IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タレス ディアイエス フランス エスアーエスの特許一覧

特許7524325セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書
<>
  • 特許-セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書 図1
  • 特許-セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書 図2
  • 特許-セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書 図3
  • 特許-セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書 図4
  • 特許-セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書 図5
  • 特許-セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】セキュリティ文書をセキュアにするための方法及びこの方法により得られるセキュリティ文書
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/24 20140101AFI20240722BHJP
   B42C 9/02 20060101ALI20240722BHJP
   B42B 2/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B42D25/24
B42C9/02
B42B2/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022535611
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2020084622
(87)【国際公開番号】W WO2021115949
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】19306615.6
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522230381
【氏名又は名称】タレス ディアイエス フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】タル シルヤネン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ラッパライネン
(72)【発明者】
【氏名】ジャリ ハーリン
(72)【発明者】
【氏名】ピア ヴァルケイネン
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01220573(GB,A)
【文献】特開2003-226080(JP,A)
【文献】特開2014-210176(JP,A)
【文献】特開2003-226082(JP,A)
【文献】特開平07-246788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 2/00-9/06
B42C 1/00-99/00
B42D 1/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルデータページ(120)と、前記パーソナルデータページ(120)の外側に付着されたカバーシート(110)とを備えるセキュリティ文書(100)をセキュアにするための方法であって、
前記カバーシート(110)は、少なくとも1つの見返しシート(112)とカバー材料シート(111)と、前記見返しシート(112)と前記カバー材料シート(111)との間に挿入された背テープ(113)とを備え、前記背テープ(113)を、前記セキュリティ文書(100)の頂部と底部の全高又は高さの一部分のみに延在し、
前記セキュリティ文書(100)の製造中に、前記パーソナルデータページ(120)前記見返しシート(112)、前記背テープ(113)及び前記カバー材料シート(111)を、絡み合わせた上糸(131)及び下糸(132)によって綴じ合わせて、前記セキュリティ文書(100)に接着及び縫合するステップと、
前記上糸(131)及び前記下糸(132)の少なくとも一方が合成繊維を含み、前記上糸(131)及び前記下糸(132)の少なくとも一方を構造的に変化させるために、綴じ合わせ(130)の少なくとも一部を超音波溶着により処理するステップとを含み、
