(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電気またはハイブリッド自動車両の電動パワートレインを冷却および潤滑するための装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240722BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2021559845
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2020057861
(87)【国際公開番号】W WO2020207770
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-21
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アッサード, バッセル
(72)【発明者】
【氏名】ボリー, ジュリアン
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011055192(DE,A1)
【文献】米国特許第05359247(US,A)
【文献】国際公開第2018/206890(WO,A1)
【文献】特開2015-218869(JP,A)
【文献】特開2012-023812(JP,A)
【文献】特開2012-105457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線型回転子を有する電気機械(10)と前記機械に連結された減速機(20)とを備える、電気またはハイブリッド自動車両の電動パワートレインを冷却および潤滑するための装置であって、前記装置は、
オイルが供給される前記電気機械の冷却回路(30)であって、一方では、前記車両のラジエータ(5
3)を経由して前記電動パワートレインの部材を接続する冷却液回路(50)からの冷却液を除去するための冷却液除去パイプ(51)に接続され、他方では、前記電気機械(10)の下部に配置されたオイルリザーバ(31)からのオイルを除去するためのオイル除去パイプ(35)に接続されている熱交換器(36)と、前記熱交換器の出力部において、温度制御されたオイルの流れを
、前記電気機械の発熱体上に前記オイルを射出することができる前記冷却回路のオイル分配回路(37~40)に供給するため
の制御手段であって、
射出された前記オイルが前記オイルリザーバに回収される制御手段と、を備える、冷却回路を備え、
前記装置はまた、
前記減速機が内部に配置されたハウジング(21)を備えた前記減速機の潤滑回路であって、前記ハウジングの底部は、オイル貯蔵部(22)を構成するように形成されており、前記オイル貯蔵部(22)は、前記オイル貯蔵部と接触している前記減速機の要素の回転によって発生するいくらかのオイルを移動させることによって、前記減速機を潤滑することができる、潤滑回路を備えており、
前記装置は、前記熱交換器(36)の前記出力部において、前記オイル貯蔵部の前記オイルを冷却することを可能にするために、前記減速機の前記ハウジングの前記底部と接触して配置されている熱交換パイプのネットワーク(42)の入口に、前記熱交換器(36)からの温度制御された前記オイルの一部を運ぶことができる分流用パイプ(41)を備え、前記熱交換パイプのネットワーク(42)の出力部が前記オイルリザーバ(31)に接続されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記熱交換パイプは、前記減速機の前記ハウジング(21)内に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱交換パイプは、前記減速機の前記ハウジング(21)に対して外付けされていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記冷却回路は、前記オイルリザーバ(31)からオイルを吸い込むことができるオイルポンプ(34)を備え、前記オイルポンプは、前記オイル除去パイプ(35)に接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記
