cas9の場合)。代替的に、ガイドRNA標的配列の5’末端にPAMを隣接させることができる(例えば、Cpf1の場合)。例えば、Casタンパク質の切断部位は、PAM配列の上流または下流(例えば、ガイドRNA標的配列内)の約1~約10または約2~約5塩基対(例えば、3塩基対)であり得る。SpCas9の場合、PAM配列(すなわち、非相補鎖上)は5’-NGG-3’であってよく、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、PAMは標的DNAの非相補鎖上のガイドRNA標的配列のすぐ3’にある。したがって、相補鎖(すなわち、逆相補鎖)上のPAMに対応する配列は5’-CCN-3’であり、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、ガイドRNAのDNA標的化セグメントが標的DNAの相補鎖にハイブリダイズする配列のすぐ5’にある。いくつかのこのような場合には、NおよびNは相補的であってよく、N-N塩基対は、任意の塩基対であってよい(例えば、N=CかつN=G、N=GかつN=C、N=AかつN=T、またはN=TかつN=A)。S.aureus由来のCas9の場合、PAMはNNGRRTまたはNNGRRであり得、NはA、G、C、またはTであり、RはGまたはAであり得る。C.jejuni由来のCas9の場合、PAMは、例えば、NNNNACACまたはNNNNRYACであり得、NはA、G、C、またはTであり、RはGまたはAであり得る。場合によっては(例えば、FnCpf1の場合)、PAM配列は5’末端の上流にあり、配列5’-TTN-3’を有し得る。
【0149】
ガイドRNA標的配列の例は、SpCas9タンパク質によって認識されるNGGモチーフの直前の20ヌクレオチドのDNA配列である。例えば、ガイドRNA標的配列+PAMの2つの例は、GN19NGG(配列番号58)またはN20NGG(配列番号59)である。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/165825を参照されたい。5’末端のグアニンは、細胞内のRNAポリメラーゼによる転写を促進することができる。ガイドRNA標的配列およびPAMの他の例は、インビトロでのT7ポリメラーゼによる効率的な転写を促進するために、5’末端に2つのグアニンヌクレオチドを含み得る(例えば、GGN20NGG;配列番号60)。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/065596を参照されたい。他のガイドRNA標的配列およびPAMは、5’GまたはGGおよび3’GGまたはNGGを含む、配列番号58~60の4~22ヌクレオチド長を有してもよい。さらに他のガイドRNA標的配列およびPAMは、配列番号58~60の14~20ヌクレオチド長を有してもよい。
【0150】
アルブミン遺伝子を標的とするガイドRNAは、例えば、アルブミン遺伝子の第1のイントロン、またはアルブミン遺伝子の第1のイントロンに隣接する配列(例えば、アルブミン遺伝子の第1のエキソンまたは第2のエキソン)を標的とすることができる。
【0151】
標的DNAにハイブリダイズしたCRISPR複合体の形成は、ガイドRNA標的配列(すなわち、標的DNAの非相補鎖上、およびガイドRNAがハイブリダイズする相補鎖の逆相補体上のガイドRNA標的配列)に対応する領域内またはその近くの標的DNAの一方または両方の鎖の切断をもたらし得る。例えば、切断部位は、ガイドRNA標的配列内にあり得る(例えば、PAM配列に対して定義された位置に)。「切断部位」は、Casタンパク質が一本鎖切断または二本鎖切断を生成する標的DNAの位置を含む。切断部位は、一本鎖のみ(例えば、ニッカーゼが使用される場合)または二本鎖DNAの両方の鎖上にあり得る。切断部位は、両方の鎖の同じ位置にあってもよく(平滑末端を生成する;例えばCas9))、または各鎖の異なる部位にあってもよい(千鳥状の末端(すなわち、突出)を生成する;例えば、Cpf1)。千鳥状の末端は、例えば、それぞれが異なる鎖の異なる切断部位で一本鎖切断を生成し、それによって二本鎖切断を生成する2つのCasタンパク質を使用することによって生成することができる。例えば、第1のニッカーゼは二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖に一本鎖切断を作成でき、第2のニッカーゼはdsDNAの第2の鎖に一本鎖切断を作成して突出配列を作成できる。場合によっては、第1の鎖のガイドRNA標的配列またはニッカーゼ切断部位は、第2の鎖のガイドRNA標的配列またはニッカーゼ切断部位から少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、または1,000塩基対離れている。
【0152】
2.その他のヌクレアーゼ剤およびヌクレアーゼ剤の標的配列
所望の標的配列においてニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤を、本明細書に開示される方法および組成物で使用することができる。ヌクレアーゼ剤が所望の標的配列でニックまたは二本鎖切断を誘導する限り、天然に存在するか、または天然のヌクレアーゼ剤を使用することができる。代替的に、改変または操作されたヌクレアーゼ剤を使用することができる。「操作されたヌクレアーゼ剤」は、その天然の形態から操作された(改変または誘導された)ヌクレアーゼを含み、所望の標的配列においてニックまたは二本鎖切断を特異的に認識および誘導する。したがって、操作されたヌクレアーゼ剤は、天然の天然に存在するヌクレアーゼ剤から誘導することができ、または人工的に作成または合成することができる。操作されたヌクレアーゼは、例えば、標的配列においてニックまたは二本鎖切断を誘導することができ、標的配列は、天然の(非操作または非修飾)ヌクレアーゼ剤によって認識されたであろう配列ではない。ヌクレアーゼ剤の修飾は、タンパク質切断剤中のわずか1アミノ酸または核酸切断剤中の1ヌクレオチドであってよい。標的配列または他のDNAにおいてニックまたは二本鎖切断を生成することは、本明細書では、標的配列または他のDNAを「切断する(cutting)」または「切断する(cleaving)」と呼ぶことができる。
【0153】
例示された標的配列の活性バリアントおよび断片も提供される。そのような活性バリアントは、所与の標的配列に対して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有していてもよく、活性バリアントは生物活性を保持し、したがって、配列特異的な方法でヌクレアーゼ剤によって認識および切断されることができる。ヌクレアーゼ剤によって標的配列の二本鎖切断を測定するアッセイは、当該技術分野で知られている(例えば、TAQMAN(登録商標)のqPCRアッセイ、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるFrendewey et al.(2010)Methods in Enzymology 476:295-307)。
【0154】
ヌクレアーゼ剤の標的配列は、標的遺伝子座の中または近くのどこであってもよい。標的配列は、遺伝子のコード領域内、または遺伝子の発現に影響を及ぼす調節領域内に位置してもよい。ヌクレアーゼ剤の標的配列は、イントロン、エキソン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または任意の非タンパク質コード領域に位置してもよい。代替的に、標的配列は、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド内に位置してもよい。そのような位置は、選択マーカーのコード領域内または調節領域内に位置することができ、これらは選択マーカーの発現に影響を及ぼす。したがって、ヌクレアーゼ剤の標的配列は、選択マーカーのイントロン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または選択マーカーをコードするポリヌクレオチドの任意の非タンパク質コード領域に位置してもよい。標的配列でのニックまたは二本鎖切断は、選択マーカーの活性を破壊してもよく、機能的選択マーカーの存在または非存在をアッセイする方法が知られている。
【0155】
ヌクレアーゼ剤の1つの種類は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。TALエフェクターヌクレアーゼは、原核生物または真核生物のゲノム内の特定の標的配列で二本鎖切断を行うために使用できる配列特異的ヌクレアーゼのクラスである。TALエフェクターヌクレアーゼは、天然または操作された転写活性化因子様(TAL)エフェクター、またはその機能的部分を、例えば、FokIなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに融合することによって作成される。独自のモジュラーTALエフェクターDNA結合ドメインにより、特定のDNA認識特異性を備えたタンパク質の設計が可能になる。したがって、TALエフェクターヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、特定のDNA標的部位を認識するように操作することができ、したがって、所望の標的配列で二本鎖切断を行うために使用することができる。すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2010/079430;Morbitzer et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107(50):21617-21622、Scholze&Boch(2010)Virulence 1:428-432、Christian et al.Genetics(2010)186:757-761、Li et al.(2010)Nucleic Acids Res.(2010)doi:10.1093/nar/gkq704、およびMiller et al.(2011)Nat.Biotechnol.29:143-148を参照されたい。
【0156】
適切なTALヌクレアーゼの例、および適切なTALヌクレアーゼを調製するための方法は、例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2011/0239315A1、US2011/0269234A1、US2011/0145940A1、US2003/0232410A1、US2005/0208489A1、US2005/0026157A1、US2005/0064474A1、US2006/0188987A1、およびUS2006/0063231A1に開示されている。様々な実施形態では、例えば、目的の遺伝子座または目的のゲノム遺伝子座において標的核酸配列内またはその近くを切断するTALエフェクターヌクレアーゼが操作され、ここで、標的核酸配列は、ターゲティングベクターによって改変される配列またはその近くにある。本明細書で提供される様々な方法および組成物での使用に適したTALヌクレアーゼには、本明細書に記載の標的ベクターによって改変される標的核酸配列またはその近くに結合するように特別に設計されたものが含まれる。
【0157】
一部のTALENでは、TALENの各モノマーは、2つの超可変残基を介して単一の塩基対を認識する33~35のTALリピートを含む。一部のTALENでは、ヌクレアーゼ剤は、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立したヌクレアーゼに作動可能に連結されたTALリピートベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は、第1のTALリピートベースのDNA結合ドメインおよび第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインを含むことができ、第1および第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインのそれぞれは、FokIヌクレアーゼに作動可能に連結され、第1および第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインは、様々な長さ(12~20bp)のスペーサー配列によって分離された標的DNA配列の各鎖における2つの隣接する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、標的配列で二本鎖切断を行う活性ヌクレアーゼを作成する。
【0158】
本明細書に開示される様々な方法および組成物で使用されるヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をさらに含むことができる。一部のZFNでは、ZFNの各モノマーは3つ以上のジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含み、各ジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインは3bpのサブサイトに結合する。他のZFNでは、ZFNは、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立したヌクレアーゼに作動可能に連結されたジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は、第1のZFNおよび第2のZFNを含むことができ、第1および第2のZFNのそれぞれは、FokIヌクレアーゼサブユニットに作動可能に連結され、第1および第2のZFNは、約5~7bpのスペーサーで分離された標的DNA配列の各鎖における2つの隣接する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、二本鎖切断を行う活性ヌクレアーゼを生成する。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2006/0246567、US2008/0182332、US2002/0081614、US2003/0021776、WO/2002/057308A2、US2013/0123484、US2010/0291048、WO/2011/017293A2、およびGaj et al.(2013)Trends Biotechnol.,31(7):397-405を参照されたい。
【0159】
ヌクレアーゼ剤(すなわち、操作されたヌクレアーゼ剤)の活性バリアントおよび断片も提供される。そのような活性バリアントは、天然のヌクレアーゼ剤に対して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有していてもよく、活性バリアントは、所望の標的配列で切断する能力を保持し、したがって、ニックまたは二本鎖切断誘導活性を保持する。例えば、本明細書に記載のヌクレアーゼ剤のいずれも、天然エンドヌクレアーゼ配列から改変し、天然ヌクレアーゼ剤によって認識されなかった標的配列でニックまたは二本鎖切断を認識および誘導するように設計してもよい。したがって、いくつかの操作されたヌクレアーゼは、対応する天然のヌクレアーゼ剤標的配列とは異なる標的配列でニックまたは二本鎖切断を誘導する特異性を有する。ニックまたは二本鎖切断誘導活性のためのアッセイは知られており、一般に、標的配列を含むDNA基質上のエンドヌクレアーゼの全体的な活性および特異性を測定する。
【0160】
ヌクレアーゼ剤は、当該技術分野で知られている任意の手段によって細胞に導入してもよい。ヌクレアーゼ剤をコードするポリペプチドは、細胞に直接導入してもよい。代替的に、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入してもよい。ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドが細胞に導入されると、ヌクレアーゼ剤は、細胞内で一過性に、条件付きで、または構成的に発現され得る。したがって、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれ得、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターに作動可能に連結され得る。目的のそのようなプロモーターは、本明細書のいずこかでさらに詳細に論じられている。代替的に、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼ剤をコードするmRNAとして細胞に導入される。
【0161】
ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、細胞のゲノムに安定して組み込まれ、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、ターゲッテングベクター(例えば、挿入ポリヌクレオチドを含むターゲッテングベクター、または挿入ポリヌクレオチドを含むターゲッテングベクターとは別のベクターもしくはプラスミド)にあってよい。
【0162】
ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドの導入によりヌクレアーゼ剤が細胞に提供される場合、ヌクレアーゼ剤をコードするそのようなポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチド配列と比較して、目的の細胞においてより高い使用頻度を有するコドンを置換するように改変され得る。例えば、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞を含む所与の原核細胞または真核細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。
【0163】
「ヌクレアーゼ剤の標的配列」という用語は、ヌクレアーゼ剤によってニックまたは二本鎖切断が誘導されるDNA配列を含む。ヌクレアーゼ剤の標的配列は、細胞に対して内因性(または天然)であり得るか、または標的配列は、細胞に対して外因性であり得る。細胞にとって外因性である標的配列は、細胞のゲノム内で天然に存在しない。標的配列はまた、標的遺伝子座に配置されることを望む目的のポリヌクレオチドに対して外因性であり得る。場合によっては、標的配列は宿主細胞のゲノムに一度だけ存在する。
【0164】
標的配列の長さは変動してもよく、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)対の場合は約30~36bp(すなわち、各ZFNについて約15~18bp)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の場合は約36bp、またはCRISPR/Cas9ガイドRNAの場合は約20bpの標的配列を含む。
【0165】
B.外因性ドナー核酸および抗原結合タンパク質をコードする配列
1.外因性ドナー核酸
本明細書に開示される方法および組成物は、外因性ドナー核酸を利用して、Casタンパク質などのヌクレアーゼ剤による標的ゲノム遺伝子座の切断に続いて、標的ゲノム遺伝子座(例えば、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座)を改変する。
【0166】
このような方法では、Casタンパク質が標的ゲノム遺伝子座を切断して一本鎖切断(ニック)または二本鎖切断を作成し、切断またはニックの入った遺伝子座が非相同末端結合(NHEJ)媒介ライゲーションまたは相同組換え修復を介して外因性ドナー核酸によって修復される。任意選択で、外因性ドナー核酸による修復は、ヌクレアーゼ標的配列を除去または破壊し、その結果、標的化された対立遺伝子は、ヌクレアーゼ剤によって再標的化され得ない。
【0167】
外因性ドナー核酸は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座、例えばアルブミン遺伝子座の任意の配列を標的にすることができる。いくつかの外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含む。他の外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まない。外因性ドナー核酸は、相同組換え修復によってゲノム遺伝子座もしくはセーフハーバー遺伝子座に挿入することができ、および/またはそれらは、非相同末端結合によってゲノム遺伝子座もしくはセーフハーバー遺伝子座に挿入することができる。一例では、外因性ドナー核酸(例えば、標的化ベクター)は、アルブミン遺伝子座のイントロン1、イントロン12、またはイントロン13を標的化することができる。例えば、外因性ドナー核酸は、アルブミン遺伝子のイントロン1を標的にすることができる。
【0168】
外因性ドナー核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含むことができ、それらは一本鎖または二本鎖であり得、そしてそれらは直線状または環状の形態であり得る。例えば、外因性ドナー核酸は、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)であり得る。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yoshimi et al.(2016)Nat.Commun.7:10431を参照されたい。外因性ドナー核酸は、ネイキッド核酸であってもよく、AAVなどのウイルスによって送達されてもよい。具体的な例では、外因性ドナー核酸は、AAVを介して送達することができ、非相同末端結合によってゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入することができる(例えば、外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まないものであってよい)。
【0169】
例示的な外因性ドナー核酸は、約50ヌクレオチド~約5kbの長さ、または約50ヌクレオチド~約3kbの長さである。代替的に、外因性ドナー核酸は、約1kb~約1.5kb、約1.5kb~約2kb、約2kb~約2.5kb、約2.5kb~約3kb、約3kb~約3.5kb、約3.5kb~約4kb、約4kb~約4.5kb、または約4.5kb~約5kbの長さであってよい。代替的に、外因性ドナー核酸は、例えば、5kb、4.5kb、4kb、3.5kb、3kb、または2.5kb以下の長さであってよい。
【0170】
一例では、外因性ドナー核酸は、約80ヌクレオチド~約3kbの長さのssODNである。そのようなssODNは、5’末端および/または3’末端にホモロジーアームまたは短い一本鎖領域を有することができ、これらは、例えばそれぞれ約40ヌクレオチド~約60ヌクレオチドの長さである、標的ゲノム遺伝子座でのヌクレアーゼ剤媒介切断によって作成される1つ以上の突出に相補的である。そのようなssODNはまた、例えば、それぞれ約30ヌクレオチドから~100ヌクレオチドの長さであるホモロジーアームまたは相補的領域を有してもよい。ホモロジーアームまたは相補的領域は、対称的(例えば、各40ヌクレオチドまたは各60ヌクレオチド長)であってもよく、またはそれらは非対称的(例えば、36ヌクレオチド長である1つのホモロジーアームまたは相補的領域、および91ヌクレオチド長である1つのホモロジーアームまたは相補的領域)であってもよい。
【0171】
外因性ドナー核酸は、追加の望ましい特徴(例えば、修飾または調節された安定性;蛍光標識による追跡または検出;タンパク質またはタンパク質複合体の結合部位など)を提供する修飾または配列を含み得る。外因性ドナー核酸は、1つ以上の蛍光標識、精製タグ、エピトープタグ、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、外因性ドナー核酸は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの蛍光標識などの1つ以上の蛍光標識(例えば、蛍光タンパク質または他のフルオロフォアまたは色素)を含んでもよい。例示的な蛍光標識としては、フルオレセイン(例えば、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM))、テキサスレッド、HEX、Cy3、Cy5、Cy5.5、パシフィックブルー、5-(および-6)-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)およびCy7などのフルオロフォアが挙げられる。オリゴヌクレオチドを標識するための幅広い蛍光色素が市販されている(例えば、Integrated DNA Technologiesから)。そのような蛍光標識(例えば、内部蛍光標識)は、例えば、外因性ドナー核酸の末端と適合性のある突出端を有する切断された標的核酸に直接組み込まれた外因性ドナー核酸を検出するために使用することができる。標識またはタグは、外因性ドナー核酸の5’末端、3’末端、または内部にあってよい。例えば、外因性ドナー核酸は、Integrated DNA TechnologiesからIR700フルオロフォア(5’IRDYE(登録商標)700)を有する5’末端にコンジュゲートさせることができる。
【0172】
本明細書に開示される外因性ドナー核酸はまた、標的ゲノム遺伝子座に組み込まれるDNAのセグメント(すなわち、抗原結合タンパク質のコード配列)を含む核酸インサートを含む。標的ゲノム遺伝子座での核酸インサートの組み込みは、標的ゲノム遺伝子座への目的の核酸配列の付加、または標的ゲノム遺伝子座での目的の核酸配列の置換(すなわち、欠失および挿入)をもたらし得る。いくつかの外因性ドナー核酸は、標的ゲノム遺伝子座での対応する欠失なしに、標的ゲノム遺伝子座での核酸インサートの挿入のために設計されている。他の外因性ドナー核酸は、標的ゲノム遺伝子座で目的の核酸配列を欠失し、それを核酸インサートで置き換えるように設計されている。
【0173】
欠失および/または置換される標的ゲノム遺伝子座における核酸インサートまたは対応する核酸は、様々な長さであってよい。欠失および/または置換される標的ゲノム遺伝子座における例示的な核酸インサートまたは対応する核酸は、約1ヌクレオチドから約5kbの長さであるか、または約1ヌクレオチドから約3kbヌクレオチドの長さである。例えば、欠失および/または置換される標的ゲノム遺伝子座における核酸インサートまたは対応する核酸は、約1~約100、約100~約200、約200~約300、約300~約400、約400~約500、約500~約600、約600~約700、約700~約800、約800~約900、または約900~約1,000ヌクレオチドの長さであってよい。同様に、欠失および/または置換される標的ゲノム遺伝子座における核酸インサートまたは対応する核酸は、約1kb~1.5kb、約1.5kb~約2kb、約2kb~約2.5kb、約2.5kb~約3kb、約3kb~約3.5kb、約3.5kb~約4kb、約4kb~約4.5kb、約4.5kb~約5kb、またはそれ以上の長さであってよい。
【0174】
欠失および/または置換される標的ゲノム遺伝子座の核酸インサートまたは対応する核酸は、エキソンなどのコード領域、イントロン、非翻訳領域、または調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、もしくは転写リプレッサー結合要素)などの非コード領域、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0175】
核酸インサートはまた、条件付き対立遺伝子を含み得る。条件付き対立遺伝子は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2011/0104799に記載されているように、多機能対立遺伝子であってよい。例えば、条件付き対立遺伝子は、以下を含むことができる:(a)標的遺伝子の転写に関してセンス方向の作動配列、(b)センスまたはアンチセンス方向の薬物選択カセット(DSC)、(c)アンチセンス配向の目的のヌクレオチド配列(NSI)、(d)逆方向の条件付き反転モジュール(COIN、エキソン分割イントロンと反転可能な遺伝子トラップのようなモジュールを利用)。例えばUS2011/0104799を参照されたい。条件付き対立遺伝子は、第1のリコンビナーゼへの曝露時に再結合して、(i)作動配列およびDSCを欠き、(ii)センス方向のNSIとアンチセンス方向のCOINを含む、条件付き対立遺伝子を形成する再結合可能なユニットをさらに含むことができる。例えばUS2011/0104799を参照されたい。
【0176】
核酸インサートはまた、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含み得る。代替的に、核酸インサートは、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを欠くことができる。選択マーカーは、選択カセットに入れることができる。任意選択で、選択カセットは自己削除カセットにすることができる。例えば、すべての目的のためにそれぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる、US8,697,851およびUS2013/0312129を参照されたい。一例として、自己削除カセットは、マウスPrm1プロモーターに作動可能に連結されたCrei遺伝子(イントロンによって分離されたCreリコンビナーゼをコードする2つのエキソンを含む)およびヒトユビキチンプロモーターに作動可能に連結されたネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。Prm1プロモーターを使用することにより、F0動物のオスの生殖細胞で特異的に自己欠失カセットを削除することができる。例示的な選択マーカーとしては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puro)、ブラスチシジンSデアミナーゼ(bsr)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-k)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。選択マーカーをコードするポリヌクレオチドは、標的とされる細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。プロモーターの例は、本明細書のいずこかに記載されている。
【0177】
核酸インサートはまた、レポーター遺伝子を含み得る。例示的なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、DsRed、ZsGreen、MmGFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-Red、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、Cerulean、T-サファイア、およびアルカリホスファターゼをコードするものが挙げられる。このようなレポーター遺伝子は、標的とされる細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。プロモーターの例は、本明細書のいずこかに記載されている。
【0178】
核酸インサートはまた、1つ以上の発現カセットまたは削除カセットを含み得る。所与のカセットは、発現に影響を及ぼす様々な調節成分とともに、目的のヌクレオチド配列、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド、およびレポーター遺伝子のうちの1つ以上を含むことができる。含めることができる選択可能なマーカーおよびレポーター遺伝子の例は、本明細書のいずこかで詳細に論じられている。
【0179】
核酸インサートは、部位特異的組換え標的配列に隣接する核酸を含むことができる。代替的に、核酸インサートは、1つ以上の部位特異的組換え標的配列を含むことができる。核酸インサート全体がそのような部位特異的組換え標的配列に隣接することができるが、核酸インサート内の任意の領域または目的の個々のポリヌクレオチドもまた、そのような部位に隣接することができる。核酸インサートまたは核酸インサート内の目的の任意のポリヌクレオチドに隣接することができる部位特異的組換え標的配列は、例えば、loxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、lox5171、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、FRT、rox、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。一例では、部位特異的組換え部位は、核酸インサート内に含まれる選択マーカーおよび/またはレポーター遺伝子をコードするポリヌクレオチドに隣接している。標的遺伝子座での核酸インサートの組み込みに続いて、部位特異的組換え部位間の配列を除去することができる。任意選択で、2つの外因性ドナー核酸を使用することができ、それぞれが部位特異的組換え部位を含む核酸インサートを有する。外因性ドナー核酸は、目的の核酸に隣接する5’および3’領域を標的にすることができる。2つの核酸インサートを標的ゲノム遺伝子座に組み込んだ後、2つの挿入された部位特異的組換え部位の間の目的の核酸を除去することができる。