前記背テープ(113)は、超音波溶着に少なくとも前記上糸(131)又は前記下糸(132)との結合に適した合成繊維を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記綴じ合わせ(130)を超音波溶着により処理する前記ステップが、前記パーソナルデータページ(120)及び前記カバーシート(110)を綴じ合わせる前記ステップの後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記綴じ合わせ(130)を超音波溶着により処理する前記ステップが、前記パーソナルデータページ(120)及び前記カバーシート(110)を綴じ合わせる前記ステップと同時に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記上糸(131)が合成繊維を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記下糸(132)が天然繊維を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記超音波溶着が、前記綴じ合わせ(130)の上方又は下方に配置されたソノトロード(220)を備える超音波溶着装置(200)によって適用される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
-パーソナルデータページ(120)と、
-前記パーソナルデータページ(120)の外側に付着され、絡み合わせた上糸(131)及び下糸(132)からなる綴じ合わせ(130)によって、前記パーソナルデータページ(120)と綴じ合わされたカバーシート(110)とを少なくとも備えたセキュリティ文書(100)であって、
前記セキュリティ文書(100)の頂部と底部の全高又は高さの一部分のみに延在する背テープ(113)を備え、前記綴じ合わせ(130)の少なくとも一部が前記背テープ(113)に結合され、
前記綴じ合わせ(130)の少なくとも一部が、請求項1から6のいずれかに記載の方法によってセキュアにされることを特徴とするセキュリティ文書。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ文書が綴じられている場合にセキュリティ文書の綴じ糸へのアクセスを防止するためにセキュリティ文書をセキュアにするための方法に関する。本発明は、この方法によって得られたパスポート冊子などのセキュリティ文書にも関する。
【0002】
本発明は、セキュリティ分野、特にそれぞれがいくつかのページを含むパスポート冊子のような冊子の形態を有するセキュリティ文書の分野に応用される。
【背景技術】
【0003】
パスポート冊子などのセキュリティ文書は、国によりその国民が国外を旅行することを可能にするために発行される文書である。これらのセキュリティ文書、特にパスポートは、一般的にはその所持者が国の間を自由に旅行することを可能にするために、可能な限りセキュアに一緒に製本される様々な要素から構成される。それらは、身元が実在し、文書を所持する人物が、旅行又は入国する権利を正しく与えられているという積極的保証を提供する。文書の劣った品質に基づく保証の欠如は、旅行者に不便を生じさせるものである。なぜなら、受入国は文書を信用せず、より多くの調べを行う、又は査証規制を所持者に課すことがあるからである。
【0004】
パスポート冊子は、一般的には、パスポート所持者の認証を可能とする、-ギロシェ、ホログラム、パーソナライズされたマーキング、RFIDチップなどの-多数のセキュリティ要素を含む。全てのセキュリティ要素は、パスポート冊子の1つ又はいくつかのページに分散される。しかしながら、パスポート冊子は、とりわけ、ページ内に含まれるデータの操作による、数多くの偽造及び模造の対象である。(1つ以上の)データページへのアクセスの大部分は、主としてヒンジ技術と関連付けられる、このことが起こることを防止するためにそれらのページを取り囲むセキュリティを有する。実際、偽造者はしばしば(1つ以上の)模造ページを挿入するために(1つ以上の)データページを冊子の残りの部分から切り離そうとする。
【0005】
これらの模造及び偽造行為を防止するため、冊子の完全性が、たいていの国による要件である。完全性の維持は、例えばヒンジへの、特に冊子が綴じられている場合の綴じ糸へのアクセスを防止することからなる。実際には、図1に示すように、パスポート100は、一般的にはカバーシート110と、綴じ合わされたパーソナルデータページ120とを備え、カバーシートはページ120の外側に付着されている。カバーシート110は、一般的にはパスポート冊子の綴じ合わせを保護するために、一緒に付着された、例えば接着された1つ又はいくつかの見返しシート112と、1つのカバー材料シート111とを備える。
【0006】
