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特許7524230数値制御工作機械で使用するための制御装置、および制御装置を含む工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】数値制御工作機械で使用するための制御装置、および制御装置を含む工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20240722BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20240722BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240722BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G05B19/18 X
G05B19/4155 V
B23Q17/00 E
B23Q17/09 A
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021573820
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020063417
(87)【国際公開番号】W WO2020249354
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】102019208624.1
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505377326
【氏名又は名称】ディッケル マホ ゼーバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ブラント
(72)【発明者】
【氏名】イネス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】イザベラ グレーデ
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-075848(JP,A)
【文献】特開2019-139755(JP,A)
【文献】特開2019-220164(JP,A)
【文献】米国特許第05579232(US,A)
【文献】特開2017-220111(JP,A)
【文献】特開2018-092428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 17/00
B23Q 17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御工作機械上で使用するための制御装置であって、
NCプログラム形式の制御データに基づいて、前記工作機械上で実行される工作物の機械加工プロセスのために前記工作機械のアクチュエータを制御するための、機械制御ユニットと、
前記工作機械上でプロセス監視するための、コンピュータ実装ニューラルネットワークを含む監視ユニットと、を備え、
前記監視ユニットは、前記機械制御ユニットから入力データを読み取り、前記工作機械の動作状態を示す出力データを出力するように構成され、
前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記機械加工プロセスにおけるエラーを検出するために、前記工作機械上でプロセス監視するための前記工作機械の動作状態を示す前記出力データを評価するように構成され、
前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、工作物を機械加工する進行中のプロセス中に、前記機械制御ユニットから入力データを読み取り、工作物の機械加工中に前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データを出力するように構成されることを特徴とし
前記監視ユニットは、前記ニューラルネットワークによる前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データの評価に基づいて、工具または工作物を担持する前記工作機械のワークスピンドルによる工作物機械加工に関係する、前記機械制御ユニットに存在する前記機械加工プロセスのプロセスパラメータを調整するように構成されることを特徴とする、制御装置。
【請求項2】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記機械加工プロセスの機械加工速度が調整されるように、前記機械加工プロセスのプロセスパラメータを調整するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記機械加工プロセスの機械加工速度を調整するために、前記機械加工プロセス中に生じる送り速度及び/又は回転速度が調整されるように、前記プロセスパラメータを調整するように構
成されることを特徴とする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記機械加工プロセスのプロセスパラメータを連続的に調整するように構成される、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、特にリアルタイムで、前記工作機械上で実行される工作物の進行中の前記機械加工プロセス中に、前記機械制御ユニットからの入力データを読み取り、前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データを出力するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、さらに、前記工作機械上の工具監視のために前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データを評価するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記機械制御ユニットからの前記入力データに基づいて、及び/又は前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データの前記評価に基づいて、前記機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを前記機械制御ユニットに出力するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、機械部品と工具及び/又は工作物との間で前記工作機械に発生する衝突、及び/又は前記工作機械に発生する工具破損、及び/又は前記機械加工プロセスで前記工作機械に使用される工具の欠落、及び/又は前記工作機械に発生する前記機械加工プロセスで使用される工具の工具摩耗の増加が検出されるように、前記機械