【0180】
核酸インサートはまた、タイプI、タイプII、タイプIII、およびタイプIVエンドヌクレアーゼを含む、制限エンドヌクレアーゼ(すなわち、制限酵素)のための1つ以上の制限部位を含むことができる。タイプIおよびタイプIIIの制限エンドヌクレアーゼは特定の認識部位を認識するが、典型的には、ヌクレアーゼ結合部位から可変位置で切断する。これは、切断部位(認識部位)から数百塩基対離れている場合がある。タイプIIシステムでは、制限活性はメチラーゼ活性とは無関係であり、切断は典型的には、結合部位内または結合部位の近くの特定の部位で起こる。ほとんどのタイプII酵素はパリンドローム配列を切断するが、タイプIIa酵素は非パリンドローム認識部位を認識して認識部位の外側で切断し、タイプIIb酵素は認識部位の外側の両方の部位で配列を2回切断し、タイプIIs酵素は非対称認識部位を認識し、片側で、認識部位から約1~20ヌクレオチドの定義された距離で切断する。IV型制限酵素はメチル化されたDNAを標的とする。制限酵素は、例えば、REBASEデータベース(rebase.neb.comのウェブページ;Roberts et al.,(2003)Nucleic Acids Res.31:418-420、Roberts et al.,(2003)Nucleic Acids Res.31:1805-1812、およびBelfort et al.(2002)in Mobile DNA II,pp.761-783,Eds.Craigie et al.,(ASM Press,Washington,DC))でさらに説明および分類されている。
【0181】
a.非相同末端結合媒介挿入のためのドナー核酸
一部の外因性ドナー核酸は、非相同末端結合によってゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入することができる。場合によっては、そのような外因性ドナー核酸はホモロジーアームを含まない。例えば、そのような外因性ドナー核酸は、ヌクレアーゼ剤による切断後の平滑末端二本鎖切断に挿入することができる。具体的な例では、外因性ドナー核酸は、AAVを介して送達することができ、非相同末端結合によってゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入することができる(例えば、外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含まないものであってよい)。
【0182】
具体的な例では、外因性ドナー核酸は、相同性に依存しない標的化された組み込みを介して挿入することができる。例えば、外因性ドナー核酸の抗原結合タンパク質をコードする配列は、ヌクレアーゼ剤の標的部位が両側に隣接している(例えば、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座と同じ標的部位、および同じヌクレアーゼ剤がゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位を切断するために使用される)。次いで、ヌクレアーゼ剤は、抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する標的部位を切断することができる。具体的な例では、外因性ドナー核酸は、AAV媒介送達で送達され、抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する標的部位の切断は、AAVの末端逆位配列(ITR)を除去することができる。いくつかの方法では、抗原結合タンパク質をコードする配列が正しい方向でゲノム遺伝子座またはセーフハーバーに挿入された場合、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の標的部位(例えば、隣接するプロトスペーサー隣接モチーフを含むgRNA標的配列)はもはや存在しないが、抗原結合タンパク質のコード配列がゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に反対方向に挿入されると再形成される。これは、抗原結合タンパク質をコードする配列が発現のために正しい方向に挿入されることを確実にするのに役立ち得る。
【0183】
他の外因性ドナー核酸は、5’末端および/または3’末端に短い一本鎖領域を有し、これは、標的ゲノム遺伝子座でのヌクレアーゼ剤媒介切断によって作成される1つ以上の突出に相補的である。例えば、いくつかの外因性ドナー核酸は、標的ゲノム遺伝子座における5’および/または3’標的配列でのヌクレアーゼ媒介切断によって作成された1つ以上の突出に相補的な5’末端および/または3’末端に短い一本鎖領域を有する。いくつかのそのような外因性ドナー核酸は、5’末端のみまたは3’末端のみに相補的領域を有する。例えば、いくつかのそのような外因性ドナー核酸は、標的ゲノム遺伝子座の5’標的配列で作成された突出に相補的な5’末端にのみ、または標的ゲノム遺伝子座の3’標的配列で作成された突出に相補的な3’末端にのみ相補領域を有する。他のそのような外因性ドナー核酸は、5’末端と3’末端の両方に相補的領域を有する。例えば、他のそのような外因性ドナー核酸は、標的ゲノム遺伝子座でのヌクレアーゼ媒介切断によって生成される5’と3’末端の両方に相補的領域(例えば、それぞれ第1および第2の突出に相補的)を有する。例えば、外因性ドナー核酸が二本鎖である場合、一本鎖相補的領域は、ドナー核酸の上部鎖の5’末端およびドナー核酸の下部鎖の5’末端から伸長し、両端に5’突出を作成することができる。代替的に、一本鎖相補領域は、ドナー核酸の上部鎖の3’末端から、およびテンプレートの下部鎖の3’末端から伸長し、3’突出を作成することができる。
【0184】
相補的領域は、外因性ドナー核酸と標的核酸との間のライゲーションを促進するのに十分な任意の長さであり得る。例示的な相補的領域は、約1~約5ヌクレオチドの長さ、約1~約25ヌクレオチドの長さ、または約5~約150ヌクレオチドの長さである。例えば、相補的領域は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドの長さであってよい。代替的に、相補的領域は、約5~約10、約10~約20、約20~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約60、約60~約70、約70~約80、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約130~約140、約140~約150ヌクレオチド、またはそれ以上の長さであってよい。
【0185】
このような相補的領域は、2対のニッカーゼによって作成された突出を相補的にすることができる。DNAの反対側の鎖を切断して第1の二本鎖切断を作成する第1および第2のニッカーゼ、およびDNAの反対側の鎖を切断して第2の二本鎖切断を作成する第3および第4のニッカーゼを使用することにより、両端が千鳥状の2つの二本鎖切断を作成できる。例えば、Casタンパク質を使用して、第1、第2、第3、および第4のガイドRNAに対応する第1、第2、第3、および第4のガイドRNA標的配列にニックを入れることができる。第1および第2のガイドRNA標的配列は、DNAの第1および第2の鎖上の第1および第2のニッカーゼによって作成されたニックが二本鎖切断を作成するように、第1の切断部位を作成するように配置することができる(すなわち、第1の切断部位は、第1および第2のガイドRNA標的配列内のニックを含む)。同様に、第3および第4のガイドRNA標的配列は、DNAの第1および第2の鎖上の第3および第4のニッカーゼによって作成されたニックが二本鎖切断を作成するように、第2の切断部位を作成するように配置することができる(すなわち第2の切断部位は、第3および第4のガイドRNA標的配列内のニックを含む)。第1および第2のガイドRNA標的配列および/または第3および第4のガイドRNA標的配列内のニックは、突出を作成するオフセットニックであり得る。オフセットウィンドウは、例えば、少なくとも約5bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、またはそれ以上であり得る。すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ran et al.(2013)Cell 154:1380-1389、Mali et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:833-838、およびShen et al.(2014)Nat.Methods 11:399-404を参照されたい。そのような場合、二本鎖外因性ドナー核酸は、第1および第2のガイドRNA標的配列内のニックおよび第3および第4のガイドRNA標的配列内のニックによって作成された突出に相補的な一本鎖相補領域で設計することができる。次いで、そのような外因性ドナー核酸は、非相同末端結合媒介ライゲーションによって挿入することができる。
【0186】
b.相同組換え修復による挿入のためのドナー核酸
いくつかの外因性ドナー核酸は、ホモロジーアームを含む。外因性ドナー核酸が核酸インサートも含む場合、ホモロジーアームは核酸インサートに隣接することができる。参照を容易にするために、ホモロジーアームは、本明細書では5’および3’(すなわち、上流および下流)ホモロジーアームと呼ばれる。この用語は、外因性ドナー核酸内の核酸インサートに対するホモロジーアームの相対位置に関連している。5’および3’ホモロジーアームは、標的ゲノム遺伝子座内の領域に対応し、これらは、本明細書では、それぞれ「5’標的配列」および「3’標的配列」と呼ばれる。
【0187】
ホモロジーアームおよび標的配列は、2つの領域が相同組換え反応の基質として作用するのに十分なレベルの配列同一性を互いに共有する場合、互いに「対応する」または「対応している」。「相同性」という用語は、対応する配列と同一であるか、または配列同一性を共有するDNA配列を含む。所与の標的配列と外因性ドナー核酸に見られる対応するホモロジーアームとの間の配列同一性は、相同組換えが起こることを可能にする任意の程度の配列同一性であってよい。例えば、外因性ドナー核酸(またはその断片)のホモロジーアームおよび標的配列(またはその断片)によって共有される配列同一性の量は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性であり得、これにより、配列は相同組換えを起こす。さらに、ホモロジーアームと対応する標的配列との間の対応する相同性領域は、相同組換えを促進するのに十分な任意の長さであり得る。例示的なホモロジーアームは、約25ヌクレオチド~約2.5kbの長さであるか、約25ヌクレオチド~約1.5kbの長さであるか、または約25~約500ヌクレオチドの長さである。例えば、所与のホモロジーアーム(またはホモロジーアームのそれぞれ)および/または対応する標的配列は、約25~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約60、約60~約70、約70~約80、約80~約90、約90~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約300、約300~約350、約350~約400、約400~約450、または約450~約500ヌクレオチド長の対応する相同性領域を含み得、その結果、ホモロジーアームは、標的核酸内の対応する標的配列との相同組換えを受けるのに十分な相同性を有する。代替的に、所与のホモロジーアーム(または各ホモロジーアーム)および/または対応する標的配列は、約0.5kb~約1kb、約1kb~約1.5kb、約1.5kb~約2kb、または約2kb~約2.5kbの長さである対応する相同性領域を含み得る。例えば、ホモロジーアームは、それぞれ約750ヌクレオチドの長さであり得る。ホモロジーアームは対称的(それぞれの長さがほぼ同じサイズ)であってもよく、非対称的(一方が他方よりも長い)であってもよい。
【0188】
CRISPR/Casシステムまたは他のヌクレアーゼ剤を外因性ドナー核酸と組み合わせて使用する場合、ヌクレアーゼ切断部位またはヌクレアーゼ切断部位での一本鎖切断(ニック)または二本鎖切断の際に、標的配列とホモロジーアームとの間の相同組換え事象の発生を促進するように、5’および3’標的配列をヌクレアーゼ切断部位に十分に近接して(例えば、ガイドRNA標的配列に十分に近接して)配置することができる。「ヌクレアーゼ切断部位」という用語は、ヌクレアーゼ剤(例えば、ガイドRNAと複合体を形成したCas9タンパク質)によってニックまたは二本鎖切断が作成されるDNA配列を含む。外因性ドナー核酸の5’および3’ホモロジーアームに対応する標的化遺伝子座内の標的配列は、距離がヌクレアーゼ切断部位での一本鎖切断または二本鎖切断の際の5’および3’標的配列とホモロジーアームとの間の相同組換え事象の発生を促進するような距離である場合、ヌクレアーゼ切断部位に「十分に近接して位置する」。したがって、外因性ドナー核酸の5’および/または3’ホモロジーアームに対応する標的配列は、例えば、所与のヌクレアーゼ切断部位の少なくとも1ヌクレオチド内、または所与のヌクレアーゼ切断部位の少なくとも10ヌクレオチド~約1,000ヌクレオチド内であり得る。一例として、ヌクレアーゼ切断部位は、標的配列の少なくとも一方または両方に直接隣接し得る。
【0189】
外因性ドナー核酸のホモロジーアームおよびヌクレアーゼ切断部位に対応する標的配列の空間的関係は変化し得る。例えば、標的配列は、ヌクレアーゼ切断部位の5’に位置してもよく、標的配列は、ヌクレアーゼ切断部位の3’に位置してもよく、または標的配列は、ヌクレアーゼ切断部位に隣接していてもよい。
【0190】
2.抗原結合タンパク質
本明細書に開示される外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質のコード配列を含む。本明細書に開示される場合、「抗原結合タンパク質」には、抗原に結合する任意のタンパク質が含まれる。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、scFV、ビスscFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab)、DVD(デュアル可変ドメイン抗原結合タンパク質)、SVD(単一可変ドメイン抗原結合タンパク質)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、またはデイビスボディが含まれる(すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,586,713号)。
【0191】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重鎖(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変ドメインおよび重鎖定常領域(C)を含む。重鎖の定数領域は、C1、C2、およびC3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常領域(C)を含む。重鎖および軽鎖可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分割され得る。各重鎖および軽鎖可変ドメインは、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRを含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRはHCDR1、HCDR2、およびHCDR3と略され得;軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3と省略され得る)。「高親和性」抗体という用語は、約10-9M以下(例えば、1×10-9M、1×10-10M、約1×10-11M、または約1×10-12M)のその標的エピトープに対するKを有する抗体を指す。一実施形態では、Kは、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって測定される。別の実施形態では、KはELISAによって測定される。
【0192】
抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、中和抗原結合タンパク質または抗体、あるいは広域中和抗原結合タンパク質または抗体であり得る。中和抗体は、細胞が生物学的に持つあらゆる効果を中和することにより、抗原または感染体から細胞を防御する抗体である。広域中和抗体(bNAb)は、特定の細菌またはウイルスの複数の株に影響を及ぼす。例えば、広域中和抗体は、保存された機能的標的に焦点を合わせ、保存された細菌またはウイルスタンパク質の脆弱な部位(例えば、インフルエンザウイルスタンパク質血球凝集素の脆弱な部位)を攻撃することができる。感染またはワクチン接種の際に免疫系によって作られた抗体は、細菌またはウイルスの表面上の容易にアクセス可能なループに焦点を合わせる傾向があり、それらはしばしば大きな配列および立体配座の変動性を有する。これは、細菌またはウイルスの集団はこれらの抗体をすばやく回避することができ、抗体は機能に不可欠ではないタンパク質の部分を攻撃するという2つの理由で問題である。細菌またはウイルスの多くの株を攻撃するため「広域」と呼ばれ、細菌またはウイルスの主要な機能部位を攻撃して感染を阻止するため「中和」と呼ばれる、広域中和抗体は、これらの問題を克服できる。しかし残念ながら、これらの抗体は通常遅すぎて、疾患からの効果的な保護を提供しない。
【0193】
本明細書に開示される抗原結合タンパク質は、任意の抗原を標的とすることができる。「抗原」という用語は、分子全体であろうと分子内のドメインであろうと、その物質に結合特異性を有する抗体の産生を誘発することができる物質を指す。抗原という用語には、野生型宿主生物では自己認識によって抗体産生を誘発しないが、免疫学的寛容を破壊する適切な遺伝子工学を用いて宿主動物でそのような応答を誘発することができる物質も含まれる。
【0194】
一例として、標的抗原は、疾患関連抗原であり得る。「疾患関連抗原」という用語は、その存在が特定の疾患の発生または進行と相関している抗原を指す。例えば、抗原は、疾患関連タンパク質(すなわち、その発現が疾患の発生または進行と相関しているタンパク質)に存在し得る。任意選択で、疾患関連タンパク質は、特定のタイプの疾患で発現されるが、通常は健康な成人組織では発現されないタンパク質(すなわち、疾患特異的発現または疾患限定発現を有するタンパク質)であり得る。しかしながら、疾患関連タンパク質は、疾患特異的または疾患限定的な発現を示す必要はない。
【0195】
一例として、疾患関連抗原は、がん関連抗原であってよい。「がん関連抗原」という用語は、その存在が1つ以上のタイプのがんの発生または進行と相関している抗原を指す。例えば、抗原は、がん関連タンパク質(すなわち、その発現が1つ以上のタイプのがんの発生または進行と相関しているタンパク質)に存在してもよい。例えば、がん関連タンパク質は、発癌性タンパク質(すなわち、細胞成長を調節するタンパク質などの、がんの進行に寄与し得る活性を有するタンパク質)であり得るか、または腫瘍抑制タンパク質(すなわち、通常、細胞周期の負の調節によってまたはアポトーシスの促進などによって、がん形成の可能性を軽減するように作用するタンパク質)であり得る。任意選択で、がん関連タンパク質は、特定のタイプのがんで発現するが、通常は健康な成人組織では発現されないタンパク質(すなわち、がん特異的発現、がん限定発現、腫瘍特異的発現、または腫瘍限定発現を有するタンパク質)であり得る。しかしながら、がん関連タンパク質は、がん特異的、がん限定、腫瘍特異的、または腫瘍限定の発現を有する必要はない。がん特異的またはがん限定とみなされるタンパク質の例は、がん精巣抗原またはがん胎児性抗原である。がん精巣抗原(CTA)は、異なる組織学的起源のヒト腫瘍で発現する腫瘍関連抗原の大きなファミリーであるが、男性の生殖細胞を除いて、正常組織では発現しない。がんでは、これらの発生抗原は再発現することができ、免疫活性化の場所として機能することができる。がん胎児性抗原(OFA)は、通常、胎児の発育中にのみ存在するタンパク質あるが、特定の種類のがんの成人に見られる。
【0196】
別の例として、疾患関連抗原は、感染症関連抗原であり得る。「感染症関連抗原」という用語は、その存在が特定の感染症の発生または進行と相関している抗原を指す。例えば、抗原は、感染症関連タンパク質(すなわち、その発現が感染症の発生または進行と相関しているタンパク質)に存在し得る。任意選択で、感染症関連タンパク質は、特定のタイプの感染症で発現されるが、通常は健康な成人組織では発現されないタンパク質(すなわち、感染症特異的発現または感染症限定発現を有するタンパク質)であり得る。しかしながら、感染症関連タンパク質は、感染症特異的または感染症限定的な発現を示す必要はない。例えば、抗原は、ウイルス抗原または細菌抗原であり得る。そのような抗原には、例えば、免疫系によって認識され、免疫応答を誘発することができるウイルスまたは細菌の表面上の分子構造(例えば、ウイルスタンパク質または細菌タンパク質)が含まれる。
【0197】
ウイルス抗原の例には、ジカウイルスまたはインフルエンザ(インフルエンザ)ウイルスによって発現されるタンパク質内の抗原が含まれる。ジカ熱は、主に感染したネッタイシマカ(Ae.aegyptiおよびAe.Albopictus)に刺されることで人々に広がるウイルスである。妊娠中のジカウイルス感染は、小頭症およびその他の重度の脳障害を引き起こす可能性がある。例えば、ジカ抗原は、ジカウイルスエンベロープ(Env)タンパク質内の抗原であり得るが、これに限定されない。インフルエンザウイルスは、インフルエンザ(一般に「インフルエンザ」として知られている)と呼ばれる感染症を引き起こすウイルスである。タイプA、タイプB、およびタイプCと呼ばれる3種類のインフルエンザウイルスがヒトに感染する。インフルエンザ抗原は、血球凝集素タンパク質内の抗原であり得るが、これらに限定されない。ウイルス抗原および細菌抗原には、他のウイルスおよび他の細菌の抗原も含まれる。インフルエンザ血球凝集素を標的とする抗体の例は、例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/100807に提供されている。
【0198】
細菌抗原の例としては、Pseudomonas aeruginosaによって発現するタンパク質内の抗原(例えば、III型病原性システム移動タンパク質であるPcrV内の抗原)が挙げられる。Pseudomonas aeruginosaは、重症患者に致命的な急性肺感染症を引き起こす日和見細菌性病原体である。その病因は、P.aeruginosaが肺上皮の壊死を引き起こし、循環系に播種し、細菌血症、敗血症、および死亡をもたらす、III型分泌システム(TTSS)によって付与される細菌の病原性に関連している。TTSSは、P.aeruginosaが細胞毒素を真核細胞に直接移動させ、細胞死を誘発することを可能にする。エルシニア属のV抗原LcrVのホモログであるP.aeruginosaのV抗原PcrVは、TTS毒素移動に不可欠な貢献者である。
【0199】
「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、1つ以上のタンパク質の三次フォールディングによって並置された隣接アミノ酸または非隣接アミノ酸から形成することができる。隣接アミノ酸から形成されるエピトープ(線形エピトープとしても既知)は典型的には、変性溶媒に対する曝露で保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープ(配座異性エピトープとしても既知)は典型的には、変性溶媒での処置で失われる。エピトープは典型的には、少なくとも3、さらに通常は、少なくとも5または8~10のアミノ酸を特有の空間配座で含む。エピトープの空間配座を決定する方法には、例えば、X線結晶学および二次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるEpitope Mapping Protocols,in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい。
【0200】
「重鎖」または「免疫グロブリン重鎖」という用語は、任意の生物からの免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む免疫グロブリン重鎖配列を含む。重鎖可変ドメインは、特に明記しない限り、3つの重鎖CDRおよび4つのFR領域を含む。重鎖の断片には、CDR、CDRおよびFR、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。典型的な重鎖は、可変ドメインに続いて、(N末端からC末端まで)C1ドメイン、ヒンジ、C2ドメイン、およびC3ドメインを有する。重鎖の機能的断片は、エピトープを特異的に認識することができ(例えば、マイクロモル、ナノモル、またはピコモル範囲のKDでエピトープを認識する)、細胞から発現および分泌することができ、少なくとも1つのCDRを含む断片を含む。重鎖可変ドメインは、生殖細胞系列に存在するV、D、およびJセグメントのレパートリーに由来するV、D、およびJセグメントを一般に含む可変領域ヌクレオチド配列によってコードされる。様々な生物のV、D、およびJ重鎖セグメントの配列、位置、および命名法は、ワールドワイドウェブ(www)のインターネット経由でURL「imgt.org」からアクセスできるIMGTデータベースに見出すことができる。
【0201】
「軽鎖」という用語は、任意の生物からの免疫グロブリン軽鎖配列を含み、特に明記しない限り、ヒトカッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖およびVpreB、ならびに代理軽鎖を含む。軽鎖可変ドメインには、特に指定がない限り、通常、3つの軽鎖CDRと4つのフレームワーク(FR)領域が含まれる。一般に、全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端まで、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む可変ドメイン、および軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む。軽鎖可変ドメインは、生殖細胞系に存在する軽鎖VおよびJ遺伝子セグメントのレパートリーに由来する軽鎖Vおよび軽鎖J遺伝子セグメントを一般に含む軽鎖可変領域ヌクレオチド配列によってコードされる。様々な生物の軽鎖VおよびJ遺伝子セグメントの配列、位置、および命名法は、ワールドワイドウェブ(www)のURL「imgt.org」からインターネット経由でアクセスできるIMGTデータベースにある。軽鎖には、例えば、それらが現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される第1または第2のエピトープのいずれにも選択的に結合しないものが含まれる。軽鎖はまた、それらが現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される1つ以上のエピトープに結合して認識するか、または結合および認識することで重鎖を補助するものを含む。
【0202】
本明細書で使用される「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、通常(すなわち、野生型動物において)、免疫グロブリン分子(例えば、抗体またはT細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域内の2つのフレームワーク領域の間に現れる、生物の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。CDRは、例えば、生殖細胞系列配列、または例えば、ナイーブまたは成熟B細胞もしくはT細胞によって再構成された配列によって、コードされ得る。CDRは、体細胞変異(例えば、動物の生殖細胞系列にコードされている配列とは異なる)、ヒト化、および/またはアミノ酸の置換、追加、または欠失で修飾することができる。いくつかの状況(例えば、CDR3の場合)では、CDRは、隣接していない(例えば、再構成されていない核酸配列において)が、B細胞核酸配列において、例えば、配列のスプライシングまたは接続の結果として(例えば、VDJ組換えによる重鎖CDR3の形成)隣接している2つ以上の配列(例えば、生殖系列配列)によってコードされ得る。
【0203】
「再構成されていない」という用語は、V遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメント(重鎖の場合、D遺伝子セグメントも同様)が別々に維持されるが、結合して、V(D)Jレパートリーの単一のV、(D)、Jで構成される再構成されたV(D)J遺伝子を形成することができる免疫グロブリン遺伝子座の状態を含む。「再構成された」という用語は、Vセグメントが本質的に完全なVまたはVドメインをそれぞれコードする配置でDJまたはJセグメントに直接隣接して配置される重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の構成を含む。
【0204】
外因性ドナー核酸中の抗原結合タンパク質をコードする核酸は、RNAまたはDNAであってよく、一本鎖または二本鎖であってよく、直線状または環状であってよい。それらは、発現ベクターまたはターゲティングベクターなどのベクターの一部であってよい。ベクターはまた、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、およびレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターであってよい。例えば、外因性ドナー核酸は、AAV8またはAAV2/8などのAAVの一部であってよい。
【0205】
必要に応じて、特定の細胞または生物におけるタンパク質への効率的な翻訳のために、核酸をコドン最適化してもよい。例えば、核酸は、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。
【0206】
外因性ドナー核酸における抗原結合タンパク質をコードする配列は、任意選択で、動物内でのインビボまたは細胞内でのエクスビボでの発現のための任意の適切なプロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質をコードする配列が、ゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で内因性プロモーターに作動可能に連結されるように設計することができる。動物は、本明細書のいずこかに記載されているような任意の適切な動物であり得る。プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(例えば、CAGプロモーターもしくはU6プロモーター)、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば、発生的に調節されたプロモーター)、または空間的に制限されたプロモーター(例えば、細胞特異的または組織特異的プロモーター)であり得る。そのようなプロモーターはよく知られており、本明細書のいずこかで議論されている。発現コンストラクトにおいて使用することができるプロモーターには、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、または接合体のうちの1つ以上において活性なプロモーターが含まれる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであってよい。
【0207】