装置は、前記熱交換器(36)に接続された前記冷却液除去パイプ(51)の上流で前記冷却液回路(50)に配置されたバルブ(58)を備え、前記バルブ(58)は、一方では前記除去パイプ(51)に接続され、他方では前記熱交換器(36)を短絡させるために前記冷却液回路(50)から分岐される分流用分岐部(59)に接続され、前記バルブによって、前記冷却液回路内で流れる前記冷却液の少なくとも一部を、周囲温度に応じて、前記分流用分岐部(59)内に分流することができることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記バルブ(58)は、前記電動パワートレインの電力変換器(57)と前記熱交換器(36)との間の前記冷却液回路に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記バルブ(58)は、ワックスカプセルまたはソレノイドバルブによって作動されるサーモスタット式バルブであることを特徴とする、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記冷却回路の前記オイル分配回路は、前記電気機械の前記回転子の両側に配置されたジョイントおよび軸受(16)に対して前記オイルを運ぶことができるオイル入口チャネル(38)と、これらのオイル入口チャネルに固定され、これらのチャネルから前記ジョイントおよび軸受に排出される前記オイルの流れを制御することを目的とした可撓性ノズルとを備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記冷却回路の前記オイル分配回路は、固定子(11)の外周に対して前記オイルを運ぶことができるオイル入口チャネル(40)を備え、前記チャネルは、前記固定子の長手方向の中心軸に対して遠方にあるように、前記固定子の前記外周に位置する2つの対向するノズルに開口していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
巻線型回転子を有する電気機械および前記機械に連結した減速機を備える電動パワートレインと、請求項1から9のいずれか一項に記載の前記パワートレインを冷却および潤滑するための装置とを備える、電気またはハイブリッド自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線型回転子を有する電気機械とその電気機械に連結された減速機とを備えるタイプの、電動パワートレインを冷却および潤滑する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気またはハイブリッド自動車両の用途を目的とする電気機械の電力密度の増加に伴って、これらの機械の冷却効率の向上は、重大な問題となっている。既知の解決策の中では、機械の発熱体にオイルを直接注入して冷却することは、特に好都合である。
【0003】
特許文献WO2018/206890は、巻線型回転子を有する電気機械のオイル冷却回路を開示しており、このオイル冷却回路により、電動モータの回転子、固定子、ジョイントおよび軸受を確実に冷却する。この回路により、ジョイントおよび軸受の潤滑性も確実になる。この回路は、一方では、例えば、車両の水/空気交換用ラジエータを経由する水回路から冷却液を除去するためのパイプに接続され、他方では、電気機械の下部に配置されたオイルリザーバからオイルを除去するためのパイプに接続されている熱交換器と、電気機械の発熱体上に熱交換器から温度制御されたオイルを射出することを目的とする冷却回路のオイル分配回路に、温度制御されたオイルの流れを交換器の出口で供給することができ、このようにして射出されたオイルが重力によってオイルリザーバに回収される制御手段と、を備える。
【0004】
特に、交換器の出口に配設された、オイルの温度制御が可能な手段は、モータのオイル冷却回路に配置されたワックスカプセルによって作動されるサーモスタット式バルブを備え、冷却回路内で循環するオイルの温度が温度閾値よりも低い場合に、このモータと連携する熱交換器を短絡させる。このように熱交換器を短絡させることで、電動モータが低温で起動した場合に、特に、オイルの温度上昇を加速させることができる。これに対して、オイルの温度が温度閾値よりも高い場合に、バルブは、オイルを熱交換器に向かってのみ通過させ、熱交換器がリザーバを出たオイルを冷却した後、オイルが冷却後にモータの発熱体の上流にある分配回路に戻るようになっている。また、オイルの温度がこの閾値より高い場合に、熱交換器の出力部のオイルの流れの一部は、機械の発熱体を経由せずに、高温の交換器の領域でのオイルの冷却を促進するために、機械の下方に配置されたオイルリザーバ内へと直接分流され得る。
