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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】難燃性光ファイバーケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G02B6/44 381
G02B6/44 336
G02B6/44 301A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063391
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2019517188の分割
【原出願日】2017-06-12
(65)【公開番号】P2022100337
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】15/180,437
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518139683
【氏名又は名称】カーライル・インターコネクト・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・メッサー
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・エドガー・サザーランド
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-538323(JP,A)
【文献】特表2006-514333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0228080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0099825(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0158457(US,A1)
【文献】国際公開第01/048526(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/075120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーケーブルであって、
ガラスコアと前記コア上のクラッディング層とを備える少なくとも1つの光ファイバー要素と、
前記少なくとも1つの光ファイバー要素の上に位置決めされた一次緩衝層と、
前記一次緩衝層および前記少なくとも1つの光ファイバー要素を囲む強度部材層であって、前記強度部材層は、ファイバー材料からなる複数の糸を含み、前記ファイバー材料からなる複数の糸は、前記一次緩衝層および前記少なくとも1つの光ファイバー要素をぐるりと囲むように一緒に位置決めされることによって前記強度部材層を形成し、前記ファイバー材料からなる複数の糸のうち少なくとも1つは、950℃を超える軟化点および定格動作温度のうちの少なくとも一方を有する高温ファイバー材料を含む高温ファイバー材料から形成され、前記ファイバー材料からなる複数の糸のうち少なくとも1つは、高強度ファイバー材料を含み、前記強度部材層は、前記強度部材層全体の残りのファイバー材料に対して少なくとも25%の高温ファイバー材料を含む、強度部材層と、
前記強度部材層の上に位置決めされた外側ジャケット層であって、高難燃性材料から形成される外側ジャケット層と、
を備える光ファイバーケーブル。
【請求項2】
前記高難燃性材料は、30以上の限界酸素指数(LOI)を有する請求項1に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項3】
前記一次緩衝層と前記強度部材層との間に位置決めされた内側ジャケット層をさらに備える請求項1または2に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項4】
前記内側ジャケット層は、高難燃性材料から形成される請求項3に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項5】
前記強度部材層の前記高温ファイバー材料は、Sグラスファイバー、Rグラスファイバー、セラミックファイバー、および石英シリカファイバーのうちの少なくとも1つのファイバーを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項6】
前記外側ジャケット層の前記高難燃性材料は、エチレンテトラフルオロエチレンETFE、フッ素化エチレンプロピレンFEP、ペルフルオロアルコキシアルカンPFA、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリアリルエーテルケトン(PAEB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)またはシリコーンのうちの少なくとも1つを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項7】
前記強度部材層は、0.001から0.030インチの範囲内の厚さを有する請求項1~5のいずれか一項に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項8】
前記外側ジャケット層は、0.004から0.025インチの範囲内の厚さを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項9】
前記内側ジャケット層は、難燃化熱可塑性コポリエステル(FR-TPC)、難燃化熱可塑性ポリエステルエラストマー(FR-PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、架橋ポリ塩化ビニル(XLPVC)、架橋ポリエチレン(XL-PE)、難燃化ポリアミド(FR-PA)、難燃化ポリ塩化ビニル(FR-PVC)、難燃化ポリエチレン(FR-PE)、難燃化ポリプロピレン(FR-PP)、難燃化ポリウレタン(FR-PU)、難燃化熱可塑性エラストマー(FR-TPE)、難燃化熱可塑性ゴム(FR-TPR)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)のうちの少なくとも1つの材料から形成される請求項3に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項10】
光ファイバーケーブルであって、
ポリマーコアと前記コア上のクラッディング層とを備える少なくとも1つの光ファイバー要素であって、前記ポリマーコアは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはフッ素化ポリマーの材料から形成される、少なくとも1つの光ファイバー要素と、
前記少なくとも1つの光ファイバー要素の上に位置決めされた一次緩衝層と、