任意選択で、プロモーターは、一方の遺伝子(例えば、軽鎖をコードする遺伝子)および第2の遺伝子(例えば、重鎖をコードする遺伝子)の発現を他の方向に駆動する双方向プロモーターであり得る。このような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(DSE)、近位配列要素(PSE)、およびTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、ならびに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSEおよびTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターで構成してもよい。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSEとTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSEおよびTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0074535を参照されたい。双方向プロモーターを使用して2つの遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0208】
抗原結合タンパク質は、scFvなどの一本鎖抗原結合タンパク質であってよい。代替的に、抗原結合タンパク質は一本鎖抗原結合タンパク質ではない。例えば、抗原結合タンパク質は、別々の軽鎖および重鎖を含むことができる。重鎖コード配列は、軽鎖コード配列の上流にあり得るか、または軽鎖コード配列は、重鎖コード配列の上流にあり得る。1つの具体的な例において、重鎖コード配列は、軽鎖コード配列の上流にある。例えば、重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含むことができ、軽鎖コード配列は、軽鎖Vおよび軽鎖J遺伝子セグメントを含むことができる。抗原結合タンパク質をコードする配列は、外因性ドナー核酸の外因性プロモーターに作動可能に連結することができ、または外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質をコードする配列が、ゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で内因性プロモーターに作動可能に連結されるように設計することができる。1つの具体的な例において、外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質をコードする配列が、ゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で内因性プロモーターに作動可能に連結されるように設計することができる。同様に、外因性ドナー核酸の抗原結合タンパク質をコードする配列は、分泌のための外因性シグナル配列を含み得、および/または外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質をコードする配列が、ゲノムに組み込まれた後のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座での内因性シグナル配列に作動可能に連結されるように設計され得る。一例では、外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質をコードする配列が、ゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で内因性シグナル配列に作動可能に連結されるように設計することができる。具体的な例において、抗原結合タンパク質は、別個の軽鎖および重鎖を含み、外因性ドナー核酸は、1つの鎖のコード配列がゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で内因性シグナル配列に作動可能に連結されるように設計され、他の鎖のコード配列は別の外因性シグナル配列に作動可能に連結される。具体的な例において、抗原結合タンパク質は、別個の軽鎖および重鎖を含み、外因性ドナー核酸は、外因性ドナー核酸の上流にある鎖コード配列のいずれかがゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で内因性シグナル配列に作動可能に連結されるように設計され、外因性シグナル配列は、外因性ドナー核酸の下流にある鎖コード配列のいずれかに作動可能に連結される。代替的に、外因性ドナー核酸は、両方の鎖のコード配列が、ゲノムに組み込まれると、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の内因性シグナル配列に作動可能に連結されるように設計することができ、または両方の鎖のコード配列が同じ外因性シグナル配列に作動可能に連結され得るか、または各鎖のコード配列が、別個の外因性シグナル配列に作動可能に連結され得る。
【0209】
シグナル配列(すなわち、N末端シグナル配列)は、シグナル認識粒子(SRP)に依存する方法で、新生分泌タンパク質および膜タンパク質の小胞体(ER)へのターゲティングを媒介する。通常、シグナル配列は共翻訳的に切断され、シグナルペプチドと成熟タンパク質が生成される。使用できる外因性シグナル配列またはシグナルペプチドの例には、例えば、マウスアルブミン、ヒトアルブミン、マウスROR1、ヒトROR1、ヒトアズロシジン、Cricetulus griseus Igカッパ鎖V III領域MOPC63様、およびヒトIgカッパ鎖V III領域VGのようなシグナル配列/ペプチドが含まれる。他の既知のシグナル配列/ペプチドも使用することができる。具体的な例では、ROR1シグナル配列が使用される。そのようなシグナル配列の例は、配列番号33(配列番号31または32によってコードされる)に記載されている。
【0210】
抗原結合タンパク質をコードする配列(例えば、重鎖コード配列および軽鎖コード配列)中の1つ以上の核酸は、マルチシストロン性発現コンストラクトで一緒になり得る。例えば、重鎖および軽鎖をコードする核酸は、バイシストロン性発現コンストラクトにおいて一緒になり得る。例えば、図1を参照されたい。マルチシストロン性発現ベクターは、同じmRNA(すなわち、同じプロモーターから生成された転写物)から2つ以上の別々のタンパク質を同時に発現する。タンパク質のマルチシストロン発現のための適切な戦略には、例えば、2Aペプチドの使用および配列内リボソーム進入部位(IRES)の使用が含まれる。一例として、そのようなマルチシストロン性ベクターは、1つ以上の配列内リボソーム進入部位(IRES)を使用して、mRNAの内部領域からの翻訳の開始を可能にすることができる。別の例として、そのようなマルチシストロン性ベクターは、1つ以上の2Aペプチドを使用することができる。これらのペプチドは小さな「自己切断」ペプチドであり、一般に18~22アミノ酸の長さを有し、同じmRNAから等モルレベルの複数の遺伝子を生成する。リボソームは、2AペプチドのC末端でのグリシル-プロリルペプチド結合の合成をスキップし、2Aペプチドとそのすぐ下流のペプチドの間の「切断」を引き起こす。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim et al.(2011)PLoS One 6(4):e18556を参照されたい。「切断」は、C末端にあるグリシンとプロリン残基の間で発生し、上流のシストロンが、その最後にいくつかの残基を付加し、下流のシストロンはプロリンで始まる。その結果、「切断された」下流ペプチドは、そのN末端にプロリンを有する。2A媒介切断は、すべての真核細胞で普遍的な現象である。2Aペプチドは、ピコルナウイルス、昆虫ウイルス、およびC型ロタウイルスから同定されている。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Szymczak et al.(2005)Expert Opin Biol Ther 5:627-638を参照されたい。使用できる2Aペプチドの例には、Thosea asignaウイルス2A(T2A)、ブタテッショウウイルス-12A(P2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、およびFMDV2A(F2A)が含まれる。例示的なT2A、P2A、E2A、およびF2A配列には、以下が含まれる:T2A(EGRGSLLTCGDVEENPGP;配列番号29);P2A(ATNFSLLKQAGDVEENPGP;配列番号25);E2A(QCTNYALLKLAGDVESNPGP;配列番号30);およびF2A(VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP;配列番号27)。GSG残基は、これらのペプチドのいずれかの5’末端に付加して、切断効率を向上させることができる。
【0211】
いくつかの外因性ドナー核酸において、フューリン切断部位をコードする核酸は、軽鎖コード配列と重鎖コード配列との間に含まれる。いくつかの外因性ドナー核酸において、リンカー例えば、(GSG)をコードする核酸は、軽鎖コード配列と重鎖コード配列との間(例えば、2Aペプチドコード配列のすぐ上流)に含まれる。例えば、フューリン切断部位を2Aペプチドの上流に含めることができ、フューリン切断部位と2Aペプチドの両方が軽鎖と重鎖の間に位置する(すなわち、上流鎖-フューリン切断部位-2Aペプチド-下流鎖)。翻訳中、2Aペプチド配列で第1の切断事象が発生する。しかしながら、2Aペプチドのほとんどは、上流鎖のC末端に残存物として付着したままになり(例えば、軽鎖が重鎖の上流にある場合は軽鎖、重鎖が軽鎖の上流にある場合は重鎖)、下流鎖のN末端(またはシグナル配列が下流鎖の上流に含まれる場合はシグナル配列のN末端)に1つのアミノ酸が付加されている。フューリン切断部位で開始される第2の切断事象は、翻訳後プロセシングによってより天然の重鎖または軽鎖を得るために、2A残存物のない上流鎖を生成する。
【0212】
外因性ドナー核酸はまた、抗原結合タンパク質をコードする配列の下流にポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターを含み得る。外因性ドナー核酸はまた、抗原結合タンパク質をコードする配列の上流にポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターを含み得る。抗原結合タンパク質をコードする配列の上流のポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターは、部位特異的リコンビナーゼによって認識されるリコンビナーゼ認識部位に隣接することができる。任意選択で、リコンビナーゼ認識部位はまた、例えば、薬剤耐性タンパク質のコード配列を含む選択カセットに隣接する。任意選択で、リコンビナーゼ認識部位は選択カセットに隣接しない。ポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターは、コード配列によってコードされるタンパク質またはRNA(例えば、キメラCasタンパク質、キメラアダプタータンパク質、ガイドRNA、またはリコンビナーゼ)の転写および発現を妨げる。しかしながら、部位特異的リコンビナーゼに曝露すると、ポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターが切除されると、タンパク質またはRNAを発現させることができる。
【0213】
そのような構成は、ポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターが組織特異的または発生段階特異的な方法で切除される場合、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む動物における組織特異的発現または発生段階特異的発現を可能にし得る。組織特異的または発生段階特異的な方法でのポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターの切除は、抗原結合タンパク質発現カセットを含む動物が、組織特異的または発生段階特異的プロモーターに作動可能に連結された部位特異的リコンビナーゼのコード配列をさらに含む場合に達成され得る。次いで、ポリアデニル化シグナルまたは転写ターミネーターは、それらの組織またはそれらの発生段階でのみ切除され、組織特異的発現または発生段階特異的発現を可能にする。一例では、抗原結合タンパク質は、肝臓特異的な方法で発現させることができる。そのようなプロモーターの例はよく知られている。
【0214】
任意の転写ターミネーターまたはポリアデニル化シグナルを使用できる。本明細書で使用される「転写ターミネーター」は、転写の終結を引き起こすDNA配列を指す。真核生物では、転写ターミネーターはタンパク質因子によって認識され、終結の後に、ポリ(A)ポリメラーゼの存在下でmRNA転写物にポリ(A)テールを追加するプロセスであるポリアデニル化が続く。哺乳動物のポリ(A)シグナルは、典型的には、約45ヌクレオチド長のコア配列で構成されており、切断とポリアデニル化の効率を高めるのに役立つ多様な補助配列が隣接している場合がある。コア配列は、ポリA認識モチーフまたはポリA認識配列と呼ばれ、切断およびポリアデニル化特異性因子(CPSF)によって認識される、mRNA内の高度に保存された上流要素(AATAAAまたはAAUAAA)、ならびに定義が不十分であり、切断刺激因子(CstF)によって結合される下流領域(UまたはGとUが豊富)で構成される。使用できる転写ターミネーターの例としては、例えば、ヒト成長ホルモン(HGH)ポリアデニル化シグナル、シミアンウイルス40(SV40)後期ポリアデニル化シグナル、ウサギベータグロビンポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)ポリアデニル化シグナル、AOX1転写終結配列、CYC1転写終結配列、または真核細胞における遺伝子発現の調節に適していることが知られている任意の転写終結配列が挙げられる。
【0215】
部位特異的リコンビナーゼには、2つの組換え部位が単一の核酸内または別々の核酸上で物理的に分離されているリコンビナーゼ認識部位間の組換えを促進することができる酵素が含まれる。リコンビナーゼの例には、Cre、Flp、およびDreリコンビナーゼが含まれる。Creリコンビナーゼ遺伝子の一例はCreiであり、Creリコンビナーゼをコードする2つのエキソンがイントロンによって分離され、原核細胞での発現を防ぐ。そのようなリコンビナーゼは、核への局在化を促進するための核局在化シグナルをさらに含むことができる(例えば、NLS-Crei)。リコンビナーゼ認識部位には、部位特異的リコンビナーゼによって認識され、組換え事象の基質として機能することができるヌクレオチド配列が含まれる。リコンビナーゼ認識部位の例には、FRT、FRT11、FRT71、attp、att、rox、ならびにloxP、lox511、lox2272、lox66、lox71、loxM2、およびlox5171などのlox部位が含まれる。
【0216】
本明細書に開示される外因性ドナー核酸は、他の構成要素も含むことができる。そのような外因性ドナー核酸は、抗原結合タンパク質をコードする配列の5’末端に3’スプライシング配列(スプライスアクセプター部位)をさらに含み得る。3’スプライシング配列という用語は、スプライシング機構によって認識および結合され得る3’イントロン/エキソン境界における核酸配列を指す。外因性ドナー核酸はまた、ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメントなどの転写後調節エレメントを含み得る。
【0217】
ジカウイルスエンベロープ(Env)タンパク質を標的とする抗原結合タンパク質をコードするドナー核酸の具体例は、SA-LC-P2A-HC-pAを含み、ここで、SAはスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体の軽鎖を指し、P2AはP2Aペプチドを指し、HCは抗体の重鎖を指し、pAはポリアデニル化シグナルを指す。そのようなドナーの例は、配列番号1に記載されている。軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号2に記載され、配列番号3に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号4に記載され、配列番号5に記載されるタンパク質配列をコードする。軽鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号103に記載され、配列番号104に記載されるタンパク質をコードする。重鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号105に記載され、配列番号106に記載されるタンパク質をコードする。3つの軽鎖CDRは、それぞれ、配列番号64~66に記載されて、それぞれ、配列番号85~87によってコードされる。3つの重鎖CDRは、それぞれ、配列番号67~69に記載されて、それぞれ、配列番号88~90によってコードされる。抗ジカ抗体の例は、配列番号3に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖(任意選択で、配列番号64~66に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号5に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖(任意選択で、配列番号67~69に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。抗ジカ抗体の例は、配列番号104に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域(任意選択で、配列番号64~66に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号106に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域(任意選択で、配列番号67~69に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。具体的な例において、改変されたアルブミン遺伝子座(内因性マウスアルブミンエキソン1および組み込まれた抗体コード配列を含む)は、配列番号115に記載の配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるコード配列を含み得る。
【0218】
ジカウイルスエンベロープ(Env)タンパク質を標的とする抗原結合タンパク質をコードするドナー核酸の他の具体例は、SA-HC-F2A-Albss-LC-pA、SA-HC-P2A-Albss-LC-pA、Sa-HC-T2A-Albss-LC-pA、またはHC-T2A-RORss-LC-pAを含み、ここでSAはスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体の軽鎖を指し、P2AはP2Aペプチドを指し、HCは抗体重鎖を指し、Albssはアルブミンシグナル配列(例えば、マウスアルブミン由来)を指し、pAはポリアデニル化シグナルを指す。そのようなドナーの例は、配列番号6~9に記載されている。軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号12に記載され、配列番号13に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号14に記載され、配列番号15に記載されるタンパク質配列をコードする。軽鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号107に記載され、配列番号108に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号109に記載され、配列番号110に記載されるタンパク質配列をコードする。3つの軽鎖CDRは、それぞれ、配列番号70~72に記載されて、それぞれ、配列番号91~93によってコードされる。3つの重鎖CDRは、それぞれ、配列番号73~75に記載されて、それぞれ、配列番号94~96によってコードされる。抗ジカ抗体の例は、配列番号13に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖(任意選択で、配列番号70~72に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号15に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖(任意選択で、配列番号73~75に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。抗ジカ抗体の例は、配列番号108に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域(任意選択で、配列番号70~72に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号110に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域(任意選択で、配列番号73~75に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。具体的な例において、改変されたアルブミン遺伝子座(内因性マウスアルブミンエキソン1および組み込まれた抗体コード配列を含む)は、配列番号116~119のうちのいずれか1つに記載の配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるコード配列を含み得る。
【0219】
インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)タンパク質を標的とする抗原結合タンパク質をコードするドナー核酸の具体例は、SA-LC-P2A-HC-pAを含み、ここで、SAはスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体の軽鎖を指し、P2AはP2Aペプチドを指し、HCは抗体の重鎖を指し、pAはポリアデニル化シグナルを指す。インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)タンパク質を標的とする抗原結合タンパク質をコードするドナー核酸の別の具体的な例は、SA-LC-T2A-HC-pAを含み、ここで、SAはスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体の軽鎖を指し、T2AはT2Aペプチドを指し、HCは抗体の重鎖を指し、pAはポリアデニル化シグナルを指す。そのようなドナーの例は、配列番号16に記載されている。軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号17に記載され、配列番号18に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号19に記載され、配列番号20に記載されるタンパク質配列をコードする。軽鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号111に記載され、配列番号112に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号113に記載され、配列番号114に記載されるタンパク質配列をコードする。3つの軽鎖CDRは、それぞれ、配列番号76~78に記載されて、それぞれ、配列番号97~99によってコードされる。3つの重鎖CDRは、それぞれ、配列番号79~81に記載されて、それぞれ、配列番号100~102によってコードされる。抗HA抗体の例は、配列番号18に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖(任意選択で、配列番号76~78に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号20に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖(任意選択で、配列番号79~81に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。抗HA抗体の例は、配列番号112に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域(任意選択で配列番号76~78に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号114に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域(任意選択で、配列番号79~81に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。具体的な例において、改変されたアルブミン遺伝子座(内因性マウスアルブミンエキソン1および組み込まれた抗体コード配列を含む)は、配列番号120に記載の配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるコード配列を含み得る。
【0220】
インフルエンザウイルス血球凝集素(HA)タンパク質を標的とする抗原結合タンパク質をコードするドナー核酸の別の具体例は、SA-LC-T2A-RoRss-HC-pAを含み、ここで、SAはスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体の軽鎖を指し、T2AはT2Aペプチドを指し、RORssはRORシグナル配列を指し、HCは抗体の重鎖を指し、pAはポリアデニル化シグナルを指す。そのようなドナーの例は、配列番号145に記載されている。軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号125に記載され、配列番号126に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号127に記載され、配列番号128に記載されるタンパク質配列をコードする。軽鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号141に記載され、配列番号142に記載されるタンパク質配列をコードする。重鎖可変領域ヌクレオチド配列は、配列番号143に記載され、配列番号144に記載されるタンパク質配列をコードする。3つの軽鎖CDRは、それぞれ、配列番号129~131に記載されて、それぞれ、配列番号135~137によってコードされる。3つの重鎖CDRは、それぞれ、配列番号132~134に記載されて、それぞれ、配列番号138~140によってコードされる。抗HA抗体の例は、配列番号126に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖(任意選択で、配列番号129~131に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号128に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖(任意選択で、配列番号132~134に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。抗HA抗体の例は、配列番号142に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である軽鎖可変領域(任意選択で配列番号129~131に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、配列番号144に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である重鎖可変領域(任意選択で、配列番号132~134に記載されているものに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるCDRを含む)と、を含む。具体的な例において、改変されたアルブミン遺伝子座(組み込まれた抗体コード配列を含む)は、配列番号146に記載の配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるコード配列を含み得る。
【0221】
Pseudomonas aeruginosaのPcrVタンパク質を標的とする抗原結合タンパク質をコードするドナー核酸の具体例は、SA-HC-T2A-LC-pAを含み、ここで、SAはスプライスアクセプター部位を指し、LCは抗体の軽鎖を指し、T2AはT2Aペプチドを指し、HCは抗体の重鎖を指し、pAはポリアデニル化シグナルを指す。
【0222】
C.セーフハーバー遺伝子座とアルブミン遺伝子座
本明細書のいずこかに記載されている抗原結合タンパク質をコードする配列は、細胞または動物の標的ゲノム遺伝子座にゲノム組み込みされ得る。セーフハーバー遺伝子座(セーフハーバー遺伝子)など、遺伝子を発現できる任意の標的ゲノム遺伝子座を使用することができる。組み込まれた外因性DNAと宿主ゲノムの間の相互作用は、組み込みの信頼性と安全性を制限する可能性があり、標的遺伝子改変によるものではなく、周囲の内因性遺伝子に対する組み込みの意図しない影響による明白な表現型効果をもたらす可能性がある。例えば、ランダムに挿入された導入遺伝子は、位置効果とサイレンシングの影響を受けやすく、その発現が信頼できず、予測できないものになる可能性がある。同様に、外因性DNAの染色体遺伝子座への組み込みは、周囲の内因性遺伝子とクロマチンに影響を及ぼし、それによって細胞の挙動と表現型を変化させる可能性がある。セーフハーバー遺伝子座には、導入遺伝子または他の外因性核酸インサートが、細胞の挙動または表現型を明白に変えることなく(すなわち、宿主細胞に有害な影響を与えることなく)、目的のすべての組織で安定かつ確実に発現できる染色体遺伝子座が含まれる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sadelain et al.(2012)Nat.Rev.Cancer 12:51-58を参照されたい。例えば、セーフハーバー遺伝子座は、挿入された遺伝子配列の発現が、隣接する遺伝子からのリードスルー発現によって乱されない遺伝子座であり得る。例えば、セーフハーバー遺伝子座には、内因性遺伝子の構造または発現に悪影響を及ぼすことなく、外因性DNAが予測可能な方法で組み込まれて機能できる染色体遺伝子座を含めることができる。セーフハーバー遺伝子座には、遺伝子外領域または遺伝子内領域、例えば、必須ではない、不要な、または明白な表現型の結果なしに破壊できる遺伝子内の遺伝子座を含めることができる。
【0223】
このようなセーフハーバー遺伝子座は、すべての組織でオープンクロマチン構成を提供でき、胚発生中および成体で遍在的に発現することができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Zambrowicz et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:3789-3794を参照されたい。さらに、セーフハーバー遺伝子座を高効率で標的化することができ、セーフハーバー遺伝子座を明白な表現型を伴わずに破壊することができる。セーフハーバー遺伝子座の例には、アルブミン、CCR5、HPRT、AAVS1、およびRosa26が含まれる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,888,121号、同第7,972,854号、同第7,914,796号、同第7,951,925号、同第8,110,379号、同第8,409,861号、同第8,586,526号、ならびに米国特許公開第2003/0232410号、同第2005/0208489号、同第2005/0026157号、同第2006/0063231号、同第2008/0159996号、同第2010/00218264号、同第2012/0017290号、同第2011/0265198号、同第2013/0137104号、同第2013/0122591号、同第2013/0177983号、同第2013/0177960号、および同第2013/0122591号を参照されたい。適切なセーフハーバー遺伝子座の別の例はTTRである。
【0224】
