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特許7524360リチウム二次電池用負極、それを備えるリチウム二次電池、及び該リチウム二次電池の製造方法
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  • 特許-リチウム二次電池用負極、それを備えるリチウム二次電池、及び該リチウム二次電池の製造方法 図1
  • 特許-リチウム二次電池用負極、それを備えるリチウム二次電池、及び該リチウム二次電池の製造方法 図2
  • 特許-リチウム二次電池用負極、それを備えるリチウム二次電池、及び該リチウム二次電池の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極、それを備えるリチウム二次電池、及び該リチウム二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240722BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240722BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240722BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240722BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240722BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240722BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240722BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240722BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240722BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240722BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240722BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M10/052
H01M50/443 M
H01M10/058
H01M4/58
H01M4/1395
H01M50/403 D
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/446
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022573538
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 KR2021013949
(87)【国際公開番号】W WO2022080786
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132199
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ジェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ヒュン・チェ
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101633(JP,A)
【文献】特開2009-224239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/13
H01M4/62
H01M4/38
H01M4/48
H01M4/139
H01M50/443
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面に位置し、Si系負極活物質、導電材、及び第1バインダー高分子を含む負極活物質層と、を含み、
前記Si系負極活物質は、活性化工程後に形成されたクラックを備え、
前記クラック内に第2バインダー高分子がコーティングされており、
前記第1バインダー高分子と前記第2バインダー高分子とは異種である、リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン由来第2単量体との共重合体を含み、
前記第2単量体が、前記共重合体100重量%を基準にして20重量%以上で含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記Si系負極活物質が、Si、SiOx(1≦x≦2)、Si/C、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記第1バインダー高分子が、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
正極と、
負極集電体、及び前記負極集電体の少なくとも一面に位置し、活性化工程後に形成されたクラックを備えるSi系負極活物質、導電材、及び第1バインダー高分子を含み、前記クラック内に第2バインダー高分子がコーティングされている負極活物質層を含む負極と、
前記正極と負極との間に介在され、多孔性高分子基材、及び前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、多数の無機物粒子及び前記第2バインダー高分子を含む多孔性コーティング層を含むセパレータと、を含む、リチウム二次電池。
【請求項6】
(S1)正極、並びにSi系負極活物質及び第1バインダー高分子を含む予備負極を製造する段階と、
(S2)多孔性高分子基材の少なくとも一面に無機物粒子、第2バインダー高分子、及び前記第2バインダー高分子に対する溶媒を含む多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティング及び乾燥してセパレータを製造する段階と、
(S3)前記(S1)段階で製造された正極と予備負極との間に前記(S2)段階で製造されたセパレータを介在させ、ラミネーションして電極組立体を製造する段階と、
(S4)前記(S3)段階で製造された電極組立体を電池ケースに収納し、電解液を注入して予備電池を製造する段階と、
(S5)前記(S4)段階の予備電池を活性化させて、前記Si系負極活物質にクラックを形成する段階と、
(S6)前記(S5)段階の予備電池を昇温させて前記第2バインダー高分子を前記電解液に溶解させてから放置して、前記クラック内に前記第2バインダー高分子をコーティングする段階と、
(S7)前記(S6)段階の結果物を冷却する段階と、を含み、
前記第1バインダー高分子は、前記(S6)段階の昇温温度で前記電解液に溶解されない、リチウム二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記(S6)段階の昇温温度が、70℃~90℃である、請求項6に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン由来第2単量体との共重合体を含み、
