(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ナノファイバー糸ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
D02G 3/02 20060101AFI20240722BHJP
D02G 3/40 20060101ALI20240722BHJP
D02J 1/00 20060101ALI20240722BHJP
B65H 49/26 20060101ALI20240722BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240722BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240722BHJP
【FI】
D02G3/02
D02G3/40
D02J1/00 Z
B65H49/26
B82Y40/00
C01B32/168
(21)【出願番号】P 2022173137
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2019536220の分割
【原出願日】2017-12-01
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519164079
【氏名又は名称】リンテック・オヴ・アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】リマ,マルシオ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】オバエ‐ロブレス,ラケル
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/084797(WO,A1)
【文献】特開昭56-049040(JP,A)
【文献】中国実用新案第206279290(CN,U)
【文献】特開2015-174083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G
D02J
B65H
B82Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー糸ディスペンサーと、
前記ナノファイバー糸ディスペンサーに接続し、前記ナノファイバー糸ディスペンサーを並進運動させるように構成される並進アセンブリであって、この並進アセンブリが、
0.5cmから1メートルまで前記ナノファイバー糸ディスペンサーを並進させるように構成される、粗調整並進器と、
100マイクロメートルから5ミリメートルまで前記ナノファイバー糸ディスペンサーを並進させるように構成される、微調整並進器と
を含む、並進アセンブリと
を備え、
前記微調整並進器が、可撓性分配管に接続している、装置。
【請求項2】
フィルム供給スプール及びフィルム取り込みスプールを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記微調整並進器が、圧電アクチュエータ又は電磁アクチュエータを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記微調整並進器が、キロヘルツのオーダーの運動周波数に設定される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
非接触式切断システムを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記非接触式切断システムが、電源に接続される少なくとも1つの電極を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記非接触式切断システムが、電気アークシステム、コロナ放電システム又はレーザーシステムのいずれか1つである、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記ナノファイバー糸ディスペンサー
がナノファイバー糸が適用されるように構成されるフィルムを更に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
複数の並列のナノファイバー糸セグメントが、互いに対応する100μm間隔で分離して、前記ナノファイバー糸が前記フィルムに適用される、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ナノファイバー及びナノファイバー糸に関する。具体的には、本開
示は、ナノファイバー糸ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバーは、独特な機械的、光学的及び電子的特性を有することが知られている
。しかし、ナノファイバーは、未だその独特の特性にもかかわらず、多くの市販の製品内
に組み込まれていない。ナノファイバー糸は、ナノファイバー自体以外で、ナノファイバ
ー糸内に材料及び繊維を含むことによって糸特性を調整する能力に起因して、商業的な魅
力を有することができる、ナノファイバーの1つの形態である。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一例は、注入口、放出口及びチャンバを画定するハウジングを備える装置であ
る。本装置は、ハウジングに接続し、かつ注入口と連通している加圧ガス供給源も備える
。本装置は、チャンバ内に配置されたスプールも備える。本装置は、スプールの周囲に巻
いたナノファイバーも備え、このナノファイバーは100マイクロメートル未満の平均直
径を有する。一実施形態にて、ナノファイバーの平均直径は1マイクロメートル未満であ
る。一実施形態にて、ハウジングは、注入口及び放出口を除いた、ハーメチックシール(
hermetic seal)を含み、ハーメチックシールは、注入口及び放出口の通過を除く、チャ
ンバ内への流体の浸潤を防ぐように構成される。一実施形態において、放出口は、放出口
を通してハウジング内へ、1気圧の圧力の水の浸潤を防ぐように特定の寸法に設定される
。一実施形態にて、放出口の内径は、10μmと300μmとの間である。一実施形態に
て、ハウジングは、チャンバ内に分配される流体を更に含む。一実施形態にて、流体はポ
リマーである。一実施形態にて、流体は接着剤である。一実施形態にて、接着剤は、メタ
クリル酸系接着剤である。一実施形態にて、本装置は、ハウジングに接続するノズルを更
に備え、ノズルは、放出口と連通するチャネルを画定する。一実施形態にて、本装置は、
チャネル内に配置されるライナーを更に備える。一実施形態にて、ライナーは、水の浸潤
を防ぐように特定の寸法に設定した内径を有する。一実施形態にて、ライナーの直径は、
90μmと130μmとの間である。一実施形態にて、ライナーはチャネルから取り外し
可能である。一実施形態にて、本装置は、チャネル内を流れる流体を更に備え、ライナー
の長さはチャネルの長さより短い。一実施形態にて、本装置は、チャンバ内でスプールの
回転を可能にするように構成される、スプールの中央に配置した回転軸を更に備える。一
実施形態にて、本装置は、スプール上に配置したカーボンナノファイバー糸を更に備え、
カーボンナノファイバー糸は、ハウジングの放出口に近接した自由端と、スプールに近接
した固定端とを有する。一実施形態にて、カーボンナノファイバー糸は、約100μmの
断面直径、及び自由端と固定端の間の約1kmの長さを有し、その長さの少なくとも一部
はスプールに巻き付けられる。一実施形態にて、ナノファイバー糸は、2つ又はそれより
多い独立したナノファイバー、又は撚られたナノファイバー糸を形成するために撚り合わ
されたナノファイバー糸から製造される。一実施形態にて、撚られたナノファイバー糸は
、0.5マイクロメートル~100マイクロメートルの直径を有する。一実施形態にて、
本装置は、ローラーアセンブリを更に備える。一実施形態にて、ローラーアセンブリは、
支持体と、支持体に接続するスピンドルと、スピンドルの少なくとも一部の周囲に配置し
たローラーとを更に備える。一実施形態にて、ローラーアセンブリは洗浄機構を更に含む
。一実施形態にて、ローラーアセンブリは、第1の支持体及び第2の支持体と、第1の支
持体に接続する第1のスピンドル及び第2の支持体に接続する第2のスピンドルと、第1
のスピンドルの少なくとも一部の周囲に配置され第1のローラー及び第2のスピンドルの
少なくとも一部の周囲に配置され第2のローラーと、第1のローラー及び第2のローラー
の周囲に配置されベルトとを更に含む。一実施形態にて、ハウジング及びハウジングに接
続するノズルのうちの少なくとも1つに接続するコネクタと、コネクタに取り付けられる
駆動軸とを更に備える。一実施形態にて、駆動軸の長手方向軸は、ハウジングの中央点と
ローラーに近接するローラーの中央点との間の基準軸と交差する。一実施形態にて、駆動
軸の断面の半径は、ローラーの中央点から、下にある表面(underlying surface)上に投
影されるハウジング周囲の対応箇所までを測定した長さより短い。一実施形態にて、ハウ
ジング及びノズルの少なくとも1つに接続するコネクタと、コネクタに取り付けた駆動棒
とを更に備える。一実施形態にて、駆動棒はコネクタに回転可能に取り付けられる。一実
施形態にて、回転可能な取り付け具はベアリングである。
【0004】
本開示の一例は、ナノファイバーを分配(dispensing)するための方法であって、この
方法は、ナノファイバーの自由端をディスペンサーの放出口に通す(threading)ステッ
プであって、このステップは、ディスペンサーにより画定される注入口を介して、ディス
ペンサーのチャンバ内に流体を流すサブステップであって、前記流体は、チャンバを通過
して、ディスペンサー放出口を通ってチャンバを出ていくサブステップと、前記流体が、
ディスペンサー放出口を通ってナノファイバーの自由端を運ぶサブステップとを含むステ
ップと、ディスペンサーに取り付けられているローラーと接触する前記自由端に近接して
ナノファイバーの一部を配置するステップと、前記ローラーを介してナノファイバーに力
を加えるステップであって、前記力は、ナノファイバーを基材に接触させるステップとを
