(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】エアパージ用の多孔質外側部材を有するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240722BHJP
【FI】
A61M25/10 542
(21)【出願番号】P 2022529440
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 US2020059477
(87)【国際公開番号】W WO2021101736
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-25
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(73)【特許権者】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ホジソン,カイラー
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103120(JP,A)
【文献】特開昭63-095065(JP,A)
【文献】特表2008-509781(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143418(WO,A1)
【文献】特表2019-520882(JP,A)
【文献】特開2011-072438(JP,A)
【文献】国際公開第2007/122908(WO,A1)
【文献】米国特許第04811737(US,A)
【文献】米国特許第05135486(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルにおいて、
近位部分、遠位部分、およびこれらの間に延びる外側部材管腔を有する細長い管状の外側部材であって、当該外側部材はマイクロポーラス材料で形成されて前記外側部材の壁が微細孔を有し、造影剤が前記外側部材管腔に注入されると、微細孔が空気を通過させ、その後に造影剤によって目詰まりし、それによって造影剤が微細孔を通過しなくなるように微細孔を封止するように構成される、外側部材と、
近位部分、遠位部分、およびこれらの間に延びる内側部材管腔を有する管状の内側部材であって、前記内側部材管腔は前記内側部材の遠位開口部と連通しており、前記内側部材は少なくとも部分的に前記外側部材内に配置され、前記内側部材の外面と前記外側部材の内面とが一緒になって
近位端および遠位端を有する環状の膨張用管腔を規定する、内側部材と、
前記外側部材の遠位部分の外面に、および円周方向にそれぞれ固定された近位端および遠位端を有するバルーン部材であって、当該バルーン部材の内面と前記外側部材の外面とが一緒になって膨張可能なバルーン内部を規定する、バルーン部材とを具え、
前記外側部材は、前記環状の膨張用管腔と前記バルーン内部との間に流体経路を形成する、前記外側部材の壁を通る1つまたは複数の膨張用通路を
有し、
前記微細孔が、前記外側部材の近位部分から遠位部分まで延在することにより、前記環状の膨張用管腔の前記近位端から前記遠位端まで前記環状の膨張用管腔の長さ全体にわたって前記外側部材の外側に空気をパージできるように構成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記マイクロポーラス材料の微細孔が、0.1μmから2μmの範囲の公称孔径を有する、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記微細孔の孔径が5μm以下である、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記マイクロポーラス材料が、織物ポリマー、織物プラスチック、ePTFE、焼結プラスチックおよび焼結ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記微細孔が、0.079μm
2から12.5μm
2の範囲の公称孔面積を有する、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
バルーンカテーテルにおいて、
近位部分、遠位部分、およびこれらの間に延びる外側部材管腔を有する細長い管状の外側部材であって、当該管状の外側部材は当該外側部材の壁を通して穿設された
複数の微小穴を有し、
当該複数の微小穴は、造影剤が前記外側部材管腔に注入されると、微小穴が空気を通過させ、その後に造影剤によって目詰まりし、それによって造影剤が前記微小穴を通過しなくなるように
前記複数の微小穴を封止するように構成される、外側部材と、
近位部分、遠位部分、およびこれらの間に延びる内側部材管腔を有する管状の内側部材であって、前記内側部材管腔は前記内側部材の遠位開口部と連通しており、前記内側部材は少なくとも部分的に前記外側部材内に配置され、前記内側部材の外面と前記外側部材の内面とが一緒になって
近位端および遠位端を有する環状の膨張用管腔を規定する、内側部材と、
前記外側部材の遠位部分の外面に、および円周方向にそれぞれ固定された近位端および遠位端を有するバルーン部材であって、当該バルーン部材の内面と前記外側部材の外面とが一緒になって膨張可能なバルーン内部を規定する、バルーン部材とを具え、
前記外側部材は、前記環状の膨張用管腔と前記バルーン内部との間に流体経路を形成する、前記外側部材の壁を通る1つまたは複数の膨張用通路を
有し、
前記複数の微小穴が、前記外側部材の近位部分から遠位部分まで延在することにより、前記環状の膨張用管腔の前記近位端から前記遠位端まで前記環状の膨張用管腔の長さ全体にわたって前記外側部材の外側に空気をパージできるように構成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記微小穴が、5μmから8μmの範囲の公称直径を有する、請求項
6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記外側部材が、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、およびナイロンからなる群から選択される材料から形成される、請求項
6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記微小穴は、前記外側部材の近位部分から遠位部分まで延在する、請求項
6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記微小穴が、1μm
2から210μm
2の範囲の公称穴面積を有する、請求項
6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
請求項1に記載のバルーンカテーテルから空気をパージする方法であって、
造影剤を前記環状の膨張用管腔に注入し、前記膨張用通路を通して前記バルーン内に注入し、それによって前記膨張用管腔および前記バルーン内部から空気を前記外側部材の微小穴を通してパージするステップと、
