(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置および方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/17 20150101AFI20240722BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20240722BHJP
H04B 17/11 20150101ALI20240722BHJP
H04B 17/21 20150101ALI20240722BHJP
H04B 3/46 20150101ALI20240722BHJP
【FI】
H04B17/17
H04B17/29 200
H04B17/11
H04B17/21
H04B3/46
(21)【出願番号】P 2022185267
(22)【出願日】2022-11-18
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0111348
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペク スン イク
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/056739(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0288893(US,A1)
【文献】特開2011-030422(JP,A)
【文献】特表2013-522932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00 - 17/40
H04B 3/46 - 3/493
H04B 5/00 - 5/06
H04L 25/02 - 25/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互間で絶縁通信を行う複数の集積回路であって、前記集積回路のそれぞれは一のBMS(バッテリマネジメントシステム)の構成要素であるとともに、バッテリを構成する複数のセルの少なくとも一に対応する、集積回路と、
温度の変化を含む予め設定された条件に符合する場合か、通信前
または通信中
の周期的または非周期的タイミングに、前記集積回路にセルフキャリブレーション命令を出力するマイコンと、
前記セルフキャリブレーション命令によって、前記集積回路内の送信部および受信部に対するセルフキャリブレーションを行う前記集積回路内のプロセッサと、を含むことを特徴とする絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間の調整により受信部の入力信号のレベルを変化させることを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲を調整することを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
集積回路内部の送信部および受信部をそれぞれ異なる信号ラインに連結するスイッチを制御することにより、現在の外部環境に対応してエラー発生のない信号ラインに連結される送信部および受信部を選択することを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項5】
前記集積回路は、
一対の第1送信部および第1受信部と、
一対の第2送信部および第2受信部と、
前記第1、第2送信部のうちの1つと前記第1、第2受信部のうちの1つをそれぞれ選択して絶縁通信信号ラインに連結するスイッチと、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項6】
前記複数の集積回路は、
それぞれ一対の通信ポートと第1、第2信号ラインを介して第1、第2集積回路相互間で連結され、
前記第1、第2信号ラインの中間にはそれぞれ第1、第2絶縁素子、を含み、
前記第1集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第3、第4信号ラインは、第3、第4絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の前段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結され、
前記第2集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第5、第6信号ラインは、第5、第6絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の後段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項7】
前記第1、第2送信部は、
出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間を調整するためのエッジ時間調整回路、を含むことを特徴とする請求項5に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項8】
前記第1、第2受信部は、
受信信号に対するヒステリシス範囲調整のためのヒステリシス範囲調整回路、を含むことを特徴とする請求項5に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項9】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
各集積回路のプロセッサは、予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、特定時間受信部の入力信号にトグルやトランジションがない場合、
前記受信部の入力信号にトグルやトランジションが検出されるまで、
送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を増加させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を減少させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項10】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