制御ユニットからの前記入力データに基づいて、及び/又は前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データの評価に基づいて、前記工作機械の異常動作状態を判定するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記工作機械の異常動作状態が存在すると判定されたときに、前記機械制御ユニットに前記機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを出力するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、機械部品と工具及び/又は工作物との間に発生し得る衝突、及び/又は前記工作機械に発生し得る工具破損、及び/又は前記機械加工プロセスで前記工作機械に使用される工具のあり得る欠落、及び/又は前記機械加工プロセスで使用される工具の限界値を超える工具摩耗が検出されるよう、前記工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えるとき、前記機械制御ユニットからの前記入力データに基づいて、及び/又は前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データの前記評価に基づいて判定するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記工作機械の異常動作状態が存在する、及び/又は前記工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えると判定されたときに、前記機械制御ユニットに前記機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを出力するように構成されることを特徴とする、請求項1
0に記載の制御装置。
【請求項12】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記工作機械の異常動作状態が存在する、及び/又は前記工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えると判定されたときに、特に前記機械制御ユニットが制御データに基づいて前記工作機械の機械停止をトリガするように、機械停止をトリガする制御データを前記機械制御ユニットに出力するように構成されることを特徴とする、請求項9または請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記工作機械の異常動作状態が存在すること、及び/又は前記工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えると判定されたときに、特に前記機械制御ユニットが制御データに基づいて前記工作機械上で自動工具変更をトリガするように、自動工具変更をトリガする制御データを前記機械制御ユニットに出力するように構成されることを特徴とする、請求項9または請求項11に記載の制御装置。
【請求項14】
前記監視ユニット、特に前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークは、前記機械制御ユニットからの前記入力データに基づいて、及び/又は前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データの前記評価に基づいて、前記機械制御ユニットに存在する制御データを調整するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記機械制御ユニットからの前記入力データは、前記工作機械のアクチュエータまたは駆動の動作パラメータ、特に駆動速度、モータ電流及び/又はアクチュエータに出力されるアクチュエータ信号を示すことを特徴とする、請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記機械制御ユニットからの前記入力データは、前記工作機械の可動部品の位置値、特に、前記工作機械の直線軸、回転軸、及び/又は旋回軸の実際の位置及び/又は目標位置を示すことを特徴とする、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項17】
前記機械制御ユニットからの前記入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサ値、特に、温度センサ、力センサ、歪みセンサ、トルクセンサ、加速度センサ、揺動または振動センサ、及び/又は固体伝播音センサからのセンサ値を示すことを特徴とする、請求項1ないし請求項16のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項18】
前記監視ユニットは、内部データ記憶装置を含み、及び/又は外部データ記憶装置と通信するように構成され、
前記監視ユニットは、前記内部及び/又は外部データ記憶装置に前記機械制御ユニットからの前記入力データ及び/又は前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データを記憶するように構成され、及び/又は、
前記監視ユニットは、前記内部及び/又は外部データ記憶装置に、前記機械制御ユニットからの前記入力データの評価に基づいて、及び/又は前記工作機械の現在の動作状態を示す前記出力データの評価に基づいて、生成された評価データを記憶するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項17のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項19】
前記制御装置は、オペレータによって、特にグラフィカルユーザインターフェースを用いて操作可能なヒューマンマシンインターフェースをさらに備え、
前記監視ユニットは、前記工作機械の現在の動作状態を示す前記ニューラルネットワークからの前記出力データを前記ヒューマンマシンインターフェース上でオペレータに出力
するように構成されることを特徴とする、請求項1ないし請求項18のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項20】
請求項1ないし請求項19のいずれか一項に記載の制御装置を備える、工作機械。
【請求項21】
特に請求項1ないし請求項19のいずれか一項に記載の制御装置によって、数値制御工作機械を監視するための方法であって、
機械制御装置によって、NCプログラム形式の制御データに基づいて、前記工作機械上で工作物の機械加工を行う機械加工プロセスのために前記工作機械のアクチュエータを制御する工程と、
