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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】可塑化スクリュー
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/505 20190101AFI20240722BHJP
   B29C 45/60 20060101ALI20240722BHJP
   B29C 45/48 20060101ALI20240722BHJP
   B29C 48/625 20190101ALI20240722BHJP
   B29C 48/265 20190101ALI20240722BHJP
   B29C 48/68 20190101ALI20240722BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20240722BHJP
【FI】
B29C48/505
B29C45/60
B29C45/48
B29C48/625
B29C48/265
B29C48/68
B29C48/80
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022106993
(22)【出願日】2022-07-01
(65)【公開番号】P2024006266
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利美
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】福田 繕巨
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-124127(JP,U)
【文献】実開平05-039914(JP,U)
【文献】特開平03-219935(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0046117(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/505
B29C 45/60
B29C 45/48
B29C 48/625
B29C 48/265
B29C 48/68
B29C 48/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒に内蔵され、回転することで樹脂材料を可塑化する可塑化スクリューであって、
この可塑化スクリューは、スクリュー本体と、このスクリュー本体の一端に第1ボルトで固定される中継部材と、この中継部材に複数本の第2ボルトで固定されるスクリューヘッドとからなり、
前記スクリュー本体は、中空部を有する中空軸であり、
前記中空部を通して締付けが行えるように、前記第2ボルトの頭が、前記中空部に収納されていることを特徴とする可塑化スクリュー。
【請求項2】
請求項1記載の可塑化スクリューであって、
前記スクリューヘッドは、前記スクリュー本体へ延びる円柱部を有し、
前記中継部材は、前記円柱部が嵌合するリング穴を有していることを特徴とする可塑化スクリュー。
【請求項3】
加熱筒に内蔵され、回転することで樹脂材料を可塑化する可塑化スクリューであって、
この可塑化スクリューは、スクリュー本体と、このスクリュー本体の一端に複数本の固定ボルトで固定されるスクリューヘッドとからなり、
前記スクリュー本体は、中空部を有する中空軸であり、
前記中空部を通して締付けが行えるように、前記固定ボルトの頭が、前記中空部に収納されており、
前記スクリューヘッドは、前記スクリュー本体へ延びる円柱部を有し、
前記スクリュー本体は、前記円柱部が嵌合する嵌合穴を有していることを特徴とする可塑化スクリュー。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項記載の可塑化スクリューであって、
この可塑化スクリューは、有効長さをLとし、外径をDとしたときに、L/Dが、1~3であることを特徴とする可塑化スクリュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料を可塑化する可塑化スクリューに関する。
【背景技術】
【0002】
金型へ樹脂材料を射出することで、樹脂成形品を得ることが盛んに行われている。
射出前に樹脂材料は可塑化される。この可塑化に可塑化スクリューが用いられる。