前記第2単量体が、前記共重合体100重量%を基準にして20重量%以上で含まれる、請求項6または7に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記第1バインダー高分子が、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、またはこれらのうちの二つ以上を含む、請求項6から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記第2バインダー高分子は、前記無機物粒子と第2バインダー高分子との総量100重量%を基準にして15重量%~25重量%の含量で前記多孔性コーティング層形成用スラリーに含まれる、請求項6から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記(S7)段階の結果物に含まれたセパレータに前記第2バインダー高分子が前記無機物粒子と第2バインダー高分子との総量100重量%を基準にして1重量%~5重量%で含まれる、請求項6から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月13日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0132199号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用負極、それを備えるリチウム二次電池、及び該リチウム二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、これら電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化への要求が高まっている。リチウム二次電池はこのような要求に最も応えられる電池であって、現在これに対する研究が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、一般に、リチウム金属酸化物からなる正極、炭素材などからなる負極、リチウム塩及び有機溶媒を含む電解液、正極と負極との間に介在されてこれらを電気的に絶縁させるセパレータを含んでいる。
【0005】
リチウム二次電池の負極を構成する負極活物質としては、主に炭素材が使われている。しかし、リチウム二次電池の使用が拡大し、それとともに高容量リチウム二次電池に対する需要が増加していることから、小容量の炭素材に代替できる高容量の負極活物質が要求されている。このような要求に応えるため、炭素材よりも高い充放電容量を有し、リチウムと電気化学的に合金化可能なSiなどを負極活物質として用いることが試みられている。
【0006】
しかし、Si系負極活物質は、充放電の際、リチウムイオンの挿入(intercalations)及び脱離(deintercalation)による体積変化が非常に大きいという問題がある。Si系負極活物質は、充電によってその体積が300%以上膨張するが、このとき加えられる機械的応力(mechanical stress)が電極の内部と表面にクラック(crack)を発生させる。また、Si系負極活物質は、放電によってリチウムイオンが脱離すると収縮するようになる。このようなクラックは回復できず、充放電サイクルが繰り返されるにつれて活物質が粉砕され、負極活物質が負極集電体から脱離するか又は負極活物質同士の脱離が発生して短絡を誘発するデッドボリューム(dead volume)を形成する。これにより、Si系負極活物質は、充放電の進行とともに急激に充放電容量が減少すると知られている。また、前記クラックによって活物質が露出する界面が増加することで、電解液との副反応が起きて持続的にリチウムイオン及び電解液が消費される。
【0007】
したがって、Si系負極活物質の体積変化による問題を防止するための技術が非常に強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、負極活物質の体積変化による問題を防止することができるリチウム二次電池用負極、及びそれを備えたリチウム二次電池を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記リチウム二次電池の製造方法、及び該製造方法によって製造されたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池用負極が提供される。
【0011】
第1具現例は、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面に位置し、Si系負極活物質、導電材、及び第1バインダー高分子を含む負極活物質層と、を含み、
前記Si系負極活物質は、活性化工程後に形成されたクラック(crack)を備え、
前記クラック内に第2バインダー高分子がコーティングされており、
前記第1バインダー高分子と前記第2バインダー高分子とは異種であることを特徴とするリチウム二次電池用負極に関する。
【0012】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来第2単量体との共重合体を含み、
前記第2単量体が、前記共重合体100重量%を基準にして20重量%以上で含まれ得る。
【0013】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、
前記Si系負極活物質が、Si、SiOx(1≦x≦2)、Si/C、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0014】
第4具現例によれば、第1具現例~第3具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池が提供される。
【0016】
第5具現例は、
正極と、
負極集電体、及び前記負極集電体の少なくとも一面に位置し、活性化工程後に形成されたクラックを備えるSi系負極活物質、導電材、及び第1バインダー高分子を含み、前記クラック内に第2バインダー高分子がコーティングされている負極活物質層を含む負極と、
前記正極と負極との間に介在され、多孔性高分子基材、及び前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、多数の無機物粒子及び前記第2バインダー高分子を含む多孔性コーティング層を含むセパレータと、を含むことを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0017】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、下記具現例のリチウム二次電池の製造方法、及びそれによって製造されたリチウム二次電池が提供される。
【0018】
第6具現例は、
(S1)正極、並びにSi系負極活物質及び第1バインダー高分子を含む予備負極を製造する段階と、
(S2)多孔性高分子基材の少なくとも一面に無機物粒子、第2バインダー高分子、及び前記第2バインダー高分子に対する溶媒を含む多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティング及び乾燥してセパレータを製造する段階と、
(S3)前記(S1)段階で製造された正極と予備負極との間に前記(S2)段階で製造されたセパレータを介在させ、ラミネーションして電極組立体を製造する段階と、
(S4)前記(S3)段階で製造された電極組立体を電池ケースに収納し、電解液を注入して予備電池を製造する段階と、
(S5)前記(S4)段階の予備電池を活性化させる段階と、
(S6)前記(S5)段階の予備電池を昇温させて前記第2バインダー高分子を前記電解液に溶解させてから放置する段階と、
(S7)前記(S6)段階の結果物を冷却する段階と、を含み、
前記第1バインダー高分子は、前記(S6)段階の昇温温度で前記電解液に溶解されないことを特徴とするリチウム二次電池の製造方法に関する。
【0019】
第7具現例によれば、第6具現例において、
前記(S6)段階の昇温温度が、70℃~90℃であり得る。
【0020】
第8具現例によれば、第6具現例または第7具現例において、
前記第2バインダー高分子が、フッ化ビニリデン(VDF)由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来第2単量体との共重合体を含み得、
前記第2単量体が、前記共重合体100重量%を基準にして20重量%以上で含まれ得る。
【0021】