特に制御データに基づいて、前記工作機械上で実行される工作物の前記機械加工プロセスについて、前記工作機械のアクチュエータの制御中にプロセス監視のための監視ユニットによって、前記工作機械上で実行される工作物の前記機械加工プロセスを監視する工程を含み、
前記監視する工程は、
前記機械制御ユニットからの入力データを、進行中の前記機械加工プロセス中に前記監視ユニットのコンピュータ実装ニューラルネットワークに読み込むこと、
前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークから、工作物機械加工中の前記工作機械の現在の動作状態を示す出力データを出力すること、
前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークによって、前記工作機械上のプロセス監視のために現在の動作状態を示す前記出力データを評価すること、
前記監視ユニットの前記ニューラルネットワークによって評価された前記出力データに基づいて、前記機械制御ユニットに存在し、工具または工作物を担持する前記工作機械のワークスピンドルによる工作物機械加工に関係する、前記機械加工プロセスのプロセスパラメータを調整すること、を含む、方法。
【請求項22】
数値制御工作機械、又は、特に請求項1ないし請求項19のいずれか一項に記載の数値制御工作機械の制御装置、に接続されたコンピュータによってプログラムが実行されるときに、請求項21に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に制御装置の監視ユニットによって、特に数値制御工作機械を監視するための、数値制御工作機械に使用される制御装置およびそのような制御装置を含む工作機械に関する。さらに、本発明は、特に制御装置または制御装置の監視ユニットによって、数値制御工作機械を監視するための方法、ならびに工作機械の制御装置のための対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フライス盤、旋盤、フライス/ターニングマシン、研削盤、万能工作機械、ターニングセンタ、マシニングセンタ、歯切り盤などの、工作物機械加工のための数値制御工作機械は、従来技術において公知である。
【0003】
このような工作機械又は一般的な種類のCNC工作機械は、典型的には、数値制御工作機械上で使用するための制御装置(機械コントローラ)を備え、この制御装置は、特に制御データに基づいて又はNCプログラムを含む制御データに基づいて、特に工作物機械加工のための機械加工プロセスのための、スピンドル駆動及び直線、回転の軸駆動及び旋回軸駆動などの工作機械の駆動について、アクチュエータを制御するための機械制御ユニットを有する。
【0004】
例えば、欧州特許出願公開第2482156号明細書から、特に工作機械上で衝突監視を行うために、工作機械上で工作物が加工されている間にプロセス監視を行うことが知られている。例えば、これは振動を測定する衝突センサに基づく欧州特許出願公開第2482156号明細書の教示に従って実行することができ、ここで、センサ信号は工作機械の動作中に工作物が加工されている際に1つ又は複数の限界値と連続的に比較され、限界値を超えたときに衝突を検出することができる。
【0005】
欧州特許出願公開第2482156号明細書から、一般的な種類の制御装置又はこのような制御装置を備えた工作機械が公知であり、この制御装置は、特に制御データに基づいて、工作機械上で行われる工作物の機械加工プロセスのために工作機械のアクチュエータを制御するための機械制御ユニットと、衝突センサからのセンサデータに基づいて工作機械を監視するための監視ユニットとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第2482156号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015115838号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工作機械のプロセス監視に関して、衝突、軸受摩耗や軸受損傷、工具摩耗、工具破損、クランプ手段の破損、駆動損傷等のような工作機械の加工中に生じ得る多種多様な潜在的な問題が迅速に認識され、可能な限り確実に識別され得るように、または、例えば自動駆動停止や自動機械停止によって、このような問題に迅速に対応することが可能であり、この場合、あり得る不正確な識別による任意の休止時間も回避されるように、工作機械の機械加工プロセスを監視することが一般に望ましい。
【0008】
したがって、上述の従来技術に基づいて、本発明の目的は、従来技術と比較して改善され、特に、プロセス中に発生する問題に対して、より速く、より正確に、より可変的に、及び/又はより敏感に反応することができ、これらをより良く認識することができ、及び/又は信頼性のあるプロセス監視を実行しながら、誤った識別をより良く回避することができる、工作機械上のプロセス監視を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、数値制御工作機械上で使用するための制御装置、対応する工作機械、工作機械を監視するための方法、及び対応するコンピュータプログラム製品が独立請求項に従って提案される。従属請求項は、個別に又は組み合わせて提供されてもよい本発明の好ましい例示的な実施形態に関する。
【0010】
本発明の一態様によれば、数値制御工作機械上で使用するための制御装置が提案され、該制御装置は、特に制御データに基づいて、工作機械上で実行される工作物の機械加工プロセスのために前記工作機械のアクチュエータを制御するための機械制御ユニットと、前記工作機械の動作状態を監視するための監視ユニットとを備える。
【0011】
本発明によれば、制御装置の監視ユニットは、機械制御ユニットから入力データを読み取り、工作機械の動作状態を示す出力データを出力するように構成された、コンピュータ実装ニューラルネットワークまたは人工ニューラルネットワークを含む。
【0012】
独国特許出願公開第102015115838号明細書は工作機械に関連するニューラルネットワークの使用を既に説明しているように思われるが、ニューラルネットワークは明らかに、温度測定管理を評価するための評価ユニットにおいて使用され、本発明とは対照的に、独国特許出願公開第102015115838号明細書における工作機械上の位置の温度関連変化を補償または補正する目的で提供されることに留意されたい。しかしながら、独国特許出願公開第102015115838号明細書は、ニューラルネットワークを工具又はプロセス監視のために、又は工作機械の動作状態を監視するために使用することができることを教示又は示唆するものではない。
【0013】
その結果、本発明の例示的な実施形態によれば、従来技術とは異なる新しい方法で、工作機械の制御装置に設けられた人工またはコンピュータ実装のニューラルネットワークによって、工作機械の工具やプロセスの監視を実施することが提案される。
【0014】