可塑化スクリューとして、各種の形態のもの実用に供されてきた(例えば、特許文献1(図1)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の可塑化スクリューの形状を説明する図であり、可塑化スクリュー100は、先端にスクリューヘッド101を、一体的に備えている。このような形態のスクリューは「スクリューヘッド一体型スクリュー」と呼ばれる。
【0004】
このようなスクリューヘッド一体型スクリューは、丸棒から削り出すことができ、加工コストを比較的抑えることができるため、広く採用される。
ただし、一箇所(例えばスクリューヘッド101)に傷がつくと、可塑化スクリュー100全体を、交換する必要がある。
【0005】
対策として、別の形態のもの実用に供されてきた(例えば、特許文献2(図2)参照)。
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図7は従来の別の可塑化スクリューの形状を説明する図であり、可塑化スクリュー110は、スクリュー本体111と、このスクリュー本体111にねじ込むことで取付けられるスクリューヘッド112とからなる。このような形態の可塑化スクリュー110は「スクリューヘッドねじ込み型スクリュー」と呼ばれる。
【0006】
スクリューヘッドねじ込み型スクリューにおいて、仮にスクリューヘッド112に傷がついたときは、スクリュー本体111からスクリューヘッド112を外し、新品のスクリューヘッド112をスクリュー本体111へねじ込む。スクリュー本体111は使い続けることができるという利点がある。
【0007】
しかし、スクリューヘッドねじ込み型スクリューには、次に述べる不具合がある。
樹脂材料を射出するときに、スクリューヘッド112に大きな反力が加わる。
主な反力は、図7において右向きの軸力(スクリュー本体111に向かうスラスト力)である。その他の反力は、軸に直角の力(ラジアル力)である。この軸に直角の力が、ねじ113にせん断や曲げとして作用する。せん断応力や曲げ応力は、ねじ113の径を大きくすることで、下げることができる。そのために、スクリューヘッドねじ込み型スクリューでは、ねじ113の径を大きくする必要がある。
【0008】
しかし、ねじ113の径を大きくすると、締付けトルクが大きくなり、簡単には取り外せなくなる。結果、スクリューヘッド112の交換作業が面倒であり、交換コストが嵩む。
【0009】
また、スクリューヘッド112の外径が大きくなると、工具の調達が困難になる。具体的に説明すると、JIS B 4630「スパナ」には、口の幅が5.5mm~80mmのスパナが規格化されている。例えば、スクリューヘッド112の外径が150mmであれば、規格外であるため、スパナは特注品となり、スパナの調達コストが嵩む。
【0010】
スクリューヘッドが交換可能なスクリューの採用を促すためには、スクリューヘッドの交換コストが低減可能で且つスパナ等の工具の調達コストが低減可能な可塑化スクリューが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】実用新案登録第3014793号公報
【文献】特開平9-290446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、スクリューヘッドの交換コストが低減可能で且つスパナ等の工具の調達コストが低減可能な可塑化スクリューを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、加熱筒に内蔵され、回転することで樹脂材料を可塑化する可塑化スクリューであって、
この可塑化スクリューは、スクリュー本体と、このスクリュー本体の一端に第1ボルトで固定される中継部材と、この中継部材に複数本の第2ボルトで固定されるスクリューヘッドとからなり、
前記スクリュー本体は、中空部を有する中空軸であり、
前記中空部を通して締付けが行えるように、前記第2ボルトの頭が、前記中空部に収納されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の可塑化スクリューであって、
前記スクリューヘッドは、前記スクリュー本体へ延びる円柱部を有し、
前記中継部材は、前記円柱部が嵌合するリング穴を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、加熱筒に内蔵され、回転することで樹脂材料を可塑化する可塑化スクリューであって、
この可塑化スクリューは、スクリュー本体と、このスクリュー本体の一端に複数本の固定ボルトで固定されるスクリューヘッドとからなり、
