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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】複数領域電気光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20240722BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20240722BHJP
【FI】
G02F1/155
G02F1/15 501
G02F1/15 502
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022562570
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021027653
(87)【国際公開番号】W WO2021211951
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/011,535
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500115826
【氏名又は名称】ジェンテックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ゼンガー ネイヴァー マリオ エフ
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン ジョージ エイ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ジョン エス
(72)【発明者】
【氏名】リン ユピン
(72)【発明者】
【氏名】ゴブロッゲ エリック エイ
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512348(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02426552(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0018242(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110989260(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108822297(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202588(US,A1)
【文献】特開2018-010106(JP,A)
【文献】特表2015-527614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1の領域及び第2の領域を有する電気光学素子であって、前記電気光学素子は、
第1の表面及び第2の表面を有する第1の基板と、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の基板であって、前記第1の基板と離間した関係に配設されている、第2の基板と、
前記第2の表面と関連付けられた第1の電極と、
前記第3の表面と関連付けられた第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電位を制御するためのコントローラと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設されている電気光学媒体であって、少なくとも部分的には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電位への曝露に基づいて、前記電気光学媒体が低透過率である状態の実質的に活性化状態と、前記電気光学媒体が高透過率である状態の実質的に非活性化状態との間で動作可能である、電気光学媒体と、を備え、
前記電気光学媒体は、
前記電位が第1の大きさ及び第1の極性であるときに、前記第1の領域で実質的に活性化され、前記第2の領域で実質的に非活性化され、
前記電位が前記第1の大きさ及び第2の極性であり、前記第2の極性が前記第1の極性と反対であるときに、前記第1の領域及び前記第2の領域で実質的に活性化されるように、前記コントローラが前記電位を変化させ
前記第2の電極は、前記第1の領域及び前記第2の領域のうちの1つ内で表面が改質され、
前記第2の電極は、有機化合物を用いた処理を介して表面改質されている、装置。
【請求項2】
前記第1の電極及び前記第2の電極の各々の前記第1の領域及び前記第2の領域は、それぞれ連続的であり、かつ互いの間で不断である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極の各々についての前記第1の領域及び前記第2の領域は、それぞれ互いに電気的に連通している、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
装置であって、
第1の領域及び第2の領域を有する電気光学素子であって、前記電気光学素子は、
第1の表面及び第2の表面を有する第1の基板と、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の基板であって、前記第1の基板と離間した関係に配設されている、第2の基板と、
前記第2の表面と関連付けられた第1の電極と、
前記第3の表面と関連付けられた第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電位を制御するためのコントローラと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設されている電気光学媒体であって、少なくとも部分的には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電位への曝露に基づいて、前記電気光学媒体が低透過率である状態の実質的に活性化状態と、前記電気光学媒体が高透過率である状態の実質的に非活性化状態との間で動作可能である、電気光学媒体と、を備え、
前記電気光学媒体は、
前記電位が第1の大きさ及び第1の極性であるときに、前記第1の領域で実質的に活性化され、前記第2の領域で実質的に非活性化され、
前記電位が前記第1の大きさ及び第2の極性であり、前記第2の極性が前記第1の極性と反対であるときに、前記第1の領域及び前記第2の領域で実質的に活性化されるように、前記コントローラが前記電位を変化させ、
前記第2の電極は、前記第1の領域及び前記第2の領域において異なる酸化状態を有する、装置。
【請求項5】
装置であって、
第1の領域及び第2の領域を有する電気光学素子であって、前記電気光学素子は、
第1の表面及び第2の表面を有する第1の基板と、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の基板であって、前記第1の基板と離間した関係に配設されている、第2の基板と、
前記第2の表面と関連付けられた第1の電極と、
前記第3の表面と関連付けられた第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電位を制御するためのコントローラと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設されている電気光学媒体であって、少なくとも部分的には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電位への曝露に基づいて、前記電気光学媒体が低透過率である状態の実質的に活性化状態と、前記電気光学媒体が高透過率である状態の実質的に非活性化状態との間で動作可能である、電気光学媒体と、を備え、
前記電気光学媒体は、
前記電位が第1の大きさ及び第1の極性であるときに、前記第1の領域で実質的に活性化され、前記第2の領域で実質的に非活性化され、
前記電位が前記第1の大きさ及び第2の極性であり、前記第2の極性が前記第1の極性と反対であるときに、前記第1の領域及び前記第2の領域で実質的に活性化されるように、前記コントローラが前記電位を変化させ、
前記第2の電極は、前記第1の領域及び前記第2の領域において異なる金属酸化物を含む、装置。
【請求項6】
装置であって、
第1の領域及び第2の領域を有する電気光学素子であって、前記電気光学素子は、
第1の表面及び第2の表面を有する第1の基板と、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の基板であって、前記第1の基板と離間した関係に配設されている、第2の基板と、
前記第2の表面と関連付けられた第1の電極と、