第9具現例によれば、第6具現例~第8具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記第1バインダー高分子が、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0022】
第10具現例によれば、第6具現例~第9具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記第2バインダー高分子が、前記無機物粒子と第2バインダー高分子との総量100重量%を基準にして15重量%~25重量%の含量で前記多孔性コーティング層形成用スラリーに含まれ得る。
【0023】
第11具現例は、
第6具現例~第10具現例のうちのいずれか一具現例の製造方法によって製造されたリチウム二次電池に関する。
【0024】
第12具現例によれば、第11具現例において、
前記(S7)段階の結果物に含まれたセパレータに前記第2バインダー高分子が前記無機物粒子と第2バインダー高分子との総量100重量%を基準にして1重量%~5重量%で含まれ得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によるリチウム二次電池用負極は、活性化工程後にSi系負極活物質に形成されたクラック内に存在するバインダー高分子がクラックの間を連結して耐久性が向上し、これによって前記負極を備えたリチウム二次電池の寿命特性が改善できる。
【0026】
本発明の一態様によるリチウム二次電池の製造方法は、第2バインダー高分子が電解液に溶解される温度まで電池を昇温させ、活性化工程後にSi系負極活物質に形成されたクラック内に第2バインダー高分子を存在させることで、耐久性及び寿命特性が改善されたリチウム二次電池を製造することができる。
【0027】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極を概略的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極におけるSi系負極活物質を拡大して示した図である。
図3】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法を概略的に示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0030】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0031】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面に位置し、Si系負極活物質、導電材、及び第1バインダー高分子を含む負極活物質層と、を含み、
前記Si系負極活物質は、活性化工程後に形成されたクラックを備え、
前記クラック内に第2バインダー高分子がコーティングされており、
前記第1バインダー高分子と前記第2バインダー高分子とは異種であることを特徴とする。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極を概略的に示した図である。
【0033】
図1を参照すると、リチウム二次電池用負極1は、負極集電体10を備える。
【0034】
前記負極集電体10としては、通常負極集電体の素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。本発明の一実施形態において、前記負極集電体10は、銅、金、ニッケル、銅合金、またはこれらのうちの二つ以上によって製造されるホイルであり得る。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記負極集電体10の厚さは、特に制限されないが、3μm~500μmの厚さを有し得る。
【0036】
図1を参照すると、リチウム二次電池用負極1は、前記負極集電体10の少なくとも一面に負極活物質層20を備える。前記負極活物質層20は、Si系負極活物質21、導電材22、及び第1バインダー高分子23を含む。
【0037】
本発明において、前記Si系負極活物質21は粒子状であり得る。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記Si系負極活物質21は、Si、SiOx(1≦x≦2)、Si/C、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記Si系負極活物質21が粒子状である場合、前記Si系負極活物質21の平均粒径は0.5μm~5μm、1μm~4μm、または2μm~3μmであり得る。前記Si系負極活物質21の平均粒径は、一般的な粒度分布計によって分級後の粒子の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小さい粒径側からの積算値50%の粒度(D50)を意味する。前記Si系負極活物質の平均粒径は、一般に、X線回折(XRD)分析または電子顕微鏡(SEM、TEM)などを用いて測定し得る。前記Si系負極活物質の平均粒径が上記の範囲を満足する場合、相対的に小さい平均粒径のため、Si系負極活物質の持続的な体積変化、具体的にはSi系負極活物質の持続的な膨張及び収縮によるSi系負極活物質の粉砕現象をさらに減少でき、比表面積が増加することで出力特性が向上することができる。
【0040】
前記導電材22は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されない。本発明の一実施形態において、前記導電材22は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フルオロカーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材、またはこれらのうちの2種以上を含み得る。
【0041】
本発明において、前記第1バインダー高分子23は、Si系負極活物質21と導電材22とを結合させ、Si系負極活物質21及び/または導電材22と負極集電体10とを互いに結合させ得る。前記第1バインダー高分子は、通常負極のバインダーとして使用され、後述する昇温温度で電解液に溶解されないものであれば特に制限されない。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子23は、水系バインダー高分子であり得る。例えば、前記第1バインダー高分子は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0043】
図1を参照すると、前記第1バインダー高分子23がSi系負極活物質21、導電材22及び負極集電体10と線接触するように示されたが、これらに限定されることはない。例えば、前記第1バインダー高分子23がSi系負極活物質21、導電材22及び負極集電体10と点接触してもよい。
【0044】
図2は、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極におけるSi系負極活物質を拡大して示した図である。
【0045】
図2を参照すると、活性化工程の後、前記Si系負極活物質21にクラック24が形成される。前記クラック24内に第2バインダー高分子25がコーティングされている。
【0046】
本発明において、「前記クラック内に第2バインダー高分子がコーティングされている」とは、前記クラック内の空間に第2バインダー高分子が存在することを意味する。例えば、前記第2バインダー高分子が前記クラック内にコーティングされているか又はクラック内に挿入された形態で存在する場合を含み、前記クラックの間を第2バインダー高分子が完全に充填する場合も含み得る。
【0047】
前記Si系負極活物質21は、充放電時にリチウムイオンの挿入及び脱離によって甚だしい体積変化が起きる。このような体積変化により、リチウム二次電池のサイクルが進行するほど、前記Si系負極活物質の気孔が大きくなりながらクラック24が形成され得る。このようなクラック24によって負極活物質が粉砕され、負極活物質が負極集電体から及び/または負極活物質同士で脱離して、負極活物質と集電体との間及び/または負極活物質同士の間の導電性が低下する。これにより、リチウム二次電池の充放電容量が低下し、結局はリチウム二次電池の寿命特性が低下するようになる。