前記環状の膨張用管腔内における造影剤の正圧を維持し、造影剤が前記外側部材の微細孔を封止するようにするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記造影剤は、前記バルーンを膨張させるのに十分な圧力で前記環状の膨張用管腔に注入されるとともに、前記方法がさらに、
前記バルーン内に捕捉された空気が前記管状の外側部材内に移動し、前記外側部材の微細孔を通って管状部材から出て行くように、前記管状の外側部材
の近位部分が前記バルーンよりも上にくるように前記バルーンカテーテルを配置するステップを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記バルーンが造影剤で膨張している間に前記バルーンに気泡がないか検査するステップと、
前記バルーンからバルーン内の気泡がすべてパージされているかを判定するステップと、
前記バルーンからバルーン内の気泡がすべてパージされたと判定した後に、前記膨張用管腔およびバルーン内部内の造影剤の圧力を下げることによって前記バルーンを収縮させるステップとを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
請求項
6に記載のバルーンカテーテルから空気をパージする方法であって、
造影剤を前記環状の膨張用管腔に注入し、前記膨張用通路を通して前記バルーン内に注入し、それによって前記膨張用管腔および前記バルーン内部から空気を前記外側部材の微小穴を通してパージするステップと、
前記環状の膨張用管腔内における造影剤の正圧を維持し、造影剤が前記外側部材の微小穴を密封するようにするステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記造影剤は、前記バルーンを膨張させるのに十分な圧力で前記環状の膨張用管腔に注入されるとともに、前記方法がさらに、
前記バルーン内に捕捉された空気が前記管状の外側部材内に移動し、前記外側部材の微小穴を通って管状部材から出て行くように、前記管状の外側部材
の近位部分が前記バルーンよりも上にくるように前記バルーンカテーテルを配置するステップを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記バルーンが造影剤で膨張している間に前記バルーンに気泡がないか検査するステップと、
前記バルーンからバルーン内の気泡がすべてパージされているかを判定するステップと、
前記バルーンからバルーン内の気泡がすべてパージされたと判定した後に、前記膨張用管腔およびバルーン内部内の造影剤の圧力を下げることによって前記バルーンを収縮させるステップとを含む、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]開示される発明は、一般に、患者の血管系管腔内で処置を行うための医療機器および方法に関し、より具体的には、バルーンカテーテルから不要な空気を迅速かつ効果的にパージできるように構成された、血管系内で使用するバルーンカテーテルおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]介入治療、薬物送達、診断、灌流などを含む様々な医療処置を実行するために、様々な設計の医療用カテーテルが以前から提供されている。一般に、医療用カテーテルは、患者の入口部位を通して、静脈や動脈などの患者の血管系にカテーテルを導入することによって使用される。カテーテルは、治療的および/または診断的医療処置を実行するために、血管系を通してカテーテルを標的部位に誘導し押すことによって、入口部位から進められる。
【0003】
[0003]血管内カテーテルの一例として、細長い管状部材を含むバルーンカテーテルがあり、バルーン部材が、例えば管状部材の遠位端部分や他の適切な位置に取り付けられて、バルーン部材の内面と管状部材の外面との間に膨張可能なバルーン内部を形成する。一般的なタイプのバルーンカテーテルとして、他の器具を血管系内の所望の部位に誘導するために使用されるバルーンガイドカテーテルがある。管状部材は、流体を注入してバルーンを膨張させるために、管状部材の近位端から膨張可能なバルーン内部まで延びる膨張用管腔を含む。様々な異なる医療処置を実施するための様々なタイプのバルーンカテーテルが以前から開示されている。例えば、虚血性脳卒中などの神経障害の治療に関連して使用されるバルーンガイドカテーテルが、米国特許第6,638,245号(’245特許)に開示されており、その開示内容は本明細書に完全に組み込まれる。
図13Aおよび13Bは、’245特許に開示された従来技術のバルーンガイドカテーテル250を示す(符号は’245特許から変更されている)。バルーンガイドカテーテル250は、外側管状部材270と、当該外側管状部材270内の内側管状部材272とを具える。バルーンガイドカテーテル250は、外側管状部材270の遠位端に配置された膨張可能なバルーン260を有する。外側管状部材270と内側管状部材272の間の環状空間は、バルーン260を膨張させるための流体供給管腔258を形成する。バルーンガイドカテーテル250は、イントロデューサシースを通して患者の血管系内の標的部位に進められる。所定の位置に配置されると、治療カテーテルは、内側管状部材272の作業管腔252を通して標的部位に進めることができる。したがって、バルーンガイドカテーテル250などの従来のバルーンガイドカテーテルは、少なくとも3つのカテーテルシャフトの厚さ(外側管状部材270、内側管状部材272、およびイントロデューサシースの合計の厚さ)を必要とするものであった。
【0004】
[0004]神経血管系にバルーンカテーテルを使用する場合、カテーテルの設計に多くの課題が提示される。一つには、脳内の血管は一般に直径が数ミリメートル以下と非常に小さいため、これらの血管に挿入されるカテーテルの外径を1フレンチ(0.33mm)程度にする必要がある。さらに、脳の血管系は非常に曲がりくねっており、神経用カテーテルは、曲がりくねった経路を通って移動し、それに順応するために、特に遠位端で非常に柔軟であることが要求される。また、脳の血管は非常に脆いため、神経用カテーテルの外周は滑らかで非外傷性である必要がある。
【0005】
[0005]バルーンガイドカテーテルを含むバルーンカテーテルは、一般に、バルーンカテーテルを患者の血管系に進める前に、それぞれのバルーン膨張用管腔およびバルーン内部から不要な気泡をパージして準備する必要がある。上述のように、バルーンカテーテルは、通常、細長いチューブと膨張用管腔とを有する。場合によっては、バルーンカテーテルはまた、複数のチューブ(例えば、外側チューブ内に内側チューブが配置された同心チューブ)を有し得る。チューブ、膨張用管腔、およびバルーンを含むこれらの構造のそれぞれは、患者に塞栓症または他の外傷を引き起こす可能性のある空気が患者に導入されないように、バルーンカテーテルを患者の血管系を通して進める前に、液体(例えば、生理食塩水)で空気をパージする必要がある。
【0006】