前記第3の表面と関連付けられた第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電位を制御するためのコントローラと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設されている電気光学媒体であって、少なくとも部分的には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電位への曝露に基づいて、前記電気光学媒体が低透過率である状態の実質的に活性化状態と、前記電気光学媒体が高透過率である状態の実質的に非活性化状態との間で動作可能である、電気光学媒体と、を備え、
前記電気光学媒体は、
前記電位が第1の大きさ及び第1の極性であるときに、前記第1の領域で実質的に活性化され、前記第2の領域で実質的に非活性化され、
前記電位が前記第1の大きさ及び第2の極性であり、前記第2の極性が前記第1の極性と反対であるときに、前記第1の領域及び前記第2の領域で実質的に活性化されるように、前記コントローラが前記電位を変化させ、
層は、前記第1の領域及び前記第2の領域のうちの1つで前記第2の電極に配設され
前記層は、前記第2の電極から前記電気光学媒体への電子伝達を実質的に変更する、装置。
【請求項7】
前記層は、電子供与体元素でドープされたn型半導体層である、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記層は、電子受容体元素でドープされたp型半導体層である、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記層は、前記第2の領域に配設され、前記第2の領域が、前記第1の大きさの電位でダイオードのような挙動を有する、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記表面改質は、勾配で前記第2の電極に適用される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記勾配は、前記第2の電極にわたって実質的により均一な電位が達成され得るように、前記第2の電極にわたって抵抗と相関する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
装置であって、
第1の領域及び第2の領域を有する電気光学素子であって、前記電気光学素子は、
第1の表面及び第2の表面を有する第1の基板と、
第3の表面及び第4の表面を有する第2の基板であって、前記第1の基板と離間した関係に配設されている、第2の基板と、
前記第2の表面と関連付けられた第1の電極と、
前記第3の表面と関連付けられた第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電位を制御するためのコントローラと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設されている電気光学媒体であって、少なくとも部分的には、前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される前記電位への曝露に基づいて、前記電気光学媒体が低透過率である状態の実質的に活性化状態と、前記電気光学媒体が高透過率である状態の実質的に非活性化状態との間で動作可能である、電気光学媒体と、を備え、
前記電気光学媒体は、
前記電位が第1の大きさ及び第1の極性であるときに、前記第1の領域で実質的に活性化され、前記第2の領域で実質的に非活性化され、
前記電位が前記第1の大きさ及び第2の極性であり、前記第2の極性が前記第1の極性と反対であるときに、前記第1の領域及び前記第2の領域で実質的に活性化されるように、前記コントローラが前記電位を変化させ、
前記第1の領域及び前記第2の領域のうちの一方内において、前記第1の電極及び前記第2の電極は、異なる組成物を有する、装置。
【請求項13】
前記第1の領域及び前記第2の領域のうちの他方内において、前記第1の電極及び前記第2の電極は、実質的に同じ組成物を有する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
センサが前記第2の領域を介して光を受信するように前記第2の領域と実質的に光学的に整列するセンサであって、撮像装置又は周辺光センサのうちの1つであるセンサを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラは、少なくとも部分的に、前記センサが活性化状態に入ることに基づいて前記第1の電極と前記第2の電極との間に前記第1の極性及び前記第1の大きさの前記電位を印加させ、前記第2の領域が高透過率を有する前記非活性化状態になる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記センサは、前記電気光学素子のユーザとは反対側に配置され、前記ユーザの1つ以上の画像を捕捉するように動作可能な撮像装置であり、
前記コントローラは、前記1つ以上の画像を分析し、前記ユーザの生体認証分析を行うように構成され、
前記コントローラは、少なくとも第2の領域において前記電気光学媒体を非活性化状態にし、前記ユーザは、1つ以上の目の反射が前記第2の領域において前記ユーザによって観察されるように位置付けることによって、前記ユーザの目の1つ以上を前記撮像装置と実質的に光学的に整列させ得るように、前記第2の領域が、実質的に反射性である、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の極性及び前記第1の大きさの前記電位は、少なくとも部分的に、周囲照明条件に基づいて印加される、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2020年4月17日に出願の「Multi-Region Electro-Optic Element」と題する米国仮特許出願第63/011,535号の優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して電気光学素子に関し、より具体的には、複数の領域を有する電気光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
電気光学素子はかなり長い間よく知られており、バックミラー組立体及びウィンドウにおいてますます一般的になってきている。しかし、これらの電気光学素子は有用であることが証明されているが、完璧ではない。例えば、現在の電気光学素子は、典型的には、単一の均一な可変透過率領域を有する。したがって、単一の領域を有する電気光学素子は、特に電気光学素子が活性化状態にあるときに、センサに利用可能な光の量を減少させることにより、その背後に配設されるセンサの性能を減少させてしまう可能性がある。
【0004】
追加的に、いくつかのデバイスは、複数の電気光学素子を有し得る。これらの電気光学素子は、複数の領域を提供するために互いに隣接して配設され得る。しかしながら、これらの電気光学素子は、各領域を独立して動作させるために、シール又は他のバリアによって分離されなければならない。しかし、これらのシールとバリアは、美感に富まない外観を生み出す。したがって、改善された電気光学素子に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示によれば、シール又は他のバリアを使用しない、単一の均一な領域のみを有する電気光学素子に関連する欠点及び問題は、実質的に低減又は排除される。
【0006】
本開示の一態様によれば、装置が開示される。装置は、電気光学素子を備え得る。電気光学素子は、第1の領域及び第2の領域を有し得る。更に、電気光学素子は、第1の基板と、第2の基板と、第1の電極と、第2の電極と、電気光学媒体とを備え得る。第1の基板は、第1の表面及び第2の表面を有し得る。同様に、第2の基板は、第3の表面及び第4の表面を有し得る。更に、第2の基板は、第1の基板と離間した関係で配設され得る。第1の電極は、第2の表面と関連付けられ得る。同様に、第2の電極は、第3の表面と関連付けられ得る。電気光学媒体は、第1の電極と第2の電極との間に配設され得る。追加的に、電気光学媒体は、少なくとも部分的に、電位への曝露に基づいて、実質的に活性化状態と実質的に非活性化状態との間で動作可能であり得る。いくつかの実施形態では、電気光学媒体は、第1の電極と第2の電極との間の電位が、第1の大きさ及び第1の極性であるときに、第1の領域で実質的に活性化され得、第2の領域で実質的に非活性化であり得る。逆に、電位が第1の大きさ及び第2の極性であるとき、電気光学媒体は、第1の領域及び第2の領域で実質的に活性化され得る。第2の極性は、第1の極性と反対であり得る。いくつかの実施形態では、第1の電極及び第2の電極の各々の第1の領域及び第2の領域は、それぞれ連続的であり、かつ互いの間で不断であり得る。したがって、第1の電極及び第2の電極の各々についての第1の領域及び第2の領域は、それぞれ互いに電気的に通信する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の電極及び/又は第2の電極は、第1の領域及び第2の領域において異なる酸化状態を有し得る。同様に、第1の電極及び/又は第2の電極は、第1の領域及び第2の領域に異なる金属酸化物を含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の電極及び/又は第2の電極は、第1の領域及び第2の領域のうちの1つ内で表面が改質され得る。いくつかのこのような実施形態では、表面改質は、有機化合物で処理され得る。他のこのような実施形態では、表面改質は、電極上に配設された層の適用であり得る。