各集積回路のプロセッサは、予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグルまたはトランジションが多く検出される場合、
受信部の入力信号にトグルやトランジションが減少して正常数値で検出されるまで、
送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を減少させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を増加させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする請求項1に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置。
【請求項11】
マイコンが、温度の変化を含む予め設定された条件に符合する場合か、通信前
または通信中
の周期的または非周期的タイミングに、集積回路であって、一のBMS(バッテリマネジメントシステム)の構成要素であるとともに、バッテリを構成する複数のセルの少なくとも一に対応する、集積回路にセルフキャリブレーション命令を出力するステップと、
前記セルフキャリブレーション命令によって、相互間で絶縁通信を行う複数の前記集積回路内の各プロセッサが、各集積回路内の送信部および受信部に対するセルフキャリブレーションを行うステップと、を含むことを特徴とする絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項12】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
前記プロセッサは、
送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間の調整により受信部の入力信号のレベルを変化させることを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項13】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
前記プロセッサは、
受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲を調整することを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項14】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
前記プロセッサは、
集積回路内部の送信部および受信部をそれぞれ異なる信号ラインに連結するスイッチを制御することにより、現在の外部環境に対応してエラー発生のない信号ラインに連結される送信部および受信部を選択することを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項15】
前記集積回路は、
一対の第1送信部および第1受信部と、
一対の第2送信部および第2受信部と、
前記第1、第2送信部のうちの1つと前記第1、第2受信部のうちの1つをそれぞれ選択して絶縁通信信号ラインに連結するスイッチと、をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項16】
前記複数の集積回路は、
それぞれ一対の通信ポートと第1、第2信号ラインを介して第1、第2集積回路相互間で連結され、
前記第1、第2信号ラインの中間にはそれぞれ第1、第2絶縁素子、を含み、
前記第1集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第3、第4信号ラインは、第3、第4絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の前段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結され、
前記第2集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第5、第6信号ラインは、第5、第6絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の後段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結されることを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項17】
前記第1、第2送信部は、
出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間を調整するためのエッジ時間調整回路、を含むことを特徴とする請求項15に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項18】
前記第1、第2受信部は、
受信信号に対するヒステリシス範囲調整のためのヒステリシス範囲調整回路、を含むことを特徴とする請求項15に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項19】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
各集積回路のプロセッサは、
予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、特定時間受信部の入力信号にトグルやトランジションがない場合、
前記受信部の入力信号にトグルやトランジションが検出されるまで、
送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を増加させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を減少させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【請求項20】
前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、
各集積回路のプロセッサは、
予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグルまたはトランジションが多く検出される場合、