[0006]しかしながら、膨張用管腔からバルーンへの、そして多くの場合はバルーンカテーテルの作業管腔内の流体経路が閉鎖端であるため、システムからすべての空気をパージすることは困難であり、非常に時間がかかる。また、流体経路が閉鎖端であるため、すべての空気がパージされたことを判断することも困難である。そのため、手術の準備中に先行してバルーンカテーテルから空気をパージするのに最大15分かかることが多く、それでもパージが常に成功するとは限らない。しかしながら、膨張用管腔からバルーンへの、そして多くの場合はカテーテルのチューブ内の流体経路が閉鎖端であるため、システムからすべての空気をパージすることは困難であり、非常に時間がかかる。また、流体経路が閉鎖端であるため、カテーテルから空気がパージされたかを特定するのも困難である。そのため、手術の準備中に先行してバルーンカテーテルから空気をパージするのに最大15分かかることが多く、それでもパージが常に成功するとは限らない。
【発明の概要】
【0007】
[0007]開示された発明は、迅速な準備と、バルーン膨張用管腔およびバルーン内部からの空気のパージを含む、カテーテル内の空気の効果的なパージを可能にする革新的な構成を有するバルーンカテーテルに関する。開示される発明の説明は、患者の血管系内への治療デバイスの挿入および位置決めに使用されるバルーンガイドカテーテルに関するが、開示される発明は、バルーンガイドカテーテルに限定されず、任意の適切なバルーンカテーテルに使用され得ることが理解される。
【0008】
[0008]上記のように、バルーンカテーテルは通常、カテーテルを患者の血管系に進める前にシステムから空気をパージすることを含む、使用前の準備を必要とする。開示される発明のバルーンカテーテルは、カテーテルから、特にバルーン膨張用管腔およびバルーンからの空気を単一の吸引ステップで迅速かつ効果的にパージできるように構成され、既存のバルーンカテーテルよりも簡単かつ迅速な準備手順を可能にする。
【0009】
[0009]開示された発明の例示的な実施形態では、バルーンカテーテルは、近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる外側部材管腔を有する細長い、柔軟な、管状の外側部材を含む。外側部材は、外側部材の壁が微細孔(micropores)を有するようにマイクロポーラス材料で形成されている。微細孔は、造影剤が外側部材管腔に注入されたときに、空気が外側部材の壁を通過できるように構成される(例えば、サイズ決定される)。空気は、外側部材管腔から微細孔を通って外側部材の外部へと通過する。典型的に、造影剤は生理食塩水と混合されて造影剤/生理食塩水混合物を形成し、したがって、本明細書で使用される「造影剤」という用語は、造影剤、造影剤/生理食塩水混合物、または他の流体と混合された造影剤を意味する。さらに、微細孔は、空気を通すが、その後に造影剤で目詰まりを起こし、それによって造影剤が微細孔を通らなくなるように微細孔を封止する。
【0010】
[0010]バルーンカテーテルは、近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる内側部材管腔を有する、柔軟な細長い管状の内側部材をさらに含む。内側部材管腔は、内側部材の遠位開口部と連通している。内側部材は、内側部材の外面と外側部材の内面とが一緒になって環状の膨張用管腔を規定するように、少なくとも部分的に外側部材管腔内に配置される。
【0011】
[0011]バルーン部材は外側部材に固定されている。バルーン部材は、遠位部分を含むがこれに限定されない、外側部材の任意の適切な部分に固定することができる。バルーンの近位端および遠位端は、エラストマー部材の内面と外側部材の外面とが膨張可能なバルーン内部を規定するように、外側部材の外面に円周方向に固定される。
【0012】
[0012]外側部材はまた、環状の膨張用管腔とバルーン内部との間に流体経路を形成する、外側部材の壁を通る1つまたは複数の膨張用通路を有する。膨張用通路は、外側部材の壁を貫通して環状の膨張用管腔とバルーン内部とを流体接続する穴であり得る。
【0013】
[0013]様々な実施形態において、マイクロポーラス材料は、0.1μmから2μmの範囲の公称孔径を有する微細孔を有する。マイクロポーラス材料のこの構成により、造影剤が膨張用管腔に注入されたときに空気が外側部材の微細孔を通って通過することが可能となり、その後に微細孔が造影剤によって目詰まりし、封止される。さらに、微細孔の孔径は好ましくは5μm以下であり、これにより過剰な造影剤が微細孔から漏れ出すことなく、また微細孔を造影剤によって適切に封止することができる。
【0014】
[0014]様々な実施形態において、マイクロポーラス材料は、TYVEK(商標)3345、織物ポリマー、織物プラスチック、ePTFE、焼結プラスチック、焼結ポリマー、およびGORETEX(商標)布膜など、外側部材を形成するための柔軟な細長いチューブを作製するための任意の適切な材料であり得る。
【0015】
[0015]様々な実施形態において、微細孔は、外側部材の近位部分から遠位部分まで延在することができる。このように、外側部材全体に沿って膨張用管腔に閉じ込められた空気を排出するための微細孔があり、これによってバルーンカテーテルから空気をパージするのに必要な時間が短縮することができる。
【0016】
[0016]様々な実施形態において、マイクロポーラス材料は、0.079μm2から12.5μm2の範囲の公称孔面積サイズを有する微細孔を有する。細孔径と同様に、この特徴は、造影剤が膨張用管腔に注入されたときに空気が外側部材の微細孔を通過することを可能にし、その後に造影剤が微細孔を目詰まりさせ、それによって造影剤が微細孔を通過できなくなるように微細孔を封止する。
【0017】
[0017]開示された発明の別の態様は、バルーンカテーテルの上記の例示的な実施形態から空気をパージする方法に関し、造影剤を環状の膨張用管腔に注入し、それぞれ環状膨張用管腔、膨張用通路、およびバルーン内部に流れ、それによって膨張用管腔およびバルーン内部から空気が外側部材の微細孔を出てパージされる。環状の膨張用管腔内における造影剤の正圧が維持され、空気が膨張用管腔およびバルーン内部からパージされた後、造影剤が外側部材の微細孔を閉塞する。バルーンカテーテル全体からの空気のパージを完了するために、不要な空気が内側部材管腔から除去されるまで、内側部材管腔を生理食塩水などの洗浄液でフラッシングすることによって、内側部材をパージすることができる。これでバルーンカテーテルの準備が整う(外科処置で使用するために「準備」される)。したがって、バルーンカテーテルは、外科処置を実施に使用するためのバルーンカテーテルの準備において、非常に迅速かつ効果的な空気のパージを可能にする。
【0018】
[0018]この準備方法はまた、管状の外側部材がバルーンより上に持ち上げられた状態となるようにバルーンカテーテルを配置し、バルーン内に捕捉された空気が管状の外側部材に移動し、外側部材の微細孔を通って管状部材から出て行くようにすることを含み得る。
【0019】