【0009】
層が第1の領域及び第2の領域のうちの1つの電極に配設されている実施形態では、層は、第2の電極から電気光学媒体への電子伝達を実質的に変化させ得る。いくつかの実施形態では、層は、電子受容体元素でドープされたn型半導体層であり得る。他の実施形態では、層は、電子受容体元素でドープされたp型半導体層であり得る。いくつかの実施形態では、層は、第2の領域に配設されてもよく、第2の領域はそれに応じて、第1の大きさの電位でダイオードのような挙動を有し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、表面改質は、勾配で第2の電極に適用され得る。この適用は、表面改質の厚さでの変化、又はカバレッジ密度、又はカバレッジ厚さでの変化であり得る。いくつかのこのような実施形態では、勾配は、実質的により均一な電位が、第2の電極にわたって達成され得るように、第2の電極にわたってシート抵抗に対応するか、又は関連付けし得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の電極及び第2の電極は、第1の領域及び第2の領域のうちの一方内に異なる組成物を有し得る。いくつかのこのような実施形態では、第1の電極及び第2の電極は、第1の領域及び第2の領域のうちの他方内に実質的に同じ組成物を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、装置は、第2の領域と実質的に光学的に整列したセンサを更に備え得る。いくつかのこのような実施形態では、第1の極性及び第1の大きさの電位が、少なくとも部分的に、センサが活性化状態に入ることに基づいて印加され得る。他のこのような実施形態では、第1の極性及び第1の大きさの電位が、少なくとも部分的に、周囲照明条件に基づいて印加され得る。更に他のこのような実施形態では、センサが、ユーザの1つ以上の画像を捕捉するように動作可能な撮像装置であり得る。更に、コントローラは、1つ以上の画像を分析し、かつユーザの生体認証分析を行うように構成され得る。追加的に、1つ以上の目の反射が第2の領域においてユーザによって観察されるように、位置付けることによって、ユーザが、ユーザの目の1つ以上を撮像装置と実質的に光学的に整列させ得るように、第2の領域が、実質的に反射性であり得る。
【0013】
本発明の別の態様によれば、装置が開示されている。いくつかの実施形態では、装置はバックミラー組立体であり得る。装置は、電気光学素子を備え得る。電気光学素子は、第1の基板と、第2の基板と、第1の電極と、第2の電極と、電気光学媒体を備え得る。第1の基板は、第1の表面及び第2の表面を有し得る。第2の基板は、第3の表面及び第4の表面を有し得る。第2の基板は、第1の基板と離間した関係で配設され得る。第1の電極は、第2の表面と関連付けられ得る。同様に、第2の電極は、第3の表面と関連付けられ得る。更に、第2の電極は、第1の領域及び第2の領域を有し得る。電気光学媒体は、第1の電極と第2の電極との間に配設され得る。追加的に、電気光学媒体は、少なくとも部分的に、電位への曝露に基づいて、実質的に活性化状態と実質的に非活性化状態との間で動作可能であり得る。更に、電極は、電気光学媒体が第1の領域で実質的に活性化され、第2の領域で実質的に非活性化される構成で、電気光学媒体を活性化するように動作可能であり得る。いくつかの実施形態では、第2の領域は表面処理されている。表面処理は、SiO2などの非導電性材料を用い得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、装置は、センサを含む。いくつかのこのような実施形態では、センサは撮像装置であり得る。センサは、第2の領域と光学的に位置合わせし得る。更に、第2の領域は、センサの視野に実質的に限定され得る。
【0015】
本開示のいくつかの態様は、1つの領域では活性化されるが、別の領域では非活性化のままであるように動作可能な電気光学素子の利点を有する。したがって、電気光学素子は、複数領域デバイスであり得る。更に、いくつかの実施形態では、電気光学素子は、領域を分割するためのシール、バリア、又はアブレーションラインを必要とすることなく、複数領域デバイスの利点を有し得る。したがって、電気光学素子は、より美感に富む外観を提供し得る。更に、いくつかの実施形態では、電気光学素子は、第1の領域及び第2の領域の両方が活性化状態及び/又は非活性化状態であるときに、第1の領域と第2の領域との間の総光透過率及び/又は色透過率の差が約20、10、又は5%以下であり得るという点で、より美観に富む外観を更に提供し得る。
【0016】
本開示の他の態様は、電気光学素子のある領域を非活性化のままにしておいて、他の領域を活性化されている動作状態にするというように、電気光学素子を選択的に活性化することを可能にするという利点を有し得る。ある領域を非活性化のままにしておくことは、用途に応じて利点を有し得る。例えば、ある領域がセンサと光学的に整列している実施形態では、光学的に整列された領域を非活性化しておくと、より優れたセンサ性能という利点を有し得る。いくつかの実施形態では、活性化された電気光学素子は、そこを通過する光透過率を減少させ得る。低減された透過率は、グレアを低減するのに有利であり得るが、センサの感知フィールドにおける低減された透過率は、利用可能な光の量を低減することによりセンサの感知に有害であり得る。したがって、電気光学素子は、他の領域で低減された透過率を有する電気光学素子に関連する利益を保持しながら、センサの感知フィールド(すなわち、視野)に対応するある領域で高レベルの透過率を選択的に維持することの利点を有し得る。別の実施例では、ある領域がセンサと対象との間に光学的に整列している実施形態において、対象が生体認証分析を実行するための適切な位置決め相対センサを良好に見つけることができるように、ある領域は、活性化フィードバックの対象を提供するために配設され得る。
【0017】
本開示のこれら及びその他の態様、目的、及び特徴は、当業者が以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を調べることによって理解及び認識される。本明細書に開示するそれぞれの実施形態特徴は、他の実施形態の特徴とともに、又はその代わりとして使用されることも理解されるであろう。
【0018】
図面に以下が示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a】電気光学素子の概略図である。
図1b】電気光学素子の断面概略図である。
図1c】表面改質を伴う電極を有する電気光学素子の断面概略図である。
図2】電気光学素子を備えるシステムの断面概略図である。
図3a】センサと対象との間の改良された位置合わせを提供するように構成された電気光学素子の概略図である。
図3b】センサと対象との間の改良された位置合わせを提供するように構成された電気光学素子の概略図である。
図4】ウィンドウ組立体の一部としての電気光学素子の概略図である。
図5a】電位の平衡化又は適用前の電気光学素子の実施形態の半導体バンドモデルの概略図である。
図5b】開回路付きの電気光学素子の実施形態の半導体バンドモデルの概略図である。
図5c】第1の極性の電位を有する電気光学素子の実施形態の半導体バンドモデルの概略図である。
図5d】第2の極性の電位を有する電気光学素子の実施形態の半導体バンドモデルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書の説明の目的のために、添付の図面に例示され、本開示に記載される特定のデバイス及びプロセスは、添付の特許請求の範囲に規定される発明の概念の単なる例示的な実施形態である。よって、特許請求の範囲でそうでないことが明示的に述べられているのでない限り、本明細書で開示される実施形態に関連する具体的な特性は、限定的ではない。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態は、改良型電気光学素子を対象とする。これらの電気光学素子は、複数の領域を有してもよく、独立した領域活性化を提供するように動作可能であり得る。更に、いくつかのこのような実施形態は、センサと光学的に整列した領域を有してもよい。したがって、電気光学素子のいくつかの実施形態は、低下されたセンサ性能及び美感に富まない複数の領域の外観の問題に対処し得る。