前記一次緩衝層の上に位置決めされた強度部材層であって、前記強度部材層は、ファイバー材料からなる複数の糸を有する層を含み、前記複数の糸のうち少なくとも1つは、950℃を超える軟化点または定格動作温度のうちの少なくとも一方を有する高温ファイバー材料から形成され、前記強度部材層は、前記強度部材層全体の残りのファイバー材料に対して少なくとも25%の高温ファイバー材料を含む、強度部材層と、
前記強度部材層の上に位置決めされた外側ジャケット層であって、30以上の限界酸素指数(LOI)を有する高難燃性材料から形成されている外側ジャケット層と、
を備える光ファイバーケーブル。
【請求項11】
前記一次緩衝層の上に、および前記強度部材層の下に位置決めされた内側ジャケット層をさらに備える請求項10に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項12】
前記強度部材層の前記高温ファイバー材料は、Sグラスファイバー、Rグラスファイバー、セラミックファイバー、および石英シリカファイバーのうちの少なくとも1つのファイバーを含む請求項10または11に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項13】
前記外側ジャケット層の前記高難燃性材料は、エチレンテトラフルオロエチレンETFE、フッ素化エチレンプロピレンFEP、ペルフルオロアルコキシアルカンPFA、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリアリルエーテルケトン(PAEB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)またはシリコーンのうちの少なくとも1つを含む請求項10~12のいずれか一項に記載の光ファイバーケーブル。
【請求項14】
前記内側ジャケット層は、難燃化熱可塑性コポリエステル(FR-TPC)、難燃化熱可塑性ポリエステルエラストマー(FR-PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、架橋ポリ塩化ビニル(XLPVC)、架橋ポリエチレン(XL-PE)、難燃化ポリアミド(FR-PA)、難燃化ポリ塩化ビニル(FR-PVC)、難燃化ポリエチレン(FR-PE)、難燃化ポリプロピレン(FR-PP)、難燃化ポリウレタン(FR-PU)、難燃化熱可塑性エラストマー(FR-TPE)、難燃化熱可塑性ゴム(FR-TPR)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)のうちの少なくとも1つの材料から形成される請求項11に記載の光ファイバーケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、光ファイバーケーブルに関するものであり、より具体的には、燃焼性問題に耐えることに対する物理的および性能特性を改善した光ファイバーケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーケーブルは、従来の銅ケーブルを置き換えるために今日広範な用途に使用されている。そのような光ファイバーケーブルは、たとえば、コンピュータとプロセッサとの間でデータを伝送し、信号を制御するために利用され得る。光ファイバーは、例外的な速度および帯域幅で、信頼性の高いデータ転送を提供する。光ファイバーケーブルはサイズが小さく、軽量であるため、空間および重量に著しい制約のある通信用途に特に有用である。
【0003】
光ファイバーケーブルは、航空宇宙産業では商業用途および軍事用途の両方に大々的に使用されている。そのような使用法では、光ファイバーケーブルは、ケーブルにわずかな障害があっても重大な望ましくない結果をもたらし得るので非常に頑丈な構造を有していなければならない。一般的に、航空宇宙での従来の使い方では、光ファイバーケーブルの構造は、ガラスストランド、すなわちファイバーと、クラッディング層と、緩衝層とを含んでいる。1つまたは複数の緩衝層が、壊れやすいガラスストランドを物理的に支持し、バッファリングするために、ガラスストランドの外側で利用される。さらに、光ファイバーケーブルは、多くの場合に、温度、圧力、振動、および衝撃の極端な状況に曝されるので、強度部材層およびジャケットまたはジャケット層などの、追加の層がバッファの外側で利用される。
【0004】
光ファイバーケーブルは、また、プラスチック/ポリマー光ファイバー(POF)と称される、プラスチックまたはポリマーから作られるファイバーを利用することもある。一般的に、そのようなPOFファイバーは、オプティカルコア用にポリメタクリル酸メチル(PMMA)から作られる。POFファイバーは、次いで、クラッディング層として、フッ素化ポリマーなどの、材料の薄いコーティングでコーティングされ得る。POFケーブルは、また、ファイバーおよびクラッディング層の上に他の緩衝層も有し得る。一般的に、そのような従来のPOFファイバーは、現在の構造を有する航空宇宙用ケーブルで使用するのには適さない。航空宇宙用ケーブルは、著しい機械的、流体的、環境的、熱的、および他のストレスに曝され、したがって、頑丈な構造を必要とする。さらに、FAAは、航空宇宙用途で利用される電線ケーブルが、電線ケーブルに関する14 CFR part 25のAppendix F、part I によるFAA燃焼性試験と称される燃焼性試験に合格することを義務付けている。したがって、典型的なPOFファイバーケーブルは、自動車、電子、および家庭用途に適していることが判明しているが、現在の製品は、より厳しい航空宇宙要件を満たさない。さらに、POFファイバー要素が典型的な航空宇宙用部品で製作される場合でも、実際のPOFファイバーの材料および構造の点で、指摘された燃焼性試験に合格しない。
【0005】
POFファイバーをコアとして使用して作られた光ファイバーケーブルは、PMMAが極めて引火性の高い材料であるため、燃焼性を有する。ある程度の固有の難燃性を有し、アラミドおよびガラス糸材料のような典型的な強度部材がファイバー要素を囲んでいる外層を使用する、強化されたPOFファイバーケーブル構造であっても、コア材料の燃焼性のせいで、POFケーブルが提示する問題のうちのいくつかを解決しない。その結果得られるケーブルは、依然として、強度部材が燃え尽きて、高燃焼性内部構成部品を露出し、燃え続け、および/または有炎滴下物が強度部材によって保護されていない構造から滴り落ちることを許すので、FAA燃焼性試験に通らない。
【0006】
航空宇宙用途に使用される光ファイバーケーブルは、ケーブルを保護する助けとなる材料を各層に入れて典型的に製造される。燃焼性要件とともに、光ファイバーケーブルは、+100から-55℃以上の極端な温度に曝される。さらに、そのようなケーブルは、油圧油、ジェット燃料、洗浄溶媒、滑走路除氷剤、および他の腐食性流体に曝される。
【0007】
また、ガラスおよびPOF構造/コア要素を両方組み込んだファイバーケーブル内では、材料の柔軟性の高さ、コストの低さ、および製造プロセスの容易さから、燃焼性である層材料を使用するのが望ましい。試しにある程度の難燃性を有する異なる緩衝層材料を用いて本明細書で述べている問題のうちのいくつかに対処してみると、ケーブルのコストが上昇し、柔軟性が低下し、縮む傾向が大きくなる。