【0048】
本発明において、前記第2バインダー高分子25は、前記クラック24の間に存在してクラック同士の間を連結する役割を果たす。前記第1バインダー高分子23は、隣接したSi系負極活物質同士を連結する役割をする一方、前記第2バインダー高分子25は、それぞれのSi系負極活物質に形成されたクラック24内に位置してクラックの間を連結する。本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、負極活物質にクラックが形成されても、前記第2バインダー高分子25がクラックの間を連結することで、前記クラックによる負極活物質の粉砕を防止できて前記負極の耐久性を向上させることができる。これにより、前記負極を備えたリチウム二次電池の寿命特性が改善できる。
【0049】
本発明において、前記第2バインダー高分子25は、前記第1バインダー高分子23とは異種の高分子である。前記第2バインダー高分子25と前記第1バインダー高分子23とが異種である場合、負極活物質が負極集電体から脱離して内部短絡を引き起こすことを防止できるとともに、活性化工程後に前記Si負極活物質に形成されたクラック内に前記第2バインダー高分子をコーティングすることができる。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子25は、フッ化ビニリデン(VDF)由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来第2単量体との共重合体を含み得る。前記第2バインダー高分子としてポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレンを使用する場合、接着力に優れて前記クラック24の間を連結し易い。このとき、前記第2単量体は、前記共重合体100重量%を基準にして20重量%以上、または30重量%以上で含まれ得る。前記第2単量体が上述した範囲で含まれる場合、活性化工程後に前記Si負極活物質に形成されたクラック内に、前記フッ化ビニリデン(VDF)由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来第2単量体との共重合体をコーティングし易い。
【0051】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、後述するリチウム二次電池の製造方法によって製造され得るが、これによって限定されない。
【0052】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、正極及びセパレータとともにリチウム二次電池として製造され得る。
【0053】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池に適用される正極は、特に制限されず、正極集電体の少なくとも一面に正極活物質層が備えられた形態であり得る。
【0054】
前記正極集電体は、通常正極集電体の素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。例えば、前記正極集電体は、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの組合せであり得る。
【0055】
前記正極活物質としては、従来リチウム二次電池の正極に使用される通常の正極活物質が使用可能であり、リチウム含有遷移金属酸化物が使用され得る。例えば、LiCoC、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-yCo、LiCo1-yMn、LiNi1-yMn(0≦y<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNi、LiMn2-zCo(0<z<2)、LiCoPO、LiFePO、またはこれらのうちの2種以上であり得る。また、このような酸化物の他に、硫化物、セレン化物、及びハロゲン化物などであり得る。
【0056】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池に適用されるセパレータは、多孔性高分子基材、及び前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、多数の無機物粒子及び前記第2バインダー高分子を含む多孔性コーティング層を含むことを特徴とする。前記セパレータは、前記正極と負極との間に介在されて正極と負極との間を絶縁させる役割をする。
【0057】
前記多孔性高分子基材は、当分野で通常使われる多孔性高分子基材であればいずれも使用可能である。例えば、前記多孔性高分子基材としては、ポリオレフィン系多孔性高分子膜または不織布を使用し得るが、これに特に限定されることはない。
【0058】
前記ポリオレフィン系多孔性高分子膜の非制限的な例としては、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子、またはこれらのうちの二つ以上で形成した膜が挙げられる。
【0059】
前記不織布としては、ポリオレフィン系不織布の外に、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレート、またはこれらのうちの二つ以上で形成した不織布が挙げられる。不織布の構造は、長繊維で構成されたスパンボンド(spunbond)不織布またはメルトブロー(melt-blown)不織布であり得る。
【0060】
前記多孔性高分子基材の厚さは、特に制限されないが、5μm~50μmであり得る。多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.01μm~50μm及び10%~95%であり得る。
【0061】
前記多孔性高分子基材の気孔度及び気孔サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、水銀ポロシメーター(mercury porosimeter)、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometer)、または細孔分布測定装置(porosimetry analyzer;Bell Japan、Belsorp-II mini)を使用して窒素ガス吸着フローによってBET6点法で測定し得る。
【0062】
前記多孔性コーティング層は、無機物粒子及び前記第2バインダー高分子を含み、セパレータの機械的強度の向上及びリチウム二次電池の安全性向上のため、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置する。
【0063】
前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用可能な無機物粒子は、適用される電池の作動電圧範囲(例えば、Li/Li基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。本発明の一実施形態において、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、または10以上の高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、またはこれらのうちの2種以上を含み得る。誘電率定数が5以上である無機物粒子は、BaTiO、BaSO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、SiO、Al、γ-AlOOH、Al(OH)、SiC、TiO、またはこれらのうちの2種以上を混合して使用可能であるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子のサイズは制限されないが、均一な厚さの多孔性コーティング層の形成及び適切な孔隙率のため、0.01~10μm、または0.05~1.0μm範囲の平均粒径を有し得る。このとき、前記無機物粒子の平均粒径は、一般的な粒度分布計によって分級後の粒子の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小さい粒径側からの積算値50%の粒度(D50)を意味する。このような粒度分布は、レーザー回折分析法によって測定され得る。