[0019]好ましくは、造影剤は、バルーン部材を膨張させるのに十分な圧力で環状の膨張用管腔に注入される。空気が膨張用管腔およびバルーン部材からパージされた後、造影剤の圧力を低下させることによってバルーン部材を収縮させることができる。
【0020】
[0020]この準備方法は、バルーンが造影剤で膨張している間にバルーンの気泡を検査して(例えば、ユーザがバルーンを目視検査し)、バルーン内の気泡がバルーンからパージされているかを判定することをさらに含み得る。そして、バルーン内の気泡がバルーンからパージされたと判定された後、膨張用管腔およびバルーン内部内の造影剤の圧力を低下させることによって、バルーンを収縮させる。
【0021】
[0021]1つの例示的な使用において、準備された(空気がパージされた)バルーンカテーテルが、患者の血管系に挿入される。例えば、バルーンカテーテルは、入口切開を通して、鼠径部付近の下大静脈または大腿動脈などの入口血管に挿入することができる。次いで、内側部材と外側部材が血管系を通して進められ、バルーンを治療部位に配置する。内側部材と外側部材は、同時または別々に、同じ速度または異なる速度で前進させることができる。バルーンを治療部位に配置した状態で、造影剤を膨張用管腔に注入することによってバルーン部材を膨張させ、それによって膨張用管腔およびバルーン部材内の造影剤の圧力が増加する。バルーンは、バルーンが血管を密閉するように血管内で膨張させることができる。これにより、バルーンの下流の血管が血流から隔離される。その後、画像化、塞栓除去、血管内デバイス移植などのような治療処置を実行することができる。例えば、画像化カテーテルを内側部材を通して挿入し、内側部材の遠位端を越えて前進させて、血管や周辺組織を画像化することができる。虚血性脳卒中の治療などで塞栓を除去する場合、塞栓除去デバイスを内側部材に挿入し、内側部材の遠位端を越えて前進させて、塞栓を把持または捕捉し、血管から塞栓を除去することができる。
【0022】
[0022]バルーンカテーテルの代替実施形態では、外側部材がマイクロポーラス材料で形成される代わりに、外側部材が、外側部材の壁を貫通して穿設された1つまたは複数の微小穴を有する不透過性壁(すなわち、空気、造影剤、および生理食塩水を透過させない)を有する。したがって、この代替実施形態では、バルーンカテーテルは、近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる外側部材管腔を有する細長い管状の外側部材を含む。外側部材は、外側部材の壁を貫通して穿設された1つまたは複数の微小穴を有する。微小穴は、造影剤が外側部材管腔(すなわち、膨張用管腔)に注入されたときに、微小穴を空気が通過できるように構成される。すなわち、空気は、外側部材管腔(より具体的には、膨張用管腔)から微小穴を通って外側部材の外部へと通過する。さらに、空気を通過させた後、微小穴は造影剤によって目詰まりし、それによって造影剤が微小穴を通過できなくなるように閉塞する。
【0023】
[0023]バルーンカテーテルの代替の実施形態はまた、近位部分、遠位部分、およびそれらの間に延びる内側部材管腔を有する、柔軟な細長い管状内側部材を有する。内側部材管腔は、内側部材の遠位開口部と連通している。内側部材は、内側部材の外面と外側部材の内面とが一緒になって環状の膨張用管腔を規定するように、少なくとも部分的に外側部材管腔内に配置される。
【0024】
[0024]例示的な実施形態と同様に、バルーン部材は外側部材に固定されている。バルーン部材は、遠位部分を含むがこれに限定されない、外側部材の任意の適切な部分に固定することができる。バルーンの近位端および遠位端は、エラストマー部材の内面と外部材の外面とが膨張可能なバルーン内部を規定するように、外側部材の外面に円周方向に固定される。外側部材はまた、環状の膨張用管腔とバルーン内部との間に流体経路を形成する、外側部材の壁を通る1つまたは複数の膨張用通路を有する。膨張用通路は、環状の膨張用管腔とバルーン内部とを流体接続する外側部材の壁を貫通する穴であり得る。
【0025】
[0025]この代替実施形態の微小穴は、好ましくは、5μmから8μmの範囲の公称直径を有する。微小穴のこの構成により、造影剤が膨張用管腔に注入されたときに空気が外側部材の微小穴を通って通過することが可能となり、その後に造影剤が微小穴を目詰まりさせ、それによって微小穴が閉塞される。別の態様では、外側部材の表面積にわたる微小穴の密度は、好ましくは、外側部材の表面積1cm2あたり16個以下の微小穴である。あるいは、外側部材の表面積にわたる微小穴の密度は、好ましくは、外側部材の表面積1cm2あたり20以下の微小穴、または外側部材の表面積1cm2あたり10以下の微小穴、または外側部材の表面積1cm2あたり5以下の微小穴である。外側部材の表面積にわたる微小穴の最大密度は、造影剤(または過剰な量の造影剤)が微小穴から漏れ出すことなく、造影剤が微小穴を確実に閉塞するのに役立つ。
【0026】
[0026]例示的な実施形態と同様に、この代替実施形態の外側部材は、好ましくはポリウレタン、PEBAX(商標)、VESTAMID(商標)、熱可塑性エラストマー、およびナイロンなどの材料、または柔軟で細長い管状の外側部材を形成でき、管状の外側部材の壁に微小穴を穿設することができる他の適切な材料から形成される。微小穴は、レーザー穴あけ、機械的穴あけ、パンチングなどの任意の適切な手段を使用して穿設することができ、好ましくは、外側部材の近位部分から遠位部分まで外側部材に沿って間隔を置いて配置される。例えば、微小穴は、外側部材に沿ってらせん状のパターンで、または長方形のマトリックスで、または他の適切なパターンで配置することができる。微小穴は、好ましくは、1μm2から210μm2の範囲の公称穴面積を有する。公称直径と同様に、この公称穴面積により造影剤が膨張用管腔に注入されたときに外側部材の微小穴を通って空気が排出され、空気が排出された後に、造影剤が微小穴を目詰まりさせて閉塞する。
【0027】
[0027]開示された発明の別の態様は、バルーンカテーテルの代替実施形態から空気をパージする方法に関する。この空気をパージする方法は、空気が微小穴を通してパージされ、造影剤が微細孔(micropores)の代わりに微小穴(micro-holes)を密封することを除いて、例示的な実施形態から空気をパージする方法と本質的に同じである。
【0028】
[0028]したがって、本明細書に記載の実施形態は、従来のバルーンカテーテルよりも迅速な準備とカテーテル内の空気の効果的なパージを可能にする革新的なバルーンとその使用方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
[0029]上記は、開示される発明の他のおよびさらなる実施形態および態様とともに、以下の詳細な説明においてより詳細に説明され、添付の図を考慮して読まれるべきであり、ここで同じ参照番号は同じ要素を指し、同様の要素についての説明は、関連する場合はいつでも説明されているすべての実施形態に適用可能である。
【
図1】[0030]
図1は、開示された発明の第1の実施形態によるバルーンガイドカテーテルの側面図である。
【
図2】[0031]
図2は、