【0008】
さらに、そのような航空宇宙用ケーブルの過酷な露出に対処できる使用される材料は、FAA燃焼性試験に合格することを依然として保証されない。述べたように、プラスチック光ファイバー(POF)は、オプティカルコア用に、PMMAとして知られている、ポリメタクリル酸メチルを使用する。材料の燃焼性が高いと、単独で試験されたときに、また本質的に難燃性の材料で囲まれるか、または被覆されていたときでも、FAA燃焼性試験に合格することは難しい。パラアミド糸および一般的なグラスファイバー(たとえば、Eガラス)などの、航空宇宙用ケーブルで一般に使用されるような強度部材層を加えたとしても、最終製品がFAA燃焼性試験に合格することはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】ASTMC338-93(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、一般的に、既存の光ファイバーケーブル技術を改善し、光ファイバーケーブルを航空宇宙用途向けに頑丈な構造のものにすることである。さらに、航空宇宙用途で使用できるPOFケーブルを提供することも目的とする。さらに、FAA燃焼性試験を含む、燃焼性要件に耐えることができるケーブルを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、用途の詳細な説明および図面からより容易に明らかになるであろう。
【0012】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す、添付図面は、本発明の実施形態を例示しており、また以下で述べる本発明の一般的な説明と併せて、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による光ファイバーケーブルの断面斜視図である。
図2図1のケーブルの断面図である。
図3】本発明の代替的実施形態による、光ファイバーケーブルの断面斜視図である。
図4図3のケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の概要]
光ファイバーケーブルは、コアとコア上のクラッディング層とを備える光ファイバー要素を具備する。一次緩衝層および/または1つもしくは複数の内側ジャケット層は、光ファイバーの上に位置決めされ得る。強度部材層は、光ファイバー要素および中間層の上に位置決めされる。強度部材層は、少なくとも25%の高温ファイバー材料からなるファイバー要素の層を含む。外側ジャケット層は、強度部材層の上に位置決めされる。外側ジャケット層は、高難燃性材料から形成される。本発明の一実施形態において、外側ジャケット層の難燃性材料は、30以上の限界酸素指数を有する材料から形成される。
【0015】
発明の実施形態の詳細な説明
本発明の態様に従って製作された光ファイバーケーブルは、航空宇宙用途で使用される光ファイバーケーブルの耐久性を著しく改善するものである。特に、航空宇宙用途で使用するためのPOFケーブルの頑健性を改善する。より具体的には、本発明は、航空宇宙用光ファイバーケーブルの他の要件を依然として満たしながら特定の燃焼性要件に耐えることができる、ガラスコア要素またはプラスチック/ポリマーコア要素のいずれかを使用する光ファイバーケーブルを実現する。これらの様々な利点のすべては、ケーブルの光学的、機械的、または熱的性能の低下を起こすことなく、述べられているように達成される。したがって、本発明は、最先端の光ファイバーケーブルに対して著しい改善をもたらし、特に、航空宇宙および他の用途で使用される最先端の光ファイバーケーブルに対して著しい改善をもたらす。
【0016】
本発明は、特に、POFおよびグラスファイバーを含む、光ファイバーケーブルの様々な異なる構造に対する改善された燃焼性性能を提供する。特に、これは、以下で定められているように、FAA燃焼性試験などの、標準航空宇宙FAA燃焼性試験に耐える能力を有する光ファイバーケーブル構造を提示する。さらに、本発明は、他の異なる性能および燃焼性要件に合格する上でも有益であり得る。
FAA燃焼性試験の定義:
60度試験。各電線仕様(型とサイズ)の最低限3つの試料が試験されなければならない。電線またはケーブルの試料(絶縁体を含む)は、試験中キャビネットドアを開いたままにしてFederal Test Method Standard 191 Model 5903に従ってすきま風のないキャビネット内に水平に対して60°の角度に置かれなければならないか、または頂部および一方の垂直側部(前)のところで開いていて、完全燃焼のために十分な空気流を許すが、すきま風はない、高さ約2フィート×1フィート×1フィートのチャンバー内に置かれなければならない。試料は、チャンバーの前部に平行で、そこから約6インチ離れていなければならない。試料の下端は、クランプで堅く留められなければならない。試料の上端は、プーリーまたはロッドの上を通過しなければならず、試料が燃焼性試験全体を通してぴんと張られているように取り付けられた適切なおもしを有していなければならない。下側クランプと上側プーリーもしくはロッドとの間の試験試料スパンは24インチでなければならず、接炎に対する中心点を示すように下端から8インチのところにマークを付けられなければならない。ブンゼンまたはチリルバーナーから、試験マークのところに30秒間接炎されなければならない。バーナーは、試料の試験マークの下に、試料に垂直に、および試料の垂直面に対して30度の角度で据え付けられなければならない。バーナーは、3/8インチの公称ボアを有し、火炎の高さが3インチ、内部コーンが火炎高さの約1/3になるように調整されなければならない。較正済み熱電対パイロメーターで測定したときに、火炎の最も熱い部分の最低温度は、1750°F以上であり得る。バーナーは、火炎の最も熱い部分が電線の試験マークに当てられるように位置決めされなければならない。火炎時間、燃焼長、および滴りの有炎燃焼時間は、もしあれば、記録されなければならない。燃焼長は、以下で定義されているパラメータに従って決定され、最近1/10インチまで測定されなければならない。ファイバー試料の断絶は、故障とはみなされない。
燃焼長。燃焼長は、部分的なまたは完全な消費、炭化、または脆化の領域を含むが、すすが付いた、着色した、反った、または退色した領域も、材料が縮むか、または熱源から溶け去った領域も含まない、元の縁から火炎が衝突したせいで生じる試験試料への損傷の最も遠い証拠箇所までの距離である。
試験:火炎の最も熱い部分は、30秒間サンプルにあてがわれ、その後撤去される。
30秒後接炎要件:
1.サンプルは自己消火する
a.火炎は、30秒以内に消火しなければならない。
b.平均燃焼長は、3インチ以下でなければならない。
2.有炎滴下物は、平均3秒以内に自己消火しなければならない。いくつかの燃焼性試験は、有炎滴下物が、また、試験サンプルの下に設置されたティッシュペーパーを着火しないことを要求しており、本発明ではその標準にも対処する。いくつかの燃焼性試験は、ファイバーが5秒以内に自己消火することを要求しており、本発明ではその標準にも対処する。