【0005】
しかしながら、低温で動作中に交換器を短絡させ、高温で動作中に機械の発熱体を経由せずにオイルをオイルリザーバに直接戻すことを可能にするために、オイル回路にワックス式サーモスタット付きバルブを組み込む原理には、所定数の欠点がある。まず、この配置によって、ワックス式サーモスタットの動作に関する信頼性の面でリスクが生じる。これは、一方では、ワックスカプセルと冷却回路で使用されるオイルとの適合性に関連し、他方では、ワックス式サーモスタットを制御するために課せられた動作温度の範囲に関連している可能性がある。さらに、サーモスタットの診断を実施するために、特に、バルブ内のオイルとオイル回路内のオイルとの間の圧力差によって、ワックスカプセルの動きがそう簡単に阻害されることがないことを保証するために、オイル回路にワックス式サーモスタットを組み込むことには、圧力センサの使用が必要となる。ワックス式サーモスタットが閉塞してしまった場合、機械に関する安全上のリスクがある。
【0006】
さらに、減速機と連携する巻線型回転子を有する電気機械を備えた電動パワートレインの冷却システムのうち、特許文献EP3363103において挙げられている例により、電気機械の出力部で連結された減速機の潤滑オイルを、電気機械の発熱体を直接冷却するために使用することが特に知られている。このように、この文献は、機械の冷却用オイルおよび減速機の潤滑オイルを共有する回路内で流れている同じオイルで冷却される電気機械および減速機を記載している。この機械の発熱体を冷却するために減速機の潤滑オイルを使用することによって、低速時にオイルの温度を急速に上昇させることができ、摩擦損失を減少させることができる。しかしながら、減速機および電気機械のために同じオイルが使用される場合、減速機の汚染物質による汚染、典型的には、減速機の歯車機構から剥離した金属微粒子によるオイルの汚染が、共通のオイルによって運ばれるこれらの金属粒子と電動モータのコイルの銅線との間に生じる摩耗接触の結果として、巻線型回転子を有するモータの電気的絶縁に影響を及ぼすことになりかねない。
【0007】
さらに、電気またはハイブリッド自動車両のリヤアクスルに適用するためのこのような電動パワートレインの開発という観点では、減速機の潤滑オイルの冷却には問題がある。なぜなら、上述の文献WO2018/206890によって挙げられた例にあるように、電気機械の冷却回路内で循環しているオイルが、車両の水回路および水/空気交換用ラジエータと連携する機械のオイル冷却回路に配置されたオイル/水熱交換器によって冷却され得るからである。これに対して、減速機で発生する熱に関して、車両のリヤアクスルに適用する観点では、空気の流れを介して熱を排出する必要がある場合、車両の後部ボンネットの下方の空気の流れは、所望の熱交換を確実にするには不十分であることがわかり得る。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、電気またはハイブリッド自動車両の電動パワートレインを冷却および潤滑するための装置を提供することであり、その装置は、巻線型回転子を有する電気機械と、その機械に連結された減速機とを備え、少なくとも部分的には、上記のような制限は受けない。
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、巻線型回転子を有する電気機械とその機械に連結された減速機とを備える、電気またはハイブリッド自動車両の電動パワートレインを冷却および潤滑するための装置に関し、その装置は、
オイルが供給される電気機械の冷却回路であって、一方では、車両のラジエータを経由して電動パワートレインの部材を接続する冷却液回路からの冷却液を除去するためのパイプに接続され、他方では、電気機械の下部に配置されたオイルリザーバからのオイルを除去するためのパイプに接続されている熱交換器と、熱交換器の出力部において、温度制御されたオイルの流れを冷却回路のオイル分配回路に供給するために、電気機械の発熱体上に熱交換器からの温度制御されたオイルを射出することができ、このようにして射出されたオイルがオイルリザーバに回収される制御手段と、を備える、冷却回路を備え、
その装置はまた、
減速機が内部に配置されたハウジングを備えた減速機の潤滑回路であって、ハウジングの底部は、オイル貯蔵部を構成するように形成されており、オイル貯蔵部は、オイル貯蔵部と接触している減速機の要素の回転によって発生するいくらかのオイルを移動させることによって、減速機を潤滑することができる、潤滑回路を備えており、