前記スクリュー本体は、中空部を有する中空軸であり、
前記中空部を通して締付けが行えるように、前記固定ボルトの頭が、前記中空部に収納されており、
前記スクリューヘッドは、前記スクリュー本体へ延びる円柱部を有し、
前記スクリュー本体は、前記円柱部が嵌合する嵌合穴を有していることを特徴とする。
【0017】
請求項に係る発明は、請求項1~のいずれか1項記載の可塑化スクリューであって、
この可塑化スクリューは、有効長さをLとし、外径をDとしたときに、L/Dが、1~3であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、中継部材を介してスクリューヘッドがスクリュー本体に着脱可能にボルトで固定される。固定のための第2ボルトの頭は中空部に収納されており、第2ボルトは中空部を通して締付けられる。
第2ボルトは複数本であるため、1本当たりの締付けトルクは小さくなる。結果、締付け/取外しが容易となり、スクリューヘッドの交換コスト(交換作業コスト)が大幅に低減される。
【0019】
加えて、第2ボルトが複数本であるため、第2ボルトの頭の径が小さくなる。結果、市販の工具が使用可能となり、工具の調達コストが大幅に低減される。
したがって、本発明により、スクリューヘッドの交換コストが低減可能で且つスパナ等の工具の調達コストが低減可能な可塑化スクリューが提供される。
【0020】
加えて、請求項1では、スクリュー本体の素材として、厚肉鋼管が採用できる。
仮に、中実丸棒から削り出すと、歩留まりが悪くなりスクリュー本体の製造コストが嵩む。
本発明では、厚肉鋼管から削り出すことができ、歩留まりが良くなりスクリュー本体の製造コストが低減できる。
【0021】
請求項2に係る発明では、スクリューヘッドの円柱部を中継部材のリング穴に、嵌合する。スクリューヘッドに加わる軸直角方向の反力は、円柱部を介してリング穴で支持させる。結果、第2ボルトに大きなせん断力が加わらなくなり、第2ボルトの径を小さくすることができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、スクリューヘッドがスクリュー本体に固定ボルトで固定される。固定ボルトの頭は中空部に収納されており、中空部を通して締付けられる。
固定ボルトは複数本であるため、1本当たりの締付けトルクは小さくなる。結果、締付け/取外しが容易となり、スクリューヘッドの交換コストが大幅に低減される。
【0023】
加えて、固定ボルトが複数本であるため、固定ボルトの頭の径が小さくなる。結果、市販の工具が使用可能となり、工具の調達コストが大幅に低減される。
したがって、本発明により、スクリューヘッドの交換コストが低減可能で且つスパナ等の工具の調達コストが低減可能な可塑化スクリューが提供される。
【0024】
加えて、請求項3では、中継部材が不要であるため、請求項1よりは部品点数が少なくなるという利点がある。
【0025】
さらに加えて、請求項では、スクリューヘッドの円柱部をスクリュー本体の嵌合穴に、嵌合する。スクリューヘッドに加わる軸直角方向の反力は、円柱部を介して嵌合穴で支持させる。結果、固定ボルトに大きなせん断力が加わらなくなり、固定ボルトの径を小さくすることができる。
【0026】
請求項に係る発明では、L/Dが1~3である。
可塑化スクリューの外周に設ける螺旋溝の総長さは、有効長さLに比例し、外径Dに比例する。Lが小さくても、Dが大きければ、螺旋溝の総長さは確保できる。
L/Dが1~3であれば、Lを十分に小さくして、Dを十分に大きくすることができる。
【0027】
従来のL/Dは20前後であり、Dが小さい。Dが小さいと、中空部を形成することが困難になる。形成したとしても中空部の径が小さいため、中空部を通しての締付け作業が困難になる。
この点、請求項では、Dが大きくなり、Lが小さくなる。
【0028】
Dが大きいと、中空部は容易に形成でき、形成する中空部の径も大きくなる。径が大きければ、中空部を通しての締付け作業が容易となる。
併せて、Lが小さければ、工具が短くなり、中空部を通しての締付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の可塑化スクリューを含む可塑化装置の原理図である。
図2】本発明に係る可塑化スクリューの断面図である。
図3】(a)~(c)は、可塑化スクリューの組立手順を説明する図である。
図4】(a)、(b)は、可塑化スクリューに加わるラジアル荷重を説明する図である。
図5】本発明に係る可塑化スクリューの変更例を説明する図である。
図6】従来の可塑化スクリューの形状を説明する図である。