【0017】
次に図1図2を参照すると、本発明の一実施形態が説明目的のために例示される。これらの図は、本発明の態様による複数の層を有するケーブルを例示しており、また本明細書で説明されているような様々な層または層要素の相対的配置を例示している。しかしながら、層の厚さは、例示されているように、図では特有でも正確でもなく、様々な層要素の配置を他の層要素およびケーブル全体の構造に関して示す例示的な目的のものにすぎない。本発明は、説明のみを目的として示されている、そのような図によって制限されない。
【0018】
特に、ケーブル50は、本発明の特徴に従って追加の層または層要素によって囲まれ、保護されている光信号を伝送するための少なくとも1つの光ファイバー要素またはファイバー52を組み込んだ光ファイバーケーブルである。各それぞれの層は、光ファイバー要素をその長さに沿ってぐるりと囲み、前の内層のうちの1つまたは複数を囲むものとしてよい。光ファイバー要素52は、一般的に、図示されているように、ケーブル50内に同軸配置される。光ファイバー要素52は、一般的に、ファイバーコア要素またはコア54およびコア上のクラッディング層56を含む。コア54は、ガラス、プラスチックまたはポリマーまたはプラスチッククラッド材料などの、光透過材料から作られ、コアの周りの好適なクラッディング層56は、コア内の光の反射を維持し、光信号をファイバー要素の長さに沿って伝送するために導波路として働く。
【0019】
本発明は、航空宇宙環境を含む、過酷な環境内で使用するなどのための、光ファイバーケーブルの性能特性を改善することを対象とする。一態様において、本発明は、そのようなケーブルのコアおよびクラッディング層および他の囲んでいる層は可燃性材料から作られているので、POF(プラスチック光ファイバー/ポリマー光ファイバー)ケーブルの燃焼特性を改善する。本発明は、また、本明細書で説明されているような、ガラスコアファイバーにも応用可能である。
【0020】
一般的に、1つまたは複数の中間層が、コアを保護するために使用される。たとえば、内層または一次緩衝層58がファイバー要素52を囲む。本発明のケーブルで使用するためのそのようなファイバー構造は、一般的に市販されており、コアおよびクラッディングおよび一次緩衝層を備えているが、内層または緩衝層のないコア/クラッディング光ファイバー要素だけでも市販されている。
【0021】
最も人気のあるものを挙げると、シングルモード、マルチモード、およびステップインデックスファイバーを含む多数の既存のファイバー要素またはファイバーが今日市場に出回っている。これらのファイバーの共通要素は、それらが、光信号が伝送されるコア、コア内の光の反射を維持するコア上のクラッディング、およびたとえば、取り扱い時に保護機能をもたらすか、または耐水または耐放射線などの特定の機能を提供する外部コーティング層または緩衝層を有するという点である。グラスファイバーでは、1つの特定の例は、62.5/125/250マルチモードファイバーであり、これは62.5μmのコア径、125μmのクラッディング径、および250μmのアクリレートコーティング径を有する共通のファイバーである。
【0022】
POFファイバー要素では、コア要素は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であってよく、これは光ファイバーケーブルで使用されるPOFファイバー要素に共通のものである。代替的に、POFコアは、フッ素化ポリマーおよび他の材料からも形成され得る。POFファイバー要素は、たとえば、980μmの直径を有し得る。
【0023】
本発明の実施形態において使用されるようなPOFファイバー要素のクラッディングは、好適なフッ素化ポリマー(フルオロポリマー)とすることも可能であり、たとえば、POFコアのクラッディング層は10μmの厚さを有する。一次緩衝層58は、架橋ポリエチレン、フッ素化ポリマー、または他の類似の材料を含み得る。本発明で使用するための好適なPOF光ファイバー要素は、日本東京都所在の旭化成または日本東京都所在の三菱レイヨン株式会社から入手可能である。
【0024】
ガラス光ファイバー要素については、コアはクラッディングと同様にガラスであり、光信号の伝送のために連携する。一般的に、外部コーティングまたは一次緩衝層58は、グラスファイバー要素52を囲むように位置決めされる。コーティングは、アクリレート、ポリイミド、またはシリコーンであってよい。たとえば、ニューヨーク州コーニング市所在のCorning社から入手可能なアクリレートは、好適であり得る。他の可能なコーティングは、Corning社のシリコーンコーティング、またはニュージャージー州ウォレン所在のFiberlogix社、マサチューセッツ州ノースグラフトン所在のVerillon社、ドイツ、ジュナ所在のJ-Fiber社、コネチカット州イーストグランビー所在のNufern社から入手可能なアクリレートコーティング材料が利用され得る。アクリレートおよび上で述べたような他の材料に加えて、ポリイミドコーティングが利用されてよく、これはジョージア州ノークロス所在のOFS社、アリゾナ州フェニックス所在のPolymicro Technologies社、Nufern社、およびVerillon社から入手可能である。それに加えて、いくつかのセラミックコーティングまたはハブリッドガラスも、本発明のコーティング層66を実装するために好適であり得る。コーティングは、たとえば、約62.5μmの厚さを有することも可能である。様々なコーティングされたファイバーは、以下で述べているように、市販されており、本発明は、特定のファイバーまたはコーティングされたファイバーに限定されない。本発明のいくつかの好適なファイバーは以下を含む。
ファイバータイプ 使用される一次緩衝/コーティング層 販売者
マルチモード アクリレート Corning、ノースカロライナ州ヒッコリー
シングルモード アクリレート Corning、ノースカロライナ州ヒッコリー
マルチモード ポリイミド OFS、ジョージア州ノークロス、Verillon、マサチューセッツ州ノースグラフトン、Nufern、コネチカット州イーストグランビー、Fiberlogix、ニュージャージー州ウォレン
シングルモード ポリイミド OFS、ジョージア州ノークロス、Verillon、マサチューセッツ州ノースグラフトン、Nufern、コネチカット州イーストグランビー、Fiberlogix、ニュージャージー州ウォレン
マルチモード 高温アクリレート-HTA Fiberlogix、ニュージャージー州ウォレン、Verillon、マサチューセッツ州ノースグラフトン、J-Fiber、ドイツ、ジュナ、Nufern、コネチカット州イーストグランビー
ステップインデックス 架橋ポリエチレン 三菱レイヨン株式会社、日本、東京都
ステップインデックス フッ素化ポリマー 旭化成、日本、東京都
ファイバータイプ 使用される一次緩衝/コーティング層 販売者
グレーデッドインデックス フッ素化ポリマー 旭化成、日本、東京都