受信部の入力信号にトグルやトランジションが減少して正常数値で検出されるまで、
送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を減少させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を増加させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする請求項11に記載の絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信時のセルフキャリブレーション装置および方法に関し、より詳しくは、集積回路(IC:Integrated Circuit)間の絶縁通信時、外部環境の変化によるセルフキャリブレーション(Self-Calibration)によりデータの損失防止と補償を行えるようにする、通信時のセルフキャリブレーション装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用バッテリはセルバランシングを必要とするため、バッテリ管理システム(BMS)を必須として備える。
【0003】
この時、前記バッテリ管理システムは、セルバランシング過程でバッテリセルの電圧、充・放電容量、電流などの情報を知るために、通信機能を含む。
【0004】
また、前記バッテリ管理システムは、バッテリモジュール間の電圧差によって絶縁素子(例:トランスフォーマ、キャパシタなど)を用いた絶縁通信を行う。
【0005】
例えば、一般的に、燃料電池システムは、
図1に示されるように、バッテリ電圧をセンシングするための複数の集積回路IC#1~IC#Nと、前記複数の集積回路IC#1~IC#Nをそれぞれ連結する絶縁素子TF、Cと、前記複数の集積回路IC#1~IC#Nと通信して制御を行うマイコン(すなわち、マイクロコンピュータ)110とを含む。
【0006】
この時、前記燃料電池システムは、車両用バッテリの電圧を正確にセンシングすることが重要であり、これとともに、前記マイコン10を介した命令語の伝達およびバッテリ情報(例:バッテリセルの電圧、充・放電容量、電流など)を伝達することも重要である。
【0007】
ところが、バッテリ情報の送受信は、バッテリ特性上、互いに異なる電圧を有するので、焼損防止のために集積回路IC#1~IC#Nごとに絶縁が必要であり、それぞれの集積回路IC#1~IC#Nは、トランスフォーマあるいはキャパシタを用いて絶縁を行うことにより、互いに異なる電圧およびノイズによる焼損を防止する。
【0008】
ところが、集積回路IC#1~IC#Nの外部へのデータ送信時、
図2の(a)に示されるように、絶縁素子の絶縁特性によってパルス信号がピーク(peak)信号(すなわち、AC信号)に変換される現象が発生する。
【0009】
この時、前記ピーク信号の大きさは、微分式により電流、キャパシタ容量、および特定時間の電圧の変化量で決定される。
【0010】
ところが、前記キャパシタ容量は、外部環境(例:温度)の変化によって異なる(
図2の(b)参照)。すなわち、
図2の(b)は、車両用に用いるキャパシタ(例:X7R)の温度によるキャパシタ容量の変化を示す例示図であって、温度の変化により最大キャパシタ容量と最小キャパシタ容量との間に約15%以上の変化(差)が発生することが分かり、これは微分式(I=C*dV/dt)のキャパシタ容量(C)値に影響を与える。
【0011】
前記のように前記外部環境(例:温度)の変化はピーク信号の大きさに影響を与えることにより、ピーク信号を受信する受信側集積回路(IC)でデータエラーが発生する可能性がある。
【0012】
すなわち、従来は、絶縁通信を行うにあたり、温度変化といった外部環境の変化によって絶縁素子の特性に変化を与えることにより、送受信しようとするデータに損失が発生しうる問題点がある。
【0013】
したがって、集積回路(IC)間の絶縁通信時、外部環境の変化によって絶縁素子の特性が変化することでデータ損失の可能性がある場合、セルフキャリブレーションによりデータの損失防止と補償を行えるようにする技術が必要な状況である。
【0014】
本発明の背景技術は、大韓民国登録特許第10-2402641号(2022.05.23.登録、電子装置および電子装置における通信装置のキャリブレーション方法)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一側面によれば、本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、集積回路(IC)間の絶縁通信時、外部環境の変化によるセルフキャリブレーションによりデータの損失防止と補償を行えるようにする、通信時のセルフキャリブレーション装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面による絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置は、相互間で絶縁通信を行う複数の集積回路であって、前記集積回路のそれぞれは一のBMS(バッテリマネジメントシステム)の構成要素であるとともに、バッテリを構成する複数のセルの少なくとも一に対応する、集積回路と、温度の変化を含む予め設定された条件に符合する場合か、通信前または通信中の周期的または非周期的タイミングに、前記集積回路にセルフキャリブレーション命令を出力するマイコンと、前記セルフキャリブレーション命令によって、前記集積回路内の送信部および受信部に対するセルフキャリブレーションを行う前記集積回路内のプロセッサと、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記プロセッサは、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間の調整により受信部の入力信号のレベルを変化させることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記プロセッサは、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲を調整することを特徴とする。
【0019】