図2の断面図に表されているように、パーソナルデータページ120は、一般的には査証ページのようないくつかの紙データページ121と、所持者に関するパーソナライズされたデータ、及び、OVI(登録商標)パッチ、ホログラム、ゴーストフォト、ギロシェなどのセキュリティ要素を組み込んだ1つ以上のバイオデータページ122とを備える。図2の例では、パスポート冊子100は、2つのバイオデータページ、すなわち、所持者に関する固有のデータ及び/又はセキュリティ要素が組み込まれる、PC(ポリカーボネート)データページの形式の第1のバイオデータページ122と、所持者に関する固有のデータ及び/又はセキュリティ要素-バイオデータページ122のものと同様又は異なる-が組み込まれる、紙データページの形式の第2のバイオデータページ123とを備える。第1及び第2のバイオデータページ122、123は、いずれも中央綴じ合わせ130によって紙データページ121に縫い付けられる。したがって、縫い合わせ線とも呼ばれる綴じ合わせ130は、全てのページの組み付け及びパスポート冊子の開閉を可能にする中央ヒンジを構成する。
【0007】
セキュリティ文書の分野では、文書を容易に解体することができないこと、又はいかなる解体の試みも目に見えるようにすることを保証することによって、文書の不正改竄の範囲を減少させることが望ましい。実際、偽造者は、パスポート冊子の中央ページから綴じ合わせを解き、糸を無傷の状態に保ち、上記パスポート冊子のページを変更した後に再利用することになる。具体的には、セキュリティ文書の複数のページを互いに結び合わせる綴じ合わせが、同じ材料(合成繊維又は天然繊維)の、又は異なる材料(例えば一方の糸が合成繊維製であり、他方の糸が天然繊維製である)の上糸及び下糸によって形成される場合、不正改造の証拠を残さずに綴じ合わせを解くことができることが知られている。縫い合わせ線へのアクセスを防止するいくつかの方法がパスポート冊子において実施されている。
【0008】
既知の方法のうちの1つは、使用される糸の繊維の間に分散させたプラスチック粒子を綴じ合わせに含めること、及びパーソナルデータページの外面を可溶性熱可塑性材料でコーティングすることからなる。一旦綴じ合わされると、アセンブリはクランプされ、糸及びページをその交差する位置で融合させる溶着電極で加熱される。
【0009】
別の既知の方法は、綴じ合わせの頂部にUV硬化接着剤を加えることからなる。使用される接着剤及び綴じ合わせのタイプに応じて、UV接着剤は糸をわずかに紙、背テープ及びそれ自体の上に結合する。また、糸の粘着性が高まる。したがって、糸は除去するのがより面倒であり、解こうとする場合に、糸は切れたり擦り切れたりし、不正改造が目に見える。UV接着には、新しい化学成分の追加が必要になること(HSE問題)及びセキュリティ用紙の汚れを引き起こすことがあるという既知の欠点がある。UV接着剤及びカバー接着剤が完全に互換性があるわけではない場合、UV接着剤の追加は冊子の背をテント状にさせる。
【0010】
綴じ合わせを封印する別の既知の方法は、熱可塑性(ポリプロピレン)成分を含む糸を使用することである。この方法では、綴じ合わせは糸の一部が溶融するように加熱される。
【0011】
かかるセキュリティ文書の不正改竄、又は偽造品の製造をさらに防ぐために、セキュリティ文書は、典型的には細線印刷、凹版印刷、透かし、ホログラムやKinegrams(登録商標)などの光学的に可変な要素、ミシン目、レーザマーキング、並びに変更及び/又は再生が困難なその他の特徴などの複数のセキュリティ要素も備える。
【0012】
しかしながら、潜在的な偽造者に利用可能な技術が進歩するにつれて、新しく優れたセキュリティ機能を提供する絶え間ない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0013】
以上に明記した偽造者が綴じ合わせの糸を解く問題を受けて、出願人は、糸を構造的に変化させることによってパスポート冊子及びその他のセキュリティ文書をセキュアにするための方法を提案している。
【0014】
第1の態様によれば、本発明は、少なくともパーソナルデータページと、パーソナルデータページの外側に配置されたカバーシートとを備えるセキュリティ文書をセキュアにするための方法であって、セキュリティ文書の製造中に、パーソナルデータページ及びカバーシートを、絡み合わせた上糸及び下糸によって綴じ合わせるステップを含む方法に関する。方法は、糸を構造的に変化させるために、綴じ合わせの少なくとも一部を超音波溶着によって処理するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
このような方法は、他の利点のうちとりわけ、糸を無傷に保ちながら上記綴じ合わせを解けないようにパスポート冊子の綴じ合わせをセキュアにすることができる。
【0016】
説明中、「パスポート」又は「セキュリティ文書」という表現は、同じように冊子の形態を有し、その所持者に固有のセキュリティデータを含む任意の文書を指すことになる。