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、二次緩衝層または内側ジャケット層62が形成され、本明細書で説明されているように、一次緩衝またはコーティング層の上に、ならびに強度部材68および外側ジャケット70の下に位置決めされる。そのような層62に対する命名法は変わることがあり、グラスファイバー要素に対する層62は、「二次緩衝」と称されることもあり得るが、POF要素については、層62は、ときには、「内側ジャケット」層とも称される。本明細書における一貫性のために、層62は、内側ジャケット層と称されるが、これはいくつかのケーブル設計において二次緩衝となる目的に使用され得る。これらの層の実際の指定名は、本発明を限定することを意図されていない。
【0026】
内側ジャケット層62は、一次または第1の緩衝/コーティング層58の上に載り、その一次緩衝層58と一緒に働いて光ファイバー要素52を緩衝または保護するように形成される。本発明の一実施形態によれば、内側ジャケット層は、一次緩衝層の上に位置決めされた連続材料層であり得る。内側ジャケット層62は、たとえば、0.001~0.020インチの範囲内の厚さを有し得る。
【0027】
本発明の一態様によれば、光ファイバーケーブル50は、強度部材層68をケーブルの強度を増し保護するだけでなく、過酷な航空宇宙および他の環境に適し、また望ましい燃焼性試験に合格することができることを確実にすることができる構造内に組み込む。したがって、一実施形態において、強度部材層は、少なくとも25%の高温ファイバー材料からなるファイバー要素を含む。強度部材層の残りのファイバー要素は、強度特性などの他の望ましい特性をもたらし得る異なる材料の他のファイバーまたは長繊維を組み込むものとしてよく、たとえば、要素は、ケーブルの伸長およびクリープを低減する能力、縦方向または引張強さ、柔軟性の増大、屈曲寿命の増大、曲げ半径の増大、およびコスト低減について選択され得る。本発明のケーブルの固有の構造は、本明細書において説明されているように、過酷な火炎環境に耐えるように、特にFAA燃焼性試験に耐えることができるように設計された強化光ファイバーケーブルを実現する。その目的のために、固有の構造は、光ファイバーケーブルがFAA燃焼性試験における接炎の30秒以内に切断することを防ぎ、また、コア材料が制限時間内に自己消火することを行わせ、ケーブルの一部が有炎滴下物の形態でケーブルから滴り落ちるのを防ぐ。さらに、この構造は、ケーブルに沿った燃焼距離を3インチ最大限度未満に保持する。
【0028】
本発明は、POFケーブルと称される、プラスチックもしくはポリマーコアを有する、光ファイバーケーブル、または同様に燃焼性緩衝層材料を有するガラス光ファイバーを、航空宇宙用途において生じる過酷な環境の中で利用する能力を付与する。そのような光ファイバーケーブルは、他の用途でも使用できるが、航空宇宙用途の過酷な環境およびその中の燃焼性要件において有利な利点をもたらす。
【0029】
本発明の説明を目的として、「高温」という用語は、950℃を超える軟化点または他の定格動作温度を有する強度部材ファイバー/長繊維材料のことを指す。好ましくは、本発明の一特徴によれば、そのような軟化点または定格動作温度は985℃を超える。軟化点は、ASTMC338-93(2003)において規定されているようなガラスの軟化点に関連付けられている標準試験および方法によって決定されることも可能である。本質的に軟化点を有しない石英ガラスおよびセラミックファイバーなどの、本発明で使用するのに適している他の何らかの高温材料については、定格動作温度は、材料がその完全性を維持する温度であり得る。図を参照すると、強度部材層68は、5μm~21μmの範囲内の長繊維径を有する望ましい高温材料の数百本の個別長繊維から構成されている。複数の長繊維が合わされて、「糸」を形成し、各糸は強度部材層の構造内で「たて糸」と考えられる。強度部材層68は、ファイバー要素52および他の層(たとえば、58、62)を囲むように何通りもの仕方で形成され得る。一実施形態において、層68は、ファイバー/長繊維の糸がケーブルの軸に対して平行に引っ張られることによって形成され、一般的に光ファイバー要素52、およびそれらの下の、一次緩衝層58および内側ジャケット層62などの、他の層をぐるりと囲む。別の実施形態では、強度部材層68は、また、図面に例示されているように、提供されるかまたは編まれた糸によって形成され、光ファイバー要素52および他の層をぐるりと囲む強度部材層68を形成することも可能である。本明細書において、強度部材層68に関係するような、「ファイバー」または「長繊維」という用語は、高温ファイバー強度部材層68を構成するファイバー材料および個別の長繊維要素を指すために利用される(光ファイバーとは反対に)。そのような用語は、本発明に関して、限定的ではない。
【0030】
強度部材層68は、強度部材層68の上に位置決めされている外側ジャケット層70と連携して、難燃性をもたらし、プラスチックまたはポリマーコア(POF)を利用するものなどの既存の光ファイバーケーブル構造を、望ましい燃焼性試験および特に、FAA燃焼性試験に合格することができるようにする。
【0031】
本発明の一態様によれば、少なくとも25%の高温ファイバー材料から構成されるファイバー要素の層を含む、強度部材層は編まれるか、または平行に引かれ得るが、編組構造は、ケーブルが曲げられたときでも、光ファイバーコアを強度部材で一貫して囲むので、好ましいものとしてよい。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、強度部材層68に利用される高温ファイバー材料は、約1,056℃の軟化点を有するSグラスファイバーを含む。好適なSグラスファイバー材料は、サウスカロライナ州エーケン所在のAGY社から入手可能であるG75 S2ガラスである。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の強度部材層68内で利用される高温ファイバー材料は、1,050℃から1,250℃の範囲内で完全性を保持する定格動作温度を有する石英グラスファイバーまたは石英/シリカファイバーを組み込むものとしてよい。好適な一石英グラスファイバー材料は、ペンシルベニア州マルバーン所在のSt Gobain社から入手可能なQuartzelである。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の強度部材層68内で利用される高温ファイバー材料は、1,000℃を超える定格動作温度を有するセラミックファイバーを組み込み得る。好適な一セラミックファイバー材料は、オランダ、ウェストクノレンダム所在のHiltex社から入手可能なHiltex ALF 80/20である。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の強度部材層68内で利用される高温ファイバー材料は、約952℃の軟化点を有するRグラスファイバーを組み込み得る。
【0036】