図7】従来の別の可塑化スクリューの形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0031】
図1に示すように、可塑化装置10は、主板11と、この主板11で支えられ下へ延びる支持筒12と、この支持筒12で支えられ下へ延びる加熱筒13と、加熱筒13の先端(この例では下部開口)を塞ぐキャップ14と、このキャップ14から下へ延びるノズル15と、加熱筒13を囲うヒータ16と、加熱筒13に上から差し込まれる可塑化スクリュー30と、可塑化スクリュー30を支えつつ上へ延びるスクリュー支持体17と、支持筒12にスクリュー支持体17を回転自在に支承させるラジアル軸受18A、スラスト軸受18B及びスリーブ19と、スクリュー支持体17の上端に固定される従動プーリ21と、この従動プーリ21に対応して配置される駆動プーリ22と、この駆動プーリ22と従動プーリ21とに掛け渡されるベルト23と、駆動プーリ22を回す回転機構24と、加熱筒13の上部へ樹脂材料を供給するホッパ25及び落下口26とからなる。
【0032】
可塑化装置10の構成は適宜変更することは差し支えない。また、可塑化スクリュー30のスクリュー軸は鉛直としたが、スクリュー軸は水平であってもよい。
【0033】
回転機構24は、サーボモータや油圧モータが採用できる。
回転機構24で、駆動プーリ22、ベルト23、従動プーリ21、スクリュー支持体17を介して可塑化スクリュー30を所定方向へ所定速度で回す。
【0034】
ホッパ25の樹脂材料は、落下口26を介して加熱筒13の内面と可塑化スクリュー30の外面との間に供給される。
供給された樹脂材料は、混錬により発熱し、これにヒータ16の熱が加わって、可塑化される。
可塑化された樹脂材料は、ノズル15から排出される。
【0035】
図2に示すように、可塑化スクリュー30は、スクリュー本体31と、このスクリュー本体31の一端(図2では下端)に第1ボルト32で固定される中継部材33と、この中継部材33に複数本(この例では10本)の第2ボルト34で固定されるスクリューヘッド35とからなる。
【0036】
第2ボルト34の頭34aは、中空部36に収納されている。
この例では、頭34aの全部を中空部36内に露出させたが、頭34aを、中継部材33に埋没させることは差し支えない。埋没させても、頭34aの上面は中空部36内に露出するため、この場合も、第2ボルト34の頭34aは、中空部36に収納されているとみなす。
【0037】
スクリュー本体31は、鋼製であって、中空部36を有する中空軸である。
スクリュー本体31の外径Dは、例えば230mmであり、中空部36の径(スクリュー本体31の内径)dは、例えば140mmであり、全長は、例えば440mmである。
【0038】
仮に、スクリュー本体が、鋼製の中実軸であれば、中実軸の質量は(π/4)×(外径)2×全長×密度=(π/4)×232×44×7.8=143000gの計算により、143kgとなる。
対して、本実施例のスクリュー本体31は、中空軸であり、中空部36に相当する質量が差し引かれる。中空部36に相当する質量は、(π/4)×142×44×7.8=53000gの計算により、53kgとなる。結果、中空軸の質量は、143-53=90の計算により、90kgとなる。
【0039】
中実軸の質量:中空軸の質量=143:90=100:63の計算により、本発明に係るスクリュー本体31は、中実軸に比較して37%も軽量化され、37%も熱容量が小さくなる。熱容量が小さくなるため、加熱冷却における応答性が高まる。
【0040】
本発明者らは、径dの適正範囲を定めるために、複数例の検討を実施した。この検討の内容を、表1で説明する。
【0041】
【表1】
【0042】
検討例1は、中実軸であって、重くて熱量量が大きいため、評価は「X」である。
検討例2は、内径を100mmとした。内径/外径は、0.43で、質量は116kgである。減量率は、(中実軸の質量-中空軸の質量)÷中実軸の質量=(143-116)÷143=0.19の計算により、19%となる。減量率は少なくとも25%はほしいので、評価は△である。
【0043】
検討例3は減量率が25%、検討例4は減量率が37%、検討例5は減量率が49%であり、何れも評価は〇である。
検討例6は、減量率が大きいが、(外径-内径)÷2で計算される肉厚が小さくなり、強度的に余裕がなくなるため、評価は△である。
評価〇が適正範囲とすると、スクリュー本体31は、d/Dが0.50~0.70の範囲の中空軸が望ましい。
【0044】