本発明において、前記プロセッサは、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、集積回路内部の送信部および受信部をそれぞれ異なる信号ラインに連結するスイッチを制御することにより、現在の外部環境に対応してエラー発生のない信号ラインに連結される送信部および受信部を選択することを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記集積回路は、一対の第1送信部および第1受信部と、一対の第2送信部および第2受信部と、前記第1、第2送信部のうちの1つと前記第1、第2受信部のうちの1つをそれぞれ選択して絶縁通信信号ラインに連結するスイッチと、をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記複数の集積回路は、それぞれ一対の通信ポートと第1、第2信号ラインを介して第1、第2集積回路相互間で連結され、前記第1、第2信号ラインの中間にはそれぞれ第1、第2絶縁素子、を含み、前記第1集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第3、第4信号ラインは、第3、第4絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の前段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結され、前記第2集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第5、第6信号ラインは、第5、第6絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の後段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結されることを特徴とする。
【0022】
本発明において、前記第1、第2送信部は、出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間を調整するためのエッジ時間調整回路、を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明において、前記第1、第2受信部は、受信信号に対するヒステリシス範囲調整のためのヒステリシス範囲調整回路、を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、各集積回路のプロセッサは、予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、特定時間受信部の入力信号にトグルやトランジションがない場合、前記受信部の入力信号にトグルやトランジションが検出されるまで、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を増加させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を減少させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする。
【0025】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、各集積回路のプロセッサは、予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグルまたはトランジションが多く検出される場合、受信部の入力信号にトグルやトランジションが減少して正常数値で検出されるまで、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を減少させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を増加させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする。
【0026】
本発明の他の側面による絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法は、マイコンが、温度の変化を含む予め設定された条件に符合する場合か、通信前または通信中の周期的または非周期的タイミングに、集積回路であって、一のBMS(バッテリマネジメントシステム)の構成要素であるとともに、バッテリを構成する複数のセルの少なくとも一に対応する、集積回路にセルフキャリブレーション命令を出力するステップと、前記セルフキャリブレーション命令によって、相互間で絶縁通信を行う複数の前記集積回路内の各プロセッサが、各集積回路内の送信部および受信部に対するセルフキャリブレーションを行うステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、前記プロセッサは、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間の調整により受信部の入力信号のレベルを変化させることを特徴とする。
【0028】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、前記プロセッサは、受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲を調整することを特徴とする。
【0029】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、前記プロセッサは、集積回路内部の送信部および受信部をそれぞれ異なる信号ラインに連結するスイッチを制御することにより、現在の外部環境に対応してエラー発生のない信号ラインに連結される送信部および受信部を選択することを特徴とする。
【0030】
本発明において、前記集積回路は、一対の第1送信部および第1受信部と、一対の第2送信部および第2受信部と、前記第1、第2送信部のうちの1つと前記第1、第2受信部のうちの1つをそれぞれ選択して絶縁通信信号ラインに連結するスイッチと、をさらに含むことを特徴とする。
【0031】