本発明の目的のために本明細書において開示されている材料のうちのいくつかを使用して100%高温ファイバー材料を使用して製作される強度部材層68を利用することが望ましいものとしてよいが、強度部材層によってもたらされる高い耐温度性に加えて、高い強度特性、耐化学薬品特性、低い導電特性、剛性、または他の望ましい特性などの、他の特性をケーブルに付与するために、強度部材層内に他のファイバー材料をブレンドして使用してもよい。そのようなものとして、少なくとも25%の高温ファイバー材料からなるファイバー要素を使用する構造を有する強度部材層については、強度部材層に対する残りのパーセンテージは、本明細書において述べられているように、他の高強度ファイバー要素から構成されることもあり得る。
【0037】
たとえば、本発明の高温ファイバー材料にブレンドされた従来のEグラスファイバー要素に加えて、ホウ素を含有しないEガラス、さらにはDガラスが使用されることもあり得る。追加の材料は、DuPontから入手可能なNomexなどのメタアラミド繊維、またはこれもまたDuPontから入手可能なKevlarなどのパラアラミド繊維を組み込むことも可能である。したがって、本発明の強度部材層は、ファイバー要素の少なくとも25%が、本明細書で開示されているように、高温ファイバー材料である限り、ハイブリッド構造を利用し得る。すなわち、強度部材層68は、他の繊維に織り込まれている開示されているような両方の高温ファイバーを含む織られたファイバーから形成され得る。たとえば、Kevlarなどの、アラミド繊維は、好適なガラス石英繊維とともに織り込まれることもあり得る。
【0038】
強度部材を形成するために、たとえば、10から14本のガラス糸端(yarn end)は、2から6個のアラミド糸端とともに織られ、組み合わせた合計16個の糸端が織られた編組内に含まれるものとしてよい。本発明のいくつかの特定の実施形態において、本明細書で説明されているように、4本のアラミド糸端および12本の石英ガラス糸端が、知られている技術により、16個の糸端織り編組に織られる。好適な織り角度は、1インチ当たりよこ糸(pick)8~9本であり、好適な編組機器が利用されることもあり得る。
【0039】
強度部材層内で使用される高温ファイバー材料の密度は、本明細書で開示されているように外側ジャケット層、内側ジャケット層、および/または光ファイバー要素コアおよびクラッディング層の組成物などの、特定の他の層部材の選択に応じて、25%超に調整され得る。
【0040】
本発明の一態様によれば、高温ファイバー材料の強度部材層は、約0.001インチから0.030インチまでの範囲内の厚さを有するように製作され得る。高温ファイバー材料層の構造および厚さは、ケーブルの全体構造、さらにはその中で選択された材料において利用される他の層の厚さに依存する。
【0041】
本発明の別の態様によれば、高難燃性材料から作られた外側ジャケット層70は、高温ファイバー強度部材層68と連携して働き、所望の燃焼性、およびFAA燃焼性試験に合格する能力をもたらす。本発明によれば、外側ジャケット層は、30以上の限界酸素指数(LOI)を有する高難燃性材料を組み込む。発明の一実施形態において、LOIは、様々なフルオロポリマーを使用するなどして、90以上である。述べられたLOI範囲内のLOIを有する高難燃性材料の外側ジャケット層は、強度部材層の上に位置決めされる。本発明の一実施形態において、層70は、リスト1の材料の次のグループから選択された高難燃性材料から形成される。
リスト1:LOI≧30を有する難燃性ジャケット材料:
フルオロポリマー(たとえば、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE))
ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)
ポリアリルエーテルケトン(PAEB)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
ポリイミド(PI)
シリコーン
【0042】
外側ジャケットは、押出成形などによって、ケーブル50上に適切に形成される。外側ジャケット層は、約0.004インチ~0.025インチの範囲内の厚さで形成され得る。本発明の一特徴によれば、高温ファイバー材料を含む、高温強度部材層68は、光ファイバー要素のコア材料が漏出すること、ならびに「有炎滴下物」を生じること、および/またはケーブル上の火炎がFAA燃焼性試験の制限時間内に消火しないことを引き起こすことを防ぐ。本発明の別の特徴によれば、高温強度部材層68は、また、ケーブルの焼けた領域が3インチという最大要件を超えるのを防ぐ。
【0043】
述べたように、外側ジャケット70は、LOIが30以上である高難燃性材料から形成される。フルオロポリマー材料は、たとえば、外側ジャケット層70を形成するために利用されることも可能である(リスト1参照)。従来の熱可塑性押出成形プロセスは、外側ジャケットを付けるために利用されることが可能である。さらに、コーティングプロセスも、外側ジャケット70を形成するために利用されることが可能である。押出成形およびコーティングに加えて、外側ジャケットを形成するためにラップテープが利用されることも可能である。ポリイミドおよびPTFEテープなどの、ラップテープは、適切なジャケット形成仕様に従って、巻き付けられ、焼結されるものとしてよい。本発明の特定の一実施形態において、外側ジャケットは、ニューヨーク州オレンジバーグ所在のDaikin America, Inc.からの商標名Neoflon(商標)の下で利用可能なPFAまたはDuPontからの登録商標名Teflon(登録商標)であるPFAなどの、押出成形PFA材料の単一層から形成される。述べたように、外側ジャケットは、たとえば、0.004インチ~0.025インチの範囲内の厚さを有し得る。
【0044】
高難燃性材料から形成される外側ジャケット層は、強度部材と連携して、また組み合わせて働いてケーブルを一緒に保持し、30秒の露出時間の後、火炎を消火する。難燃性外側ジャケット層と併せて、少なくとも25%の高温ファイバー材料からなるファイバー要素の層を含む強度部材層を実装することを組み合わせることで、複数の層が光ファイバーケーブル内で一緒に比類なく連携することを可能にする。POF光ファイバーケーブル、さらにはグラスファイバーケーブルを用いることで、ケーブルが制限時間内に自己消火できるように火炎消火性を有するだけでなく、光ファイバー要素のコアから有炎滴下物が漏出するのを防止される。さらに、層の組合せは、ケーブルに沿った燃焼距離を3インチ最大限度未満に保持する。
【0045】
既存のケーブル設計は、燃焼性要件に合格し得るほどに厚くなるまで外側ジャケット層の厚さを単純に増すだけで修正されることも可能であるが、その結果得られるケーブルおよびそのケーブルの重量および直径が増大するので、重量と空間の制限が重要である、航空宇宙用途には使用できないものとなる。そのようなものとして、本発明は、その述べられている問題への独自の解決策を提供し、航空宇宙用途に有益である光ファイバーケーブルを形成し、これは、そのような用途の過酷な条件に耐えることができ、さらにはFAA燃焼性試験に関連付けられている燃焼性要件を満たすことができ、その一方で、サイズおよび重量は航空宇宙用途向きの実用的なものとなっている。
【0046】