【0022】
図1a~bは、電気光学素子100の実施形態を例示する。電気光学素子100は、第1の領域101及び第2の領域102を有する。いくつかの実施形態では、第1の領域101及び/又は第2の領域102は不連続であってもよい。したがって、第1の領域101及び/又は第2の領域102は、複数の未接続領域を備え得る。更に、電気光学素子100は、第1の基板110と、第2の基板120と、第1の電極130と、第2の電極140と、シール150と、チャンバ160と、及び/又は電気光学媒体170とを備え得る。いくつかの実施形態では、電気光学素子100は、移動体用バックミラーデバイスであり得る。他の実施形態では、電気光学素子100は、ウィンドウであり得る。いくつかのこのような実施形態では、ウィンドウは、航空機又は自動車などの移動体用であり得る。
【0023】
第1の基板110は、第1の表面111及び第2の表面112を備える。いくつかの実施形態では、第2の表面112は、第1の表面111に対する第1の方向105に配設され得る。第1の方向105は、第1の表面111に実質的に直交する方向であり得る。更に、第1の基板110は、電磁スペクトルの可視領域において実質的に透明であり得る。例えば、第1の基板110は、AGCから市販されているFalconなどのアルミノシリケートガラス、ボロアルミノケイ酸(「BAS」)ガラス、Professional Plasticsから市販されており、ハードコーティングされている場合があるProLens(登録商標)ポリカーボネートなどのポリカーボネート、制限されるものではないがKuraray(登録商標)から使用可能なSpallshield(登録商標)CPETなどのポリエチレンテレフタレート、超透明ソーダライムガラスなどのソーダライムガラス、フロートガラス、ポリエチレン(例えば、低密度及び/又は高密度)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、アクリルポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA))、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド(例えば、シクロ脂肪族ジアミンドデカン二酸ポリマー(すなわち、Trogamid(登録商標)CX7323))、エポキシ、環状オレフィンポリマー(COP)(例えば、Zeonor 1420R)、環状オレフィンコポリマー(COC)(例えば、Topas 6013S-04又はMitsui Apel)、ポリメチルペンテン、セルロースエステル系プラスチック(例えば、セルローストリアセテート)、透明フルオロポリマー、ポリアクリロニトリルなどの天然及び合成高分子の樹脂及びプラスチック、並びに/又はそれらの組み合わせ、のうちのいずれかなどのいくつかの材料から製造されてもよい。例示のみを目的として、特定の基板材料が開示されているが、多数の他の基板材料も同様に使用され得る。
【0024】
同様に、第2の基板120は、第3の表面123及び第4の表面124を含む。更に、第2の基板120は、第1の基板110に対して実質的に平行かつ離間した関係で配設されている。いくつかの実施形態では、第2の基板120は、第1の基板110に対する第1の方向105に配設され得る。追加的に、第4の表面124は、第3の表面123に対する第1の方向105に配設され得る。同様に、第3の表面123は、第4の表面124に対する第2の方向106に配設され得る。第2の方向106は、第1の方向105と反対の方向であり得る。いくつかの実施形態では、第2の基板120は、電磁スペクトルの可視領域において実質的に透明であり得る。したがって、第2の基板120は、第1の基板110に適した同一材料から作製されてもよい。別の実施形態では、第2の基板120は、可視領域において実質的に不透明であってもよい。いくつかのこのような実施形態では、第2の基板120は、反射性及び/又は半透過性であってもよく、又は電磁スペクトルの可視領域において反射性及び/又は半透過性である層を含んでもよい。
【0025】
第1の電極130は、第2の表面112と関連付けられ得る。更に、第1の電極130は、第5の表面135及び第6の表面136を含む。第6の表面136は、第5の表面135に対する第1の方向105に配設され得る。したがって、第5の表面135は、第2の表面136と関連付けられ得る。追加的に、第1の電極130は、導電性材料である。導電性材料は、可視領域において実質的に透明であってもよく、チャンバ160に含まれる材料からの腐食に対して概して耐性であってもよい。例えば、導電性材料は、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(AZO)、又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電性酸化物(TCO)であってもよい。
【0026】
同様に、第2の電極140は、第3の表面123と関連付けられ得る。更に、第2の電極140は、第7の表面147及び第8の表面148を含む。第7の表面147は、第8の表面148に対する第2の方向106に配設され得る。このように、第8の表面148は、第3の表面123と関連付けられてもよい。追加的に、第2の電極140は、導電性材料であり得る。したがって、第2の電極は、第1の電極130と同じ材料から構築されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の電極140は、可視領域において実質的に透明であり得る。他の実施形態では、第2の電極140は、実質的に反射性であってもよく、及び/又は可視領域において実質的に反射層を含んでもよい。いくつかのこのような実施形態では、第2の電極140は、実質的に半透過性であってもよく、及び/又は可視領域において実質的に半透過性層を含んでもよい。
【0027】
追加的に、第1の電極130及び/又は第2の電極140はそれぞれ、電気光学素子100の第1の領域101及び第2の領域102によって分割されてもよい。しかしながら、第1の領域101及び第2の領域102に分割されているにもかかわらず、第1の電極130及び/又は第2の電極140の各々は、連続的でも、これらの領域間で不断であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の電極130及び/又は第2の電極140のこれらの領域は、シール、アブレーションライン、又は他の方法によって分離されない。したがって、第1の電極130及び/又は第2の電極140の領域は、互いに電気的に連通してもよい。しかしながら、第1の電極130及び/又は第2の電極140の各々は、第1の領域101及び第2の領域102で個々に異なってもよい。追加的に、単一領域内では、いくつかの実施形態において、第1の電極130及び第2の電極140は、互いに対して異なる組成物を有してもよい。更に、いくつかのこのような実施形態では、他の領域において、第1の電極130及び第2の電極140は、実質的に互いに対して同一又は類似の組成物を有してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、個々の電極に関して、第1の領域101及び第2の領域102での第1の電極130及び/又は第2の電極140は、異なる酸化状態をそれぞれ有してもよく、及び/又は異なる金属酸化物を含んでもよい。例えば、それぞれの電極の導電材料は、第1の領域101でのITO、及び第2の領域102でのIZOであり得る。いくつかのこのような実施形態では、それぞれの電極は、第1の領域101及び第2の領域102のうちの1つの領域内の他の電極と同一又は実質的に類似した構造を有してもよく、第1の領域101及び第2の領域102の他方の領域内の他の電極と実質的に異なる構造を有してもよい。それ自体又は他の電極とは異なる電極領域の代替材料の例示的なリストには、NiO、IGZO(インジウムガリウム亜鉛酸化物)、ZnOn、ZnIN、及びCuI(ヨウ化銅)が含まれる。
【0029】