図1のバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図3】[0032]
図3は、
図1のバルーンガイドカテーテルの膨張用管腔に造影剤を注入することによって空気がパージされ、空気が外側部材の微細孔を通過する状態を示している。
【
図4】[0033]
図4は、
図1のバルーンガイドカテーテルにおいて、バルーン部材が膨張した状態で空気がパージされ、空気が外側部材の微細孔を通過する状態を示している。
【
図5】[0034]
図5は、
図1のバルーンガイドカテーテルにおいて、微細孔が造影剤で詰まって密封され、バルーン部材が収縮された後の状態を示している。
【
図6】[0035]
図6は、
図1のバルーンガイドカテーテルにおいて、生理食塩水を内側部材管腔に注入することによって内側部材管腔から空気をパージした状態を示している。
【
図7】[0036]
図7は、開示された発明の第2の実施形態によるバルーンガイドカテーテルの側面図である。
【
図8】[0037]
図8は、
図7のバルーンガイドカテーテルの側部断面図である。
【
図9】[0038]
図9は、
図7のバルーンガイドカテーテルの膨張用管腔に造影剤を注入することによって空気がパージされ、空気が外側部材の微細孔を通過する状態を示している。
【
図10】[0039]
図10は、
図7のバルーンガイドカテーテルにおいて、バルーン部材が膨張した状態で空気がパージされ、空気が外側部材の微細孔を通過する状態を示している。
【
図11】[0040]
図11は、
図7のバルーンガイドカテーテルにおいて、微細孔が造影剤によって詰まって密封され、バルーン部材が収縮された後の状態を示している。
【
図12】[0041]
図12は、
図7のバルーンガイドカテーテルにおいて、生理食塩水を内側部材管腔に注入することによって内側部材管腔から空気をパージした状態を示している。
【
図13】[0042]
図13Aおよび13Bは、米国特許第6,638,245号に開示されているような従来技術のバルーンガイドカテーテルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[0043]
図1~5は、開示された発明の第1の一実施形態に従って構成されたバルーンガイドカテーテル100の第1の実施形態を示す図である。バルーンガイドカテーテル100は、一般に、虚血性脳卒中の治療などの血管系内での処置を実行するため、および/または他の治療や診断目的のために血流を遮断または制限するために構成される。特に開示された発明に関して、バルーンガイドカテーテル100は、以下に詳述するように、それぞれの膨張用管腔121およびバルーン内部146からの空気の迅速かつ効果的なパージを提供することを含む、外科的処置を実施するためのカテーテルの迅速な準備を可能にするように特別に構成されている。
【0031】
[0044]バルーンガイドカテーテル100は、近位部分104、遠位部分106、およびそれらの間に延びる内側作業管腔108を有する細長い可撓性の管状本体102を具える。作業管腔108(一部はハブ116によって、一部は内側部材管腔140によって規定される)は、管状本体102の遠位端112の遠位開口110と、管状本体102の近位部分104に固定されたハブ116(以下に詳述)とによって規定される近位開口114と流体連絡している。
【0032】
[0045]管状本体102は、近位部分124、遠位部分126、およびそれらの間に延びる外側部材管腔128を有する細長い可撓性で管状の外側部材118を具える。管状本体102はまた、外側部材管腔128内に同軸配置された細長い管状の内側部材120を有し、この内側部材120の外面と外側部材118の内面が一緒になって環状の膨張用管腔121を規定する。
【0033】
[0046]外側部材118は、外側部材118の壁が、近位部分124から遠位部分126まで延びる外側部材118の壁全体に沿って微細孔122を有するように、マイクロポーラス材料で形成されている。微細孔122は非常に小さく、外側部材118の壁全体に分布しているため、微細孔122は図に概略的に示されている。マイクロポーラス材料は、造影剤123が外側部材管腔128(より具体的には膨張用管腔121)に注入されたときに、
図3および4の矢印132で示すように、空気が膨張用管腔121から外側部材118の外部へと外側部材118の壁を通過できるように構成された微細孔122を有する。マイクロポーラス材料の微細孔122の構成はまた、膨張用管腔121およびバルーン部材134から空気がパージされた後、微細孔122が造影剤123によって詰まることを提供する。不要な空気をパージするとともに、造影剤の目詰まり効果を提供するために、マイクロポーラス材料は0.1μmから2.0μmの範囲の公称細孔径を有する微細孔122を有する。マイクロポーラス材料のサイズを定義する別の方法では、微細孔122は、0.079μm
2から12.5μm
2の範囲の公称細孔面積サイズを有する。さらに、空気がパージされた後に微細孔が造影剤によって適切に詰まるように、微細孔122の孔径は5μmを超えるべきではない。したがって、マイクロポーラス材料は、限定しないがTYVEK(商標)3345、織物ポリマー、織物プラスチック、ePTFE、焼結プラスチック、焼結ポリマー、およびGORETEX(商標)布膜を含む、適切に構成された微細孔122を有する任意の適切な材料であり得る。
【0034】
[0047]内側部材120は、近位部分136、遠位部分138、およびそれらの間に延びる内側部材管腔140を有する。内側部材120はそれぞれ、ポリマーチューブや他の適切な材料でできていてもよく、補強および/または剛性部分を提供するために1つまたは複数の補強部材(図示せず)を有していてもよい。例えば、コイル、ブレード、リボン、ハイポチューブ、または他の構造部材が、内側、外側に配置されたり、および/または内側部材120の壁内に埋め込まれたりしてもよい。そのような補強部材は、特定の条件下で管状本体102の補強部分に特定の形状を提供するために、超弾性合金や形状記憶材料などの任意の適切な材料で作ることができる。
【0035】
[0048]上記のように、バルーンガイドカテーテル100は、管状本体102の近位部分104に(すなわち、内側部材118および外側部材および120の各々に)固定されたハブ116をさらに具える。ハブ116は、作業管腔108の近位端開口部114を規定する。ハブ116は、膨張用管腔121の近位端と流体連絡しているバルーン膨張用ポート142を含む。バルーン膨張用ポート142は、外科処置のためにカテーテル100を準備するときにバルーンガイドカテーテル100から空気をパージするための膨張シリンジ152(縮尺通りに描かれていない)(
図3~5参照)または他の加圧膨張流体源に接続されるように構成される。例えば、バルーン膨張用ポート142は、嵌合するオスのルアーロック(図示せず)を有する膨張シリンジ152または他の流体源を取り付けるためのメスのルアーロック(図示せず)を有し得る。
【0036】