【0017】
説明中、「綴じ合わせ」、「縫い合わせ線」又は「綴じ合わせ線」という表現は、いくつかのページ同士が組み付けられる一組の縫い合わせ点として区別なく構成されることになる。以下の説明から理解されるように、綴じ合わせは、互いに絡み合わせた上糸及び下糸で形成されるステッチの連続線から構成される。
【0018】
一部の実施形態によれば、綴じ合わせを超音波溶着によって処理するステップは、パーソナルデータページ及びカバーシートを綴じ合わせるステップの後に実施される。
【0019】
一部の他の実施形態によれば、綴じ合わせを超音波溶着によって処理するステップは、パーソナルデータページ及びカバーシートを綴じ合わせるステップと同時に実施される。
【0020】
有利には、上糸及び下糸の少なくとも一方は合成繊維を含む。
【0021】
一部の実施形態によれば、少なくとも上糸は合成繊維を含む。他方の糸は合成繊維あるいは天然繊維を含む可能性がある。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、セキュリティ文書は、セキュリティ文書の頂部と底部の間で中央に延在する背テープを備え、上記背テープは、超音波溶着されるときに少なくとも上糸又は下糸の合成繊維への結合に適した合成繊維を含む。
【0023】
1つ以上の実施形態によれば、超音波溶着は、綴じ合わせの上方に配置されたソノトロードを備える超音波溶着装置によって適用される。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、
-パーソナルデータページと、
-パーソナルデータページの外側に配置され、絡み合わせた上糸及び下糸からなる綴じ合わせ(130)によって、パーソナルデータページと綴じ合わされたカバーシートとを少なくとも備えたセキュリティ文書であって、
綴じ合わせの少なくとも一部が、以上で定義された方法によってセキュアにされることを特徴とするセキュリティ文書に関する。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、セキュリティ文書は、セキュリティ文書の頂部と底部の間で中央に延在する背テープを備え、綴じ合わせの少なくとも一部が上記背テープに結合される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
いくつかの好ましい実施形態の詳細な説明が、後に続く図面を参照して本明細書において以下で述べられる。
【0027】
図1】すでに開示した従来技術によるパスポート冊子の全体的な図。
図2】すでに開示したパスポート冊子の断面図。
図3】パスポート冊子の綴じ合わせ部分における上糸及び下糸の拡大模式図。
図4】本発明に係る方法の処理工程中のパスポート冊子の模式的上面図。
図5】本発明に係る方法の処理工程中のパスポート冊子の縫い合わせ線の模式的断面図。
図6】解体する試みの後のパスポート冊子の縫い合わせ線の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この説明は、添付される特許請求の範囲の範囲を制限することが意図されない例を提供する。図は、全体的には実施例の特徴を指示し、その場合、類似の参照番号が類似の要素を指すのに使用されるということが理解及び認識される。本明細書における「一実施形態」又は「ある実施形態」又は「ある例」に対する言及は、説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本明細書において説明される少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、その特徴、構造、又は特性が本明細書において説明される全ての実施形態に存在することは暗示しない。
【0029】
本発明は、パスポート冊子の綴じ合わせを、糸を傷つけることなしには解くことができないように変更するための方法を提案している。この方法は、図1及び図2に示した又は本明細書で説明するタイプのパスポート冊子の例を含む任意のパスポート冊子で実施されることがある。この方法は、パスポート冊子の綴じ合わせ線の糸の少なくとも一方を、綴じ合わせが行われた後いつでも、例えばパスポート冊子製造の終わりに適用される超音波溶着処理によって構造的に変化させることを提案する。この方法は、綴じ合わせ又は縫い合わせ線を保護することによってパスポート冊子などのセキュリティ文書をセキュアにすることが意図されている。本明細書で説明されるパスポート冊子は、任意の形態の複数ページセキュリティ文書に適用することができる。具体的には、本発明に係る方法は、図1及び2に表されたパスポートなどのパスポート冊子で実施することができる。
【0030】