有利には、このような工具やプロセスの監視は、機械及び/又は工作物を損傷から保護することができ、最適な工具使用を保証することができ、必要に応じて、プロセス最適化のための始動点を提供することができる。
【0015】
これにより、生産性を向上させることができ、工作機械全体の寿命コストを低減することができる。同時に、工具とプロセスの監視が可能なことは、品質保証に寄与することができ、工作物の管理や品質又はプロセスのドキュメンテーションを可能にする。
【0016】
有利には、直接的なエラーや問題の検出(例えば、衝突検出、破損、摩耗、または欠落した工具の検出)を可能にすることができ、対応する反応、例えば、機械停止や工具交換を、自動的だけでなく、即座に、また遅延なくトリガすることができる。これはまた、例えば、摩耗依存工具の交換や軸受メンテナンスによって、さらなるコスト削減と欠陥品の減少を可能にする。
【0017】
また、ニューラルネットワークの出力データに基づいてプロセスパラメータを連続的に適合させることにより、例えば、最適化された機械加工速度を達成することができる。さ
らに、過去の出力データおよび過去の学習データを評価できるため、例えばドキュメンテーションや統計に利用できるという利点もある。
【0018】
要約すると、特に、以下の利点が例示的な実施形態において達成され得る。当該利点とは、機械、工作物および工具の包括的な保護、リアルタイムでの監視、最適な工具の利用、部品品質の監視(例えば、ドキュメンテーションとプロセス分析を介して)、欠陥品及び/又は複雑なプロセスや機械加工への適応の低減である。
【0019】
さらに、例示的な実施形態では、機械制御で利用可能なデータや情報(例えば、駆動データ及び/又は位置決めデータ)を活用し得るために、センサレス監視も提供することができ、又は少なくともいくつかのまたは追加のセンサを省略することができる、という利点がある。さらなる例示的な実施形態では、ニューラルネットワークの入力データがセンサデータでサポートされてもよく、又は、例えば、歪み、力、有効電力、トルク、振動、加速度、構造体伝播音及び/又は温度などのための、例えば、追加のまたは代替のセンサによって、センサデータから提供されてもよい。
【0020】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を以下に記載するが、これは網羅的または限定的であると理解されるべきではない。そのような例示的な態様は個別に、または組み合わせて提供され得ることも指摘されるべきである。
【0021】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、特にリアルタイムで、工作機械上で実行される工作物の進行中の機械加工プロセス中に機械制御ユニットからの入力データを読み取るように、及び/又は、特にリアルタイムで、特に工作機械上で実行される工作物の進行中の機械加工プロセス中に、工作機械の現在の動作状態を示す出力データを出力するように、構成することが好ましい。
【0022】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、ニューラルネットワークの出力データを評価するように構成されてもよい。
【0023】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、工作機械上の工具監視及び/又はプロセス監視のためにニューラルネットワークの出力データを評価するように構成されてもよい。
【0024】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを機械制御ユニットに出力するように構成されてもよい。
【0025】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、工作機械が異常動作状態にあるときに、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて判定するように構成されてもよい。
【0026】
異常動作状態は、例えば、衝突(例えば、機械部品や工具及び/又は工作物の機械部品との衝突)、(おそらく過剰である)工具摩耗、工具破損、(おそらく過剰である)軸受摩耗、軸受損傷、クランプ手段の破損、駆動損傷などであってもよく、またはそれらを含んでもよい。
【0027】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えるときに、
入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて判定するように構成されてもよい。
【0028】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、工作機械の異常動作状態が存在する、及び/又は工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えると判定されたときに、機械制御ユニットに機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを出力するように構成されてもよい。
【0029】
例示的な好ましい実施形態によれば、異常動作状態は、工作機械上で発生する衝突であってもよい。
【0030】
例示的な好ましい実施形態によれば、異常動作状態は、工作機械上で発生する工具破損であってもよい。
【0031】
例示的な好ましい実施形態によれば、異常動作状態は、工作機械上で欠落しており、機械加工プロセスで使用される工具であってもよい。
【0032】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、工作機械の異常動作状態が存在する、及び/又は工作機械の異常動作状態の発生する確率が所定の限界値を超えると判定されたときに、特に好ましくは、機械制御ユニットが制御データに基づいて工作機械上の駆動停止及び/又は機械停止をトリガするように、駆動停止及び/又は機械停止をトリガする制御データを機械制御ユニットに出力するように構成されてもよい。
【0033】
例示的な好ましい実施形態によれば、異常動作状態は、機械加工プロセスで使用される工具の増加した工具摩耗、または限界値を超える機械加工プロセスで使用される工具の工具摩耗が、工作機械上で発生することであってもよい。
【0034】
例示的な好ましい実施形態によれば、異常な動作状態は、工作機械上で発生する工作機械の軸受の軸受摩耗又は工作機械上の軸受損傷を増大させることであってもよい。
【0035】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、工作機械の異常動作状態が存在すること、及び/又は工作機械の異常動作状態の発生する確率が所定の限界値を超えると判定されたときに(特に、異常動作状態がおそらく過剰な工具摩耗または工具破損が検出されたことを含むときに)、自動工具変更をトリガする制御データを機械制御ユニットに出力するように構成することができ、特に、機械制御ユニットが制御データに基づいて工作機械上で自動工具変更をトリガするように構成することができる。