中継部材33は、第1ボルト穴37と第2ボルト穴38とリング穴39を備える鋼製リングである(図3(a)参照)。リング穴39は、例えば、H7級のはめあい穴である。
スクリューヘッド35は、先端(図2では下端)が尖った円錐部41と、この円錐部41から延びる円柱部42とからなる(図3(c)参照)。円柱部42は、例えば、f6級のはめあい軸である。
【0045】
次に、図3に基づいて、可塑化スクリュー30の組立手順の一例を、説明する。
図3(a)に示すように、スクリュー本体31は、中空軸である。
この例では、外径が236~240mmで内径が130~134mmの中空素材(厚肉鋼管)を準備する。中空素材の外周に機械加工を施すことで、一端に凹部45を形成し、他端に基部側ねじ部46を形成し、外周にねじ山及びねじ溝を形成する。ねじ山の外径は230mmである。
中空素材の内周は、機械加工を施すことで、140mmに仕上げる。
【0046】
スクリュー本体31が中空軸であるため、中空素材(厚肉鋼管)を用いることができ、歩留まりが良くなり、製造コストを下げることができる。
【0047】
そして、図3(a)に示すように、定盤44に、スクリュー本体31を縦向きに載せる。このときに、凹部45が上になるようにする。次に、凹部45に中継部材33を上から落とし込む。次に、第1ボルト32で中継部材33をスクリュー本体31に固定する。
第1ボルト32は複数本(例えば10本)であり、第1ボルト32が上にあるため、下向き作業となり、第1ボルト32の締付け作業は容易になる。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、長尺レンチ47を準備する。この長尺レンチ47は、丸鋼の両端に六角部48が形成されたものが好適である。丸鋼は、スクリュー本体31より若干長くする。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、定盤44に木製ですり鉢状のベース51を載せる。このベース51にスクリューヘッド35を載せる。図3(a)で示したスクリュー本体31の天地を逆にし、スクリューヘッド35にスクリュー本体31を嵌める。詳しくは、はめあい軸としての円柱部42に、はめあい穴としてのリング穴39を嵌合する(はめあわせる)。
【0050】
次に、中空部36内へ、第2ボルト34を降ろす。そして、第2ボルト34を中継部材33及びスクリューヘッド35に通す。
次に、第2ボルト34に長尺レンチ47の一端(下端)を嵌める。
次に、長尺レンチ47の他端(上端)に、トルクレンチ52を嵌める。
【0051】
次に、トルクレンチ52により、所定の締付けトルクで、第2ボルト34を締付ける。
長尺レンチ47及びトルクレンチ52を外すことで、図2に示す可塑化スクリュー30が得られる。
本発明によれば、スクリュー本体31の外径及び内径を大きくしたことで、スクリュー本体31の軸長を小さくすることができる。スクリュー本体31の軸長が小さければ、長尺レンチ47を短くすることができる。長尺レンチ47は軽くなり、扱いやすくなる。
【0052】
それでも、長尺レンチ47は、普通の棒形レンチより、長くなり、上端の振れが顕著になる。
長尺レンチ47は、上端が振れるとトルクレンチ52による締付け作業がやや難しくなる。加えて、複数本(例えば10本)の第2ボルト34を締付ける作業は、かなり大変である。
【0053】
そこで、複数本(例えば10本)の通穴53が開いたドーナツ状の治具板54を準備する。この治具板54を、基部側ねじ部46に仮止めする。通穴53に長尺レンチ47を通す。
治具板54により、長尺レンチ47の上端の振れが抑制されるため、トルクレンチ52による締付け作業が容易になる。
【0054】
次に、本発明の構造が、有利である事項を、図4に基づいて説明する。
図4(a)は、図7の要部を抜粋してなる比較例を示す図である。
スクリューヘッド112に、溶融樹脂による反力F101と反力F104とが加わる。反力F101のスラスト分力はf102であり、ラジアル分力はf103である。
同様に、反力F104のスラスト分力はf105であり、ラジアル分力はf106である。
【0055】
ラジアル分力f103とラジアル分力f106とが同じであれば、両者は相殺される。しかし、ラジアル分力f103とラジアル分力f106とに差がでることがある。
両者の差(f103-f106)が、ねじ113にせん断や曲げとして作用する。せん断応力や曲げ応力は、ねじ113の径を大きくすることで、軽減できる。そのために、スクリューヘッドねじ込み型スクリューでは、ねじ113の径を大きくすることで対応してきた。
【0056】