本発明において、前記複数の集積回路は、それぞれ一対の通信ポートと第1、第2信号ラインを介して第1、第2集積回路相互間で連結され、前記第1、第2信号ラインの中間にはそれぞれ第1、第2絶縁素子、を含み、前記第1集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第3、第4信号ラインは、第3、第4絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の前段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結され、前記第2集積回路の他の一対の通信ポートに連結される第5、第6信号ラインは、第5、第6絶縁素子を介して前記第1、第2絶縁素子の後段の第1、第2信号ラインにそれぞれ連結されることを特徴とする。
【0032】
本発明において、前記第1、第2送信部は、出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間を調整するためのエッジ時間調整回路、を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明において、前記第1、第2受信部は、受信信号に対するヒステリシス範囲調整のためのヒステリシス範囲調整回路、を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、各集積回路のプロセッサは、予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、特定時間受信部の入力信号にトグルやトランジションがない場合、前記受信部の入力信号にトグルやトランジションが検出されるまで、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を増加させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を減少させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする。
【0035】
本発明において、前記セルフキャリブレーション命令が入力されると、各集積回路のプロセッサは、予め設定された基準信号を送受信して、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した後、受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグルまたはトランジションが多く検出される場合、受信部の入力信号にトグルやトランジションが減少して正常数値で検出されるまで、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの電圧変化時間値を減少させる動作、および受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を増加させる動作を、同時に行うか、順次に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一側面によれば、本発明は、集積回路(IC)間の絶縁通信時、外部環境の変化によるセルフキャリブレーションによりデータの損失防止と補償を行うことにより、通信性能を向上できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施例に関連する絶縁通信を行う燃料電池システムの概略構成を示す例示図。
【
図2】前記
図1における、外部環境の変化によって絶縁素子であるキャパシタの容量が変化する現象によって発生しうる問題点を説明するために示す例示図。
【
図3】本発明の一実施例よる絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置の概略構成を示す例示図。
【
図4】前記
図3における、送信部TX0、TX1の電圧時間調整回路の概略構成を示す例示図。
【
図5】前記
図3における、受信部RX0、RX1のヒステリシス調整回路の概略構成を示す例示図。
【
図6】本発明の一実施例よる絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付した図面を参照して、本発明による絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置および方法の一実施例を説明する。
【0039】
この過程において、図面に示された線の厚さや構成要素の大きさなどは、説明の明瞭性と便宜上、誇張して示されている。また、後述する用語は本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは使用者、運用者の意図または慣例によって異なる。そのため、これらの用語に対する定義は本明細書全般にわたる内容に基づいて行われなければならない。
【0040】
図3は、本発明の一実施例よる絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置の概略構成を示す例示図であり、
図4は、前記
図3における、送信部TX0、TX1のエッジ時間調整回路の概略構成を示す例示図であり、
図5は、前記
図3における、受信部RX0、RX1のヒステリシス範囲調整回路の概略構成を示す例示図であり、
図6は、本発明の一実施例よる絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法を説明するためのフローチャートである。
【0041】
図3を参照すれば、本実施例による絶縁通信時のセルフキャリブレーション装置は、絶縁通信集積回路IC#[N]、IC#[N+1]の内部にデフォルトとして内蔵されている一対の送信部TX0および受信部RX0のほか、追加的に一対の送信部TX1および受信部RX1をさらに含み、各送信部TX0、TX1および各受信部RX0、RX1には、信号ラインとの連結を選択可能なスイッチSW1~SW8と、前記スイッチSW1~SW8を制御して、エラー発生のない信号ラインに連結されたいずれか1つの送信部TX0、TX1および受信部RX0、RX1を選択して他の集積回路IC#[N]、IC#[N+1]と信号(すなわち、データ)を送受信し、前記選択した送信部TX0またはTX1で送信する信号(データ)のエッジ時間(例:電圧変化時間)の調整と選択した受信部RX0またはRX1で受信される信号に対するヒステリシス範囲の調整を行うプロセッサ121とを含む。
【0042】