抗原結合タンパク質のコード配列は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の任意の部分に組み込むことができる。例えば、それらは、セーフハーバー遺伝子座のイントロンもしくはエキソンに挿入することができ、あるいはゲノム遺伝子座もしくはセーフハーバー遺伝子座の1つ以上のイントロンおよび/またはエキソンを置き換えることができる。標的ゲノム遺伝子座に組み込まれた発現カセットは、標的ゲノム遺伝子座で内因性プロモーター(例えば、内因性アルブミンプロモーター)に作動可能に連結することができ、または標的ゲノム遺伝子座に対して異種である外因性プロモーターに作動可能に連結することができる。一例では、抗原結合タンパク質をコードする配列は、標的ゲノム遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子座)に組み込まれ、標的ゲノム遺伝子座(例えば、アルブミンプロモーター)で内因性プロモーターに作動可能に連結されている。別の例では、抗原結合タンパク質をコードする配列は、標的ゲノム遺伝子座(例えば、アルブミン遺伝子座)に組み込まれ、異種プロモーター(例えば、CMVプロモーター)に作動可能に連結されている。
【0225】
一例では、セーフハーバー遺伝子座はアルブミン遺伝子座である。アルブミンは肝臓で産生され、血中に分泌されるタンパク質である。血清アルブミンは、ヒトの血液中に見られるタンパク質の大部分である。アルブミン遺伝子座は高度に発現しており、ヒトでは毎日約15gのアルブミンタンパク質が産生される。アルブミンにはオートクリン機能がなく、単対立遺伝子ノックアウトに関連する表現型は見られず、二対立遺伝子ノックアウトでは軽度の表現型の観察のみが見られる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Watkins et al(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:9417-9421を参照されたい。アルブミン遺伝子座は、治療用遺伝子の挿入と発現のための安全で効果的な部位である。長期発現のための肝臓のアルブミン遺伝子座への挿入は、魅力的な治療モダリティである。一例では、抗原結合タンパク質配列は、アルブミン遺伝子座の第1イントロンなどの、アルブミン遺伝子座のイントロンに組み込まれる。例えば、図1を参照されたい。アルブミン遺伝子構造は、その第1エキソンが最終タンパク質産物から切断される分泌ペプチド(シグナルペプチドまたはシグナル配列)をコードするため、イントロン配列への導入遺伝子のターゲティングに適している。例えば、スプライスアクセプターと治療用導入遺伝子を有するプロモーターのないカセットの組み込みは、多くの異なるタンパク質の発現と分泌をサポートする。
【0226】
ヒトALBは第4染色体上のヒト4q13.3に位置する(NCBI RefSeq Gene ID 213;Assembly GRCh38.p12(GCF_000001405.38);location NC_000004.12(73404239..73421484(+)))。この遺伝子は15個のエキソンを有すると報告されている。野生型ヒトアルブミンタンパク質には、UniProtアクセッション番号P02768が割り当てられている。少なくとも3つのアイソフォームが知られている(P02768-1~P02768-3)。マウスAlbは、第5染色体上のマウス5 E1;5 44.7 cMに位置する(NCBI RefSeq Gene ID 11657;Assembly GRCm38.p4(GCF_000001635.24);位置NC_000071.6(90,460,870..90,476,602(+)))。この遺伝子は15個のエキソンを有すると報告されている。野生型マウスアルブミンタンパク質には、UniProtアクセッション番号P07724が割り当てられている。他の多くの非ヒト動物のアルブミン配列も知られている。これらには、例えば、ウシ(UniProtアクセッション番号P02769;NCBI RefSeq Gene ID280717)、ラット(UniProtアクセッション番号P02770;NCBI RefSeq Gene ID24186)、ニワトリ(UniProtアクセッション番号P19121)、スマトラオランウータン(UniProtアクセッション番号Q5NVH5;NCBI RefSeq Gene ID100174145)、ウマ(UniProtアクセッション番号P35747;NCBI RefSeq Gene ID100034206)、ネコ(UniProtアクセッション番号P49064;NCBI RefSeq Gene ID448843)、ウサギ(UniProtアクセッション番号P49065;NCBI RefSeq Gene ID100009195)、イヌ(UniProtアクセッション番号P49822;NCBI RefSeq Gene ID403550)、ブタ(UniProtアクセッション番号P08835;NCBI RefSeq Gene ID396960)、スナネズミ(UniProtアクセッション番号O35090)、rhesus macaque(UniProtアクセッション番号Q28522);NCBI RefSeq Gene ID704892)、ロバ(UniProtアクセッション番号Q5XLE4;NCBI RefSeq Gene ID106835108)、ヒツジ(UniProtアクセッション番号P14639;NCBI RefSeq Gene ID443393)、ウシガエル(UniProtアクセッション番号P21847)、ゴールデンハムスター(UniProtアクセッション番号A6YF56);NCBI RefSeq Gene ID101837229)、およびヤギ(UniProtアクセッション番号P85295)が含まれる。
【0227】
D.細胞および動物へのヌクレアーゼ剤およびドナー核酸の導入
本明細書に開示される方法は、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸)および外因性ドナー核酸を細胞または動物に導入することを含む。「導入すること」は、核酸またはタンパク質が動物内の細胞の内部または細胞の内部にアクセスできるように、細胞または動物に核酸またはタンパク質を提示することを含む。導入することは、任意の手段によって達成することができ、2つ以上の構成要素(例えば、2つの構成要素、またはすべての構成要素)を、任意の組み合わせで同時にまたは逐次的に細胞または動物に導入することができる。例えば、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)は、外因性ドナー核酸を導入する前に、細胞または動物に導入することができる。さらに、2つ以上の構成要素は、同じ送達方法または異なる送達方法によって細胞または動物に導入することができる。同様に、2つ以上の構成要素は、同じ投与経路または異なる投与経路によって動物に導入することができる。
【0228】
ガイドRNAは、RNA(例えば、インビトロ転写されたRNA)の形態で、またはガイドRNAをコードするDNAの形態で細胞に導入することができる。同様に、Cas9タンパク質、ZFN、またはTALENなどのタンパク質構成要素は、DNA、RNA、またはタンパク質の形で細胞に導入することができる。例えば、ガイドRNAとCas9タンパク質はどちらもRNAの形態で導入できる。DNAの形態で導入されると、ガイドRNAをコードするDNAは、細胞内で活性のあるプロモーターに作動可能に連結することができる。例えば、ガイドRNAは、AAVを介して送達され、U6プロモーターの下でインビボで発現できる。そのようなDNAは、1つ以上の発現コンストラクト中にあり得る。例えば、そのような発現コンストラクトは、単一の核酸分子の構成要素であり得る。代替的に、それらは、2つ以上の核酸分子の間で任意の組み合わせで分離することができる(すなわち、1つ以上のCRISPR RNAをコードするDNAおよび1つ以上のtracrRNAをコードするDNAは、別個の核酸分子の構成要素であり得る)。
【0229】
ガイドRNAまたはヌクレアーゼ剤をコードする核酸は、発現構築物中のプロモーターに作動可能に連結することができる。発現コンストラクトは、遺伝子または他の目的の核酸配列の発現を指示することができ、そのような目的の核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸コンストラクトを含む。発現コンストラクトにおいて使用することができる適切プロモーターとしては、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生が制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、または1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであってよい。任意選択で、プロモーターは、一方向のガイドRNAと他の方向の別の構成要素の両方の発現を駆動する双方向プロモーターであってもよい。このような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(DSE)、近位配列要素(PSE)、およびTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、ならびに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSEおよびTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターで構成してもよい。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSEとTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSEおよびTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0074535を参照されたい。双方向プロモーターを使用してガイドRNAと別の構成要素をコードする遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0230】
ガイドRNAまたはガイドRNA(または他の構成要素)をコードする核酸は、ガイドRNAの安定性を増加させる(例えば、所定の保存条件下(例えば、-20℃、4℃、または周囲温度)で、分解産物が閾値未満、例えば出発核酸またはタンパク質の0.5重量%未満のままである期間を延長する、あるいはインビボでの安定性を増加させる)担体を含む組成物中で提供され得る。そのような担体の非限定的な例としては、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D、L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質渦巻状物、および脂質微小管が挙げられる。
【0231】
細胞または動物への核酸またはタンパク質の導入を可能にするために、様々な方法および組成物が本明細書で提供される。核酸またはタンパク質を細胞または動物に導入するためのそのような方法には、例えば、ベクター送達、粒子媒介送達、エキソソーム媒介送達、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達、細胞透過性ペプチド媒介送達、または埋め込み型デバイスを介した送達が含まれ得る。具体的な例として、核酸またはタンパク質は、ポリ(乳酸)(PLA)マイクロスフェア、ポリ(D、L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質渦巻状物、または脂質微小管などの担体中で、細胞または動物に導入することができる。動物への送達のいくつかの具体例には、流体力学的送達、ウイルス媒介送達(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達、またはアデノウイルス、レンチウイルス、もしくはレトロウイルスによる)、および脂質ナノ粒子媒介送達が含まれる。1つの具体的な例では、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と外因性ドナー配列の両方を、LNP媒介送達を介して送達してもよい。別の具体的な例では、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と外因性ドナー配列の両方を、AAV媒介送達を介して送達してもよい。例えば、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と外因性ドナー配列とは、複数の異なるAAVベクター(例えば、2つの異なるAAVベクター)を介して送達してもよい。ヌクレアーゼ剤がCRISPR/Cas(例えば、CRISPR/Cas9)である具体例では、第1のAAVベクターはCas(例えば、Cas9)またはCasをコードする核酸を送達してもよく、第2のAAVベクターはgRNA(またはgRNAをコードする核酸)と外因性ドナー配列を送達してもよい。例えば、Cas9コード配列がAAVコンストラクトに適合することができるように、小さなプロモーターを使用することができる。そのようなプロモーターの例としては、Efs、SV40、または肝臓特異的エンハンサー(例えば、HBVウイルス由来のE2またはセルピンA遺伝子由来のセルピンA)およびコアプロモーター(例えば、本明細書に開示されたE2P合成プロモーターまたはセルピンAP合成プロモーター)を含む合成プロモーターが挙げられる。例示的なプロモーターには、以下が含まれる:(1)伸長因子1アルファショート(EF)(配列番号40)、(2)シミアンウイルス40(SV40)(配列番号41)、および2つの合成プロモーター((3)初期領域2プロモーター(E2P)(配列番号42)、および(4)セルピンAP(配列番号43))。しかしながら、他のプロモーターを使用してもよい。
【0232】
Cas9(Cas9をコードする核酸)が第1のAAVで送達され、gRNA(gRNAをコードする核酸)と外因性ドナー配列が第2のAAVで送達される場合、第1および第2のAAVは任意の適切な比(例えば、送達されたウイルスゲノムの比)で送達され得る。例えば、第1のAAVと第2のAAVの比は、約25:1~約1:25、約10:1~約1:10、約5:1~約1:5、約約4:1~約1:4、約4:1~約1:1、約1:1~約1:4、約3:1~約1:3、約3:1~約1:1、約1:1~約1:3、約2:1~約1:2、約2:1~約1:1、約1:1~約1:2、または約1:1であり得る。具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約1:2である。別の具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約2:1である。別の具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約1:1である。別の具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約5:1である。別の具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約10:1である。別の具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約1:5である。別の具体例では、第1のAAVと第2のAAVの比は約1:10である。
【0233】
別の具体的な例では、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)をLNP媒介送達を介して送達してもよく、外因性ドナー配列をAAV媒介送達を介して送達してもよい。別の具体的な例では、ヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)をAAV媒介送達を介して送達してもよく、外因性ドナー配列をLNP媒介送達を介して送達してもよい。
【0234】
細胞または動物への核酸およびタンパク質の導入は、流体力学的送達(HDD)によって達成することができる。流体力学的送達は、インビボでの細胞内DNA送達の方法として出現した。実質細胞への遺伝子送達では、必須のDNA配列のみを選択した血管から注射する必要があり、現在のウイルスおよび合成ベクターに関連する安全性の懸念が排除される。DNAは血流に注入されると、血液にアクセスできる様々な組織の細胞に到達することができる。流体力学的送達は、循環中の非圧縮性血液への大量の溶液の迅速な注射によって生成される力を利用して、大きくて膜不透過性の化合物が実質細胞に入るのを妨げる内皮および細胞膜の物理的障壁を克服する。DNAの送達に加えて、この方法は、RNA、タンパク質、およびその他の小さな化合物をインビボで効率的に細胞内に送達するのに役立つ。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bonamassa et al.(2011)Pharm.Res.28(4):694-701を参照されたい。
【0235】
核酸の導入は、AAV媒介送達またはレンチウイルス媒介送達などのウイルス媒介送達によっても達成することができる。他の例示的なウイルス/ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、および単純ヘルペスウイルスが含まれる。ウイルスは、分裂細胞、非分裂細胞、または分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染できる。ウイルスは宿主ゲノムに組み込まれてもよく、または代替的に宿主ゲノムに組み込まれなくてもよい。このようなウイルスは、免疫力が低下するように操作することもできる。ウイルスは、複製可能であってもよく、複製欠損(例えば、ビリオン複製および/またはパッケージングの追加ラウンドに必要な1つ以上の遺伝子に欠陥がある)であってもよい。ウイルスは、一過性の発現、長期的な発現(例えば、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月)、または永続的な発現(例えば、Cas9および/またはgRNAの)を引き起こし得る。例示的なウイルス力価(例えば、AAV力価)は、1012、1013、1014、1015、および1016ベクターゲノム/mLを含む。
【0236】
ssDNA AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム、RepとCapで構成され、相補DNA鎖の合成を可能にする2つの末端逆位配列が隣接している。AAVトランスファープラスミドを構築する場合、導入遺伝子は2つのITRの間に配置され、RepとCapはトランスで供給される。RepとCapに加えて、AAVはアデノウイルス由来の遺伝子を含むヘルパープラスミドを必要とする場合がある。これらの遺伝子(E4、E2a、およびVA)はAAV複製を仲介する。例えば、トランスファープラスミド、Rep/Cap、およびヘルパープラスミドをアデノウイルス遺伝子E1+を含むHEK293細胞にトランスフェクトして、感染性AAV粒子を生成することができる。代替的に、Rep、Cap、およびアデノウイルスヘルパー遺伝子を組み合わせて単一のプラスミドとすることもできる。同様のパッケージングセルおよび方法は、レトロウイルスなどの他のウイルスにも使用できる。
【0237】
AAVの複数の血清型が確認されている。これらの血清型は、感染する細胞の種類(すなわち、それらの指向性)が異なり、特定の細胞型の優先的な形質導入を可能にする。CNS組織に対する血清型には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、およびAAV9が含まれる。心臓組織に対する血清型には、AAV1、AAV8、およびAAV9が含まれる。腎臓組織に対する血清型にはAAV2が含まれる。肺組織に対する血清型には、AAV4、AAV5、AAV6、およびAAV9が含まれる。膵臓組織に対する血清型にはAAV8が含まれる。光受容細胞に対する血清型には、AAV2、AAV5、およびAAV8が含まれる。網膜色素上皮組織に対する血清型には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、およびAAV8が含まれる。骨格筋組織に対する血清型には、AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9が含まれる。肝臓組織に対する血清型には、AAV7、AAV8、およびAAV9、特にAAV8が含まれる。
【0238】
指向性は、キャプシドと異なるウイルス血清型からのゲノムの混合である偽型付けによってさらに洗練することができる。例えば、AAV2/5は、血清型5のキャプシドにパッケージされた血清型2のゲノムを含むウイルスを示す。偽型ウイルスの使用は、形質導入効率を改善するだけでなく、指向性を変えることができる。異なる血清型に由来するハイブリッドキャプシドを使用して、ウイルスの指向性を改変することもできる。例えば、AAV-DJには、8つの血清型由来のハイブリッドキャプシドが含まれており、インビボで幅広い細胞型にわたって高い感染力を示す。AAV-DJ8は、AAV-DJの特性を示すが、脳への取り込みが強化された別の例である。AAV血清型は、変異によっても改変できる。AAV2の変異改変の例には、Y444F、Y500F、Y730F、およびS662Vが含まれる。AAV3の変異改変の例には、Y705F、Y731F、およびT492Vが含まれる。AAV6の変異改変の例には、S663VおよびT492Vが含まれる。他の偽型/改変AAV変異体には、AAV2/1、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2.5、AAV8.2、およびAAV/SASTGが含まれる。具体的な例では、AAVはAAV2/8(AAV2ゲノムおよびAAV8キャプシドタンパク質を含むrepタンパク質)である。
【0239】
導入遺伝子の発現を加速するために、自己相補的AAV(scAAV)バリアントを使用することができる。AAVは細胞のDNA複製機構に依存して、AAVの一本鎖DNAゲノムの相補鎖を合成するため、導入遺伝子の発現が遅れる可能性がある。この遅延に対処するために、感染時に自発的にアニーリングすることができる相補的配列を含むscAAVを使用することができ、宿主細胞のDNA合成の必要性を排除する。しかしながら、一本鎖AAV(ssAAV)ベクターも使用できる。
【0240】
パッケージング容量を増やすために、より長い導入遺伝子を、1つ目は3’スプライスドナー、2つ目は5’スプライスアクセプターである2つのAAVトランスファープラスミドに分割することができる。細胞の共感染時に、これらのウイルスはコンカテマーを形成し、一緒にスプライシングされ、完全長の導入遺伝子を発現させることができる。これにより、より長い導入遺伝子の発現が可能になるが、発現の効率は低下する。容量を増やすための同様の方法は、相同組換えを利用する。例えば、導入遺伝子は2つのトランスファープラスミドに分割できるが、共発現が相同組換えと全長導入遺伝子の発現を誘導するように、実質的な配列の重複がある。
【0241】
特定のAAVでは、カーゴはヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)を含むことができる。特定のAAVでは、カーゴはガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含むことができる。特定のAAVにおいて、カーゴは、Cas9などのCasヌクレアーゼをコードするmRNA、およびガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含み得る。特定のAAVでは、カーゴに外因性ドナー配列を含めることができる。特定のAAVでは、カーゴはヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と外因性ドナー配列とを含むことができる。特定のAAVにおいて、カーゴは、Cas9などのCasヌクレアーゼをコードするmRNA、ガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸、および外因性ドナー配列を含み得る。
【0242】
核酸とタンパク質の導入は、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達によっても達成できる。例えば、LNP媒介送達は、RNAの形態でガイドRNAを送達するために使用することができる。具体的な例では、ガイドRNAとCasタンパク質はそれぞれ、同じLNPでのLNP媒介送達を介してRNAの形態で導入される。本明細書のいずこかでより詳細に論じられるように、1つ以上のRNAは、5’末端および/または3’末端に1つ以上の安定化末端修飾を含むように修飾され得る。そのような修飾には、例えば、5’末端および/または3’末端の1つ以上のホスホロチオエート結合、または5’末端および/または3’末端の1つ以上の2’-O-メチル修飾が含まれ得る。このような方法による送達は、ガイドRNAの一過性の存在をもたらし、生分解性脂質はクリアランスを改善し、忍容性を改善し、免疫原性を低下させる。脂質製剤は、生体分子を分解から保護すると同時に、細胞への取り込みを改善することができる。脂質ナノ粒子は、分子間力によって互いに物理的に結合した複数の脂質分子を含む粒子である。これらには、ミクロスフェア(単層および多層ベシクル、例えばリポソームを含む)、エマルジョン中の分散相、ミセル、または懸濁液中の内相が含まれる。そのような脂質ナノ粒子は、送達のために1つ以上の核酸またはタンパク質をカプセル化するために使用することができる。カチオン性脂質を含む製剤は、核酸などのポリアニオンを送達するのに有用である。含めることができる他の脂質は、中性脂質(すなわち、非荷電または両性イオン脂質)、陰イオン脂質、トランスフェクションを増強するヘルパー脂質、およびナノ粒子がインビボで存在できる時間を増加させるステルス脂質である。適切なカチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、ヘルパー脂質、およびステルス脂質の例は、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2016/010840A1およびWO2017/173054A1に見出すことができる。例示的な脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質および1つ以上の他の成分を含むことができる。一例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質を含むことができる。別の例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質およびDSPCなどの中性脂質を含むことができる。別の例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質、DSPCなどの任意の中性脂質、およびS010、S024、S027、S031、またはS033などのステルス脂質を含むことができる。
【0243】
LNPは、以下の1つ以上またはすべてを含み得る:(i)カプセル化およびエンドソーム脱出のための脂質、(ii)安定化のための中性脂質、(iii)安定化のためのヘルパー脂質、および(iv)ステルス脂質を含む。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Finn et al.(2018)Cell Rep.22(9):2227-2235およびWO2017/173054A1を参照されたい。特定のLNPでは、カーゴはヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)を含むことができる。特定のLNPでは、カーゴはガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含むことができる。特定のLNPにおいて、カーゴは、Cas9などのCasヌクレアーゼをコードするmRNA、およびガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含み得る。特定のLNPでは、カーゴに外因性ドナー配列を含めることができる。特定のLNPでは、カーゴはヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と外因性ドナー配列とを含むことができる。特定のLNPにおいて、カーゴは、Cas9などのCasヌクレアーゼをコードするmRNA、ガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸、および外因性ドナー配列を含み得る。
【0244】
カプセル化およびエンドソーム脱出のための脂質は、カチオン性脂質であり得る。脂質はまた、生分解性イオン化可能脂質などの生分解性脂質であり得る。適切な脂質の一例は、3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピル(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノアートとも呼ばれる、(9Z,12Z)-3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピルオクタデカ-9,12-ジエノアートである脂質AまたはLP01である。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Finn et al.(2018)Cell Rep.22(9):2227-2235およびWO2017/173054A1を参照されたい。適切な脂質の別の例は、((5-((ジメチルアミノ)メチル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン-8,1-ジイル)ビス(デカノアート)とも呼ばれる、((5-((ジメチルアミノ)メチル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン-8,1-ジイル)ビス(デカノアート)である脂質Bである。適切な脂質の別の例は、2-((4-(((3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)ヘキサデカノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイル(9Z,9’Z,12Z,12’Z)-ビス(オクタデカ-9,12-ジエノアート)である脂質Cである。適切な脂質の別の例は、3-(((3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)-13-(オクタノイルオキシ)トリデシル3-オクチルウンデカノアートである脂質Dである。他の適切な脂質としては、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート([(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル]4-(ジメチルアミノ)ブタノエートまたはDlin-MC3-DMA(MC3))としても知られる)が挙げられる。
【0245】
本明細書に記載のLNPでの使用に適したいくつかのそのような脂質は、インビボで生分解性である。例えば、そのような脂質を含むLNPには、脂質の少なくとも75%が、8、10、12、24、もしくは48時間以内、または3、4、5、6、7、もしくは10日以内に血漿から除去されるものが含まれる。別の例として、LNPの少なくとも50%が、8、10、12、24、もしくは48時間以内、または3、4、5、6、7、もしくは10日以内に血漿から除去される。
【0246】
このような脂質は、それらが含まれる培地のpHに応じてイオン化可能であってよい。例えば、わずかに酸性の培地では、脂質はプロトン化され、したがって正電荷を帯びることができる。逆に、例えば、pHが約7.35である血液などのわずかに塩基性の媒体では、脂質はプロトン化されない可能性があり、したがって電荷を帯びない可能性がある。いくつかの実施形態では、脂質は、少なくとも約9、9.5、または10のpHでプロトン化され得る。そのような脂質が電荷を帯びる能力は、その固有のpKaに関連している。例えば、脂質は、独立して、約5.8~約6.2の範囲のpKaを有し得る。
【0247】