追加的又は代替的に、図1cに示すように、個々の電極に関して、第1の領域101及び第2の領域102は、異なる表面改質を有し得る。表面改質は、表面改質が、それぞれの電極から電気光学媒体170への電子伝達を増加又は減少するように、層180をある表面に配設することによって、又は電気光学媒体170の近隣の第1の電極130及び/若しくは第2の電極140の表面を処理することによって達成され得る。電子伝達の増加又は減少は、電子伝達親和性の変化として特徴付けられ得る。したがって、第6の表面136及び/又は第7の表面147は、表面改質され得る。いくつかの実施形態では、層180又は表面改質の処理は、有機化合物であってもよい。他の実施形態では、表面改質は、導電材料が異なるTCOである、それぞれの電極の導電材料上の層180として配設されるTCOであり得る。例えば、ITOの層は、それぞれの電極の導電材料として機能し、層180又はIZOは、隣接するチャンバ160上に配設され得る。更に、表面改質は、例えば、アルミニウムドープZnO、本質的にドープされたZnO、ZnON(酸化窒化亜鉛Zinc oxinitride)、ZrO2、又はZnSなどの半導体層であり得る。追加的に、半導体層は、p型又はn型であってもよい。N型半導体は、電子供与体元素でドープされる。これにより、Fermiレベルが材料の導電バンドに近づく場合がある。反対に、p型半導体は、電子受容体元素でドープされる。これにより、Fermiレベルが材料の導電バンドから遠くなる場合がある。他の実施形態では、電極の第1の領域101又は第2の領域102が、表面上に層180を配設するか、又は表面に処置を施すことによって、電極パシファイアで表面改質され得る。電極パシファイアは、第1の電極130及び/又は第2の電極140が、電極パシファイアの領域でそれぞれの電極と電気光学媒体170との間の電子伝達を不能にさせる材料であってもよい。電子伝達の動作不能性は、電子伝達親和性がゼロの結果として生じ得る。したがって、電極パシファイアは、第1の電極130及び/又は第2の電極140を動作不能にして、それぞれの領域で電気光学媒体170を活性化させ得る。電極パシファイアは、例えば、SiO2で処理してもよい。
【0030】
いくつかのこのような実施形態では、表面改質は、それぞれの領域内の電極についての材料対を達成し得る。このような材料対は、ダイオード効果を提供し得る。例示的な材料対としては、NiO/ZnO、NiO/ITO、IGZO/ITO、ZnON/ITO、及びCuI/ZnOが挙げられる。したがって、p/n(バイポーラ)又はn/n+(ホモポーラ)半導体型の構造の変形が好適であり得る。更なる例として、ITOは、類似又はより高い導電性を有する他の材料で置換されてもよい。
【0031】
更に、図1cにおいて、層180は、電極の表面上に配設され、かつ電極の表面から突出するように図示されているが、いくつかの実施形態では、層180は、電極の表面と光学的に同一平面であってもよい。いくつかのこのような実施形態では、イオンエッチングは、それぞれの電極上の層180の所望の位置で利用されて、層180のための十分な余地を提供し得る。
【0032】
追加的に、表面改質は、第1の領域101及び/又は第2の領域102にわたって可変的な様式で適用されてもよい。いくつかの実施形態では、表面改質の可変アプリケーションは、勾配様式でもよい。したがって、いくつかのこのような実施形態では、層180は、第1の領域101及び/又は第2の領域102にわたって、様々な厚さを有してもよい。このような実施形態は、第1の電極130及び/又は第2の電極140にわたって固有の電位降下を補償する利益を有し得る。例えば、有限のシート抵抗を有する表面改質されていない電極を通って電気光学媒体170に流れる電流は、電気バス又は接点から更に離れた点で電極にわたって増加する抵抗を経験する。この抵抗の増加は、電気光学媒体170に印加される電位を様々な点で変化させ、電気光学媒体170で電気バスから更に離れた点に低電圧を効果的に印加し、それによって、接点又はバスを介して電極に適用される単一の全体的な電位に対して不均等な電気光学媒体170の活性化を引き起こす。したがって、第1の領域101及び/又は第2の領域102にわたって可変的な方式で表面改質を適用することは、そうでなければ電極が経験するであろう電位降下を補償し得る。このように、表面改質は、第1の領域101及び/又は第2の領域102にわたる実質的により均一な電気光学媒体170の活性化を達成するように、そうでなければ表面改質されなかった第1の電極130及び/又は第2の電極140の第1の領域101及び/又は第2の領域102にわたる電位降下に実質的に対応する方式において可変的に適用され得る。したがって、表面改質は、厚さ又は材料を変更することによって調整され得る抵抗器及び/又はダイオードを選択的に生成する効果を有し得る。
【0033】
第1の例として、ITOの第1の電極120及び第2の電極130を有する非改質電気光学素子100を基準として使用すると、このような電気光学素子100は、その中心で電気光学媒体170を活性化させることが困難であり得るが、バスバーの近くでより容易に電気光学媒体170を活性化することができ得る。したがって、電気光学媒体170は、これら2つの領域の間で異なる程度に活性化され得る。この例では、電気光学媒体170は、活性化するために約1.2Vを必要とし得るが、約1.2Vよりも高い電圧に電気光学媒体170を曝露させることは、不可逆的な損傷をもたらす可能性がある。不均一な活性化のこの効果は、有限の電極抵抗のために電気光学媒体170に印加される電圧の損失の帰結である。
【0034】
第2の実施例として、第1の実施例とは対照的に、勾配厚さでZnOの層が改質されたITOの電極表面を有する電気光学素子100を使用することによって、この効果は最小化され得、更に活性化均一性が改善され得る。ITO/ZnO改質層は、ダイオードとして機能し得、カソードとして動作するとき、わずかな抵抗を有する可能性があり、アノードとして動作するとき、抵抗はZnO層の厚さによって制御され得る。ITO上のZnOのこのような層は、ITO/ZnO電極に印加された電圧がアノードとして動作するとき、局所的に、かつ正確に、印加されたZnO層の各nmの厚さに対して約0.23Vの電気光学媒体170に対する抵抗を増加させ得る。ZnOの厚さは、バスバーから最も離れている点で最低又は存在せず、したがって、その点で更に抵抗を加えない。ZnOの厚さは、対応する表面バスバーの近傍での最大の厚さに達するまで、徐々に増加し得る。このように、ZnOの厚さは、(8.7nm)*(0.23V/nm)=2Vの電圧降下に対応する、バスバーに近接しての約8.7nmの値に、到達するまで徐々に増加し得る。そのため、表面改質の厚さは、バスバー又は接点からの距離が増加するにつれて減少し得る。この場合、電気光学素子100が、表面改質された電極をアノードとしてバスバーにおいて3.2Vで動作されるとき、ITO/ZnO電極は、バスバーの表面の近く及び遠くにわたって実質的に均一に、電気光学媒体170で1.2Vを効果的に送達することができ、過電圧が印加されることを防止し、このため電気光学媒体170のより均一で可逆的な、かつ好ましい活性化を生じさせることができる。
【0035】
シール150は、第2の表面112、第3の表面123、第1の電極130、及び第2の電極140のうちの1つ以上と組み合わせたチャンバ160を画定するために、周辺部に配設される。代替的に、シール150は、第1の基板110の周辺部と第2の基板120の周辺部に配設され、かつそれら周辺部の間に延在してもよい。更に、シール150は、電気光学媒体170がチャンバ160から不注意に漏れ出ないように、シールチャンバ160の1つ以上に逐次接着結合することができる任意の材料を含んでもよい。
【0036】
電気光学媒体170は、チャンバ160内に配設される。いくつかの実施形態では、電気光学媒体170は、アノード化合物種及びカソード化合物種を含み得る。更に、電気光学媒体170は、特定の電位を有する電流への曝露中に活性化状態に入るように動作可能である。いくつかの実施形態では、電気光学媒体170は、エレクトロクロミック媒体であってもよい。したがって、活性化状態では、電気光学媒体170は、非活性化状態に関連して、電磁スペクトルの1つ以上の波長でその消衰係数の変化を示すように動作可能であり得る。追加的に、消衰係数の変化は、電磁スペクトルの可視領域内で発生し得る。いくつかの実施形態では、電気光学媒体170は、電流が存在しない間に非活性化状態に戻るように更に動作可能であってもよい。
【0037】
動作中、第1の電極130及び第2の電極140はともに動作して、その間に配設された電気光学媒体170にわたって電位を印加してもよい。したがって、電位は、電気光学媒体170を通して電流を流し得る。電流は、第1の極性又は第2の極性(すなわち、正電流又は負電流)を有してもよい。追加的に、第1の極性及び第2の極性は、互いに反対である。更に、第1の極性の電流はまた、第1の電位を有してもよい。同様に、第2の極性の電流はまた、第2の電位を有してもよい。いくつかの実施形態では、第1の電位と第2の電位は、それぞれ、第1の大きさと第2の大きさを有してもよい。第1の大きさは、第2の大きさよりも実質的に大きく、等しく、又は小さくてもよい。例えば、第1の大きさは約1.2ボルトであってもよく、第2の大きさは約3.2ボルトであってもよく、又はその逆であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の極性は、第1の電極130から第2の電極140に移動する電流に対応し得る。このような実施形態では、第1の電極130は、表面改質された電極であってもよい。更に、第1の電極130はカソードであってもよく、第2の電極140はアノードであってもよい。逆に、このような実施形態では、第2の極性は、第2の電極140から第1の電極130へ移動する電流に対応してもよい。したがって、第1の電極130はアノードとなり、第2の電極140はカソードになり得る。このような実施形態では、電気光学媒体170がアノード化合物及びカソード化合物を有する場合、アノード電極でアノード化合物から電子を除去して酸化し、カソード電極でカソード化合物内に電子を注入して、それを低減することができる。更に、電気回路は、アノード電極からカソード電極に電子をシャトルしてもよい。