[0049]膨張用管腔121は、バルーン膨張用ポート142から外側部材118の長さに沿って、外側部材118に固定されたバルーン部材134の膨張可能なバルーン内部146まで延びる(
図5にバルーン内部36が最もよく見える)。図示の第1の実施形態では、外側部材118および内側部材120は、外側部材118の遠位部分126で接続され、それによって膨張用管腔121の遠位端を形成する。外側部材118および内側部材120はまた、ハブ116の遠位の1つまたは複数の他の位置(図示せず)で互いに結合されてもよい。しかしながら、そのような結合は、膨張用管腔121が膨張用ポート142からバルーン内部まで確実に連続するように、完全に円周方向となっていない。環状の膨張用管腔121に代えて、膨張用管腔121は、外側部材118の壁に形成された1つまたは複数のチャネル、導管、チューブなどであってもよい。あるいは、膨張用管腔121は、外側部材118の壁に形成されるかそれに取り付けられた、1つまたは複数のチャネル、導管、管などであってもよい。
【0037】
[0050]ハブ116はまた、作業管腔108と流体連絡している作業管腔ポート143を有する。作業管腔ポート143は、作業管腔108から空気をパージするためのパージ流体(例えば、生理食塩水)の供給源に接続されるように構成される。血管系内の標的部位を洗い流すため、および/または標的部位に薬物を送達するために、流体の供給源(例えば、生理食塩水)および/または流体薬物の供給源を、バルーンガイドカテーテル100を用いる外科処置中に作業管腔ポート143に接続することができる。作業管腔ポート143は、シリンジ68や、シリンジ155(
図5を参照)などの合致する雄型ルアーロックを有する他の流体源を取り付けるための雌型ルアーロック(図示せず)を有してもよい。
【0038】
[0051]図示の実施形態では、バルーン部材134は、外側部材118の遠位部分126に固定されている。しかしながら、バルーン部材134は、遠位部分126の近位または外側部材118等の中央部分などを含む、外側部材118上の任意の適切な位置に固定することができる。バルーン部材134は典型的にはエラストマーであるが、非エラストマーであってもよい。バルーン部材134は、本明細書に記載されるように、カテーテル100から空気をパージしている間に気泡を視覚的に検査できるように、透明または半透明であってもよい。バルーン部材134の近位端148および遠位端150は、外側部材118の外面に固定され、その周囲に円周方向に固定されている。このようにして、バルーン部材134の内面および外側部材118の外面が、膨張可能なバルーン内部146を形成する。外側部材118および内側部材120は、ハブ19の遠位の1つまたは複数の位置(図示せず)で互いに結合することができる。しかしながら、そのような結合は、膨張用管腔121が膨張用ポート142からバルーン内部146まで確実に連続するように、完全に円周方向ではない。
【0039】
[0052]外側部材118は、バルーン内部で外側部材118の壁を通る1つまたは複数のバルーン膨張用通路156を有する。膨張用通路156は、膨張用管腔121と膨張可能なバルーン内部146との間の外側部材の壁を通る流体経路を形成する。図示の実施形態では、外側部材118は4つの膨張用通路156を有し、これらの膨張用通路156は、外側部材118に沿って長手方向に、および外側部材118の周りに周方向に間隔を置いて配置されている(図示の実施形態では、膨張用通路は外側部材118の周方向に180°間隔で配置されている)。バルーンガイドカテーテル100は、任意の適切な数(例えば1~10など)の膨張用通路156を有することができる。
【0040】
[0053]次に、医療処置で使用するためのカテーテル100を準備("prep")するために、バルーンガイドカテーテル100から空気をパージする方法を、
図1~6を参照して説明する。
図2に示すように、バルーンガイドカテーテル100は最初にカテーテル100内に液体がない状態で提供され、したがって膨張用管腔121および作業管腔108内に空気が存在する。外科処置で使用されるバルーンガイドカテーテル100を準備するために、膨張用管腔121および作業管腔108を含むカテーテル100から空気をパージする。この方法は、最初に膨張用管腔121をパージし、その後に作業管腔108をパージすることで説明するが、逆の順序で実行することもできるし、両方を同時にパージすることも可能である。
【0041】
[0054]
図2を参照すると、膨張用管腔121から空気をパージするために、造影剤123の供給源152が膨張用ポート142に取り付けられる。図示の実施形態では、造影剤123の供給源は、造影剤123を充填した膨張用シリンジ152である。シリンジ152は、膨張用ポート142のメスのルアーロックと嵌合するオスのルアーロックを有し得る。シリンジ152は、造影剤123を膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134に注入するために使用される。膨張用管腔121が造影剤123で満たされると、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134内の空気は、矢印132で示すように、微細孔122を通って外側部材118の外部に押し出される。シリンジ152は、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134内の造影剤123の陽圧を維持するように使用される。
【0042】
[0055]
図4に示すように、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134が造影剤123で満たされた後、シリンジ152を使用して追加の造影剤123が膨張用ポート142に注入され、バルーン部材134が膨張される。空気は微細孔122を通してパージされ続ける。次に、バルーンガイドカテーテル100を操作して、外側部材118がバルーン部材134より上になるように配置し(換言すると、バルーン部材134を、バルーン部材134の近位のバルーンガイドカテーテル100の残り部分の下に配置する)、バルーン部材134内に残っているすべての空気が外側部材118に追いやられ、次いで外側部材118の微細孔122を通って外に出されるようにする。この外側部材118の下へのバルーン134の配置は、最初に造影剤を膨張用ポート142、膨張用管腔121およびバルーン134に注入する前や、バルーン部材134を膨らませる直前など、膨張用管腔121およびバルーン部材134から空気をパージしている間のいつでも行うことができる。
【0043】
[0056]バルーン部材134が膨張した状態で、バルーンガイドカテーテル100を準備するユーザにより、バルーン部材134の空気が視覚的に検査される(例えば、気泡を検査する)。ユーザは、バルーン部材134内に空気が残っているかどうかを判定する。バルーン部材134はまた、漏れがないか視覚的に検査することもできる。バルーン部材134に漏れがある場合、バルーンガイドカテーテル100は不合格とされ、交換され得る。バルーン部材134に漏れがないことが確認された場合、バルーンガイドカテーテル100を準備する方法を進めることができる。