中性脂質は、LNPを安定化し、その加工を改善するよう機能する。適切な中性脂質の例には、様々な中性、非荷電、または双性イオン性脂質が含まれる。本開示における使用に好適な中性リン脂質の例は、5-ヘプタデシルベンゼン-1,3-ジオール(レゾルシノール)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステロイルホスファチジルコリン、または1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、ホスホコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジルコリン(PLPC)、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リソホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジリノレオイルホスファチジルコリンジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルロレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、イソホスファチジルエタノールアミン、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SOPC)、およびこれらの組み合わせを含むが、これらには限定されない。例えば、中性リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、およびジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)からなる群から選択され得る。
【0248】
ヘルパー脂質には、トランスフェクションを促進する脂質が含まれる。ヘルパー脂質がトランスフェクションを強化する機序は、粒子安定性を増強することを含んでもよい。場合によっては、ヘルパー脂質が膜の融合性を高めることができる。ヘルパー脂質は、ステロイド、ステロール、およびアルキルレゾルシノールを含む。適切なヘルパー脂質の例には、コレステロール、5-ヘプタデシルレゾルシノール、およびヘミコハク酸コレステロールが含まれる。一例では、ヘルパー脂質はコレステロールまたはヘミコハク酸コレステロールであり得る。
【0249】
ステルス脂質には、ナノ粒子がインビボで存在できる時間の長さを変える脂質が含まれる。ステルス脂質は、例えば、粒子凝集を低減し、粒子サイズを制御することによって製剤化プロセスにおいて有用である。ステルス脂質は、LNPの薬物動態特性を調節し得る。適切なステルス脂質には、脂質部分に連結された親水性頭部基を有する脂質が含まれる。
【0250】
ステルス脂質の親水性頭部基は、例えば、PEG(しばしばポリ(エチレンオキシド)と呼ばれる)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリアミノ酸、およびポリN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドに基づくポリマーから選択されるポリマー部分を含んでもよい。PEGという用語は、ポリエチレングリコールまたは他のポリアルキレンエーテルポリマーを意味する。特定のLNP製剤では、PEGはPEG2000とも呼ばれるPEG-2Kであり、平均分子量は約2,000ダルトンである。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2017/173054A1を参照されたい。
【0251】
ステルス脂質の脂質部分は、例えば、独立して約C4~約C40の飽和または不飽和の炭素原子を含むアルキル鎖長を有するジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基を含むものを含むジアシルグリセロールまたはジアシルグリカミドから由来し得、ここで鎖は1つ以上の、例えばアミドまたはエステルなどの官能基を含み得る。ジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基は、1つ以上の置換アルキル基をさらに含み得る。
【0252】
一例として、ステルス脂質は、PEG-ジラウロイルグリセロール、PEG-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステアロイルグリセロール(PEG-DSPE)、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、およびPEG-ジステアロイルグリカミド、PEG-コレステロール(l-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキシアミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2k-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2k-DSPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2k-DSG)、ポリ(エチレングリコール)-2000-ジメタクリレート(PEG2k-DMA))、および1,2-ジステアリルオキシプロピル-3-アミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2k-DSA)から選択してもよい。1つの具体的な例において、ステルス脂質は、PEG2k-DMGであってよい。
【0253】
LNPは、製剤中の成分脂質の異なるそれぞれのモル比を含むことができる。CCD脂質のモル%は、例えば、約30モル%~約60モル%、約35モル%~約55モル%、約40モル%~約50モル%、約42モル%~約47モル%、または約45%であってよい。ヘルパー脂質のモル%は、例えば、約30モル%~約60モル%、約35モル%~約55モル%、約40モル%~約50モル%、約41モル%~約46モル%、または約44モル%であってよい。中性脂質のモル%は、例えば、約1モル%~約20モル%、約5モル%~約15モル%、約7モル%~約12モル%、または約9モル%であってよい。ステルス脂質のモル%は、例えば、約1モル%~約10モル%、約1モル%~約5モル%、約1モル%~約3モル%、約2モル%、または約1モル%であってよい。
【0254】
LNPは、生分解性脂質(N)の正に帯電したアミン基と、カプセル化される核酸の負に帯電したリン酸基(P)との間で異なる比を有することができる。これは、方程式N/Pで数学的に表すことができる。例えば、N/P比は、約0.5~約100、約1~約50、約1~約25、約1~約10、約1~約7、約3~約5、約4~約5、約4、約4.5、または約5であってよい。
【0255】
一部のLNPでは、カーゴは、Cas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)およびgRNAを含むことができる。Cas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)およびgRNAは、異なる比であってよい。例えば、LNP製剤は、約25:1~約1:25の範囲、約10:1~約1:10の範囲、約5:1~約1:5、または約1:1のCas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)とgRNAの比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:1~約1:5、または約10:1のCas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)とgRNA核酸の比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:10、25:1、10:1、5:1、3:1、1:1、1:3、1:5、1:10、または1:25のCas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)とgRNA核酸の比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:1~約1:2の、cas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)とgRNA核酸の比を含んでもよい。具体的な例において、Cas mRNA(例えば、Cas9 mRNA)とgRNAとの比は、約1:1または約1:2であってよい。
【0256】
一部のLNPでは、カーゴは外因性ドナー核酸とgRNAを含むことができる。外因性ドナー核酸とgRNAは異なる比にすることができる。例えば、LNP製剤は、約25:1~約1:25の範囲、約10:1~約1:10の範囲、約5:1~約1:5、または約1:1の外因性ドナー核酸とgRNAの比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:1~約1:5、約5:1~約1:1、約10:1、または約1:10の外因性ドナー核酸とgRNAの比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:10、25:1、10:1、5:1、3:1、1:1、1:1:3、1:5、1:10、または1:25の外因性ドナー核酸とgRNA核酸の比を含んでもよい。
【0257】
適切なLNPの具体的な例は、4.5の窒素対リン酸塩(N/P)比を持ち、45:44:9:2のモル比で生分解性カチオン性脂質、コレステロール、DSPC、およびPEG2k-DMGを含む。生分解性カチオン性脂質は、3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピル(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノアートとも呼ばれる、(9Z,12Z)-3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピルオクタデカ-9,12-ジエノアートであり得る。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Finn et al.(2018)Cell Rep.22(9):2227-2235を参照されたい。Cas9 mRNAは、ガイドRNAに対して重量比で1:1にすることができる。適切なLNPの別の具体的な例には、Dlin-MC3-DMA(MC3)、コレステロール、DSPC、およびPEG-DMGが50:38.5:10:1.5のモル比で含まれている。
【0258】
適切なLNPの別の具体的な例は、6の窒素対リン酸塩(N/P)比を持ち、50:38:9:3のモル比で生分解性カチオン性脂質、コレステロール、DSPC、およびPEG2k-DMGを含む。生分解性カチオン性脂質は、3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピル(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノアートとも呼ばれる、(9Z,12Z)-3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピルオクタデカ-9,12-ジエノアートであり得る。Cas9 mRNAは、ガイドRNAに対して重量比で1:2にすることができる。
【0259】
免疫原性を低下させるために、送達様式を選択することができる。例えば、異なる構成要素は、異なる様式(例えば、二峰性送達)によって配信され得る。これらの異なる様式は、対象の送達された分子に異なる薬力学または薬物動態特性を与える可能性がある。例えば、異なる様式は、異なる組織分布、異なる半減期、または異なる時間的分布をもたらす可能性がある。いくつかの送達様式(例えば、自律複製またはゲノム組み込みによって細胞内で持続する核酸ベクターの送達)は、分子のより持続的な発現および存在をもたらすが、他の送達様式は、一過性で持続性が低い(例えば、RNAまたはタンパク質の送達)。より一時的な方法で、例えばRNAとして成分を送達することにより、Cas/gRNA複合体が存在し、短期間のみ活性化することを保証し、免疫原性を低下させることができる。このような一時的な送達は、オフターゲットの改変の可能性を減らすこともできる。
【0260】
インビボでの投与は、例えば、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内を含む任意の適切な経路によることができる。全身投与様式には、例えば、経口および非経口経路が含まれる。非経口経路の例には、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、皮内、皮下、鼻腔内、および腹腔内経路が含まれる。具体的な例は静脈内注入である。局所投与様式には、例えば、髄腔内、脳室内、実質内(例えば、線条体(例えば、尾状核または被殻へ)、大脳皮質、前中心回旋、海馬(例えば、歯状回またはCA3領域)、側頭皮質、扁桃体、前頭皮質、視床、小脳、髄質、視床、視蓋、被殻、またはニグラ実質への局所的な実質内送達)、眼内、眼窩内、結膜下、硝子体内、網膜下、および強膜を介した経路が含まれる。(全身的アプローチと比較して)有意に少量の成分は、全身的に投与された場合(例えば、静脈内)と比較して、局所的に投与された場合(例えば、実質内または硝子体内)に効果を発揮し得る。局所投与様式はまた、治療有効量の成分が全身投与されるときに起こり得る潜在的に毒性の副作用の発生率を低減または排除し得る。
【0261】
具体的な例は、静脈内注射または注入である。ヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸(例えば、Cas9 mRNAおよびガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸)および/または外因性ドナー核酸を含む組成物は、1つ以上の生理学的および薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または助剤を含んでもよい。製剤は、選択した投与経路に依存する可能性がある。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、または補助剤が製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに実質的に有害ではないことを意味する。
【0262】
投与の頻度および投与回数は、他の要因の中でもとりわけ、外因性ドナー核酸またはガイドRNA(またはガイドRNAをコードする核酸)の半減期および投与経路に依存し得る。細胞または動物への核酸またはタンパク質の導入は、ある期間にわたって1回または複数回実施することができる。例えば、導入は、ある期間にわたって一度だけ、ある期間にわたって少なくとも2回、ある期間にわたって少なくとも3回、ある期間にわたって少なくとも4回、ある期間にわたって少なくとも5回、ある期間にわたって少なくとも6回、ある期間にわたって少なくとも7回、ある期間にわたって少なくとも8回、ある期間にわたって少なくとも9回、ある期間にわたって少なくとも10回、ある期間にわたって少なくとも11回、ある期間にわたって少なくとも12回、ある期間にわたって少なくとも13回、ある期間にわたって少なくとも14回、ある期間にわたって少なくとも15回、ある期間にわたって少なくとも16回、ある期間にわたって少なくとも17回、ある期間にわたって少なくとも18回、ある期間にわたって少なくとも19回、またはある期間にわたって少なくとも20回、実施することができる。
【0263】
E.インビボでの組み込まれた抗原結合タンパク質をコードする配列の発現および活性の測定
本明細書に開示される方法は、挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列の発現および/または活性を評価することをさらに含むことができる。標的化遺伝子改変を有する細胞を同定するために様々な方法を使用することができる。スクリーニングは、親染色体の対立遺伝子の改変(MOA)を評価するための定量的アッセイを含むことができる。例えば、定量的アッセイは、リアルタイムPCR(qPCR)などの定量的PCRを介して実施することができる。リアルタイムPCRは、標的遺伝子座を認識する第1のプライマーセットおよび非標的参照遺伝子座を認識する第2のプライマーセットを利用することができる。プライマーセットは、増幅された配列を認識する蛍光プローブを含むことができる。好適な定量的なアッセイの他の例としては、蛍光媒介インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション、等温DNA増幅、固定化プローブすべてに対する定量的ハイブリダイゼーション、INVADER(登録商標)プローブ、TAQMAN(登録商標)分子ビーコンプローブ、またはEclipse(商標)プローブ技術が挙げられる(例えば、の目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0144655号を参照されたい)。
【0264】
次世代シーケンシング(NGS)もスクリーニングに使用できる。次世代シーケンシングは、「NGS」または「超並列シーケンシング」または「ハイスループットシーケンシング」と呼ばれることもある。NGSは、MOAアッセイに加えてスクリーニングツールとして使用して、標的となる遺伝子改変の正確な性質と、それが細胞タイプ、組織タイプ、または臓器タイプ間で一貫しているかどうかを定義できる。
【0265】
非ヒト動物におけるゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の改変を評価することは、任意の組織または臓器からの任意の細胞型にあり得る。例えば、評価は、同じ組織または臓器からの複数の細胞型、または組織または臓器内の複数の場所からの細胞で行うことができる。これは、標的組織または臓器内のどの細胞型が標的化されているか、または組織または臓器のどのセクションがヒトアルブミン標的化試薬によって到達されているかについての情報を提供することができる。別の例として、評価は複数の種類の組織または複数の臓器で行うことができる。特定の組織、臓器、または細胞型が標的にされる方法では、これは、その組織または臓器がどれほど効果的に標的にされるか、および他の組織または臓器にオフターゲット効果があるかどうかについての情報を提供することができる。
【0266】
抗原結合タンパク質の発現を測定するための方法は、例えば、動物からの血漿または血清中の抗体レベルを測定することを含み得る。そのような方法はよく知られている。そのような方法はまた、外因性ドナー核酸によってコードされる抗体mRNAの発現を評価すること、または抗体の発現を評価することを含み得る。この測定は、肝臓内または肝臓内の特定の細胞型または領域内で行うことができ、または分泌された抗体の血清レベルを測定することを含むことができる。実施できるアッセイには、例えば、力価(hIgG)のELISA、標的抗原への結合のELISA、および以下の実施例1に記載されるような抗体の品質のためのウエスタンブロットが含まれる。
【0267】
使用できるアッセイの一例は、無傷の固定組織との関連で、単一ヌクレオチドの変化を含む、細胞特異的に編集された転写物を定量化することができる方法である、RNASCOPE(商標)およびBASESCOPE(商標)RNAインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)アッセイである。BASESCOPE(商標)RNA ISHアッセイは、遺伝子編集の特性評価においてNGSおよびqPCRを補完することができる。NGS/qPCRは野生型および編集された配列の定量的平均値を提供できるが、組織内の編集された細胞の不均一性またはパーセンテージに関する情報は提供しない。BASESCOPE(商標)ISHアッセイは、組織全体のランドスケープビューと、編集されたmRNA転写物を含む標的組織内の実際の細胞数を定量化できる単一細胞分解能での野生型対編集された転写物の定量化とを提供できる。BASESCOPE(商標)アッセイは、ペアオリゴ(「ZZ」)プローブを使用して非特異的なバックグラウンドなしでシグナルを増幅し、単一分子RNA検出を実現する。しかしながら、BASESCOPE(商標)プローブの設計とシグナル増幅システムにより、ZZプローブを使用した単一分子RNAの検出が可能になり、無傷の固定組織における単一ヌクレオチドの編集と変異を差次的に検出できる。
【0268】
抗原結合タンパク質がウイルスまたは細菌の抗原を標的とする中和抗原結合タンパク質である場合、抗原結合タンパク質の活性を測定するためのアッセイは、ウイルスまたは細菌の中和アッセイを含み得る。例としては、感染した宿主細胞および感染性ウイルス粒子を検出するためにウイルスまたは細菌抗原に特異的な蛍光標識抗体を使用する免疫染色技術を使用するプラーク減少中和試験(ウイルスプラークアッセイ)または焦点形成アッセイが挙げられる。同様のアッセイはよく知られている。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Shan et al.(2017)EBioMedicine 17:157-162、およびWilson et al.(2017)J.Clin.Microbiol.55(10):3104-3112を参照されたい。
【0269】
抗原結合タンパク質の活性は、抗原結合タンパク質の標的となるウイルスまたは細菌に動物を曝露し、抗原結合タンパク質が感染から保護するかどうかを評価することによっても試験できる。同様の腫瘍アッセイモデルは、がん関連抗原を標的とする抗原結合タンパク質に使用できる。他の疾患関連抗原を標的とする抗原結合タンパク質についても、同様のアッセイが存在するか、開発できる。
【0270】
III.予防的または治療的用途
本明細書に開示される方法は、疾患を有するかまたはそのリスクがある動物(ヒトまたは非ヒト)における疾患を治療またはその予防を実施するために使用することができる。対象が、危険因子のない個体よりも統計的に有意に高い疾患発症の危険性の危険因子に個体を置く少なくとも1つの既知の危険因子(例えば、遺伝的、生化学的、家族歴、状況的曝露)を有する場合、その個人は疾患のリスクが高くなる。
【0271】
例えば、そのような方法は、ゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座内の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤(またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸またはヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸)と抗原結合タンパク質が疾患に関連する抗原を標的とする、抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性のドナー核酸とを動物に導入することを含み得る。ヌクレアーゼ剤は、標的部位を切断することができ、抗原結合タンパク質をコードする配列がゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に挿入されて、改変されたゲノム遺伝子またはセーフハーバー遺伝子座をもたらし得る。次いで、抗原結合タンパク質を動物で発現させ、疾患に関連する抗原に結合させることができる。インビボで動物のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法は、本明細書のいずこかでより詳細に論じられている。
【0272】
抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、治療用抗原結合タンパク質または抗体であり得る。そのような抗原結合タンパク質または抗体は、疾患を引き起こす標的タンパク質の中和もしくはクリアランスのために、または疾患関連細胞(例えば、がん細胞)を選択的に殺傷するかもしくは除去するために使用することができる。このような抗体は、例えば、中和、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性、または補体依存性細胞傷害(CDC)活性を含む、いくつかの異なる作用機序を介して作用することができる。
【0273】
抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、中和抗原結合タンパク質または抗体、あるいは広域中和抗原結合タンパク質または抗体であり得る。中和抗体は、細胞が生物学的に持つあらゆる効果を中和することにより、抗原または感染体から細胞を防御する抗体である。広域中和抗体(bNAb)は、特定の細菌またはウイルスの複数の株に影響を及ぼす。
【0274】
疾患関連抗原は、本明細書のいずこかでより詳細に説明されている。いくつかの例として、そのような抗原は、がん関連抗原、感染症関連抗原、細菌抗原、またはウイルス抗原であり得る。それぞれの例は、本明細書のいずこかに開示されている。
【0275】
IV.セーフハーバー遺伝子座に挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列を含む細胞または動物またはゲノム
本明細書に開示される方法によって産生されるか、または本明細書に記載されるようなゲノム遺伝子座もしくはセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を含むゲノム、細胞、および動物も提供される。挿入することができる抗原結合タンパク質およびコード配列は、本明細書のいずこかでより詳細に記載されている。同様に、アルブミン遺伝子座などのゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座の例は、本明細書のいずこかでより詳細に説明されている。抗原結合タンパク質をコードする配列が安定して組み込まれるゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座は、抗原結合タンパク質をコードする配列についてはヘテロ接合であってよく、または抗原結合タンパク質をコードする配列についてはホモ接合であってもよい。二倍体生物は、各遺伝子座に2つの対立遺伝子を有する。対立遺伝子の各ペアは、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、特定の遺伝子座に2つの同一の対立遺伝子がある場合はホモ接合であり、2つの対立遺伝子が異なる場合はヘテロ接合であると記載される。本明細書に記載のゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を含む動物は、その生殖系列にゲノム遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を含むことができる。
【0276】
本明細書で提供されるゲノム、細胞、または動物は、例えば、動物、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、およびヒトを含む、例えば、真核生物であり得る。「動物」という用語には、哺乳類、魚類、鳥類が含まれる。哺乳動物は、例えば、非ヒト哺乳動物、ヒト、げっ歯動物、ラット、マウス、またはハムスターであり得る。他の非ヒト哺乳動物には、例えば、非ヒト霊長類、サル、類人猿、ネコ、イヌ、ウサギ、ウマ、雄ウシ、シカ、バイソン、家畜(例えば、ウシ、去勢牛などのウシ種、ヒツジ、ヤギなどのヒツジ種、ならびにブタ、およびイノシシなどのブタ種)が含まれる。鳥類には、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ダチョウ、ガチョウ、アヒルなどが含まれる。飼育動物および農業用動物も含まれる。「非ヒト」という用語はヒトを除外する。
【0277】
細胞はまた、任意のタイプの未分化または分化状態であり得る。例えば、細胞は、全能性細胞、多能性細胞(例えば、ヒト多能性細胞、またはマウス胚性幹(ES)細胞またはラットES細胞などの非ヒト多能性細胞)、または非多能性細胞であってよい。全能性細胞には、任意の細胞型を生じさせることができる未分化細胞が含まれ、多能性細胞には、1種以上の分化細胞型へと発生する能力を有する未分化細胞が含まれる。
【0278】
本明細書で提供される細胞はまた、生殖細胞(例えば、精子または卵母細胞)であってよい。細胞は、有糸分裂能力のある細胞または有糸分裂的に不活性な細胞、減数分裂能力のある細胞または減数分裂的に不活性な細胞であり得る。同様に、細胞はまた、初代体細胞または初代体細胞ではない細胞であり得る。体細胞には、配偶子、生殖細胞、配偶子細胞、または未分化幹細胞ではない任意の細胞が含まれる。例えば、細胞は、肝細胞、腎臓細胞、造血細胞、内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞、間葉系細胞、ケラチノサイト、血液細胞、メラノサイト、単球、単核細胞、単球前駆細胞、B細胞、赤芽球-巨核球細胞、好酸球、マクロファージ、T細胞、膵島ベータ細胞、外分泌細胞、膵臓前駆細胞、内分泌前駆細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、ニューロン、グリア細胞、神経幹細胞、ニューロン、肝芽細胞、肝細胞、心筋細胞、骨格筋芽細胞、平滑筋細胞、管細胞、腺房細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、デルタ細胞、PP細胞、胆管細胞、白色または褐色脂肪細胞、または眼細胞(例えば、小柱網目細胞、網膜色素上皮細胞、網膜微小血管内皮細胞、網膜周囲細胞、結膜上皮細胞、結膜線維芽細胞、虹彩色素上皮細胞、角膜細胞、水晶体上皮細胞、非色素繊毛上皮細胞、眼脈絡膜線維芽細胞、光受容細胞、神経節細胞、双極細胞、水平細胞、またはアマクリン細胞)であり得る。例えば、細胞は、肝芽細胞または肝細胞などの肝細胞であり得る。
【0279】
本明細書で提供される細胞は、正常で健康な細胞であってよいか、または罹患した細胞または変異を有する細胞であってよい。
【0280】
本明細書で提供される動物は、ヒトであってよいか、またはそれらは、ヒト以外の動物であってよい。本明細書に記載の核酸または発現カセットを含む非ヒト動物は、本明細書のいずこかに記載されている方法によって作製することができる。「動物」という用語には、哺乳類、魚類、鳥類が含まれる。哺乳動物には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、サル、類人猿、ネコ、イヌ、ウマ、雄ウシ、シカ、バイソン、ヒツジ、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、およびモルモット)、および家畜(例えば、ウシおよび去勢牛などのウシ種、ヒツジおよびヤギなどのヒツジ種、ならびにブタおよびイノシシなどのブタ種)が含まれる。鳥類には、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ダチョウ、ガチョウ、およびアヒルが含まれる。飼育動物および農業用動物も含まれる。「非ヒト動物」という用語はヒトを除外する。ヒト以外の動物の具体的な例には、マウスおよびラットなどのげっ歯類が含まれる。
【0281】
非ヒト動物は、あらゆる遺伝的背景からのものであってよい。例えば、適切なマウスは、129系統、C57BL/6系統、129とC57BL/6の雑種、BALB/c系統、またはスイスウェブスター系統からのものであり得る。129系統の例には、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/Svlm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、および129T2が含まれる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Festing et al.(1999)Mamm.Genome 10(8):836を参照されたい。C57BL系統の例には、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/Kal_wN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaが含まれる。適切なマウスはまた、前述の129系統と前述のC57BL/6系統の雑種(例えば、50%129と50%C57BL/6)からのものであり得る。同様に、適切なマウスは、前述の129系統の雑種または前述のBL/6系統の雑種(例えば、129S6(129/SvEvTac)系統)からのものであり得る。
【0282】