本発明の別の態様によれば、内側ジャケット層58は、一次緩衝層の上で、また強度部材層の真下または下側で利用され、位置決めされ得る。図1および図2に例示されているように、内側ジャケット層62が示されている。しかしながら、本発明は、内側ジャケット層を有することに限定されない。図3および図4を参照すると、本発明のケーブル50の構造が図示されているが、そこでは、内側ジャケット層62は利用されない。
【0047】
現在の光ファイバーケーブルの独自構造は、本明細書において述べられているような燃焼性要件を満たしながらも、強度部材層および外側ジャケットの下にある内側ジャケット層62または他の層が様々な異なる材料から形成されることを可能にする。本発明の一態様によれば、内側ジャケット層は、上のリスト1に記載されているような材料などの、外側ジャケット層に類似する、高難燃性材料から形成されてよい。そのようなものとして、内側ジャケット層は、本発明に従って、外側ジャケット層70および強度部材層68の両方と連携して働き、望ましい改善された燃焼性特性をもたらす。内側ジャケットは、たとえば、光ファイバー要素52の上に押出成形されることなど、様々な方法で付けられ得る。
【0048】
本発明の別の態様によれば、本発明の独自の構造は、外側ジャケット層について適しているとして説明され、またリスト1に説明されている要素のような、高難燃性ではない多数の要素を使用して、光ファイバーケーブルがコアまたは内側ジャケット層または他の何らかの層とともに形成されることを可能にする。たとえば、内側ジャケット層は、いくつかのわずかな難燃化性を有するが、30未満のLOI定格をそれでも有するものとしてよい材料から形成されることも可能である。その目的のために、以下のリスト2で述べられている材料は、ケーブル構造の内側ジャケット層62または他の何らかの内層または構成要素を形成するために利用されることも可能である。開示されている強度部材層および本明細書で述べられている外側ジャケット層の本発明の組合せと組み合わせて使用したときに、このケーブル構造は、依然として、求められている望ましい燃焼性特性さらには航空宇宙用光ファイバーケーブルに対する他の望ましい特性をもたらす。すなわち、本発明は、高難燃性材料の外側ジャケット層と組み合わせて少なくとも25%の高温ファイバー材料の強度部材層を利用すれば、そのケーブル設計が可燃性であり得る材料を使用して1つまたは複数の内層もしくは内側ジャケット層を有していたときでも、本明細書において述べられている所望の特性および特徴を依然としてもたらす。
リスト2:LOI<30を有する他の潜在的ジャケット/層材料のリスト:
難燃化熱可塑性コポリエステル(FR-TPC)
難燃化熱可塑性ポリエステルエラストマー(FR-PCT-ET)(Hytrel(登録商標))
架橋ポリ塩化ビニル(XLPVC)
架橋ポリエチレン(XL-PE)
難燃化ポリアミド(FR-PA)
難燃化ポリ塩化ビニル(FR-PVC)
難燃化ポリエチレン(FR-PE)
難燃化ポリプロピレン(FR-PP)
難燃化ポリウレタン(FR-PU)
難燃化熱可塑性エラストマー(FR-TPE)
難燃化熱可塑性ゴム(FR-TPR)
熱可塑性コポリエステル(TPC)
熱可塑性ポリエステルエラストマー(PCT-ET)(Hytrel(登録商標))
ポリウレタン(PU)
ポリプロピレン(PP)
ポリエチレン(PE)
ポリ塩化ビニル(PVC)
熱可塑性エラストマー(TPE)
熱可塑性ゴム(TPR)
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
ポリアミド(PA)
【0049】
本発明の態様により製作されるケーブルの様々な異なる例は、航空宇宙用途を含む、様々な異なる用途で使用する光ファイバーケーブルとしての応用性を有し得る。
【実施例1】
【0050】
コア/クラッディング:PMMA/フルオロポリマー
一次緩衝:架橋ポリオレフィン
内側ジャケット層:FEPの厚さ0.006インチの壁
強度部材層:アラミド繊維の4本のたて糸(強度部材の約25%)および石英ガラスの12本のたて糸を有する編組層
外側ジャケット層:FEPの厚さ0.008インチの壁
【実施例2】
【0051】
コア/クラッディング:PMMA/フルオロポリマー
一次緩衝:架橋ポリオレフィン
内側ジャケット層:リスト1における任意の材料の厚さ0.006インチの壁:
強度部材層:アラミド繊維の4本のたて糸(強度部材の約25%)および石英ガラスの12本のたて糸を有する編組層
外側ジャケット層:リスト1における任意の材料の厚い壁の厚さ0.008インチの壁
【実施例3】
【0052】
リスト2からの内側ジャケット材料およびリスト1からの外側ジャケットを使用する本発明の例
コア/クラッディング:PMMA/フルオロポリマー
一次緩衝:架橋ポリオレフィン
内側ジャケット層:Hytrel(登録商標)(PCT-ET)の厚さ0.006インチの壁
強度部材層:アラミド繊維の8本のたて糸(強度部材の約50%)および石英ガラスの8本のたて糸を有する編組層
外側ジャケット層:リスト1におけるFEPまたは任意の材料の厚さ0.008インチの壁
【実施例4】
【0053】
リスト2からの内側ジャケットおよびリスト1からの外側ジャケットを使用する本発明の例
コア/クラッディング:PMMA/フルオロポリマー
一次緩衝:架橋ポリオレフィン
内側ジャケット層:リスト2またはリスト3からの任意の材料の厚さ0.006インチの壁
強度部材層:アラミド繊維の4本のたて糸(強度部材の約25%)および石英ガラスの12本のたて糸を有する編組層
外側ジャケット層:リスト1からのFEPまたは任意の材料の厚さ0.008インチの壁
【実施例5】
【0054】
グラス光ファイバーコア/クラッディング:62.5/125マルチモードガラス
一次緩衝:アクリレート(直径250μm)
二次緩衝/内側ジャケット層:Hytrel(登録商標)またはリスト2からの材料
強度部材層:アラミド繊維の4本のたて糸(強度部材の約25%)および石英ガラスの12本のたて糸を有する編組層
外側ジャケット:リスト1からのFEPまたは任意の材料の厚さ0.008インチの壁
【0055】
本発明はその実施形態の説明によって例示されており、またこれらの実施形態はかなり詳しく説明されているが、付属の請求項の範囲をそのような詳細に制限するか、またはどのような形であれ限定することは出願人の意図するものではない。追加の利点および修正は、当業者が容易に思いつくものである。したがって、本発明はそのより広い態様において、図示し説明されている特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに説明に役立つ例に限定されない。したがって、出願人の一般的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱を行うことができる。
【0056】
さらに、本発明では以下の例を含むことも好ましい。
[1]光ファイバーケーブルであって、
コアと前記コア上のクラッディング層とを備える少なくとも1つの光ファイバー要素と、
前記少なくとも1つの光ファイバー要素の上に位置決めされた一次緩衝層と、