【0036】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、機械制御ユニットに存在するプロセスパラメータを調整するように構成されてもよい。
【0037】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、機械制御ユニットに存在する制御データを調整するように構成されてもよい。
【0038】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニット、特に監視ユニットのニューラルネットワークは、機械制御ユニットに存在する制御データ及び/又は機械制御ユニットに存在するプロセスパラメータを、機械加工プロセスの機械加工速度が調整されるように、特
に、機械加工プロセス中に生じる送り速度を調整することによって、調整するように構成することができる。
【0039】
例示的な好ましい実施形態によれば、入力データは、工作機械のアクチュエータまたは駆動の動作パラメータ、特に駆動速度、モータ電流及び/又はアクチュエータに出力されるアクチュエータ信号を示すことができる。
【0040】
例示的な好ましい実施形態によれば、入力データは、工作機械の可動部品の位置値、特に、工作機械の直線軸、回転軸、及び/又は旋回軸の実際の位置及び/又は目標位置を示すことができる。
【0041】
例示的な好ましい実施形態によれば、入力データは、工作機械のセンサからのセンサ値、特に、温度センサ、力センサ、歪みセンサ、トルクセンサ、加速度センサ、揺動または振動センサ、及び/又は固体伝播音センサからのセンサ値を示すことができる。
【0042】
例示的な好ましい実施形態によれば、監視ユニットは、内部データ記憶装置を含むことができ、及び/又は外部データ記憶装置と通信するように構成することができる。監視ユニットは、好ましくはニューラルネットワークの入力データ及び/又は出力データを内部及び/又は外部データ記憶装置に記憶するように、及び/又はニューラルネットワークの入力データおよび/または出力データの評価に基づいて生成された評価データを内部及び/又は外部データ記憶装置に記憶するように、構成されてもよい。
【0043】
例示的な好ましい実施形態によれば、制御装置は、オペレータによって、特にグラフィカルユーザインターフェースを用いて操作され得るヒューマンマシンインターフェースをさらに備えてもよい。監視ユニットは、工作機械の動作状態を示すニューラルネットワークの出力データをヒューマンマシンインターフェース上でオペレータに出力するように構成されることが好ましい。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、好ましくは、上記の態様または実施形態のうちの1つまたは複数による制御装置を備える工作機械が提案される。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、好ましくは、特に上記の態様または実施形態のうちの1つまたは複数による制御装置によって、数値制御工作機械を監視するための方法が提案される。
【0046】
この方法は、好ましくは機械制御ユニットによって、特に制御データに基づいて、工作機械上で実行されるべき工作物の機械加工プロセスのために工作機械のアクチュエータを制御する工程と、監視ユニットによって工作機械の動作状態を監視する工程とを含み、さらに好ましくは、機械制御ユニットからの入力データを監視ユニット上のコンピュータ実装ニューラルネットワークに読み込むこと、及び/又はニューラルネットワークから工作機械の動作状態を示す出力データを出力することを含む。
【0047】
好ましくは、この方法は、追加的に又は代替的に、特に制御データに基づいて、工作機械上で実行される工作物の機械加工プロセスについて、工作機械のアクチュエータの制御中に監視ユニットによって、工作機械の動作状態を監視する工程を含む。この方法は、好ましくは機械制御ユニットからの入力データを、監視ユニット上のコンピュータ実装ニューラルネットワークに読み込むこと、及び/又はニューラルネットワークから工作機械の動作状態を示す出力データを出力することを含む。
【0048】
本発明のさらなる態様によれば、好ましくは、特に前述の態様または実施形態のうちの
1つによる、数値制御工作機械または数値制御工作機械の(好ましくはコンピュータ実装された)制御装置に接続されたコンピュータによってプログラムが実行されるときに、上記の態様または実施形態による方法を実行させるコマンドを含むコンピュータプログラム製品が提案される。
【0049】
さらなる態様とその利点、ならびに上述の態様および特徴の利点およびより具体的な実施可能性は、決して制限的ではない以下の説明および添付図の説明において記述される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】数値制御工作機械の概略例示図。
図2】本発明の例示的実施形態による数値制御工作機械の制御装置の概略例示図。
図3】本発明の例示的な実施形態による工作機械を監視するための方法の例示的な流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施例及び例示的な実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図中の同一または類似の要素は、同じ参照符号によって示されることもあるが、時には異なる参照符号で示されることもある。
【0052】
しかしながら、本発明は、決して以下に記載される例示的な実施形態及びそれらの実施特徴に限定や制限されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の修正、特に、記載される例の特徴の修正を介して、または記載される例の1つ以上の個々の特徴の組み合わせを介して独立請求項の保護の範囲内に含まれるものをさらに含むことを強調すべきである。
【0053】
図1は、例えばフライス盤として構成された、数値制御工作機械100の概略例示図を示す。
【0054】
しかしながら、本発明はフライス盤に限定されず、他の種類の工作機械、例えば、フライス盤、万能フライス盤、旋盤、ターニングセンタ、自動旋盤、フライス盤/旋盤、マシニングセンタ、研削盤、歯切盤などのような、例えば、ドリル加工、フライス加工、旋削加工、研削加工による、加工用に構成された切削工作機械にも使用され得る。
【0055】