【0065】
本発明において、前記多孔性コーティング層に含まれる第2バインダー高分子は、前記活性化工程後に負極活物質に形成されたクラック内にコーティングされた第2バインダー高分子と同種のものである。
【0066】
前記セパレータ内の多孔性コーティング層に含まれた無機物粒子及び第2バインダー高分子の含量は、最終的に製造される多孔性コーティング層の厚さ、気孔サイズ及び気孔度を考慮して決定し得る。
【0067】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極を備えたリチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含み得る。
【0068】
前記リチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角形、パウチ型またはコイン型などであり得る。
【0069】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極を備えたリチウム二次電池は、負極の耐久性が向上してサイクル寿命が改善できる。
【0070】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極を備えたリチウム二次電池は、後述するリチウム二次電池の製造方法によって製造されるが、これによって限定されない。
【0071】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法は、
(S1)正極、並びにSi系負極活物質及び第1バインダー高分子を含む予備負極を製造する段階と、
(S)多孔性高分子基材の少なくとも一面に無機物粒子、第2バインダー高分子、及び前記第2バインダー高分子に対する溶媒を含む多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティング及び乾燥してセパレータを製造する段階と、
(S3)前記(S1)段階で製造された正極と予備負極との間に前記(S2)段階で製造されたセパレータを介在させ、ラミネーションして電極組立体を製造する段階と、
(S4)前記(S3)段階で製造された電極組立体を電池ケースに収納し、電解液を注入して予備電池を製造する段階と、
(S5)前記(S4)段階の予備電池を活性化させる段階と、
(S6)前記(S5)段階の予備電池を昇温させて前記第2バインダー高分子を前記電解液に溶解させてから放置する段階と、
(S7)前記(S6)段階の結果物を冷却する段階と、を含み、
前記第1バインダー高分子は、前記(S6)段階の昇温温度で前記電解液に溶解されないことを特徴とする。
【0072】
図3は、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法を概略的に示したフロー図である。
【0073】
以下、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法を主要部分を中心にして説明する。
【0074】
まず、正極、並びにSi系負極活物質及び第1バインダー高分子を含む予備負極を製造する(S1)。前記正極は、当業界で周知の通常の方法で製造し得る。例えば、正極活物質を含む正極スラリーを製造した後、これを正極集電体に直接コーティングするなどの方法で製造可能である。前記正極集電体及び正極活物質については上述した内容を参考できる。
【0075】
前記予備負極は、当業界で周知の通常の方法によってSi系負極活物質、導電材、第1バインダー高分子、及び第1バインダー高分子に対する溶媒を混合して負極スラリーを製造した後、これを負極集電体上にコーティングした後、圧延及び乾燥して製造し得る。前記Si系負極活物質及び導電材については上述した内容を参考できる。
【0076】
本発明において、前記第1バインダー高分子は、後述する(S6)段階の昇温温度で電解液に溶解されないことを特徴とする。前記第1バインダー高分子が後述する(S6)段階の昇温温度で電解液に溶解されれば、負極活物質が負極集電体から脱離して内部短絡を起こすおそれがある。前記第1バインダー高分子としては、通常負極のバインダーとして使用可能であって、後述する(S6)段階の昇温温度で電解液に溶解されないものであれば、特に制限されない。
【0077】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は水系バインダー高分子であり得る。例えば、前記第1バインダー高分子は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0078】
本発明において、前記第1バインダー高分子に対する溶媒は、第1バインダー高分子の種類に応じて第1バインダー高分子を溶解させる溶媒の役割をしてもよく、第1バインダー高分子を溶解させずに分散させる分散媒の役割をしてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子に対する溶媒としては、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒、または水が使用され得る。前記負極スラリー中の固形分の濃度は、50重量%~95重量%、または70重量%~90重量%であり得る。
【0080】
本発明の一実施形態において、前記Si系負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準にして60重量%~80重量%、または70重量%~99重量%で含まれ得る。
【0081】
本発明の一実施形態において、前記導電材は、負極活物質層の全体重量を基準にして0.1重量%~20重量%、または10重量%~15重量%で含まれ得る。
【0082】
本発明の一実施形態において、前記第1バインダー高分子は、負極活物質層の全体重量を基準にして0.1重量%~20重量%、または5重量%~10重量%で含まれ得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、前記負極スラリーにカルボキシメチルセルロース(CMC)のような増粘剤などの添加剤を追加的に含み得る。
【0084】
また、多孔性高分子基材の少なくとも一面に、無機物粒子、第2バインダー高分子、及び前記第2バインダー高分子に対する溶媒を含む多孔性コーティング層形成用スラリーをコーティング及び乾燥してセパレータを製造する(S2)。前記多孔性コーティング層形成用スラリーの製造、及びこれを多孔性高分子基材にコーティング及び乾燥する方法は、当業界で周知の通常の方法であり得る。前記多孔性高分子基材、及び無機物粒子については上述した内容を参考できる。
【0085】
前記第2バインダー高分子は、後述する(S6)段階で予備電池が昇温することによって電解液に溶解されることを特徴とする。すなわち、前記第2バインダー高分子は、常温では電解液に溶解されないが、後述する(S6)段階の昇温温度で電解液に溶解される。
【0086】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子は、フッ化ビニリデン(VDF)由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来第2単量体との共重合体を含み得、このとき、前記第2単量体が前記共重合体100重量%を基準にして20重量%以上、または30重量%以上で含まれ得る。前記第2単量体が上述した範囲で含まれる場合、後述する段階で前記フッ化ビニリデン(VDF)由来第1単量体とヘキサフルオロプロピレン(HFP)由来第2単量体との共重合体が電解液に溶解され易い。