その装置は、熱交換器の出力部において、オイル貯蔵部のオイルを冷却することを可能にするために、減速機のハウジングの底部と接触して配置されている熱交換パイプのネットワークの入口に、熱交換器からの温度制御されたオイルの一部を運ぶことができる分流用パイプを備え、熱交換パイプのネットワークの出力部がオイルリザーバに接続されることを特徴とする。
【0010】
このように、電気機械の冷却回路の熱交換器からの制御された冷却用オイルは、オイル/オイル熱交換パイプのネットワークの結果として、減速機によって生じる熱を除去するために用いられ、機械と減速機との間でオイルを共有したり減速機専用の水/オイル交換器として別の特定の交換器を取り付けたりする必要なく、一方では、減速機に含まれる潤滑オイルと、他方では、電気機械の冷却用オイルとの間の熱交換を確実にする。言い換えれば、冷却液回路(典型的には水回路)および車両の水/空気交換用ラジエータによって補完されるオイル/液体冷却熱交換器は、機械および減速機で発生する熱を除去するために、電気機械と減速機との間で共有されてもよい。
【0011】
一実施形態によると、熱交換パイプは、減速機のハウジング内に形成される。言い換えれば、それは、減速機に組み込まれたシステムである。
【0012】
別の実施形態によると、熱交換パイプは、減速機のハウジングに対して外付けされている。
【0013】
有利には、冷却回路は、オイルリザーバからオイルを吸い込むことができるオイルポンプを備え、オイルポンプは、オイル除去パイプに接続されている。
【0014】
有利には、制御手段は、熱交換器に接続された冷却液除去パイプの上流で冷却液回路に配置されたバルブを備え、バルブは、一方では、除去パイプに接続され、他方では、熱交換器を短絡させるために冷却液回路から分岐される分流用分岐部に接続され、そのバルブによって、冷却液回路内で流れる冷却液の少なくとも一部を、周囲温度に応じて、分流用分岐部内に分流することができる。
【0015】
有利には、バルブは、電動パワートレインの電力変換器と熱交換器との間の冷却液回路に配置される。
【0016】
有利には、バルブは、ワックスカプセルまたはソレノイドバルブによって作動されるサーモスタット式バルブであってもよい。
【0017】
有利には、冷却回路のオイル分配回路は、電気機械の回転子の両側に配置されたジョイントおよび軸受に対してオイルを運ぶことができるオイル入口チャネルと、これらのオイル入口チャネルに固定され、これらのチャネルからジョイントおよび軸受に排出されるオイルの流れを制御することを目的とした可撓性ノズルとを備える。
【0018】
有利には、冷却回路のオイル分配回路は、固定子の外周に対してオイルを運ぶことができるオイル入口チャネルを備え、そのチャネルは、固定子の長手方向の中心軸に対して遠方にあるように、固定子の外周に位置する2つの対向するノズルに開口している。
【0019】
本発明はまた、巻線型回転子を有する電気機械およびその機械に連結した減速機を備える電動パワートレインと、上記のパワートレインを冷却および潤滑するための装置とを備える、電気またはハイブリッド自動車両に関する。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例によって与えられる以下の説明から理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による電動パワートレインの装置を冷却および潤滑する概略図である。
【
図2】車両のラジエータを経由し、
図1の装置の冷却回路の熱交換器に連結された、冷却液回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示す実施形態によると、本発明による冷却および潤滑装置は、車両のリヤアクスルに適用することを目的とした電気またはハイブリッド自動車両の電動パワートレインの機械式減速機20に接続された電気機械10を冷却するために提供される。
【0023】
電気機械10は、特に、シリンダヘッドを備えた固定子11と、銅線13が周りに巻きつけられた磁極が突出して構成された回転子12とから成っている。回転子12は、シャフト14上に取り付けられており、シャフト14は、一方は回転子に固定され、他方は、軸受およびジョイント16を介して電気機械のハウジング15に固定されている。