含む。一実施形態にて、本方法は、ノズルにより画定されるチャネルにナノファイバーを
通すステップであって、チャネルが放出口と連通しており、ノズルがディスペンサーに取
り付けられている、ステップを更に含む。一実施形態にて、本方法は、チャネル内に配置
したライナーを更に含み、ナノファイバーはチャネル内に配置されるライナーを通される
。一実施形態にて、ライナーを通過するナノファイバーの自由端上でチャンバ内の流体の
流れを止めるステップと、チャンバへの流体の流れを止める際、ライナーとチャネルとの
間の隙間に追加の流体を流すステップであって、ライナーの長さはチャネルの長さより短
い、ステップとを更に含み、更に、追加の流体の流れは、ベンチュリ効果を介してナノフ
ァイバーへ圧力を加える。一実施形態にて、本方法は、自由端を有するナノファイバーを
スプールの周囲に巻き付けるステップと、スプールをディスペンサーのチャンバ内に配置
するステップとを更に含む。一実施形態にて、ナノファイバーは、ナノファイバー糸を更
に含む。一実施形態にて、ナノファイバー糸は、100マイクロメートル未満の直径を有
する。一実施形態にて、ナノファイバー糸は、1マイクロメートル未満の直径を有する。
一実施形態にて、チャンバは、放出口及び注入口を除いて、ハーメチックシールされる。
一実施形態にて、流体はガスである。一実施形態にて、流体は流体接着剤である。一実施
形態にて、ローラーを介してナノファイバーに力を加えることは、ナノファイバーを基材
に付着させる。
【0005】
本開示の一例は、ナノファイバー糸ディスペンサーと、ナノファイバー糸ディスペンサ
ーに接続し、ナノファイバー糸ディスペンサーを並進運動させるように構成される並進ア
センブリとを備える装置であり、並進アセンブリは、0.5cmから1メートルまでナノ
ファイバー糸ディスペンサーを並進させるように構成される粗調整並進器と、100マイ
クロメートルから5ミリメートルまでナノファイバー糸ディスペンサーを並進させるよう
に構成される微調整並進器とを含む。一実施形態において、本一例は、フィルム供給スプ
ール及びフィルム取り込みスプールを更に備える。一実施形態にて、微調整並進器は、可
撓性分配管に接続している。一実施形態にて、微調整並進器は、圧電アクチュエータを含
む。一実施形態にて、微調整並進器は、電磁アクチュエータを含む。一実施形態にて、微
調整並進器は、キロヘルツのオーダーの運動周波数に設定される。一実施形態にて、非接
触式切断システムを更に備える。一実施形態にて、非接触式切断システムは、電源に接続
される少なくとも1つの電極を含む。一実施形態にて、非接触式切断システムは、電気ア
ークシステムである。一実施形態にて、非接触式切断システムは、コロナ放電システムで
ある。一実施形態にて、ナノファイバー糸ディスペンサーは、ナノファイバー糸が適用さ
れるように構成されるフィルムを更に含む。一実施形態にて、複数の並列のナノファイバ
ー糸セグメントが、互いに対応する100μm間隔で分離して、ナノファイバー糸はフィ
ルムに適用される。一実施形態にて、非接触式切断システムは、レーザーシステムである
。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態において、基材上のナノファイバーのフォレストの例を示す。
【
図2】一実施形態において、成長するナノファイバーの反応器の概略図である。
【
図3】一実施形態において、シートの相対寸法を確認するナノファイバーシートの図であり、シートの表面に平行な平面の端から端まで一直線になったシート内のナノファイバーを概略的に示す。
【
図4】ナノファイバーフォレストから横方向に引き出されたナノファイバーシートの画像であって、ナノファイバーは、
図3に概略的に示されるように端から端まで一直線になる。
【
図5A】一実施形態において、ナノファイバー糸ディスペンサーの側面図である。
【
図5B】一実施形態において、
図5Aに示すナノファイバー糸ディスペンサーの斜視図である。
【
図5C】一実施形態において、
図5Aに示すナノファイバー糸ディスペンサーの部分的な断面斜視図である。
【
図6A.6B】
図6Aは、一実施形態において、取り付けられたローラーを備える、ナノファイバー糸ディスペンサーの斜視図である。
図6Bは、一実施形態において、ナノファイバー糸ディスペンサーに取り付けたローラーの側面図である。
【
図6C.6D.6E】
図6C、
図6Dおよび
図6Eは、一実施形態において、ナノファイバー糸と下にある表面との間の接触を引き起こす種々の構造を示す。
【
図7】
図7Aは、一実施形態において、駆動構造を備えるナノファイバー糸ディスペンサーの斜視図である。
図7Bは、一実施形態において、駆動構造を備えるナノファイバー糸ディスペンサーの側面図である。
【
図8】
図8Aは、一実施形態において、ベンチュリ効果がナノファイバー糸をディスペンサーから分配するために使用される、ナノファイバー糸ディスペンサーの別の実施形態を示す。
図8Bは、一実施形態において、ナノファイバー糸をディスペンサーから分配するベンチュリ効果を概略的に示す。
【
図9】
図9Aは、一実施形態において、基材にナノファイバー糸を適用するために使用する、アセンブリの側面図を示す。
図9Bは、一実施形態において、基材にナノファイバー糸を適用するために使用する、
図9Aのアセンブリの平面図を示す。
【
図10A】一実施形態において、基材へのナノファイバー糸の適用中、ナノファイバー糸を切断する非接触式機構も含む、
図9Aのアセンブリの平面図を示す。
【
図10B】一実施形態において、
図10Aのアセンブリを使用してナノファイバー糸を適用できる、別のパターンの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
添付の図面は、本開示の種々の実施形態を説明の目的のためにのみ示すものである。多
数の変形、構成及び他の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかであろう。
【0008】
[概略]
ナノファイバー糸の製造は、国際公開第2007/015710号として公開された、
国際出願番号第PCT/US2005/041031号に記載されており、その両方は、
ここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0009】
ナノファイバー及びナノファイバー糸の操作は、困難であり得る。ナノファイバーは、
数十ナノメートルの直径を有することができる。ナノファイバー糸(複数のナノファイバ
ーの集合、又は複数の独立したナノファイバー糸が撚り合わされた糸)は、数マイクロメ
ートルと同程度に小さい直径(又は平均直径)を有することができて、1キロメートル(
km)以上である長さを有することができる。これらの比較的小さい直径は、長さに関係
なく、物理的に掴持することはもちろん、ナノファイバー糸を見ることを難しくする。長
いナノファイバー及びナノファイバー糸は、更に操作を複雑化して、ストランド内の規則
正しい組織を維持することが重要になる。一旦もつれると、ナノファイバー及びナノファ
イバー糸の両方は、もつれを解くまた結び目を解くのがほとんど不可能である。
【0010】
他の問題が、ナノファイバー及びナノファイバー糸の操作に関して存在する。例えば、
その超低密度のため、ナノファイバー及びナノファイバー糸(その全長を問わず)は、遠
隔換気システム、ナノファイバー糸が配置される場所の扉の開放、又はナノファイバー糸
から数メートル離れた人の呼吸によって生じるものと、同程度のかすかな気流によって容
易に動く。多くのナノファイバー糸が、紡織業で使用される従来の繊維及び糸(例えば、
綿、レーヨン、ナイロン、リネン)及び構造材用途のためのケーブル(例えば、鋼線及び
ケーブル)で使用される大部分の材料より、単位長さ当たりが高価なので、無駄にナノフ
ァイバーを失うこと(例えば、もつれ、又は結び目によって生じる)はより高い財務上の
コストになる。
【0011】
これらの問題にもかかわらず、その有力な機械的、化学的、熱的及び電気特性のため、
製品及び製造プロセスでナノファイバー及びナノファイバー糸を使用することに対する大
きな関心が依然としてある。
【0012】
この見地から、本開示の実施形態は、ナノファイバー及びナノファイバーからなる糸(
簡潔さのために両方とも「ナノファイバー糸」という)を分配するためのディスペンサー
を含む。ディスペンサーは、注入口、放出口及びチャンバを画定するハウジングを含む。
その周囲にナノファイバー糸の長さが巻かれる、スプールはチャンバ内に配置される。ガ
ス供給源は、ハウジングにより画定される注入口と連通する。次にガス供給源は、正圧(
例えば、ハウジングのまわりの周囲圧力より大きい)でガスを供給して、放出口を通って
ディスペンサーから糸を分配するのを容易にすることができる。
【0013】
本開示のディスペンサーは、多くの利点を有する。第1に、それは、無駄を最小限に抑
えるやり方で、ナノファイバー糸を分配する及び/又は適用する、制御された方法を提供
する。ディスペンサーは、ナノファイバー糸自体より容易に操作される構造も提供し、し
たがって、それによってナノファイバー糸が保存され、扱われ、操作される便利さを改善
する。ナノファイバーディスペンサーは、乾燥した、ほこりのない環境で糸を保持する、
便利かつ安全な保管容器も提供できる。糸は、ナノファイバー糸がもつれている可能性を
低減する、整ったスプール形で保存されることができる。これらの理由及び他の理由のた
めに、ディスペンサーは、ナノファイバー糸自体の有用性を改善する。
【0014】
ディスペンサーは、その有用性に寄与する多くの特徴がある。ハウジング内にガス供給
源により供給される正圧は、スプール上へナノファイバー糸を巻き直す、意図的でない、
又は無分別な試みを防ぐことができ、そうしてチャンバ内のナノファイバー糸のもつれを
防ぐことができる。後述する追加機能は、スプールに接続して、所望する場合、スプール
のナノファイバー糸の規則正しい巻き直しを容易にすることができる。
【0015】
ディスペンサーは、本来ならナノファイバー糸の機械的、電気的、熱的特性を劣化させ
得る、不純物(例えば、研磨剤粒子または化学活性分子)によるナノファイバー糸の汚染