同様に、ラットは、例えば、ACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、またはフィッシャーF344またはフィッシャーF6などのフィッシャーラット系統からのものであり得る。ラットはまた、上述の2つ以上の系統の雑種に由来する系統から得ることができる。例えば、適切なラットは、DA系統またはACI系統からのものであり得る。ACIラット系統は、白い腹と足、およびRT1av1ハプロタイプを有する黒いアグーチを持っていることを特徴としている。このような系統は、Harlan Laboratoriesを含む様々な供給源から入手できる。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチコートとRT1av1ハプロタイプを有することを特徴としている。このようなラットは、Charles RiverおよびHarlan Laboratoriesを含む様々な供給源から入手できる。場合によっては、適切なラットは近交系ラット系統に由来する可能性がある。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2014/0235933を参照されたい。
【0283】
一部の動物では、血清または血漿中の抗原結合タンパク質の発現は、少なくとも約500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、110000、120000、130000、または140000、150000、200000、250000、300000、350000、または400000ng/mL(すなわち、少なくとも約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、または140、150、200、250、300、350、または400μg/mL)である。例えば、発現は、少なくとも約2500、5000、10000、100000、または400000ng/mL(すなわち、少なくとも約2.5、5、10、100、または400μg/mL)であってよい。
【0284】
上記または下記で引用されているすべての特許出願、ウェブサイト、他の刊行物、アクセッション番号などは、各項目が、参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に示されたのと同じ程度に、すべての目的に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列の異なるバージョンが違う時間にアクセッション番号に関連付けられている場合、本出願の有効な出願日においてアクセッション番号に関連付けられるバージョンを意味する。有効な出願日とは、該当する場合、アクセッション番号に関する実際の出願日以前または優先出願の出願日を意味する。同様に、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが違う時間に公開されている場合、別段の指定のない限り、本出願の有効な出願日の直近に公開されたバージョンを意味する。別段に他の指示がない限り、本発明の任意の特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様を、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。本発明は、明瞭さおよび理解の目的に対し図表および例を介していくつかの詳細が記載されているが、添付の特許請求の範囲内で、ある特定の変化および改変を実施することができることが明らかになろう。
【0285】
配列の簡単な説明
添付の配列表に列記されているヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基のための標準的な文字略語、およびアミノ酸のための三文字表記を使用して示されている。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進み、3’末端に至る標準規則に従っている。各ヌクレオチド配列の1本の鎖のみが示されているが、相補鎖は、示されている鎖を任意に参照することによって含まれると理解される。アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が提供される場合、同じアミノ酸配列をコードするそのコドン縮重バリアントもまた提供されることが理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進みカルボキシ末端に至る標準規則に従っている。
【0286】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】
【実施例
【0287】
実施例1.マウスアルブミン遺伝子座への抗ジカ抗体遺伝子の挿入
マウスアルブミン遺伝子座への脂質ナノ粒子およびAAV媒介抗体の挿入
アルブミン遺伝子座は、治療用遺伝子の挿入と発現のための安全で効果的な部位である。CRIPSR/Cas9テクノロジーと安全なAAVベクターを組み合わせて、予防的または治療的抗体遺伝子を肝臓のアルブミン遺伝子座にノックインして長期発現させることは、魅力的な治療モダリティである。
【0288】
予防的または治療的抗体遺伝子を肝臓のアルブミン遺伝子座にノックインするために、図1に示され、以下でより詳細に説明されるように、抗体発現のために抗体遺伝子をマウスアルブミン遺伝子座に挿入するための、Cas9 mRNAと、マウスアルブミン遺伝子の第1イントロンを標的とするgRNAと、自己切断ペプチドによって結合した抗体軽鎖および重鎖をコードするAAV2/8を担持する脂質ナノ粒子(LNP)を使用した。AAV2/8は、AAV8キャプシドタンパク質と組み合わされたAAV2ゲノムおよびrepタンパク質を有する。重鎖コード配列は、V、D、およびJセグメントを含み、軽鎖コード配列は、軽鎖Vおよび軽鎖J遺伝子セグメントを含む。
【0289】
挿入戦略には、脂質ナノ粒子を使用してCas9 mRNAおよびgRNAをマウス肝臓に送達し、マウスアルブミン遺伝子の第1イントロンに二本鎖切断を誘導することが含まれていた。アルブミン遺伝子構造は、その第1エキソンが最終タンパク質産物から切断される分泌ペプチド(シグナルペプチドまたはシグナル配列)をコードするため、イントロン配列への導入遺伝子のターゲティングに適している。したがって、スプライスアクセプターと治療用抗体導入遺伝子を有するプロモーターのないカセットの組み込みは、治療用抗体導入遺伝子の発現と分泌をサポートした。次いで、抗体の軽鎖と重鎖をコードするAAV2/8は、非相同末端結合(NHEJ)経路を介して二本鎖切断部位に組み込まれ、図1に示すように、抗体遺伝子は内因性アルブミンプロモーターによって転写された。
【0290】
実験で使用したAAVゲノム(pAAV-AlbSA-REGN4504;配列番号1)には、2つの末端逆位配列(ITR)が隣接していた。AAVには、マウスアルブミン遺伝子の第1イントロンのスプライシングアクセプター(AlbSA;配列番号21)、REGN4504抗体軽鎖cDNA(4504LC;配列番号2(核酸)および配列番号3(タンパク質))が含まれ、配列を正しいオープンリーディングフレームに保持するための2つの追加のC塩基、フューリン切断部位(配列番号22(核酸)および配列番号23(タンパク質))、GSGアミノ酸で構成されるリンカー、マウスRor1シグナル配列(mRORss;配列番号31または32(核酸)および配列番号33(タンパク質))、REGN4504抗体重鎖コード配列(4504HC;配列番号4(核酸))および配列番号5(タンパク質))、ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメントの短縮形(sWPRE;配列番号36)、ならびにSV40ポリA(SV40ポリA;配列番号37)を伴っていた。マウスアルブミン遺伝子座に組み込まれたドナーコンストラクト(内因性マウスアルブミンエキソン1:mAlbss-LC-P2A-mRORss-HC REGN4504を含む)のコード配列は、配列番号115に示されている。
【0291】
第1の実験では、AAVドナー配列は、配列番号1に記載のAAV2/8 AlbSA 4504抗Env(ジカ)抗体ドナー配列であった。ドナーは、P2A自己切断ペプチドによって連結された抗体重鎖の上流の抗体軽鎖を含んでいた。配列の配列識別子を以下の表3に示す。
【0292】
【表3】
【0293】
脂質ナノ粒子は、マウスアルブミン遺伝子座のイントロン1を標的とする2つの異なるバージョンのガイドRNAを送達するように設計された。第1のバージョン(gRNA1v1)はNキャップ修飾されており、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含んでいた。第2のバージョン(gRNA1v2)は、Cas9タンパク質と相互作用しないすべての2’OH基が2’-O-メチル類似体に置き換えられ、Cas9と最小限の相互作用をゆするガイドRNAのテール領域は、5’および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合で修飾されていた。さらに、DNA標的化セグメントは、一部の塩基に2’-フルオロ修飾を有する。
【0294】
脂質ナノ粒子の製剤を表4に示す。Cas9 mRNA(キャップされ、修飾ウリジンを含む)およびgRNA(重量比1:1で含まれる)。LNPはNANOASSEMBLER(商標)ベンチトップで製剤化された。ナノ粒子は、微少流体チップで自己組織化した。
【0295】
【表4】
【0296】
実験計画を図2に示す。群ごとに3匹のC57BL/6マウスを使用した。脂質ナノ粒子(LNP)を1mg/kgの濃度で静脈内注射し、AAV AlbSA 4504(3E11 vg/マウス)を0日目に共注射した。実験には3つの群が含まれていた。(1)Cas9 mRNAを送達するLNPと第1のバージョンのガイドRNA1v1+AAV2/8 AlbSA 4504とを送達するLNP;(2)Cas9 mRNAと第2のバージョンのガイドRNA1+AAV2/8 AlbSA 4504を送達するLNP;(3)生理食塩水陰性対照。図2に示すように、LNPおよびAAV2/8の注射は0日目に行われた。血漿採血は、7、14、および28日目(すなわち、1、2、および4週目)に得られた。
【0297】
アデノ随伴ウイルスの産生は、HEK293細胞を用いたトリプルトランスフェクション法を使用して実施された。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Arden and Metzger(2016)J.Biol.Methods 3(2):e38を参照されたい。適切なベクター、1つのヘルパープラスミド、pHelper(Agilent、カタログ番号240074)、AAV rep/cap遺伝子を含む1つのプラスミド(pAAV RC2(Cell biolabs、カタログ番号VPK-422)、pAAV RC2/8(Cell Biolabs、カタログ番号VPK-426)、およびAAV ITRと導入遺伝子を提供する1つのプラスミド(pAAV-AlbSA-REGN4504;配列番号1)による、PEFpro(Polyplus transfection,New York,NY)媒介トランスフェクションの1日前に、細胞を播種した。トランスフェクションの72時間後、培地を回収し、細胞を緩衝液[50mM Tris-HCl、150mM NaClおよび0.5%デオキシコール酸ナトリウム(Sigma、カタログ番号D6750-100G)]で溶解した。次に、ベンゾナーゼ(Sigma,St.Louis,MO)を培地と細胞溶解物の両方に最終濃度0.5U/μLになるように加えた後、37℃で60分間インキュベートした。細胞溶解物を4000rpmで30分間スピンダウンした。細胞溶解物と培地を合わせ、最終濃度8%のPEG8000(Teknovaカタログ番号P4340)で沈殿させた。ペレットを400mMのNaClに再懸濁し、10000gで10分間遠心分離した。上清中のウイルスを149,000gで3時間の超遠心分離によりペレット化し、qPCRにより力価測定した。
【0298】
qPCRでAAVゲノムを滴定するために、AAVサンプルをDNaseI(Thermofisher Scientific、カタログ番号EN0525)で37℃で1時間処理し、DNA extract All Reagents(Thermofisher Scientificカタログ番号4403319)を使用して溶解した。カプセル化されたウイルスゲノムは、QuantStudio 3リアルタイムPCRシステム(Thermofisher Scientific)を使用して、AAV2 ITRに対するプライマーを使用して定量化された。AAV2 ITRプライマーの配列は、5’-GGAACCCCTAGTGATGGAGTT-3’(fwd ITR;配列番号82)および5’-CGGCCTCAGTGAGCGA-3’(rev ITR;配列番号83)であり、それぞれ、AAVからの左側の内部逆位反復配列(ITR)の配列、および右側の内部逆位反復配列(ITR)の配列に由来する。AAV2 ITRプローブの配列は、5’-6-FAM-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCG-TAMRA-3’(配列番号84)であった。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Aurnhammer et al.(2012)Hum.Gene Ther.Methods 23(1):18-28を参照されたい。95℃で10分間の活性化ステップの後、95℃で15秒間、60℃で30秒間、40サイクルの2ステップPCRサイクルを実施した。TAQMANユニバーサルPCRマスターミックス(Thermofisher Scientific、カタログ番号4304437)をqPCRで使用した。DNAプラスミド(Agilent、カタログ番号240074)を標準として使用して絶対力価を決定した。
【0299】
血清中の抗体価を定量化するためにELISAアッセイを実施した。黒色の96ウェルMaxisorpプレート(ThermoFisher番号437111)を、1μg/mLのAffiniPureヤギ抗ヒトIgGFcガンマ断片特異的抗体(Jackson ImmunoResearch番号109-005-098)で4℃で一晩コーティングした。プレートをKPL洗浄緩衝液(VWR番号5151-0011)で洗浄した後、3%-BSAブロッキング緩衝液(SeraCare番号5140-0008)で室温で1時間ブロックした。プレートを4回洗浄した後、標準として精製されたREGN4504(抗ジカAb)抗体、または0.5%-BSA、0.05%Tween(登録商標)-20ADB溶液(SeraCare番号5140-0000、ThermoFisher番号85114)で1:100に初期希釈した後、1:3段階希釈のマウス血清のいずれかと1時間室温でインキュベートした。標準抗体および血清とのインキュベーション後、プレートを4回洗浄し、ADB溶液中1:10,000のヤギ抗ヒトIgG HRP抗体(ThermoFisher番号31412)で室温で1時間インキュベートした。最後に、プレートを8回洗浄し、次いでSuperSignal ELISA Pico化学発光基質(ThermoFisher番号37070)を使用して発色し、PerkinElmer 2030 Victor X3マルチラベルリーダーで読み取った。
【0300】
LNPとAAVの共注射により、gRNA1v1を注射したマウスでは約1μg/mLの抗体発現が得られ、gRNA1v2を注射したマウスでは0.5μg/mLの抗体発現が得られた(図3)。抗体発現は4週目まで増加し続けた。LNPとgRNA1v1およびAAV2/8-AlbSA-REGN4504の共注射により、4週目に約10μg/mLの抗体が発現し、gRNA1v2を注射したマウスでは5μg/mLの抗体が発現した(図3)。第1のガイドRNAバージョン(N-cap gRNA)を含むLNPは、第2のガイドRNAバージョンよりもよりよく機能した。血清中の10μg/mLの抗体は、感染症などの多くの疾患の治療域に到達する。組み込まれたAAVから発現した抗体は、ジカ熱、インフルエンザ、またはその他の感染症の病原体による致死的な感染からマウスを保護する可能性がある。
【0301】
組み込まれたAAVから産生された抗体が機能的であり、ジカウイルスに対して中和活性を有するかどうかを判定するために、Cas9-gRNA LNPおよびAAV2/8 AlbSA4504抗ジカ抗体ドナー配列の注射後4週間目に採取した血漿サンプルを使用してジカ中和アッセイを実施した。感染の1日前に、1万個のVero細胞(カタログ番号CCL-81、ATCC,Manassas,VA)を、黒色で透明な底部の96ウェル細胞培養処理プレート(Cat#3904、Corning、Teterboro、NJ)中のDMEM完全培地(10%FBS、PSG)(カタログ番号10313-021、Life Technologies,Carlsbad,CA)にウェルごとに播種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。次いで、12μLの血清を出発点として使用した。次いで、血漿を1:3希釈係数のDMEMで希釈し、総量を12μLに保った。12μLの2.0E+04 ffu/mL MR766ウイルス(UTMB Arbovirus Reference Collectionから入手)を血漿とインキュベートし、30分のインキュベーション後に細胞に添加した。感染の1日後、細胞を氷冷したメタノールとアセトンの1:1混合液で4℃で30分間固定し、5%FBSと0.1%Triton-Xを含むPBSで室温で15分間透過処理し、PBS+5%FBSを用いて室温で30分間ブロッキングし、一次抗体(University of Texas Medical Branchから入手したジカマウス免疫化腹水液をPBS+5%FBSで1:10,000に希釈)で室温で1時間染色し、二次抗体(Alexa Fluor 488ヤギ抗マウス1μg/mLを含むPBS+5%FBS、カタログ番号A11001、ThermoFisher,Waltham,MA)と室温で1時間インキュベートした。次いで、MiniMaxモジュールを備えたSpectramax i3(カタログ番号353701346、Molecular Devices)プレートリーダーでプレートを読み取った。マウス血清中の抗体は中和活性を有しなかった(図4)。
【0302】
ウエスタンブロットを使用して、終末採血からの血清中の抗体の品質を評価した。簡潔に述べると、15μgの血清をNuPAGEサンプル還元剤(ThermoFisher番号NP0009)を含むか、または含まないNuPAGE LDSサンプル緩衝液(ThermoFisher番号NP0007)で希釈し、70℃で10分間インキュベートした。次いで、サンプルをNuPAGE 4-12%Bis-Trisタンパク質ゲル(ThermoFisher番号NP0321BOX)にロードし、NuPAGE MOPS SDS泳動緩衝液(ThermoFisher番号NP0001)で200Vで約35分間泳動した。ラダーとしてMagicMark Western Standard(ThermoFisher番号LC5602)を使用し、ゲルの陽性対照としてREGN4504(抗ジカAb)を使用した。ゲルは、iBlot2ドライブロッティングシステム(ThermoFisher番号IB21001)によってiBlot2 PVDF MiniStacks(ThermoFisher番号IB24002)に転写された。メンブレンをTBST(ThermoFisher番号28360)中の5%ミルク(VWR番号M203-10G-10PK)で室温で1時間ブロッキングし、PBS中のヤギ抗ヒトIgG HRP抗体(ThermoFisher番号31412)で1:5,000で室温で1時間プローブした。次いで、SuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(ThermoFisher番号34095)を使用してブロットを発色し、BioRad ChemiDoc MPイメージングシステムでイメージングした。ウエスタンブロッティングは、軽鎖の発現が異常であることを示し、軽鎖が不適切に切断されたことを示唆した(図5)。
【0303】
Cas9レディーマウスのマウスアルブミン遺伝子座への抗体挿入
第1の概念実証実験の後、導入遺伝子は、Cas9レディーマウスのマウスアルブミン遺伝子の第1イントロンへのAAV-REGN4446の相同性非依存性標的挿入媒介一方向標的挿入用に設計された(図6)。マウスゲノムのRosa26遺伝子座の第1イントロンに組み込まれたCas9コード配列を有するCas9レディーマウスは、US2019/0032155およびWO2019/028032に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0304】
この戦略では、重鎖をコードするセグメントは軽鎖をコードするセグメントの上流にあったため(図6)、重鎖の分泌は内因性のアルブミン分泌シグナルによって駆動された。異なる2Aペプチド、F2A(配列番号26(核酸)および27(タンパク質))、P2A(配列番号24(核酸)および25(タンパク質))、ならびにT2A(配列番号28(核酸)および29(タンパク質))、ならびに、アルブミン(配列番号34(核酸)および35(タンパク質))とマウスRor1シグナル配列(配列番号31または32(核酸)および33(タンパク質))の両方は、軽鎖発現の駆動について試験された(図6)。さらに、REGN4504による上述の実験とは対照的に、ITRは削除された。4つの異なる挿入コンストラクト((1)AAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC F2A Albss LC(配列番号6)、(2)AAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC P2A Albss LC(配列番号7)、(3)AAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC T2A Albss LC(配列番号8)、および(4)AAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC T2A RORss LC(配列番号9))および2つのエピソーム抗体発現コンストラクト((5)AAV2/8.CMV.REGN4446 LC T2A HC(配列番号11)、および(6)AAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号10))を、Cas9レディーマウスに注射した(表5)。配列の配列識別子を以下の表6に示す。マウスアルブミン遺伝子座に組み込まれたドナーコンストラクトのコード配列(内因性マウスアルブミンエキソン1を含む:(1)mAlbss-HC-F2A-Albss-LC REGN4446;(2)mAlbss-HC-P2A-Albss-LC REGN4446;(3)mAlbss-HC-T2A-Albss-LC REGN4446;および(4)mAlbss-HC-T2A-RORss-LC REGN4446)は、それぞれ配列番号116-119に記載されている。
【0305】
【表5】

【表6】
【0306】
実験設計を図7に示す。群ごとに、7~11週齢の3匹のオスpRosa26@XbaI-loxP-Cas9-2A-eGFP(2600KO/3040WT)マウスを使用した。AAV2/8は0日目に注射された(200μL IV注射)。図7に示すように、AAV2/8注射は0日目に行われ、血清採血は10日目、28日目、または56日目に得られた。さらなる分析のために、注射後70日目にマウスを解体した。血清採血後に行われた試験には、力価のELISA(hIgG;図8)、結合のELISA(ジカ;図10)、抗体品質のウエスタンブロット(図9)、および機能性の中和アッセイ(図11)が含まれていた。マウス抗ヒト抗体(MAHA)アッセイも実施された(データ示さず)。
【0307】
エピソーム抗体発現コンストラクトは、28日後のマウス血清において約100μg/mL~1000μg/mLの抗体力価をもたらした。軽鎖の前にアルブミンシグナル配列を含む挿入されたAAVは、約5μg/mLの抗体発現をもたらした。驚いたことに、軽鎖の前にmRor1シグナル配列と組み込まれたAAVは、マウス血清中で約1000μg/mLの抗体を発現した(図8)。軽鎖の上流のRORシグナル配列を使用した力価は、軽鎖の上流のアルブミンシグナル配列を使用した力価よりも有意に高かった。ウエスタンブロッティングは、組み込まれたAAVから発現した抗体の重鎖と軽鎖の分子量が精製された抗体と類似していることを示した(図9)。
【0308】
ELISAを使用して、エピソームAAVおよび組み込まれたAAVから発現した抗体の結合親和性を測定した。ジカ(prM80E)-mmh(ロット番号REGN4233-L4 5/12/16 PBSG 0.279mg/mL)を、黒色の96ウェルMaxisorpプレート(ThermoFisher番号437111)で4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートをKPL洗浄緩衝液(VWR番号5151-0011)で洗浄した後、3%-BSAブロッキング緩衝液(SeraCare番号5140-0008)で室温で1時間ブロックした。プレートを4回洗浄した後、標準として精製されたREGN4446(抗ジカAb)抗体、または0.5%-BSA、0.05%Tween(登録商標)-20ADB溶液(SeraCare番号5140-0000、ThermoFisher番号85114)で1:100に初期希釈した後、1:3段階希釈のマウス血清(終末採血から)のいずれかと1時間室温でインキュベートした。標準抗体および血清とのインキュベーション後、プレートを4回洗浄し、ADB溶液中1:10,000のヤギ抗ヒトIgG HRP抗体(ThermoFisher番号31412)で室温で1時間インキュベートした。最後に、プレートを8回洗浄し、次いでSuperSignal ELISA Pico化学発光基質(ThermoFisher番号37070)を使用して発色し、PerkinElmer 2030 Victor X3マルチラベルリーダーで読み取った。ELISAは、エピソームAAVと組み込まれたAAVの両方から発現した抗体の結合能力が精製されたREGN4446に匹敵することを示した(図10)。
【0309】
マウスによって産生された抗体が機能的であるかどうかを判定するために、終末採血からの血清を用いてジカ中和アッセイを実施した。ジカ中和アッセイ(図4で説明したように実施)は、エピソームAAVと組み込まれたAAVの両方から発現した抗体の中和活性が精製REGN4446と同様であることを示した(図11)。組織収集のために犠牲にされたマウスのインデルのNGS分析は、インデル率(アルブミン遺伝子の第1イントロンでのCas9/gRNA1切断によって引き起こされる)が挿入コンストラクトを注射されたマウス間で類似しているのに対し、生理食塩水とエピソームAAVを注射されたマウスはバックグラウンドレベルのインデル率を有した(図12A)。アルブミンエキソン1に結合する1つのプライマーと、抗体重鎖に結合するもう1つのプライマーによるTAQMAN qPCRは、抗体のmRNAレベルが類似していることを示した。これは、軽鎖の前のmRor1シグナル配列がマウス肝臓で2logを超える抗体産生を促進することを示している(図12B)。2つのコンストラクトの唯一の違いが軽鎖コード配列の上流のシグナル配列であるT2A/AlbssとT2A/RORssを比較すると、RORssはアルブミンシグナル配列と比較して抗体分泌を劇的に促進するようである。図8図12Bを比較されたい。
【0310】
アルブミン遺伝子への2つのAAV媒介抗体挿入
上に示したように、Cas9レディーマウスのマウスアルブミン遺伝子座のイントロン1に抗体遺伝子を挿入すると、高レベルの抗体発現をもたらした。Cas9レディーではない生物に挿入を行うために、Cas9発現カセットを担持する別のAAVを使用することができる。Cas9のcDNA(4.1kb)はAAVのパッケージング容量に近いため)、最初にAAV/Cas9コンストラクトに適合し、肝臓でのCas9発現を駆動できるいくつかの小さなプロモーターをスクリーニングした。
【0311】
小さなtRNAGlnプロモーター(配列番号38)を使用して、標的遺伝子1を標的とするガイドRNAの発現を駆動した。Cas9発現を駆動するために4つのプロモーターを試験した:(1)伸長因子1アルファショート(EF)(配列番号40)、(2)シミアンウイルス40(SV40)(配列番号41)、および2つの合成プロモーター((3)初期領域2プロモーター(E2P)(配列番号42)、および(4)セルピンAP(配列番号43))。合成プロモーターは、HBVウイルス由来の肝臓特異的エンハンサーE2(配列番号44)、またはセルピンA遺伝子由来のセルピンAエンハンサー(配列番号45))およびコアプロモーター(配列番号46)から構成されていた(図13)。
【0312】
tRNAGln gRNAおよびCas9を担持し、4つの異なるプロモーターによって駆動される、1E12 VGのAAV2/8ウイルス(tGln gRNA EFs Cas9(配列番号47)、tGln gRNA SV40 Cas9(配列番号48)、tGln gRNA E2P Cas9(配列番号49)、およびtGln gRNAセルピンAP Cas9(配列番号50))をマウスに注射した。5つの群が試験された:(1)生理食塩水対照、(2)AAV2/8.tGln gRNA e2P Cas9、(3)AAV2/8.tGln gRNA セルピンAP Cas9、(4)AAV2/8.tGln gRNA Efs Cas9、および(5)AAV2/8.tGln gRNA SV40pCas9。
【0313】
5週間後、血清を採取し、製造元のプロトコールに従ってELISAによって標的タンパク質1レベルを分析した(図14)。合成プロモーターを注射したマウスでは、標的タンパク質1レベルがノックダウンされ、セルピンAプロモーターが最もよく機能しているように見えた(図14)。
【0314】
次に、2つのAAV、5E11 VGまたは1E12 VG/マウスのいずれかのAAV2/8.セルピンAP.Cas9(配列番号39)および1E12 VG/マウスのAAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC T2A mRORss LC(配列番号9)を、5週齢のメスのC57BL/6マウスまたは8週齢のメスのBALB/cマウスに注射した。群ごとに3匹のマウスを使用した。実験設計を図20と表7に示す。
【0315】
【表7】
【0316】
gRNA1コード配列はCas9 AAVの代わりにREGN4446 HC T2A mRORss LC AAVに含まれているため、両方のAAVに感染した細胞のみがインデルと抗体遺伝子の挿入を有する。エピソームAAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号10)を陽性対照として使用した。注射の4週間後、AAV2/8.セルピンAP.Cas9の力価が高い群の抗体発現レベルは約100μg/mLであったが、C57BL/6マウスでは力価の低いグループは約50μg/mLであった(図15)。一方、AAV2/8.hU6gRNA1v1.REGN4446 HC T2A mRORss LC注射マウス(Cas9 AAV注射なし)には抗体発現がなかった。次いで、AAV2/8.セルピンAP.Cas9(配列番号39;1E12 VG/マウス)およびAAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC T2A mRORss LC(配列番号9;1E12 VG/マウス)を注射したマウス、ならびにエピソームAAV2/8.CASI.REGN4446(5E11 VG/マウス)を注射したマウスについて、高力価群の時間経過を118日に延長した。C57BL/6マウスとBALB/cマウスの両方を使用した。注射後118日で、組み込みのためのAAV2/8.セルピンAP.Cas9(配列番号39)およびAAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC T2A mRORss LC(配列番号9)を注射したマウスの抗体発現レベルは1000μg/mLに近づき、C57BL/6マウスのエピソームAAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号10)対照群の抗体発現レベルと同等であった(図18、左パネル)。同じ傾向がBALB/cマウスでも観察された-抗体(ヒトIgG)レベルの持続的な増加が経時的に観察され、エピソーム対照群の発現レベルに近づいた(図18、右パネル)-これらの結果は系統特異的でないことを示した。
【0317】
マウスによって産生された抗体が機能的であるかどうかを判定するために、図15の高力価群の28日目の血清を使用してジカ中和アッセイを実施した。ジカ中和アッセイ(図4で説明したように実施)は、この方法で生成された抗体が、精製されたREGN4446と同等にジカウイルスを中和することを示した(図16)。さらに、結合能力(ジカエンベロープタンパク質への結合)を上述のように評価して、精製されたREGN4446の結合を、エピソームAAVから発現した抗体またはCas9媒介AAV組み込みに続いて発現した抗体と比較した。ELISAは、エピソームAAVと組み込まれたAAVの両方から発現した抗体の結合能力が精製されたREGN4446に匹敵することを示した。図19を参照されたい。したがって、エピソームおよび挿入戦略を介して発現したモノクローナル抗体は、結合アッセイと中和アッセイの両方によって評価されるとき、CHO産生精製抗体と機能的に同等であった。結合および中和の結果の定量化を以下の表8に示す。