前記信号(すなわち、データ)を送受信する絶縁通信集積回路IC#[N]、IC#[N+1]の内部構成(例:プロセッサ、第1、第2送信部、第1、第2受信部)は同一であり、各集積回路IC#[N]、IC#[N+1]は、一対の通信ポートP0、M0を介して第1、第2信号ラインSL1、SL2が相互間で連結され、前記第1、第2信号ラインSL1、SL2の中間にはそれぞれ絶縁素子として第1、第2キャパシタC1、C2を含む。
【0043】
また、各集積回路IC#[N]、IC#[N+1]の他の一対の通信ポートP1、M1に連結される第3、第4信号ラインSL3、SL4は、第3、第4キャパシタC3、C4を介して前記第1、第2キャパシタC1、C2の前段の第1、第2信号ラインSL1、SL2に連結され、第5、第6信号ラインSL5、SL6は、第5、第6キャパシタC5、C6を介して前記第1、第2キャパシタC1、C2の後段の第1、第2信号ラインSL1、SL2にそれぞれ連結される。
【0044】
この時、前記第1、第2キャパシタC1、C2、前記第3、第4キャパシタC3、C4、および前記第5、第6キャパシタC5、C6の容量は、互いに同一でなくてもよい。
【0045】
また、前記プロセッサ121のスイッチSW1~SW8の制御により、当該送信部TX0またはTX1と当該受信部RX0またはRX1に連結される信号ラインによって全体のキャパシタ容量が調整可能である。
【0046】
すなわち、前記スイッチSW1~SW8の制御により選択された信号ラインによってキャパシタ容量が異なることにより、変換された外部環境(例:温度)に適したキャパシタ容量で構成される信号ラインを選択することができる。
【0047】
この時、前記プロセッサ121が行う動作(例:1.スイッチSW1~SW8を制御して、他の集積回路と信号を送受信するためのいずれか1つの送信部および受信部を選択する動作、2.選択した送信部で送信する信号のエッジ時間調整動作、3.選択した受信部で受信される信号に対するヒステリシス範囲調整動作)はセルフキャリブレーション動作であって、予め設定された条件(例:温度設定条件)に符合する場合か、マイコン110の周期的(例:通信実行前)または非周期的(例:通信実行中の任意の時点)に、セルフキャリブレーション命令によって行われる。
【0048】
一方、前記各送信部TX0、TX1は、前記セルフキャリブレーション動作中、エッジ時間調整動作のために、
図4に示されるようなエッジ時間調整回路を含む。また、前記各受信部RX0、RX1は、前記セルフキャリブレーション動作中、ヒステリシス範囲調整動作のために、
図5に示されるようなヒステリシス範囲調整回路を含む。
【0049】
ただし、
図4に示されたエッジ時間調整回路、および
図5に示されたヒステリシス範囲調整回路は例示的なものであり、これを限定するためのものではない。
【0050】
したがって、以下、回路構成については簡略に説明し、機能的な動作を中心に説明する。
【0051】
図4の(a)を参照すれば、入力IN信号の立ち上がりエッジでは、R[0]~R[N]によるP型MOSFETの選択的オンオフによって立ち上がりエッジの時間調整(例:電圧変化時間調整)を行い、入力IN信号の立ち下がりエッジでは、F[0]~F[N]によるN型MOSFETの選択的オンオフによって立ち下がりエッジの時間調整(例:電圧変化時間調整)を行う。
【0052】
図4の(a)にてP型MOSFETまたはN型MOSFETの選択的オンオフによって、立ち上がりエッジの時間調整および立ち下がりエッジ時間を行うことにより、
図4の(b)に示されるように、送信部の出力信号をみると、デフォルト(Default、最も鋭く立ち上がるライン)エッジ時間から次第にエッジの時間調整(例:電圧変化時間調整)が行われることが分かる。
【0053】
これとともに、前記立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの時間調整(例:電圧変化時間調整)が行われることにより、受信部の入力信号(ピーク信号)のレベルが変化(増加または減少)することが分かる。
【0054】
例えば、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの時間(例:電圧変化時間)が長くなるに伴い、受信部の入力信号(ピーク信号)のレベルが低くなり、送信部の出力信号のエッジ時間(例:電圧変化時間)が短くなるに伴い、受信部の入力信号(ピーク信号)のレベルが高くなることが分かる。
【0055】
一方、上述のように、
図5の(a)は、ヒステリシス範囲調整回路を示す例示図であって、点線で表示されたボックス部分(Positive feedback)の回路を複数形成した後、内部のN型MOSFET(M6、M7)を選択的にオンオフすることにより、
図5の(b)に示されるように、受信部の入力信号(ピーク信号)に対するヒステリシス範囲を広げたり、狭めることができる。
【0056】
これにより、前記受信部の入力信号(ピーク信号)のレベルがヒステリシス範囲内にある場合に、受信部の入力信号(ピーク信号)は無視される(すなわち、信号のトグル(toggle)またはトランジション(transition)が発生しないので、信号受信を認識できない)。したがって、正常な信号受信のためには、ヒステリシス範囲が正常信号のレベル(すなわち、電圧レベル)より低くなければならない。
【0057】
前記受信部の入力信号(ピーク信号)のレベルがヒステリシス範囲外にある場合に、受信部の入力信号(ピーク信号)を認識する(すなわち、信号のトグル(toggle)またはトランジション(transition)が発生するので、信号受信を認識する)。したがって、ノイズが多く含まれている場合(例:トグルが多く発生する場合)に、正常な信号受信のためには、ヒステリシス範囲がノイズ信号のレベルより高くなければならない。
【0058】
上述のように、前記プロセッサ121は、前記マイコン110のセルフキャリブレーション命令によって、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの時間(例:電圧変化時間)を調整することにより、受信部の入力信号(ピーク信号)のレベルを変化(増加または減少)させることができる。
【0059】
また、前記プロセッサ121は、前記マイコン110のセルフキャリブレーション命令によって、受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲を調整することにより、ノイズを除いた正常信号のみを受信することができる。
【0060】