【0024】
機械式減速機20は、減速機のハウジング21に組み込まれており、ロータシャフト14の出口で連結されている。減速機は、電気機械の回転速度およびトルクを変化させることを目的とした歯車のアセンブリで構成されている。潤滑オイル貯蔵部22は、ハウジングの底部の領域で減速機のハウジング21内に含まれており、アセンブリを介したバブリングによって、言い換えれば、オイル貯蔵部と接触している減速機の要素の回転によって発生するいくらかのオイルの動きの結果として、減速機の要素を潤滑および冷却できるようにすることを目的としている。
【0025】
さらに、本発明の装置は、電気機械10のオイル冷却回路30を備えており、そのオイル冷却回路30は、回転子12および固定子11である機械の発熱体を冷却することを目的とし、また、ロータシャフトが取り付けられている軸受およびジョイント16である要素を、これらの要素にオイルを射出することで、冷却および潤滑することを目的としている。この目的を達成するために、冷却回路30は、その下方にある電気機械のハウジングの下部に配置された、電気機械の冷却用オイル32の保存物を貯蔵することを目的としたオイルリザーバ31を備える。オイル出口パイプ33は、リザーバ31の外側に開口し、オイルポンプ34に接続されており、そのオイルポンプ34により、リザーバ31内に貯蔵された冷却用オイルを吸い込むことが可能になる。オイルポンプ34は、その出力部で、ポンプ34によって除去されたオイルを熱交換器36内に運ぶオイル除去パイプ35に接続されており、熱交換器36は、熱交換器36で冷却されたオイルを運んで電気機械の発熱体上に直接射出することができるオイル分配回路に向かってオイルを再注入する前に、除去パイプ35から受け取ったオイルを冷却することを目的としている。このように射出されたオイルは、機械によって生じた熱を回収し、その後、重力によってリザーバ31に戻る。
【0026】
機械の冷却回路のオイル分配回路は、固定子に向かう入口37を備えており、その入口から、電気機械の回転子12の両側に配置されたジョイントおよび軸受16のハウジングに対して冷却されたオイルを運ぶことができるオイル入口チャネル38が分配されている。これらのチャネルは、好ましくは、これらのチャネルからジョイントおよび軸受16のハウジングに向かって排出されるオイルの流れの制御を可能にするために、これらのオイル入口チャネルに固定されている可撓性ノズルを備えている。これらのオイル入口チャネル38はまた、回転子のコイルヘッドに対向する回転子12の両側に位置されたインジェクタ39に向かって、冷却されたオイルを運ぶように構成されている。
【0027】
さらに、オイル分配回路の固定子に向かう入口37は、固定子の外周に対してオイルを運ぶことができる。好ましくは、それは、固定子の長手方向の中心軸に対して遠方にあるように、固定子の外周に位置する2つの対向するノズルに開口しているチャネル40に接続されている。したがって、これらの2つのノズルをこのように配置した結果、オイルが固定子のほぼ中央で射出されるような配置とは対照的に、射出されたオイルは、一部のみが固定子のシリンダヘッドの表面と接触し、他の部分は直接リザーバに向かって流れていく。このことにより、有利には、このように射出されたオイルの加熱を制限することができ、これはオイルの耐久性にとって重要である。さらに、2つの対向するノズルによって射出され、固定子のシリンダヘッドの表面と接触せずにリザーバに向かって流れるオイルは、熱交換器36からの冷却されたオイルであり、リザーバに入っている温かいオイルと混合することによって、リザーバに貯蔵された冷却用オイルの全体的な温度を下げるのに役立つ。
【0028】
オイル除去パイプ35を経由したポンプ34からのオイルを冷却するために、熱交換器36は、例えば、電動式ドライブトレインの部材を熱交換器36に接続する冷却液回路からの不凍剤に水が入り混じったタイプの冷却液除去パイプ51に接続される。