工作機械100は例えば、マシンベッド101及びマシンスタンド102を有するマシンフレームを有する。例えば、Z方向(Z軸)にマシンベッド101上を水平移動可能となるように取り付けられた可動式のマシンスライド105は、例えば、マシンベッド101上に配置されている。ワークピース(工作物)WPは例えば、ワークピーステーブルを備えることができるマシンスライド105上にクランプされる。このために、マシンスライド105または工具テーブルにクランプ手段を設けることもできる。さらに、さらなる例示的な実施形態では、マシンスライド105は、垂直軸及び/又はさらなる水平軸(任意選択の回転軸または丸軸及び/又は旋回軸)の周りに回転または旋回させることができるターンテーブルを備えることができる。さらに(または代替的に)、マシンスライド105は、水平Y方向(潜在的に図面の平面に垂直)におけるY軸によって移動させることができる。
【0056】
マシンスタンド102は、例えば、スピンドルキャリアスライド103を運ぶものであり、該スピンドルキャリアスライド103は、マシンスタンド102上でX方向に垂直に移動することができ、例えば、工具を運ぶワークスピンドル104が保持されるものである。ワークスピンドル104は、ワークスピンドル104上に装着された工具WZ(例えば、ドリル加工用及び/又はフライス加工用工具)を駆動して、スピンドル軸SAの周り
を回転するように構成される。例えば、スピンドルキャリアスライド103は、X軸によってX方向に垂直に移動されてもよい。さらに(または代替的に)、スピンドルキャリアスライド103は、(図の平面に潜在的に垂直である)水平Y方向におけるY軸によって移動されてもよい。加えて、さらなる例示的な実施形態では、スピンドルキャリアスライド103は、スピンドル104を回転または旋回させるために、回転軸及び/又は旋回軸(任意選択の回転軸または丸軸及び/又は旋回軸)を備えることができる。
【0057】
さらに、工作機械100は、例えば、制御装置200を備え、該制御装置200は、工作機械100のオペレータによる操作のために、例えば、スクリーン210(例えば、タッチスクリーンとして構成される)と入力ユニット220とを備える。入力ユニット220は、例えば、ユーザ入力又はユーザコマンドやオペレータによるコマンドアクションを受け取るための、ボタン、スライダ、回転つまみ、キーボード、スイッチ、マウス、トラックボール、及び場合によっては1つまたは複数のタッチセンシティブ表面(例えば、スクリーン210と組み合わせることができるタッチスクリーン)などの、手段を備えることができる。
【0058】
オペレータは制御装置200を使用して、工作機械上の工作機械または機械プロセスの動作を制御し、また、機械加工中に工作機械100の動作状態または機械加工プロセスを監視することができる。
【0059】
図2は、本発明の例示的実施形態による数値制御工作機械100の制御装置200の概略例示図を示す。
【0060】
工作機械100(例えば、図1による工作機械)は、例えば、制御装置200によって制御可能な工作機械100の複数のアクチュエータ110(例えば、主軸駆動、軸駆動など)と、任意で、工作機械100の機械状態に関連するセンサ信号を制御装置200に出力するための複数のセンサ120とを備える。
【0061】
アクチュエータ110は、例えば、工具と工作物との間の制御された相対運動のための制御可能な直線軸と円軸(旋回軸及び/又は回転軸)のための駆動、及び(例えば、フライス盤上の)工具軸受ワークスピンドルまたは(例えば、旋盤上の)工作物軸受ワークスピンドルの駆動を含むことができる。
【0062】
さらに、アクチュエータ110は、内部・外部の冷却潤滑剤供給や圧縮空気供給のために、電子的に、油圧的に、及び/又は空気圧的に制御される弁、ポンプ、または他の供給装置を備え得る。搬送手段、パレットチェンジャ、ワークピースチェンジャ、工具マガジン、および他の工作機械装置も、駆動、回路、または対応するアクチュエータを介して制御することができる。
【0063】
任意選択のセンサ120は、例えば、工作機械のそれぞれの組立て品や部品、例えば、軸、駆動、軸軸受、スピンドル、スピンドル軸受、工具マガジン、工具チェンジャ、パレットやワークピースチェンジャ、内部・外部の冷却潤滑剤供給装置、チップ搬送装置、及び/又は、油圧及び/又は空気圧制御に関連付けられ得るセンサであり得る。多数の異なるセンサ、例えば、位置測定センサ、電流及び/又は電圧測定センサ、温度センサ、力センサ、加速度センサ、振動センサ、軸受診断センサ、変位センサ、レベル指示センサ、液体センサ(例えば、冷却潤滑液中のpH値を測定するための、油、冷却液などの水分比率測定センサ)、空気圧システム中の含水率センサ、及び/又はフィルタ状態センサを、個々の組立て品に設けることができる。
【0064】
制御ユニット200(制御装置)は、例えば、NC制御231を備えた機械制御230
と、プログラマブル論理制御232("Programmable Logic Control"よりSPSやPLCとも呼ばれる)とを備える。
【0065】
さらに、制御ユニット200は、例えば、ヒューマンマシンインターフェース240("Human-Machine Interface"よりHMIとも呼ばれる)を備え、それを用いて、工作機械100のオペレータは、工作機械100を制御、監視、及び/又は操作することができる。
【0066】
ヒューマンマシンインターフェース240は、例えば、モニタやタッチスクリーン(例えば、スクリーン210)上に表示することができるグラフィカルユーザインターフェース241("Graphical User Interface"よりGUIとも呼ばれる)と、入力/出力ユニット242(入力ユニット220を含むことができる)とを含む。
【0067】
さらに、制御ユニット200は、例えば、工作機械100の動作状態を監視するため、または工作機械100上の機械加工プロセスを監視するための監視ユニット250を含む。
【0068】
例えば、監視ユニット250は、NC制御231に接続されたコンピュータ上に具現化することができる。さらに、監視ユニット250およびNC制御231は、制御ユニット200のコンピュータ上に共に実装されてもよい。
【0069】
一例として、制御ユニット200の監視ユニット250は、データ処理およびアプリケーション実行のためのプロセッサ251(CPU)と、プロセッサ251によって実行可能なデータ、プログラム及びアプリケーションを記憶するためのデータ記憶装置252とを備える。
【0070】
さらに、監視ユニット250は、例えば、サーバなどの外部データ処理装置と、通信やデータ交換する(例えば、ローカルやグローバル通信ネットワークを介して、あるいは場合によってはWLANを介して)ための通信インターフェース256を備える。
【0071】
一例として、監視ユニット250上には、人工またはコンピュータ実装ニューラルネットワークNNが形成される。一例として、データ記憶装置252は、プロセッサ251によって実行することができ、ニューラルネットワークNNを備える、監視アプリケーション253を備える。
【0072】