従来のスクリューヘッド112は、スパナ等の工具で回されるが、スクリューヘッド112の外径が80mmを超えると、規格外となり、工具は特注品となる。特注品は高価である。加えて、トルクレンチも大型になり、高価である。
【0057】
さらに加えて、使用済みの可塑化スクリュー110において、スクリュー本体111からスクリューヘッド112を外す場合、焼き付きなどにより、簡単にはスクリュー本体111からねじ113が外れないことがある。
結果、スクリュー本体111の着脱作業において、作業コストが嵩む。
【0058】
図4(b)は、図2の要部を抜粋してなる実施例を示す図である。
スクリューヘッド35に、溶融樹脂による反力F1と反力F4とが加わる。反力F1のスラスト分力はf2であり、ラジアル分力はf3である。反力F4のスラスト分力はf5であり、ラジアル分力はf6である。
【0059】
ラジアル分力の差(f3-f6)は、第2ボルト(図2、符号34)ではなく、リング穴39と円柱部42との嵌合(はめあい)により、支承される。
結果、第2ボルト34は、軸力だけを考えてボルト径が決定され、例えば、M8(8mm径のメートルねじ)とすることができる。
【0060】
M8に対応するトルクレンチ52は、市販されており、入手が容易で安価である。
加えて、使用済みの可塑化スクリュー30において、スクリュー本体31からスクリューヘッド35を外す場合、はめあいであるから、着脱は容易である。
【0061】
さらに加えて、第2ボルト34は、焼き付きがあっても、ボルト径が8mm程度であれば、回転トルクはそれ程大きくはならない。
結果、スクリュー本体31の着脱作業は容易であって、そのための作業コストは嵩まない。
【0062】
次に、本発明に係る可塑化スクリュー30の変更例を、図5に基づいて説明する。
図5に示すように、可塑化スクリュー30は、スクリュー本体31と、このスクリュー本体31の一端に着脱可能に取付けられるスクリューヘッド35とからなる。
【0063】
スクリュー本体31は、中空部36を有する中空軸であるが、中空部36へ張り出すフランジ部56を一端に有する点が、図2と異なる。フランジ部56は、ボルト穴57を有すると共に嵌合穴59を有する。
【0064】
フランジ部56の嵌合穴59に、スクリューヘッド35の円柱部42が、嵌合される。
また、ボルト穴57へ固定ボルト58を通し、この固定ボルト58でスクリュー本体31にスクリューヘッド35を固定する。固定ボルト58の頭58aが、中空部36に収納されている。
その他は、図2と同じであるため、図2の符号を流用して、詳しい説明は省略する。
【0065】
この変更例では、フランジ部56が必須であるため、スクリュー本体31の製造コストはアップするが、中継部材(図2、符号33)が不要であるという利点がある。
【0066】
また、図3(c)において、中空部36は、第2ボルト34(又は固定ボルト58)及び長尺レンチ47を通すための作業スペースとなる。作業性を考慮すると中空部36の径(図2、径d)は、大きいほどよい。
【0067】
可塑化スクリュー30の外周に設ける螺旋溝の総長さは、可塑化スクリュー30の長さと外径とに比例する。可塑化スクリュー30の長さを短くして、外径を大きくすると、螺旋溝の総長さが確保できる。
【0068】
そこで、図1において、可塑化スクリュー30の有効長さをL、可塑化スクリュー30の外径をDとしたときに、L/Dを1~3の範囲に設定する。なお、有効長さLは、落下口26からスクリュー本体31の先端までの距離である。
【0069】
L/Dが1未満であると、Lが小さくなりすぎ、可塑化スクリュー30の形状が保てなくなる。L/Dが3を超えると、Dが小さくなり、作業性に影響がでる。よって、L/Dは1~3とすることが望まれる。
【0070】
尚、本発明の可塑化スクリュー30は、押出機に適用する他、射出機に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、樹脂材料を可塑化するスクリューに好適である。
【符号の説明】
【0072】
13…加熱筒、30…可塑化スクリュー、31…スクリュー本体、32…第1ボルト、33…中継部材、34…第2ボルト、34a…第2ボルトの頭、35…スクリューヘッド、36…中空部、39…リング穴、41…円錐部、42…円柱部、58…固定ボルト、58a…固定ボルトの頭、59…嵌合穴、L…可塑化スクリューの有効長さ、D…可塑化スクリューの外径、d…中空部の径(スクリュー本体の内径)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7