【0044】
[0057]空気が外側部材118の微細孔122を通って押し出される際に、造影剤123が微細孔122に目詰まりを起こす。
図5に示すように、目詰まりした微細孔158は、線158で示されている。目詰まりした微細孔158は造影剤123によって封止され、造影剤123が微細孔122を通過できなくなる。本明細書に記載されるように、微細孔122は、微細孔122を通して膨張用管腔121から空気をパージすることができ、その後は造影剤123によって目詰まりして封止されるように構成されている。また、
図5に示すように、空気が膨張用管腔121およびバルーン部材134からパージされた後、バルーン部材134が収縮され、膨張していない状態で血管系に挿入できるようになる。このとき、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134から空気はパージされ、バルーン部材134は収縮されている。
【0045】
[0058]
図6に示すように、バルーンガイドカテーテル100の準備はさらに、内側部材120の内側部材管腔140および作業管腔ポート143を含む作業管腔108から空気をパージすることを含み得る。フラッシング流体の供給源、典型的には生理食塩水160を充填したパージ用シリンジ155が、作業管腔ポート143に接続される。シリンジ155は、作業管腔ポート143のメスのルアーロックと嵌合するオスのルアーロックを有し得る。シリンジ155は、生理食塩水160を作業管腔108に注入し、それによって内側部材120の内側部材管腔140および膨張用ポート142を含む作業管腔108から空気をパージするように用いられる。ユーザは、内側部材管腔140の遠位開口110を出る生理食塩水160に気泡がないか視覚的に検査することができ、気泡がない場合、作業管腔108から空気がパージされている。準備されたバルーンガイドカテーテル100において作業管腔108は生理食塩水160で満たされたままである(例えば、表面張力で作業管腔108内に生理食塩水160が保持される)。
【0046】
[0059]これで、バルーンガイドカテーテル100から空気がパージされ、外科処置に使用するために完全に準備が整う。
【0047】
[0060]この準備されたバルーンガイドカテーテル100を医療処置に使用する方法には、バルーンガイドカテーテル100の様々な適切な使用が含まれる。1つの例示的な方法では、バルーンガイドカテーテル100は患者の血管系に挿入される。例えば、バルーンガイドカテーテル100は、入口切開部を通して、鼠径部近くの下大静脈または大腿動脈などの入口血管に挿入され得る。内側部材120、外側部材118、およびバルーン部材134を含むバルーンガイドカテーテル100は、血管系を通って進められ、バルーン134が治療部位に配置される。造影剤123により、X線撮影装置、MRIなどの適切な医療用画像装置を使用して、ユーザがバルーンガイドカテーテル100の位置を追跡することができる。内側部材120および外側部材118は、同時あるいは別々に、同じ速度または異なる速度で前進させることができる。図示の実施形態では、内側部材120および外側部材118は、外側部材118の遠位部分126で接続されているので、これらは同時に進められる。
【0048】
[0061]バルーン部材134が治療部位に配置された状態で、膨張用シリンジ152(または他の適切な膨張用流体源)を使用して造影剤を膨張用管腔121に注入することによってバルーン部材134が膨張され、それによって膨張用管腔121およびバルーン部材134内の造影剤123の圧力が増加する。バルーン部材134は、バルーン部材134が血管を閉塞するように、血管内で膨張させることができる。これにより、バルーン部材134の下流の血管が血流から隔離される。また、シリンジ152は、治療部位を洗浄するために、生理食塩水160を治療部位に注入するために使用されてもよい。薬剤または他の治療物質のシリンジ152を使用して、薬剤または他の物質を治療部位に注入することができる。代替的または追加的に、画像化、塞栓の除去、血管内デバイス移植などの治療処置を実行してもよい。例えば、画像化カテーテルを、内側部材管腔140を含む作業管腔108を通して挿入し、内側部材120の遠位端を越えて前進させて、血管または周辺組織を画像化するようにしてもよい。虚血性脳卒中の治療などで塞栓を除去する場合、塞栓除去デバイスを内側部材管腔140を通して挿入し、内側部材118の遠位端112を越えて前進させて、塞栓を把持するなどして捕捉し、血管から塞栓を除去することができる。
【0049】
[0062]
図7~12に転ずると、バルーンガイドカテーテル200の第2の実施形態が示されている。バルーンガイドカテーテル200はまた、本明細書に記載されるように、それぞれの膨張用管腔121およびバルーン内部146からの空気の迅速かつ効果的なパージを提供することを含む、外科処置を実施するためのカテーテルの迅速な準備を可能にするように特別に構成されている。バルーンガイドカテーテル200は、バルーンガイドカテーテル100と実質的に同じであるが、外側部材118がマイクロポーラス材料で形成されている代わりに、外側部材118の壁を貫通する1つまたは複数の微小穴(micro-holes)202を有する不透過壁を有する。
【0050】
[0063]したがって、外側部材118は、外側部材118の壁を貫通して穿設された1つまたは複数の微小穴202を有する。微小穴202は、造影剤123がシリンジ152を使用して膨張用管腔121に注入されると、空気が微小穴202を通って外側部材118の外部に通過することを可能にするように構成される。換言すれば、空気は、外側部材管腔(より具体的には、膨張用管腔)から微小穴を通って外側部材の外部に通過する。さらに、空気を通過させた後、微小穴は造影剤によって目詰まりし、それによって造影剤が微小穴を通過できなくなるように封止する。
【0051】
[0064]外側部材118は、ポリウレタン、PEBAX(商標)、VESTAMID(商標)、熱可塑性エラストマー、およびナイロンなどの、柔軟で細長い管状の外側部材を形成することができ、かつ管状の外側部材の壁に微小穴を開けることができる任意の適切な材料で形成することができる。微小穴202は、レーザー穴あけ、機械的穴あけ、打ち抜きなどの任意の適切な手段を用いて穿孔することができる。
【0052】
[0065]不要な空気をパージし、造影剤の目詰まり効果を両立させるために、微小穴202は、公称サイズ直径が5μm~8μmの範囲にある。微小穴202のこの構成は、造影剤123が膨張用管腔121に注入されたときに空気が外側部材118の微小穴202を通って外に出るとともに、その後に造影剤123が微小穴202を目詰まりさせ、造影剤123が漏れ出さないように微小穴を密閉することを可能にする。代替的または追加的に、微小穴202のサイズは、面積の観点から定義されてもよい。例えば、微小穴202は、1μm2から210μm2の範囲の公称穴面積を有する。公称直径と同様に、この公称穴面積により、造影剤が膨張用管腔121に注入されたときに空気が外側部材118の微小穴202を通って外に出るとともに、空気がパージされた後に造影剤123が微小穴202に目詰まりして密封する。