図2を参照すると、冷却用オイルを冷却することを目的とした熱交換器36は、したがって、電動式ドライブトレインの領域に固定された水/オイル交換器であり、車両の水/空気交換用ラジエータ53を経由する水回路50を介して、電動式ドライブトレインのその他の部材と共有される水/オイル交換器である。水/オイル交換器36の水出口52は、オイル/水交換器36の水入口を構成するパイプ51の領域内よりも温かい温度で水を提供し、その結果、水は、熱交換器36を介してオイルから熱を奪うことになる。このように加熱された、熱交換器36の水出口52からの水は、冷却されるために車両の水/空気交換用ラジエータ53に向かって運ばれ、その後、その出口において、車両の電動式ドライブトレインのその他の部材を介して熱交換器36の水入口51に接続された水ポンプ54に、水回路50を経由して供給される。電動式ドライブトレインのその他の部材とは、電気機械に電力を供給するための充電器55、DC/DCコンバータ56および電力変換器57のユニットである。このように、水ポンプ54によって、さまざまな要素間の循環が確実に行われ、ラジエータ53によって、空気による水の冷却が確実に行われる。
【0029】
以上で説明したように、機械の冷却用オイルは、機械のジョイントおよび軸受を潤滑するために使用される。ここで、低温では、特に-30℃から+5℃までの範囲内の温度では、使用されるオイルは非常に粘性があり、所望の潤滑機能にとっては好ましくないものである。この潤滑がなければ、機械のジョイントおよび軸受部品は、最初の回転運動から正常に機能しなくなるため、これらの部品上に少量のオイルを送る必要がある。
【0030】
さらに、低温では、機械の冷却回路の水/オイル交換器36の領域において、ラジエータによって冷却された水回路内に流れる水および車両の低温環境は、交換器36を通過するオイルを低温に保つのに貢献する。低温に保たれている機械の発熱体に射出されたオイルは、特に、動作中に熱くなった回転子のコイルの表面に熱衝撃を与えることになる。このような熱衝撃は、コイルの耐久性に悪影響を及ぼし、電気機械が早期に使用できなくなる場合がある。また、低温でオイルの粘度が高いと、その結果生じる摩擦損失が増加し、その結果、電気機械の動作にとっては好ましくない。
【0031】
さらに、高温での、特に5℃より高い温度での機械の動作中に、熱いオイルで機械を冷却することは、別の問題を伴う。このように、冷却回路の交換器の領域で効率的な水/オイル熱交換を確実に行うために、したがって、機械の熱損失の十分な排出を確実に行うために、熱交換器においてきわめて多いオイル流量を指定する必要がある。ここでは、特定の動作速度からオイルの流量が増加すると、特に、オイルがエアギャップに閉じ込められる可能性があるため、オイルによって、機械に摩擦損失が発生する。
【0032】
したがって、これらの問題を克服するためには、電気機械を冷却および潤滑するために、機械の温度および動作条件を考慮して、電気機械の上流に運ばれるオイルの温度を制御できることが必要である。
【0033】
これらの制御手段は、有利には、電気機械の冷却回路の水/オイル交換器36に連結された水回路50に組み込まれた制御バルブ58を備える。バルブ58は、電力変換器ユニット57と水/オイル交換器36との間でこの水回路50に組み込まれている。このバルブ58は、水/オイル交換器36の水入口51のすぐ上流に配置されており、一方では、この水入口51に接続され、他方では、水/オイル交換器36を短絡させるために水回路から分岐された分流用分岐部59に接続される。したがって、そのバルブは、分岐している水回路の水パイプと、水/オイル交換器36の水入口51および水/オイル交換器36を短絡させる分流用分岐部59からの2本のパイプのうちのいずれかとの間で、水の循環または通過を制御することが可能な三方バルブである。このように、バルブ58によって、水/オイル交換器36に到達した水の少なくとも一部を、周囲温度に応じて、分流用分岐部59内へ分流することができる。このバルブ58の機能は、したがって、温度に応じて、水/オイル交換器36を経由する水の流れを制御することであり、したがって、水/オイル交換器を経由するオイルの流量を温度制御することである。バルブ58は、例えば、電子制御ユニットによって制御されるソレノイドバルブ、または、例えば、対応するチャネル内への流路を遮断または開放することが可能なワックスカプセルによって作動するサーモスタットを備えるサーモスタット式バルブである。
【0034】