を防ぐことができる。更に、ディスペンサーは、ナノファイバー糸の自由端(すなわち、
スプールに取り付けられない、圧縮されない、装着されない、又は固定されないナノファ
イバー糸の端)の位置を好都合に決めるために使用することができる。自由端は上述のよ
うに、小さい直径のナノファイバー糸のために見つけるのが困難であり得る。
【0016】
ディスペンサーは、他の材料がナノファイバー糸に都合よく適用されることができる、
賦形剤も提供する。例えば、接着剤ディスペンサー及びローラーは、ディスペンサーに取
り付けられる、又は一体化されることができる。接着剤(固体、流体またはゲルに関わら
ず)は、それがディスペンサーを出る際、ナノファイバー糸に塗布されることができる。
ローラーは、糸が分配される際、ナノファイバー糸が付着することになる表面上に、接着
剤を被覆した糸を押圧できる。他の実施形態にて、ナノファイバー糸が、すでにナノファ
イバー糸上に配置される及び/又は含浸される化学成分を有するディスペンサーを出るよ
うに、接着剤または他の化学成分は、ハウジング自体に含まれることができる。
【0017】
本明細書に記載の他の実施形態は、ベンチュリ効果を使用して、ナノファイバー糸を分
配するのを容易にするように構成される、ナノファイバー糸ディスペンサーを含む。本明
細書に記載の更なる他の実施形態は、その内部にナノファイバー糸ディスペンサーが組み
込まれるシステムを含み、それは、マイクロメートルからメートルの範囲の形状を有する
パターンのフィルム又は基材にナノファイバー糸を適用できる。
【0018】
多数の他の利点は、本開示の見地から明らかである。
【0019】
ナノファイバー糸ディスペンサーの実施形態を記載する前に、ナノファイバーフォレス
ト、シート及び引っ張られたナノファイバーの特性ならびに合成方法を記述する。
【0020】
[カーボンナノファイバー及びカーボンナノファイバーシートの特性]
本明細書で使用する場合「ナノファイバー」という用語は、1μm未満の直径を有する
繊維を意味する。本明細書の実施形態が、カーボンナノチューブから製造されると主とし
て記載される一方で、他の炭素同素体(グラフェン、マイクロメートル又はナノ寸法のグ
ラファイト繊維及び/又はプレートに関わらず)、ならびにナノ寸法繊維の他の組成物(
例えば、窒化ホウ素)は、後述する技術を使用してナノファイバーシートを作製するため
に使用してもよい。本明細書で使用する場合「ナノファイバー」及び「カーボンナノチュ
ーブ」という用語は、単層カーボンナノチューブ及び/又は多層カーボンナノチューブ(
炭素原子が円筒状構造を形成するために結合されている)を含む。いくつかの実施形態で
、本明細書で参照されるカーボンナノチューブは、4つと10つの間の壁を有する。本明
細書で使用する場合「ナノファイバーシート」又は単に「シート」は、引き出し(drawin
g)プロセス(国際公開第2007/015710号に記載のとおりであり、その全体は
、ここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする)を介して一直線に並べ
られる、ナノファイバーのシートを指し、その結果、シートのナノファイバーの長手方向
軸は、シートの主表面(すなわち、しばしば「フォレスト」と呼ばれる、シートの成膜直
後の状態)に垂直ではなく、シートの主表面と平行である。
【0021】
カーボンナノチューブの寸法は、使用する製造方法に応じて、著しく変化できる。例え
ば、カーボンナノチューブの直径は0.4nm~100nmであり得て、その長さは10
μm~55.5cm超の範囲であり得る。カーボンナノチューブは、132,000,0
00:1以上と同じ程度のものを有する、非常に高いアスペクト比(長さと直径の比)を
有することができる。広範囲の次元の可能性を考慮すると、カーボンナノチューブの特性
は、高度に調節可能または調整可能である。カーボンナノチューブの多くの魅力的な特性
が確認される一方で、実際の適用でカーボンナノチューブの特性を利用することは、カー
ボンナノチューブの特徴を維持する、又はそれを強化することを可能にする、計測可能か
つ制御可能な製造方法を必要とする。
【0022】
その独特の構造のため、カーボンナノチューブは、特定の用途のためにそれらを良好に
適合させる、特定の機械的、電気的、化学的、熱的及び光学的特性を備えている。特にカ
ーボンナノチューブは、優れた導電率、高い機械的強度、良好な熱安定性を示し、疎水性
でもある。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブは、有用な光学特性も示すこと
ができる。例えば、カーボンナノチューブは、狭く選択した波長で光を発する、又は検出
するために、発光ダイオード(LED)及び光検知器に使用できる。カーボンナノチュー
ブは、光子輸送及び/又はフォノン輸送でも有用であることがわかり得る。
【0023】
[ナノファイバーフォレスト]
本件開示の種々の実施形態に従って、ナノファイバー(カーボンナノチューブを含むが
、これに限定されない)は、種々の構成(本明細書で「フォレスト」と称される構成も含
む)で配置されることができる。本明細書で使用する場合、ナノファイバー又はカーボン
ナノチューブの「フォレスト」とは、基材上の互いと実質的に平行して配置される、ほぼ
同じ寸法を有するナノファイバーのアレイを意味する。
図1は、基材上のナノファイバー
の例示のフォレストを示す。基材は任意の形状でもよいが、いくつかの実施形態で、基材
は、フォレストがアセンブルされる平坦な表面を有する。
図1に示すように、フォレスト
のナノファイバーは、高さ及び/又は直径がほぼ等しくてもよい。
【0024】
本明細書にて開示するナノファイバーフォレストは、比較的高密度であり得る。具体的
には、開示したナノファイバーフォレストは、少なくとも1,000,000,000ナ
ノファイバー/cm2の密度を有することができる。いくつかの特定の実施形態にて、本
明細書に記載されているナノファイバーフォレストは、10,000,000,000ナ
ノファイバー/cm2と30,000,000,000ナノファイバー/cm2の間の密
度を有することができる。他の例で、本明細書に記載されているナノファイバーフォレス
トは、90,000,000,000ナノファイバー/cm2の範囲の密度を有すること
ができる。フォレストは高密度または低密度の領域を含むことができ、特定の領域はナノ
ファイバーがなくてもよい。フォレスト内のナノファイバーは、繊維間結合性も示すこと
ができる。例えば、ナノファイバーフォレスト内の隣接するナノファイバーは、ファンデ
ルワールス力によって互いに引きつけられることができる。
【0025】
[ナノファイバーフォレストを製造するための例示の方法]
種々の方法は、本開示に従ってナノファイバーフォレストを製造するために使用できる
。例えばいくつかの実施形態で、ナノファイバーは、高温の炉で成長することができる。
いくつかの実施形態では、触媒は、基材上に付着して、反応器内に配置されることができ
、次に反応器に供給される燃料化合物に曝露されることができる。基材は、800℃超~
1000℃の温度に耐えることができて、不活性材料でもよい。基材は、下にあるシリコ
ン(Si)ウエハに配置されるステンレス鋼またはアルミニウムを含むことができるが、
他のセラミック基材を、Siウエハの代わりに使用してもよい(例えば、アルミナ、ジル
コニア、SiO2、結晶化ガラス)。フォレストのナノファイバーがカーボンナノチュー
ブである例で、炭素系化合物(例えば、アセチレン)を、燃料化合物として使用できる。
反応器に導入された後、燃料化合物は、次に触媒に堆積しはじめることができて、ナノフ
ァイバーのフォレストを形成するために、基材から上向きに成長することによってアセン
ブルすることができる。
【0026】
ナノファイバー成長における例示の反応器の図を、
図2に示す。
図2で示すように、反
応器は、基材がナノファイバーフォレストの成長を促進するために配置されることができ
る、加熱ゾーンを含んでよい。反応器はまた、燃料化合物(複数可)及びキャリアガスが
反応器に供給され得るガス注入口と、消費した燃料化合物及びキャリアガスが反応器から
放出され得るガス放出口と、を含むことができる。キャリアガスの例は、水素、アルゴン
及びヘリウムを含む。これらのガス、特に水素はまた、反応器に導入されて、ナノファイ
バーフォレストの成長を促進することができる。そのうえ、ナノファイバーに混合される
ドーパントを、ガス流に加えることができる。ナノファイバーフォレストの堆積の間、ド
ーパントを加える例示の方法は、国際公開第2007/015710号の段落0287や
その他の箇所などに記載されており、この全体は、ここに引用することで本明細書の記載
の一部をなすものとする。フォレストに添加物をドープする又は提供する、他の例示の方
法は、表面コーティング、ドーパント注入、又は他の堆積及び/又はin situ反応
(例えば、プラズマ誘起反応、気相反応、スパッタリング、化学気相成長)を含む。例示
の添加物は、特に、ポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フェニレンテ
レフタルアミド)型樹脂、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリアクリ
ロニトリル、ポリ(スチレン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)及びポリ(ビニルピロ
リドン)、又はその誘導体及びこれらの組み合わせ)、元素または化合物のガス(例えば
、フッ素)、ダイヤモンド、パラジウム及びパラジウム合金、を含む。
【0027】
ナノファイバーの成長中の反応条件は、得られるナノファイバーフォレストの特性を調
整するために変えることができる。例えば、触媒の粒径、反応温度、ガス流速及び/又は
反応時間は、所望の仕様を有するナノファイバーフォレストを生産するように、必要に応
じて調整されることができる。いくつかの実施形態では、基材上の触媒の位置は、所望の
パターンを有するナノファイバーフォレストを形成するために制御される。例えば、いく
つかの実施形態で、触媒はパターンの基材上に堆積され、パターニングした触媒から生じ