【0087】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子に対する溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロヘキサン、またはこれらのうちの二つ以上を含み得る。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記無機物粒子と第2バインダー高分子との総量100重量%を基準にして、前記第2バインダー高分子が15重量%~25重量%または約20重量%の含量で前記多孔性コーティング層形成用スラリーに含まれ得る。前記第2バインダー高分子が上述した範囲で前記多孔性コーティング層形成用スラリー内に含まれると、後述する段階で前記負極活物質に形成されたクラックの間を連結するのに十分な量の前記第2バインダー高分子が電解液に溶解されるとともに、電池の冷却時に電解液から吐出されない第2バインダー高分子の量が過剰に増加することを防止することができる。
【0089】
本明細書において、前記正極及び予備負極が前記セパレータよりも先に製造されると説明したが、これに限定されることはない。例えば、前記正極及び予備負極を前記セパレータよりも後に製造してもよい。また、前記正極及び予備負極を前記セパレータと同時に製造してもよい。
【0090】
その後、前記(S1)段階で製造された正極と予備負極との間に前記(S2)段階で製造されたセパレータを介在させ、ラミネーションして電極組立体を製造する(S3)。前記電極組立体は、当業界で周知の通常の方法によって製造し得る。
【0091】
本発明の一実施形態において、前記ラミネーションは、25℃~150℃、または100~400kgf/cmの圧力、またはこれらを両方とも適用した条件で行われ得る。
【0092】
次いで、前記(S3)段階で製造された電極組立体を電池ケースに収納し、電解液を注入して予備電池を製造する(S4)。前記予備電池は、当業界で周知の通常の方法によって製造し得る。
【0093】
本発明の一実施形態において、前記電池ケースは、電極組立体と電解液が収容される収容部、及び前記電極組立体と電解液が外部に露出することを防止するために電池ケースを密封するシーリング部を含むパウチ型ケースであり得るが、これに限定されることはない。
【0094】
前記電解液は、前記電池ケースに製造した電極組立体を収納した後、電池ケース外部を密封する前の段階で注液されるか、又は、電池ケースの外部を密封した後に注液され得る。前記電解液の注液は、当業界で周知の通常の方法によって行われ得る。
【0095】
本発明において、前記電解液は、電解質としてリチウム塩及びこれを溶解させるための有機溶媒を含む。前記リチウム塩としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどを制限なく使用し得、Aのような構造の塩であり得る。例えば、Aは、Li、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらのうちの二つ以上の組合せからなるイオンを含み、Bは、PF 、BF 、F、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらのうちの二つ以上の組合せからなるイオンを含み得る。
【0096】
前記有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常使用されるものなどを制限なく使用し得、エーテル、エステル、線状カーボネート、環状カーボネート、またはこれらのうちの2種以上を混合して使用し得る。中でも代表的には、環状カーボネート、線状カーボネート、またはこれらの混合物であるカーボネート化合物を含み得る。
【0097】
前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、これらのハロゲン化物、またはこれらのうちの2種以上の混合物などが代表的に挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0098】
前記ハロゲン化物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられるが、これに限定されることはない。
【0099】
前記線状カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、またはこれらのうちの2種以上の混合物などが代表的に挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0100】
また、前記有機溶媒のうちのエーテルの具体的な例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、またはこれらのうちの2種以上の混合物などが代表的に挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0101】
前記有機溶媒のうちのエステルの具体的な例としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、またはこれらのうちの2種以上の混合物などが代表的に挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0102】
その後、前記(S4)段階の予備電池を活性化させる(S5)。
【0103】
前記(S5)段階は、前記電解液が注入された予備電池を充電及び放電して活性化させる段階である。前記予備電池が充電されることによって、前記Si系負極活物質にリチウムイオンが挿入されて体積が膨張する。このような体積の膨張によって負極活物質にクラックが形成される。
【0104】
本発明の一実施形態において、前記(S5)段階での充電は、電池容量の30%~100%、50%~100%、または80%~100%の範囲に行われ得、放電は電池容量の50%~0%、または30%~0%まで行われ得る。
【0105】
本発明の一実施形態において、充放電は0.1C-レートを基準にして、充電はCC(定電流)/CV(定電圧)モード、放電はCC(定電流)モードで行われ得る。充放電カットオフ電圧は、2.3V~4.5V、または3.2V~4.2Vの間で設定され得る。しかし、このような充放電モードやカットオフ電圧の範囲、C-レートなどの充放電条件は、上記の範囲に限定されず、電極活物質、電池の種類、電池特性などを考慮して適切な範囲や条件を設定し得る。
【0106】
本発明の一実施形態において、前記活性化段階は、所定の圧力が加えられた加圧条件で行われ得る。例えば、圧力の範囲は1kN~20kNであり得る。
【0107】
その後、前記(S5)段階の予備電池を昇温させて前記第2バインダー高分子を前記電解液に溶解させ、前記第2バインダー高分子が溶解された電解液を含む予備電池を放置する(S6)。
【0108】
前記(S6)段階は、予備電池の温度を前記第2バインダー高分子が電解液に溶解される特定温度以上に昇温させて、セパレータ、具体的にはセパレータ内の多孔性コーティング層に存在する前記第2バインダー高分子を電解液に溶解させ、前記第2バインダー高分子が溶解された電解液が電極組立体の内部へと均一に拡散するように安定化させる段階である。この過程で前記第2バインダー高分子が溶解された電解液が、前記(S5)段階後に負極活物質に形成されたクラック内に含浸される。前記(S5)段階後に負極活物質に形成されたクラック内に前記第2バインダー高分子が溶解された電解液が含浸されねばならないため、前記(S6)段階は(S5)段階の後に行われるべきである。
【0109】