以下の説明において、かかる文書は一般的に「パスポート冊子」又は「冊子」又は「パスポート」と呼ばれるが、これが一般的には複数のページが互いに結合される任意の構造を指すことが理解されるであろう。「ページ」という用語は、一般的に紙、ポリマー又はラミネートなどのシート材料の一部を示す。ページは一般的には互いに対して移動可能であるが、これは必須ではない。セキュリティ文書が、パスポート、預金通帳、小切手帳、回数券、身分証明用冊子、又は本明細書に記載のセキュリティ概念の1つ以上を採用し得る他のタイプのセキュリティ文書を含む任意の形式の複数ページセキュリティ文書で使用され得ることが想定される。
【0031】
図2に表し、既に開示したように、本発明に係るパスポート冊子100は、カバーシート110と、一緒に付着されたパーソナルデータページ120であって、カバーシート110の内側に綴じ合わされたパーソナルデータページ120とを備える。図2の例では、カバーシート110は、1つの見返しシート112と、典型的には上記見返しシート112に付着させることにより綴じ合わされたシートに貼り付けられた1つのカバー材料シート111(表紙111a及び裏表紙111bを含む)を備える。
【0032】
パーソナルデータページ120は、冊子を形成するために綴じ合わされた、いくつかの紙データページ121とバイオデータページ122、123とを含む。バイオデータページ122、123は、例えばヒンジ140を通して紙データページ121に縫い付けられることがある。また、パーソナルデータページ120は、綴じ合わせ130によって見返しシート112に綴じられる。
【0033】
パーソナルデータページ120及び見返しシート112を組み付ける綴じ合わせ130は、例えば冊子の背の役割を果たす中央折り目150に沿って又は平行に、冊子の頂部と底部の間に延びる。パスポートの全てのページは、縫い合わせ線130に沿って又は平行に、中央折り目150に対して折り畳まれ、この折り畳みによって、位置合わせされ入れ子になった一連の折り目が作られる。
【0034】
本発明によれば、パスポート冊子100の綴じ合わせ線130は、図3に詳細に表すようにいくつかの連続ステッチ134を含む。具体的には、図3は、いくつかのステッチ134が互いに連続して配置された冊子の縫い合わせ130の一部を表している。縫い合わせ線130は、間に絡合133を有するステッチ134を作成するために一緒にインターリーブされた上糸131及び下糸132によって得られる。各絡合133は、下糸132による上糸131のロック及び上糸131による下糸132のロックを可能にする。
【0035】
一部の実施形態によれば、上糸131及び下糸132の少なくとも一方は合成繊維製であり、他方は合成繊維あるいは天然繊維製である。ある例では、両方の糸は合成繊維を含む。別の例では、上糸131のみが合成繊維を含み、下糸132は天然繊維を含む。当業者なら、上記「合成繊維製の」糸が、合成繊維のみ、又は天然繊維よりも合成繊維を多く含む限りにおいて合成及び天然繊維の混合を含み得ることを理解するであろう。同様に、当業者なら、上記「天然繊維製の」糸が、天然繊維のみ、又は合成繊維よりも天然繊維を多く含む限りにおいて合成及び天然繊維の混合を含み得ることを理解するであろう。
【0036】
図4は、本発明に係るセキュアな綴じ合わせ130の形成を示している。綴じ合わせ線130、又は上記綴じ合わせ線130の一部分は、上記綴じ合わせ130の上方に配置された超音波溶着装置200を使用してセキュアにされる。綴じ合わせ130の上方/下方に配置された超音波溶着装置200は、糸の少なくとも一方を構造的に変化させるために、組み付けられた上糸及び下糸131、132に超音波エネルギー及び圧力の両方を与える。例えば超音波処理は両方の糸が融合することを可能にする。かかる例では、超音波溶着は、組み付けによって1本のコヒーレントなラインにするために、結合される糸の融合を可能にする。別の例では、プラスチック材料の折り込み紙が冊子の内側に挿入される場合、超音波処理は紙材が糸の一方と融合されることを可能にする。冊子が背テープを備える場合、超音波処理は糸の一方が背テープと融合することを可能にする。さらに別の実施形態では、超音波処理は糸の一方が構造的に変化することを可能にする。実施形態に応じて、偽造者が糸を解こうとする場合に、糸が切れたり、冊子が損傷したりする。
【0037】
一部の実施形態に係る超音波溶着装置の模式図が図5に示されている。この超音波溶着装置200は、以下のものを備える:
-糸131及び132が配置される、アンビルなどのサポート230;
-超音波エネルギー、又は超音波を発生させる高周波音波発生器210(単に発生器と呼ばれる)。超音波は約16kHz以上の周波数の機械的振動である;及び
-超音波を発生器210から溶着すべき糸131、132に伝達するソノトロード220。
【0038】
他の実施形態では、超音波溶着装置は、サポート230が互いに接続されているソノトロード220及び発生器210から独立している手持型機器である。