る成長フォレストは、同じようにパターニングされる。代表的な触媒は、シリコン酸化物
(SiO2)又は酸化アルミニウム(Al2O3)の緩衝層を備える鉄を含む。これらは
、特に、化学気相成長(CVD)、圧力化学気相成長(PCVD)、電子ビーム(eビー
ム)堆積、スパッタリング、原子層堆積(ALD)、レーザーCVD、プラズマCVD、
熱蒸着、種々の電気化学的方法などを使用して、基材上に堆積され得る。
【0028】
形成の後、ナノファイバーフォレストは、所望により改質されることができる。例えば
、いくつかの実施形態で、ナノファイバーフォレストは、酸化剤または還元剤などの処理
剤に曝露され得る。いくつかの実施形態で、フォレストのナノファイバーは所望により、
処理剤によって化学的に官能化されることができる。処理剤は、任意の好適な方法(化学
気相成長(CVD)又は上述した他の技術及び添加物/ドーパントのいずれかを含むが、
これらに限定されない)によってナノファイバーフォレストに導入され得る。いくつかの
実施形態では、ナノファイバーフォレストは、パターニングしたフォレストを形成するた
めに改質されることができる。フォレストのパターニングは、例えば、フォレストからナ
ノファイバーを選択的に除去することにより達成され得る。除去は、化学的または物理的
手段により成し遂げられることができる。
【0029】
[ナノファイバーシート]
フォレスト構成の配置に加えて、本出願のナノファイバーは、シート構成に配置される
こともできる。本明細書で使用する場合「ナノファイバーシート」「ナノチューブシート
」又は単に「シート」という用語は、ナノファイバーが平面に端から端まで一直線になる
、ナノファイバーの配列を意味する。いくつかの実施形態で、シートは、シートの厚さよ
り100倍超の長さ及び/又は幅を有する。いくつかの実施形態で、長さ、幅または両方
は、シートの平均厚さより103、106又は109倍超である。ナノファイバーシート
は、例えば約5nmと30μmとの間の厚さ、ならびに目的の用途に適している任意の長
さ及び幅を有することができる。いくつかの実施形態で、ナノファイバーシートは、1c
mと10mの間の長さ及び1cmと1mの間の幅を有することができる。これらの長さは
、単に例示のために提供される。ナノファイバーシートの長さ及び幅は製造装置の構成に
よって拘束され、ナノチューブ、フォレストもしくはナノファイバーシートのいずれかの
物理的または化学的性質によるものではない。例えば、連続プロセスは、任意の長さのシ
ートを製造することができる。それらを製造する際、これらのシートはロール上に巻かれ
ることができる。
【0030】
例示のナノファイバーシートの図は、例示される相対寸法で、
図3に示される。
図3に
示すように、ナノファイバーが端から端まで一直線になる軸は、ナノファイバー配列の方
向と称される。いくつかの実施形態で、ナノファイバー配列の方向は、ナノファイバーシ
ート全体にわたって連続的でもよい。ナノファイバーは必ずしも互いに完全に平行ではな
く、ナノファイバー配列の方向がナノファイバーの配列の方向の平均的または一般的な指
標であると理解されている。
【0031】
ナノファイバーシートは、互いの上部に積み重なって、多層シート積層体を形成できる
。ナノファイバーシートは、ナノファイバー配列の同一方向を有する、又はナノファイバ
ー配列の異なる方向を有するように積み重なられることができる。任意の数のナノファイ
バーシートは、互いの上部に積み重ねられて、多層ナノファイバーシート積層体を形成で
きる。例えば、いくつかの実施形態で、ナノファイバーシート積層体は、2つ、3つ、4
つ、5つ、10つ以上の個別のナノファイバーシートを含むことができる。積層体の隣接
するシート上のナノファイバー配列の方向は、1度未満、5度未満又は10度未満だけ異
なることができる。他の実施形態で、隣接する又は交互配置したシート上のナノファイバ
ー配列の方向は、40度超、45度超、60度超、80度超又は85度超異なることがで
きる。特定の実施形態で、隣接する又は交互配置したシート上のナノファイバー配列の方
向は、90度でもよい。多層シート積層体は、複数の独立した非繊維シートの間の他の材
料(例えば、ポリマー、金属及び接着剤)を含むことができる。
【0032】
ナノファイバーシートは、シートを作製できる任意の種類の好適な方法を使用して、ア
センブルすることができる。いくつかの例示の実施形態で、ナノファイバーシートは、ナ
ノファイバーフォレストから引き出されることができる。ナノファイバーフォレストから
引き出されているナノファイバーシートの例を、
図4に示す。
【0033】
図4に示すように、ナノファイバーは、フォレストから横方向に引き出されて、次にナ
ノファイバーシートを形成するために、端から端まで一直線状になることができる。ナノ
ファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き出される実施形態では、フォレス
トの寸法は、特定の寸法を有するナノファイバーシートを形成するように制御することが
できる。例えば、ナノファイバーシートの幅は、シートが引き出されたナノファイバーフ
ォレストの幅にほぼ等しくてもよい。そのうえ、シートの長さは、所望のシート長さが得
られたとき、例えば引き出しプロセスを終えることにより、制御することができる。
【0034】
ナノファイバーシートは、種々の用途のために利用できる、多くの特性を有する。例え
ば、ナノファイバーシートは、調整可能な不透明度、高い機械的強度及び可撓性、熱的及
び電気伝導度を有することができ、疎水性も示すことができる。シート内のナノファイバ
ーの高度の配列を考慮すると、ナノファイバーシートは極めて薄くてもよい。いくつかの
例で、ナノファイバーシートは、ほとんど2次元である、厚さ約10nm程度(通常の測
定公差内で測定)である。他の例で、ナノファイバーシートの厚さは、200nm又は3
00nmと同じ程度であり得る。したがってナノファイバーシートは、軽微な追加の厚さ
を構成要素に加えることができる。
【0035】
ナノファイバーフォレストと同様に、ナノファイバーシートのナノファイバーは、シー
トのナノファイバーの表面に化学基または要素を添加することにより、処理剤によって官
能化することができ、それはナノファイバー単独とは異なる化学的活性を提供する。ナノ
ファイバーシートの官能化は、既に官能化されたナノファイバーに実行することができる
し、又は既に非官能化されたナノファイバーに実行することができる。官能化は、限定さ
れないが、CVD及び種々のドーピング技術を含む、本明細書に記載の技術のいずれかを
使用して実行することができる。
【0036】
金属処理及び/又はポリマー浸潤の前に、本明細書にて開示するナノファイバーシート
は、高純度を有していてもよく、いくつかの例で、ナノファイバーシートの90重量%以
上、95重量%以上又は99重量%以上は、ナノファイバーに起因している。同様に、ナ
ノファイバーシートは、90重量%以上、95%重量以上、99%重量以上又は99.9
重量%以上の炭素を含むことができる。
【0037】
[ディスペンサー]
図5A、
図5B、
図5Cはナノファイバー糸ディスペンサー500の一実施形態の側面
図及び2つの斜視図をそれぞれ示しており、ディスペンサー500は、上述のように、ナ
ノファイバー糸の無駄な消耗及び汚染の可能性を低下させる一方で、ナノファイバー糸の
操作の利便性を改善する方法で、ナノファイバー糸を確実に格納して分配するように構成
される。これらの3つの図を同時に参照することは、説明を容易にする。記載されている
要素のいくつかが、描写及び説明の明確さを補助するために、
図5A、
図5B及び
図5C
の1つ又は2つだけに現れ得ることは理解されるであろう。
【0038】
図5Aに示すディスペンサー500は、ハウジング504、注入口508、ガス供給源
512、スプール516、回転軸520、ノズル524、ライナー532、及び放出口5
36を備える。ナノファイバー糸514を、いくつかの図に示す。
【0039】
ハウジング504は、ハウジング504内にチャンバ506を画定することによって、
ナノファイバー糸を確実に格納して分配するように構成されるものであり、ハウジング5
04は、ナノファイバー糸のスプールを含むように使用されるのである。ナノファイバー
糸は、更に詳細に後述するように、ハウジングによって汚染から保護され、ハウジングに
よって画定される放出口を通して分配される。
【0040】
一実施形態にて、ハウジング504は、流体(例えば、水、空気)及び汚染物質の意図
的でない侵入または浸潤を防ぐように、ハーメチックシールされる(ハウジング504に
より画定される注入口508及び放出口536は除く。更に詳細に後述する)。いくつか
の例で、ハウジング504は、ハウジング504を出てチャンバ506内に格納される流
体(ガス、ゲル、ポリマー、膨潤したポリマー、ポリマー溶液、接着剤、粘着性ポリマー
又は他の流体を問わず)の意図的でない放出を防ぐようにも密封される。目的に関係なく
、密封したハウジング504の形成は、射出成形または積層造形(別名「3Dプリンティ
ング」)を介して材料の単体からハウジング504を形成することと、接着剤(例えば、
シロキサンポリマー)を使用してハウジング504の隣接する部分の間の合わせ目を封止
することと、又は合わせ目を封止するためにハウジング504の一部を溶接することとを
含む、複数の技術を使用して達成することができる。
【0041】
一例で、ハウジング504は、ナノファイバー糸のスプール516がハウジング504
内に嵌入されて、取り外されて及び/又は交換されるのを可能にするために十分に大きい
、開閉カバー526(例えば、
図5B、
図5C及び
図6Aで示すような扉または蓋)を備
えるように構成されてもよい。開閉カバー526は、シーラント(例えば、シリコーング
リース)又は圧縮性ガスケット(例えば、ネオプレン又はシリコーンゴムガスケット)を
使用して、ハウジング504をハーメチックシールすることができる。開閉カバー526
は、ハウジング、圧縮性ガスケット(図示省略)及び開閉カバー526の間に圧力を加え
て、それを維持するために、クランプ、ネジ状ボルトもしくはネジ、又は他の機構を使用
して固定することができる。別の実施形態では、カバー526は、ハウジング504の隣