一例として、データ記憶装置252は、監視ユニット250のための構成データ254を記憶するための記憶ユニットと、監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNのためのトレーニングデータ255を記憶するための記憶ユニットとをさらに備える。
【0073】
監視ユニット250は、制御ユニット200の通信系統によって、例えば、機械制御230、特にNC制御231及び/又はプログラマブル論理制御232から、データを読み出すか、または受信するように構成されている。
【0074】
好ましい例示的な実施形態では、監視ユニット250は、機械制御230から読み出された又は受信されたデータを、入力データとして監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNに供給することができる。これは、例えば、連続的に、規則的に、又は周期的に、好ましくはリアルタイムで実施することができる。
【0075】
ここで、機械制御230からの駆動データ(例えば、モータ電流や駆動信号)及び/又
は位置データは、好ましくは入力データとして監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNに供給される。
【0076】
さらに、機械制御において任意に利用可能な(例えば、駆動制御、電流制御、速度制御、位置制御及び/又は位置検出からの)工作機械のセンサからのセンサ信号を、入力データとして監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNに供給することができる。これは、プロセス監視のために設けられた特別なセンサを必要とせず、むしろ、機械制御上で利用可能なデータと情報の一部又は全部を直接使用することができるという利点を有する。
【0077】
入力データは、好ましくは監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNに、リアルタイムで、すなわち、特に好ましくは、工作物の機械加工中に、特に規則的に、周期的に、又は連続的に、供給される。
【0078】
監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、入力データ(例えば、機械制御から読み出された入力データ又は機械制御によって供給された入力データ)に基づいて、特に工作物の機械加工中の、工作機械100の動作状態を示す出力データを出力するように構成される。
【0079】
ニューラルネットワークは、仮想工作機械でのシミュレートされた機械加工プロセスに基づいて、及び/又は同じタイプまたは同じ構造の工作機械での訓練に基づいて、既に事前訓練されていてもよく、及び/又は工作機械の動作中にさらに訓練されていてもよい。
【0080】
好ましい例示的な実施形態において、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、工作機械100上で工作物機械加工の機械加工プロセスの進行中に、特にリアルタイムで、機械制御230からの入力データを読み取り、工作機械の現在の動作状態を示す出力データを出力するように構成される。
【0081】
好ましい例示的実施形態では、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、ニューラルネットワークNNの出力データを評価するように構成される。
【0082】
好ましい例示的実施形態では、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、工作機械100上の工具監視及び/又はプロセス監視のために、ニューラルネットワークNNの出力データを評価するように構成される。
【0083】
好ましい例示的実施形態では、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを機械制御に出力するように構成される。
【0084】
好ましい例示的実施形態では、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、工作機械100の異常動作状態が存在するときを判定するように構成される。
【0085】
好ましい例示的な実施形態では、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、工作機械100の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えるときを判定するように構成される。
【0086】
好ましい例示的な実施形態では、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、工作機械100の異常動作状態が存在すると判定されたとき、及び/又は工作機械の異常動作状態が発生する確率が所定の限界値を超えたと判定されたとき、例えば、プロセス中断、機械停止(例えば、工作機械に発生する衝突が異常動作状態として認識や判定された場合)、駆動停止、工具変更(例えば、工作機械に発生する工具破損が異常動作状態として認識や判定された場合、工具摩耗の増加が認識や判定された場合、又は工具が欠落していると認識された場合)などをトリガするために、機械制御230に機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを出力するように構成される。
【0087】
特に、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、衝突が存在すること、及び/又は工作機械100上で発生する衝突の確率が所定の限界値230を超えることが判定されたときに、特に、機械制御230が制御データに基づいて工作機械100上で機械停止をトリガするように、機械停止をトリガする機械制御に制御データを送信するように構成されてもよく好ましい。
【0088】
代替的に又は追加的に、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、工具破損や増加した工具摩耗が存在すること、及び/又は工作機械100上で発生する工具破損の確率が所定の限界値を超えることが判定されたときに、特に、機械コントローラ230が制御データに基づいて工作機械100上で自動工具変更をトリガするように、自動工具変更をトリガする制御データを機械制御230に出力するように構成されてもよく好ましい。
【0089】
代替的に又は追加的に、監視ユニット250又は監視アプリケーション253のニューラルネットワークNNは、入力データに基づいて、及び/又は出力データの評価に基づいて、例えば、特に機械加工プロセス中に発生する送り速度及び/又は回転速度を調整することによって、機械加工プロセスの機械加工速度が調整されるように、機械制御230上に存在するプロセスパラメータ及び/又は制御データを調整するように構成されてもよく好ましい。これは、過剰な軸受摩耗及び/又は偏差位置データが検出される場合に特に有利であり得る。