【0039】
個々の電極に関して、電極が、電極パシファイアによる以外の異なる酸化状態、金属酸化物組成物、及び/又は表面改質によって、第1の領域101及び第2の領域102で異なる実施形態では、電気光学素子100は、3つ以上の動作状態によって可変的に活性化され得る。いくつかのこのような実施形態では、1つの領域において、第1の電極130及び第2の電極140は、同一又は実質的に類似した組成物を有してもよく、一方、他の領域においては、第1の電極130及び第2の電極140は、実質的に異なる組成物を有してもよい。3つの動作状態は、第1の動作状態、第2の動作状態、及び第3の動作状態を含み得る。いくつかの実施形態では、電気光学媒体170が状態内で活性化される程度は、電位の大きさに応じて可変であってもよい。
【0040】
第1の動作状態では、第1の電極130及び第2の電極140によって電位は印加されない。したがって、電気光学媒体170を電流は流れない。すなわち、電気光学媒体170は、第1の領域101及び第2の領域102の両方において、実質的に非活性化状態のままであるか、又は実質的に非活性化状態に入る場合がある。
【0041】
第2の動作状態では、第1の極性の第1の電位は、第1の電極130及び第2の電極140によって印加される。したがって、第1の方向の電流は、電気光学媒体170を通って流れてもよい。更に、第1の電位は第1の大きさを有し得る。第1の大きさは、一方の領域では電気光学媒体170の実質的な活性化を引き起こすのに十分であるが、他方では生じない。それゆえ、電気光学媒体170は、第1の領域101及び第2の領域102のうちの1つの領域において実質的に活性化状態のまま、又は実質的に活性化状態に入ることができ、第1の領域101及び第2の領域102のうちの他の領域において実質的に非活性化の状態のまま、又は非活性化状態に入ることができる。いくつかの実施形態では、第1の極性は、領域間で区別される電極から実質的に均一な電極へ流れる電流に対応し得る。領域による電極の差は、電極から領域による電気光学媒体170への異なる電子伝達親和性をもたらし得る。このように、表面改質は、接点又はバスを介して、第1の電極130及び第2の電極140に供給される電位を生じさせることができるが、つまり、電気光学媒体170を実質的に活性化して実質的にシフトアップ又はシフトダウンさせるために、それぞれの領域内の電極にわたって十分な電位及び電流を生成するために必要である。結果として、第1の大きさでの第1の電位の電流の流れは、より大きな電子伝達親和性を有する領域に実質的に向けられてもよく、それによって、その領域で電気光学媒体170を選択的に活性化する。
【0042】
第3の動作状態では、第2の極性の第2の電位は、第1の電極130及び第2の電極140によって印加される。したがって、第2の方向の電流は、電気光学媒体170を通って流れてもよい。更に、第2の電位は、第2の大きさを有してもよい。第2の大きさは、電気光学媒体170を実質的に活性化するのに十分であり得る。いくつかの実施形態では、第2の大きさは、第1の大きさと実質的に等しくてもよい。すなわち、電気光学媒体170は、第1の領域101及び第2の領域102の両方において、実質的に活性化状態のままであるか、又は実質的に活性化状態に入る場合がある。いくつかの実施形態では、第2の極性は、実質的に均一な電極から、領域によって区別される電極へ流れる電流に対応し得る。実質的に均一な電極は、電極から電気光学媒体170への電子伝達親和性に関して実質的に均一であってもよい。結果として、電極からの電流は、実質的に均一な電極全体にわたって実質的に分散され得る。このように、表面改質は、ダイオードとして機能し得る。すなわち、電気光学媒体170は、チャンバ160全体にわたって(すなわち、第1の領域101及び第2の領域102の両方にわたって)活性化され得る。
【0043】
第2の極性ではない第1の極性の電位下で電気光学媒体170の活性化を受ける第1の領域101及び第2の領域102は、ダイオード領域であると言われ得る。いくつかの実施形態では、このダイオード領域は、第1の電極130及び第2の電極140が領域内で互いに対して異なる領域に対応し得る。例えば、第1の電極130及び第2の電極140は、異なる金属酸化物を含む異なる酸化状態によって、領域内において、互いに対して異なってもよく、一方の電極は、他方の電極の組成物のものと実質的に異なる表面改質を有し、及び/又は各電極は、実質的に異なる表面改質を有する。いくつかのこのような実施形態では、表面改質は、ダイオード電極表面を生成し得る。
【0044】
代替的に、第1の電極130及び/又は第2の電極140が、電極パシファイア層180又は処理によって改質される実施形態では、電気光学素子100は、2つの動作状態を有して可変的に活性化され得る。2つの動作状態は、第4の動作状態及び第5の動作状態を含み得る。
【0045】
第4の動作状態では、第1の電極130及び第2の電極140によって電位は印加されない。したがって、電気光学媒体170を電流は流れない。すなわち、電気光学媒体170は、第1の領域101及び第2の領域102の両方において、非活性化状態のままであるか、又は実質的に非活性化状態に入る場合がある。
【0046】
第5の動作状態では、任意の極性の電位は、第1の電極130及び第2の電極140によって印加され得る。したがって、電気光学媒体170を電流は流れ得る。更に、電気光学媒体170は、電極パシファイアで改質された領域において実質的に非活性化状態のままであるか、又は実質的に非活性化状態となり、電極パシファイアによって改質されていない領域において実質的に活性化状態のままであるか、又は実質的に活性化状態に入る場合がある。電極パシファイアは、それぞれの領域での抵抗を実質的に増加させ、それによって、電流を実質的に低減された抵抗で、他の領域にそらすように機能し得る。それぞれの電極と電気光学媒体170との間の電子を移動するために電極を動作不能にすることによって、電極パシファイアは、その領域で電気光学媒体170を活性化するために電気光学素子100を動作不能にし得る。
【0047】
電気光学素子100のいくつかの実施形態は、1つの領域では活性化されるが、別の領域では非活性化のままであるように動作可能な利点を有する。したがって、電気光学素子100は、複数領域デバイスであってもよい。更に、電気光学素子100のいくつかの実施形態は、領域101、102を分割するために、シール、バリア、又はアブレーションラインを必要とすることなく、複数領域デバイスの利点を有する。したがって、電気光学素子100は、より美感に富む外観を提供し得る。更に、電気光学素子100のいくつかの実施形態は、第1の領域及び第2の領域の両方が活性化状態及び/又は非活性化状態であるときに、第1の領域101と第2の領域102との間の総光透過率及び/又は色透過率の差が約20、10、又は5%以下であり得るという点で、より美観に富む外観を更に提供し得る
【0048】
追加的に、図2に示すように、電気光学素子100は、センサ210及びコントローラ220を更に備えるシステム又は組立体の一部であってもよい。いくつかの実施形態では、組立体は、バックミラー組立体又はウィンドウ組立体であってもよい。
【0049】
センサ210は、状態を検出するように動作可能な任意のデバイスであってもよい。更に、センサ210は、光学センサであってもよい。したがって、センサ210は、光学軸211を有してもよい。一例として、センサ210は、周辺光センサ又は撮像装置であってもよい。追加的に、センサ210は、電気光学素子100に対して第1の方向105又は第2の方向106に配設されてもよい。いくつかの実施形態では、センサ210は、電気光学素子100を二等分する光学軸211及び/又は感知フィールド(すなわち、視野)を有してもよい。いくつかの更なる実施形態において、センサ210は、光学軸211及び/又は二等分する、及び/又は第1の領域101又は第2の領域102に実質的に限定される感知フィールドを有してもよい。
【0050】