接する表面上の相補的ネジと嵌合するネジを含む。カバー526は、カバー526が締め
られ、ゆるめられるのを可能にするスパナもしくはネジ回しに掴むところを提供する、ス
ロット又は一連のきざみを含んでもよい。カバー526は、Oリングを受容するように設
計された、軸溝を含んでもよい。ハウジング504の隣接する表面は、2つの部分が接続
されるとき、Oリングを収容するように設計された相補的溝を含んでもよい。あるいは、
ハウジング504の開閉カバー526は、接着剤(例えば、エポキシ、メタクリル酸系接
着剤)を使用して、又はハウジング504の残りに開閉カバー526を溶融させる、溶接
する、又は結合することによりハーメチックシールすることができる。封止は、永続的で
も一時的でもよい。本明細書で使用する場合、封止は、それがハウジング又はカバーを損
傷することなく、直ちに封止を開くことができない場合、永続的である。ハウジングの構
築またはハーメチックシール及び/又は開閉カバー526の構成を問わず、ハウジング5
04は糸を汚染から保護できる。
【0042】
上述のように封止したハウジング504の別の利点は、ナノファイバー糸の自由端の位
置決めをするために、負圧(すなわち、真空)の使用を含む。例えば、ナノファイバー糸
の自由端を有するスプールは、密封したハウジング504内に配置することができる。真
空は、ハウジング504の放出口536で適用することができ、それは、真空がチャンバ
506の任意のガス内容物を除去する際、チャンバ506からナノファイバー糸の自由端
を引き出す。このプロセスは更に、ガス又は流体が注入口508及び/又はガス供給源5
12を通って、チャンバ506内に放出口536を通って流れるのを可能にすることと、
そうしてチャンバ506から放出口536を通ってナノファイバー糸の自由端を運搬する
こととを含む。それとは関係なく、ナノファイバー糸の自由端がすばやく、かつ難しい手
動点検及び/又は手動操作なしで位置決めすることができるので、真空及び流体(液体ま
たはガス)の流れを使用して、ナノファイバー糸の自由端を位置決めすることは、ナノフ
ァイバー糸を操作するのに有効である。一旦位置決めされると、ナノファイバー糸の自由
端は機械装置と嵌合される、表面に適用される、又はディスペンサー500を使用してナ
ノファイバー糸の制御された適用の出発点として作用することができる。
【0043】
ハウジング504により画定される注入口508は、流体が流れることができる通路で
ある。上述のように、注入口508は、ハウジング504により画定されるチャンバ50
6に正圧及び流れを提供するために使用されることができ、ハウジング504により画定
されるチャンバ506は、ディスペンサー500の放出口536を通ってナノファイバー
糸の自由端を移動させるために使用される。
【0044】
注入口508は、他の種類のガス又は流体を、その内部にナノファイバー糸のスプール
516が配置されるハウジング504へ供給するためにも使用できる。例えば、不活性ガ
ス(例えば、アルゴン、窒素)は、注入口508を介して導入されることができる。例え
ば、第2の材料が、腐食、分解または空気中の成分(例えば、酸素、水蒸気、塵)からの
汚染に影響されやすいナノファイバー糸(例えば、金属ナノ粒子)に組み込まれた場合、
これを行うことができる。
【0045】
ガス供給源512は、任意の構成であるが、注入口508と流体連通している。図示す
るように、ガス供給源512は、ハウジング504と一体化するように、注入口508に
近接する(及び、封止した)ハウジング504の一部に接続する管である。このように、
ガス供給源512は、チャンバ506内への汚染物質の侵入を防ぐと同時に、ガス(又は
他の流体)が注入口508を通ってチャンバ506へ供給されるのを可能にする。ガス供
給源512は、注入口508周囲でハウジング表面から測定される、任意の長さまで延在
することができて、任意の直径を有することができる。ガス供給源512を作製するため
に使用される長さ、直径及び材料は、提供されるガス(又は他の流体)に基づいて選択さ
れ、他の要素の中でもとりわけ継手の構成は、ガス(又は他の流体)の供給源に接続する
ために必要である。容積に対するガス速度の所望の比によって、ガス供給源512及び注
入口508の形状を決定してもよい。より細い通路は、同じガス流速でより速いガス速度
を提供する。ガス供給源512及び注入口508の構成は更に、構造に接触する流体に基
づいて選択されることができる。例えば、不活性ガスが、ガス供給源512を通り、注入
口508を通って、ハウジング内に提供されることになっている場合、ガス管は、従来の
ポリプロピレン又はポリエチレン管を使用して製作することができて、従来の不活性ガス
調節器に接続するように構成することができる。別の例で、より化学的活性な物質(例え
ば、腐食性または可燃性である)が提供されることになっている場合、より化学耐性及び
リーク耐性の材料(例えば、イソプレン、ステンレス鋼など)を使用できる。ガス供給源
512は、ハウジング504に一時的に取り付けることができて、使い捨てでもよく、そ
の結果、ガス供給源512は、損傷した又は詰まった場合、交換のために取り替えること
ができる。
【0046】
スプール516は、ナノファイバー糸514のある長さがスプールの周囲に巻き付けら
れるように構成され、一旦巻かれると、ディスペンサー500内に配置されるようになる
。スプール516は、ナノファイバー糸514の自由端がディスペンサー500から引き
出されることに応じて、ハウジング504により画定されるチャンバ506内に配置され
る一方で、回転するようにも構成される。
【0047】
この回転を容易にするために、スプール516は、
図5Cに示すように、スプール51
6の第1端部及び第1端部の反対側にある第2端部のそれぞれで、第1の円筒状フランジ
518a及び第2の円筒状フランジ518bを備えることができる。第1の円筒状フラン
ジ518a及び第2の円筒状フランジ518bは、スプール516(及び、スプール51
6周囲に巻いたナノファイバー糸)とハウジング504の内側表面との間の接触面積を低
減して、そうして、本来であればハウジング504内のスプール516の回転を妨げる、
任意の接触による摩擦も低減する。第1の円筒状フランジ518a及び第2の円筒状フラ
ンジ518bは、低摩擦材料(例えば、PTFE又はグラファイト)からなることができ
る。フランジは、接触による摩擦を更に低減するために、潤滑されることもできる。摩擦
を低減して、ナノファイバー糸の性能を引きのばす潤滑剤は、四フッ化ポリエチレン(P
TFE)系材料及びグラファイト系材料を含むが、これらに限定されない。
【0048】
一例で、回転軸520(それは、任意である)は、スプール516とハウジング504
の間の接触による摩擦を低減する、スプール516の円形断面の中央に配置される円筒状
構造である。回転軸520は受動的であり得て、それはスプールの回転に対して静止して
いることを意味し、又はそれは能動的であり得て、それはスプールの回転を促進するため
に回転することを意味する。任意の回転軸520を含む利点は、スプールをハウジングの
中心に置くことと、印加した力の所与のユニットにおける回転の速度を増加させることと
及び/又はスプール516からナノファイバー糸514を引っ張るために必要な力を低減
することとを含む。回転軸520の別の利点は、潤滑剤が適用される表面積を低減し、そ
うしてハウジング504により画定されるチャンバ506内に導入される潤滑剤の量を減
らし、したがって潤滑剤によるナノファイバー糸の汚染の可能性を低減することである。
【0049】
一例で、回転軸520は、スプール516の中心孔を通って、取り外し可能に配置され
得る。例えば、回転軸520は、第1の直径を有する第1部分及び第1部分の反対側の2
つの第2部分で構成されることができ、第2部分のそれぞれは第1直径より小さい第2直
径を有する。より大きな第1直径を有する第1部分は、スプール516の中心を通って孔
と嵌合する締め代を形成するために特定の寸法に設定され、そうしてスプール516内に
適合するハブを形成する。より小さな第2直径を有する第2部分は両方とも、回転軸52
0の回転を容易にする、チャンバ506の内側表面上の対応する機構内に適合するように
構成されることができる。別の例で、回転軸520は、その全長にわたって一様な直径を
有する。
【0050】
別の例で、回転軸520は、スプール516の表面522a及び522b(
図5Cに示
す)に接続する及び/又は一体化されることができる。この一体型スプール516及び回
転軸520構造は、例えば、回転軸520の端を収容して、そうしてスプール516と回
転軸520とチャンバ506の間の接触による摩擦を低減できる、チャンバ506の内側
表面に取り付けた対応するクレードルもしくはポート構造上に、又はその内部に回転軸5
20を配置することによって、チャンバ506内で回転するように構成される。
【0051】
別の例で、回転軸520は、スプール516の表面522a及び522bに向かい合う
チャンバ506の内側表面の一方または両方に接続して、スプール516の表面522a
及び522bに配置された対応する機構(例えば、回転軸520の端部を保持できるカッ
プ又はクレードル、図示省略)と接触するように構成することができる。回転軸520は
、開閉カバー526を構成する一要素になることができる、又はハウジング504と一体
化されることができる。例えば、回転軸520は、開閉カバー526から延在することが
できる、又はハウジング504の壁の内側表面から延在することができる。別の実施形態
で、回転軸の一部は開閉カバー526を構成する一要素であり、回転軸520の相補的部
分はハウジングを構成する一要素である。相補的な回転軸部分は、例えばネジによって一
緒に接続されることができ、したがって回転軸520は、開閉カバー526をハウジング
504に固定するためのコネクタとして役立つことができる。この場合、開閉カバー52
6の回転は、回転軸520の2つの部分の接合をもたらし、更にハウジング504に開閉
カバー526を封止することをもたらす。任意の回転軸520の構成、寸法、長さ及び形
状の他の変形も可能である。
【0052】