【0053】
[0066]外側部材118の表面積にわたる微小穴202の密度は、造影剤118(または過度の量の造影剤)が微小穴202から漏れ出すことなく、確実に造影剤123が微小穴202を封止するような最大密度を有し得る。外側部材118の表面積にわたる微小穴202の密度は、好ましくは、外側部材118の表面積1cm2あたり16個以下の微小穴である。あるいは、外側部材118の表面積にわたる微小穴202の密度は、外側部材118の表面積1cm2あたり20個以下の微小穴、または外側部材118の表面積1cm2あたり10個以下の微小穴、または外側部材118の表面積1cm2あたり5つ以下の微小穴202である。
【0054】
[0067]微小穴202は外側部材118に沿って、外側部材118の近位部分124から遠位部分126まで間隔をあけて配置されている。微小穴202は、外側部材118に沿ったパターン、例えば、外側部材118に沿った1つまたは複数のらせんパターン、または長方形のマトリックス、または他の適切なパターンに配置され得る。
【0055】
[0068]
図7~12に示すように、外科処置で使用するためにバルーンガイドカテーテル200を準備する方法は、バルーンガイドカテーテル100を準備する方法と実質的に同じである。
図8に示すように、バルーンガイドカテーテル200は、最初にカテーテル200内に液体がない状態で提供され、したがって膨張用管腔121および作業管腔108内に空気が存在する。外科処置で使用されるバルーンガイドカテーテル200を準備するために、膨張用管腔121および作業管腔108を含めて、カテーテル200から空気をパージする必要がある。カテーテル100と同様に、最初に膨張用管腔121をパージし、その後に作業管腔108をパージすることで方法説明するが、この方法は、逆の順序で、または両方を同時にパージすることも可能である。
【0056】
[0069]
図9を参照すると、膨張用管腔121から空気をパージするために、造影剤123の供給源152が膨張用ポート142に取り付けられる。ここでも造影剤123の供給源は、造影剤123が充填された膨張用シリンジ152である。シリンジ152は、膨張用ポート142のメスのルアーロックと嵌合するオスのルアーロックを有し得る。シリンジ152は、造影剤123を膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134に注入するために使用される。膨張用管腔121が造影剤123で満たされると、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134内の空気は、矢印132で示すように、微小穴202を通って外側部材118の外部に押し出される。シリンジ152は、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134内の造影剤123の正圧を維持するために使用される。
【0057】
[0070]
図10に示すように、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134が造影剤123で満たされた後、追加の造影剤123がシリンジ152を使用して膨張用ポート142に注入され、バルーン部材134が膨張される。空気は、微小穴202を通してパージされ続ける。次に、バルーンガイドカテーテル200を操作して、外側部材118がバルーン部材134より上になるように配置し(換言すると、バルーン部材134を、当該バルーン部材134の近位にあるバルーンガイドカテーテル200の残りの部分の下に配置する)、バルーン部材134内に残っていた空気が外側部材118へと移動し、その後に外側部材118の微小穴202を通って出るようにする。外側部材118の下へバルーン134を配置することは、最初に造影剤を膨張用ポート142、膨張用管腔121およびバルーン134に注入する前や、バルーン部材134を膨らませる直前など、膨張用管腔121およびバルーン部材134から空気をパージする間のいつでも行うことができる。
【0058】
[0071]バルーン部材134が膨張した状態で、バルーンガイドカテーテル200を準備するユーザによって、バルーン部材134の空気が視覚的に検査される(例えば、気泡を検査する)。ユーザは、バルーン部材134内に空気が残っているかどうかを判定する。バルーン部材134はまた、漏れがないか視覚的に検査され得る。バルーン部材134に漏れがある場合、バルーンガイドカテーテル200は不合格となり、交換され得る。バルーン部材134に漏れがないことが確認された場合、バルーンガイドカテーテル200を準備する方法を進めることができる。
【0059】
[0072]空気が外側部材118の微小穴202を通して押し出される際に、造影剤123が微小穴202を目詰まりさせる。
図11に示すように、微小穴202は、造影剤123によって形成される栓204によって封止される。目詰まりした微小穴202は、造影剤123が微小穴202を通過できないように、造影剤123によって封止される。本明細書に記載されるように、微小穴202は、空気が膨張用管腔121から微小穴202を通してパージされ、その後に造影剤123によって目詰まりして封止されるように構成されている。また、
図11に示すように、空気が膨張用管腔121およびバルーン部材134からパージされた後、バルーン部材134が収縮し、膨張していない状態で血管系に挿入できるようになる。このとき、膨張用ポート142、膨張用管腔121、およびバルーン部材134から空気はパージされ、バルーン部材134は収縮されている。
【0060】
[0073]バルーンガイドカテーテル200の準備はさらに、内側部材120の内側部材管腔140および作業管腔ポート143を含む作業管腔108から空気をパージすることを含み得る。生理食塩水160で満たされたパージシリンジ155が、作業管腔ポート143に接続される。シリンジ155は、作業管腔ポート143のメスのルアーロックと嵌合するオスのルアーロックを有し得る。シリンジ155は生理食塩水160を作業管腔108に注入し、それによって内側部材120の内側部材管腔140および膨張用ポート142を含む作業管腔108から空気をパージするように用いられる。ユーザは、内側部材管腔140の遠位開口110を出る生理食塩水160に気泡がないか視覚的に検査することができ、気泡がない場合、作業管腔108から空気がパージされている。準備されたバルーンガイドカテーテル200において作業管腔108は生理食塩水160で満たされたままである(例えば、表面張力で作業管腔108内に生理食塩水160が保持される)。
【0061】
[0074]これで、バルーンガイドカテーテル200から空気がパージされ、外科処置で使用するために完全に準備が整う。
【0062】
[0075]この準備されたバルーンガイドカテーテル200を医療処置に使用する方法は、本明細書に記載されるように、準備されたバルーンガイドカテーテル100の場合と実質的に同じである。