前記一次緩衝層の上に位置決めされた強度部材層であって、少なくとも25%の高温ファイバー材料からなるファイバー要素の層を含む、強度部材層と、
前記強度部材層の上に位置決めされた外側ジャケット層であって、高難燃性材料から形成される外側ジャケット層と、
を備える光ファイバーケーブル。
[2][1]に記載の前記高難燃性材料は、30以上の限界酸素指数(LOI)を有する[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[3]前記一次緩衝層の上に、および前記強度部材層の下に位置決めされた内側ジャケット層をさらに備える[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[4]前記内側ジャケット層は、高難燃性材料から形成される[3]に記載の光ファイバーケーブル。
[5]前記光ファイバー要素は、ガラスコアを備える[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[6]前記光ファイバー要素は、ポリマーコアを備える[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[7]前記強度部材層は、950℃を超える軟化点または定格動作温度のうちの少なくとも一方を有する高温ファイバー材料を含む[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[8]前記強度部材層の前記高温ファイバー材料は、Sグラスファイバー、Rグラスファイバー、セラミックファイバー、および石英シリカファイバーのうちの少なくとも1つのファイバーを含む[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[9]前記外側ジャケット層の前記高難燃性材料は、エチレンテトラフルオロエチレンETFE、フッ素化エチレンプロピレンFEP、ペルフルオロアルコキシアルカンPFA、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリアリルエーテルケトン(PAEB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)またはシリコーンのうちの少なくとも1つを含む[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[10]前記ポリマーコアは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはフッ素化ポリマーの材料から形成される[6]に記載の光ファイバーケーブル。
[11]前記強度部材層は、0.001から0.030インチの範囲内の厚さを有する[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[12]前記外側ジャケット層は、0.004から0.025インチの範囲内の厚さを有する[1]に記載の光ファイバーケーブル。
[13]前記内側ジャケット層は、難燃化熱可塑性コポリエステル(FR-TPC)、難燃化熱可塑性ポリエステルエラストマー(FR-PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、架橋ポリ塩化ビニル(XLPVC)、架橋ポリエチレン(XL-PE)、難燃化ポリアミド(FR-PA)、難燃化ポリ塩化ビニル(FR-PVC)、難燃化ポリエチレン(FR-PE)、難燃化ポリプロピレン(FR-PP)、難燃化ポリウレタン(FR-PU)、難燃化熱可塑性エラストマー(FR-TPE)、難燃化熱可塑性ゴム(FR-TPR)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)のうちの少なくとも1つの材料から形成される[3]に記載の光ファイバーケーブル。
[14]光ファイバーケーブルであって、
ポリマーコアと前記コア上のクラッディング層とを備える少なくとも1つの光ファイバー要素と、
前記一次緩衝層の上に位置決めされた強度部材層であって、少なくとも25%の高温ファイバー材料からなるファイバー要素の層を含む、強度部材層と、
前記強度部材層の上に位置決めされた外側ジャケット層であって、30以上の限界酸素指数(LOI)を有する高難燃性材料から形成されている外側ジャケット層と、
を備える光ファイバーケーブル。
[15]前記一次緩衝層の上に、および前記強度部材層の下に位置決めされた内側ジャケット層をさらに備える[14]に記載の光ファイバーケーブル。
[16]前記強度部材層は、950℃を超える軟化点または定格動作温度のうちの少なくとも一方を有する高温ファイバー材料を含む[14]に記載の光ファイバーケーブル。
[17]前記強度部材層の前記高温ファイバー材料は、Sグラスファイバー、Rグラスファイバー、セラミックファイバー、および石英シリカファイバーのうちの少なくとも1つのファイバーを含む[14]に記載の光ファイバーケーブル。
[18]前記外側ジャケット層の前記高難燃性材料は、エチレンテトラフルオロエチレンETFE、フッ素化エチレンプロピレンFEP、ペルフルオロアルコキシアルカンPFA、ポリテトラフルオロエチレンPTFE、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリアリルエーテルケトン(PAEB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)またはシリコーンのうちの少なくとも1つを含む[14]に記載の光ファイバーケーブル。
[19]前記ポリマーコアは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはフッ素化ポリマーの材料から形成される[14]に記載の光ファイバーケーブル。
[20]前記内側ジャケット層は、難燃化熱可塑性コポリエステル(FR-TPC)、難燃化熱可塑性ポリエステルエラストマー(FR-PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、架橋ポリ塩化ビニル(XLPVC)、架橋ポリエチレン(XL-PE)、難燃化ポリアミド(FR-PA)、難燃化ポリ塩化ビニル(FR-PVC)、難燃化ポリエチレン(FR-PE)、難燃化ポリプロピレン(FR-PP)、難燃化ポリウレタン(FR-PU)、難燃化熱可塑性エラストマー(FR-TPE)、難燃化熱可塑性ゴム(FR-TPR)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(PCT-ET)(Hytrel(登録商標))、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)のうちの少なくとも1つの材料から形成される[15]に記載の光ファイバーケーブル。
【符号の説明】
【0057】
50 ケーブル
52 ファイバー、光ファイバー要素
54 コア
56 クラッディング層
58 内層または一次緩衝層
62 二次緩衝層または内側ジャケット層
66 コーティング層
68 強度部材層
70 外側ジャケット、外側ジャケット層
図1
図2
図3
図4