回転軸520は、封止したポートを通ってハウジング504の外部に配置されている、
ハンドル(図示省略)に所望により接続することができる。封止機構は、ハウジング50
4に関して上述しており、この特徴にも適用できる。ハンドルと回転軸520との間の接
続によって、スプール516の回転の方向が逆転するのが可能になり、したがってディス
ペンサー500から以前に取り外したナノファイバー糸を巻き戻す。
【0053】
ノズル524は、ハウジング504に取り付けられる、又はハウジング504に一体化
される。任意のノズル524は
図5A、
図5B、
図5C、
図6A及び
図6Bの実施形態に
示されて、ハウジング504の放出口536から直接ナノファイバー糸を分配することよ
り、ノズル524を含むことの利点のいくつかを例示する。
【0054】
ノズル524は、ハウジング504により画定される放出口536と連通する、チャネ
ル528を画定する。チャネル528は、それがスプール516からほどける際、細長い
ナノファイバー糸の一部を含むのには十分大きいが、可撓性かつしなやかなナノファイバ
ー糸がチャンバ506内に押し戻されるのを防ぐのに十分少ない直径を有する。いくつか
の例で、チャネル528の内径は、この機構を達成するためにその内部で使用する、ナノ
ファイバー糸の外径より10%、15%、25%、50%、100%、250%、又はそ
の間の値より大きい。チャネル528は、水の浸潤を防ぐのに十分小さい放出口536の
その反対側に、開口部(すなわち、開口部の内径)も有することができる。すなわち、チ
ャネルの開口部は、水の表面張力が、水滴がチャネル528の内側表面を濡らすのを防ぐ
ように、十分に小さくなるようにすることができる。水浸潤を防ぐことができる、チャネ
ルの半径を算出するために使用する関連性の1つの例は、式1のとおりである。
r=2γ/ΔP 式1
【0055】
そこで、rは水の浸潤を防ぐ開口部の半径であり、γは水の表面張力であり、ΔΡは液
滴の内部と液滴の外面の間の圧力の差である。いくつかの例で、ΔΡは、重力(9.81
メートル/秒2)及び水の密度(1気圧の圧力及び「標準」温度(すなわち、0℃)での
約1000kg/m3)のため、加速度と比例する。いくつかの例にて、ノズル524の
表面の水(又は他の液体材料)の表面張力は、ノズル524により画定されるチャネル内
の水の浸潤に影響を及ぼすことができる。例えば、低表面エネルギー材料(例えば、シリ
コーン及びポリテトラフルオロエチレン)、ならびに同じように低表面エネルギー及び/
又は同じように疎水性を有する他の材料は、水の浸潤を防ぐのに役立つ。
【0056】
チャネル528を含むことは、チャンバ506内に配置されるナノファイバー糸の自由
端を位置決めして、その後の使用のために放出口536から出た糸をチャネル528に「
通す(thread)」ために使用できる、注入口508を通って提供されるガスの流れを促進
する。
【0057】
任意のライナー532は、チャネル528内に嵌合するように構成される。これは、図
5Cの部分的断面斜視図に示される。ライナー532は、ナノファイバー糸がディスペン
サー500を出ることができる、代替の表面を提供する。ライナー532は、都合よく交
換されるように取り外し可能でもよい。例えば、ノズル524により画定されるチャネル
528は、大部分のナノファイバー糸に望まれるものより非常に大きいサイズを有するよ
うに、特定の寸法に設定されることができる。一例にて、ライナー532は、十分に大き
な外径を有して、チャネル528の内側表面と嵌合する締め代を形成して、十分に小さな
内部(又は内側)直径を有して、上述のとおり、ナノファイバー糸をもつれさせる危険性
を低減する及び/又は水の浸潤を防ぐ、ナノファイバー糸用チャネルを提供する。異なる
内径を有する異なるライナー532は、その後チャネル528内に嵌入されて、異なる直
径のナノファイバー糸に対応できる。通常、ライナー532(又は、ライナー532がデ
ィスペンサー500で使用されない場合はチャネル528)の直径は、ディスペンサー5
00からライナー532を通って分配されようとするナノファイバー糸の直径より、少な
くとも50%大きくすることができる。他の例にて、ライナー532(又はチャネル52
8)の直径は、ディスペンサー500からライナー532を通って分配されようとするナ
ノファイバー糸の直径より、70%~100%大きい、又は100%~200%大きい。
一例にて、直径30μmのナノファイバー糸は、直径50μmのライナーを通って分配さ
れることができる。別の例で、直径100μmのナノファイバーは、直径200μmのラ
イナーを通って分配されることができる。チャネル528及びライナー532の直径が、
両方とも使用される実施形態で、協調して選択できることは理解されるであろう。
【0058】
ライナー532の別の利点は、それを通ってナノファイバー糸が分配されることができ
る、容易に置換される表面を提供するということである。基材への、もしくは重なり合う
糸、溶媒、もしくは更にチャネル528を占有することができ、潜在的に閉塞させること
もできるチャンバ内に配置された他の流体成分の間の粘着力を改善する、接着剤内に配置
された、ポリマー、空気活性接着剤(例えば、メタクリル酸系接着剤)、他の接着剤(例
えば、感圧性接着剤、エポキシ、エラストマー接着剤、ゾルゲル前駆体)及び/又は高表
面積グラフェンフレーク、グラフェン酸化物、又は他の充填剤粒子を有する、ディスペン
サー500の実施形態で、これは特に有用である。ライナー532を使用するとき、任意
の閉塞は、閉塞されたライナー532を単に除去すること、汚れていないライナー532
と交換すること、及び上述の技術を使用してきれいなライナー532にナノファイバー糸
を再び通すことによって、取り除くことができる。
【0059】
上述のとおり、放出口536は、ハウジング504により画定されて、ディスペンサー
500から分配されるとき、ナノファイバー糸が通過できる開口部を提供する。放出口5
36は、上述のとおり、チャネル528及びライナー532のうちの1つ以上と連通でき
る。
【0060】
すでに上述したディスペンサー500のそれらの特徴に加えて、
図6A及び
図6Bは、
表面上へナノファイバー糸の適用を容易にする、ローラーアセンブリ600を備えるディ
スペンサー500の実施形態を示す。ローラーアセンブリ600は、支持体604a及び
604b(まとめて604)、スピンドル608及びローラー612を備える。
【0061】
支持体604は、本実施形態において、ノズル524に接続して、ノズル524から延
在するが、他の実施形態では、支持体604は、ディスペンサー500自体のハウジング
504に接続して、ハウジング504から延在することができる。支持体604は、その
間にスピンドル608が配置される構造を提供する。スピンドル608は、上述の回転軸
520に類似の機能を実行する。すなわち、スピンドル608は、ローラー612が回転
することを可能にする構造を提供する。回転軸520に関して上述したように、スピンド
ル608は、ローラー612を通って配置される別個の構造、ローラー612と一体化し
ている構造、又は支持体604のそれぞれに接続している構造であってもよく、更にロー
ラー612が回転するのを可能にする一方で、ローラー612に接続するように構成され
る構造であってもよい。
【0062】
ローラー612は、ナノファイバー糸がディスペンサー500から分配された後、ある
表面に配置されるナノファイバー糸514にローラーが圧力を加えることができるように
、回転する。ローラー612によってナノファイバー糸514に加えられる圧力は、ナノ
ファイバー糸514と下にある表面(underlying surface)との間の粘稠性及び/又は物
理的接触の程度で、改善することができる。ローラー612からのナノファイバー糸51
4に対する圧力の適用は、ナノファイバー糸514と下にある表面の間の接着性を改善す
ることもできる。これは、(1)接着剤が、ナノファイバー糸514の適用(applicatio
n)の前に、下にある表面に配置されている場合、(2)接着剤が、前記表面へのナノフ
ァイバー糸の適用の前に、ナノファイバー糸514に配置されている場合、及び(3)ナ
ノファイバー糸514の適用がある表面に配置された後に、接着剤が適用される場合を含
む。接着剤が感圧性接着剤である例では、ローラー612は、感圧性接着剤を活性化する
ために使用される圧力を、提供することができる。
【0063】
いくつかの例で、ローラー612によってナノファイバー糸514へ圧力を加えること
は、ナノファイバー糸514と下にある表面の間の電気接触を改善する。すなわち、ナノ
ファイバー糸514と下にある表面の間の物理的接触の程度を改善することによって(例
えば、ナノファイバー糸514と下にある表面の間の間隙を取り除く及び/又は接触領域
を増加させることによって)、電気接触も改善される(すなわち、界面抵抗が低減する)
。
【0064】
ローラー612により加えられる圧力は、分配の間、ガス流または熱変化によって移動
する、ナノファイバー糸の発生を減らすためにも使用できる。
【0065】
いくつかの実施形態で、ナノファイバーがディスペンサー500から分配された後、任
意のディスペンサー(図示省略)は、流体(例えば、ポリマー、接着剤)をナノファイバ
ー糸514へ提供するために使用する。他の実施形態にて、別個の洗浄機構(例えば、ス
クレーパー、真空及び溶媒洗浄)は、ナノファイバー糸514及び/又はローラー612
を洗浄するために使用することができて、そうして汚染物質及び/又は過剰な流体/接着
剤を除去する。
【0066】
図6C、
図6D及び
図6Eは、ナノファイバー糸514と下にある表面620の間の物
理的接触を改善するために使用する、機構の種々の実施形態を示す。
【0067】
図6Cは、ディスペンサー500に直接接続していないローラーアセンブリを示す。こ
の例で、ローラー632は、スピンドル628を介して1つ以上の支持体624に接続し
ている。
図6A及び
図6Bに関して上述した実施形態と同様に、ローラー632は、ナノ
ファイバー糸514と下にある表面の間の物理的接触を強制的にさせるように、圧力をナ
ノファイバー糸514に加える。しかし、上述の実施形態とは異なり、支持体624は、