コントローラ220は、第1の電極130及び第2の電極140に電気的に接続される。いくつかの実施形態では、コントローラ220は、センサ210に通信可能に接続され得る。更に、コントローラ220は、メモリ及びプロセッサを備えてもよい。メモリは、周辺照明アルゴリズム及び/又は生体認証分析アルゴリズムを記憶するように動作可能であり得る。周辺照明アルゴリズムは、少なくとも1つの方向で周辺照明レベル測定値を受信し、グレア光が電気光学素子100から反射される可能性を判定するように動作可能であり得る。更に、少なくとも部分的には、閾値を超える可能性に基づいて、周辺照明アルゴリズムは、第1の電極130及び第2の電極140に、第1の極性又は第2の極性の電位を印加させるように動作可能であり得る。生体認証分析アルゴリズムは、センサ210からデータを受信し、生体認証動作又は運転者認識監視動作を実施するように動作可能であり得る。いくつかの実施形態では、生体認証分析アルゴリズムは、第1の電極130及び第2の電極140に、少なくとも部分的に、センサ210が活性化状態に入ることに基づいて、第1の極性又は第2の極性の電位を印加させるように動作可能であり得、センサ210はデータを収集し得る。いくつかのこのような実施形態では、生体認証分析アルゴリズムは、第1の電極130及び第2の電極140に、少なくとも部分的に、センサ210が非活性化状態に入ることに基づいて、反対の電位を印加させるように更に動作可能であり得る。プロセッサは、周辺照明アルゴリズム及び/又は生体認証分析アルゴリズムを実行するように動作可能であり得る。
【0051】
したがって、いくつかの実施形態は、電気光学素子100のある領域が非活性化のままである動作状態を含むように、電気光学素子100を選択的に活性化することを可能にする利点を有し得る。ある領域を非活性化のままにしておくことは、用途に応じて利点を有し得る。例えば、ある領域がセンサ210と光学的に整列している実施形態では、光学的に整列された領域を非活性化しておくと、より優れたセンサ210性能という利点を有し得る。いくつかの実施形態では、活性化された電気光学素子100は、それを通る光の透過率を減少させ得る。低減された透過率は、グレアを低減するのに有利であり得るが、センサ210の感知フィールドにおける低減された透過率は、利用可能な光の量を低減することによりセンサ210の感知に有害であり得る。したがって、電気光学素子100は、他の領域で低減された透過率を有する電気光学素子100に関連する利益を保持しながら、センサ210の感知フィールドに対応するある領域で高レベルの透過率を選択的に維持することの利点を有する。
【0052】
図3a~bに示すように、電気光学素子100は、可変透過性バックミラーの一部であってもよい。いくつかの実施形態では、バックミラーは、内部バックミラー、運転者側外部バックミラー、又は移動体上に配設された乗客側外部バックミラーであってもよい。バックミラーは、対象310に、移動体の後方及び/又はそれぞれの側面に対する視野を提供するように動作可能であり得る。更に、電気光学素子100が、センサ210と、生体認証分析アルゴリズムを実行するよう動作可能なコントローラ220とを更に備える、システム及び/又は組立体の一部であるいくつかの実施形態では、電気光学素子100は、センサ210とのユーザ位置合わせを強化するように構成されてもよい。例えば、センサ210は、対象310の目315を感知する必要がある場合がある。したがって、第2の領域102は、対象310が自分の目315の反射を見ることができるとき、目315がセンサ210の感知フィールドに好適に配設されるように、配設され得る。したがって、少なくとも部分的には、センサ210が、目315に関連するデータをセンサ210が収集し得る活性化状態に入ることに基づいて、第1の領域101は、低透過率の状態に活性化されてもよく、第2の領域102は、高透過率の状態に活性化されなくてもよい。したがって、対象310は、センサ210との適切な位置合わせを可能にするために、高透過率領域に見られるように目315を再位置付けてもよい。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態は、電気光学素子100のある領域が非活性化のままである動作状態を有するように、電気光学素子100を選択的に活性化することを可能にする利点を有し得る。ある領域101、102を非活性化のままにしておくことは、用途に応じて利点を有し得る。例えば、ある領域101、102がセンサ210と対象310との間に光学的に整列している実施形態において、対象310が生体認証分析を実行するための好適な位置決め相対センサ210を良好に見つけることができるように、ある領域101、102は、対象310に活性化フィードバックを提供するために配設され得る。
【0054】
図4に示すように、電気光学素子100は、ウィンドウ組立体の一部であってもよい。いくつかの実施形態では、ウィンドウ組立体は、航空機又は自動車などの移動体に配設され得る。ウィンドウ組立体は、乗客400に移動体外部の可変透過性視野を提供するように動作可能であり得る。第1の領域101及び第2の領域102の両方が活性化されて、移動体外部の光からの陰を乗客400に提供することができる。同様に、第1の領域101及び第2の領域102は両方とも、非活性化されて、乗客400に光及び/又は減少しない視野を提供することができる。更に、電気光学素子100は、有利には、一方の領域101、102がそれぞれ活性であり、他方の領域101、102がそれぞれ非活性であるように、活性化され得る。このような動作状態は、選択領域101、102における減少されていない光を可能にしながら、移動体に入る光の合計量を減少させるという利点を有する。乗客400は、光源からの顔へのグレアを最小化するか、又は他者を妨害する可能性のある光を最小化する一方で、読書などの活動に光を提供するのに、この動作状態が望ましいと考えることができる。
【0055】
第1の領域101又は第2の領域102を有する上述の電気光学素子100の実施形態は、極性のうちの1つのみの電位の印加中にのみ活性化される、ダイオードのような挙動を有すると言われ得る。言い換えれば、この領域はダイオードとして作用し得る。このダイオードのような挙動は重要である。以前の電気光学素子は、エレクトロクロミック媒体などの電気光学媒体の両側上に配置された一対の電極を利用した。しかしながら、これらの従来素子は、電流の極性に関係なく、電位が印加された電極全体にわたって電気光学媒体を活性化した。これらの従来素子は、電気光学媒体の活性化の程度を制御するために、印加電位の大きさのみに依存した。したがって、同じ大きさであるが異なる極性を有する2つの電位は、両方とも電気光学媒体の等しい活性化を引き起こし得る。本発明の電気光学素子100の実施形態のダイオードのような挙動は、領域が極性選択的であることを可能にする。
【0056】
本発明の電気光学素子100のいくつかの実施形態のダイオードのような挙動の1つの説明は、界面仕事関数の変更に基づいてもよい。この変更は、動作中に、それぞれの電極から電気光学媒体170への電子の伝達に特に影響を与える。電極が表面改質されると、その表面での結合が破壊され、表面の特徴を変える新しい結合が形成され得る。これらの変化は、異なる物理的特性、又は表面の仕事関数を変える界面電界の形成をもたらし得る。例えば、ITO電極が酸素プラズマを用いた処理によって表面改質されるとき、ITO表面での-OH結合の形成が可能となるように、ITOの表面での結合が破壊され得る。表面でのこれらのヒドロキシル基の形成は、仕事関数の効果的な増加を引き起こし得る。追加的に、その他の結合は、類似の影響を達成するために形成され得る。
【0057】
仕事関数の変更について追加的又は代替的に、本電気光学素子100のいくつかの実施形態のダイオードのような挙動の別の説明は、ショットキーバリアのフォーメーションに基づいてもよい。ショットキーバリアは、ITO及び表面改質界面、表面改質及び電気光学媒体170界面、又はそれらの組み合わせなどの、下地電極材料にあり得る。
【0058】
バリアが、下地電極材料及び表面改質界面にある場合、バリアは、これら2つの実体間の仕事関数での違いのために形成され得る。具体的には、下地電極を形成する金属又は高度に変性した半導体材料は、より低い仕事関数を有するn型半導体、又はより大きな仕事関数を有するp型半導体と直ちに接触して、表面改質を形成し得る。例えば、ITOは金属のような変性物質として機能し、ZnOはn型半導体として機能する。このバリアの存在は、表面改質に人工界面空乏領域を導入し得る。したがって、空乏領域は、一方の極性で電力供給されたときに、大きな抵抗に遭遇する電極への、比較的小さな印加電圧の原因となり得る。しかしながら、この極性の極度のバイアスの下で、空乏層は破壊し得る。
【0059】