さらに、前記プロセッサ121は、前記マイコン110のセルフキャリブレーション命令によって、集積回路内部のスイッチSW1~SW8を制御して、エラー発生のない信号ラインに連結されたいずれか1つの送信部および受信部を選択して他の集積回路と信号を送受信できるようにする。
【0061】
以下、
図6を参照して、本発明の一実施例よる絶縁通信時のセルフキャリブレーション方法を説明する。
【0062】
図6を参照すれば、プロセッサ121がマイコン110からセルフキャリブレーション命令語を受信すれば(S101)、各集積回路IC#[N]、IC#[N+1]のプロセッサ121は、予め設定された基準信号(例:基準パルス信号)を送受信することにより、送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較する(S102)。
【0063】
前記送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した結果、特定時間受信部の入力信号にトグル(またはトランジション)がない場合(S103)(例:ヒステリシス範囲が正常信号のレベルより高い場合)、前記プロセッサ121は、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの時間(例:電圧変化時間)値を増加させ(S104)、再び特定時間受信部の入力信号にトグル(またはトランジション)があるかをチェック(S103)する過程を繰り返す。
【0064】
また、前記特定時間受信部の入力信号にトグル(またはトランジション)がない場合(S103)、前記プロセッサ121は、受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を減少させ(S105)、再び特定時間受信部の入力信号にトグル(またはトランジション)があるかをチェック(S103)する過程を繰り返す。
【0065】
この時、前記S104およびS105過程は、同時に行われてもよく、いずれか1つの過程が先に行われた後、他の過程が次に行われてもよい。
【0066】
前記S103~S105過程の実行により、受信部の入力信号にトグル(またはトランジション)が検出される場合、前記プロセッサ121は、送信部および受信部の設定(すなわち、セルフキャリブレーション)を完了し、正常な通信を開始する(S106)。
【0067】
一方、前記送信部の出力信号と受信部の入力信号とを比較した結果、受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグル(またはトランジション)が多い場合(S103)(例:ヒステリシス範囲がノイズ信号のレベルより低い場合)、前記プロセッサ121は、送信部の出力信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジの時間(例:電圧変化時間)値を減少させ(S108)、再び受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグル(またはトランジション)が多く検出されるかをチェック(S107)する過程を繰り返す。
【0068】
また、前記受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグル(またはトランジション)が多く検出される場合(S107)、前記プロセッサ121は、受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲値を増加させ(S109)、再び受信部の入力信号が送信部の出力信号に比べてトグル(またはトランジション)が多く検出されるかをチェック(S107)する過程を繰り返す。
【0069】
この時、前記S108およびS109過程は、同時に行われてもよく、いずれか1つの過程が先に行われた後、他の過程が次に行われてもよい。
【0070】
前記S108~S109過程の実行により、受信部の入力信号にトグル(またはトランジション)が減少して正常数値で検出される場合、前記プロセッサ121は、送信部および受信部の設定(すなわち、セルフキャリブレーション)を完了し、正常な通信を開始する(S110)。
【0071】
上記のように、本実施例は、集積回路(IC)間の絶縁通信時、外部環境(例:温度)の変化による送受信データの損失を防止するために、送信部の出力信号に対するエッジの時間調整(例:電圧変化時間調整)と受信部の入力信号に対するヒステリシス範囲の調整を行うセルフキャリブレーションによりデータの損失防止と補償を行うことにより、最適な信号の送受信状態を設定して通信性能を向上できるようにする効果がある。
【0072】
また、本実施例は、送信部の電圧変化時間調整と受信部のヒステリシス範囲調整機能を集積回路(IC)に内在化することにより、制御器レベルでの部品数の減少およびコストを節減できるようにする効果がある。
【0073】
以上、本発明は、図面に示された実施例を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術の属する分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な他の実施例が可能であることを理解するであろう。したがって、本発明の技術的保護範囲は以下の特許請求の範囲によって定められなければならない。また、本明細書で説明された実現は、例えば、方法またはプロセス、装置、ソフトウェアプログラム、データストリームまたは信号で実現できる。単一形態の実現の脈絡でのみ議論(例えば、方法としてのみ議論)されたとしても、議論された特徴の実現はさらに他の形態(例えば、装置またはプログラム)でも実現できる。装置は、適切なハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアなどで実現されてもよい。方法は、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路またはプログラミング可能なロジックデバイスなどを含むプロセッシングデバイスを一般的に称するプロセッサなどのような装置で実現されてもよい。プロセッサはまた、エンド-ユーザの間に情報の通信を容易にするコンピュータ、セルフォン、携帯用/個人用情報端末(personal digital assistant:「PDA」)および他のデバイスなどのような通信デバイスを含む。