ディスペンサー500の本体またはディスペンサー500のノズル524に直接(又は間
接的に)接続している必要はない。
【0068】
図6Dは、圧力がナノファイバー糸514に加えられて、ナノファイバー糸514と下
にある表面620の間の物理的接触を改善する、別の実施形態を示す。しかし、前の例と
は異なり、ナノファイバー糸514に加える圧力は、ベルトを介して加えられる。この例
で、2つの支持体624a及び624bは、スピンドル628a及び628bを介して、
ローラー632a及び632bに接続される。ローラー632a及び632bは、ナノフ
ァイバー糸と直接の物理的接触はない。その代わりに、ローラー632a、632bは圧
縮力及び回転移動をベルト636に加え、それはローラー632a、632bの両方に接
触している。ローラー632a及び632bの回転移動は、ベルト636にローラーの両
方の周囲を回転させる。ベルト636は、ナノファイバー糸514と直接接触しており、
ローラー632a、632bからの圧縮力をナノファイバー糸514に加える。これによ
り、より長い繊維の長さにわたってナノファイバー514に圧縮力のより平均化した分配
を提供でき、それは、場合によっては下にある表面620への粘着力を改善することがで
きる。
【0069】
図6Eは、
図6Dで紹介された要素を含む。しかし、
図6Eの実施形態は、下にある表
面620とローラー632aの間にあるベルト636の一部だけを使用して、圧縮力を加
える。この実施形態は、ローラー単独(例えば、
図6A及び
図6Bで示す実施形態など)
と比較して接触表面積を更に増加させる一方で、ナノファイバー514に適用される単位
面積当たりの力を増加させることができる。いくつかの実施形態で、ベルト636は更に
、適用前に、ナノファイバー糸514を清浄するために使用できる(例えば、粒子、破片
、過剰なポリマーを除去することによって)。他の実施形態にて、別個の洗浄機構(例え
ば、スクレーパー、真空及び溶媒洗浄)は、ナノファイバー糸514及び/又はベルト6
36/ローラー632a、632bを洗浄して、汚染物質及び/又は流体/接着剤を除去
するために使用できる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ヒーター又は接着剤硬化器(図示省略)が更に、ディスペン
サー500と共に、及び前の実施形態のいずれかと共に使用できる。ヒーター/接着剤硬
化器は、ディスペンサー500(例えば、ノズル524、ハウジング504、支持体62
4、624a、624b)に固定されることができる、又はその上に載置できる、もしく
はディスペンサー500とは別個の装置として使用できる。ヒーター/接着剤硬化器は、
ナノファイバー糸514と共に用いられる接着剤を乾燥させる、又は硬化させることがで
きる。ヒーターの例示の種類は、放射加熱法及び強制空気加熱法のうちの1つ以上を使用
する、電気抵抗ヒーター、ならびに赤外線(IR)波長ヒーターを含むことができる。加
熱以外の機構を介して接着剤の硬化が生じる接着剤硬化器の他の例示の種類は、UV装置
、他の光学波長装置を含む。多くの他の種類の機構及び対応する装置が、使用する接着剤
の種類に従ってディスペンサー500で用いられることができることは理解されるであろ
う。
【0071】
[駆動構造]
上述したディスペンサー500の実施形態は、任意の方向にナノファイバー糸を分配で
きる。これらの実施形態で、ディスペンサー500の配向(したがって、それによりナノ
ファイバー糸が基材に適用される方向)は、横方向力をディスペンサーハウジング504
に加えることによって変えることができて、そうしてローラー612を中心にディスペン
サーを回転させる。ディスペンサー500の方向を変える、この技術は不都合であり得る
。例えば、全体としてディスペンサー500の方向を同時に変える一方で、ローラー61
2と基材の間の接触を維持することは、困難であり得る。また、ハウジング504が方向
を変えるために移動しなければならない、弧の長さは比較的大きい。これは、ローラー6
12を中心に回転するとき、ハウジング504が、
図7Bに示すように半径「r」を有す
る円の弧を描かなければならないからである。この半径rは、ローラー612の中心と、
長手方向軸の真向かいのハウジング504の周辺部の点の間にある(
図7Bに示すように
)、下にある表面上に投影される長さに等しい(角度の余弦成分と同じ)。
【0072】
ディスペンサー500の方向、したがってナノファイバー糸514の適用を変えること
の利便性を改善するために、
図7Aは、一実施形態で、駆動構造(又は「駆動軸」)70
8を有するナノファイバー糸ディスペンサー700の斜視図を示す。
【0073】
糸ディスペンサー700は、上述の糸ディスペンサー500の種々の要素の一部または
全部、更にコネクタ704及び駆動棒708を含む。
【0074】
コネクタ704は、ハウジング504及びノズル524のうちの1つ以上に接続して、
駆動棒708が取り付けられる構造を提供する。示されるコネクタ704が、ハウジング
504及びノズル524の両方に接続するプレートである一方で、これは、必ずしもいつ
もそうであるわけではない。コネクタ704の他の実施形態は、とりわけ、ハウジング5
04又はノズル524のうちの1つだけに接続するプレート、駆動棒708に接続するよ
うにも構成されるディスペンサー500に接続する1つ以上の棒などを含むが、これらに
限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態にて、駆動棒708がコネクタ704に対して回転できるように、
駆動棒708はコネクタ704に連結する。図示されないが、この接続を容易にするため
に使用できる機構は、ベアリング、ヒンジ、ボルト、ピンなどを含むが、これらに限定さ
れない。他の実施形態にて、駆動棒708はコネクタ704に対して固定される。駆動棒
708は、例えば接着剤、固定ネジ、圧入またはネジ状接合点を使用して、コネクタ70
4に固定できる。これらの実施形態において、回転可能な接続(例えば、ベアリング)は
、駆動棒708を介して、ディスペンサー700を動かすためのモーター又は他の構造を
接続できる。例えば、糸ディスペンサー700が、糸ディスペンサー700を操作して、
動かすための機構を備える機械内に一体化される場合、ベアリングは、駆動棒708(コ
ネクタ704に対して固定される)を機械に接続することができ、そうして糸ディスペン
サー700の回転及び移動を可能にする。
【0076】
駆動棒708の長手方向軸712が基準軸716と交差するように、駆動棒708は配
置される。基準軸716は、ハウジング504の中心からローラー612の中心まである
として示される。特に、長手方向軸712及び基準軸716の交差点は、ローラー612
に近接する(ハウジング504から)点である。その結果、ディスペンサーの回転軸は長
手方向軸712であることができて、ローラー612とハウジング504の間に入ること
ができる。場合によっては、長手方向軸712とローラー612の横方向軸の間の距離は
、例えば1~50mm、1~30mm、1~20mm、5~50mm、5~40mm、5
~30mm又は5~20mmでよい。
【0077】
回転軸がローラー612とハウジング504の間にあるように、ローラー612に近接
して駆動棒708を配置すること(上記のとおり)は、改善した旋回半径を有するディス
ペンサー700の回転を可能にする。すなわち、ディスペンサー700の残りが印加力及
び/又は加速に応答してそれ自体を配置する一方で、ローラー612は、方向変化の間、
下にある基材との接触を維持する。非線形の糸の分配において、駆動棒708の経路は、
ディスペンサーのハウジング504より糸の経路に厳密に適合する。したがって駆動棒7
08は、基材上の糸の経路によって、複製される、又はほぼ複製されるパターンで移動で
きる。この構成は特に、ディスペンサー700(又はディスペンサー500)を自動化装
置と統合するのに有効であり得る。
【0078】
[代替的な実施形態]
図8Aは、ベンチュリ効果がナノファイバー糸をディスペンサー800から分配するた
めに使用される、ナノファイバー糸ディスペンサーの別の実施形態800を示す。ディス
ペンサー800は、上述の糸ディスペンサー500の種々の要素に加えて、流体供給源8
04及びコネクタ808を含む。流体供給源(例えば、収容容器または他の容器から)は
、チャネル528にコネクタ808を介して流れる流体を提供する。図示するように、コ
ネクタ808は、チャネル528の分配端部に近接して配置されることができる。
図8A
及び
図8Bで示す流体の適用は、ベンチュリ効果を介してナノファイバー糸514をディ
スペンサー800から分配するのに役立つことができる。
【0079】
ナノファイバー糸514の分配のベンチュリ効果の役割は、
図8Bに概略的に示される
。矢印によって示されるように、流体(液体またはガス)は、しばらくの間、チャネル5
28とライナー532の間の、及びそれらによって画定される隙間に流れて、制限した量
に限定される。ディスペンサー800のこの実施形態で、制限した量は、チャネル528
内に配置されているライナー532によって起因する。しかし、ライナー532がチャネ
ル528より短いので、流体の圧力はライナー532の末端を越えて減少し、したがって
、引抜き力をナノファイバー糸514に加える低圧ゾーンを提供して、ベンチュリ効果に
よって、それをチャネル528から引き抜く。ポンプ又は他の機構は、流体供給源804
から、したがってチャネル528を通過する流体の流速を制御するために使用することが
でき、それにより、ナノファイバー糸に加わる力、したがってナノファイバー糸514が
ディスペンサー800から引き出される速度に影響を及ぼす。
【0080】
図9Aは、一実施形態で、基材にナノファイバー糸を適用するために使用する、システ
ム900の側面図を示す。
図9Bは、
図9Aに示すシステム900の平面図を示す。
図9
A及び
図9Bを同時に参照することは、説明を容易にする。
【0081】
システム900は、並進(translator)アセンブリ902、フィルム供給スプール91
2、フィルム取り込みスプール916、及びフィルム918を備える。並進アセンブリ9