【0090】
いくつかの好ましい例示的な実施形態では、ニューラルネットワークNNのための機械制御230から得られる入力データは、アクチュエータ110又は工作機械100の駆動の動作パラメータ、特に好ましくは駆動速度、モータ電流及び/又はアクチュエータに出力されるアクチュエータ信号を指定してもよい。
【0091】
いくつかの好ましい例示的な実施形態では、ニューラルネットワークNNのための機械制御230から得られる入力データは、工作機械の可動部品の位置値、特に、工作機械100の直線軸、丸軸及び/又は旋回軸の実際の位置及び/又は目標位置を指定することができる。
【0092】
いくつかの好ましい例示的な実施形態では、ニューラルネットワークNNのための機械制御230から得られた入力データは、工作機械100のセンサ120からのセンサ値、特に好ましくは温度センサ、力センサ、歪みセンサ、トルクセンサ、加速度センサ、揺動または振動センサ及び/又は構造伝播音センサからのセンサ値を任意に指定してもよい。
【0093】
図3は、本発明の例示的な実施形態による工作機械を監視するための方法の例示的な流れ図を示す。
【0094】
ステップS301では、工作機械100上の機械加工プロセスが一例として(例えば、
NCプログラムなどの制御データに基づいて、例えば、工作機械上で工作物を機械加工するなど)制御される。
【0095】
ステップS302において、機械制御230で利用可能なデータまたは情報が、ニューラルネットワークNNのための入力データとして機械制御230から読み出される。これは、好ましくは機械加工プロセスの間、連続的に、規則的に、または周期的に実行されてもよい。
【0096】
ステップS303では、機械制御230から読み出された入力データが、監視ユニット250のニューラルネットワークNNに入力される。これは、好ましくは機械加工プロセスの間、連続的に、規則的に、または周期的に実行されてもよい。
【0097】
ステップS304では、入力データに基づいて判定されたニューラルネットワークNNの出力データが出力される。
【0098】
ステップS305では、監視ユニット250で出力されたニューラルネットワークNNの出力データに基づいて、工作機械100に異常動作状態があるか否かを判定する。
【0099】
工作機械100に異常動作状態がない場合には、中断することなく機械加工プロセスを継続する(ステップS301参照)。
【0100】
監視ユニット250におけるニューラルネットワークNNの出力データに基づいて、工作機械100の異常動作状態が存在するか、又は発生したことが判定や検出される場合、ステップS306において、例えば監視ユニット250が、機械制御230に対応する機械応答をトリガする信号を出力することによって、対応する機械応答がトリガされる。
【0101】
対応して割り当てられた機械応答は、出力データまたは検出された異常動作状態に応じてトリガされてもよい。
【0102】
衝突が検出された場合には、例えば、機械の停止を直接かつ即座にトリガすることができる。
【0103】
工具や過剰な工具摩耗(摩耗した工具)が検出された場合、例えば、機械加工プロセスは中断されてもよく、自動工具交換がトリガされてもよく、例えば、対応する姉妹工具を挿入することで、僅かな休止時間で、挿入した姉妹工具で機械加工プロセスを継続できる。これは、摩耗に依存する工具の交換が適切な時間に最適かつ自動的に実行され、その結果、部品の品質と工具の利用が最適に調整され得る、という利点を有する。
【0104】
加えて、機械停止または駆動停止は、軸受損傷や過剰な軸受摩耗の検出など、機械部品の保守や手動検査を必要とする状態が検出されたときに、トリガされてもよい。
【0105】
例示的な実施形態では、ニューラルネットワークは、双方向変換によりファジィシステムの文脈で学習可能なように設計されてもよい。さらに、訓練データはニューラルネットワークに供給されてもよく、訓練データは、シミュレートされた工作機械のプロセス監視に基づいて、及び/又は既に動作中である同じ機械タイプの他の工作機械に基づいて、生成されてもよい。
【0106】
要するに、本発明の例示的な実施例によれば、工作機械の制御装置に設けられた人工又はコンピュータ実装ニューラルネットワークによって、工作機械の工具やプロセスの監視を行うことが提案される。このような工具やプロセスの監視は、機械及び/又は工作物を
損傷から有利に保護し、最適な工具使用を保証し、必要に応じて、プロセス最適化のための始動点を提供し得る。
【0107】
これにより、生産性を向上させることができ、工作機械全体の寿命コストを低減することができる。同時に、工具とプロセスの監視は品質保証に寄与し、工作物の管理、品質及びプロセスのドキュメンテーションを可能にする。
【0108】
有利には、直接的なエラーや問題の検出(例えば、衝突検出、破損、摩耗、または欠落した工具の検出)を可能にし得、対応する応答、例えば、機械停止や工具交換を、自動的だけでなく、即座に、また遅延なくトリガし得る。これはまた、例えば、摩耗依存工具の交換や軸受メンテナンスによって、さらなるコスト削減と欠陥品の減少を可能にする。
【0109】
また、ニューラルネットワークの出力データに基づいてプロセスパラメータを連続的に調整することにより、最適化された機械加工速度を達成することができる。さらに、過去の出力データおよび過去の学習データを評価できるため、例えばドキュメンテーションや統計に利用できるという利点もある。
【0110】
要約すると、特に、以下の利点が達成され得る。当該利点とは、機械、工作物および工具の包括的な保護、リアルタイムでの監視、最適な工具の利用、部品品質の監視(例えば、ドキュメンテーションとプロセス分析を介して)、欠陥品及び/又は複雑なプロセスや機械加工への適応の低減である。
【0111】
さらに、例示的な実施形態では、機械制御で利用可能なデータ又は情報(例えば、駆動データ及び/又は位置決めデータ)を活用し得るために、センサレス監視も提供することができ、又は少なくともいくつかのまたは追加のセンサを省略することができる、という利点がある。さらなる例示的な実施形態では、ニューラルネットワークの入力データがセンサデータでサポートされてもよく、又は、例えば、歪み、力、有効電力、トルク、振動、加速度、構造体伝播音及び/又は温度などのための、例えば、追加のまたは代替のセンサによって、センサデータから提供されてもよい。
【0112】
以上、添付図面を参照して、本発明の実施例、例示的な実施形態及びその利点を詳細に説明した。本発明は、決して上記の例示的な実施形態及びその実施特徴に限定や制限されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の修正、特に、記載された例の特徴の修正を介して、または記載された例の1つ以上の個々の特徴の組み合わせを介して独立請求項の保護の範囲内に含まれるものをさらに含むことを再び強調すべきである。
図1
図2
図3