【0318】
【表8】
【0319】
中和のために、ベロ細胞を感染の1日前に10,000細胞/ウェルで黒色の透明底部の96ウェル細胞培養処理プレート中のDMEM完全培地(10%FBS、PSG)に播種し、感染の時まで、37℃で5%COでインキュベートした。感染の日に、マウス血清サンプルをDMEM感染培地(2%FBS、PSG)で最終中和反応濃度の2倍に希釈した。血清を培地に添加して、中和ウェルあたり12μLの血清の開始濃度とした(希釈あたり24μLの血清。ウイルスと1:1で組み合わせると、最終中和ウェルで12μL/血清が得られる)。次いで、サンプルを96ウェルV底マイクロタイタープレートで3倍に段階希釈し、中和ウェルあたり0.0002μLの血清で終了し、合計11の血清濃度とした。対照抗体REGN4446(ロットH4yH25703N)も、DMEM感染培地で、ビヒクルを注射したマウスからの血清とともに、最終中和反応濃度の2倍に希釈し、中和反応での開始濃度を5μg/mL(3.33E-08M、または33.33nM)とし、96ウェルマイクロタイタープレート全体で3倍段階希釈し、0.00008μg/mL(5.65E-13Mまたは565fM)で終了する、合計11の希釈とした。血清/培地の非感染および感染対照を可能にするために、DMEM感染培地、またはアッセイで使用される血清の最大量と混合されたDMEM感染培地を含む対照ウェルも調製された。ウイルスは、MR766ウイルス(UTMB Arbovirus Reference Collectionから取得し、Vero細胞で継代3まで増殖)をDMEM感染培地で2.0E+06ffu/mLのストック濃度から希釈して、2ffu/細胞、または20,000ffu/中和ウェルの感染多重度を与えることによって調製した。抗体と血清希釈は、V底96ウェルマイクロタイタープレート中で希釈したウイルスと1:1で組み合わせ、30分間37℃、5%COでインキュベートした。次いで、ウイルス/抗体/血清希釈液を細胞に加えた。1時間のインキュベーション後、接種物を除去し、細胞を100μLのDMEM+1%FBS、PSG、1%メチルセルロースで覆い、37℃、5%COで一晩(16~20時間)インキュベートした。メチルセルロースオーバーレイを細胞から吸引し、PBSで2回洗浄した。次いで、図4で概説したプロトコールに従って、細胞を固定、染色、および定量した。結果を図21に示す。これは、AAVを注射したマウスの血清中のエピソームおよび肝臓に挿入された抗ジカ抗体による同等の中和を示している。C57BL/6マウスとBALB/cマウスの両方の血清中のエピソームおよび肝臓に挿入された抗ジカモノクローナル抗体は、ナイーブマウス血清にスパイクされたCHO精製抗体と機能的に同等であった。
【0320】
エピソームまたはデュアルAAV挿入戦略のいずれかから生成されたモノクローナル抗体の機能を試験するために、インビボのジカ接種モデルが採用された。図22を参照されたい。10~11週齢のメスのインターフェロンアルファおよびベータ受容体1ノックアウトマウス(IFNAR)を、N=4マウスの7つの群に分けた。群は、以下のいずれかの注射を受けた。(1)PBS、(2)CAGプロモーターによって駆動されるオフターゲット対照抗体をエピソームで発現するAAV2/8、(3)低用量(1.0E+11 VG/マウス)、または(4)高用量(5.0E+11VG/マウス)のAAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号10)でREGN4446抗ジカ抗体をエピソームで発現する、(5)低用量(5.0E+11VG/マウス/ベクター)または(6)高用量(1.0E+12VG/マウス/ベクター)の、REGN4446抗ジカ抗体の肝臓挿入発現のためのAAV2/8.SerpinAP.Cas9(配列番号39)およびAAV2/8.hU6gRNA1.REGN4446 HC T2A mRORss LC(配列番号9;1E12 VG/マウス)の両方、または(7)200μgのCHO精製REGN4446抗ジカ抗体。群(1)~(6)は尾静脈注射により静脈内注射された。群(5)および(6)は、接種開始の21日前に注射された。群(1)~(4)は接種の14日前に注射された。群(7)は接種の2日前に皮下注射された。接種の1日前に、すべてのマウスを眼窩後方から採血し、血清を収集して、ヒトFC ELISAを実施し、各マウスのヒトモノクローナル抗体(オフターゲット対照またはREGN4446のいずれか)の循環力価を測定した。接種前にマウスの体重を測定し、腹腔内で10ffuのFSS13025ウイルスに感染させた。次いで、ジカウイルスの送達後最大14日間、24時間ごとにマウスの体重を測定した。体重減少が接種日の体重の>20%に達したら、マウスを犠牲にした。残りのすべてのマウスは14日目に犠牲にされた。
【0321】
図23は、接種の1日前に各動物でFC ELISAによって検出されたhIgGの力価を示す。各バーの高さは群ごとの平均力価であり、各ポイントはその群内の個々の動物の力価を表す。図3で概説したのと同じFC ELISAプロトコールを、各マウスから収集した血清で使用した。推定生存率は、CHO精製のREGN4504またはREGN4446抗ジカ抗体を使用した以前の接種実験に基づいて点線でプロットされている。エピソームおよびPBS注射は接種の14日前に実施され、挿入(デュアルAAV)は接種の21日前に実施された。CHO精製群には、接種の2日前に200μgのREGN4446を注射した。
【0322】
図24Aは、送達されたVG/マウスによって群分けされた動物の生存データの結果を示す。図23に示すように、各用量群では、特にエピソーム群において、接種の1日前に測定された循環mABの量に大きなばらつきがある。さらに、群ごとに4匹のマウスがいた。したがって、データを見る別の方法は、図24Bに示すように、AAV送達のタイプと用量ではなく、接種時の循環mABの量によってマウスを群分けすることである。図24Bは、高用量または低用量でエピソームまたはデュアルAAV戦略によって送達されたかどうかに関係なく、循環AAV送達REGN4446の力価によって動物が群分けされるように再配置された図24Aのデータを示す。図24Bの上部の表の値は、接種の1日前に測定されたmABのレベル(μg/mL)であり、コードは、mABテンプレートを送達したAAVのタイプエピソーム発現のための単一AAV、またはCas9媒介組み込みおよび低用量もしくは高用量のいずれかのためのデュアルAAVのいずれか)である。図24Aのようにデータをプロットして送達されたAAVのタイプごとに群分けすると、用量反応は不明瞭になるが、図24Bは、接種に対する用量反応を示す機能的mABを生成したことを示している。
【0323】
実施例2.マウスアルブミン遺伝子座への抗血球凝集素抗体または抗PcrV抗体遺伝子の挿入
同じ戦略を使用して、抗血球凝集素(抗HA;インフルエンザ)抗体または抗PcrV(Pseudomonas aeruginosa)抗体を組み込んで発現させる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/100807を参照されたい。次いで、アルブミン遺伝子座から発現した抗体がマウスの感染を予防するかどうかを判定するために試験が行われる。
【0324】
第1の実験では、AAVドナー配列は、配列番号16に記載のAAV2/8 AlbSA 3263抗HA(インフルエンザ)抗体ドナー配列であった。ドナーは、P2A自己切断ペプチドによって連結された抗体軽鎖と抗体重鎖とを含んでいた。配列の配列識別子を以下の表9に示す。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/100807(H1H11729P)も参照されたい。マウスアルブミン遺伝子座に組み込まれたドナーコンストラクト(内因性マウスアルブミンエキソン1:mAlbss-LC-P2A-HC REGN3263を含む)のコード配列は、配列番号120に示されている。
【0325】
【表9】
【0326】
第1の実験(抗HA)の実験設計を図17に示す。群ごとに5匹のC57BL/6マウスを使用する。脂質ナノ粒子(LNP)は2mg/kgの濃度で注射され、AAV AlbSA 3263(3E11)またはAAV CMV 3263(1E11)は0日目にLNPなしで、または0日目にLNPの共注射で注射される。実験には6つの群が含まれる:(1)Cas9 mRNAおよびgRNA1v1+AAV2/8 AlbSA 3263を送達するLNP、(2)AAV2/8 AlbSA3263単独、(3)AAV2/8 CMV3263単独、(4)REGN 3263抗体注射(高用量)、(5)REGN3263抗体注射(低用量)、ならびに(6)生理食塩水陰性対照。図17に示すように、LNPおよびAAV2/8の注射は0日目に行われ、抗体の注射(高用量および低用量の陽性対照)は9日目に行われる。血漿採血は7日目(すなわち、1週目)に得られる。その後、インフルエンザウイルスを注射して、アルブミン遺伝子座から発現した抗体がマウスの感染を予防するかどうかを試験する。
【0327】
エピソームとデュアルAAV戦略の両方を使用して発現する追加のモノクローナル抗体を実証するために、C57BL/6メスマウス(9週齢)にAAV2/8エピソームフォーマットの3つのmABのうちの1つを注射した:(1)AAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号10)、(2)H1H29339P抗PcrV(CAGプロモーターHC_T2A_RORss_LC)、または(3)H1H11829N2抗HA(CAGプロモーターLC_T2A_RORss_HC)。REGN4446はIgG4ユーバーステルスフォーマットである。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS10,556,952を参照されたい。H1H29339PおよびH1H11829N2はIgG1フォーマットである。H1H11829N2抗体配列の配列識別子を以下の表10に示す。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/100807も参照されたい。ウイルスは、尾静脈注射を介して1E12 VG/マウスの用量で送達された。5、20、および30日目にマウスを眼窩後方から採血し、分析のために血清を収集した。循環するヒトIgGの力価は、FC ELISAを使用して測定した。図3で概説したのと同じFC ELISAプロトコールを、各マウスから収集した血清で使用した。各mABに対応する一致するCHO精製タンパク質を使用して、血清サンプルの各セットの標準曲線を個別に作成した。図25には、最初の時点の値のみが示されている。
【0328】
【表10】
【0329】
さらに、pRosa26@XbaI-loxP-Cas9-2A-eGFPメスマウス(22週齢)に、gRNA1と、2つの抗体発現カセットのうちの1とを担持するAAV2/8と1つを注射した:(1)H1H29339P抗PcrV(HC_T2A_RORss_LC)、または(2)H1H11829N2抗HA(LC_T2A_RORss_HC)(配列番号145)。ウイルスは、尾静脈注射を介して1E12 VG/マウスの用量で送達された。12、27、および37日目にマウスを眼窩後方から採血し、分析のために血清を収集した。循環するヒトIgGの力価は、FC ELISAを使用して測定した。図3で概説したのと同じFC ELISAプロトコールを、各マウスから収集した血清で使用した。各mABに対応する一致するCHO精製タンパク質を使用して、血清サンプルの各セットの標準曲線を個別に作成した。図25には、最初の時点の値のみが示されている。gRNA1とH1H29339P抗PcrV(HC_T2A_RORss_LC)発現カセットとを担持するAAV2/8を注射した個々のpRosa26@XbaI-loxP-Cas9-2A-eGFPメスマウス(22週齢)の、ヒトFC ELISAによって検出されたhIgG値が表11に示される。図25のデータは、抗ジカ抗体と同様に、抗PcrVおよび抗HAモノクローナル抗体がAAV媒介挿入戦略を使用してインビボで発現できることを示している。
【0330】
【表11】
【0331】
図26および27は、それぞれ、上述の実験におけるマウスからの血清H1H29339P抗PcrVmABの結合および中和/細胞毒性データを示している。サンプルには、PBSにスパイクされたCHO精製H1H29339P、ビヒクル注射マウス血清にスパイクされたCHO精製H1H29339P、エピソームフォーマットのREGN4446抗ジカmAB AAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号NO:10)を注射したマウスの血清、エピソームフォーマットのH1H29339P抗PcrV mAB(CAG HC_T2A_RORss_LC)を注射したマウスの血清、および挿入フォーマットのH1H29339P抗PcrV mAB(HC_T2A_RORss_LC)を注射したマウスの血清が含まれる。エピソームサンプルは、注射の5日後に収集された血清からのものであった。挿入サンプルは、注射の12日後に収集された血清からのものであった。エピソームおよび肝臓に挿入された抗PcrVモノクローナル抗体は、インビトロでCHO産生精製抗体と比較して、結合および中和においてわずかに効果が低いようであった。図26および表12は、マウス血清からのエピソームおよび肝臓に挿入された抗PcrVモノクローナル抗体の結合が、CHO産生モノクローナル抗体よりもわずかに弱いことを示している。図27および表12は、マウス血清からのエピソームおよび肝臓に挿入された抗PcrVモノクローナル抗体の中和が、CHO産生モノクローナル抗体の2~5倍以内であることを示している。
【0332】
AAV送達からの抗PcrV含有血清のP.aeruginosaのPcrV組換えタンパク質へのELISA結合(図26)は、以下のように実施された:MicroSorp 96ウェルプレートは、0.2μg/ウェルの組換え全長P.aeruginosaのPcrV(GenScript)でコーティングされ、4℃で一晩インキュベートした。翌朝、プレートを洗浄緩衝液(Tween(登録商標)-20を含むイミダゾール緩衝生理食塩水)で3回洗浄し、200μLのブロッキング緩衝液(PBS中3%BSA)で25℃で2時間ブロッキングした。プレートを1回洗浄し、複数の力価の抗PcrV抗体(333nM~0.1pMの範囲で0.5%BSA/0.05%Tween(登録商標)-20/PBSで1:3段階希釈)または血清希釈(1:300希釈で開始して0.5%BSA/0.05%Tween(登録商標)-20/PBSで1:3段階希釈)をタンパク質を含むウェルに加え、25℃で1時間インキュベートした。ウェルを3回洗浄した後、ウェルあたり100ng/mLの抗ヒトHRP二次抗体とともに25℃で1時間インキュベートした。100μLのSuperSignal ELISA Pico化学発光基質を各ウェルに添加し、シグナルを検出した(Victor X3プレートリーダー、PerkinElmer)。発光は、12ポイントの応答曲線(GraphPad Prism)で4パラメーターのロジスティック方程式によって分析された。
【0333】
次のように図27のための中和/細胞毒性アッセイを実施した:A549細胞を96ウェルの透明底黒色組織培養処理プレート中に、Ham’s F-12K(10%熱不活化FBSおよびL-グルタミンを補充)中にmL当たり約5×10細胞の密度で播種し、5%COで37℃で一晩インキュベートした。翌日、培地を細胞から除去し、100μLのアッセイ培地(フェノールレッドを含まないDMEM、10%熱不活化FBSを補充)と交換した。一方、P.aeruginosa 6077株(Gerald Pier,Brigham and Women’s Hospital,Harvard University)の対数期培養は、以下のように調製した:一晩のP.aeruginosa培養物をLB中で増殖させ、新鮮なLBで1:50に希釈し、OD600が約1になるまで37℃で振とうしながら増殖させた。培養物をアッセイ培地で1回洗浄し、PBSでOD600=0.03に希釈した。50μL中の等量の細菌を、50μLの複数の力価の抗PcrV抗体(333nM~17pMの範囲で1:3段階希釈)または血清希釈(1:100希釈から開始した1:3段階希釈)と混合し、25°で30~45分間インキュベートした。培地をA549細胞から除去し、100μLの細菌:抗体ミックスで置き換え、5%COで37℃で2時間インキュベートした。CytoTox-Glo(商標)アッセイキット(Promega)を使用して細胞死を決定した。発光は、10ポイントの応答曲線(GraphPad Prism)で4パラメーターのロジスティック方程式によって分析された。
【0334】
【表12】
【0335】
図28および29は、それぞれ、上述の実験におけるマウスからの血清H1H11829N2抗HA mABの結合および中和データを示している。サンプルには、PBSにスパイクされたCHO精製H1H11829N2、ビヒクル注射マウス血清にスパイクされたCHO精製H1H11829N2、エピソームフォーマットのREGN4446抗ジカmAB AAV2/8.CASI.REGN4446 HC T2A LC(配列番号NO:10)を注射したマウスの血清、エピソームフォーマットのH1H11829N2抗HA mAB(CAG LC_T2A_RORss_HC)を注射したマウスの血清、および挿入フォーマットのH1H11829N2抗HA mAB(LC_T2A_RORss_HC)(配列番号145)を注射したマウスの血清が含まれる。エピソームサンプルは、注射の5日後に収集された血清からのものであった。挿入サンプルは、注射の12日後に収集された血清からのものであった。アイソタイプ対照は、CHO精製された抗FELD1である。エピソームおよび肝臓に挿入された抗HAモノクローナル抗体は、インビトロでCHO産生精製抗体と機能的に同等であった。図28は、マウス血清中のエピソームおよび肝臓に挿入された抗HAモノクローナル抗体の同等の結合を示し、図29は、マウス血清中のエピソームおよび肝臓に挿入された抗HAモノクローナル抗体の同等の中和を示している。
【0336】
MDCK London細胞を、96ウェルプレートの50μLの感染培地(1%ピルビン酸ナトリウム、0.21%Low IgG BSA溶液、および0.5%ゲンタマイシンを含むDMEM)に40,000細胞/ウェルで播種した。細胞を4時間、37℃、5%COでインキュベートした。次いで、プレートを、10^-4の希釈で50μLのH1N1 A/プエルトリコ/08/1934で感染させ優しくタップして、20時間、37℃、5%CO、元の場所に戻した。続いて、プレートをPBSで1回洗浄し、PBS中の4%PFA50μLで固定し、室温で15分間インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄し、300μLのStartingBlockブロッキング緩衝液で室温で1時間ブロッキングした。PBSまたはナイーブマウス血清にスパイクしたCHO精製H1H11829N2抗HA抗体(100μg/mL抗体濃度から開始)、あるいはエピソームもしくは挿入されたH1H11892N2抗HAまたはエピソームREGN4446抗ジカフォーマットを有するAAVを注射したマウスの血清をStartingBlockブロッキング緩衝液で1:4から1.2E-4ug/mLの最終濃度まで滴定した。インキュベーション後、ブロッキング緩衝液をプレートから取り出し、希釈した抗体を75μL/ウェルで細胞に添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液(イミダゾール緩衝生理食塩水およびTween(登録商標)20をMilli-Q水で1倍に希釈)で3回洗浄し、75μL/ウェルのブロッキング緩衝液で1:2000希釈した二次抗体(ロバ抗ヒトIgG HRPコンジュゲート)でオーバーレイした。二次溶液をプレート上で室温で1時間インキュベートした。続いて、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、1:1で調製した75μL/ウェルの発色基質ELISA Pico基質を加えた。プレートは、Molecular Devices Spectramax i3xプレートリーダーで発光について直ちに読み取られた。
【0337】
継代10未満のMDCK London細胞をMDCK培地(10%熱不活化FBS HyClone、L-グルタミン、およびゲンタマイシンを補充したDMEM)中にウェルあたり約8×10細胞の密度で、96ウェルの透明な底部黒色組織培養処理プレートに播種し、5%COで37℃で一晩インキュベートした。H1H11829N2抗HA抗体のエピソームフォーマットまたは挿入フォーマットのいずれかを注射したマウスの血清を1:10に希釈し、次いでサンプルを96ウェルV底マイクロタイタープレートで6倍に段階希釈して合計11の血清濃度にした。CHO精製H1H11829N2抗HA抗体を陽性対照としてナイーブマウス血清に希釈した。CHO精製抗FELD1を、同じく200μg/mLの陰性アイソタイプ対照としてナイーブマウス血清にスパイクした。A型インフルエンザウイルスH1N1A/PR/08/34(ATCC、カタログ番号VR-1469、ロット番号58101202)を氷上で解凍し、使用直前に希釈し、事前に希釈した血清抗体と1:1で組み合わせた。MDCK細胞から培地を除去し、60μLの2重の抗体:ウイルス混合物で置き換えた。次いで、細胞を37℃、5%COで20時間インキュベートして、病巣を形成させた。翌日、抗体:ウイルス混合物を吸引除去し、細胞を洗浄し、次いで4%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。次いでプレートを洗浄し、200μLのブロッキング緩衝液(Life Technologies、カタログ番号37538および0.1%Triton X-100)で室温で1時間ブロッキングした。ブロッキング緩衝液を除去し、75μLの希釈一次抗体(マウス抗インフルエンザA NP抗体Millipore、カタログ番号MAB8251)を添加して、4℃で一晩インキュベートした。次いでプレートをPBSで2回洗浄し、二次抗体(ヤギα-マウスAlexaFluor 488コンジュゲート抗体)を室温で1時間適用した。プレートをPBSで3回洗浄し、CTL Universal Immunospot Analyzerを使用して直ちに読み取った。プレートは自動焦点で画像化され、感染していないウイルスのみの対照ウェルを使用して、最小および最大の蛍光設定で設定した。カウントのための設定として蛍光病巣を選択し、プレートを読み取った。次いで、データをGraphPad Prismに、カウントされた蛍光(感染)細胞の数と抗体濃度のLOG Mとしてプロットした。
【0338】
エピソームまたはデュアルAAV挿入戦略のいずれかから生成された抗PcrVモノクローナル抗体の機能を試験するために、インビボのシュードモナス接種モデルが採用された。図30を参照されたい。メスのC57BL/6NCrl-EliteおよびメスのBALB/c Eliteマウス(5週齢)をN=5マウス/群/種の10の群に分けた。群は以下のいずれかを注射された。(1)PBS、(2)アイソタイプ対照抗体H1H11829N2抗HA(CAG LC_T2A_RORss_HC)をエピソーム発現するAAV2/8、(3)低用量(1.0E+10VG/マウス)もしくは(4)高用量(1.0E+11 VG/マウス)の、CAGプロモーター(HC_T2A_RORss_LCフォーマット)によって駆動されるH1H29339P抗PcrV抗体をエピソーム発現するAAV2/8、(5)低用量(1E+11VG/マウス/ベクター)もしくは(6)高用量(1E+12 VG/マウス/ベクター)の、gRNA1とH1H29339P抗PcrV mAb発現カセット(HC_T2A_RORss_LC)を担持する1つと、AAV2/8.SerpinAP.Cas9(配列番号39)との2つのAAV、(7)低用量(0.2mg/kg)もしくは(8)高用量(1.0mg/kg)のCHO精製H1H29339P抗PcrV mAB、または(9)1.0mg/kgのREGN684 hIgG1アイソタイプ対照。群10は、感染していない対照として機能するマウスの群であった。別の群(群11)は、保護されていない感染した対照(細菌のみ)として機能した。群(1)~(6)は、接種開始の16日前に尾静脈注射により静脈内注射された。群(7)~(9)は、接種の2日前に皮下注射された。追加のN=5マウスにも、追加のビヒクルのみの対照マウスのためにPBSを皮下注射し、群(1)のマウスの総数を10匹/種にした。接種の7日前に、群(1)~(6)のマウスを眼窩後方から採血し、血清を収集して、ヒトFC ELISAを実施し、各マウスのヒトmAB(アイソタイプ対照またはH1H23933P)の循環力価を決定した。接種の日にマウスの体重を測定し、次いで鼻腔内注射によりPseudomonas aeruginosa株6077を接種した。次いで、細菌投与後最大7日間、24時間ごとにマウスの体重を測定した。体重減少が>20%に達するか、マウスが次のような臨床的苦痛の他の兆候を示したら、マウスを犠牲にした。無気力;刺激に反応しない;けば立った毛皮、腰を下ろした姿勢、震え;または「神経学的」徴候(頭の傾き、回転、片側への落下)。瀕死であることが判明した、仰向けにしたときに自分自身を正すことができないマウスも犠牲にした。残りのすべてのマウスは、細菌感染後7日目に犠牲にされた。
【0339】
図31は、9日前(これは接種の7日前)にAAVを注射したマウスのhIgG力価を示す。上述の実験で記載したように、AAVを使用してモノクローナル抗体カセットを送達した後9日目にマウス血清中を循環するhIgGのレベルを決定するために、ヒトFC ELISAを実施した(図3の方法で記載したように)。いくつかの値は、この時点でのアッセイの検出限界(100ng/mL)を下回っていた。別の実験では、年齢を一致させたBALB/c-eliteマウスに、低用量(0.2mg/kg)または高用量(1.0mg/kg)のCHO精製H1H29339P抗PcrVモノクローナル抗体を注射し、2日後に血清を2回採取し、これらの用量に対応する接種時に予想される循環ヒトIgGレベルを決定した。これらの値は、グラフの右側にあるバーである。過去の観察と一致して、AAV8はBALB/cよりも効率的にC57BL/6マウスを形質導入する。その結果、シングルAAV(エピソーム)またはデュアルAAV(挿入)戦略のいずれかの形質導入の成功から生じる分泌タンパク質の値は、予想通りBALB/cマウスで低かった。挿入戦略では2つの異なるAAVの形質導入を成功させる必要があるため、感染力が低下すると、タンパク質の分泌をもたらすAAVが1つだけ必要な場合よりも、系統間で観察される力価がさらに低下する。
【0340】
図32Aおよび32Bは、上記で概説したシュードモナス接種実験における群(2)~(6)および(10)~(11)の結果を示す(図30)。これらは、モノクローナル抗体のAAV送達と、感染していない細菌のみの対照を含む群である。C57BL/6NCrl-Eliteマウスでは、すべてのAAVエピソーム送達アイソタイプ群(2)および保護されていない感染マウス(11)は接種を生き延びなかった。すべての非感染マウス(10)およびデュアルAAV戦略を使用してエピソームAAV発現またはアルブミン遺伝子座の第1イントロンへの挿入のいずれかを介して肝臓からH1H29339P抗PcrV mABを生成するマウスは、低用量または高用量のどちらが投与されたかに関係なく(3)~(6)生存した。図32Aを参照されたい。BALB/c-eliteマウスでは、5匹中4匹のAAVエピソーム送達アイソタイプ対照(2)、すべての保護されていない感染マウス(11)、およびすべてのデュアルAAV挿入戦略低用量マウス(5)は接種を生き延びなかった。すべての非感染マウス(10)およびエピソームAAV発現を介して肝臓からH1H29339P抗PcrV mABを生成するマウスは、低用量でも高用量でも(3)~(4)生存した。高用量を受けたデュアルAAV戦略からH1H29339P抗PcrV mABを生成するすべてのマウス(6)は生き残った。図32Bを参照されたい。
【0341】
要約すると、アルブミン遺伝子座への複数の異なる抗体遺伝子の挿入の成功を示し、生成された抗体がインビトロでCHO生成精製抗体と機能的に同等であり、インビボ接種モデルで保護を提供することを示した。これらの実験は、複数のIgGタイプの抗体を使用して行われた。すべてのジカデータは、IgG1であるREGN4504またはIgG4ユーバーステルスフォーマットであるREGN4446を使用しており、抗PcrVおよび抗HA抗体はIgG1フォーマットである。ウイルスを標的とする抗体(抗ジカ熱または抗HA)および細菌を標的とする抗体(抗PcrV)を用いた発現、機能性、および保護効果を示した。同様に、重鎖が最初である挿入された抗体遺伝子(抗PcrVおよび抗ジカ)を試験し、軽鎖が最初である抗体遺伝子(抗HAおよび抗ジカ)を試験した。同様に、2つの抗体鎖間で複数の異なる2Aタンパク質を試験した(抗PcrVは最初に重鎖のT2Aであり、抗HAは最初に軽鎖のT2Aであり、抗ジカで重鎖が最初であるF2A、P2A、およびT2Aを試験した)。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
インビボで動物またはインビトロもしくはインビボで細胞においてセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入するための方法であって、(a)前記セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)前記抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を前記動物または前記細胞に導入することを含み、
前記ヌクレアーゼ剤が前記標的部位を切断し、前記抗原結合タンパク質をコードする配列が前記セーフハーバー遺伝子座に挿入されて、改変されたセーフハーバー遺伝子座を生成する、方法。
(項目2)
前記抗原結合タンパク質が疾患関連抗原を標的とする、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記動物における抗原結合タンパク質の発現が、前記動物における前記疾患に対して予防的または治療的効果を有する、項目2に記載の方法。
(項目4)
疾患を有するか、またはそのリスクのある動物において前記疾患を治療するか、またはその予防を実施する方法であって、(a)セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的とするヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸、および(b)抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸を前記動物に導入することを含み、
前記抗原結合タンパク質が、前記疾患に関連する抗原を標的とし、
前記ヌクレアーゼ剤が前記標的部位を切断し、前記抗原結合タンパク質をコードする配列が前記セーフハーバー遺伝子座に挿入されて、改変されたセーフハーバー遺伝子座を生成し、
それにより、前記抗原結合タンパク質が、前記動物で発現し、前記疾患に関連する前記抗原に結合する、方法。
(項目5)
前記挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記セーフハーバー遺伝子座の内因性プロモーターに作動可能に連結されている、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、内因性分泌シグナルおよび前記抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードする、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記セーフハーバー遺伝子座がアルブミン遺伝子座である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記アルブミン遺伝子座の第1イントロンに挿入される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記動物の1つ以上の肝細胞のセーフハーバー遺伝子座に挿入される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記ヌクレアーゼ剤がジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記ヌクレアーゼ剤が前記Casタンパク質および前記gRNAであり、前記Casタンパク質がCas9タンパク質であり、前記gRNAが、