02はナノファイバー糸ディスペンサー500も含むが、ナノファイバー糸ディスペンサ
ー500が便宜上ここで示されるだけであり、本明細書に記載の実施形態のいずれかが、
システム900内のナノファイバー糸ディスペンサーとして使用できることは理解される
であろう。
【0082】
並進アセンブリ902は、
図9Bで更に詳細に示す、2つの並進機構、粗調整並進器9
04及び微調整並進器909を備える。粗調整並進器904は、関連する矢印によって図
9Bに示す方向で、前後に並進アセンブリ902全体を移動させる、スクリュー型または
サーボ型機構を含むことができる。他の種類の機構が、図示する方向で前後に並進アセン
ブリを動かすために使用できることは理解されるであろう。この種類の機構を使用して、
並進アセンブリ904は、1m/秒程度の速度で、0.5cm~1mの大きな増分でフィ
ルム918上を移動できる(後述する)。
【0083】
微調整並進器909は、ナノファイバー糸ディスペンサー500に取り付けられており
、可撓性分配管910と機械的に連絡する圧電アクチュエータ908を含む。圧電アクチ
ュエータ908は、可撓性分配管910を少量(例えば、分配管910の可撓性及び分配
管910の長さに応じて100マイクロメートル~5ミリメートル)屈曲させる、小さい
変位(マイクロメートル程度)を加えることができる。粗調整並進器904と同様に、圧
電アクチュエータ908は、マイクロ秒~ミリ秒程度発生する、管への変位を生じさせる
ことがあり得る。別の実施形態で、電磁アクチュエータは、圧電アクチュエータの代わり
に分配管910に接続している。それとは関係なく、微調整並進器909はキロヘルツの
周波数で並進でき、そうして分配管910の、したがって適用したナノファイバー糸の方
向に頻繁に、かつ寸法的に微細な変化を引き起こすことがあり得る。
【0084】
フィルム918の移動の間、ナノファイバーディスペンサー500上で粗調整並進器9
04により行った、及び分配管910上で微調整並進器909により行った、協調した並
進は、センチメートル又はメートル程度の波長及び振幅を有する大規模な正弦波形状のパ
ターン920で、ならびにマイクロメートル又はミリメートル程度の波長及び振幅を有す
る小規模の正弦波形状パターン922で、フィルム918にナノファイバー糸514を適
用することができる。
【0085】
可撓性分配管910のために使用する材料の例は、特に、ポリエチレン管、ポリテトラ
フルオロエチレン管、ステンレス鋼管を含む。可撓性分配管910のために使用する材料
は、材料の曲げ弾性率、管の内径及び/又は外径及び、最終的に可撓性分配管910に所
望の大きさの変化を引き起こす、微調整並進器909(及び、圧電性アクチュエータ90
8)の能力に基づいて選択されることができる。
【0086】
図9A及び
図9Bに示す例が、フィルム918がフィルム供給スプール912からフィ
ルム取り込みスプール916まで移動する例を示す一方で、これが、必ずしもいつもそう
であるわけではないことは理解されるであろう。
図9Bに示す正弦波形状パターン以外の
パターンは、並進アセンブリ902を使用するナノファイバー糸514の適用中、フィル
ム供給スプール912に及びフィルム供給スプール912からフィルム918を移動させ
るときに作製されることができる。閉形状(円、三角形、正方形、不規則多角形及び無定
形状)でさえ、ナノファイバー糸514の適用及びディスペンサー500の並進の間、フ
ィルム供給スプール912へ及びそれからフィルム918を選択的に移動させることによ
り形成されることができる。
【0087】
図8A、
図8B、
図9A及び
図9Bとして示して且つ記載される実施形態が一緒に結合
されることができて、
図1~
図7Bに関して示して且つ記載した以前の例のいずれかを備
える、任意の構成にも組み込まれることができることは理解されるであろう。
【0088】
図10A及び
図10Bで示す実施形態で、システム900は、非接触式ナノファイバー
糸切断システム1004を含む。示した例で、システム1004は、ナノファイバー糸5
14を糸セグメントに切断するために使用できる、2つの電極1006A及び1006B
を含む。これは、不連続な糸セグメントが、間隙1008A、1008B及び1008C
によって分離されたフィルム918(例えば、糸セグメント514A、514B、514
C及び514Dとして示されるもの)に適用されることを可能にする。
図10Bはまた、
不連続及び連続糸セグメントの形態(例えば、互いに直交かつ対角線方向に配向されるこ
とができる線形セグメント1012、閉形状1016及び螺旋1020)の他の例を示す
。追加の実施形態にて、糸セグメントは、以前に堆積した糸セグメントにわたって広がる
ことができる。糸セグメントの2つ、3つ、4つ以上の層は、堆積できる。一実施形態に
て、追加のセグメントは、斜交平行パターンを提供するために、既存のセグメントに約9
0度で堆積できる。場合によっては、糸セグメントは、下にある糸が接合する所に切断さ
れて、前に堆積したセグメントとの接触を回避できる。これらの実施形態では、糸セグメ
ントの1つの群は連続的でもよく、別の群は不連続でもよい。接触が望ましい他の場合で
、糸は、以前に適用した層上に直接かつ連続して堆積することができる。
【0089】
非接触式切断システム1004は、様々な技術のうちのいずれかを使用できる。例えば
、電極1006A及び1006Bは、電極1006Aと1006Bの間の距離をわたると
き、ナノファイバー糸514から材料を除去して、そうしてそれを切断する、電気アーク
を形成するように、電源に接続することができる。他の種類の非接触式切断システム10
04を使用できることは理解されるであろう。例えば、単一電極(例えば、1006A)
は、ナノファイバー糸を切断する、単一電極とナノファイバー糸514の間の電気アーク
を形成するために使用できる。別の実施形態では、1つ以上の電極は、ナノファイバー糸
514を切断する又は分断する、コロナを生成するように構成されることができる。次に
、1つ以上の電極は、これらに限定されないが、電力供給ならびに放電加工装置(EDC
)、アーク溶接機、プラズマ切断機(プラズマガス供給源も含んでよい)及び他の類似の
装置のコントローラを含む、電源及びコントローラに接続している。電極は、ナノファイ
バー糸514に対して固定された位置にあることができる、又は電気アークを促す、もし
くは阻止するようにナノファイバー糸514に対して移動できることも理解されるであろ
う。
【0090】
別の実施形態において、非接触式切断システム1004は、レーザーシステムである。
この変形例で、構造1006A及び1006Bは、上述のように、糸をセグメントに切断
する又は分断するナノファイバー糸514の位置へ、集中したレーザーエネルギーを提供
する。
【0091】
更に他の実施形態において、接触式切断システムを使用できる。一例にて、高温電気抵
抗器または他の熱エネルギー源は、抵抗器がナノファイバー糸に近づくとき、ナノファイ
バー糸514を切断するためにも使用できる。種々の他の断裁型またはさみ型ブレードの
配置を、他の実施形態で使用できる。
【0092】
使用される非接触式切断システム1004の種類を問わず、マイクロメートルスケール
直径またはサブマイクロメートルスケール直径を適用する能力が生じるとき、フィルム9
18に対するナノファイバー又はナノファイバー糸は平行に配置されて、100μmと同
程度の小さい空隙で分離される。
【0093】
[用途]
上述のディスペンサー500(又はディスペンサー700)及び本開示を考慮すると明
らかである変形例の1つの用途は、表面上へ適用される導電経路に対する装置である。金
属ワイヤ及びテープ(例えば、鋼、銅、アルミニウム)が表面に適用されることができる
一方で、これらは表面に密着することは困難である。金属ワイヤ及びテープは、小さい曲
率半径(例えば、2cm未満)を有する曲線を使用して、金属ワイヤ又はテープの方向を
変えることが困難である、十分高い弾力率を有する。導電性インクは、金属ワイヤ及びテ
ープのこれらの課題を解決できるが、乾燥時間を必要とし、不均一な形状(例えばピーク
及び谷を有する表面)に容易に適合することができない。導電性インクは、それらが適用
されることができる下にある基材でも、より制限される。上述のとおり、ナノファイバー
ワイヤは、小さい曲率半径を有する曲線を使用して突然の方向が変化する表面に、容易に
適用されて、付着することができる。
【0094】
1つの用途は、ハーメチックシールハウジング504にガスの正圧を充填することと、
それを通して配置されるナノファイバー糸514周囲で放出口536を封止することと、
を含む。放出口536の封止の解放した際、ナノファイバー糸514は、ハウジングから
ガス流により放出されることができる。場合によっては、ナノファイバー糸514の自由
端は、小さい発射体に取り付けられることができる。この構成は、例えば、家畜銃(別名
、スタンボルト銃、ボルト銃、スタナー(例えば、TASER(登録商標)))及び電気
信号を遠隔で分配する他の装置に適用されることができ、それはナノファイバー糸514
を通して行われる。
【0095】
あるいは、ボビンが磁場で回転することができるように、装置は、磁気材料を組み込む
ことができる。これらの実施形態により、装置が製造されて、何度も繰り返し使われるの
が可能になり得る。
【0096】
[サマリー]
本開示の実施形態の上述の説明は、例示の目的のために提示されており、包括的である
こと、又は開示した明確な形態に特許請求の範囲を制限することを意図しない。関連技術
分野の当業者は、多くの修正及び変更が、上述の開示を考慮して可能であることを理解す
るであろう。
【0097】
本明細書で使用する文言は、主に読みやすさ及び説明目的のために選択されており、そ
れは、発明の内容を詳細に描写する、又は制限するために選択されているとはいえない。
本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろこれに基づく本明細書から生
じる、任意の請求項によって制限されるものとする。したがって、実施形態の開示は、例
示を目的としており、本発明の範囲を制限するものではなく、それは以下の特許請求の範
囲に記載される。