このように、低温での電気機械の動作モードでは、水の温度は温度閾値よりも低く、バルブ58は、水/オイル交換器36を短絡させる分流用分岐部59内のみ水を通過させることができ、これにより、水は、空気/水ラジエータ53の入口に直接運ばれるか、または変形例では、少ない流量の水を水/オイル交換器に送ることができる。このように、バルブ58は、水回路50と水/オイル交換器36との間の水の循環を防止することができ、または変形例では、水の温度が、低温での機械の動作条件に対応する所定の温度閾値よりも低い場合に、交換器に向かう水の流量を非常に少なくすることができる。このように、温度上昇段階で、温度がこの閾値より低い限り、電気機械の発熱体の上流に運ばれる電気機械の冷却用オイルは、水/オイル交換器によって冷却されないか、または変形例によってはほとんど冷却されず、このような低温での動作条件下では、オイルの急速な加熱を確実に行うことができる。したがって、この動作モードでのバルブ58の制御により、分流用分岐部59における水の循環のみを制御することで、温度上昇段階で、水/オイル交換器を短絡させることができる。
【0035】
この配置の結果、低温時のオイルの粘性と関連したオイルポンプ34の過熱が有利に回避される。これにより、ポンプの耐久性は、ポンプの大型化を進めることなく、向上する。さらに、低温でオイルを急速加熱する結果、オイルと、オイルが射出された機械のコイルの表面との間の熱衝撃を防ぐ。これにより、摩擦損失もかなり減少される。
【0036】
水回路の別の部品(充電器/DC-DCコンバータ/電力変換器)の冷却に制約があるため、回路の水ポンプの制御によって、水/オイル交換器に入る水の流量を制御できるとは考えられないということに留意されたい。したがって、この点については、バルブ58を水回路に追加することは、特に有利である。
【0037】
水の温度が所定の温度閾値より高い動作モードに対応する高温の電気機械の動作モードにおいて、バルブ58は、このモードでは、交換器36の水入口51の領域でのみ、到達した水を水/オイル交換器36に向かって通過させることができる。言い換えれば、水/オイル交換器36は、このモードでは短絡されず、そのため、機械の発熱体に分配されるオイルポンプからの機械の冷却用オイルを冷却する。水/オイル交換器の領域でのオイルの冷却の効率性を向上させるために、水ポンプ54は、水/オイル交換器36を経由する追加の水の流れを提供するために制御することができる。したがって、摩擦損失の増加につながる交換器におけるオイルの流量の増加を必要とすることなく、交換器における冷却が改善される。
【0038】
したがって、バルブ58は、水回路から出る水の温度が所定の温度閾値より低い場合には、電気機械の冷却回路の水/オイル交換器36を短絡させるために、そうでない場合は、機械から出てくる冷却用オイルを冷却してから冷却後に機械に戻すために、すべての水を水/オイル交換器を経由させるように、電動パワートレインの水回路50に配置される。
【0039】
上記で説明したように、交換器36の出力部において、交換器36からの温度制御された冷却用オイルは、熱交換器36によって供給されたオイルを電気機械の発熱体上に運んで射出することができるオイル分配回路37~40に供給される。
【0040】
本発明によると、冷却および潤滑装置はまた、熱交換器36からの制御されたオイルの一部を、減速機20のハウジング21の底部と接触して配置された熱交換パイプのネットワーク42の入口に運ぶために、減速機の潤滑オイル貯蔵部からのオイルを冷却できるように、入口が熱交換器36の出力部で分岐された分流用パイプ41を備える。これは、動作中に、減速機20が熱を発生させ、その熱は、減速機の機械部品の良好な潤滑を確保するために、また、減速機の潤滑オイルが過熱するのを防ぐために、排出する必要があるからである。このように、熱交換器36からの温度制御されたオイルが、減速機20のハウジングの底部と接触する熱交換パイプのネットワーク42を通って流れることで、減速機のハウジングの底部に含まれるオイルの熱を除去することができ、それ自体が減速機の熱損失の排出を確実にすることができる。言い換えれば、減速機内に含まれるオイルで所望の熱交換を実行するために、熱交換器36からオイルが運ばれてくる熱交換パイプのネットワーク42は、減速機に含まれるオイルを冷却するためのオイル/オイル交換器を構成する。その結果、オイル/オイル交換器42の出口は、オイルをリザーバ31に運ぶ出口パイプ43を介して、電気機械の下方に配置された冷却用オイルリザーバ31に接続される。
【0041】
機械の冷却用オイルを交換器36の出口から減速機の潤滑オイルを有するオイル/オイル交換器へ運ぶための分流用パイプ41は、減速機のハウジングに対して外部パイプまたは内部パイプであってもよい。また、オイル/オイル交換器を形成するために減速機のハウジングの底部と接触して配置された熱交換パイプは、減速機のハウジング内に形成されるか、外付けされている。