【0039】
任意の既知の超音波溶着装置と同様に、溶着すべき要素(ここでは糸131及び132)は、加圧下でサポート230とソノトロード220の間に保持され、超音波信号が高周波音波発生器210によって短時間発せられる。ソノトロード220はシングルヘッドソノトロード又はマルチヘッドソノトロードである可能性がある。サポート230及びソノトロード220は、静止している、又は1つ以上の方向に合わせて移動可能である可能性がある。矢印d1により表された第1の方向は、ソノトロードに対する糸の移動を可能にする。矢印d2により表された第2の方向は、第1の方向d1と異なる、例えば上記第1の方向に対して垂直である。第2の方向に合わせた移動は、溶着中の糸の圧迫及び溶着後の糸の解放を可能にする。図5の例では、サポート230は第1の方向d1に合わせて選択的に移動可能であり、糸がソノトロード220に対して第2の方向d2に合わせて移動することを可能にし、ソノトロード200に対する糸の圧迫を可能にする。
【0040】
以上で開示したように、溶着に必要な熱が、発生器210により提供されソノトロード220により供給される超音波エネルギーによって糸131、132に与えられる。溶着に必要なエネルギーは、溶着すべき材料の特性に依存する。機器の周波数が固定であることを考慮して、適切な溶着パラメータが、振幅、時間、及び圧力を最適化することによって求められる。例えば、超音波溶着装置は、40kHzで70~99%の振幅範囲を有する超音波エネルギーを発生させることがある。
【0041】
以上で説明したように、糸131、132は、不正改造が視覚的に表示されることなく解体できないように超音波溶着プロセスによってしっかりと結合される。超音波溶着処理後に得られる綴じ合わせ線130の一例が図6に表されている。具体的には、図6は、綴じ合わせ線が適切なパスポート冊子のように均一である綴じ合わせ線130の第1の部分130aを示している。図6は、第1の部分130aと反対に、解体の試みを受けた綴じ合わせ線130の第2の部分130bを示している。実際、解く試みの後、本発明の方法により得られた綴じ合わせ線130は、どの保安職員にも見え、明らかな違反の試みを構成するいくつかの切断及び/又はほころびを含む。
【0042】
一部の実施形態によれば、カバーシート110は、見返しシート112とカバー材料シート111の間に挿入された背テープ113を備える。冊子の頂部と底部の間に延在する背テープ113は、一般的に冊子に接着及び縫合される。背テープ113は、冊子の全高に又は冊子の高さの一部分にのみ延在することができる。一実施形態によれば、背テープ113は、超音波溶着により合成糸(例えば上糸131)と結合するのに適した合成繊維を含む。したがって、かかる実施形態では、上糸131及び/又は下糸132は、綴じ合わせ線130を切断するいかなる試みもさらにいっそう困難にするように、超音波によって背テープ113と溶着される。
【0043】
したがって、以上で開示した方法は、糸や紙に複雑な目に見える変化を伴わずに綴じ合わせの不正改造を明らかにする。方法は、不正改造後の糸の再使用を妨げる。
【0044】
以上で開示した超音波溶着による処理は、パスポート冊子の綴じ合わせの不正改造を防ぐだけではなく、化学成分の追加使用、接着剤の追加適用、ページの他の部分の保護などを必要としないクリーンな方法であるという利点も有する。超音波溶着装置の使用の他に、パスポート冊子の伝統的な構成要素しか必要としない。したがって、この方法は費用効率の高い生態学的解決策である。
【0045】
さらに、超音波溶着はセキュリティ用紙の化学増感を妨げない高速な産業用の頑健なプロセスである。また、通常の製造工程の変更が必要なく、縫製プロセスの後に超音波溶着による追加の処理工程しか必要としない。
【0046】
以上の説明において、たとえ超音波処理が縫製プロセスの後に実施されるものとして記載されているとしても、超音波処理を縫製プロセスと同時に実施できることも理解されるであろう。かかる実施形態では、超音波溶着装置及び冊子をセキュアにするための方法は、超音波溶着作業が縫製作業と一緒に実行される点を除き、先に説明した装置及び方法と同一である。
【0047】
いくつかの選択された実施形態のみが、本発明を例示するために選ばれているが、様々な変更及び修正が、本明細書において添付される特許請求の範囲において定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく為され得ることが、本開示から当業者には明白であろう。一実施形態の構造及び機能は、別の実施形態において採用することもできる。さらに、全ての利点が同時に特定の実施形態において存在することは必要でない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6