バリアが表面改質及び電気光学媒体170界面にある場合、ダイオードのような挙動は、これら2つの材料間のエネルギーレベル差から生じ得る。電気光学素子100の一方の電極がダイオード領域内で表面改質され、他方の電極がダイオード領域内で表面改質されない場合、これは実証され得る。この影響の例の図が、図5a~dに見られ得る。図5a~dは、電気光学素子100の実施形態の半導体バンドモデルを示す概略図である。表面改質された電極は、垂直軸の左に示され、表面改質を受けていない通常の電極は、軸の右に示されている。例えば、表面改質された電極は、ZnOで表面改質されてもよく、通常の電極はITOであってもよい。垂直軸は電子エネルギーに照合し、それらの配置は、電気光学媒体170とそれぞれの電極との間の界面の水平空間関係を示す。言い換えれば、垂直軸は、電極及び電気光学媒体170の界面と水平に整列している。したがって、水平軸は、電極と電気光学媒体170との間の界面に対して、電気光学素子100を横切る任意の位置座標であり、縮尺ではない。このように、垂直軸のいずれかからの水平距離が増加すると、電極と電気光学媒体170との間の界面への物理的分離が増加する。ECBは、伝導バンドの最小エネルギーに対応する。伝導バンドは、0Kでの非占有電子状態の最下位レベルである。EFは、Fermiレベルに対応する。Fermiレベルは、0Kで電子を見つける確率が1/2であるエネルギーである。図5a~dの例示は、多くの電気光学素子100の構成に対応することができるが、これらの例示は、表面処理が非変性n型半導体であり得るか、又は結果として非変性n型半導体となり得る構成に基づいて構築された。具体的には、ITO上のZnOの表面処理が例示されている。更に、右に示す非表面処理電極はITOである。
【0060】
図5aは、界面効果又は印加電圧の非存在下でのバルク半導体のエネルギーレベルのバンドモデルを例示する。図5bは、電気光学素子100が開回路を有し、かつそれに適用される実質的な電位がない場合のバンドモデルを例示する。半導体が別の材料と接触して配置されると、界面にわたって平衡が生じ、その結果、両側に内蔵電圧及びFermiレベルの平衡化が生じ得る。状態の密度のために、より多くの変化が一般的に半導体内で観察される。この内蔵電圧は、界面において空乏層又は蓄積層をもたらし得る。したがって、システムに印加される電圧は、この平衡化されたシステムに関してであり、Fermiレベル及び/又は状態バンドを上及び/又は下にシフトさせる。図5cは、電気光学素子100が第1の極性の電位を有する場合のバンドモデルを例示する。第1の極性は、左側の電極から右側の電極へ外部電気回路を流れる電流に対応し得る。図5dは、電気光学素子100が第2の極性の電位を有する場合のバンドモデルを例示する。第2の極性は、右側の電極から左側の電極へ流れる電流に対応してもよい。このように、第2の極性は、第1の極性に対して反対の符号である。更に、第2の極性のこの電位は、第1の極性の電位と大きさが等しくてもよい。したがって、第1の極性は、ダイオード領域の抵抗が低いときに対応してもよく、第2の極性は、抵抗又はショットキーバリアが高いときに対応してもよい。
【0061】
通常のITO電極は、通常の動作中に電気光学媒体170に適用される全ての電位でその変性のために金属としてエネルギー的に挙動してもよく、通常の動作は、挙動を非変性物に変えるために必要なものを下回る電位に対応してもよい。これは、少なくとも部分的に、高レベルのドーピングに起因する場合がある。図5a~dの右に示すように、Fermiレベルが、印加された電位に関係なく界面導電バンドエッジよりも高いエネルギーのままであるため、変性挙動が示される。しかしながら、表面改質された電極は、実質的に非変性の半導体として、表面改質及び電気光学媒体170の界面においてかなりのバンド屈曲を経験する。これは、空間電荷領域のフォーメーションをもたらし得る。図5cに示すように、第1の極性の電位の適用下で、カソード種は、わずかな界面蓄積層及びエネルギーバリアがないため、表面改質及び電気光学媒体170の界面において容易に減少し得る。反対に、図5dに示すように、第2の極性の電位が等しい場合、大きな界面空乏層が形成される。したがって、アノード化合物から改質された電極を用いた界面の中への電子の注入は、この大きな表面バリアによって妨げられる。しかしながら、第2の極性の電位の相対的に極端な大きさの下で、バリアは薄くなり、電子はそれを通ってトンネル状になり、アノード電流の流れを可能にし得る。
【0062】
したがって、領域に対するダイオード効果は、ITO電極を、アノード化合物の化学ポテンシャルよりも高い伝導バンド及びFermiレベルエネルギーを有する半導体から構成される電極とペアリングすることによって生成され得る。このようなシナリオは、表面状態又は価電子バンド相互作用の非存在下で、アノード材料を酸化するのに十分な大きさの全ての電位が、電気光学媒体170の界面において表面エネルギーバリアを作り出すことを確実にする。
【0063】
本明細書で使用される、2つ以上の事項の列記において使用される場合の「及び/又は」という用語は、列記される事項のうちのいずれの1つも単独で用いられることができ、又は列記される事項のうちの2つ以上のあらゆる組み合わせが用いられることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B及び/又はCを含有するとして記載される場合、当該組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B及びCを組み合わせて含有し得る。
【0064】
この明細書では、関連する用語、例えば、「第1の」、「第2の」、等は、1つの存在又は動作を他の存在又は動作と区別するために、単独で用いられるもので、そのような存在又は動作の間での実際の関係又は順序を必ずしも要求又は暗示するものではない。
【0065】
用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」又はその用語の他の変形形態は、列挙される要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置がそれらの要素のみを含むものではなく、明白に列挙されていないか、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置にとって固有のものではない他の要素を含んでもよいように、非排他的包含を網羅することを意図している。「a...を備える」が前に付く要素は、それ以上の制約なしに、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置の追加的な同一要素の存在を除外しない。
【0066】
用語「実質的に」及びその変形は、当業者によって、値又は説明に等しいか又はほぼ等しい特徴を説明するものとして理解されるであろう。例えば、「実質的に平坦な」表面は、平坦な又はおよそ平坦な表面を示すことを意図する。更に、「実質的に」は、2つの値が等しいか又はおよそ等しいことを示すことを意図する。当業者に明確ではない用語の使用がある場合、それが使用される文脈を考えると、「実質的に」は、互いに約10%以内、例えば互いに約5%以内、又は互いに約2%以内の値、を示してもよい。
【0067】
用語「透明」は、相対的に適用される。「透明」とは、問題となる波長で実質的に透過性であり、したがって、一般的に、このような波長の光が透過することを可能にする、光学素子又は材料を指す。問題の波長は、コンテキストに基づいて変化する。しかしながら、問題の波長が容易には明らかでない場合、問題の波長は一般に可視光を指すものとする。
【0068】
用語「不透明」は、相対的に適用される。「不透明」とは、問題となる波長において、明白に透明又は半透明ではない光学素子又は材料を指し、したがって、一般的に、このような波長における光がそれを通過することを可能にするものではない。問題の波長は、コンテキストに基づいて変化する。しかしながら、問題の波長が容易には明らかでない場合、問題の波長は一般に可視光を指すものとする。
【0069】
用語「半透過型」は、一般に、少なくとも1つの側面から光入射の少なくとも一部を反射し、少なくとも1つの側面から光入射の少なくとも一部を透過する光学構成を指す。特に、「半透過型」は、光の波範囲に関して非ゼロレベルの透過率を有し、かつ領域内の非ゼロレベルの反射率を有する光学素子又は構成要素を記述する。適用できる光の範囲は、コンテキストに応じて変化する。しかしながら、関連する光の波範囲が容易には明らかでない場合、光の波範囲は通常、可視光を指すものとする。
【0070】
いくつかの実施形態が本開示に記載されているが、多数の変形、変更、変換、及び修正は、当業者によって理解されてもよく、本開示は、それらの言語が明示的に別段の定めをしない限り、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるこれらの変形、変更、変換、及び修正を包含することを意図していることを理解されたい。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d