(a)前記標的部位を標的とするCRISPR RNA(crRNA)(前記標的部位はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列とすぐ隣接する)と、
(b)トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)と、を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記少なくとも1つのgRNAが、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、非相同末端結合を介して挿入される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が相同組換え修復を介して挿入される、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記外因性ドナー核酸がホモロジーアームを含まない、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記外因性ドナー核酸が一本鎖である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記外因性ドナー核酸が二本鎖である、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記外因性ドナー核酸中の前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、各々の側で前記ヌクレアーゼ剤の前記標的部位に隣接し、前記ヌクレアーゼ剤が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する前記標的部位を切断する、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記セーフハーバー遺伝子座の前記標的部位が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列が前記セーフハーバー遺伝子座に正しい方向で挿入された場合、もはや存在しないが、前記抗原結合タンパク質をコードする配列が前記セーフハーバー遺伝子座に反対方向に挿入された場合、再形成される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記外因性ドナー核酸がアデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達で送達され、前記抗原結合タンパク質をコードする配列に隣接する前記標的部位の切断が前記AAVの末端逆位配列を除去する、項目18または19に記載の方法。
(項目21)
前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体、scFV、bis-scFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab) 、二重可変ドメイン抗原結合タンパク質、単一可変ドメイン抗原結合タンパク質、二重特異性T細胞エンゲージャー(engager)、またはデイビスボディ(Davisbody)である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記抗原結合タンパク質が一本鎖抗原結合タンパク質ではない、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記抗原結合タンパク質が重鎖と別個の軽鎖とを含み、任意選択で、前記重鎖コード配列がV 、D 、およびJ セグメントを含み、前記軽鎖コード配列がV およびJ 遺伝子セグメントを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記重鎖コード配列が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列の前記軽鎖コード配列の上流にある、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記軽鎖コード配列が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列の前記重鎖コード配列の上流にある、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記重鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である、項目25または27に記載の方法。
(項目29)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、2Aペプチドまたは配列内リボソーム進入部位(IRES)によって連結された重鎖および軽鎖をコードする、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記重鎖および前記軽鎖が前記2Aペプチドによって連結されている、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記2AペプチドがT2Aペプチドである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記疾患関連抗原ががん関連抗原である、項目2~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記疾患関連抗原が感染症関連抗原である、項目2~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記疾患関連抗原がウイルス抗原である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記ウイルス抗原がインフルエンザ抗原またはジカ抗原である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記ウイルス抗原がインフルエンザ血球凝集素抗原である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記抗原結合タンパク質が、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖および3つの重鎖CDRを含む重鎖を含み、
(I)前記軽鎖が、配列番号18に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号20に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号76~78に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号79~81に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(II)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号120に記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含むか、あるいは、
(III)前記軽鎖が、配列番号126に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号128に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号129~131に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号132~134に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(IV)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号146に記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含む、項目36に記載の動物。
(項目38)
前記ウイルス抗原がジカエンベロープ(Env)抗原である、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記抗原結合タンパク質が、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖および3つの重鎖CDRを含む重鎖を含み、
(I)前記軽鎖が、配列番号3に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号5に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号64~66に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号67~69に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(II)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号115に記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含む、項目38に記載の動物。
(項目40)
前記抗原結合タンパク質が、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖および3つの重鎖CDRを含む重鎖を含み、
(I)前記軽鎖が、配列番号13に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号15に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号70~72に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号73~75に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(II)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号116~119のうちのいずれか1つに記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含む、項目38に記載の動物。
(項目41)
前記疾患関連抗原が細菌抗原であり、任意選択で、前記細菌抗原がPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である、項目33に記載の方法。
(項目42)
前記抗原結合タンパク質が中和抗原結合タンパク質または中和抗体である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記抗原結合タンパク質が、広域中和抗原結合タンパク質または広域中和抗体である、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が別個の送達ビヒクルに導入される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が同じ送達ビヒクルに一緒に導入される、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が同時に導入される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が逐次的に導入される、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が単回投与で導入される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および/または前記外因性ドナー核酸が複数回投与で導入される、項目1~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が静脈内注射を介して送達される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して、またはアデノ関連ウイルス(AAV)媒介送達を介して導入され、任意選択で、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が両方とも、AAV媒介送達によって導入され、任意選択で、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸が、2つの異なるAAVベクターによって導入される、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して導入される、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記脂質ナノ粒子が、50:38.5:10:1.5のモル比でDlin-MC3-DMA(MC3)、コレステロール、DSPC、およびPEG-DMGを含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)である、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
前記Cas9が前記脂質ナノ粒子中にあり、mRNAの形態にあり、前記脂質ナノ粒子中の前記gRNAがRNAの形態にある、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記外因性ドナー核酸が、AAV媒介送達を介して導入される、項目51~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記AAVが一本鎖AAV(ssAAV)である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記AAVが自己相補的AAV(scAAV)である、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記AAVがAAV8またはAAV2/8である、項目56~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、前記方法が、脂質ナノ粒子媒介送達を介して前記gRNAおよび前記Cas9をコードするmRNAを導入することを含み、前記外因性ドナー核酸がAAV8媒介送達またはAAV2/8媒介送達を介して導入される、項目1~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)およびガイドRNA(gRNA)を含み、前記方法が、第1のAAV8におけるAAV8媒介送達または第1のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達を介して前記Cas9をコードするDNAを導入することと、第2のAAV8におけるAAV8媒介送達または第2のAAV2/8におけるAAV2/8媒介送達を介して前記外因性ドナー核酸および前記gRNAをコードするDNAを導入することと、を含む、項目1~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記動物における前記抗原結合タンパク質の発現が、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、約8週間、約12週間、または約16週間で、少なくとも約2.5μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約100μg/mL、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、少なくとも約500μg/mL、少なくとも約600μg/mL、少なくとも約700μg/mL、少なくとも約800μg/mL、少なくとも約900μg/mL、または少なくとも約1000μg/mの血漿レベルをもたらす、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記動物が非ヒト動物である、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記動物が非ヒト哺乳動物である、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記非ヒト哺乳動物がラットまたはマウスである、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記動物がヒトである、項目1~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記ヌクレアーゼ剤が、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連9(Cas9)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)であり、
前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー配列が、脂質ナノ粒子媒介送達、アデノ随伴ウイルス8(AAV8)媒介送達、またはAAV2/8媒介送達を介して送達され、
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記動物の1つ以上の肝細胞において非相同末端結合を介して内因性アルブミン遺伝子座の前記第1イントロンに挿入され、
前記挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列が、内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結され、
改変されたアルブミン遺伝子座が、内因性アルブミン分泌シグナルおよび前記抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードし、
前記抗原結合タンパク質が、ウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、
前記抗原結合タンパク質が広域中和抗体であり、
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、2Aペプチドによって連結された重鎖と別個の軽鎖とをコードする、項目1~66のいずれか一項に記載の動物。
(項目68)
前記重鎖コード配列が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列の前記軽鎖コード配列の上流にあり、前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、前記外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である、項目67に記載の方法。
(項目69)
先行項目のいずれか一項に記載の方法によって生産された動物、または先行項目のいずれか一項に記載の方法によって生産された細胞。
(項目70)
セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた外因性抗原結合タンパク質をコードする配列を含む、動物。
(項目71)
前記挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記セーフハーバー遺伝子座の内因性プロモーターに作動可能に連結されている、項目69または70に記載の動物。
(項目72)
前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、内因性分泌シグナルおよび前記抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードする、項目69~71のいずれか一項に記載の動物。
(項目73)
前記セーフハーバー遺伝子座がアルブミン遺伝子座である、項目69~72のいずれか一項に記載の動物。
(項目74)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記アルブミン遺伝子座の前記第1イントロンに挿入される、項目73に記載の動物。
(項目75)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記動物の1つ以上の肝細胞の前記セーフハーバー遺伝子座に挿入される、項目69~74のいずれか一項に記載の動物。
(項目76)
前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体の抗原結合断片、多重特異性抗体、scFV、bis-scFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、V-NAR、VHH、VL、F(ab)、F(ab) 、二重可変ドメイン抗原結合タンパク質、単一可変ドメイン抗原結合タンパク質、二重特異性T細胞エンゲージャー、またはデイビスボディである、項目69~75のいずれか一項に記載の動物。
(項目77)
前記抗原結合タンパク質が一本鎖抗原結合タンパク質ではない、項目69~76のいずれか一項に記載の動物。
(項目78)
前記抗原結合タンパク質が重鎖と別個の軽鎖とを含み、任意選択で、前記重鎖コード配列がV 、D 、およびJ セグメントを含み、前記軽鎖コード配列がV およびJ 遺伝子セグメントを含む、項目77に記載の動物。
(項目79)
前記重鎖コード配列が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列の前記軽鎖コード配列の上流にある、項目78に記載の動物。
(項目80)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む、項目79に記載の動物。
(項目81)
前記軽鎖コード配列が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列の前記重鎖コード配列の上流にある、項目78に記載の動物。
(項目82)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記重鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含む、項目81に記載の動物。
(項目83)
前記外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である、項目80または82に記載の動物。
(項目84)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、2Aペプチドまたは配列内リボソーム進入部位(IRES)によって連結された重鎖および軽鎖をコードする、項目69~83のいずれか一項に記載の動物。
(項目85)
前記重鎖および前記軽鎖が前記2Aペプチドによって連結されている、項目84に記載の動物。
(項目86)
前記2AペプチドがT2Aペプチドである、項目85に記載の動物。
(項目87)
前記抗原結合タンパク質が疾患関連抗原を標的とする、項目69~86のいずれか1項に記載の動物。
(項目88)
前記動物における抗原結合タンパク質の発現が、前記動物における前記疾患に対して予防的または治療的効果を有する、項目87に記載の動物。
(項目89)
前記疾患関連抗原ががん関連抗原である、項目87または88に記載の動物。
(項目90)
前記疾患関連抗原が感染症関連抗原である、項目87または88に記載の動物。
(項目91)
前記疾患関連抗原がウイルス抗原である、項目90に記載の動物。
(項目92)
前記ウイルス抗原がインフルエンザ抗原またはジカ抗原である、項目91に記載の動物。
(項目93)
前記ウイルス抗原がインフルエンザ血球凝集素抗原である、項目92に記載の動物。
(項目94)
前記抗原結合タンパク質が、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖および3つの重鎖CDRを含む重鎖を含み、
(I)前記軽鎖が、配列番号18に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号20に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号76~78に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号79~81に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(II)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号120に記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含むか、あるいは、
(III)前記軽鎖が、配列番号126に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号128に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号129~131に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号132~134に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(IV)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号146に記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含む、項目93に記載の動物。
(項目95)
前記ウイルス抗原がジカエンベロープ(Env)抗原である、項目92に記載の動物。
(項目96)
前記抗原結合タンパク質が、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖および3つの重鎖CDRを含む重鎖を含み、
(I)前記軽鎖が、配列番号3に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号5に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号64~66に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号67~69に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(II)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号115に記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含む、項目95に記載の動物。
(項目97)
前記抗原結合タンパク質が、3つの軽鎖CDRを含む軽鎖および3つの重鎖CDRを含む重鎖を含み、
(I)前記軽鎖が、配列番号13に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記重鎖が、配列番号15に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、
任意選択で、前記3つの軽鎖CDRが、それぞれ配列番号70~72に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、前記3つの重鎖CDRが、それぞれ配列番号73~75に記載の配列と少なくとも90%同一の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるか、あるいは、
(II)前記改変されたセーフハーバー遺伝子座が、配列番号116~119のうちのいずれか1つに記載の配列と少なくとも90%同一のコード配列を含む、項目95に記載の動物。
(項目98)
前記疾患関連抗原が細菌抗原であり、任意選択で、前記細菌抗原がPseudomonas aeruginosaのPcrV抗原である、項目90に記載の動物。
(項目99)
前記抗原結合タンパク質が中和抗原結合タンパク質または中和抗体である、項目69~98のいずれか一項に記載の動物。
(項目100)
前記抗原結合タンパク質が、広域中和抗原結合タンパク質または広域中和抗体である、項目99に記載の動物。
(項目101)
前記動物における前記抗原結合タンパク質の発現が、前記ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする前記1つ以上の核酸および前記外因性ドナー核酸を導入した後、約2週間、約4週間、または約8週間で、少なくとも約2.5、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200μg/mL、少なくとも約300μg/mL、少なくとも約400μg/mL、または少なくとも約500μg/mLの血漿レベルをもたらす、項目69~100のいずれか一項に記載の動物。
(項目102)
前記動物が非ヒト動物である、項目69~101のいずれか一項に記載の動物。
(項目103)
前記動物が非ヒト哺乳動物である、項目102に記載の動物。
(項目104)
前記非ヒト哺乳動物がラットまたはマウスである、項目103に記載の動物。
(項目105)
前記動物がヒトである、項目69~101のいずれか一項に記載の動物。
(項目106)
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記動物の1つ以上の肝細胞の内因性アルブミン遺伝子座の前記第1イントロンに挿入され、
前記挿入された抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記内因性アルブミンプロモーターに作動可能に連結され、
前記改変されたアルブミン遺伝子座が、内因性アルブミン分泌シグナルおよび前記抗原結合タンパク質を含むキメラタンパク質をコードし、
前記抗原結合タンパク質が、ウイルス抗原または細菌抗原を標的とし、
前記抗原結合タンパク質が広域中和抗体であり、
前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、2Aペプチドによって連結された重鎖と別個の軽鎖とをコードする、項目69~105のいずれか一項に記載の動物。
(項目107)
前記重鎖コード配列が、前記抗原結合タンパク質をコードする配列の前記軽鎖コード配列の上流にあり、前記抗原結合タンパク質をコードする配列が、前記軽鎖コード配列の上流に外因性分泌シグナル配列を含み、前記外因性分泌シグナル配列がROR1分泌シグナル配列である、項目106に記載の動物。
(項目108)
セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた外因性抗原結合タンパク質をコードする配列を含む、細胞。
(項目109)
セーフハーバー遺伝子座に組み込まれた外因性抗原結合タンパク質をコードする配列を含む、ゲノム。
(項目110)
セーフハーバー遺伝子座に挿入するための抗原結合タンパク質をコードする配列を含む、外因性ドナー核酸。
(項目111)
セーフハーバー遺伝子に組み込まれた外因性抗原結合タンパク質をコードする配列を含む、セーフハーバー遺伝子。
(項目112)
対象内のセーフハーバー遺伝子座に抗原結合タンパク質をコードする配列を挿入することでの使用のための、ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、前記ヌクレアーゼ剤が前記セーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、前記外因性ドナー核酸が前記セーフハーバー遺伝子座に挿入される、ヌクレアーゼ剤または1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸。
(項目113)
対象における疾患の治療または予防での使用のための、ヌクレアーゼ剤または前記ヌクレアーゼ剤をコードする1つ以上の核酸および抗原結合タンパク質をコードする配列を含む外因性ドナー核酸であって、前記ヌクレアーゼ剤が前記対象のセーフハーバー遺伝子座の標的部位を標的として切断し、前記外因性ドナー核酸が前記セーフハーバー遺伝子座に挿入され、前記抗原結合タンパク質が前記対象で発現し、前記疾患に関連する抗原を標的とする、ヌクレアーゼ剤または1つ以上の核酸および外因性ドナー核酸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
【配列表】
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