前記(S5)段階の後、負極活物質に形成されたクラックが大きいほど、前記第2バインダー高分子が溶解された電解液が前記クラック内に存在する可能性がさらに増加する。したがって、後述する冷却段階の後、電解液から吐出される前記第2バインダー高分子が前記(S5)段階後に負極活物質に形成されたクラック内により多く存在し得る。
【0110】
前記(S6)段階での予備電池の昇温によってセパレータに存在する前記第2バインダー高分子が電解液に溶解されても、前記正極、予備負極及びセパレータがラミネーションされることで、前記セパレータに含まれた無機物粒子が多孔性高分子基材から脱離する現象を防止することができる。前記第2バインダー高分子が電解液に溶解された後にも、セパレータに含まれた無機物粒子が多孔性高分子基材上に固定されねばならないため、前記(S6)段階は(S3)段階の後に行われるべきである。
【0111】
前記予備電池の昇温温度は、電池の大きさ及び形状によって相異なり得る。本発明の一実施形態において、前記(S6)段階での予備電池の昇温温度は70℃~90℃、75℃~85℃、または約80℃であり得る。前記予備電池の昇温温度が上述した範囲であると、前記第2バインダー高分子が電解液に充分に溶解されるとともに、電解液に含まれる有機溶媒の沸点よりも低い温度で第2バインダー高分子が電解液に溶解されるため、前記(S5)段階後に負極活物質に形成されたクラックの間を連結するのに十分な量の前記第2バインダー高分子が容易に電解液に溶解できる。また、前記第2バインダー高分子が電解液に溶解されるものの、セパレータの空隙が詰まるシャットダウン温度に近づくことで、イオン伝導度が減少してリチウム二次電池の性能が減少する現象をより容易に防止できる。
【0112】
本発明の一実施形態において、前記(S6)段階での予備電池の昇温温度が70℃~90℃である場合、前記第1バインダー高分子は90℃以下の温度では電解液に溶解されないものであり得る。前記第1バインダー高分子は90℃を超える温度で電解液に溶解されるものであり得る。このとき、前記第2バインダー高分子は、常温では電解液に溶解されないが、70℃以上で電解液に溶解され得る。
【0113】
前記予備電池が放置される時間は、電池の大きさ及び形状によって相異なり得る。本発明の一実施形態において、前記予備電池は24時間以上、48時間以上、または72時間以上放置され得る。前記予備電池が上述した時間以上放置される場合、前記第2バインダー高分子が溶解された電解液が電極組立体の内部へと均一に拡散するのに十分な時間をより容易に確保できる。
【0114】
本発明の一実施形態において、前記(S6)段階は、所定の圧力が加えられた加圧条件で行われ得る。例えば、圧力の範囲は1kN~20kNであり得る。
【0115】
本発明の一実施形態において、前記第2バインダー高分子が電解液に溶解される含量は、セパレータの製造時に前記多孔性コーティング層形成用スラリーに含まれる量の60~95重量%であり得る。前記第2バインダー高分子が電解液に溶解される含量が上述した範囲を満足すると、前記無機物粒子が多孔性高分子基材から脱離する現象を防止できるとともに、前記負極活物質に形成されたクラックの間を連結するのに十分な量の前記第2バインダー高分子が電解液に溶解できる。
【0116】
本発明の一実施形態において、前記(S5)及び(S6)段階で発生したガスを除去するために脱気工程が追加的に行われ得る。
【0117】
その後、前記(S6)段階の結果物を冷却して最終的にリチウム二次電池を製造する(S7)。
【0118】
前記(S7)段階において、前記(S6)段階を経て負極活物質に形成されたクラック内に含浸された電解液から、電池温度の低下とともに電解液に対する前記第2バインダー高分子の溶解度が減少することで、電解液に溶解されていた前記第2バインダー高分子が吐出されるようになる。吐出された第2バインダー高分子は、前記(S5)段階後に負極活物質に形成されたクラックの間を連結することで、負極の耐久性及び前記負極を含むリチウム二次電池の寿命特性を改善させることができる。
【0119】
本発明の一実施形態において、前記(S7)段階において前記予備電池は15℃~45℃、20℃~30℃、または約25℃に冷却され得る。例えば、前記予備電池は常温に冷却され得る。
【0120】
上述したような本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法によれば、耐久性が向上したリチウム二次電池用負極を製造することができる。
【0121】
また、上述したような本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の製造方法によれば、耐久性が向上したリチウム二次電池用負極を備えて寿命特性が改善されたリチウム二次電池を製造することができる。
【0122】
上述した製造方法によって製造されたリチウム二次電池において、セパレータに含まれた前記第2バインダー高分子が電解液に溶解されるため、セパレータの製造段階で使われた量よりも遥かに少量がセパレータに残存するようになる。セパレータに残存する前記第2バインダー高分子の含量が減少しても、前記セパレータと正極及び予備負極とがラミネーションされることで、前記セパレータに含まれた無機物粒子が多孔性高分子基材から脱離する現象を防止することができる。
【0123】
前記第2バインダー高分子は、前記(S6)段階で電解液に溶解されるため、最終的に製造されたリチウム二次電池のセパレータにおいて、セパレータ製造時に多孔性コーティング層形成用スラリー内に添加された最初の含量よりも著しく減少した量が残存するようになる。本発明の一実施形態において、前記(S7)段階の結果物に含まれたセパレータには、前記第2バインダー高分子が前記無機物粒子と第2バインダー高分子との総量100重量%を基準にして1重量%~5重量%で含まれ得る。
【0124】
以下、本発明の理解を助けるために実施例及び評価例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0125】
実施例1
正極の製造
正極活物質としてLi(Ni0.333Co0.334Mn0.333)O(シグマアルドリッチ社製)97.5重量%、導電材としてカーボンブラック(Timcal社製)1.0重量%、バインダー高分子としてPVdF(ソルベイ社製)1.5重量%を25℃でN-メチルピロリドンに添加して正極スラリーを製造した。厚さ15μmのアルミニウム箔の上面に前記正極スラリー600mg/25mをスロットダイコーターでコーティングして正極を製造した。製造された正極の厚さは162μmであった。
【0126】
予備負極の製造
負極活物質としてSi粒子(シグマアルドリッチ社製、平均粒径(D50):2.3μm)80重量%、導電材としてカーボンブラック(Timcal社製)10重量%、第1バインダー高分子としてカルボキシメチルセルロース(Diacell社製)10重量%を25℃で水に添加して負極スラリーを製造した。厚さ8μmの銅ホイルの上面に前記負極スラリー100mg/25mをスロットダイコーターでコーティングして予備負極を製造した。製造された負極の厚さは58μmであった。
【0127】
セパレータの製造
無機物粒子としてAl(シグマアルドリッチ社製、平均粒径:500nm)80重量%、第2バインダー高分子としてPVdF-HFP(シグマアルドリッチ社製、PVdF-HFP100重量%を基準にしてHFP由来単量体が20重量%)20重量%をN-メチルピロリドンに添加して多孔性コーティング層形成用スラリーを製造した。前記多孔性コーティング層形成用スラリーを厚さ9μmのポリエチレンフィルム(東レ社製)の上面にディップコーティングした。その後、相対湿度50%の条件で加湿相分離してセパレータを製造した。最終的に製造されたセパレータの厚さは17.5μmであった。
【0128】
リチウム二次電池の製造
上記のように製造した正極と予備負極との間に、上記のように製造したセパレータを介在させた後、25℃、250kgf/cmの圧力でラミネーションして電極組立体を製造した。前記電極組立体を電池ケースに収納し、EC:DEC=3:7の体積比になるように混合した有機溶媒に1.0M LiPFリチウム塩が溶解された電解液を注入して予備電池を製造した。
【0129】
前記予備電池を0.15C/0.33Cで1サイクルを進行した後、0.33C/0.33Cで1サイクルをさらに進行して、2サイクルの活性化を行った。充電はCC(定電流)/CV(定電圧)、放電はCC(定電流)で行い、CV終了電流は0.05Cであった。
【0130】
活性化された予備電池を75℃で24時間放置し、前記第2バインダー高分子を前記電解液に溶解させた。放置された予備電池を25℃に冷却してリチウム二次電池を最終的に製造した。
【0131】
実施例2
活性化された予備電池を80℃で放置したことを除き、実施例1と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0132】
実施例3
活性化された予備電池を85℃で放置したことを除き、実施例1と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0133】
実施例4
正極、予備負極、及びセパレータの製造
無機物粒子を75重量%、第2バインダー高分子を25重量%で使用したことを除き、実施例1と同様に正極、予備負極、及びセパレータを製造した。
【0134】
リチウム二次電池の製造
実施例2と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0135】
実施例5
正極、予備負極、及びセパレータの製造
無機物粒子を85重量%、第2バインダー高分子を15重量%で使用したことを除き、実施例1と同様に正極、予備負極、及びセパレータを製造した。
【0136】
リチウム二次電池の製造
実施例2と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0137】
比較例1
活性化された予備電池を昇温させて前記第2バインダー高分子を前記電解液に溶解させる段階及びその後の前記予備電池を冷却する段階を行わないことを除き、実施例1と同様にリチウム二次電池を製造した。
【0138】
評価例1:電極組立体を組み立てる前のセパレータの厚さと最終的に製造されたリチウム二次電池のセパレータの厚さとの差の分析
実施例1で製造した、電極組立体を組み立てる前のセパレータ、すなわち(S2)段階で製造したセパレータを用意した。また、実施例1で最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータ、すなわち(S7)段階の結果物に含まれたセパレータを用意した。実施例1で最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータは、実施例1で最終的に製造されたリチウム二次電池から分解して得た。
【0139】
前記電極組立体を組み立てる前のセパレータの厚さと前記最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータの厚さと差を観察した。
【0140】
実施例1で製造した、電極組立体を組み立てる前のセパレータは17.5μmの厚さを有することが確認された。
【0141】
一方、実施例1で最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータは14.89μmの厚さを有することが確認された。
【0142】
このことから、セパレータに含まれた第2バインダー高分子が昇温段階を経ながら、電解液に溶解されたことを確認することができた。
【0143】
評価例2:リチウム二次電池に含まれたセパレータに残存する第2バインダー高分子の含量の測定
実施例1~5及び比較例1で最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータ、すなわち、(S7)段階の結果物に含まれたセパレータに残存する第2バインダー高分子の含量を測定して表1に示した。
【0144】
最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータに残存する第2バインダー高分子の含量は、下記のような方法で測定した。
【0145】
実施例1~5及び比較例1で最終的に製造されたリチウム二次電池から分解して得たセパレータを用意した。
【0146】
熱重量分析(Thermogravimetric Analysis:TGA)を使用し、25℃から700℃まで1分当り10℃の速度で昇温及び冷却する過程を繰り返したときのセパレータの重量変化から、最終的に製造されたリチウム二次電池に含まれたセパレータに残存する第2バインダー高分子の含量を計算した。第2バインダー高分子の含量はセパレータに残存する無機物粒子と第2バインダー高分子との総量を基準にして示した。
【0147】
【表1】
【0148】
表1から、実施例1~5で最終的に製造された電池に含まれたセパレータに残存する第2バインダー高分子の含量が、電極組立体を製造する前、すなわち昇温段階を経ていないセパレータに含まれた第2バインダー高分子の含量よりも顕著に減少したことが確認できる。このことから、実施例1~5で最終的に製造されたリチウム二次電池において、セパレータに含まれた第2バインダー高分子が昇温段階を経て電解液に溶解され、前記第2バインダー高分子が溶解された電解液が電池全体に含浸されながら、活性化工程後に形成された負極活物質のクラック内に前記第2バインダー高分子がコーティングされることを類推することができる。
【0149】
一方、比較例1で最終的に製造された電池に含まれたセパレータに残存する第2バインダー高分子の含量は、電極組立体を製造する前、すなわち昇温段階を経ていないセパレータに含まれた第2バインダー高分子の含量と大きく変わらない。このことから、比較例1で最終的に製造されたリチウム二次電池ではセパレータに含まれた第2バインダー高分子が電解液に溶解されないため、活性化工程後に形成された負極活物質のクラック内に前記第2バインダー高分子がコーティングされないことを類推することができる。
【0150】
評価例3:リチウム二次電池のサイクル寿命の評価
実施例1~5及び比較例1で製造したリチウム二次電池を連続的に1.0C定電流で4.2Vまで充電した後、0.5Cで放電する充放電サイクルを行い、100サイクル以後の容量維持率を測定して下記の表2に示した。
【0151】
【表2】
【0152】
表2から、実施例1~5で製造されたリチウム二次電池は、すべて100サイクル以後にも80%以上の容量維持率を示すことが確認できる。
【0153】
特に、実施例1~3を参考すれば、予備電池の昇温温度が増加するほど100サイクル以後の容量維持率が増加することが確認できる。これは、予備電池を昇温する温度が増加するほど、第2バインダー高分子の電解液に対する溶解度が増加し、さらに多量の第2バインダー高分子が負極活物質のクラック内にコーティングされるからであると見られる。
【0154】
実施例2、実施例4、及び実施例5を参照すると、多孔性コーティング層形成用スラリー内に含まれた第2バインダー高分子の含量が増加するほど、100サイクル以後の容量維持率が増加することが確認できる。これは、多孔性コーティング層形成用スラリー内に含まれた第2バインダー高分子の含量が増加するほど、電解液に溶解される第2バインダー高分子の含量が増加するからであると見られる。
【0155】
一方、比較例1で製造したリチウム二次電池は、100サイクル以後の容量維持率が80%未満に減少した。比較例1のリチウム二次電池は、予備電池を昇温する段階を行っていないため第2バインダー高分子が電解液に溶解されず、負極活物質に形成されたクラック内に第2バインダー高分子がコーティングされないため、前記クラックによって負極活物質の一部が負極集電体から及び/または負極活物質同士で脱離してリチウム二次電池の容量が減少したと見られる。
図1
図2
図3